IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-環境制御システム 図1
  • 特許-環境制御システム 図2
  • 特許-環境制御システム 図3
  • 特許-環境制御システム 図4
  • 特許-環境制御システム 図5
  • 特許-環境制御システム 図6
  • 特許-環境制御システム 図7
  • 特許-環境制御システム 図8
  • 特許-環境制御システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】環境制御システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/10 20200101AFI20230814BHJP
【FI】
H05B47/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019184239
(22)【出願日】2019-10-07
(65)【公開番号】P2021061149
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薮亀 順平
(72)【発明者】
【氏名】奥野 達也
(72)【発明者】
【氏名】原田 和樹
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-158811(JP,A)
【文献】特開2003-310761(JP,A)
【文献】特開2018-056012(JP,A)
【文献】特開2015-022945(JP,A)
【文献】特開2014-232583(JP,A)
【文献】特開2007-151933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定空間の広範囲を照らす少なくとも1つのアンビエント照明と、
前記所定空間内の作業スペースにおける視対象領域を照らすための少なくとも1つのタスク照明と、
前記作業スペースに音を出力するための少なくとも1つのタスク音源と、
前記作業スペースに存在する1以上の人に集中を促す環境にするべきか、又は前記人を休息へ促す環境にするべきかを特定するための制御内容判断部と、
前記アンビエント照明の調光・調色制御と前記タスク照明の調光・調色制御、及び前記タスク音源の調音制御を実行する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記制御内容判断部からの信号に基づいて前記作業スペースを前記人に集中を促す第1環境にするべきであると判定すると、前記作業スペースを前記人に集中を促す環境にするように、前記アンビエント照明、前記タスク照明、及び前記タスク音源を制御する第1制御を実行する一方、前記制御内容判断部からの信号に基づいて前記作業スペースを前記人を休息へ促す第2環境にするべきであると判定すると、前記作業スペースを前記人を休息へ促す環境にするように、前記アンビエント照明、前記タスク照明、及び前記タスク音源を制御する第2制御を実行し、
前記第2制御が実行されている最中の前記アンビエント照明と前記タスク照明の照明光の照度差が、前記第1制御が実行されている最中の前記アンビエント照明と前記タスク照明の照明光の照度差より小さくなるように制御される、環境制御システム。
【請求項2】
前記制御内容判断部が、計時を実行するタイマを含み、
前記制御装置は、前記タイマからの時間情報に基づいて、前記人に集中を促す環境にするべきか、又は前記人を休息へ促す環境にするべきかを判定する、請求項1に記載の環境制御システム。
【請求項3】
前記制御内容判断部は、前記人の生体情報を取得する生体情報取得センサ及び人の行動情報を取得する行動情報取得センサの少なくとも一つを含み、前記制御装置は、前記生体情報、及び前記行動情報のうちの少なくとも一方に基づいて、前記作業スペースを、前記人に集中を促す環境にするべきか、又は前記人を休息へ促す環境にするべきかを判定する、請求項1又は2に記載の環境制御システム。
【請求項4】
前記生体情報は、前記人の表情、脈波、体動、交感神経活動度、副交感神経活動度、皮膚温度、瞬目、眼球運動、瞳孔変動、脳波、唾液、頭部の動き、発汗情報、呼吸変動、血圧、血流量、及び個人情報のうちの少なくとも一つを含む、請求項3に記載の環境制御システム。
【請求項5】
前記行動情報は、前記人のスケジュール情報、位置情報、過去のタスク内容、現在のタスク内容、タイプスピード、前日及びそれより過去の睡眠時間、前記前日及びそれより過去の起床時間、マウスクリック数、離席頻度、離席回数、会話数、会話状態、当日の休憩時間、当日の休憩頻度、薬の摂取履歴、前日の行動情報、及び当日の行動情報のうちの少なくとも一つを含む、請求項3に記載の環境制御システム。
【請求項6】
前記第2制御が実行されている最中の前記タスク照明の照明光の光量が、前記第1制御が実行されている最中の前記タスク照明の照明光の光量よりも小さくなるように制御される、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の環境制御システム。
【請求項7】
前記第2制御が実行されている最中の前記タスク照明の照明光の色温度が、前記第1制御が実行されている最中の前記タスク照明の照明光の色温度よりも低くなるように制御される、請求項1乃至のいずれか1つに記載の環境制御システム。
【請求項8】
前記第2制御が実行されている最中の前記アンビエント照明と前記タスク照明の照明光の色差が、前記第1制御が実行されている最中の前記アンビエント照明と前記タスク照明の照明光の色差より小さくなるように制御される、請求項1乃至のいずれか1つに記載の環境制御システム。
【請求項9】
前記第2制御が実行されている最中の前記タスク照明の照明光の照射面におけるスポット径が、前記第1制御が実行されている最中の前記タスク照明の照明光の照射面におけるスポット径よりも大きくなるように制御される、請求項1乃至のいずれか1つに記載の環境制御システム。
【請求項10】
前記第2制御が実行されている最中の前記タスク照明の照明光の変動の度合が、前記第1制御が実行されている最中の前記タスク照明の照明光の変動の度合よりも大きくなるように制御される、請求項1乃至のいずれか1つに記載の環境制御システム。
【請求項11】
所定空間の広範囲を照らす少なくとも1つのアンビエント照明と、
記所定空間内の作業スペースにおける視対象領域を照らすための少なくとも1つのタスク照明と、
前記作業スペースに音を出力するための少なくとも1つのタスク音源と、
前記作業スペースに存在する1以上の人に集中を促す環境にするべきか、又は前記人を休息へ促す環境にするべきかを特定するための制御内容判断部と、
前記アンビエント照明の調光・調色制御と前記タスク照明の調光・調色制御、及び前記タスク音源の調音制御を実行する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記制御内容判断部からの信号に基づいて前記作業スペースを前記人に集中を促す第1環境にするべきであると判定すると、前記作業スペースを前記人に集中を促す環境にするように、前記アンビエント照明、前記タスク照明、及び前記タスク音源を制御する第1制御を実行する一方、前記制御内容判断部からの信号に基づいて前記作業スペースを前記人を休息へ促す第2環境にするべきであると判定すると、前記作業スペースを前記人を休息へ促す環境にするように、前記アンビエント照明、前記タスク照明、及び前記タスク音源を制御する第2制御を実行し、
前記第2制御が実行されている最中に前記制御装置が照射面に映像を投影させるように前記タスク照明を制御する、環境制御システム。
【請求項12】
前記第2制御が実行されている最中に前記タスク音源が出力する音の音量が、前記第1制御が実行されている最中に前記タスク音源が出力する音の音量よりも小さくなるよう制御される、請求項1乃至1のいずれか1つに記載の環境制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人が作業する環境を制御する環境制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明システムとしては、特許文献1に記載されているものがある。この照明システムは、オフィスおいて、会議、ミーティング、休憩等の異なるシーンに応じて異なる調光制御を行うことで、効率良い知的創造を行い易いようにしている。また、近年では、働き方改革に発端しABW(Activity Based Working)オフィスが台頭している。ABWオフィスでは、組織のパフォーマンスを向上するように、一人で集中して作業をするソロワークや、複数人でアイデアを出し合うグループワークなどワーカーの活動内容に応じて、それらに適した空間を用意する。ABWオフィスとしては、ブース型什器でスペースを区切ることでワーカーの活動内容に適したスペースを形成するものが知られている。集中作業に着目してみると特許文献2に記載されているようにパーティションなどで周囲の刺激を極力少なくするような什器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-14341号公報
【文献】特開2017-131572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人間の集中は永続的に持続できるものではなく一定時間で休息をとる事が望ましい。しかし、ブース型什器を用いる場合、物理的なパーティションによって視環境の切り替えができないことから、作業者が自発的に休息行動に移行しにくく、作業の総合的なパフォーマンスが低下し易い。
【0005】
そこで、本開示の目的は、パーティションのような周辺環境情報を遮断する什器を用いないオープン領域下において周囲認識を縮小・拡大させ、人が適切な休息を取り易くて、作業の高効率なパフォーマンスを実現し易い環境制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示に係る環境制御システムは、所定空間の広範囲を照らす少なくとも1つのアンビエント照明と、所定空間内の作業スペースにおける視対象領域を照らすための少なくとも1つのタスク照明と、作業スペースに音を出力するための少なくとも1つのタスク音源と、作業スペースに存在する1以上の人に集中を促す環境にするべきか、又は人を休息へ促す環境にするべきかを特定するための制御内容判断部と、アンビエント照明の調光・調色制御とタスク照明の調光・調色制御、及びタスク音源の調音制御を実行する制御装置と、を備え、制御装置は、制御内容判断部からの信号に基づいて作業スペースを人に集中を促す第1環境にするべきであると判定すると、作業スペースを人に集中を促す環境にするように、アンビエント照明、タスク照明、及びタスク音源を制御する第1制御を実行する一方、制御内容判断部からの信号に基づいて作業スペースを人を休息へ促す第2環境にするべきであると判定すると、作業スペースを人を休息へ促す環境にするように、アンビエント照明、タスク照明、及びタスク音源を制御する第2制御を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る環境制御システムによれば、周囲環境を認識しやすくなり休息行動を促す効果が期待される。したがって、適切な集中作業をし易くなるとともに、人が適切なタイミングに休息を取り易い。よって、作業の高効率なパフォーマンスの維持を実現し易い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)は、本開示の一実施形態に係る環境制御システムが設置された作業スペース1を示す模式図であり、人が集中しているときに好ましいタスク照明の調光制御の一例について説明する図である。また(b)は、休息を促したいときに好ましいタスク照明の調光制御の一例について説明する図である。
図2】環境制御システムにおける主要部のブロック図である。
図3】人の集中作業中の作業時間と、そのパフォーマンスとの関係を示すグラフである。
図4】人が集中しているときに好ましいアンビエント照明とタスク照明の調光・調色制御と、人が休息しているときに好ましいアンビエント照明とタスク照明の調光・調色制御について説明する図である。
図5】人の眠気に基づいて集中環境を休息へ促す環境に変更する適切な時期を特定して、適切に人に休息環境を提供することで、作業の高効率なパフォーマンスを実現できる制御装置の制御の一例のフローチャートである。
図6】人の眠気に基づいて適切な休息へ促す環境の適切な時期を特定して、適切に人に休息環境を提供することで、作業の高効率なパフォーマンスを実現できる制御装置における図5とは異なる制御のフローチャートである。
図7】変形例の環境制御システムにおける図2に対応するブロック図である。
図8】人の眠気に加えて人の苛立ち感も考慮した制御装置における図5に対応するフローチャートである。
図9】人の眠気に加えて人の苛立ち感も考慮した制御装置における図6に対応するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。また、本開示は、下記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0010】
図1(a)は、本開示の一実施形態に係る環境制御システム10が設置された作業スペース1を示す模式図であり、第1制御が実行されている最中の作業スペース1を示す模式図である。また、図1(b)は、第2制御が実行されている最中の作業スペース1を示す模式図である。また、図2は、環境制御システム10の主要部のブロック図である。
【0011】
人2は、作業スペース1において、例えば、図1に示す作業机4において知的作業を行う。知的作業とは、仕事、勉強又は読書などの頭脳を使う作業のことである。作業スペース1は、人2が知的作業を行うための空間である。作業スペース1は、例えば、オフィスビル、学習塾、又は学校等の一室で構成されてもよく、それらの室内における局所的(部分的)なスペースでもよい。作業スペース1の床3上には、人2が知的作業を行うための作業机4と、人2が着座するための椅子6とが配置されている。作業机4は、視対象領域の一例としての作業面5を有し、作業面5の少なくとも一部が、知的作業の作業領域となる。図1(a)に示すように、環境制御システム10は、アンビエント照明20、タスク照明30、タスク音源40、及びパーソナルコンピュータ(以下、単にパソコンという)50を備える。また、図2に示すように、環境制御システム10は、制御装置51、生体情報取得センサの一例としての眠気検出用センサ57、行動情報取得センサ59、及びタスク照明オンオフ操作部58を備える。眠気検出用センサ57、及び行動情報取得センサ59は、制御内容判断部に含まれる。以下、環境制御システム10の各構成についての説明を行う。
【0012】
[アンビエント照明]
アンビエント照明20の器具形態は特に限定されるものではなく、アンビエント照明20としては、例えば、シーリングライト、ラインライト、フロアライト、ダウンライト、ペンダントライトなど、種々の照明器具を適用可能である。本制御は、周囲光として用いるアンビエント照明と、作業面を照らすタスク照明との、後述する照度や色温度を異なるようにする制御も含まれるため、アンビエント照明20は、調光調色式の照明器具を適用すると好ましい。
【0013】
[タスク照明]
タスク照明30の器具形態は特に限定されるものではなく、タスク照明30としては、例えば、デスクライト、スポットライト、又はダウンライト等を採用可能である。タスク照明30として、特定領域に光を集めるような配光制御がなされたものを採用すると、作業机4の照明範囲を制御しやすいため好ましく、更に述べると、タスク照明30として、調光調色式のスポットライトを採用すると好ましい。
【0014】
タスク照明30は、作業者の作業、例えばパソコン操作作業、筆記作業、読書作業などの作業効率を高めるための照明であり、作業机4の視対象領域に選択的に照射される照明である。視対象領域とは、作業机4で作業をする際、一般的に視野に入り得る領域であり、例えば作業机4の中心の奥側にパソコン50を置いて操作をする場合は、作業机4の中央部が視対象領域の中心である。このとき、生理的要因であったり偶発的に生じる体勢や目線変化による視対象の変化は勘案しない、つまり、一時的な考え事や背伸びのために天井を見上げたり、壁際に目線を移したり、くしゃみや咳で床に目線を移したり、誰かに話しかけられたため目線を移したり、といった事象は、作業机4における視対象領域の有意な変化として考慮しない。
【0015】
タスク照明30の照明範囲は、視対象領域の一部に限定されていることが好ましく、例えば、作業机4の面積に対して30%~90%が照明範囲であることが好ましい。タスク照明30の照明範囲は、特に限定されるものではないが、略円形もしくは略多角形であることが好ましい。このようにすることで、視対象領域の明るさが、視対象領域ではない領域の明るさに対して明るくなり、周辺視野の認知的なノイズが低減する。よって、人2の意識が、作業机4側に向き、作業効率を高め易い。
【0016】
ここで、照明範囲とは、作業机4に到達する単位面積あたりの光量の最大値が半減する位置として算出可能であり、一般的には半値幅とよばれる範囲である。照明範囲は、公知の照度計を用いることで測定及び算出が可能である。タスク照明30の色温度は、特に限定されるものではないが、4000K~6500Kであれば、認知上集中力を高め易くて好ましい。
【0017】
上記アンビエント照明20とタスク照明30は、システムとして連動制御されていても良い。連動制御の手段として、たとえば照明器具とは別の器具制御デバイスを用いても良い。このとき、器具制御デバイスはパソコン、スマートフォン、タブレットなどの端末でも良いし、マルチマネージャー(例えば、NQ51101:パナソニック)などの専用的なデバイスでも良い。係る連動制御を行った場合、アンビエント照明20とタスク照明30の設定、運用、管理などがユーザにとって容易となるため好ましい。
【0018】
[タスク音源]
タスク音源40は、作業スペース1における作業机4の周辺領域、好ましくは、作業机4の中心領域周辺のみに音を出力する装置である。タスク音源40は、スピーカーで構成され、スピーカーの器具形態は特に限定されるものではない。スピーカーとしては、例えば、図1(a)に示すように、パソコン50にUSBケーブルを介して接続されるものを採用できる他、パソコン50に内蔵されるもの、ダクトレールに吊り下げられる形式のもの等を採用できる。更に述べると、タスク音源40としては、指向性スピーカー、例えば、パラメトリック・スピーカー等を採用すると好ましい。パラメトリック・スピーカーでは、超音波が使われるため、音の出力方向に顕著な指向性を持たせることができ、作業スペース1における作業机4の中心領域周辺のみに音を流すことができるため、作業机4を行っている人2のみに効率的に音を出力できる。また、人2は、タスク音源40からの音をイヤホンやヘッドホンを用いて聞くようになっていてもよい。
【0019】
[制御装置]
制御装置51は、タスク照明30及びタスク音源40を制御するための装置である。制御装置51は、例えば、図1(a)に示すように、パソコン50に内蔵されてもよく、又は、タブレット、ワークステーション、スマートフォン、クラウド上のサーバー等に内蔵されていてもよい。制御装置51は、コンピュータ、例えば、マイクロコンピュータによって好適に構成され、制御部52と、記憶部53を含む。制御部52、すなわち、プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。また、記憶部53は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリや、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリで構成される。CPUは、記憶部53に予め記憶されたプログラム等を読み出して実行する。また、不揮発性メモリは、制御プログラムや所定の閾値等を予め記憶する。また、揮発性メモリは、読み出したプログラムや処理データを一時的に記憶する。
【0020】
記憶部53には、後述の第1制御で実現するシーンを再現できる調光・調色データと調音データが予め記憶されており、後述の第2制御で実現するシーンを再現できる調光・調色データと調音データも予め記憶されている。更には、記憶部53には、後述の眠気と苛立ち度合を判定するためのデータ、より詳しくは、人2に関する次の値、すなわち、眼球運動、体動、まばたきの周期や口角の上がり具合、眉間の距離、皮膚温度、放熱量、行動情報等のデータと、その時の意識の覚醒度(眠気)、感情、及び疲労度とが、対応付けられて記憶されている。また、制御装置51には、タイマ54が内蔵されており、制御装置51は、計時可能になっている。タイマ54は、制御内容判断部に含まれる。
【0021】
[眠気検出用センサ]
眠気検出用センサ57は、例えば、パソコン50の表側にセンサ面が外部に露出するように内蔵されてもよく、作業スペース1において作業机4に座った人2の顔を捉えることができる箇所に取り付けられてもよい。眠気検出用センサ57は、カメラ57aと、赤外線センサ57bを含む。カメラ57aは、人2の顔を捉えるカメラ画像を取得するために用いられ、赤外線センサ57bは、人2の顔の表面温度を測るために用いられる。カメラ画像と表面温度は、眠気や温冷感のほか、喜びや怒りなどの感情を判定するのに用いられる。制御部52の眠気判定部52aは、カメラ57aと赤外線センサ57bで捉えた画像に基づいてまばたきの周期や口角の上がり具合、眉間の距離、皮膚温度、放熱量などを数値として抽出する処理を行う。被験者から採取したこれらのパラメータの各値と、その各値が算出された時の意識の覚醒度(眠気)や感情とは、対応付けられることが知られている。上述のように、上記パラメータの各値と、その各値が算出された時の意識の覚醒度(眠気)や感情とは、対応付けられた状態で記憶部53に記憶されている。よって、眠気検出用センサ57で人2の顔をセンシングすることで、その時点における人2の眠気や苛々度合などを特定できる。
【0022】
[行動情報取得センサ]
行動情報取得センサ59は、例えば、人2のスケジュール情報を取得するために従来公知のスケジュール管理ソフト(例えばOffice365)を用いてもよい。取得したデータは、集中環境を休息へ促す環境に変更する適切な時期を特定するために用いられる。他にも人2の位置情報、本制御を行うまでのタスク内容、本制御を行っている際のタスク内容、タイプスピード、前日・過去の睡眠時間・起床時間、マウスクリック数、離席頻度・回数、会話数、会話状態(会話内容や会話中のスピードなど)、当日の休憩時間・頻度、薬の摂取履歴(薬の作用などの情報含む)、前日・当日の飲食履歴等の行動情報を取得するためのセンサとして、カメラ、赤外線センサ、電磁波センサ、超音波センサ、加速度センサ、重量センサ、人感センサ、従来公知のタスク管理ソフト、音声センサなどを用いてもよい。それらのセンサから得られた人2の行動情報データは、人2の覚醒度や感情、疲労度等に対応付けられる。よって、これらの行動情報データを取得することで本開示の制御を行っている際の人2の覚醒度や苛々度合、疲労度などを特定できる。
【0023】
次に、本開示の制御の目的(意義)と、その内容について説明する。図3は、人2の集中作業中の作業時間と、そのパフォーマンスとの関係を示すグラフである。図3を参照して、曲線fに示すように、人2の集中が持続する時間は90分が限度と言われており、一般的に、90分を過ぎると、作業のパフォーマンスは、徐々に低下する傾向にある。ここで、パフォーマンスが低下し始めると、集中を緩和する動作、例えば、休息等をとることで、全体として作業のパフォーマンスを優れたものにできる。
【0024】
しかし、人2は、個人差や体調によって、集中持続時間が左右され易く、例えば、曲線fに示すように、90分未満の時間で作業のパフォーマンスが徐々に低下する場合もあり、逆に、曲線fに示すように、90分を超えて人2の集中が持続する場合もある。本開示の制御の目的は、それらいずれの場合でも、制御装置51が、次に説明するようにアンビエント照明20とタスク照明30とタスク音源40を制御して、作業スペース1を、集中を促す環境から休息を促す環境に適切に変動させることで、作業時間全体として優れた作業パフォーマンスを実現することにある。
【0025】
特許文献2に記載されるような、什器で視野や音響を遮蔽する手段は、確かに人を集中モードへ移行させるには有効であるが、前述の通り、例えば作業時間が90分を経過し、作業パフォーマンスのピークを超えてしまった場合でも、その場が閉鎖空間であるがゆえに、本来は作業を中断したり休憩したりパフォーマンスを改善させるようはたらきかけられるべきところを、そのきっかけが与えられにくい。これは、例えば窓から入射する外光の具合、オフィスの話声、他の場所の離着席状況など、時々刻々と変化し作業者に時間の経過を自覚させるような要素と、物理的・強制的に隔絶してしまうことに起因するものであり、集中作業の作業空間としては課題がある。
【0026】
これに対し、本開示においては、照明や音響を駆使し、かつ人2の集中状態を判断しつつ、視野的な認知や聴覚的な認知を積極的に制御する。したがって、人2の集中状態に柔軟に対応できて、上記課題を効果的に改善でき、優れた作業パフォーマンスを実現し易い集中作業空間を構築できるのである。また、従来のオフィスシーンにとって、作業机や通路などの領域における、照明の色温度や照度分布、あるいは音響の音量やコンテンツは、空間的にも時間的にも均一性高く行うことが一般的であった。これに対し、本願はかような手法と制御方法を用いているので、とくにABWオフィスシーンにおいて、従来の照明の知見では予見しえなかった顕著な効果を実現できるのである。
【0027】
次に、本開示の制御について説明する。先ず、人2が集中しているときに好ましいタスク照明30の調光制御と、人2を休息へ促す際に好ましいタスク照明30の調光・調色制御について説明する。図4は、それらの環境で相応しいタスク照明30の調光・調色制御について説明する図である。図4に示すように、集中環境では、タスク照明30の照明光を、アンビエント照明20の照明光との照度差が大きくなって明るくなるように調光制御したり、タスク照明30の照明光を、アンビエント照明20の照明光との色差が大きくなるように調色制御すると、人2が集中し易い環境を生成できる。また、図1(a)に示すように、タスク照明30の照明光を、照射面でのスポット径が小さくなるように調光制御すると、人2が集中し易い環境を生成でき、また、集中環境では、タスク照明30の照明光の時間に対する変動が小さくなるように調光制御すると、人2が集中し易い環境を生成できる。また、タスク照明30が照射面に映像コンテンツを投影しない方が、人2が集中し易い環境を生成し易い。
【0028】
他方、図4に示すように、休息を促したい環境、例えば、休息環境等においては、タスク照明30の照明光を、アンビエント照明20の照明光との照度差が小さくなるように調光制御したり、タスク照明30の照明光を、アンビエント照明20の照明光との色差が小さくなるように調色制御すると、人2がリラックスし易い環境を生成でき、人2が周囲の環境を認識し易くなる。また、タスク照明30の照明光を、図1(b)に示すように、人2が集中したい環境におけるタスク照明30の制御との比較において、照射面でのスポット径が大きくなるように調光制御すると、人2が周囲の環境を認識し易い環境を生成できる。また、タスク照明30の照明光の時間に対する変動が大きくなるように調光制御すると、人2が周囲の環境を認識し易い環境を生成でき、タスク照明30が照射面に映像コンテンツを投影すると、人2がリラックスし易い環境を生成し易い。
【0029】
また、一般的には、集中環境では、タスク照明30の照明光を、人2の視環境を狭めるように調光制御すると、人2が作業に集中し易い。また、逆に、休息を促したい環境、例えば、休息環境等においては、タスク照明30の照明光を、人2の視環境を広がるように調光制御すると、人2が休息行動フェーズに移行し易い。また、タスク音源40の調音制御に関しては、集中環境では、タスク音源40が出力する音の音量が大きくなるように調音制御することで、人2が周囲環境の音に気付きにくくすることが好ましい。また、その逆で、休息を促したい環境、例えば、休息環境等においては、タスク音源40が出力する音の音量が小さくなるように調音制御することで、人2が周囲環境の音に気付き易くすることが好ましい。
【0030】
また、タスク音源40が出力する音に関して、集中環境では、選択する音のコンテンツとして、マスキングノイズを可能にする音が選択されると好ましく、例えば、集中環境で、タスク音源40が、水が流れる音やテレビの砂嵐の音を出力すると好ましい。また、逆に、タスク音源40が出力する音に関して、休息を促したい環境、例えば、休息環境等においては、選択する音のコンテンツとして、カフェで流れているようなリラックスできる音が選択されると好ましく、例えば、クラシック、ボサノバ、又はジャズ等の音楽が選択されると好ましい。
【0031】
次に、人2が適切な休息を取り易くて、作業の高効率なパフォーマンスを実現し易い具体的な制御について説明する。図5は、人2の眠気に基づいて集中環境を休息を促す環境に変更する適切な時期を特定して、適切に人2に休息環境を提供することで、作業の高効率なパフォーマンスを実現できる制御装置51の制御の一例のフローチャートである。
【0032】
図5を参照して、人2が、パソコン50、リモコン、タブレット、又は作業スペース1の壁面等に設けられたタスク照明オンオフ操作部58(図2参照)を操作して、タスク照明30を点灯させると、制御がスタートする。制御がスタートすると、ステップS1に移行して、制御装置51が、作業スペース1を人2に集中を促す環境にするようにアンビエント照明20、タスク照明30、及びタスク音源40を制御する第1制御を実行する。詳しくは、制御装置51が、記憶部53に記憶されている第1制御を実行するシーンデータに基づいて、アンビエント照明20とタスク照明30に調光制御を施すと共に、タスク音源40に調音制御を施す。この制御に関し、制御装置51は、タスク音源40にUSBケーブルを介して制御信号を出力し、タスク照明30には無線信号で情報を出力する。無線信号としては、Wi-Fi(登録商標)、BlueTooth(登録商標)など任意のものが使用可能である。
【0033】
ステップS1での具体的な制御としては、制御装置51は、例えば、図4を用いて説明した、作業スペース1を人2が集中できる環境にするための4つの制御のうちの1以上の制御、詳しくは、周囲光との照度差、周囲光との色差、スポット径、及び動きのうちの1以上の制御をタスク照明30に施す。また、制御装置51は、タスク音源40に水が流れる音やテレビの砂嵐の音を出力させることと、タスク音源40が出力する音量を所定値以上に大きくすることのうちの少なくとも一方の制御を行う。
【0034】
なお、周囲光との照度差を大きくする制御は、例えば、オンオフ制御のヂューティ比を大きくして、光源に大きな電力を供給することで実行できる。また、周囲光との色差を大きくする制御は、例えば、タスク照明30に異なる複数の色の光を発光する複数の光源を搭載させ、更に、アンビエント照明20が出射する照明光の色と色差が大きくなる光源から光を発光させることで実現できる。また、スポット径を変える制御は、例えば、高さ方向の位置を変動できる移動レンズを有するタスク照明30を用い、移動レンズの位置を光源から離れた位置に移動させることで実現できる。また、動きを小さくする制御は、例えば、オンオフ制御の間隔を変動させる制御で実現できる。
【0035】
ステップS1が終了すると、ステップS2に移行する。ステップS2では、制御装置51がタイマ54からの情報に基づいて、第1制御が実行されてから第1所定時間経過したか否かを判定する。第1所定時間は如何なる時間でもよく、第1所定時間としては、例えば、15分以上30分未満のいずれかの時間を採用できる。ステップS2で否定判定されると、ステップS2が繰り返され、ステップS2で肯定判定されると、ステップS3に移行する。
【0036】
ステップS3では、制御装置51の眠気判定部52aが、眠気検出用センサ57からの情報と、上述の記憶部53に記憶されている情報とに基づいて、人2が眠気を感じているか否かを判定する。ステップS3で否定判定されると、ステップS3が繰り返され、第1制御が継続された状態となる。他方、ステップS3で肯定判定されると、ステップS4に移行して、制御装置51が、作業スペース1を、人2を休息に促す環境にするように、アンビエント照明20、タスク照明30、及びタスク音源40を制御する第2制御を実行する。
【0037】
詳しくは、制御装置51が、図4を用いて説明した、作業スペース1を、人2を休息に促す環境にするための4つの制御のうちの1以上の制御、詳しくは、アンビエント照明20とタスク照明30の照度差、アンビエント照明20とタスク照明30の色差、スポット径、及び動きのうちの1つ以上の制御をタスク照明30に施すか、又は、タスク照明30に照射面に映像コンテンツを投影させる制御を実行する。また、制御装置51が、タスク音源40が出力する音の音量が、人2に集中させたい環境における上記所定値よりも小さくなるようにタスク音源40を制御することと、タスク音源40にカフェで流れているようなリラックスできる音を出力させることのうちの少なくとも一方の制御を実行する。
【0038】
ステップS4が終了すると、ステップS5に移行して、制御装置51がタイマ54からの情報に基づいて第2制御を実行してから第2所定時間経過したか否かを判定する。第2所定時間は、如何なる時間でもよく、例えば、5分から20分までのいずれかの時間に設定されてもよい。ステップS4で否定判定されると、ステップS4が繰り返され、第2制御が継続される。他方、ステップS4で肯定判定されると、制御がリターンとなって、ステップS1以下が繰り返される。図5に示す制御は、例えば、人2がタスク照明オンオフ操作部58を用いてタスク照明30を消灯させると終了する。
【0039】
図6は、人2の眠気に基づいて適切な集中緩和環境の適切な時期を特定して、適切に人2に休息環境を提供することで、作業の高効率なパフォーマンスを実現できる制御装置51における図5とは異なる制御のフローチャートである。
【0040】
図5に示す制御では、第1制御と第2制御の夫々が所定時間維持されるようになっていた。しかし、図6に示す制御では、第1制御と第2制御は、所定時間維持されなくてもよい。具体的には、図6に示す制御では、人2がタスク照明オンオフ操作部58(図2参照)を操作して、タスク照明30を点灯させて、制御がスタートすると、ステップS11で、上述のS1と同一の第1制御が実行され、その後、ステップS12に移行して、上述のS3と同一の制御が実行され、人2の眠気の有無が判定される。
【0041】
ステップS12で否定判定されると、ステップS12が繰り返され、ステップS12で肯定判定されると、ステップS13に移行して、上述のS4と同一の第2制御が実行される。ステップS13の後のステップS14では、再度、上述のS3と同一の制御が実行され、人の眠気の有無が判定される。ステップS14で肯定判定されて、人2の眠気が継続していると判定されると、ステップS14が繰り返されて、第2制御が継続される。他方、ステップS14で否定判定されて、人2の眠気が止んだと判定されると、制御がリターンとなって、ステップS11以下が繰り返される。図6に示す制御も、人2がタスク照明オンオフ操作部58を用いてタスク照明30を消灯させると終了する。図6に示す制御では、人2の眠気の有無に基づいて短時間で第1制御と第2制御を切り替えることができる。
【0042】
また、図5及び図6を用いて説明した制御では、人2が集中し易い環境から人2を休息へ促す環境への変更時期を人2の眠気に基づいて判定する場合について説明した。しかし、人2が集中し易い環境から人2を休息へ促す環境への変更時期を人2の眠気と人2の苛立ち感とに基づいて判定してもよい。また、図5及び図6を用いて説明した制御では、人2がタスク照明30を点灯させたときで、人2が仕事を開始したときを特定したが、人2が作業スペース1に移動したとき、更に詳しく述べれば、人2が椅子6に着座したときを、人2が仕事を開始したときと認定してもよい。
【0043】
詳しくは、図7、すなわち、変形例の環境制御システムにおける図2に対応するブロック図に示すように、タスク照明オンオフ操作部58の代わりに、在席センサ158を用いてもよい。ここで、在席センサ158は、例えば、作業スペース1の椅子6に設置された重量センサでもよく、人2が椅子6に腰かけたことを検出することで、人2が作業を行っていることを特定してもよい。又は、在席センサ158は、例えば、作業スペース1の天井等の作業スペース1の上部に取り付けられた人感センサでもよく、人感センサは、例えば、赤外線センサ等で構成してもよい。また、制御部152は、眠気判定部52aに加えて苛立ち判定部152bを有してもよい。上述のように、カメラ157aからの人2の顔の画像情報と、赤外線センサ157bからの人2の顔の情報とに基づいて人2の苛立ちの有無を正確に判定できる。苛立ち判定部152bは、カメラ157aからの情報、赤外線センサ157bからの情報、及び記憶部53に記憶されている情報に基づいて人2の苛立ちの有無を判定する。
【0044】
図8は、人2の眠気に加えて人2の苛立ち感も考慮した制御装置151(図7参照)における図5に対応するフローチャートである。図8を参照して、在席センサ158が人2の椅子6への着座を判定すると、制御がスタートし、ステップS21で、制御装置151が、作業スペース1を人2に集中を促す環境にするように、アンビエント照明20、タスク照明30、及びタスク音源40を制御する第1制御を実行する。
【0045】
ステップS21が終了すると、ステップS22に移行する。ステップS22では、制御装置151がタイマ54からの情報に基づいて、第1制御が実行されてから第1所定時間経過したか否かを判定する。第1所定時間は如何なる時間でもよく、第1所定時間としては、例えば、15分以上30分未満のいずれかの時間を採用できる。ステップS22で否定判定されると、ステップS22が繰り返され、ステップS22で肯定判定されると、ステップS23に移行する。
【0046】
ステップS23では、制御装置151の眠気判定部52aが、生体情報取得センサの一例としての眠気・感情検出用センサ157からの情報と、記憶部53に記憶されている情報とに基づいて人2が眠気を感じているか否かを判定する。なお、眠気・感情検出用センサ157としては、上述の眠気検出用センサ57と同一のものを使用できる。ステップS23で否定判定されると、ステップS24に移行して、制御装置151の苛立ち判定部152bが、眠気・感情検出用センサ157からの情報と、記憶部53に記憶されている情報とに基づいて人2が苛立ちを感じているか否かを判定する。ステップS24で否定判定されると、ステップS23以下が繰り返される。
【0047】
他方、ステップS23で肯定判定されるか、又は、ステップS24で肯定判定されると、ステップS25に移行する。ステップS25では、制御装置151が、作業スペース1を人2を休息へ促す環境にするように、アンビエント照明20、タスク照明30、及びタスク音源40を制御する第2制御を実行する。ステップS25が終了すると、ステップS26に移行して、制御装置151がタイマ54からの情報に基づいて第2制御を実行してから第2所定時間経過したか否かを判定する。第2所定時間は、如何なる時間でもよく、例えば、5分から20分までのいずれかの時間に設定されてもよい。ステップS26で否定判定されると、ステップS26が繰り返され、第2制御が継続される。他方、ステップS26で肯定判定されると、制御がリターンとなって、ステップS21以下が繰り返される。図8に示す制御は、例えば、人2が椅子6から離れて、在席センサ158が人2を検出できなくなると終了する。
【0048】
又は、制御装置151は、次のように人2の眠気と苛立ち感を考慮した制御を行ってもよい。図9は、人2の眠気に加えて人2の苛立ち感も考慮した制御装置151(図7参照)における図6に対応するフローチャートである。
【0049】
図9を参照して、在席センサ158が人2の椅子6への着座を判定すると、制御がスタートし、ステップS31で、制御装置51が、作業スペース1を人2に集中を促す環境にするように、アンビエント照明20、タスク照明30、及びタスク音源40を制御する第1制御を実行する。
【0050】
ステップS31が終了すると、ステップS32に移行し、制御装置151の眠気判定部52aが、眠気・感情検出用センサ157からの情報と、記憶部53に記憶されている情報とに基づいて人2が眠気を感じているか否かを判定する。ステップS32で否定判定されると、ステップS33に移行して、制御装置151の苛立ち判定部152bが、眠気・感情検出用センサ157からの情報と、記憶部53に記憶されている情報とに基づいて人2が苛立ちを感じているか否かを判定する。ステップS33で否定判定されると、ステップS32以下が繰り返される。
【0051】
他方、ステップS32で肯定判定されるか、又は、ステップS33で肯定判定されると、ステップS34に移行する。ステップS34では、制御装置151が、作業スペース1を人2を休息へ促す環境にするように、アンビエント照明20、タスク照明30、及びタスク音源40を制御する第2制御を実行する。ステップS34が終了すると、ステップS35に移行して、制御装置151の眠気判定部52aが、眠気・感情検出用センサ157からの情報と、記憶部53に記憶されている情報とに基づいて人2が眠気を感じているか否かを判定する。
【0052】
ステップS35で肯定判定されると、ステップS35が繰り返され、第2制御が継続する。他方、ステップS35で否定判定されると、ステップS36に移行して、制御装置151の苛立ち判定部152bが、眠気・感情検出用センサ157からの情報と、記憶部53に記憶されている情報とに基づいて人2が苛立ちを感じているか否かを判定する。
【0053】
ステップS36で肯定判定されると、ステップS35以下が繰り返され、第2制御が継続する。他方、ステップS36で否定判定されると、制御がリターンとなって、ステップS31以下が繰り返される。図9に示す制御は、例えば、人2が椅子6から離れて、在席センサ158が人2を検出できなくなると終了する。
【0054】
図8又は図9に示す制御を実行すると、人2の眠気に加えて人2の苛立ち感も考慮した、集中を促す環境から休息へ促す環境への変更を実施できる。したがって、人2がより適切に休息を取り易くて、作業の高効率なパフォーマンスを実現し易い環境を提供できる。なお、変形例では、人2の苛立ち感の有無をカメラ157aと赤外線センサ157bとが取得した情報に基づいて判定した。しかし、人2の苛立ち感の有無は、例えば、人2が所持するIDカード等の所持品(衣類も含む)に設置した加速度センサが検出した人2の揺れ具合等で判定してもよい。なお、この場合、加速度センサは、生体情報取得センサに含まれる。
【0055】
なお、上記実施形態及び変形例の制御は、1つの人、つまり個人に対して実行された。しかし、上記実施形態及び変形例の制御は、ある単位まとまって集結している、若しくは他方に散在している1以上の人、つまり複数人の生体情報データと行動情報データとのうちの少なくとも一方に基づいてグループ単位での高効率なパフォーマンス実現のために、上記制御内容を判断してもよく、グループ単位で一括で制御を実行してもよい。このとき、複数人のデータのある指標の平均値あるいは中央値などを演算で求めて、対象の複数人の状態とみなしてもよい。
【0056】
そのような制御を行うことで、個人のみならず、組織単位での高効率なパフォーマンスを実現し易く、また組織単位で一括で休息に促すことも可能になって、コミュニケーション機会を増加しやすくなるため、組織のメンタルヘルスも良好な状態を維持し易くなる。
【0057】
また、このような環境制御方法を用いると、調光調色式の照明やBlueTooth(登録商標)対応スピーカーなど、デジタルに瞬時性の制御がしやすい手段を含むため、従来の什器や家具でレイアウトやゾーニングを行う方法と比較して、時間毎、日毎など短いサイクルで変遷しうるワーカーや組織のパフォーマンスにあわせたレイアウトやゾーンの変更を行うアクティブゾーニングを実現しやすくなるため、好ましい。
【0058】
なお、生体情報取得センサである眠気検出用センサ57や眠気・感情検出用センサ157を用いて、第1制御と第2制御のいずれの制御を行うかを判断する場合について説明した。しかし、生体情報取得センサに加えて人の行動情報を取得する行動情報取得センサを用いて、人2の覚醒度や感情、疲労度を判断し、その判断に基づいて第1制御と第2制御のいずれの制御を行うかを判断してもよい。又は、生体情報取得センサの代わりに人の行動情報を取得する行動情報取得センサを用いて、人2の覚醒度や感情、疲労度を判断し、その判断に基づいて第1制御又は第2制御を行ってもよい。また、本開示の環境制御システムは、何らかの制御内容判断部を有していればよく、生体情報取得センサ、行動情報取得センサ、及びタイマのうちの1つ、2つ、又は全てを含まなくてもよい。
【0059】
以上、環境制御システム10は、所定空間の広範囲を照らす少なくとも1つのアンビエント照明20と、所定空間内の作業スペース1における視対象領域を照らすための少なくとも1つのタスク照明30と、作業スペース1に音を出力するための少なくとも1つのタスク音源40と、作業スペース1に存在する人2に集中を促す環境にするべきか、又は人2を休息へ促す環境にするべきかを特定するための制御内容判断部と、アンビエント照明20の調光・調色制御とタスク照明30の調光・調色制御、及びタスク音源40の調音制御を実行する制御装置51と、を備える。また、制御装置51は、制御内容判断部からの信号に基づいて作業スペース1を人2に集中を促す第1環境にするべきであると判定すると、作業スペース1を人2に集中を促す環境にするように、アンビエント照明20、タスク照明30、及びタスク音源40を制御する第1制御を実行する。また、制御装置51は、制御内容判断部からの信号に基づいて作業スペース1を人2を休息へ促す第2環境にするべきであると判定すると、作業スペース1を人2を休息へ促す環境にするように、アンビエント照明20、タスク照明30、及びタスク音源40を制御する第2制御を実行する。
【0060】
したがって、人2が作業を行う環境を、人2が作業に集中し易い環境から人2を休息へ促す環境、例えば、休息やリラックスする環境に適切なタイミングで変動させることができ、作業の総合的なパフォーマンスを上げることができる。なお、人2が作業に集中し易い環境から人2を休息へ促す環境への変更は、瞬時に行ってもよく、所定時間をかけて徐々に行ってもよい。
【0061】
また、制御内容判断部が、計時を実行するタイマ54を含んでもよい。そして、制御装置51が、タイマ54からの時間情報に基づいて、人2に集中を促す環境にするべきか、又は人2を休息へ促す環境にするべきかを判定してもよい。
【0062】
上述のように、人2が集中を持続できる期間は、90分程度であると考えられている。本構成によれば、タイマ54からの時間情報に基づいて人2が作業を行ってから90分程度経過した時点で、人2が作業を行う環境を、人2が作業に集中し易い環境から人2を休息へ促す環境に変更できる。したがって、環境の変更を適切に実行でき、作業の総合的なパフォーマンスを上げることができる。
【0063】
また、制御内容判断部は、人2の生体情報を取得する眠気検出用センサ57、又は人2の行動情報を取得する行動情報取得用センサ59を含んでもよい。そして、制御装置51が、生体情報、及び行動情報のうちの少なくとも一方にに基づいて、作業スペース1を、人2に集中を促す環境にするべきか、又は人2を休息へ促す環境にするべきかを判定してもよい。
【0064】
本構成によれば、人2の体の変化、年令、性別などの生体情報、タスク内容や一日のスケジュールなどの行動情報により環境変化のタイミングを特定できるので、環境変化のタイミングを正確に特定し易く、作業の総合的なパフォーマンスを上げることができる。
【0065】
また、生体情報は、人2の表情、脈波、体動、交感神経活動度、副交感神経活動度、皮膚温度、瞬目、眼球運動、瞳孔変動、脳波、唾液、頭部の動き、発汗情報、呼吸変動、血圧、血流量、及び個人情報のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0066】
また、行動情報は、人2のスケジュール情報、位置情報、本制御を行うまでの過去のタスク内容、本制御を行っている際の現在のタスク内容、タイプスピード、前日及びそれより過去の睡眠時間、前日及びそれより過去の起床時間、マウスクリック数、離席頻度、離席回数、会話数、会話状態(会話内容や会話中のスピードなど)、当日の休憩時間、当日の休憩頻度、薬の摂取履歴(薬の作用などの情報含む)、前日の飲食履歴等の行動情報、及び当日の飲食履歴等の行動情報のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0067】
人2の表情、脈波、体動、交感神経活動度、副交感神経活動度、皮膚温度、瞬目、眼球運動、瞳孔変動、脳波、唾液、頭部の動き、発汗情報、呼吸変動、血圧、血流量、及び個人情報、また人2のスケジュール情報、位置情報、本制御を行うまでのタスク内容、本制御を行っている際のタスク内容、タイプスピード、前日・過去の睡眠時間・起床時間、マウスクリック数、離席頻度・回数、会話数、会話状態(会話内容や会話中のスピードなど)、当日の休憩時間・頻度、薬の摂取履歴(薬の作用などの情報含む)、前日・当日の飲食履歴等の行動情報は、人2が眠気を感じているか否か、又は、人2が苛立ち感を感じているか否か等、疲労度の蓄積度等、環境を変化させるタイミングを正確に判断できる要素として用いることができる。よって、これの生体情報を用いれば、環境変化のタイミングを正確に特定し易く、作業の総合的なパフォーマンスを上げることができる。なお、個人情報とは、人2の個人的な情報であり、人2の性別や年令等の情報である。また、人2の表情、人2の脈波、人2の体動、及び個人情報を、カメラ57aと赤外線センサ57bで取得する場合について説明した。しかし、これらの情報は、人2やその衣服に設置した加速度計や脈波センサ等を用いて取得してもよい。
【0068】
また、制御装置51は、次の複数の制御のうちの1以上の制御を行ってもよい。
【0069】
詳しくは、制御装置51は、第2制御が実行されている最中のタスク照明30の照明光の光量が、第1制御が実行されている最中の前記タスク照明の照明光の光量よりも小さくなるようにタスク照明30を制御してもよい。
【0070】
また、制御装置51は、第2制御が実行されている最中のアンビエント照明20とタスク照明30の照明光の照度差が、第1制御が実行されている最中のアンビエント照明20とタスク照明30の照明光の照度差より小さくなるように、アンビエント照明20及びタスク照明30を制御してもよい。
【0071】
また、制御装置51は、第2制御が実行されている最中のタスク照明30の照明光の色温度が、第1制御が実行されている最中のタスク照明30の照明光の色温度よりも低くなるようにタスク照明30を制御してもよい。
【0072】
また、制御装置51は、第2制御が実行されている最中のアンビエント照明20とタスク照明30の照明光の色差が、第1制御が実行されている最中のアンビエント照明20とタスク照明30の照明光の色差より小さくなるように、アンビエント照明20及びタスク照明30を制御してもよい。
【0073】
また、制御装置51は、第2制御が実行されている最中のタスク照明30の照明光の照射面におけるスポット径が、第1制御が実行されている最中のタスク照明30の照明光の照射面におけるスポット径よりも大きくなるようにタスク照明30を制御してもよい。
【0074】
また、制御装置51は、第2制御が実行されている最中のタスク照明30の照明光の変動の度合が、第1制御が実行されている最中のタスク照明30の照明光の変動の度合よりも大きくなるようにタスク照明30を制御してもよい。
【0075】
また、制御装置51は、第2制御が実行されている最中に照射面に映像を投影させるようにタスク照明30を制御してもよい。
【0076】
また、制御装置51は、第2制御が実行されている最中にタスク音源40が出力する音の音量が、第1制御が実行されている最中にタスク音源40が出力する音の音量よりも小さくなるようにタスク音源40を制御してもよい。
【0077】
また、制御装置51は、第1制御が実行されている最中に、タスク音源40がマスキングノイズを可能にする音、例えば、水が流れる音やテレビの砂嵐の音を出力するようにタスク音源40を制御してもよい。また、制御装置51は、第2制御が実行されている最中に、人2が休息感やリラックス感を感じる音、例えば、ボサノバやジャズの音楽を出力するようにタスク音源40を制御してもよい。
【0078】
これらの制御を行えば、人2が集中したい環境下で人2を休息へ促す環境を効果的に提供でき、人2を休息へ促す環境下で人2がより休息を取り易くて、休息感やリラックス感を効果的に感じることができる環境を効果的に提供できる。
【符号の説明】
【0079】
1 作業スペース、 2 人、 4 作業机、 5 作業面、 6 椅子、 10 環境制御システム、20 アンビエント照明、 30 タスク照明、 40 タスク音源、 50 パソコン、 51,151 制御装置、 52,152 制御部、 52a 眠気判定部、 53 記憶部、 54 タイマ、 57 眠気検出用センサ、 57a カメラ、 57b 赤外線センサ、 58 タスク照明オンオフ操作部、 59 行動情報取得センサ、152b 苛立ち判定部、 157 眠気・感情検出用センサ、 158 在席センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9