(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】溶射用の酸化ジルコニウム粉末
(51)【国際特許分類】
C23C 4/11 20160101AFI20230810BHJP
F01D 5/28 20060101ALI20230810BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20230810BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20230810BHJP
C01G 25/00 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
C23C4/11
F01D5/28
F01D25/00 L
F02C7/00 C
C01G25/00
(21)【出願番号】P 2020520714
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2018066562
(87)【国際公開番号】W WO2018234437
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】102017005800.8
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519456033
【氏名又は名称】ヘガネス ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリース、ベンノ
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0238894(US,A1)
【文献】特開2007-154308(JP,A)
【文献】特開昭61-041757(JP,A)
【文献】特開昭60-238470(JP,A)
【文献】特表2005-535782(JP,A)
【文献】特開2005-200291(JP,A)
【文献】特開2005-180257(JP,A)
【文献】特開2004-270032(JP,A)
【文献】特表2016-540883(JP,A)
【文献】特開平09-316622(JP,A)
【文献】特開2003-073793(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106380210(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 4/00-4/18
F02C 1/00-9/58
F23R 3/00-7/00
F01D 1/00-11/24
C01G 25/00-25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末の総重量に対して、
酸化イットリウム(Y
2
O
3
):0.01~2.5重量パーセント、
酸化イッテルビウム(Yb
2
O
3
):5.0~20.0重量パーセント、
酸化ガドリニウム(Gd
2
O
3
):5.0~20.0重量パーセント、
場合により、酸化ハフニウム(HfO
2
):0.1~3重量パーセント、
場合により、他の成分:0.1~7.9重量パーセント、
及び、残りとして、酸化ジルコニウム(ZrO
2
)及び不可避な不純物、
を含む、溶射用の酸化ジルコニウム粉末(ZrO
2)
。
【請求項2】
酸化イットリウムの含有量が
、粉末の総重量に対して、0.1~2.4重量パーセン
トであることを特徴とする、請求項
1に記載の酸化ジルコニウム粉末。
【請求項3】
酸化イッテルビウムの含有量が
、粉末の総重量に対して、5.0~20.0重量パーセン
トであることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の酸化ジルコニウム粉末。
【請求項4】
酸化ガドリニウムの含有量が
、粉末の総重量に対して、5.0~20.0重量パーセン
トであることを特徴とする、
請求項1~3のいずれか1項に記載の酸化ジルコニウム粉末。
【請求項5】
当該粉末が、1.0~2.0重量パーセントの酸化イットリウム、8.0~12.0重量パーセントの酸化イッテルビウム、及び8.0~12.0重量パーセントの酸化ガドリニウムを含有することを特徴とする、
請求項1~4のいずれか1項に記載の酸化ジルコニウム粉末。
【請求項6】
当該粉末が
、粉末の総重量に対して
、0.1から7.9重量パーセントま
での量で、他の成分を有することを特徴とする、
請求項1~5のいずれか1項に記載の酸化ジルコニウム粉末。
【請求項7】
他の成分が、ケイ素化合物
、アルミニウム化合物
、アルカリ土類酸化物、酸化ランタン(La
2O
3)、酸化鉄(Fe
2O
3)、二酸化チタン、アルカリ金属酸化物、放射性元素の酸化物
、塩化物及び有機化合物、及び、それらの混合物から成る群から選択される、請求項
6に記載の酸化ジルコニウム粉末。
【請求項8】
他の成分が、個別に又は合計で
、粉末の総重量に対して、0.1重量パーセントから7.9重量パーセントま
での量で含有される、請求項
6又は7に記載の酸化ジルコニウム粉末。
【請求項9】
単斜相の酸化ジルコニウムの比率が、粉末の総重量に対して、4.0重量パーセント未
満であることを特徴とする、
請求項1~8のいずれか1項に記載の酸化ジルコニウム粉末。
【請求項10】
下記の工程を含む、請求項1~
9の少なくとも1つに記載の酸化ジルコニウム粉末を製造する方法:
a)酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム及び酸化ガドリニウムを含む出発物質の提供であって、酸化イットリウムの含有量が、混合物の総重量に対して0.01~2.5重量パーセントであること;
b)工程a)からの出発物質の高温処理であって、安定化酸化ジルコニウム粉末を得ること;
c)工程b)で得られる粉末の冷却。
【請求項11】
請求項1~
9の少なくとも1つに記載の酸化ジルコニウム粉末を
含む断熱層。
【請求項12】
断熱層が、2~30面積パーセン
トの気孔率を有することを特徴とする、請求項
11に記載の断熱層。
【請求項13】
高温部品
用の断熱層であることを特徴とする、請求項
11又は12に記載の断熱層。
【請求項14】
前記酸化ジルコニウムで高温部品を粉末コーティングするための、
請求項1~9の少なくとも1つに記載の酸化ジルコニウム粉末の使用。
【請求項15】
断熱層が、溶射法を用いて、
請求項1~9の1つに記載の酸化ジルコニウム粉末を使用して、製造されることを特徴とする、請求項
11~13の少なくとも1つに記載の断熱層を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶射用の酸化ジルコニウム粉末及びその製造方法に関する。更に、本発明は、本発明の酸化ジルコニウム粉末を使用して得られる断熱層に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景及び先行技術
断熱層の製造における酸化ジルコニウム粉末の使用は、長い伝統を有する。しかし、より高い効率を実現するために、例えばできるだけ遠くへの航空で、フライングタービンにおいて、又は、例えば出力の際に固定タービンにおいて、プロセス温度を上昇させる必要がある。しかし、ブレード、案内羽根及び燃焼チャンバーなどのタービンの高温部での本質的な構成材は、例えば、金属材料から成るので、燃焼温度は、任意に高く設定することができない。これらの場合には、影響される構成材用の保護として、断熱層が使用される。そのような金属構成材の断熱用の普通の材料は、今日では、「8YSZ」として下記で記載される、特に6~9重量パーセントの酸化イットリウムを含有する、酸化イットリウムで安定化した酸化ジルコニウムである(しばしば、「7YSZ」、「7.5YSZ」又は「8YSZ」とも称される)。
【0003】
保護層としてその課題を果たすために、断熱層は、最も低い可能な熱伝導率によって、区別されるべきである。文献によれば、単結晶の形態で酸化イットリウムによって安定化された酸化ジルコニウムの熱伝導率は、約2.1~2.9W/mKである。いわゆる固有の熱伝導率のこの表示は、緻密で欠陥のない形態の材料のことを言う。しかし、実際には、材料がコーティングの形態でタービン構成材に適用される時、8YSZの断熱層では1~2W/mKの間の値が、典型的に測定される。これらのコーティングは、非常に多くの障害を含有し、それらは、熱流を乱し、こうして、固有の熱伝導率と比較して熱伝導率を低減させる。これらの障害は、例えば、クラック又は転位、細孔、粒子境界、アモルファスの状態、噴霧層中のいわゆる「スプラット」間のノンコヒーレント境界表面である。こうして、断熱層の絶縁効果は、噴霧(溶射)材料の固有の熱伝導率によってだけでなく、主に発生のモード(例えば、粉末又は懸濁物のプラズマ溶射、又はEB-PVD[電子ビーム物理的蒸着])によって、決定される。使用される噴霧粉末の性質は、ここでは、他の極めて重大な役割をする。共に、断熱層中の障害を決定する。そして、単結晶に起因するものよりも特定の要因によって絶縁効果がより高いという効果。
【0004】
断熱層は、それらが粉末を溶融・沈着させることによって製造されないがむしろ気相からの凝縮によって少なくとも部分的に沈着される時、特に乱される。例は、懸濁プラズマ溶射の特定の形態、又はプラズマを用いて粉末を蒸発するChamPro法又は焼結ターゲットから出発するいわゆるEB-PVD法である。全ての方法は、装置に関して非常に複雑であり、そして、低い生産性又は沈着速度によって特徴付けられる。8YSZのそのような欠陥のあるコーティングの熱伝導率は、1W/mK未満であることができる。
【0005】
実際の取り扱いの理由で、粉末のプラズマ溶射の、より複雑ではなくてより生産的な方法が、しばしば好ましい。このようにして得られる層は、より乱されないが、したがって、断熱材料の固有の熱伝導率は、ここではより強い効果を有する。こうして、層の障害に依存して、例えば、気孔率に起因して、1.2~2.2W/mKの熱伝導率の典型的な値が、8YSZで達成される。
【0006】
従来の8YSZと比較して断熱を改善するための多数の材料が、文献で提案される。黄緑石、ペロブスカイト、アルミン酸塩そしてジルコン酸塩などの個々の化合物は、非常に低い固有の熱伝導率によって特徴付けられるが、プラズマ溶射の間に制御することができない蒸発に起因する酸化物構成要素の量を失う。その結果、酸化ジルコニウムを含有する化合物の場合には、非安定化酸化ジルコニウムが生じることができて、そして、相変形の発生及び関連する容積変化の理由で、コーティング中にクラックを順番に導くことができる。それらは、比較的もろくもあり、そして、したがって比較的弱い熱サイクル挙動を有するコーティングを、製造する。
【0007】
代替は、1つ以上の希土類酸化物及び/又はイットリウムなどの1つ以上の安定化酸化物を含む酸化ジルコニウムに基づく、いわゆる「固溶体」である。安定化酸化物の含有量に関して固溶体の存在の範囲は、自然に非常に広いので、そして、これらは、いわゆる欠陥ホタル石構造中に高温から室温への低下で安定化酸化物の高い濃度で安定化された酸化ジルコニウムの場合に存在するので、プラズマ溶射の間の安定化酸化物のロス及び熱サイクルは、何の効果も実質的に有しない。なぜなら、何の新しい相も形成されないからであり、特に、安定化されずにこうして変形可能な酸化ジルコニウムは形成されないからである。この材料概念の例は、例えば、US6,812,176、US6,890,668B2、US7,041,383B2、及びEP1400611に記載される。
【0008】
しかし、全ての前述の材料に共通することは、言及される熱伝導率が、より詳細に特徴付けられない層か又はEB-PVD層に関するということであり、それにより、障害の程度、及びこうして、固溶体の固有の熱伝導率は、全く評価することができない。
【0009】
公知の固溶体材料の短所は、酸化イットリウムの高い含有量である。その低い分子量に起因して、それは、例えばランタン又は希土類酸化物よりも、プラズマ溶射の間に、より容易に蒸発する。更に、シリケートと、より容易に反応する。その結果として、断熱層は、高温で安定剤を失い、そして、変形が可能になる。当該現象は、「CMAS腐食」として公知である。したがって、Y2O3は、両方の現象に関して安定化酸化物の適切なロスリザーブを表わさない。なぜなら、当該材料は、プラズマ溶射の間に又は後の使用において、変形が可能になり得るからである。
【0010】
したがって、US6,890,668は、Y2O3含有量を5重量パーセントに制限するが、高いレベルの希土類安定剤酸化物で働き、それは、強度にとっては短所であり、そしてこうして、層の熱サイクル性にとっては短所である。
【0011】
8YSZ層の代替として固溶体として存在する全ての公知で新しい断熱層材料は、EB-PVD層としてのみ公知であって、それらの固有の熱伝導率は確実には評価できないか、又は、それらは、高いY2O3含有量を有するか又は非常に高い比率の希土類酸化物を含有するかのいずれかである、ということが、概要で記述されるべきでもある。
【0012】
EB-PVD層などの非常に強く乱される断熱層の他の短所は、障害が非常に小さい寸法であって、したがって、焼結プロセスにとって高い推進力を表わし、そしてこうして、高温で治ることができて、それに起因して、熱伝導率が再び上昇する、という事実である。こうして、それらは、焼結の推進力を表わし、その結果、焼結収縮が起こり、そして、断熱層のはく離が次に起こることがある。
【0013】
したがって、プラズマ溶射層は、より良好な代替である。なぜなら、それらは、より少ない障害を有し、そして、それらの障害の大きさの理由で、より少ない焼結活性を引き起こすからである。
【0014】
したがって、一方では低い熱伝導率を持つ断熱層の製造を可能にして、他方では先行技術の短所を克服する、酸化ジルコニウムに基づく溶射粉末(噴霧粉末)の必要性が存在する。
【0015】
US2006/0078750は、ベース酸化物、一次安定剤、及び、ドーパントとして少なくとも2つの追加のカチオン性酸化物を有する断熱層の製造用組成物を、開示する。
【0016】
WO2014/204480は、SiC/SiC複合システムなどのセラミック基材に適用することができて、そして、ケイ素/ケイ化物化合物、酸化物/シリケート化合物、又はそれらの組み合わせを有する、バリヤー層を記載する。
【0017】
US2005/0026770は、46-97モルパーセントのベース酸化物、2-25モルパーセントの一次安定剤、0.5-25モルパーセントのグループからのAドーパント、及び0.5-25モルパーセントのグループBからのドーパントを含有する断熱層を製造するための組成物に関するものであり、しかも、ベース酸化物は、ZrO2、HfO2、及び、それらの混合物から選択され、一次安定剤は、Y2O3、Dy2O3、Er2O3、及び、それらの混合物から選択され、グループBは、Nd2O3、Sm2O3、Gd2O3、Eu2O3、及び、それらの混合物から成り、そして、グループAは、希土類酸化物、アルカリ土類金属酸化物、遷移金属酸化物、及び、それらの混合物から成る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
発明の開示
したがって、本発明の目的は、溶射粉末を提供することにあり、しかも、当該溶射粉末は、プラズマ溶射を用いて適用されることができて、そして、当該溶射粉末から、断熱層が製造されることができ、当該断熱層は、低い熱伝導率を有し、そして、高温適用において金属成分をコーティングするために特に適切である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
当該目的は、特許請求の範囲に記載されるように、及び、下記にも記載されるように、酸化ジルコニウム粉末によって、実現される。本発明の酸化ジルコニウム粉末は、酸化ジルコニウムベースの又は酸化ジルコニウム粉末ベースの溶射用の噴霧粉末(溶射粉末)として特にみなすこともできる。したがって、本発明の好ましい主題は、酸化ジルコニウムに基づく噴霧粉末である。
【0020】
驚いたことに、酸化ジルコニウムを安定化させるために要求されるY2O3含有量は、もしも特に希土類酸化物などの他の酸化物と組み合わせてY2O3が使用されるならば、更に低減できる、ということが見出された。このようにして、特に安定化酸化物のロス及び酸化ジルコニウムの関連した変形などの前述の短所は、避けることができる。
【0021】
したがって、本発明の主題は、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化イッテルビウム(Yb2O3)及び酸化ガドリニウム(Gd2O3)を含む、溶射用の酸化ジルコニウム粉末(ZrO2)であって、酸化イットリウムの含有量が、粉末の総重量に対して0.01~2.5重量パーセントであることを特徴とする、前記の粉末である。本発明の酸化ジルコニウム粉末は、好ましくは、安定化酸化ジルコニウム粉末である。
【0022】
本発明の粉末は、プラズマ溶射を用いて適用されることができ、こうして、前述の短所によって妨げられない効率的で経済的な製造方法へのアクセスを可能にする。
【0023】
本発明の酸化ジルコニウム粉末は、各々、粉末の総重量に対して下記のものから成るものとしても、記載されることができる:
酸化イットリウム(Y2O3):0.01~2.5重量パーセント、
酸化イッテルビウム(Yb2O3):5.0~20.0重量パーセント、
酸化ガドリニウム(Gd2O3):5.0~20.0重量パーセント、
場合により、酸化ハフニウム(HfO2):0.1~3重量パーセント、
場合により、他の成分:0.1~7.9重量パーセント、
及び、残りとして、酸化ジルコニウム(ZrO2)及び不可避な不純物。
この提示から、本発明の粉末は、多数の機能的構成要素を含有する酸化ジルコニウムベースの又は酸化ジルコニウム粉末ベースの噴霧粉末であることが、明らかである。
【0024】
本発明の好ましい形態では、酸化イットリウムの比率が、各々、粉末の総重量に対して、0.1~2.4重量パーセント、好ましくは0.5~2.0重量パーセント、特に好ましくは0.7~1.5重量パーセントである。驚いたことに、酸化イットリウムの比率が小さいにもかかわらず、正方相の酸化ジルコニウムの安定化が、高温でさえも維持されることができる、ということが示された。特に、酸化イットリウムの含有量は、各々の場合で、粉末の総重量に対して、0.1重量パーセントから、好ましくは0.5重量パーセントから、より好ましくは0.7重量パーセントから、2.4重量パーセントまで、好ましくは2.0重量パーセントまで、及び、より好ましくは1.5重量パーセントまでである。本発明の意味において、全ての記述される下限及び上限は、いかなるやり方で互いに組み合わせることができる。異なる上限又は下限の互いの組み合わせは、本発明の含有量の範囲を定義することもできる。
【0025】
固有の熱伝導率の改善に関して、もしも、ホスト格子ZrO2の格子構造が、局所的にできるだけ異なって広がるならば、有利であることが分かった。したがって、酸化イッテルビウムの含有量が、各々の場合で、粉末の総重量に対して、5.0~20.0重量パーセント、好ましくは6.0~15.0重量パーセント、及び、特に好ましくは7.0~13.0重量パーセントの範囲内にある形態が、好ましい。特に、酸化イッテルビウムの含有量は、各々の場合で、粉末の総重量に対して、5.0重量パーセントから、好ましくは6.0重量パーセントから、より好ましくは7.0重量パーセントから、20重量パーセントまで、好ましくは15.0重量パーセントまで、及び、より好ましくは13.0重量パーセントまでである。本発明の意味において、全ての記述される下限及び上限は、いかなるやり方で互いに組み合わせることができる。異なる上限又は下限の互いの組み合わせは、本発明の含有量の範囲を定義することもできる。
【0026】
更に好ましい形態では、粉末中の酸化ガドリニウムの比率は、各々の場合で、粉末の総重量に対して、5.0~20.0重量パーセント、好ましくは6.0~15.0重量パーセント、及び、特に好ましくは7.0~13.0重量パーセントである。特に、酸化ガドリニウムの含有量は、各々の場合で、粉末の総重量に対して、5.0重量パーセントから、好ましくは6.0重量パーセントから、より好ましくは7.0重量パーセントから、20重量パーセントまで、好ましくは15.0重量パーセントまで、及び、より好ましくは13.0重量パーセントまで、である。本発明の意味において、全ての記述される下限及び上限は、いかなるやり方で互いに組み合わせることができる。異なる上限又は下限の互いの組み合わせは、本発明の含有量の範囲を定義することもできる。.
【0027】
本発明の粉末の特に好ましい形態では、当該粉末が、各々の場合で、粉末の総重量に対して、1.0~2.0重量パーセントの酸化イットリウム、8.0~12.0重量パーセントの酸化イッテルビウム、及び8.0~12.0重量パーセントの酸化ガドリニウムを含有する。驚いたことに、特定の範囲内の当該酸化物の比率では、そのような粉末から製造される断熱層は、特に熱伝導率に関して、特に有利な特性を有する、ということが見出された。
【0028】
本発明の粉末は、他の成分として、酸化ハフニウム(HfO2)を有することができる、粉末中でのZrO2:HfO2の比率は、好ましくは、99:1~95:5重量部の間である。この場合の酸化ハフニウムの量は、各々の場合で、粉末の総重量に対して、好ましくは0.1~3重量パーセント、特に好ましくは0.5~2.0重量パーセントである。ジルコニウムと比較して、ハフニウムは、より高い原子量を有し、それは、所定の温度では格子振動のより低い励起の効果を有することができ、それは、cP値を更に低減することができ、こうして、ジルコニウムイオンのみから成る格子と比較して熱伝導率を更に低減することができる。特に、酸化ハフニウムの含有量は、各々の場合で、粉末の総重量に対して、0.1重量パーセントから、及び好ましくは0.5重量パーセントから、3重量パーセントまで、及び好ましくは2.0重量パーセントまで、である。本発明の意味において、全ての記述される下限及び上限は、いかなるやり方で互いに組み合わせることができる。異なる上限又は下限の互いの組み合わせは、本発明の含有量の範囲を定義することもできる。
【0029】
好ましい形態では、本発明の酸化ジルコニウム粉末は、各々、粉末の総重量に対して、好ましくは0.1から7.9重量パーセントまで、好ましくは7.0重量パーセントまで、好ましくは0.2~7.0重量パーセント、より好ましくは0.2~4.5重量パーセント、特に好ましくは0.3~2.5重量パーセントの範囲内の含有量で、更なる成分を含む。当該他の成分は、個別に又は合計で、各々、粉末の総重量に対して、0.1重量パーセントから7.9重量パーセントまで、好ましくは7.0重量パーセントまで、より好ましくは4.5重量パーセントまで、及び更により好ましくは2.5重量パーセントまでの含有量で、有利に存在する。
【0030】
当該更なる成分は、本発明の粉末の特性に、又は、この粉末から得られる断熱層の特性に、影響を与えるために、使用されることができる。例えば、噴霧特性は、更なる成分を添加することによって、要求される条件に適合させることができる。したがって、当該更なる成分が、ケイ素化合物、特にSiO2及びシリケート、アルミニウム化合物、特に酸化アルミニウム(Al2O3)、更なる酸化物(酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化ガドリニウム及び酸化ハフニウム以外)、特にアルカリ土類酸化物、酸化ランタン(La2O3)、酸化鉄、二酸化チタン、アルカリ金属酸化物、放射性元素の酸化物、特に酸化ウラン(U2O3)及び酸化トリウム(ThO2)、塩化物及び有機化合物、及び、それらの混合物から成る群から選択される形態が、好ましい。
【0031】
放射線からの健康上の危険に起因して、放射性元素及び化合物、例えば酸化ウラン又は酸化トリウムなど、の比率は、できるだけ低く保たれるべきである。したがって、粉末中の放射性元素及び化合物の含有量は、粉末の総重量に対して、好ましくは0.1重量パーセント未満である。
【0032】
断熱層の焼結挙動を制御するために、次のコーティングにおいて又は粉末中に異相を形成する化合物が、本発明の粉末に添加されることができる。そのような化合物の例は、特に、シリケート、酸化ケイ素、及び酸化アルミニウムである。したがって、本発明の粉末が、各々の場合で、粉末の総重量に対して、0.001~0.5重量パーセント以下、好ましくは0.01~0.1重量パーセントのケイ素及び/又はアルミニウム化合物を有する、という形態が好ましい。ケイ素及び/又はアルミニウム化合物の含有量は、各々の場合で、粉末の総重量に対して、0.001重量パーセントから、好ましくは0.01重量パーセントから、0.5重量パーセントまで、好ましくは0.1重量パーセントまで、である。
【0033】
酸化イットリウム、酸化イッテルビウム及び酸化ガドリニウムと同様に、本発明の粉末は、他の酸化物を含むことができる。これらの酸化物は、酸化ジルコニウムの更なる安定化に寄与することができ、そして、その格子構造を広げるか又は更に乱すことができる。そのような酸化物の例は、アルカリ土類酸化物、すでに言及したもの以外の希土類酸化物だけでなく、酸化ランタン又は酸化鉄(Fe2O3)などの化合物でもある。1つの好ましい形態では、他の酸化物の含有量は、各々の場合で、粉末の総重量に対して、2.0重量パーセントまで、好ましくは1.0重量パーセントまで、特に好ましくは0.001~0.5重量パーセントである。
【0034】
更に、本発明の粉末は、他の構成要素、例えば揮発性化合物、例えば有機化合物又は塩化物を含有することができる。これらは、例えば、断熱層の達成できる気孔率を改善するために、粉末に添加されることができる。そのような化合物の含有量、特に有機化合物及び/又は塩化物の含有量は、各々、粉末の総重量に対して、好ましくは4.0重量パーセントまで、好ましくは2.0重量パーセントまで、特に好ましくは0.001~1.0重量パーセントである。
【0035】
本発明の酸化ジルコニウム粉末は、広い温度範囲にわたって、高い安定性を明示する。室温又は高温で、何の変形も観察されなかった。驚いたことに、この安定性は、酸化ジルコニウムが欠陥ホタル石構造で存在する時に、特に起こる、ということが示された。したがって、酸化ジルコニウムが欠陥ホタル石構造にある、という形態が好ましい。酸化ジルコニウムが、セラミック混合結晶として本発明の酸化ジルコニウム粉末中に存在することが、更に好ましい。
【0036】
特に粉末の噴霧特性に影響する他のパラメーターは、その粒径である。粒径の選択は、プラズマ溶射法の要求に、及び、使用される溶射(噴霧)システムに、及び、プラズマ溶射層の要求される構造に、特に欠陥に、適合される。特に縦割れを持つ層では、緻密な又はより低い多孔性の層を製造するために、微細な粒径が一般に使用される。より粗い粒径は、特に、高い気孔率を持つ層を形成するために、使用される。公称の粒径又は粒度分布は、EN1274及びDIN EN1274:2005-02に従って定義され、そこでは、38μmを含むそれまでの粒径分布の割合の限界は、ふるい分けプロセスによって決定され、この限界未満では、通常は、レーザー回折又はマイクロシービングによって決定される。
【0037】
好ましい形態では、本発明の溶射(噴霧)粉末は、Section 3.3 of DIN EN 1274:2005-02に定義されるように、22/5μm~300/75μmの公称の粒径又は粒度分布を有する。驚いたことに、特定の範囲内の粒径を持つ粉末が、プラズマ溶射のために特に適切であり、そして、特に耐性コーティングという結果になり、それは有利な熱伝導率によっても区別される、ということが見出された。
【0038】
酸化ジルコニウムは、異なる結晶相で存在することができ、それらは、それらの特性が、特にそれらの容積が、異なる。どの結晶相が存在するかは、温度に、及び、酸化ジルコニウムを安定化させる安定化酸化物の量及び分布品質に、特に、依存する。高温適用では、単斜相で存在する酸化ジルコニウムの比率ができるだけ小さいならば、有利であることが分かった。しかし、問題は、特に室温で、他の相では酸化ジルコニウムが安定ではない、という点に、存在する。粉末は、断熱層として絶えず変化する温度サイクルにさらされるので、安定性を維持することは、チャレンジである。本発明の酸化ジルコニウム粉末は、広い温度範囲にわたるその安定性によって、特徴付けられる。したがって、好ましい形態では、室温での単斜相の酸化ジルコニウムの比率は、各々の場合で、粉末の総容積に対して、4.0体積パーセント未満、好ましくは2.0体積パーセント未満、及び、特に好ましくは1.0体積パーセント未満である。結晶相の比率は、X線回折を用いて決定することができる。
【0039】
噴霧粉末の他の重要な基準は、そのモルフォロジーである。この場合に、粉末が中空の球から成るときに、特に有利であることが分かった。これらは、被覆されるべき表面に突き当たると、破裂して、いわゆる「スプラット」を形成して、低い粗さのコーティングという結果に、特になる。したがって、本発明の酸化ジルコニウム粉末が、中空の球の形態で少なくとも部分的に存在する、という形態が好ましい。中空の球の比率は、粉末粒子の総数に対して、特に、好ましくは少なくとも50数量%、好ましくは75数量%、特に好ましくは90数量%である。粉末のモルフォロジーは、例えば、樹脂質量中の粉末埋め込み、及び、それに続く金属組織的調製によって、決定されることができる。
【0040】
噴霧粉末として使用することができるために、粉末は、噴霧粉末標準EN1274に特定される特定の特性を有しなければならない。凝集して焼結した粉末が、特に適切である。したがって、酸化ジルコニウムが、凝集して焼結したタイプである、という本発明の形態が好ましい。
【0041】
本発明の更なる主題は、本発明の酸化ジルコニウム粉末を製造する方法である。当該方法は、下記の工程を含む:
a)酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム及び酸化ガドリニウムを含む出発物質の提供であって、酸化イットリウムの含有量が、出発物質の総重量に対して0.01~2.5重量パーセントであること;
b)工程a)からの出発物質の高温処理であって、安定化酸化ジルコニウム粉末を得ること;及び
c)工程b)で得られる粉末の冷却。
【0042】
好ましい形態では、工程b)における高温処理は、室温で及び長期の貯蔵後に、何の更なる単斜、すなわち、非安定化酸化ジルコニウムも、X線回折を用いて検出できないように、選択される。こうして、酸化ジルコニウムと安定化酸化物との拡散又は混合が主として起こった、ということが確保される。
【0043】
高温処理は、好ましくは、例えば、1200~2500℃の間の固相反応としての拡散焼結又はプラズマ球状化(飛行中の溶融)、電気製錬炉を用いる溶融である。
【0044】
工程c)の冷却が、酸化ジルコニウム粉末が室温で欠陥ホタル石構造で存在するようなものである、という本発明の方法の形態も、好ましい。
【0045】
好ましい形態では、当該方法は、工程b)からの粉末が凝集される凝集工程を更に含むことができる。この方法の工程は、工程a)の後で工程b)よりも前に、好ましくは実施される。その代わりに、凝集は、工程c)の後に追加の工程として実施されることも、できる。
【0046】
本発明の酸化ジルコニウム粉末は、断熱層の製造用に、特に、高温適用での金属成分用に、極めて適切である。したがって、本発明の更なる主題は、本発明の酸化ジルコニウム粉末を使用して得られるか又は得られることができる断熱層である。こうして、本発明の意味において、酸化ジルコニウムに基づく噴霧粉末の溶射によって、又は、上記の酸化ジルコニウム粉末の溶射によって製造される断熱層が、提供される。
【0047】
断熱層の基礎的な特性は、周囲温度に対するそれらの絶縁効果である。この絶縁効果は、断熱層の熱伝導率によって記載され、それは、層を通して被覆部品への熱輸送を避けるために、できるだけ低くあるべきである。本発明の断熱層は、使用されるプラズマ溶射法にかかわらず先行技術よりも極めて小さい、その低い熱伝導率によって、特に特徴付けられる。本発明の断熱層は、好ましくは、1200℃で測定して、1.6W/mK以下の熱伝導率を有する。熱伝導率は、熱流計及びカロリメーターなどの従来の装置を使用して、又は、レーザーフラッシュ法に従って、決定することができる。
【0048】
断熱層の絶縁効果を特徴付ける他のパラメーターは、気孔率である。本発明の断熱層は、最大断熱が起こるように、その気孔率が選択されることを特徴とする。本発明の断熱層は、好ましくは、2~30面積パーセント、好ましくは5~20面積パーセントの範囲内の気孔率を有する。コーティングの気孔率は、例えばサンディング及び画像評価を用いて決定することができ、面積パーセントでの結果を産みだす。
【0049】
驚いたことに、例えば蒸発による安定化酸化物のロスは、粉末がいわゆる「固溶体」の形態で存在するという事実によって、修正されることができる、ということが示された。「固溶体」の例は、外来原子又はイオンが統計的に分布されている異なる化学元素から成る混合結晶である、これらは、ホスト格子の隙間サイトの中に埋め込まれることができるか、又は、置換によって他の元素の原子を取り替えることができる。金属特性を有する固溶体は、合金とも称される。
【0050】
本発明の断熱層が特徴付けられる広い温度範囲にわたる高い安定性を実現するために、製造用に使用される酸化ジルコニウム粉末が「固溶体」として存在するならば、有利であることが分かった。したがって、本発明の断熱層の好ましい形態は、酸化ジルコニウム粉末が「固溶体」として断熱層の中に存在することを特徴とする。
【0051】
本発明の断熱層は、大きな温度範囲にわたってさえ、その低い熱伝導率と高い耐性によって特徴付けられる。したがって、これは、高温適用のために特に適切である。したがって、断熱層は、好ましくは、高温部品をコーティングするために、特に、熱い燃焼ガスとの接触時に高温で運転するタービンをコーティングするために、こうして、特に、タービン翼、タービンの案内羽根、及びタービンの燃焼チャンバーをコーティングするために、使用される。
【0052】
本発明の酸化ジルコニウム粉末は、高温部品用の断熱層として、特に適切である。したがって、本発明の更なる主題は、高温部品をコーティングするための、上述の本発明の断熱層の使用、又は、本発明の酸化ジルコニウム粉末の使用である。
【0053】
本発明の更なる主題は、断熱層が、溶射法を用いて、及び、好ましくは上述の本発明の酸化ジルコニウム粉末を使用して、製造される、本発明の断熱層を製造する方法である。溶射法は、特に好ましくは、プラズマ溶射である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】
図1は、噴霧層が、凝集/焼結した噴霧粉末の噴霧層の典型的な構造を有すること、を示す。
【
図2】
図2は、噴霧層が、凝集/焼結した噴霧粉末で作られている噴霧層の典型的な構造をも有すること、を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
例示の形態
本発明は、下記の例を用いて例示されるが、これらは、本発明の概念を制限するものとして理解されるべきではない、すなわち限定的に理解されるべきではない。
【0056】
例1(比較例)
DIN EN1274:2005-02に従って90/10μmの公称の粒径又は粒度分布を持つ8YSZプラズマ溶射粉末(噴霧粉末)が、個々の酸化物Y2O3及びHfO2含有ZrO2の「凝集/焼結」法によって、製造された。化学的分析及び物理的分析に従うと、この粉末は、下記の特性を有した:
Y2O3 7.68%、HfO2 1.91%
MgO 13ppm、CaO 330ppm、Fe2O3 130ppm、Al2O3 1200ppm、SiO2 1150ppm
U2O3 + ThO2 530ppm
ふるい分析(重量パーセント):
>106μm 0%
106/75μm 11.7%
75/45μm 49.1%
<45μm 39.2
レーザー回折(Microtrac X100)を使用する粒度分布パラメーター:
D90:92μm、D50:55μm、D10:26μm
単斜相の比率:<1vol%
【0057】
プラズマ溶射粉末は、下記の設定を使用するプラズマ溶射システム「F4」で処理された:
アルゴン35L/分、水素10L/分、電力35kW
運搬ガス3L/分、運搬80g/分
ノズル:8mm、噴霧(溶射)距離120mm
【0058】
画像処理を用いて、噴霧層上で、7%(面積パーセント)の気孔率が、決定された。
図1は、噴霧層が、凝集/焼結した噴霧粉末の噴霧層の典型的な構造を有すること、を示す。
【0059】
噴霧層の熱伝導率は、室温から1200℃までの温度でレーザーフラッシュ法を用いて決定された。結果は、表1に示される。
【0060】
例2(本発明)
DIN EN1274:2005-02に従って125/45μmの公称の粒径又は粒度分布を持つプラズマ溶射粉末(噴霧粉末)が、個々の酸化物Y2O3、Yb2O3、Gd2O3及びHfO2含有ZrO2の「凝集/焼結」法によって、製造された。化学的分析及び物理的分析に従うと、この粉末は、下記の特性を有した:
Y2O3 1.64%、Yb2O3 10.19%、Gd2O3 10.10%、HfO2 1.64%
MgO、CaO、Fe2O3、Al2O3、SiO2 各々 <0.0100%
U2O3 + ThO2 <100ppm
残り ZrO2
ふるい分析:
>125μm 0.8%
125/106μm 7.1%
106/90μm 13.8%
90/53μm 100% 残り
53/45μm 14.1%
<45μm 3.6%
レーザー回折(Microtrac X100)を使用する粒度分布パラメーター:
D90:109μm、D50:73μm、D10:51μm
単斜相の比率:<1vol%
【0061】
プラズマ溶射粉末は、下記の設定を使用するプラズマ溶射システム「F4」で処理された:
アルゴン35L/分、水素10L/分、電力35kW
運搬ガス3L/分、運搬80g/分
ノズル:8mm、噴霧(溶射)距離120mm
【0062】
画像処理を用いて、噴霧層中に、8±1%(面積パーセント)の気孔率が、決定された。
図2は、噴霧層が、凝集/焼結した噴霧粉末で作られている噴霧層の典型的な構造をも有すること、を示す。
【0063】
例1及び例2からの噴霧層の熱伝導率は、室温から1200℃までの温度でレーザーフラッシュ法を用いて決定された。結果は、表1に示される。測定温度に依存して、例1からの参照層と比較して7.7%(1200℃)~16.5%(500℃)の間の熱伝導率の低減が、実現される。
【0064】
【0065】
表1からわかるように、本発明の粉末から製造される断熱層は、比較の粉末から製造される層と比較して、顕著に低減された熱伝導率を有する。低減された熱伝導率は、より高温で、特に明らかであり、高温範囲での適用では特に、プラスの効果を有する。
【0066】
例1及び例2における酸化ジルコニウム粉末は、異なる組成を有するので、及び、こうして異なる溶融挙動を有するので、粉末1の粒径は、より微細な粒径の目的で粉末1の結果として得られるより高い層気孔率及びより低い程度の溶融を補償するために、より小さいように慎重に選択された。気孔率の測定値からわかるように、これは、成功もした。それに起因して、結果として得られたコーティングの熱伝導率の測定値は、コーティング材料の固有の熱伝導率について引き出されるべき結論を許すのみである。
本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
酸化イットリウム(Y
2
O
3
)、酸化イッテルビウム(Yb
2
O
3
)及び酸化ガドリニウム(Gd
2
O
3
)を含む、溶射用の酸化ジルコニウム粉末(ZrO
2
)であって、酸化イットリウムの含有量が、粉末の総重量に対して0.01~2.5重量パーセントであることを特徴とする、前記の粉末。
[2]
各々の場合で、粉末の総重量に対して下記のものから成る、[1]に記載の酸化ジルコニウム粉末:
酸化イットリウム(Y
2
O
3
):0.01~2.5重量パーセント、
酸化イッテルビウム(Yb
2
O
3
):5.0~20.0重量パーセント、
酸化ガドリニウム(Gd
2
O
3
):5.0~20.0重量パーセント、
場合により、酸化ハフニウム(HfO
2
):0.1~3重量パーセント、
場合により、他の成分:0.1~7.9重量パーセント、
及び、残りとして、酸化ジルコニウム(ZrO
2
)及び不可避な不純物。
[3]
酸化イットリウムの含有量が、各々の場合で、粉末の総重量に対して、0.1~2.4重量パーセント、好ましくは0.5~2.0重量パーセント、特に好ましくは0.7~1.5重量パーセント、であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の酸化ジルコニウム粉末。
[4]
酸化イッテルビウムの含有量が、各々の場合で、粉末の総重量に対して、5.0~20.0重量パーセント、好ましくは6.0~15.0重量パーセント、及び、特に好ましくは7.0~13.0重量パーセント、であることを特徴とする、前記の1つ以上の項に記載の酸化ジルコニウム粉末。
[5]
酸化ガドリニウムの含有量が、各々の場合で、粉末の総重量に対して、5.0~20.0重量パーセント、好ましくは6.0~15.0重量パーセント、及び、特に好ましくは7.0~13.0重量パーセント、であることを特徴とする、前記の1つ以上の項に記載の酸化ジルコニウム粉末。
[6]
当該粉末が、1.0~2.0重量パーセントの酸化イットリウム、8.0~12.0重量パーセントの酸化イッテルビウム、及び8.0~12.0重量パーセントの酸化ガドリニウムを含有することを特徴とする、前記の1つ以上の項に記載の酸化ジルコニウム粉末。
[7]
当該粉末が、各々の場合で、粉末の総重量に対して、好ましくは0.1から7.9重量パーセントまで、好ましくは7.0重量パーセントまで、好ましくは0.2~4.5重量パーセント、特に好ましくは0.3~2.5重量パーセントの量で、他の成分を有することを特徴とする、前記の1つ以上の項に記載の酸化ジルコニウム粉末。
[8]
他の成分が、ケイ素化合物、特にSiO
2
及びシリケート、アルミニウム化合物、特に酸化アルミニウム(Al
2
O
3
)、アルカリ土類酸化物、酸化ランタン(La
2
O
3
)、酸化鉄(Fe
2
O
3
)、二酸化チタン、アルカリ金属酸化物、放射性元素の酸化物、特に酸化ウラン(U
2
O
3
)及び酸化トリウム(ThO
2
)、塩化物及び有機化合物、及び、それらの混合物から成る群から選択される、[7]に記載の酸化ジルコニウム粉末。
[9]
他の成分が、個別に又は合計で、各々の場合で、粉末の総重量に対して、0.1重量パーセントから7.9重量パーセントまで、好ましくは7.0重量パーセントまで、より好ましくは4.5重量パーセントまで、及び更により好ましくは2.5重量パーセントまでの量で含有される、[7]又は[8]に記載の酸化ジルコニウム粉末。
[10]
当該粉末が、EN1274に従って決定して、22/5μm~300/75μmの公称の粒径を有することを特徴とする、前記の1つ以上の項に記載の酸化ジルコニウム粉末。
[11]
単斜相の酸化ジルコニウムの比率が、粉末の総重量に対して、4.0重量パーセント未満、好ましくは2.0重量パーセント未満、及び、特に好ましくは1.0重量パーセント未満であることを特徴とする、前記の1つ以上の項に記載の酸化ジルコニウム粉末。
[12]
下記の工程を含む、[1]~[11の少なくとも1つに記載の酸化ジルコニウム粉末を製造する方法:
a)酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム及び酸化ガドリニウムを含む出発物質の提供であって、酸化イットリウムの含有量が、混合物の総重量に対して0.01~2.5重量パーセントであること;
b)工程a)からの出発物質の高温処理であって、安定化酸化ジルコニウム粉末を得ること;
c)工程b)で得られる粉末の冷却。
[13]
[1]~[11]の少なくとも1つに記載の酸化ジルコニウム粉末を使用することによって得られる断熱層。
[14]
断熱層が、2~30面積パーセント、好ましくは5~20面積パーセントの気孔率を有することを特徴とする、[13]に記載の断熱層。
[15]
高温部品用、特にタービン翼、タービンの案内羽根、及びタービンの燃焼チャンバー用、の断熱層であることを特徴とする、[13]又は[14]に記載の断熱層。
[16]
高温部品をコーティングするための、[13]~[15]の1つに記載の断熱層又は[1]~[11]の少なくとも1つに記載の酸化ジルコニウム粉末の使用。
[17]
断熱層が、溶射法を用いて、特に[1]~[11]の1つに記載の酸化ジルコニウム粉末を使用して、製造されることを特徴とする、[13]~[15]の少なくとも1つに記載の断熱層を製造する方法。