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特許7329506植物を栽培する方法及びブドウ果実の着色促進剤
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  • 特許-植物を栽培する方法及びブドウ果実の着色促進剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】植物を栽培する方法及びブドウ果実の着色促進剤
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/06 20060101AFI20230810BHJP
   A01G 22/05 20180101ALI20230810BHJP
【FI】
A01G7/06 A
A01G22/05 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020518295
(86)(22)【出願日】2019-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2019018220
(87)【国際公開番号】W WO2019216302
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】15/977,890
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/034,010
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 敦
(72)【発明者】
【氏名】島田 裕士
(72)【発明者】
【氏名】田中 翔真
(72)【発明者】
【氏名】野尻 増俊
(72)【発明者】
【氏名】付 ユウ
(72)【発明者】
【氏名】木崎 憲之
(72)【発明者】
【氏名】北野 光昭
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/130630(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/047940(WO,A1)
【文献】特開2017-169519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/06
A01G 22/05
A01N 1/00 - 65/08
A01P 1/00 - 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラントインを含む、ブドウ果実の着色促進剤。
【請求項2】
30℃以上の温度に60分間以上曝される環境で栽培するブドウに施用するための、請求項に記載のブドウ果実の着色促進剤。
【請求項3】
0.005g/m以上の量のアミノ酸が施用されないブドウに施用するための、請求項又はに記載のブドウ果実の着色促進剤。
【請求項4】
0.005mg/m以上の量のアブシジン酸が施用されないブドウに施用するための、請求項のいずれか1項に記載のブドウ果実の着色促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、植物の着色促進の方法、及び植物におけるアントシアニン含量の増加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アラントイン(5-ウレイドヒダントイン)は、核酸塩基(プリン塩基)の分解過程で生じる中間産物である。植物体内では、アラントインは、5-ヒドロキシイソ尿酸からアラントインシンターゼ(AS)により生成され、アラントイナーゼ(ALN)によりアラントイン酸へと分解される。
【0003】
Watanabe, S. et. al., Plant Cell Environ. 37: 1022-1036(2014)では、シロイヌナズナにおいてALN遺伝子を破壊しアラントインを植物体内に蓄積するように変異させたaln-1変異株が、野生株と比較して高い乾燥ストレス耐性を有することが記載されている。同文献では、野生型のシロイヌナズナにアラントインを投与したところアブシジン酸の生産が促進されたことが記載されている。しかし、アブシジン酸と植物の成長との関連性はこれまでに解明されていない。
【0004】
地球気温の上昇により、ブドウの着色不良が生じ、ブドウの季節性に変化を与え得ることが報告されている(Webb, L. B. et al. (2007) Journal of Grape and Wine Research. 13:165-175)。ブドウ着色促進に関して、フェニルアラニン又はプロリンをブドウに葉面噴霧処理してブドウ中のアントシアニンを増加させたことが報告がされている(El-Sayed, S.F. et al., Journal of Horticultural Science & Ornamental Plants, 2013, 5(3):218-226)。また、WO2017/026313は、アブシジン酸と、ロイシン、イソロイシン及びフェニルアラニン等のアミノ酸とを併用施用することにより、ブドウ果実のアントシアニン含量を増加させたことを報告する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2017/026313
【非特許文献】
【0006】
【文献】Watanabe, S. et. al., Plant Cell Environ. 37: 1022-1036(2014)
【文献】Webb, L. B. et al. (2007) Journal of Grape and Wine Research. 13:165-175
【文献】El-Sayed, S.F. et al., Journal of Horticultural Science & Ornamental Plants, 2013, 5(3):218-226
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一以上の実施形態は、植物を栽培する方法及びブドウ果実の着色促進剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一以上の実施形態は、アラントインをブドウに施用すること、及び、前記ブドウを栽培担体にて生育することを含む、植物を栽培する方法に関する。本発明の一以上の実施形態は以下を包含する:
【0009】
(1)植物を栽培する方法であって、
アラントインをブドウに施用すること、及び、
前記ブドウを栽培担体にて生育すること
を含む方法。
【0010】
(2)前記アラントインの施用が、前記ブドウのベレーゾン期に行われる、(1)に記載の方法。
【0011】
(3)前記アラントインの施用が、前記ブドウの一部であって、前記栽培担体より上にある部分に、ブドウの樹1個体あたり約0.05~5gの用量で施用することにより行われる、(1)又は(2)に記載の方法。
【0012】
(4)前記アラントインの施用が、前記ブドウの葉又は果実に、ブドウの樹1個体あたり約0.05~5gの用量で噴霧することにより行われる、(1)~(3)のいずれか1項に記載の方法。
【0013】
(5)前記ブドウを1ヘクタールあたり約1,500~10,000個体の密度で生育すること、及び、約0.1~13g/mの前記アラントインを施用することを含む、(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
【0014】
(6)アラントインを施用していないブドウの果実と比較して、前記ブドウのブドウ果実におけるアントシアニン含量が、アラントインの施用から少なくとも10日後において、約10~350%増加する、(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
【0015】
(7)アラントインを施用していないブドウの果実と比較して、前記ブドウのブドウ果実におけるアントシアニン含量が、アラントインの施用から10日後において、約150%以上増加する、(1)~(6)のいずれかに記載の方法。
【0016】
(8)アミノ酸を前記ブドウに0.005g/m以上の用量で施用しない、(1)~(7)のいずれかに記載の方法。
【0017】
(9)アブシジン酸を前記ブドウに0.005mg/m以上の用量で施用しない、(1)~(8)のいずれかに記載の方法。
【0018】
(10)前記ブドウを、約30℃以上の温度に少なくとも約60分間曝すことを更に含む、(1)~(9)のいずれかに記載の方法。
【0019】
(11)前記ブドウを、約45℃以上の温度に少なくとも約90分間曝すことを更に含む、(1)~(10)のいずれかに記載の方法。
【0020】
(12)前記アラントインの施用から0.5~10日後に、前記温度に前記ブドウを曝す、(11)に記載の方法。
【0021】
(13)アラントインを含む、ブドウ果実の着色促進剤。
【0022】
(14)30℃以上の温度に60分間以上曝される環境で栽培するブドウに施用するための、(13)に記載のブドウ果実の着色促進剤。
【0023】
(15)0.005g/m以上の量のアミノ酸が施用されないブドウに施用するための、(13)又は(14)に記載のブドウ果実の着色促進剤。
【0024】
(16)0.005mg/m以上の量のアブシジン酸が施用されないブドウに施用するための、(13)~(15)のいずれかに記載のブドウ果実の着色促進剤。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一以上の実施形態は、植物を栽培する方法及びブドウ果実の着色促進剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実験におけるアラントイン施用後10日後の処置群(allantoin)及び対照群(control)のブドウ果実の代表的な写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一以上の実施形態について以下に説明する。
【0028】
<1.アラントイン>
【0029】
アラントインは5-ウレイドヒダントインとも呼ばれ、フリー体が次式で表される構造を有する。
【化1】
【0030】
アラントインは1つの不斉炭素(式中*で示す)を有し、(R)-アラントインと(S)-アラントインの形態がある。本発明の一以上の実施形態に用いるアラントインとしては(R)-アラントインであってもよいし、(S)-アラントインであってもよいし、それらの混合物であってもよい。アラントインは、例えばグリオキシル酸及び尿素から、合成により製造することができる。アラントインはまた、コンフリー等の植物や微生物に由来する、或いは、それらから取得されたものであってもよい。
【0031】
アラントインは植物が利用可能な形態で用いることができる。フリー体の形態、溶媒和物(水和物等)、塩、誘導体、錯体等の許容可能な形態であることができる。また、アラントインのフリー体、水和物及び他の形態のうち2種以上の混合物であってもよい。
【0032】
<2.アラントイン組成物>
【0033】
本開示による組成物(「アラントイン組成物」又は「アラントイン含有組成物」)はアラントインを含み、植物に施用されることができる。
【0034】
一以上の実施形態では、該組成物中のアラントインの含量は、約10~99重量%であることができる。例えば前記含量は、約10重量%以上、約20重量%以上、約30重量%以上、約40重量%以上、約50重量%以上、約60重量%以上、約70重量%以上、約80重量%以上、又は約90重量%以上であることができる。前記含量はまた、約99重量%以下、約95重量%以下、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、又は約75重量%以下であることができる。
【0035】
一以上の実施形態では、アラントイン組成物は一以上の肥料成分を含有する。本開示において「肥料成分」という用語は植物により利用される元素、化合物又は組成物を指し、例えば窒素、リン、カリウム、ケイ素、マグネシウム、カルシウム、マンガン、ホウ素、鉄、及び、これらの元素を含む化合物又は組成物であることができる。肥料成分は有機物又は無機物であることができる。
【0036】
一以上の実施形態では、肥料成分は窒素源、リン源、カリウム源、微量元素あんたはそれらの組合せを含有する。窒素源としては硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム又は石灰窒素が利用できる。窒素源がリン及び/又はカリウムを含む場合、それはリン源及び/又はカリウム源として機能することができる。
【0037】
リン源として、リン酸アンモニウム、リン酸カリウム、過リン酸、重過リン酸石灰、溶成リン肥、重焼リン肥料及び亜リン酸を使用することができる。例えばリン酸アンモニウムは、第一リン酸アンモニウム(リン酸二水素アンモニウム)、第二リン酸アンモニウム(リン酸水素二アンモニウム)、及び第三リン酸アンモニウム(リン酸三アンモニウム)を包含する。例えばリン酸カリウムは、第一リン酸カリウム(リン酸二水素カリウム)及び第二リン酸カリウム(リン酸水素二カリウム)を包含する。リン源が窒素及び/又はカリウムを含有する場合、それは窒素源及び/又はカリウム源として機能することができる。
【0038】
カリウム源として、硫酸カリウム、塩化カリウム及び重炭酸カリウムを使用することができる。カリウム源がリン及び/又は窒素を含有する場合、それはリン源及び/又は窒素源として機能することができる。
【0039】
微量元素として、ホウ素、銅、鉄、マンガン、モリブデン及び亜鉛が含まれ得る。このような微量元素を供与する化合物の例は、ホウ酸、ホウ砂、硫酸銅、銅キレート、鉄キレート、酸化鉄、硫酸マンガン、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウム、硫酸亜鉛及び亜鉛キレートを包含する。
【0040】
肥料成分は以下の成分を包含し得る:生石灰、消石灰、苦土石灰等のカルシウム含有肥料;ケイ酸カルシウム等のケイ素含有肥料;鉱さいケイ酸質肥料;硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、腐植酸苦土肥料等のマグネシウム含有肥料;硫酸マンガン肥料、硫酸苦土マンガン、鉱さいマンガン肥料等のマンガン含有肥料;ホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素含有肥料;微量要素複合肥料;鉄鋼スラグ等の鉄含有肥料;硫酸亜鉛等の亜鉛含有肥料。
【0041】
一以上の実施形態では、アラントイン組成物中での1つの肥料成分の濃度は、約1重量%以上、約2重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、又は約40重量%以上であることができる。1つの肥料成分の濃度はまた、約50重量%以下、約40重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約15重量%以下、約10重量%以下、又は約5重量%以下であることができる。例えば前記濃度は約1~40重量%、約5~35重量%、約10~30重量%、又は約15~25重量%であることができる。
【0042】
一以上の実施形態では、アラントイン組成物中の窒素含量は、少なくとも約0.5重量%であることができる。本開示において「窒素含量」とは、アラントイン由来の窒素を含む、窒素原子として換算した窒素の合計含量を指す。窒素含量は、約1重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、又は約35重量%以上であることができる。窒素含量はまた、約50重量%以下、約40重量%以下、約30重量%以下、又は約20重量%以下であることができる。窒素含量は、約1~40重量%、約5~35重量%、約10~30重量%、又は約15~25重量%であることができる。
【0043】
一以上の実施形態では、アラントイン組成物中のリン含量は、少なくとも約0.5重量%であることができる。本開示において「リン含量」とはPとして換算したリン又は水溶性リンの合計含量を指す。リン含量は、約1重量%以上、約2重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約8重量%以上、約11重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、又は約30重量%以上であることができる。リン含量はまた、約40重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、又は約10重量%以下であることができる。例えばリン含量は、約1~30重量%、約3~25重量%、約5~20重量%、又は約8~15重量%であることができる。
【0044】
一以上の実施形態では、アラントイン組成物中のカリウム含量は、少なくとも約0.5重量%であることができる。本開示において「カリウム含量」とは、KOとして換算したカリウム又は水溶性カリウムの合計含量を指す。カリウム含量は、約1重量%以上、約2重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約8重量%以上、約11重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、又は約30重量%以上であることができる。カリウム含量はまた、約40重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、又は約10重量%以下であることができる。例えばリン含量は、約1~30重量%、約3~25重量%、約5~20重量%、又は約8~15重量%であることができる。
【0045】
一以上の実施形態では、アラントイン組成物は界面活性剤及びバインダー等の添加物を含むことができる。アラントイン組成物中の添加物の含量は、少なくとも約0.001重量%であることができる。添加物の含量は、約0.005重量%以上、約0.01重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、又は約10重量%以上であることができる。添加物の含量はまた、約30重量%以下、約20重量%以下、約15重量%以下、又は約10重量%以下であることができる。例えば添加物の含量は、約0.01~20重量%、約0.05~15重量%、約0.1~10重量%、又は約0.5~5重量%であることができる。
【0046】
添加物の例としては、高分子化合物、非高分子化合物、それらの塩、及び、1以上の添加物の組合せが挙げられる。高分子化合物としてはカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、アクリル酸系高分子、ポリビニルアルコール、ゼラチン、寒天、アラビアガム、アラビアガム末、キサンタンガム、トランガム、グアーガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、部分α化デンプン、マクロゴール、デンプン、可溶性デンプン、デキストリン、トラガカントゴム、βグルカン、ペクチン、カゼイン、大豆タンパク、ヒドロキシエチルセルロース、アセチルセルロース、リグニンスルホン酸、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ、ポリビニルメチルエーテル、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、セラック、ロジン、トール油、エステルガム、ポリビニルアセテート、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリ尿素、ポリアミド、クマロン樹脂、生分解性高分子、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、モンタンワックス、カルナウバロウ、綿ロウ、ミツロウ、羊毛ロウ、高分子の非イオン系界面活性剤、高分子の陰イオン系界面活性剤、高分子の陽イオン系界面活性剤、高分子の両性界面活性剤及びアルギン酸が例示できる。非高分子化合物としては、ケイ酸ナトリウム、グリセリン、動植物油、油脂、流動パラフィン、重油、グルコース、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、非高分子の非イオン系界面活性剤、非高分子の陰イオン系界面活性剤、非高分子の陽イオン系界面活性剤、及び非高分子の両性界面活性剤が例示できる。
【0047】
一以上の実施形態では、アラントイン組成物は固形状であってよい。固形製剤は顆粒、粉末、錠剤又は流動性製剤であることができる。固形製剤中の水含量は、約5重量%以下、約3重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、約0.1重量%以下、約0.05重量%以下、又は約0.01重量%以下であることができる。
【0048】
一以上の実施形態では、アラントインを含有する顆粒又は粉末組成物は、平均直径が約1μm以上、約10μm以上、約50μm以上、又は約100μm以上であることができる。前記平均直径はまた、約1,000μm以下、約500μm以下、約200μm以下、又は約100μm以下であることができる。
【0049】
一以上の実施形態では、アラントイン組成物は液体状であってよい。液体製剤はアラントインを約10~5,000ppm、約100~2,000ppm、又は約300~1,500ppmの濃度で含有することができる。前記濃度は約10ppm以上、約50ppm以上、約100ppm以上、約300ppm以上、約500ppm以上、又は約1,000ppm以上であることができる。前記濃度はまた、約5,000ppm以下、約4,000ppm以下、約3,000ppm以下、約2,000ppm以下、約1,500ppm以下、又は約1,000ppm以下であることができる。
【0050】
一以上の実施形態では、前記液体製剤は約7.0以下のpHを有することができる。例えば、前記液体製剤のpHは、約6.5以下、約5.0以下、約4.5以下、約4.0以下、約3.5以下、又は約3.0以下であることができる。前記液体製剤のpHはまた、約2.0以上、約2.5以上、約3.0以上、約3.5以上、約4.0以上、又は約4.5以上であることができる。前記液体製剤のpHは例えば約3.0~7.0、約3.5~6.5、約4.0~6.0、又は約4.5~5.5であることができる。
【0051】
一以上の実施形態では、前記液体製剤は、固体製剤を水又は水溶液中に溶解することにより調製することができる。例えば、前記液体製剤中の固形分濃度は、約5重量%以下、約3重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、約0.1重量%以下、又は約0.05重量%以下であるこができる。前記液体製剤中の固形分濃度はまた、約0.001重量%以上、約0.005重量%以上、約0.01重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、又は約0.5重量%以上であることができる。
【0052】
前記液体製剤は、本発明の一以上の実施形態に係る固形製剤に含まれる一以上の成分を含むことができる。
【0053】
一以上の実施形態では、アラントイン組成物は、化学的殺生物剤及び生物的殺生物剤等の、一以上の殺生物剤を含有することができる。そのような殺生物剤としては、除草剤、殺細菌剤、殺真菌剤、殺虫剤及び害虫誘引剤が挙げられる。
【0054】
<3.アラントインを植物に施用する方法>
【0055】
一以上の実施形態では、アラントイン又はアラントイン組成物を、植物に、様々な濃度で施用することができる。例えば、一カ月あたりの栽培面積あたりのアラントインの用量、は、約0.05g/m/月以上、約0.1g/m/月以上、約0.2g/m/月以上、約0.3g/m/月以上、約0.4g/m/月以上、約0.5g/m/月以上、約0.6g/m/月以上、約0.7g/m/月以上、約0.8g/m/月以上、約0.9g/m/月以上、約1g/m/月以上、約1.5g/m/月以上、約3g/m/月以上、約5g/m/月以上、又は約10g/m/月以上であることができる。一カ月あたりの栽培面積あたりのアラントインの用量はまた、約20g/m/月以下、約13g/m/月以下、約10g/m/月以下、約8g/m/月以下、約6g/m/月以下、約5g/m/月以下、約4g/m/月以下、約3g/m/月以下、約2g/m/月以下、約1.5g/m/月以下、約1g/m/月以下、約0.8g/m/月以下、又は約0.6g/m/月以下であることができる。上記の数値(単位:g/m/月)は、単回の施用量(単位:g/m)として表しても良い。
【0056】
例えば、アラントインの用量は、約0.05~20g/m/月、約0.1~13g/m/月、約1~10g/m/月、又は約3~8g/m/月であることができる。該用量は約0.05~5g/m/月、約0.1~3g/m/月、又は約0.2~1.5g/m/月であることもできる。上記の数値(単位:g/m/月)は、単回の施用量(単位:g/m)として表しても良い。
【0057】
一以上の実施形態では、栽培担体におけるアラントイン濃度は、約10μM以上、約50μM以上、約100μM以上、約250μM以上、約500μM以上、約750μM以上、約1mM以上、約1.25mM以上、約1.5mM以上、約3mM以上、約6mM以上、約10mM以上、約20mM以上、約30mM、又は約50mM以上であることができる。前記アラントイン濃度はまた、約100mM以下、約50mM以下、約30mM以下、約20mM以下、約10mM以下、約8mM以下、約6mM以下、約4mM以下、約2mM以下、約1mM以下、約800μM以下、又は約600μM以下であることができる。
【0058】
例えば、前記アラントイン濃度は、約10μM~100mM、約100μM~50mM、約500μM~30mM、又は約1mM~20mMであることができる。
【0059】
一以上の実施形態では、アラントインの用量は、約0.005g/植物1個体/月以上、約0.01g/植物1個体/月以上、約0.02g/植物1個体/月以上、約0.03g/植物1個体/月以上、約0.04g/植物1個体/月以上、約0.05g/植物1個体/月以上、約0.06g/植物1個体/月以上、約0.07g/植物1個体/月以上、約0.08g/植物1個体/月以上、約0.09g/植物1個体/月以上、約0.1g/植物1個体/月以上、約0.2g/植物1個体/月以上、約0.3g/植物1個体/月以上、約0.4g/植物1個体/月以上、約0.5g/植物1個体/月以上、約0.6g/植物1個体/月以上、約0.7g/植物1個体/月以上、約0.8g/植物1個体/月以上、約0.9g/植物1個体/月以上、約1g/植物1個体/月以上、約1.5g/植物1個体/月以上、約2g/植物1個体/月以上、約2.5g/植物1個体/月以上、約3g/植物1個体/月以上、約4g/植物1個体/月以上、又は約5g/植物1個体/月以上であることができる。アラントインの用量はまた、約15g/植物1個体/月以下、約10g/植物1個体/月以下、約8g/植物1個体/月以下、約6g/植物1個体/月以下、約5g/植物1個体/月以下、約4.5g/植物1個体/月以下、約4g/植物1個体/月以下、約3.5g/植物1個体/月以下、約3g/植物1個体/月以下、約2.5g/植物1個体/月以下、約2g/植物1個体/月以下、約1.5g/植物1個体/月以下、約1g/植物1個体/月以下、約0.5g/植物1個体/月以下、約0.3g/植物1個体/月以下、又は約0.1g/植物1個体/月以下であることができる。上記の数値(単位:g/植物1個体/月)は、単回の施用量(単位:g/植物1個体)として表しても良い。
【0060】
例えば、アラントインの用量は、約0.03~10g/植物1個体/月、約0.05~5g/植物1個体/月、又は約0.1~2.5g/植物1個体/月であることができる。上記の数値(単位:g/植物1個体/月)は、単回の施用量(単位:g/植物1個体)として表しても良い。
【0061】
一以上の実施形態では、アラントイン又はアラントイン組成物を植物に施用する前又は後に、植物を栽培担体中で生育させることができる。また、植物を水耕栽培により生育させることもできる。そのような栽培担体としては、特に限定されないが、土壌、水及び栽培用資材等が包含される。
【0062】
植物は、1ヘクタールあたりの植物個体数として、約500個体/ヘクタール以上、800個体/ヘクタール以上、約1,000個体/ヘクタール以上、1,200個体/ヘクタール以上、約1,500個体/ヘクタール以上、約2,000個体/ヘクタール以上、約2,500個体/ヘクタール以上、約3,000個体/ヘクタール以上、約3,500個体/ヘクタール以上、約4,000個体/ヘクタール以上、約5,000個体/ヘクタール以上、約6,000個体/ヘクタール以上、約8,000個体/ヘクタール以上、約10,000個体/ヘクタール以上、約15,000個体/ヘクタール以上、約20,000個体/ヘクタール以上、約25,000個体/ヘクタール以上、又は約30,000個体/ヘクタール以上の植栽密度で生育させることができる。また、植物は、約50,000個体/ヘクタール以下、約40,000個体/ヘクタール以下、約30,000個体/ヘクタール以下、約20,000個体/ヘクタール以下、約15,000個体/ヘクタール以下、約10,000個体/ヘクタール以下、約8,000個体/ヘクタール以下、約6,000個体/ヘクタール以下、約5,000個体/ヘクタール以下、約4,000個体/ヘクタール以下、又は約3,000個体/ヘクタール以下の植栽密度で生育させることができる。
【0063】
例えば、ブドウ等の植物は、1ヘクタールあたりの植物個体数として、約500~15,000個体/ヘクタール、約1,500~10,000個体/ヘクタール、又は約2,000~8,000個体/ヘクタールの密度で生育することができる。
【0064】
一以上の実施形態では、アラントイン又はアラントイン組成物は、植物の全体又は一部に施用することができる。例えば、アラントイン又はアラントイン組成物は、根、幹、葉、枝、花、子実体、果実、種子、塊茎、根茎及びその他の植物の部位等の植物体に直接施用することができる。アラントイン又はアラントイン組成物はまた、栽培担体、又は圃場などの周辺環境を通じて、植物に施用してもよい。
【0065】
一以上の実施形態では、アラントイン又はアラントイン組成物は、葉への施用、灌漑による施用、及び土壌への施用等の、種々の方法により供給することができる。施用方法としては、特に限定されないが、噴霧(splaying)、ミスティング(misting)、ダスティング(dusting)、ドレッシング(dressing)、コーティング(coating)、粉コーティング(dust coating)、拡散(diffusion)、浸漬(dipping)、灌漑(irrigation)、注入(injection)、スプリンクリング(sprinkling)、発泡(foaming)、燻蒸(fumigation)、スモーキング(smoking)、フューミング(fuming)、スプレッディング(spreading)、及びペインティング(painting)が例示できる。例えば、アラントイン又はアラントイン組成物(例えば液体製剤等)は、栽培担体に噴霧してもよいし、植物に噴霧してもよい。灌漑の種類としては、特に限定されないが、地表灌漑、マイクロ灌漑、スプリンクラー灌漑(センターピボットによる灌漑等)、及び地下灌漑が例示できる。
【0066】
一以上の実施形態において、アラントイン又はアラントイン組成物は、植物の地上部に直接施用することができる。「地上部」とは、植物の一部であって、栽培担体より上にある部分をいい、一般的には、栽培担体に埋まっていない、或いは、大気に曝されている、部分をいう。例えば、植物の地上部には、葉、幹、茎、果実、花等が含まれる。アラントイン又はアラントイン組成物は、植物の各部位に部分的に施用されても、全体に施用されてもよい。例えば、それは、葉の表面又は裏面のみに施用されてもよく、両面に施用されてもよい。また、それは、果実の表面又は果皮に部分的又は全体的に施用されてもよい(例えば、果房の外側のみに施用されてもよい)。一以上の実施形態において、アラントイン又はアラントイン組成物は、葉又は果実に施用することができる。
【0067】
一以上の実施形態において、アラントイン又はアラントイン組成物は、植物の地上部の1以上のみに施用される。
【0068】
アラントイン又はアラントイン組成物は、ドローン、ヘリコプター、スプリンクラー及びセンターピボット等の機械、装置又は設備を用いて施用することができる。一以上の実施形態では、ブームスプレイヤー等の噴霧装置を用いることができる。アラントインの液体製剤は、約100リットル/ヘクタール以上、約200リットル/ヘクタール以上、約300リットル/ヘクタール以上、約400リットル/ヘクタール以上、又は約500リットル/ヘクタール以上の量で噴霧することができる。アラントインの液体製剤は、約3,000リットル/ヘクタール以下、約2,000リットル/ヘクタール以下、約1,000リットル/ヘクタール以下、約500リットル/ヘクタール以下、又は300リットル/ヘクタール以下の量で噴霧することができる。例えば、一以上の実施形態において、噴霧液量は、約100~3,000リットル/ヘクタール、約200~2,000リットル/ヘクタール、又は約300~1,000リットル/ヘクタールであることができる。一以上の実施形態において、静電噴霧機又は静電噴霧ノズル口を用いることができる。
【0069】
一以上の実施形態では、アラントイン又はアラントイン組成物は栽培担体中に混合してもよい。例えば、液体製剤を、地表灌漑により植物の根に施用することができる。固体製剤を、土壌に添加することができる。
【0070】
一以上の実施形態では、展着剤を、アラントイン又はアラントイン組成物と組み合わせて用いることができる。展着剤の例としては、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられる。展着剤はまた、パラフィン、テルペン、ポリアミド樹脂、ポリアクリレート、ポリオキシエチレン、ワックス、ポリビニルアルキルエーテル、アルキルフェノールホルマリン縮合物、又は合成樹脂エマルジョンであってもよい。
【0071】
一以上の実施形態では、アラントイン又はアラントイン組成物は、化学的殺生物剤及び生物的殺生物剤等の、一以上の殺生物剤とともに施用することができる。そのような殺生物剤としては、除草剤、殺細菌剤、殺真菌剤、殺虫剤及び害虫誘引剤が挙げられる。殺生物剤とアラントインは、本発明の一以上の実施形態に係る液体製剤等の組成物中で混合されていてもよい。殺生物剤は、アラントイン又はアラントイン組成物を植物に施用するのと同時に、或いは、アラントイン又はアラントイン組成物を植物に施用する前又は後の任意の時点で、植物に施用してもよい。
【0072】
一以上の実施形態において、アラントイン又はアラントイン組成物は、様々な植物成長調節剤ととともに施用することができる。前記植物成長調整剤は、植物の成長、着果、開花、発根、着色、種子形成等を促進又は抑制することができる。前記植物成長調整剤は、例えば、ジベレリン、オーキシン、エチレン、サイトカイニン、アブシジン酸等の植物ホルモン又はこれらの拮抗剤等の物質を包含する。また、アラントイン又はアラントイン組成物は、前記植物成長調整剤を用いることなく、使用することもできる。
【0073】
一以上の実施形態において、1種以上の前記植物成長調整剤は、5μg/m/月以上、0.01mg/m/月以上、0.05mg/m/月以上、0.1mg/m/月以上、0.5mg/m/月以上、1mg/m/月以上、5mg/m/月以上、0.01g/m/月以上、0.05g/m/月以上、又は0.1g/m/月以上の量で施用することができる。また、1種以上の前記植物成長調整剤は、15g/m/月以下、10g/m/月以下、5g/m/月以下、1g/m/月以下、0.5g/m/月以下、0.1g/m/月以下、0.05g/m/月以下、0.01g/m/月以下、5mg/m/月以下、又は1mg/m/月以下の量で施用することができる。上記の数値(単位:μg/m/月)は、単回の施用量(単位:μg/m)として表しても良い。上記の数値(単位:mg/m/月)は、単回の施用量(単位:mg/m)として表しても良い。上記の数値(単位:g/m/月)は、単回の施用量(単位:g/m)として表しても良い。
【0074】
一以上の実施形態において、アラントイン又はアラントイン組成物は、植物体の着色、例えば、果実や花等の着色を促進する。したがって、アラントイン又はアラントイン組成物は、果実の着色を促進する促進剤を用いることなく、又は低濃度の前記促進剤とともに、植物に施用することができる。
【0075】
例えば、アラントイン又はアラントイン組成物は、アブシジン酸又はアミノ酸を用いることなく、又は低濃度のアブシジン酸又はアミノ酸とともにブドウ等の植物に施用することができる。一以上の実施形態において、アブシジン酸は、0.05mg/m/月以上、0.03mg/m/月以上、0.01mg/m/月以上、0.005mg/m/月以上、0.004mg/m/月以上、0.003mg/m/月以上、0.002mg/m/月以上、又は0.001mg/m/月以上の量で施用しない。また、一以上の実施形態において、アミノ酸(例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン等)は、0.05g/m/月以上、0.03g/m/月以上、0.01g/m/月以上、0.005g/m/月以上、0.004g/m/月以上、0.003g/m/月以上、0.002g/m/月以上、又は0.001g/m/月以上の量で施用しない。上記の数値(単位:mg/m/月)は、単回の施用量(単位:mg/m)として表しても良い。上記の数値(単位:g/m/月)は、単回の施用量(単位:g/m)として表しても良い。
【0076】
一以上の実施形態において、アラントイン又はアラントイン組成物は、植物におけるアントシアニン含量を増加させる。例えば、アラントイン又はアラントイン組成物は、ブドウにおけるアントシアニン含量を増加させる。本開示において、「アントシアニン」の用語は、シアニジン、ペオニジン、デルフィニジン、ペチュニジン、マルビジン等のアントシアニジンが、アグリコンとして、糖や糖鎖と結びついた配糖体を包含する。アントシアニン含量が多い植物として、ブドウ、リンゴ、チェリー、イチゴ、ブルーベリー、ブラックベリー、ビルベリー、クランベリー、プルーン、ナス、シソ、黒豆等が含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
一以上の実施形態において、クライマクテリック植物又は果実(climacteric plants or fruits)、又は非クライマクテリック植物又は果実(non-climacteric plants or fruits)を対象植物とすることができる。これらの植物は、成熟過程における呼吸様式によって分類される。本明細書において、「クライマクテリック」の用語は、成熟期におけるエチレン生産量が増加し、呼吸量の上昇(すなわち「クライマクテリック・ライズ(climacteric rise)」)を伴う植物又は果実の成熟段階を一般的に指す。本開示では「クライマクテリック植物」は、成熟期においてクライマクテリック・ライズを呈する植物を一般的に指す。例えば、クライマクテリック植物には、リンゴ、バナナ、マンゴー、パパイヤ、グアバ、ナシ状果(pome fruits)、プラム、モモ、ネクタリン(nectarines)、アプリコット、パッションフルーツ、キウイ、トマト、アボカド等が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
本明細書において、「非クライマクテリック植物」とは、成熟期においてクライマクテリック・ライズを呈さない植物をいう。一以上の実施形態において、非クライマクテリック植物は、クライマクテリック植物を除くすべての対象植物をいい、本明細書に開示する特定のクライマクテリック植物を除く植物を対象植物とすることもできる。非クライマクテリック植物には、例えば、ブドウ、チェリー、イチゴ、ブルーベリー、ブラックベリー、クランベリー、ラズベリー、ビルベリー、柑橘類(例えば、オレンジ)、パイナップル、オリーブ、カカオ、ニンジン、タマネギ、セロリ、ホウレンソウ、キュウリ、ズッキーニ、アブラナ科植物、及びマメ類(beans)が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
一以上の実施形態において、アラントイン又はアラントイン組成物を施用した植物は、アラントイン又はアラントイン組成物を施用していない植物と比較して、植物体におけるアントシアニン含量が増加し得る。
【0080】
アントシアニン含量は、アラントイン又はアラントイン組成物の施用から少なくとも10日後(例えば施用から10日後、20日後、又は30日後)において、アラントイン又はアラントイン組成物を施用していない植物と比較して、約5%以上、約10%以上、約20%以上、約40%以上、約60%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、又は約250%以上増加し得る。アントシアニン含量は、アラントイン又はアラントイン組成物の施用から少なくとも10日後(例えば施用から10日後、20日後、又は30日後)において、アラントイン又はアラントイン組成物を施用していない植物と比較して、約400%以下、約350%以下、約300%以下、約250%以下、約200%以下、約150%以下、約100%以下、約50%以下、又は約30%以下増加し得る。例えば、アントシアニン含量は、アラントイン又はアラントイン組成物の施用から10日後において、約10~350%、約20~300%、約40~250%、又は約60~200%増加し得る。
【0081】
一以上の実施形態では、アラントイン又はアラントイン組成物を、施用しようとする合計量を複数回に分割して施用することができる。例えば、アラントイン又はアラントイン組成物を、一カ月あたり2回以上、一カ月あたり3回以上、一カ月あたり4回以上、又は一カ月あたり5回以上施用することができる。また、アラントイン又はアラントイン組成物を、一カ月あたり10回未満、一カ月あたり8回未満、一カ月あたり6回未満、又は一カ月あたり4回未満施用することができる。施用の各回の間隔は0.5日間以上、1日間以上、2日間以上、3日間以上、5日間以上、又は10日間以上であることができ、また、15日間以下、10日間以下、5日間以下、3日間以下、又は2日間以下であることができる。例えば、施用の各回の間隔は、0.5~10日間、0.5~9日間、0.5~8日間、0.5~7日間、0.5~6日間、0.5~5日間、0.5~4日間、0.5~3日間、0.5~2日間、又は0.5~1.5日間であることができる。
【0082】
アラントイン又はアラントイン組成物を植物のどの生長段階で施用しても良い。一以上の実施形態では、アラントイン又はアラントイン組成物を、発芽期、栄養生長期、生殖生長期、開花期、又は成熟期に植物に施用することができる。一以上の実施形態では、アラントイン又はアラントイン組成物を、例えば播種後1日間以上、3日間以上、5日間以上、10日間以上、15日間以上、20日間以上、25日間以上、30日間以上、40日間以上、50日間以上、60日間以上、70日間以上、80日間以上、90日間以上、100日間以上、110日間以上、120日間以上、150日間以上、180日間以上、240日間以上、1年間以上、1.5年間以上、2年間以上、又は2.5年間以上生育した植物に施用することができる。
【0083】
一以上の実施形態では、アラントイン又はアラントイン組成物は、果樹や野菜等の植物が着果後に施用することができる。着果後には、果実の着色前又は着色後の時期が含まれる。例えば、植物がブドウの場合にはベレーゾン期に施用することも含まれる。ブドウの年間生育サイクルは、一般的には、発芽、開花、着果、ベレーゾン及び収穫の複数の時期を含む。ベレーゾン期とは、一般的には、ブドウの外観や硬さの変化によって特徴づけられる時期であり、成熟の開始から収穫までの時期である。
【0084】
一以上の実施形態では、アラントイン又はアラントイン組成物は、一年生植物、二年生植物、又は多年生植物に施用することができる。アラントイン又はアラントイン組成物は、上記で挙げたような様々な植物に施用することができる。
【0085】
一以上の実施形態では、アラントイン又はアラントイン組成物の施用の前又は後で、植物を様々な条件下で様々な気候中で生育することができる。植物は栽培担体中で1日間以上、3日間以上、5日間以上、10日間以上、15日間以上、20日間以上、25日間以上、30日間以上、40日間以上、50日間以上、60日間以上、70日間以上、80日間以上、90日間以上、100日間以上、110日間以上、120日間以上、150日間以上、180日間以上、240日間以上、1年間以上、1.5年間以上、2年間以上、又は2.5年間以上生育又は栽培することができる。植物はまた、栽培担体中で3年間以下、2.5年間以下、1.5年間以下、1年間以下、240日間以下、180日間以下、150日間以下、120日間以下、110日間以下、100日間以下、90日間以下、80日間以下、70日間以下、60日間以下、50日間以下、40日間以下、30日間以下、25日間以下、20日間以下、15日間以下、10日間以下、5日間以下、又は3日間以下生育又は栽培することができる。
【0086】
植物は、約5℃以上、約10℃以上、約15℃以上、約20℃以上、約25℃以上、約27.5℃以上、約30℃以上、約32.5℃以上、約35℃以上、約37.5℃以上、約40℃以上、約42.5℃以上、又は約45℃以上の温度で生育又は栽培することができる。植物はまた、約50℃以下、約45℃以下、約40℃以下、約35℃以下、約30℃以下、約25℃以下、約20℃以下、約15℃以下、又は約10℃以下の温度で生育又は栽培することができる。前記温度は、土壌温度等の栽培担体の温度であることができる。
【0087】
植物は、上記で挙げた温度に様々な時間範囲で曝され得る。一以上の実施形態では、上記で挙げた温度に曝される1日あたりの時間(曝露時間)は、約30分間以上、約60分間以上、約90分間以上、約120分間以上、約180分間以上、約240分間以上、約300分間以上、又は約360分間以上であることができる。曝露時間はまた、約600分間以下、約480分間以下、約360分間以下、約240分間以下、約180分間以下、約120分間以下、又は約60分間以下であることができる。
【0088】
上記で挙げた温度に曝される年間日数は、1日以上、5日以上、10日以上、20日以上、30日以上、60日以上、90日以上、120日以上、150日以上、又は180日以上であることができる。上記で挙げた温度に曝される年間日数はまた210日以下、180日以下、150日以下、120日以下、90日以下、60日以下、30日以下、20日以下、10日以下、又は5日以下であることができる。
【0089】
一以上の実施形態では、ブドウ等の植物を、アラントイン又はアラントイン組成物を前記植物に施用してから0.5日以上後、1日以上後、2日以上後、3日以上後、4日以上後、又は5日以上後に、上記で挙げた温度に曝すことができる。またブドウ等の植物を、アラントイン又はアラントイン組成物を前記植物に施用してから10日以下後、9日以下後、8日以下後、7日以下後、又は6日以下後に、上記で挙げた温度に曝すことができる。
【0090】
<4.植物>
【0091】
一以上の実施形態では、アラントイン又はアラントイン含有組成物を対象植物に施用することができる。対象植物は特に限定されず、その例は、双子葉植物、単子葉植物等の種々の植物を包含する。
【0092】
一以上の実施形態では、対象植物はVitis spp.等のブドウの木(grapevine)である。ブドウには、テーブルグレープ、ジュースグレープ、ワイングレープ等の様々なブドウが含まれる。例えば、ブドウとしては、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、テンプラニーリョ、ピノ・ノワール、シラー、マスカットベリーA、巨峰、ピオーネ、デラウェア、クローン21、クリムゾン・シードレス、フレームシードレス、レッドグローブ等が含まれる。
【0093】
一以上の実施形態では、上記で挙げた一以上の植物は、対象植物から除外されてもよい。
【0094】
対象植物は野生型植物には限定されず、突然変異体、形質転換体、遺伝子組み換えされた植物又は作物、及び、その他の種類の植物を、対象植物とすることができる。
【実施例
【0095】
以下では、本発明の一以上の実施形態について下記の例を参照して説明する。本発明の技術的範囲はこれらの例には限定されない。
【0096】
実験 メルロー果実の着色促進
【0097】
試験では、圃場で栽培しているメルロー(垣根仕立て・30齢樹、植栽密度=4000本/ヘクタール)を使用した。ベレーゾン期に入った(日本国山梨県甲府市内、2017年7月20日午前10時、気温30.0度)メルローの4本を、2本の対照群及び2本の処置群に分け、各群をそれぞれ処置した。対照群については、水500mLと丸和バイオケミカル株式会社製の市販の展着剤「スカッシュ」500μLとの混合溶液を各樹に用いた。前記混合溶液を、各樹の果房を中心に、各樹の地上に出ている部分全体に噴霧した。処置群については、6.3mMアラントイン水溶液500mL(アラントイン0.2g/m相当)と前記市販の展着剤500μLとの混合溶液を各樹に用いた。アラントインを含む前記混合溶液を、各樹の果房を中心に、各樹の地上に出ている部分全体に噴霧した。
【0098】
噴霧から0日、10日、20日、30日後に各群から果実を収穫した。各収穫日に、各樹の1房から20粒を取得し、アントシアニン含量の測定に供した。アントシアニンを、すり潰した果皮1gから抽出液(水:アセトン=1:2)7mLで抽出し、その含量(mg/g skin FW)を測定した。それぞれの群について、2本の樹のアントシアニン含量の平均値を算出した。
【0099】
その結果、10日後では、対照群のアントシアニン含量は0.8(mg/g skin FW)であり、処置群のアントシアニン含量は2.1(mg/g skin FW)であった。20日後では、対照群のアントシアニン含量は2.1(mg/g skin FW)であり、処置群のアントシアニン含量は3.4(mg/g skin FW)であった。30日後では、対照群のアントシアニン含量は3.2(mg/g skin FW)であり、処置群のアントシアニン含量は3.8(mg/g skin FW)であった。10日後の処置群(アラントン)及び対照群(対照)のブドウ果実の写真を図1に示す。
【0100】
アラントインを、ブドウの樹の地上部分に噴霧することにより、ブドウの果皮中のアントシアニン含量が高まり、着色が促進することが確認できた。
【0101】
本開示で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全体が、参照することにより本開示に組み込まれる。
【0102】
本開示の記載において、数値の上限値及び下限値は、数値範囲を確定するために、単独で又は組み合わせて用いることができる。本開示での特定の数値は、それがある数値範囲と重複する場合、該数値範囲の下限値又は上限値として用いることができる。本開示において示されている具体的な化合物、成分又は例は単独で、或いは、他の化合物、成分又は例と組み合わせて、用いることができる。
【0103】
本開示では、限られた数の実施例しか記載していないが、本開示に接した当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な他の実施例に想到することができる。このため、本発明の範囲は、添付の請求の範囲のみにより限定されるべきである。
図1