(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】シール検査装置及びシール検査方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/20 20060101AFI20230810BHJP
H01M 8/0271 20160101ALI20230810BHJP
【FI】
G01M3/20 B
H01M8/0271
(21)【出願番号】P 2021554827
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2020032917
(87)【国際公開番号】W WO2021090563
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2019200509
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】笠井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】輕部 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】但野 光
(72)【発明者】
【氏名】竹越 雅史
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 敬之
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-334713(JP,A)
【文献】特開2016-038981(JP,A)
【文献】特開2017-072414(JP,A)
【文献】特開2018-141712(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109301286(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/20
H01M 8/0271
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の治具であって、
検査対象
の有する検査対象シールにより囲まれるポートと、
外部漏れ検出流路に接続される貫通孔と、
を有する第1の治具と、
前記第1の治具との間に前記検査対象を挟持する第2の治具と、
前記第1の治具及び前記第2の治具とともに、前記検査対象が配置された空間を閉空間とする検査箇所密封部と、
検査ガスの供給源及び排気系の双方と前記ポートとを接続する加圧バルブと、
前記検査ガスのデテクタと、
前記デテクタと前記ポートとを接続する第1の測定バルブと、
前記外部漏れ検出流路と前記デテクタとを接続する第2の測定バルブと、
を有
し、
前記第1の治具及び前記第2の治具は、前記検査対象シールと接触する、シール検査装置。
【請求項2】
前記第1の治具は、複数の前記ポートを有し、
前記シール検査装置は、複数の前記ポートの各々に対応する複数の前記第1の測定バルブであって、開閉により検査対象となる前記ポートを切替可能な複数の前記第1の測定バルブを有する、
請求項1に記載のシール検査装置。
【請求項3】
前記検査ガスには、ヘリウムガス又は水素ガスが含まれる、
請求項1又は2に記載のシール検査装置。
【請求項4】
前記検査ガスの流路に接続され、前記検査ガスを回収する検査ガス回収機を更に有する、
請求項1~3のいずれかに記載のシール検査装置。
【請求項5】
前記デテクタは、原子数測定器である、
請求項1~4のいずれかに記載のシール検査装置。
【請求項6】
前記検査箇所密封部の外周を囲う外周密封部であって、前記検査箇所密封部との間に真空引き空間を画定する外周密封部と、
前記真空引き空間と真空ポンプとを接続する真空ポンプ側バルブと、
を更に有する、
請求項1~5のいずれかに記載のシール検査装置。
【請求項7】
第1の治具であって、
検査対象により囲まれるポートと、
外部漏れ検出流路に接続される貫通孔と、
を有する第1の治具と、
前記第1の治具との間に前記検査対象を挟持する第2の治具と、
前記第1の治具及び前記第2の治具とともに、前記検査対象が配置された空間を閉空間とする検査箇所密封部と、
検査ガスの供給源及び排気系の双方と前記ポートとを接続する加圧バルブと、
前記検査ガスのデテクタと、
前記デテクタと前記ポートとを接続する第1の測定バルブと、
前記外部漏れ検出流路と前記デテクタとを接続する第2の測定バルブと、
を有し、
前記検査箇所密封部の外周を囲う外周密封部であって、前記検査箇所密封部との間に真空引き空間を画定する外周密封部と、
前記真空引き空間と真空ポンプとを接続する真空ポンプ側バルブと、
を更に有する、シール検査装置。
【請求項8】
第1の治具に設けられたポートと、外部漏れ検出流路に接続される貫通孔との各々を
囲む検査対象シールを有する検査対象を、前記第1の治具と第2の治具とにより
前記検査対象シールと接触している状態で挟持して真空引きすることにより、前記検査対象
シールにより囲まれた真空状態の閉空間を形成し、
前記閉空間のうち測定対象となる前記ポートを含む閉空間に検査ガスを導入し、
前記閉空間のうち前記測定対象となる前記ポート
を含む閉空間以外の閉空間に漏れた検査ガスを検出する
ことで前記検査対象シールを検査する、
シール検査方法。
【請求項9】
前記ポートは複数設けられており、
複数の前記ポートの各々
と対応する
ように設けられた複数
の第1の測定バルブを開閉することにより、前記測定対象となる前記ポートを切り替える、
請求項8に記載のシール検査方法。
【請求項10】
前記検査ガスには、ヘリウムガス又は水素ガスが含まれる、
請求項8又は9に記載のシール検査方法。
【請求項11】
前記検査ガスを回収する、
請求項8~10のいずれかに記載のシール検査方法。
【請求項12】
前記閉空間のうち前記測定対象となる前記ポート以外の閉空間に漏れた検査ガスを、原子数測定器で検出する、
請求項8~11のいずれかに記載のシール検査方法。
【請求項13】
前記測定対象となる前記ポートの外周を囲う真空引き空間を真空引きすることにより、前記検査対象
シールを圧縮する、
請求項8~12のいずれかに記載のシール検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール検査装置及びシール検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車載用燃料電池に使用されるセルシールは、水素、酸素及びこれらを冷却する冷媒を分離するため、透過漏れのみ許容される程度の極めて高いシール性が要求される。そのため、車載用燃料電池に使用されるセルシールの検査においては、透過漏れと同程度又はこれに準ずる程度の微量の漏れであっても、高精度且つ短時間に測定することが求められる。
【0003】
従来、このような微量の漏れを高精度且つ短時間に測定する方法として、圧力変化法をはじめとした様々な手法が提案されている。
しかしながら、従来の手法によれば、測定に要する時間が長い、又は微小な漏れを高精度で測定することが難しいといった問題があった。
このような問題を解決するために、真空引き可能なチャンバー内で、検査ガスの吸気側と排気側との間に検査対象を配し、検査対象からの微量の漏れを検出する技術の適用が考えられる。
【0004】
従来技術の一例である特開2012-251849号公報は、検査対象はセルシールではないが、開口部を有する容器状のワークに対するファインワークテストの検査精度を向上させることを目的とする。ここでは、チャンバー内の検査ガスの吸気ポートと検出系との間に検査対象である開口部を有する容器状のワークを配し、検査ガスであるヘリウムガスをチャンバー内に導入し、検出系において検査ガスであるヘリウムガスの有無を検出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術によれば、検査対象からの微量の漏れの検出が可能であるものの、検査装置の構成については、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、従来よりも高精度且つ短時間で検査可能であり、簡略な構成でシール検査を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、
第1の治具であって、
検査対象の有する検査対象シールにより囲まれるポートと、
外部漏れ検出流路に接続される貫通孔と、
を有する第1の治具と、
前記第1の治具との間に前記検査対象を挟持する第2の治具と、
前記第1の治具及び前記第2の治具とともに、前記検査対象が配置された空間を閉空間とする検査箇所密封部と、
検査ガスの供給源及び排気系の双方と前記ポートとを接続する加圧バルブと、
前記検査ガスのデテクタと、
前記デテクタと前記ポートとを接続する第1の測定バルブと、
前記外部漏れ検出流路と前記デテクタとを接続する第2の測定バルブと、
を有し、
前記第1の治具及び前記第2の治具は、前記検査対象シールと接触する、
シール検査装置である。
【0008】
本発明の第2の観点は、
第1の治具に設けられたポートと、外部漏れ検出流路に接続される貫通孔との各々を囲む検査対象シールを有する検査対象を、前記第1の治具と第2の治具とにより前記検査対象シールと接触している状態で挟持して真空引きすることにより、前記検査対象シールにより囲まれた真空状態の閉空間を形成し、
前記閉空間のうち測定対象となる前記ポートを含む閉空間に検査ガスを導入し、
前記閉空間のうち前記測定対象となる前記ポートを含む閉空間以外の閉空間に漏れた検査ガスを検出することで前記検査対象シールを検査する、
シール検査方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来よりも高精度且つ短時間で検査可能であり、簡略な構成でシール検査を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1のシール検査装置が備える下治具上にサンプルが配置された状態を示す図
【
図2】実施形態1のシール検査装置の全体構成を示す図
【
図3】実施形態1のシール検査方法であって、
図1、
図2に示す構成に適用されるシール検査方法を示すフローチャート
【
図4】実施形態1のシール検査装置の検査時の状態を示す図
【
図5】実施形態2のシール検査装置の検査時の状態を示す図
【
図6】実施形態3のシール検査装置の検査時の状態を示す図
【
図7】実施形態4のシール検査装置が備える下治具上にサンプルが配置された状態を示す図
【
図8】実施形態4のシール検査装置の全体構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態について図面を参照して以下に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態の記載によって限定解釈されるものではない。
【0012】
<実施形態1>
本実施形態のシール検査装置10は、
図2に示すように、下治具(第1の治具)11及び上治具(第2の治具)12を有する。下治具11と上治具12との間に、検査対象であるサンプル20が配置される。検査ガスとしては、ヘリウムガスが用いられる。
なお、以下の説明において、ヘリウムガスを単にHeガスと表記することがある。また、検査ガスのガス種は特に限定されるものではなく、ヘリウムガスの他に、水素ガスや、ヘリウムガス又は水素ガスが希釈されたガスを用いてもよい。ここで、希釈に用いるガスは、例えば、窒素ガスである。
【0013】
図1は、本実施形態のシール検査装置10が備える下治具11上にサンプル20が配置された状態を示す。
図1に示すサンプル20の一端辺である第1の端辺20A側には、Aポート(第1のポート)101と、Bポート(第2のポート)102と、Cポート(第3のポート)103と、がこの順に設けられる。
【0014】
また、サンプル20の第1の端辺20Aに対向する第2の端辺20B側には、Cポート(第3のポート)103と、Bポート(第2のポート)102と、Aポート(第1のポート)101とが設けられる。第2の端辺20B側のCポート103は、第1の端辺20A側のAポート101と対向する位置に配置される。第2の端辺20B側のBポート102は、第1の端辺20A側のBポート102と対向する位置に配置される。第2の端辺20B側のAポート101は、第1の端辺20A側のCポート103と対向する位置に配置される。
【0015】
なお、本実施形態のシール検査装置10が燃料電池に適用される場合においては、Aポート101、Bポート102及びCポート103は、マニホールドと呼ばれる流路孔であり、2つのAポート101の間は、燃料ガス又は酸化ガスを流す多数の流路溝が形成される発電部を形成する。
【0016】
サンプル20は、検査対象シール21を有する。検査対象シール21は、2つのAポート101の双方を含む領域22を囲う部分と、2つのBポート102の各々を囲う部分と、2つのCポート103の各々を囲う部分と、を有する。
また、
図1に示すように、サンプル20は、検査箇所密封部30によって囲まれる。サンプル20の配置される空間は、閉空間とされる。検査箇所密封部30は、例えば、ガスケットであるが、これに限定されるものではない。検査箇所密封部30としては、ゴム製ガスケットが特に好ましい。
【0017】
図2は、本実施形態のシール検査装置10の全体構成を示す図である。なお、
図2には、
図1に示すX-Xにおける断面図が含まれる。
【0018】
検査対象シール21を備えるサンプル20は、下治具11と、上治具12と、の間に挟持される。また、サンプル20が備える検査対象シール21は、検査箇所密封部30とAポート101との間、Aポート101とBポート102との間、Bポート102とCポート103との間、Cポート103と検査箇所密封部30との間の各々に配置される。
【0019】
なお、Cポート103と検査箇所密封部30との間には、下治具11に外部漏れ検出流路104が設けられるが、本発明はこれに限定されるものではない。下治具11には、少なくとも外部漏れ検出流路104に接続される貫通孔が設けられていればよい。
同様に、Aポート101、Bポート102及びCポート103についても、下治具11には少なくとも貫通孔が設けられていればよい。
【0020】
図2には、検査対象シール21を備えるサンプル20として、車載用燃料電池に使用されるセルシールが例示される。
図2に例示した検査対象シール21は、溶接された2枚の金属板の下治具11に対向する面及び上治具12に対向する面の各々に、互いに離間したシール部がゴム状弾性材料によって設けられる。
ここで、2枚の金属板の間は溶接部分によってシールされているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
なお、シール部に適用されるゴム状弾性材料は、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコーンゴム(VMQ)、フッ素ゴム(FKM)、パーフルオロゴム(FFKM)であるが、これらに限定されるものではなく、他のゴム状弾性材料でもよい。
ただし、検査対象シール21は、金属板を備える構成に限定されるものではなく、検査対象シール21を備えるサンプル20は、ゴム状弾性材料のみで形成されてもよい。
【0022】
また、シール検査装置10は、加圧バルブ群110及び測定バルブ群120を有する。Aポート101、Bポート102及びCポート103は、加圧バルブ群110及び測定バルブ群120の各々に接続される。
加圧バルブ群110は、Aポート用加圧バルブ111、Bポート用加圧バルブ112及びCポート用加圧バルブ113を有する。
測定バルブ群120は、Aポート用測定バルブ121、Bポート用測定バルブ122及びCポート用測定バルブ123を有する。
【0023】
Aポート101は、下治具11内の流路を介して、Aポート用加圧バルブ111及びAポート用測定バルブ121に接続される。Bポート102は、下治具11内の流路を介して、Bポート用加圧バルブ112及びBポート用測定バルブ122に接続される。Cポート103は、下治具11内の流路を介して、Cポート用加圧バルブ113及びCポート用測定バルブ123に接続される。
【0024】
外部漏れ検出流路104は、外部漏れ用測定バルブ124に接続される。
なお、便宜上、以下の説明においては、Aポート用測定バルブ121、Bポート用測定バルブ122及びCポート用測定バルブ123は第1の測定バルブと表記し、外部漏れ用測定バルブ124は第2のバルブと表記することがある。
【0025】
Aポート用加圧バルブ111、Bポート用加圧バルブ112及びCポート用加圧バルブ113は、排気側及び吸気側バルブ131に接続される。排気側及び吸気側バルブ131は、排気系である真空ポンプ側バルブ141及びHe回収機側バルブ142、並びに、吸気系である窒素ボンベ側バルブ143及びHeボンベ側バルブ144に接続される。
【0026】
真空ポンプ側バルブ141は、排気のための真空ポンプに接続される。He回収機側バルブ142は、He回収機に接続される。回収されたHeガスは、適宜再利用される。
窒素ボンベ側バルブ143は、窒素ガスの供給源である窒素(N2)ボンベに接続される。Heボンベ側バルブ144は、検査用ガスであるヘリウム(He)の供給源であるHeボンベに接続される。
【0027】
Aポート用測定バルブ121、Bポート用測定バルブ122、Cポート用測定バルブ123及び外部漏れ用測定バルブ124は、Heデテクタに接続される。Heデテクタは、ヘリウム(He)の原子数を測定する原子数測定器である。ここで、Heデテクタは、漏れ出たガスの原子数を定量的に検出する構成であり、ごく微量のヘリウム(He)も検出可能である。Heデテクタは、例えば、質量分析計である。
ただし、本実施形態のHeデテクタに圧力センサは含まれない。圧力センサを用いると、測定対象空間の圧力が平衡になるまで待機する必要があり、測定に時間がかかり、また、微量漏れを検出することが困難だからである。
【0028】
なお、
図2に示すように、Heデテクタ側、すなわち測定バルブ群120とHeデテクタとの間には、真空ポンプに接続された真空ポンプ側バルブ151及び窒素ボンベに接続された窒素ボンベ側バルブ153が接続されることが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
次に、本実施形態のシール検査装置10を用いたシール検査方法を以下に説明する。
図3は、本実施形態のシール検査方法であって、
図1、
図2に示すシール検査装置10に適用されるシール検査方法を示すフローチャートである。
ここでは、検査対象をAポートとする。検査対象のサンプルを下治具11上の所定の位置にセットして処理をスタートする。
【0030】
まず、検査対象のサンプルがセットされた状態で上治具12を下げ、下治具11と上治具12との間で、検査対象である検査対象シール21を有するサンプル20を圧縮する(S1)。
なお、サンプル20を圧縮する工程(S1)を省略し、次の真空引きの工程(S2)からスタートしてもよい。
【0031】
次に、He回収機側バルブ142、窒素ボンベ側バルブ143及びHeボンベ側バルブ144が閉じた状態、且つ排気側及び吸気側バルブ131、加圧バルブ群110及び測定バルブ群120のすべてのバルブが開いた状態で、真空ポンプ側バルブ141を開き、全体を真空引きする(S2)。ここで、真空度は、例えば、-100kPaである。これにより、1つの真空ポンプですべてのポートを一度に真空引きできる。
なお、Heデテクタ側には、真空ポンプに接続された真空ポンプ側バルブ151が接続されているので、Heデテクタ側からの真空引きも可能である。これにより、真空引きにかかる時間を短縮できる。
【0032】
S2から所定時間経過後、加圧バルブ群110のすべてのバルブを閉じる(S3)。
【0033】
次に、検査対象外のBポート用測定バルブ122、Cポート用測定バルブ123及び外部漏れ用測定バルブ124は開いた状態で、検査対象であるAポート101に接続された
Aポート用測定バルブ121を閉じる(S4)。
なお、ここで、真空ポンプ側バルブ141も閉じる。
【0034】
次に、Heボンベ側バルブ144を開いて、Heガスを供給する(S5)。
【0035】
次に、Bポート用加圧バルブ112及びCポート用加圧バルブ113は閉じた状態で、Aポート用加圧バルブ111を開き、検査対象ポートであるAポート101を含む空間に、Heガスを供給する(S6)。
その後、排気側及び吸気側バルブ131を閉じる。
【0036】
次に、HeデテクタによりHe原子数の測定を行う(S7)。
ここでは、Aポート101に供給されたHeガスのうち検査対象シール21からBポート102、Cポート103又は外部漏れ検出流路104に漏れた量を測定する。
なお、S7において、測定中は加圧を継続する。
加圧する際にはバルブを開放して加圧するが、十分な圧力が保持されている場合には、バルブを閉じてもよい。
【0037】
図4は、本実施形態のシール検査装置10のS7における状態、すなわち検査時の状態を示す図である。
図4に示すように、検査対象シール21のうち、2つのAポート101の双方を含む領域22を囲う部分に漏れがあると、Bポート102、Cポート103及び外部漏れ検出流路104の少なくとも1つから測定バルブ群120を介してHe原子がHeデテクタに達する。このHe原子数を測定することで、Heの漏れの有無、更には漏れ量を検出できる。
【0038】
S7の終了後、Heボンベ側バルブ144を閉じる(S8)。
【0039】
次に、He回収機側バルブ142を開くことで、Heガスを回収する(S9)。これにより、使用したHeガスの回収が可能となるため、一度使用したヘリウムHeガスの再利用が可能となる。
また、Heデテクタ側にもHe回収機が接続されてもよく、この場合、漏れたHeガスを回収できる。
【0040】
次に、Heガスの回収後に、加圧バルブ群110及び測定バルブ群120のすべてのバルブを開く(S10)。
その後、窒素ボンベ側バルブ143を開いて窒素ガスにより掃気して(S11)、処理を終了する。この掃気により、流路及びサンプル内に残留したヘリウム(He)ガスの掃気洗浄を行い、次回以降の検査における、残留ヘリウム(He)ガスに起因する誤検出を防止できる。
なお、Heデテクタ側には、窒素ボンベに接続された窒素ボンベ側バルブ153が接続されているので、Heデテクタ側からの掃気も可能である。これにより、掃気にかかる時間を短縮できる。
【0041】
従来技術においては、真空引き可能なチャンバーを用いて、チャンバー内に配した検査対象からの微量の漏れを検出している。しかし、チャンバーを用いると、チャンバーの作動部分と検査対象を押さえる部分との少なくとも2か所の稼動部が存在するため、検査対象の交換に手間を要し、短時間で検査を行うことが困難である。
また、検査対象に不良品が含まれると、漏れ量が大きいため、チャンバー全体の掃気を要し、掃気に時間を要する。
【0042】
また、チャンバーを用いる場合には、チャンバー内に配管が必要であり、検査対象が複数ある場合には検査対象ごとに配管の接続を変更しなければならないため、手間を要するのみならず、配管の接続変更に起因する漏れが生じるおそれもある。
また、チャンバー内の真空引き及びデテクタの真空引きを要し、更にはワーク内の真空引きも必要となる場合もあるため、複数の真空ポンプを要し、装置構成も複雑化してしまう。
【0043】
本実施形態では、従来技術と異なり、チャンバーを用いることなく検査対象周囲のごく限られた空間を真空引きして実現可能である。そのため、装置構成を簡略化でき、これにより故障のリスクを抑えるとともにコストを抑えることができる。
また、本実施形態ではチャンバーを用いないため、検査対象周囲のごく限られた空間を真空引きすることで実現可能であり、短時間で検査を行うことが可能である。
また、本実施形態は、He原子数を測定するため、環境温度に依存することなく実現可能である。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、従来よりも高精度且つ短時間で検査可能であり、簡略な構成のシール検査装置が得られる。
また、本実施形態によれば、検査対象のポートが複数設けられ、複数のポートの各々に対応する第1の測定バルブを開閉することにより検査対象のポートを切り替え可能である。そのため、配管の変更、すなわち繋ぎ直しが不要となる。
なお、本実施形態において、第1の測定バルブの開閉を自動で行う構成として、検査対象ポートを自動で切り替えてもよい。
【0045】
本実施形態においては、第1のポートであるAポートの検査時について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図3に示すフローチャートを適用して、検査対象をBポートとすることでBポートにおける漏れを検出可能であるし、検査対象をCポートとすることでCポートにおける漏れを検出可能である。
【0046】
<実施形態2>
実施形態1においては、1つのポートを検査対象とする形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施形態では、2つのポートを検査対象とする形態について説明する。
なお、実施形態1と同様である点については説明を省略し、実施形態1の説明を援用するものとする。
【0047】
本実施形態においては、実施形態1と同様に、
図2に示すシール検査装置10を用いる。また、本実施形態のシール検査方法は、実施形態1と同様に、
図3のフローチャートに示す手順で行う。
ここでは、Aポート及びBポートを検査対象とし、検査対象のサンプルを所定の位置にセットして処理をスタートする。S1~S3については実施形態1と同様である。
【0048】
S3において加圧バルブ群110のすべてのバルブを閉じた後、検査対象外のCポート用測定バルブ123及び外部漏れ用測定バルブ124は開いた状態で、検査対象であるAポート101に接続されたAポート用測定バルブ121及びBポート102に接続されたBポート用測定バルブ122を閉じる(S4)。ここで、真空ポンプ側バルブ141も閉じる。
そして、Heボンベ側バルブ144を開いて、Heガスを供給する(S5)。
【0049】
次に、Cポート用加圧バルブ113は閉じた状態で、Aポート用加圧バルブ111及びBポート用加圧バルブ112を開き、検査対象ポートであるAポート101を含む空間及びBポート102を含む空間に、Heガスを供給する(S6)。
その後、排気側及び吸気側バルブ131を閉じる。
【0050】
次に、HeデテクタによりHe原子数の測定を行う(S7)。
ここでは、Aポート101及びBポート102に供給されたHeガスのうち検査対象シール21からCポート103又は外部漏れ検出流路104に漏れた量を測定する。
なお、S7において、測定中は加圧を継続する。
加圧する際にはバルブを開放して加圧するが、十分な圧力が保持されている場合には、バルブを閉じてもよい。
【0051】
図5は、本実施形態のシール検査装置10のS7における状態、すなわち検査時の状態を示す図である。
図5に示すように、検査対象シール21のうち、2つのAポート101の双方を含む領域22を囲う部分、又は、Bポート102を囲う部分の少なくともいずれかに漏れがあると、Cポート103及び外部漏れ検出流路104のいずれか一方又は双方から測定バルブ群120を介してHe原子がHeデテクタに達する。このHe原子数を測定することで、Heの漏れの有無、更には漏れ量を検出できる。
S7の終了後、S8~S11については実施形態1と同様であり、S11の後に処理を終了する。
【0052】
本実施形態によれば、2つのポートのいずれか一方又は双方に漏れがある場合に、これを検出できる。
【0053】
<実施形態3>
実施形態1、2においては、1つ又は2つのポートを検査対象とする形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本実施形態では、3つのポートすべてを検査対象とする形態について説明する。
なお、実施形態1と同様である点については説明を省略し、実施形態1の説明を援用するものとする。
【0054】
本実施形態においても、実施形態1、2と同様に、
図2に示すシール検査装置10を用いる。また、本実施形態のシール検査方法は、実施形態1と同様に、
図3のフローチャートに示す手順で行う。
ここでは、Aポート、Bポート及びCポートを検査対象とし、検査対象のサンプルを所定の位置にセットして処理をスタートする。S1~S3については実施形態1と同様である。
【0055】
S3において加圧バルブ群110のすべてのバルブを閉じた後、外部漏れ用測定バルブ124は開いた状態で、検査対象であるAポート101に接続されたAポート用測定バルブ121、Bポート102に接続されたBポート用測定バルブ122及びCポート103に接続されたCポート用測定バルブ123を閉じる(S4)。ここで、真空ポンプ側バルブ141も閉じる。
そして、Heボンベ側バルブ144を開いて、Heガスを供給する(S5)。
【0056】
次に、Aポート用加圧バルブ111、Bポート用加圧バルブ112及びCポート用加圧バルブ113を開き、検査対象ポートである、Aポート101を含む空間、Bポート102を含む空間及びCポート103を含む空間に、Heガスを供給する(S6)。
その後、排気側及び吸気側バルブ131を閉じる。
【0057】
次に、HeデテクタによりHe原子数の測定を行う(S7)。
これにより、Aポート101、Bポート102及びCポート103に供給されたHeガスのうち検査対象シール21から外部漏れ検出流路104に漏れた量を測定する。
なお、S7において、測定中は加圧を継続する。
加圧する際にはバルブを開放して加圧するが、十分な圧力が保持されている場合には、バルブを閉じてもよい。
【0058】
図6は、本実施形態のシール検査装置10のS7における状態、すなわち検査時の状態を示す図である。
図6に示すように、検査対象シール21のうち、2つのAポート101の双方を含む領域22を囲う部分、Bポート102を囲う部分、又は、Cポート103を囲う部分の少なくともいずれか一つに漏れがあると、外部漏れ検出流路104から測定バルブ群120を介してHe原子がHeデテクタに達する。このHe原子数を測定することで、Heの漏れの有無、更には漏れ量を検出できる。
S7の終了後、S8~S11については実施形態1と同様であり、S11の後に処理を終了する。
【0059】
本実施形態によれば、3つのポートのいずれかに漏れがある場合に、これを検出できる。
【0060】
<実施形態4>
本実施形態のシール検査装置10の基本的な構成は、実施形態1と同じである。以下、実施形態1と同一の構成については説明を省略し、実施形態1と異なる構成について説明する。
図7は、本実施形態のシール検査装置10が備える下治具11上にサンプル20が配置された状態を示す。
図7に示すように、サンプル20は、検査箇所密封部30によって囲まれる。更に、検査箇所密封部30は、外周密封部32によって囲まれる。検査箇所密封部30と外周密封部32とによって、真空引き空間34が画定される。外周密封部32は、例えば、ガスケットであるが、これに限定されるものではない。外周密封部32としては、ゴム製ガスケットが特に好ましい。
【0061】
図8は、本実施形態のシール検査装置10の全体構成を示す図である。なお、
図8には、
図7に示すX-Xにおける断面図が含まれる。
検査箇所密封部30と外周密封部32との間には、下治具11に真空ポンプに接続される流路105が設けられるが、本発明はこれに限定されるものではない。下治具11には、少なくとも流路105に接続される貫通孔が設けられていればよい。
【0062】
流路105は、真空ポンプに接続された真空ポンプ側バルブ161及び窒素ボンベに接続された窒素ボンベ側バルブ163が接続される。
【0063】
次に、本実施形態のシール検査方法は、実施形態1と同様に、
図3のフローチャートに示す手順で行う。
ここでは、Aポート及びBポートを検査対象とし、検査対象のサンプルを所定の位置にセットして処理をスタートする。
【0064】
まず、検査対象のサンプルがセットされた状態で上治具12を下げ、下治具11と上治具12との間で、検査対象である検査対象シール21を有するサンプル20を圧縮する(S1)。この際、真空ポンプ側バルブ161を開いて、真空ポンプと流路105を接続し、真空引き空間34を真空引きする。これにより、下治具11と上治具12が互いに引き合い、サンプル20が圧縮される。
S2~S11については実施形態1と同様である。
【0065】
本実施形態によれば、より確実にサンプル20の圧縮状態を維持できる。
【0066】
なお、実施形態1~4において、Aポート、Bポート及びCポートの各々から延びる流路は、下治具11内において湾曲形状に形成されるが、本発明はこれに限定されるものではない。板状部材にAポート、Bポート及びCポートの各々としての貫通孔を設け、流路は配管を湾曲させることにより形成されてもよい。
又は、これらの流路に接続される各構成を、貫通孔が設けられた板状部材の下部に適宜配置することで配管の湾曲部分を極力少なくし、且つ流路を短くしてもよい。
【0067】
また、実施形態1~4において、Aポート、Bポート及びCポートのすべてが下治具11に設けられる構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、上治具12にAポート、Bポート及びCポートが設けられてもよい。
同様に、外部漏れ検出流路104に接続される貫通孔も、上治具12に設けられてもよいし、下治具11に設けられてもよい。
すなわち、Aポート、Bポート及びCポートからの流路、並びに外部漏れ検出流路104は、下治具11から引き回されてもよいし、上治具12から引き回されてもよい。
【0068】
また、実施形態1~4において、検査対象は上治具と下治具とによって挟まれ、2つの治具は上下に稼動する構成であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、2つの治具は左右に稼動する構成でもよく、2つの治具の稼動方向は特に限定されない。
【0069】
なお、実施形態2,3において、検査対象となるポートを切り替えて連続して複数のポートの検査を行う場合には、ポートの切替前後のいずれにおいても加圧される部分については掃気が不要である。
例えば、実施形態1において説明したようにAポート101の検査を行い、次に検査態様となるポートを切り替えて、実施形態2において説明したようにAポート101及びBポート102の検査を行う場合には、Aポート101は、ポートの切替前後のいずれにおいても加圧される部分であるため、Aポート101の掃気は不要である。
このように、掃気が不要なポートは、掃気時にはバルブを閉じる。
【0070】
また、本発明を適用可能な分野として、燃料電池のセルシールを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、高いシール性が要求されるシールが適用されるあらゆる分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 シール検査装置
11 下治具
12 上治具
20 サンプル
20A 第1の端辺
20B 第2の端辺
21 検査対象シール
22 領域
30 検査箇所密封部
32 外周密封部
34 真空引き空間
101 Aポート
102 Bポート
103 Cポート
104 外部漏れ検出流路
105 流路
110 加圧バルブ群
111 Aポート用加圧バルブ
112 Bポート用加圧バルブ
113 Cポート用加圧バルブ
120 測定バルブ群
121 Aポート用測定バルブ
122 Bポート用測定バルブ
123 Cポート用測定バルブ
124 外部漏れ用測定バルブ
131 排気側及び吸気側バルブ
141,151,161 真空ポンプ側バルブ
142 He回収機側バルブ
143,153,163 窒素ボンベ側バルブ
144 Heボンベ側バルブ