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特許7329591自動車の空力負荷を制御するための調整装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】自動車の空力負荷を制御するための調整装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 35/00 20060101AFI20230810BHJP
   B62D 37/02 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
B62D35/00 A
B62D37/02 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021521165
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 IB2019058679
(87)【国際公開番号】W WO2020079545
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】102018000009561
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】399016318
【氏名又は名称】オートモビリ ランボルギーニ ソチエタ ペル アツイオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】リッチョ,ウーゴ
(72)【発明者】
【氏名】パリシ,リッカルド
(72)【発明者】
【氏名】トルルッチョ,アントニオ
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013711(JP,A)
【文献】特開2018-020582(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0151984(US,A1)
【文献】特開平03-090485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 35/00
B62D 37/02
F01P 7/10
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(A)の空力負荷を制御するための調整装置であって、
使用中に地面(S)に面する空力面(21)と前記空力面(21)を貫通させて形成された開口部(22)とを含む車体底部の空力のディフューザ(2)と、
空気流入(F1)を第1の部分(F11)と第2の部分(F12)とに分割するように構成されたパイプ(5)であって、第1の分岐(51)および第2の分岐(52)を含むパイプ(5)と、を備え、
前記第1の分岐(51)は、前記第1の部分(F11)である取り込まれるフロー(F11)を収容して且つその流出を可能にするように前記開口部(22)を通って前記ディフューザ(2)に通じており、
前記第2の分岐(52)は、前記空気流入(F1)の前記第2の部分(F12)を収容して且つその流出を可能にするように、前記自動車(A)のフロントホイール(W)部分に通じるように構成されており、
前記ディフューザ(2)は、前記自動車(A)の空気入口(P)によって受け入れられ且つ前記地面(S)上を走行する前記自動車(A)の前進運動によって生成される前記空気流入(F1)の少なくとも一部によって規定される、前記取り込まれるフロー(F11)を、前記開口部(22)を通して取り込むことができ、これにより、前記ディフューザ(2)によって取り込まれる前記少なくとも一部(F11)が前記ディフューザ(2)内の内部フロー(F3)になり、
前記装置(1)は、前記空力面(21)が前記地面(S)と共に前記前進運動中に前記内部フロー(F3)が流れる拡散ダクト(50)を規定するように、構成されており、
前記装置(1)は、
前記ディフューザ(2)に対して第1の位置と第2の位置との間で移動可能な空力要素(3)と、
前記空力要素(3)を移動するための移動システム(4)と、を備え、
前記移動システム(4)は、前記空力要素(3)を前記ディフューザ(2)に対して少なくとも前記第1の位置および前記第2の位置で動作可能に維持し、且つ前記空力要素(3)を前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動させるように構成され、
前記第1の位置において、前記空力要素(3)は前記内部フロー(F3)に浸され且つ前記前進運動中に前記自動車(A)に作用する第1の空力負荷を生成するように前記内部フロー(F3)が前記空力面(21)の空力プロファイルに沿うことを可能にし、
前記第2の位置において、前記空力要素(3)は少なくとも部分的に前記内部フロー(F3)に対する障壁として機能し、前記前進運動中に前記自動車に作用する第2の空力負荷を生成するように前記内部フロー(F3)を前記空力面(21)から離し、
前記装置(1)は、前記第2の空力負荷が前記第1の空力負荷よりも小さくなるように構成される、調整装置。
【請求項2】
前記空力要素(3)が前記第1の位置をとる場合、前記空力要素(3)は、前記空力要素(3)が前記第2の位置をとる場合よりも小さい閉塞効果を前記拡散ダクト(50)に及ぼし、その結果、前記空力面(21)によって前記ディフューザ(2)が前記内部フロー(F3)に及ぼす拡散効果が、前記空力要素(3)が前記第2の位置にある場合よりも前記第1の位置にある場合に大きくなり、前記第1の空力負荷が前記第2の空力負荷よりも大きいように、前記調整装置は構成されており、
前記調整装置は、前記第1の位置と前記第2の位置との両方で、前記空力要素(3)が前記拡散ダクトに沿って前記開口部(22)の下流で前記内部フロー(F3)の方向に配置されるように構成されている、請求項1に記載の調整装置。
【請求項3】
前記空力要素(3)は、第1の外面(31)と前記第1の外面(31)の反対側の第2の外面(32)とを有し、各々が前記空力要素(3)の前縁(3a)から後縁(3b)まで延び、
前記第1の位置では、前記空力要素(3)により、前記内部フロー(F3)と前記第1の外面(31)との接触および前記内部フロー(F3)と前記第2の外面(32)との接触の両方によって、前記内部フロー(F3)が前記ディフューザ(2)の前記空力面(21)のプロファイルに沿う、請求項1または2に記載の調整装置。
【請求項4】
前記空力要素(3)が翼の形状を有し、前記第1の外面(31)が前記翼の背面であり、前記第2の外面(32)が翼の底面である、請求項3に記載の調整装置。
【請求項5】
前記移動システム(4)が、
前記空力要素(3)が取り付けられているシャフト(41)であって、これにより、前記空力要素(3)が当該シャフト(41)の軸周りに当該シャフト(41)と一体として回転する、シャフト(41)と、
前記シャフト(41)に作用して回転を引き起こすアクチュエータ(42)であって、これにより、前記空力要素(3)の運動が、前記軸周りの回転運動となり、前記第1の位置と前記第2の位置が、前記軸周りの前記空力要素(3)の向きにおいて互いに異なる、アクチュエータ(42)と、を備える請求項1から4のいずれか1項に記載の調整装置。
【請求項6】
前記移動システム(4)が、
前記空力要素(3)が取り付けられているシャフト(41)であって、これにより、前記空力要素(3)が当該シャフト(41)の軸周りに当該シャフト(41)と一体として回転する、シャフト(41)と、
前記シャフト(41)に作用して回転を引き起こすアクチュエータ(42)であって、これにより、前記空力要素(3)の運動が、前記軸周りの回転運動となり、前記第1の位置と前記第2の位置が、前記軸周りの前記空力要素(3)の向きにおいて互いに異なる、アクチュエータ(42)と、を備え、
前記シャフト(41)は、前記空力要素(3)の前記前縁(3a)と前記後縁(3b)との間に位置し且つ前記拡散ダクト(50)に沿って前記開口部(22)の下流で前記内部フロー(F3)の方向に配置される、請求項4に記載の調整装置。
【請求項7】
前記ディフューザ(2)は2つの側面(23、24)を備え、前記2つの側面(23、24)は、前記空力面(21)を横切って延在し、前記拡散ダクトの側面の範囲を定め、前記シャフト(41)は前記2つの側面(23、24)によって支持されており、
前記空力面(21)は、前記拡散ダクトの上部の範囲を定め、
前記シャフト(41)は、前記空力要素(3)が前記第1の位置と前記第2の位置の両方で前記内部フロー(F3)の方向に前記拡散ダクトに沿って前記開口部(22)の下流で前記拡散ダクトの内側に配置されるように、前記拡散ダクトの内側に配置されている、請求項5または6に記載の調整装置。
【請求項8】
前記空力面(21)を規定する構造物を含み、この構造物は、前記自動車(A)の車体底部に組み込まれる、または取り付けられることができ、前記空力面(21)が前記自動車(A)の外部の車体底部面の一部を規定する、請求項1から7のいずれか1項に記載の調整装置。
【請求項9】
前記空気入口(P)を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の調整装置。
【請求項10】
前記移動システム(4)が、前記空力要素(3)を前記ディフューザ(2)に対して少なくとも第3の位置に動作可能に維持し且つ前記空力要素(3)を前記第1の位置または前記第2の位置と前記第3の位置との間で移動させるように構成され、前記第3の位置は前記第1の位置と前記第2の位置との間の中間である、請求項1から9のいずれか1項に記載の調整装置。
【請求項11】
前記ディフューザ(2)の前記空力面(21)が前記自動車(A)の外部の車体底部面の一部を規定する、請求項1から10のいずれか1項に記載の調整装置(1)を備える自動車(A)。
【請求項12】
前記空気入口と前記空気入口(P)と前記開口部(22)との間に配置されたラジエータ(R)とを含み、これにより、取り込まれるフロー(F11)が前記ラジエータ(R)を通って流れ、前記空力要素(3)が前記第2の位置にあるときの前記取り込まれるフロー(F11)は、前記空力要素(3)が前記第1の位置にあるときの前記取り込まれるフロー(F11)よりも小さく、前記取り込まれるフロー(F11)の減少は、前記空力要素(3)が前記第1の位置から前記第2の位置に移行することで規定され、前記取り込まれるフロー(F11)の減少は、前記自動車の抵抗を低減するように、前記ラジエータを通る前記空気流入(F1)の流量の減少をもたらす、請求項11に記載の自動車。
【請求項13】
前記調整装置が前記自動車(A)のフロントホイール(W)の前に配置される、請求項11または12に記載の自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車自体に取り付けられる少なくとも1つの車体底部のディフューザによって自動車に作用する空力負荷を調整するのに適した調整装置、およびその調整装置を含む自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車に作用する空力負荷の調整を可能にする装置であって、自動車の車体底部に形成される出口セクションを幾何学的に変えるために開閉する複数の可動シャッタを利用して、出口セクションを通ってその車体底部から外側に向けられる流れを調整する装置が存在する。複数のシャッタは、または単一のシャッタであっても、当該シャッタを動かすのに適したモータを含む移動システムによって動かすことができる。
【0003】
自動車の車体底部にシャッタを統合するには、シャッタをモータに接続するための中間の運動学的機構の存在が不可欠であり、それは、シャッタの近くに移動システムを統合するために必要な部品の構成を複雑にする。
【0004】
さらに、シャッタの位置決めは、シャッタおよび一般的な調整装置の部品の保守および/または必要に応じてシャッタおよび一般的な調整装置の部品の交換に必要な作業をかなり複雑にする。
【0005】
別の装置は、例えば文書DE102014111074に記載されており、閉じたダクトであって、バンパーへの圧力を増加させ且つ車両の前部領域に位置するダクトへの空気流を変更するための可動面を通して空力負荷が変更される閉じたダクトを示す。
【発明の概要】
【0006】
調整装置であって、この明細書による、および/または当該装置を保護することを目的とする添付の特許請求の範囲の請求項のいずれか1項による調整装置は、少なくとも1つの車体底部のディフューザによって生成される自動車に作用する空力負荷を制御して、従来技術と比較した装置の機械的複雑さを低減し、その負荷の重要な変動を得ることを可能にする。
【0007】
調整装置であって、この明細書による、および/または当該装置を保護することを目的とする添付の特許請求の範囲の請求項のいずれか1項による調整装置は、その空力負荷を制御し、従来技術と比較して、装置の部品の保守および交換のための作業を単純化することを可能にする。
【0008】
装置が可能にする空力負荷の制御は、必要に応じて、ユーザ入力に応じて、または完全に自動的に、車両の運動を特徴付ける1つまたは複数の運動学的パラメータの値に基づいて、生じ得る。
【0009】
この明細書による自動車は、この明細書による調整装置を備える。
【0010】
この明細書による調整装置および自動車の特徴は、その調整装置および自動車のそれぞれの例示的な実施形態に関連する以下に付加された説明によって明らかにされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下の詳細な説明は、添付の図面を参照する。
図1】装置が装置の第1の動作状態をとる間、この明細書による調整装置の可能な例示的な実施形態の動作を説明する側面図である。
図2】装置が装置の第2の動作状態をとる間、調整装置のその実施形態の動作を説明する側面図である。
図3】その可能な実施形態の上から見た斜視図である。
図4】装置が装置のその第1の動作状態をとる間、その可能な実施形態の下からの斜視図である。
図5】その装置が第1の動作状態をとる間、その実施形態の空力要素が動作する方法を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図3および4において、番号1は、この明細書による調整装置の可能な例示的な実施形態を示す。以下、装置とは、その例示的な実施形態を意味する。
【0013】
図1は、装置1が装置1の第1の動作状態をとる間、調整装置1の動作を示す概略側面図である。
【0014】
図2は、装置1が装置1の第2の動作状態をとる間、調整装置1の動作を示す概略側面図である。
【0015】
調整装置1は、自動車Aに作用する空力負荷を調整するように構成される。図では、装置1は自動車Aの一部として示されている。したがって、第1の動作状態および第2の動作状態は、それぞれ、自動車Aの第1の動作状態および自動車Aの第2の動作状態とみなすこともできる。
【0016】
自動車のその第1の動作状態および第2の動作状態は、自動車Aの通常の前進運動中の動作状況であると見なされる。
【0017】
その空力負荷は、地面S自体の上の自動車Aの通常の前進運動中、地面Sに向かって作用する場合、正であると見なされる。通常の前進運動には、自動車の運動が直線軌道に沿って生じる場合と、自動車の運動が任意の曲線軌道に沿って生じる場合との両方が含まれる。抵抗(drag)が前進運動とは反対方向を持つ場合、抵抗は正と見なされる。
【0018】
したがって、装置1および/または自動車Aの第1の動作状態および第2の動作状態の各々は、自動車Aの任意の通常の前進運動中に生じ得る。
【0019】
以下に明らかにされるように、装置1を考慮すれば、第1の動作状態は、自動車Aの最大空力負荷構成に対応し、第2の動作状態は、自動車Aの最小空力負荷構成に対応する。
【0020】
装置1は、車体底部の空力ディフューザ2を備える。
【0021】
ディフューザ2は、地面Sに面する、または地面Sに向けられる空力面21を備える。
【0022】
使用中、空力面21は少なくとも部分的に、拡散ダクト50の上部の範囲を定め、その底部は、地面Sによって範囲を定められる。
【0023】
ディフューザ2は、空力面21によって作動し、上記の空力負荷を発生させる。特に、ディフューザ2は、その第1の動作状態およびその第2の動作状態の両方において、拡散ダクト50が空力面21と地面Sとの間に規定されるように構成される。
【0024】
拡散ダクト50は、空力面21と地面との間に実質的に限定される。
【0025】
ディフューザ2は、開口部22を備える。開口部22は、空力面21を通って形成されている。その開口部22は、ディフューザ2が第1の空気流入F1の少なくとも一部を取り込むことを可能にする。その第1の空気流入F1は、自動車Aの空気入口Pによって受け入れられる。第1の空気流入F1は、自動車Aの前進運動によって生成され、好ましくは、自動車のラジエータRを通過する。
【0026】
使用中、開口部22は、自動車Aの前進運動方向を考慮して、ラジエータRの下流に位置している。
【0027】
したがって、開口部22を通って取り込まれる流入の一部は、ディフューザ2内の内部フローとなる。その内部フローは、図1および2でF3とラベル付けされている。その内部フローF3は、上記の拡散ダクト50内を流れる。
【0028】
空気入口Pが受け入れる第1の流入F1は図1図2に示されている。
【0029】
調整装置1は、フローを運ぶためのパイプ5を備える。パイプ5は、好ましくは、流入F1を第1のシェア部(share)すなわち第1の部分F11と、第2のシェア部すなわち第2の部分F12とに分割するように構成される。第1の流入F1の第1のシェア部F11は、ディフューザ2によって取り込まれ且つ拡散ダクト50に向かって運ばれる第1の流入F1の上記一部に対応する。第1の流入F1の第2のシェア部F12は、ディフューザ2を通過することなく、例えば、自動車AのホイールWに向けられる。したがって、第1の流入F1の第1のシェア部F11は、「取り込まれるフロー」と定義され得る。したがって、パイプ5は、第1のシェア部F11がディフューザ2によって取り込まれるフローであり且つ第2のシェア部F12がディフューザ2を通過せずにホイールWに向けられるように、構成される。
【0030】
パイプ5は、第1の分岐51および第2の分岐52を含む。第1の分岐51は、取り込まれたフローF11を収容して且つその流出を可能にするように、開口部22によっておよび/または開口部22を通って、ディフューザ2に開口している、および/またはディフューザ2に通じる。第2の分岐52は、第1の流入F1の第2のシェア部F12を収容して且つその流出を可能にするように、ホイールW部分に開口している、および/またはホイールW部分に通じる。
【0031】
例えば、図示のように、第2の分岐52は、拡散ダクト50に通じる開口部22に対応して、入口および出口を有する。
【0032】
図1および図2に示されているように、取り込まれたフローF11は、第2の空気流入F2と合わさる。上記の前進運動によって生成されたその第2の流入は、空気入口Pを通過することなく、自動車Aの車体底部と地面Sとの間、すなわち、拡散ダクト50に直接入る。取り込まれたフローF11と第2の流入F2は、内部フローF3をもたらすようにディフューザ2内で合わさる。したがって、その内部フローF3は、ディフューザ2内および開口部22の下流に位置するフローを示し、その結果、内部フローF3は、第1の流入F1の第1のシェア部F11すなわち取り込まれたフローF11、および第2の流入F2の両方を実質的に含むと見なすことができる。その取り込まれたフローF11とその第2の流入F2は、開口部22の下流で合わされて、内部フローF3をもたらす。
【0033】
内部フローF3は、空力面21と地面Sとの間を流れる。内部フローF3は、上記の拡散ダクト50内を流れ、その意味で「内部」として示されている。
【0034】
空力の観点から、空力面21は、ディフューザ2が、その空力面21によって、拡散ダクト内を流れるその内部フローF3に拡散効果を及ぼすことができるように、形作られている。その拡散効果は、その空力負荷に影響を与える。
【0035】
装置1は、例えば図1および4に示される第1の位置と、例えば図2に示される第2の位置との間で移動可能な空力要素3を備える。
【0036】
装置1は、空力要素3を移動させるための移動システム4を備える。
【0037】
装置1は、空力要素3が、ディフューザ2に対して、および/または空力面21に対して少なくとも第1の位置をとることができるように、構成されている。装置1は、空力要素3が、ディフューザ2に対して、および/または空力面21に対して少なくとも第2の位置をとることができるように、構成されている。図1図4では、空力要素3がその第1の位置をとる。図2では、空力要素3がその第2の位置をとる。
【0038】
装置1は、空力要素3が、ディフューザ2に対して、および/または空力面21に対して、図示されていない少なくとも第3の位置をとることができるように、構成されている。
【0039】
第3の位置は、第1の位置と第2の位置との中間である。
【0040】
空力要素3が第1の位置をとる場合、装置1は、第1の動作状態、すなわち最大空力負荷の状態をとる。
【0041】
空力要素3が第2の位置をとる場合、装置1は、第2の動作状態、すなわち最小空力負荷の状態をとる。
【0042】
空力要素3が第3の位置をとる場合、装置1は、第1の動作状態と第2の動作状態との間の中間の動作状態をとる。
【0043】
別の態様によれば、空力要素3が第1の位置をとる場合、取り込まれるフローF11が最大化され、その結果、空気入口Pに入る流入F1が増加する。
【0044】
示されるように、開口部22は、好ましくは、空気入口Pと開口部22との間に配置されたままであるラジエータRの下流にあり、空力要素3が第1の位置にあることを考慮すると、ラジエータ自体に影響を与える流入F1が最大化される。
【0045】
第1の動作状態は、空力要素3のその第1の位置に対応し、第2の動作状態は、空力要素3のその第2の位置に対応する。
【0046】
移動システム4は、その前進運動の間、その空力要素3をその第1の位置に動作可能に維持するように構成される。
【0047】
移動システム4は、その前進運動の間、その空力要素3をその第2の位置に動作可能に維持するように構成される。
【0048】
移動システム4は、その前進運動の間、その空力要素3をその第3の位置に動作可能に維持するように構成される。
【0049】
移動システム4は、空力要素3を第1の位置と第2の位置との間で、したがって第1の位置から第2の位置に、またはその逆に移動させ、好ましくは第3の動作位置を通過させるように構成される。したがって、移動システム4は、その装置1および/またはその自動車の第1の動作状態から第2の動作状態への、またはその逆への移行を引き起こすように構成される。
【0050】
装置1は、自動車の前進運動中に、空力要素3が第1の位置をとる間、空力要素3が内部フローF3に浸されるように、構成される。
【0051】
装置1は、自動車の前進運動中に空力要素3が第1の位置をとる場合、空力要素3が自動車Aに作用する第1の空力負荷を生成するように、内部フローF3が空力面21の空力プロファイルに沿うことを可能にするように、構成される。言い換えれば、その前進運動中に空力要素3が第1の位置をとる場合、空力要素3は、自動車Aに作用する第1の空力負荷を生成するように、内部フローF3が空力面21の空力プロファイルに沿うことを可能にする。
【0052】
装置1は、自動車のその前進運動中に空力要素3が第2の位置をとる場合、空力要素3が少なくとも部分的に内部フローF3に対する障壁として作用し、自動車Aに作用する第2の空力負荷を生成するように、空力面21から内部フローを離すように、および/または内部フローF3を空力面21に近づけないように、構成される。装置1は、第2の空力負荷が第1の空力負荷よりも小さくなるように構成される。
【0053】
言い換えれば、その前進運動中に空力要素3が第2の位置をとる場合、空力要素3は、内部フローを空力面21から離して、および/または内部フローF3を空力面21に近づけず、その結果、第2の空力負荷は、第1の空力負荷よりも小さくなる。
【0054】
装置1は、自動車のその前進運動中に空力要素3が第3の位置をとる場合、空力要素3が少なくとも部分的に内部フローF3に対する障壁として作用し、第1の空力負荷と第2の空力負荷との中間である自動車Aに作用する第3の空力負荷を生成するように、内部フローを空力面21から離すように、および/または内部フローF3を空力面21に近づけないように、構成される。装置1は、第3の空力負荷が第1の空力負荷と第2の空力負荷との中間になるように、構成される。
【0055】
言い換えれば、その前進運動中に空力要素3が第3の位置をとる場合、空力要素3は、内部フローを空力面21から離して、および/または内部フローF3を空力面21に近づけず、その結果、第3の空力負荷は、第1の空力負荷と第2の空力負荷との中間となる。
【0056】
別の見方をすれば、その前進運動中に空力要素3が第2の位置をとる場合、空力要素3は、取り込まれたフローF11と第2の流入F2の両方に作用し、その結果、取り込まれたフローF11および第2の流入F2の組み合わせから生じる内部フローF3は、第2の空力負荷が第1の空力負荷よりも小さくなるように、空力面21から離れ、および/または空力面21に近づかない。
【0057】
別の見方をすれば、装置1は、空力要素3が第1または第3の位置をとる場合、空力要素3がその第2の位置をとる場合よりも少ない程度でその拡散ダクトを閉塞するように構成される。
【0058】
別の見方をすれば、その拡散ダクトの閉塞の程度、つまり、その空力要素3によって引き起こされる閉塞の程度は、それが第2の位置にある場合よりも第1の位置および第3の位置にある場合に小さい。
【0059】
装置1は、空力要素3がそれらの第1および第3の位置をとる場合、およびその第2の位置をとる場合の両方で、空力要素3がその拡散ダクト50に沿って且つその開口部22の下流でその内部フローF3の方向に配置および/または位置するように、構成される。
【0060】
空力要素3は、第2の位置をとる場合、少なくとも2つの主な効果を有する。すなわち、それは、空力面21への圧力を増加させ、それにより開口部22を通して取り込まれるフローF11の量を減少させ、そして第二に、それは、取り込まれたフローF11と第2の流入F2との両方を空力面21から遠ざける。このようにして、装置が第2の動作状態をとる場合、上記の第1の空力負荷よりも小さい第2の空力負荷が自動車Aに発生する。
【0061】
これは、実質的に、空力要素3が、第2の位置をとる場合、取り込まれたフローF11および第2の流入F2の組み合わせから生じる内部フローF3を空力面21に対して遠ざける、および/または空力面から遠ざける傾向があることを意味する。その遠ざけ効果により、内部フローF3は、内部フローF3の拡散の機能が割り当てられている空力面21に沿わなくなる。したがって、空力要素3が第2の位置をとるときに生成されて自動車Aに作用するその第2の空力負荷は、第1の空力負荷よりも小さい。別の観点から、ディフューザ2が内部フローF3に及ぼす拡散効果は、空力要素3が第1の位置をとるときよりも空力要素3が第2の位置をとるときの方が小さい。これは、空力要素3が第2の位置をとる場合、内部フローF3が空力面21から離れており、したがって空力面21の空力プロファイルに沿わないためである。対照的に、空力要素3が第1の位置をとる場合、内部フローF3は、空力面21の空力プロファイルに実質的に自由に沿い、内部フローF3に対するディフューザ2によるより大きな拡散効果を引き起こし、したがって、第1の空力負荷が第2の空力負荷よりも大きくなるようになる。
【0062】
別の態様によれば、開口部22は、自動車Aの前進運動方向を考慮して、好ましくはラジエータRの下流に配置される。
【0063】
このようにして、開口部22を通して、空気入口Pによって受け入れられた流入F1の第1のシェア部が取り込まれ、取り込まれたフローF11を規定する。
【0064】
空力要素3が第2の位置にあるとき、取り込まれるフローF11の量はほぼゼロに減少する。
【0065】
取り込まれるフローF11の流量のその減少は、自動車Aの抵抗を減少させるように、ラジエータRを通る流量の減少をもたらす。
【0066】
言い換えれば、ラジエータRの下流で作用する空力要素3は、空気入口Pを通る流入F1を変え、その結果、抵抗が改善される(空力要素3が第2の位置にあるとき)。
【0067】
手短に言えば、装置1は、空力要素3が第2の位置をとるときよりも第1の位置または第3の位置をとるときの方が、ディフューザ2が内部フローF3に及ぼす拡散効果が大きくなり、その結果、第1の空力負荷および第3の空力負荷が第2の空力負荷よりも大きくなるように、構成される。
【0068】
さらに、空力要素3の第1の位置および第3の位置は、第2の位置と比較して、内部フローF3に対するディフューザ2のより大きな拡散効果を引き起こすので、第1の流入F1に対するディフューザ2の効果を取り入れることは、空力要素3が第2の位置をとるときよりも第1の位置または第3の位置をとるときの方が大きい。したがって、空力要素3の第1の位置および第3の位置は、第2の位置と比較して、内部フローF3に対するディフューザ2のより大きな拡散効果と、第1の流入F1に対するディフューザ2のより大きな取り込み効果の両方を引き起こす。したがって、空力要素3が第1の位置または第3の位置をとる場合、ディフューザ2に入ると内部フローF3を引き起こす第1の流入F1のシェア部F11が増加する。
【0069】
さらに、空力要素3が第2の位置をとり、フローを空力面21から離す場合、内部フローF3は、抵抗の源となるサスペンションの機械的部品を回避するような方向を有する。したがって、空力要素3が第2の位置をとる場合、第1の位置をとる場合と比較して抵抗が減少し、これは、自動車の最大速度および消費の削減の点で有利である。
【0070】
したがって、空力要素3の第2の位置は、自動車により小さな抵抗を生じさせ、ここで、抵抗は、前進運動とは反対方向に作用し且つ第1の流入F1および第2の流入F2に由来する空力の部分を意味する。
【0071】
図5は、空力要素3の可能な実施形態を示す。その例では、空力要素は空力フラップの形状をしており、したがって翼の形状をしている。
【0072】
空力要素3は、第1の外面31を有する。空力要素3は、第1の外面31とは反対側の第2の外面32を有する。第1の外面31および第2の外面32の各々は、空力要素3の前縁3aから後縁3bまで延びる。第1の外面31はフラップの背面(back side)であり、第2の外面32はフラップの底面(underside)である。
【0073】
例えば図5に示されるように、調整装置1は、空力要素3のその第1の位置において、空力要素3が、内部フローF3の第1の外面31との接触および内部フローF3の第2の外面32との接触の両方によって、内部フローF3をディフューザ2の空力面21のプロファイルに沿わせるように、構成される。
【0074】
移動システム4は、シャフト41を備える。空力要素はシャフト41に取り付けられており、これにより、空力要素3はシャフト41の軸を中心にシャフト41と一体となって回転する。シャフト41は、その拡散ダクトに沿って、その内部フローF3の方向に配置され、その結果、空力要素3は、その第1の位置および第3の位置並びにその第2の位置の両方で、その開口部22の下流に位置する。
【0075】
移動システム4は、アクチュエータまたはモータ42を備える。モータ42はシャフト41に作用して回転を引き起こす。このように、上記の第1の位置と第2の位置との間の空力要素3の上記運動は、シャフト41の軸の周りの回転運動である。空力要素3の第1の位置、第2の位置、および第3の位置は、シャフト41の軸周りの、およびディフューザ2に対する、および/または空力面21に対する、空力要素3の向きにおいて、互いに異なる。したがって、その第1の位置は、空力面21に対するおよびシャフト41の軸周りの空力要素3の第1の向きとして規定することもでき、その第2の位置は、空力要素3に対するおよびシャフト41の軸周りの空力要素3の第2の向きとして規定することもでき、その第3の位置は、空力面21に対するおよびシャフト41の軸周りの空力要素3の第3の向きとして規定することもできる。
【0076】
特に、空力要素3の第1および第3の向きは、空力要素3の第2の向きと比較して、内部フローF3に対するディフューザ2のより大きな拡散効果を引き起こす。このため、第1の空力負荷および第3の空力負荷は、第2の空力負荷よりも大きくなる。空力要素3の第1および第3の向きはまた、空力要素3の第2の向きと比較して、ホイールWのサスペンションに向けられるより大きなフローのために抵抗の増加を引き起こす。
【0077】
使用中、空力要素3が第2の位置または第2の向きをとるとき、ディフューザ2は、それが無効にされたか、または少なくとも部分的に無効にされたかのようである。したがって、第1の空力負荷および第3の空力負荷は、第2の空力負荷よりも大きくなる。
【0078】
図5では、シャフト41は、その軸と一致するかのように概略的に示されている。
【0079】
シャフト41は、空力要素3の空力翼弦cに対して横方向および/または直交するように配置され、図5に見られるように、空力要素3の前縁3aと後縁3bとの間に位置する。
【0080】
ディフューザ2は、第1の側面23を備える。ディフューザ2は、第2の側面24を備える。第1の側面23は、空力面21に対して横方向に延びる。第2の側面24は、空力面21に対して横方向に延びる。第1の側面23および第2の側面24は、横方向にその内部フローF3の範囲を定める。シャフト41は、第1の側面23および第2の側面24によって支持されている。
【0081】
第1の側面23および第2の側面24は、横方向に上記の拡散ダクト50の範囲を定める。空力面21は、上記の拡散ダクト50の上部の範囲を定める。
【0082】
第1の側面23、第2の側面24、およびそれらの間の空力面21は、拡散ダクト50の範囲を定める。
【0083】
シャフト41は、拡散ダクト50の内側に配置されている。空力要素3は、第1の位置、第2の位置および第3の位置で、好ましくはダクトの内側に配置される。
【0084】
好ましい実施形態では、空力要素3をフラップと見なすと、調整装置1をフラップ3の第2の位置または向きに対応する第2の動作状態からフラップ3の第1の位置または向きに対応する第1の動作状態に移すのに必要なエネルギーは、流体力学シミュレーションおよびプロトタイプでの試験に基づいて、フラップ3の回転軸、したがってシャフト41の軸の最適な位置が選択されたので、減少する。回転軸はニュートラル軸であり、第2の位置でまた最小のエネルギー消費でそれを維持するのに有利であり、フラップ3の外面は、フラップ3の他のすべての安定な状態および/または一時的な状態と比較してより大きな圧力にさらされる。
【0085】
さらに、フラップ3がシャフト41によって支持されているという事実は、移動システム4をディフューザ2に統合するために必要な機械的部品の構造的複雑さを低減する。フラップ3を動かすためにモータ42が接続しなければならない要素であるシャフト41は、実際には、モータ42との接続をより簡単にするように配置されている。
【0086】
モータ42は、シャフト41の軸と一致するモータ駆動軸の周りに直接作用することができ、その軸を横切る伝達通路はない。これにより、調整装置1の構成が大幅に簡素化される。
【0087】
調整装置1は構造物(structure)を含む。その構造物は、空力面21を規定するものと見なされる。構造物は、空力面21が自動車Aの外部車体底部面の一部を規定するように、自動車Aの車体底部に組み込まれ、および/または取り付けられ得る。
【0088】
その構造物はまた、側面23および24を規定すると見なすことができ、その場合、それらの側面はまた、車体底部面のその部分を規定することに寄与する。
【0089】
調整装置1はまた、空気入口P自体を含み得る。
【0090】
調整装置1はまた、ラジエータRを含むことができる。ラジエータRは、空気入口Pと開口部22との間に配置され、その結果、空気入口Pによって受け入れられた流入F1の上記の第1のシェア部F11は、ディフューザ2に入り取り込まれる前に、ラジエータRを通過する。
【0091】
したがって、空力要素3の第1の位置では、空力要素3が第2の位置にあるときよりも第1のシェア部F11が大きく、ラジエータRの冷却効果が大きくなる。
【0092】
この明細書による可能な自動車Aは、調整装置1を備える。ディフューザ2の空力面21は、自動車Aの車体底部面の一部を規定している。
【0093】
調整装置1は、好ましくは、自動車Aの好ましくはフロントホイールWの前に配置される。
【0094】
上記の特徴の各々は、いずれの場合でも、他の上記の特徴の1つまたは複数の任意のグループと組み合わせて、この明細書による装置の1つまたは複数のさらなる実施形態を生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】
【文献】DE102014111074
図1
図2
図3
図4
図5