(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】半導体レーザ装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02212 20210101AFI20230810BHJP
H01S 5/02315 20210101ALI20230810BHJP
H01S 5/0232 20210101ALI20230810BHJP
【FI】
H01S5/02212
H01S5/02315
H01S5/0232
(21)【出願番号】P 2020550311
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2019037231
(87)【国際公開番号】W WO2020071168
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2018186456
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】田尻 浩之
(72)【発明者】
【氏名】酒井 賢司
(72)【発明者】
【氏名】泉 和剛
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-196506(JP,A)
【文献】特開2007-048937(JP,A)
【文献】特開2005-217093(JP,A)
【文献】特開2007-053252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザチップと、
ベースおよび前記ベースに固定されたリードを含み、前記半導体レーザチップを支持するステムと、を備え、
前記ベースおよび前記リードを覆う第1層と、前記ベースおよび前記リードと前記第1層との間に介在する第2層と、前記ベースおよび前記リードと前記第2層との間に介在する第3層と、を含む第1金属層を有し、
前記第2層の結晶粒は、前記第3層の結晶粒よりも小さい、半導体レーザ装置。
【請求項2】
前記第2層の厚さは、前記第1層の厚さよりも厚い、請求項1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項3】
前記第2層の厚さは、前記第3層の厚さよりも薄い、請求項2に記載の半導体レーザ装置。
【請求項4】
前記第1層は、Auからなる、請求項2または3に記載の半導体レーザ装置。
【請求項5】
前記第2層は、Pdからなる、請求項4に記載の半導体レーザ装置。
【請求項6】
前記第3層は、Niからなる、請求項5に記載の半導体レーザ装置。
【請求項7】
前記第1層の厚さは、0.01μm~0.1μmである、請求項6に記載の半導体レーザ装置。
【請求項8】
前記第2層の厚さは、0.05μm~1.0μmである、請求項7に記載の半導体レーザ装置。
【請求項9】
前記第3層の厚さは、2.0μm~5.0μm程度である、請求項8に記載の半導体レーザ装置。
【請求項10】
前記ステムは、前記ベースに固定され且つ前記半導体レーザチップを支持するブロックを含む、請求項1ないし9のいずれかに記載の半導体レーザ装置。
【請求項11】
前記ベースは、前記リードを挿通させる貫通孔を有する、請求項10に記載の半導体レーザ装置。
【請求項12】
前記ベースと前記リードとの間に介在する絶縁材を有する、請求項11に記載の半導体レーザ装置。
【請求項13】
前記第1金属層は、前記ベースと前記絶縁材との間を避けた領域に形成されている、請求項12に記載の半導体レーザ装置。
【請求項14】
前記第1金属層は、前記リードと前記絶縁材との間を避けた領域に形成されている、請求項13に記載の半導体レーザ装置。
【請求項15】
前記第1金属層は、前記リードと前記第3層との間に介在する第4層と、前記リードと前記第4層との間に介在する第5層と、を含み、
前記第4層の結晶粒は、前記第5層の結晶粒よりも小さい、請求項12に記載の半導体レーザ装置。
【請求項16】
前記第4層は、Pdからなり、
前記第5層は、Niからなる、請求項15に記載の半導体レーザ装置。
【請求項17】
前記第3層と前記ベースとは、互いに接している、請求項15または16に記載の半導体レーザ装置。
【請求項18】
前記第1層、前記第2層および前記第3層は、前記ベースと前記絶縁材との間を避けた領域に形成されている、請求項17に記載の半導体レーザ装置。
【請求項19】
前記第1層、前記第2層および前記第3層は、前記リードと前記絶縁材との間を避けた領域に形成されている、請求項18に記載の半導体レーザ装置。
【請求項20】
前記第4層および前記第5層は、前記リードと前記絶縁材との間に介在する、請求項19に記載の半導体レーザ装置。
【請求項21】
前記ベースに固定され前記半導体レーザチップを覆うとともに、前記半導体レーザチップからの光を通過させる開口を有するキャップを備え、
前記キャップを覆う第6層と、前記キャップと前記第6層との間に介在する第7層と、を含む第2金属層を有し、
前記第6層の結晶粒は、前記第7層の結晶粒よりも小さい、請求項12ないし20のいずれかに記載の半導体レーザ装置。
【請求項22】
前記第6層は、前記第2層と同じ材質からなり、
前記第7層は、前記第3層と同じ材質からなる、請求項21に記載の半導体レーザ装置。
【請求項23】
半導体レーザチップと、
ベースおよび前記ベースに固定されたリードを含み、前記半導体レーザチップを支持するステムと、
を備える半導体レーザ装置であって、
前記ベースおよび前記リードを覆う第1層と、前記ベースおよび前記リードと前記第1層との間に介在する第2層と、を含む第1金属層を有し、
前記第1層はAuからなり、前記第2層は、Niからなり、
前記第1層の厚さは、1.0μm以上である、半導体レーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電子機器に搭載される光源装置として、半導体レーザ装置が広く採用されている。特許文献1は、従来の半導体レーザ装置の一例を開示している。同文献に開示された半導体レーザ装置は、ステム、半導体レーザチップおよびキャップを備えている。前記ステムは、金属製であり、板状のベース、このベースから出射方向前方に突出するブロックおよびステムに固定されており、各々が前記出射方向後方に延びた複数のリードを有する。前記半導体レーザチップは、前記ブロックに搭載されている。前記キャップは、前記ブロックおよび前記半導体レーザチップを覆っており、前記半導体レーザチップからの光を通過させる開口を有する。このような構成により、前記複数のリードを介して電力が投入されると、前記半導体レーザチップからの光が前記出射方向前方に出射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記半導体レーザ装置の使用に伴って、金属からなるステムが、腐食する場合がある。
【0005】
本開示は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、腐食を抑制することが可能な半導体レーザ装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によって提供される半導体レーザ装置は、半導体レーザチップと、ベースおよび前記ベースに固定されたリードを含み、前記半導体レーザチップを支持するステムと、を備え、前記ベースおよび前記リードを覆う第1層と、前記ベースおよび前記リードと前記第1層との間に介在する第2層と、前記ベースおよび前記リードと前記第2層との間に介在する第3層と、を含む第1金属層をさらに備え、前記第2層の結晶粒は、前記第3層の結晶粒よりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
本開示の半導体レーザ装置によれば、腐食を抑制することができる。
【0008】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る半導体レーザ装置を示す斜視図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る半導体レーザ装置を示す平面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿う断面図である。
【
図5】本開示の第1実施形態に係る半導体レーザ装置を示す要部拡大断面図である。
【
図6】本開示の第1実施形態に係る半導体レーザ装置を示す要部拡大断面図である。
【
図7】本開示の第1実施形態に係る半導体レーザ装置を示す要部拡大断面図である。
【
図8】本開示の第1実施形態に係る半導体レーザ装置の第1変形例を示す要部拡大断面図である。
【
図9】本開示の第1実施形態に係る半導体レーザ装置の第1変形例を示す要部拡大断面図である。
【
図10】本開示の第1実施形態に係る半導体レーザ装置の第2変形例を示す要部拡大断面図である。
【
図11】本開示の第1実施形態に係る半導体レーザ装置の第2変形例を示す要部拡大断面図である。
【
図12】本開示の第1実施形態に係る半導体レーザ装置の第2変形例を示す要部拡大断面図である。
【
図13】本開示の第2実施形態に係る半導体レーザ装置を示す要部拡大断面図である。
【
図14】本開示の第2実施形態に係る半導体レーザ装置を示す要部拡大断面図である。
【
図15】本開示の第2実施形態に係る半導体レーザ装置を示す要部拡大断面図である。
【
図16】本開示の第3実施形態に係る半導体レーザ装置を示す断面図である。
【
図17】本開示の第3実施形態に係る半導体レーザ装置を示す要部拡大断面図である。
【
図18】本開示の第4実施形態に係る半導体レーザ装置を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単にラベルとして用いたものであり、必ずしもそれらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0012】
<第1実施形態>
図1~
図7は、本開示の第1実施形態に基づく半導体レーザ装置を示している。本実施形態の半導体レーザ装置A1は、ステム1、半導体レーザチップ2、ワイヤ5および第1金属層15を備えている。半導体レーザ装置A1の用途は特に限定されず、たとえばCDプレイヤーやDVDレコーダーの読み書き用の光源、レーザープリンターの光源として用いられる。
【0013】
なお、
図1~
図7におけるz方向は、半導体レーザチップ2の出射方向に相当する。x方向およびy方向は、それぞれz方向に対して直角である方向である。
【0014】
ステム1は、半導体レーザ装置A1の土台となるものであり、ベース11、ブロック12および複数のリード3A,3B,3Cを有している。本実施形態のステム1は、ベース11およびブロック12が一体的に形成されている。ステム1の材質は特に限定されないが、たとえば、FeまたはFe合金からなる。また、ステム1が有するリードの本数は、特に限定されない。以降の説明においては、3本のリード3A,3B,3Cを有する場合を一例として説明する。
【0015】
ベース11は、z方向を厚さ方向とする板状の部位であり、本実施形態においては、z方向視略円形状である。ベース11は、z方向前方を向く主面111を有する。ベース11の寸法の一例を挙げると、直径が5.6mm程度、厚さが1.2mm程度である。
【0016】
ベース11には、2つのリード用貫通孔114が形成されている。リード用貫通孔114の形状および大きさは特に限定されないが、本実施形態においては、直径が1.0mm程度の円形貫通孔とされている。リード用貫通孔114の直径は、ベース11およびリード3A,3Bのサイズや、リード3Aとリード3Bとの間隔などに応じて適宜設定される。
【0017】
2つのリード用貫通孔114は、リード3Aおよびリード3Bをベース11に固定するために形成されている。
図2に示すように、2つのリード用貫通孔114は、ブロック12を挟んでx方向両側に形成されている。各リード用貫通孔114は、ベース11をz方向に貫通している。各リード用貫通孔114の形状は特に限定されないが、本実施形態においては、リード用貫通孔114は、z方向視円形状とされている。
【0018】
ブロック12は、ベース11の主面111からz方向前方(図中上方)に突出している。ブロック12の形状は特に限定されないが、本実施形態においては、ブロック12は、直方体形状とされている。ブロック12は、支持面121を有している。支持面121は、半導体レーザチップ2が搭載される面であり、本実施形態においては、z方向に対して平行である。ブロック12の大きさの一例を挙げると、x方向寸法が1.0mm程度、y方向寸法が1.2mm程度、z方向寸法が1.5mm程度である。
【0019】
複数のリード3A,3B,3Cは、半導体レーザ装置A1を電子機器などに固定するために用いられ、かつ半導体レーザチップ2への電力供給経路をなす。複数のリード3A,3B,3Cは、たとえば、Fe-Ni合金からなる直径が0.45mm程度の棒状部材である。なお、複数のリード3A,3B,3Cの大きさや形状は、何ら限定されない。
【0020】
リード3Aおよびリード3Bは、2つのリード用貫通孔114に各別に挿通されている。
図3に示すように、リード3Aのz方向前方側部分は、リード用貫通孔114からz方向前方に突出している。また、リード3Aのz方向後方側に位置する大部分が、ベース11からz方向後方に突出している。リード3Bのz方向前方側部分は、リード用貫通孔114からz方向前方に若干突出するものの、リード3Aの突出長さよりも小である。また、リード3Bのz方向後方側に位置する大部分が、ベース11からz方向後方に突出している。リード3Aのz方向後方端付近の部位は、半導体レーザ装置A1を電子機器などに搭載する際に用いられる端子部31Aとされている。同様に、リード3Bのz方向後方端付近の部位は、半導体レーザ装置A1を電子機器などに搭載する際に用いられる端子部31Bとされている。
【0021】
リード3Aの長さの一例を挙げると、たとえば9.2mm程度である。リード3Aのうちリード用貫通孔114に収容されている長さが1.2mm程度であり、z方向前方に突出している長さが1.5mm程度であり、z方向後方に突出している長さが6.5mm程度である。
【0022】
リード3Bの長さの一例を挙げると、たとえば7.7~7.9mm程度である。リード3Bのうちリード用貫通孔114に収容されている長さが1.2mm程度であり、z方向前方に突出している長さが0~0.2mm程度であり、z方向後方に突出している長さが6.5mm程度である。
【0023】
リード3Cは、
図4に示すように、ベース11のz方向後方を向く面に接合されており、ベース11と導通している。また、
図3および
図4から理解されるように、本実施形態においては、リード3Cは、z方向視においてブロック12と重なっている。リード3Cの長さは、たとえば6.5mm程度である。リード3Cのz方向後方端付近の部位は、半導体レーザ装置A1を電子機器などに搭載する際に用いられる端子部31Cとされている。リード3Cとベース11との接合手法は特に限定されず、たとえば溶接や導電性接合材を用いた接合などが適宜用いられる。
【0024】
本実施形態においては、
図2および
図3に示すように、リード3Aおよびリード3Bと2つのリード用貫通孔114との間に、絶縁充填材17が充填されている。絶縁充填材17は、リード3Aおよびリード3Bをベース11に対して固定するとともに、リード3Aおよびリード3Bとベース11とを絶縁する機能を果たす。絶縁充填材17の材質は特に限定されないが、本実施形態においては、絶縁充填材17はガラスからなる。
図5および
図6に示すように、絶縁充填材17は、主面171および裏面172を有する。主面171は、z方向において主面111と同じ側を向く面である。裏面172は、z方向において主面171とは反対側を向く面である。主面171および裏面172の形状は何ら限定されない。図示された例においては、主面171および裏面172は、平坦な面である。
【0025】
図1および
図2に示すように、リード3Aと半導体レーザチップ2とは、ワイヤ5によって接続されている。より具体的には、半導体レーザチップ2の半導体素子21に形成されたパッド電極(図示略)とリード3Aとがワイヤ5によって接続されている。ワイヤ5は、たとえばAuからなる。半導体レーザチップ2においては、半導体素子21に形成された前記パッド電極にワイヤ5がボンディングされてもよいし、サブマウンド22に形成されたパッドにワイヤ5がボンディングされてもよい。リード3Cは、ベース11および接合材を介して半導体レーザチップ2のサブマウンド22の前記裏面電極に導通している。このような構成により、半導体レーザ装置A1においては、リード3Aおよびリード3Cによって、半導体レーザチップ2への電力供給経路が形成されている。
【0026】
半導体レーザチップ2を発光させることのみを目的として半導体レーザ装置A1に電力供給する場合、リード3Bを電力経路として用いない構成が可能である。リード3Bは、半導体レーザ装置A1を電子機器に対して単に機械的に固定するために用いられてもよい。または、半導体レーザチップ2への電力供給経路として用いてもよいし、半導体レーザ装置A1が図示しない受光素子を備える場合、この受光素子とリード3Bとを導通させてもよい。
【0027】
半導体レーザチップ2は、半導体レーザ装置A1における発光要素である。本実施形態においては、半導体レーザチップ2は、半導体素子21およびサブマウンド22からなる。なお、半導体レーザチップ2の構成はこれに限定されず、たとえば、サブマウンド22を有さず半導体素子21のみからなる構成であってもよい。本開示においては、半導体レーザチップ2は、ステム1のブロック12のたとえば支持面121に搭載される要素を指し、サブマウンド22が採用される場合はサブマウンド22を含むものと定義する。図示された例においては、半導体素子21のz方向前方端は、サブマウンド22のz方向前方端よりもz方向前方に突出している。ただし、このような構成に限定されず、半導体素子21のz方向前方端が、サブマウンド22のz方向前方端よりもz方向前方に突出しない構成であってもよい。
【0028】
半導体素子21は、複数の半導体層が積層された構造を有する。半導体素子21は、z方向に延びた形状とされている。半導体素子21からは、z方向前方に光が出射される。サブマウンド22は、半導体素子21を支持しており、且つステム1のブロック12の支持面121に接合されている。サブマウンド22は、たとえばSiまたはAlNからなる。また、本実施形態においては、サブマウンド22には、半導体素子21とブロック12とを導通させるための配線パターンやスルーホール電極などの導通経路(図示略)が形成されている。
【0029】
半導体レーザチップ2のサブマウンド22は、たとえば接合材(図示略)によってステム1のブロック12の支持面121に接合されている。接合材は、半導体レーザチップ2を適切に接合しうるものであれば特に限定されないが、たとえば、Ag、In、Au、Snなどを含む金属ペーストまたははんだなどである。なお、本実施形態においては、接合材としては導電性を有するものが採用される。これにより、半導体素子21に形成されたたとえば裏面電極(図示略)とブロック12とが接合材(図示略)を介して導通している。
【0030】
図5、
図6および
図7に示すように、第1金属層15は、ベース11および複数の3A,3B,3Cを覆っている。本実施形態においては、第1金属層15は、第1層151、第2層152および第3層153を含む。第1層151は、ベース11および複数の3A,3B,3Cを覆っている。第2層152は、ベース11および複数の3A,3B,3Cと第1層151との間に介在している。第3層153は、ステム1および複数の3A,3B,3Cと第2層152との間に外在している。図示された例においては、第3層153は、ベース11および複数の3A,3B,3Cに接している。第2層152は、第3層153に接している。第1層151は、第2層152に接している。
【0031】
第2層152の結晶粒は、第3層153の結晶粒よりも小さい。第1層151の一例としては、たとえばAuからなるめっき層が挙げられる。第2層152の一例としては、たとえばPdからなるめっき層が挙げられる。第3層153の一例としては、たとえばNiからなるめっき層が挙げられる。
【0032】
第1層151および第2層152の絶対的な厚さや相対関係はなんら限定されない。本実施形態においては、第2層152の厚さは、第1層151の厚さよりも厚い。また、第2層152の厚さは、第3層153の厚さよりも薄い。第1層151の厚さは、たとえば、0.01μm~0.1μm程度である。第2層152の厚さは、たとえば、0.05μm~1.0μm程度である。第3層153の厚さは、たとえば、2.0μm~5.0μm程度である。
【0033】
第1層151、第2層152および第3層153を形成する手法は特に限定されず、たとえばバレルめっきが用いられる。
【0034】
図5および
図6に示すように、図示された例においては、第1金属層15は、ステム1のベース11と絶縁充填材17との間を避けた領域に形成されている。すなわち、第1金属層15は、ベース11の主面111、主面111とは反対側を向く面および周端面に形成されており、リード用貫通孔114には形成されていない。また、第1金属層15は、リード3A,3Bと絶縁充填材17との間を避けた領域に形成されている。すなわち、第1金属層15は、リード3Aおよびリード3Bのうち、絶縁充填材17から露出した部分に形成されている。
【0035】
図7に示すように、図示された例においては、第1金属層15は、リード3Cとベース11との間を避けた領域に形成されている。すなわち、第1金属層15は、リード3Cのうちベース11に接合された領域を除く領域に形成されている。
【0036】
本実施形態の半導体レーザ装置A1の製造においては、たとえば、ベース11にリード3A,3B,3Cを取り付けた後に、たとえばバレルめっきによって第3層153、第2層152および第1層151の順で形成する。
【0037】
次に、半導体レーザ装置A1の作用について説明する。
【0038】
本実施形態によれば、第1層151と第3層153との間に第2層152が介在している。第2層152は、第3層153よりも、結晶粒が小さい層である。これにより、半導体レーザ装置A1の使用に際して、第3層153が第1層151に拡散し、第1金属層15の表面に漏出することを抑制することが可能である。第3層153の拡散や漏出を抑制することにより、第3層153がベース11およびリード3A,3B,3Cをより確実に覆った状態をより長期間にわたって維持することが可能である。したがって、ベース11およびリード3A,3B,3Cの腐食を抑制することができる。
【0039】
第3層153がNiからなることにより、ベース11およびリード3A,3B,3Cの腐食を抑制するのに好ましい。第2層152がPdからなることにより、第2層152の結晶粒を第3層153の結晶粒よりも確実に小さい構成を実現することができる。第1層151がAuからなることにより、ワイヤ5の接合や、半導体レーザ装置A1を回路基板に実装する際のはんだ付け等を行いやすいという利点がある。
【0040】
第1層151および第2層152の絶対的な厚さや相対関係はなんら限定されないが、第2層152の厚さが第1層151の厚さよりも厚い場合には、第3層153の拡散等をより確実に抑制することができる。第2層152の厚さが第3層153の厚さよりも薄いことにより、第1金属層15全体の厚さが不当に厚くなることを回避可能である。第3層153の厚さが相対的に厚い構成は、ベース11およびリード3A,3B,3Cの腐食を抑制するのに好ましい。
【0041】
図8~
図18は、本開示の変形例および他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0042】
<第1実施形態 第1変形例>
図8および
図9は、半導体レーザ装置A1の第1変形例を示している。本例の半導体レーザ装置A11は、絶縁充填材17の主面171および裏面172の形状が上述した例と異なっている。
【0043】
本例においては、主面171は、z方向図中下方に凹む凹曲面である。また、裏面172は、z方向図中上方に凹む凹曲面である。たとえば、絶縁充填材17の形成において、絶縁充填材17を形成するためのガラス材料が液状となった際に、表面張力によって本例の主面171および裏面172のような形状となる。以降の例や実施形態における主面171および裏面172は、平坦な面であってもよいし、本例のような凹曲面であってもよい。
【0044】
<第1実施形態 第2変形例>
図10~
図12は、半導体レーザ装置A1の第2変形例を示している。本例の半導体レーザ装置A12は、第3層153の構成が上述した例と異なっている。
【0045】
本例においては、第3層153は、1次層1531および2次層1532を含む。1次層1531および2次層1532は、各々が上述した例の第3層153と同じ材質からなる。1次層1531は、ステム1のベース11の外表面に形成されている。すなわち、主面111やリード用貫通孔114は、1次層1531によって覆われている。そして、ベース11においては、1次層1531に2次層1532が積層されている。このため、ベース11においては、第3層153は、1次層1531および2次層1532からなる。一方、図示された例においては、リード3A、リード3Bおよびリード3Cには、1次層1531は、形成されていない。そして、リード3A、リード3Bおよびリード3Cに、2次層1532が直接形成されている。このため、リード3A、リード3Bおよびリード3Cにおいては、第3層153は、2次層1532のみからなる。
【0046】
1次層1531および2次層1532の厚さは、各々が上述した例の第3層153と同様の厚さであってもよい。あるいは、1次層1531と2次層1532とを合計した厚さが、上述した第3層153と同様の厚さであってもよい。
【0047】
本例から理解されるように、第3層153の構成は、種々に設定可能であり、何ら限定されない。以降の実施形態においては、第3層153が単層である場合や、1次層1531および2次層1532を含む複数層である場合など、様々に設定可能である。
【0048】
<第2実施形態>
図13~
図15は、本開示の第2実施形態に係る半導体レーザ装置を示している。本実施形態の半導体レーザ装置A2においては、第1金属層15が、第1層151、第2層152、第3層153、第4層154および第5層155を含む。
【0049】
第4層154は、リード3A,3B,3Cと第3層153との間に介在する。第5層155は、リード3A,3B,3Cと第4層154との間に介在する。図示された例においては、第5層155は、リード3A,3B,3Cに接している。第4層154は、第3層153および第5層155に接している。
【0050】
第4層154の結晶粒は、第5層155の結晶粒よりも小さい。第4層154の一例としては、たとえばPdからなるめっき層が挙げられる。第5層155の一例としては、たとえばNiからなるめっき層が挙げられる。
【0051】
第4層154および第5層155は、ベース11上には形成されていない。このため、ベース11においては、第3層153は、ベース11に接している。
【0052】
第1層151、第2層152および第3層153は、ベース11と絶縁充填材17との間を避けた領域に形成されている。すなわち、第1層151、第2層152および第3層153は、ベース11の主面111、主面111とは反対側を向く面および周端面を覆うように形成されており、リード用貫通孔114には形成されていない。また、第1層151、第2層152および第3層153は、は、リード3A,3Bと絶縁充填材17との間を避けた領域に形成されている。すなわち、第1層151、第2層152および第3層153は、リード3Aおよびリード3Bのうち、絶縁充填材17から露出した部分を覆うように形成されている。
【0053】
図13および
図14に示すように、第4層154および第5層155は、リード3A,3Bと絶縁充填材17との間に介在している。すなわち、本実施形態においては、第4層154および第5層155は、リード3A,3Bの全体を覆っている。
【0054】
図15に示すように、第4層154および第5層155は、リード3Cとベース11との間に介在している。すなわち、第4層154および第5層155は、リード3Cの全体を覆っている。第1層151、第2層152および第3層153は、リード3Cとベース11との間を避けた領域に形成されている。
【0055】
本実施形態の半導体レーザ装置A2の製造においては、まず、リード3A,3B,3Cに、たとえばバレルめっきによって第5層155および第4層154の順で形成する。次いで、ベース11にリード3A,3B,3Cを取り付ける。この後に、ベース11および3A,3B,3Cに、たとえばバレルめっきによって、第3層153、第2層152および第1層151の順で形成する。
【0056】
このような実施形態によっても、半導体レーザ装置A2の腐食を抑制することができる。また、本実施形態によれば、リード3A,3B,3Cは、第1層151、第2層152および第3層153に加えて第4層154および第5層155によって覆われる。発明者らの知見によれば、リード3A,3B,3Cは、ベース11と比べて、腐食が生じやすい。半導体レーザ装置A2によれば、リード3A,3B,3Cに腐食が生じることをさらに抑制可能であり、半導体レーザ装置A2の使用可能寿命をより延長することができる。
【0057】
<第3実施形態>
図16および
図17は、本開示の第3実施形態に係る半導体レーザ装置を示している。本実施形態の半導体レーザ装置A3は、ステム1、半導体レーザチップ2、キャップ4、ワイヤ5、第1金属層15および第2金属層47を備える。
【0058】
キャップ4は、半導体レーザチップ2およびブロック12を覆っており、ステム1のベース11の主面111に固定されている。キャップ4は、胴部41、天部42、鍔部44および透明カバー45を有する。胴部41は、z方向視において半導体レーザチップ2およびブロック12を囲んでおり、たとえば円形状とされている。キャップ4の材質は特に限定されないが、たとえば、FeまたはFe合金からなる。
【0059】
天部42は、胴部41のz方向前方端に繋がっており、半導体レーザチップ2に対してz方向前方に位置している。本実施形態においては、天部42は円形状である。天部42には、開口43が形成されている。開口43は、半導体レーザチップ2からの光を通過させるためのものである。本実施形態においては、開口43は、円形状とされている。
【0060】
鍔部44は、胴部41のz方向後方に繋がっており、xy平面に沿って外方に延出している。鍔部44は、たとえば円環形状であり、ベース11の主面111に溶接または接合材等によって固定されている。
【0061】
透明カバー45は、開口43を塞いでおり、半導体レーザチップ2からの光を透過する。透明カバー45は、半導体レーザチップ2からの光に対して透明な材質からなる。このような透明カバー45が設けられた場合、半導体レーザ装置A3からの光を比較的狭い領域に選択的に出射することができる。本実施形態においては、透明カバー45は、キャップ4の天部42の図中下面に取り付けられている。
【0062】
第2金属層47は、キャップ4の胴部41、天部42および鍔部44を覆っている。第2金属層47は、第6層471および第7層472を含む。第6層471は、キャップ4の胴部41、天部42および鍔部44を覆っている。第7層472は、キャップ4の胴部41、天部42および鍔部44と第6層471との間に介在している。
【0063】
第6層471の結晶粒は、第7層472の結晶粒よりも小さい。第6層471は、第2層152と同じ材質からなる。第6層471の一例としては、たとえばPdからなるめっき層が挙げられる。第7層472は、第3層153と同じ材質からなる。第7層472の一例としては、たとえば、Niからなるめっき層が挙げられる。
【0064】
第6層471の厚さは、第7層472の厚さよりも薄い。第6層471の厚さは、たとえば、0.05μm~1.0μm程度である。第7層472の厚さは、たとえば、2.0μm~5.0μm程度である。
【0065】
本実施形態の第1金属層15の構成は、上述した半導体レーザ装置A1の第1金属層15や半導体レーザ装置A2の第1金属層15の構成を適宜採用すればよい。
【0066】
このような実施形態によっても、半導体レーザ装置A3の腐食を抑制することができる。また、本実施形態によれば、キャップ4によって半導体レーザチップ2を保護することが可能であり、半導体レーザ装置A3の使用可能寿命をより延長することができる。
【0067】
また、キャップ4が第2金属層47によって覆われている。第6層471によって第7層472の拡散等を抑制することにより、キャップ4の腐食を抑制することができる。
【0068】
<第4実施形態>
図18は、本開示の第4実施形態に係る半導体レーザ装置を示している。本実施形態の半導体レーザ装置A4においては、第1金属層15の構成が上述した実施形態と異なっている。本実施形態においては、第1金属層15は、第1層151および第2層152からなる。第2層152は、第1層151と、ベース11およびリード3A,3B,3Cと、の間に介在している。第1層151は、たとえばAuからなる。第2層152は、たとえばNiからなる。第1層151の厚さは、1.0μm以上であり、好ましくは3.5μm~5.0μmである。第2層152の厚さは、たとえば2.0μm~4.0μmである。
【0069】
このような実施形態によっても、半導体レーザ装置A4の腐食を抑制することができる。
【0070】
本開示に係る半導体レーザ装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示に係る半導体レーザ装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0071】
〔付記1〕
半導体レーザチップと、
ベースおよび前記ベースに固定されたリードを含み、前記半導体レーザチップを支持するステムと、を備え、
前記ベースおよび前記リードを覆う第1層と、前記ベースおよび前記リードと前記第1層との間に介在する第2層と、前記ベースおよび前記リードと前記第2層との間に介在する第3層と、を含む第1金属層をさらに備え、
前記第2層の結晶粒は、前記第3層の結晶粒よりも小さい、半導体レーザ装置。
〔付記2〕
前記第2層の厚さは、前記第1層の厚さよりも厚い、付記1に記載の半導体レーザ装置。
〔付記3〕
前記第2層の厚さは、前記第3層の厚さよりも薄い、付記2に記載の半導体レーザ装置。
〔付記4〕
前記第1層は、Auからなる、付記2または3に記載の半導体レーザ装置。
〔付記5〕
前記第2層は、Pdからなる、付記4に記載の半導体レーザ装置。
〔付記6〕
前記第3層は、Niからなる、付記5に記載の半導体レーザ装置。
〔付記7〕
前記第1層の厚さは、0.01μm~0.1μmである、付記6に記載の半導体レーザ装置。
〔付記8〕
前記第2層の厚さは、0.05μm~1.0μmである、付記7に記載の半導体レーザ装置。
〔付記9〕
前記第3層の厚さは、2.0μm~5.0μm程度である、付記8に記載の半導体レーザ装置。
〔付記10〕
前記ステムは、前記ベースに固定され且つ前記半導体レーザチップを支持するブロックを含む、付記1ないし9のいずれかに記載の半導体レーザ装置。
〔付記11〕
前記ベースは、前記リードを挿通させる貫通孔を有する、付記10に記載の半導体レーザ装置。
〔付記12〕
前記ベースと前記リードとの間に介在する絶縁材を有する、付記11に記載の半導体レーザ装置。
〔付記13〕
前記第1金属層は、前記ベースと前記絶縁材との間を避けた領域に形成されている、付記12に記載の半導体レーザ装置。
〔付記14〕
前記第1金属層は、前記リードと前記絶縁材との間を避けた領域に形成されている、付記13に記載の半導体レーザ装置。
〔付記15〕
前記第1金属層は、前記リードと前記第3層との間に介在する第4層と、前記リードと前記第4層との間に介在する第5層と、を含み、
前記第4層の結晶粒は、前記第5層の結晶粒よりも小さい、付記12に記載の半導体レーザ装置。
〔付記16〕
前記第4層は、Pdからなり、
前記第5層は、Niからなる、付記15に記載の半導体レーザ装置。
〔付記17〕
前記第3層と前記ベースとは、互いに接している、付記15または16に記載の半導体レーザ装置。
〔付記18〕
前記第1層、前記第2層および前記第3層は、前記ベースと前記絶縁材との間を避けた領域に形成されている、付記17に記載の半導体レーザ装置。
〔付記19〕
前記第1層、前記第2層および前記第3層は、前記リードと前記絶縁材との間を避けた領域に形成されている、付記18に記載の半導体レーザ装置。
〔付記20〕
前記第4層および前記第5層は、前記リードと前記絶縁材との間に介在する、付記19に記載の半導体レーザ装置。
〔付記21〕
前記ベースに固定され前記半導体レーザチップを覆うとともに、前記半導体レーザチップからの光を通過させる開口を有するキャップを備え、
前記キャップを覆う第6層と、前記キャップと前記第6層との間に介在する第7層と、を含む第2金属層を有し、
前記第6層の結晶粒は、前記第7層の結晶粒よりも小さい、付記12ないし20のいずれかに記載の半導体レーザ装置。
〔付記22〕
前記第6層は、前記第2層と同じ材質からなり、
前記第7層は、前記第3層と同じ材質からなる、付記21に記載の半導体レーザ装置。
〔付記23〕
半導体レーザチップと、
ベースおよび前記ベースに固定されたリードを含み、前記半導体レーザチップを支持するステムと、
を備える半導体レーザ装置であって、
前記ベースおよび前記リードを覆う第1層と、前記ベースおよび前記リードと前記第1層との間に介在する第2層と、を含む第1金属層を有し、
前記第1層はAuからなり、前記第2層は、Niからなり、
前記第1層の厚さは、1.0μm以上である、半導体レーザ装置。