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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】投射型表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20230810BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20230810BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20230810BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G02B26/10 101
G03B21/00 F
H04N5/74 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022106071
(22)【出願日】2022-06-30
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2022049305
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516257981
【氏名又は名称】株式会社ライトショー・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 滋
(72)【発明者】
【氏名】山影 明広
(72)【発明者】
【氏名】梅 雨非
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/119723(WO,A1)
【文献】特開2009-157111(JP,A)
【文献】特開2013-171172(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0030913(US,A1)
【文献】特開2003-149738(JP,A)
【文献】特開2002-062501(JP,A)
【文献】国際公開第2006/059607(WO,A1)
【文献】特開2010-054767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K9/00-9/90
F21S2/00-45/70
F21V1/00-15/04
G02B5/00-5/136
6/26-6/27
6/30-6/34
6/42-6/43
26/10-26/12
G03B21/00-21/10
21/12-21/13
21/134-21/30
33/00-33/16
H01S5/00-5/50
H04N5/66-5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体レーザと、
前記複数の半導体レーザが出力する複数のレーザビームをコリメートするコリメートレンズと、
前記コリメートレンズによりコリメートされた複数のレーザビームを重ね合わせて矩形の照明領域を形成するインテグレータ照明系と、
前記インテグレータ照明系により前記矩形の照明領域が形成される位置に対して前記コリメートレンズ側に配置された偏向素子と、
前記偏向素子により偏向走査される前記矩形の照明領域を、反射型光変調素子に拡大転写する転写光学系と、
前記反射型光変調素子が出力する映像光を投射する投射レンズと、を備える、
ことを特徴とする投射型表示装置。
【請求項2】
前記偏向素子は、回転軸を中心に回転可能で、前記回転軸を中心とする円周に沿って形成された光学面を備え、
前記光学面は、前記円周に沿って前記回転軸に対する傾斜角が変化するように構成されており、
前記傾斜角は、前記光学面を一定速度で連続的に回転させると、前記レーザビームを一定方向に一定の偏向速度で再帰的に偏向するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
前記複数の半導体レーザは、Slow軸の向き及びFast軸の向きが揃うように配置されており、
前記矩形の照明領域の長手方向は前記半導体レーザのSlow軸の方向であり、
前記矩形の照明領域の短手方向は前記半導体レーザのFast軸の方向であり、
前記偏向素子は、前記矩形の照明領域の短手方向に沿って前記レーザビームを偏向走査する、
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項4】
前記インテグレータ照明系は、球面のマイクロレンズを2次元に配列したマイクロレンズアレイ、もしくは回折型の拡散素子、もしくはストライプ状のマイクロレンズを並べたマイクロレンズアレイのいずれかを備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項5】
前記インテグレータ照明系は、ロッドと、前記コリメートレンズによりコリメートされた複数のレーザビームを前記ロッドに向けて集光する集光レンズと、前記ロッドの入射面の近傍に配置された拡散素子と、前記ロッドの出射面の像を転写するリレーレンズと、を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項6】
前記ロッドは、光学材料から成る角柱か、または内面が反射面である中空の筒である、
ことを特徴とする請求項5に記載の投射型表示装置。
【請求項7】
前記インテグレータ照明系、前記転写光学系のいずれかは、アナモフィックレンズを含む、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項8】
前記転写光学系は、前記矩形の照明領域を拡散板に拡大転写する第1転写光学系と、
前記第1転写光学系により前記拡散板に拡大転写された前記矩形の照明領域を前記反射型光変調素子に拡大転写する第2転写光学系と、を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項9】
前記複数の半導体レーザと、前記コリメートレンズと、前記インテグレータ照明系と、前記偏向素子とを備えた照明ユニットが、異なる色光毎に設けられており、
前記異なる色光の照明ユニットが出力する照明光を合成する光合成部を備え、
前記異なる色光の照明ユニットの各々が出力する前記矩形の照明領域は、互いに重ならないように偏向走査されながら前記反射型光変調素子に拡大転写される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置を備えた投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ光を用いた投射型表示装置が知られている。
特許文献1には、レーザ光源と、レーザ光を映像信号に応じて光変調する光音響変調器と、変調されたレーザ光を水平走査する多角形ミラーと、垂直走査するガルバノミラーと、を備えた投射型表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-180759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された投射型表示装置では、水平走査する多角形ミラーと、垂直走査するガルバノミラーとを併用した光学的な走査手段を備えているが、水平と垂直の両方向を光学的に走査するため、大きな光路空間が必要となり、装置が大型化する問題があった。
【0005】
そこで、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置の実現が期待されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、複数の半導体レーザと、前記複数の半導体レーザが出力する複数のレーザビームをコリメートするコリメートレンズと、前記コリメートレンズによりコリメートされた複数のレーザビームを重ね合わせて矩形の照明領域を形成するインテグレータ照明系と、前記インテグレータ照明系により前記矩形の照明領域が形成される位置に対して前記コリメートレンズに配置された偏向素子と、前記偏向素子により偏向走査される前記矩形の照明領域を、反射型光変調素子に拡大転写する転写光学系と、前記反射型光変調素子が出力する映像光を投射する投射レンズと、を備える、ことを特徴とする投射型表示装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図。
図2】(a)レーザモジュールLMに含まれる半導体レーザとコリメートレンズのペアの1つを示すための模式図。(b)半導体レーザ11とコリメートレンズ102のペアが、4×2個配列されたレーザモジュールLMを示す模式図。
図3】(a)半導体レーザ11の出力光のNear-Field Patternを例示する図。(b)半導体レーザ11の出力光のFar-Field Patternを例示する図。
図4】(a)平行方向についてのビームの広がりを示す図。(b)直交方向についてのビームの広がりを示す図。
図5】(a)インテグレータ照明系INTを一方向から見た図。(b)インテグレータ照明系INTを、(a)と直交する方向から見た図。(c)マイクロレンズアレイの対を示す図。(d)矩形の照射領域IM1を示す図。
図6】(a)偏向器210の一例の外観を示す斜視図。(b)偏向器210の側面図。
図7】(a)偏向器210の反射面の位置と傾斜角を説明するための断面図。(b)偏向器210の反射面の位置と傾斜角を説明するためのグラフ。
図8】(a)偏向器210と矩形の照射領域IM1の位置関係を示す図。(b)反射面のビーム照射位置214近傍の拡大図。(c)青色の矩形の照射領域IM1がDBの方向に偏向走査されることを示す図。
図9】(a)前側転写レンズ201と後側転写レンズ202の作用を説明するための模式図。(b)反射型光変調素子340の画面と、矩形のレーザビームの走査範囲SAの関係を示す図。(c)反射型光変調素子340の画面を矩形のBビーム、Gビーム、Rビームのそれぞれが照射する様子を、横軸を時間軸として示した図。
図10】実施形態2に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図。
図11】実施形態3に係るインテグレータ照明系を説明するための図。
図12】(a)実施形態3に係るインテグレータ照明系INTを一方向から見た図。(b)実施形態3に係るインテグレータ照明系INTを、(a)と直交する方向から見た図。(c)矩形の照射領域IM1を示す図。
図13】(a)インテクレータ照明系に使われるバルクのロッドを示す図。(b)インテクレータ照明系に使われる中空ロッドを示す図。
図14】実施形態3に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図。
図15】実施形態3における偏向器と矩形の照射領域IM1の位置関係を示す図。
図16】実施形態4に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図。
図17】(a)各実施形態で用いられ得るアナモフィック光学系を一方向から見た図。(b)各実施形態で用いられ得るアナモフィック光学系を、(a)と直交する方向から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の実施形態である投射型表示装置について説明する。
尚、以下に示す実施形態は例示であり、例えば細部の構成については本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当業者が適宜変更して実施をすることができる。尚、以下の実施形態及び説明において参照する図面では、特に但し書きがない限り、同一の参照番号を付して示す要素は、同様の機能を有するものとする。尚、図中の光学要素は模式的に表されているため、実際の形状や構成が必ずしも忠実に表されているとは限らない。例えば、図面では単レンズとして描かれていたとしても、特にただし書きがない限りは複数枚のレンズにより構成されていてもよい。
【0010】
以下の説明において、例えばXプラス方向と記す場合には、図示の座標系におけるX軸矢印が指すのと同じ方向を指し、Xマイナス方向と記す場合には、図示の座標系におけるX軸矢印が指すのと180度反対の方向を指すものとする。また、単にX方向と記す場合には、図示のX軸矢印が指す向きとの異同は関係なく、X軸と平行な方向であることを指すものとする。X以外の方向についても、同様とする。
【0011】
また、以下の説明では、赤色のことを「R」、緑色のことを「G」、青色のことを「B」と記載する場合がある。したがって、例えば、R光は赤色光と、G光源は緑色光源と、Bレーザは青色レーザと、それぞれ同義である。
【0012】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図である。説明の便宜のため、同図では、光学要素を設置するための機械的機構や、筐体、電気的配線などは省略されている。
【0013】
[全体構成]
投射型表示装置1000は、B光源100B、G光源100G、R光源100R、B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210R、光合成部220、光路変換ミラー330、TIRプリズム350、反射型光変調素子340、投射レンズ360を備える。また、各色の光源と各色の前側転写レンズ201の間には各色の偏向器が配置され、光合成部220と光路変換ミラー330の間には後側転写レンズ202が配置されている。前光合成部220は、ダイクロイックミラー221とダイクロイックミラー222を備える。投射型表示装置1000は、任意的に投映スクリーン190を備えることができる。
【0014】
B光源100BはB光を発する半導体レーザを、G光源100GはG光を発する半導体レーザを、R光源100RはR光を発する半導体レーザを、それぞれ備えている。光源については、後に詳述する。
【0015】
B用偏向器210Bは、B光源100Bが発するB光をDB方向に偏向する偏向器である。同様に、G用偏向器210Gは、G光源100Gが発するG光をDG方向に偏向する偏向器であり、R用偏向器210Rは、R光源100Rが発するR光をDR方向に偏向する偏向器である。偏向器については、後に詳述する。
【0016】
光合成部220は、ダイクロイックミラー221とダイクロイックミラー222を備える。ダイクロイックミラー221は、G光を透過させ、B光を反射する光学特性を備えている。ダイクロイックミラー222は、G光及びB光を透過させ、R光を反射する光学特性を備えている。ダイクロイックミラー221上において、B光用の前側転写レンズ201の光軸中心と、G光用の前側転写レンズ201の光軸中心とが重なるように、各光学要素は配置されている。また、ダイクロイックミラー222上において、B光用の前側転写レンズ201の光軸中心と、G光用の前側転写レンズ201の光軸中心と、R光用の前側転写レンズ201の光軸中心とが重なるように、各光学要素は配置されている。
【0017】
光合成部220により、B光(点線)、G光(実線)、R光(一点鎖線)の進行方向は全てZプラス方向に揃えられるが、これらの光は、どのタイミングにおいても互いに重なり合わないように合成されている。B光、G光、R光の各々が、互いに反射型光変調素子340の画面上で重ならないように、B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210Rによる偏向走査のタイミング(偏向の位相)を制御しているからである。走査方法については後に詳述する。
光合成部220から出射したB光、G光、R光は、光路変換ミラー330によりXプラス方向に進路を変更され、TIRプリズム350に入射する。
【0018】
TIRプリズム350は、例えば2つのプリズムを組み合わせて構成された内部全反射プリズムであり、照明光(B光、G光、R光)をエアギャップ面で全反射させて、反射型光変調素子340に所定の角度で入射させる。前述したように、B光、G光、R光は、互いに重ならないように、それぞれが反射型光変調素子340の画面の一部を照明する。
【0019】
反射型光変調素子340には、例えばマイクロミラーデバイスをアレイ状に設けたDMDが用いられる。各表示画素に対応するマイクロミラーは、映像信号の輝度レベルに応じて、パルス幅変調により反射方向が変更されるように駆動される。ただし、反射型液晶デバイスのような、別種の反射型光変調デバイスを用いることも可能である。
【0020】
B光で照明されている画面領域の画素は、映像信号のB成分の輝度レベルに応じて駆動され、B映像光をTIRプリズム350に向けて所定角度で反射する。同様に、G光で照明されている画面領域の画素は、映像信号のG成分の輝度レベルに応じて駆動され、G映像光をTIRプリズム350に向けて所定角度で反射する。また、R光で照明されている画面領域の画素は、映像信号のR成分の輝度レベルに応じて駆動され、R映像光をTIRプリズム350に向けて所定角度で反射する。このように、反射型光変調デバイスの変調動作は、B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210Rによる偏向走査と同期して行われる。
【0021】
映像光(B映像光、G映像光、R映像光)は、TIRプリズム350を透過して、投射レンズ360に導かれ、カラー映像として投射される。投射レンズ360は、単数もしくは複数のレンズで構成され、自動焦点調節機能やズーム機能を備えることもできる。
【0022】
投映スクリーン190は、リヤプロジェクション型の表示装置を構成する場合に用いられる。また、フロントプロジェクション型の場合にも設置されることが多いが、ユーザが任意の壁面などに投射する場合には、必ずしも設置する必要はない。
【0023】
[光源]
B光源100B、G光源100G、R光源100Rについて説明する。B光源100BはB光を発する半導体レーザとコリメートレンズを含むレーザモジュールLM-Bを、G光源100GはG光を発する半導体とレーザコリメートレンズを含むレーザモジュールLM-Gを、R光源100RはR光を発する半導体レーザとコリメートレンズを含むレーザモジュールLM-Rを、それぞれ備えている。半導体レーザの発光波長を別にすれば、各色の光源の基本的な構成は同一であるので、以下では色光毎に区別せずに単に光源100として説明する場合がある。
【0024】
(レーザモジュール)
光源100は、半導体レーザとコリメートレンズのペアが、1次元あるいは2次元にアレイ状に配列されたレーザモジュールLMを備えている。
図2(a)は、レーザモジュールLMに含まれる半導体レーザとコリメートレンズのペアの1つを示すための模式図である。11は半導体レーザ、12は半導体レーザ11の発光部である。尚、図2(a)では、図1のB光源100Bの配置に合わせてXYZ座標系の向きを表示している。図2(a)においては、発光部12の長手方向HをY方向と平行にし、発光部12から出射した光の進行方向をZ方向と平行に図示している。
【0025】
発光部12の長手方向Hとは、典型的には、半導体レーザ11を構成する半導体チップの側面において、P型クラッド層とN型クラッド層に挟まれた活性層が延在している方向である。図2(a)に示すように、以後の説明では、半導体レーザ11の発光部12の長手方向Hと平行な方向を「平行方向」あるいはSlow軸と記し、発光部12の長手方向と直交する方向を「直交方向」あるいはFast軸と記す場合がある。半導体レーザ11からは、直線偏光の光が出射し、その電界の振動方向は平行方向(Y方向)である。
【0026】
半導体レーザ11の出力光は、出射方向によって角度特性が異なることが知られているが、図3(a)に出力光のNear-Field Patternを、図3(b)に出力光のFar-Field Patternを例示する。
【0027】
図3(a)に示すように、Near-Field Patternでは、発光部の形状(長手、短手)を反映したビームプロファイルであることが判る。一方、ビームが進行するにつれて、図3(b)のFar-Field Patternに例示するように、ビームは広がってゆく。すなわち、平行方向についてみれば、半導体レーザ11から出射したビームは、広がりが小さく、狭い角度範囲内に強度分布が均一なパターンで進行してゆくことがわかる。一方、直交方向についてみれば、半導体レーザ11から出射したビームは、強度分布が山形になるパターン(ガウシアン)になり、進行するにつれて平行方向よりも広い角度範囲に広がってゆくことがわかる。半導体レーザの活性層は、直交方向の厚さが小さいため、出射する際に回折の影響を大きく受けるためである。Far-Field Patternで見て広がりが小さな平行方向をSlow軸、広がりが大きな直交方向をFast軸と呼ぶこともできる。
【0028】
本実施形態では、図2(a)に示すようにコリメートレンズ102(第1コリメートレンズ)を用いて半導体レーザ11から出射したレーザビームを成形する。すなわち、長手方向の長さがHy1である発光部12から出射した光は、コリメートレンズ102によりコリメートされ、断面が楕円形状のビームとなってZ方向に進行する。尚、楕円形状の長径はX方向と平行で、短径はY方向と平行である。
【0029】
コリメートレンズ102を通過しても、ビームが光軸(Z方向)と完全に平行になるわけではなく、平行方向(発光部の長手方向)と直交方向(発光部の短手方向)ではビームの広がり方が異なったものとなる。図4(a)および図4(b)を参照して、コリメートレンズ102を通過した後のビームの広がり方の違いについて説明する。図4(a)は平行方向についての広がりを示し、図4(b)は直交方向についての広がりを示している。
【0030】
図4(a)に示すように、平行方向についてみれば、ビーム強度のトップはフラットではあるものの、Z方向に進むにつれてビーム径が広がってしまうので、ダイバージェンスが良好であるとは言えない。これに対して、図4(b)に示すように、直交方向についてみれば、コリメートレンズ102からの距離が変化してもビーム強度分布とビーム径の変化が小さいのが判る。すなわち、コリメートレンズ102を透過した後のレーザビームは、直交方向(半導体レーザのFast軸)の方が平行方向(半導体レーザのSlow軸)よりも平行性が高く、ダイバージェンスが良好である。
【0031】
後述するように、本発明では、光源100から出力されるビームのダイバージェンスが直交方向(矩形の短手方向)において優れる(ビームの平行度が高い)という性質を利用して、直交方向に沿ってビームを偏向走査させて光変調素子を照明する。ダイバージェンスが優れる方向に沿ってビームを偏向走査する方が、光変調素子の画面上でB、G、Rの各色照明領域の重なりを防止するのに有利だからである。
【0032】
光源100は、複数の半導体レーザおよびコリメートレンズ102(第1コリメートレンズ)のペアを含んだレーザモジュールLMを備えている。図2(b)は、半導体レーザ11とコリメートレンズ102のペアが、4×2個配列されたレーザモジュールLMを示す模式図である。尚、図2(b)では、図1のB光源100Bに合わせてXYZ座標系の向きを表示している。
【0033】
レーザモジュールLMにおいては、複数の半導体レーザがY方向に沿って等間隔に並ぶように配置されている。また、どの半導体レーザも、発光部12の長手方向がY方向に沿う向きになるように配置されている。4×2素子の半導体レーザを用いる例を示すが、素子の数はこの例に限られるわけではない。レーザモジュールLMは、複数の半導体レーザを1列だけ、あるいは3列以上にわたりY方向に沿って配列する構成にしてもよい。Y方向に沿った半導体レーザの素子列を1列あるいは3列以上備える光源100であっても、出力されるビームは、発光部の短手方向の方が長手方向よりもダイバージェンスが良好である。
【0034】
(インテグレータ照明系/光学的重畳手段)
本実施形態の光源100は、レーザモジュールLMから出射される複数のレーザビームを重ね合わせて矩形の照明領域を形成するためのインテグレータ照明系INTを備えている。図5(a)~図5(d)を参照して、インテグレータ照明系INTについて説明する。
【0035】
レーザモジュールLMに含まれる半導体レーザ11の各々から出射されるレーザビームは、コリメートレンズ102の作用でおよそ平行となるが、ダイバージェンスについては既に説明したとおりである。本実施形態の光源は、図5(d)に示す矩形の照射領域IM1を形成するため、各半導体レーザから出射されるレーザビームを重ね合わせるインテグレータ照明系INTを備える。
【0036】
図5(a)、図5(b)に示すように、インテグレータ照明系INTは、マイクロレンズアレイ103、マイクロレンズアレイ104、集光レンズ106を備えている。マイクロレンズアレイ103とマイクロレンズアレイ104は対を成して構成されている。
【0037】
図5(c)に示すように、各マイクロレンズアレイには、レーザビームの進行方向(同図ではZ方向)に沿って見た時、X方向にV0、Y方向にH0のサイズのマイクロレンズが、XY平面に沿って2次元的に配列されている。マイクロレンズアレイ103の各マイクロレンズの入射面およびマイクロレンズアレイ104の各マイクロレンズの出射面は、球面形状である。また、マイクロレンズアレイ103の各マイクロレンズの出射面およびマイクロレンズアレイ104の各マイクロレンズの入射面は、平坦面である。マイクロレンズアレイ103の各マイクロレンズとマイクロレンズアレイ104の各マイクロレンズの焦点距離は、互いに相手方の球面位置に結像できるように設定される。
【0038】
マイクロレンズアレイ103とマイクロレンズアレイ104を通過したレーザビームは、集光レンズ106により集光され、図5(d)に示すように、X方向の長さがV1でY方向の長さがH1の矩形の照射領域IM1を形成する。
【0039】
半導体レーザ11はランプ光源などと比べてダイバージェンスが良好なため、例えばマイクロレンズの配列ピッチを0.05mm以上、0.5mm以下の範囲内とすれば、V1またはH1が1mm~2mm程度の矩形の照射領域IM1を得ることができる。矩形の照射領域IM1の長手方向が平行方向(半導体レーザのSlow軸方向)、短手方向が直交方向(半導体レーザのFast軸方向)に対応する。光源100から出力されるビームは、矩形の短手方向の方が長手方向よりもダイバージェンスが良好である。本実施形態では、球面と平坦面を備えたマイクロレンズをアレイ状に配列したマイクロレンズアレイの対を採用したが、場合によっては入射側も出射側も曲面のレンズをアレイ状に配列したフライアイレンズの対を用いてもよい。あるいは、光源のダイバージェンスが良好な(NAが小さい)場合には、対ではなく単板のマイクロレンズアレイを用いてもよい。
【0040】
(偏向器)
図1に示すように、光源100(B光源100B、G光源100G、R光源100R)と、それぞれが照射する矩形の照射領域IM1の間には、偏向器(B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210R)が配置されている。
B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210Rについて説明する。これらは、異なる色のレーザビームを偏向走査するのに用いられる偏向素子であるが、基本的な構成は同一であるので、以下では特に色を特定せずに偏向器210として説明する場合がある。
【0041】
図6(a)は、偏向器210の一例の外観を示す斜視図であり、図6(b)は、偏向器210の側面図である。
偏向器210は、回転可能な円板状の基体211と、回転軸AXを中心に基体211を回転させるモータ212を備えている。円板状の基体211の主面には、円周に沿って帯状の光学面である反射面213が設けられている。ここで、反射面の位置を特定するため、図6(a)に示すように、回転軸AXを中心として反時計回りに角度座標を設定する。(図では、0°、90°、180°、270°が示されている)。また、図に示す軸BXは、回転軸AXと平行で反射面213を通る軸である。ビーム照射位置214として示すのは、光源100から出力されたビームが、矩形の照射領域IM1に到達する前に反射される際のビーム位置である。
【0042】
帯状の反射面213は、軸BX(すなわち回転軸AX)に対する角度が位置によって変化するようにねじれている。図7(a)と図7(b)を参照して、反射面の角度について説明する。図7(a)と図7(b)において、反射面の位置として示されているのは、図6(a)で説明した角度座標により規定される位置である。また、反射面の傾斜角として示されるのは、円板状の基体211の主面(すなわち軸BXと直交する面)を基準とした時の、反射面の傾斜角である。
【0043】
図7(b)に示すように、反射面の位置に対して反射面の傾斜角がリニアに変化するように、反射面213は構成されている。図6(a)、図7(b)に示すように、反射面の位置が0°(360°)において反射面の傾斜角が不連続になるため、説明の便宜上、図7(a)では反射面の位置が1°と359°の場合の傾斜角を示している。
【0044】
モータにより基体211がR方向に回転されると、反射面213も回転軸AXの回りを回転するため、図6(a)に示したビーム照射位置214にてレーザビームが照射される部位の角度座標は、0°→90°→180°→360°(=0°)→90°・・・のように連続的に変化してゆく。
【0045】
反射面が回転してレーザビームに照射される反射面の部位が変化したとしても、図7(a)に示すように、入射ビームは常に軸BXに対してαの角度で反射面213に入射する。一方、反射面の位置に応じて反射面の傾斜角は、-θから+θの範囲で変化する。このため、図7(a)に示すように、反射面213で反射されたレーザビームの方向は、軸BXを基準にすると、(α-2×θ)から(α+2×θ)までの4θの角度範囲内で変化する。つまり、傾斜角は、光学面(反射面)を一定速度で連続的に回転させると、レーザビームを一定方向に一定の偏向速度で再帰的に偏向するように構成されている、
【0046】
言い換えれば、図6(b)に示すように、偏向器210は、出射ビームをRD1(軸BXに対して(α-2×θ))からRD2(軸BXに対して(α+2×θ))までの角度範囲内で偏向走査することができる。図6(a)のR方向に反射面213を連続回転させると、出射ビームは、図6(b)のRD1からRD2に向けて連続的に偏向(走査)されてゆき、RD2に達すると瞬時にRD1に回帰し、再びRD2に向けて偏向(走査)されてゆく。また、もし反射面213をR方向とは逆に回転させるのであれば、出射ビームは、図6(b)のRD2からRD1に向けて連続的に偏向(走査)されてゆき、RD1に達すると瞬時にRD2に回帰し、再びRD1に向けて偏向(走査)されてゆくことになる。
【0047】
このように、偏向器210によれば、回転体を一定速度で連続的に回転させるという簡単な駆動方法で、レーザビームを所定方向に等速度で再帰的に偏向走査することができる。後述するように、反射型光変調素子340の駆動タイミング(あるいは、反射型光変調素子340に入力する画像信号)と同期して回転するようにモータ212を制御することにより、照明光を反射型光変調素子340の画面においてV方向に走査することができる。
【0048】
尚、本発明を実施するにあたり、回転体を備えた偏向器210の代わりに、ガルバノミラーを用いてもよい。ただし、ガルバノミラーを用いた場合には、装置の大型化、振動の発生、コストの増大等が見込まれるため、回転体を備えた偏向器210を用いのが望ましい。
【0049】
図8(a)に、偏向器210と矩形の照射領域IM1の位置関係を示す。座標系は、B光源100Bを基準に示している。また、図8(b)に、反射面のビーム照射位置214近傍の拡大図を示す。矩形の照射領域IM1よりも距離Lだけ光源側に、反射面のビーム照射位置214が配置されている。図8(c)に示すように、青色の矩形の照射領域IM1は、偏向器210の回転に応じてDBの方向に偏向走査される。
【0050】
尚、偏向器210の製造方法について付言すると、円周に沿って帯状の反射面213が設けられた円板状の基体211は、例えばプレス押出工法で金属母材を加工することにより低コストで製造することが可能である。図7(a)に例示したように、反射面213の近傍には基体211の主面から突出した部分や凹んだ部分が存在するが、回転バランスを良好にするため、回転軸AXを通る断面で見た時、どの位置の断面であっても断面積が等しい形状にするのが望ましい。また、基体211の主面から突出する最大高さや、主面から凹む最大深さは、風切り音を低減するため、平均板厚の3/4以下にするのが望ましい。具体的には、基体211の平均板厚は、0.7mm以上で2mm以下とするのが望ましく、θは3°以上で6°以下とするのが望ましい。
【0051】
以上説明した偏向器により、B、G、Rのレーザビームにより形成される各色の矩形の照射領域IM1は、図1に示すように、それぞれDB、DG、DRの方向に偏向走査される。
【0052】
(光合成部)
各色のレーザビームは、光合成部220により進行方向が揃えられるが、光合成部220の作用については、すでに全体構成の項で説明したとおりである。
【0053】
(転写光学系)
各色のレーザビームにより形成される矩形の照射領域IM1は、各色用の前側転写レンズ201と後側転写レンズ202とで構成される第1転写レンズ200(第1転写光学系)により、反射型光変調素子340の画面に拡大転写される。前側転写レンズ201と後側転写レンズ202は、それぞれ正のパワーをもつ凸レンズである。
【0054】
図9(a)は、前側転写レンズ201と後側転写レンズ202の作用を説明するための模式図である。図示のように、矩形の照射領域IM1は、矩形の2次転写像IM2として拡大転写される。矩形の2次転写像IM2は、図1に示すように反射型光変調素子340の画面位置に設定されている。矩形の照射領域IM1を、矩形の2次転写像IM2に拡大する転写倍率は、例えば6倍(V1:V2=1:6)程度である。
【0055】
図9(b)に、反射型光変調素子340の画面と、矩形のレーザビームの走査範囲SAの関係を示す。反射型光変調素子340の画面サイズをH(水平方向)×V(垂直方向)とすると、矩形のレーザビームの走査範囲SAは、画面サイズよりも大きなH’×V’の領域をカバーする。尚、矩形の照射領域IM1が偏向器210により走査される走査範囲に対して、矩形のレーザビームの走査範囲SAは、上述した転写倍率で拡大されている。
【0056】
図9(c)は、反射型光変調素子340の画面を矩形のBビーム、Gビーム、Rビームのそれぞれが照射する様子を、横軸を時間軸として示した図である。Bビーム、Gビーム、Rビームは、走査方向SDに沿って反射型光変調素子340の画面を垂直走査し、1フレーム時間で1画面の走査を完了する。各色領域の境界部分で混色が生じないように、Bビーム、Gビーム、Rビームは、互いに重複しないように構成されており、必然的に各ビームの垂直方向の幅V2は、V’の1/3以下に構成されている。各ビームの垂直方向の幅は、反射型光変調素子340の画面の垂直方向の幅の1/6以上かつ1/3以下に設定され得る。
【0057】
以上のように、本実施形態の投射型表示装置は、複数の半導体レーザと、コリメートレンズと、インテグレータ照明系と、偏向素子とを備えた照明ユニットが、異なる色光毎に設けられており、異なる色光の照明ユニットが出力する照明光を合成する光合成部を備え、異なる色光の照明ユニットの各々が出力する矩形の照明領域は、互いに重ならないように偏向走査されながら反射型光変調素子に拡大転写される。
【0058】
本実施形態によれば、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置を実現することができる。
【0059】
[実施形態2]
図10は、実施形態2に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図である。説明の便宜のため、同図では、光学要素を設置するための機械的機構や、筐体、電気的配線などは省略されている。実施形態1と共通する事項については、説明を簡単化もしくは省略する。
【0060】
[全体構成]
本実施形態の投射型表示装置1001は、B光源100B、G光源100G、R光源100R、B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210R、前側転写レンズ201と後側転写レンズ202とで構成される第1転写レンズ200、光合成部220、光路変換ミラー330、TIRプリズム350、反射型光変調素子340、投射レンズ360を備える点は、実施形態1と共通している。
【0061】
本実施形態は、さらに、後側転写レンズ202と光路変換ミラー330の間に配置された拡散板310aと、光路変換ミラー330を挟んで配置された前側転写レンズ321と後側転写レンズ322とで構成される第2転写光学系320と、を備えている。
【0062】
実施形態1の第1転写レンズ200は、矩形の照射領域IM1を反射型光変調素子340の画面に拡大転写したが、本実施形態の第1転写レンズ200(第1転写光学系)は、拡散板310aの位置に2次転写像IM2を形成する。そして、拡散板310aにより散乱された2次転写像IM2は、第2転写光学系320(第2転写光学系)により反射型光変調素子340の画面に3次転写像IM3として拡大転写される。各像の大きさは、典型的には下記の関係に設定される。
IM1:IM2:IM3=1:2:6
係る構成を有する本実施形態によれば、反射型光変調素子340を照明する照明光のFナンバーの制御が容易になる。
【0063】
尚、図10では、拡散板310aは定位置に固定する形態としたが、例えば拡散板を回転させたり直線往復運動させるなどして、拡散板上におけるレーザ光の照射位置が時間とともに移動する形態とすることもできる。こうした形態によれば、レーザによる照明光のシンチレーションを抑制することができる。
【0064】
本実施形態によれば、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置を実現することができる。
【0065】
[実施形態3]
実施形態1および2では、光源はレーザモジュールLMから出射される複数のレーザビームを重ね合わせて矩形の照明領域を形成するためのインテグレータ照明系INTを備えていた。本実施形態も、矩形の照明領域を形成するためのインテグレータ照明系INTを備える点で共通するが、実施形態1および2のインテクレータ照明系がマイクロレンズアレイを備えていたのに対し、本実施形態のインテクレータ照明系は、ロッドインテクレータを備える点が異なる。実施形態1と共通する事項については、説明を簡単化もしくは省略する。
【0066】
図11は、実施形態3に係る光源、すなわちロッドインテクレータを備えたインテグレータ照明系を説明するための図である。本実施形態に係るインテグレータ照明系は、レーザモジュールLM、集光レンズ401、拡散素子402、ロッド403、リレーレンズ406を備え、矩形の照射領域IM1を形成する。レーザモジュールLMが備える半導体レーザ、半導体レーザの発光部12、コリメートレンズ102などについては、図2(a)~図4(b)を参照して説明した実施形態1と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0067】
レーザモジュールLMに含まれる半導体レーザの各々から出射されるレーザビームは、コリメートレンズ102の作用でおよそ平行となるが、ダイバージェンスについては既に説明したとおりである。レーザモジュールLMから出力される略コリメートされたレーザビームは、集光レンズ401により、ロッド403の入射面INPに向けて集光される。図では、集光レンズ401は1枚の凸レンズで示されているが、収差を抑制する等の目的で複数枚のレンズで構成してもよい。
【0068】
ロッド403の入射面INPの近傍には拡散素子402が配置されており、拡散素子402により拡散されたレーザビームは入射面INPからロッド403に入射する。レーザモジュールLMから出力されるビームは、矩形の短手方向の方が長手方向よりもダイバージェンスが良好であるため、ロッド403の入射面INPでの光の取り込み損失を抑制でき、利用効率を向上することが出来る。ロッド403に入射した光は、側面で全反射を繰り返した後に出射面EXPから出射するが、拡散素子402の拡散能(拡散角)とロッド403の長さを適宜設定することにより、出射面EXPにおける照度分布を均一化することが出来る。
【0069】
ロッド403の出射面EXPから出射される像を、リレーレンズ406で転写することにより、照度の均一性が高い矩形の照射領域IM1を得ることが出来る。リレーレンズの転写倍率を適宜設定することにより、縮小あるいは等倍あるいは拡大した所望のサイズの照射領域IM1を得ることが出来る。尚、図11では、リレーレンズ406は、前側凸レンズ406aと後側凸レンズ406bの2枚で構成されているが、リレーレンズ406の構成はこの例に限られるものではない。
【0070】
図12(a)は、半導体レーザの発光部12の短手方向(X方向)が見える向きでインテグレータ照明系INTを含む光源400を示した図である。図12(b)は、半導体レーザの発光部12の長手方向(Y方向)が見える向きでインテグレータ照明系INTを含む光源400を示した図である。
【0071】
ロッド403は、入射した光をその側面で全反射させ得る光学素子であればよく、例えば図13(a)に示すものや、図13(b)に示すものが用いられ得る。好適には、入射面INPの形状、出射面EXPの形状、およびロッド部分の断面形状が同一となるようにロッド403は構成される。
図13(a)に示すロッド403は、例えば光学ガラスや透光性樹脂のような光学材料から成る中実の四角柱状の素子であり、端面である入射面INPおよび出射面EXPの形状は、長辺がH0、短辺がV0の矩形となっている。入射面INPおよび出射面EXPには、反射防止膜(ARコート)を付与しておくのが望ましい。
また、図13(b)に示すロッド403は、中空の四角柱、すなわち筒形状の素子であり、筒の内面には例えばアルミニウム等を材料とする反射面が形成されている。筒の開口部である入射面INPおよび出射面EXPの形状は、長辺がH0、短辺がV0の矩形となっている。例えば、ガラス製や金属の板状の基板に、アルミニウム膜等の反射膜を蒸着した後に、基板を張り合わせて筒状に組み立てることにより、比較的安価に製造することが出来る。
【0072】
ロッド403の入射面INPおよび出射面EXPの形状は、上述のように長辺がH0、短辺がV0の矩形であるが、リレーレンズ406により、図12(c)に示す長辺がH1、短辺がV1の矩形の照射領域IM1が形成される。矩形の照射領域IM1の長辺が平行方向(半導体レーザのSlow軸方向)に対応し、短辺が直交方向(半導体レーザのFast軸方向)に対応する。例えば、ロッド403の入射面INPおよび出射面EXPの形状を、X方向(短辺V0)が0.33mm、Y方向(長辺H0)が1.67mmの矩形とし、リレーレンズ406の倍率を1.2倍とすれば、V1が0.4mm、H1が2mm程度の矩形の照射領域IM1を得ることができる。
【0073】
図14に、実施形態3に係る投射型表示装置1002の光学系の概略構成を示す。説明の便宜のため、同図では、光学要素を設置するための機械的機構や、筐体、電気的配線などは省略されている。本実施形態は、図1を参照して説明した実施形態1に係る投射型表示装置1000のB光源100B、G光源100G、R光源100Rを、ロッドインテグレータを用いたB光源400B、G光源400G、R光源400Rに置き換えたものである。実施形態1に係る投射型表示装置1000と共通する事項については、説明を省略する。
【0074】
図15は、実施形態1における図8(a)に対応する図であり、偏向器と矩形の照射領域IM1の位置関係を示している。座標系は、B光源400Bを基準に示している。
【0075】
本実施形態の投射型表示装置は、複数の半導体レーザと、コリメートレンズと、インテグレータ照明系と、偏向素子とを備えた照明ユニットが、異なる色光毎に設けられており、異なる色光の照明ユニットが出力する照明光を合成する光合成部を備え、異なる色光の照明ユニットの各々が出力する矩形の照明領域は、互いに重ならないように偏向走査されながら反射型光変調素子に拡大転写される。
【0076】
本実施形態によれば、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置を実現することができる。
【0077】
[実施形態4]
図16に、実施形態4に係る投射型表示装置1003の光学系の概略構成を示す。説明の便宜のため、同図では、光学要素を設置するための機械的機構や、筐体、電気的配線などは省略されている。本実施形態は、図10を参照して説明した実施形態2に係る投射型表示装置1001のB光源100B、G光源100G、R光源100Rを、実施形態3で説明したロッドインテグレータを用いたB光源400B、G光源400G、R光源400Rに置き換えたものである。実施形態2に係る投射型表示装置1001と共通する事項については、説明を省略する。
【0078】
実施形態2と同様に、本実施形態の第1転写レンズ200(第1転写光学系)は、拡散板310aの位置に2次転写像IM2を形成する。そして、拡散板310aにより散乱された2次転写像IM2は、第2転写光学系320(第2転写光学系)により反射型光変調素子340の画面に3次転写像IM3として拡大転写される。各像の大きさは、典型的には下記の関係に設定される。
IM1:IM2:IM3=1:2:6
係る構成を有する本実施形態によれば、反射型光変調素子340を照明する照明光のFナンバーの制御が容易になる。
【0079】
尚、図1では、拡散板310aは定位置に固定する形態としたが、例えば拡散板を回転させたり直線往復運動させるなどして、拡散板上におけるレーザ光の照射位置が時間とともに移動する形態とすることもできる。こうした形態によれば、レーザによる照明光のシンチレーションを抑制することができる。
【0080】
本実施形態によれば、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置を実現することができる。
【0081】
[他の実施形態]
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。
【0082】
例えば、インテグレータ照明系INTにおいて、対をなすマイクロレンズアレイ103とマイクロレンズアレイ104の代わりに、回折型の拡散素子(所謂トップハット素子)を配置してもよい。X方向とY方向で異なる拡散角を有するトップハット素子であれば、必ずしも2枚設ける必要は無く、1枚で構成することも可能である。
【0083】
あるいは、球面形状を有するマイクロレンズを2次元に配列形成したマイクロレンズアレイ103とマイクロレンズアレイ104の代わりに、X方向のストライプ状マイクロレンズ(シリンドリカルレンズ)のアレイと、Y方向のストライプ状マイクロレンズ(シリンドリカルレンズ)のアレイを、独立して設けてもよい。係る構成にすれば、ストライプのピッチに関係なく焦点距離とアレイの間隔を設定できるため、アレイ分割数の不足による取り込みの不安定を抑制することができるとともに、より細長くて均一な矩形スポットを生成しやすくなる。
【0084】
また、ロッド403は、入射面INPの形状、出射面EXPの形状、およびロッド部分の断面形状が同一となる構成を例に挙げたが、いわゆるテーパロッドのように入射面INPの形状と出射面EXPの形状が異なるロッドを用いてもよい。
【0085】
また、実施形態1~4において、像を転写するのに用いられる転写光学系、すなわち、第1転写レンズ200(第1転写光学系)、第2転写光学系320、リレーレンズ406は、両側がテレセントリックとなるように構成されることが望ましいが、それ以外でもよい。これらの転写光学系の中の1つ以上には、例えば、光軸周りの2つの断面で異なる光学特性を有する所謂アナモフィック光学系(アナモフィックレンズ)を採用してもよい。
【0086】
図17(a)、図17(b)は、実施形態3あるいは実施形態4におけるリレーレンズ406にアナモフィック光学系を採用した例であり、各図は互いに直交する方向から見た図である。前側凸レンズ406aと後側凸レンズ406bの組み合わせによれば拡大率2倍の像を転写する構成であるところ、X方向にのみ曲率を加えたシリンダーレンズ(凹レンズ407aと凸レンズ407b)をアフォーカルとなるように追加してアナモフィックな光学系を構成することにより、一方向の倍率のみを変更することが出来る。この例では、ロッド403の出射面EXPから出射される像を、X方向は等倍でY方向は2倍の矩形の照射領域IM1として転写する例である。もちろん、これは一例であり、拡大あるいは縮小の倍率は任意に設定することが可能である。
【0087】
このように、第1転写レンズ200(第1転写光学系)、第2転写光学系320、リレーレンズ406などの転写光学系をアナモフィックな光学系にすれば、一方向の倍率のみを縮小したり拡大できるので、NAや転写像のアスペクトを調整することが可能となり、より光の利用効率を向上させることが出来る。
【符号の説明】
【0088】
11・・・半導体レーザ/12・・・発光部/100B・・・B光源/100G・・・G光源/100R・・・R光源/102・・・コリメートレンズ/103、104・・・マイクロレンズアレイ/106・・・集光レンズ/190・・・投映スクリーン/201・・・前側転写レンズ/202・・・後側転写レンズ/210・・・偏向器/210B・・・B用偏向器/210G・・・G用偏向器/210R・・・R用偏向器/211・・・基体/212・・・モータ/213・・・反射面/214・・・ビーム照射位置/220・・・光合成部/221、222・・・ダイクロイックミラー/310a・・・拡散板/320・・・第2転写光学系/321・・・第1照明レンズ/322・・・第2照明レンズ/330・・・光路変換ミラー/340・・・反射型光変調素子/350・・・TIRプリズム/360・・・投射レンズ/400・・・光源/400B・・・B光源/400G・・・G光源/400R・・・R光源/401・・・集光レンズ/402・・・拡散素子/403・・・ロッド/406・・・リレーレンズ/406a・・・前側凸レンズ/406b・・・後側凸レンズ/407a・・・凹レンズ/407b・・・凸レンズ/1000、1001、1002、1003・・・投射型表示装置
【要約】
【課題】画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置の実現が期待されていた。
【解決手段】複数の半導体レーザと、前記複数の半導体レーザが出力する複数のレーザビームをコリメートするコリメートレンズと、前記コリメートレンズによりコリメートされた複数のレーザビームを重ね合わせて矩形の照明領域を形成するインテグレータ照明系と、前記インテグレータ照明系により前記矩形の照明領域が形成される位置よりも前記コリメートレンズに近い位置に配置された偏向素子と、前記偏向素子により偏向走査される前記矩形の照明領域を、反射型光変調素子に拡大転写する転写光学系と、前記反射型光変調素子が出力する映像光を投射する投射レンズと、を備える、ことを特徴とする投射型表示装置である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17