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▶ ゼァージァン ヤンシェンタン インスティテュート オブ ナチュラル メディケイション カンパニー、リミテッドの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】アンチエイジング化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20230810BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230810BHJP
   A61K 36/185 20060101ALN20230810BHJP
   A61P 17/00 20060101ALN20230810BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
A61K36/185
A61P17/00
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020055582
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021020886
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2020-03-27
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】201910694725.8
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520045491
【氏名又は名称】ゼァージァン ヤンシェンタン インスティテュート オブ ナチュラル メディケイション カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン、シャシャ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ジェンファン
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】瀬良 聡機
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-131546(JP,A)
【文献】特開2001-58920(JP,A)
【文献】国際公開第2018/196482(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンチエイジング化粧品組成物における濃縮カバノキ樹液の使用であって、前記濃縮カバノキ樹液が1.1~4倍の濃縮度を有し、
前記アンチエイジング化粧品組成物はさらに添加される水を含まない、使用。
【請求項2】
濃縮カバノキ樹液を含むアンチエイジング化粧品組成物であって、前記濃縮カバノキ樹液が1.1~4倍の濃縮度を有
前記アンチエイジング化粧品組成物はさらに添加される水を含まない、アンチエイジング化粧品組成物。
【請求項3】
アンチエイジング化粧品組成物の総重量基準で18~98重量%の濃縮カバノキ樹液を含む、請求項に記載のアンチエイジング化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃縮カバノキ樹液、及び濃縮カバノキ樹液を含むアンチエイジング化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カバノキはカバノキ科の落葉樹であり、現在世界中に約100種が存在し、主に北部温帯及び冷温帯に分布している。その中でも、中国には約29種が存在し、主に北東部、北西部及び南西部に分布している。カバノキの木は主に、人の干渉がほとんどなく、産業汚染のない人里離れた山岳地帯で成長している。カバノキ樹液(バーチジュースとも呼ばれる)は、切断されたカバノキ樹皮又は穴を開けた幹からの新鮮な樹液である。カバノキ樹液は無色又は淡黄色で、沈殿物も不純物もなく、淡いカバノキの芳香がある。カバノキ樹液は、糖、アミノ酸、ビタミン、ビオチン、サイトカイニン、微量ミネラル元素、芳香油、ベツリン及びサポニンなどの多数の化合物を含有し、優れたアンチエイジング効果を有する。
【0003】
皮膚の老化は、身体を保護及び調節する皮膚の能力の低下を意味し、したがって、内部及び外部環境の変化に適応できず、皮膚の色及び状態などの全体的な外観のいくらかの変化を示し、その結果、皮膚の弾力性の低下又は消失、皮膚のたるみ、しわの増加、乾燥肌、菲薄化、容易な落屑、かゆみ、くすんだ肌色、つやのなさ、ならびに濃い斑点及びいぼの併発をもたらす。人口の高齢化及び生活水準の継続的な改善に伴い、消費者の抗しわに対する意識は高まり続けており、ますます多くの消費者が、若い外観を維持するための化粧品を使用したがっている。統計によると、アンチエイジング化粧品は、中国の化粧品市場で最も成長が早く、最も有望なカテゴリーになっている。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本発明は、1.05~8倍、好ましくは1.1~4倍、より好ましくは1.2~2倍の濃縮度を有する濃縮カバノキ樹液を提供する。濃縮カバノキ樹液は有意なアンチエイジング効果を有する。
【0005】
本発明に関与するカバノキ樹液は、ベタラアルバ(Betalaalba)、ヨーロッパダケカンバ(Betula pubescens)、ベチュラ・ペンデュラ(Betula Pendula)及びシラカンバ(Betula platyphylla)の4つの変種を含むカバノキ科(Betulaceae)カバノキ属(Betula)から得られる。カバノキ樹液は、雪が溶け始めてから木が葉を出すまで、カバノキの木の幹の基部に人工的に穴を開けて、ここから回収することによって得られる沈殿物も不純物もない無色透明で栄養価の高いカバノキ樹液である。カバノキ樹液は市販されており、そのまま使用されており(この場合、これはまた非濃縮カバノキ樹液、又はカバノキ樹液原液とも呼ばれる)、例えば、Daxinganling Chaoyue Wild Berry Development Co.,Ltdから購入することができる。
【0006】
本発明で使用される濃縮カバノキ樹液は、上記の市販のカバノキ樹液原液製品を濃縮することによって得られる。加熱濃縮、低温及び真空濃縮、ならびに膜濃縮などの濃縮方法は、当技術分野で知られている。本発明では、濃縮が、好ましくは低温凍結濃縮又は膜濃縮プロセスによって行われる。例えば、市販のカバノキ樹液原液を低温乾燥装置に導入し、-40~-70℃に冷却し、低温及び真空濃縮プロセスのために0.1~30Paに真空引きして、様々な濃縮度を有する濃縮カバノキ樹液を得る。
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに、非濃縮カバノキ樹液原液と比較して、濃縮カバノキ樹液が有意に優れた保湿及びアンチエイジング効果を有し、細胞外マトリックス中のI型、III型、IV型、VII型、XVII型コラーゲン、エラスチン及びラミニンの合成を促進し、マトリックスメタロプロテイナーゼMMP-1の発現を低下させ、ヒアルロン酸の産生を促進し、表皮、真皮、及び真皮-表皮接合部の構造的完全性及び機能性を強化し、皮膚の弾力性を改善し、しわを減らすと同時に、皮膚のバリアを改善し、経表皮水分蒸散量(transepidermal water loss)を減らし、抗炎症及び鎮静化の機能を有することができることを発見した。
【0008】
さらに、本発明者らはまた、濃縮カバノキ樹液のアンチエイジング効果が、その濃縮度と単純に線形に関連するのではなく、最初に増加し、次いで、濃縮度が増加するにつれて減少する傾向を示す、すなわち、カバノキ樹液の濃縮度が一定のレベルに達すると、濃縮カバノキ樹液は細胞の増殖及び生存率をある程度抑制し、細胞内外の老化関連遺伝子の発現を抑制することを発見した。したがって、カバノキ樹液の濃縮度を制御することが重要である。本発明では、カバノキ樹液の濃縮度を、約1.05~8倍、好ましくは約1.1~4倍、より好ましくは約1.2~2倍に制御する。
【0009】
別の態様では、本発明は、アンチエイジング化粧品組成物における濃縮カバノキ樹液の使用に関する。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は、(A)上記の濃縮カバノキ樹液を含むアンチエイジング化粧品組成物に関する。
【0011】
好ましい実施形態では、アンチエイジング化粧品組成物が、EDTA塩、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム及びグルコン酸等などのキレート剤を含まない。
【0012】
アンチエイジング化粧品組成物は、さらに添加される水を含まないが、組成物の成分の各々に本質的に含まれる水分を排除しない。
【0013】
濃縮カバノキ樹液の含有量は、アンチエイジング化粧品組成物の総重量基準で約18~98重量%、好ましくは20~95重量%、より好ましくは22~90重量%、最も好ましくは30~90重量%である。
【0014】
成分(A)上記の濃縮カバノキ樹液に加えて、アンチエイジング化粧品組成物は、場合により(B)ビヒクル、有効成分、及び賦形剤を含むスキンケア化粧品組成物で一般的に使用される成分をさらに含んでもよい。成分(B)は当技術分野で既知であり、その種類及び量は必要に応じて当業者が選択することができる。例えば、成分(B)の含有量は、アンチエイジング化粧品組成物の総重量基準で約2~82重量%である。
【0015】
ビヒクルには、例えば、希釈剤、分散剤、又は担体が含まれる。その例としては、それだけに限らないが、エタノール、ジプロピレングリコール、及びブタンジオールが挙げられる。化粧品組成物中のビヒクルの含有量は当技術分野で既知であり、例えば、典型的には成分(B)の総重量基準で0.5~20%である。
【0016】
有効成分には、例えば、皮膚軟化剤、保湿剤、アンチエイジング有効成分等が含まれる。
【0017】
皮膚軟化剤の例としては、それだけに限らないが、オリーブ油、マカダミアナッツ油、スイートアーモンド油、グレープシード油、アボカド油、コーン油、ゴマ油、大豆油、ピーナッツ油、メドウフォーム種子油、ベニバナ種子油、イヌバラ(Rosa canina)果実油、アルガニア・スピノサ(Argania spinosa)核油、ホホバ(Simmondsia chinensis)種子油、ヒマワリ種子油、オオミテングヤシ(Mauritia flexuosa)果実油、スクアラン、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、水素化ポリイソブチレン、イソセタン、イソドデカン、炭酸ジエチルヘキシル、炭酸ジオクチル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、水素化ポリデセン、トリエチルヘキサノイン、ヘキサン酸セチルエチル、ビス-ジエトキシジグリコールシクロヘキサン1,4-ジカルボキシラート、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、エルカ酸オレイル、オクチルドデカノールミリスタート、オクチルドデカノール、ポリジメチルシロキサン、オクチルポリメチルシロキサン、セチルジメチコン、シクロペンタジメチルシロキサンなどが挙げられる。固体皮膚軟化剤の例としては、それだけに限らないが、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール、ベヘニルアルコール、スクアリルアルコール、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、蜜蝋、カンデリラ蝋、カルナウバ蝋、ラノリン、オゾケライト、ホホバ種子ワックス、パラフィンワックス、ミクロクリスタリンワックス、水添コメヌカロウ、水添ココグリセリル、ベヘン酸/エイコサン二酸グリセリル、ミリスチン酸ミリスチル、ビス-ジグリセリルポリアシルアジパート-2、ブチロスパーマム・パーキー(butyrospermum parkii)(シアバター)、及びアストロカリウムムルムル(astrocaryum murumuru)種子脂の1つ又は複数が挙げられる。化粧品組成物中の皮膚軟化剤の含有量は当技術分野で既知であり、例えば、典型的には成分(B)の総重量基準で1~50%である。
【0018】
保湿剤の例としては、それだけに限らないが、グリセロール、ジグリセロール、ブタンジオール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、ポリエチレングリコール-8、ポリエチレングリコール-32、メチルグルセス-10、メチルグルセス-20、PEG/PPG-17/6コポリマー、グリセレス-7、グリセレス-26、グリセリルグルコシド、PPG-10メチルグルコースエーテル、PPG-20メチルグルコースエーテル、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセロール、スクロース、トレハロース、ラムノース、マンノース、ラフィノース、ベタイン、エリスリトール、キシリトール、尿素、乳酸グリセレス-5、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム、ポリグルタミン酸ナトリウム、加水分解スクレロチウムガム、プルラン、トレメラム(tremellam)、及びタマリンド(tamarindus indica)種子多糖体の1つ又は複数が挙げられる。化粧品組成物中の保湿剤の含有量は当技術分野で既知であり、例えば、典型的には成分(B)の総重量基準で1~30%である。
【0019】
アンチエイジング有効成分の例としては、それだけに限らないが、トコフェロール(ビタミンE)、レチノール、パルミチン酸レチニル、加水分解コラーゲン、加水分解エラスチン、アラントイン、酵母エキス、オリザノール、テトラヒドロクルクミン、エラグ酸、ユビキノン、乳清タンパク質、アセチルヘキサペプチド-8、パルミトイルペンタペプチド-4、サリチロイルフィトスフィンゴシン、濃縮カバノキ樹液、シリマリン、セリシン、トコフェリルリン酸ナトリウム、リボ核酸(RNA)、ジペプチドジアミノブチロイルベンジルアミドジアセタート、パルミトイルトリペプチド-5、オリゴペプチド-1、ヘキサペプチド-9、パルミトイルオリゴペプチド、パルミトイルテトラペプチド-7、ブドウ(Vitis vinifera)種子抽出物、プロテカルプス(Pterocarpus marsupium)樹皮抽出物、チャノキ(Camellia sinensis)ポリフェノール、ワイン抽出物、リンゴ種子抽出物、ヨーロッパブナ(Fagus sylvatica)芽抽出物、アフリカバオバブ(Adansonia digitata)抽出物、アルテミア(Artemia)抽出物、イリス・フロレンティナ(Iris florentina)根抽出物、ヘスペリジン、ジンセノシド、タンジン(Salvia miltiorrhiza)抽出物、ニコチンアミド、ウルソール酸、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸ナトリウム、リコペン、コーヒーノキ(Coffea arabica)抽出物、ジペプチド-2、乳酸、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、メマツヨイグサ(Oenothera biennis)油、セラミド、ジパルミトイルヒドロキシプロリン、ヒドロキシステアリン酸、サリチル酸、エルゴチオネイン、リゾレシチン、カルノシン、デカルボキシカルノシンHCL、リポ酸、アデノシン、グリコーゲン、レスベラトロール、フェルラ酸、ビフィズス菌培養溶解緩衝液及び乳酸球菌培養溶解緩衝液の1つ又は複数が挙げられる。化粧品組成物中のアンチエイジング有効成分の含有量は当技術分野で既知であり、例えば、典型的には成分(B)の総重量基準で0.01~10%である。
【0020】
賦形剤には、例えば、乳化剤、増粘剤、防腐剤、芳香剤等が含まれる。
【0021】
乳化剤の例としては、それだけに限らないが、オリーブ油脂肪酸セテアリル、オリーブ油脂肪酸ソルビタン、ポリソルベート-60、ポリソルベート-80、セスキステアリン酸メチルグルコース、セスキステアリン酸PEG-20メチルグルコース、PEG-40硬化ヒマシ油、PPG-26-ブテス-26、ステアリン酸PEG-4ポリグリセリル-2、PEG-60硬化ヒマシ油、ステアレス-2、ステアレス-21、PPG-13-デシルテトラデセス-24、セテアリルグルコシド、ステアリン酸PEG-100、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリルSE、ココグルコシド、セテアレス-25、ステアリン酸PEG-40、ジステアリン酸ポリグリセリル-3メチルグルコース、クエン酸ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ジオレイン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-10、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-6、ミリスチン酸ポリグリセリル-6、ステアリン酸スクロース、及びポリステアリン酸スクロースの1つ又は複数が挙げられる。化粧品組成物中の乳化剤の含有量は当技術分野で既知であり、例えば、典型的には成分(B)の総重量基準で0.5~10%である。
【0022】
増粘剤の例としては、それだけに限らないが、カルボマー、アクリレート及びその誘導体、キサンタンガム、アラビアガム、ポリエチレングリコール-14M、ポリエチレングリコール-90M、スクシニル多糖、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ならびにヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの高分子ポリマーの1つ又は複数が挙げられる。化粧品組成物中の増粘剤の含有量は当技術分野で既知であり、例えば、典型的には成分(B)の総重量基準で0.1~10%である。
【0023】
防腐剤の例としては、それだけに限らないが、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾリジニル尿素、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、クロルフェネシン(chlorophenesin)、デヒドロ酢酸ナトリウム、カプリルヒドロキサム酸、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、p-ヒドロキシアセトフェノン、カプリリルグリコール、カプリル酸グリセリル、ウンデシレン酸グリセリル、カプリル酸ソルビタン、エチルヘキシルグリセロール、及びシャクヤク根抽出物の1つ又は複数が挙げられる。化粧品組成物中の防腐剤の含有量は当技術分野で既知であり、例えば、典型的には成分(B)の総重量基準で0.01~2%である。
【0024】
本発明によるアンチエイジング化粧品組成物は、当技術分野で既知の適切な方法のいずれかによって調製することができる。例えば、溶解タンク、乳化ポット、分散機、移送ポンプ等などの化粧品の分野で一般的に使用される装置を使用して組成物を調製することができる。調製中、水溶性物質を水相溶解ケトルに装入し、油溶性物質を油相溶解ケトルに装入し、2つのケトルをそれぞれ約80℃に加熱する;凝集した原材料の場合、分散機を使用して事前に分散させることができる。溶解が完了したら、油相と水相を乳化ポットに移し、約5~15分間均質化及び乳化する。乳化が完了したら、バルクを室温まで冷却し、場合により芳香剤、防腐剤などを添加し、必要に応じて製品のpHを調整する。
【0025】
上記の調製方法は、製品形態の要件に応じて変更又は調整することができる。アンチエイジング化粧品組成物は、軟膏、クリーム、ミルク、ローション、エッセンス等などの種々の製品形態に調製することができる。
【0026】

本発明を、例を参照して、さらに以下で詳細に説明する。しかしながら、これらの例及び比較例は、本発明を具体的に説明するためにのみ使用され、いかなる様式でも本発明の添付の特許請求の範囲を限定するものと理解されるべきではない。
【0027】
例1:老化関連遺伝子の発現に対するカバノキ樹液原液及び濃縮カバノキ樹液の効果
この例では、老化関連遺伝子の発現に対する、カバノキ樹液原液及び様々な濃縮度を有する濃縮カバノキ樹液の効果を試験し、比較した。
【0028】
1.カバノキ樹液の濃縮
Daxinganling Chaoyue Wild Berry Development Co.,Ltd.から購入した新鮮なカバノキ樹液(シラカバ(Betula Alba)樹液)原液を、低温乾燥装置に導入し、-65℃に冷却し、0.1Paに真空引きし、1.05倍、1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、4倍、8倍の程度までそれぞれ濃縮した。
【0029】
2.試験
実験機器:蛍光定量PCR(Roche)、クリーンベンチ(Su Jing)、COインキュベーター(Binder)、マイクロプレートリーダー(BIO-TEK)、マイクロオシレーター。
実験試薬及び材料:ヒト初代線維芽細胞、6ウェル培養プレート、線維芽細胞用培養培地、RNA抽出キット、逆転写キット、Trizol溶解緩衝液等。
【0030】
線維芽細胞に基づく遺伝子発現の分析ステップは以下の通りであった:
(1)接種:細胞を6ウェル培養プレートに5E5細胞/ウェルの密度で接種し、5%COを含むインキュベーターで、37℃で一晩インキュベートした;
(2)投与:6ウェル培養プレートの細胞播種率が約60%に達したら、各群の試験物質をそこに添加し、試験物質の各群に6複製ウェルを提供した;
(3)試料回収:5%COを含むインキュベーターに、37℃で24時間接種した後、培養培地を廃棄し、各ウェルに1mLのTrizolを添加し、細胞を溶解した後、試料を回収した;
(4)PCR検出:RNAを抽出し、cDNAに逆転写し、蛍光定量PCRによって検出した;
(5)分析:2-ΔΔCT法を使用して結果を計算し、T検定法を統計分析に使用した。
【0031】
試験結果を以下の表に示した。
【表1】
【0032】
上記の結果は、カバノキ樹液原液と比較して、1.1~4倍の濃縮度を有するカバノキ樹液濃縮物が、線維芽細胞に基づくアンチエイジング関連遺伝子の発現レベルを有意に増加させ、特に濃縮度が1.2~2倍の場合に、I型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、VII型コラーゲン、エラスチン及びラミニンの遺伝子発現レベルが全て、カバノキ樹液原液の遺伝子発現レベルよりも有意に高いことを示した。
【0033】
例2:アンチエイジング関連タンパク質の発現に対するカバノキ樹液原液及び濃縮カバノキ樹液の効果
この例では、アンチエイジング関連タンパク質の発現に対する、カバノキ樹液原液及び様々な濃縮度を有する濃縮カバノキ樹液の効果を試験し、比較した。
【0034】
1.カバノキ樹液の濃縮
Daxinganling Chaoyue Wild Berry Development Co.,Ltd.から購入した新鮮なカバノキ樹液(シラカバ(Betula Alba)樹液)原液を、低温乾燥装置に導入し、-65℃に冷却し、0.1Paに真空引きし、1.05倍、1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、4倍、8倍の程度までそれぞれ濃縮した。
【0035】
2.試験
実験機器:クリーンベンチ(Su Jing)、免疫洗浄マイクロプレートウォッシャー(BIO-RAD)、マイクロプレートリーダー(BIO-TEK)、COインキュベーター(Binder)。
実験試薬及び材料:ヒト初代線維芽細胞、12ウェル培養プレート、線維芽細胞用培養培地、様々な指標用のELISAキット等。
【0036】
試験手順は以下の通りとした:
(1)接種:細胞を12ウェル培養プレートに2E5細胞/ウェルの密度で接種し、5%COを含むインキュベーターで、37℃でインキュベートし、培養培地を2日毎に交換した;
(2)投与:12ウェル培養プレートの細胞播種率が約60%に達したら、各群の試験物質をそこに添加し、試験物質の各群に6複製ウェルを提供した;
(3)試料回収:5%COを含むインキュベーターに、37℃で48時間接種した後、培養培地を廃棄し、各ウェルに1mLのTrizolを添加し、細胞を溶解した後、試料を回収した;
(4)検出:指標はELISAキットの決定方法に従って決定した。
(5)分析:T検定法を統計分析に使用した。
【0037】
試験結果を以下の表に示した。
【表2】
【0038】
上記の結果は、カバノキ樹液原液と比較して、1.1~4倍の濃縮度を有するカバノキ樹液濃縮物が、線維芽細胞に基づくアンチエイジング関連タンパク質の発現レベルを有意に増加させ、特に濃縮度が1.2~2倍の場合に、I型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、VII型コラーゲン、エラスチン及びラミニンのタンパク質発現レベルが全て、カバノキ樹液原液の遺伝子発現レベルよりも有意に高いことを示した。
【0039】
例3:組織(組換え3D全層皮膚モデル)に対するカバノキ樹液原液及び濃縮カバノキ樹液の効果
この例では、組換え3D全層皮膚モデルに対する、カバノキ樹液原液及び様々な濃縮度を有する濃縮カバノキ樹液の効果を試験し、比較した。
【0040】
1.カバノキ樹液の濃縮
Daxinganling Chaoyue Wild Berry Development Co.,Ltd.から購入した新鮮なカバノキ樹液(シラカバ(Betula Alba)樹液)原液を、逆浸透循環装置に導入し、操作圧力を0.5~5barで制御し、温度を20~35℃にし、カバノキ樹液が1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍及び4倍の程度までそれぞれ濃縮されるまで循環させた。
【0041】
2.試験方法
実験機器:クリーンベンチ(Su Jing)、インキュベーター(Binder)、UVA及びUVB照射器、マイクロプレートリーダー(BIO-TEK)、凍結ミクロトーム(Leica)。
実験試薬及び材料:3D全層皮膚モデル(実験室で自作)、様々な指標用のELISAキット、MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)キット等。
【0042】
試験手順は以下の通りとした:
(1)3D全層皮膚モデルの構築:3D全層皮膚モデルを、ケラチノサイト及び線維芽細胞を使用して構築した;
(2)モデリング及び投与:モデルが工場を出るとき、すなわち0日目に、SSUV照射処理(UVA:30J/cm;UVB:50mJ/cm)を毎日行い、次いで、一定量の試料を対応するモデルの表面に施用した;モデル対照では、モデル培養培地のみを施用し、試験物質の各群に6複製ウェルを提供し、1日1回、合計4日間施用を行った;
(3)試料回収及び検出:モデリング及び投与後、培養培地を回収し、ELISAキットを使用してMMP-1(マトリックスメタロプロテイナーゼ1)を決定した;試験物質の各群から3つのモデルを取得し、MTTキットを使用して細胞増殖生存率を決定してMTT値を得て;残りの3つのモデルを組織固定及びIHC染色に供して、表皮と真皮との間の接合部のIV型コラーゲンの含有量を決定した;
(4)分析:T検定法を統計分析に使用した。
【0043】
試験結果を以下の表に示した。
【表3】
【0044】
MTT値の結果は、カバノキ樹液原液と比較して、1.1~4倍の濃縮度を有するカバノキ樹液濃縮物が、3D全層皮膚モデルの組織活力を有意に増加させることを示した。同様に、1.1~4倍の濃縮度を有するカバノキ樹液濃縮物を使用した表皮と真皮との間の接合部でのIV型コラーゲンの相対的発現レベルは、カバノキ樹液原液のレベルよりも有意に高かった。MMP-1の結果は、1.1~4倍の濃縮度を有するカバノキ樹液濃縮物がカバノキ樹液原液よりも有意に優れていることを示した。上記の結果はまた、カバノキ樹液の濃縮度が1.1~2倍の場合に、組換え3D全層皮膚モデルの組織活力を有意に改善し、表皮と真皮との間の接合部でIV型コラーゲンの相対的発現レベルを促進し、細胞外マトリックスにおけるMMP-1の発現を減少させることができることを示した。
【0045】
例4:アンチエイジングフェイスクリーム組成物の調製
アンチエイジングフェイスクリーム組成物の配合を以下の表に示した:
【表4】
【0046】
アンチエイジングフェイスクリーム組成物を以下のように調製した:
1.油相:原材料4、6、7、8、9、11、12、13、15及び21を油相ポットに添加し、80℃に加熱し、溶解し、よく混合した;
2.原材料2、16及び18を室温でよく混合した;
3.原材料10、14、17、20を室温でよく混合した;
4.水相:原材料1、3及び5を80℃に加熱し、ステップ2からの混合物を添加し、溶解し、よく混合した;
5.乳化:水相と油相を乳化タンクに添加し、80℃に保持し、3000rpmで5分間均質化及び乳化し、乳化が完了したら、原材料19を添加した;
6.攪拌しながら40℃に冷却する際、ステップ3からの混合物を添加し、よく攪拌し、排出してアンチエイジングフェイスクリーム組成物を得た。
【0047】
この例では、組換え3D全層皮膚モデルに対するアンチエイジングクリーム組成物の効果を試験した。
【0048】
結果は、アンチエイジングクリーム組成物が、組換え3D全層皮膚モデルの組織活力を極めて有意に増加させ、表皮と真皮との間の接合部でIV型コラーゲンの相対的発現レベルを促進し、細胞外マトリックスにおけるMMP-1の発現を減少させることができることを示した。
【0049】
例5:アンチエイジングアイクリーム組成物の調製
アンチエイジングアイクリーム組成物の配合を以下の表に示した:
【表5】
【0050】
アンチエイジングアイクリーム組成物を以下のように調製した:
1.油相:原材料3、5、6、7、9及び11を油相ポットに添加し、80℃に加熱し、溶解し、よく混合した;
2.原材料2及び16を室温でよく混合した;
3.原材料10、14及び17を室温でよく混合した;
4.水相:原材料1、4、8、13、18、19及び20を80℃に加熱し、ステップ2からの混合物を添加し、溶解し、よく混合した;
5.乳化:水相と油相を乳化タンクに添加し、80℃に保持し、3000rpmで5分間均質化及び乳化し、乳化が完了したら、原材料12及び15を添加した;
6.攪拌しながら40℃に冷却する際、ステップ3からの混合物を添加し、よく攪拌し、排出してアンチエイジングアイクリーム組成物を得た。
【0051】
顔半分対照試験法を使用して、20人の対象を製品を使用する前と製品使用の4週間後で以下の通り試験した:
1)Primosを使用して対象の左右の目尻を撮影し、ソフトウェアを使用して、しわの量、しわの面積、しわの深さ等を含むしわのパラメータを計算した;及び
2)Corneometerを使用して、左右の目尻の皮膚水分量を試験した;
【0052】
結果は、20人のうち18人の対象が、目尻の皮膚水分量が有意に増加し、このうち15人が有意に浅く軽い目のしわ、しわ面積の減少、及びしわの量の減少を示した。
【0053】
例6:アンチエイジングエマルジョン組成物の調製
アンチエイジングエマルジョン組成物の配合は以下の通りとした:
【表6】
【0054】
アンチエイジングエマルジョン組成物を以下のように調製した:
1.油相:原材料4、5、6、7、12及び13を油相ポットに添加し、80℃に加熱し、溶解し、よく混合した;
2.原材料2、8及び11を室温でよく混合した;
3.原材料9、10及び16を室温でよく混合した;
4.水相:原材料1、3及び14を80℃に加熱し、ステップ2からの混合物を添加し、溶解し、よく混合した;
5.乳化:水相と油相を乳化タンクに添加し、80℃に保持し、3000rpmで5分間均質化及び乳化し、乳化が完了したら、原材料15を添加した;
6.攪拌しながら40℃に冷却する際、ステップ3からの混合物を添加し、よく攪拌し、排出してアンチエイジングエマルジョン組成物を得た。
【0055】
20人の対象をエマルジョン組成物で4週間処置し、主観的評価を行った。その中で、18人が皮膚水分量の有意な増加及び滑らかで繊細で弾力のある皮膚を報告し;16人がほうれい線及び目のしわの有意な改善を報告した。
【0056】
例7:アンチエイジングエッセンス組成物
アンチエイジングエッセンス組成物の配合を以下の表に示した:
【表7】
【0057】
アンチエイジングエッセンス組成物を以下のように調製した:
1.原材料1、2、3、4、6、12及び13を乳化タンクに添加し、80℃に保持した;
2.原材料5、10及び11を室温でよく混合した;
3.原材料7、8及び9を室温でよく混合した;
4.原材料14を添加し、pHを調整した;
5.攪拌しながら40℃に冷却する際、原材料15及び16ならびにステップ3からの混合物を添加し、よく攪拌し、排出してアンチエイジングエッセンス組成物を得た。
【0058】
顔半分対照試験法を使用して、20人の対象を製品を使用する前と製品使用の8週間後で以下の通り試験した:
1)Primosを使用して対象の左右の目尻を撮影し、ソフトウェアを使用して、しわの量、しわの面積、しわの深さ等を含むしわのパラメータを計算した;
2)Corneometerを使用して、左右の目尻の皮膚水分量を試験した;
3)Tewameterを使用して、左右の頬の経表皮水分蒸散量(TEWL値)を試験した。
【0059】
結果は、20人のうち18人の対象が、目尻の皮膚水分量が有意に増加し、このうち15人が有意に浅く軽い目のしわ、しわ面積の減少、及びしわの量の減少を示した。20人のうち18人の対象が、皮膚水分量が有意に増加し、TEWL値が有意に減少し、このうち16人が有意に浅く軽いほうれい線及び目のしわ、しわ面積の減少、ならびにしわの量の減少を示した。
【0060】
上記の例の技術的解決策は、本発明の好ましい実施形態である。本発明の精神及び原理から逸脱することなく、種々の修正及び変形を行うことができ、これらの修正及び変形も本発明の範囲内とみなされるべきである。