(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】緊急用シャワーユニット及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
A61H 33/00 20060101AFI20230814BHJP
A47K 3/30 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
A61H33/00 T
A47K3/30
(21)【出願番号】P 2021202669
(22)【出願日】2021-12-14
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】500154261
【氏名又は名称】株式会社ニック
(74)【代理人】
【識別番号】110001346
【氏名又は名称】弁理士法人MM&A
(72)【発明者】
【氏名】大橋 與
(72)【発明者】
【氏名】沖崎 裕一郎
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第214387306(CN,U)
【文献】特開2004-028532(JP,A)
【文献】中国実用新案第207238650(CN,U)
【文献】特開2001-173048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 35/00-04
A47K 3/00-7/08
B08B 3/00-5/04
E03C 1/00-33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液を放出するシャワー装置と、
前記シャワー装置が配置されるシャワーブースと、
前記シャワーブースへのユーザの進入を検出する進入検出手段と、
前記シャワーブースへの前記ユーザの進入を前記進入検出手段が検出したとき、前記シャワー装置による前記洗浄液の放出を開始させるシャワー制御装置と
を有し、
前記シャワーブースは、
前記シャワー装置のシャワーヘッドを支持するヘッド支持部と、
前記ヘッド支持部の下方に位置する床部と
を備え、
前記床部には、
前記シャワーヘッドの手前側又は下方に配置された床板と、
連結部材を介して前記床板に連結された前記進入検出手段及び前記シャワー制御装置を兼ねるフットバルブと
が設けられ、
前記ユーザからの押圧力が前記床板を介して前記フットバルブに伝達されて前記フットバルブが開いたとき、前記シャワー装置による洗浄液の放出を開始させ
、
さらに、前記床部は、初期状態の前記床板の一部又は全部を上方に変位させるコイルばねを有し、
前記床板には、下方に突出する押圧部が形成され、
初期状態の前記押圧部は、前記コイルばねの付勢力により上方に変位されて前記フットバルブのペダルを押圧せず、
前記ユーザが前記床板に載った際の前記押圧部は、前記ユーザの重量により下方に変位して前記フットバルブの前記ペダルを押圧する
ことを特徴とする緊急用シャワーユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の緊急用シャワーユニットにおいて、
前記シャワー装置は、前記シャワーヘッドに加えて、洗眼器を有し、
前記シャワー制御装置は、前記シャワーブースへの前記ユーザの進入を前記進入検出手段が検出したとき、前記シャワーヘッド及び前記洗眼器の両方から前記洗浄液の放出を開始させる
ことを特徴とする緊急用シャワーユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の緊急用シャワーユニットにおいて、
前記シャワー装置は、前記ユーザの操作により前記洗浄液の流量を調整する流量調整手段を有する
ことを特徴とする緊急用シャワーユニット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の緊急用シャワーユニットにおいて、
前記シャワーブースは、前記ヘッド支持部の側方に位置する側面部を有し、
前記シャワーブースの前記側面部には、ハンガーパイプが設けられている
ことを特徴とする緊急用シャワーユニット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の緊急用シャワーユニットにおいて、
前記シャワー装置は、前記洗浄液を加熱して20~60℃の範囲まで温める加熱装置を有する
ことを特徴とする緊急用シャワーユニット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の緊急用シャワーユニットにおいて、
前記緊急用シャワーユニットは、
前記シャワーブースへの前記ユーザの進入を前記進入検出手段が検出したとき点灯又は点滅する警報ランプと、
前記シャワーブースへの前記ユーザの進入を前記進入検出手段が検出したときブザー音を出力する警報ブザーと
の少なくとも一方を有することを特徴とする緊急用シャワーユニット。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の緊急用シャワーユニットにおいて、
前記シャワーブースの左右側面壁及び背面壁は紙製である
ことを特徴とする緊急用シャワーユニット。
【請求項8】
シャワーブース内に配置されて洗浄液を放出するシャワー装置を有する緊急用シャワーユニットの制御方法であって、
進入検出手段により前記シャワーブースへのユーザの進入を監視する進入監視ステップと、
前記シャワーブースへの前記ユーザの進入を前記進入検出手段が検出したとき、シャワー制御装置が前記シャワー装置に前記洗浄液の放出を開始させる洗浄液放出ステップと
を有
し、
前記シャワー装置は、
前記シャワーブースの内側における前記洗浄液用の流路である内側流路上に設けられ、前記洗浄液の流量を調整する内側バルブと、
前記シャワーブースの外側において前記洗浄液の供給源と前記内側流路とを結ぶ外側流路上に設けられ、前記洗浄液の流量を調整する外側バルブと
を有し、
さらに、前記緊急用シャワーユニットの制御方法は、
前記洗浄液放出ステップにおいて、前記内側バルブのマニュアル操作により前記洗浄液の放出を停止させる洗浄液放出停止ステップと、
前記洗浄液放出停止ステップ後に、前記外側バルブのマニュアル操作により前記供給源から前記内側流路への前記洗浄液の供給を停止する洗浄液供給停止ステップと、
前記洗浄液供給停止ステップ後に、前記内側バルブをマニュアル操作により開く内側バルブ開ステップと、
前記内側バルブ開ステップ後に、前記外側バルブをマニュアル操作により開く外側バルブ開ステップと
を有する
ことを特徴とする緊急用シャワーユニットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学薬品等で負傷した作業者(ユーザ)を迅速に洗浄するための緊急用シャワーユニット及びその制御方法に関する。例えば、本発明は、化学工場等での事故発生時において化学薬品等で負傷した作業者を洗浄液で洗浄するための緊急用シャワーユニット及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、化学工場等での事故発生時において化学薬品等で負傷した作業者の顔、眼等を洗浄するための緊急用シャワーユニットが知られている(特許文献1)。特許文献1の緊急用シャワー(100)は、洗浄液を放出する部位として、シャワーヘッド(104)及び洗眼器(1)を有する(
図1、[0023])。また、シャワーヘッド(104)を作動させるための作動装置(103)が設けられる([0024]、
図1)。さらに、洗眼器(1)を作動させるための別の作動装置(2)も設けられる([0028]、
図1)。
【0003】
洗眼器(1)用の作動装置(2)は、開閉弁としての洗眼用ボールバルブ(6)及びこのボールバルブ(6)に取り付けられたバルブ開閉板(7)を有する([0028]、
図2)。バルブ開閉板(7)を手で操作することで、ボールバルブ(6)が開閉し、洗浄液の吐出と停止を切り替える([0029]~[0033])。バルブ開閉板(7)は、チェーン(8)を介して足踏板(9)が連結されている(
図1、[0036])。そして、足踏板(9)を踏むことによってバルブ開閉板(7)を介してボールバルブ(6)を開くこともできる([0036])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1では、シャワーヘッド(104)を作動させるためには作動装置(103)をユーザ(負傷した作業者)が操作する必要がある。また、洗眼器(1)を作動させるためには作動装置(102)(すなわち、バルブ開閉板(7)又は足踏板(9))をユーザが操作する必要がある。しかしながら、化学薬品を浴びたことによりユーザ(作業者)が負傷している(薬傷等を負っている)ような場合、迅速にユーザを洗浄することが好ましい。この点に関し、特許文献1の緊急用シャワー(100)(緊急用シャワーユニット)では改善の余地がある。
【0006】
本発明は上記のような課題を考慮してなされたものであり、ユーザを迅速に洗浄することが可能な緊急用シャワーユニット及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る緊急用シャワーユニットは、
洗浄液を放出するシャワー装置と、
前記シャワー装置が配置されるシャワーブースと、
前記シャワーブースへのユーザの進入を検出する進入検出手段と、
前記シャワーブースへの前記ユーザの進入を前記進入検出手段が検出したとき、前記シャワー装置による前記洗浄液の放出を開始させるシャワー制御装置と
を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、シャワーブースへのユーザの進入が検出されたとき、シャワー装置による洗浄液の放出を開始させる。これにより、ユーザがシャワーブースに進入した際、ユーザによる追加操作なしに洗浄液の放出が開始され、緊急時において速やかにユーザを洗浄することが可能となる。
【0009】
前記シャワーブースは、前記シャワー装置のシャワーヘッドを支持するヘッド支持部と、前記ヘッド支持部の下方に位置する床部とを備えてもよい。また、前記床部には、前記シャワーヘッドの手前側又は下方に配置された床板と、連結部材を介して前記床板に連結された前記進入検出手段及び前記シャワー制御装置を兼ねるフットバルブとが設けられてもよい。さらに、前記ユーザからの押圧力が前記床板を介して前記フットバルブに伝達されて前記フットバルブが開いたとき、前記シャワー装置による洗浄液の放出を開始させてもよい。
【0010】
上記によれば、進入検出手段及びシャワー制御装置を兼ねるフットバルブは、シャワーブースの床板に連結されている。そのため、自らの洗浄のためユーザがシャワーヘッドの前に立ったときにユーザの足により床板が無意識に踏まれることでフットバルブが開いてシャワー装置から自動的に洗浄液が放出される。従って、簡易な方法で、シャワーブースへのユーザの進入を検出可能となる。
【0011】
前記シャワー装置は、前記シャワーヘッドに加えて、洗眼器を有してもよい。また、前記シャワー制御装置は、前記シャワーブースへの前記ユーザの進入を前記進入検出手段が検出したとき、前記シャワーヘッド及び前記洗眼器の両方から前記洗浄液の放出を開始させてもよい。これにより、緊急状態にあるユーザは、自らの選択でシャワーヘッドからの洗浄液又は洗眼器からの洗浄液を利用することが可能となる。
【0012】
前記シャワー装置は、前記ユーザの操作により前記洗浄液の流量を調整する流量調整手段を有してもよい。これにより、洗浄が完了した場合等において、ユーザの意思で洗浄液の流量を変化させることができる。
【0013】
前記シャワーブースは、前記ヘッド支持部の側方に位置する側面部を有してもよい。また、前記シャワーブースの前記側面部には、ハンガーパイプが設けられてもよい。これにより、例えば、防水シートを被せたタオル又は着替えをハンガーパイプに掛けておくことで、ユーザは、洗浄後直ぐにタオル又は着替えを利用可能となる。
【0014】
前記シャワー装置は、前記洗浄液を加熱して20~60℃の範囲まで温める加熱装置を有してもよい。これにより、緊急時に用いる洗浄液を温めて供給可能となり、ユーザの洗浄効果を高めることができる。
【0015】
前記緊急用シャワーユニットは、前記シャワーブースへの前記ユーザの進入を前記進入検出手段が検出したとき点灯又は点滅する警報ランプと、前記シャワーブースへの前記ユーザの進入を前記進入検出手段が検出したときブザー音を出力する警報ブザーとの少なくとも一方を有してもよい。これにより、シャワーブースに対してユーザが進入した際には当該進入(すなわち、緊急事態の発生)を外部に通報可能となる。
【0016】
前記床部は、初期状態の前記床板の一部又は全部を上方に位置させるコイルばねを有してもよい。また、前記床板には、下方に突出する押圧部が形成されてもよい。そして、初期状態の前記押圧部は、前記コイルばねの付勢力により上方に変位されて前記フットバルブのペダルを押圧せず、前記ユーザが前記床板に載った際の前記押圧部は、前記ユーザの重量により下方に変位して前記フットバルブの前記ペダルを押圧してもよい。これにより、シャワーブース内へのユーザの進入検出及びシャワー装置から洗浄液放出開始を簡易な構成で実現可能となる。
【0017】
前記シャワーブースの左右側面壁及び背面壁は紙製であってもよい。これにより、シャワーブースの軽量化を図ることができると共に、環境に優しいシャワーブースを提供可能となる。
【0018】
前記進入検出手段は、前記シャワーブース内の所定範囲を検出範囲とし、光センサ、赤外線センサ又は画像センサから構成される進入検出センサを含んでもよい。これにより、進入検出手段がユーザと接触することなしに、シャワーブースへのユーザの進入を検出可能となる。
【0019】
本発明に係る制御方法は、シャワーブース内に配置されて洗浄液を放出するシャワー装置を有する緊急用シャワーユニットの制御方法であって、
進入検出手段により前記シャワーブースへのユーザの進入を監視する進入監視ステップと、
前記シャワーブースへの前記ユーザの進入を前記進入検出手段が検出したとき、シャワー制御装置が前記シャワー装置に前記洗浄液の放出を開始させる洗浄液放出ステップと
を有することを特徴とする。
【0020】
前記シャワー装置は、前記シャワーブースの内側における前記洗浄液用の流路である内側流路上に設けられ、前記洗浄液の流量を調整する内側バルブと、前記シャワーブースの外側において前記洗浄液の供給源と前記内側流路とを結ぶ外側流路上に設けられ、前記洗浄液の流量を調整する外側バルブとを有してもよい。また、前記緊急用シャワーユニットの制御方法は、前記洗浄液放出ステップにおいて、前記内側バルブのマニュアル操作により前記洗浄液の放出を停止させる洗浄液放出停止ステップと、前記洗浄液放出停止ステップ後に、前記外側バルブのマニュアル操作により前記供給源から前記内側流路への前記洗浄液の供給を停止する洗浄液供給停止ステップと、前記洗浄液供給停止ステップ後に、前記内側バルブをマニュアル操作により開く内側バルブ開ステップと、前記内側バルブ開ステップ後に、前記外側バルブをマニュアル操作により開く外側バルブ開ステップとを有してもよい。
【0021】
これにより、緊急用シャワーユニットの状態を初期化すること(すなわち、新たにユーザがシャワーブース内に進入した際、自動的に洗浄液の放出を開始可能な状態に戻すこと)が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、例えば化学工場等での事故発生時において化学薬品等で負傷したユーザ(作業者)を迅速に洗浄液で洗浄することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る緊急用シャワーユニットに含まれるシャワーブースの構成を簡略的に示す側面断面図である。
【
図2】前記実施形態に係る緊急用シャワーユニットに含まれる前記シャワーブースの構成を簡略的に示す正面図である。
【
図3】前記実施形態に係る緊急用シャワーユニットに含まれる前記シャワーブースの構成を簡略的に示す平面断面図である。
【
図4】前記実施形態の緊急用シャワーユニットの洗浄液供給系及び洗浄液排出系を簡略的に示すブロック図である。
【
図5】前記実施形態の緊急用シャワーユニットの電気制御系を簡略的に示すブロック図である。
【
図6】前記実施形態のシャワーブースの床部及びその周辺の拡大側面断面図である。
【
図7】前記実施形態のシャワーブースの床部及びその周辺の拡大平面図である。
【
図8】前記実施形態において、前記洗浄液供給系を初期化する際の初期化処理のフローチャートである。
【
図9】前記実施形態において、初期化処理後の緊急用シャワーユニットの通常制御のフローチャートである。
【
図10】本発明の変形例に係る電気制御系を簡略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<A.一実施形態>
[A-1.構成]
(A-1-1.全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る緊急用シャワーユニット10に含まれるシャワーブース30の構成を簡略的に示す側面断面図である。
図2は、本実施形態に係る緊急用シャワーユニット10に含まれるシャワーブース30の構成を簡略的に示す正面図である。
図3は、本実施形態に係る緊急用シャワーユニット10に含まれるシャワーブース30の構成を簡略的に示す平面断面図である。
【0025】
緊急用シャワーユニット10(以下「シャワーユニット10」ともいう。)は、化学薬品等により負傷したユーザ1000(作業者)を迅速に洗浄するものである。
図1~
図3に示すように、シャワーユニット10は、シャワー装置20及びシャワーブース30を有する。シャワー装置20は、ユーザ1000に対して洗浄液90(
図3及び
図4)を放出する。シャワーブース30は、ユーザ1000が洗浄液90を浴びる空間を規定する。
【0026】
また、制御対象毎に、緊急用シャワーユニット10は、洗浄液90を供給する洗浄液供給系22(
図4)と、ユーザ1000を洗浄した後の洗浄液90を排出する洗浄液排出系24(
図4)と、各部を電気的に制御する電気制御系50(
図5)とを有する。基本的に、洗浄液供給系22及び洗浄液排出系24は、シャワー装置20により構成される。
【0027】
(A-1-2.シャワー装置20(洗浄液供給系22))
(A-1-2-1.シャワー装置20の全体構成)
図4は、本実施形態の緊急用シャワーユニット10の洗浄液供給系22及び洗浄液排出系24を簡略的に示すブロック図である。上記のように、基本的に、洗浄液供給系22及び洗浄液排出系24は、シャワー装置20により構成される。シャワー装置20は、ユーザ1000に対して洗浄液90を放出する。洗浄液90は、ユーザから化学物質等(又は有害物質等)を洗い流すための液体であり、本実施形態における洗浄液90は水(飲料水)である。或いは、その他の洗浄液90(緩衝生理食塩溶液等)を用いてもよい。
【0028】
図4に示すように、シャワー装置20の洗浄液供給系22(以下「給水系22」ともいう。)は、洗浄液供給源200(以下「給水源200」ともいう。)と、洗浄液加熱器(以下「温水器202」ともいう。)と、シャワーヘッド204と、洗眼器206とを有する。給水源200と温水器202を結ぶ第1流路210には、外側バルブ220が設けられる。温水器202と分岐点214を結ぶ第2流路212には、第1内側バルブ222が設けられる。分岐点214とシャワーヘッド204を結ぶ第3流路216には、第2内側バルブ224(以下「シャワーヘッド用バルブ224」ともいう。)が設けられる。分岐点214と洗眼器206を結ぶ第4流路218には、第3内側バルブ226(以下「洗眼器用バルブ226」ともいう。)が設けられる。
【0029】
給水源200と外側バルブ220は第1配管230で連結され、外側バルブ220と温水器202は第2配管232で連結される。温水器202と第1内側バルブ222は第3配管234で連結され、第1内側バルブ222と第2内側バルブ224及び第3内側バルブ226は、三叉の第4配管236で連結される。第2内側バルブ224とシャワーヘッド204は、第5配管238で連結される。第3内側バルブ226と洗眼器206は、第6配管240で連結される。
【0030】
(A-1-2-2.給水源200)
本実施形態における洗浄液90は水(飲料水)であるため、給水源200は、公共水道とすることができる。すなわち、例えば、第1流路210(第1配管230)を水道の蛇口(図示せず)に接続してもよい。或いは、給水源200は、洗浄液90を蓄積した液体用タンクであってもよい。
【0031】
(A-1-2-3.温水器202)
温水器202は、洗浄液90を瞬間的に加熱して20~60℃の範囲の温水として供給する。温水器202は、電気加熱式、ガス加熱式等の各種の方式を用いることができる。後述するように、本実施形態における温水器202は、フロートセンサ500(
図5)の出力に基づいて洗浄液90(水)の加熱処理(温水処理)を行う。
【0032】
(A-1-2-4.シャワーヘッド204)
シャワーヘッド204は、給水源200から供給された洗浄液90を複数のノズルを介して放出する。
図1に示すように、シャワーヘッド204は、主として、ユーザ1000の頭部又は顔に対して洗浄液90を放出することを想定した高さに配置される。特に、本実施形態では、ユーザ1000の顔に対して洗浄液90が多く放出されるように、ユーザ1000の顔の想定高さ(例えば、140~180cmの範囲で設定される。)から主として水平方向に洗浄液90を放出するように配置される(
図1及び
図2参照)。シャワーヘッド204は、例えば特許第4790102号で開示されるものを用いることができるが、これに限らない。シャワーヘッド204は、例えば特許文献1で開示されるものであってもよい。
【0033】
(A-1-2-5.洗眼器206)
洗眼器206は、給水源200から供給された洗浄液90を用いてユーザ1000の両眼を洗浄する。
図2及び
図4に示すように、洗眼器206は、先端側において二股に分岐した配管を含み、複数のノズルを介して洗浄液90を上向きに放出する。
図1に示すように、洗眼器206は、主として、ユーザ1000が下を向きながら両眼を洗浄することを想定した高さ(例えば、110~140cmの範囲で設定される。)に配置され、シャワーヘッド204よりも下方に位置する。洗眼器206は、例えば特許文献1で開示されるものを用いることができるが、これに限らない。洗眼器206は、上側に向けて洗浄液90を放出する以外の構成(例えば、下側に向けて洗浄液90を放出して貯留部(例えば、特許文献1の洗眼ボウル(4)のような形状のものに栓を設けたもの)に洗浄液90を溜めて洗眼を行うもの)であってもよい。
【0034】
(A-1-2-6.外側バルブ220)
図4に示すように、外側バルブ220は、シャワーブース30の外側(より具体的には、給水源200と温水器202を連結する第1流路210上)に配置される。本実施形態では、ユーザ1000がシャワーブース30内に進入すると自動的に洗浄液90を放出する。そのため、外側バルブ220は、シャワーブース30内において洗浄液90の自動放出が可能な状態で洗浄液90の供給を停止させる役割を有する(詳細は、
図8を参照して後述する。)。本実施形態の外側バルブ220は、緊急用シャワーユニット10の管理者がマニュアル操作で開閉できるものであり、例えば、ボールバルブ又はゲートバルブを用いることができる。
【0035】
(A-1-2-7.第1内側バルブ222)
図4に示すように、第1内側バルブ222は、シャワーブース30の内側(より具体的には、温水器202と分岐点214を連結する第2流路212上)に配置される。そのため、第1内側バルブ222は、シャワーヘッド204及び洗眼器206の両方への洗浄液90の供給を切り替えることができる。本実施形態の第1内側バルブ222は、フットバルブで構成され、ユーザ1000によるシャワーブース30内への進入を検出する進入検出手段及びユーザ1000に対する洗浄液90の自動放出を制御するシャワー制御装置として機能する(詳細は、
図6等を参照して後述する。)。
【0036】
(A-1-2-8.第2内側バルブ224)
図4に示すように、第2内側バルブ224は、シャワーブース30の内側(より具体的には、分岐点214とシャワーヘッド204を連結する第3流路216上)に配置される。
図2等には、第2内側バルブ224のより具体的な位置が示されている。本実施形態ではシャワーブース30内に進入するとシャワーヘッド204及び洗眼器206から自動的に洗浄液90が放出されるが、第2内側バルブ224は、ユーザ1000が自らのマニュアル操作によりシャワーヘッド204からの洗浄液90の放出を停止するために用いられる。本実施形態の第2内側バルブ224は、ユーザ1000がマニュアル操作で開閉できるものであり、例えば、ボールバルブ又はゲートバルブを用いることができる。
【0037】
(A-1-2-9.第3内側バルブ226)
図4に示すように、第3内側バルブ226は、シャワーブース30の内側(より具体的には、分岐点214と洗眼器206を連結する第4流路218上)に配置される。
図2等には、第3内側バルブ226のより具体的な位置が示されている。本実施形態ではシャワーブース30内に進入するとシャワーヘッド204及び洗眼器206から自動的に洗浄液90が放出されるが、第3内側バルブ226は、ユーザ1000が自らのマニュアル操作により洗眼器206からの洗浄液90の放出を停止するために用いられる。本実施形態の第3内側バルブ226は、ユーザ1000がマニュアル操作で開閉できるものであり、例えば、ボールバルブ又はゲートバルブを用いることができる。
【0038】
(A-1-3.洗浄液排出系24)
洗浄液排出系24(以下「排水系24」ともいう。)は、ユーザ1000を洗浄した後の洗浄液90を排出する。
図4に示すように、排水系24は、シャワーヘッド204及び洗眼器206の下方に配置されたドレンパン250を有する。ドレンパン250に到達した洗浄液90は、シャワーブース30の外側に排出される。
【0039】
(A-1-4.電気制御系50)
(A-1-4-1.電気制御系50の概要)
図5は、本実施形態の緊急用シャワーユニット10の電気制御系50を簡略的に示すブロック図である。上記の通り、電気制御系50は、各部を電気的に制御する。
図5に示すように、電気制御系50は、フロートセンサ500と、ブース内照明装置502と、警報ランプ504と、警報ブザー506とを有する。なお、電気制御系50の各部は、図示しない電源からの電力により作動する。
【0040】
(A-1-4-2.フロートセンサ500)
フロートセンサ500は、温水器202内の図示しない液体タンク内に配置され、同液体タンク内の液面高さを検出する。ユーザ1000がシャワーブース30内に進入して自動的に洗浄液90が放出されると、温水器202からシャワーブース30側に洗浄液90が供給されて同液体タンク内の液面が下がる。フロートセンサ500がこの液面低下を検出することで、洗浄液90の自動放出開始を判定することができる。
図5に示すように、フロートセンサ500の出力は、警報ランプ504及び警報ブザー506に送信される。
【0041】
(A-1-4-3.ブース内照明装置502)
ブース内照明装置502は、ユーザ1000がシャワーブース30に進入した際、点灯してシャワーブース30内を明るくする。
図1に示すように、ブース内照明装置502は、シャワーブース30の天井部308に配置される。
図5に示すように、ブース内照明装置502は、人感センサ510及びLED照明器512を有する。人感センサ510は、例えば、赤外線センサである。LED照明器512は、人感センサ510がユーザ1000の進入を検出したとき発光する。
【0042】
(A-1-4-4.警報ランプ504)
警報ランプ504は、ユーザ1000がシャワーブース30内に進入したこと(すなわち、緊急事態の発生)を警報ランプ504の点灯又は点滅によりユーザ1000以外の者に通知する。
図1及び
図2に示すように、警報ランプ504は、シャワーブース30の正面側の高い位置に配置される。上記のように、本実施形態では、ユーザ1000によるブース30内への進入は、温水器202のフロートセンサ500からの出力により判定する。従って、フロートセンサ500の出力が、ユーザ1000の進入を示すものであるとき、警報ランプ504は、当該進入を示す態様で点灯又は点滅する。
【0043】
また、本実施形態では、ユーザ1000がシャワーブース30内に進入する前においても、警報ランプ504は点灯又は点滅している。これは、シャワーブース30が例えば化学工場内に設置されて化学薬品が漏れたことに伴う火災等により視界が低下した場合でもシャワーブース30の位置をユーザ1000が判定し易くするためである。従って、ユーザ1000がブース30に進入する前と進入した後の警報ランプ504の点灯色又は点滅パターン等を変化させることで、ユーザ1000以外の者が進入前と進入後を判定することができる。
【0044】
(A-1-4-5.警報ブザー506)
警報ブザー506は、ユーザ1000がシャワーブース30内に進入したこと(すなわち、緊急事態の発生)をブザー音の出力によりユーザ1000以外の者に通知する。上記のように、本実施形態では、ユーザ1000によるブース30内への進入は、温水器202のフロートセンサ500からの出力により判定する。従って、フロートセンサ500の出力が、ユーザ1000の進入を示すものであるとき、警報ブザー506は、当該進入を示す態様でブザー音を出力する。本実施形態の警報ブザー506は、警報ランプ504の筐体内に組み込まれる。
【0045】
(A-1-5.シャワーブース30)
シャワーブース30は、シャワー装置20の一部(シャワーヘッド204、洗眼器206等)が配置される空間を規定する。
図1~
図3に示すように、本実施形態のシャワーブース30は、直方体状であり、床部300と、正面部302と、背面部304と、左側面部306Lと、右側面部306Rと、天井部308とを有する。正面部302、背面部304、左側面部306L、右側面部306R及び天井部308を構成する壁は紙製である。或いは、これらの壁は、その他の素材(例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン等の樹脂)から構成されてもよい。
【0046】
背面部304の手前には、シャワーヘッド204及び洗眼器206を支持するヘッド/洗眼器支持部310(以下「支持部310」ともいう。)が設けられる。支持部310は、第4配管236の一部、第5配管238及び第6配管240(
図4)を構成する。
【0047】
図6は、本実施形態のシャワーブース30の床部300及びその周辺の拡大側面断面図である。
図7は、本実施形態のシャワーブース30の床部300及びその周辺の拡大平面図である。
図1及び
図2に示すように、床部300は、支持部310の下方に位置する。
図6及び
図7に示すように、床部300の上部には、シャワーヘッド204の手前側において直方体状の床板3000が配置され、床板3000の下方にはドレンパン250が設けられる。床板3000はグレーチング(すなわち、硬質の格子状部材)であり、シャワーヘッド204又は洗眼器206から放出された洗浄液90は、床板3000(以下「グレーチング3000」ともいう。)を介してドレンパン250に到達する。
【0048】
グレーチング3000は、ユーザ1000がシャワーヘッド204の前に立ったときにユーザ1000の足により踏まれる想定範囲を含む広さを有する。当該想定範囲は、例えば、床部300全体の水平面積の30~90%(より好ましくは50~90%)を占める。或いは、当該想定範囲は、例えば、幅が400~1000mmの範囲及び奥行きが400~800mmの範囲で設定される。
【0049】
本実施形態のグレーチング3000は、複数のスペーサ3002(
図6)を介して矩形状且つ環状のフレーム3004に固定される。
図6に示すように、フレーム3004の断面はL字状をしている。また、フレーム3004は、ブース30の手前側において、ヒンジ3006に連結されている。各スペーサ3002は、直方体状であり、フレーム3004の一方側(例えば
図6の左端)から他方側(例えば
図6の右端)を跨ぐようにブース30の前後方向(
図6の左右方向)に延在する。さらに、フレーム3004は、ブース30の奥側(
図6の右側)において、直方体状の押圧部3008を有している。グレーチング3000、スペーサ3002及びフレーム3004をまとめて床板と捉えることも可能である。
【0050】
ブース30の前後方向(
図6の左右方向)においてスペーサ3002の中央付近には、ブース30の左右方向(
図2の左右方向)に並んだ複数のコイルばね3010により支持される。
【0051】
図2及び
図3に示すように、正面部302は、左右の端及び上側の端を除き、開口部3020が形成されている。
図3に示すように、正面部302の上側には、カーテンレール3022が配置され、図示しないカーテンにより開口部3020を覆うことができる。
【0052】
図2及び
図3に示すように、左側面部306L及び右側面部306Rは、ヘッド/洗眼器支持部310の側方に位置する。
図3に示すように、左側面部306Lには、ユーザ1000が自身を見るためのミラー3060が配置されている。ミラー3060は、割れにくい素材で構成されるいわゆるセーフティミラーである。右側面部306Rには、ハンガーパイプ3062が設けられ、防水シートを被せたタオル又は着替え(図示せず)を掛けておくことができる。また、右側面部306R又は左側面部306Lには、防水シートを切るためのハサミ及び靴を置くための棚(図示せず)を設けてもよい。
【0053】
(A-1-6.進入検出手段60及びシャワー制御装置62)
上記のように、本実施形態では、ユーザ1000がシャワーブース30内に進入したことを、グレーチング3000及び第1内側バルブ222により検出する。換言すると、グレーチング3000及び第1内側バルブ222は、ユーザ1000がシャワーブース30内に進入したことを検出する進入検出手段60(
図6)として機能する。
【0054】
また、ユーザ1000がシャワーブース30内に進入した場合、グレーチング3000(及び押圧部3008)が第1内側バルブ222を押し下げることで、第3配管234から第4配管236へと洗浄液90を通過させることで、シャワーヘッド204及び洗眼器206から洗浄液90を自動的に放出させる。換言すると、グレーチング3000及び第1内側バルブ222は、ユーザ1000がシャワーブース30内に進入した際、シャワー装置20(シャワーヘッド204及び洗眼器206)による洗浄液90の放出を開始させるシャワー制御装置62(
図6)として機能する。
【0055】
第1内側バルブ222は、シャワーブース30の内側(より具体的には、温水器202と分岐点214を連結する第2流路212上)に配置される(
図4参照)。そのため、第1内側バルブ222は、シャワーヘッド204及び洗眼器206の両方への洗浄液90の供給を切り替えることができる。
【0056】
本実施形態の第1内側バルブ222は、ノーマルクローズ型のフットバルブで構成される。すなわち、
図6に示すように、第1内側バルブ222(以下「フットバルブ222」ともいう。)は、バルブ本体2220と、吸入口2222と、排出口2224と、ペダル2226とを有する。第3配管234(
図4)が吸入口2222に接続され且つ第4配管236が排出口2224に接続された状態で、ペダル2226が下方に押圧されると、バルブ本体2220内の切替弁が閉状態から開状態に移行して、吸入口2222側から排出口2224側に流体(洗浄液90)が流れる。
図6において、実線で示すペダル2226が初期位置のペダル2226(閉状態)であり、二点鎖線で示すペダル2226が下方に押圧されたペダル2226(開状態)である。
【0057】
図6の実線で示すように、初期状態のグレーチング3000、スペーサ3002及びフレーム3004は、シャワーブース30の手前側(
図6の左側)が低くなるように且つ奥側(
図6の右側)が高くなるように傾斜している。このように傾斜するのは、ブース30の前後方向(
図6の左右方向)においてグレーチング3000が、スペーサ3002を介して複数のコイルばね3010により支持されているためである。
【0058】
ユーザ1000がブース30内に進入すると、ユーザ1000の体重等により、グレーチング3000に下向きの力が加えられる。これにより、コイルばね3010からの反力に抗してグレーチング3000(特に奥側部分)は、下方に移動する(
図6の二点鎖線参照)。
【0059】
図6に示すように、本実施形態のフレーム3004の奥側且つブース30の左右方向における中央には、下方に突出した押圧部3008が形成されている。上記の通り、シャワーブース30内にユーザ1000が進入すると、ユーザ1000の体重等によりグレーチング3000及びフレーム3004の奥側部分(押圧部3008を含む。)が下方に移動する。これに伴って、押圧部3008がペダル2226を押し下げて、フットバルブ222が閉状態から開状態に切り替わる。
【0060】
[A-2.本実施形態の制御]
(A-2-1.初期化処理)
図8は、本実施形態において、洗浄液供給系22を初期化する際の初期化処理のフローチャートである。ステップS11において、緊急用シャワーユニット10の設置者又は管理者は、外側バルブ220を閉状態に変更する(又は外側バルブ220が閉状態であることを確認する)。
【0061】
ステップS12において、設置者又は管理者は、シャワーヘッド用バルブ224(第2内側バルブ224)及び洗眼器用バルブ226(第3内側バルブ226)を開状態に変更する(又はシャワーヘッド用バルブ224及び洗眼器用バルブ226が開状態であることを確認する)。ステップS12の前において(ステップS11において)外側バルブ220を閉状態に変更している。そのため、設置者又は管理者がブース30内に進入してフットバルブ222が開状態である際に、シャワーヘッド用バルブ224及び洗眼器用バルブ226を開状態に変更しても、シャワーヘッド204及び洗眼器206から洗浄液90は放出されない。
【0062】
ステップS13において、設置者又は管理者は、ブース30外に出て外側バルブ220を開状態に変更する。設置者又は管理者がブース30外に出たことで、フットバルブ222は、開状態から閉状態に移行する。そのため、ステップS13において、外側バルブ220が開状態に変更されても、シャワーヘッド204及び洗眼器206から洗浄液90は放出されない。この状態で、ユーザ1000(又は設置者若しくは管理者)がブース30内に進入すると、シャワーヘッド204及び洗眼器206から洗浄液90が自動的に放出されることとなる。
【0063】
(A-2-2.通常制御)
図9は、本実施形態において、初期化処理後の緊急用シャワーユニット10の通常制御のフローチャートである。ステップS21において、緊急用シャワーユニット10の進入検出手段60(グレーチング3000及びフットバルブ222)は、ブース30内へのユーザ1000の進入を監視する。ユーザ1000の進入がない場合(S22:偽)、当該監視を継続する。ユーザ1000の進入があった場合(S22:真)、すなわち、ユーザ1000がブース30内に進入しユーザ1000の体重等によりグレーチング3000を下側に押圧してフットバルブ222のペダル2226が下向きに押されると、ステップS23に進む。
【0064】
ステップS23において、シャワー装置20(シャワーヘッド204及び洗眼器206)から洗浄液90が放出される。すなわち、フットバルブ222が下向きに押されて閉状態から開状態に移行すると、第3配管234から第4配管236へと洗浄液90が流れて、シャワーヘッド204及び洗眼器206に洗浄液90が供給される。これにより、シャワーヘッド204及び洗眼器206から洗浄液90が放出される。
【0065】
ステップS24において、温水器202は、洗浄液90を加熱して20~60℃の範囲の温水とする温水処理を実行する。上記のように、温水処理の開始は、温水器202のフロートセンサ500の出力に基づいて判定される。
【0066】
ステップS25において、警報ランプ504及び警報ブザー506を作動させる。上記のように、警報ランプ504及び警報ブザー506の作動開始は、温水器202のフロートセンサ500の出力に基づいて判定される。
【0067】
ステップS26において、緊急用シャワーユニット10は、洗浄液90の放出を終了するか否かを判定する。本実施形態では、シャワーヘッド用バルブ224及び洗眼器用バルブ226の両方がユーザ1000により開状態から閉状態に変更されると、洗浄液90の放出を終了すると判定されて(S26:真)、通常制御を終了する。なお、シャワーヘッド用バルブ224及び洗眼器用バルブ226の両方が開状態である場合、又はシャワーヘッド用バルブ224若しくは洗眼器用バルブ226の一方のみが閉状態にされて他方が開状態である場合、洗浄液90の放出を終了すると判定されず(S26:偽)、洗浄液90の放出(S23)、温水処理(S24)並びに警報ランプ504及び警報ブザー506の作動(S25)が継続される。なお、バルブ224、226の少なくとも一方が開状態であっても、ユーザ1000がブース30から出た場合、ステップS26は「真」となる。
【0068】
シャワーヘッド204及び洗眼器206の両方が洗浄液90の放出を停止すると、ユーザ1000は、ブース30のハンガーパイプ3062(
図3)に掛けられているタオル、着替え等(防水シートに覆われている)を用いることができる。
【0069】
また、一旦、通常制御を終了しても、ユーザ1000がシャワーヘッド用バルブ224又は洗眼器用バルブ226を閉状態から開状態に変更すると、ステップS23~S25が再開される。そのため、シャワー装置20(シャワーヘッド204及び洗眼器206)からの洗浄液90の放出が終わった後、緊急用シャワーユニット10を初期状態に戻すためには、
図8の初期化処理を再度行う必要がある。すなわち、外側バルブ220を開状態から閉状態に変更した後(S11)、シャワーヘッド用バルブ224及び洗眼器用バルブ226を閉状態から開状態に変更し(S12)、外側バルブ220を開状態に戻す(S13)。
【0070】
[A-3.本実施形態の効果]
本実施形態によれば、シャワーブース30へのユーザ1000の進入が検出されたとき(
図9のS22:真)、シャワー装置20による洗浄液90の放出を開始させる(S23)。これにより、ユーザ1000がシャワーブース30に進入した際、ユーザ1000による追加操作(例えば、シャワーヘッド用バルブ224及び洗眼器用バルブ226の操作)なしに洗浄液90の放出が開始され、緊急時において速やかにユーザ1000を洗浄することが可能となる。
【0071】
また、本実施形態によれば、進入検出手段60及びシャワー制御装置62を兼ねるフットバルブ222は、ユーザ1000がシャワーヘッド204の前に立ったときにユーザ1000の足により踏まれる想定範囲を含む広さを有する床板3000に連結されている(
図6及び
図7)。そのため、自らの洗浄のためユーザ1000がシャワーヘッド204の前に立ったときにユーザ1000の足により床板3000が無意識に踏まれることでフットバルブ222が開いてシャワー装置20から自動的に洗浄液90が放出される。従って、簡易な方法で、シャワーブース30へのユーザ1000の進入を検出可能となる。
【0072】
本実施形態において、シャワー装置20は、シャワーヘッド204に加えて、洗眼器206を有する(
図1及び
図2)。シャワー制御装置62は、シャワーブース30へのユーザ1000の進入を進入検出手段60が検出したとき、シャワーヘッド204及び洗眼器206の両方から洗浄液90の放出を開始させる(
図4及び
図9のS23)。これにより、緊急状態にあるユーザ1000は、自らの選択でシャワーヘッド204からの洗浄液90又は洗眼器206からの洗浄液90を利用することが可能となる。
【0073】
本実施形態において、シャワー装置20は、ユーザ1000の操作により洗浄液90の流量を調整するシャワーヘッド用バルブ224及び洗眼器用バルブ226(流量調整手段)を有する(
図2及び
図4)。これにより、洗浄が完了した場合等において、ユーザ1000の意思で洗浄液90の流量を変化させることができる。
【0074】
本実施形態において、シャワーブース30は、ヘッド/洗眼器支持部310(ヘッド支持部)の側方に位置する右側面部306Rを有する(
図1及び
図3)。シャワーブース30の右側面部306Rには、ハンガーパイプ3062が設けられている(
図3)。これにより、例えば、防水シートを被せたタオル又は着替えをハンガーパイプ3062に掛けておくことで、ユーザ1000は、洗浄後直ぐにタオル又は着替えを利用可能となる。
【0075】
本実施形態において、シャワー装置20は、洗浄液90を加熱して20~60℃の範囲まで温める温水器202(加熱装置)を有する(
図4)。これにより、緊急時に用いる洗浄液90を温めて供給可能となり、ユーザ1000の洗浄効果を高めることができる。
【0076】
本実施形態において、緊急用シャワーユニット10は、シャワーブース30へのユーザ1000の進入を進入検出手段60が検出したとき点灯又は点滅する警報ランプ504と、シャワーブース30へのユーザ1000の進入を進入検出手段60が検出したときブザー音を出力する警報ブザー506とを有する(
図1、
図2及び
図5)。これにより、シャワーブース30に対してユーザ1000が進入した際には当該進入(すなわち、緊急事態の発生)を外部に通報可能となる。
【0077】
本実施形態において、床部300は、初期状態の床板3000を上方に位置させるコイルばね3010を有する(
図6)。また、床板3000(又はフレーム3004)には、下方に突出する押圧部3008が形成される(
図6)。そして、初期状態の押圧部3008は、コイルばね3010の付勢力により上方に変位されてフットバルブ222のペダル2226を押圧しない。また、ユーザ1000が床板3000に載った際の押圧部3008は、ユーザ1000の重量により下方に変位してフットバルブ222のペダル2226を押圧する。これにより、シャワーブース30内へのユーザ1000の進入検出及びシャワー装置20から洗浄液放出開始を簡易な構成で実現可能となる。
【0078】
本実施形態において、シャワーブース30の左右側面壁及び背面壁は紙製である。これにより、シャワーブース30の軽量化を図ることができると共に、環境に優しいシャワーブース30を提供可能となる。
【0079】
本実施形態において、シャワー装置20は、シャワーブース30の内側における洗浄液90用の流路である第3流路216(第2内側流路)及び第4流路218(第3内側流路)上に設けられ、洗浄液90の流量を調整するシャワーヘッド用バルブ224及び洗眼器用バルブ226(内側バルブ)と、シャワーブース30の外側において洗浄液供給源200と第3流路216及び第4流路218とを結ぶ第1流路210(外側流路)上に設けられ、洗浄液90の流量を調整する外側バルブ220とを有する(
図4)。また、洗浄液の放出を開始した後の通常制御(
図9)では、シャワーヘッド用バルブ224及び洗眼器用バルブ226のマニュアル操作により洗浄液90の放出を停止させる(
図9のS26:洗浄液放出停止ステップ)。その後、外側バルブ220のマニュアル操作により洗浄液供給源200から第3流路216及び第4流路218への洗浄液90の供給を停止する(
図8のS11:洗浄液供給停止ステップ)。その後、シャワーヘッド用バルブ224及び洗眼器用バルブ226をマニュアル操作により開く(
図8のS12:内側バルブ開ステップ)。その後、外側バルブ220をマニュアル操作により開く(
図8のS13:外側バルブ開ステップ)。これにより、緊急用シャワーユニット10の状態を初期化すること(すなわち、新たにユーザ1000がシャワーブース30内に進入した際、自動的に洗浄液90の放出を開始可能な状態に戻すこと)が可能となる。
【0080】
<B.変形例>
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、本明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0081】
上記実施形態では、シャワー装置20は、シャワーヘッド204及び洗眼器206の両方を有していた(
図1、
図2及び
図4)。しかしながら、例えば、ブース30内にユーザ1000が進入した際、洗浄液90を自動的に放出する観点からすれば、これに限らず、シャワーヘッド204又は洗眼器206の一方を省略してもよい。
【0082】
上記実施形態では、シャワー装置20は、温水器202を有していた(
図4)。しかしながら、例えば、ブース30内にユーザ1000が進入した際、洗浄液90を自動的に放出する観点からすれば、これに限らず、温水器202を省略してもよい。
【0083】
上記実施形態では、シャワーブース30は、床部300、正面部302、背面部304、左側面部306L、右側面部306R及び天井部308それぞれに壁を有していた(
図1~
図3)。しかしながら、例えば、ブース30内にユーザ1000が進入した際、洗浄液90を自動的に放出する観点からすれば、これに限らない。例えば、シャワーブース30は、床部300以外の壁の一部又は全部を省略してもよい。
【0084】
上記実施形態では、ハンガーパイプ3062を設けた(
図3)。しかしながら、例えば、ブース30内にユーザ1000が進入した際、洗浄液90を自動的に放出する観点からすれば、ハンガーパイプ3062を省略してもよい。
【0085】
上記実施形態では、警報ランプ504及び警報ブザー506を設けた(
図1、
図2及び
図5)。しかしながら、例えば、ブース30内にユーザ1000が進入した際、洗浄液90を自動的に放出する観点からすれば、警報ランプ504及び警報ブザー506の一方又は両方を省略してもよい。
【0086】
上記実施形態では、グレーチング3000及びフットバルブ222による進入検出手段60及びシャワー制御装置62を
図6に示す構成とした。しかしながら、例えば、ユーザ1000の足からグレーチング3000に加わる下向きの押圧力によりフットバルブ222のペダル2226を押圧することでユーザ1000の進入検知又は洗浄液90の自動放出を行う観点からすれば、これに限らない。例えば、ヒンジ3006を設けずに、且つコイルばね3010をグレーチング3000の手前側及び奥側の両方に設けておき、初期状態ではグレーチング3000の奥側が上側に位置しているだけでなく、グレーチング3000の手前側も上側に位置するように構成してもよい。
【0087】
上記実施形態では、ブース30内へのユーザ1000の進入を床板3000及びフットバルブ222で検出した。換言すると、床板3000及びフットバルブ222により進入検出手段60を構成した(
図6)。しかしながら、例えば、ブース30内にユーザ1000が進入した際、洗浄液90を自動的に放出する観点からすれば、これに加えて又はこれに代えて別の構成要素により進入検出手段60を構成してもよい。
【0088】
図10は、本発明の変形例に係る電気制御系50aを簡略的に示すブロック図である。
図10に示すように、電気制御系50aは、進入検出センサ520と、温水器202と、電磁弁522と、ブース内照明装置502と、警報ランプ504と、警報ブザー506とを有する。なお、電気制御系50aの各部は、図示しない電源からの電力により作動する。
【0089】
進入検出センサ520は、シャワーブース30内へのユーザ1000の進入を検出するセンサ(進入検出手段60a)であり、シャワーブース30内の所定範囲を検出範囲とする光センサ、赤外線センサ又は画像センサから構成される。これにより、ユーザ1000と接触することなしに、シャワーブース30へのユーザ1000の進入を検出可能となる。例えば、進入検出センサ520が光センサ又は赤外線センサの場合、ブース30の左側面部306L又は右側面部306Rの一方に出射素子及び検出素子を配置し、他方に反射板を設ける反射型としてもよい。或いは、ブース30の左側面部306L又は右側面部306Rの一方に出射素子を配置し、他方に検出素子を設ける透過型としてもよい。
【0090】
電磁弁522は、フットバルブ222(第1内側バルブ222)の代わりに用いられるバルブであり、フットバルブ222と同様、第2流路212(第1内側流路)(
図4)上に設けられる。電磁弁522は、シャワー装置20による洗浄液90の放出を制御するシャワー制御装置62aとしても機能する。電磁弁522は、ノーマルクローズ型である。
【0091】
進入検出センサ520の出力信号は、温水器202、電磁弁522、ブース内照明装置502、警報ランプ504及び警報ブザー506のそれぞれに送信される。進入検出センサ520の出力信号が、ブース30へのユーザ1000の進入を示す信号である場合、温水器202は、温水処理を開始し、電磁弁522は、閉状態から開状態に移行し、ブース内照明装置502(LED照明器512)は、点灯してブース30内を明るくする。また、警報ブザー506は、所定の色で点灯し又は所定のパターンで点滅し、警報ブザー506は、ブザー音を出力する。温水器202、電磁弁522、ブース内照明装置502、警報ランプ504及び警報ブザー506のいずれか1つ又は複数は、進入検出センサ520の出力信号を用いなくてもよい。
【0092】
上記実施形態では、自動放出後の洗浄液90を停止するために、ユーザ1000がマニュアル操作するシャワーヘッド用バルブ224及び洗眼器用バルブ226を用いた(
図2及び
図4)。しかしながら、例えば、自動放出後の洗浄液90を停止する点に着目すれば、これらのバルブ224、226に加えて又はこれらに代えて、その他の手段・方法を用いることも可能である。例えば、
図10の変形例のように進入検出センサ520の出力信号を用いる場合、電磁弁522の開状態を所定時間のみとすることも可能である。或いは、シャワーヘッド用バルブ224及び洗眼器用バルブ226を電磁弁で構成する場合、これらのバルブ224、226の開状態を所定時間のみとしてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10…緊急用シャワーユニット 20…シャワー装置
30…シャワーブース 60、60a…進入検出手段
62、62a…シャワー制御装置 90…洗浄液
200…洗浄液供給源 202…温水器(加熱装置)
204…シャワーヘッド 206…洗眼器
212…第1流路(外側流路) 216…第3流路(内側流路)
218…第4流路(内側流路) 220…外側バルブ
222…フットバルブ
224…シャワーヘッド用バルブ(流量調整手段、内側バルブ)
226…洗眼器用バルブ(流量調整手段、内側バルブ)
300…床部 306L…左側面部
306R…右側面部
310…ヘッド/洗眼器支持部(ヘッド支持部)
504…警報ランプ 506…警報ブザー
520…進入検出センサ 1000…ユーザ
2226…ペダル 3000…床板
3008…押圧部(連結部材) 3010…コイルばね
3062…ハンガーパイプ