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特許7329461栽培パレット、栽培システム及び栽培方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】栽培パレット、栽培システム及び栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20230810BHJP
【FI】
A01G31/00 611A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020012409
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2020137513
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2019032304
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514108263
【氏名又は名称】株式会社ファームシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 由久
(72)【発明者】
【氏名】北島 正裕
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-103894(JP,A)
【文献】特開2017-095863(JP,A)
【文献】特開2012-080783(JP,A)
【文献】特開2015-195783(JP,A)
【文献】特開2003-158927(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198035(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 2/00 - 2/38
A01G 5/00 - 9/08
A01G 9/28
A01G 17/00 - 17/02
A01G 17/18
A01G 20/00 - 22/67
A01G 24/00 - 24/60
A01G 31/00 - 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養液に浮かべて用いる栽培パレットであって、
前側又は後側の一方に係止部が設けられ、かつ他方に該係止部が係止可能な被係止部が設けられているか、あるいは、前側又は後側に係脱可能に接続される接続具を具備し
前記栽培パレットの左右方向における前記係止部の途中位置に第1ずれ防止部が設けられ、前記左右方向における前記被係止部の途中位置に第2ずれ防止部が設けられ、
前記係止部が前記被係止部に係止して前記第1ずれ防止部が前記第2ずれ防止部と係合することで、前記左右方向における前記栽培パレットの位置ずれが防止されることを特徴とする栽培パレット。
【請求項2】
前後幅が左右幅よりも短い平面視略矩形状を呈する請求項1に記載の栽培パレット。
【請求項3】
本体部と、該本体部を上下に貫通する貫通孔の縁から上方に突出し、培地を保持する複数の保持部とを有し、
前記保持部に保持された前記培地は、前記貫通孔に向かって開放され、かつ、該貫通孔よりも上方に位置するように構成されている請求項1または2に記載の栽培パレット。
【請求項4】
前記保持部は、
前記貫通孔の縁から立ち上がる立ち上がり部と、
該立ち上がり部の上部から該立ち上がり部の内側に折り返し下方に向かう折り返し部と、を有する請求項3に記載の栽培パレット。
【請求項5】
前記折り返し部の下部から内向きに延びる鍔部を有する請求項4に記載の栽培パレット。
【請求項6】
前記本体部を上方に隆起させることで構成された補強部をさらに有し、
隣り合う二つの前記保持部の間が前記補強部によって連結された請求項3~5の何れか一項に記載の栽培パレット。
【請求項7】
前記補強部は、前記保持部の配置位置を頂点位置とする三角形状の格子をなすように複数配置されている請求項6に記載の栽培パレット。
【請求項8】
培養液に浮かべて用いる栽培パレットであって、
本体部と、該本体部の周縁から立ち上がった立ち上がり壁と、該立ち上がり壁の上部から外方かつ下方に折り返された折り返しフランジと、を有し、
前側又は後側の一方に係止部が設けられ、かつ他方に該係止部が係止可能な被係止部が設けられているか、あるいは、前側又は後側に係脱可能に接続される接続具を具備し、
前記周縁の前側及び後側の少なくとも一方には、前記折り返しフランジが切り欠かれた切欠き部が設けられ、
前記栽培パレットの左右方向において、前記切欠き部の端は、前記栽培パレットの左右端よりも内側に位置することを特徴とする栽培パレット。
【請求項9】
請求項1~の何れか一項に記載の栽培パレットと、前記培養液の入った栽培レーンとを具備し、前記栽培レーンは、列をなすように複数の該栽培パレットを培養液に浮かべることが可能に構成されている栽培システム。
【請求項10】
請求項に記載の栽培システムを用いる栽培方法。
【請求項11】
前記栽培レーンに対する前記栽培パレットの出し入れを、該栽培レーンの片側のみから行う請求項10に記載の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、水耕栽培を行うための栽培パレット、並びに、これを用いた栽培システム及び栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下多段に設けられた水槽(栽培レーン)51の各々において、その片側から栽培パレット52を順次投入し、一定期間栽培後、反対側から栽培パレット52を順次取り出すようにした栽培システムが知られている(図8(A)、特許文献1参照)。
【0003】
斯かる栽培システムでは、水槽51の両側(片側とその反対側)に栽培パレット52を出し入れするためのスペースが必要となり、それだけ面積効率が低くなる。また、水槽51の片側から栽培パレット52を入れる作業と、その反対側から栽培パレット52を取り出す作業とを行わせるために、栽培パレット52を出し入れする装置(図示していない)を水槽51の両側に設置するとコストアップし、これを回避するために、一台の装置を移動させて水槽51の両側で交互に使用するのでは、装置の移動という余分な作業が増える。さらに、水槽51の片側からその反対側にまでわたって栽培パレット52が並んでいないと、反対側に栽培パレット52が到達せず、栽培パレット52の取り出し作業が困難化する。
【0004】
そこで、水槽51に対する栽培パレット52の出し入れを、水槽51の片側のみから行えるようにすることが考えられる(図8(B)参照)。例えば、特許文献2には、養液槽53(栽培レーン)上に複数の栽培用プレート(栽培パレット)54を設置し、引寄せ用バー55で栽培用プレート54を引き寄せる技術が開示されている(図9(A)及び(B)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5916189号公報
【文献】特開2017-195863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載の技術では、養液槽53上の全ての栽培用プレート54を取り出す際、引寄せ用バー55に一端が固定された紐状体56を引っ張って栽培用プレート54を引き寄せ、栽培用プレート54を取り出す、という作業を繰り返す必要があり、作業効率の点で改善の余地がある。
【0007】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、培養液に浮かべた状態からの取り出し作業を効率よく行うことが可能な栽培パレット並びにこれを用いた栽培システム及び栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る栽培パレットは、培養液に浮かべて用いる栽培パレットであって、前側又は後側の一方に係止部が設けられ、かつ他方に該係止部が係止可能な被係止部が設けられているか、あるいは、前側又は後側に係脱可能に接続される接続具を具備した(請求項1)。
【0009】
上記栽培パレットは、前後幅が左右幅よりも短い平面視略矩形状を呈するものでもよい(請求項2)。
【0010】
上記栽培パレットは、本体部と、該本体部を上下に貫通する貫通孔の縁から上方に突出し、培地を保持する複数の保持部とを有し、前記保持部に保持された前記培地は、前記貫通孔に向かって開放され、かつ、該貫通孔よりも上方に位置するように構成されていてもよい(請求項3)。
【0011】
上記栽培パレットにおいて、前記保持部は、前記貫通孔の縁から立ち上がる立ち上がり部と、該立ち上がり部の上部から該立ち上がり部の内側に折り返し下方に向かう折り返し部とを有していてもよい(請求項4)。
【0012】
上記栽培パレットが、前記折り返し部の下部から内向きに延びる鍔部を有していてもよい(請求項5)。
【0013】
上記栽培パレットが、前記本体部を上方に隆起させることで構成された補強部をさらに有し、隣り合う二つの前記保持部の間が前記補強部によって連結されてもよい(請求項6)。このとき、前記補強部は、前記保持部の配置位置を頂点位置とする三角形状の格子をなすように複数配置されているとよい(請求項7)。
【0014】
上記栽培パレットにおいて、前記栽培パレットの左右方向における前記係合部の途中位置に第1ずれ防止部が設けられ、前記左右方向における前記被係合部の途中位置に第2ずれ防止部が設けられ、前記係止部が前記被係止部に係止して前記第1ずれ防止部が前記第2ずれ防止部と係合することで、前記左右方向における前記栽培パレットの位置ずれが防止されてもよい(請求項8)。
【0015】
上記栽培パレットが、本体部と、該本体部の周縁から立ち上がった立ち上がり壁と、該立ち上がり壁の上部から外方かつ下方に折り返された折り返しフランジと、を有し、前記周縁の前側及び後側の少なくとも一方には、前記折り返しフランジが切り欠かれた切欠き部が設けられ、前記栽培パレットの左右方向において、前記切欠き部の端は、前記栽培パレットの左右端よりも内側に位置してもよい(請求項9)。
【0016】
一方、上記目的を達成するために、本発明に係る栽培システムは、請求項1~9の何れか一項に記載の栽培パレットと、前記培養液の入った栽培レーンとを具備し、前記栽培レーンは、列をなすように複数の該栽培パレットを培養液に浮かべることが可能に構成されている(請求項10)。他方、上記目的を達成するために、本発明に係る栽培方法は、請求項6に記載の栽培システムを用いる(請求項11)のであり、この場合、前記栽培レーンに対する前記栽培パレットの出し入れを、該栽培レーンの片側のみから行うようにしてもよい(請求項12)。
【発明の効果】
【0017】
本願発明では、培養液に浮かべた状態からの取り出し作業を効率よく行うことが可能な栽培パレット並びにこれを用いた栽培システム及び栽培方法が得られる。
【0018】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の栽培パレットでは、栽培レーンにその片側から複数の栽培パレットを順次投入する際、例えば栽培パレットの係止部を投入方向前方に向けて栽培レーンに浮かべ、少し前方に移動させた後、その被係止部に、別の栽培パレットの係止部を係止し、少し前方に動かす、という作業を繰り返せばよく、投入作業を効率良く行える。なお、接続具を用いる場合は、上記係止に替えて、接続具による接続を行えばよい。
【0019】
また、栽培後における栽培レーンの片側からの複数の栽培パレットの取り出しは、最も手前(片側に最も近い位置)にある栽培パレットから順次行うことになるが、この取り出しの際に、最も手前の栽培パレットの係止部をその前隣の栽培パレットの被係止部に係止させたまま後側を持ち上げて(後側が高くなるように傾けて)引き寄せることにより、前隣の栽培パレット及びこれに連なる他の栽培パレット全体を片側に引き寄せることができ、この作業を繰り返せば全ての栽培パレットを効率良く取り出せる。なお、接続具を用いる場合は、引き寄せた栽培パレットに対する接続具の接続を適宜解除すればよい。
【0020】
請求項2に係る発明の栽培パレットでは、栽培パレットの前後幅が左右幅以上の場合より、栽培レーンへの投入及びその取出しの際の栽培パレットの移動距離を短くすることができ、この点でも投入及び取出し作業の効率化を図ることができる。
【0021】
請求項3に係る発明の栽培パレットでは、この栽培パレットを培養液に浮かべた状態で、培地に植栽された植物の根を培養液に浸けつつ、培地を培養液に浸けないようにすることができる。ここで、培地が培養液に浸かって水分を含むと、光が当たる上面に藻が発生し易くなり、見栄えが悪くなるが、上記のように培地を培養液に浸けないようにすれば、藻の発生を抑制可能である。
【0022】
請求項4に係る発明の栽培パレットでは、真空成形等により簡便に栽培パレットを製造することが可能となる。
【0023】
請求項5に係る発明の栽培パレットでは、培地を保持部に装着する際や装着した後に、培地が保持部の下方に抜け落ちてしまうことを、鍔部により、確実に防止することができる。
【0024】
請求項6に係る発明の栽培パレットでは、本体部の強度を高めることができる。さらに、請求項7に係る発明の栽培パレットでは、より効果的に本体部の強度を高めることができる。
【0025】
請求項8に係る発明の栽培パレットでは、互いに隣り合う二つの栽培パレットを、一方の栽培パレットの係止部をもう一方の栽培パレットの被係止部に係止させた状態で、片側に引き寄せる際に、左右方向における栽培パレット同士の位置ずれを防止することができる。
【0026】
請求項9に係る発明の栽培パレットでは、栽培パレットの折り返しフランジに設けられた切欠き部の切り端(エッジ)が周辺物に引っ掛かるのを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る栽培パレットの構成を概略的に示す斜視図、(B)は栽培パレットの切欠き部の形成方法を示す説明図である。
図2】(A)は栽培パレットの係止部及び被係止部の構成を概略的に示す説明図、(B)~(F)はその変形例を示す説明図である。
図3】(A)は連結した二つの栽培パレットの状態を示す平面図、(B)及び(C)はそれぞれ変形例に係る二つの栽培パレットを連結した状態を示す平面図である。
図4】培養液に浮かべた状態の栽培パレットの要部を示す説明図である。
図5】(A)及び(B)は、栽培パレットの保持部の構成を概略的に示す縦断面図及び平面図、(C)及び(D)は栽培パレットの培地の変形例を示す正面図である。
図6】(A)~(D)は栽培パレットの成形方法を概略的に示す説明図である。
図7】(A)~(D)は栽培パレットの変形例を示す平面図である。
図8】(A)及び(B)は、従来及び本発明の栽培システムの概念図である。
図9】(A)及び(B)は、従来の栽培システムの他の例の分解斜視図及び説明図である。
図10】(A)~(C)は栽培パレットの変形例を示す説明図である。
図11】(A)~(C)は栽培パレットの変形例を示す説明図である。
図12】(A)は植物の根の状態からみてその生育に好ましくない水位、(B)は好ましい水位を示す説明図、(C)は培養液に浮かべた状態の前記栽培パレットの要部を示す説明図である。
図13】(A)及び(B)は栽培パレットの変形例を示す縦断端面図及び平面図、(C)は他の変形例の要部を示す斜視図である。
図14】(A)及び(B)は、栽培パレットの本体部を垂直に立ち上げた場合と寝かせた場合との排液性の違いを示す説明図である。
図15】本発明の他の変形例に係る栽培パレットの斜視図である。
図16】本発明の他の変形例に係る栽培パレットの平面図である。
図17】本発明の他の変形例に係る二つの栽培パレットにおいて、係合部側に設けられた第1ずれ防止部と被係合部側に設けられた第2ずれ防止部とが係合した部分を拡大して示す平面図である。
図18】本発明の他の変形例に係る栽培パレットの角部に設けられた切欠き部周辺を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【0029】
本例の栽培システムは、図1(A)に示す栽培パレット(フロート)1を、図8(B)に示すように、栽培レーン2の片側から投入し、その反対側ではなく同じ片側から取り出すようにしたものである。ここで、栽培レーン2を構成する水槽には培養液3が入り、栽培パレット1はこの培養液3に浮かべて用いるのであり、栽培レーン2は、列をなすように複数の栽培パレット1を培養液3に浮かべることが可能に構成されている。
【0030】
そして、図1(A)に示す栽培パレット1は、前縁(前側の一例)又は後縁(後側の一例)の一方に係止部4、他方に係止部4が係止可能な被係止部5が設けられている。図8(B)に示す投入方向を前方とすると、本例では、係止部4は栽培パレット1の前縁に設けられ、被係止部5は後縁に設けられている。
【0031】
詳述すると、図1(A)及び(B)に示すように、栽培パレット1は略板状の本体部6を有し、本体部6の周縁は盛り上がっており、この盛り上がりは、本体部6の周縁から立ち上がる立ち上がり壁7と、この立ち上がり壁7の上部から外方かつ下方に折り返す折り返しフランジ8とで構成されている。そして、本例では、このように盛り上がった周縁の前部(栽培パレット1の前縁)において、その両端に設けられた二つの切欠き部9で挟まれた部分を係止部4とし、盛り上がった周縁の後部(栽培パレット1の後縁)自体を被係止部5としている。なお、本例の切欠き部9は、立ち上がり壁7に連なる折り返しフランジ8を無くしたものである(図1(B)参照)が、この切欠き方は、係止部4を被係止部5に係止可能な範囲で適宜変更可能である。
【0032】
そして、図2(A)に示すように、係止部4は、被係止部5に上方から被せてこれに係止する。図3(A)に、この係止によって連結した前後に隣り合う二つの栽培パレット1の状態を示す。
【0033】
なお、係止部4を被係止部5に係止した状態において、係止部4と被係止部5との間の間に適度の隙間が設けられているとよい。厳密に説明すると、係止部4及び被係止部5のそれぞれにおける折り返しフランジ8の上端の中央位置が前後方向において一致するように係止部4が被係止部5に係止された状態にあるとする(図2(A)参照)。この状態において、係止部4側にある立ち上がり壁7と被係止部5側にある折り返しフランジ8において下方に延びた部分との間、及び、被係止部5側にある立ち上がり壁7と係止部4側にある折り返しフランジ8において下方に延びた部分との間に、遊びに相当する隙間が設けられるのが好ましい。
【0034】
上記のように構成された栽培パレット1では、栽培レーン2(図8(B)参照)にその片側から複数の栽培パレット1を順次投入する際、栽培パレット1の前縁にある係止部4を投入方向前方に向けて栽培レーン2に浮かべ、少し前方に移動させた後、その後縁にある被係止部5に、別の栽培パレット1の係止部4を係止し、少し前方に動かす、という作業を繰り返せばよく、投入作業を効率良く行える。
【0035】
また、栽培後における栽培レーン2の片側からの複数の栽培パレット1の取り出しは、最も手前(片側に最も近い位置)にある栽培パレット1から順次行うことになるが、この取り出しの際に、最も手前の栽培パレット1の前側の係止部4をその前隣の栽培パレット1の被係止部5に係止させたまま後側を持ち上げて(後側が高くなるように傾けて)引き寄せることにより、前隣の栽培パレット1及びこれに連なる他の栽培パレット1全体を片側に引き寄せることができ、この作業を繰り返せば全ての栽培パレット1を効率良く取り出せる。
【0036】
さらに、本例では、栽培パレット1の前後幅が左右幅よりも短い平面視略矩形状を呈するようにしてあることにより、栽培パレット1の前後幅が左右幅以上の場合より、栽培レーン2への投入及びその取出しの際の栽培パレット1の移動距離を短くすることができ、この点でも投入及び取出し作業の効率化を図ることができる。
【0037】
一方、本体部6には、図1に示すように、植物が植栽される培地10を保持するための保持部11を複数設けてある。ここで、保持部11は、本体部6を上下に貫通する貫通孔12(図4図5(A)参照)の縁から上方に突出し、この保持部11に保持する培地10を、貫通孔12に向かって開放し、かつ、貫通孔12よりも上方に位置するように構成する。
【0038】
斯かる構成により、培地10に植栽された植物の根を培養液3に浸けつつ、培地10を培養液3に浸けないようにすることができる。ここで、培地10が培養液3に浸かって水分を含むと、光が当たる上面に藻が発生し易くなり、見栄えが悪くなるが、上記のように培地10を培養液3に浸けないようにすれば、藻の発生を抑制可能である。
【0039】
本例では、図4及び図5(A)に示すように、保持部11を、貫通孔12の縁から立ち上がる立ち上がり部13と、立ち上がり部13の上部から立ち上がり部13の内側に折り返し下方に向かう折り返し部14と、折り返し部14の下部から内向きに延びる鍔部15とで構成し、鍔部15は、貫通孔12に連通する連通孔16の縁を構成する。
【0040】
以上のように栽培パレット1を構成すれば、例えば真空成形等により簡易に栽培パレット1を得ることができる。すなわち、図6(A)、(B)に示すように、栽培パレット1の素材となる板17を加熱した状態で金型18に押し付け、刃部19を有する抜き金型20で栽培パレット1の周縁に連なる余分な部分(外周部分)と連通孔16を塞ぐ部分を切り落とすことにより、栽培パレット1がおおよそ完成する。ここで、図6(A)~(C)において、21はクランプ、22は裏おさえである。
【0041】
なお、切欠き部9については、CNC(コンピュータ数値制御)等を使った後加工で設けてもよいし、切欠き部9を抜くことが可能な金型を用いるようにしてもよい。具体的には、図1(B)に示すように、高さが異なる箇所を抜くことになるので、こうした箇所には斜めの刃を用いることが考えられる。
【0042】
ここで、栽培パレット1を培養液3に浮かべると、培地10に植栽された植物等の重量により、筒状の保持部11の内側に培養液3がある程度入り込む(図4参照)。そして、上述のように、培地10が培養液3に浸かって藻が発生するのを抑えるようにするには、培地10の下面から培養液3の液面までの高低差h1(図4参照)は、少なくとも栽培期間の一部(特には半分以上)において、0mm以上であることが好ましく、より好ましくは5mm以上、さらに好ましくは10mm以上とする。また、高低差h1を大きくし過ぎると、根が長くなり、培養液の吸い上げが悪くなるため、高低差h1は、好ましくは100mm以下、さらに好ましくは50mm以下とする。
【0043】
これに伴い、培地10の下面から本体部6の上面(保持部11の下端)までの高低差h2(図4参照)は、5mm以上が好ましく、より好ましくは10mm以上、さらに好ましくは15mm以上とする。また、高低差h2を大きくし過ぎると、根が長くなり、培養液の吸い上げが悪くなるため、高低差h2は、好ましくは100mm以下、さらに好ましくは50mm以下とする。
【0044】
保持部11の立ち上がり部13の付け根(本体部6の上面から立ち上がり部13にかけての境界部)には、割れ防止、成形容易性、清掃性等に鑑み、Rを持たせるのが好ましい。この場合のRの大きさは0.1mm以上、0.5mm以上、1mm以上等とすることが考えられる。また、Rが大きすぎると浮力が減るので、Rは50mm以下、20mm以下、10mm以下等とすることが考えられる。
【0045】
また、保持部11の上面幅w1(図5(A)参照)は1mm以上が好ましく、2mm以上、3mm以上がより好ましい。上面幅w1が小さ過ぎると、成形型作製が困難となり、金型耐久性も低くなるからである。また、上面幅w1は、100mm以下が好ましく、50mm以下、20mm以下がより好ましい。上面幅w1が大きすぎると浮力が減るからである。そして、保持部11の上面の内外両稜線ともにRを持たせるのが好ましい。
【0046】
折り返し部14の下部(折り返し部14から鍔部15にかけての境界部)にも、割れ防止、成形容易性、清掃性等に鑑み、Rを持たせるのが好ましい。この場合のRの大きさは、0.1mm以上、0.5mm以上、1mm以上等とすることが考えられる。また、Rが大きすぎると浮力が減るので、Rは50mm以下、20mm以下、10mm以下等とすることが考えられる。
【0047】
図6(A)~(D)に示すような真空成形を行う場合、打ち抜きによって連通孔16を形成可能であるが(図6(C)及び(D)参照)、その際、ハンドリング時の創傷原因となるバリが発生するため、連通孔16の縁を構成する鍔部15の先端にはRをつけるのが好ましい。ここで、Rは、金型の形状によって形成するようにしてもよいし、後加工でつけるようにしてもよく、この場合のRの大きさは、鍔部15の厚みの1割以上、2割以上、3割以上が好ましい。
【0048】
また、連通孔16の径は、培地10の下面の最小幅の9割以下が好ましく、8割以下さらには7割以下がより好ましい。連通孔16の径が大きすぎると、培地10が連通孔16から保持部11の下方に抜け落ちてしまうからである。また、連通孔16の径は、培地10の下面の最大幅の1割以上が好ましく、2割以上さらには3割以上がより好ましい。連通孔16の径が小さすぎると、植物が植栽された培地10を保持部11に装着する際に、植物の根を連通孔16から出すのが困難になるからである。
【0049】
ここで、培地10は、スポンジ等の人力で容易に弾性変形する多孔質の物質(本例ではウレタンスポンジ)によって形成され、押し縮められた状態で保持部11の内側に挿入される。すなわち、本例では、図5(A)及び(B)に示すように、培地10は直方体形状であるのに対し、これが装着される保持部11(折り返し部14)の内面は下側に窄まるテーパ状をしている。そして、培地10を保持部11に押し込むと培地10は縮んでおさまるのであって、培地10は、保持部11内面との間の摩擦力で保持されることになる。なお、特に培地10の下部の四つの角は凹み、保持部11内面に大きな圧力を与える。
【0050】
そして、折り返し部14において培地10と接触する部分の直径は、培地10の最大幅よりも小さいのが好ましく、培地10の最大幅の90%以下、80%以下とするのがより好ましい。折り返し部14の直径が大きすぎると、摩擦力が小さく、培地10が外れやすくなるからである。また、折り返し部14の直径は、培地10の最大幅の50%以上、40%以上とするのが好ましい。折り返し部14の直径が小さすぎると、培地10をかなり圧縮しなければならず、それだけ保持部11に培地10を装着するのが難しくなるからである。
【0051】
また、折り返し部14の傾斜角度θ(図5(A)参照)は、しっかりと培地10を抑えるとともに、折り返し部14から培地10を無理なく抜けるという観点から、-10°以上が好ましく、0°以上、10°以上がより好ましい。なお、図5の例では傾斜角度θはプラスであり、折り返し部14が下方に向かって広がる場合に傾斜角度θはマイナスとなる。一方、傾斜角度θが大きすぎると培地10が折り返し部14から抜けやすくなるので、傾斜角度θは45°以下、30°以下が好ましい。
【0052】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0053】
上述のように培養液3に浮かべて用いる栽培パレット1は、その素材の特性や構造によって培養液3に浮かぶものであってもよいし、栽培パレット1とは別に設けた図外の浮き袋等により培養液3に浮かぶものであってもよい。
【0054】
栽培パレット1の光透過率が0.1%以下であれば、栽培パレット1の培地10に保持された植物への光照射に伴う、培養液10への光照射量の低減を図ることができ、培養液10中の藻発生が抑えられる。その理由のために、例えば、栽培パレット1の表面(視認される側の面)の色を白色にし、裏面の色を黒色にしてもよい。
【0055】
図2(A)の例では、被係止部5の折り返しフランジ8を係止部4の折り返しフランジ8よりも下方にまで延ばしているが、これに限らず、被係止部5の折り返しフランジ8を図2(B)や図2(C)に示すように短くしてもよい。
【0056】
また、係止部4の折り返しフランジ8は被係止部5の折り返しフランジ8よりも長く延ばしておくことが好ましいが、係止に不都合がなければ、例えば図2(D)に示すように短くしてもよい。
【0057】
さらに、図2(A)の例は、上述のように、本体部6の盛り上がった周縁の後部(栽培パレット1の後縁)自体を被係止部5としているが、これに限らず、例えば図2(E)に示すように、本体部6の盛り上がった周縁の後部(栽培パレット1の後縁)の後側に被係止部5を設けてもよい。そして、これと同様のことを係止部4についても行えるのであり、本体部6の盛り上がった周縁の前部(栽培パレット1の前縁)の前側に係止部4を設けてもよい。図2(F)の例では、このようにして本体部6の盛り上がった周縁とはそれぞれ別に係止部4、被係止部5を設けている。
【0058】
図3(A)の例では、係止部4を一つのみ設けているが、例えば図3(B)に示すように二つとしてもよく、三つ以上としてもよい。そして、これと同様のことを被係止部5についても行えるのであり、図3(C)の例では、係止部4と被係止部5をそれぞれ二つずつ設けてある。
【0059】
被係止部5に係止部4を係止する際のセンタリングを行い、かつ、係止後に二つの栽培パレット1が左右方向に位置ずれするのを防止するために、図7(A)に示すように、係止部4をガイドするガイド突起23を栽培パレット1の適宜の位置(図示例では本体部6の周縁)に設けるようにしてもよい。図7(B)~(D)は、係止部4を二つ設けた場合のガイド突起23の設け方のバリエーションを示している。
【0060】
図5(C)に示すように、培地10の下部に、鍔部15に係合する係合溝24を設けてもよい。また、図5(D)に示すように、培地10の下部に、鍔部15の下方に回り込む側方突出部25を設けてもよく、培地10の上部に、折り返し部14の上面に係合し、培地10が保持部11の下方に入り込みすぎるのを防止する側方突出部26を設けてもよい。
【0061】
そして、培地10は直方体形状に限らず、円柱状、多角柱状等であってもよく、その寸法は、上下にわたって同一であってもよいし、上下で変化するものであってもよい。
【0062】
また、保持部11は、略円筒状のものに限らず、多角筒状等でもよく、その周方向に複数に分断されていてもよい。
【0063】
栽培パレット1は、二つの栽培パレット1を前後に並べた状態で相互に接続可能とするための接続構造を有していればよく、その接続構造は、図1(A)、図2(A)に示したように、係止部4及び係止部4が係止可能な被係止部5の両方を栽培パレット1の本体部6に一体に設けることによって構成してもよいが、図10(A)に示すように、栽培パレット1の前側及び後側に係脱可能に接続される接続具27を用いて構成してもよい。
【0064】
すなわち、図10(A)に示す例では、栽培パレット1とは別体の接続具27が、前後に隣り合う二つの栽培パレット1に対し、これらを繋ぐように接続される。なお、栽培パレット1において接続具27が接続される部分は、接続具27の接続に適した形状を有していればよく、接続具27の構造等は適宜のものを採用可能であり、例えば園芸用のピンチ(クリップ)を接続具27として用いることも可能である。
【0065】
接続具27の他の例として図11(C)に示す接続具27Aはコの字型をした部材であり、さらに他の例として図11(A)に示す接続具27Bは、二つの接続具27Aの中央どうしを額縁状の把手部27Cで繋いだ形状を呈し、二つの接続具27Aは平面視においてハの字をなすように把手部27Cに一体化されている。そして、図11(A)には、前後に並べた二つの栽培パレット1を、二つの接続具27Bで接続した状態を示してあり、二つの接続具27Bの向きを相互に逆としてある。なお、二つの栽培パレット1を一つあるいは三つ以上の接続具27Bで接続するようにしてもよい。また、栽培パレット1には、図11(A)に示すように、接続具27Bの下方に突出する突出部27Dを差し込む穴1aを設けてあってもよいが、例えば栽培パレット1の周縁が立ち上がっていて、その立ち上がった周縁部に接続具27Bを上方から係止することができる場合は穴1aを設けなくてもよい。
【0066】
ところで、図10(A)に示すように接続具27を用いる場合に、栽培パレット1が例えば発泡スチロールのような脆い素材で形成されていると、栽培パレット1を多数連結した状態で引っ張った際等に、引張強度の低さから栽培パレット1が破損する恐れがある。そこで、このような場合には、図10(B)に示すように、栽培パレット1の例えば本体部6に本体部6よりも引張強度の高い補強部材28を装着し、この補強部材28に接続具27を接続するようにしてもよい。
【0067】
ここで、図11(C)には、補強部材28の具体例として、帯板状の本体の両端部に下方に突出する突出部28aを設けた補強部材28を示してあり、栽培パレット1には、突出部28aを差し込む穴(図示していない)を設けてあってもよいが、二つの突出部28aを例えば栽培パレット1の前後部に係合可能であればその穴は不要とすることができる。また、補強部材28の両端部において突出部28aの上方には、図11(C)に示す接続具27Aの突出部27Dを差し込むための穴28bを設けてある。
【0068】
また、図10(B)、図11(C)の例では、接続具27と補強部材28とを別体としているが、図10(C)、図11(B)に示すように、補強部材28と接続具27とを一体化した接続具29を用いるようにしてもよい。すなわち、図11(B)に示す接続具29は、図11(C)に示す補強部材28の一端側を延長してその先端部に下方に突出する突出部27Dを設けたものである。
【0069】
以上説明した接続具27,29や補強部材28は、栽培パレット1を牽引する時にかかる力0.1~1000kg程度の荷重に耐える必要があり、相応の強度が求められる。1kg/cm2以上、10kg/cm2以上、さらには50kg/cm2以上の強度を有するのが好ましい。また、各素材は、その使用環境を考慮して適宜に選択すればよく、金属、酸化物、プラスチック等、特に限定されないが、軽量性を考慮すればプラスチックが最も好ましいといえる。具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、スチレン、ポリエチレン、酢酸ビニル、ポリプロピレン、ポリアセタール、PMMA、PET、ABS、ポリカーボネートなど、が好ましく、このうち、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS、PET、ポリカーボネートがより好ましい。
【0070】
そして、二つの栽培パレット1を前後に並べた状態で相互に接続可能とするに際し、図10(A)~(C)、図11(A)~(C)に示すように接続具27、29を用いる場合でも、あるいは接続具27を用いず、図2(A)~(F)に示すように栽培パレット1に係止部4及び被係止部5を設ける場合でも、前後に隣り合う栽培パレット1間に隙間は生じないか、比較的小さな隙間しか形成されないので、栽培パレット1の培地10に保持された植物への光照射に伴う、培養液10への光照射量の低減を図ることができ、これは、培養液10中の藻発生を抑える効果に結びつく。
【0071】
図4には、培地10から伸び培養液3に浸った根によって植物が十分に水を吸い上げられる状態である場合を示しているが、培地10からあまり根が出ていない、培養液3にしっかりと浸かった根の本数が少ない、あるいは根が細いといった理由により、植物が十分に水を吸い上げられる状態でない場合は、図12(A)に示すように培地10が培養液3に浸かっていないと、培地10が乾燥し、植物は水を得られなくなり、枯れてしまう恐れがある。そこで、培地10から出ている最長根の長さが30mm以下の場合、好ましくは20mm以下の場合、さらに好ましくは10mm以下の場合、培地10を図12(B)に示すように培養液10に浸すようにすることが好適である。
【0072】
ところで、図12(C)において灰色で示した空間30は、外界との気体流通が制限され、有害ガスが溜まったり、必要な酸素や二酸化炭素が不足したりする場合があり、生育に悪影響を与える可能性がある。これを防ぐために、この空間30を直接外界と接続することも好ましい。具体的には、図13(A)及び(B)に示すように、保持部11の天板部や側面部等に貫通孔31を設けることが考えられる。また、図13(C)に示すように、保持部11どうしを繋ぐ立体的な気体の通路32を形成する場合は、この通路32に槓子孔31を設けてもよく、通路32で繋がった複数の保持部11の一つが、通路32を介して本体部6の周縁部にまで延び、その周縁部側で外界に接続される場合は、貫通孔31を設けなくてもよい。そして、通路32を設けた場合には、本体部6ないし栽培パレット1全体の強度アップをも図ることができる。
【0073】
図1(A)に示す栽培パレット1では、本体部6の周縁部を盛り上げてあるため、使用によりその内側に培養液3等の液が溜まり得るのであり、栽培パレット1の浮力を確保するには、その溜まった液を排出しなければならない。そして、その方法としては、本体部6を傾けることが考えられる。しかし、例えば、周縁部が本体部6の内底面に対して垂直に立ちあがっていると、図14(A)に示すように、本体部6をかなり傾けても全ての液を排出しきれないのであり、このことは作業効率の低下に繋がる。そこで、本体部6を傾けての排液を容易に行えるように、本体部6の周縁部の立ち上がり角度を垂直より10度以上、好ましくは20度以上、更に好ましくは30度以上寝かせることが好適である。なお、こうした角度調整は、本体部6の周縁部の全体にわたって行う必要はなく、例えば、周縁部において、係止部4及び被係止部5となる辺(部分)のみに行うようにしてもよく、この場合、栽培レーン2から栽培パレット1を順次取り出す際に各栽培パレット1は傾き、必然的に排液も同時に行われることになり、従って、作業効率の向上を期待することができる。
【0074】
図1(A)に示す栽培パレット1の形状を変更した例として、図15及び16に示す栽培パレット101(以下、単に栽培パレット101と呼ぶ。)について説明すると、栽培パレット101の基本的な構造は、図1(A)に示す栽培パレット1と略同様である。なお、栽培パレット101のうち、図1(A)に示す栽培パレット1と共通する部分に関しては、図15及び16にて、図1(A)と同じ符号を付けて図示されている。
【0075】
栽培パレット101は、図15及び16に示すように、前縁に係止部4を、後縁に被係止部5を、それぞれ備えている。なお、栽培パレット101において、係止部4が後縁に、被係止部5が前縁に備えられてもよい。
【0076】
また、図16に示すように、栽培パレット101の左右方向における係合部4の途中位置には、第1ずれ防止部4aが設けられている。この第1ずれ防止部4aは、係合部4側に配置された立ち上がり壁7を外側に窪ませて構成される。左右方向における被係合部5の途中位置(厳密には、第1ずれ防止部4aと対応する位置)には、第2ずれ防止部5aが設けられている。第2ずれ防止部5aは、被係合部5側に配置された折り返しフランジ8の下方に向かって延びた部分を内側(立ち上がり壁7が位置する側)に窪ませて構成される。そして、係止部4が被係止部5に上方から被せられて係止されると、第1ずれ防止部4aが第2ずれ防止部5bと係合する。具体的には、図17に示すように、第1ずれ防止部4aをなす窪みが、第2ずれ防止部5aをなす窪みの内部に入り込んで窪み同士が重なり合う。これにより、左右方向における栽培パレット101の位置ずれが防止される。このため、例えば、連結した二つの栽培パレット101のうちの一方を左方(または右方)に引っ張ったとしても、その栽培パレット101がもう一方の栽培パレット101から外れて連結状態が解除されるのを防ぐことができる。
ちなみに、二つの栽培パレット101が連結した状態において、被係合部5及び第2ずれ防止部5aは、係合部4及び第1ずれ防止部4aの下にあって本来は平面視することができないため、図17では図示の都合上、破線で表されている。
【0077】
また、栽培パレット101は、板状の本体部6を有し、本体部6の周縁は盛り上がっている。この盛り上がりは、図1(A)の栽培パレット1と同様、立ち上がり壁7と折り返しフランジ8とで構成されている。また、栽培パレット101の前縁側(周縁の前側)の盛り上がりには、その両端に配置された二つの切欠き部9が設けられている。それぞれの切欠き部9は、折り返しフランジ8が切り欠かれて構成されており、少なくとも折り返しフランジ8の下方に延びた部分が欠落しており、図18に示すように、折り返しフランジ8の外側に延びた部分にまで切欠きが及んでもよい。
【0078】
それぞれの切欠き部9の端は、図1(B)のように栽培パレット101の左右端まで回り込んでおらず、栽培パレット101の左右方向において栽培パレット101の左右端よりも内側に位置する。つまり、右側の切欠き部9の端(厳密には、右端)は、図18に示すように、栽培パレット101の右端よりも若干左寄りに位置する。また、左側の切欠き部9の端(厳密には、左端)は、栽培パレット101の左端よりも若干右寄りに位置する。このように左右それぞれの切欠き部9が、栽培パレット101の左右端に回り込まずに栽培パレット101の前縁の範囲内で収まっていれば、栽培パレット101の左右端まで回り込んだ場合の切欠き部9の切り端(エッジ)が周辺物に引っ掛かるのを避けることができる。
【0079】
また、栽培パレット101の本体部6には、図15及び16に示すように、複数の保持部11が複数設けられている。それぞれの保持部11は、図1(A)に示す栽培パレット1に設けられたものと同様の構成であり、貫通孔12の縁から突出し、立ち上がり部13と折り返し部14と鍔部15とで構成されている。保持部11は、図15及び16に示すように、栽培パレット101の左右方向に一定ピットで配置されて列(保持部列)をなし、保持部列は、栽培パレット11の前後方向に複数設けられている。前後方向において隣り合う2本の保持部列では、図16に示すように、各保持部11が左右方向に千鳥状に配置されてもよく、あるいは左右方向において保持部列間で同じ位置に配置されてもよい。
【0080】
また、図15及び16に示すように、栽培パレット101の本体部6のうち、保持部11の周辺部には、本体部6を上方に隆起させることで構成された補強部6aが設けられている。補強部6aが設けられることで、本体部6の強度(剛性)を高めることができる。本体部6では、隣り合う二つの保持部11の間に、直線状に延びた補強部6aが配置されており、その二つの保持部11が補強部6aによって連結される。ここで、補強部6aは、図13(C)に示された立体的な気体の通路32として形成されたものでもよい。
【0081】
また、図15に示す栽培パレット101では、補強部6aが、保持部11の配置位置を頂点位置とする三角形状の格子をなすように複数配置されている。具体的に説明すると、同一の保持部列において隣り合う二つの保持部11の間に補強部6aが配置される。さらに、隣り合う二つの保持部列のうち、一方の保持部列にある各保持部11を対象保持部としたとき、他方の保持部列の中で対象保持部の斜め前(又は斜め後ろ)に配置された保持部11と対象保持部との間に補強部6aが配置される。このような構成により、本体部6の強度(剛性)を十分に確保することができる。
【0082】
なお、本明細書において以上までに説明してきた変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0083】
1 栽培パレット
1a 穴
2 栽培レーン
3 培養液
4 係止部
4a 第1ずれ防止部
5 被係止部
5a 第2ずれ防止部
6 本体部
6a 補強部
7 立ち上がり壁
8 折り返しフランジ
9 切欠き部
10 培地
11 保持部
12 貫通孔
13 立ち上がり部
14 折り返し部
15 鍔部
16 連通孔
17 板
18 金型
19 刃部
20 抜き金型
21 クランプ
22 裏おさえ
23 ガイド突起
24 係合溝
25 側方突出部
26 側方突出部
27 接続具
27A 接続具
27B 接続具
27C 把手部
27D 突出部
28 補強部材
28a 突出部
28b 穴
29 接続具
30 空間
51 水槽
52 栽培パレット
53 養液槽
54 栽培用プレート
55 引寄せ用バー
56 紐状体
h1 高低差
h2 高低差
w1 上面幅
θ 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18