IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人東京工業大学の特許一覧 ▶ 三桜工業株式会社の特許一覧

特許7329517熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法
<>
  • 特許-熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法 図1
  • 特許-熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法 図2
  • 特許-熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法 図3
  • 特許-熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法 図4
  • 特許-熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法 図5
  • 特許-熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法 図6
  • 特許-熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法 図7
  • 特許-熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法 図8
  • 特許-熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法 図9
  • 特許-熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法 図10
  • 特許-熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法 図11
  • 特許-熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法 図12
  • 特許-熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法 図13
  • 特許-熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法 図14
  • 特許-熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法 図15
  • 特許-熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法 図16
  • 特許-熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】熱利用発電池、及びそれを用いた熱利用発電方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 15/00 20230101AFI20230810BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
H10N15/00
H02N11/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020535775
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2019030800
(87)【国際公開番号】W WO2020031992
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2018147465
(32)【優先日】2018-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】390039929
【氏名又は名称】三桜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】松下 祥子
(72)【発明者】
【氏名】荒木 拓真
(72)【発明者】
【氏名】梅 ▲ヒョウ▼
(72)【発明者】
【氏名】西山 淳也
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/038988(WO,A1)
【文献】国際公開第2001/071821(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/140856(WO,A1)
【文献】特開平04-190572(JP,A)
【文献】特開昭51-093193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 15/00
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型シリコンゲルマニウムが積層された作用極、前記ゲルマニウムの表面に設けられた固体電解質、及び前記固体電解質の上に形成された対極、を含む熱利用発電池であって、
前記固体電解質は、分子量200~1,000,000の下記式(1):
【化1】
(式中、Rは、単結合、酸素原子、硫黄原子、-NH-、-PH-、-(P=O)R-、-O-(P=O)H-O-、カーボーネート基(-O-(C=O)-O-)、カルボニル基、スルホニル基、エステル基、又はアリーレンジオキシ基(-O-Ar-O-)であり、
、R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、水酸基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、ホスホリル基、アルデヒド基、メチルカルボニル基、メチルスルホニル基、スルファニル基(-SH)、ニトロ基、フェノキシ基、メチルエステル基、トリフルオロメチル基であり、
は、炭素数1~3のアルキレン基であり、
繰り返し単位は同一でもよく、2種以上の繰り返し単位の組合せでもよい)
で表されるポリマー又はその誘導体を含み、そしてイオン源として銅イオン又は鉄イオンを含む、熱利用発電池。
【請求項2】
前記固体電解質が、アルカリ金属イオンを含む、請求項1に記載の熱利用発電池。
【請求項3】
前記アルカリ金属イオンが、LiCl又はKClとして含まれる、請求項2に記載の熱利用発電池。
【請求項4】
前記銅イオンが、一価及び二価の銅イオンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱利用発電池。
【請求項5】
前記作用極が、クロムを介してn型シリコン及びゲルマニウムが積層されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱利用発電池。
【請求項6】
前記固体電解質が、更に無機酸化物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱利用発電池。
【請求項7】
前記ポリマーが、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンカーボネート、及びポリプロピレンカーボネートからなる群から選択されるポリマー又はその誘導体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱利用発電池。
【請求項8】
前記請求項1~7のいずれか一項に記載の熱利用発電池を25℃以上に加熱し、発電する、加熱発電工程を含む、熱利用発電方法。
【請求項9】
前記加熱発電工程後に、絶縁状態で放置する工程、及び更に熱利用発電池を25℃以上に加熱し、発電する、加熱発電工程を含む、請求項8に記載の熱利用発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱利用発電池、及びそれらを用いた熱利用発電方法に関する。本発明によれば、効率的に熱利用発電を行うことができる。
【背景技術】
【0002】
従来、地熱又は工場の排熱などを利用した熱利用発電として、ゼーベック効果を利用した熱電発電が知られており(特許文献1及び2、並びに非特許文献1)熱エネルギーを効率的に利用するために、実用化が期待されている。ゼーベック効果による熱電発電は、金属又は半導体に温度勾配を設けると電圧が発生することを利用した発電原理である。具体的には、p型半導体及びn型半導体を結合した熱電変換素子に、温度勾配を付与することによって、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電発電システムである。
【0003】
しかしながら、従来の温度勾配を利用した熱電変換素子は、熱電変換素子を構成する半導体の価格が高いこと、使用温度範囲が高いこと、及び変換効率が低いことなどの問題がある。更に、結合部の物理的耐久性が弱く振動などが加わる場所に設置できないなどの問題がある。更に、発電に温度勾配を必要とするため、設置場所に制限があり、場合によっては、温度勾配のための冷却装置を用いる必要がある。特に、熱電変換モジュールのうち一次元は温度勾配に使われるため、熱源に対し二次元的な利用となり、周囲すべての熱を三次元的に使えず、熱の利用効率が低いという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-147236号公報
【文献】特開2003-219669号公報
【文献】国際公開WO2017/038988号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】「リニューワブル・アンド・サスティナブル・エナジー・レビューズ(Renewable and Sustainable Energy Reviews)」(オランダ)2014年、第33巻、p.371
【文献】濱川圭弘編著「フォトニクスシリーズ3 太陽電池」2004年、コロナ社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、熱励起電子及び正孔を生成する熱電変換材料と電解質とを組合せることにより、熱エネルギーを電気エネルギーに変換できる熱利用発電池を開発した(特許文献3)。本発明者らは、更に研究を進め、熱電変換材料として、無機固体ゲルマニウムを用いることにより、優れた熱利用発電池を得ることができることを見いだしていた。しかしながら、更なる電池特性の安定性や電池寿命の延長が必要であると考えた。
従って、本発明の目的は、安定な熱利用発電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、安定な熱利用発電池について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、作用極にn型シリコン及びゲルマニウムを用い、電解質に分子量200~1,000,000の特定の繰り返し単位を有するポリマー又はその誘導体を用いることにより、安定した熱利用発電池が得られることを見いだした。更に、添加材としてアルカリ金属イオンを添加することにより、電池寿命が延長することを見出した。
なお、本明細書における熱利用発電池とは、熱利用発電素子に、正極電極及び/又は負極電極を含むものを意味する。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]n型シリコン及びゲルマニウムを含む作用極、対極、分子量200~1,000,000の下記式(1):
【化1】
(式中、Rは、単結合、酸素原子、硫黄原子、-NH-、-PH-、-(P=O)R-、-O-(P=O)H-O-、カーボーネート基(-O-(C=O)-O-)、カルボニル基、スルホニル基、エステル基、又はアリーレンジオキシ基(-O-Ar-O-)であり、
、R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、水酸基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、メチルカルボニル基、メチルスルホニル基、ホスホリル基、スルファニル基(-SH)、ニトロ基、フェノキシ基、メチルエステル基、トリフルオロメチル基であり、
は、炭素数1~3のアルキレン基であり、
繰り返し単位は同一でもよく、2種以上の繰り返し単位の組合せでもよい)
で表されるポリマー又はその誘導体を含む固体電解質、を含む熱利用発電池であって、前記固体電解質がイオン源として銅イオン又は鉄イオンを含む、熱利用発電池、
[2]前記固体電解質が、アルカリ金属イオンを含む、[1]に記載の熱利用発電池、
[3]前記アルカリ金属イオンが、LiCl又はKClとして含まれる、[2]に記載の熱利用発電池、
[4]前記銅イオンが、一価及び二価の銅イオンである、[1]~[3]のいずれかに記載の熱利用発電池、
[5]前記作用極が、クロムを介してn型シリコン及びゲルマニウムが積層されている、[1]~[4]のいずれかに記載の熱利用発電池、
[6]前記ポリマーが、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンカーボネート、及びポリピロレンカーボネートからなる群から選択されるポリマー又はその誘導体である、[1]~[5]のいずれかに記載の熱利用発電池、
[7][1]~[6]のいずれかに記載の熱利用発電池を25℃以上に加熱し、発電する工程を含む、熱利用発電方法、及び
[8]前記加熱発電工程後に、絶縁状態で放置する工程、及び更に熱利用発電池を25℃以上に加熱し、発電する工程を含む、[7]に記載の熱利用発電方法、
に関する。
また、本明細書は、
[1]n型シリコン及びゲルマニウムを含む作用極、対極、分子量200~600,000のポリエチレングリコール又はその誘導体を含む固体電解質、を含む熱利用発電池であって、前記固体電解質がイオン源として銅イオン又は鉄イオンを含む、熱利用発電池、
[2]前記固体電解質が、アルカリ金属イオンを含む、[1]に記載の熱利用発電池、
[3]前記アルカリ金属イオンが、LiCl又はKClとして含まれる、[2]に記載の熱利用発電池、
[4]前記銅イオンが、一価及び二価の銅イオンである、[1]~[3]のいずれかに記載の熱利用発電池、
[5]前記作用極が、クロムを介してn型シリコン及びゲルマニウムが積層されている、[1]~[4]のいずれかに記載の熱利用発電池、
[6][1]~[5]のいずれかに記載の熱利用発電池を25℃以上に加熱し、発電する工程を含む、熱利用発電方法、及び
[7]前記加熱発電工程後に、絶縁状態で放置する工程、及び更に熱利用発電池を25℃以上に加熱し、発電する工程を含む、[6]に記載の熱利用発電方法、
を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱利用発電池によれば、安定的に熱利用発電を行うことができる。また、本発明の1つの態様によれば、長寿命の熱利用発電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1で得られた熱電発電池のCV測定(a)及び放電測定(b)を示したグラフである。
図2】実施例2で得られた熱電発電池のCV測定(a)及び放電測定(b)を示したグラフである。
図3】実施例3で得られた熱電発電池のCV測定(a)及び放電測定(b)を示したグラフである。
図4】実施例4で得られた熱電発電池のCV測定(a)及び放電測定(b)を示したグラフである。
図5】実施例5で得られた熱電発電池のCV測定(a)及び放電測定(b)を示したグラフである。
図6】実施例6で得られた熱電発電池の80℃でのCV測定(a)、放電測定(b)、35℃でのCV測定(c)、及び室温放置後の放電測定(d)を示したグラフである。
図7】実施例7で得られた熱電発電池のCV測定(a)及び放電測定(b)を示したグラフである。
図8】実施例8で得られた熱電発電池のCV測定(a)、及び放置後の放電測定(b)を示したグラフである。
図9】実施例9で得られた熱電発電池のCV測定(a)、及び放電測定(b)を示したグラフである。
図10】実施例10で得られた熱電発電池のCV測定を示したグラフである。
図11】実施例11で得られた熱電発電池のCV測定(a)及び放電測定(b)を示したグラフである。
図12】実施例12で得られた熱電発電池のCV測定を示したグラフである。
図13】実施例13で得られた熱電発電池のCV測定を示したグラフである。
図14】実施例14で得られた熱電発電池のCV測定を示したグラフである。
図15】実施例15で得られた熱電発電池のCV測定(a)及び放電測定(b)を示したグラフである。
図16】実施例16で得られた熱電発電池のCV測定(a)及び放電測定(b)を示したグラフである。
図17】実施例17で得られた熱電発電池の70℃でのCV測定(a)及び放電測定(b)、並びに50℃での放電測定(c)を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1]熱利用発電池
本発明の熱利用発電池は、n型シリコン及びゲルマニウムを含む作用極、対極、分子量200~1,000,000の下記式(1):
【化2】
(式中、Rは、単結合、酸素原子、硫黄原子、-NH-、-PH-、-(P=O)R-、-O-(P=O)H-O-、カーボーネート基(-O-(C=O)-O-)、カルボニル基、スルホニル基、エステル基、又はアリーレンジオキシ基(-O-Ar-O-)であり、
、R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、水酸基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、メチルカルボニル基、メチルスルホニル基、ホスホリル基、スルファニル基(-SH)、ニトロ基、フェノキシ基、メチルエステル基、トリフルオロメチル基であり、
は、炭素数1~3のアルキル基であり、
繰り返し単位は同一でもよく、2種以上の繰り返し単位の組合せでもよい)
で表されるポリマー又はその誘導体を含む固体電解質を含み、そして前記固体電解質がイオン源として銅イオン又は鉄イオンを含む。
前記アリーレンジオキシ基としては、例えばフェニレンジオキシ基又はナフチレンジオキシ基が挙げられる。
【0011】
《作用極》
本発明の作用極は、n型シリコン及びゲルマニウムを含む限りにおいて、特に限定されるものではない。ゲルマニウムは、正孔及び電子を生成する熱電変換材料であり、約1018/cmの熱励起電子及び正孔を生成することができる。
n型シリコンは、熱電変換材料で生成された熱励起電子を輸送する電子輸送材料である。n型シリコンは、純粋なシリコンに不純物としてリンなどの5価元素を微量に添加することによって得られる。4個の価電子を有する純粋なシリコンは、電子が移動しないため絶縁体であるが、n型シリコンは価電子が5個のリンなどを含むことにより、余った1つの電子が自由に移動し、導電体となったものである。5価の元素としては、例えば、リン、又はヒ素が挙げられる。
【0012】
作用極におけるn型シリコンとゲルマニウムとの量比は、本発明の効果が得られる限りにおいて特に限定されるものではないが、1000:1~10:1であり、より好ましくは500:1~100:1である。前記範囲であることにより、ゲルマニウムにより生成された熱励起電子をn型シリコンが効率よく輸送することができる。
本発明における作用極は、例えば、n型シリコンにゲルマニウムを積層することによって作製することができる。しかし、n型シリコンに、直接ゲルマニウムを積層した場合、結合が弱いことがある。従って、例えばバインダーを介して、n型シリコンとゲルマニウムとを積層することが好ましい。バインダーとしては、クロム、ニッケル、チタン又はスズなどが挙げられる。バインダーの量は、n型シリコンとゲルマニウムとの結合を強固にできる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えばゲルマニウム100体積部に対して、0.001~1体積部のバインダーを使用すればよい。
【0013】
《対極》
対極は、電子を輸送できる限りにおいて限定されるものではないが、例えば、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、IZO(In-Zn-O)、又はIGZO(In-Ga-Zn-O)が挙げられる。また、銅イオン又は鉄イオンと反応しない金属、例えばチタン、金、白金、銀、タングステン、タンタル、ステンレス、グラフェン、インジウム、ロジウム、クロム、カーボン、それらの合金又はそれらの組合せを挙げることができる。
対極は、対極層として設けてもよく、導線の態様で設けてもよい。対極層の場合、真空蒸着法又はスピンコート法などによって、製造することができる。
【0014】
《固体電解質》
固体電解質は、分子量200~1,000,000の下記式(1):
【化3】
(式中、Rは、単結合、酸素原子、硫黄原子、-NH-、-PH-、-(P=O)R-、-O-(P=O)H-O-、カーボーネート基(-O-(C=O)-O-)、カルボニル基、スルホニル基、エステル基、又はアリーレンジオキシ基(-O-Ar-O-)であり、
、R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、水酸基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、メチルカルボニル基、メチルスルホニル基、ホスホリル基、スルファニル基(-SH)、ニトロ基、フェノキシ基、メチルエステル基、トリフルオロメチル基であり、
は、炭素数1~3のアルキレン基であり、
繰り返し単位は同一でもよく、2種以上の繰り返し単位の組合せでもよい)
で表されるポリマー又はその誘導体(以下、ポリマー等と称することがある)を含む。前記ポリマーは、式(1)の繰り返し単位からなるポリマーでもよい。また、前記固体電解質は前記ポリマー又はその誘導体からなる固体電解質でもよい。
前記ポリマーは、式(1)に含まれる繰り返し単位を有する限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンカーボネート、又はポリロピレンカーボネートが挙げられる。
2つの末端の基は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば水素原子、水酸基、炭素数1~6のアルキルオキシラン基、アクリロイル基、炭素数1~6のアルキルカルボキシル基、炭素数1~6のアルキルアミノ基、炭素数1~6のアルキル基、アルデヒド基、炭素数1~6のアルキルアルデヒド基、炭素数1~6のアルキルアミド基、炭素数1~6のアルキルアジド基、炭素数1~6のアルキルヒドラジド基、炭素数1~6のアルキルイソシアネート基、炭素数1~6のアルキルマレイミド基、スルホニル基、アミノ基、又はチオール基が挙げられるが、好ましくは水素原子及び/又は水酸基である。
また、前記ポリマーの誘導体は側鎖に置換基を有していてもよい。すなわち、側鎖の水素原子が置換されていてもよい。置換基は特に限定しないが、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基、アリール基、グリシジル基、シアノ基、メチルスルホニル基、ホスホリル基、ニトロ基などの一般的な基が使用可能である。
ポリマー又はその誘導体の分子量は、200~1,000,000であるが、好ましくは400~100,000であり、より好ましくは400~20,000であり、更に好ましくは400~6,000であり、最も好ましくは600~2,000である。
なお、本明細書において、ポリマー又はその誘導体の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量を意味するものとする。重量平均分子量の具体的な測定条件の一例としては、例えば以下の測定条件を挙げることができる。
GPC装置:HLC-8120(東ソー社製):
カラム:TSK gel Multipore HXL-M(東ソー社製、7.8mmID(内径)×30.0cm)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
【0015】
《ポリエチレングリコール》
固体電解質は、1つの実施態様として、分子量200~1,000,000のポリエチレングリコール又はその誘導体(以下、ポリエチレングリコール等と称することがある)を含む。
ポリエチレングリコール(PEG)は、エチレングリコールが重合した高分子化合物であり、HO-(CH-CH-O)n-1-CH-CH-OHの式で表される。すなわち、ポリエチレングリコールの繰り返し単位は、下記式(2)で表される。
【化4】
ポリエチレングリコールの誘導体は、特に限定されるものではないが、両末端の水素原子(-H)の一方又は両方が、置換基によって置換された誘導体が挙げられる。置換基としては、例えば炭素数1~6のアルキルオキシラン基、アクリロイル基、炭素数1~6のアルキルカルボキシル基、炭素数1~6のアルキルアミノ基、炭素数1~6のアルキル基、アルデヒド基、炭素数1~6のアルキルアルデヒド基、炭素数1~6のアルキルアミド基、炭素数1~6のアルキルアジド基、炭素数1~6のアルキルヒドラジド基、炭素数1~6のアルキルイソシアネート基、炭素数1~6のアルキルマレイミド基、スルホニル基、アミノ基、又はチオール基が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジアクリレート、HN-(CH-CH-O)n-1-CH-CH-O-CH-CH-COOH、HN-(CH-CH-O)n-1-CH-CH-O-CH-CH-NH、HOOC-(CH-CH-O)n-1-CH-CH-O-CH-CH-COOH、HOOC-CH-CH-COO-(CH-CH-O)n-1-CH-CH-O-CO-CH-CH-COOH、又はポリエチレングリコールジメタクリレートを挙げることができる。また、ポリエチレングリコールの誘導体は側鎖に置換基を有していてもよい。置換基は特に限定しないが、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基、アリール基、グリシジル基、シアノ基、メチルスルホニル基、ホスホリル基、ニトロ基などの一般的な基が使用可能である。
【0016】
《ポリプロピレングリコール》
固体電解質は、1つの実施態様として、分子量200~1,000,000のポリプロピレングリコール又はその誘導体(以下、ポリプロピレングリコール等と称することがある)を含む。
ポリプロピレングリコール(PPG)は、プロピレングリコールが重合した高分子化合物であり、HO-(CH-CH(CH)-O)n-1-CH-CH(CH)-OHの式で表される。すなわち、ポリプロピレングリコールの繰り返し単位は、下記式(3)で表される。
【化5】
ポリプロピレングリコールの誘導体は、特に限定されるものではないが、両末端の水素原子(-H)の一方又は両方が、置換基によって置換された誘導体が挙げられる。末端の置換基としては、前記ポリエチレングリコールの項に記載の置換基が挙げられ、具体的な誘導体も前記ポリエチレングリコールの項に記載の誘導体に準じる。また、ポリプロピレングリコールの誘導体は側鎖に置換基を有していてもよい。側鎖の置換基としては前記ポリエチレングリコールの項に記載の置換基が挙げられる。
【0017】
《ポリエチレンカーボネート》
固体電解質は、1つの実施態様として、分子量200~1,000,000のポリエチレンカーボネート又はその誘導体(以下、ポリエチレンカーボネート等と称することがある)を含む。
ポリエチレンカーボネート(PEC)は、エチレンカーボネートが重合した高分子化合物であり、HO-(CH-CH-O-CO-O)n-1-CH-CH-O-CO-OHの式で表される。すなわち、ポリエチレンカーボネートの繰り返し単位は、下記式(4)で表される。
【化6】
ポリエチレンカーボネートの誘導体は、特に限定されるものではないが、両末端の水素原子(-H)の一方又は両方が、置換基によって置換された誘導体が挙げられる。末端の置換基としては、前記ポリエチレングリコールの項に記載の置換基が挙げられ、具体的な誘導体も前記ポリエチレングリコールの項に記載の誘導体に準じる。また、ポリエチレンカーボネートの誘導体は側鎖に置換基を有していてもよい。側鎖の置換基としては前記ポリエチレングリコールの項に記載の置換基が挙げられる。
【0018】
《ポリロピレンカーボネート》
固体電解質は、1つの実施態様として、分子量200~1,000,000のポリロピレンカーボネート又はその誘導体(以下、ポリロピレンカーボネート等と称することがある)を含む。
ポリロピレンカーボネート(PPC)は、プロピレンカーボネートが重合した高分子化合物であり、HO-(CH-CH(CH)-O-CO-O)n-1-CH-CH(CH)-O-CO-OHの式で表される。すなわち、ポリロピレンカーボネートの繰り返し単位は、下記式(5)で表される。
【化7】
ポリロピレンカーボネートの誘導体は、特に限定されるものではないが、両末端の水素原子(-H)の一方又は両方が、置換基によって置換された誘導体が挙げられる。末端の置換基としては、前記ポリエチレングリコールの項に記載の置換基が挙げられ、具体的な誘導体も前記ポリエチレングリコールの項に記載の誘導体に準じる。また、ポリロピレンカーボネートの誘導体は側鎖に置換基を有していてもよい。側鎖の置換基としては前記ポリエチレングリコールの項に記載の置換基が挙げられる。
【0019】
《ポリフッ化ビニリデン》
固体電解質は、1つの実施態様として、分子量200~1,000,000のポリフッ化ビニリデン又はその誘導体(以下、ポリフッ化ビニリデン等と称することがある)を含む。
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、フッ化ビニリデンが重合した高分子化合物であり、HO-(CH-CF-Hの式で表される。すなわち、ポリフッ化ビニリデンの繰り返し単位は、下記式(6)で表される。
【化8】
ポリフッ化ビニリデンの誘導体は、特に限定されるものではないが、両末端の水素原子(-H)の一方又は両方が、置換基によって置換された誘導体が挙げられる。末端の置換基としては、前記ポリエチレングリコールの項に記載の置換基が挙げられ、具体的な誘導体も前記ポリエチレングリコールの項に記載の誘導体に準じる。また、ポリフッ化ビニリデンの誘導体は側鎖に置換基を有していてもよい。側鎖の置換基としては前記ポリエチレングリコールの項に記載の置換基が挙げられる。
【0020】
《ポリビニルアルコール》
固体電解質は、1つの実施態様として、分子量200~1,000,000のポリビニルアルコール又はその誘導体(以下、ポリビニルアルコール等と称することがある)を含む。
ポリビニルアルコール(PVA)は、ビニルアルコールが重合した高分子化合物であり、HO-(CH-CH(OH))-Hの式で表される。すなわち、ポリビニルアルコールの繰り返し単位は、下記式(7)で表される。
【化9】
ポリビニルアルコールの誘導体は、特に限定されるものではないが、両末端の水素原子(-H)の一方又は両方が、置換基によって置換された誘導体が挙げられる。末端の置換基としては、前記ポリエチレングリコールの項に記載の置換基が挙げられ、具体的な誘導体も前記ポリエチレングリコールの項に記載の誘導体に準じる。また、ポリビニルアルコールの誘導体は側鎖に置換基を有していてもよい。側鎖の置換基としては前記ポリエチレングリコールの項に記載の置換基が挙げられる。
【0021】
《ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)》
固体電解質は、1つの実施態様として、分子量200~1,000,000のポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)又はその誘導体(以下、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)等と称することがある)を含む。
ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)は、フッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンが共重合した高分子化合物であり、HO-(CH-CF(CF-C(CF)F)-Hの式で表される。すなわち、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)の繰り返し単位は、下記式(8)で表される。
【化10】
ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)の誘導体は、特に限定されるものではないが、両末端の水素原子(-H)の一方又は両方が、置換基によって置換された誘導体が挙げられる。末端の置換基としては、前記ポリエチレングリコールの項に記載の置換基が挙げられ、具体的な誘導体も前記ポリエチレングリコールの項に記載の誘導体に準じる。また、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)の誘導体は側鎖に置換基を有していてもよい。側鎖の置換基としては前記ポリエチレングリコールの項に記載の置換基が挙げられる。
【0022】
本発明における固体電解質は、高温で準固体である固体電解質を意味している。
【0023】
《イオン源》
本発明の固体電解質に含まれるイオン源は、銅イオン又は鉄イオンである限りにおいて、特に限定されるものではなく、一価銅イオン、二価銅イオン、二価鉄イオン、又は三価鉄イオンが挙げられる。しかしながら、銅イオン又は鉄イオンは価数が異なる安定な2種のイオンが好ましい。一方のイオンが酸化又は還元されて他方のイオンとなり、電子と正孔を運ぶことができるからである。
従って、銅イオンの場合、一価銅イオン及び二価銅イオンが好ましく、鉄イオンの場合、二価鉄イオン及び三価鉄イオンが好ましい。一価銅イオンとして、例えばCuCl、CuBr、酢酸銅(I)、ヨウ化銅(I)又は硫酸銅(I)を用いることができる。二価銅イオンとして、CuCl、CuTSFI、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)又は銅(II)アセチルアセトナートを用いることができる。二価鉄イオンとして、Fe(C(フェロセン)、K[Fe(CN)]、鉄(II)アセチルアセトナート、塩化鉄(II)硫酸鉄(II)又は酢酸鉄(II)を用いることができる。三価鉄イオンとして、FeCl、K[Fe(CN)]、鉄(III)アセチルアセトナート又は硫酸鉄(III)を用いることができる。
【0024】
イオン源の濃度は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば前記ポリマー等に対して、0.01~98モル%となるように添加することが好ましい。前記範囲であることにより、イオン源が効率良く電子と正孔を運ぶことができる。
【0025】
固体電解質はその他の成分を含むことができる。その他の成分としては、限定されるものではないが、例えばイオン源を溶解又は分散する極性溶媒(水、メタノール、トルエン、テトラヒドロフランなど)、バインダー(ポリビニルアルコール、メチルセルロース、アクリル樹脂、寒天など)、正孔伝達性材料の成形を助ける焼結助剤(酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化カルシウムなど)などを挙げることができる。
【0026】
《添加材》
本発明の熱利用発電池は、好ましくは添加材としてアルカリ金属イオンを含む。アルカリ金属イオンとして、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、又はフランシウムイオンが挙げられるが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンが好ましい。アルカリ金属イオンを含むことによって、電池の寿命を延長させ、熱源に放置することで放電特性を回復させることができる。前記アルカリ金属イオンは、限定されるものではないが、ハロゲン化物の形態で固体電解質に添加されることが好ましい。アルカリ金属イオンとハロゲン化物を形成するハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチンが挙げられる。例えば、アルカリ金属イオンと塩素との化合物としてLiCl、NaCl、KCl、RbCl、CsCl、又はFrClが挙げられるが、LiCl、NaCl、又はKClが好ましい。
【0027】
アルカリ金属ハロゲン化物(例えば、LiCl又はKCl)の添加量は、電池寿命を延長できる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えばPEGなどのポリマー100重量部に対して、0.001~100重量部であり、好ましくは0.01~10重量部であり、より好ましくは0.03~0.1重量部である。前記範囲であることにより、特に優れた電池寿命の延長の効果が得られる。
【0028】
《無機酸化物》
本発明の熱利用発電池は、限定されるものではないが、無機酸化物を含むことができる。無機酸化物としては、本発明の効果が得られる限りにおいて特に限定されるものではないが、例えば酸化チタン(TiO)、酸化アルミ(Al)、又は二酸化ケイ素(SiO)が挙げられる。無機酸化物を含むことにより、固体電解質の強度を向上させ、短絡を防ぐことができる。
【0029】
《作用》
本発明の熱利用発電池が、安定して発電できるメカニズム及び優れた電池寿命を示すメカニズムについては、詳細に解析されたわけではないが、以下のように推定できる。しかしながら、本発明は以下の推定により限定されるものではない。
本発明の熱利用発電池は、固体電解質として分子量200~1,000,000の特定の繰り返し単位を有するポリマー又はその誘導体を用いている。熱利用発電方法は、イオンの酸化還元反応と、イオンの拡散のバランスを制御することにより、長期動作が可能となる。すなわち、電極表面で酸化還元されたイオンが、電解質内で酸化還元平衡に達することが重要である。前記ポリマー又はその誘導体を用いることによりイオンの拡散速度を、高温でも効果的に制御することができる。更に、動作温度域を広げるためにも、高温域で安定な高分子が必要となり、本発明の熱利用発電池は安定な発電ができると推定される。
更に、本発明の熱利用発電池は添加材として、アルカリ金属イオンを含むことにより、熱利用発電池の放電維持時間が劇的に延長される。アルカリ金属イオンは、電極表面で酸化還元された銅イオン又は鉄イオンと間接的に相互作用をし、銅イオン又は鉄イオンの固体電解質内への拡散を促進していると推定される。更に、銅イオン又は鉄イオンとの間接的な相互作用による銅イオン又は鉄イオンの拡散は、発電を終了させた絶縁状態で、特に促進されると考えられる。そのため、絶縁状態の後に、熱利用発電池の放電特性を回復させることができると推定される。
また、前記ポリマーは、繰り返し単位や組合せに2つの炭素原子を有することにより、イオンの拡散速度を、高温でも効果的に制御することができると推定される。更に、R、R、R、Rがアルキル基、フッ素原子、水酸基などの特定の基であることにより、イオンの拡散速度を、高温でも効果的に制御することができると推定される。
【0030】
本発明の熱利用発電池は、前記作用極及び/又は対極に、銅イオン又は鉄イオンと反応しない金属、例えばチタン、金、白金、銀、タングステン、タンタル、ステンレス、グラフェン、インジウム、ロジウム、クロム、カーボン、それらの合金又はそれらの組合せなどの導電体を付着させたものでもよい。なお、作用極及び対極に、同じ材料を用いてもよい。
導電体は、導線の態様で設けてもよく、また、導電体の層として、設けてもよい。導電体層の場合、真空蒸着法又はスピンコート法などによって、製造することができる。
【0031】
[2]熱利用発電方法
本発明の熱利用発電方法は、前記熱利用発電池を25℃以上に加熱し、発電する工程(加熱発電工程)を含む。加熱温度は、本発明の熱利用発電池が発電できる限りにおいて、特に限定されるものではない。すなわち、ゲルマニウムが発電に十分な数の熱励起電子及び正孔を生成でき、電荷輸送イオン対が電解質内を移動できる限りにおいて特に限定されるものではないが、例えば25℃以上であり、好ましくは35℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは80℃以上である。温度の上限も電荷輸送イオン対が電解質内を行き来できる温度である限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば300℃以下であり、好ましくは120℃以下である。
なお、本発明の熱利用発電池が実際に発電する温度は、ゲルマニウムの発電に十分な数の熱励起電子及び正孔を生じる温度であることのほか、材料固有の電子移動のし易さや、固体電解質との組合せによるゲルマニウムとの界面で電子移動のし易さによって決まるが、これらの条件は適宜検討することが可能である。
【0032】
本発明の熱利用発電方法においては、前記加熱発電工程後に、絶縁状態で放置する工程(放置工程)、及び更に熱利用発電池を25℃以上に加熱し、発電する工程(加熱発電工程)を含んでもよい。前記放置工程における絶縁状態とは、一例としてスイッチを切る工程以後の状態を意味する。前記放置工程によって、銅イオン又は鉄イオンなどのイオン源が、固体電解質で拡散し、効率的な加熱発電が可能になる。また、電池寿命を延長することができる。
数分の放置でもイオン源の拡散は起きるため、放置時間は特に限定されるものではないが、イオン源の拡散の状態を考慮すると、例えば1時間以上であり、好ましくは2時間以上であり、より好ましくは6時間以上であり、更に好ましくは12時間以上である。放置時間が長いほど、イオン源の拡散がおきるため、上限は限定されないが、効率的な発電を行うためには、放置時間の上限は2日以内が好ましい。
また、本発明の熱利用発電方法においては、前記放置工程及び加熱発電工程を、2回以上繰り返してもよい。前記放置工程及び加熱発電工程の繰り返し回数は、特に限定されることはない。
【実施例
【0033】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0034】
《実施例1》
本実施例では、固体電解質としてPEG600、イオン源としてCuClを使用して熱電発電池を作製した。
作用極は、約0.5ミリメートル厚のn-Si上にバインダーとしてCrを20ナノメートル堆積させ、更にその上からGeを2マイクロメートル堆積させ、25×15×0.5mmにカットしたものを用いた。
対極は、25×15×2.2mmのサイズにカットしたフッ素ドープ酸化スズ(FTO、シート抵抗7Ω/□、Aldrich)を使用した。
電解質は、乳鉢にPEG600(和光)を0.1g入れ、CuCl(0.01g)を添加し、10分間攪拌することによって、調製した。得られた電解質(1μL)を前記作用極のゲルマニウム上に滴下した。耐熱性を有する絶縁性両面テープ(5mm孔を有するカプトンテープ)をスペーサーとして用いて、作用極のゲルマニウム側と、対極のFTOとを接着させた。すなわち、発電部の電極面積は直径5mmの円であり、78.5平方ミリメートルである。
得られた電池を恒温槽に設置した。CV測定は、電位走査によりScan rate10mV/secで行った。また、放電測定は、10ナノアンペアで行った。結果を表1及び図1に示す。開放電圧約0.2V、短絡電流4マイクロアンペアの発電特性が認められた(図1a)。放電は10ナノアンペアにおいて2時間以上継続した(図1b)。
【0035】
《実施例2》
本実施例では、添加材としてアセトニトリル(ACN)を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して熱利用発電池を作製した。
乳鉢にPEG600を0.1g入れ、CuCl(0.01g)を添加し、添加材としてACN(0.25mL)を添加し、80℃で20分放置することによって、ACNを蒸発させ、電解質を調製した。結果を表1及び図2に示す。
開放電圧約0.2V、短絡電流約5マイクロアンペアの発電特性が認められた(図2a)。放電は10ナノアンペアにおいて0.2V程度で安定し、4時間程度続いた(図2b)。
【0036】
《実施例3》
本実施例では、固体電解質として、PEG600に代えてPEG2000を用いたことを除いては、実施例2の操作を繰り返して熱利用発電池を作製した。
乳鉢にPEG2000を0.1g入れ、CuCl(0.01g)を添加し、添加材としてACN(0.5mL)を添加し、80℃で10分間攪拌した。80℃で20分放置することによって、ACNを蒸発させ、電解質を調製した。結果を表1及び図3に示す。
開放電圧約0.2V、短絡電流7マイクロアンペアの発電特性が確認された(図3a)。放電は10ナノアンペアにおいて安定し、約4時間半続いた(図3b)。
【0037】
《実施例4》
本実施例では、固体電解質として、PEG600に代えて、PEG600/PEDE500の混合物を用いたことを除いては、実施例2の操作を繰り返して熱利用発電池を作製した。
乳鉢にPEG600を0.1g、及びPEDE500を0.1g入れ、CuCl(0.02g)を添加し、添加材としてACN(0.5mL)を添加し、80℃で10分間攪拌した。80℃で20分間放置し、ACNを蒸発させることによって、電解質を調製した。結果を表1及び図に示す。
開放電圧0.2V、短絡電流1.3マイクロアンペアの発電が確認された(図4a)。放電は10ナノアンペアにおいて、6時間続いた(図4b)。
【0038】
《実施例5》
本実施例では、イオン源として、CuClに代えて、FeClを用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して熱利用発電池を作製した。
乳鉢にPEG600を1g入れ、FeCl(0.162g)を添加し、80℃でFeClをPEGに溶解させることによって、電解質を調製した。結果を表1及び図5に示す。
開放電圧約0.4V、短絡電流約5マイクロアンペアの発電特性が認められた(図5a)。放電は10ナノアンペアにおいて安定して約4時間確認された(図5b)。
【0039】
《比較例1》
本比較例では、作用極としてn-Si及びGeに代えてGeのみを用い、イオン源としてCuClに代えてFerrocneを用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して熱利用発電池を作製した。
作用極は、約0.5ミリメートル厚のn-Si上にバインダーとしてCrを20ナノメートル堆積させ、更にその上からGeを2マイクロメートル堆積させ、25×15×0.5mmにカットしたものを用いた。
対極は、25×15×2.2mmのサイズにカットしたフッ素ドープ酸化スズ(FTO、シート抵抗7Ω/□、Aldrich)を使用した。
電解質は、乳鉢にPEG600(和光)を0.1g入れ、Ferrocne(0.0093g)を添加し、10分間攪拌することによって、調製した。結果を表1に示す。
開放電圧約0.5Vであったが、短絡電流約0.1マイクロアンペアと低く、放電維持時間も40分と短かった。
【0040】
《比較例2》
本比較例では、イオン源としてCuClに代えてSnCl・HOを用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して熱利用発電池を作製した。
電解質は、乳鉢にPEG600(和光)を0.1g入れ、SnCl・HO(0.0226g)を添加し、10分間攪拌することによって、調製した。結果を表1に示す。
発電が起きなかった。
【0041】
《比較例
本比較例では、固体電解質としてPEG600に代えてPEI500を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して熱利用発電池を作製した。
電解質は、乳鉢にPEI500(和光)を0.1g入れ、CuCl(0.02g)を添加し、10分間攪拌することによって、調製した。結果を表1に示す。
発電が起きなかった。
【0042】
《実施例6》
本実施例では、イオン源として、CuClに代えて、CuCl及びCuClを用いたこと、及び添加剤としてLiClを用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して熱利用発電池を作製した。
電解質は、乳鉢にPEG600(和光)を0.1g入れ、CuCl(0.01g)、CuCl(0.014g)、及び添加材としてLiCl(0.005g)を添加し、10分間攪拌することによって、調製した。結果を表1及び図6に示す。
開放電圧約0.25V、短絡電流約4マイクロアンペアの発電特性が認められた(図6a)。放電は10ナノアンペアにおいて、505時間確認された(図6b)。
更に、35℃においても開放電圧約0.1V、短絡電流約5マイクロアンペアの発電を確認することができた(図6c)。放電は100ナノアンペアにおいて、2.5時間確認された。
また、電池の放電(1μA)終了後、室温で12時間放置後、再び放電特性(100nA)が確認された。すなわち、室温の熱エネルギーにより放電特性が回復することが分かった(図6d)。
以上のことから、上記電池構成において、安定して発電し、室温のエネルギーで放電特性が回復することが分かった。
【0043】
《実施例7》
本実施例では、固体電解質として、PEG600に代えて、分子量10万のPEG100000を使用した以外は、実施例6の操作を繰り返して、熱利用発電池を作製した。
乳鉢にPEG100000を0.5g入れ、CuCl(0.05g)、CuCl(0.07g)、及び添加材としてLiCl(0.1g)を添加し、室温下で10分間攪拌した。60で2時間真空乾燥によって電解質を調製した。結果を表1及び図7に示す。
に80℃でのCV測定を示す。開放電圧0.35V、短絡電流8マイクロアンペアの発電が確認された(図7a)。放電は10ナノアンペアにおいて70時間安定していた(図7b)。
【0044】
《実施例8》
本実施例では、添加材として、更にアセトニトリルを使用した以外は、実施例6の操作を繰り返して、熱利用発電池を作製した。
電解質は、乳鉢にPEG600(和光)を0.1g入れ、CuCl(0.01g)、CuCl(0.014g)、及び添加材としてLiCl(0.005g)及びACN(0.5mL)を添加し、10分間攪拌することによって、調製した。結果を表1及び図8に示す。
図8aに80℃でのCV測定を示す。開放電圧約0.35V、短絡電流約6マイクロアンペアの発電特性が認められた(図8a)。次に、この電池を80℃に保持し、100ナノアンペアにおける放電特性を確認したところ、平均0.4V程度の電圧を示し、80時間程度で放電が終了した。しかし、この電池を80℃で1日放置したところ、再び0.5Vの開放電圧、2マイクロアンペアの短絡電流の発電を確認した。この放電は約1日継続した。更に80℃で2日放置したところ、やはり開放電圧0.5Vの放電特性が回復し(図8b)、この放電は約2日継続した。
【0045】
《実施例9》
本実施例では、添加材として、LiClに代えて、KClを用いたことを除いては、実施例6の操作を繰り返して、熱利用発電池を作製した。
電解質は、乳鉢にPEG600を0.1g入れ、CuCl(0.01g)、CuCl(0.014g)、添加材としてKCl(0.034g)、及びACN(0.25mL)、エタノール(0.25mL)を添加し室温下で10分間攪拌した。60で4時間真空乾燥によって電解質を調製した。結果を表1及び図9に示す。
開放電圧0.25V、短絡電流約10マイクロアンペアの発電が確認された(図9a)。放電は10ナノアンペアにおいて120時間継続した(図9b)。
【0046】
【表1】
【0047】
《実施例10》
本実施例では、固体電解質としてPVDF1000000、イオン源としてCuCl、CuClを使用して熱電発電池を作製した。
作用極は、約0.5mm厚のn-Si上にバインダーとしてCrを20nm堆積させ、更にその上からGeを2μm堆積させ、1cm直径の円盤にカットしたものを用いた。
対極は、PEDOT/PSSを用いてコーィングした1cm直径、0.5mm厚のSUS円盤を使用した。
電解質は、乳鉢にPVDF(0.1g)、CuCl(0.02g)、及びLiCl(0.03g)を入れた。NMP(2mL)を入れて、60℃に加熱しながら研磨、攪拌した。完全に溶かした後、CuCl(0.028g)を添加し研磨、攪拌した。得られたゲルをPE膜に塗布して真空乾燥を行った。グローブボックス内で2035ボタン電池ハードウェアにおいて試験電池を組立てた。得られた電池を恒温槽に設置した。CV測定は、電位走査によりScan rate10mV/secで行った。80℃で開放電圧約0.48V、短絡電流12μAの発電特性が認められた(図10、表2)。
【0048】
《実施例11》
本実施例では、固体電解質としてPPC40000、イオン源としてCuCl、CuClを使用して熱電発電池を作製した。
作用極は、約0.5mm厚のn-Si上にバインダーとしてCrを20nm堆積させ、更にその上からGeを2μm堆積させ、1cm直径の円盤にカットしたものを用いた。
対極は、PEDOT/PSSを用いてコーィングした1cm直径、0.5mm厚のSUS円盤を使用した。
電解質は、乳鉢にPPC(0.1g)、CuCl(0.02g)、及びLiCl(0.03g)を入れた。NMP2mLを入れて、60℃に加熱しながら研磨、攪拌した。完全に溶かした後、CuCl(0.028g)を添加し研磨、攪拌した。得られたゲルをPE膜に塗布して真空乾燥を行った。グローブボックス内で2035ボタン電池ハードウェアにおいて試験電池を組立てた。得られた電池を恒温槽に設置した。CV測定は、電位走査によりScan rate10mV/secで行った。80℃で開放電圧約0.15V、短絡電流120μAの発電特性が認められた。放電は1μAにおいて14時間以上継続した(図11、表2)。
【0049】
《実施例12》
本実施例では、固体電解質としてPPG2000、イオン源としてCuCl、CuClを使用して熱電発電池を作製した。
作用極は、約0.5mm厚のn-Si上にバインダーとしてCrを20nm堆積させ、更にその上からGeを2μm堆積させ、1cm直径の円盤にカットしたものを用いた。
対極は、PEDOT/PSSを用いてコーィングした1cm直径、0.5mm厚のSUS円盤を使用した。
電解質は、乳鉢にPPG(0.1g)、CuCl(0.02g)、及びLiCl(0.03g)を入れた。NMP(2mL)入れて、60℃に加熱しながら研磨、攪拌した。完全に溶かした後、CuCl(0.028g)を添加し研磨、攪拌した。得られたゲルをPE膜に塗布して真空乾燥を行った。グローブボックス内で2035ボタン電池ハードウェアにおいて試験電池を組立てた。得られた電池を恒温槽に設置した。CV測定は、電位走査によりScan rate10mV/secで行った。80℃で開放電圧約0.18V、短絡電流2.1μAの発電特性が認められた(図12、表2)。
【0050】
《実施例13》
本実施例では、固体電解質としてPPG2000/PVDF1000000、イオン源としてCuCl、CuClを使用して熱電発電池を作製した。
作用極は、約0.5mm厚のn-Si上にバインダーとしてCrを20nm堆積させ、更にその上からGeを2μm堆積させ、1cm直径の円盤にカットしたものを用いた。
対極は、PEDOT/PSSを用いてコーィングした1cm直径、0.5mm厚のSUS円盤を使用した。
電解質は、乳鉢にPPG(0.05g)、PVDF(0.05g)、CuCl(0.02g)、及びLiCl(0.03g)を入れた。NMP(2mL)入れて、60℃に加熱しながら研磨、攪拌した。完全に溶かした後、CuCl 0.028gを添加し研磨、攪拌した。得られたゲルをPE膜に塗布して真空乾燥を行った。グローブボックス内で2035ボタン電池ハードウェアにおいて試験電池を組立てた。得られた電池を恒温槽に設置した。CV測定は、電位走査によりScan rate10mV/secで行った。
80℃で開放電圧約0.35V、短絡電流110μAの発電特性が認められた(図13、表2)。
【0051】
《実施例14》
本実施例では、固体電解質としてPEG100000/PVDF1000000、イオン源としてCuCl、CuClを使用して熱電発電池を作製した。
作用極は、約0.5mm厚のn-Si上にバインダーとしてCrを20nm堆積させ、更にその上からGeを2μm堆積させ、1cm直径の円盤にカットしたものを用いた。
対極は、PEDOT/PSSを用いてコーィングした1cm直径、0.5mm厚のSUS円盤を使用した。
電解質は、乳鉢にPEG(0.05g)、PVDF(0.05g)、CuCl(0.02g)、及びLiCl(0.03g)を入れた。NMP(2mL)入れて、60℃に加熱しながら研磨、攪拌した。完全に溶かした後、CuCl(0.028g)を添加し研磨、攪拌した。得られたゲルをPE膜に塗布して真空乾燥を行った。グローブボックス内で2035ボタン電池ハードウェアにおいて試験電池を組立てた。得られた電池を恒温槽に設置した。CV測定は、電位走査によりScan rate10mV/secで行った。
80℃で開放電圧約0.1V、短絡電流150μAの発電特性が認められた(図14、表2)。
【0052】
《実施例15》
本実施例では、固体電解質としてPPC 40000/PVDF1000000、イオン源としてCuCl、CuClを使用して熱電発電池を作製した。
作用極は、約0.5mm厚のn-Si上にバインダーとしてCrを20nm堆積させ、更にその上からGeを2μm堆積させ、1cm直径の円盤にカットしたものを用いた。
対極は、PEDOT/PSSを用いてコーィングした1cm直径、0.5mm厚のSUS円盤を使用した。
電解質は、乳鉢にPPC(0.05g)、PVDF(0.05g)、CuCl(0.02g)LiCl(0.03g)を入れた。NMP(2mL)入れて、60℃に加熱しながら研磨、攪拌する。完全に溶かした後、CuCl(0.028g)を添加し研磨、攪拌した。得られたゲルをPE膜に塗布して真空乾燥を行った。グローブボックス内で2035ボタン電池ハードウェアにおいて試験電池を組立てた。得られた電池を恒温槽に設置した。CV測定は、電位走査によりScan rate10mV/secで行った。50℃で開放電圧約0.28V、短絡電流100μAの発電特性が認められた。放電は10nAにおいて3119時間以上継続した(図15、表2)。
【0053】
《実施例16》
本実施例では、固体電解質としてPPC40000/PVDF1000000、イオン源としてCuCl、CuClを使用して熱電発電池を作製した。
作用極は、約0.5mm厚のn-Si上にバインダーとしてCrを20nm堆積させ、更にその上からGeを2μm堆積させ、1cm直径の円盤にカットしたものを用いた。
対極は、PEDOT/PSSを用いてコーィングした1cm直径、0.5mm厚のSUS円盤を使用した。
電解質は、乳鉢にPPC(0.05g)、PVDF(0.05g)、CuCl(0.02g)、及びLiCl(0.03g)を入れた。NMP(2mL)入れて、60℃に加熱しながら研磨、攪拌した。完全に溶かした後、CuCl(0.028g)を添加し研磨、攪拌した。最後にTiO粉末を添加して攪拌した。得られたゲルをPE膜に塗布して真空乾燥を行う。グローブボックス内で2035ボタン電池ハードウェアにおいて試験電池を組立てた。得られた電池を恒温槽に設置した。CV測定は、電位走査によりScan rate10mV/secで行った。50℃で開放電圧約0.28V、短絡電流100μAの発電特性が認められた。放電は1μAにおいて595時間以上継続した(図16、表2)。
【0054】
《実施例17》
本実施例では、固体電解質としてPEC250000/PVA5000、イオン源としてCuCl、CuClを使用して熱電発電池を作製した。
作用極は、約0.5mm厚のn-Si上にバインダーとしてCrを20nm堆積させ、更にその上からGeを2μm堆積させ、1cm直径の円盤にカットしたものを用いた。
対極は、PEDOT/PSSを用いてコーィングした1cm直径0.5mm厚のSUS円盤を使用した。
電解質は、乳鉢にPEC(0.05g)、PVA(0.05g)、CuCl(0.02g)、LiCl(0.03g)を入れた。NMP(2mL)入れて、60℃に加熱しながら研磨、攪拌した。完全に溶かした後、CuCl(0.028g)を添加し研磨、攪拌した。得られたゲルをPE膜に塗布して真空乾燥を行った。グローブボックス内で2035ボタン電池ハードウェアにおいて試験電池を組立てた。得られた電池を恒温槽(70℃)に設置した。CV測定は、電位走査によりScan rate10mV/secで行った。70℃で開放電圧約0.45V、短絡電流35μAの発電特性が認められた。放電は100nAにおいて294時間以上継続した(図17、表2)。
更に、得られた電池を恒温槽(50℃)に設置した。CV測定は、電位走査によりScan rate10mV/secで行った。50℃で放電は100nAにおいて381時間以上継続した(図17、表2)。
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の熱利用発電池及びそれを用いた熱利用発電方法は、小型携帯用発電装置、地熱発電、自動車の排熱を利用した熱電発電、及び変電所、鉄鋼炉、工場、又はごみ焼却場などの廃熱(排熱)を利用した熱利用発電などに用いることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17