(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】クロスヘッド式大型低速ターボ過給2ストロークユニフロー掃気内燃機関及びこれを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20230810BHJP
F02D 41/14 20060101ALI20230810BHJP
F02D 13/02 20060101ALI20230810BHJP
G01M 15/05 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
F02D45/00 368S
F02D45/00 369
F02D45/00 364A
F02D41/14
F02D13/02 A
F02D13/02 B
G01M15/05
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020186281
(22)【出願日】2020-11-09
【審査請求日】2022-06-13
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】597061332
【氏名又は名称】エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・エスイー・ティスクランド
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ラルセン スカフト ハンス
(72)【発明者】
【氏名】シェル トフト ペータル
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-108869(JP,A)
【文献】特開2008-95539(JP,A)
【文献】特開平9-264124(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0052363(US,A1)
【文献】特開2004-176642(JP,A)
【文献】特開2017-141814(JP,A)
【文献】特開2014-37834(JP,A)
【文献】特開2011-43162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
F02D 41/14
F02D 13/02
G01M 15/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスヘッド式大型低速ターボ過給2ストロークユニフロー掃気内燃機関(9)であって、
排気弁(4)、前記排気弁を作動させる排気弁作動システム(46)、関係するシリンダに第1の燃料を供給する燃料供給システム(30)、関係するシリンダにおける圧力を表すシリンダ個別圧力信号を生成する圧力センサ(42)をそれぞれ備える複数のシリンダ(1)と;
前記シリンダのために掃気を加圧する、排気で駆動するターボ過給器(5)と;
前記シリンダ個別圧力信号を受信するようにされると共に、前記機関の実際の動作条件について、
・ 前記機関によってもたらされるべきトルクを表す共通トルク信号、
・ 前記シリンダにおいて実現されるべきピークシリンダ圧力を表す共通ピーク圧力信号、
・ 前記シリンダにおいて実現されるべき圧縮圧力を表す共通圧縮圧力信号、
を受信するか決定するように構成される制御部(55)と;
を備え、
a)前記制御部は、前記シリンダ個別圧力信号から、特定のシリンダからもたらされるトルクを表すシリンダ個別実トルク信号を導出し、前記シリンダ個別実トルク信号からの前記共通トルク信号の逸脱の関数として、前記共通トルク信号を調節して、シリンダ個別トルク信号を得るように構成されると共に、前記シリンダ個別トルク信号の関数として、該シリンダ個別トルク信号が関係するシリンダに特定の量の燃料を供給するように構成され、
b)前記制御部は、前記シリンダ個別圧力信号から、特定のシリンダからもたらされるピーク圧力を表すシリンダ個別実ピーク圧力信号を導出し、前記シリンダ個別実ピーク圧力信号からの前記共通ピーク圧力信号の逸脱の関数として、前記共通ピーク圧力信号を調節して、シリンダ個別ピーク圧力信号を得るように構成されると共に、前記シリンダ個別ピーク圧力信号の関数として、該シリンダ個別ピーク圧力信号が関係するシリンダへの燃料の供給の開始のタイミングを決定するように構成され、
c)前記制御部は、前記シリンダ個別圧力信号から、特定のシリンダからもたらされる圧縮圧力を表すシリンダ個別実圧縮圧力信号を導出し、前記シリンダ個別実圧縮圧力信号からの前記共通圧縮圧力信号の逸脱の関数として、前記共通圧縮圧力信号を調節して、シリンダ個別圧縮圧力信号を得るように構成されると共に、前記シリンダ個別圧縮圧力信号の関数として、該シリンダ個別圧縮圧力信号が関係するシリンダの排気弁を閉鎖するタイミングを決定するように構成される、
機関。
【請求項2】
燃料先導型又は空気先導型である、請求項1に記載の機関。
【請求項3】
部分的に燃料先導型であり、部分的に空気先導型である、請求項1に記載の機関。
【請求項4】
二元機関である、請求項1から3のいずれかに記載の機関であって、燃料供給システム(30)が少なくとも2つの異なる燃料を扱うように構成され、前記複数のシリンダにはそれぞれ、第1の燃料を供給する少なくとも一つの燃料弁(50)と、第2の燃料を供給する少なくとも一つの燃料弁(50)とが設けられる、機関。
【請求項5】
前記第1の燃料で動作している時には燃料先導型であり、前記第2の燃料で動作している時には空気先導型である、請求項4に記載の機関。
【請求項6】
前記制御部は、要求機関速度及び測定機関速度を受け取るようにされ、前記測定機関速度からの前記要求機関速度の逸脱の関数として燃料指数信号を決定するように構成されるガバナーを備える、請求項1から5のいずれかに記載の機関。
【請求項7】
前記制御部は、前記燃料指数信号を第1の既定のマップに適用することにより、前記燃料指数信号を前記共通トルク信号に変換するように構成される、請求項6に記載の機関。
【請求項8】
前記制御部は、機関の負荷を表す機関負荷信号を計算するように構成される出力計算モジュールを
備える、請求項6又は7に記載の機関。
【請求項9】
前記制御部は、
・ 前記機関負荷信号を第2の既定のマップに適用することにより、前記共通ピーク圧力信号を決定し、及び/又は、
・ 前記機関負荷信号を第3の既定のマップに適用することにより、
前記共通圧縮圧力信号を決定する、
請求項8に記載の機関。
【請求項10】
前記制御部は、燃料指数信号をプロファイル作用期間モジュールに提供するように構成され、前記プロファイル作用期間モジュールは、前記燃料指数信号を共通燃料供給期間信号に変換するように構成される、請求項1から9のいずれかに記載の機関。
【請求項11】
前記制御部は、前記共通燃料供給期間信号を、該共通燃料供給期間信号の前記シリンダ個別トルク信号からの逸脱の関数として調節し、それによって、シリンダ個別燃料供給期間信号を得るように構成される、請求項10に記載の機関。
【請求項12】
前記制御部は、前記シリンダ個別トルク信号の関数として、又は
前記シリンダ個別燃料供給期間信号の関数として、シリンダ個別噴射プロファイルを決定するように構成され、前記燃料供給システムは、前記シリンダ個別噴射プロファイルに従って、該シリンダ個別噴射プロファイルが関係するシリンダの一つ又は複数の燃料弁(50)を開けて該シリンダに燃料を供給する、請求項
11に記載の機関。
【請求項13】
前記燃料供給システムは、前記制御部により決定された、前記特定の量の燃料の供給のタイミングの開始に従って、一つ又は複数の燃料弁を開くことにより、前記特定の量の燃料の供給を開始する、請求項1から12のいずれかに記載の機関。
【請求項14】
前記制御部は、
・ 前記共通トルク信号の調節の方向が他のシリンダに対する調節の方向と同じである場合、前記共通トルク信号の調節の大きさを第1の閾値に制限するし、前記共通トルク信号の調節の方向が他のシリンダに対する調節の方向と反対である場合、前記共通トルク信号の調節の大きさを第2の閾値に制限するように構成され、及び/又は、
・ 前記共通ピーク圧力信号の調節の方向が他のシリンダに対する調節の方向と同じである場合、前記共通ピーク圧力信号の調節の大きさを第1の閾値に制限し、前記共通ピーク圧力信号の調節の方向が他のシリンダに対する調節の方向と反対である場合、前記共通ピーク圧力信号の調節の大きさを第2の閾値に制限するように構成され、及び/又は、
・ 前記共通圧縮圧力信号の調節の方向が他のシリンダに対する調節の方向と同じである場合、前記共通圧縮圧力信号の調節の大きさを第1の閾値に制限し、前記共通圧縮圧力信号の調節の方向が他のシリンダに対する調節の方向と反対である場合、前記共通圧縮圧力信号の調節の大きさを第2の閾値に制限するように構成される、
請求項1から13のいずれかに記載の機関。
【請求項15】
前記第2の閾値は
前記第1の閾値より低い、請求項14に記載の機関。
【請求項16】
請求項
9に記載の機関であって、前記第1~第3の既定のマップのいずれか一つ以上
は機関の工場で決定
される、機関。
【請求項17】
前記共通トルク信号は、全てのシリンダの平均指示シリンダ圧力に対応し、前記シリンダ個別トルク信号は、前記シリンダ個別トルク信号に関連する特定のシリンダの平均指示シリンダ圧力に対応する、請求項1から16のいずれかに記載の機関。
【請求項18】
前記制御部は、シリンダ毎にシリンダ個別シリンダオフセットモジュールを備え、前記シリンダ個別シリンダオフセットモジュールは、該シリンダ個別シリンダオフセットモジュール
に関連する特定のシリンダのために、前記共通トルク信号、前記共通ピーク圧力信号、前記共通圧縮圧力信号のうちの一つ又は複数をオフセットするように構成される、請求項1から17のいずれかに記載の機関。
【請求項19】
前記シリンダ個別シリンダオフセットモジュールは、手動により又は自動で制御される、請求項
18に記載の機関。
【請求項20】
前記制御部は、シリンダバランスを考慮せずに、前記複数のシリンダを個別に制御するように構成される、請求項1から19のいずれかに記載の機関。
【請求項21】
前記制御部は、前記シリンダ個別トルク信号と前記シリンダ個別実トルク信号との差をエラー値として連続的に計算するように構成され、比例項及び積分項に基づいて補正を行うように構成され、
前記制御部は、前記シリンダ個別ピーク圧力信号と前記シリンダ個別実ピーク圧力信号との差をエラー値として連続的に計算するように構成され、比例項及び積分項に基づいて補正を行うように構成され、
前記制御部は、前記シリンダ個別圧縮圧力信号と前記シリンダ個別実圧縮圧力信号との差をエラー値として連続的に計算するように構成され、比例項及び積分項に基づいて補正行うように構成される、
請求項1から20のいずれかに記載の機関。
【請求項22】
前記燃料供給システムは、第1の燃料及び/又は第2の燃料を、関連するシリンダに供給するように構成される、請求項1から21のいずれかに記載の機関。
【請求項23】
クロスヘッド式大型低速ターボ過給2ストロークユニフロー掃気内燃機関(9)を動作させる方法であって、前記機関は、
排気弁(4)、前記排気弁を作動させる排気弁作動システム(46)、関係するシリンダに第1の燃料を供給する燃料供給システム(30)、関係するシリンダにおける圧力を表すシリンダ個別圧力信号を生成する圧力センサ(42)をそれぞれ備える複数のシリンダ(1)と;
前記シリンダのために掃気を加圧する、排気で駆動するターボ過給器(5)と;
を備え、前記方法は、
前記複数のシリンダのうちの特定のシリンダについて、前記シリンダの少なくとも一つの燃焼プロセスパラメータを、シリンダ個別圧縮信号とシリンダ個別セットポイントの関数として、閉ループで制御することを含み、
ここで前記シリンダ個別セットポイントは、全てのシリンダの共通セットポイントからのシリンダ個別のオフセットであ
り、
前記少なくとも一つの燃焼プロセスパラメータは燃料量を含み、前記共通セットポイントは、前記機関によってもたらされるべきトルクを表す共通トルク信号を含む、
方法。
【請求項24】
前記少なくとも一つの燃焼プロセスパラメータは
、
・ 燃料噴射開始タイミング;
・ 排気弁閉鎖タイミング;
の一つ又は複数を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記閉ループ制御は、シリンダバランスを維持することを何ら考慮せずに行われる、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記閉ループ制御は比例項及び積分項に基づく補正を適用する、請求項23から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記共通セットポイントは
、
・ 前記シリンダにおいて実現されるべきピークシリンダ圧力を表す共通ピーク圧力信号、及び/又は、
・ 前記シリンダにおいて実現されるべき圧縮圧力を表す共通圧縮圧力信号、
を含む、請求項
23から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記閉ループ制御は、基準値として、
シリンダ個別のシリンダ圧力信号を使う、請求項23から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記測定されたシリンダ圧力からシリンダ個別平均指示シリンダ圧力が導出され、及び/又は、
前記測定されたシリンダ圧力からシリンダ個別ピーク圧力が導出され、及び/又は、
前記測定されたシリンダ圧力からシリンダ個別圧縮圧力が導出される、
請求項28に記載の方法。
【請求項30】
クロスヘッド式大型低速ターボ過給2ストロークユニフロー掃気内燃機関(9)であって、
排気弁(4)、前記排気弁を作動させる排気弁作動システム(46)、関係するシリンダに第1の燃料を供給する燃料供給システム(30)、関係するシリンダにおける圧力を表すシリンダ個別圧力信号を生成する圧力センサ(42)をそれぞれ備える複数のシリンダ(1)と;
前記シリンダのために掃気を加圧する、排気で駆動するターボ過給器(5)と;
燃焼プロセスパラメータ
をシリンダ個別に制御するように構成される制御部(55)と;
を備え、
前記燃焼プロセスパラメータは、燃料量、燃料噴射開始タイミング、排気弁閉鎖タイミング、シリンダ個別トルク、シリンダ個別ピーク圧力、シリンダ個別圧縮圧力の少なくとも1つを含み、
前記制御部は、
前記燃焼プロセスパラメータのための共通のセットポイント又はシリンダ個別のセットポイントをシリンダ個別に調節することを周期的に行うことによって、前記機関の動作条件の関数として前記複数のシリンダのそれぞれの
前記燃焼プロセスパラメータを個別に制御し、
前記燃焼プロセスパラメータのシリンダ個別の調節の、複数のシリンダに亘る平均を計算し、
前記燃焼プロセスパラメータの1つのサイクルにおいて、前記調節することを、前記計算した平均プラス又はマイナス既定最大逸脱
値の範囲に限定する、
ように構成される、機関。
【請求項31】
前記制御部は、前記計算した平均プラス又はマイナス前記既定最大逸脱のウィンドウを定義し、一つのサイクルにおける前記調節することを、前記ウィンドウ内の調節に制限するように構成される、請求項30に記載の機関。
【請求項32】
前記ウィンドウは、前記計算した平均から、正方向に第1の範囲を有し、負方向に第2の範囲を有する、請求項31に記載の機関。
【請求項33】
前記ウィンドウは前記燃焼プロセスパラメータの専用である、請求項32に記載の機関。
【請求項34】
前記正の範囲は第1の既定の大きさを有し、前記負の範囲は第2の既定の大きさを有する、請求項32又は33に記載の機関。
【請求項35】
前記制御部は、前記燃焼プロセスパラメータの前記シリンダ個別の調節の前記複数のシリンダに亘る平均を、1つのサイクルにおいて計算するか、又は、前記燃焼プロセスパラメータの周期的調節の複数のサイクルに亘る平均を計算するように構成される、請求項30から34のいずれかに記載の機関。
【請求項36】
前記燃焼プロセスパラメータの調節は、単一のサイクルのための調節である、請求項30から35のいずれかに記載の機関。
【請求項37】
前記燃焼プロセスパラメータのシリンダ個別のセットポイントは、前記燃焼プロセスパラメータの共通セットポイントからのオフセットである、請求項30から
36のいずれかに記載の機関。
【請求項38】
前記機関の前記動作条件は、機関速度
、シリンダピーク圧力、シリンダ燃焼圧力、シリンダ平均指示圧力、掃気圧力、燃料の種類、即時湿度、環境温度、の一つ又は複数である、請求項30から
37のいずれかに記載の機関。
【請求項39】
クロスヘッド式大型低速ターボ過給2ストロークユニフロー掃気内燃機関(9)を動作させる方法であって、前記機関は、
排気弁(4)、前記排気弁を作動させる排気弁作動システム(46)、関係するシリンダに第1の燃料を供給する燃料供給システム(30)をそれぞれ備える複数のシリンダ(1)と;
前記シリンダのために掃気を加圧する、排気で駆動するターボ過給器(5)と;
を備え、前記方法は:
燃焼プロセスパラメータ
をシリンダ個別に制御すること
、ただし前記燃焼プロセスパラメータは、燃料量、燃料噴射開始タイミング、排気弁閉鎖タイミング、シリンダ個別トルク、シリンダ個別ピーク圧力、シリンダ個別圧縮圧力の少なくとも1つを含む、前記制御することと;
前記燃焼プロセスパラメータのための共通のセットポイント又はシリンダ個別のセットポイントをシリンダ個別に調節することを周期的に行うことによって、前記機関の動作条件の関数として前記複数のシリンダのそれぞれの
前記燃焼プロセスパラメータを個別に制御することと;
前記シリンダ個別の調節の平均を計算することと;
前記計算した平均の周りにウィンドウを定めることと;
前記燃焼プロセスパラメータの1つのサイクルにおいて、前記調節することを、前記計算した平均プラス又はマイナス既定最大逸脱
値の範囲に限定することと;
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示される事項は、クロスヘッド式大型低速ターボ過給2ストローク多気筒ユニフロー掃気内燃機関、及びこれを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロスヘッド式大型低速ターボ過給2ストロークユニフロー掃気内燃機関は、典型的には、大型船舶の推進システムや、発電プラントの原動機として用いられる。
【0003】
現代においてこのタイプの機関は完全に電子制御化されている。すなわち、機関の動作が所与の動作条件に適合するように、燃料の導入/噴射及び排気弁の開閉の両方が、機関の動作中に電子制御システムによって調節されうる。
【0004】
要求される全ての性能を満たすことを確実にするため、機関は工場において較正を受ける。これらの性能とは、例えば、出力や燃料効率、排出物、騒音や振動レベル、信頼性である。
【0005】
それによって、出荷されると機関は適切に動作し、性能要件を満たすことができる。しかし時間が経つにつれ、摩耗や破損によって、機関(少なくともシリンダ) が、出荷時の仕様から外れてくる。すなわち、再較正が必要になる。
【0006】
近年、ターボ過給式大型2ストローク圧縮着火機関において、代替燃料を使用できるようにしたいという要望が起こっている。そのような燃料としては、天然ガスや石油ガス、メタノール、石炭スラリー、水と油の混合燃料、石油コークス等がある。
【0007】
これらの代替燃料のいくつかは、コストを低減し、排出物を削減する可能性を有する。
【0008】
大型低速ユニフロー掃気ターボ過給2ストローク内燃機関は、典型的には、大型の外洋航行貨物船の推進のために使用される。このため、信頼性が極めて重要になる。代替燃料を使用する、この型の機関は、未だ、比較的最近になって開発されたと言えるものであり、ガス燃料運転の冗長性は、従来の燃料による運転に比して、信頼性は低いレベルにとどまっている。二元燃料機関の稼働率は、ガス燃料で動作する場合、設計によって低く抑えられている。これは、コストを削減するためである。例えば、ガス燃料システムの冗長性は低い。もし、1つのシリンダでガス燃料の供給に障害が検出されると、全てのシリンダが停止する。従来の燃料(燃料油)を用いるモードでは、障害によって影響を受けるシリンダのみが停止する。従来の燃料による運転は、信頼性を保証する。従って、代替燃料から従来型の燃料へ素早く切り替えることができることは重要である。なぜなら、従来型燃料は、いざという時に頼るべき安全な手段であると考えられるからである。
【0009】
従って、二種の燃料を用いることができる既存の大型低速2ストロークディーゼル機関は全て、例えばガス燃料のような代替燃料運転のための燃料システムと、燃料油のような従来型燃料運転のための別の燃料システムとを有し、従来型燃料のみで最大出力で運転できるようにされている。
【0010】
代替燃料で運転している時に問題が発生した場合、例えば、ガス燃料で運転している時にガスの圧力が低下した場合などは、従来型燃料による運転に、素早く切り替えることができることが必要である。コストの低減及び排出物の削減のためには、従来型燃料から代替燃料へと素早く簡単に戻ることができることも、同様に重要である。
【0011】
しかし、燃料の種類が変わると、燃焼プロセスは同じのままとはいかず、機関は、別な燃料のために、再較正される必要がある。例えば、燃料噴射のタイミングや長さ、排気弁の閉弁タイミング、掃気圧の制御、圧縮圧力、シリンダ最大圧力(ピーク圧力)、平均指示圧力(Mean Indicated Pressure)などは、使用する燃料の種類によって、調節される必要がある。これは、新しいプロセス収支が達成されるべきであることを意味する。それは特に、典型的なガス燃料システムにより届けられるガス燃料の性質(発熱量)は、大きな変動を示しうるからである。
【0012】
既知の機関制御システムは、人の介入がなければ、満足のいく形でこの再較正を達成することができないでいる。また既知の制御システムは、燃料の切り替えの後に適切な動作条件を達成するためには、非常に長い時間がかかる。又は、燃料の切り替えの後、すぐに適切な動作条件を達成するためには、正確性に欠けている。
【0013】
更に、大型低速ターボ過給式2ストロークユニフロー掃気内燃機関は、工場において、機関の各シリンダの燃焼プロセスが、機関の動作条件の全範囲にわたって設計基準に従って動作するように、較正される。工場においては、シリンダはバランスされている(負荷バランスされている)。すなわち、個々のシリンダ最大(ピーク)圧力又は平均指示圧力(負荷)は、可能な限り等しくされている。または、望みうる最良の負荷バランスを確保するために、ピーク圧力の代わりに、個々のシリンダの平均指示圧力が可能な限り等しくされる。
【0014】
しかし工場を出ると、時間と共に、摩耗や破損が機関及び各シリンダに異なる影響をもたらす。使用しているうちに、シリンダの燃焼プロセスは工場出荷時の仕様から外れていき、シリンダバランスは低下する。このような変化は、時間と共に性能の低下や排出物の増加をもたらすため、ある時点において制御システムの再較正を行い、性能の回復を試みねばならない。
【0015】
大型2ストローク内燃機関の既知の制御システムは、そのような再較正のために、人間の介在を必要とする。しかし、手作業が介在することは、専門的な技術を要することを意味する。なぜなら、たった一つのパラメータ(例えば排気弁の閉鎖角)が、他の様々なパラメータに影響を及ぼすからである。通常、機関のオペレータは、人間の介在を要するような再較正を遂行するスキルを有していない。このため現実には、そのような再較正が行われることは、通常はない。再較正が行われないことは、燃料消費量が増加し、排出物も増加する結果につながってしまう。
【0016】
非特許文献1には、全てのシリンダに共通の負荷セットポイントが提供される閉ループ燃料制御システムを有する機関が開示されている。この機関においては、個々のシリンダについてシリンダ圧力が測定され、それに従って、燃料噴射タイミング及び排気弁の閉弁が調節される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【文献】Rolle S., Wiesmann A. Combustion Control and Monitoring of two-stroke engines, Wartsila Technical Journal, 2011
【開示】
【0018】
このような背景の下、本発明の目的は、上述の問題を解決するか、又は少なくとも緩和する、大型低速ターボ過給型2ストロークユニフロー掃気内燃機関及びこれを動作させる方法を提供することである。
【0019】
第1の側面によれば、この課題は、次のような、クロスヘッド式大型低速ターボ過給2ストロークユニフロー掃気内燃機関を提供することによって達成される。この機関は、
排気弁、前記排気弁を作動させる排気弁作動システム、関係するシリンダに第1の燃料を供給する燃料供給システム、関係するシリンダにおける圧力を表すシリンダ個別圧力信号を生成する圧力センサをそれぞれ備える複数のシリンダと;
前記シリンダのために掃気を加圧する、排気で駆動するターボ過給器と;
前記シリンダ個別圧力信号を受信するようにされると共に、前記機関の実際の動作条件について、
・ 前記機関によってもたらされるべきトルクを表す共通トルク信号、
・ 前記シリンダにおいて実現されるべきピークシリンダ圧力を表す共通ピーク圧力信号、
・ 前記シリンダにおいて実現されるべき圧縮圧力を表す共通圧縮圧力信号、
を受信するか決定するように構成される制御部と;
を備え、
a)前記制御部は、前記シリンダ個別圧力信号から、特定のシリンダからもたらされるトルクを表すシリンダ個別実トルク信号を導出し、前記シリンダ個別実トルク信号からの前記共通トルク信号の逸脱の関数として、前記共通トルク信号を調節して、シリンダ個別トルク信号を得るように構成されると共に、前記シリンダ個別トルク信号の関数として、該シリンダ個別トルク信号が関係するシリンダに特定の量の燃料を供給するように構成され、
b)前記制御部は、前記シリンダ個別圧力信号から、特定のシリンダからもたらされるピーク圧力を表すシリンダ個別実ピーク圧力信号を導出し、前記シリンダ個別実ピーク圧力信号からの前記共通ピーク圧力信号の逸脱の関数として、前記共通ピーク圧力信号を調節して、シリンダ個別ピーク圧力信号を得るように構成されると共に、前記シリンダ個別ピーク圧力信号の関数として、該シリンダ個別ピーク圧力信号が関係するシリンダへの燃料の供給の開始のタイミングを決定するように構成され、
c)前記制御部は、前記シリンダ個別圧力信号から、特定のシリンダからもたらされる圧縮圧力を表すシリンダ個別実圧縮圧力信号を導出し、前記シリンダ個別実圧縮圧力信号からの前記共通圧縮圧力信号の逸脱の関数として、前記共通圧縮圧力信号を調節して、シリンダ個別圧縮圧力信号を得るように構成されると共に、前記シリンダ個別圧縮圧力信号の関数として、該シリンダ個別圧縮圧力信号が関係するシリンダの排気弁を閉鎖するタイミングを決定するように構成される。
【0020】
シリンダ毎に燃焼プロセスのパラメータを個別に調節することにより、すなわち、シリンダ個別トルク信号、シリンダ個別ピーク圧力信号、シリンダ個別圧縮圧力信号を、フィードバックループの中で作ることにより、機関の摩耗や破損、又はその他の原因が、シリンダの動作条件を変化させるような事態が生じても、個々のシリンダを、もともとの仕様に正しく従って動作させることが可能になる。同時に、機関のシリンダの燃焼プロセスの制御を、機関全体のシリンダバランス又はシリンダ負荷バランスを考えずに、行うことが可能になる。機関の制御のかかる方法は、シリンダバランス(負荷バランス)に拘わる必要なしに、個々のシリンダを、適切に動作させることを可能にする。
【0021】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記機関は燃料先導(Fuel-led)型であり、少なくとも要素a)を有する。
【0022】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記機関は空気先導(Air-led)型であり、少なくとも要素c)を有する。
【0023】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記機関は部分的に燃料先導型で、部分的に空気誘導型であり、少なくとも要素a)及び要素c)を有する。
【0024】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記機関は二元機関であり、燃料供給システムは少なくとも2つの異なる燃料を扱うように構成され、個々のシリンダには、第1の燃料を供給する少なくとも一つの燃料弁と、第2の燃料を供給する少なくとも一つの燃料弁とが設けられる。
【0025】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記機関は、前記第1の燃料で動作している時には燃料先導型であり、前記第2の燃料で動作している時には空気先導型である。
【0026】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記制御部は、要求機関速度及び測定機関速度を受け取るようにされ、前記測定機関速度からの前記要求機関速度の逸脱の関数として燃料指数(Fuel index)信号を決定するように構成される調速装置(ガバナー)を備える。
【0027】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記制御部は、燃料指数信号を第1の既定のマップに適用することにより、前記燃料指数信号を共通トルク信号に変換するように構成される。
【0028】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記制御部は、機関の負荷を表す機関負荷信号を計算するように構成される出力計算モジュールを備え、前記出力計算モジュールは、好ましくは前記燃料指数信号及び前記測定機関速度を受け取るようにされる。
【0029】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記制御部は次のように構成される。
・ 前記機関負荷信号を第2の既定のマップに適用することにより、前記共通ピーク圧力信号を決定する。及び/又は、
・ 前記機関負荷信号を第3の既定のマップに適用することにより、前記共通圧縮圧力を決定する。
【0030】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記制御部は、燃料指数信号をプロファイル作用期間(profile duration)モジュールに提供するように構成され、前記プロファイル作用期間モジュールは、前記燃料指数信号を共通燃料供給期間信号に変換するように構成される。
【0031】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記制御部は、前記共通燃料供給期間信号を、該共通燃料供給期間信号の前記シリンダ個別トルク信号からの逸脱の関数として調節し、それによって、シリンダ個別燃料供給期間信号を得るように構成される。
【0032】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記制御部は、前記シリンダ個別トルク信号の関数として、又は前記シリンダ個別燃料噴射期間信号の関数として、シリンダ個別噴射プロファイルを決定するように構成され、前記燃料供給システムは、個々のシリンダに、そのシリンダの前記シリンダ個別噴射プロファイルに従って一つ又は複数の燃料弁を開けて燃料を供給する。
【0033】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記燃料供給システムは、前記制御部により決定された、シリンダへの燃料の供給の開始のタイミングに従って、一つ又は複数の燃料弁を開くことにより、該シリンダへの燃料の供給を開始する。
【0034】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記制御部は次のように構成される。
・ 前記共通トルク信号の調節の方向が他のシリンダに対する調節の方向と同じである場合、前記共通トルク信号の調節の大きさを第1の閾値に制限する。前記共通トルク信号の調節の方向が他のシリンダに対する調節の方向と反対である場合、前記共通トルク信号の調節の大きさを第2の閾値に制限する。
及び/又は、
・ 前記共通ピーク圧力信号の調節の方向が他のシリンダに対する調節の方向と同じである場合、前記共通ピーク圧力信号の調節の大きさを第1の閾値に制限する。前記共通ピーク圧力信号の調節の方向が他のシリンダに対する調節の方向と反対である場合、前記共通ピーク圧力信号の調節の大きさを第2の閾値に制限する。
及び/又は、
・ 前記共通圧縮圧力信号の調節の方向が他のシリンダに対する調節の方向と同じである場合、前記共通圧縮圧力信号の調節の大きさを第1の閾値に制限する。前記共通圧縮圧力信号の調節の方向が他のシリンダに対する調節の方向と反対である場合、前記共通圧縮圧力信号の調節の大きさを第2の閾値に制限する。
【0035】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記第2の閾値は前記第1の閾値よりも低い。
【0036】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記第1~第3の既定のマップの少なくともいずれかは、好ましくは、該当する機関の試験に基づいて、又は同一若しくは同等の機関の試験に基づいて、機関の工場で決定される。前記第1~第3の既定のマップの少なくともいずれかは、好ましくは、アルゴリズム及び/又はテーブルを備える。
【0037】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記共通トルク信号は、全てのシリンダの平均指示シリンダ圧力(mean indicated cylinder pressure)に対応し、前記シリンダ個別トルク信号は、関連する特定のシリンダの平均指示シリンダ圧力に対応する。
【0038】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記制御部は、シリンダ毎にシリンダ個別シリンダオフセットモジュールを備え、前記シリンダ個別シリンダオフセットモジュールは、関連する特定のシリンダのために、前記共通トルク信号、前記共通ピーク圧力信号、前記共通圧縮圧力信号のうちの一つ又は複数をオフセットするように構成される。
【0039】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記シリンダ個別オフセットモジュールは、手動又は自動で制御される。
【0040】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記制御部は、シリンダバランスを考慮せずに、前記機関の各シリンダを個別に制御するように構成される。
【0041】
前記第1の側面の実装形態の一例において、
前記機関が構成a)を有する場合、前記制御部は、前記シリンダ個別トルク信号と前記シリンダ個別実トルク信号との差をエラー値として連続的に計算するように構成され、比例項及び積分項に基づいて補正を行うように構成され、
前記機関が構成b)を有する場合、前記制御部は、前記シリンダ個別ピーク圧力信号と前記シリンダ個別実ピーク圧力信号との差をエラー値として連続的に計算するように構成され、比例項及び積分項に基づいて補正を行うように構成され、
前記機関が構成c)を有する場合、前記制御部は、前記シリンダ個別圧縮圧力信号と前記シリンダ個別実圧縮圧力信号との差をエラー値として連続的に計算するように構成され、比例項及び積分項に基づいて補正を行うように構成される。
【0042】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記燃料供給システムは、第1の燃料及び/又は第2の燃料を、関連するシリンダに供給するように構成される。
【0043】
第2の側面によれば、クロスヘッド式大型低速ターボ過給2ストロークユニフロー掃気内燃機関を動作させる方法が提供される。ここで前記機関は、
排気弁、前記排気弁を作動させる排気弁作動システム、関係するシリンダに第1の燃料を供給する燃料供給システム、関係するシリンダにおける圧力を表すシリンダ個別圧力信号を生成する圧力センサをそれぞれ備える複数のシリンダと;
前記シリンダのために掃気を加圧する、排気で駆動するターボ過給器と;
を備え、前記方法は、
前記複数のシリンダのうちの特定のシリンダについて、前記シリンダの少なくとも一つの燃焼プロセスパラメータを、シリンダ個別圧縮信号とシリンダ個別セットポイントの関数として、閉ループで制御することを含み、
ここで前記シリンダ個別セットポイントは、全てのシリンダの共通セットポイントからのシリンダ個別のオフセットである。
【0044】
シリンダ毎に燃焼プロセスのパラメータを個別に調節することにより、すなわち、シリンダ個別トルク信号、シリンダ個別ピーク圧力信号、シリンダ個別圧縮圧力信号を、フィードバックループの中で作ることにより、機関の摩耗や破損、又はその他の原因が、シリンダの動作条件を変化させるような事態が生じても、個々のシリンダを、もともとの仕様に正しく従って動作させることが可能になる。同時に、機関のシリンダの燃焼プロセスの制御を、機関全体のシリンダバランス又はシリンダ負荷バランスを考えずに、行うことが可能になる。機関の制御のかかる方法は、シリンダバランス(負荷バランス)に拘わる必要なしに、個々のシリンダを、適切に動作させることを可能にする。
【0045】
前記第2の側面の実施形態の一例において、前記少なくとも一つの燃焼プロセスパラメータは次の値の一つ又は複数を含む。
・ 燃料量;
・ 燃料噴射開始タイミング;
・ 排気弁閉鎖タイミング。
【0046】
前記第2の側面の実施形態の一例において、前記閉ループ制御は、シリンダバランスを維持することを何ら考慮せずに行われる。
【0047】
前記第2の側面の実施形態の一例において、前記閉ループ制御は、比例項及び積分項に基づく補正を適用する。
【0048】
前記第2の側面の実施形態の一例において、前記共通セットポイントは、
・ 前記機関によってもたらされるべきトルクを表す共通トルク信号、及び/又は、
・ 前記シリンダにおいて実現されるべきピークシリンダ圧力を表す共通ピーク圧力信号、
・ 及び/又は、前記シリンダにおいて実現されるべき圧縮圧力を表す共通圧縮圧力信号である。
【0049】
前記第2の側面の実施形態の一例において、前記閉ループ制御は、基準値として、シリンダ毎に測定されたシリンダ圧力を使う。
【0050】
前記第2の側面の実施形態の一例において、シリンダ個別平均指示シリンダ圧力は、測定されたシリンダ個別シリンダ圧力から導出され、シリンダ個別ピーク圧力は、測定されたシリンダ圧力から導出され、シリンダ個別圧縮圧力は、測定されたシリンダ個別圧力から導出される。
【0051】
第3の側面によれば、クロスヘッド式大型低速ターボ過給2ストロークユニフロー掃気内燃機関を動作させる方法が提供される。ここで前記機関は、
排気弁、前記排気弁を作動させる排気弁作動システム、関係するシリンダに第1の燃料を供給する燃料供給システム、関係するシリンダにおける圧力を表すシリンダ個別圧力信号を生成する圧力センサをそれぞれ備える複数のシリンダと;
前記シリンダのために掃気を加圧する、排気で駆動するターボ過給器と;
前記シリンダ個別圧力信号を受信するようにされると共に、前記機関の実際の動作条件について、
・ 前記機関によってもたらされるべきトルクを表す共通トルク信号、
・ 前記シリンダにおいて実現されるべきピークシリンダ圧力を表す共通ピーク圧力信号、
・ 前記シリンダにおいて実現されるべき圧縮圧力を表す共通圧縮圧力信号、
を受信するか決定するように構成される制御部と;
を備える。そして前記方法は、
a)前記シリンダ個別圧力信号から、特定のシリンダからもたらされるトルクを表すシリンダ個別実トルク信号を導出し、前記シリンダ個別実トルク信号からの前記共通トルク信号の逸脱の関数として、前記共通トルク信号を調節して、シリンダ個別トルク信号を得て、前記シリンダ個別トルク信号の関数として、対応するシリンダに燃料を供給すること;及び/又は、
b)前記シリンダ個別圧力信号から、特定のシリンダからもたらされるピーク圧力を表すシリンダ個別実ピーク圧力信号を導出し、前記シリンダ個別実ピーク圧力信号からの前記共通ピーク圧力信号の逸脱の関数として、前記共通ピーク圧力信号を調節して、シリンダ個別ピーク圧力信号を得て、前記シリンダ個別ピーク圧力信号の関数として、対応するシリンダへの燃料の供給の開始のタイミングを決定すること;及び/又は、
c) 前記シリンダ個別圧力信号から、特定のシリンダからもたらされる圧縮圧力を表すシリンダ個別実圧縮圧力信号を導出し、前記シリンダ個別実圧縮圧力信号からの前記共通圧縮圧力信号の逸脱の関数として、前記共通圧縮圧力信号を調節して、シリンダ個別圧縮圧力信号を得て、前記シリンダ個別圧縮圧力信号の関数として、対応するシリンダの排気弁を閉鎖するタイミングを決定すること;
を含む。
【0052】
第4の側面によれば、次のような、クロスヘッド式大型低速ターボ過給2ストロークユニフロー掃気内燃機関が提供される。この機関は、
排気弁、前記排気弁を作動させる排気弁作動システム、関係するシリンダに第1の燃料を供給する燃料供給システム、関係するシリンダにおける圧力を表すシリンダ個別圧力信号を生成する圧力センサをそれぞれ備える複数のシリンダと;
前記シリンダのために掃気を加圧する、排気で駆動するターボ過給器と;
シリンダ個別の圧力信号と、全てのシリンダの共通セットポイント、又は、前記共通セットポイントからのシリンダ個別のオフセットであるシリンダ個別セットポイントとの関数として、シリンダ毎に、一つ又は複数のシリンダ燃焼パラメータを閉ループで制御するように構成される制御部とを備える。
【0053】
第5の側面によれば、次のような、クロスヘッド式大型低速ターボ過給2ストロークユニフロー掃気内燃機関が提供される。この機関は、
排気弁、前記排気弁を作動させる排気弁作動システム、関係するシリンダに第1の燃料を供給する燃料供給システム、関係するシリンダにおける圧力を表すシリンダ個別圧力信号を生成する圧力センサをそれぞれ備える複数のシリンダと;
前記シリンダのために掃気を加圧する、排気で駆動するターボ過給器と;
燃焼プロセスパラメータ、燃料量、燃料噴射開始タイミング、排気弁閉弁タイミングの少なくとも一つを、特定のシリンダのために制御するように構成される制御部と;
を備え、前記制御部は、
燃焼プロセスパラメータのための共通のセットポイント又はシリンダ個別のセットポイントをシリンダ個別に調節することを周期的に行うことによって、前記機関の動作条件の関数として前記複数のシリンダのそれぞれの燃焼プロセスパラメータを個別に制御し、
前記燃焼プロセスパラメータのシリンダ個別の調節の、複数のシリンダに亘る平均を計算し、
前記燃焼プロセスパラメータの1つのサイクルにおいて、前記調節することを、前記計算した平均プラス又はマイナス既定最大逸脱に限定する、
ように構成される。
【0054】
リミッター機能を設けることで、特定のシリンダ個別調節が、望ましくない範囲を超えないようにされる。また、通常の条件においては大きな調節を許し、エラーにより生じる非常に大きな調節は抑制される。このため、ダメージを負うことや運転の中断が生じることが避けられる。
【0055】
前記第5の側面の実装形態の一例において、前記制御部は、前記計算した平均プラス又はマイナス前記既定最大逸脱のウィンドウを定義し、一つのサイクルにおける前記燃焼プロセスパラメータのシリンダ個別の調節を、前記ウィンドウ内の調節に制限するように構成される。
【0056】
前記第5の側面の実装形態の一例において、前記ウィンドウは、前記計算した平均から、正方向に第1の範囲を有し、負方向に第2の範囲を有する。
【0057】
前記第5の側面の実装形態の一例において、前記ウィンドウは、燃焼プロセスパラメータに固有である。
【0058】
前記第5の側面の実装形態の一例において、前記正の範囲は第1の既定の大きさを有し、前記負の範囲は第2の既定の大きさを有し、前記第1の既定の大きさは、前記第2の既定の大きさと同じでなくてもよい。
【0059】
前記第5の側面の実装形態の一例において、前記制御部は、燃焼プロセスパラメータの複数のシリンダに亘るシリンダ個別の調節の、1つのサイクルにおける平均か、前記燃焼プロセスパラメータの周期的調節の複数のサイクルに亘る平均を計算するように構成される。
【0060】
前記第5の側面の実装形態の一例において、前記燃焼プロセスパラメータの調節は、単一のサイクルのための調節である。
【0061】
前記第5の側面の実装形態の一例において、前記少なくとも一つの燃焼プロセスパラメータは次の値の一つ又は複数を含む。
・ 燃料量;
・ 燃料噴射開始タイミング;
・ 排気弁閉鎖タイミング。
【0062】
前記第5の側面の実装形態の一例において、前記燃焼プロセスパラメータのシリンダ個別のセットポイントは、前記燃焼プロセスパラメータの共通セットポイントからのオフセットである。
【0063】
前記第5の側面の実装形態の一例において、前記機関の前記動作条件は、機関速度、機関負荷、シリンダピーク圧力、シリンダ圧縮圧力、シリンダ平均指示圧力、掃気圧力、燃料の種類、即時湿度、環境温度、の一つ又は複数である。
【0064】
第6の側面によれば、クロスヘッド式大型低速ターボ過給2ストロークユニフロー掃気内燃機関を動作させる方法が提供される。ここで前記機関は、
排気弁、前記排気弁を作動させる排気弁作動システム、関係するシリンダに第1の燃料を供給する燃料供給システムをそれぞれ備える複数のシリンダと;
前記シリンダのために掃気を加圧する、排気で駆動するターボ過給器と;
を備え、前記方法は:
燃焼プロセスパラメータ、燃料量、燃料噴射開始タイミング、排気弁閉弁タイミングの少なくとも一つを、シリンダ個別に制御することと;
燃焼プロセスパラメータのための共通のセットポイント又はシリンダ個別のセットポイントをシリンダ個別に調節することを周期的に行うことによって、前記機関の動作条件の関数として前記複数のシリンダのそれぞれの燃焼プロセスパラメータを個別に制御することと;
前記シリンダ個別の調節の平均を計算することと;
前記計算した平均の周りにウィンドウを定めることと;
前記燃焼プロセスパラメータの1つのサイクルにおいて、前記調節することを、前記計算した平均プラス又はマイナス既定最大逸脱に限定することと;
を含む、方法。
【0065】
本明細書の開示に従う燃料弁や機関や更なる目的や特徴、利点、性質は、以下の詳細説明により、更に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0066】
本明細書の以下の詳細説明部分においては、図面に示される例示的な実施形態を参照して発明がより詳細に説明される。
【
図1】ある例示的実施形態に従う大型2ストロークディーゼル機関の正面図である。
【
図2】
図1の大型2ストローク機関の側面図である。
【
図3】
図1の大型2ストローク機関の略図表現である。
【
図4】
図1の機関の制御部の実施例のブロック図又は回路図である。
【
図5】
図1の機関の制御部の別の実施例のブロック図又は回路図である。
【
図6】
図1の機関の制御部の更に別の実施例のブロック図又は回路図である。
【詳細説明】
【0067】
以下の詳細説明では、実施例の大型低速2ストロークターボ過給式(ディーゼル)内燃機関を参照して、圧縮着火内燃機関が説明される。 Figs.
図1-
図3は、ターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関を描いている。この機関は、クランクシャフト8及びクロスヘッド9を有する。
図3は、ターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関を、その吸気システム及び排気システムと共に略図により表現したものである。実施例において、機関は直列に6本のシリンダ1を有する。ターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関は通常、直列に配される4から14のシリンダを有する。これらのシリンダは機関フレーム11に担持される。またこのような機関は、例えば、外洋航行船の主機関や、発電所において発電機を動かすための固定型の機関として用いられることができる。機関の全出力は、例えば、1000kWから110000kWでありうる。
【0068】
この実施例におけるディーゼル(圧縮着火)機関又はオットー(火花着火)機関は、2ストロークユニフロー掃気型機関であり、シリンダ1の下部領域に掃気ポート18が設けられ、シリンダ1の頂部中央には排気弁が配される。掃気は、掃気受け2を通じて、各シリンダ1の掃気ポート18へと導かれる。シリンダ1内のピストン10が掃気を圧縮すると、シリンダカバー22内の燃料噴射弁50.51を通じて燃料が噴射されて燃焼が発生し、排気が生成される。排気弁4が開くと、排気は、シリンダ1に設けられる排気ダクトを通って排気受け3へと流れ、さらに第1の排気管19を通ってターボ過給器5のタービン6へと進む。そこから排気は、第2の排気管25を通ってエコノマイザ20へ流れ、さらに出口21から大気中へと放出される。タービン6は、シャフトを介してコンプレッサ7を駆動する。コンプレッサ9には、空気取り入れ口12を通じて外気が供給される。コンプレッサ7は、圧縮された掃気を、掃気受け2に繋がっている掃気管13へと送り込む。
【0069】
管13の掃気は、掃気を冷却するためのインタークーラー14を通過する。ある実施例において、コンプレッサを出た掃気はおよそ200℃であり、インタークーラーによって36℃から80℃に冷却される。
【0070】
冷却された掃気は、電気モーター17により駆動される補助ブロワ16を通る。補助ブロワ16は、ターボ過給器5のコンプレッサ7が掃気受け2のために十分な圧力を提供できない場合、すなわち機関が低負荷又は部分負荷である場合に、掃気流を圧縮する。機関の負荷が高い場合は、ターボ過給器のコンプレッサ7が、十分に圧縮された掃気を供給することができるので、補助ブロワ16は、逆止め弁15によってバイパスされる。
【0071】
ピストンは、ピストンロッドによって、クロスヘッド9に連結されている。クロスヘッド9は、連接棒によってクランク軸8に連結されている。クランク軸8の回転速度や位置は、センサ40によって計測される。センサ40により計測されたエンジン速度信号は、例えば信号線を通じて制御部55に送られる。
【0072】
各シリンダ1には排気弁4が一つ設けられる。また、2つ以上の燃料弁50と、圧力センサ42も設けられる。圧力センサ42によるシリンダ個別の圧力信号も、制御部55に送られる。
【0073】
実施例の機関は二元機関であり、この実施例において、2つ又はそれ以上の燃料弁50が第1の燃料専用であり、2つ又はそれ以上の燃料弁50は第2の燃料専用である。別の例では、2つ又はそれ以上の燃料弁が、2種類の燃料のために共有される。
【0074】
燃料弁50は制御部55によって制御される。例えば制御部55は、燃料弁がいつ開き、どのくらい長く開弁状態にあるかを決定する。実施例によってはまた、燃料弁50の開弁のプロファイルを決定する。燃料弁50は燃料供給システム30の一部である。燃料弁50の開閉の信号は流体信号又は油圧信号でありうる。燃料弁50の開閉の信号が流体信号、例えば油圧信号である実施例において、制御部55は、電子制御弁又はポンプに電子信号を送り、油圧信号は、電子制御弁又はポンプから燃料弁50に送られるようにされてもよい。
【0075】
実施例によっては、燃料供給システム30は、少なくとも2つの異なる種類の燃料を供給できるように構成される。実施例によっては、これら2種類の燃料のうちの一つは燃料油であり、例えば重油やメタノールである。実施例によっては、これら2種類の燃料のうちの一つはガス燃料であり、例えば石油ガスや天然ガスである。実施例によっては、前記ガス燃料は、気体の状態でシリンダに導入又は噴射される。実施例によっては、前記ガス燃料は、液体の状態でシリンダに導入又は噴射される。
【0076】
実施例によっては、前記機関は燃料先導型(fuel-led)である。燃料先導型又はガス先導型(gas-led)の燃焼プロセスにおいて、計量される燃料量は、内燃機関のデューティーポイントと、内燃機関の出力及び/又は速度の特定の目標値との関数として決定される。燃料先導型燃焼プロセスは、内燃機関の可変速度運転中の特定のアプリケーションであり、単独運転の内燃機関の、機関始動中や、内燃機関がアイドリング状態である時の、アプリケーションである。機関制御系は、出力制御部及び/又は速度制御部を備える。ディーゼルプロセスに従ってのみ動作する機関は、燃料が液体燃料であるかガス燃料であるかに関わらず、燃料先導型機関である。通常、燃料は、上死点(TDC)の直後に噴射され、噴射されるとすぐに着火する。このため、燃料先導型機関において、燃料噴射量は最も大事な制御パラメータである。
【0077】
実施例によっては、前記機関は空気先導型(air-led)である。空気先導型の燃焼プロセスにおいて、計量される燃料量は、例えば、内燃機関のデューティーポイントと、空燃比の特定の目標値との関数として決定される。これは、ノッキング(異常早期燃焼)の問題や、特定の掃気圧(特に特定の圧縮圧力)を避けるためである。このため機関制御系は通常、圧縮圧力制御部を有する。オットープロセスに従ってのみ動作する機関は、燃料の種類に関わらず、空気先導型機関である。このため、空気先導型機関において、圧縮空気圧は最も大事な制御パラメータである。
【0078】
実施例によっては、前記機関は空気先導型と燃料先導型の混合型である。このような機関の例は、圧縮ストロークの前に燃焼室に第1の量の燃料を導入し、上死点(TDC)付近で追加の第2の量の燃料を燃焼室に噴射する機関である。燃焼室において、第2の量の燃料の噴射は、第1の量の燃料と第2の量の燃料の両方の着火を開始させる。大型2ストローク機関において、TDC付近の噴射は、通常TDCの直後に行われる。この機関において、噴射される燃料量と圧縮圧力の両方が、最も重要な制御パラメータであり、これらのパラメータのどちらが重要であるかは、機関の負荷や速度に依存する。
【0079】
ある実施例において、前記機関は二元機関であり、第1の燃料で動作している時には燃料先導型であり、第2の燃料で動作している時には空気先導型である。
【0080】
各排気弁4には排気弁アクチュエータ46が提供される。実施例によっては、排気弁アクチュエータ46は、制御部55からの電子信号によって命令を受ける油圧アクチュエータである。
【0081】
シリンダ1の燃焼プロセスの一つ又は複数の燃焼プロセスパラメータは、制御部55により制御される。前記燃焼プロセスパラメータは例えば、燃料量、燃料噴射/導入の開始タイミング、排気弁閉弁タイミングの少なくとも一つである。前記燃焼プロセスパラメータである燃料量は、機関からもたらされるトルクに関連するシリンダ1の燃焼に相関する。前記燃焼プロセスパラメータである燃料噴射開始タイミングは、関連するシリンダのピーク圧力に相関する。(これは特に、ディーゼル原理に従って動作する機関に当てはまる。燃料が「噴射」されるというよりは「導入」される、オットー原理に基づく機関には、それほどでもない。)前記燃焼プロセスパラメータである排気弁閉弁タイミングは、関連するシリンダの圧縮圧力に相関する。
【0082】
図4は、制御部55の第1の実施例を表している。ある実施例において、制御部55は、機関制御部及び複数のシリンダ制御部を備える。
【0083】
制御部55は、速度のセット(例えば所望の機関速度)を、例えば船舶のブリッジから受信する。制御部55はまた、センサ40から機関速度の信号を受け取る。そして、所望の機関速度と計測した機関速度とを比較し、速度逸脱信号を得る。制御部55は、速度逸脱信号が提供されるガバナー(調速装置)を備える。ガバナーは、計測した機関速度からの所望の機関速度の逸脱の関数として、燃料指数を決定するように構成される。すなわちガバナーは、速度逸脱信号の関数として燃料指数を決定するように構成される。燃料指数信号は、所望の機関速度を達成するために導入/噴射されるべき燃料量を示す信号である。噴射されるべき燃料量は、機関によってもたらされるトルクの大きさに直接相関する。
【0084】
制御部55は、燃料指数を第1の既定のマップに適用することにより、燃料指数を共通トルク信号に変換するように構成される、指数・共通トルク信号変換モジュールへの情報を有する。共通指示トルク/指数は、共通平均指示圧力に比例すると考えることができる。
【0085】
なお本明細書において、「共通」との表現は、全てのシリンダに適用されうる、との意味である。
【0086】
前記第1の既定のマップは試験から得られる。例えば、機関が開発及び/又は組み立てられる工場の試験設備で得られる。実施例によっては、前記第1の既定のマップは、燃料指数を共通指示トルクに関係させるテーブル又はアルゴリズムを有する。
【0087】
シリンダ1のそれぞれについて、1つのシリンダ制御部が関連付けられる。共通トルク信号は、各シリンダ制御部に送られる。
【0088】
制御部55は、機関の負荷を示す機関負荷信号を計算するように構成される出力計算モジュール(負荷計算部)を備える。実施例によっては、機関負荷信号は、最大機関負荷(例えば最大連続定格)に対する実際の機関負荷を表す。出力計算モジュールは、前記指示信号及び計測した機関速度を受信する。実施例によっては、負荷計算モジュールは、燃料指数に機関速度を乗じ、また、その結果に既定の係数を乗じる。この既定の係数は試験又は経験値から得られ、相対機関負荷(すなわち最大連続定格のパーセンテージ)に変換するために乗じられる。
【0089】
制御部55は、機関負荷信号を第2の既定のマップに適用することにより共通ピーク圧力を決定し、また機関負荷信号を第3の既定のマップに適用することにより共通圧縮圧力信号を決定するように構成される、機関運転モードモジュールを備える。
【0090】
これら第2及び第3の既定のマップも試験から得られる。例えば、機関が開発及び/又は組み立てられる工場の試験設備で得られる。実施例によっては、第2の既定のマップは、ピーク圧力を機関負荷に関係付けるテーブル又はアルゴリズムを備え、第3の既定のマップは、共通圧力を機関負荷に関係付けるテーブル又はアルゴリズムを有する。第2及び第3の既定のマップは、他のパラメータを幾つか考慮に入れてもよい。例えば環境圧力、環境温度、機関速度等のパラメータを考慮に入れてもよく、フリクションロス等のためのオフセットを含んでもよい。
【0091】
共通ピーク圧力信号及び共通圧縮圧力信号は、全てのシリンダ制御部に送られてもよい。
【0092】
各シリンダ制御部は、自身が制御するシリンダ1の圧力センサ42から、当該シリンダについて計測されたシリンダ圧力を受信する。
【0093】
シリンダ制御部は、自身が制御するシリンダ1の圧力センサ42から受信したシリンダ個別圧力信号から、当該シリンダの実際の最大圧力(シリンダ個別実最大圧力)、及び、当該シリンダの実際の平均指示圧力(シリンダ個別実平均指示圧力)を計算するように構成される。そして、シリンダ個別実平均指示圧力は、シリンダ個別実トルクとして表される。
【0094】
好ましくは、シリンダ個別実圧力値は、算術平均から決定される。特に好ましくは、複数の連続する圧力測定(例えば、複数の機関サイクルに亘る圧力測定)のメジアンから決定される。機関サイクルの回数としては、例えば5から50回、好ましくは約10回であってもよい。
【0095】
良好な信号品質を得るために、すなわち高い制御パフォーマンスを得るために、シリンダからのシリンダ個別圧力信号は、5~50回の機関サイクル(好ましくは7~15回の燃焼サイクル)に亘って当該シリンダ個別に測定された圧力信号を、時間的にフィルタリングしたものである。
【0096】
従って、シリンダ個別実圧力は、当該シリンダ1の圧力センサ42による圧力測定の統計的評価の結果である。
【0097】
前記制御部は、共通トルク信号を、該共通トルク信号のシリンダ個別実トルク信号からの逸脱の関数として調節し、シリンダ個別トルク信号を得るように構成される。またシリンダ制御部は、自身が制御するシリンダ1について、シリンダ個別トルクとシリンダ個別実トルクとの差をエラー値として連続的に(又は間欠的に)計算し、比例項及び積分項に基づく補正を適用し(PI制御)、シリンダ個別トルク信号を得て、当該シリンダについての閉ループ制御を形成する。
【0098】
実施例によっては、制御部55は、共通トルクの調節量、共通ピーク圧力の調節量、共通圧縮圧力の調節量の1つ以上を受信するように構成される。この実施例において、制御部55は、全てのシリンダの共通トルクの調節量の平均、全てのシリンダの共通ピーク圧力の調節量の平均(mean,average)、全てのシリンダの圧縮圧力の調節量の平均(mean,average)の、1つ又は複数を決定するように構成される。
【0099】
この実施例において、制御部55は、各シリンダ制御部に、シリンダ個別トルク、シリンダ個別ピーク圧力、シリンダ個別圧縮圧力の1つ以上について、1ウィンドウ内の最大調節量を設定することを許す。ここで前記ウィンドウは、それぞれの平均値プラス又はマイナス既定の大きさの調節量で定義される。例えば、上記調節ウィンドウは、計算された平均値プラス又はマイナス5barである。この例において、全てのシリンダのシリンダ個別ピーク圧力の調節量の平均値が2barであるとき、個々のシリンダ制御部は、シリンダ個別ピーク圧力の調節量を、-3barから7barの間で変化させることを許される。
【0100】
リミッターは、共通トルク信号の最大補正量に制限を設ける。全てのシリンダ1において、共通トルク信号の補正が同じ方向を向いている場合、上記リミッターは、最大補正量を第1の閾値まで許可する。共通トルク信号の補正が複数のシリンダ1の間で同じ方向を向いていない場合、上記リミッターは、最大補正量を、前記第1の閾値より低い第2の閾値まで許可する。それによって、誤った信号がシステムを不安定化させることを防ぐ。大きな補正は、全てのシリンダ1が同じような変化を有する場合に許可される。
【0101】
このように制御部55は、シリンダ個別のトルク信号の調節量の、全てのシリンダに亘る平均値を計算し、1つのサイクルにおけるトルク信号のシリンダ個別の調節量を、計算した平均値プラス又はマイナス既定の最大逸脱値に制限する。
【0102】
制御部55は、前記計算した平均値プラス又はマイナス前記既定最大逸脱値のウィンドウを定義し、トルク信号の1つのサイクルにおけるシリンダ個別の調節を、前記ウィンドウ内の調節に制限するように構成される。このウィンドウは、前記計算したトルク信号の調節量の平均値から、正方向に第1の範囲を有し、負方向に第2の範囲を有する。このウィンドウはトルク信号用のものであり、また他の燃焼プロセスパラメータ(ピーク圧力及び圧縮圧力)用のものである。正の範囲は第1の既定の大きさを有し、負の範囲は第2の既定の大きさを有する。これらの大きさは、例えば、工場における試験運転から決められることができる。前記ウィンドウは、通常生じうる大きな調節に対応できるように十分な広くあるべきである。しかし、エラー(例えばセンサ信号のエラー等)によって生じる可能性のある調節は排除できるように、十分狭くあるべきである。
【0103】
制御部55は、トルク信号についてのシリンダ個別の調節量の複数のシリンダに亘る平均値を、一つのサイクルに亘って、又は、トルク信号の周期的な調節の複数のサイクルに亘って、計算するように構成される。実施例によっては、燃焼プロセスパラメータの調節は、単一のサイクルのための調節である。
【0104】
噴射プロファイルモジュールは、シリンダ個別のトルク信号を、シリンダ個別の燃料弁プロファイル信号に変換する。燃焼プロファイルモジュールは、シリンダ個別トルク信号を第4の既定のマップに適用することにより、シリンダ個別トルク信号を噴射プロファイルに関係付ける。この第4のマップは、試験から得られたアルゴリズム及び/又はルックアップテーブルを有する。シリンダ個別燃料弁プロファイルは、対応するシリンダの燃料弁50に送られ、燃料弁50はそのプロファイルに従って開閉するように、すなわちそのプロファイルに従う燃料弁開弁長さ及びプロファイル形状を実現するように、指示される。燃料弁50は、当該燃料弁50が関連するシリンダ1のシリンダ制御部の燃料弁プロファイル信号に応答して、当該シリンダ1にシリンダ個別の燃料量を供給する。
【0105】
シリンダ制御部は、共通ピーク圧力信号を、共通ピーク圧力信号のシリンダ個別実ピーク圧力信号からの逸脱の関数として調節し、それによってシリンダ個別ピーク圧力信号を得るように構成される。シリンダ制御部は、自身が制御するシリンダ1について、シリンダ個別ピーク圧力とシリンダ個別実圧力との差をエラー値として連続的に(又は間欠的に)計算し、比例項及び積分項に基づく補正を適用し(PI制御)、シリンダ個別ピーク圧力信号を得て、当該シリンダについての閉ループ制御を形成する。
【0106】
トルク信号について前に説明したのと同様に、ピーク圧力についてのリミッターは、共通ピーク圧力信号に対する最大補正量に制限を設ける。全てのシリンダ1において、共通ピーク圧力信号の補正が同じ方向を向いている場合、上記リミッターは、最大補正量を第1の閾値まで許可する。共通ピーク圧力信号の補正が複数のシリンダ1の間で同じ方向を向いていない場合、上記リミッターは、最大補正量を、前記第1の閾値より低い第2の閾値まで許可する。それによって、誤った信号がシステムを不安定化させることを防ぐ。大きな補正は、全てのシリンダ1が同じような変化を有する場合に許可される。
【0107】
ピーク圧力モジュールは、シリンダ個別のピーク圧力信号を、シリンダ個別の燃料噴射タイミング信号に変換する。ここでピーク圧力モジュールは、シリンダ個別ピーク圧力信号を第5の既定のマップに適用する。第5の既定のマップは、ピーク圧力を、燃料導入/噴射の開始に関係付けるアルゴリズム及び/又はルックアップテーブルを備えてもよい。第5の既定のマップのこのアルゴリズム及び/又はルックアップテーブルは、試験から得られてもよい。
【0108】
シリンダ個別燃料噴射タイミング信号は、対応するシリンダの燃料弁50に送られ、いつ開弁を開始すべきかを燃料弁50に指示する。すなわち、燃料導入/噴射を開始するタイミング(角度)を指示する。燃料弁50は、当該燃料弁50が関連するシリンダ1のシリンダ制御部の噴射タイミング信号に応答して、当該シリンダ1にシリンダ個別の燃料量の導入/噴射を開始する。
【0109】
シリンダ制御部は、共通圧縮圧力信号を、共通圧縮圧力信号のシリンダ個別実圧縮圧力信号からの逸脱の関数として調節し、それによってシリンダ個別圧縮圧力信号を得るように構成される。シリンダ制御部は、自身が制御するシリンダ1について、シリンダ個別圧縮圧力とシリンダ個別実圧縮圧力との差をエラー値として連続的に(又は間欠的に)計算し、比例項及び積分項に基づく補正を適用し(PI制御)、シリンダ個別圧縮圧力信号を得て、当該シリンダについての閉ループ制御を形成する。
【0110】
トルク信号及びピーク圧力信号について前に説明したのと同様に、圧縮圧力についてのリミッターは、共通圧縮圧力信号に対する最大補正量に制限を設ける。全てのシリンダ1において、共通圧縮圧力信号の補正が同じ方向を向いている場合、上記リミッターは、最大補正量を第1の閾値まで許可する。共通圧縮圧力信号の補正が複数のシリンダ1の間で同じ方向を向いていない場合、上記リミッターは、最大補正量を、前記第1の閾値より低い第2の閾値まで許可する。それによって、誤った信号がシステムを不安定化させることを防ぐ。大きな補正は、全てのシリンダ1が同じような変化を有する場合に許可される。
【0111】
圧縮圧力モジュールは、シリンダ個別の圧縮圧力信号を、シリンダ個別の排気弁閉弁タイミング信号に変換する。ここで圧縮圧力モジュールは、シリンダ個別圧縮圧力信号を第6の既定のマップに適用する。第6の既定のマップは、圧縮圧力を、排気弁4の閉弁に関係付けるアルゴリズム及び/又はルックアップテーブルを備えてもよい。第6の既定のマップのこのアルゴリズム及び/又はルックアップテーブルは、試験から得られてもよい。
【0112】
シリンダ個別排気弁閉弁タイミング信号は、対応するシリンダの燃料弁50に送られ、いつ排気弁4を閉じるべきかを排気弁アクチュエータ46に指示する。すなわち、排気弁4を閉じるタイミング(角度)を指示する。シリンダ1の排気弁4は、当該シリンダ1のシリンダ制御部の排気弁閉弁タイミング信号に応答して閉じられる。
【0113】
実施例によっては、シリンダ個別トルク信号(平均指示圧力)の調節量、シリンダ個別ピーク圧力の調節量、シリンダ個別、シリンダ個別圧縮圧力の調節量は、制御部55に送信され、平均平均指示圧力調節量、平均ピーク圧力調節量、平均圧縮圧力調節量が計算される。調節は周期的に行われる。例えば、機関回転の1回毎、2回毎、5回毎、10回毎、等に行われてもよい。全てのシリンダについての燃焼プロセスパラメータの平均値も周期的に計算される。好ましくは、調節の周期と同じ周期で計算される。そして制御部55は、個々の燃焼プロセスパラメータの上記平均値に基づいて、個々の燃焼プロセスパラメータのシリンダ個別の調節量に制限を設ける。この制限は、計算した平均値プラス又はマイナス既定の最大逸脱値の形であってもよい。プラス方向の既定の最大逸脱値は、マイナス方向の既定の最大逸脱値と異なってもよい。
【0114】
このため、ウィンドウは、個々の燃焼プロセスパラメータの平均値の周りに形成される。上記既定のプラスの逸脱値及びマイナスの逸脱値は、燃焼プロセスパラメータ毎に定められる。トルク、ピーク圧力、圧縮圧力の調節量の平均値が大きい場合、大きな調節量が許されるように、積分器ワインドアップは可変にされてもよい。
【0115】
シリンダ制御部は、シリンダバランスを考慮せずに、すなわちシリンダバランスを維持することを何ら考慮せずに、機関のシリンダ1を個別に制御するように構成される。このため、各シリンダ1は、シリンダ個別平均指示圧力(トルク)についてシリンダ個別のフィードバックループ制御を提供することによって、及び/又は、シリンダ個別ピーク圧力についてシリンダ個別のフィードバックループ制御を提供することによって、及び/又は、シリンダ個別圧縮圧力についてシリンダ個別のフィードバックループ制御を提供することによって、設計仕様に従って動作する。
【0116】
全てのシリンダ1が設計仕様に従って動作するため、シリンダバランスを考慮する必要がない。この特徴は特に、二元燃料機関にとって有益であり、燃料の種類を変更した後に有益である。従来の機関においては、燃料の変更の後に機関を適切に運転するには、燃料の変更の後に手動で再較正を行う必要があった。本願に開示される制御によれば、燃料の変更後の手動による再較正の必要はなくなる。特に、ピーク圧力及びトルクは、燃料油から二次燃料(例えばガス)への変更中に、非常に重要である。これらが開示される制御によって自動的に調節され/良好に保たれる。
【0117】
しかし、状況によっては、一つ又は複数のシリンダが、設計仕様とは異なるように動作しなければならない事がありうる。例えば、シリンダ1が、シリンダライナのスカッフィング(焼き付き)の危険が著しく高いと判断される状態になることがある。これは、シリンダの潤滑が十分でないときに起こることがある。スカッフィングが生じているか、負荷を下げなければスカッフィングが生じるであろうと予測されるとのサインが認められるシリンダについては、負荷を下げる必要があるだろう。
【0118】
そこで、
図5の実施例に示される制御部の例では、各シリンダ制御部は、関係するシリンダ1のために、シリンダ個別のシリンダオフセットモジュールを備える。この実施例において、既に説明した又は図示した構成や特徴と同様の構成及び特徴については、前と同じ符号を付している。この実施例における制御部55は、シリンダ個別オフセットモジュールが追加されていることを除いて、
図4の実施例のものと本質的に同一である。
【0119】
シリンダ個別オフセットモジュールは、関連する特定のシリンダ1のために、共通トルク信号、共通ピーク圧力信号、共通圧縮圧力信号のうちの一つ又は複数をオフセットするように構成される。このオフセットは、運転担当者により導入されてもよいし、自動的に導入されてもよい。例えば、制御部55又はシリンダ制御部に特定のシリンダ1のためのオフセット設定を促すようなセンサからの信号に基づいて、自動的に導入されてもよい。例えば、特定のシリンダにおけるノッキングがセンサによって検出されてもよい。そのようなノッキングセンサに応答して、制御部55は特定のシリンダの圧縮圧力を低下させ、燃焼室の温度を低下させてノッキングのリスクを減少させるようにしてもよい。このため、シリンダ個別オフセットは、特定のシリンダに対して導入される。更にこの実施例において、制御部55は、燃料量を少なくすることによって空燃比を上げるように構成される。これは、噴射される燃料量のためのオフセットをシリンダ個別のオフセットを通じて適用することによって行われる。
【0120】
このためシリンダオフセットモジュールは、シリンダ個別トルクセットポイント、シリンダ個別ピーク圧力セットポイント、シリンダ個別圧縮圧力セットポイントを出力する。これらのシリンダ個別セットポイントは、
図4の実施例と同様に調節される。すなわち、各シリンダのシリンダ個別実トルク、シリンダ個別実ピーク圧力、シリンダ個別実圧縮圧力との差の関数として調節され、シリンダ個別のトルク、シリンダ個別のピーク圧力、シリンダ個別の圧縮圧力に到達するようにされる。
【0121】
図6は、制御部55の別の実施例を表している。この実施例において、既に説明した又は図示した構成や特徴と同様の構成及び特徴については、前と同じ符号を付している。
【0122】
この実施例における制御部55は、燃料指数・プロファイル作用期間(profile duration)変換モジュールが追加されていることを除いて、
図5の実施例のものと本質的に同一である。燃料指数・プロファイル作用期間変換モジュールは、燃料指数信号を共通プロファイル作用期間信号に変換するように構成される。
【0123】
各シリンダ制御部は、共通プロファイル作用期間信号を受信するようにされる。シリンダ制御部は、共通燃料供給期間信号を、該共通燃料供給期間信号のシリンダ個別トルク信号からの逸脱の関数として調節し、それによって、シリンダ個別燃料プロファイル作用期間信号を得るように構成される。
【0124】
共通プロファイル作用期間信号の追加は、燃料品質のばらつきに対して機関の信頼性を向上させる。特に、ガス燃料の性質は大きく変化することがあり、例えば、LCV(Low Calorific Value;低位発熱量)は30-50%の間で変化しうる。
【0125】
この実施例において、共通トルク信号は、全てのシリンダの平均指示シリンダ圧力(mean indicated cylinder pressure)に対応し、シリンダ個別トルク信号は、関連する特定のシリンダの平均指示シリンダ圧力に対応する。
【0126】
多くの側面及び実装形態が、いくつかの実施例と共に説明されてきた。しかし、本願の明細書や図面、特許請求の範囲を検討すれば、当業者は、特許請求の範囲に記載される発明を実施するにおいて、説明された実施例に加えて多くのバリエーションが存在することを理解し、また具現化することができるであろう。特許請求の範囲に記載される「備える」「有する」「含む」との語句は、記載されていない要素やステップが存在することを排除しない。特許請求の範囲において記載される要素の数が複数であると明示されていなくとも、当該要素が複数存在することを除外しない。特許請求の範囲に記載されるいくつかの要素の機能は、単一のプロセッサやコントローラー、その他のユニットによって遂行されてもよい。いくつかの事項が別々の従属請求項に記載されていても、これらを組み合わせて実施することを排除するものではなく、組み合わせて実施して利益を得ることができる。
【0127】
特許請求の範囲で使用されている符号は発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。特に言及されない限り、図面は明細書と共に読まれることが意図されており、本願による開示の全体の一部である。