(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】ヘマグルチニンを含む広範に防御的なワクチン組成物を生成する方法
(51)【国際特許分類】
C12P 21/02 20060101AFI20230810BHJP
C07K 14/11 20060101ALN20230810BHJP
C12N 7/00 20060101ALN20230810BHJP
C12N 15/44 20060101ALN20230810BHJP
【FI】
C12P21/02 C ZNA
C07K14/11
C12N7/00
C12N15/44
(21)【出願番号】P 2020551864
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(86)【国際出願番号】 US2019024323
(87)【国際公開番号】W WO2019191257
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-23
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517055195
【氏名又は名称】サノフィ パスツール インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】トッド・ストラグネル
(72)【発明者】
【氏名】エリウッド・オルー
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド・オーメン
(72)【発明者】
【氏名】トーステン・ヴォーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ハロルド・クリーンサウス
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-183168(JP,A)
【文献】Journal of Virology, 2017, Vol.91, Issue.24, e01581-17, pp.1-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 21/02
C07K 14/11
C12N 7/00
C12N 15/44
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンセンサスアミノ酸を含む組換えインフルエンザヘマグルチニン(HA)ポリペプチドを生成するための方法であって:
a.1つより多いインフルエンザHAポリペプチド配列を選択すること、および該配列をアラインすること;
b.ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを算出すること;
c.該ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスから類似配列のクラスターを同定することおよび創出すること;
d.各クラスター内で、ペアワイズアライメント法を使用して配列アライメント中の各位置についてコンセンサスアミノ酸があるかどうかを決定することであって、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%以上である場合、そのアミノ酸はコンセンサスアミノ酸と指定され、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%未満である場合、そのアミノ酸は可変アミノ酸と指定されること;
e.各クラスターについて、コンセンサスアミノ酸および可変アミノ酸を含む
、1つの第1の配列を生成すること
;
f.工程(e)において生成された該
1つの第1の配
列内において、以下の手段により各可変アミノ酸位置についてのコンセンサスアミノ酸を決定すること:
i.該
1つの第
1の配列に基づいて一連の検査配列を生成することであって、検査アミノ酸を可変アミノ酸位置に位置させること;
ii.該検査配列それぞれについて分子モデリングを実行すること;
および
iii.負の総エネルギー値を有するポリペプチドをもたらすアミノ酸(複数可)を選択することによっ
て、各可変アミノ酸位置についてコンセンサスアミノ酸を決定すること、ならびに
g.該コンセンサスアミノ酸を含む組換えインフルエンザHAポリペプチドを生成すること
を含む前記方法。
【請求項2】
配列をアラインすることは、MAFFT、MUSCLE、CLUSTAL OMEGA、FASTA、これらの組合せまたは任意の他の多重配列アライメントソフトウェアパッケージを使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを算出することは、BLOSUM、PAM、IDENTITY置換マトリクスまたはこれらの組合せを使用することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスから類似配列のクラスターを同定および創出することは、K平均クラスタリング、ミニマックスクラスタリング、主成分分析(PCA)、多次元尺度構成法(MDS)またはこれらの組合せを使用することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
分子モデリングは、インフルエンザHAポリペプチドまたはタンパク質の結晶構造と比較することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
分子モデリングは、Rosettaまたは任意の他の分子モデリングソフトウェアの使用を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
検査アミノ酸は、タンパク質に見出される任意の天然または非天然アミノ酸を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
複数のクラスターが分析される場合、工程(e)の後に:
i.各クラスターについて、工程(e)において生成された配列をアラインすること;
ii.ペアワイズアライメント法を使用して該配列アライメント中の各位置についてコンセンサスアミノ酸があるかどうかを決定することであって、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%以上である場合、そのアミノ酸はコンセンサスアミノ酸と指定され、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%未満である場合、そのアミノ酸は可変アミノ酸と指定されること;ならびに
iii.コンセンサスアミノ酸および可変アミノ酸を含む第2の配列を生成すること、
をさらに含み、
ここで、各可変アミノ酸位置についての該コンセンサスアミノ酸は、生成された前記第2の配列内で、工程(f)において決定される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(f)iにおいて、該第2の配列に基づいて一連の検査配列が生成される、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その内容を全体として参照により組み入れる米国仮出願第62/649,004号、2018年3月28日出願の優先権を主張する。
【0002】
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、その全体を参照により本明細書に組み入れる配列表を含む。2019年3月27日に作成された前記ASCIIコピーは、01121-0036-00PCT_SL.txtと名付けられ、サイズ85,964バイトである。
【背景技術】
【0003】
インフルエンザは、パンデミック、伝染、再流行および大発生の長い歴史を有する。例えば、毎年のインフルエンザ伝染は、世界で300から500万人の重症疾患および約290,000から650,000名の死者を生じると考えられている。現在、ワクチンは、インフルエンザに対する最も有効な防御を提供する。ワクチン組成物は、蔓延しているインフルエンザ株における差異に適応するように世界保健機関によって毎年更新されている。しかし、不正確な予測から生じるワクチンミスマッチは、ワクチン接種された集団においてさえ顕著な罹患率および死亡率を生じる場合がある。
【0004】
インフルエンザウイルスは、ウイルス膜の表面に2つの構造糖タンパク質、すなわち、ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)を含有する。HAは、シアル酸に結合し、ウイルス侵入に関与するホモ三量体膜タンパク質である。NAは、シアル酸の除去により感染細胞からのウイルスの放出に関与する。現在、インフルエンザワクチンは、一般に、HAを認識する中和抗体の誘導に依拠している。しかし、かかる中和抗体は、しばしば株特異的である。したがって、HAにおける可変性(例えば、抗原シフトによる)は、免疫回避およびワクチン有効性の減少を生じる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ミスマッチ株を含むインフルエンザウイルスに対して広範で、持続的な(例えば、複数シーズン)防御を提供できる有効なインフルエンザワクチンに対する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特に、複数のインフルエンザ株に対して広範に反応性の免疫応答を誘発することができるHAポリペプチドを生成するためのクラスターベースコンセンサス(CBC)アプローチを提供する。種々の実施形態では、方法は:
・1つより多いインフルエンザHAポリペプチド配列を選択すること、および配列をアラインすること;
・ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを算出すること;
・ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスから類似配列のクラスターを同定することおよび創出すること;
・各クラスター内で、ペアワイズアライメント法を使用して配列アライメント中の各位置についてコンセンサスアミノ酸があるかどうかを決定することであって、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%以上である場合、そのアミノ酸はコンセンサスアミノ酸と指定され、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%未満である場合、そのアミノ酸は可変アミノ酸と指定されること;
・各クラスターについてコンセンサスアミノ酸および可変アミノ酸を含む第1の配列を生成すること;
・場合により、1つより多いクラスターが分析される場合:
○各クラスターについて生成された配列をアラインすること;
○ペアワイズアライメント法を使用して配列アライメント中の各位置についてコンセンサスアミノ酸があるかどうかを決定することであって、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%以上である場合、そのアミノ酸はコンセンサスアミノ酸と指定され、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%未満である場合、そのアミノ酸は可変アミノ酸と指定されること;および
○コンセンサスアミノ酸および可変アミノ酸を含む第2の配列を生成すること
によって、クラスターから生成された第1の配列と別のクラスターまたは複数のクラスターにおいて生成された配列とを比較すること;
・生成された第1の配列または第2の配列内で:
○第1のまたは第2の配列に基づいて一連の検査配列を生成することであって、検査アミノ酸を可変アミノ酸位置に位置させること;
○検査配列それぞれについて分子モデリングを実行すること;
○負の総エネルギー値を有するポリペプチドをもたらすアミノ酸(複数可)を選択することによって各可変アミノ酸位置についてのコンセンサスアミノ酸を決定すること
によって、各可変アミノ酸位置についてコンセンサスアミノ酸を決定すること、ならびに
・コンセンサスアミノ酸を含むインフルエンザHAポリペプチドを生成すること
を含む。
【0007】
種々の実施形態では、本発明は、本発明の方法を使用して生成されたHAポリペプチドを提供する。例示的実施形態では、HAポリペプチは、配列番号1~16またはこれらの断片のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の1つまたはそれ以上のHAポリペプチドを含む三量体HAタンパク質にさらに関する。
【0008】
種々の実施形態では、本発明のHAポリペプチドおよび/または三量体HAタンパク質は、ワクチン抗原として利用される。一部の実施形態では、HAポリペプチドおよび三量体HAタンパク質は、複数のインフルエンザ株、型またはサブタイプに対して広範に防御的な免疫応答を提供する。理論に束縛されることを望むわけではないが、HAポリペプチドおよび三量体HAタンパク質がインフルエンザウイルス内の複数のエピトープ(例えば、保存されたエピトープ)に対する中和抗体応答を誘発できると考えられる。
【0009】
本出願のさらなる実施形態は、以下のとおりである:
実施形態A1.コンセンサスアミノ酸を含む組換えインフルエンザヘマグルチニン(HA)ポリペプチドを生成するための方法であって:
a.1つより多いインフルエンザHAポリペプチド配列を選択すること、および配列をアラインすること;
b.ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを算出すること;
c.ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスから類似配列のクラスターを同定することおよび創出すること;
d.各クラスター内で、ペアワイズアライメント法を使用して配列アライメント中の各位置についてコンセンサスアミノ酸があるかどうかを決定することであって、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%以上である場合、そのアミノ酸はコンセンサスアミノ酸と指定され、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%未満である場合、そのアミノ酸は可変アミノ酸と指定されること;
e.各クラスターについてコンセンサスアミノ酸および可変アミノ酸を含む第1の配列を生成すること;
f.場合により、複数のクラスターが分析される場合:
i.各クラスターについて工程(e)において生成された配列をアラインすること;
ii.ペアワイズアライメント法を使用して配列アライメント中の各位置についてコンセンサスアミノ酸があるかどうかを決定することであって、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%以上である場合、そのアミノ酸はコンセンサスアミノ酸と指定され、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%未満である場合、そのアミノ酸は可変アミノ酸と指定されること;ならびに
iii.コンセンサスアミノ酸および可変アミノ酸を含む第2の配列を生成すること
によって、クラスターの工程(e)において生成された第1の配列と別のクラスターまたは複数のクラスターにおいて生成された第1の配列とを比較すること;
g.工程(e)において生成された第1の配列または工程(f)(iii)において生成された第2の配列内で:
iv.第1のまたは第2の配列に基づいて一連の検査配列を生成することであって、検査アミノ酸を可変アミノ酸位置に位置させること;
v.検査配列それぞれについて分子モデリングを実行すること;
vi.負の総エネルギー値を有するポリペプチドをもたらすアミノ酸(複数可)を選択することによって各可変アミノ酸位置についてのコンセンサスアミノ酸を決定すること
によって、各可変アミノ酸位置についてコンセンサスアミノ酸を決定すること、ならびに
h.コンセンサスアミノ酸を含む組換えインフルエンザHAポリペプチドを生成すること
を含む方法。
実施形態A2.配列をアラインすることは、MAFFT、MUSCLE、CLUSTAL OMEGA、FASTA、これらの組合せまたは任意の他の多重配列アライメントソフトウェアパッケージを使用することを含む、実施形態A1の方法。
実施形態A3.ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを算出することは、BLOSUM、PAM、IDENTITY置換マトリクスまたはこれらの組合せを使用することを含む、実施形態A1またはA2の方法。
実施形態A4.ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスから類似配列のクラスターを同定および創出することは、K平均クラスタリング、ミニマックスクラスタリング(minimax clustering)、主成分分析(PCA)、多次元尺度構成法(MDS)またはこれらの組合せを使用することを含む、実施形態A1~3のいずれか1つの方法。
実施形態A5.分子モデリングは、インフルエンザHAポリペプチドまたはタンパク質の結晶構造と比較することを含む、実施形態A1~4のいずれか1つの方法。
実施形態A6.分子モデリングは、Rosettaまたは任意の他の分子モデリングソフトウェアの使用を含む、実施形態A1~5のいずれか1つの方法。
実施形態A7.検査アミノ酸は、タンパク質に見出される任意の天然または非天然アミノ酸を含む、実施形態A1~6のいずれか1つの方法。
実施形態A8.実施形態A1~7のいずれか1つの方法を使用して生成された組換えインフルエンザHAポリペプチド。
実施形態A9.配列番号1~16またはこれらの断片のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列、または配列番号1~16またはその断片のいずれか1つに少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態A8の組換えインフルエンザHAポリペプチド。
実施形態A10.実施形態A8またはA9の1つまたはそれ以上の組換えHAポリペプチドを含む組換え三量体HAタンパク質。
実施形態A11.実施形態A8もしくはA9の組換えHAポリペプチドまたは実施形態A10の組換え三量体HAタンパク質をコードする単離された核酸。
実施形態A12.実施形態A11の核酸を含むベクター。
実施形態A13.実施形態A12のベクターを含む、単離された細胞。
実施形態A14.哺乳動物細胞である、実施形態A13の単離された細胞。
実施形態A15.HEK293T細胞またはCHO細胞である実施形態A14の単離された細胞
実施形態A16.昆虫細胞である、実施形態A13の単離された細胞。
実施形態A17.実施形態A8もしくはA9の組換えHAポリペプチドまたは実施形態A10の組換え三量体HAタンパク質を含む融合タンパク質。
実施形態A18.実施形態A8もしくはA9の組換えHAポリペプチドまたは実施形態A10の組換え三量体HAタンパク質を含むインフルエンザウイルス様粒子(VLP)。
実施形態A19.インフルエンザノイラミニダーゼ(NA)タンパク質、インフルエンザマトリクス(M1)タンパク質、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)gagタンパク質またはこれらの組合せの1つもしくはそれ以上をさらに含む、実施形態A18のインフルエンザVLP。
実施形態A20.実施形態A8もしくはA9の組換えHAポリペプチド、実施形態A10の組換え三量体HAタンパク質、実施形態A17の融合タンパク質または実施形態A18もしくはA19のインフルエンザVLPおよび薬学的に許容される担体、賦形剤またはアジュバントを含む医薬組成物。
実施形態A21.1つまたはそれ以上のインフルエンザ株、型および/またはサブタイプに対する免疫応答を誘発する、実施形態A20の医薬組成物。
実施形態A22.インフルエンザウイルスに対して対象を免疫化する方法であって、実施形態A8もしくはA9の組換えHAポリペプチド、実施形態A10の組換え三量体HAタンパク質、実施形態A17の融合タンパク質、実施形態A18もしくはA19のインフルエンザVLPまたは実施形態A20もしくはA21の医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む方法。
実施形態A23.対象においてインフルエンザウイルスへの免疫応答を誘導する方法であって、実施形態A8もしくはA9の組換えHAポリペプチド、実施形態A10の組換え三量体HAタンパク質、実施形態A17の融合タンパク質、実施形態A18もしくはA19のインフルエンザVLPまたは実施形態A20もしくはA21の医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む方法。
実施形態A24.インフルエンザウイルスは、季節性またはパンデミックインフルエンザウイルスである、実施形態A22またはA23の方法。
実施形態A25.免疫応答は、1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルス株、型またはサブタイプに対する抗体の産生を含む、実施形態A23またはA24の方法。
実施形態A26.対象は、哺乳動物である、実施形態A22~A25のいずれか1つの方法。
実施形態A27.対象は、ヒトである、実施形態A26の方法。
実施形態A28.投与することは、筋肉内、鼻腔内、皮内、皮下、経口または静脈内経路を介して実行される、実施形態A22~A27のいずれか1つの方法。
【0010】
追加的目的および有利点は、続く記載に部分的に記載され、部分的に記載から明らかになり、実行によって収得される。目的および有利点は、添付の特許請求の範囲に具体的に示される要素および組合せの手段によって認識され、達成される。
【0011】
前述の一般的な記載および続く詳細な記載の両方は、例示的および説明的なだけであり、特許請求の範囲の限定ではないことは理解される。
【0012】
本明細書に組み入れられ、その一部を構成する添付の図は、1つ(複数)の実施形態(複数可)を例示し、記載と共に本明細書に記載の原理を説明する目的を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】HAポリペプチドを設計するための例示的クラスターベースコンセンサス(CBC)法を示す図である。
図1Aは、主成分分析(PCA)によるHA配列クラスターの生成を示している。8個のHA配列クラスターが同定され、円で示されている。
【
図1B】HAポリペプチドを設計するための例示的クラスターベースコンセンサス(CBC)法を示す図である。
図1Bは、実施例1に記載のティア割り当て(Tier assignment)およびアセンブリ順を例示する。
【
図2】種々のティア1、ティア2およびティア3 CBC HAポリペプチドが正しくフォールドされ、機能を保持していることを例示する図である。CBC HAポリペプチドは、293FT細胞で発現され、表面発現は、球状頭部(すなわち、CH65、5J8および4K8)またはステム(すなわち、C179)領域中の保存されたエピトープを認識することが周知であるモノクローナル抗体を使用して検出された。
【
図3】CBC HAタンパク質を発現するインフルエンザAウイルスを回収するための逆遺伝学システムの使用を例示する図である。ティア1および2 CBC HA配列(すなわち、HAco3M、HAco4M、HAco5MおよびHAcb345M)を内部に有する組換えインフルエンザAウイルスの良好なレスキューがプラークアッセイおよびヘマグルチニン活性によって決定された。
【
図4】実施例3に記載の免疫原性研究の模式図である。
【
図5A】CBC HA配列を発現する組換えウイルスが、プラーク減少中和試験(Plaque Reduction Neutralization Test)(PRNT)によって決定されるとおり中和抗体応答を誘導したことを示す図である。
【
図5B】CBC HA配列を発現する組換えウイルスが、プラーク減少中和試験(Plaque Reduction Neutralization Test)(PRNT)によって決定されるとおり中和抗体応答を誘導したことを示す図である。
【
図5C】CBC HA配列を発現する組換えウイルスが、プラーク減少中和試験(Plaque Reduction Neutralization Test)(PRNT)によって決定されるとおり中和抗体応答を誘導したことを示す図である。
【
図5D】CBC HA配列を発現する組換えウイルスが、プラーク減少中和試験(Plaque Reduction Neutralization Test)(PRNT)によって決定されるとおり中和抗体応答を誘導したことを示す図である。
【
図5E】CBC HA配列を発現する組換えウイルスが、プラーク減少中和試験(Plaque Reduction Neutralization Test)(PRNT)によって決定されるとおり中和抗体応答を誘導したことを示す図である。
【
図5F】CBC HA配列を発現する組換えウイルスが、プラーク減少中和試験(Plaque Reduction Neutralization Test)(PRNT)によって決定されるとおり中和抗体応答を誘導したことを示す図である。
【
図5G】CBC HA配列を発現する組換えウイルスが、プラーク減少中和試験(Plaque Reduction Neutralization Test)(PRNT)によって決定されるとおり中和抗体応答を誘導したことを示す図である。
【
図6】CBC HA配列を発現する組換えウイルスが、ヘマグルチニン阻害(HAI)アッセイによって決定されるとおり中和抗体応答を誘導したことを示す図である。
【
図7A】CBC HA配列を発現する組換えウイルスが、抗体フォレンジック(Antibody Forensic)(AF)アッセイによって決定されるとおり抗体結合を誘導したことを示す図である。結果は、野生型ウイルス(
図7Aおよび7C)ならびにティアウイルス(
図7Bおよび7D)について示されている。
【
図7B】CBC HA配列を発現する組換えウイルスが、抗体フォレンジック(Antibody Forensic)(AF)アッセイによって決定されるとおり抗体結合を誘導したことを示す図である。結果は、野生型ウイルス(
図7Aおよび7C)ならびにティアウイルス(
図7Bおよび7D)について示されている。
【
図7C】CBC HA配列を発現する組換えウイルスが、抗体フォレンジック(Antibody Forensic)(AF)アッセイによって決定されるとおり抗体結合を誘導したことを示す図である。結果は、野生型ウイルス(
図7Aおよび7C)ならびにティアウイルス(
図7Bおよび7D)について示されている。
【
図7D】CBC HA配列を発現する組換えウイルスが、抗体フォレンジック(Antibody Forensic)(AF)アッセイによって決定されるとおり抗体結合を誘導したことを示す図である。結果は、野生型ウイルス(
図7Aおよび7C)ならびにティアウイルス(
図7Bおよび7D)について示されている。
【
図8】実施例4に記載のVLP免疫処置研究の模式図である。
【
図9】ヘマグルチニン阻害(HAI)アッセイによって決定された種々のCBC HAタンパク質を発現するVLPの免疫原性プロファイルを示す図である。各パネル(縦線によって分けられている)内で、検査されたウイルスは、左から右に、A/California/07/09;A/New Jersey/10/76;A/Puerto Rico/8/1934;A/Fort/MonMouth/1/1947;A/USSR/90/1977;A/Brazil/11/1978;A/Chile/1/1983;A/Taiwan/1/86;A/Texas/36/91;A/Beijing/262/1995;A/New Caledonia/20/99;A/Solomon Islands/3/2006;およびA/Brisbane/59/2007であった。
【
図10-1】マイクロ中和試験(MN)アッセイによって決定された種々のCBC HAタンパク質を発現するVLPの免疫原性プロファイルを示す図である。各パネル内で、検査されたウイルスは、左から右に、A/California/07/09;A/New Jersey/10/76;A/Puerto Rico/8/1934;A/Fort/MonMouth/1/1947;A/USSR/90/1977;A/Brazil/11/1978;A/Chile/1/1983;A/Taiwan/1/86;A/Texas/36/91;A/Beijing/262/1995;A/New Caledonia/20/99;A/Solomon Islands/3/2006;およびA/Brisbane/59/2007であった。
【0014】
配列の記載
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
アジュバント:本明細書において使用される場合、アジュバントは、抗原への免疫応答を非特異的に増強する物質またはビヒクルを指す。アジュバントとして、抗原が吸着されるミネラル(例えば、アラム、水酸化またはリン酸アルミニウム)の懸濁物;抗原溶液がミネラル油中または水中に乳化されている油中水または水中油乳剤(例えば、フロイント不完全アジュバント)が非限定的に挙げられる。時に、死菌マイコバクテリアが抗原性をさらに増強するために含まれる(例えば、フロイント完全アジュバント)。免疫賦活性オリゴヌクレオチド(例えば、CpGモチーフ)もアジュバントとして使用できる(例えば、米国特許第6,194,388号;第6,207,646号;第6,214,806号;第6,218,371号;第6,239,116号;第6,339,068号;第6,406,705号;および第6,429,199号を参照されたい)。アジュバントは、Toll様受容体(TLR)アゴニストおよび共刺激分子などの生物学的分子も含む。例示的生物学的アジュバントとして、これだけに限らないが、IL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-a、IFN-γ、G-CSF、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、OX-40L、41 BBLまたはこれらの組合せが挙げられる。
【0016】
抗体:本明細書において使用される場合、抗体は、特定の抗原に特異的結合を付与するために十分なカノニカル免疫グロブリン配列エレメントを含むタンパク質またはポリペプチドを指す。一部の実施形態では、抗体は、2本の重鎖および2本の軽鎖を含む古典的抗体である。各重鎖は、1つの可変領域(例えば、VH)ならびに少なくとも3つの定常領域(例えば、CH1、CH2およびCH3)を含み、各軽鎖は、1つの可変領域(VL)および1つの定常領域(CL)を含む。可変領域は、抗体の特異性を決定する。各可変領域は、4つの比較的保存されたフレームワーク領域(FR)に隣接された、相補性決定領域(CDR)としても周知の3つの高頻度可変性領域を含む。3つのCDRは、CDR1、CDR2およびCDR3と称され、抗体結合特異性に寄与する。一部の実施形態では、抗体は、例えば、抗体の抗原結合または可変領域などの未処置抗体の一部を含む「抗体断片」または「抗体断片(複数)」とも称される。「抗体断片」の例として、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、三価抗体(triabody)、四価抗体(tetrabody)、直鎖抗体、1本鎖抗体分子および多特異性抗体に含まれるCDR含有部分が挙げられる。ある特定の実施形態では、天然抗体において見出されるような十分な免疫グロブリンドメイン配列を含む任意のポリペプチドまたはポリペプチドの複合体は、かかるポリペプチドが天然で産生される(例えば、抗原に反応する生物によって生成される)、または組換え工学、化学合成もしくは他の人工システムもしくは方法によって産生されるかに関わらず、「抗体」と呼ばれるおよび/または「抗体」として使用される。一部の実施形態では、抗体は、モノクローナルである;一部の実施形態では、抗体は、ポリクローナルである。一部の実施形態では、抗体は、キメラ抗体である。一部の実施形態では、抗体はヒト化されている。
【0017】
抗原:本明細書において使用される場合、抗原は、生物に曝露もしくは投与される場合に免疫応答を誘発する作用剤および/または、T細胞受容体(例えば、MHC分子によって提示される場合)によって結合されるもしくは抗体(例えば、B細胞によって産生される)に結合する作用剤を指す。一部の実施形態では、抗原は、生物において液性応答(例えば、抗原特異的抗体の産生を含む)を誘発する。代替的にまたは追加的に、一部の実施形態では、抗原は、生物において細胞性応答(例えば、その受容体が抗原と特異的に相互作用するT細胞を含む)を誘発する。具体的な抗原が標的生物(例えば、マウス、ウサギ、霊長類、ヒト)の1つまたはいくつかのメンバーにおいて免疫応答を誘発できるが、標的生物種のすべてのメンバーにおいてではないことは、当業者によって理解される。一部の実施形態では、抗原は、標的生物種のメンバーの少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%において免疫応答を誘発する。一部の実施形態では、抗原は、抗体および/またはT細胞受容体に結合し、生物において具体的な生理学的応答を誘導する場合としない場合がある。一部の実施形態では、例えば抗原は、かかる相互作用がin vivoで生じるかどうかに関わらずin vitroで抗体に、および/またはT細胞受容体に結合できる。一部の実施形態では、抗原は、異種性免疫原によって誘導されたものを含む特異的液性または細胞性免疫の産生物と反応する。一部の実施形態では、インフルエンザHAポリペプチドまたはその免疫原性断片は、抗原である。
【0018】
抗原ドリフト:本明細書において使用される場合、抗原ドリフトは、比較的頻繁に生じるHAまたはNA抗原における変異を指す。抗原ドリフトは、インフルエンザウイルスが免疫認識を逃れられるようにでき、ワクチン効能を減少させる場合がある。
【0019】
抗原シフト:本明細書において使用される場合、抗原シフトは、異なるインフルエンザ株間の遺伝子材料の再集合によって生じるHAまたはNA抗原における主な変化を指す。
【0020】
およそ:本明細書において使用される場合、用語「およそ」または「約」は、目的の1つまたはそれ以上の値に適用される場合、述べられる基準値に近い値を指す。ある特定の実施形態では、用語「およそ」または「約」は、他に述べられない限りまたは内容から他が明らかでない限り、述べられた基準値のいずれかの方向における(超えるまたは少ない)約25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはこれ未満の範囲内の値の範囲を指す(かかる値が可能値の100%を超える場合を除く)。
【0021】
エピトープ:本明細書において使用される場合、免疫グロブリン(例えば、抗体または受容体)結合成分の全体または部分によって特異的に認識される任意の部分を指す。一部の実施形態では、エピトープは、抗原上の複数の化学原子または基からなる。一部の実施形態では、かかる化学的原子または基は抗原が適切な三次元コンホメーションをとった場合に表面に曝露される。一部の実施形態では、かかる化学原子または基は、抗原がかかるコンホメーションをとった場合に空間的に互いに物理的に近い。一部の実施形態では、化学的原子または基の少なくとも一部は、抗原が代替的コンホメーションをとった(例えば、直鎖化されている)場合に互いに物理的に離される。
【0022】
頭部領域:本明細書において使用される場合、用語「頭部領域」は、インフルエンザHAタンパク質の膜遠位球形ドメインを指す。HA頭部領域は、受容体結合を媒介し、HAタンパク質のHA1サブユニット内に存在する。
【0023】
ヘマグルチニンまたはHAタンパク質:本明細書において使用される場合、ヘマグルチニンまたはHAタンパク質は、インフルエンザウイルス膜の表面上の膜内在性糖タンパク質を指す。詳細には、HAタンパク質は、通常、インフルエンザビリオンの表面上のホモ三量体複合体として発現される。個々のHAモノマーポリペプチドは、膜遠位球状頭部領域と膜近位ステム領域とにさらに分離される。HAタンパク質は、標的細胞とのウイルス付着および続く、膜融合に関与している。現在、抗体とのそれらの相互作用によって決められる少なくとも18個の周知のHAサブタイプ(すなわち、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、H17およびH18)がある。ヒトは、一般にH1、H2およびH3サブタイプのウイルスに感染する。一部の実施形態では、HAタンパク質は、モノマーであり、単一のHAポリペプチドを含む。他の実施形態では、HAタンパク質は、三量体であり、3つのHAポリペプチドを含む。本明細書において使用される場合、「ヘマグルチニンポリペプチド」または「HAポリペプチド」は、そのアミノ酸配列がHAの少なくとも1つの特徴的な配列を含むポリペプチドを指す。HAポリペプチドは、全長インフルエンザHAポリペプチド配列およびその断片を含む場合がある。当業者は、HAポリペプチド一般の、および/または具体的なHAポリペプチド(例えば、H1、H2もしくはH3ポリペプチド)または具体的な宿主(例えば、鳥類、ラクダ、イヌ、ネコ、ジャコウネコ、ウマ、ヒト、ヒョウ、ミンク、マウス、アシカ、ムナジロテン、ブタ、トラ、クジラなど)の感染を媒介するHAの特徴的である配列を容易に同定できる。the National Center for Biotechnology Information(NCBI)は、HAポリペプチド配列のデータベースを維持している。
【0024】
宿主:本明細書において使用される場合、用語「宿主」は、目的のポリペプチドが存在するシステム(例えば、細胞、生物など)を指す。一部の実施形態では、宿主は、特定の感染病原体での感染に感受性であるシステムである。一部の実施形態では、宿主は、目的の特定のポリペプチドまたはタンパク質を発現するシステムである。
【0025】
宿主細胞:本明細書において使用される場合、「宿主細胞」は、外来性DNA(組換えまたはその他)が導入される細胞を指す。例えば、宿主細胞は、標準的組換え技術によって本明細書に記載のインフルエンザHAポリペプチドを産生するために使用できる。当業者は、かかる用語が具体的な対象細胞だけでなく、かかる細胞の後代も指すことを理解する。ある特定の改変が、変異または環境の影響のいずれかのために続く世代に生じる場合があることから、かかる後代は、実際に、親細胞と同一でない場合があるが、本明細書において使用される、用語「宿主細胞」の範囲内にいまだ含まれる。一部の実施形態では、宿主細胞は、外来性DNA(例えば、組換え核酸配列)を発現するために好適な任意の原核および真核細胞を含む。例示的細胞として、原核もしくは真核細胞(単細胞もしくは多細胞)、細菌細胞(例えば、大腸菌、バチルス種、ストレプトマイセス種などの株)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、出芽酵母、分裂酵母、P.パストリス、P.メタノリカ(P.methanolica)など)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、イラクサギンウワバなど)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、または細胞融合物(例えば、ハイブリドーマまたはクアドローマ)が挙げられる。一部の実施形態では、細胞は、ヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラットまたはマウス細胞である。一部の実施形態では、細胞は、真核細胞であり、これだけに限らないが、CHO(例えば、CHO K1、DXB-11CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎細胞(例えば、HEK293、293EBNA、MSR293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC5、Colo205、HB8065、HL-60、(例えば、BHK21)、ジャーカット、ダウディ、A431(上皮性)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT060562、セルトリ細胞、BRL3A細胞、HT1080細胞、骨髄腫細胞、腫瘍細胞および前述の細胞由来の細胞系から選択される。一部の実施形態では、細胞は、1つまたはそれ以上のウイルス遺伝子を含む、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(商標)細胞)。
【0026】
免疫応答:本明細書において使用される場合、用語「免疫応答」は、抗原またはワクチンなどの刺激への、B細胞、T細胞、樹状細胞、マクロファージまたは多形核球(polymorphonucleocyte)などの免疫システムの細胞の応答を指す。免疫応答は、例えば、インターフェロンまたはサイトカインを分泌する上皮細胞を含む、宿主防御応答に関与する任意の体細胞を含む。免疫応答として、これだけに限らないが、自然および/または適応免疫応答が挙げられる。本明細書において使用される場合、防御免疫応答は、対象を感染から保護する(例えば、感染を予防するまたは感染に関連する疾患の発症を予防する)免疫応答を指す。免疫応答を測定する方法は、当技術分野において十分周知であり、例えば、リンパ球(BまたはT細胞など)の増殖および/または活性、サイトカインまたはケモカインの分泌、炎症、抗体産生などを測定することによるものが挙げられる。
【0027】
免疫原:本明細書において使用される場合、用語「免疫原」は、動物に注射または吸収される組成物を含む、好適な条件下で動物において抗体の産生またはT細胞応答などの免疫応答を刺激できる化合物、組成物または物質を指す。本明細書において使用される場合、「免疫原性組成物」は、免疫原(HAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質など)を含む組成物である。本明細書において使用される場合、「免疫化」は、ワクチン接種によってなど感染性疾患から対象が保護されるようにすることを意味する。
【0028】
インフルエンザウイルス:本明細書において使用される場合、オルトミクソウイルス科に属するセグメント化されたマイナス鎖RNAウイルスを指す。
【0029】
インフルエンザワクチン:本明細書において使用される場合、インフルエンザウイルス感染の予防、回復または処置のために投与される、免疫応答を刺激できる免疫原性組成物を指す。インフルエンザワクチンとして、例えば、弱毒化または死菌(例えば、分割された)インフルエンザウイルス、ウイルス様粒子(VLP)および/または抗原ポリペプチドもしくはタンパク質(例えば、本明細書に記載のHAポリペプチドもしくは三量体HAタンパク質)またはそれら由来のDNAまたはかかる免疫原性材料の任意の組換えバージョンが挙げられる。インフルエンザワクチンは、DNAおよびウイルスベクターに基づくワクチンも含む。本明細書において検討されるワクチンは、場合により、1つまたはそれ以上のアジュバントを含む場合がある。
【0030】
単離された:本明細書において使用される場合、(i)最初に産生された(天然において、または実験設定においてであるかに関わらず)際に付随していた構成成分の少なくとも一部から分離された;または(ii)人工的に産生された、のいずれかである作用剤または実体を指す。単離された作用剤または実体は、最初に付随していた他の構成成分の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%またはこれ超から分離されている。一部の実施形態では、単離された作用剤は、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%を超えて純粋である。本明細書において使用される場合、他の構成成分を実質的に含まない場合に物質は、「純粋」である。一部の実施形態では、当業者によって理解されるとおり、物質は、例えば、1つまたはそれ以上の担体または賦形剤(例えば、緩衝液、溶媒、水など)などのある特定の他の構成成分と配合された後でも「単離された」または「純粋」とさえ見なすことができ;かかる実施形態では、物質の単離または純度パーセントは、かかる担体または賦形剤を含まずに算出される。例示的実施形態では、天然に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの生物学的ポリマーは、a)その起源または誘導の供給源が、天然でのその天然状態においてそれに伴う構成成分の一部またはすべてと付随しない理由から;b)天然でそれを産生する種と同じ種の他のポリペプチドまたは核酸を実質的に含まない;c)天然でそれを産生する種のものではない細胞または他の発現システムによって発現される、またはそれ由来の構成成分に付随する、場合に、「単離された」と見なされる。したがって、例えば、一部の実施形態では、化学的に合成されるまたは、天然でそれを産生するのとは異なる細胞システムにおいて合成されるポリペプチドは、「単離された」ポリペプチドと見なされる。代替的にまたは追加的に、一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の精製技術に供されたポリペプチドは、a)天然でそれに付随する;および/またはb)最初に産生された際に付随する、他の構成成分から分離されている程度に「単離された」ポリペプチドと見なされる。
【0031】
大発生:本明細書において使用される場合、インフルエンザウイルス「大発生」は、所与の年に単一の国の中から単離されたウイルスの集合物を指す。
【0032】
パンデミック、季節性、ブタ株:本明細書において使用される場合、「パンデミック」インフルエンザ株は、ヒト集団のパンデミック感染を生じたまたは生じる能力を有するものである。一部の実施形態では、パンデミック株は、パンデミック感染を生じさせたことがある。一部の実施形態では、かかるパンデミック感染は、複数の地域にわたる伝染性感染を含む。一部の実施形態では、パンデミック感染は、感染がそれらの間を通常は通過しないような互いに分かれている地域(例えば、山、水域によって、異なる大陸の部分としてなど)にわたる感染を含む。一部の実施形態では、パンデミックインフルエンザ株は、ヒトがそれに対する免疫を欠いているトリまたはブタ由来の新規HAまたはNAを有するウイルスを生じる、ヒトインフルエンザウイルスとトリまたはブタインフルエンザウイルスとの間の再集合から生じるもの(およそ20~30年ごとに生じる抗原シフト)を含む。言い換えると、ヒト集団は、無感作であり、過去のワクチン接種または過去の曝露のいずれかの結果としての抵抗性を有さないまたはわずかしか有さないと考えられる。パンデミック株と季節性株とは、抗原的に異なり、配列によって全く異なる。一般に、季節性インフルエンザ株は、具体的な季節または具体的な年、例えば、1986年から2009年(パンデミックではない2009年配列を含む)由来の蔓延している株、および抗原領域をコードする実質的に類似(すなわち、抗原配列空間において類似)の遺伝配列を有する他の株と定義される。ブタインフルエンザ株は、ブタに固有のウイルスに関連する任意のインフルエンザ株を指す。例示的パンデミック株として、非限定的に、A/California/07/2009、A/California/04/2009、A/Belgium/145/2009、A/South Carolina/01/1918およびA/New Jersey/1976が挙げられる。パンデミックサブタイプとして、特に、H5N1、H2N2、H9N2、H7N7、H7N3、H7N9およびH10N7サブタイプが挙げられる。例示的季節性株として、非限定的に、A/Puerto Rico/8/1934、A/Fort Monmouth/1/1947、A/Chile/1/1983、A/Texas/36/1991、A/Singapore/6/1986、A/Beijing/32/1992、A/New Caledonia/20/1999、A/Solomon Islands/03/2006、およびA/Brisbane/59/2007が挙げられる。例示的ブタ株として、非限定的に、A/New Jersey/1976単離体およびA/California/07/2009が挙げられる。追加的インフルエンザパンデミック、季節性および/またはブタ株は、当技術分野において周知である。
【0033】
予防:本明細書において使用される場合、具体的な疾患、障害または状態(例えば、感染、例えばインフルエンザウイルスでの)の、予防(prophylaxis)、疾患顕在化の回避、発病の遅延ならびに/または1つまたはそれ以上の症状の頻度および/もしくは重症度の低減を指す。一部の実施形態では、予防は集団ベースで評価され、疾患、障害または状態の発症、頻度および/または1つまたはそれ以上の症状の強度における統計的に有意な減少が疾患、障害または状態に感受性の集団において観察される場合に、作用剤は具体的な疾患、障害または状態を「予防」すると見なされる。
【0034】
組換え:本明細書において使用される場合、用語「組換え」は、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現されたポリペプチド、組換え、コンビナトリアルポリペプチドライブラリーから単離されたポリペプチドまたは、選択された配列エレメントを互いにスプライシングすることを含む任意の他の手段によって製造、発現、創出または単離されたポリペプチドなどの、組換え手段によって設計、操作、製造、発現、創出または単離されるポリペプチドまたはタンパク質(例えば、本明細書に記載のHAポリペプチドもしくは三量体HAタンパク質)を指すと意図される。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のかかる選択された配列エレメントは、天然で見出される。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のかかる選択された配列エレメントは、コンピューターで設計される。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のかかる選択された配列エレメントは、周知の配列エレメント、例えば、天然または合成供給源由来、の変異導入(例えば、in vivoまたはin vitro)から生じる。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のかかる選択された配列エレメントは、同じポリペプチドに天然では存在しない複数(例えば、2つ以上)(例えば、2つの別々のHAポリペプチド由来の2つのエピトープ)の周知の配列エレメントの組合せから生じる。
【0035】
ステム領域:本明細書において使用される場合、用語「ステム領域」または「ストーク領域」は、インフルエンザHAタンパク質の球状頭部ドメインから出ている膜近位の伸長されたドメインを指す。ステム領域は、膜融合を媒介し、HAタンパク質のHA1およびHA2サブユニットの配列領域からなる。
【0036】
シグナル配列、分泌シグナル、または分泌シグナルペプチド:本明細書において使用される場合、用語は、細胞からの分泌のためのシグナルを伝達するペプチド配列を指す。分泌シグナルは、そうでなければ分泌されないポリペプチドまたはタンパク質の分泌をもたらすことができる。
【0037】
三量体化ドメイン:本明細書において使用される場合、用語は、ポリペプチドまたはタンパク質の三量体アセンブリを生じるドメインをコードするアミノ酸配列を指す。具体的なタンパク質に由来しない三量体化ドメインは、人工または異種性三量体化ドメインと称される。例示的三量体化ドメインとして、これだけに限らないが、コラーゲンの三量体化ドメイン、GCN4-ベースイソロイシンジッパー、HIV gp41三量体化ドメインまたはT4バクテリオファージフィブリチンフォールドン(fibritin foldon)(Fd)三量体化ドメインが挙げられる。
【0038】
配列同一性:アミノ酸配列または核酸配列間の類似性は、配列間の類似性および/または同一性の観点から表される。配列類似性は、配列同一性および相同性によって密接に関連している配列の要素を含む。配列類似性は、類似性(または同一性もしくは相同性)百分率の観点からしばしば測定される;百分率が高いほど2つの配列はより類似している。所与の遺伝子またはタンパク質のホモログまたはバリアントは、標準的方法を使用してアラインされた場合に比較的高い程度の配列同一性を有する。比較のための配列のアライメント法は、当技術分野において十分周知である。種々のプログラムおよびアライメントアルゴリズムが当技術分野において記載されている:Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981;Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970;Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444,1988;Higgins and Sharp,Gene 73:237~244,1988;Higgins and Sharp,CABIOS 5:151~153,1989;Corpet et al.,Nucleic Acids Research 16:10881~10890,1988およびPearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444,1988.Altschul et al.,Nature Genet.6:119~129,1994。NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST(登録商標))(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403~410,1990)は、配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxとの関連での使用のためにthe National Center for Biotechnology Information(NCBI、Bethesda、Md.)を含むいくつかの供給元から入手可能である。
【0039】
対象:本明細書において使用される場合、動物界の任意のメンバーを指す。一部の実施形態では、「対象」はヒトを指す。一部の実施形態では、「対象」は非ヒト動物を指す。一部の実施形態では、対象として、これだけに限らないが、哺乳動物、鳥類、は虫類、両生類、魚類、昆虫および/または虫が挙げられる。ある特定の実施形態では、非ヒト対象は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類および/またはブタ)である。一部の実施形態では、対象は、トランスジェニック動物、遺伝的に操作された動物、および/またはクローンである場合がある。本発明のある特定の実施形態では、対象は、成人、青年または幼児である。一部の実施形態では、用語「個体」または「患者」は、「対象」と互換的であるとして使用され、意図される。本発明によって同様に検討されるのは、子宮内での医薬組成物の投与および/または処置法の実施である。
【0040】
ワクチン接種:本明細書において使用される場合、用語「ワクチン接種」または「ワクチン接種する」は、例えば病原体への、免疫応答を生成する目的の組成物の投与を指す。ワクチン接種は、病原体への曝露および/または1つまたはそれ以上の症状の発症の前、その間および/または後、一部の実施形態では、病原体への曝露の前、その間および/または直後に投与される。一部の実施形態では、ワクチン接種は、ワクチン接種組成物の適切な時間間隔での複数回投与を含む。
【0041】
ウイルス様粒子(VLP):本明細書において使用される場合、句「ウイルス様粒子」または「VLP」は、ウイルスに類似しているが、いかなるウイルス遺伝材料も欠いており、したがって感染性でない粒子を指す。「ウイルス様粒子」または「VLP」は、哺乳動物細胞系、昆虫細胞系、酵母および植物細胞を含む種々の細胞培養システムにおける異種性発現によって産生される。加えてVLPは、当技術分野において周知の方法によって精製される。一部の実施形態では本明細書に記載のインフルエンザVLPは、HAポリペプチドおよび/またはNAポリペプチドを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載のインフルエンザVLPは、HAポリペプチド、NAポリペプチドおよび/または構造ポリペプチドを含む。一部のある特定の実施形態では、本明細書に記載のインフルエンザVLPは、HAポリペプチド、NAポリペプチドおよび/またはインフルエンザM1ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載のインフルエンザVLPは、HAポリペプチド、NAポリペプチドおよび/またはHIVgagポリペプチドを含む。当業者は、他のウイルス構造タンパク質を本明細書に例示されるものの代替として使用できることを認識する。インフルエンザVLPは、HAおよびNAタンパク質、ならびに場合によりM1タンパク質および/またはHIV gagタンパク質をコードするプラスミドを用いた、宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞)のトランスフェクションによって産生できる。タンパク質発現を可能にするための好適な期間でのトランスフェクトされた細胞のインキュベーション後に、VLPは細胞培養上清から単離される。一部の実施形態では、本明細書に記載のインフルエンザVLPは、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)での一過性トランスフェクションによって産生される。一部の実施形態では、インフルエンザVLPは、1つまたはそれ以上のアッセイの使用によって分析される。例えば、インフルエンザVLP粒子サイズは、動的光散乱によって分析でき、かかるVLPは、タンパク質染色によって、ヘマグルチニン活性およびヘマグルチニン含有量の定量についても分析される。
【0042】
野生型:当技術分野において理解されるとおり、用語「野生型」は、天然で見出されるタンパク質または核酸の通常の形態を一般に指す。例えば、野生型HAポリペプチドは、インフルエンザウイルスの天然の単離物において見出される。種々の異なる野生型HA配列をNCBIインフルエンザウイルス配列データベースにおいて見出すことができる。
【0043】
ヘマグルチニン(HA)ポリペプチドを設計するための方法
コンセンサスインフルエンザタンパク質配列を生成することに関連する重要な課題は、時間的および地理的配列バイアスに関する。かかるバイアスは、一部は、公的なおよび/または民間の配列データベースに提供される配列記録がしばしばより最近の配列に大きく偏っているために存在する。さらに、合衆国などのある特定の地理的領域と関連する配列がしばしば大きな比率を占める。一態様では、本発明は、かかる時間的および地理的配列バイアスを克服するクラスターベースコンセンサスアプローチを使用して、コンセンサスアミノ酸を含むインフルエンザHAポリペプチドを生成するための新規方法を提供する。本発明の方法は、系統発生学的情報と無関係で、一次アミノ酸配列に含有される情報だけに依存する。したがって、本方法は、全体的な配列多様性を反映し、時間的または地理的に大きな比率を占める配列へのバイアスがないHAポリペプチド配列を生成することができる。
【0044】
種々の実施形態では、方法は、複数のインフルエンザHA配列における配列差異のコンピューター分析に基づいてHAポリペプチド配列を設計すること、類似配列のクラスターを生成するためにコンセンサスベース配列アルゴリズムを適用すること、およびコンセンサスアミノ酸配列を有するHAポリペプチドの構造分析を実施することを含む。一部の実施形態では、本方法は、K平均法、ミニマックスクラスタリングおよび最遠距離優先クラスタリング(Farthest-First clustering)などのツールを使用してクラスター化できるペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを生成する。代替的にまたは追加的に、ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスは、好適なクラスターを定義するため(例えば、クラスターを分離し、数を決めるため)の、多次元尺度構成法(MDS)または主成分分析(PCA)などのオーディネーション技術を使用してコンパクト表現で可視化される。さらに本方法は、コンセンサス配列内の可変アミノ酸位置を解明し、正しくフォールドし、それにより機能性であり易い候補を順位付けるために、分子モデリングおよび結晶構造との比較を利用する。
【0045】
理論に束縛されることを望むわけではないが、本発明の方法は、さまざまなインフルエンザ株、型および/またはサブタイプにわたって保存されたエピトープを含むHAポリペプチドを生成すると考えられる。したがって、種々の実施形態では、本方法は、広範なインフルエンザ株(例えば、1つまたはそれ以上の季節性、パンデミックもしくはブタ株)、インフルエンザ型(例えば、1つまたはそれ以上のインフルエンザA型、B型もしくはC型)および/またはインフルエンザサブタイプ(例えば、非限定的に、H1N1、H3N2もしくはH5N1などの1つまたはそれ以上のインフルエンザサブタイプ)に対して交差反応性免疫応答の増強を誘導できるHAポリペプチドを生成する。
【0046】
一部の実施形態では、本方法は、種々のインフルエンザHAポリペプチド配列を選択することを含む。種々の異なるHA配列は、the National Center for Biotechnology Information(NCBI)インフルエンザウイルス配列データベースなどの配列データベースにおいて見出すことができる。一部の実施形態では、固有の配列の非重複サブセットは、配列アライメントのために選択される。
【0047】
一部の実施形態では、本方法は、インフルエンザHAポリペプチド配列をアラインすることを含む。当技術分野において周知の任意の多重配列アライメントツールを使用できる。例えば、Katoh and Kuma(2002)NAR,30:3059;Katoh and Standley(2013)Mol BioL Evol 30:772;Edgar,R.C.(2004)NAR,32:1792;Edgar,R.C.(2004)BMC Bioinf,113;Sievers et al.(2011)Mol Sys Biol 7:539;およびPearson and Lipman.(1988)PNAS,85:2444を参照されたい。本発明のために利用できる例示的配列アライメントツールとして、これだけに限らないが、MAFFT、MUSCLE、CLUSTAL OMEGA、FASTA、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0048】
一部の実施形態では、特異的配列領域は、さらなる分析から遮蔽される場合がある。例えば、HAシグナルペプチド配列、膜貫通ドメイン配列、細胞質側末端配列または任意の他の保存HAドメインの任意の1つは、さらなる分析から遮蔽される場合がある。
【0049】
一部の実施形態では、本方法は、アラインされた配列からペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを算出することを含む。2つ以上の配列間の距離を算出するための任意の方法を使用できる。ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを算出するための例示的ツールとして、これだけに限らないが、BLOSUM、PAM、IDENTITY置換マトリクスまたはこれらの組合せが挙げられる。一実施形態では、FastTreeなどのペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを算出するための代替法を使用する場合がある(Price,M.N.,Dehal,P.S.,and Arkin,A.P.(2009)Molecular Biology and Evolution 26:1641~1650)。
【0050】
一部の実施形態では、本方法は、ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスから類似配列のクラスターを同定するおよび創出することをさらに含む。類似配列のクラスターを同定するための例示的ツールとして、これだけに限らないが、K平均クラスタリング、ミニマックスクラスタリング、最遠距離優先クラスタリング、主成分分析(PCA)、多次元尺度構成法(MDS)またはこれらの組合せが挙げられる。一実施形態では、クラスタリングのためにK平均法が利用される(Hartigan,J.A.et al.(1979)Journal of the Royal Statistical Society,Series C,Applied Statistics,28(1):100~108を参照されたい)。別の実施形態では、ミニマックスクラスタリング(例えば、類似性マトリクスのミニマックスリンケージ階層クラスタリング(linkage hierarchical clustering))が利用される(Bien,J.et al.,(2011)The Journal of the American Statistical Associationを参照されたい)。さらなる実施形態では、近似解法(farthest-first traversal)が使用される(Rosenkrantz et al.(1977)SIAM J Comp,6:563を参照されたい)。
【0051】
一部の実施形態では、オーディネーション技術が、ペアワイズ類似性/非類似性マトリクス由来の類似配列のクラスターを同定および創出するために使用される。例えば、一部の実施形態では、PCAは、ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスの次元削減(dimension reduction)のために使用される。PCAは、高次元、ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを、類似配列のクラスターの可視化および同定を促進する低次元サブ空間に変換するために利用できる(Pearson,K.(1901)Philosophical Magazine 2(11):559~572およびHotelling,H.(1933)Journal of Educational Psychology,24,417~441,and 498~520を参照されたい)。さらなる実施形態では、多次元尺度構成法(MDS)が使用される。MDSは、多次元データセットの類似性および非類似性のレベルを算出および可視化し、一連の点のすべての対の間の距離を最良に再現する次元の削減されたセットを見出す手段を指す。一部の実施形態では、MDSは、オブジェクト間の距離が維持されるように、N次元空間中の各オブジェクトを位置させるために使用される。一部の実施形態では、MDSは、距離マトリクスに含有される情報の提示を可能にする。一部の実施形態では、MDSは、削減された次元空間にHA配列を置き、それによりウイルス配列の対の間の相対距離を正確に維持する。一部の実施形態では、系統発生学的方法が再集合および/または組換えの存在下で一致しない場合があることから、MDSは、系統発生学的方法における欠点を克服する。一部の実施形態では、MDSは、無作為であるインフルエンザウイルスにおける中立置換を除去する。種々の実施形態では、MDSまたはPCAなどのオーディネーション技術は、クラスターの可視化および同定を促進するために、高次元、ペアワイズ距離マトリクスを低次元サブ空間に変換することを助ける。
【0052】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、類似配列の1より多いクラスター(例えば、季節性様、パンデミック様またはブタ様配列)を創出する。本明細書に記載の方法での使用のための配列の例示的クラスターは、これだけに限らないが、
図1Aおよび1Bに示されるものである。
【0053】
一部の実施形態では、各クラスター内で、コンセンサス配列は、多重配列アライメントにおける各位置で最も頻繁なアミノ酸に基づいて算出される。例えば、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%(または使用者が定義する任意の他の閾値)以上である場合、そのアミノ酸はコンセンサスアミノ酸と指定される。代替的に、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%(または使用者が定義する任意の他の閾値)未満である場合、そのアミノ酸は可変アミノ酸と指定される。一部の実施形態では、第1の配列は、コンセンサスアミノ酸および可変アミノ酸を含む各クラスターについて生成される。一部の実施形態では、各クラスターについて生成された第1の配列は、クラスター内コンセンサス配列と指定される。
【0054】
一部の実施形態では、コンセンサス配列は、複数配列クラスターについて生成される。かかる実施形態では、複数クラスターについて選択されたクラスター内コンセンサス配列は、特定された結果の特性に基づいて追加的コンセンサス配列を導き出すためにマージされる。例えば、特定の地理的領域、宿主または時期と関連するクラスター内コンセンサス配列は、クラスターを超えるコンセンサス配列(例えば、第2の配列)を生成するためにマージされる。
【0055】
種々の実施形態では、クラスターを超えるコンセンサス配列を生成するために、1つのクラスターから生成されたクラスター内コンセンサス配列(例えば、第1の配列)は、別のクラスターまたは複数クラスターから生成されたクラスター内コンセンサス配列(例えば、第1の配列)と比較される。一部の実施形態では、生成された配列は、互いに対してアラインされる。一部の実施形態では、ペアワイズアライメント法は、アライメントにおいて各位置に対するコンセンサスアミノ酸があるかどうかを決定するために利用される。既に記載したとおり、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%(または使用者が定義する任意の他の閾値)以上である場合、そのアミノ酸はコンセンサスアミノ酸と指定され、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%(または使用者が定義する任意の他の閾値)未満である場合、そのアミノ酸は可変アミノ酸と指定される。一部の実施形態では、コンセンサスアミノ酸および可変アミノ酸を含むクラスターを超えるコンセンサス配列(例えば、第2の配列)は、かかる多重クラスター分析から生成される。種々の実施形態では、各位置で配列をアラインするおよびコンセンサスアミノ酸を決定するプロセスは、目的のすべての配列クラスターが検討されるまで繰り返し実施される。
【0056】
一部の実施形態では、追加的工程は、生成されたクラスター内コンセンサス配列内、および/またはクラスターを超えるコンセンサス配列(例えば、第1の配列および/または第2の配列)内の、各可変アミノ酸位置についてコンセンサスアミノ酸を決定するために実施される。かかる実施形態では、一連の検査配列は、コンセンサス配列(例えば、第1のおよび/または第2の配列)に基づいて生成され、検査アミノ酸を、可変アミノ酸位置に位置させる。本明細書に記載の方法において使用される検査アミノ酸は、必須または非必須アミノ酸を含むタンパク質において見出される任意の天然または非天然(例えば、非古典的)アミノ酸を包含する。例示的アミノ酸として、下の表2に提供されるアミノ酸および本明細書他所に記載されるものが挙げられる。
【0057】
【0058】
種々の実施形態では、本方法は、検査配列を分析するための分子モデリングの使用を検討する。一部の実施形態では、分子モデリングは、検査配列のそれぞれについて実施される。一部の実施形態では、分子モデリングは、分析されるインフルエンザタンパク質(すなわち、HA)の結晶構造との比較を含む。かかる結晶構造情報は、例えば、the Protein Data Bankから容易に入手可能である。一実施形態では、分子モデリングは、Rosetta(https://www.rosettacommons.org/software)または任意の他の同様の分子モデリングソフトウェアの使用を含む(例えば、Leaver-Fay et al.(2011)Meth.Enzymol.487:545~74を参照されたい)。例えば、コンセンサス配列中の可変アミノ酸位置を解明するために、Rosetta内のメトロポリス-モンテカルロシミュレートされたアニーリングプロトコールは、差異の同定された部位に存在するアミノ酸残基のすべての可能な組合せの置換を標本抽出するために使用される。次いで可能な置換は、エネルギー値に基づいてスコア化される。
【0059】
一部の実施形態では、各可変アミノ酸位置についてのコンセンサスアミノ酸は、出発値と同様のまたはそれより低い算出された総エネルギー値を有するHAポリペプチドを生じるアミノ酸(複数可)を選択することによって決定される。一部の実施形態では、各可変アミノ酸位置についてのコンセンサスアミノ酸は、負の総エネルギー値を有するHAポリペプチドを生じるアミノ酸(複数可)を選択することによって決定される。理論に束縛されることを望むわけではないが、負の総エネルギースコアを有するHAポリペプチドは、安定なタンパク質にさらにフォールドし易い一方で、正のエネルギースコアを有するポリペプチドは、あまり正しくフォールドしないと考えられる。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のHAポリペプチドは、それらの負の総エネルギースコアおよび/または参照構造との比較に従って生成され、順位付けられる。
【0060】
種々の実施形態では、本方法は種々の位置にコンセンサスアミノ酸を含むHAポリペプチド配列を生成する。本発明の方法を使用して生成された例示的HAポリペプチドは表1に示されている(すなわち、配列番号1~16)。
【0061】
ヘマグルチニン(HA)ポリペプチドおよびタンパク質
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の方法を用いて生成されたHAポリペプチドを提供する。一部の実施形態では、HAポリペプチドは、コンセンサスアミノ酸配列を含み、複数のインフルエンザ株(例えば、1つまたはそれ以上のパンデミック、季節性、および/またはブタインフルエンザ株)、タイプ(例えば、1つまたはそれ以上のインフルエンザA型、B型、および/またはC型ウイルス)、および/またはサブタイプ(例えば、1つまたはそれ以上のH1N1、H3N2、またはH5N1)に対する免疫応答を誘発することができる。したがって、一部の実施形態では、HAポリペプチドは、インフルエンザに対する改良された防御免疫を提供するために、抗原としてワクチン組成物中に取り込まれ得る。
【0062】
一部の実施形態では、本発明は、配列番号1~16またはこれらの断片のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むHAポリペプチドを提供する。一部の実施形態では、HAポリペプチドは、配列番号1~16またはその断片のいずれか1つと少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0063】
例えば、一部の実施形態では、本発明は、配列番号1~16のいずれか1つの断片を含むHAポリペプチドを提供する。例示的実施形態では、HAポリペプチドは、シグナルペプチドを欠いている場合がある。別の例示的実施形態では、HAポリペプチドは、膜貫通ドメインを欠いている場合がある。
【0064】
一部の実施形態では、本発明は、配列番号1~16またはこれらの断片のいずれか1つと比較して1つまたはそれ以上のアミノ酸変異を有するHAポリペプチドを提供する。例えば、HAポリペプチドは、配列番号1~16またはこれらの断片のいずれか1つに対して、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、もしくは約50個のアミノ酸突然変異を含むことができる。
【0065】
一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のアミノ酸突然変異は、置換、挿入、欠失、および切断から独立して選択される。一部の実施形態では、アミノ酸突然変異は、アミノ酸置換であり、保存的および/または非保存的置換を含み得る。
【0066】
保存的置換は、例えば、関連するアミノ酸残基の極性、電荷、サイズ、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質における類似性に基づいて行われる。例えば、20個の天然に存在するアミノ酸は、以下の6つの標準なアミノ酸群に群分けすることができる:(1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;および(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。本明細書で使用される場合、「保存的置換」は、上記で示された6つの標準的なアミノ酸群と同じ群内にリストされた別のアミノ酸によるアミノ酸の交換として定義される。例えば、GluによるAspの交換は、改変されたポリペプチドに1つの負電荷を保持する。さらに、α-ヘリックスを破壊する能力に基づいて、グリシンおよびプロリンが互いに置換される。本明細書で使用される場合、「非保存的置換」は、上記で示された6つの標準アミノ酸群の異なる群にリストされた別のアミノ酸によるアミノ酸の交換として定義される。
【0067】
種々の実施形態では、置換はまた、非古典的アミノ酸(例えば、セレノシステイン、ピロリジン、N-ホルミルメチオニンβ-アラニン、GABAおよびδ-アミノレブリン酸、4-アミノ安息香酸(PABA)、一般的なアミノ酸のD-異性体、2,4-ジアミノ酪酸、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、γ-Abu、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコスメ、シトルリン、ホモシトルリン、シスチン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロアミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えば、βメチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、Nα-メチルアミノ酸、および一般的なアミノ酸類似体)を含み得る。
【0068】
種々の実施形態では、本発明は、さらに、3つのHAポリペプチドを含む三量体HAタンパク質を提供する。一部の実施形態では、三量体HAタンパク質内の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのHAポリペプチドは、本明細書に記載のアミノ酸配列を含む。例えば、三量体HAタンパク質の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのHAポリペプチドは、配列番号1~16のアミノ酸配列、またはその断片を含み得る。一部の実施形態では、三量体HAタンパク質は、3つの同一のHAポリペプチドを含む。他の実施形態では、三量体HAタンパク質は、異なるアミノ酸配列を有する2つ以上の非同一のHAポリペプチドを含む。
【0069】
種々の実施形態では、本発明は、本発明のHAポリペプチド、またはその断片を含む融合タンパク質をさらに提供する。
【0070】
種々の実施形態では、本発明のHAポリペプチドは、モノマーHAポリペプチドの三量体HAタンパク質へのアセンブリを促進する三量体化配列または三量体化ドメインを含む場合がある。一部の実施形態では、HAポリペプチドは、天然インフルエンザ単離物において見出されるHAポリペプチドに存在する三量体化を促進する配列またはドメインを含む。例えば、HAポリペプチドは、三量体形成を促進することが周知であるステム領域を含むHA2配列において見出される配列を含む。他の実施形態では、HAポリペプチドは、野生型HAポリペプチドには天然で存在しない操作されたもしくは異種性三量体化配列または三量体化ドメインを含む。種々の実施形態では、HAポリペプチドは、任意の三量体化配列または三量体化ドメインを含むように操作される。例示的三量体化配列として、これだけに限らないが、共有結合性または非共有結合性架橋結合のいずれかを形成するアミノ酸が挙げられ、三量体化ドメインとして、これだけに限らないが、コラーゲンの三量体化ドメイン、GCN4-ベースイソロイシンジッパー、HIV gp41三量体化ドメインまたはT4バクテリオファージフィブリチンフォールドン(Fd)三量体化ドメインが挙げられる。
【0071】
一部の実施形態では、HAポリペプチドは、分泌シグナルペプチドを含み得る。一実施形態では、分泌シグナルペプチドの取り込みは、HAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質が宿主細胞から分泌されることを可能にする。別の実施形態では、分泌シグナルペプチドの取り込みは、タンパク質の発現および生成に使用される宿主細胞(例えば、宿主細胞の上清)からのHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質の精製を可能にする。
【0072】
当該技術分野において公知である任意の分泌シグナルペプチドを本発明のHAポリペプチドに組み込むことができると期待される。一部の実施形態では、分泌シグナルペプチドは、タンパク質の発現および生成に使用される宿主細胞に特異的である。例示的な分泌シグナルペプチドには、限定されないが、CD33シグナルペプチド配列、ヒトIgGカッパ軽鎖シグナルペプチド(ヒト細胞における発現のため)、ミツバチメリチンシグナル配列(昆虫細胞における発現のため)、および酵母アルファ-因子シグナル配列(酵母細胞における発現のため)が含まれる。例示的な実施形態では、分泌シグナル配列は、CD5分泌シグナルペプチドである。一実施形態では、CD5分泌シグナルペプチドは、配列番号17のアミノ酸配列を含む。
【0073】
一部の実施形態では、HAポリペプチドは、リンカー配列などのさらなる機能的配列を含む。一部の実施形態では、リンカーは、ポリペプチドである。一部の実施形態では、リンカーは、アミノ酸の長さが約100個未満である。例えば、リンカーは、アミノ酸の長さが約100個未満、約90個、約80個、約70個、約60個、約50個、約40個、約30個、約20個、約19個、約18個、約17個、約16個、約15個、約14個、約13個、約12個、約11個、約10個、約9個、約8個、約7個、約6個、約5個、約4個、約3個、または約2個であり得る。
【0074】
種々の実施形態では、リンカーは、グリシンおよび/またはセリン残基(例えば、約30%、もしくは約40%、もしくは約50%、もしくは約60%、もしくは約70%、もしくは約80%、もしくは約90%、もしくは約95%、もしくは約97%のグリシンおよびセリン)で実質的に構成される。例えば、一部の実施形態では、リンカーは(Gly4Ser)nであり、nは約1~約8、例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8(配列番号19)である。ある実施形態では、リンカー配列は、GGSGGSGGGGSGGGGS(配列番号20)である。さらなる例示的リンカーには、限定されないが、配列LE、GGGGS(配列番号21)、(GGGGS)n(n=1~4)(配列番号22)、(Gly)8(配列番号23)、(Gly)6(配列番号24)、(EAAAK)n(n=1~3)(配列番号25)、A(EAAAK)nA(n=2~5)(配列番号26)、AEAAAKEAAAKA(配列番号27)、A(EAAAK)4ALEA(EAAAK)4A(配列番号28)、PAPAP(配列番号29)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号30)、EGKSSGSGSESKST(配列番号31)、GSAGSAAGSGEF(配列番号34)、および(XP)n、(Xは、任意のアミノ酸、例えば、Ala、Lys、またはGluを示す)を有するリンカーが含まれる。例示的な実施形態では、リンカーは、GGSまたはGSGである。別の例示的な実施形態では、リンカーはSAである。
【0075】
一部の実施形態では、HAポリペプチドは、機能的タグ配列(例えば、タンパク質精製を促進するため)をさらに含む。限定されないが、HAポリペプチドは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン(例えば、6×His(配列番号33)))、プロテインA、ストレプトアビジン/ビオチンベースのタグ、ならびに当該技術分野において公知である任意の他のタンパク質タグなどのアフィニティータグを含み得る。
【0076】
一部の実施形態では、HAポリペプチドは、トロンビン切断部位、トリプシン切断部位、エンテロキナーゼ切断部位、または当該技術分野において公知である任意の他のプロテアーゼ切断部位などのプロテアーゼ切断部位をさらに含む。
【0077】
種々の実施形態では、本明細書に記載のHAポリペプチド(または三量体HAタンパク質)は、異なる配列を有するある範囲のインフルエンザウイルスに対する改良された防御免疫(例えば、広範な反応性の免疫応答)を提供する。種々の実施形態では、本明細書に記載のHAポリペプチド(または三量体HAタンパク質)は、複数のインフルエンザ株の間で保存されたエピトープに対する増強された免疫応答を誘発する。種々の実施形態では、本明細書に記載のHAポリペプチド(または三量体HAタンパク質)は、抗原シフトまたは抗原ドリフトを示す異なるインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導する。
【0078】
一部の実施形態では、本明細書に記載のHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質は、野生型または天然に存在するインフルエンザウイルス株由来のHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質と比較して、異なるインフルエンザ株/タイプ/サブタイプにわたってより大きな免疫原性を示す。一部の実施形態では、本明細書に記載のHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質は、野生型または天然に存在するインフルエンザウイルス株由来のHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質と比較してより大きな安定性を有する。
【0079】
核酸の構築および発現
種々の実施形態では、組換えHAポリペプチドを産生する方法が提供される。本方法は、本明細書に記載のクラスターベースコンセンサス法を用いて、コンセンサスアミノ酸配列を含むHAポリペプチドを生成し、宿主細胞を、HAポリペプチドをコードするベクターでトランスフェクトすることによってHAポリペプチドを生成することを含む。種々の実施形態では、組換え三量体HAタンパク質を生成する方法もまた提供される。
【0080】
一部の実施形態では、本明細書に記載のHAポリペプチドは、当該技術分野において公知である分子生物学的方法を使用して、核酸から産生される。例えば、核酸分子は、適切な宿主細胞に導入された場合にHAポリペプチドを発現することができるベクターに挿入される。適切な宿主細胞には、限定されないが、細菌、酵母、昆虫、および哺乳動物細胞、ならびに本明細書の他の箇所に記載される任意の他の細胞型が含まれる。ベクターへのDNA断片の挿入のための当業者に公知である任意の方法を使用して、転写/翻訳制御シグナルの制御下でHAポリペプチドをコードする発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、インビトロの組換えDNAおよび合成クローニング技術、ならびにインビボの組換え技術を含み得る(Sambrookら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory; Current Protocols in Molecular Biology、Eds.Ausubelら、Greene Publ.Assoc.、Wiley-Interscience、NY)を参照されたい)。
【0081】
一部の実施形態では、本発明は、HAポリペプチド、またはHAポリペプチドの特徴的もしくは生物学的に活性な部分をコードする核酸を提供する。一部の実施形態では、本発明は、HAポリペプチド、またはHAポリペプチドの特徴的もしくは生物学的に活性な部分をコードする核酸に相補的な核酸を提供する。他の実施形態では、本発明は、三量体HAタンパク質をコードする核酸をさらに提供する。
【0082】
一部の実施形態では、本発明は、HAポリペプチド、またはHAポリペプチドの特徴的もしくは生物学的に活性な部分をコードする核酸にハイブリダイズする核酸分子を提供する。このような核酸は、例えば、プライマーとしてまたはプローブとして用いることができる。例示的な実施形態では、このような核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)におけるプライマーとして、ハイブリダイゼーション(インサイチュのハイブリダイゼーションを含む)のためのプローブとして、および/または逆転写PCR(RT-PCR)のためのプライマーとして使用することができる。
【0083】
一部の実施形態では、核酸は、DNAまたはRNAであり得、一本鎖または二本鎖であり得る。一部の実施形態では、本発明による核酸は、1つまたはそれ以上の非天然ヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態では、本発明による核酸は、天然ヌクレオチドのみを含む。
【0084】
本発明による核酸分子の発現は、組換えDNA分子で形質転換された宿主において分子が発現されるように、第2の核酸配列によって調節される。例えば、本発明の核酸分子の発現は、当該技術分野において公知であるプロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントによって制御することができる。
【0085】
一部の実施形態では、核酸分子を含む発現ベクターは、核酸構築物によってコードされるHAポリペプチドまたはタンパク質の生成を可能にするために、適切な宿主細胞に形質転換される。次に、発現ベクターで形質転換された宿主細胞を、本発明のHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質の生成を可能にする条件下で増殖させ、続いて、ポリペプチドまたはタンパク質を回収する。本発明で用いることができる例示的な細胞型には、限定されないが、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、植物細胞、および細菌細胞が含まれる。昆虫細胞には、限定されないが、SF細胞、毛虫細胞、蝶細胞、蛾細胞、SF9細胞、SF21細胞、ショウジョウバエ細胞、S2細胞、ツマジロクサヨトウ(fall armyworm)細胞、キャベツルーパー細胞、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞、およびイラクサギンウワバ(Trichoplasia ni)細胞が含まれる。適切な哺乳動物細胞には、限定されないが、Madin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞、VERO細胞、EBx細胞、ニワトリ胚細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、サル腎臓細胞、ヒト胚性腎臓細胞、HEK293T細胞、NSO細胞、骨髄腫細胞、ハイブリドーマ細胞、初代アデノイド細胞株、初代気管支上皮細胞、形質転換ヒト細胞株、およびPer.C6細胞が含まれる。他の有用な細胞または細胞系には、限定されないが、植物ベースのシステム(例えば、タバコ植物;例えば、Jul-Larsen,A.ら、Hum Vaccin Immunother.、8巻(5号):653~61頁、2012年を参照されたい)、酵母(例えば、Athmaram,T.N.ら、Virol J.、8巻:524頁、2011年を参照されたい)、および真菌(例えば、Allgaier,S.ら、Biologicals、37巻:128~32頁、2009年を参照されたい)が含まれる。細菌ベースの発現系もまた、本発明に包含される(例えば、Davis,A.R.ら、Gene、21巻:273~284頁、1983年を参照されたい)。本発明は、さらに、バキュロウイルスシステムの使用を意図する。
【0086】
本発明のHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質は、当該技術分野において公知である任意の技術によって精製することができる。例えば、HAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質は、可溶性画分においてまたは封入体として細胞から回収することができ、そこから、例えば、塩酸グアニジニウムおよび透析によってこれらを抽出することができる。HAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質をさらに精製するために、従来のイオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過、またはこれらの組み合わせを使用することができる。一部の実施形態では、HAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質はまた、真核細胞または原核細胞からの分泌後に、馴化培地から回収することができる。このような実施形態では、精製された組換えHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質は、細胞がポリペプチドまたはタンパク質を培養上清中に分泌するのに十分な条件下で宿主細胞を培養し、上清からポリペプチドまたはタンパク質を精製することによって産生される。
【0087】
一部の実施形態では、組換えHAポリペプチドは、モノマーとして宿主細胞から精製される。他の実施形態では、組換えHAポリペプチドは、三量体として宿主細胞から精製される。
【0088】
HAポリペプチドおよびタンパク質の評価
一部の実施形態では、本発明は、(i)1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘発するかどうか、(ii)1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルスに対する防御的な免疫応答を提供するかどうか、または(iii)対象への投与後に1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルスに対する抗体を産生するかどうかを決定するために、本明細書に記載の方法を用いて産生されたHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質を評価することを意図する。このような機能を試験するための種々の方法は、当該技術分野において周知であり、利用することができる。
【0089】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法に従って生成されたHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質は、所望の発現および立体構造について評価される。スクリーニング法は当該技術分野において周知であり、無細胞、細胞ベース、および動物アッセイを含む。インビトロアッセイには、検出可能な標識の使用を伴う固体状態または可溶性標的分子検出法が含まれる。このようなアッセイにおいて、HAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質は、標的分子(例えば、免疫グロブリン)への結合を介して同定される。一部の実施形態では、本明細書に記載のHAポリペプチドまたはタンパク質は、所望の発現および立体構造特性に基づいて選択される。
【0090】
本発明は、さらに、動物宿主においてHAポリペプチドを試験する方法を提供する。本明細書で使用される場合、「動物宿主」は、インフルエンザ研究に適した任意の動物モデルを含む。例えば、動物宿主には、哺乳動物宿主が含まれ、限定されないが、霊長類、フェレット、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ウサギ、およびげっ歯類、例えば、マウス、ハムスター、およびラットを含む。一部の実施形態では、HAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質の投与前にまたはそれと同時に、動物宿主にインフルエンザウイルスを接種し、動物宿主をインフルエンザウイルスに感染させ、または代わりに動物宿主をインフルエンザウイルスに曝露する。あるいは、動物宿主は、HAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質をコードするDNA分子とともに投与される。鼻腔内経路を含む、当該技術分野において公知である任意の方法により、動物宿主にインフルエンザウイルスを接種し、動物宿主をインフルエンザウイルスに感染させ、または代わりに動物宿主をインフルエンザウイルスに曝露する。
【0091】
一部の実施形態では、動物宿主は、HAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質(場合により、組成物中の成分として)の投与前に、ウイルス曝露または感染に対して未感作である。未感作および/または接種された動物は、種々の研究のいずれにも使用することができる。例えば、このような動物モデルは、当該技術分野において公知であるように、ウイルス伝播の研究に使用することができる。例えば、接種された動物(例えば、フェレット)から未感作動物へのウイルスインフルエンザの空気伝播が公知である(Tumpeyら、2007年、Science 315巻;655~59頁)。例示的なウイルス伝播研究において、HAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質を適切な動物宿主に投与して、動物宿主において広範な免疫応答を誘発する上での上記HAポリペプチドまたはタンパク質の有効性を決定することができる。動物宿主における研究から収集されたこのような情報を使用して、ヒト宿主において免疫応答を誘発するためのHAポリペプチドまたはタンパク質の有効性を予測することができる。
【0092】
インフルエンザウイルス様粒子(VLP)
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるように、HAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質を含むインフルエンザウイルス様粒子(VLP)を提供する。インフルエンザVLPは、一部の実施形態では、一般的に、HA、NAおよび/またはウイルス構造タンパク質(例えば、HIV gag、インフルエンザM1タンパク質)から構成される。インフルエンザVLPの生成は、当該技術分野において公知である。例えば、インフルエンザVLPは、HA、NAおよび/もしくはHIV gagまたはM1タンパク質をコードするプラスミドで宿主細胞をトランスフェクションすることによって産生される。例示的な実施形態では、適切な宿主細胞は、ヒト細胞(例えば、HEK293T)を含む。トランスフェクトされた細胞を適切な時間インキュベートして、タンパク質発現を可能にした後(例えば、約72時間)、VLPを細胞培養上清から単離することができる。一部の実施形態では、本明細書に開示されるインフルエンザVLPは、1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルスに対する広範な中和免疫応答を誘発するためのインフルエンザワクチンとして使用される。
【0093】
医薬組成物および投与
種々の実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるようなHAポリペプチドもしくは三量体HAタンパク質、および/または関連実体を含む医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、医薬組成物は、インフルエンザウイルスに対する防御的な免疫応答などの免疫応答を誘発することができる免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。
【0094】
例えば、一部の実施形態では、医薬組成物は、以下:(1)生弱毒化インフルエンザウイルス、例えば、複製欠損ウイルス、(2)不活化ウイルス、(3)ウイルス様粒子(VLP)、(4)本発明の組換えHAポリペプチドもしくは組換え三量体HAタンパク質、またはその特徴的もしくは生物学的活性部分、(5)本発明のHAポリペプチドもしくは三量体HAタンパク質をコードする核酸、またはその特徴的もしくは生物学的活性部分、(6)本発明のHAポリペプチドもしくは三量体HAタンパク質をコードするDNAベクター、またはその特徴的もしくは生物学的活性部分、ならびに/または(7)発現系、例えば、本発明のHAポリペプチドもしくは三量体HAタンパク質を発現する細胞のうちの1つまたはそれ以上を含み得る。
【0095】
一部の実施形態では、本発明は、本発明のHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質に関連する抗体または他の薬剤を含む医薬組成物を提供する。ある実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載のHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質に結合および/または競合する抗体を含む。あるいは、抗体は、本明細書に記載のHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質を含むウイルス粒子を認識することができる。別の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載のHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質と相互作用するかまたは競合する小分子を含む。さらなる実施形態では、医薬組成物は、遺伝子サイレンシングに用いることができる、HAポリペプチド配列に相補的な配列を有する核酸などの核酸を含む。
【0096】
一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、免疫応答を増強するために、単独でまたは1つまたはそれ以上の薬剤と組み合わせて投与される。例えば、一部の実施形態では、医薬組成物は、アジュバントと組み合わせて投与される。本発明は、任意の公知のアジュバントの使用を意図する。例示的アジュバントには、限定されないが、フロイント不完全アジュバントまたはフロイント完全アジュバントが含まれる。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のサイトカイン(例えば、IL-2、IL-6、IL-12、RANTES、GM-CSF、TNF-α、またはIFN-γ)、1つまたはそれ以上の増殖因子(例えば、GM-CSFまたはG-CSF)、1つまたはそれ以上の分子、例えば、OX-40Lもしくは41 BBL、またはこれらの組み合わせが、生物学的アジュバントとして使用される。一部の実施形態では、医薬組成物は、アジュバントとしてアルミニウム塩およびモノホスホリルリピドAを含み得る。代替的にまたは追加的に、ヒトワクチン、例えば、MF59(Chiron Corp.)、CPG 7909(Cooperら(2004年)Vaccine、22巻:3136頁)、およびサポニン、例えば、QS21(Ghochikyanら(2006年)Vaccine、24巻:2275頁)に使用されるアジュバントを用いることができる。アジュバントのさらなる例としては、限定されないが、ポリ[ジ(カルボキシルアトフェノキシ)ホスファゼン](PCCP;Payneら(1998年)Vaccine、16巻:92頁)、ブロック共重合体P1205(CRL1005;Katzら(2000年)Vaccine、18巻:2177頁)、およびポリメチルメタクリレート(PMMA;Kreuterら(1981年)J.Pharm.Sci.、70巻:367頁)が挙げられる。さらなるアジュバントは、本明細書の他の箇所に記載される。
【0097】
一部の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含む。本明細書で使用される場合、用語「担体」とは、医薬組成物とともに投与する希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。例示的な実施形態では、担体には、無菌液体、例えば、水および油が含まれ得、石油、動物、植物、または合成起源の油、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などが挙げられる。一部の実施形態では、担体は、1つまたはそれ以上の固体成分であるかまたはそれを含む。また、薬学的に許容される担体には、限定されないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、およびこれらの組み合わせが含まれる。本明細書で使用される場合、賦形剤は、医薬組成物に含まれる任意の非治療剤であり、例えば、所望の稠度もしくは安定化効果を提供または寄与し得る。適切な医薬賦形剤には、限定されないが、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールが含まれる。種々の実施形態では、医薬組成物は無菌である。
【0098】
一部の実施形態では、医薬組成物は、少量の湿潤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有する。一部の実施形態では、医薬組成物は、安定剤、緩衝剤、または保存剤などの種々の添加剤のいずれかを含み得る。さらに、補助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤、および着色剤を含むことができる。
【0099】
種々の実施形態では、医薬組成物は、任意の所望の投与様式に適合するように製剤化される。例えば、医薬組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、液滴、錠剤、丸剤、ペレット、カプセル、液体を含有するカプセル、ゼラチンカプセル、粉末、徐放性製剤、坐薬、エマルジョン、エアロゾル、スプレー、懸濁液、凍結乾燥粉末、凍結懸濁液、乾燥粉末、または使用に適した任意の他の形態をとることができる。医薬剤の製剤化および製造における一般的な考察は、例えば、参照により本明細書に組み入れられるRemington’s Pharmaceutical Sciences、第19版、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1995年に見出される。
【0100】
医薬組成物は、任意の投与経路を介して投与することができる。投与経路には、例えば、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、粘膜内、硬膜外、舌下、鼻腔内、脳内、膣内、経皮、直腸、気管内点滴、気管支点滴、吸入、または局所的が含まれる。投与は、局所または全身であり得る。一部の実施形態では、投与は、経口的に行われる。別の実施形態では、投与は非経口注射による。場合によっては、投与は、本明細書に記載のHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質の血流中への放出をもたらす。投与様式は、医師の裁量に任せることができる。
【0101】
ある実施形態では、医薬組成物は、経口投与に適合される。経口送達のための組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、顆粒、粉末、エマルジョン、カプセル、シロップ、またはエリキシルの形態であり得る。
【0102】
別の実施形態では、医薬組成物は、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、および皮下)に適している。このような組成物は、例えば、溶液、懸濁液、分散液、エマルジョンなどとして製剤化することができる。これらはまた、使用直前に無菌注射可能媒体に溶解または懸濁することができる無菌固体組成物(例えば、凍結乾燥組成物)の形態で製造することができる。例えば、非経口投与は、注射によって達成することができる。このような実施形態では、注射剤は、慣用の形態、すなわち、液体溶液または懸濁液、注射前の液体の溶液または懸濁液に適した固体形態、またはエマルジョンとして調製される。一部の実施形態では、注射溶液および懸濁液は、無菌粉末、凍結乾燥粉末、または顆粒から調製される。
【0103】
さらなる実施形態では、医薬組成物は、吸入による送達(例えば、肺および呼吸器系への直接送達)のために製剤化される。例えば、組成物は、鼻スプレーまたは任意の他の公知のエアロゾル製剤の形態をとることができる。一部の実施形態では、吸入またはエアロゾル送達のための調製物は、複数の粒子を含む。一部の実施形態では、このような調製物は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、または約13ミクロンの平均粒径を有することができる。一部の実施形態では、吸入またはエアロゾル送達のための調製物は、乾燥粉末として製剤化される。一部の実施形態では、吸入またはエアロゾル送達のための調製物は、例えば、湿潤剤の含有を介して、湿潤粉末として製剤化される。一部の実施形態では、湿潤剤は、水、食塩水、または生理的pHの他の液体からなる群から選択される。
【0104】
一部の実施形態では、本発明による医薬組成物は、液滴として鼻腔または口腔に投与される。一部の実施形態では、用量は、複数の液滴(例えば、1~100、1~50、1~20、1~10、1~5など)を含み得る。
【0105】
一部の実施形態では、医薬組成物は、脂質小胞内にカプセル化され、トラップされ、もしくは結合されるHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質、生物学的利用能および/もしくは生体適合性および/もしくは生分解性マトリックス、または他の微粒子を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、HAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質を示すナノ粒子を含む。一部の実施形態では、ナノ粒子は、フェリチンナノ粒子である(例えば、米国特許公開第2014/0072958号を参照されたい)。
【0106】
本発明の医薬組成物は、所望の結果を達成するのに適切な任意の用量で投与することができる。一部の実施形態では、所望の結果は、1つまたはそれ以上インフルエンザ株に対する長期持続性適応免疫応答の誘導である。一部の実施形態では、所望の結果は、インフルエンザ感染の1つまたはそれ以上の症状の強度、重症度、頻度の減少、および/または発症の遅延である。一部の実施形態では、所望の結果は、インフルエンザウイルス感染の阻害または予防である。必要とされる用量は、対象の種、年齢、体重、および一般的な状態、予防または治療される感染の重症度、使用される特定の組成物、およびその投与様式に依存して、対象によって変化する。
【0107】
一部の実施形態では、本発明による医薬組成物は、単回または複数回用量で投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、異なる日に複数回用量で投与される(例えば、プライム-ブーストワクチン接種戦略)。一部の実施形態では、医薬組成物は、対象が治療的投薬の期間中に介在する治療的投薬より少ない期間を経ないように、連続投薬レジメンに従って投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、対象が治療的投薬の2つの期間中に介在する治療的投薬より少ない、少なくとも1つの期間を受けるように、間欠的投薬レジメンに従って投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、ブーストレジメンの一部として投与される。
【0108】
種々の実施形態では、医薬組成物は、1つまたはそれ以上のさらなる治療剤と同時に投与される。同時投与は、これらの投与のタイミングが、追加の治療剤およびHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質の薬理活性が時間的に重なり合い、それによって組み合わされた治療効果を発揮するようなものである場合、同時に投与される治療剤を必要としない。一般的に、各薬剤は、その薬剤について決定された用量および時間スケジュールで投与される。
【0109】
一部の実施形態では、本発明は、薬剤と併用して、それらの生物学的利用能を改善し、これらの代謝を減少もしくは修飾し、これらの排出を阻害し、および/または体内でのこれらの分布を修飾し得る医薬組成物の送達を包含する。一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、1つまたはそれ以上の抗ウイルス剤(例えば、オセルタミビル[TAMIFLU(登録商標)]またはザナマビル[RELEZA(登録商標)]など)と併用して投与される。
【0110】
HAポリペプチドに対する抗体
本発明は、本発明に従って生成されたHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質に対する抗体を提供する。これらは、モノクローナルまたはポリクローナルであり得、当業者に公知である種々の技術(例えば、参照により本明細書に組み込まれるHarlowおよびLane、1988年、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratoryを参照されたい)のいずれかによって調製される。例えば、抗体は、モノクローナル抗体の生成を含む細胞培養技術によって、または抗体の生成を可能にするために、適切な細菌もしくは哺乳動物の宿主細胞への抗体遺伝子のトランスフェクションを介して産生される。
【0111】
一部の実施形態では、抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖で構成される古典的な抗体であり得る。他の実施形態では、抗体は、抗体誘導体であり得る。例えば、一部の実施形態では、抗体は、単一ドメイン抗体、組換え重鎖のみの抗体(VHH)、一本鎖抗体(scFv)、サメ重鎖のみの抗体(VNAR)、マイクロプロテイン(システインノットプロテイン、ノッティン)、DARPin、テトラネクチン、アフィボディ、トランスボディ、アンチカリン、アドネクチン、アフィリン、マイクロボディ、ペプチドアプタマー、オルターラーゼ、プラスチック抗体、フィロマー、ストラドボディ、マキシボディ、エビボディ、フィノマー、アルマジロリピートタンパク質、クニッツドメイン、アビマー、アトリマー、プロボディ、イムノボディ、トリオマブ、トロイボディ、ペプボディ;ワクシボディ、ユニボディ;アフィマー、デュオボディ、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、ペプチド模倣分子、もしくは合成分子、または当該技術分野において公知である任意の他の抗体フォーマットであり得る。
【0112】
免疫化およびインフルエンザウイルスからの防御方法
別の態様では、本発明は、対象における1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルスに対して対象を免疫化する方法を提供する。本発明は、さらに、対象における1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘発する方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、本明細書に記載の有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本方法は、本明細書に記載の有効量の組換えHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本方法は、本明細書に記載の有効量のHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質を含むVLPを対象に投与することを含む。
【0113】
種々の実施形態では、本明細書に提供される免疫化方法は、1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルス内の複数のエピトープに対する広範な防御的な免疫応答を誘発する。種々の実施形態では、本明細書に提供される免疫化方法は、1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルスに対する広範な中和免疫応答を誘発する。一部の実施形態では、免疫応答は、抗体応答を含む。したがって、種々の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、異なるタイプのインフルエンザウイルスに対して広範な交差防御を与えることができる。一部の実施形態では、医薬組成物は、トリ、ブタ、季節性および/またはパンデミックインフルエンザウイルスに対する交差防御を与える。一部の実施形態では、医薬組成物は、1つまたはそれ以上インフルエンザA、B、またはCサブタイプに対する交差防御を与える。一部の実施形態では、医薬組成物は、インフルエンザA H1サブタイプウイルス(例えば、H1N1)、インフルエンザA H3サブタイプウイルス(例えば、H3N2)、および/またはインフルエンザA H5サブタイプウイルス(例えば、H5N1)の複数の株に対して交差防御を与える。
【0114】
一部の実施形態では、本発明の方法は、1つまたはそれ以上の季節性インフルエンザ株に対する改善された免疫応答を誘発することができる。例示的な季節性株には、限定されないが、A/Puerto Rico/8/1934、A/Fort Monmouth/1/1947、A/Chile/1/1983、A/Texas/36/1991、A/Singapore/6/1986、A/Beijing/32/1992、A/New Caledonia/20/1999、A/Solomon Islands/03/2006、およびA/Brisbane/59/2007が含まれる。一部の実施形態では、本発明の方法は、1つまたはそれ以上のパンデミックインフルエンザ株に対する改善された免疫応答を誘発することができる。例示的なパンデミック株としては、限定されないが、A/California/07/2009、A/California/04/2009、A/Belgium/145/2009、A/South Carolina/01/1918、およびA/New Jersey/1976が挙げられる。パンデミックのサブタイプには、特にH5N1、H2N2、H9N2、H7N7、H7N3、H7N9、H10N7のサブタイプが含まれる。一部の実施形態では、本発明の方法は、1つまたはそれ以上のブタインフルエンザ株に対する改善された免疫応答を誘発することができる。例示的なブタ株としては、限定されないが、A/New Jersey/1976分離株およびA/California/07/2009が挙げられる。追加のインフルエンザパンデミック、季節性、および/またはブタ株は、当該技術分野において公知である。
【0115】
種々の実施形態では、本方法は、ある範囲の抗原的に異なるインフルエンザ株にわたって免疫防御を拡大することができる。例えば、本発明の方法は、抗原シフトから生じる新たなパンデミック株に対する免疫応答を誘発することができる(すなわち、これらが、延長されたタイムラインにわたって遺伝的配列空間において遠く離れている抗原的に異なる株をカバーするようにする)。本発明の医薬組成物が、抗原的に浮遊した蔓延している季節性株に対する免疫応答(例えば、改良された季節応答)を誘発することによって継続して有効であるように、比較的短い期間にわたって生じる遺伝的変化に対処するために、本発明の方法を適用させることもできる。したがって、種々の実施形態では、本方法は、(1)1つまたはそれ以上の季節性株に対するカバレッジ(すなわち、中和免疫応答を誘発する能力)を拡大するため;(2)1つまたはそれ以上のパンデミック株に対するカバレッジを拡大するため(抗原ドリフトに対処するため);および(3)任意の他の抗原的に異なるインフルエンザ株に対するカバレッジを拡大するために使用される。本方法は、ミスマッチ株を含むインフルエンザウイルスに対して、広範な、長期間持続する(例えば、多季節)防御を提供することができると期待される。
【0116】
一部の実施形態では、本発明は、本発明の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することによって、インフルエンザ感染を予防または治療する方法を提供する。一部の実施形態では、対象は、インフルエンザ感染に罹患しているかまたはそれに感受性である。一部の実施形態では、対象がインフルエンザ感染に一般的に関連する1つまたはそれ以上の症状を示す場合、対象はインフルエンザ感染に罹患していると考えられる。一部の実施形態では、対象は、インフルエンザウイルスに曝露されたことが知られているかまたは曝露されたと思われる。一部の実施形態では、対象がインフルエンザウイルスに曝露されたことが知られているかまたは曝露されたと思われる場合、対象はインフルエンザ感染に感受性であると考えられる。一部の実施形態では、対象が、インフルエンザウイルスに感染したことが知られているかもしくはそれが疑われる他の個人と接触していた場合、および/または対象が、インフルエンザ感染が知られているもしくは流行していると考えられる場所にいるかもしくはそこにいた場合、インフルエンザウイルスに曝露されたことが知られているか、または曝露されたと思われる。
【0117】
種々の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、インフルエンザ感染の1つまたはそれ以上の症状の発症前または後に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、予防として投与される。このような実施形態では、本発明の方法は、インフルエンザウイルス感染から対象を予防または防御するのに有効である。一部の実施形態では、本発明の医薬組成物は、季節性および/もしくはパンデミックインフルエンザワクチンの成分として、または長期にわたる(多季節)防御を付与することを意図したインフルエンザワクチン接種レジメンの一部として使用される。一部の実施形態では、本発明の医薬組成物は、インフルエンザ感染の症状を治療するために使用される。
【0118】
一部の実施形態では、インフルエンザ感染に罹患しているかまたは感受性である対象は、本発明による医薬組成物の投与前、投与中、または投与後に、本発明のHAポリペプチドまたは三量体HAタンパク質に対する抗体について試験される。一部の実施形態では、このような抗体を有する対象は、本発明の医薬組成物を投与されない。一部の実施形態では、医薬組成物の適切な用量は、このような抗体の検出(またはその欠如)に基づいて選択される。
【0119】
種々の実施形態では、対象は、動物界の任意のメンバーである。一部の実施形態では、対象は、非ヒト動物である。一部の実施形態では、対象は、哺乳動物、トリ(例えば、ニワトリまたはトリ)、爬虫類、両生類、魚類、昆虫、および/または線虫である。特定の実施形態では、非ヒト対象は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、および/またはブタ)である。一部の実施形態では、対象は、トランスジェニック動物、遺伝的に操作された動物、および/またはクローンである。
【0120】
一部の実施形態では、対象は、ヒトである。一部の実施形態では、対象は、成人、青年、または乳児である。一部の実施形態では、ヒト対象は、6カ月未満の年齢である。一部の実施形態では、ヒト対象は、6カ月以上の年齢であり、6カ月齢から35カ月の年齢であり、36カ月の年齢から8歳であり、または9歳以上である。一部の実施形態では、ヒト対象は、55歳以上の高齢者、例えば、60歳以上、または65歳以上である。また、本発明は、医薬組成物の投与および/または子宮内での処置法の性能も意図している。
【0121】
この説明および例示的な実施形態は、限定的であるものとして解釈されるべきではない。本明細書および添付の特許請求の範囲の目的で、特に断らない限り、明細書および特許請求の範囲において使用される量、パーセンテージ、または比率を表すすべての数字、および他の数値は、すべての場合において、これらがまだそのように修飾されていない範囲で、用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、別段の指示がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、報告された有効桁数に照らし、通常の丸め技法を適用して、少なくとも解釈されるべきである。
【0122】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」および「the」、ならびに任意の単語の任意の単数形の使用は、明示的であり、明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。本明細書で使用される場合、用語「含む」およびその文法的変形は、リスト中の項目の記載が、リスト中の項目に置換または追加される他の類似の項目の除外にならないように、非限定的であることが意図される。
【0123】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、より十分に理解される。本明細書に含まれるすべての文献の引用は、参照により組み入れられる。
【実施例】
【0124】
以下の実施例は、ある特定の開示された実施形態を説明するために提供されるのであって、いかなる形態においても本開示の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。本明細書において使用される場合、CBC HAは、本明細書において説明されるクラスターベースコンセンサス(CBC)アプローチを使用して設計されたHAポリペプチドまたはタンパク質を意味する。
【0125】
実施例1
組換えインフルエンザHAポリペプチドを設計するためのクラスターベースのコンセンサスアプローチ
組換えインフルエンザHAポリペプチドをクラスターベースコンセンサス(CBC)アプローチを使用して生成した。第1の工程として、1918から現在までのインフルエンザAヘマグルチニン(HA)タンパク質配列(サブタイプH1N1)(N=5664、その内2043は、固有の配列)をthe National Center for Biotechnology InformationのInfluenza Virus Resourceからダウンロードした(Bao et al.(2008)J.Virol.82,596~601を参照されたい)。HA配列をシグナルペプチド配列および膜貫通領域を除去するために編集した。次いで、2043個の固有の配列の非重複セットの多重配列アライメントを作成した。完全なペアワイズ同一性マトリクス(2043x2043)を算出し、主成分分析(PCA)のためのインプットとして使用した。PCAからの最初の2つの構成成分は、2次元ユークリッド空間での高次元インプットマトリクスのコンパクト表現を可能にするために保持した。関連配列の8個の代表的なクラスターを
図1Aに示すとおり同定した。
【0126】
続いて、個々のクラスター内のそれぞれの配列を各位置で最も高い頻度で生じる残基を同定するためおよびコンセンサスアミノ酸配列を含む代表的なHAポリペプチドを得るために分析した。例として、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%以上であった場合、そのアミノ酸はコンセンサスアミノ酸と指定され、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%未満であった場合、そのアミノ酸は可変アミノ酸と指定される。アラインメントにおける特定の位置においてアミノ酸が変動する場合(例えば、最大頻度が<0.5である場合)、当該位置における代表的なアミノ酸の決定は、比較モデル化によって生成されたコンセンサス配列の構造モデルの分析に基づいた。
【0127】
詳細には、明確な多数決が、配列における特定の位置において単一のアミノ酸を定義することができない場合には、複数のコンセンサス配列(当該アラインメントに基づいて可能性のある各アミノ酸に対して1つ)を生成させた。明確に決定することができない位置は、任意の1つの特定の場所において生じ得る、可能性の高いアミノ酸の唯一のセットから分子モデリングによって解決されるように、「X」としてコードした。したがって、潜在的な構造上の問題を解決するため、および可変位置において好適なアミノ酸を選択するため、および計算された低いエネルギーに基づいて配列を選択するために、当該設計の重要な一面を、分子モデリングによって洗練させた。例えば、当該コンセンサス法によって生成された配列の3D構造を、Rosetta Molecular Modelingパッケージ(Leaver-Fayら. (2011) Meth. Enzymol. 487:545~74)を使用してモデル化した。負の総エネルギー値を有する分子は、安定なおよび/または機能的なタンパク質への折り畳みの高い可能性を有すると予測され、その一方で、正のエネルギー値を有するものは、適切に折り畳まれる可能性は低いと考えられた。したがって、コンセンサス生成法を使用して残基位置を明確に割り当てることがでない場合、最も低い、または最も低い値に近い、計算されたポテンシャルエネルギーを有する構造を生じるアミノ酸を選択したが、それは、それらが安定であると推定されるためであり、したがって、発現される可能性が高く、機能的であると見込まれるためである。
【0128】
このプロセスを使用することにより、複数の候補配列を含む、エネルギー最小化設計のセットを生成させた。特に、8個のクラスター(クラスター原型配列内)のそれぞれについて単一の代表的な配列をさらなる評価のために選択した。これらの代表的な配列は、「ティア1」配列と記された。ティア1配列の4個は、新規であることが明らかになり、公的なデータベースに存在しなかった。他の4個の配列は、天然で出現したことがあることが周知であった(クラスター1:A/Korea/CJ04/2009;クラスター3:A/Pennsylvania/02/2008;クラスター4:A/Wellington/10/2005;およびクラスター5:A/Memphis/06/1996)。これらの4個の天然に存在する配列は、知られている限りではワクチン抗原として使用されたことはなく、したがって本発明の範囲内で新規適用を有する。
【0129】
抗原適用範囲の幅をさらに広げるために、複数のティア1コンセンサス配列を組み合わせることにより、コンセンサス配列を定義するのと同じ手順および前に説明したような構造モデリングを使用して、クラスター間コンセンサス配列を得た。この手順を使用して、ティア1原型配列の複合グループ分け(combined grouping)は、3個の「ティア2」配列を生じた。具体的には、クラスター1および2の複合は「パンデミックまたはブタ様」ティア2配列をもたらし;クラスター3、4および5の複合は「季節性様群1」ティア2配列をもたらし;クラスター6および7の複合は「季節性様群2」ティア2配列をもたらした。
【0130】
「ティア3」コンセンサス配列を算出し、続いて生成するためにティア2配列をマージすることによって工程をさらにもう一度繰り返した。具体的には、ティア2およびティア3コンセンサス配列を、さまざまな配列クラスターに見出される不均等な数の配列を扱い、より多い配列を含む大きなクラスターによる小さなクラスターのシグナルのいかなる遮蔽の可能性も最少化するように設計した。加えて、ティア2およびティア3配列を、配列の安定性を評価し、アミノ酸差異を解明し、生物物理学的および免疫学的特徴の改善を示す十分にフォールドした分子を生成するために、構造情報に基づくモデリングおよび設計にも供した。
【0131】
本明細書に記載のクラスターベースコンセンサスアプローチを使用して設計した例示的ティア1、ティア2およびティア3配列を配列番号1~16として表1に示す。これらの配列は、シグナルペプチドおよび膜貫通ドメインを含む全長HA配列である。
【0132】
実施例2
CBC HAタンパク質のin vitro発現
CBC HAタンパク質が自然の進化工程とは異なる基準に従って設計されたことから、正しい発現、アセンブリ、フォールディングおよび/またはエピトープ完全性の維持を確認することは重要であった。したがって、ティア1、ティア2およびティア3 CBC HAタンパク質が哺乳動物細胞の表面に発現され、頭部またはステム領域中の保存されたエピトープを認識する抗HA抗体によって検出されるかどうかを決定するために実験を実施した。これらの実験では、抗体結合は、フローサイトメトリーによって評価した。
【0133】
例えば、モノクローナル抗体C179は、H1N1 HAタンパク質の保存されたHAステムドメイン中のコンホメーショナルエピトープに結合することが周知であった(Okuno,Y et al.、J.Virology 1993)。
図2に示すとおり、C179抗体は、エピトープ曝露またはタンパク質発現レベルにおける差異を示唆する効率の変動を有するが、検査した野生型およびCBC HAタンパク質のすべてに結合した。
【0134】
3種のHA頭部特異的モノクローナル抗体(すなわち、CH65、5J8および4K8)は、いくつかの、しかしすべてではない野生型およびCBC HA タンパク質を認識した。5J8および4K8抗体の両方は、A/California/07/2009(Ca09)由来のHAに結合したが、A/New Caledonia/20/1999(NC99)由来のHAには結合しなかった。CH65抗体は、NC99のHAに結合したが、パンデミックCa09由来のHAには結合しなかった。比較すると、5J8および4K8抗体の両方は、いくつかのティア1およびティア2 CBC HAタンパク質(すなわち、HAco1M、HAco2M、HAco6M、HAcb12MおよびHAcb67M)ならびにすべてのティア3 CBC HAタンパク質に結合し、これらのCBC HAタンパク質がCa09に抗原的に関連することを示唆している。野生型HAでは観察されなかった異なる抗体結合パターンが、CH65および5J8抗体結合に関してティア1およびティア2タンパク質HAco3M、HAco4M、HAco5MおよびHAcb345Mによって示された。
【0135】
全体として、これらのデータは、すべてのCBC HAタンパク質が発現され、プロセシングされ、抗体結合を可能にするように正しくフォールドされ、提示される細胞表面に輸送されたことを示している。さらにCBC HAタンパク質は、機能性であり、赤血球上のシアル酸に結合した。したがって、本明細書に記載のクラスターベースコンセンサスアプローチは、正しくフォールドし、機能を維持したHAポリペプチドおよびタンパク質を生成することができた。
【0136】
実施例3
CBC HA配列を発現する組換えインフルエンザAウイルスの生成
CBC HA配列を含むインフルエンザAウイルスを逆遺伝学によって生成した。具体的には、12-プラスミド逆遺伝学システムを、ノイラミニダーゼおよび8個の他のウイルス遺伝子セグメントと共にCBC HA配列を内部に有する組換えA/Puerto Rico/8/1934(PR8)H1N1ウイルス(卵での高い増殖特性を付与された弱毒化ヒトウイルス)を生成するために使用した(
図3)。12個のベクターを293TとMDCK細胞との混合物にトランスフェクトした。3~4日後、細胞培養上清を回収し、さらなるウイルス増殖(propagation)のために胚形成ニワトリ卵の尿膜腔に接種した。
【0137】
ティア1および2HA配列(すなわち、HAco3M、HAco4M、HAco5MおよびHAcb345M)を内部に有するインフルエンザ組換えウイルスの良好なレスキューは、プラークアッセイでの感染性ウイルスの検出およびヘマグルチニン活性の決定によって実証した(
図3)。組換えウイルス中のCBC HA配列の存在は、サンガー配列決定によっても確認した。
【0138】
これらの結果は、CBC HA配列を発現するインフルエンザウイルスが生成され、スプリット不活化ワクチンに潜在的になることを実証した。
【0139】
実施例4
CBC HA配列を発現する組換えインフルエンザAウイルスの免疫原性研究
CBC HA配列を発現する組換えインフルエンザAウイルスの免疫原性を評価した。
図4は、さまざまな免疫原性研究の模式図を示す。
【0140】
プラーク減少中和試験(PRNT)をウイルスのパネルに対する中和抗体を誘導する組換えウイルスの能力を評価するために実施した。具体的にはパネルは、複数のHA配列クラスター由来のウイルスを含んだ(
図5Gを参照されたい)。マウスを種々のティア1およびティア2 CBC HAまたは野生型HAを発現する組換えウイルスを用いて鼻腔内感染させた。感染マウスから血清を回収し、中和抗体の誘導について評価した。
【0141】
図5Aおよび5Bに示すとおり、野生型A/New Caledonia/20/1999 HAを発現する組換えウイルス(クラスター4由来ウイルス)は、ウイルスのパネルに対して相当に広い幅の中和応答を誘導した。HAco4M(クラスター4由来ティア1 CBC HA配列)を発現する組換えウイルスは、A/New Caledonia/20/1999 HAを発現するウイルスに相当する幅の防御を示した。注目すべきことに、HAco4Mを発現する組換えウイルスは、A/Texas/36/1991ウイルス(クラスター5由来ウイルス)に対して、野生型HAを発現するウイルスよりもさらに高い中和応答を潜在的に誘導した。
【0142】
HAco5M(ティア1 CBC HA)を発現する組換えウイルスも評価し、その防御の幅を野生型A/Texas/36/1991 HAを発現する組換えウイルスと比較した。
図5Cに示すとおり、2つの組換えウイルスは、ウイルスのパネルに対して同様の幅の中和応答を誘導した。
【0143】
加えて、HAcb345M(ティア2 CBC HA)を発現する組換えウイルスの免疫原性をティア1 CBC HA(すなわち、HAco4MおよびHAco5M)を発現する組換えウイルスと比較した。
図5Dに示すとおり、HAcb345Mを発現する組換えウイルスは、HAco4Mを発現するウイルスと比較した場合に、A/Brisbane/59/2007ウイルス(クラスター3ウイルス)に対して同様の中和応答を示した。注目すべきことに、HAcb345Mを発現する組換えウイルスは、HAco4Mを発現するウイルスと比較した場合に、クラスター4 A/Texas/36/1991ウイルスに対してわずかに改善された活性、およびHAco5Mを発現するウイルスと比較した場合に、クラスター3 A/Brisbane/59/2007ウイルスに対する顕著に改善された活性を潜在的に示した(
図5D)。
【0144】
野生型HAを発現する組換えウイルスと比較した場合に、HAcb345Mを発現する組換えウイルスは、A/Brisbane/59/2007ウイルスに対して同等の中和応答を誘導したが、A/Texas/36/1991、A/New Caledonia/20/1999およびA/Solomon Island/3/2006ウイルスに対して低い応答を誘導した(
図5E)。それにも関わらず、
図5Fに示すとおり、CBC HAcb345Mを発現する組換えウイルスは、検査したウイルスのパネルに対してさらに均衡のとれた中和のプロファイルを示した一方で、野生型ウイルスは、相同ウイルスに対して最も強い中和抗体応答を示した。
【0145】
種々の組換えウイルスの免疫原性もヘマグルチニン阻害(HAI)アッセイによって評価した。HAIアッセイプロトコールをthe CDC laboratory-based influenza surveillance manualから翻案した。
図6に示すとおり、CBC HAを発現する組換えウイルスによって誘導されたHAI力価は、野生型HAを発現する組換えウイルスによって誘導されたものと同等であった。同様の結果が全体的な抗体結合を抗体フォレンジック(AF)アッセイを用いて評価した場合に得られた(
図7A~7D)。
【0146】
実施例6
CBC HAタンパク質を発現するウイルス様粒子(VLP)の特徴付け
免疫処置研究を種々のCBC HAタンパク質を発現するウイルス様粒子(VLP)の免疫原性を研究するために実施した。VLPを生成するために、HEK 293T細胞をHIV-1 Gag、NA(A/mallard/Alberta/24/01;H7N3)およびCBC HAまたは野生型H1N1株由来のHAを発現するプラスミドを用いて一過的にトランスフェクトし、72時間、37℃でインキュベートした。上清を回収し、細胞デブリを低速遠心分離に続く0.22μm滅菌フィルターを通した真空ろ過によって除去した。VLPを、超遠心分離(20%グリセリン、体積あたりの重量、を通した100,000Xg)、4時間、4℃を介して精製した。次にペレットをPBS pH7.2に再懸濁し、単回使用アリコート中、-80℃で使用まで保存した。総タンパク質濃度をMicro BCA(商標)タンパク質アッセイ試薬キット(Pierce Biotechnology、Rockford、IL、USA)によって決定した。VLPを電子顕微鏡によって、および動的光散乱分析によって特徴付けた。さらに、HAが機能的に活性であることを示すために、VLPでのHAの量をHAアッセイによって定量した。
【0147】
VLPの免疫原性(AF04アジュバントとの組合せで)の評価のために、研究0および21日目の2回マウスに皮下注射した(
図8)。比較のために、マウスを代表的な生インフルエンザウイルスの広いパネルを用いてもチャレンジした。次に、チャレンジしたマウスから血液サンプルを研究日-1、20および35日目に回収した。血清サンプルをヘマグルチニン阻害(HAI)およびマイクロ中和試験(MN)アッセイを使用して、インフルエンザ特異的抗体応答について分析した。
【0148】
図9に示すとおり、野生型A/New Caledonia/20/1999 HAを発現するVLPを用いた免疫処置は、生A/New Caledonia/20/1999ウイルス感染と同様の幅の中和抗体応答を誘導した。しかし、VLP免疫処置は、高HAI力価を誘導した。CBC HAcb345Mを発現するVLPは、HAIアッセイ(
図9)およびMNアッセイ(
図10)の両方によって検出されるとおり、相当に広い中和抗体応答を誘導した。CBC HAco5Mを発現するVLPもMNアッセイにおいて検出されたとおり、適度に広く均衡のとれた中和抗体応答を誘導した。
【0149】
全体として、これらのデータは、CBCアプローチを使用して設計された例示的HAタンパク質が機能性でありin vivoで中和抗体応答を誘導することができたことを実証している。
【配列表】