(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】ノイラミニダーゼを含む広範に防御的なワクチン組成物を生成する方法
(51)【国際特許分類】
C12P 21/02 20060101AFI20230810BHJP
C07K 14/11 20060101ALN20230810BHJP
C12N 7/00 20060101ALN20230810BHJP
C12N 9/24 20060101ALN20230810BHJP
C12N 15/56 20060101ALN20230810BHJP
【FI】
C12P21/02 C ZNA
C07K14/11
C12N7/00
C12N9/24
C12N15/56
(21)【出願番号】P 2020551865
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(86)【国際出願番号】 US2019024327
(87)【国際公開番号】W WO2019191261
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-23
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517055195
【氏名又は名称】サノフィ パスツール インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】516217871
【氏名又は名称】ヴイアイビー ヴイゼットダブリュ
【氏名又は名称原語表記】VIB VZW
【住所又は居所原語表記】Rijvisschestraat 120, B-9052 Gent, Belgium
(73)【特許権者】
【識別番号】513008731
【氏名又は名称】ユニヴェルシテイト ヘント
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITEIT GENT
【住所又は居所原語表記】Sint-Pietersnieuwstraat 25, B-9000 Gent, Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】トッド・ストラグネル
(72)【発明者】
【氏名】エリウッド・オルー
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド・オーメン
(72)【発明者】
【氏名】トーステン・ヴォーゲル
(72)【発明者】
【氏名】グザヴィエ・サレンス
(72)【発明者】
【氏名】エマ・ヨープ
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-210482(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0229518(US,A1)
【文献】国際公開第2016/196846(WO,A2)
【文献】特表2015-513902(JP,A)
【文献】特表2018-501258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 21/02
C07K 14/11
C12N 7/00
C12N 9/24
C12N 15/56
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンセンサスアミノ酸を含む組換えインフルエンザノイラミニダーゼ(NA)ポリペプチドを生成するための方法であって:
a.1つより多いインフルエンザNAポリペプチド配列を選択すること、および該配列をアラインすること;
b.ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを算出すること;
c.該ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスから類似配列のクラスターを同定することおよび創出すること;
d.各クラスター内で、ペアワイズアライメント法を使用して配列アライメント中の各位置についてコンセンサスアミノ酸があるかどうかを決定することであって、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%以上である場合、そのアミノ酸はコンセンサスアミノ酸と指定され、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%未満である場合、そのアミノ酸は可変アミノ酸と指定されること;
e.各クラスターについて、コンセンサスアミノ酸および可変アミノ酸を含む
、1つの第1の配列を生成すること;
f.工程(e)において生成された該
1つの第1の配
列内において、以下の手段により各可変アミノ酸位置についてのコンセンサスアミノ酸を決定すること:
i.該
1つの第1の配列に基づいて一連の検査配列を生成することであって、検査アミノ酸を可変アミノ酸位置に位置させること;
ii.該検査配列それぞれについて分子モデリングを実行すること;
および
iii.負の総エネルギー値を有するポリペプチドをもたらすアミノ酸(複数可)を選択することによっ
て、各可変アミノ酸位置についてコンセンサスアミノ酸を決定すること、ならびに
g.該コンセンサスアミノ酸を含む組換えインフルエンザNAポリペプチドを生成するこ
と
を含む前記方法。
【請求項2】
配列をアラインすることは、MAFFT、MUSCLE、CLUSTAL OMEGA、FASTA、これらの組合せまたは任意の他の多重配列アライメントソフトウェアパッケージを使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを算出することは、BLOSUM、PAM、IDENTITY置換マトリクスまたはこれらの組合せを使用することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスから類似配列のクラスターを同定および創出することは、K平均クラスタリング、ミニマックスクラスタリング、主成分分析(PCA)、多次元尺度構成法(MDS)またはこれらの組合せを使用することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
分子モデリングは、インフルエンザNAポリペプチドまたはタンパク質の結晶構造と比較することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
分子モデリングは、Rosettaまたは任意の他の分子モデリングソフトウェアの使用を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
検査アミノ酸は、タンパク質に見出される任意の天然または非天然アミノ酸を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
複数のクラスターが分析される場合、工程(e)の後に:
i.各クラスターについて、工程(e)において生成された配列をアラインすること;
ii.ペアワイズアライメント法を使用して該配列アライメント中の各位置についてコンセンサスアミノ酸があるかどうかを決定することであって、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%以上である場合、そのアミノ酸はコンセンサスアミノ酸と指定され、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%未満である場合、そのアミノ酸は可変アミノ酸と指定されること;ならびに
iii.コンセンサスアミノ酸および可変アミノ酸を含む第2の配列を生成すること、
をさらに含み、
ここで、各可変アミノ酸位置についての該コンセンサスアミノ酸は、生成された前記第2の配列内で、工程(f)において決定される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(f)(i)において、該第2の配列に基づいて一連の検査配列が生成される、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その内容すべてを全体として参照により組み入れる米国仮出願第62/649,002号、2018年3月28日出願および米国仮出願第62/718,527号、2018年8月14日出願の優先権を主張する。
【0002】
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、その全体を参照により本明細書に組み入れる配列表を含む。2019年3月27日に作成された前記ASCIIコピーは、01121-0037-00PCT_SL.txtと名付けられ、サイズ69,015バイトである。
【背景技術】
【0003】
インフルエンザは、1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルスによって生じる非常に伝染性の呼吸器疾患である。現在、ワクチンは、インフルエンザに対する最も有効な防御を提供する。ワクチン組成物は、蔓延しているインフルエンザ株における差異に適応するように世界保健機関によって毎年更新されている。しかし、不正確な予測から生じるワクチンミスマッチは、ワクチン接種された集団においてさえ顕著な罹患率および死亡率を生じる場合がある。
【0004】
インフルエンザウイルスは、ウイルス膜の表面に2つの構造糖タンパク質、すなわち、ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)を含有する。HAは、シアル酸に結合し、ウイルス侵入に関与する一方で、NAは、シアル酸の除去により感染細胞からのウイルスの放出に関与する。現在、インフルエンザワクチンは、一般に、HAへの免疫応答を誘導することに基づいている。しかし、HAにおける可変性は、関連する蔓延している株の小さなサブセットに対してだけ有効であるようなワクチンを生じる場合がある。NAもインフルエンザワクチン組成物にしばしば含まれる。しかし、NAの含有量および活性は、現在のワクチン製剤において標準化されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ミスマッチ株を含むインフルエンザウイルスに対して広範で、持続的な(例えば、複数シーズン)防御を提供できる有効なインフルエンザワクチンに対する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特に、複数のインフルエンザ株に対して広範に反応性で、防御的な免疫応答を誘発することができるNAポリペプチドを生成するためのクラスターベースコンセンサス(CBC)アプローチを提供する。種々の実施形態では、方法は:
・1つより多いインフルエンザNAポリペプチド配列を選択すること、および配列をアラインすること;
・ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを算出すること;
・ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスから類似配列のクラスターを同定することおよび創出すること;
・各クラスター内で、ペアワイズアライメント法を使用して配列アライメント中の各位置についてコンセンサスアミノ酸があるかどうかを決定することであって、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%以上である場合、そのアミノ酸はコンセンサスアミノ酸と指定され、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%未満である場合、そのアミノ酸は可変アミノ酸と指定されること;
・各クラスターについてコンセンサスアミノ酸および可変アミノ酸を含む第1の配列を生成すること;
・場合により、1つより多いクラスターが分析される場合:
○各クラスターについて生成された配列をアラインすること;
○ペアワイズアライメント法を使用して配列アライメント中の各位置についてコンセンサスアミノ酸があるかどうかを決定することであって、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%以上である場合、そのアミノ酸はコンセンサスアミノ酸と指定され、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%未満である場合、そのアミノ酸は可変アミノ酸と指定されること;および
○コンセンサスアミノ酸および可変アミノ酸を含む第2の配列を生成すること
によって、クラスターから生成された第1の配列と別のクラスターまたは複数のクラスターにおいて生成された配列とを比較すること;
・生成された第1の配列または第2の配列内で:
○第1のまたは第2の配列に基づいて一連の検査配列を生成することであって、検査アミノ酸を可変アミノ酸位置に位置させること;
○検査配列それぞれについて分子モデリングを実行すること;
○負の総エネルギー値を有するポリペプチドをもたらすアミノ酸(複数可)を選択することによって各可変アミノ酸位置についてのコンセンサスアミノ酸を決定すること
によって、各可変アミノ酸位置についてコンセンサスアミノ酸を決定すること、ならびに
・コンセンサスアミノ酸を含むインフルエンザNAポリペプチドを生成すること
を含む。
【0007】
種々の実施形態では、本発明は、本発明の方法を使用して生成されたNAポリペプチドを提供する。例示的実施形態では、NAポリペプチは、配列番号1~3またはこれらの断片のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の1つまたはそれ以上のNAポリペプチドを含む四量体NAタンパク質にさらに関する。
【0008】
種々の実施形態では、本発明のNAポリペプチドおよび/または四量体NAタンパク質は、ワクチン抗原として利用される。一部の実施形態では、NAポリペプチドおよび四量体NAタンパク質は、複数のインフルエンザ株、型またはサブタイプに対して広範に防御的な免疫応答を提供する。理論に束縛されることを望むわけではないが、NAポリペプチドおよび四量体NAタンパク質がインフルエンザウイルス内の複数のエピトープ(例えば、保存されたエピトープ)に対する中和抗体応答を誘発できると考えられる。
【0009】
本出願のさらなる実施形態は、以下のとおりである:
実施形態A1.コンセンサスアミノ酸を含む組換えインフルエンザノイラミニダーゼ(NA)ポリペプチドを生成するための方法であって:
a.1つより多いインフルエンザNAポリペプチド配列を選択すること、および配列をアラインすること;
b.ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを算出すること;
c.ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスから類似配列のクラスターを同定することおよび創出すること;
d.各クラスター内で、ペアワイズアライメント法を使用して配列アライメント中の各位置についてコンセンサスアミノ酸があるかどうかを決定することであって、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%以上である場合、そのアミノ酸はコンセンサスアミノ酸と指定され、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%未満である場合、そのアミノ酸は可変アミノ酸と指定されること;
e.各クラスターについてコンセンサスアミノ酸および可変アミノ酸を含む第1の配列を生成すること;
f.場合により、複数のクラスターが分析される場合:
i.各クラスターについて工程(e)において生成された配列をアラインすること;
ii.ペアワイズアライメント法を使用して配列アライメント中の各位置についてコンセンサスアミノ酸があるかどうかを決定することであって、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%以上である場合、そのアミノ酸はコンセンサスアミノ酸と指定され、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%未満である場合、そのアミノ酸は可変アミノ酸と指定されること;ならびに
iii.コンセンサスアミノ酸および可変アミノ酸を含む第2の配列を生成すること
によって、クラスターの工程(e)において生成された第1の配列と別のクラスターまたは複数のクラスターにおいて生成された第1の配列とを比較すること;
g.工程(e)において生成された第1の配列または工程(f)(iii)において生成された第2の配列内で:
iv.第1のまたは第2の配列に基づいて一連の検査配列を生成することであって、検査アミノ酸を可変アミノ酸位置に位置させること;
v.検査配列それぞれについて分子モデリングを実行すること;
vi.負の総エネルギー値を有するポリペプチドをもたらすアミノ酸(複数可)を選択することによって各可変アミノ酸位置についてのコンセンサスアミノ酸を決定すること
によって、各可変アミノ酸位置についてコンセンサスアミノ酸を決定すること、ならびに
h.コンセンサスアミノ酸を含む組換えインフルエンザNAポリペプチドを生成すること
を含む方法。
実施形態A2.配列をアラインすることは、MAFFT、MUSCLE、CLUSTAL OMEGA、FASTA、これらの組合せまたは任意の他の多重配列アライメントソフトウェアパッケージを使用することを含む、実施形態A1の方法。
実施形態A3.ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを算出することは、BLOSUM、PAM、IDENTITY置換マトリクスまたはこれらの組合せを使用することを含む、実施形態A1またはA2の方法。
実施形態A4.ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスから類似配列のクラスターを同定および創出することは、K平均クラスタリング、ミニマックスクラスタリング(minimax clustering)、主成分分析(PCA)、多次元尺度構成法(MDS)またはこれらの組合せを使用することを含む、実施形態A1~3のいずれか1つの方法。
実施形態A5.分子モデリングは、インフルエンザNAポリペプチドまたはタンパク質の結晶構造と比較することを含む、実施形態A1~4のいずれか1つの方法。
実施形態A6.分子モデリングは、Rosettaまたは任意の他の分子モデリングソフトウェアの使用を含む、実施形態A1~5のいずれか1つの方法。
実施形態A7.検査アミノ酸は、タンパク質に見出される任意の天然または非天然アミノ酸を含む、実施形態A1~6のいずれか1つの方法。
実施形態A8.実施形態A1~7のいずれか1つの方法を使用して生成された組換えインフルエンザNAポリペプチド。
実施形態A9.配列番号1、2もしくは3またはこれらの断片から選択されるアミノ酸配列、または配列番号1、2もしくは3またはその断片に少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態A8の組換えインフルエンザNAポリペプチド。
実施形態A10.配列番号1、2または3のアミノ酸75~469を含む、実施形態A9の組換えNAポリペプチド。
実施形態A11.実施形態A8~10のいずれか1つの1つまたはそれ以上の組み換えNAポリペプチドを含む組換え四量体NAタンパク質。
実施形態A12.実施形態A8~10のいずれか1つの組換えHAポリペプチドまたは実施形態A11の組換え四量体NAタンパク質をコードする単離された核酸。
実施形態A13.実施形態A12の核酸を含むベクター。
実施形態A14.実施形態A13のベクターを含む、単離された細胞。
実施形態A15.哺乳動物細胞である、実施形態A14の単離された細胞。
実施形態A16.HEK293T細胞またはCHO細胞である、実施形態A15の単離された細胞。
実施形態A17.昆虫細胞である、実施形態A14の単離された細胞。
実施形態A18.実施形態A8~10のいずれか1つの組換えNAポリペプチドまたは実施形態A11の組換え四量体NAタンパク質を含む融合タンパク質。
実施形態A19.実施形態A8~10のいずれか1つの組換えNAポリペプチドまたは実施形態A11の組換え四量体NAタンパク質を含むインフルエンザウイルス様粒子(VLP)。
実施形態A20.インフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質、インフルエンザマトリクス(M1)タンパク質、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)gagタンパク質またはこれらの組合せの1つもしくはそれ以上をさらに含む、実施形態A19のインフルエンザVLP。
実施形態A21.実施形態A8~10のいずれか1つの組換えNAポリペプチド、実施形態A11の組換え四量体NAタンパク質、実施形態A18の融合タンパク質または実施形態A19もしくはA20のインフルエンザVLPおよび薬学的に許容される担体、賦形剤またはアジュバントを含む医薬組成物。
実施形態A22.1つまたはそれ以上のインフルエンザ株、型および/またはサブタイプに対する免疫応答を誘発する、実施形態A21の医薬組成物。
実施形態A23.インフルエンザウイルスに対して対象を免疫化する方法であって、実施形態A8~10のいずれか1つの組換えNAポリペプチド、実施形態A11の組換え四量体NAタンパク質、実施形態A18の融合タンパク質、実施形態A19もしくはA20のインフルエンザVLPまたは実施形態A21もしくはA22の医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む方法。
実施形態A24.対象においてインフルエンザウイルスへの免疫応答を誘導する方法であって、実施形態A8~10のいずれか1つの組換えNAポリペプチド、実施形態A11の組換え四量体NAタンパク質、実施形態A18の融合タンパク質、実施形態A19もしくはA20のインフルエンザVLPまたは実施形態A21もしくはA22の医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む方法。
実施形態A25.インフルエンザウイルスは、季節性またはパンデミックインフルエンザウイルスである、実施形態A23またはA24の方法。
実施形態A26.免疫応答は、1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルス株、型またはサブタイプに対する抗体の産生を含む、実施形態A24またはA25の方法。
実施形態A27.対象は、哺乳動物である、実施形態A23~26のいずれか1つの方法。
実施形態A28.対象は、ヒトである、実施形態A27の方法。
実施形態A29.投与することは、筋肉内、鼻腔内、皮内、皮下、経口または静脈内経路を介して実行される、実施形態A23~28のいずれか1つの方法。
【0010】
追加的目的および有利点は、続く記載に部分的に記載され、部分的に記載から明らかになり、実行によって収得される。目的および有利点は、添付の特許請求の範囲に具体的に示される要素および組合せの手段によって認識され、達成される。
【0011】
前述の一般的な記載および続く詳細な記載の両方は、例示的および説明的なだけであり、特許請求の範囲の限定ではないことは理解される。
【0012】
本明細書に組み入れられ、その一部を構成する添付の図は、1つ(複数)の実施形態(複数可)を例示し、記載と共に本明細書に記載の原理を説明する目的を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】NAポリペプチドを設計するために使用される例示的クラスターベースコンセンサス(CBC)法を示す図である。
図1Aは、本明細書において説明される方法を使用して生成された3種のNAポリペプチド候補NA5200、NA7900、およびNA9100を示す。
【
図1B】NAポリペプチドを設計するために使用される例示的クラスターベースコンセンサス(CBC)法を示す図である。
図1Bは、多次元尺度構成法によって決定される、他の既知のH1N1サブタイプの配列に対する配列空間における当該3種のNAポリペプチドの位置を示す。
【
図2A】NAコンストラクトの模式図および活性を示す図である。
図2Aは、単量体および四量体NAコンストラクトのイラストを提供する。
【
図2B】NAコンストラクトの模式図および活性を示す図である。
図2Bは、HEK293T細胞において、異なる発現プラスミド(すなわち、pCAXL、pcDNA3、またはpEF)によって発現された場合の様々なNAコンストラクトの相対蛍光単位(relative fluorescence unit)(RFU、平均増加/分)を示す。TB Panは、可溶性テトラブラチオン-パンデミックA/ベルギー/1/2009(=A/カルフォルニア/07/2009)コンストラクトを表す。cNA1は、NA5200を表し、cNA2は、NA7900を表し、cNA3は、NA9100を表す。
【
図3-1】
図3A~3Fは、異なるNAコンストラクトをコードするDNAで免疫したマウスからの血清の結合活性を測定するELISAアッセイの結果を提供する図である。異なるインフルエンザウイルスの結合活性は、A/プエルトリコ/8/1934(PR8;
図3A);A/USSR/90/1977(USSR/77;
図3B);A/シンガポール/6/1986(Sing/86;
図3C);A/ニューカレドニア/20/1999(N.Cal/99;
図3D);A/ブリスベン/59/2007(Bris/07;
図3E);およびA/ベルギー/1/2009(Pdm/09;
図3F)として示される。グラフにおいて、X軸は、血清希釈率を表し、Y軸は、ODを表す。
【
図4-1】
図4A~4Eは、異なるNAコンストラクトをコードするDNAで免疫されたマウスからの血清のNA阻害(NAI)活性を測定する酵素結合レシチン(ELLA)アッセイの結果を提供する図である。当該NAI活性は、A/プエルトリコ/8/1934(PR8;
図4A);空ベクター(
図4B);NA5200(
図4C);NA7900(
図4D);およびNA9100(
図4E)として示される。
【
図5-1】
図5A~5Fは、異なるNAコンストラクトをコードするDNAで2回ワクチン接種させ、その後に1LD50量のパンデミック2009ウイルスでチャレンジ感染させたマウスの生残率および体重減少の割合を示す図である。
図5A、5C、および5Eは、生残率を示す。
図5B、5D、および5Fは、体重減少の割合を示す。
図5A~5Bは、NA5200に関連する結果を提供する。
図5C~5Dは、NA7900に関連する結果を提供する。
図5E~5Fは、NA9100に関連する結果を提供する。示されている場合、*は、空ベクターに対する統計的有意性を示す。
【
図6-1】
図6A~6Fは、異なるNAコンストラクトをコードするDNAで2回ワクチン接種させ、その後に1LD50量のPR8ウイルスでチャレンジ感染させたマウスの生残率および体重減少の割合を示す図である。
図6A、6C、および6Eは、生残率を示す。
図6B、6D、および6Fは、体重減少の割合を示す。
図6A~6Bは、NA5200に関連する結果を提供する。
図6C~6Dは、NA7900に関連する結果を提供する。
図6E~6Fは、NA9100に関連する結果を提供する。示されている場合、*は、空ベクター群に対する統計的有意性を示し、¶は、pdm09群に対する統計的有意性を示す。
【
図7】
図7Aは、組換え四量体NAタンパク質の精製プロファイルを提供する図である。詳細には、NA5200、NA7900、またはNA9100NAポリペプチドを含む可溶性四量体タンパク質を、HEK293T細胞において産生させた。上清を収集し、親和性クロマトグラフィーによって精製し、その後にサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。
図7Aは、四量体可溶性NAタンパク質におけるサイズ排除クロマトグラフィーの後のUV吸収プロファイルを示す。グラフの上部の垂直線は、既知のタンパク質のサイズの標準値を表す。
図7Bは、組換え四量体NAタンパク質の比酵素活性度(specific enzymatic activity)を提供する図である。詳細には、NA5200、NA7900、またはNA9100NAポリペプチドを含む可溶性四量体タンパク質を、HEK293T細胞において産生させた。上清を収集し、親和性クロマトグラフィーによって精製し、その後にサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。
図7Bは、野生型A/ベルギー/2009 (Bel/09) NAと共に、当該組換え四量体NAタンパク質の酵素活性を測定するMUNANAアッセイによる結果を示す。比活性度は、4-メチルウンベリフェロンの標準曲線から計算した。
【
図8A】NA5200、NA7900、またはNA9100を含む四量体NAタンパク質に対して産生された抗血清が、WT NA抗血清よりも広い範囲のA型インフルエンザウイルス(IAV)に対するNA阻害(NAI)を示したことを示す図である。マウスを、Sigma Adjuvant System(SAS)の存在下において、A/プエルトリコ/8/1934(PR8/34)NA、A/ニューカレドニア/1999(NC/99)NA、A/ベルギー/1/2009(Bel/09;Bel/09;www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/?term=txid1502382に記載される)NA、NA5200、NA7900、NA9100、またはPBSのみを含む四量体NAタンパク質1μgによって、皮下によりプライミングおよび追加免疫した(3週間の間隔において)。追加免疫の3週間後、抗血清を収集し、N1ウイルスのパネルのNA活性を阻害するそれらの能力について試験した。四量体NAタンパク質に対して産生された熱不活性化血清の増加段階希釈物を、H1N1ウイルスのパネルと混合した。酵素結合レクチン(ELLA)アッセイにより、フェチュインでコーティングしたプレート上において感染後18時間でのNA活性を決定した。データは、非線形回帰分析によって決定したときの、log
2値としてプロットされた1:IC
50値を示している。
図8Aにおいて、データは、トリプリケートにおいて実施した実験の平均(±1SD)として報告される。y軸上の点線は、試験した血清の最も高い濃度4.3(すなわち、1:20)を表している。この線より低い値は、非線形回帰分析を使用して滴定曲線から推定し、その場合、2.3(すなわち、1:5)を真に陽性の力価として設定した。
図8Bにおいて、データは、NAのヘッドドメインのアミノ酸配列によってクラスター化されたNAの系統樹の隣に、1:IC
50値のヒートマップとして示されている。
【
図8B】NA5200、NA7900、またはNA9100を含む四量体NAタンパク質に対して産生された抗血清が、WT NA抗血清よりも広い範囲のA型インフルエンザウイルス(IAV)に対するNA阻害(NAI)を示したことを示す図である。マウスを、Sigma Adjuvant System(SAS)の存在下において、A/プエルトリコ/8/1934(PR8/34)NA、A/ニューカレドニア/1999(NC/99)NA、A/ベルギー/1/2009(Bel/09;Bel/09;www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/?term=txid1502382に記載される)NA、NA5200、NA7900、NA9100、またはPBSのみを含む四量体NAタンパク質1μgによって、皮下によりプライミングおよび追加免疫した(3週間の間隔において)。追加免疫の3週間後、抗血清を収集し、N1ウイルスのパネルのNA活性を阻害するそれらの能力について試験した。四量体NAタンパク質に対して産生された熱不活性化血清の増加段階希釈物を、H1N1ウイルスのパネルと混合した。酵素結合レクチン(ELLA)アッセイにより、フェチュインでコーティングしたプレート上において感染後18時間でのNA活性を決定した。データは、非線形回帰分析によって決定したときの、log
2値としてプロットされた1:IC
50値を示している。
図8Aにおいて、データは、トリプリケートにおいて実施した実験の平均(±1SD)として報告される。y軸上の点線は、試験した血清の最も高い濃度4.3(すなわち、1:20)を表している。この線より低い値は、非線形回帰分析を使用して滴定曲線から推定し、その場合、2.3(すなわち、1:5)を真に陽性の力価として設定した。
図8Bにおいて、データは、NAのヘッドドメインのアミノ酸配列によってクラスター化されたNAの系統樹の隣に、1:IC
50値のヒートマップとして示されている。
【
図9-1】
図9A~9Lは、5200、NA7900、またはNA9100を含む四量体タンパク質によるワクチン接種が、A型インフルエンザウイルス(IAV)による致死感染に対してマウスを防御したことを示す図である。マウスを、Sigma Adjuvant System(SAS)において、NA5200(黒丸)、NA7900(白四角)、またはNA9100(白丸)を含む四量体タンパク質1μgで、皮下においてプライミングおよび追加免疫(3週間後)したか、またはSASにおいてPBSで模擬ワクチン接種した(白三角)。ワクチン接種後、マウスに、5LD
50量の、A/プエルトリコ/8/1934(PR8/34;
図9A~9B)、A/USSR/90/1977(USSR/77;
図9C~9D)、A/ニューカレドニア/20/1999(NC/99;
図9E~9F)、A/ベルギー/1/2009(Bel/09;
図9G~9H)、A/ブタ/ベルギー/1/1998(Sw/Bel/98;
図9I~9J)、またはH5N1型NIBRG-14(H5N1)(
図9K~9L)を鼻腔内感染させ、体重減少(左側)または死亡率(右側)を観察した。マウスが、元の体重の≧25%を失った場合、当該動物を処分した。体重減少のデータは、経時での元の体重の平均百分率(±SEM)として報告される(
図9A、9C、9E、9G、9I、および9K、n=8~10)。生残データは、経時での生残率として示される(
図9B、9D、9F、9H、9J、および9L、n=8~10)。経時での体重減少を、二元配置分散分析(two-way ANOVA)によって分析し、主要カラムの効果を評価した。両側対数順位(Mantel Cox)検定を使用して、生残率を評価した。模擬ワクチン接種したマウスとの比較において、*はp<0.05、**はp<0.01である。
【
図10-1】
図10A~10Fは、肺のウイルス価および肺環境内での炎症の減少を結果として生じるNA5200、NA7900、またはNA9100を含む四量体NAタンパク質によって媒介される防御を示す図である。マウスを、Sigma Adjuvant System(SAS)において、NA5200、NA7900、またはNA9100を含む四量体タンパク質1μgによって、皮下によりプライミングおよび追加免疫するか(3週間後)、またはSASにおいてPBSによって模擬ワクチン接種した。ワクチン接種後、マウスに、5LD
50量の、A/プエルトリコ/8/1934(PR8/34;
図10A~10B)、A/ニューカレドニア/20/1999(NC/99;
図10C~10D)、またはA/ベルギー/1/2009(Bel/09;
図10E~10F)を鼻腔内感染させた。感染後3日目または7日目に、BAL体液および肺を採取し、TCID
50によって、ウイルス価について肺ホモジネートを評価した(
図10A、10C、および10E)。7日目に、タンパク質の総レベルについて、無細胞BAL体液を調べた(
図10B、10D、および10F)。ウイルス価のグラフにおいて、破線は、TCID
50アッセイのカットオフ限界(0.7)を示す。タンパク質レベルについて;バーは、平均ウイルス価±SDを表す。データは、2回の非依存性実験からプールされる。一元配置分散分析(one-way ANOVA)を使用して、有意性を評価した。模擬ワクチン接種させたマウスとの比較において、*はp<0.05、**はp<0.01である。
【
図11A】3ラウンドのDNA免疫化の後に、Pdm09によって誘導される広範なNAI活性を示す図である。当該抗血清を、
図12~14Fに示される受動的移入(passive transfer)実験のために使用した。
【
図11B】3ラウンドのDNA免疫化の後に、NA5200によって誘導される広範なNAI活性を示す図である。当該抗血清を、
図12~14Fに示される受動的移入実験のために使用した。
【
図11C】3ラウンドのDNA免疫化の後に、NA7900によって誘導される広範なNAI活性を示す図である。当該抗血清を、
図12~14Fに示される受動的移入実験のために使用した。
【
図11D】3ラウンドのDNA免疫化の後に、NA9100によって誘導される広範なNAI活性を示す図である。当該抗血清を、
図12~14Fに示される受動的移入実験のために使用した。
【
図12】実施例6において説明される受動的移入実験の実験スケジュールを示す図である。マウスを、NA5200、NA7900、NA9100、免疫前血清(ネガティブ;-veコントロール)、またはそれぞれのポジティブ(+ve)コントロール(tetNA+SASによる免疫化;Bel09またはNewCal99)に対して産生された熱不活性化抗血清100μlによって、腹腔内により処理した。24時間後、当該マウスにチャレンジ感染させた。
【
図13-1】
図13A~13Hは、1LD50量のA/ベルギー/1/2009(Bel09)によるチャレンジ感染後のマウス(1つの群あたり5匹)の体重減少防御および生残を示す図である。DNA免疫化によってNA5200(
図13Aおよび13C)、NA7900(
図13Bおよび13D)、NA9100(
図13Eおよび13G)、またはBel/09(
図13Fおよび13H)に対して産生された抗血清により、チャレンジ感染の前にマウスを受動的に24時間免疫した。
図13A、13B、13E、および13Fは、体重のデータを示している。
図13C、13D、13G、および13Hは、生残率のデータを示している。
【
図14-1】
図14A~14Fは、1LD50量の、A/ベルギー/1/2009(Bel09、
図14Aおよび14B)、A/ニューカレドニア/20/1999(NewCal99、
図14Cおよび14D)、またはA/プエルトリコ/8/1934(PR8、
図14Eおよび14F)によるチャレンジ感染後のマウス(1つの群あたり7~8匹)の体重減少防御および生残を示す図である。
図14A,14C、および14Eは、体重のデータを表す。
図14B、14D、および14Fは、生残のデータを表す。DNA免疫化によってNA5200、NA7900、またはNA9100に対して産生された抗血清により、チャレンジ感染の24時間前に、マウスを受動的に免疫した。
【
図15-1】
図15A~15Fは、抗体が、NA5200、NA7900、またはNA9100を含む四量体NAタンパク質によるタンパク質ワクチン接種によって提供される防御において主要な役割を果たすことを裏付ける図である。CBC NA、野生型PR8/34 rNA、野生型NC/99 rNA、または野生型Bel/09 rNA(
図8A~8Bにおいて使用されるのと同じ)に対して産生された抗血清を、受動的移入によってインフルエンザウイルス感染を抑制するそれらの能力について評価した。マウスを、NA5200、NA7900、NA9100、PBS(ネガティブ;-veコントロール)、またはそれぞれの同種rNAポジティブ(+ve)コントールを含む四量体NAタンパク質に対して産生された熱不活性化抗血清20μlによって、鼻腔内により処理した。当該マウスを、鼻腔内により、2LD
50量のA/プエルトリコ/8/1934(PR8/34;
図15A~15B)、A/ニューカレドニア/20/1999(NC/99;
図15C~15D)、またはA/ベルギー/1/2009(Bel/09;
図15E~15F)によって24時間後にチャレンジ感染させ、体重減少(
図15A、15C、および15E)および生残(
図15B、15D、および15F)について14日間観察した。体重減少のデータは、経時での元の体重の平均百分率(±SEM)として報告され(n=8)、生残のデータは、経時での生残率として示される(n=8)。データは、2つの独立した実験からプールされる。経時での体重減少を分析するために二元配置分散分析を使用して、主要カラムの効果を評価し、その一方で、生残の割合を評価するために、両側対数順位(Mantel Cox)検定を使用した。ネガティブコントロールのマウスとの比較において、*は、p < 0.05である。
【
図16-1】
図16A~16Lは、CBC NAが、野生型NAよりも広範な防御を提供すること、および一価不活性化ワクチンに加えられた場合に増加された幅を提供することを示す図である。マウスに、SASアジュバントの存在下において、1μgの野生型Bel/09rNA、野生型NC/99rNA、CBC NA NA5200、もしくはNA9100(
図16A~16Cおよび16G~16I)によって、または単独もしくは1μgの野生型Bel/09rNA、野生型NC/99rNA、CBC NA NA5200、もしくはNA9100と組み合わせた0.1μgの一価pdm09ワクチンによって(
図16D~16Fおよび16J~16L)、皮下経路により、プライミングおよび3週間の間隔において追加免疫した。さらに、ある群のマウスには、模擬ワクチン接種した。最終的な追加免疫の3週間後、当該マウスを、鼻腔内により、5LD
50量のBel/09またはNC/99によってチャレンジ感染させた。14日間にわたって、体重減少(
図16A、16D、16G)および生残(
図16B、16E、16F)についてマウスを観察した。マウスが、それらの元の体重の≧25%を失った場合、それらを犠牲にした。Bel/09感染に対しては7日目およびNC/99感染に対しては6日目に、肺ホモジネートを得て、TCID
50によってウイルス量を評価した。体重減少のデータは、経時での元の体重の平均百分率(±SEM)として示されており、生残のデータは、経時での生残率として示される(同種rNAワクチン接種したマウスに対しては2つの独立した実験からプールしたn=9~10(
図16A~16Cおよび16G~16I);一価単独ワクチン接種させたマウスに対しては1つの実験からのn=5(
図16D~16Fおよび16J~16L))。経時での体重減少は、二元配置分散分析によって分析し、主要カラムの効果を調べ、生残率は、両側対数順位(Mantel Cox)検定を使用して評価した。ウイルス価について、一元配置分散分析を使用して有意性を評価した。同種rNAワクチン接種させたマウスとの比較において(
図16A~16Cおよび16G~16I);または一価単独ワクチン接種させたマウスとの比較において(
図16D~16Fおよび16J~16L)、*はp<0.05であり、**はp<0.01である。
【
図17-1】
図17A~17Cは、NA5200およびNA9100を含む四量体NAタンパク質に対して産生された抗血清が、A(H1N1)pdm09 HAドリフト変異株(drift strain)(中高年齢の成人における感染率増加に起因してCDCによって決定されるHAドリフト(drift))に対してNAIを媒介したこと(
図17A~17B)、ならびにCBC NAおよびA(H1N1)pdm09ウイルスによって共有される同一性のパーセント(
図17C)を示す図である。マウスを、SASの存在下において、NA5200またはNA9100を含む四量体NAタンパク質によってプライミングおよび追加免疫した(3週間の間隔で)。A/ベルギー/1/2009(Bel/09)rNAおよび組換えコンセンサスNAに対して産生された熱不活性化血清の希釈物を、ELLAアッセイにおいて、A/ベルギー/1/2009(Bel/09)および/シンガポール/GP1908/2015(Sing/15)に対してNAIを媒介するそれらの能力を試験した。
図17Aにおいて、1:4.3における点線は、試験した血清の最も高い濃度を表す。この線より低い値は、非線形回帰方程式によって決定された曲線から推定し、その場合、1:2.3を真に陽性のシグナルとして設定した。データは、トリプリケートにおいて実施した実験の平均(±1SD)として報告される。*は、一元配置分散分析におけるp<0.05である。
図17Cは、BlastP スイート-2配列ソフトウェアを使用して決定された、CBC NAおよびA(H1N1)pdm09ウイルスによって共有される同一性のパーセントを示す図である。太字の数字は、どこでNAIアッセイにおいて>2.3(すなわち、1:5)の1:IC
50が観察されるかを特定する。
【0014】
配列の記載
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
アジュバント:本明細書において使用される場合、アジュバントは、抗原への免疫応答を非特異的に増強する物質またはビヒクルを指す。アジュバントとして、抗原が吸着されるミネラル(例えば、アラム、水酸化またはリン酸アルミニウム)の懸濁物;抗原溶液がミネラル油中または水中に乳化されている油中水または水中油乳剤(例えば、フロイント不完全アジュバント)が非限定的に挙げられる。時に、死菌マイコバクテリアが抗原性をさらに増強するために含まれる(例えば、フロイント完全アジュバント)。免疫賦活性オリゴヌクレオチド(例えば、CpGモチーフ)もアジュバントとして使用できる(例えば、米国特許第6,194,388号;第6,207,646号;第6,214,806号;第6,218,371号;第6,239,116号;第6,339,068号;第6,406,705号;および第6,429,199号を参照されたい)。アジュバントは、Toll様受容体(TLR)アゴニストおよび共刺激分子などの生物学的分子も含む。例示的生物学的アジュバントとして、これだけに限らないが、IL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-a、IFN-γ、G-CSF、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、OX-40L、41 BBLまたはこれらの組合せが挙げられる。
【0016】
抗体:本明細書において使用される場合、抗体は、特定の抗原に特異的結合を付与するために十分なカノニカル免疫グロブリン配列エレメントを含むタンパク質またはポリペプチドを指す。一部の実施形態では、抗体は、2本の重鎖および2本の軽鎖を含む古典的抗体である。各重鎖は、1つの可変領域(例えば、VH)ならびに少なくとも3つの定常領域(例えば、CH1、CH2およびCH3)を含み、各軽鎖は、1つの可変領域(VL)および1つの定常領域(CL)を含む。可変領域は、抗体の特異性を決定する。各可変領域は、4つの比較的保存されたフレームワーク領域(FR)に隣接された、相補性決定領域(CDR)としても周知の3つの高頻度可変性領域を含む。3つのCDRは、CDR1、CDR2およびCDR3と称され、抗体結合特異性に寄与する。一部の実施形態では、抗体は、例えば、抗体の抗原結合または可変領域などの未処置抗体の一部を含む「抗体断片」または「抗体断片(複数)」とも称される。「抗体断片」の例として、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、三価抗体(triabody)、四価抗体(tetrabody)、直鎖抗体、1本鎖抗体分子および多特異性抗体に含まれるCDR含有部分が挙げられる。ある特定の実施形態では、天然抗体において見出されるような十分な免疫グロブリンドメイン配列を含む任意のポリペプチドまたはポリペプチドの複合体は、かかるポリペプチドが天然で産生される(例えば、抗原に反応する生物によって生成される)、または組換え工学、化学合成もしくは他の人工システムもしくは方法によって産生されるかに関わらず、「抗体」と呼ばれるおよび/または「抗体」として使用される。一部の実施形態では、抗体は、モノクローナルである;一部の実施形態では、抗体は、ポリクローナルである。一部の実施形態では、抗体は、キメラ抗体である。一部の実施形態では、抗体はヒト化されている。
【0017】
抗原:本明細書において使用される場合、抗原は、生物に曝露もしくは投与される場合に免疫応答を誘発する作用剤および/または、T細胞受容体(例えば、MHC分子によって提示される場合)によって結合されるもしくは抗体(例えば、B細胞によって産生される)に結合する作用剤を指す。一部の実施形態では、抗原は、生物において液性応答(例えば、抗原特異的抗体の産生を含む)を誘発する。代替的にまたは追加的に、一部の実施形態では、抗原は、生物において細胞性応答(例えば、その受容体が抗原と特異的に相互作用するT細胞を含む)を誘発する。具体的な抗原が標的生物(例えば、マウス、ウサギ、霊長類、ヒト)の1つまたはいくつかのメンバーにおいて免疫応答を誘発できるが、標的生物種のすべてのメンバーにおいてではないことは、当業者によって理解される。一部の実施形態では、抗原は、標的生物種のメンバーの少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%において免疫応答を誘発する。一部の実施形態では、抗原は、抗体および/またはT細胞受容体に結合し、生物において具体的な生理学的応答を誘導する場合としない場合がある。一部の実施形態では、例えば抗原は、かかる相互作用がin vivoで生じるかどうかに関わらずin vitroで抗体に、および/またはT細胞受容体に結合できる。一部の実施形態では、抗原は、異種性免疫原によって誘導されたものを含む特異的液性または細胞性免疫の産生物と反応する。一部の実施形態では、インフルエンザNAポリペプチドまたはその免疫原性断片は、抗原である。
【0018】
抗原ドリフト:本明細書において使用される場合、抗原ドリフトは、比較的頻繁に生じるHAまたはNA抗原における変異を指す。抗原ドリフトは、インフルエンザウイルスが免疫認識を逃れられるようにでき、ワクチン効能を減少させる場合がある。
【0019】
抗原シフト:本明細書において使用される場合、抗原シフトは、異なるインフルエンザ株間の遺伝子材料の再集合によって生じるHAまたはNA抗原における主な変化を指す。
【0020】
およそ:本明細書において使用される場合、用語「およそ」または「約」は、目的の1つまたはそれ以上の値に適用される場合、述べられる基準値に近い値を指す。ある特定の実施形態では、用語「およそ」または「約」は、他に述べられない限りまたは内容から他が明らかでない限り、述べられた基準値のいずれかの方向における(超えるまたは少ない)約25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはこれ未満の範囲内の値の範囲を指す(かかる値が可能値の100%を超える場合を除く)。
【0021】
エピトープ:本明細書において使用される場合、免疫グロブリン(例えば、抗体または受容体)結合成分の全体または部分によって特異的に認識される任意の部分を指す。一部の実施形態では、エピトープは、抗原上の複数の化学原子または基からなる。一部の実施形態では、かかる化学的原子または基は抗原が適切な三次元コンホメーションをとった場合に表面に曝露される。一部の実施形態では、かかる化学原子または基は、抗原がかかるコンホメーションをとった場合に空間的に互いに物理的に近い。一部の実施形態では、化学的原子または基の少なくとも一部は、抗原が代替的コンホメーションをとった(例えば、直鎖化されている)場合に互いに物理的に離される。
【0022】
宿主:本明細書において使用される場合、用語「宿主」は、目的のポリペプチドが存在するシステム(例えば、細胞、生物など)を指す。一部の実施形態では、宿主は、特定の感染病原体での感染に感受性であるシステムである。一部の実施形態では、宿主は、目的の特定のポリペプチドまたはタンパク質を発現するシステムである。
【0023】
宿主細胞:本明細書において使用される場合、「宿主細胞」は、外来性DNA(組換えまたはその他)が導入される細胞を指す。例えば、宿主細胞は、標準的組換え技術によって本明細書に記載のインフルエンザNAポリペプチドを産生するために使用できる。当業者は、かかる用語が具体的な対象細胞だけでなく、かかる細胞の後代も指すことを理解する。ある特定の改変が、変異または環境の影響のいずれかのために続く世代に生じる場合があることから、かかる後代は、実際に、親細胞と同一でない場合があるが、本明細書において使用される、用語「宿主細胞」の範囲内にいまだ含まれる。一部の実施形態では、宿主細胞は、外来性DNA(例えば、組換え核酸配列)を発現するために好適な任意の原核および真核細胞を含む。例示的細胞として、原核もしくは真核細胞(単細胞もしくは多細胞)、細菌細胞(例えば、大腸菌、バチルス種、ストレプトマイセス種などの株)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、出芽酵母、分裂酵母、P.パストリス、P.メタノリカ(P.methanolica)など)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、イラクサギンウワバなど)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、または細胞融合物(例えば、ハイブリドーマまたはクアドローマ)が挙げられる。一部の実施形態では、細胞は、ヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラットまたはマウス細胞である。一部の実施形態では、細胞は、真核細胞であり、これだけに限らないが、CHO(例えば、CHO K1、DXB-11CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎細胞(例えば、HEK293、293EBNA、MSR293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC5、Colo205、HB8065、HL-60、(例えば、BHK21)、ジャーカット、ダウディ、A431(上皮性)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT060562、セルトリ細胞、BRL3A細胞、HT1080細胞、骨髄腫細胞、腫瘍細胞および前述の細胞由来の細胞系から選択される。一部の実施形態では、細胞は、1つまたはそれ以上のウイルス遺伝子を含む、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(商標)細胞)。
【0024】
免疫応答:本明細書において使用される場合、用語「免疫応答」は、抗原またはワクチンなどの刺激への、B細胞、T細胞、樹状細胞、マクロファージまたは多形核球(polymorphonucleocyte)などの免疫システムの細胞の応答を指す。免疫応答は、例えば、インターフェロンまたはサイトカインを分泌する上皮細胞を含む、宿主防御応答に関与する任意の体細胞を含む。免疫応答として、これだけに限らないが、自然および/または適応免疫応答が挙げられる。本明細書において使用される場合、防御免疫応答は、対象を感染から保護する(例えば、感染を予防するまたは感染に関連する疾患の発症を予防する)免疫応答を指す。免疫応答を測定する方法は、当技術分野において十分周知であり、例えば、リンパ球(BまたはT細胞など)の増殖および/または活性、サイトカインまたはケモカインの分泌、炎症、抗体産生などを測定することによるものが挙げられる。
【0025】
免疫原:本明細書において使用される場合、用語「免疫原」は、動物に注射または吸収される組成物を含む、好適な条件下で動物において抗体の産生またはT細胞応答などの免疫応答を刺激できる化合物、組成物または物質を指す。本明細書において使用される場合、「免疫原性組成物」は、免疫原(NAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質など)を含む組成物である。本明細書において使用される場合、「免疫化」は、ワクチン接種によってなど感染性疾患から対象が保護されるようにすることを意味する。
【0026】
インフルエンザウイルス:本明細書において使用される場合、オルトミクソウイルス科に属するセグメント化されたマイナス鎖RNAウイルスを指す。
【0027】
インフルエンザワクチン:本明細書において使用される場合、インフルエンザウイルス感染の予防、回復または処置のために投与される、免疫応答を刺激できる免疫原性組成物を指す。インフルエンザワクチンとして、例えば、弱毒化または死菌(例えば、分割された)インフルエンザウイルス、ウイルス様粒子(VLP)および/または抗原ポリペプチドもしくはタンパク質(例えば、本明細書に記載のNAポリペプチドもしくは四量体NAタンパク質)またはそれら由来のDNAまたはかかる免疫原性材料の任意の組換えバージョンが挙げられる。インフルエンザワクチンは、DNAおよびウイルスベクターに基づくワクチンも含む。本明細書において検討されるワクチンは、場合により、1つまたはそれ以上のアジュバントを含む場合がある。
【0028】
単離された:本明細書において使用される場合、(i)最初に産生された(天然において、または実験設定においてであるかに関わらず)際に付随していた構成成分の少なくとも一部から分離された;または(ii)人工的に産生された、のいずれかである作用剤または実体を指す。単離された作用剤または実体は、最初に付随していた他の構成成分の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%またはこれ超から分離されている。一部の実施形態では、単離された作用剤は、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%を超えて純粋である。本明細書において使用される場合、他の構成成分を実質的に含まない場合に物質は、「純粋」である。一部の実施形態では、当業者によって理解されるとおり、物質は、例えば、1つまたはそれ以上の担体または賦形剤(例えば、緩衝液、溶媒、水など)などのある特定の他の構成成分と配合された後でも「単離された」または「純粋」とさえ見なすことができ;かかる実施形態では、物質の単離または純度パーセントは、かかる担体または賦形剤を含まずに算出される。例示的実施形態では、天然に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの生物学的ポリマーは、a)その起源または誘導の供給源が、天然でのその天然状態においてそれに伴う構成成分の一部またはすべてと付随しない理由から;b)天然でそれを産生する種と同じ種の他のポリペプチドまたは核酸を実質的に含まない;c)天然でそれを産生する種のものではない細胞または他の発現システムによって発現される、またはそれ由来の構成成分に付随する、場合に、「単離された」と見なされる。したがって、例えば、一部の実施形態では、化学的に合成されるまたは、天然でそれを産生するのとは異なる細胞システムにおいて合成されるポリペプチドは、「単離された」ポリペプチドと見なされる。代替的にまたは追加的に、一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の精製技術に供されたポリペプチドは、a)天然でそれに付随する;および/またはb)最初に産生された際に付随する、他の構成成分から分離されている程度に「単離された」ポリペプチドと見なされる。
【0029】
ノイラミニダーゼまたはNAタンパク質:本明細書において使用される場合、ノイラミニダーゼまたはNAタンパク質は、インフルエンザウイルス膜の表面上の構造糖タンパク質を指す。NAは、細胞表面タンパク質からのシアル酸の除去により感染細胞からのインフルエンザウイルスの放出に関与する。現在、抗体とのそれらの相互作用によって決められる11個の周知のNAサブタイプ(すなわち、N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8、N9、N10およびN11)がある。所与のNAサブタイプのすべてのバリアントは、類似の一連の抗体によって中和される。NA阻害(NAI)アッセイは、具体的なインフルエンザウイルスにおけるNA糖タンパク質サブタイプを同定するために使用でき、それによりウイルスを分類できる。ヒトは、一般にN1またはN2サブタイプのウイルスに感染する。一部の実施形態では、NAタンパク質は、モノマーであり、単一のNAポリペプチドを含む。他の実施形態では、NAタンパク質は、四量体であり、4つのNAポリペプチドを含む。
図2Aは、本明細書に記載のモノマーおよび四量体NAタンパク質の実施形態を例示する。本明細書において使用される場合、「ノイラミニダーゼポリペプチド」または「NAポリペプチド」は、そのアミノ酸配列がNAの少なくとも1つの特徴的な配列を含むポリペプチドを指す。NAポリペプチドは、全長インフルエンザNAポリペプチド配列およびその断片を含む場合がある。当業者は、NAポリペプチド一般の、および/または具体的なNAポリペプチド(例えば、N1もしくはN2ポリペプチド)の、または具体的な宿主(例えば、トリ、ラクダ、イヌ、ネコ、ジャコウネコ、ウマ、ヒト、ヒョウ、ミンク、マウス、アシカ、ムナジロテン、ブタ、トラ、クジラなど)の感染を媒介するNAの特徴的である配列を容易に同定できる。the National Center for Biotechnology Information(NCBI)は、NAポリペプチド配列のデータベースを維持している。
【0030】
大発生:本明細書において使用される場合、インフルエンザウイルス「大発生」は、所与の年に単一の国の中から単離されたウイルスの集合物を指す。
【0031】
パンデミック、季節性、ブタ株:本明細書において使用される場合、「パンデミック」インフルエンザ株は、ヒト集団のパンデミック感染を生じたまたは生じる能力を有するものである。一部の実施形態では、パンデミック株は、パンデミック感染を生じさせたことがある。一部の実施形態では、かかるパンデミック感染は、複数の地域にわたる伝染性感染を含む。一部の実施形態では、パンデミック感染は、感染がそれらの間を通常は通過しないような互いに分かれている地域(例えば、山、水域によって、異なる大陸の部分としてなど)にわたる感染を含む。一部の実施形態では、パンデミックインフルエンザ株は、ヒトがそれに対する免疫を欠いているトリまたはブタ由来の新規HAまたはNAを有するウイルスを生じる、ヒトインフルエンザウイルスとトリまたはブタインフルエンザウイルスとの間の再集合から生じるもの(およそ20~30年ごとに生じる抗原シフト)を含む。言い換えると、ヒト集団は、無感作であり、過去のワクチン接種または過去の曝露のいずれかの結果としての抵抗性を有さないまたはわずかしか有さないと考えられる。パンデミック株と季節性株とは、抗原的に異なり、配列によって全く異なる。一般に、季節性インフルエンザ株は、具体的な季節または具体的な年、例えば、1986年から2009年(パンデミックではない2009年配列を含む)由来の蔓延している株、および抗原領域をコードする実質的に類似(すなわち、抗原配列空間において類似)の遺伝配列を有する他の株と定義される。ブタインフルエンザ株は、ブタに固有のウイルスに関連する任意のインフルエンザ株を指す。例示的パンデミック株として、非限定的に、A/California/07/2009、A/California/04/2009、A/Belgium/145/2009、A/South Carolina/01/1918およびA/New Jersey/1976が挙げられる。パンデミックサブタイプとして、特に、H5N1、H2N2、H9N2、H7N7、H7N3、H7N9およびH10N7サブタイプが挙げられる。例示的季節性株として、非限定的に、A/Puerto Rico/8/1934、A/Fort Monmouth/1/1947、A/Chile/1/1983、A/Texas/36/1991、A/Singapore/6/1986、A/Beijing/32/1992、A/New Caledonia/20/1999、A/Solomon Islands/03/2006、およびA/Brisbane/59/2007が挙げられる。例示的ブタ株として、非限定的に、A/New Jersey/1976単離体およびA/California/07/2009が挙げられる。追加的インフルエンザパンデミック、季節性および/またはブタ株は、当技術分野において周知である。
【0032】
予防:本明細書において使用される場合、具体的な疾患、障害または状態(例えば、感染、例えばインフルエンザウイルスでの)の、予防(prophylaxis)、疾患顕在化の回避、発病の遅延ならびに/または1つまたはそれ以上の症状の頻度および/もしくは重症度の低減を指す。一部の実施形態では、予防は集団ベースで評価され、疾患、障害または状態の発症、頻度および/または1つまたはそれ以上の症状の強度における統計的に有意な減少が疾患、障害または状態に感受性の集団において観察される場合に、作用剤は具体的な疾患、障害または状態を「予防」すると見なされる。
【0033】
組換え:本明細書において使用される場合、用語「組換え」は、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現されたポリペプチド、組換え、コンビナトリアルポリペプチドライブラリーから単離されたポリペプチドまたは、選択された配列エレメントを互いにスプライシングすることを含む任意の他の手段によって製造、発現、創出または単離されたポリペプチドなどの、組換え手段によって設計、操作、製造、発現、創出または単離されるポリペプチドまたはタンパク質(例えば、本明細書に記載のNAポリペプチドもしくは四量体NAタンパク質)を指すと意図される。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のかかる選択された配列エレメントは、天然で見出される。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のかかる選択された配列エレメントは、コンピューターで設計される。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のかかる選択された配列エレメントは、周知の配列エレメント、例えば、天然または合成供給源由来、の変異導入(例えば、in vivoまたはin vitro)から生じる。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のかかる選択された配列エレメントは、同じポリペプチドに天然では存在しない複数(例えば、2つ以上)(例えば、2つの別々のNAポリペプチド由来の2つのエピトープ)の周知の配列エレメントの組合せから生じる。
【0034】
シグナル配列、分泌シグナル、または分泌シグナルペプチド:本明細書において使用される場合、用語は、細胞からの分泌のためのシグナルを伝達するペプチド配列を指す。分泌シグナルは、そうでなければ分泌されないポリペプチドまたはタンパク質の分泌をもたらすことができる。
【0035】
四量体化ドメイン:本明細書において使用される場合、用語は、ポリペプチドまたはタンパク質の四量体アセンブリを生じるドメインをコードするアミノ酸配列を指す。具体的なタンパク質に由来しない四量体化ドメインは、人工または異種性四量体化ドメインと称される。例示的四量体化ドメインとして、これだけに限らないが、テトラブラキオン、GCN4ロイシンジッパーまたは血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質(VASP)由来の配列が挙げられる。
【0036】
配列同一性:アミノ酸配列または核酸配列間の類似性は、配列間の類似性および/または同一性の観点から表される。配列類似性は、配列同一性および相同性によって密接に関連している配列の要素を含む。配列類似性は、類似性(または同一性もしくは相同性)百分率の観点からしばしば測定される;百分率が高いほど2つの配列はより類似している。所与の遺伝子またはタンパク質のホモログまたはバリアントは、標準的方法を使用してアラインされた場合に比較的高い程度の配列同一性を有する。比較のための配列のアライメント法は、当技術分野において十分周知である。種々のプログラムおよびアライメントアルゴリズムが当技術分野において記載されている:Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981;Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970;Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444,1988;Higgins and Sharp,Gene 73:237~244,1988;Higgins and Sharp,CABIOS 5:151~153,1989;Corpet et al.,Nucleic Acids Research 16:10881~10890,1988およびPearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444,1988.Altschul et al.,Nature Genet.6:119~129,1994。NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST(登録商標))(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403~410,1990)は、配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxとの関連での使用のためにthe National Center for Biotechnology Information(NCBI、Bethesda、Md.)を含むいくつかの供給元から入手可能である。
【0037】
対象:本明細書において使用される場合、動物界の任意のメンバーを指す。一部の実施形態では、「対象」はヒトを指す。一部の実施形態では、「対象」は非ヒト動物を指す。一部の実施形態では、対象として、これだけに限らないが、哺乳動物、鳥類、は虫類、両生類、魚類、昆虫および/または虫が挙げられる。ある特定の実施形態では、非ヒト対象は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類および/またはブタ)である。一部の実施形態では、対象は、トランスジェニック動物、遺伝的に操作された動物、および/またはクローンである場合がある。本発明のある特定の実施形態では、対象は、成人、青年または幼児である。一部の実施形態では、用語「個体」または「患者」は、「対象」と互換的であるとして使用され、意図される。本発明によって同様に検討されるのは、子宮内での医薬組成物の投与および/または処置法の実施である。
【0038】
ワクチン接種:本明細書において使用される場合、用語「ワクチン接種」または「ワクチン接種する」は、例えば病原体への、免疫応答を生成する目的の組成物の投与を指す。ワクチン接種は、病原体への曝露および/または1つまたはそれ以上の症状の発症の前、その間および/または後、一部の実施形態では、病原体への曝露の前、その間および/または直後に投与される。一部の実施形態では、ワクチン接種は、ワクチン接種組成物の適切な時間間隔での複数回投与を含む。
【0039】
ウイルス様粒子(VLP):本明細書において使用される場合、句「ウイルス様粒子」または「VLP」は、ウイルスに類似しているが、いかなるウイルス遺伝材料も欠いており、したがって感染性でない粒子を指す。「ウイルス様粒子」または「VLP」は、哺乳動物細胞系、昆虫細胞系、酵母および植物細胞を含む種々の細胞培養システムにおける異種性発現によって産生される。加えてVLPは、当技術分野において周知の方法によって精製される。一部の実施形態では本明細書に記載のインフルエンザVLPは、HAポリペプチドおよび/またはNAポリペプチドを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載のインフルエンザVLPは、HAポリペプチド、NAポリペプチドおよび/または構造ポリペプチドを含む。一部のある特定の実施形態では、本明細書に記載のインフルエンザVLPは、HAポリペプチド、NAポリペプチドおよび/またはインフルエンザM1ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載のインフルエンザVLPは、HAポリペプチド、NAポリペプチドおよび/またはHIV gagポリペプチドを含む。当業者は、他のウイルス構造タンパク質を本明細書に例示されるものの代替として使用できることを認識する。インフルエンザVLPは、HAおよびNAタンパク質、ならびに場合によりM1タンパク質および/またはHIV gagタンパク質をコードするプラスミドを用いた、宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞)のトランスフェクションによって産生できる。タンパク質発現を可能にするための好適な期間でのトランスフェクトされた細胞のインキュベーション後に、VLPは細胞培養上清から単離される。一部の実施形態では、本明細書に記載のインフルエンザVLPは、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)での一過性トランスフェクションによって産生される。一部の実施形態では、インフルエンザVLPは、1つまたはそれ以上のアッセイの使用によって分析される。例えば、インフルエンザVLP粒子サイズは、動的光散乱によって分析でき、かかるVLPは、タンパク質染色によって、ヘマグルチニン活性およびヘマグルチニン含有量の定量についても分析される。
【0040】
野生型(WT):当技術分野において理解されるとおり、用語「野生型」は、天然で見出されるタンパク質または核酸の通常の形態を一般に指す。例えば、野生型NAポリペプチドは、インフルエンザウイルスの天然の単離物において見出される。種々の異なる野生型NA配列をNCBIインフルエンザウイルス配列データベースにおいて見出すことができる。
【0041】
ノイラミニダーゼ(NA)ポリペプチドを設計するための方法
コンセンサスインフルエンザタンパク質配列を生成することに関連する重要な課題は、時間的および地理的配列バイアスに関する。かかるバイアスは、一部は、公的なおよび/または民間の配列データベースに提供される配列記録がしばしばより最近の配列に大きく偏っているために存在する。さらに、合衆国などのある特定の地理的領域と関連する配列がしばしば大きな比率を占める。一態様では、本発明は、かかる時間的および地理的配列バイアスを克服するクラスターベースコンセンサスアプローチを使用して、コンセンサスアミノ酸を含むインフルエンザNAポリペプチドを生成するための新規方法を提供する。本発明の方法は、系統発生学的情報と無関係で、一次アミノ酸配列に含有される情報だけに依存する。したがって、本方法は、全体的な配列多様性を反映し、時間的または地理的に大きな比率を占める配列へのバイアスがないNAポリペプチド配列を生成することができる。
【0042】
種々の実施形態では、方法は、複数のインフルエンザNA配列における配列差異のコンピューター分析に基づいてNAポリペプチド配列を設計すること、類似配列のクラスターを生成するためにコンセンサスベース配列アルゴリズムを適用すること、およびコンセンサスアミノ酸配列を有するNAポリペプチドの構造分析を実施することを含む。一部の実施形態では、本方法は、K平均法、ミニマックスクラスタリングおよび最遠距離優先クラスタリング(Farthest-First clustering)などのツールを使用してクラスター化できるペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを生成する。代替的にまたは追加的に、ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスは、好適なクラスターを定義するため(例えば、クラスターを分離し、数を決めるため)の、多次元尺度構成法(MDS)または主成分分析(PCA)などのオーディネーション技術を使用してコンパクト表現で可視化される。さらに本方法は、コンセンサス配列内の可変アミノ酸位置を解明し、正しくフォールドし、それにより機能性であり易い候補を順位付けるために、分子モデリングおよび結晶構造との比較を利用する。
【0043】
理論に束縛されることを望むわけではないが、本発明の方法は、さまざまなインフルエンザ株、型および/またはサブタイプにわたって保存されたエピトープを含むNAポリペプチドを生成すると考えられる。したがって、種々の実施形態では、本方法は、広範なインフルエンザ株(例えば、1つまたはそれ以上の季節性、パンデミックもしくはブタ株)、インフルエンザ型(例えば、1つまたはそれ以上のインフルエンザA型、B型もしくはC型)および/またはインフルエンザサブタイプ(例えば、非限定的に、H1N1、H3N2もしくはH5N1などの1つまたはそれ以上のインフルエンザサブタイプ)に対して交差反応性免疫応答の増強を誘導できるNAポリペプチドを生成する。
【0044】
一部の実施形態では、本方法は、種々のインフルエンザNAポリペプチド配列を選択することを含む。種々の異なるNA配列は、the National Center for Biotechnology Information(NCBI)インフルエンザウイルス配列データベースなどの配列データベースにおいて見出すことができる。一部の実施形態では、固有の配列の非重複サブセットは、配列アライメントのために選択される。
【0045】
一部の実施形態では、本方法は、インフルエンザNAポリペプチド配列をアラインすることを含む。当技術分野において周知の任意の多重配列アライメントツールを使用できる。例えば、Katoh and Kuma(2002)NAR,30:3059;Katoh and Standley(2013)Mol BioL Evol 30:772;Edgar,R.C.(2004)NAR,32:1792;Edgar,R.C.(2004)BMC Bioinf,113;Sievers et al.(2011)Mol Sys Biol 7:539;およびPearson and Lipman.(1988)PNAS,85:2444を参照されたい。本発明のために利用できる例示的配列アライメントツールとして、これだけに限らないが、MAFFT、MUSCLE、CLUSTAL OMEGA、FASTA、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0046】
一部の実施形態では、特異的配列領域は、さらなる分析から遮蔽される場合がある。例えば、NAシグナルペプチド配列、膜貫通ドメイン配列または任意の他の保存NAドメインの任意の1つは、さらなる分析から遮蔽される場合がある。
【0047】
一部の実施形態では、本方法は、アラインされた配列からペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを算出することを含む。2つ以上の配列間の距離を算出するための任意の方法を使用できる。ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを算出するための例示的ツールとして、これだけに限らないが、BLOSUM、PAM、IDENTITY置換マトリクスまたはこれらの組合せが挙げられる。一実施形態では、FastTreeなどのペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを算出するための代替法を使用する場合がある(Price,M.N.,Dehal,P.S.,and Arkin,A.P.(2009)Molecular Biology and Evolution 26:1641~1650)。
【0048】
一部の実施形態では、本方法は、ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスから類似配列のクラスターを同定するおよび創出することをさらに含む。類似配列のクラスターを同定するための例示的ツールとして、これだけに限らないが、K平均クラスタリング、ミニマックスクラスタリング、最遠距離優先クラスタリング、主成分分析(PCA)、多次元尺度構成法(MDS)またはこれらの組合せが挙げられる。一実施形態では、クラスタリングのためにK平均法が利用される(Hartigan,J.A.et al.(1979)Journal of the Royal Statistical Society,Series C,Applied Statistics,28(1):100~108を参照されたい)。別の実施形態では、ミニマックスクラスタリング(例えば、類似性マトリクスのミニマックスリンケージ階層クラスタリング(linkage hierarchical clustering))が利用される(Bien,J.et al.,(2011)The Journal of the American Statistical Associationを参照されたい)。さらなる実施形態では、近似解法(farthest-first traversal)が使用される(Rosenkrantz et al.(1977)SIAM J Comp,6:563を参照されたい)。
【0049】
一部の実施形態では、オーディネーション技術が、ペアワイズ類似性/非類似性マトリクス由来の類似配列のクラスターを同定および創出するために使用される。例えば、一部の実施形態では、PCAは、ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスの次元削減(dimension reduction)のために使用される。PCAは、高次元、ペアワイズ類似性/非類似性マトリクスを、類似配列のクラスターの可視化および同定を促進する低次元サブ空間に変換するために利用できる(Pearson,K.(1901)Philosophical Magazine 2(11):559~572およびHotelling,H.(1933)Journal of Educational Psychology,24,417~441,and 498~520を参照されたい)。さらなる実施形態では、多次元尺度構成法(MDS)が使用される。MDSは、多次元データセットの類似性および非類似性のレベルを算出および可視化し、一連の点のすべての対の間の距離を最良に再現する次元の削減されたセットを見出す手段を指す。一部の実施形態では、MDSは、オブジェクト間の距離が維持されるように、N次元空間中の各オブジェクトを位置させるために使用される。一部の実施形態では、MDSは、距離マトリクスに含有される情報の提示を可能にする。一部の実施形態では、MDSは、削減された次元空間にNA配列を置き、それによりウイルス配列の対の間の相対距離を正確に維持する。一部の実施形態では、系統発生学的方法が再集合および/または組換えの存在下で一致しない場合があることから、MDSは、系統発生学的方法における欠点を克服する。一部の実施形態では、MDSは、無作為であるインフルエンザウイルスにおける中立置換を除去する。種々の実施形態では、MDSまたはPCAなどのオーディネーション技術は、クラスターの可視化および同定を促進するために、高次元、ペアワイズ距離マトリクスを低次元サブ空間に変換することを助ける。
【0050】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、類似配列の1より多いクラスター(例えば、季節性様、パンデミック様またはブタ様配列)を創出する。本明細書に記載の方法での使用のための配列の例示的クラスターは、これだけに限らないが、
図1Aに示されるものである。
【0051】
一部の実施形態では、各クラスター内で、コンセンサス配列は、多重配列アライメントにおける各位置で最も頻繁なアミノ酸に基づいて算出される。例えば、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%(または使用者が定義する任意の他の閾値)以上である場合、そのアミノ酸はコンセンサスアミノ酸と指定される。代替的に、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%(または使用者が定義する任意の他の閾値)未満である場合、そのアミノ酸は可変アミノ酸と指定される。一部の実施形態では、第1の配列は、コンセンサスアミノ酸および可変アミノ酸を含む各クラスターについて生成される。一部の実施形態では、各クラスターについて生成された第1の配列は、クラスター内コンセンサス配列と指定される。
【0052】
一部の実施形態では、コンセンサス配列は、複数配列クラスターについて生成される。かかる実施形態では、複数クラスターについて選択されたクラスター内コンセンサス配列は、特定された結果の特性に基づいて追加的コンセンサス配列を導き出すためにマージされる。例えば、特定の地理的領域、宿主または時期と関連するクラスター内コンセンサス配列は、クラスターを超えるコンセンサス配列(例えば、第2の配列)を生成するためにマージされる。
【0053】
種々の実施形態では、クラスターを超えるコンセンサス配列を生成するために、1つのクラスターから生成されたクラスター内コンセンサス配列(例えば、第1の配列)は、別のクラスターまたは複数クラスターから生成されたクラスター内コンセンサス配列(例えば、第1の配列)と比較される。一部の実施形態では、生成された配列は、互いに対してアラインされる。一部の実施形態では、ペアワイズアライメント法は、アライメントにおいて各位置に対するコンセンサスアミノ酸があるかどうかを決定するために利用される。既に記載したとおり、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%(または使用者が定義する任意の他の閾値)以上である場合、そのアミノ酸はコンセンサスアミノ酸と指定され、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%(または使用者が定義する任意の他の閾値)未満である場合、そのアミノ酸は可変アミノ酸と指定される。一部の実施形態では、コンセンサスアミノ酸および可変アミノ酸を含むクラスターを超えるコンセンサス配列(例えば、第2の配列)は、かかる多重クラスター分析から生成される。種々の実施形態では、各位置で配列をアラインするおよびコンセンサスアミノ酸を決定するプロセスは、目的のすべての配列クラスターが検討されるまで繰り返し実施される。
【0054】
一部の実施形態では、追加的工程は、生成されたクラスター内コンセンサス配列内、および/またはクラスターを超えるコンセンサス配列(例えば、第1の配列および/または第2の配列)内の、各可変アミノ酸位置についてコンセンサスアミノ酸を決定するために実施される。かかる実施形態では、一連の検査配列は、コンセンサス配列(例えば、第1のおよび/または第2の配列)に基づいて生成され、検査アミノ酸を、可変アミノ酸位置に位置させる。本明細書に記載の方法において使用される検査アミノ酸は、必須または非必須アミノ酸を含むタンパク質において見出される任意の天然または非天然(例えば、非古典的)アミノ酸を包含する。例示的アミノ酸として、下の表2に提供されるアミノ酸および本明細書他所に記載されるものが挙げられる。
【0055】
【0056】
種々の実施形態では、本方法は、検査配列を分析するための分子モデリングの使用を検討する。一部の実施形態では、分子モデリングは、検査配列のそれぞれについて実施される。一部の実施形態では、分子モデリングは、分析されるインフルエンザタンパク質(すなわち、NA)の結晶構造との比較を含む。かかる結晶構造情報は、例えば、the Protein Data Bankから容易に入手可能である。一実施形態では、分子モデリングは、Rosetta(https://www.rosettacommons.org/software)または任意の他の同様の分子モデリングソフトウェアの使用を含む(例えば、Leaver-Fay et al.(2011)Meth.Enzymol.487:545~74を参照されたい)。例えば、コンセンサス配列中の可変アミノ酸位置を解明するために、Rosetta内のメトロポリス-モンテカルロシミュレートされたアニーリングプロトコールは、差異の同定された部位に存在するアミノ酸残基のすべての可能な組合せの置換を標本抽出するために使用される。次いで可能な置換は、エネルギー値に基づいてスコア化される。
【0057】
一部の実施形態では、各可変アミノ酸位置についてのコンセンサスアミノ酸は、出発値と同様のまたはそれより低い算出された総エネルギー値を有するNAポリペプチドを生じるアミノ酸(複数可)を選択することによって決定される。一部の実施形態では、各可変アミノ酸位置についてのコンセンサスアミノ酸は、負の総エネルギー値を有するNAポリペプチドを生じるアミノ酸(複数可)を選択することによって決定される。理論に束縛されることを望むわけではないが、負の総エネルギースコアを有するNAポリペプチドは、安定なタンパク質にさらにフォールドし易い一方で、正のエネルギースコアを有するポリペプチドは、あまり正しくフォールドしないと考えられる。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のNAポリペプチドは、それらの負の総エネルギースコアおよび/または参照構造との比較に従って生成され、順位付けられる。
【0058】
種々の実施形態では、本方法は種々の位置にコンセンサスアミノ酸を含むNAポリペプチド配列を生成する。本発明の方法を使用して生成された例示的NAポリペプチドは表1に示されている。表1の配列表は、米国仮特許出願第62/649,002号の表1の配列表と同一である。
【0059】
ノイラミニダーゼ(NA)ポリペプチドおよびタンパク質
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の方法を用いて生成されたNAポリペプチドを提供する。一部の実施形態では、NAポリペプチドは、コンセンサスアミノ酸配列を含み、複数のインフルエンザ株(例えば、1つまたはそれ以上のパンデミック、季節性、および/またはブタインフルエンザ株)、タイプ(例えば、1つまたはそれ以上のインフルエンザA型、B型、および/またはC型ウイルス)、および/またはサブタイプ(例えば、1つまたはそれ以上のH1N1、H3N2、またはH5N1)に対する免疫応答を誘発することができる。したがって、一部の実施形態では、NAポリペプチドは、インフルエンザに対する改良された防御免疫を提供するために、抗原としてワクチン組成物中に取り込まれ得る。
【0060】
一部の実施形態では、本発明は、配列番号1、2、もしくは3から選択されるアミノ酸配列を含むNAポリペプチド、またはこれらの断片を提供する。例えば、一部の実施形態では、NAポリペプチドは、配列番号1、2、または3のアミノ酸75~469を含む。一部の実施形態では、NAポリペプチドは、配列番号1、2、もしくは3と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはその断片(例えば、配列番号1、2、もしくは3のアミノ酸75~469を含む断片)を含む。
【0061】
一部の実施形態では、本発明は、配列番号7~18から選択されるアミノ酸配列を含むNAポリペプチド、またはその断片を提供する。一部の実施形態では、NAポリペプチドは、配列番号7~18と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはその断片を含む。
【0062】
一部の実施形態では、本発明は、配列番号1、2、もしくは3、または配列番号7~18のいずれか1つに対して1つまたはそれ以上のアミノ酸突然変異を有するNAポリペプチド、またはその断片を提供する。例えば、NAポリペプチドは、配列番号1、2、もしくは3、または配列番号7~18のいずれか1つに対してアミノ酸突然変異、またはこれらの断片に対して約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、もしくは約50個のアミノ酸突然変異、またはその断片を含むことができる。
【0063】
一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のアミノ酸突然変異は、置換、挿入、欠失、および切断から独立して選択される。一部の実施形態では、アミノ酸突然変異は、アミノ酸置換であり、保存的および/または非保存的置換を含み得る。
【0064】
保存的置換は、例えば、関連するアミノ酸残基の極性、電荷、サイズ、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質における類似性に基づいて行われる。例えば、20個の天然に存在するアミノ酸は、以下の6つの標準なアミノ酸群に群分けすることができる:(1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;および(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。本明細書で使用される場合、「保存的置換」は、上記で示された6つの標準的なアミノ酸群と同じ群内にリストされた別のアミノ酸によるアミノ酸の交換として定義される。例えば、GluによるAspの交換は、改変されたポリペプチドに1つの負電荷を保持する。さらに、α-ヘリックスを破壊する能力に基づいて、グリシンおよびプロリンが互いに置換される。本明細書で使用される場合、「非保存的置換」は、上記で示された6つの標準アミノ酸群の異なる群にリストされた別のアミノ酸によるアミノ酸の交換として定義される。
【0065】
種々の実施形態では、置換はまた、非古典的アミノ酸(例えば、セレノシステイン、ピロリジン、N-ホルミルメチオニンβ-アラニン、GABAおよびδ-アミノレブリン酸、4-アミノ安息香酸(PABA)、一般的なアミノ酸のD-異性体、2,4-ジアミノ酪酸、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、γ-Abu、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコスメ、シトルリン、ホモシトルリン、シスチン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロアミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えば、βメチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、Nα-メチルアミノ酸、および一般的なアミノ酸類似体)を含み得る。
【0066】
種々の実施形態では、本発明は、さらに、4つのNAポリペプチドを含む四量体NAタンパク質を提供する。一部の実施形態では、四量体NAタンパク質内の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または4つすべてのNAポリペプチドは、本明細書に記載のアミノ酸配列を含む。例えば、四量体NAタンパク質の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または4つ全てのNAポリペプチドは、配列番号1、2、もしくは3、または配列番号7~18のアミノ酸配列、またはその断片を含み得る。例示的な実施形態では、四量体NAタンパク質は、配列番号1、2、もしくは3のアミノ酸75~469を含む少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つNAポリペプチドを含む。一部の実施形態では、四量体NAタンパク質は、4つの同一のNAポリペプチドを含む。他の実施形態では、四量体NAタンパク質は、異なるアミノ酸配列を有する2つ以上の非同一のNAポリペプチドを含む。
【0067】
種々の実施形態では、本発明は、本発明のNAポリペプチド、またはその断片を含む融合タンパク質をさらに提供する。
【0068】
種々の実施形態では、本発明のNAポリペプチドは、四量体化配列または四量体化ドメインを含み、それは単量体NAポリペプチドの四量体NAタンパク質への集合を促進する。一部の実施形態では、NAポリペプチドは、天然のインフルエンザ分離株に見られるNAポリペプチドに存在する四量体化配列または四量体化ドメインを含む。例えば、NAポリペプチドは、四量体形成を促進することが公知である天然のインフルエンザ分離株に見られるNAポリペプチドのステム領域配列を含み得る。他の実施形態では、NAポリペプチドは、野生型NAポリペプチドには天然に存在しない、操作されたもしくは異種の四量体化配列または四量体化ドメインを含み得る。例えば、ある実施形態では、NAポリペプチドは、テトラブラキオンまたは血管拡張剤刺激リンタンパク質(VASP)に由来する四量体化ドメインを含むように操作される。別の実施形態では、NAポリペプチドは、GCN4ロイシンジッパードメインを含み得る。例示的な実施形態では、本発明のNAポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含む四量体化ドメインを含むように操作される。四量体化を促進することができる任意の配列またはドメインを本発明に利用することができる。
【0069】
一部の実施形態では、NAポリペプチドは、分泌シグナルペプチドを含み得る。一実施形態では、分泌シグナルペプチドの取り込みは、NAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質が宿主細胞から分泌されることを可能にする。別の実施形態では、分泌シグナルペプチドの取り込みは、タンパク質の発現および生成に使用される宿主細胞(例えば、宿主細胞の上清)からのNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質の精製を可能にする。
【0070】
当該技術分野において公知である任意の分泌シグナルペプチドを本発明のNAポリペプチドに組み込むことができると期待される。一部の実施形態では、分泌シグナルペプチドは、タンパク質の発現および生成に使用される宿主細胞に特異的である。例示的な分泌シグナルペプチドには、限定されないが、CD33シグナルペプチド配列、ヒトIgGカッパ軽鎖シグナルペプチド(ヒト細胞における発現のため)、ミツバチメリチンシグナル配列(昆虫細胞における発現のため)、および酵母アルファ-因子シグナル配列(酵母細胞における発現のため)が含まれる。例示的な実施形態では、分泌シグナル配列は、CD5分泌シグナルペプチドである。一実施形態では、CD5分泌シグナルペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を含む。
【0071】
一部の実施形態では、NAポリペプチドは、リンカー配列などのさらなる機能的配列を含む。一部の実施形態では、リンカーは、ポリペプチドである。一部の実施形態では、リンカーは、アミノ酸の長さが約100個未満である。例えば、リンカーは、アミノ酸の長さが約100個未満、約90個、約80個、約70個、約60個、約50個、約40個、約30個、約20個、約19個、約18個、約17個、約16個、約15個、約14個、約13個、約12個、約11個、約10個、約9個、約8個、約7個、約6個、約5個、約4個、約3個、または約2個であり得る。
【0072】
種々の実施形態では、リンカーは、グリシンおよび/またはセリン残基(例えば、約30%、もしくは約40%、もしくは約50%、もしくは約60%、もしくは約70%、もしくは約80%、もしくは約90%、もしくは約95%、もしくは約97%のグリシンおよびセリン)で実質的に構成される。例えば、一部の実施形態では、リンカーは(Gly4Ser)nであり、nは約1~約8、例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8(配列番号21)である。ある実施形態では、リンカー配列は、GGSGGSGGGGSGGGGS(配列番号22)である。さらなる例示的リンカーには、限定されないが、配列LE、GGGGS(配列番号23)、(GGGGS)n(n=1~4)(配列番号24)、(Gly)8(配列番号25)、(Gly)6(配列番号26)、(EAAAK)n(n=1~3)(配列番号27)、A(EAAAK)nA(n=2~5)(配列番号28)、AEAAAKEAAAKA(配列番号29)、A(EAAAK)4ALEA(EAAAK)4A(配列番号30)、PAPAP(配列番号31)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号32)、EGKSSGSGSESKST(配列番号33)、GSAGSAAGSGEF(配列番号34)、および(XP)n、(Xは、任意のアミノ酸、例えば、Ala、Lys、またはGluを示す)を有するリンカーが含まれる。例示的な実施形態では、リンカーは、GGSまたはGSGである。別の例示的な実施形態では、リンカーはSAである。
【0073】
一部の実施形態では、NAポリペプチドは、機能的タグ配列(例えば、タンパク質精製を促進するため)をさらに含む。限定されないが、NAポリペプチドは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン(例えば、6×His(配列番号35)))、プロテインA、ストレプトアビジン/ビオチンベースのタグ、ならびに当該技術分野において公知である任意の他のタンパク質タグなどのアフィニティータグを含み得る。
【0074】
一部の実施形態では、NAポリペプチドは、トロンビン切断部位、トリプシン切断部位、エンテロキナーゼ切断部位、または当該技術分野において公知である任意の他のプロテアーゼ切断部位などのプロテアーゼ切断部位をさらに含む。
【0075】
種々の実施形態では、本明細書に記載のNAポリペプチド(または四量体NAタンパク質)は、異なる配列を有するある範囲のインフルエンザウイルスに対する改良された防御免疫(例えば、広範な反応性の免疫応答)を提供する。種々の実施形態では、本明細書に記載のNAポリペプチド(または四量体NAタンパク質)は、複数のインフルエンザ株の間で保存されたエピトープに対する増強された免疫応答を誘発する。種々の実施形態では、本明細書に記載のNAポリペプチド(または四量体NAタンパク質)は、抗原シフトまたは抗原ドリフトを示す異なるインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導する。
【0076】
一部の実施形態では、本明細書に記載のNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質は、野生型または天然に存在するインフルエンザウイルス株由来のNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質と比較して、異なるインフルエンザ株/タイプ/サブタイプにわたってより大きな免疫原性を示す。一部の実施形態では、本明細書に記載のNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質は、野生型または天然に存在するインフルエンザウイルス株由来のNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質と比較してより大きな安定性を有する。
【0077】
核酸の構築および発現
種々の実施形態では、組換えNAポリペプチドを産生する方法が提供される。本方法は、本明細書に記載のクラスターベースコンセンサス法を用いて、コンセンサスアミノ酸配列を含むNAポリペプチドを生成し、宿主細胞を、NAポリペプチドをコードするベクターでトランスフェクトすることによってNAポリペプチドを生成することを含む。種々の実施形態では、組換え四量体NAタンパク質を生成する方法もまた提供される。
【0078】
一部の実施形態では、本明細書に記載のNAポリペプチドは、当該技術分野において公知である分子生物学的方法を使用して、核酸から産生される。例えば、核酸分子は、適切な宿主細胞に導入された場合にNAポリペプチドを発現することができるベクターに挿入される。適切な宿主細胞には、限定されないが、細菌、酵母、昆虫、および哺乳動物細胞、ならびに本明細書の他の箇所に記載される任意の他の細胞型が含まれる。ベクターへのDNA断片の挿入のための当業者に公知である任意の方法を使用して、転写/翻訳制御シグナルの制御下でNAポリペプチドをコードする発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、インビトロの組換えDNAおよび合成クローニング技術、ならびにインビボの組換え技術を含み得る(Sambrookら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory; Current Protocols in Molecular Biology、Eds.Ausubelら、Greene Publ.Assoc.、Wiley-Interscience、NY)を参照されたい)。
【0079】
一部の実施形態では、本発明は、NAポリペプチド、またはNAポリペプチドの特徴的もしくは生物学的に活性な部分をコードする核酸を提供する。一部の実施形態では、本発明は、NAポリペプチド、またはNAポリペプチドの特徴的もしくは生物学的に活性な部分をコードする核酸に相補的な核酸を提供する。他の実施形態では、本発明は、四量体NAタンパク質をコードする核酸をさらに提供する。
【0080】
一部の実施形態では、本発明は、NAポリペプチド、またはNAポリペプチドの特徴的もしくは生物学的に活性な部分をコードする核酸にハイブリダイズする核酸分子を提供する。このような核酸は、例えば、プライマーとしてまたはプローブとして用いることができる。例示的な実施形態では、このような核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)におけるプライマーとして、ハイブリダイゼーション(インサイチュのハイブリダイゼーションを含む)のためのプローブとして、および/または逆転写PCR(RT-PCR)のためのプライマーとして使用することができる。
【0081】
一部の実施形態では、核酸は、DNAまたはRNAであり得、一本鎖または二本鎖であり得る。一部の実施形態では、本発明による核酸は、1つまたはそれ以上の非天然ヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態では、本発明による核酸は、天然ヌクレオチドのみを含む。
【0082】
本発明による核酸分子の発現は、組換えDNA分子で形質転換された宿主において分子が発現されるように、第2の核酸配列によって調節される。例えば、本発明の核酸分子の発現は、当該技術分野において公知であるプロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントによって制御することができる。
【0083】
一部の実施形態では、核酸分子を含む発現ベクターは、核酸構築物によってコードされるNAポリペプチドまたはタンパク質の生成を可能にするために、適切な宿主細胞に形質転換される。次に、発現ベクターで形質転換された宿主細胞を、本発明のNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質の生成を可能にする条件下で増殖させ、続いて、ポリペプチドまたはタンパク質を回収する。本発明で用いることができる例示的な細胞型には、限定されないが、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、植物細胞、および細菌細胞が含まれる。昆虫細胞には、限定されないが、SF細胞、毛虫細胞、蝶細胞、蛾細胞、SF9細胞、SF21細胞、ショウジョウバエ細胞、S2細胞、ツマジロクサヨトウ(fall armyworm)細胞、キャベツルーパー細胞、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞、およびイラクサギンウワバ(Trichoplasia ni)細胞が含まれる。適切な哺乳動物細胞には、限定されないが、Madin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞、VERO細胞、EBx細胞、ニワトリ胚細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、サル腎臓細胞、ヒト胚性腎臓細胞、HEK293T細胞、NSO細胞、骨髄腫細胞、ハイブリドーマ細胞、初代アデノイド細胞株、初代気管支上皮細胞、形質転換ヒト細胞株、およびPer.C6細胞が含まれる。他の有用な細胞または細胞系には、限定されないが、植物ベースのシステム(例えば、タバコ植物;例えば、Jul-Larsen,A.ら、Hum Vaccin Immunother.、8巻(5号):653~61頁、2012年を参照されたい)、酵母(例えば、Athmaram,T.N.ら、Virol J.、8巻:524頁、2011年を参照されたい)、および真菌(例えば、Allgaier,S.ら、Biologicals、37巻:128~32頁、2009年を参照されたい)が含まれる。細菌ベースの発現系もまた、本発明に包含される(例えば、Davis,A.R.ら、Gene、21巻:273~284頁、1983年を参照されたい)。本発明は、さらに、バキュロウイルスシステムの使用を意図する。
【0084】
本発明のNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質は、当該技術分野において公知である任意の技術によって精製することができる。例えば、NAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質は、可溶性画分においてまたは封入体として細胞から回収することができ、そこから、例えば、塩酸グアニジニウムおよび透析によってこれらを抽出することができる。NAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質をさらに精製するために、従来のイオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過、またはこれらの組み合わせを使用することができる。一部の実施形態では、NAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質はまた、真核細胞または原核細胞からの分泌後に、馴化培地から回収することができる。このような実施形態では、精製された組換えNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質は、細胞がポリペプチドまたはタンパク質を培養上清中に分泌するのに十分な条件下で宿主細胞を培養し、上清からポリペプチドまたはタンパク質を精製することによって産生される。
【0085】
一部の実施形態では、組換えNAポリペプチドは、モノマーとして宿主細胞から精製される。他の実施形態では、組換えNAポリペプチドは、四量体として宿主細胞から精製される。
【0086】
NAポリペプチドおよびタンパク質の評価
一部の実施形態では、本発明は、(i)1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘発するかどうか、(ii)1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルスに対する防御的な免疫応答を提供するかどうか、または(iii)対象への投与後に1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルスに対する抗体を産生するかどうかを決定するために、本明細書に記載の方法を用いて産生されたNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質を評価することを意図する。このような機能を試験するための種々の方法は、当該技術分野において周知であり、利用することができる。
【0087】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法に従って生成されたNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質は、所望の発現および立体構造について評価される。スクリーニング法は当該技術分野において周知であり、無細胞、細胞ベース、および動物アッセイを含む。インビトロアッセイには、検出可能な標識の使用を伴う固体状態または可溶性標的分子検出法が含まれる。このようなアッセイにおいて、NAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質は、標的分子(例えば、免疫グロブリン)への結合を介して同定される。一部の実施形態では、本明細書に記載のNAポリペプチドまたはタンパク質は、所望の発現および立体構造特性に基づいて選択される。
【0088】
本発明は、さらに、動物宿主においてNAポリペプチドを試験する方法を提供する。本明細書で使用される場合、「動物宿主」は、インフルエンザ研究に適した任意の動物モデルを含む。例えば、動物宿主には、哺乳動物宿主が含まれ、限定されないが、霊長類、フェレット、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ウサギ、およびげっ歯類、例えば、マウス、ハムスター、およびラットを含む。一部の実施形態では、NAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質の投与前にまたはそれと同時に、動物宿主にインフルエンザウイルスを接種し、動物宿主をインフルエンザウイルスに感染させ、または代わりに動物宿主をインフルエンザウイルスに曝露する。あるいは、動物宿主は、NAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質をコードするDNA分子とともに投与される。鼻腔内経路を含む、当該技術分野において公知である任意の方法により、動物宿主にインフルエンザウイルスを接種し、動物宿主をインフルエンザウイルスに感染させ、または代わりに動物宿主をインフルエンザウイルスに曝露する。
【0089】
一部の実施形態では、動物宿主は、NAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質(場合により、組成物中の成分として)の投与前に、ウイルス曝露または感染に対して未感作である。未感作および/または接種された動物は、種々の研究のいずれにも使用することができる。例えば、このような動物モデルは、当該技術分野において公知であるように、ウイルス伝播の研究に使用することができる。例えば、接種された動物(例えば、フェレット)から未感作動物へのウイルスインフルエンザの空気伝播が公知である(Tumpeyら、2007年、Science 315巻;655~59頁)。例示的なウイルス伝播研究において、NAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質を適切な動物宿主に投与して、動物宿主において広範な免疫応答を誘発する上での上記NAポリペプチドまたはタンパク質の有効性を決定することができる。動物宿主における研究から収集されたこのような情報を使用して、ヒト宿主において免疫応答を誘発するためのNAポリペプチドまたはタンパク質の有効性を予測することができる。
【0090】
インフルエンザウイルス様粒子(VLP)
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるように、NAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質を含むインフルエンザウイルス様粒子(VLP)を提供する。インフルエンザVLPは、一部の実施形態では、一般的に、HA、NAおよび/またはウイルス構造タンパク質(例えば、HIV gag、インフルエンザM1タンパク質)から構成される。インフルエンザVLPの生成は、当該技術分野において公知である。例えば、インフルエンザVLPは、HA、NAおよび/もしくはHIV gagまたはM1タンパク質をコードするプラスミドで宿主細胞をトランスフェクションすることによって産生される。例示的な実施形態では、適切な宿主細胞は、ヒト細胞(例えば、HEK293T)を含む。トランスフェクトされた細胞を適切な時間インキュベートして、タンパク質発現を可能にした後(例えば、約72時間)、VLPを細胞培養上清から単離することができる。一部の実施形態では、本明細書に開示されるインフルエンザVLPは、1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルスに対する広範な中和免疫応答を誘発するためのインフルエンザワクチンとして使用される。
【0091】
医薬組成物および投与
種々の実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるようなNAポリペプチドもしくは四量体NAタンパク質、および/または関連実体を含む医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、医薬組成物は、インフルエンザウイルスに対する防御的な免疫応答などの免疫応答を誘発することができる免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。
【0092】
例えば、一部の実施形態では、医薬組成物は、以下:(1)生弱毒化インフルエンザウイルス、例えば、複製欠損ウイルス、(2)不活化ウイルス、(3)ウイルス様粒子(VLP)、(4)本発明の組換えNAポリペプチドもしくは組換え四量体NAタンパク質、またはその特徴的もしくは生物学的活性部分、(5)本発明のNAポリペプチドもしくは四量体NAタンパク質をコードする核酸、またはその特徴的もしくは生物学的活性部分、(6)本発明のNAポリペプチドもしくは四量体NAタンパク質をコードするDNAベクター、またはその特徴的もしくは生物学的活性部分、ならびに/または(7)発現系、例えば、本発明のNAポリペプチドもしくは四量体NAタンパク質を発現する細胞のうちの1つまたはそれ以上を含み得る。
【0093】
一部の実施形態では、本発明は、本発明のNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質に関連する抗体または他の薬剤を含む医薬組成物を提供する。ある実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載のNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質に結合および/または競合する抗体を含む。あるいは、抗体は、本明細書に記載のNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質を含むウイルス粒子を認識することができる。別の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載のNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質と相互作用するかまたは競合する小分子を含む。さらなる実施形態では、医薬組成物は、遺伝子サイレンシングに用いることができる、NAポリペプチド配列に相補的な配列を有する核酸などの核酸を含む。
【0094】
一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、免疫応答を増強するために、単独でまたは1つまたはそれ以上の薬剤と組み合わせて投与される。例えば、一部の実施形態では、医薬組成物は、アジュバントと組み合わせて投与される。本発明は、任意の公知のアジュバントの使用を意図する。例示的アジュバントには、限定されないが、フロイント不完全アジュバントまたはフロイント完全アジュバントが含まれる。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のサイトカイン(例えば、IL-2、IL-6、IL-12、RANTES、GM-CSF、TNF-α、またはIFN-γ)、1つまたはそれ以上の増殖因子(例えば、GM-CSFまたはG-CSF)、1つまたはそれ以上の分子、例えば、OX-40Lもしくは41 BBL、またはこれらの組み合わせが、生物学的アジュバントとして使用される。一部の実施形態では、医薬組成物は、アジュバントとしてアルミニウム塩およびモノホスホリルリピドAを含み得る。代替的にまたは追加的に、ヒトワクチン、例えば、MF59(Chiron Corp.)、CPG 7909(Cooperら(2004年)Vaccine、22巻:3136頁)、およびサポニン、例えば、QS21(Ghochikyanら(2006年)Vaccine、24巻:2275頁)に使用されるアジュバントを用いることができる。アジュバントのさらなる例としては、限定されないが、ポリ[ジ(カルボキシルアトフェノキシ)ホスファゼン](PCCP;Payneら(1998年)Vaccine、16巻:92頁)、ブロック共重合体P1205(CRL1005;Katzら(2000年)Vaccine、18巻:2177頁)、およびポリメチルメタクリレート(PMMA;Kreuterら(1981年)J.Pharm.Sci.、70巻:367頁)が挙げられる。さらなるアジュバントは、本明細書の他の箇所に記載される。
【0095】
一部の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含む。本明細書で使用される場合、用語「担体」とは、医薬組成物とともに投与する希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。例示的な実施形態では、担体には、無菌液体、例えば、水および油が含まれ得、石油、動物、植物、または合成起源の油、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などが挙げられる。一部の実施形態では、担体は、1つまたはそれ以上の固体成分であるかまたはそれを含む。また、薬学的に許容される担体には、限定されないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、およびこれらの組み合わせが含まれる。本明細書で使用される場合、賦形剤は、医薬組成物に含まれる任意の非治療剤であり、例えば、所望の稠度もしくは安定化効果を提供または寄与し得る。適切な医薬賦形剤には、限定されないが、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールが含まれる。種々の実施形態では、医薬組成物は無菌である。
【0096】
一部の実施形態では、医薬組成物は、少量の湿潤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有する。一部の実施形態では、医薬組成物は、安定剤、緩衝剤、または保存剤などの種々の添加剤のいずれかを含み得る。さらに、補助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤、および着色剤を含むことができる。
【0097】
種々の実施形態では、医薬組成物は、任意の所望の投与様式に適合するように製剤化される。例えば、医薬組成物は、溶液、懸濁液(複数)、エマルジョン、液滴、錠剤、丸剤、ペレット、カプセル、液体を含有するカプセル、ゼラチンカプセル、粉末、徐放性製剤、坐薬、エマルジョン(複数)、エアロゾル、スプレー、懸濁液、凍結乾燥粉末、凍結懸濁液、乾燥粉末、または使用に適した任意の他の形態をとることができる。医薬剤の製剤化および製造における一般的な考察は、例えば、参照により本明細書に組み入れられるRemington’s Pharmaceutical Sciences、第19版、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1995年に見出される。
【0098】
医薬組成物は、任意の投与経路を介して投与することができる。投与経路には、例えば、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、粘膜内、硬膜外、舌下、鼻腔内、脳内、膣内、経皮、直腸、気管内点滴、気管支点滴、吸入、または局所的が含まれる。投与は、局所または全身であり得る。一部の実施形態では、投与は、経口的に行われる。別の実施形態では、投与は非経口注射による。場合によっては、投与は、本明細書に記載のNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質の血流中への放出をもたらす。投与様式は、医師の裁量に任せることができる。
【0099】
ある実施形態では、医薬組成物は、経口投与に適合される。経口送達のための組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、顆粒、粉末、エマルジョン、カプセル、シロップ、またはエリキシルの形態であり得る。
【0100】
別の実施形態では、医薬組成物は、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、および皮下)に適している。このような組成物は、例えば、溶液、懸濁液、分散液、エマルジョンなどとして製剤化することができる。これらはまた、使用直前に無菌注射可能媒体に溶解または懸濁することができる無菌固体組成物(例えば、凍結乾燥組成物)の形態で製造することができる。例えば、非経口投与は、注射によって達成することができる。このような実施形態では、注射剤は、慣用の形態、すなわち、液体溶液または懸濁液、注射前の液体の溶液または懸濁液に適した固体形態、またはエマルジョンとして調製される。一部の実施形態では、注射溶液および懸濁液は、無菌粉末、凍結乾燥粉末、または顆粒から調製される。
【0101】
さらなる実施形態では、医薬組成物は、吸入による送達(例えば、肺および呼吸器系への直接送達)のために製剤化される。例えば、組成物は、鼻スプレーまたは任意の他の公知のエアロゾル製剤の形態をとることができる。一部の実施形態では、吸入またはエアロゾル送達のための調製物は、複数の粒子を含む。一部の実施形態では、このような調製物は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、または約13ミクロンの平均粒径を有することができる。一部の実施形態では、吸入またはエアロゾル送達のための調製物は、乾燥粉末として製剤化される。一部の実施形態では、吸入またはエアロゾル送達のための調製物は、例えば、湿潤剤の含有を介して、湿潤粉末として製剤化される。一部の実施形態では、湿潤剤は、水、食塩水、または生理的pHの他の液体からなる群から選択される。
【0102】
一部の実施形態では、本発明による医薬組成物は、液滴として鼻腔または口腔に投与される。一部の実施形態では、用量は、複数の液滴(例えば、1~100、1~50、1~20、1~10、1~5など)を含み得る。
【0103】
一部の実施形態では、医薬組成物は、脂質小胞内にカプセル化され、トラップされ、もしくは結合されるNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質、生物学的利用能および/もしくは生体適合性および/もしくは生分解性マトリックス、または他の微粒子を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、NAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質を示すナノ粒子を含む。一部の実施形態では、ナノ粒子は、フェリチンナノ粒子である(例えば、米国特許公開第2014/0072958号を参照されたい)。
【0104】
本発明の医薬組成物は、所望の結果を達成するのに適切な任意の用量で投与することができる。一部の実施形態では、所望の結果は、1つまたはそれ以上インフルエンザ株に対する長期持続性適応免疫応答の誘導である。一部の実施形態では、所望の結果は、インフルエンザ感染の1つまたはそれ以上の症状の強度、重症度、頻度の減少、および/または発症の遅延である。一部の実施形態では、所望の結果は、インフルエンザウイルス感染の阻害または予防である。必要とされる用量は、対象の種、年齢、体重、および一般的な状態、予防または治療される感染の重症度、使用される特定の組成物、およびその投与様式に依存して、対象によって変化する。
【0105】
一部の実施形態では、本発明による医薬組成物は、単回または複数回用量で投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、異なる日に複数回用量で投与される(例えば、プライム-ブーストワクチン接種戦略)。一部の実施形態では、医薬組成物は、対象が治療的投薬の期間中に介在する治療的投薬より少ない期間を経ないように、連続投薬レジメンに従って投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、対象が治療的投薬の2つの期間中に介在する治療的投薬より少ない、少なくとも1つの期間を受けるように、間欠的投薬レジメンに従って投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、ブーストレジメンの一部として投与される。
【0106】
種々の実施形態では、医薬組成物は、1つまたはそれ以上のさらなる治療剤と同時に投与される。同時投与は、これらの投与のタイミングが、追加の治療剤およびNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質の薬理活性が時間的に重なり合い、それによって組み合わされた治療効果を発揮するようなものである場合、同時に投与される治療剤を必要としない。一般的に、各薬剤は、その薬剤について決定された用量および時間スケジュールで投与される。
【0107】
一部の実施形態では、医薬組成物は、他の慣用的インフルエンザワクチンと同時に投与される。例えば、本発明の医薬組成物は、季節性インフルエンザワクチンと同時に投与することができる。一部の実施形態では、季節性インフルエンザワクチンは、一価、二価、三価、または四価であり得る。
【0108】
一部の実施形態では、本発明は、薬剤と併用して、それらの生物学的利用能を改善し、これらの代謝を減少もしくは修飾し、これらの排出を阻害し、および/または体内でのこれらの分布を修飾し得る医薬組成物の送達を包含する。一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、1つまたはそれ以上の抗ウイルス剤(例えば、オセルタミビル[TAMIFLU(登録商標)]またはザナマビル[RELEZA(登録商標)]など)と併用して投与される。
【0109】
NAポリペプチドに対する抗体
本発明は、本発明に従って生成されたNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質に対する抗体を提供する。これらは、モノクローナルまたはポリクローナルであり得、当業者に公知である種々の技術(例えば、参照により本明細書に組み込まれるHarlowおよびLane、1988年、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratoryを参照されたい)のいずれかによって調製される。例えば、抗体は、モノクローナル抗体の生成を含む細胞培養技術によって、または抗体の生成を可能にするために、適切な細菌もしくは哺乳動物の宿主細胞への抗体遺伝子のトランスフェクションを介して産生される。
【0110】
一部の実施形態では、抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖で構成される古典的な抗体であり得る。他の実施形態では、抗体は、抗体誘導体であり得る。例えば、一部の実施形態では、抗体は、単一ドメイン抗体、組換え重鎖のみの抗体(VHH)、一本鎖抗体(scFv)、サメ重鎖のみの抗体(VNAR)、マイクロプロテイン(システインノットプロテイン、ノッティン)、DARPin、テトラネクチン、アフィボディ、トランスボディ、アンチカリン、アドネクチン、アフィリン、マイクロボディ、ペプチドアプタマー、オルターラーゼ、プラスチック抗体、フィロマー、ストラドボディ、マキシボディ、エビボディ、フィノマー、アルマジロリピートタンパク質、クニッツドメイン、アビマー、アトリマー、プロボディ、イムノボディ、トリオマブ、トロイボディ、ペプボディ;ワクシボディ、ユニボディ;アフィマー、デュオボディ、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、ペプチド模倣分子、もしくは合成分子、または当該技術分野において公知である任意の他の抗体フォーマットであり得る。
【0111】
免疫化およびインフルエンザウイルスからの防御方法
別の態様では、本発明は、対象における1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルスに対して対象を免疫化する方法を提供する。本発明は、さらに、対象における1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘発する方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、本明細書に記載の有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本方法は、本明細書に記載の有効量の組換えNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本方法は、本明細書に記載の有効量のNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質を含むVLPを対象に投与することを含む。
【0112】
種々の実施形態では、本明細書に提供される免疫化方法は、1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルス内の複数のエピトープに対する広範な防御的な免疫応答を誘発する。種々の実施形態では、本明細書に提供される免疫化方法は、1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルスに対する広範な中和免疫応答を誘発する。一部の実施形態では、免疫応答は、抗体応答を含む。したがって、種々の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、異なるタイプのインフルエンザウイルスに対して広範な交差防御を与えることができる。一部の実施形態では、医薬組成物は、トリ、ブタ、季節性および/またはパンデミックインフルエンザウイルスに対する交差防御を与える。一部の実施形態では、医薬組成物は、1つまたはそれ以上インフルエンザA、B、またはCサブタイプに対する交差防御を与える。一部の実施形態では、医薬組成物は、インフルエンザA H1サブタイプウイルス(例えば、H1N1)、インフルエンザA H3サブタイプウイルス(例えば、H3N2)、および/またはインフルエンザA H5サブタイプウイルス(例えば、H5N1)の複数の株に対して交差防御を与える。
【0113】
一部の実施形態では、本発明の方法は、1つまたはそれ以上の季節性インフルエンザ株に対する改善された免疫応答を誘発することができる。例示的な季節性株には、限定されないが、A/Puerto Rico/8/1934、A/Fort Monmouth/1/1947、A/Chile/1/1983、A/Texas/36/1991、A/Singapore/6/1986、A/Beijing/32/1992、A/New Caledonia/20/1999、A/Solomon Islands/03/2006、およびA/Brisbane/59/2007が含まれる。一部の実施形態では、本発明の方法は、1つまたはそれ以上のパンデミックインフルエンザ株に対する改善された免疫応答を誘発することができる。例示的なパンデミック株としては、限定されないが、A/California/07/2009、A/California/04/2009、A/Belgium/145/2009、A/South Carolina/01/1918、およびA/New Jersey/1976が挙げられる。パンデミックのサブタイプには、特にH5N1、H2N2、H9N2、H7N7、H7N3、H7N9、H10N7のサブタイプが含まれる。一部の実施形態では、本発明の方法は、1つまたはそれ以上のブタインフルエンザ株に対する改善された免疫応答を誘発することができる。例示的なブタ株としては、限定されないが、A/New Jersey/1976分離株およびA/California/07/2009が挙げられる。追加のインフルエンザパンデミック、季節性、および/またはブタ株は、当該技術分野において公知である。
【0114】
種々の実施形態では、本方法は、ある範囲の抗原的に異なるインフルエンザ株にわたって免疫防御を拡大することができる。例えば、本発明の方法は、抗原シフトから生じる新たなパンデミック株に対する免疫応答を誘発することができる(すなわち、これらが、延長されたタイムラインにわたって遺伝的配列空間において遠く離れている抗原的に異なる株をカバーするようにする)。本発明の医薬組成物が、抗原的に浮遊した蔓延している季節性株に対する免疫応答(例えば、改良された季節応答)を誘発することによって継続して有効であるように、比較的短い期間にわたって生じる遺伝的変化に対処するために、本発明の方法を適用させることもできる。したがって、種々の実施形態では、本方法は、(1)1つまたはそれ以上の季節性株に対するカバレッジ(すなわち、中和免疫応答を誘発する能力)を拡大するため;(2)1つまたはそれ以上のパンデミック株に対するカバレッジを拡大するため(抗原ドリフトに対処するため);および(3)任意の他の抗原的に異なるインフルエンザ株に対するカバレッジを拡大するために使用される。本方法は、ミスマッチ株を含むインフルエンザウイルスに対して、広範な、長期間持続する(例えば、多季節)防御を提供することができると期待される。
【0115】
一部の実施形態では、本発明は、本発明の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することによって、インフルエンザ感染を予防または治療する方法を提供する。一部の実施形態では、対象は、インフルエンザ感染に罹患しているかまたはそれに感受性である。一部の実施形態では、対象がインフルエンザ感染に一般的に関連する1つまたはそれ以上の症状を示す場合、対象はインフルエンザ感染に罹患していると考えられる。一部の実施形態では、対象は、インフルエンザウイルスに曝露されたことが知られているかまたは曝露されたと思われる。一部の実施形態では、対象がインフルエンザウイルスに曝露されたことが知られているかまたは曝露されたと思われる場合、対象はインフルエンザ感染に感受性であると考えられる。一部の実施形態では、対象が、インフルエンザウイルスに感染したことが知られているかもしくはそれが疑われる他の個人と接触していた場合、および/または対象が、インフルエンザ感染が知られているもしくは流行していると考えられる場所にいるかもしくはそこにいた場合、インフルエンザウイルスに曝露されたことが知られているか、または曝露されたと思われる。
【0116】
種々の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、インフルエンザ感染の1つまたはそれ以上の症状の発症前または後に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、予防として投与される。このような実施形態では、本発明の方法は、インフルエンザウイルス感染から対象を予防または防御するのに有効である。一部の実施形態では、本発明の医薬組成物は、季節性および/もしくはパンデミックインフルエンザワクチンの成分として、または長期にわたる(多季節)防御を付与することを意図したインフルエンザワクチン接種レジメンの一部として使用される。一部の実施形態では、本発明の医薬組成物は、インフルエンザ感染の症状を治療するために使用される。
【0117】
一部の実施形態では、インフルエンザ感染に罹患しているかまたは感受性である対象は、本発明による医薬組成物の投与前、投与中、または投与後に、本発明のNAポリペプチドまたは四量体NAタンパク質に対する抗体について試験される。一部の実施形態では、このような抗体を有する対象は、本発明の医薬組成物を投与されない。一部の実施形態では、医薬組成物の適切な用量は、このような抗体の検出(またはその欠如)に基づいて選択される。
【0118】
種々の実施形態では、対象は、動物界の任意のメンバーである。一部の実施形態では、対象は、非ヒト動物である。一部の実施形態では、対象は、哺乳動物、トリ(例えば、ニワトリまたはトリ)、爬虫類、両生類、魚類、昆虫、および/または線虫である。特定の実施形態では、非ヒト対象は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、および/またはブタ)である。一部の実施形態では、対象は、トランスジェニック動物、遺伝的に操作された動物、および/またはクローンである。
【0119】
一部の実施形態では、対象は、ヒトである。一部の実施形態では、対象は、成人、青年、または乳児である。一部の実施形態では、ヒト対象は、6カ月未満の年齢である。一部の実施形態では、ヒト対象は、6カ月以上の年齢であり、6カ月齢から35カ月の年齢であり、36カ月の年齢から8歳であり、または9歳以上である。一部の実施形態では、ヒト対象は、55歳以上の高齢者、例えば、60歳以上、または65歳以上である。また、本発明は、医薬組成物の投与および/または子宮内での処置法の性能も意図している。
【0120】
この説明および例示的な実施形態は、限定的であるものとして解釈されるべきではない。本明細書および添付の特許請求の範囲の目的で、特に断らない限り、明細書および特許請求の範囲において使用される量、パーセンテージ、または比率を表す全ての数字、および他の数値は、全ての場合において、これらがまだそのように修飾されていない範囲で、用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、別段の指示がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、報告された有効桁数に照らし、通常の丸め技法を適用して、少なくとも解釈されるべきである。
【0121】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」および「the」、ならびに任意の単語の任意の単数形の使用は、明示的であり、明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。本明細書で使用される場合、用語「含む」およびその文法的変形は、リスト中の項目の記載が、リスト中の項目に置換または追加される他の類似の項目の除外にならないように、非限定的であることが意図される。
【0122】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、より十分に理解される。本明細書に含まれる全ての文献の引用は、参照により組み入れられる。
【実施例】
【0123】
以下の実施例は、ある特定の開示された実施形態を説明するために提供されるのであって、いかなる形態においても本開示の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。本明細書において使用される場合、CBC NAは、本明細書において説明されるクラスターベースコンセンサス(CBC)アプローチを使用して設計されたNAポリペプチドまたはタンパク質を意味する。
【実施例1】
【0124】
組換えインフルエンザNAポリペプチドを設計するためのクラスターベースのコンセンサスアプローチ
クラスターベースコンセンサス(CBC)アプローチを使用して、組換えインフルエンザNAポリペプチドを生成させた。第一段階として、1918年から2011年までのインフルエンザA型ノイラミニダーゼ(NA)タンパク質配列(サブタイプH1N1)を、全米バイオテクノロジー情報センターのInfluenza Virus Resourceからダウンロードした(Baoら. (2008) J. Virol. 82, 596~601を参照されたい)。詳細には、コンセンサスアミノ酸配列の分析および生成のために、1796の完全長ヒト宿主NAタンパク質配列の非冗長セットを同定した。当該非冗長配列を、 MAFFT v7(Katoh, S. (2013) Mol. Biol. Evol. 30, 772~780)を使用してアラインすることにより、多重配列アラインメントを得た。それに続いて、当該全て対全てのペアワイズ同一性マトリックスを、パイソンを使用して計算した。次いで、同様の配列のクラスターを生成させるため、配列の間における次元削減および類似性の視覚化のために、ペアワイズ同一性マトリックスに対して古典的多次元尺度構成法(MDS)を実施した。MDSから最初の二つの次元のみを維持することは、高次元同一性マトリックスにおける各個別配列の間の関係性を二次元散布図へとマッピングすることを可能にした。
【0125】
概して、同様のタンパク質配列の5つの非重複クラスターが、当該ペアワイズ同一性マトリックスの当該二次元表現から定義された(
図1A)。当該5つのクラスターは、季節性様配列(3つのクラスター:1933~1950;1948~1997;1998~2009)、ブタ様配列(1つのクラスター:1976~2008)、およびパンデミック様配列(1つのクラスター:2009~2011)を表した。
【0126】
配列クラスターの間においてコンセンサス配列を生成させるため、最初に、多数決(すなわち、各位置において最も頻繁なアミノ酸)によって、各配列クラスター内のコンセンサス配列を生成した。例として、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%以上であった場合、そのアミノ酸はコンセンサスアミノ酸と指定され、所与の位置でのアミノ酸の頻度が50%未満であった場合、そのアミノ酸は可変アミノ酸と指定される。アラインメントにおける特定の位置においてアミノ酸が変動する場合(例えば、最大頻度が<0.5である場合)、当該位置における代表的なアミノ酸の決定は、比較モデル化によって生成されたコンセンサス配列の構造モデルの分析に基づいた。
【0127】
詳細には、明確な多数決が、配列における特定の位置において単一のアミノ酸を定義することができない場合には、複数のコンセンサス配列(当該アラインメントに基づいて可能性のある各アミノ酸に対して1つ)を生成させた。明確に決定することができない位置は、任意の1つの特定の場所において生じ得る、可能性の高いアミノ酸の唯一のセットから分子モデリングによって解決されるように、「X」としてコードした。したがって、潜在的な構造上の問題を解決するため、および可変位置において好適なアミノ酸を選択するため、および計算された低いエネルギーに基づいて配列を選択するために、当該設計の重要な一面を、分子モデリングによって洗練させた。例えば、当該コンセンサス法によって生成された配列の3D構造を、Rosetta Molecular Modelingパッケージ(Leaver-Fayら. (2011) Meth. Enzymol. 487:545~74)を使用してモデル化した。負の総エネルギー値を有する分子は、安定なおよび/または機能的なタンパク質への折り畳みの高い可能性を有すると予測され、その一方で、正のエネルギー値を有するものは、適切に折り畳まれる可能性は低いと考えられた。したがって、コンセンサス生成法を使用して残基位置を明確に割り当てることがでない場合、最も低い、または最も低い値に近い、計算されたポテンシャルエネルギーを有する構造を生じるアミノ酸を選択したが、それは、それらが安定であると推定されるためであり、したがって、発現される可能性が高く、機能的であると見込まれるためである。このプロセスを使用することにより、複数の候補配列を含む、エネルギー最小化設計のセットを生成させた。場合によって、さらなる評価のために、5つのクラスターのそれぞれに対して単一の代表的配列(クラスター内典型配列)を選択した。
【0128】
抗原適用範囲の幅をさらに広げるために、複数のコンセンサス配列(すなわち、クラスター内配列)を組み合わせることにより、コンセンサス配列を定義するのと同じ手順および前に説明したような構造モデリングを使用して、クラスター間コンセンサス配列を得た。したがって、
(i)NAポリペプチドを得るためのブタ様(1976~2008)およびパンデミック様(2009~2011)配列-NA5200(配列番号1)、(ii)NA7900(配列番号2)を得るための、3つの季節性様(1933~1950、1948~1997、1998~2009)配列クラスター、およびiii)NA9100(配列番号3)を得るための5つ全ての配列クラスター、の組み合わせによって、コンセンサスアミノ酸を含むNAポリペプチド配列を生成させた(
図1Aを参照されたい)。
図1Bは、多次元尺度構成法によって決定される、他の既知のH1N1サブタイプ配列に対する配列空間におけるNA5200、NA7900、およびNA9100の位置を示している。追加の例示的NA配列は、配列番号7~18として表1に提示される。
【実施例2】
【0129】
CBC NAポリペプチドの機能的キャラクタリゼーション
CBC NAポリペプチドの機能的活性を評価するために、MUNANA(4-メチルウンベリフェロン)アッセイを実施した。詳細には、HEK293T細胞を、1μgのEndo-free MaxiprepNAプラスミド(すなわち、NA膜貫通およびステムドメインを有する完全長NA)によって、または100ngのGFPコントロールプラスミドによってトランスフェクトした。pCAXL(新しい制限部位が生成されたpCAGGに由来する)、pcDNA3、およびPEFプラスミドを使用した結果を比較した。トランスフェクトの3日後に試料を収集した。
【0130】
37℃での、200mのMNaAc(pH6.5)、2mMのCaCl2、および1%のブタノール中におけるCBC NAによる2’-(4-メチルウンベリフェリル)-α-D-N-アセチルノイラミン酸(1mM)からの4-メチルウンベリフェロンの切断によって、NA活性を決定した。4-メチルウンベリフェロンの放出を、1時間にわたって2分毎に測定した(355nmおよび460nm)。1つのノイラミニダーゼユニットを、1分間あたりの1nmolの4-メチルウンベリフェロンを放出するNAの量として定義した。
【0131】
図2Bに示されるように、最も高いNA活性は、pCAXLベクターにおいて見られ、それは、このプラスミドにおける最も高い発現レベルに一致した。NA7900は、pCAXLにおいて発現された場合、NA9100と同様の発現レベルを有したが、より低い酵素活性を有した。NA7900は発現されず、pcDNA3において発現された場合、酵素活性も有さなかった。
【0132】
次に、CBC NAポリペプチドの免疫原性を、DNA免疫化によって試験した。1セットの実験において、pCAXLベクター中にクローンした完全長のNA5200、NA7900、またはNA9100の30μgによって、BALB/Cマウスをプライミングおよび追加免疫した(3週間空けて)。空プラスミドをネガティブコントロールとして含ませた。免疫化は、筋肉内エレクトロポレーションによって実施した。詳細には、エレクトロポレーションは、100msの間隔での20msの200Vの8つの電気パルスによって、注入の部位の周りにおいて2プロング針を使用することにより実施した。
図3A~3Fは、インフルエンザH1N1ウイルス抗原(すなわち、PR8、USSR/77、Sing/86、N.Cal/99、Bris/07、またはPdm/09)のパネルに対する血清の結合活性を測定したELISAアッセイの結果を示す。結果は、CBC NAコンストラクトによって免疫したマウスからの血清が、H1N1ウイルス抗原のパネルに対して広範な交差反応性を示したことを示した。実際に、CBC NAコンストラクトによって免疫したマウスからの血清は、このELISAアッセイにおいて、野生型PR8 NAによって免疫したマウスから生成された血清よりもH1N1ウイルスへのより広範な結合性の証拠を示した。
【0133】
CBC NAポリペプチドをさらに特徴付けるため、ELLAアッセイを使用して、pCAXLベクター中へとクローンした完全長のNA5200、NA7900、またはNA9100の30μgによって免疫したマウスからの血清のNA阻害(NAI)活性を決定した(
図4A~4E)。当該ELLAアッセイを、Couzens, L.ら (2014) J. Virol. Methods 210, 7~14に記載されるように実施した。簡潔には、NA5200、NA7900、またはNA9100をコードするNAコンストラクトで免疫したマウスから血清を調製した。90%最大NA活性を与えるために、熱不活性化血清の段階希釈物(1:20倍の希釈から開始)を、所定のウイルス濃度においてインフルエンザAウイルス(IAV)と共にインキュベートした。インキュベートは、10mg/mlのBSA、1mMのCaCl
2、0.5mMのMgCl
2、および0.5%Tween20を補ったPBSにおいて、37℃で30分間実施した。フェチュイン(Sigma Aldrich、5μg/ml)でコーティングされたプレートのウェルに希釈物を加えて、37℃で18時間インキュベートした。フェチュインからのシアル酸のNA媒介除去の後に露出したガラクトース残基を検出するために、HRP標識ピーナッツアグルチニン(PNA、Sigma Aldrich、2.5μg/ml)を使用した。非線形回帰分析(GraphPad Prism)によって、50%阻害濃度(IC50)を計算した。
図4A~4Eに示されるように、CBC NAによって免疫したマウスからの血清は、広範な交差反応性NAI活性を示した。
【0134】
CBC NAコンストラクトで免疫したマウスの生残率および体重も分析した。詳細には、これらのマウスに、1LD50量のpdm/09(A/ベルギー/1/2009)またはPR8ウイルスをチャレンジ感染させた(それぞれ、
図5A~5Fおよび6A~6F)。結果は、NA5200、NA7900、およびNA9100をコードするDNAコンストラクトでワクチン接種したマウスは、野生型NAでワクチン接種したマウスと比べて、ウイルスのチャレンジ感染に対してより高い生残率およびより少ない体重減少を実証したことを示している。
【実施例3】
【0135】
四量体CBC NAタンパク質の発現および精製
NAポリペプチドは、自然な進化過程とは異なる基準に従って設計されたため、正しい折り畳みおよびエピトープの完全性の維持を確認することは重要であった。したがって、構造の完全性の代用として、NA酵素活性を使用した。ザナミビルの添加によって酵素的に阻害されたNA抗原による免疫化によって、NA阻害抗体を誘導することができるが(Sultana, I.,ら (2011) Vaccine 29, 2601~2606を参照されたい)、当該NAは、依然として、その天然の四量体形態であることが必要とされる(Bucher, D. J. and Kilbourne, E. D. (1972) J. Virol. 10, 60~6およびDeroo, T.ら (1996) Vaccine 14, 561~569)ことが分かっている。したがって、哺乳動物発現系において可溶性四量体タンパク質として製造および精製できるように、当該NA5200、NA7900、およびNA9100ポリペプチドコンストラクトを改変した。2009パンデミックインフルエンザA(H1N1pdm)に由来する可溶性四量体NAも製造し、それらは、天然に存在するコントロールとしての役割を果たした(Schotsaertら 2016を参照されたい)。
【0136】
本質的にA/ベルギー/1/2009 rNAに対して前に説明したように、組換え四量体NAタンパク質(rNAとも呼ばれる)を製造した(Schotsaertら 2016を参照されたい)。簡潔には、ポリペプチドが、配列番号1、2、または3のアミノ酸75~469を含むように、単量体NAポリペプチド(すなわち、NA5200、NA7900、およびNA9100)の茎部を除去した。当該茎部を、四量体コイルドコイルへの自己組織化を駆動することができるテトラブラキオン(配列番号4)に由来するヘリックス構造のペプチドで置き換え、それにより、NA酵素ドメインの三次構造および四次構造を安定化した。当該四量体NAタンパク質構造の概略図を、
図2Aに提供する。
【0137】
N末端CD5誘導分泌シグナル(配列番号5)によって、NAポリペプチドおよび/またはNAタンパク質の分泌を促進させた。タンパク質精製を容易にするために、Strepタグ(配列番号6)またはHISタグ(例えば、6X His(配列番号35))のどちらかを、分泌シグナル配列と四量体化配列との間においてクローンした(Schmidt,ら (2011) PLoS One 6, e16284)。さらに、リンカー配列(配列番号19)も組み込んだ。当技術分野において既知の他のリンカー配列、例えば、トロンビン切断部位(配列番号20)を含むものなど、も使用してもよいことが想到される。
【0138】
Strepタグ付けされたNAタンパク質の精製のために、当該NAコンストラクトをExpi293細胞において発現させた。培地上清を、低速遠心分離(1000Xg)によって清澄化し、その後に、0.2μmろ過によって不溶性細胞破片を除去した。細胞上清を、限界ろ過および接線流ろ過によって濃縮し、その後に、アビジンを補ったPBSに対する透析によって、発現培地に存在する全てのビチオンを除去した。透析した上清を、PBSで平衡化したStrep-Trapカラム(GE Healthcare)にロードした。結合タンパク質を、PBS中における2.5mMのデスチオビオチンによって溶出させた。溶出分画をプールし、PBSで平衡化したHiLoad 16/600 Superdex 200(GE Healthcare)における分取SECによってポリッシュするために濃縮した。
【0139】
Hisタグ付けされた組換えNAタンパク質の精製のために、当該NAコンストラクトをExpi293細胞において発現させた。培地上清を、前に説明したように、清澄化し濃縮した。透析した上清を、PBSで平衡化したpH7.4のHis Trap Excel(GE Healthcare)樹脂に吸着させた。非結合タンパク質をPBSで洗い流し、結合タンパク質を、PBS中における20~500mMのイミダゾールの直線勾配によって溶出させた。次いで、溶出したタンパク質を、サイズ排除モードにおいて、PBSで平衡化したHiLoad XK50/70 Superdex200、prepグレードカラム(GE Healthcare)において精製した。いくつかの実施形態では、透析した試料を、50mMのTrisで平衡化したpH8のHiTrap Q HPカラム(GE healthcare)にロードした。全ての非結合タンパク質を、pH8の50mMのTrisで洗い流し、結合タンパク質を、50mMのTris中における0~1MのNaClによるpH8.0の直線勾配によって溶出させた。プールした分画を、0.2μmフィルターによってろ過し、PBSに対して透析して、少量の一定分量を液体窒素において急速冷凍した。
【0140】
サイズ排除クロマトグラフィー分析により、予測された可溶性四量体NAの分子量に対応する保持時間によって、NA5200、NA7900、およびNA9100を含むタンパク質の支配的なピークが明らかとなった(
図7A)。NA5200およびNA9100四量体タンパク質の場合、小さなピークが観察され、それらは、当該支配的なピークよりサイズ排除カラムからより速く溶出した。これらの分画は、おそらく、NAの凝集形態に対応し、よって破棄した。
【0141】
当該四量体NAタンパク質のNA活性を、MUNANAアッセイによって決定した。
図7Bに示されるように、小分子シアル酸コンジュゲート前駆体からの4-メチルウンベリフェロンの放出によって決定した場合、3つ全ての四量体CBC NAタンパク質(NA5200、NA7900、またはNA9100ポリペプチドを含む)は、酵素的に活性であった。当該3つの四量体NAの比活性度(specific activity)は、2009H1N1pdm由来可溶性四量体NAと同様であるかまたはわずかに高かった(
図7B)。
【0142】
次に、NetNGlyc 1.0サーバを使用して、当該CBC NAのヘッドドメインにおける可能性のあるN-グリコシル化部位の予測を実施した。潜在的N-グリコシル化部位を、関連するN1と比較した。NA5200、NA7900、およびNA9100ポリペプチドは、3つの潜在的N-グリコシル化部位、すなわち、88、146、および235の位置における部位を有しており(表1を参照されたい)、それらは、ほとんどすべてのN1 NAに存する(Sunら, PLoS One, 6, e22844, 2011)。
【0143】
全体として、これらのデータは、当該四量体CBC NAタンパク質が、正しい折り畳みおよびエピトープの完全性の維持を示したことを示した。
【実施例4】
【0144】
四量体CBC NAタンパク質による免疫化の研究
NAによるワクチン接種による防御は、ノイラミニダーゼ阻害(NAI)を媒介することができる抗体の誘導に依存することが知られている(Wohlboldら 2015を参照されたい)。したがって、当該四量体CBC NAタンパク質に対する抗体反応の潜在的幅を調べる初期段階として、タンパク質の免疫化の研究を実施した。詳細には、6週齢のマウスを、免疫刺激剤モノホスホリルリピドAおよび合成トレハロースジコリノミコレートを含有するSigma Adjuvant System(SAS)を使用して、1μgの組換え四量体CBC NAタンパク質もしくはコントロールNAによって、または単独もしくはNAと組み合わせた0.1μgHAの一価の不活性化ワクチンによって、プライミングし、次いで3週間の間隔の後に追加免疫した。プライミングおよび追加免疫の3週間後に、尾部出血によって血清試料を採取した。場合により、眼窩後方出血による追加免疫ワクチン接種の3週間後に、終末放血(terminal bleed)を実施した。
【0145】
当該CBC NAタンパク質で免疫したマウスからの熱不活性化血清を、ヒトH1N1ウイルスのパネルに対してNAIを媒介するそれらの能力について、3種の野生型NAタンパク質で免疫したマウスと比較した。詳細には、この研究において使用したA型インフルエンザウイルス(IAV)は、マウス適合H1N1株A/USSR/90/1977(USSR/77)、A/ニューカレドニア/20/1999(NC/99)、A/ブリスベン/59/2007(Bris/07)、およびA/ベルギー/1/2009(Bel/09;www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/?term=txid1502382に記載される通り)であった。当該A/ブタ/ベルギー/1/98株は、マウスの肺における連続継代によってマウスに適合させた(Neirynck, S.ら (1999) Nat. Med. 5, 1157~1163)。A/プエルトリコ/8/34(PR8/34)および当該H5N1ウイルスNIBRG-14も当該パネルに含めた。特に、当該NIBRG-14株は、それが、潜在的パンデミック原因ウイルスを代表するので含ませた。NIBRG-14は、A/ベトナム/1194/2004のNA(多塩基切断部位を除去)およびHAセグメント、感染したヒトから単離された鳥ウイルス、ならびにPR8/34からの他の6つの遺伝子セグメント、を発現する6:2リバースジェネティクス由来の合併結合変異ウイルスである。全体として、これらの株は、これらの遠縁のウイルスからのNAに対する、任意の誘導された抗NA抗体の交差反応性を探すために選択した。
【0146】
前に説明したように、ELLAアッセイを使用してNAI活性を評価した。前の研究(Wohlboldら 2015)によって観察されたように、天然のNAに対して産生された免疫血清は、いくらかの交差反応性を有した(
図8Aおよび8B)。PR8/34 NA抗血清は、PR8/34に対してNAIを媒介し、USSR/77およびSw/Bel/98に対してはより少ない程度に媒介した。同様に、NC/99に由来する精製した組換え四量体NAによるワクチン接種によって誘導された抗血清は、それ自体およびBris/07と反応した。Bel/09 NA抗血清は、それ自体およびSw/Bel/98に対して最も強いNAI力価を媒介し、次にNIBRG-14に対して強いNAI力価を媒介した。
【0147】
結果は、当該四量体CBC NAタンパク質が、複数の株(遠縁の株を含む)に対する増強された交差防御を明確に誘起したことを示している(
図8Aおよび8B)。抗NA5200抗血清は、Bel/09、Sw/Bel/98、およびNIBRG-14のNA活性を強く示し、PR8/34およびUSSR/77に対してはより少ない程度に示した。抗NA7900抗血清は、試験した4種全ての季節性H1N1ウイルス(PR8/34、USSR/77、NC/99、およびBris/07)およびNIBRG-14に対してNAIを媒介し、それにより、NC/99四量体rNAに対して産生された抗血清よりも広範なNAI範囲を示した。最後に、NA9100に対して産生された抗血清は、試験した全てのH1N1ウイルスに対して、実質的なNAIを示した。
【0148】
さらに、当該CBC NAまたは野生型(WT)NAと、ELLAアッセイにおいて使用したH1N1ウイルスとの間において共有される配列同一性のパーセントを決定した。評価のために、75から前方のアミノ酸のみ(配列番号1、2、または3に対して)を、固有のNA茎部配列を欠いた個別のNAポリペプチドと見なした。BlastP スイート-2配列ソフトウェアを使用して同一性のパーセントを決定した(Bao 2008およびKatoh 2013を参照されたい)。太字の数字は、当該NAIアッセイにおいて、>2.3(すなわち、1:5)の1:IC50が観察された場合を特定する。
【0149】
【0150】
表3に示されるように、NA9100は、試験したH1N1ウイルスに対して最も高い同一性のパーセントを共有し、次いで、NA7900、続いてNA5200の順であった。比較において、他のH1N1 NAに対するWT NAの同一性は、大いに異なった。概して、WTウイルスとCBC設計NAとの間におけるより高い程度の配列同一性は、NAIにおける適用範囲のより広い幅と相関した(表3の太字に示されるように)。大部分のコンセンサスNAが、≧88%同一性においてNAIを示したにもかかわらず、NC/99 NAは、USSR/77と92%の同一性を共有するが、NAIは検出されなかった。
【0151】
まとめると、これらのデータは、野生型四量体NAは、ある程度の交差反応性抗体反応を誘導するが、その一方で、四量体CBC NAタンパク質は、複数のインフルエンザ株に対する著しく高められた交差防御を提供したことを示している。理論に束縛されることを望むわけではないが、当該CBC NAは、天然NAができないような、インフルエンザNA内における複数の保存エピトープに対しても広範な反応性免疫応答を引き起こすことができると考えられる。
【実施例5】
【0152】
四量体CBC NAタンパク質によるワクチン接種チャレンジ感染研究
四量体CBC NAタンパク質の防御能力をさらに研究するために、活性ワクチン接種チャレンジ感染実験を実施した。これらの実験において、マウスを、アジュバントと一緒にNA5200、NA7900、またはNA9100ポリペプチドを含む四量体CBC NAタンパク質によって、皮下によりプライミングおよび追加免疫した。緩衝液およびアジュバントのみによって模擬ワクチン接種したマウスを、コントロールとして含ませた。追加免疫の3週間後、マウスを、5LD50量のPR8/34、USSR/77、NC/99、Bel/09、Sw/Bel/98、またはNIBRG-14のいずれかによって、鼻腔内感染により、チャレンジ感染させた。続いて、当該マウスを、体重および生残の変化について14日間にわたって評価した(
図9A~9L)。
【0153】
アジュバントのみを受けた全てのチャレンジ感染させたマウスは、9日目までに感染症で死亡した(
図9A~9Lの「模擬」群)。NA5200を含む四量体CBC NAタンパク質によるワクチン接種は、USSR/77を除いて、試験した全てのH1N1ウイルスによるチャレンジ感染からマウスを著しく防御した。対照的に、NA5200は、USSR/77でチャレンジ感染させたワクチン接種マウスを部分的にのみ防御した。これらのマウスが、経時において一時的な体重減少を示し、死亡に対して部分的にのみ防御されたからである(
図9C~9D)。NA7900を含む四量体CBC NAタンパク質によるワクチン接種は、PR8/34、USSR/77、NC/99、またはNIBRG-14感染によるチャレンジ感染からマウスを著しく防御したが、Bel/09およびSw/Bel/98に対してはそうではなく、それらにおいては、部分的防御のみが観察された。NA9100を含む四量体CBC NAタンパク質によるワクチン接種は、広い範囲の防御を示し、PR8/34、NC/99、Bel/09、Sw/Bel/98、およびNIBRG-14感染によるチャレンジ感染からマウスを著しく防御した。USSR/77を感染させ、NA9100をワクチン接種させたマウスは、二元配置分散分析の主要カラム効果を考慮した場合、模擬ワクチン接種させたマウスと比較して有意な差を示さなかった(p値=0.08)。しかしながら、6日目から9日目において、NA9100ワクチン接種したマウスは、模擬ワクチン接種させたマウスと比較して、体重減少において有意な差があり(p<0.01、二元配置分散分析)、ならびに100%のマウスが当該感染を生残した(
図9C)。全体として、これらの結果は、NA5200およびNA9100ポリペプチドを含む四量体CBC NAタンパク質が、潜在的に長期の時間枠および対応する抗原性空間にわたって、インフルエンザウイルス感染に対して広範な防御を提供したことを示している。
【0154】
以前の研究は、抗NA免疫性が誘導される場合、肺内のウイルス量が減少することを示していた(Bosch, B. J.ら (2010) J. Virol. 84, 10366~74;Schulman, J. L.,ら (1968) J. Virol. 2, 778~86;およびWebster, R. G. および Laver, W. G. J., (1967) Immunology 99)。したがって、NA5200、NA7900、またはNA9100ポリペプチドを含む四量体CBC NAタンパク質によるワクチン接種を、肺のウイルス量を減少させる能力についても評価した。詳細には、マウスを、NA5200、NA7900、またはNA9100のいずれかを含む四量体CBC NAタンパク質によってプライミングおよび追加免疫し、追加免疫の3週間後に5LD50量のPR8/34、NC/99、またはBel/09を感染させた。感染後3日目および7日目に、肺を採取し、ウイルス量を調べた。
【0155】
体重減少および生残についてマウスを観察し、それらが元の体重の≧25%を失った場合、安楽死させた。いくつかの実験において、3日目、6日目、または7日目に、ペントバルビタールナトリウムの過剰投与(最終濃度は3mg/マウス)によってマウスを犠牲にし、気管支肺胞洗浄(BAL)を実施して、肺を切除した。BALは、Van Hoeckeら(Van Hoecke,ら (2017) J. Vis. Exp. e55398~e55398)に従って実施し、ウイルス量について、組織培養伝染性用量(TCID50)において無細胞上清を評価した。BSAの標準曲線を使用して、Bradfordタンパク質色素によって無細胞BAL体液における総タンパク質レベルを決定した。肺ホモジネートを調製し、前に説明したように清澄化し(De Baets, S.ら (2015) PLoS One 10を参照されたい)、TCID50アッセイによってウイルス価を評価した。
【0156】
清澄化した肺ホモジネートまたはBAL体液(BALF)におけるウイルス価を評価するために、標準TCID50アッセイを使用した。非必須アミノ酸、2mMのL-グルタミン、0.4mMのピルビン酸ナトリウムを補った、DMEM+10%FCSにおいて培養した、96ウェルプレートにおけるMDCK細胞の融合性単層を、無血清培地で洗浄し、1μg/mlのTPCK処理トリプシン(Sigma)を含有する無血清DMEMにおいて10倍希釈の試料と共にインキュベートした。感染の7日後に、ニワトリ赤血球の凝集によってウェルにおいてウイルスを検出し、Reed and Muench法(Reed and Muench 1938)によって値を計算した。
【0157】
図10A~10Fに示されるように、ウイルス量は、3日目においては、模擬処理動物と比較して、CBC NAワクチン接種した群において有意な減少を示さなかった。しかしながら、チャレンジ感染後の7日目まで、四量体CBC NAタンパク質でワクチン接種した全てのマウスは、模擬ワクチン接種したマウスより肺において著しく低いウイルス量を有した。血管漏出および肺浮腫は、重篤なインフルエンザ感染の兆候であり(Tate, M. D.ら J. Immunol. (2009) 183およびJob, E. R.ら J. Immunol. (2014) 192)、無細胞BAL体液内の総タンパク質含有量に基づくこれらのパラメータについて、NAワクチン接種における可能性のある恩恵も評価した。四量体CBC NAタンパク質でワクチン接種し、PR8/34、NC/99、またはBel/09のいずれかを感染させたマウスは、チャレンジ感染後の3日目に単離されたBAL体液では、タンパク質レベルにおいて有意な差を示さなかったが、感染後7日目において、コントロールと比較して著しく低い総タンパク質を有した(
図10A~10F)。
【0158】
合わせて、これらのデータは、NA5200、NA7900、またはNA9100を含む四量体CBC NAタンパク質によるワクチン接種が、様々な異なるアッセイプラットフォームによって測定した場合に、有意な抗ウイルス効力を示したことを示している。
【実施例6】
【0159】
受動的移入実験
前に説明したように、NAによるワクチン接種による防御の主要な相関関係は、NA阻害抗体を誘導する能力である。したがって、抗体が、CBC NAによって誘導される防御の主要メディエーターであるかどうかを決定するために、受動的移入実験を実施した。そのような実験において、NA5200、NA7900、NA9100をコードするDNAまたは緩衝液単独(PBS)によって免疫したマウスから、熱不活性化抗血清を調製した。
図11A~11Dに示されるように、当該抗血清は、3ラウンドの免疫化の後、広範なNAI活性を示した。次いで、2LD50量のPR8/34、NC/99、またはBel/09のいずれかによる感染の1日前に、当該抗血清を、6週齢のマウスに、鼻腔内により受動的に移入した。個々の野生型rNAに対して産生された抗血清を、同種ポジティブコントロールとして含ませた。抗血清は、NAI応答の拡張を評価するために実施例4(
図8Aおよび8B)において前に使用したのと同じ血清であった。全てのウイルスチャレンジ感染において、当該ポジティブコントロールの抗血清は、同種ウイルスによる潜在的致死性感染後、マウスを体重減少および生残から完全に防御した。受動的移入実験のための例示的実験スケジュールを
図12に提供する。
【0160】
受動的実験の結果を
図13A~13Hに提供し、それらは、1LD50量のBel09によるチャレンジ感染の後の、CBC NAによる体重減少防御および生残の増加を示している。
図14A~14Fは、1LD50量のBel09、NC/99、またはPR8/34によるチャレンジ感染後の、CBC NAによって提供された体重減少防御および生残の増加を示している。
【0161】
受動的移入実験も、四量体CBC NAタンパク質によってマウスを免疫することによって実施した。
図15A~15Fに示されるように、NA5200を含む四量体CBC NAによる活性ワクチン接種は、PR8/34、NC/99、およびBel/09感染に対して防御するが、NA5200抗血清のみの受動的移入は、Bel/09またはPR8/34で感染させたマウスにおいて体重減少および死亡に対する著しい防御を提供し、NC/99で感染させたマウスにおいては提供しなかった(p<0.01、二元配置分散分析または対数順位検定)。NA7900免疫血清を含む四量体CBC NAによって免疫したマウスからの抗血清の受動的移入は、PR8/34およびNC/99で感染させた場合、ネガティブコントロール群と比較して、罹患および死亡に対して著しく防御した(p<0.01、二元配置分散分析または対数順位検定)。しかしながら、NA7900抗血清の受動的移入は、Bel/09ウイルスによるチャレンジ感染からマウスを有意には防御しなかった。最後に、NA9100抗血清の受動的移入は、体重減少および生残の両方において、3種全てのチャレンジ感染ウイルスに対して有意な防御を提供した(p<0.01、二元配置分散分析または対数順位検定)。
【0162】
全ての受動的移入実験において、死亡に対する完全な防御は、NAIを媒介する当該抗血清の能力と相関した(
図8Aを参照されたい)。そのため、抗体は、四量体CBC NAタンパク質によって誘導される防御において主要な役割を果たすが、いくつかの場合においては、例えば、NAIは存在しないが防御は明白である場合、他のメカニズムも防御に貢献しているかもしれないと結論付けることができる。
【実施例7】
【0163】
一価ワクチンによる防御範囲および複合アプローチの評価
次に、CBC NAが、(i)野生型組換え四量体NAタンパク質(rNA)と比べて、インビボにおいてより広範な防御を提供することができるかどうか、および(ii)不活性化スプリットワクチンによって提供される防御において増加することができるかどうか、について試験するために、実験を実施した。詳細には、NA5200およびNA9100または、Bel/09およびNC/99単独に由来するかもしくは一価H1N1 pdm09ワクチンとの組み合わせに由来する野生型可溶性組換えNAによって、マウスをワクチン接種した。続いて、当該マウスを、Bel/09またはNC/99でチャレンジ感染させた。
【0164】
NC/99 rNAでワクチン接種したマウスは、Bel/09 rNAでワクチン接種してその後にBel/09をチャレンジ感染させたマウスと比較して、体重減少および死亡から有意には防御されなかった。同種ワクチン接種したマウスは、NA5200およびNA9100でワクチン接種した両方のマウスよりも、わずかに少ないが有意な体重減少を示したが、当該マウスの100%が感染を生残した(
図16A、16B)。さらに、NC/99ワクチン接種した7日目の肺におけるウイルス量は、平均して、模擬ワクチン接種したマウスと同様であった。NA5200およびNA9100でワクチン接種したマウスの7日目におけるウイルス価は、模擬ワクチン接種させたマウスと比べて有意に減少したが(p<0.01、一元配置分散分析)、同種rNAおよびNA5200の両方は、NA9100 NAより勝っていた(
図16C)。このパターンも、NC/99でチャレンジ感染させたマウスに対して観察された。Bel/09 rNAでワクチン接種したマウスは、より著しく体重を失い、感染後6日目において、NC/99でワクチン接種したマウスと比較して、増加した死亡とより高いウイルス量を示した(
図16G、16H、16I)。
【0165】
図9Eおよび9Fに提示されたデータと比較して、NA5200は、NC/99でチャレンジ感染させたマウスを同じ程度には防御しなかったが、NA9100は、同種ワクチン接種したマウスと比較して、マウスを防御する能力において有意な差を示さなかった。さらに、Bel/09 rNAも、PR8/34ウイルスで感染させた場合、罹患および死亡からマウスを防御しなかった(データは示されていない)。まとめると、これらのデータは、NA9100が、試験した野生型NAより広範な防御を示したことを示している。
【0166】
一価H1N1 pdm09ワクチン(単独において、または組換え四量体NAタンパク質との組み合わせにおいて)でワクチン接種し、Bel/09をチャレンジ感染させたマウスは、体重減少の兆候をほとんど示さず、死亡もほとんどなかった(
図16Dおよび16E)。さらに、感染後7日目において、肺にウイルスの兆候はなかった(
図16F)。これらの結果は、一価ワクチンによる、とりわけアジュバントとの組み合わせにおける免疫化は、同種ウイルスに対して堅牢であることを確認する。
【0167】
マウスをNC/99でチャレンジ感染させた場合、模擬ワクチン接種したマウスと比較して、アジュバントワクチン単独によっても、ある程度の防御が提供された(
図16G~16L)。NA5200およびNA9100の両方は、一価のみとの比較において、体重減少および生残に対して相加効果を示さなかった(
図16Jおよび16K)。しかしながら、一価ワクチンへのNC/99またはNA9100 NAの追加は、一価単独と比較して、肺におけるウイルス価を著しく減少させた(
図16L)。そのため、これらのデータは、伝統的なワクチンアプローチとの組み合わせにおける防御に貢献するNAの能力を示している。
【実施例8】
【0168】
HA変異体に対する効力の評価
2017年の南半球インフルエンザシーズンに対して、世界保健機構(WHO)は、季節性インフルエンザワクチンのA(H1N1)pdm09様ウイルスを、A/Michigan/45/2015様株で置き換えることを推奨した。このインフルエンザ変異体は、結果として中高年の成人における増加した感染率を生じるHA内での変化を有することが想定された(B. Flanneryら 2018, JID)。
【0169】
したがって、この変異体の配列が元のCBC NA設計戦略に含まれないため、当該四量体CBC NAタンパク質が、この変異体に対してNA阻害を媒介することができるかどうかを試験するために実験を実施した。
【0170】
最初に、赤血球凝集抑制(HAI)を使用して、Bel/09と当該A/ミシガン/45/2015様ウイルスA/シンガポール/GP1908/2015(Sing/15)との間のHA抗原性の差を調べた。Bel/09およびSing/15(1280HAUvs640HAU)に対してHAIを媒介する、当該一価スプリットA(H1N1)pdm09ワクチンに対してマウスにおいて産生された抗血清の能力において、二倍の差が観察された。この結果は、フェレット基準血清が有意な抗原性ドリフトの証拠を示さなかった以前の研究と一致していた。
【0171】
次に、Bel/09およびSing/15に対するNA阻害を媒介する、当該四量体CBC NAタンパク質または四量体Bel/09NAに対して産生された抗血清の能力を試験した(
図17A~17C)。Bel/09抗血清は、Bel/09と比較した場合、ドリフト変異体Sing/15に対して著しく低いNAI力価を有したが(p<0.05、一元配置分散分析)、NA5200またはNA9100を含む四量体CBC NAに対して産生された抗血清は、野生型Bel/09抗血清より低いレベルにもかかわらず、Sing/15およびBel/09の両方に対して同様に良好にNAIを媒介した(
図17Aおよび17B)。アミノ酸同一性を考慮する場合、75のアミノ酸から前方において、Sing/15は、それぞれNA5200、NA7900、NA9100、およびBel/09に対して91%、87%、89%、および97%の同一性を共有した(
図17C)。したがって、これらのデータは、当該CBC NAが、当該タンパク質の初期設計に含まれなかった株に対して同じレベルの阻害を示したことを示している。
【0172】
したがって、クラスターベースコンセンサスアプローチは、HA抗原性ドリフトが生じる株にわたって抗NA応答を生じさせることができるNAポリペプチドを提供することができたと考えられる。したがって、本方法は、免疫応答を拡張し、様々なインフルエンザ株、タイプ、およびサブタイプに対する長期(すなわち、複数シーズン)の防御を提供するために利用することができる。
【配列表】