(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】一体化されたピンチクリップ閉鎖装置を有する注入ポンプカセット
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20230810BHJP
A61M 39/28 20060101ALI20230810BHJP
F04B 43/12 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
A61M5/142 502
A61M5/142 504
A61M39/28
F04B43/12 A
F04B43/12 Z
(21)【出願番号】P 2022503786
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(86)【国際出願番号】 US2020041588
(87)【国際公開番号】W WO2021015966
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-02-10
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502300657
【氏名又は名称】ゼヴェクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【氏名又は名称】小畑 統照
(74)【代理人】
【識別番号】100202854
【氏名又は名称】森本 卓行
(72)【発明者】
【氏名】エイザパジック,アズール
(72)【発明者】
【氏名】ベック,ケント・エフ
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-141418(JP,A)
【文献】登録実用新案第3133453(JP,U)
【文献】特表2012-516208(JP,A)
【文献】特表2012-530564(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0036322(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 39/28
F04B 43/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を患者に送達するための、ポンプと共に使用されるカセットであって、
一体構造のカセット本体と、
前記カセット本体に装着されて液体の流れを輸送する、弾力的に変形可能な管のセグメントと
を備え、
前記カセット本体が、固定ピンチ要素と、可動ピンチ要素を有するピンチアームとを含み、
前記ピンチアーム
が閉位
置を有し、前記閉位置では、前記可動ピンチ要素は、液体の前記流れを止めるように、前記固定ピンチ要素と協働して前記管セグメントを変形させ、
前記ピンチアームが、前記閉位置から開位置へと弾力的に曲がることができ、前記開位置では、前記可動ピンチ要素は、前記固定ピンチ要素に対し、液体の前記流れが可能になるように位置決めされ、前記ピンチアームが前記閉位置から離れるように曲がると、前記ピンチアームは前記閉位置に向かってばね付勢される、カセット。
【請求項2】
前記カセット本体がプラテン表面を含み、前記ピンチアームが前記閉位置から前記開位置へと曲がると、前記プラテン表面および前記管セグメントに対して横方向に前記可動ピンチ要素が変位する、請求項1に記載のカセット。
【請求項3】
前記カセット本体が壁部を含み、前記壁部は前記壁部を通る開口を有し、前記ピンチアームが、前記管セグメントから離れるように延在するように前記壁部から外向きに片持ち式にされた第1の部分と、前記開口を通って内向きに延在するように構成された第2の部分とを有し、前記可動ピンチ要素が、前記ピンチアームの前記第2の部分に位置付けられている、請求項1に記載のカセット。
【請求項4】
前記ピンチアームの前記第1の部分を前記壁部に向かって押すことにより、前記ピンチアームが前記閉位置から離れるように曲がることができる、請求項3に記載のカセット。
【請求項5】
前記固定ピンチ要素が固定ピンチ縁部を含み、前記可動ピンチ要素が可動ピンチ縁部を含み、前記ピンチアームが前記閉位置にあるとき、前記固定ピンチ縁部および前記可動ピンチ縁部が前記管セグメントの対向する面に接触し、互いの真向かいになる、請求項1に記載のカセット。
【請求項6】
前記カセット本体が、前記プラテン表面に隣接して前記管セグメントを保持するための少なくとも1つの把持具を含む、請求項2に記載のカセット。
【請求項7】
前記少なくとも1つの把持具が、前記プラテン表面の両端部の近くに配置された第1の把持具および第2の把持具を含む、請求項6に記載のカセット。
【請求項8】
前記プラテン表面が凸形である、請求項2に記載のカセット。
【請求項9】
前記プラテン表面が台形である、請求項8に記載のカセット。
【請求項10】
前記カセット本体によって受けられたばねをさらに備え、前記ピンチアームが前記閉位置から離れるように曲げられたとき、前記ばねは、前記ピンチアームを前記閉位置に向かって追加的にばね付勢する、請求項
3に記載のカセット。
【請求項11】
前記ばねが板ばねである、請求項10に記載のカセット。
【請求項12】
前記板ばねが近位端部および遠位端部を含み、前記カセット本体が、前記壁部に隣接する第1のスロットと、前記ピンチアームに隣接する第2のスロットとを含み、前記第1のスロットが前記板ばねの前記近位端部を受け、前記第2のスロットが前記板ばねの前記遠位端部を受ける、請求項11に記載のカセット。
【請求項13】
前記第2のスロットが、前記板ばねの前記遠位端部と前記
第2のスロットの端部との間に隙間を空けて前記板ばねの前記遠位端部を受ける、請求項12に記載のカセット。
【請求項14】
前記第1のスロットが、前記ピンチアームの前記第1の部分が前記壁部と結合するカンチレバー位置に近接している、請求項12に記載のカセット。
【請求項15】
カセットインターフェースと、装填位置と圧送位置との間で前記カセットインターフェースに対して動くことができるポンプ扉とを備えるポンプ、ならびに
前記ポンプ扉が前記装填位置にあるときに前記ポンプの前記カセットインターフェースによって受けられるように構成されたカセットであって、
一体構造のカセット本体と、
前記カセット本体に装着されて液体の流れを輸送する、弾力的に変形可能な管のセグメントと
を備えるカセットを備え、
前記カセット本体が、固定ピンチ要素と、可動ピンチ要素を有するピンチアームとを含み、
前記ピンチアーム
が閉位置
を有し、前記閉位置では、前記可動ピンチ要素は、液体の前記流れを止めるように、前記固定ピンチ要素と協働して前記管セグメントを変形させ、
前記ピンチアームが、前記閉位置から離れて開位置へと弾力的に曲がることができ、前記開位置では、前記可動ピンチ要素は、前記固定ピンチ要素に対し、液体の前記流れが可能になるように位置決めされ、前記ピンチアームが前記閉位置から離れるように曲がると、前記ピンチアームは前記閉位置に向かってばね付勢され、
前記カセットが前記ポンプの前記カセットインターフェースによって受けられたとき、前記ポンプ扉が前記装填位置から前記圧送位置へと動くと、前記ポンプ扉は前記ピンチアームを前記閉位置から前記開位置へと曲げ、続いて前記ポンプ扉が前記圧送位置から前記装填位置へと動くと、前記ピンチアームは前記開位置から前記閉位置へと自動で戻る、
流体送達システム。
【請求項16】
前記ポンプ扉は、前記ポンプ扉が前記装填位置から前記圧送位置へと動くときに前記ピンチアームに係合し前記ピンチアームを次第に曲げるように構成されたカム表面を含む、請求項15に記載の流体送達システム。
【請求項17】
前記ポンプ扉がヒンジ軸を有し、前記ポンプ扉は前記ヒンジ軸を中心に前記装填位置と前記圧送位置との間で枢動し、前記ピンチアームが前記閉位置から前記開位置へと曲がるのは前記ヒンジ軸に向かう方向である、請求項15に記載の流体送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は2019年7月25日出願の米国特許出願第16/522,325号の優先権を主張し、その開示全体を参照によって本明細書に援用する。
【0002】
[0002]本発明は、注入ポンプおよびそこに取外し可能に装填可能なカセットに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]プログラム可能注入ポンプが、経腸栄養向けの流動食および疼痛管理などの種々の目的のための液体薬剤の制御された送達を行うために使用されている。一般的な装置では、注入ポンプが、可撓性の管を備える使い捨ての投与セットを受け、その可撓性の管を通して注入液体が圧送される。投与セットはカセットを備えることができ、弾力的に変形可能な管セグメントがカセットを通って延在し、管セグメントは、注入液体の供給源から来る管に連結された上流流入端部と、患者へと通じる管に連結された下流流出端部とを有する。弾力的に変形可能な管セグメントは、注入ポンプの圧送機構によって係合されるように設計される。カセットは所定の位置で取外し可能にポンプに装填可能であり、この所定の位置では、管セグメントが圧送機構の近くに配置されて、圧送機構が管に液体流を流すように管セグメントに作用することを可能にする。
【0004】
[0004]患者を保護するための安全機能として、投与セットの一部として自由流動防止装置を設けて、カセットがポンプに適切に装填されていない場合に管を通る注入液体の流れを自動で止めることが知られている。従来技術の自由流動防止装置は、ばね付勢されたピンチクランプ、摺動クランプ、およびインライン閉鎖装置を含めて種々の形態を有する。カセットがポンプに適切に装填されているとき、自由流動防止装置は作動不能にされ、通常は必要とされるまで未使用状態である。
【0005】
[0005]ばね付勢されたピンチクランプは確実に自由流動を防止し、インライン閉鎖装置および摺動クランプに勝る利点を有する。管セグメントの内腔の内部に止め弁を有するインライン閉鎖装置とは異なり、ばね付勢されたピンチクランプは、よりどろどろした栄養液体の流れに干渉しない。開位置から閉位置へと摺動クランプを動かすために外力を加えることを必要とする摺動クランプとは異なり、ばね付勢されたピンチクランプは、ピンチクランプを開くのに必要とされる外力なしに、自動で閉位置をとるように付勢される。これらの利点にもかかわらず、ばね付勢されたピンチクランプは、製造および組立てが機械的に複雑であるという欠点を有する。ばね付勢されたピンチクランプは、本体、本体に対して動くことができる別個のプランジャ、および本体に対してプランジャを付勢するためのばね要素という3つの部品を有する場合がある。これらの部品は別々に製造され、次いで組み立てられなければならず、それにより、カセットにコストが上乗せされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]本開示では、注入ポンプと共に使用するためのカセットが提供される。カセットは、一般に、一体構造のカセット本体と、カセット本体に装着されて液体の流れを輸送する、弾力的に変形可能な管のセグメントとを備えることができる。一体構造のカセット本体は、固定ピンチ要素と、可動ピンチ要素を有する曲がることができるピンチアームとを含むことができる。ピンチアームは、通常閉位置にあることができ、閉位置では、可動ピンチ要素は、液体の流れを止めるように、固定ピンチ要素と協働して管セグメントを変形させる。ピンチアームは、閉位置から離れて開位置へと弾力的に曲がることができる場合があり、開位置では、可動ピンチ要素は、固定ピンチ要素に対し、液体の流れが可能になるように位置決めされ、ピンチアームが閉位置から離れるように曲がると、ピンチアームは閉位置に向かってばね付勢される。このように、一体構造のカセット本体は、一体に形成された自由流動防止装置を有する。
【0007】
[0007]本開示の一態様では、カセット本体はプラテン表面を含むことができ、ピンチアームが閉位置から開位置へと曲がると、プラテン表面および管セグメントに対して横方向に可動ピンチ要素が変位し得る。一実施形態では、プラテン表面は凸形、たとえば台形であってよい。
【0008】
[0008]本開示の別の態様では、カセット本体は壁部を含むことができ、壁部はそこを通る開口を有し、ピンチアームは、管セグメントから離れるように延在するように壁部から外向きに片持ち式にされた第1の部分と、開口を通って内向きに延在するように構成された第2の部分とを有することができ、可動ピンチ要素はピンチアームの第2の部分に位置付けられ得る。ピンチアームの第1の部分を壁部に向かって押すことにより、ピンチアームは、閉位置から離れるように曲がることができ得る。
【0009】
[0009]本開示の別の態様では、カセットはカセット本体によって受けられたばねをさらに備えることができ、ピンチアームが閉位置から離れるように曲げられたとき、ばねは、ピンチアームを閉位置に向かって追加的にばね付勢する。一実施形態では、ばねは板ばねであってよい。板ばねは近位端部および遠位端部を含むことができ、カセット本体は壁部に隣接する第1のスロットと、ピンチアームに隣接する第2のスロットとを含むことができ、第1のスロットおよび第2のスロットは、板ばねの近位端部および遠位端部をそれぞれ受ける。
【0010】
[0010]本開示は、上に概要を示したカセットと組み合わせたポンプを備える流体送達システムも提供する。ポンプは、カセットインターフェースと、装填位置と圧送位置との間でカセットインターフェースに対して動くことができるポンプ扉とを備えることができる。カセットがポンプのカセットインターフェースによって受けられたとき、ポンプ扉が装填位置から圧送位置へと動くと、ポンプ扉はピンチアームを閉位置から開位置へと曲げることができ、続いてポンプ扉が圧送位置から装填位置へと動くと、ピンチアームは開位置から閉位置へと自動で戻ることができる。
【0011】
[0011]次に、添付図面と共に解釈される以下の詳細な説明において、本発明の特質および動作モードをより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】[0012]本開示の一実施形態に従って形成された注入ポンプおよび投与セットの一部を示す分解斜視図である。
【
図2】[0013]ポンプの内部の構成要素を見せるためにポンプのハウジングが取り外された状態の、
図1に示した注入ポンプの図である。
【
図3】[0014]
図3Aは
図1に示した投与セットのカセットの平面図であり、カセットのピンチアームがその閉位置で示されている。[0015]
図3Bは
図3Aに示したカセットの底面図である。
【
図4】[0016]
図4Aはカセットの別の平面図であり、カセットのピンチアームはその開位置で示されている。[0017]
図4Bは
図4Aに示したカセットの底面図である。
【
図5】[0018]概ね
図4Aの線V-Vに沿って取られた、カセットの断面図である。
【
図6】[0019]ポンプの扉を閉じる前に注入ポンプに装填されたカセットを示す斜視図である。
【
図7】[0020]カセットおよびポンプの部分断面斜視図であり、ポンプ扉はカセットを覆って部分的に閉じられている。
【
図8】[0021]カセットおよびポンプの部分断面斜視図であり、ポンプ扉はカセットを覆って完全に閉じられている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0022]
図1には、注入ポンプ10と、注入ポンプ10によって取外し可能に受けられるように設計された使い捨ての投与セット30の一部とが示してある。
図2において最もよく理解されるように、注入ポンプ10は電気モータ14を有する圧送機構12を含み、この電気モータ14は駆動歯車14に連結させられており、この駆動歯車14は、カムシャフト18に固定された被動歯車16に噛み合わされている。複数の偏心カム20が、カムシャフトと共に回転するようにカムシャフト18に装着されており、それぞれのカム20は各圧送指部22に係合するように構成されている。理解され得るように、モータ14は、カムシャフト18の軸を中心にカムシャフト18およびカム20を回転させるように動作可能であり、それにより、圧送指部22のそれぞれは、カムシャフト18から離れるように、またカムシャフト18に向かうように往復運動式で半径方向に運動する。偏心カム20は、圧送指部22が運動すると圧送機構12の長手方向に沿って、すなわちカムシャフト18の軸に平行な方向において周期的な蠕動圧送動作が行われるように構成され得る。注入ポンプの分野の当業者には、圧送機構12は上に図示および説明したものとは異なる構成を有してもよいことが認識されよう。たとえば、圧送機構12はモータ駆動式回転部を有する回転圧送機構として具体化されてもよく、モータ駆動式回転部は、回転子の回転軸を中心に角度的に間隔を空けて配置された圧送要素を搭載して、蠕動圧送動作を提供する。別の一例として、圧送機構12は、単一のモータ駆動式回転カムを有して、回転カムの回転軸に対して概して半径方向に複数の圧送指部の往復運動を生じさせる、曲線形圧送機構として構成されてもよい。
【0014】
[0023]
図1に示されているように、投与セット30は、注入液体を輸送するための管32と、注入ポンプ10に装填可能なカセット34とを備える。管32は、
図3および
図4に見ることができる弾力的に変形可能な管セグメント32Aを含むことができ、弾力的に変形可能な管セグメント32Aは、カセット34の一部として設けることができ、カセット34がポンプに装填されたときに注入ポンプ10の圧送機構12によって動作可能に係合されるものである。管32は、注入液体の供給源(図示せず)から来て管セグメント32Aの流入端部に連結される上流管32Bと、管セグメント32Aの流出端部に連結され、患者(図示せず)へと通じる下流管32Cとを追加的に含むことができる。管セグメント32Aは上流管32Bおよび下流管32Cとは異なる材料で製作されてもよく、管セグメント32Aの材料は、圧送機構12によって係合されたときに所望の弾性および流量パラメータを有するように選択される。たとえば、管セグメントは軟質PVCまたはシリコーンで製作されてもよく、管32B、32Cは管セグメント32Aの両端部に接着剤によって固定された、標準的なPVCの投与セット管であってよい。
【0015】
[0024]次に、この実施形態のカセット34を
図3および
図4を参照して説明する。管セグメント32Aに加えて、カセット34は一体構造であるカセット本体36を備える。本明細書において、用語「一体構造の」は、単一の同質部品として成形された、または単一の同質部品として付加製造されたことを意味する。
【0016】
[0025]一体構造のカセット本体36は、一体構造のカセット本体の一部として一体に形成された自由流動防止装置を備える。図示されている実施形態では、自由流動防止装置は、固定ピンチ要素38と、可動ピンチ要素42を有するピンチアーム40とを含む。ピンチアーム40は、通常、
図3に示されている閉位置にあり、閉位置では、可動ピンチ要素42は、管セグメントを通る液体の流れを止めるように、固定ピンチ要素38と協働して管セグメント32Aを変形させる。ピンチアーム40は閉位置から離れて
図4に示されている開位置へと弾力的に曲がることができ、開位置では、可動ピンチ要素42は、固定ピンチ要素38に対し、管セグメント32Aを通る液体の流れが可能になるように位置決めされ、ピンチアーム40が閉位置から離れるように曲がると、ピンチアームは閉位置に向かってばね付勢される。
【0017】
[0026]カセット本体36は、管セグメント32Aの少なくとも一部に隣接して延在するプラテン表面44を含むことができる。プラテン表面44は平坦(すなわち平面)であっても、そうでなくてもよい。
図5において最もよく理解されるように、プラテン表面44は管セグメント32Aに向かって凸形であってよい。たとえば、プラテン表面44は、平坦な中央領域44Aによって連結された1対の傾斜した端部領域44Bによって特徴付けられる、台形の形状を有してもよい。
【0018】
[0027]閉位置(
図3Aおよび
図3B)と開位置(
図4Aおよび
図4B)との間でピンチアーム40が曲がると、プラテン表面44および管セグメント32Aに対して横方向に可動ピンチ要素42が変位し得る。こうした構成では、流れを止め、また可能にするために、プラテン表面44に向かって、また離れるようにピンチ要素42が動くことが回避されるので、カセット30は薄型のプロファイルを与えられ得る。
【0019】
[0028]カセット本体は壁部46を含むことができ、壁部46はそこを通る開口48を有する。ピンチアーム40は、管セグメント32Aから離れるように延在するように壁部46から外向きに片持ち式にされた第1の部分40Aと、第1の部分40Aの遠位端部から管セグメント32Aに向かって内向きに延在するように構成された第2の部分40Bとを有することができ、第2の部分40Bは壁部46の開口48を通過する。可動ピンチ要素42はピンチアーム40の第2の部分40Bに位置付けられ得る。
図3および
図4に示されている実施形態では、ピンチアームの第1の部分40Aを壁部46に向かって押すことにより、ピンチアーム40は閉位置から離れるように曲がることができる。この構成により、投与セット30を手動で片手でプライムするための直感的かつ簡単な構造が提供され、それにより、使用者はカセット本体36を横方向に握ってピンチアーム40を壁部46に向かって押し進めるだけであるので、有利である。
【0020】
[0029]可動ピンチ要素42は可動ピンチ縁部42Aを含むことができ、固定ピンチ要素38は固定ピンチ縁部38Aを含むことができ、可動ピンチ縁部および固定ピンチ縁部は、管セグメントの対向する側面で管セグメント32Aに接触する。
図3Bに示されているように、固定ピンチ縁部38Aおよび可動ピンチ縁部42Aは、管セグメントに沿った軸方向ピンチ位置Pにおいて、互いの真向かいで管セグメント32Aに接触するように構成することができ、それにより、ピンチアーム40が閉位置に動かされたとき、管セグメント32Aが確実に閉止される。
【0021】
[0030]カセット本体36は、プラテン表面44に隣接して管セグメント32Aを保持するための少なくとも1つの把持具50を含むことができる。たとえば、第1の把持具および第2の把持具50が、プラテン表面44の両端部の近くにそれぞれ配置されてもよい。
【0022】
[0031]カセット本体36は、一体構造のプラスチック部品として、成形されてもよく、たとえば3次元プリンティングによって付加製造されてもよい。非限定的な一例として、カセット本体36はポリカーボネートまたはTRITAN(商標)ブランドのプラスチックから成形されてもよい。前述の説明から理解されるであろうように、一体構造のカセット本体36は、一体に形成された自由流動防止装置を含む。
【0023】
[0032]一選択肢として、カセット34は、ピンチアームが閉位置から離れるように曲げられたときにピンチアーム40を閉位置に向かって追加的にばね付勢することを可能にする、カセット本体36によって受けられたばね52をさらに備えることができる。一実施形態では、ばね52は近位端部53および遠位端部55を含む板ばねであり、カセット本体36は壁部46に隣接する第1のスロット37と、ピンチアーム40に隣接する第2のスロット39とを含み、第1のスロット37は板ばね52の近位端部53を受け、第2のスロット39は板ばねの遠位端部55を受ける。図示の実施形態によれば、第2のスロット39は、板ばねの遠位端部とスロットの端部との間に隙間を空けて板ばね52の遠位端部55を受けることができる。第1のスロット37は、ピンチアーム40の第1の部分40Aが壁部46と結合するカンチレバー位置に近接していてもよい。
【0024】
[0033]ばね52は一実施形態では板ばねであるとして示されているが、ばね52は異なるタイプのばね、たとえばコイルばねまたはトーションばねであってよい。
【0025】
[0034]次に、
図1、
図7、および
図8を参照して、安全な流体送達システムを実現するための、注入ポンプ10へのカセット34の装填について説明する。ポンプ10は、カセット34を取外し可能に受けるように構成されたカセットインターフェース60と、
図1に示された装填位置と
図8に示された圧送位置との間でカセットインターフェース60に対して動くことができる扉62とを含むことができる。カセットインターフェース60は、圧送機構12の圧送指部22を覆う可撓性の流体封止膜61を含むことができる。ポンプ10にカセット34を装填するには、使用者は、カセット34の管セグメント32Aが膜61に向くように、
図7に示すようにカセットインターフェース60にカセットを配置し、それにより、管セグメント32Aは圧送機構12によって動作可能に係合され得る。
図7に示されているように、ピンチアーム40は曲げられていないその閉位置にあり、したがって上述のように管セグメント32Aを通る流れが妨げられる。
【0026】
[0035]扉62は、
図7の矢印によって示されているように、扉62が装填位置から圧送位置へと動かされたときにピンチアーム40に係合するように構成されたカム表面64を含むことができる。カム表面64は、扉が圧送位置へと動くと、カム表面64がピンチアーム40に係合し、ピンチアーム40の固有の付勢、および任意選択のばね52の追加の付勢(任意選択のばねが提供されている場合)に逆らって、ピンチアーム40をその開位置へと内向きに次第に曲げるように構成され得る。
図8に示されているようにポンプ扉62がその圧送位置にあるとき、ピンチアーム40は扉62およびカム表面64によってその開位置に保持され、それによって管セグメント32Aを通る流れが可能になる。ポンプ10からカセット34を取り外す(すなわち装填解除する)ときになると、扉62はその圧送位置からその装填位置に向かって戻され、ピンチアーム40はそれ自体の弾力性を受けて、曲げられていないその閉位置へと自動で戻る。任意選択のばね52が提供されている場合、ばね52により、ピンチアーム40がその閉位置へと自動で戻ることが助けられる。このように、管セグメント32Aを通る流れは再び妨げられる。
【0027】
[0036]図示されている実施形態では、ポンプ扉62はヒンジ軸65を有し、ポンプ扉はヒンジ軸65を中心に装填位置と圧送位置との間で枢動し、ピンチアーム40が閉位置から開位置へと曲がるのは、ヒンジ軸65に向かう方向である。ヒンジ式の扉の代わりに摺動扉が使用され、扉をその装填位置からその圧送位置へと摺動させると、ピンチアームがその閉位置からその開位置へと曲がるように構成されてもよい。
【0028】
[0037]本開示には例示的な実施形態が記載されているが、詳細な説明は、添付の特許請求の範囲に記載の範囲を、記載された特定の実施形態に限定するものではない。特許請求の範囲は、特許請求の範囲に記載の範囲に含まれ得る、記載された実施形態の代替形態、修正形態および均等物を対象として含むものである。