(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】テーブル駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/023 20120101AFI20230810BHJP
F16C 35/067 20060101ALI20230810BHJP
F16C 19/16 20060101ALI20230810BHJP
H02K 7/06 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
F16H57/023
F16C35/067
F16C19/16
H02K7/06 A
(21)【出願番号】P 2021104205
(22)【出願日】2021-06-23
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】坂井 哲也
(72)【発明者】
【氏名】戸張 公介
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-226898(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0283940(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/023
F16C 35/067
F16C 19/16
H02K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延在し、前記軸方向に垂直な断面が円形である第1ハウジング穴および第2ハウジング穴が形成され、前記第1ハウジング穴および前記第2ハウジング穴が前記軸方向に互いに離間すると共に中心軸が一致する第1ハウジングと、
前記第1ハウジング穴に嵌め込まれる第1軸受と、
前記軸方向に延在し、前記第1軸受および前記第2ハウジング穴に挿入される軸部材と、
前記第2ハウジング穴を取り囲む内周面と前記軸部材の外周面との間に挿入され、前記内周面に沿った円環状部を含む第2ハウジングと、
前記円環状部の内周面と前記軸部材の外周面との間に嵌め込まれる第2軸受と、
前記軸部材を軸周りに回転させるモータと、
前記モータと前記第2ハウジングとの間に配置されるブラケットと、
前記軸部材の軸周りの回転により駆動されるテーブルと、を備え、
前記円環状部の外周面と中心軸が一致する円筒状の内周面と前記軸部材の外周面との間には、前記軸方向において前記第2軸受に対して前記ブラケット側に隣接すると共に前記軸部材の外周面を取り囲む円環状の空間が形成されており、
前記ブラケットは、ベース部と、前記ベース部から前記第2ハウジング側に突出すると共に前記円環状の空間に挿入され、前記円環状部の内周面に沿った第1突出部と、を含み、
前記第1突出部は、前記第2軸受の前記軸方向の端面に接触しており、
前記第1突出部は、前記軸方向に沿って見たときに、前記円環状部の内周面に接触する部分から任意に選択される3点を結ぶ三角形の内側に前記円環状部の中心が位置するように、前記円環状部の内周面の少なくとも一部に接触している、テーブル駆動装置。
【請求項2】
前記第1突出部は、前記円環状部の内周面の周方向の全体に接触する、請求項1に記載のテーブル駆動装置。
【請求項3】
前記ベース部には、前記第1突出部により取り囲まれると共に前記軸方向に垂直な断面が円形である第1ブラケット穴と、前記軸方向に垂直な断面が円形である第2ブラケット穴とが形成されており、
前記第1ブラケット穴および前記第2ブラケット穴は、前記軸方向に互いに離間し、中心軸が一致しており、
前記モータは、本体部と、前記本体部から前記ブラケット側に突出すると共に前記第2ブラケット穴に挿入され、前記第2ブラケット穴を取り囲む内周面に沿った第2突出部と、を含み、
前記第2突出部は、前記軸方向に沿って見たときに、前記第2ブラケット穴を取り囲む内周面に接触する部分から任意に選択される3点を結ぶ三角形の内側に前記第2ブラケット穴の中心が位置するように、前記第2ブラケット穴を取り囲む内周面の少なくとも一部に接触している、請求項1または請求項2に記載のテーブル駆動装置。
【請求項4】
前記第2突出部は、前記第2ブラケット穴を取り囲む内周面の周方向の全体に接触する、請求項3に記載のテーブル駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、テーブル駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータの回転運動を直線運動に変換し、テーブルを直線駆動させる装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、モータと、当該モータが固定されるハウジングと、当該ハウジング内に収容されると共にモータの回転運動を直線運動に変換する送りネジ機構と、当該送りネジ機構の外周面とハウジングの内周面との間に配置される軸受とを備えた電動アクチュエータが記載されている。当該ハウジングは、軸方向に並べて組付けられた複数の筒状の部品を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電動アクチュエータでは、ハウジングを構成する上記筒状の部品を軸方向に並べて組付ける際に、部品同士の芯出しの作業が煩雑になる場合がある。
【0006】
本開示の目的は、部品同士の芯出しを容易に実施することが可能なテーブル駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従ったテーブル駆動装置は、軸方向に延在し、軸方向に垂直な断面が円形である第1ハウジング穴および第2ハウジング穴が形成され、第1ハウジング穴および第2ハウジング穴が軸方向に互いに離間すると共に中心軸が一致する第1ハウジングと、第1ハウジング穴に嵌め込まれる第1軸受と、軸方向に延在し、第1軸受および第2ハウジング穴に挿入される軸部材と、第2ハウジング穴を取り囲む内周面と軸部材の外周面との間に挿入され、当該内周面に沿った円環状部を含む第2ハウジングと、円環状部の内周面と軸部材の外周面との間に嵌め込まれる第2軸受と、軸部材を軸周りに回転させるモータと、モータと第2ハウジングとの間に配置されるブラケットと、軸部材の軸周りの回転により駆動されるテーブルと、を備えている。円環状部の外周面と中心軸が一致する円筒状の内周面と軸部材の外周面との間には、軸方向において第2軸受に対してブラケット側に隣接すると共に軸部材の外周面を取り囲む円環状の空間が形成されている。ブラケットは、ベース部と、ベース部から第2ハウジング側に突出すると共に上記円環状の空間に挿入され、円環状部の内周面に沿った第1突出部と、を含む。第1突出部は、第2軸受の軸方向の端面に接触している。第1突出部は、軸方向に沿って見たときに、円環状部の内周面に接触する部分から任意に選択される3点を結ぶ三角形の内側に円環状部の中心が位置するように、円環状部の内周面の少なくとも一部に接触している。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、部品同士の芯出しを容易に実施することが可能なテーブル駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係るテーブル駆動装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1におけるウォームギアユニットの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1におけるウォームギアユニットの別の視点から見た分解斜視図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1におけるウォームギアユニットの回転軸を含む断面を示す部分断面図である。
【
図6】
図6は、ベアリングハウジングとモータブラケットとの連結部を、回転軸が延びる方向に沿って見た模式図である。
【
図7】
図7は、モータブラケットとモータとの連結部を、回転軸が延びる方向に沿って見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態の概要]
本開示に従ったテーブル駆動装置は、軸方向に延在し、軸方向に垂直な断面が円形である第1ハウジング穴および第2ハウジング穴が形成され、第1ハウジング穴および第2ハウジング穴が軸方向に互いに離間すると共に中心軸が一致する第1ハウジングと、第1ハウジング穴に嵌め込まれる第1軸受と、軸方向に延在し、第1軸受および第2ハウジング穴に挿入される軸部材と、第2ハウジング穴を取り囲む内周面と軸部材の外周面との間に挿入され、当該内周面に沿った円環状部を含む第2ハウジングと、円環状部の内周面と軸部材の外周面との間に嵌め込まれる第2軸受と、軸部材を軸周りに回転させるモータと、モータと第2ハウジングとの間に配置されるブラケットと、軸部材の軸周りの回転により駆動されるテーブルと、を備えている。円環状部の外周面と中心軸が一致する円筒状の内周面と軸部材の外周面との間には、軸方向において第2軸受に対してブラケット側に隣接すると共に軸部材の外周面を取り囲む円環状の空間が形成されている。ブラケットは、ベース部と、ベース部から第2ハウジング側に突出すると共に上記円環状の空間に挿入され、円環状部の内周面に沿った第1突出部と、を含む。第1突出部は、第2軸受の軸方向の端面に接触している。第1突出部は、軸方向に沿って見たときに、円環状部の内周面に接触する部分から任意に選択される3点を結ぶ三角形の内側に円環状部の中心が位置するように、円環状部の内周面の少なくとも一部に接触している。
【0011】
上記テーブル駆動装置では、例えばドリルなどの工具を直線移動させる一工程によって第1ハウジング穴および第2ハウジング穴が形成されることにより、両穴の中心軸が一致している。このため、第1軸受を第1ハウジング穴に嵌め込み、軸部材を第1軸受および第2ハウジング穴に挿入することにより、軸部材の中心軸(回転軸)が第1ハウジング穴および第2ハウジング穴の中心軸に一致する。そして、第2ハウジング穴の内径と実質的に同一の外径を有する第2ハウジングの円環状部を、第2ハウジング穴を取り囲む内周面と軸部材の外周面との間に挿入することにより、当該円環状部の中心軸が第1ハウジング穴、第2ハウジング穴および軸部材の中心軸に一致する。
【0012】
この状態で、ブラケットの第1突出部を、円環状部の外周面と中心軸が一致する円筒状の内周面と軸部材の外周面との間において第2軸受に対してブラケット側に隣接する円環状の空間に挿入し、第1突出部のうち円環状部の内周面に接触する部分から任意に選択される3点を結ぶ三角形の内側に円環状部の中心が位置するように当該第1突出部を円環状部の内周面の少なくとも一部に接触させることにより、第1ハウジング、第2ハウジングおよび軸部材に対するブラケットの芯出しを容易に実施することができる。しかも、当該第1突出部が第2軸受の軸方向の端面に接触するため、第1突出部により第2軸受を軸方向に押さえることができる。したがって、第2軸受を押さえるための部材を別途設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0013】
上記テーブル駆動装置において、第1突出部は、円環状部の内周面の周方向の全体に接触していてもよい。この構成によれば、第1突出部が円環形状を有するため、第1突出部が互いに離間する複数の円弧状の部分からなる場合に比べて、第1突出部の剛性を上げることができる。これにより、第1突出部の径方向の変形を抑制することができるため、第2ハウジングに対するブラケットの組付け精度を向上させることができる。
【0014】
上記テーブル駆動装置において、ベース部には、第1突出部により取り囲まれると共に軸方向に垂直な断面が円形である第1ブラケット穴と、軸方向に垂直な断面が円形である第2ブラケット穴とが形成されていてもよい。第1ブラケット穴および第2ブラケット穴は、軸方向に互いに離間し、中心軸が一致していてもよい。モータは、本体部と、本体部からブラケット側に突出すると共に第2ブラケット穴に挿入され、第2ブラケット穴を取り囲む内周面に沿った第2突出部と、を含んでいてもよい。第2突出部は、軸方向に沿って見たときに、第2ブラケット穴を取り囲む内周面に接触する部分から任意に選択される3点を結ぶ三角形の内側に第2ブラケット穴の中心が位置するように、第2ブラケット穴を取り囲む内周面の少なくとも一部に接触していてもよい。この構成によれば、第1ハウジング、第2ハウジング、軸部材およびブラケットに対するモータの芯出しを容易に実施することができる。
【0015】
上記テーブル駆動装置において、第2突出部は、第2ブラケット穴を取り囲む内周面の周方向の全体に接触していてもよい。この構成によれば、第2突出部が円環形状を有するため、第2突出部が互いに離間する複数の円弧状の部分からなる場合に比べて、第2突出部の剛性を上げることができる。これにより、第2突出部の径方向の変形を抑制することができるため、ブラケットに対するモータの組付け精度を向上させることができる。
【0016】
[実施形態の具体例]
次に、本開示のテーブル駆動装置の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0017】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1に係るテーブル駆動装置1の全体構成を、
図1および
図2に基づいて説明する。
図1は、テーブル駆動装置1の全体構成を示す斜視図である。
図2は、
図1中の線分II-IIに沿った断面図である。
【0018】
本実施の形態に係るテーブル駆動装置1は、回転テーブルである。
図1に示すように、テーブル駆動装置1は、ベース板10と、転がり軸受20と、ウォームギアユニット30とを主に備えている。以下、これらの構成要素についてそれぞれ詳細に説明する。
【0019】
ベース板10は、転がり軸受20およびウォームギアユニット30を配置するための板である。ベース板10は、
図1中のZ軸方向から見て、Y軸方向に長い形状を有している。ベース板10は、転がり軸受20が配置される第1板部11と、ウォームギアユニット30が配置される第2板部12とを含む。第1板部11および第2板部12は、
図1中のY軸方向において互いに隣接している。
【0020】
第1板部11および第2板部12は、
図1中のZ軸方向から見て、略四角形状を有している。
図1に示すように、第1板部11は、第2板部12よりもZ軸方向に厚く形成されている。第1板部11の上面11Aおよび第2板部12の上面12Aは、
図1中のXY平面に対して平行であり、同図中のY軸方向に垂直な段差面13によって繋がっている。
【0021】
図2において、符号R1は、転がり軸受20の回転軸を示している。
図2に示すように、第1板部11には、中央穴14と、当該中央穴14よりも径が大きい円環状の第1凹部15と、当該第1凹部15よりも径が大きい円環状の第2凹部16とがそれぞれ形成されている。中央穴14、第1凹部15および第2凹部16の各中心は、回転軸R1上に位置している。すなわち、中央穴14、第1凹部15および第2凹部16は、回転軸R1を中心として同心状に形成されている。
図1に示すように、中央穴14は、Z軸方向から見て円形の穴である。
【0022】
図2に示すように、中央穴14は、第1板部11を厚さ方向(Z軸方向)に貫通する貫通穴である。第1凹部15は、第2凹部16よりも深く形成されている。すなわち、第1板部11の上面11Aから第1凹部15の底面までのZ軸方向の距離は、当該上面11Aから第2凹部16の底面までのZ軸方向の距離よりも長い。別の観点から説明すると、第1板部11の下面11Bから第1凹部15の底面までのZ軸方向の距離L1は、当該下面11Bから第2凹部16の底面までのZ軸方向の距離L2よりも短い。すなわち、第1凹部15と第2凹部16との間の境界部には、段差が形成されている。第1凹部15の底面および第2凹部16の底面は、いずれもXY平面(
図1)に対して平行な平面である。
【0023】
転がり軸受20は、円環形状を有するウォームホイール21(外輪)と、当該ウォームホイール21よりも小径で且つ当該ウォームホイール21の径方向内側に配置された円環形状を有する内輪22と、当該ウォームホイール21の外周面を取り囲むカバー24とを含む。
図1に示すように、ウォームホイール21および内輪22は、回転軸R1を中心として同心状に配置されている。
【0024】
図2に示すように、内輪22は、Z軸方向の端面が第1凹部15の底面に接触するように、当該第1凹部15に配置されている。内輪22は、第1板部11のうち第1凹部15に対応する部分および内輪22をZ軸方向に貫通するネジB1によって、第1板部11に固定されている。
図2に示すように、当該ネジB1は、第1板部11に形成された貫通穴内にネジB1の頭部が位置するように、下面11Bから上面11Aに向かって第1板部11に挿入されている。一方、ウォームホイール21は、Z軸方向の端面を第2凹部16の底面側に向けた状態で、当該第2凹部16に配置されている。
【0025】
転がり軸受20は、内輪22の外周面とウォームホイール21の内周面との間に配置される複数の転動体23をさらに含む。転動体23は、例えば円筒コロであり、回転軸R1を中心として環状に並んでいる。本実施の形態では、周方向に隣接する転動体23の転動軸同士が互いに直交しているが、これに限定されない。
【0026】
図2に示すように、内輪22の外周面には、転動体23が転走する内側軌道面23Aが形成されている。一方、ウォームホイール21の内周面には、転動体23が転走する外側軌道面21Aが、内側軌道面23Aと対向するように形成されている。内側軌道面23Aおよび外側軌道面21Aは、
図2の断面視において、それぞれV字状の溝の側壁となっている。複数の転動体23は、内側軌道面23Aと外側軌道面21Aとの間に形成される環状の空間において周方向に並んでいる。
【0027】
ウォームホイール21の外周面には、第1ギア21BがZ軸方向に沿って形成されている。この第1ギア21Bは、ウォームギア31(軸部材)に噛み合う。以下、ウォームギアユニット30の構成について詳細に説明する。
【0028】
図1に示すように、ウォームギアユニット30は、第2板部12の上面12Aに配置されており、同図中のX軸方向に延びている。ウォームギアユニット30は、ウォームホイール21を回転軸R1を中心に回転させるためのものであり、
図1中のY軸方向において転がり軸受20に隣接している。
【0029】
図3および
図4は、ウォームギアユニット30の各構成部品が軸方向D1(
図1中のX軸方向)に分解された状態を示しており、それぞれ別の視点から見た斜視図である。
図3および
図4を参照して、ウォームギアユニット30は、ウォームギア31(軸部材)と、支持ベアリング32(第1軸受)と、固定ベアリング33(第2軸受)と、ウォームギアハウジング50(第1ハウジング)と、ベアリングハウジング40(第2ハウジング)と、モータブラケット60と、モータ80とを主に備えている。以下、これらの構成要素をそれぞれ説明する。
【0030】
ウォームギア31は、略円柱形状を有しており、軸方向D1に延在している。ウォームギア31のうち軸方向D1の中間部分の外周面には、第1ギア21B(
図2)に噛み合う第2ギア31Aが形成されている。ウォームギア31は、支持ベアリング32および固定ベアリング33にそれぞれ挿入されている。より具体的には、
図3および
図4に示すように、支持ベアリング32は、ウォームギア31のうち第2ギア31Aよりも第1端部31B側の部分に取り付けられている。一方、固定ベアリング33は、ウォームギア31のうち第2ギア31Aよりも第2端部31C側の部分に取り付けられている。
【0031】
ウォームギアハウジング50は、ウォームギア31を収容するための部品であり、軸方向D1に延在している。本実施の形態におけるウォームギアハウジング50は、略直方体の外形を有しており、1つの側面が凹曲面となっている(
図3)。
図3に示すように、ウォームギアハウジング50のうち当該凹曲面には、軸方向D1に延びる楕円形状を有する長穴51が形成されている。ウォームギア31がウォームギアハウジング50内に収容された状態において、第2ギア31Aが当該長穴51から露出し、第1ギア21B(
図2)に噛み合う。ウォームホイール21(
図2)は、ウォームギア31の軸周りの回転により、回転軸R1を中心に回転駆動する。ウォームホイール21には、ワーク(図示しない)が固定され、またはワーク固定用の板部材(図示しない)が固定される。これにより、ウォームホイール21がテーブルとして使用される。
【0032】
図4に示すように、ウォームギアハウジング50には、第1ハウジング穴53および第2ハウジング穴52がそれぞれ形成されている。第1ハウジング穴53および第2ハウジング穴52は、軸方向D1に垂直な断面が円形の穴である。第1ハウジング穴53および第2ハウジング穴52は、軸方向D1において互いに離間している。より具体的には、
図4に示すように、第2ハウジング穴52は、ウォームギアハウジング50のうち軸方向D1の一方の端面54(ベアリングハウジング40側を向く端面)を貫通するように形成されている。一方、第1ハウジング穴53は、軸方向D1の中央部を基準として上記一方の端面54とは反対側において、ウォームギアハウジング50の内側に形成されている。
【0033】
第1ハウジング穴53および第2ハウジング穴52は、例えばドリルなどを軸方向D1において直線移動させ、ウォームギアハウジング50を上記一方の端面54から軸方向D1に沿って切削することにより形成されている。このため、第1ハウジング穴53および第2ハウジング穴52は、略同径であり、中心軸が一致している。
【0034】
支持ベアリング32は、第1ハウジング穴53に嵌め込まれている。このため、ウォームギア31の第1端部31B側の部分は、支持ベアリング32によって、ウォームギアハウジング50に対して周方向に相対的に回転可能となっている。またウォームギア31は、第2ハウジング穴52に挿入されている。第2ハウジング穴52の内径は、ウォームギア31の外径よりも大きくなっている。
【0035】
ベアリングハウジング40は、ウォームギアハウジング50の第2ハウジング穴52に挿入されると共に、固定ベアリング33が嵌め込まれる中空状の部品である。
図4に示すように、ベアリングハウジング40は、軸方向D1に所定の長さを有する円環状部42と、当該円環状部42の端部から径方向外向きに広がるフランジ部43とを含む。円環状部42は、第2ハウジング穴52を取り囲む内周面とウォームギア31の外周面との間に挿入され、当該内周面に沿った形状となっている。円環状部42は、第2ハウジング穴52の内径と実質的に同一の外径を有している。
図3に示すように、フランジ部43には、ボルト41が貫通するボルト穴が複数形成されている。一方、
図4に示すように、ウォームギアハウジング50の端面54のうち第2ハウジング穴52の周囲には、ボルト41の軸部の外周面に形成された雄ねじが噛み合う雌ねじ穴が複数形成されている。ベアリングハウジング40は、円環状部42が第2ハウジング穴52に挿入されると共にフランジ部43の主面が端面54に接触した状態で、複数のボルト41によってウォームギアハウジング50に取り付けられている。この状態で、第1ハウジング穴53の中心軸、第2ハウジング穴52の中心軸、ウォームギア31の中心軸および円環状部42の中心軸は、それぞれ一致している。
【0036】
図5は、ウォームギア31の中心軸(回転軸R2)を含む部分断面図である。
図5に示すように、固定ベアリング33は、軸方向D1に複数(本実施の形態では2つ)並べて配置されている。各固定ベアリング33は、円環状部42の内周面42Aとウォームギア31の小径部の外周面34との間に嵌め込まれている。このため、ウォームギア31は、固定ベアリング33によって、ベアリングハウジング40に対して周方向に相対的に回転可能となっている。また
図5に示すように、円環状部42の先端は、径方向D2(軸方向D1に垂直な方向)の内向きに延在するように形成されている。当該延在部は、固定ベアリング33の軸方向D1の端面に接触している。固定ベアリング33は、例えばアンギュラベアリングであるが、これに限定されない。また、固定ベアリング33の数も特に限定されない。
【0037】
図5に示すように、円環状部42の内周面42Aとウォームギア31の外周面34との間には、軸方向D1において固定ベアリング33に対してモータブラケット60側に隣接すると共に、ウォームギア31の外周面34を取り囲む円環状の空間S1が形成されている。別の観点から説明すると、固定ベアリング33の軸方向D1の端面33A(モータブラケット60側を向く端面)は、円環状部42の軸方向D1の端面44(モータブラケット60側を向く端面)よりもウォームギアハウジング50側に位置している。すなわち、空間S1の軸方向D1の長さは、固定ベアリング33の端面33Aと円環状部42の端面44との間の軸方向D1の距離に相当する。なお、円環状部42の内周面42Aは、当該円環状部42の外周面42Bと中心軸が一致する円筒状の面である。
【0038】
モータブラケット60は、モータ80とベアリングハウジング40との間に配置される部品である。
図3に示すように、モータブラケット60は、ベース部61と、当該ベース部61からベアリングハウジング40側に突出すると共に円環形状を有する第1突出部62とを含む。ベース部61は、中空の略直方体形状を有している。ベース部61の両側面には、矩形状の開口が形成されている(
図3および
図4)。またベース部61の軸方向D1の両端面には、第1ブラケット穴60Aおよび第2ブラケット穴60Bがそれぞれ形成されている(
図3および
図4)。第1ブラケット穴60Aおよび第2ブラケット穴60Bは、略同径であり、軸方向D1に垂直な断面が円形である。第1ブラケット穴60Aおよび第2ブラケット穴60Bは、軸方向D1に互いに離間している。
【0039】
第1ブラケット穴60Aおよび第2ブラケット穴60Bは、例えばドリルなどを軸方向D1に直線移動させ、モータブラケット60を軸方向D1に貫通することにより形成されている。このため、第1ブラケット穴60Aおよび第2ブラケット穴60Bは、中心軸が互いに一致している。
【0040】
図3に示すように、第1突出部62は、ベース部61のうち軸方向D1の一方側を向く端面64からベアリングハウジング40に向かって突出しており、第1ブラケット穴60Aを取り囲んでいる。またベース部61のうち上記の端面64を含む壁部には、ボルト63が貫通する貫通穴が複数形成されている。一方、
図4に示すように、ベアリングハウジング40のフランジ部43の端面(モータブラケット60側を向く端面)には、ボルト63の軸部の外周面に形成された雄ねじが噛み合う雌ねじ穴が複数形成されている。モータブラケット60は、複数のボルト63によって、ベアリングハウジング40のフランジ部43に取り付けられている。
【0041】
図5に示すように、第1突出部62は、円環状部42の内周面42Aとウォームギア31の外周面34との間の空間S1に挿入されており、且つその外周面が内周面42Aに沿っている。また第1突出部62の先端面62Aは、固定ベアリング33の軸方向D1の端面33A、より具体的には固定ベアリング33の外輪の軸方向D1の端面に接触している。これにより、固定ベアリング33は、ウォームギアハウジング50側に向かって軸方向D1に予圧されている。また
図5に示すように、ウォームギア31は、第1ブラケット穴60Aからモータブラケット60内の中空部まで延びている。ウォームギア31の中心軸は、第1ブラケット穴60Aの中心軸に一致する。
【0042】
図6は、円環状部42および第1突出部62を、軸方向D1に沿って見た模式図である。
図6に示すように、本実施の形態では、第1突出部62は、円環形状を有しており、円環状部42の内周面42Aの周方向の全体に接触する。このため、第1突出部62は、軸方向D1に沿って見たときに(
図6)、円環状部42の内周面42Aに接触する部分から任意に選択される3点P1,P2,P3を結ぶ三角形の内側に当該円環状部42の中心C1が位置するように、円環状部42の内周面42Aに接触している。
【0043】
モータ80は、ウォームギア31を軸周りに回転させるためのものである。
図3に示すように、モータ80は、本体部85と、当該本体部85からモータブラケット60側に突出すると共に円環形状を有する第2突出部83とを含む。本体部85は、駆動源が収容された直方体形状のモータハウジング81と、当該モータハウジング81よりも径が大きく且つ当該モータハウジング81の軸方向D1の一方の端面(モータブラケット60側を向く端面)に取り付けられたプレート部材82とを含む。
【0044】
図3に示すように、第2突出部83は、プレート部品82の主面からモータブラケット60側に向かって軸方向D1に突出しており、モータ80の出力軸84を取り囲んでいる。
図5に示すように、この出力軸84の中心軸は、第2ブラケット穴60Bの中心軸と一致している。出力軸84の先端部は、カップリング71によってウォームギア31の第2端部31Cに連結されている。第2突出部83は、第2ブラケット穴60Bに挿入されており、当該第2ブラケット穴60Bを取り囲む内周面に沿っている。
【0045】
図7は、モータブラケット60および第2突出部83を、軸方向D1に沿って見た模式図である。
図7に示すように、本実施の形態では、第2突出部83は、円環形状を有しており、第2ブラケット穴60Bを取り囲む内周面の周方向の全体に接触している。このため、第2突出部83は、軸方向D1に沿って見たときに(
図7)、第2ブラケット穴60Bを取り囲む内周面に接触する部分から任意に選択される3点P4,P5,P6を結ぶ三角形の内側に第2ブラケット穴60Bの中心C2が位置するように、当該内周面に接触している。
【0046】
次に、本実施の形態に係るテーブル駆動装置1の動作について説明する。まず、モータ80が駆動すると、出力軸84の回転がカップリング71を介してウォームギア31に伝達される。これにより、ウォームギア31が軸周りに回転する。そして、ウォームギア31の回転が、第2ギア31Aと噛み合う第1ギア21Bが形成されたウォームホイール21に伝達される。その結果、ウォームホイール21が回転軸R1を中心に回転する。
【0047】
次に、本実施の形態に係るテーブル駆動装置1の作用効果について説明する。テーブル駆動装置1では、例えばドリルなどの工具を直線移動させる一工程によって第1ハウジング穴53および第2ハウジング穴52が形成されることにより、両穴の中心軸が一致している。このため、支持ベアリング32を第1ハウジング穴53に嵌め込み、ウォームギア31を支持ベアリング32および第2ハウジング穴52に挿入することにより、ウォームギア31の中心軸が第1ハウジング穴53および第2ハウジング穴52の中心軸に一致する。そして、第2ハウジング穴52の内径と実質的に同一の外径を有するベアリングハウジング40の円環状部42を、第2ハウジング穴52を取り囲む内周面とウォームギア31の外周面34との間に挿入することにより、円環状部42の中心軸が第1ハウジング穴53、第2ハウジング穴52およびウォームギア31の中心軸に一致する。
【0048】
この状態で、ブラケット60の第1突出部62を、円環状部42の内周面42Aとウォームギア31の外周面34との間において固定ベアリング33に対してモータブラケット60側に隣接する円環状の空間S1に挿入し、当該第1突出部62の外周面を円環状部42の内周面42Aに接触させることにより、モータブラケット60をベアリングハウジング40に対して容易に同軸上に配置することができる。しかも、第1突出部62が固定ベアリング33の軸方向D1の端面33Aに接触するため、第1突出部62により固定ベアリング33を軸方向D1に押さえることができる。したがって、固定ベアリング33を押さえるための部材を別途設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0049】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係るテーブル駆動装置について説明する。本実施の形態に係るテーブル駆動装置は、基本的に上記実施の形態1に係るテーブル駆動装置1と同様の構成を備え且つ同様の効果を奏するものであるが、軸部材の軸周りの回転によりテーブルが直線駆動する点において上記実施の形態1に係るテーブル駆動装置1とは異なっている。以下、上記実施の形態1に係るテーブル駆動装置1と異なる点についてのみ説明する。
【0050】
本実施の形態における軸部材は、例えばボールねじであり、モータ80を駆動させることによってねじ軸(図示しない)が軸周りに回転する。また本実施の形態におけるテーブルは、当該ボールねじのナットに固定されるものであり、ねじ軸の回転によってナットと共に直線駆動する。このように、本開示のテーブル駆動装置は、回転テーブル以外の用途においても適用可能である。
【0051】
(その他実施の形態)
ここで、その他実施の形態について説明する。第1突出部62は、上記の3点P1,P2,P3を結ぶ三角形の内側に中心C1が位置するように円環状部42の内周面42Aに接触していればよく、円環形状を有する場合に限定されない。例えば、第1突出部は、円環状部42の内周面42Aに接触すると共に周方向に互いに離間する複数の円弧状の部分からなっていてもよい。
【0052】
第2突出部83は、上記の3点P4,P5,P6を結ぶ三角形の内側に中心C2が位置するように第2ブラケット穴60Bを取り囲む内周面に接触していればよく、円環形状を有する場合に限定されない。例えば、第2突出部は、第2ブラケット穴60Bを取り囲む内周面に接触すると共に周方向に互いに離間する複数の円弧状の部分からなっていてもよい。またモータ80において、第2突出部83が省略されてもよい。
【0053】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0054】
1 テーブル駆動装置、10 ベース板、11 第1板部、11A 上面、11B 下面、12 第2板部、12A 上面、13 段差面、14 中央穴、15 第1凹部、16 第2凹部、20 転がり軸受(テーブル)、21 ウォームホイール、21A 外側軌道面、21B 第1ギア、22 内輪、23 転動体、23A 内側軌道面、24 カバー、30 ウォームギアユニット、31 ウォームギア(軸部材)、31A 第2ギア、31B 第1端部、31C 第2端部、32 支持ベアリング(第1軸受)、33 固定ベアリング(第2軸受)、33A 端面、34 外周面、40 ベアリングハウジング(第2ハウジング)、41 ボルト、42 円環状部、42A 内周面、42B 外周面、43 フランジ部、44 端面、50 ウォームギアハウジング(第1ハウジング)、51 長穴、52 第2ハウジング穴、53 第1ハウジング穴、54 端面、60 モータブラケット(ブラケット)、60A 第1ブラケット穴、60B 第2ブラケット穴、61 ベース部、62 第1突出部、62A 先端面、63 ボルト、64 端面、71 カップリング、80 モータ、81 モータハウジング、82 プレート部材、83 第2突出部、84 出力軸、85 本体部、B1 ネジ、C1,C2 中心、D1 軸方向、D2 径方向、L1,L2 距離、P1,P2,P3,P4,P5,P6 点、R1,R2 回転軸、S1 空間