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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】光ファイバー構造とビーム成型方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/036 20060101AFI20230814BHJP
   G02B 6/028 20060101ALI20230814BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20230814BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20230814BHJP
【FI】
G02B6/036
G02B6/028
G02B6/42
B23K26/064 K
【請求項の数】 59
(21)【出願番号】P 2021525679
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 US2019060020
(87)【国際公開番号】W WO2020101970
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】62/758,731
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】ワン-ロン・ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ・ビジャレアル-サウエド
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/102138(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0293084(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0210144(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0031762(US,A1)
【文献】特表2014-511125(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0044148(US,A1)
【文献】特表2011-530725(JP,A)
【文献】特開2007-086776(JP,A)
【文献】特表2002-522812(JP,A)
【文献】国際公開第2013/005779(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0210212(US,A1)
【文献】特開2002-162529(JP,A)
【文献】特開2002-296441(JP,A)
【文献】特開2002-031736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02- 6/10
G02B 6/26- 6/27
G02B 6/30- 6/34
G02B 6/42- 6/43
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチモード光ファイバーであって、
第1屈折率を有するセンターコアと、
前記センターコアを囲み、前記第1屈折率よりも小さい第2屈折率を有し、前記センターコアの直径の1/2よりも小さい厚さを有する第1クラッドと、
前記第1クラッドを囲み、前記センターコアの直径に対する直径の比率が2.5以上8以下の範囲である環状コアと、
前記環状コアを囲み、前記第1屈折率よりも小さい第3屈折率を有する第2クラッドと、
を備え、
前記センターコアは、純粋石英ガラスにより構成され、
前記環状コアは、
前記第2屈折率よりも大きい第4屈折率を有する第1領域と、
第2領域と、
を有し、
前記第1領域は、前記第2領域と前記第2クラッドとの間に配置され、
前記第2領域の屈折率は、(i)前記第4屈折率以下の第5屈折率と(ii)前記第2屈折率以上の第6屈折率との間で変化し、前記第6屈折率から前記第5屈折率まで徐々に増加前記第2領域の屈折率の変化は線形である、
勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項2】
前記第4屈折率は、前記第1屈折率と等しい、
請求項1に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項3】
前記第4屈折率は、前記第1屈折率よりも大きい、
請求項1に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項4】
前記第4屈折率は、前記第1屈折率よりも小さい、
請求項1に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項5】
前記第2屈折率は、前記第3屈折率と等しい、
請求項1に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項6】
前記第2屈折率は、前記第3屈折率よりも大きい、
請求項1に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項7】
前記第2屈折率は、前記第3屈折率よりも小さい、
請求項1に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項8】
前記第1領域の厚さは、前記第2領域の厚さと等しい、
請求項1に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項9】
前記第1領域の厚さは、前記第2領域の厚さよりも小さい、
請求項1に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項10】
前記第1領域の厚さは、前記第2領域の厚さよりも大きい、
請求項1に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項11】
前記第5屈折率は、前記第4屈折率よりも小さい、
請求項1に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項12】
前記第5屈折率は、前記第4屈折率と等しい、
請求項1に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項13】
前記第6屈折率は、前記第2屈折率よりも大きい、
請求項1に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項14】
前記第6屈折率は、前記第2屈折率と等しい、
請求項1に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項15】
前記第1屈折率は、1.45076であり、
前記第4屈折率は、1.45076である、
請求項1に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項16】
マルチモード光ファイバーであって、
第1屈折率を有するセンターコアと、
前記センターコアを囲み、前記センターコアの直径に対する直径の比率が2.5以上8以下の範囲である環状コアと、
前記環状コアを囲み、前記第1屈折率よりも小さい第2屈折率を有し、前記センターコアの直径の1/2よりも小さい厚さを有する第1クラッドと、
を備え、
前記センターコアは、純粋石英ガラスにより構成され、
前記環状コアは、
前記第2屈折率よりも大きい第3屈折率を有する第1領域と、
第2領域と、
を有し、
前記第2領域の屈折率は、(i)前記第3屈折率以下の第4屈折率と(ii)前記第4屈折率よりも小さい第5屈折率との間で変化し、前記第5屈折率から前記第4屈折率まで徐々に増加前記第2領域の屈折率の変化は、線形であり、
前記第1領域は、第2領域と第1クラッドとの間に配置される、
勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項17】
前記第3屈折率は、前記第1屈折率と等しい、
請求項16に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項18】
前記第3屈折率は、前記第1屈折率よりも大きい、
請求項16に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項19】
前記第3屈折率は、前記第1屈折率よりも小さい、
請求項16に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項20】
前記第5屈折率は、前記第2屈折率と等しい、
請求項16に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項21】
前記第5屈折率は、前記第2屈折率よりも大きい、
請求項16に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項22】
前記第5屈折率は、前記第2屈折率よりも小さい、
請求項16に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項23】
前記第1領域の厚さは、前記第2領域の厚さと等しい、
請求項16に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項24】
前記第1領域の厚さは、前記第2領域の厚さよりも小さい、
請求項16に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項25】
前記第1領域の厚さは、前記第2領域の厚さよりも大きい、
請求項16に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項26】
前記第4屈折率は、前記第3屈折率よりも小さい、
請求項16に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項27】
前記第4屈折率は、前記第3屈折率と等しい、
請求項16に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項28】
前記第1屈折率は、1.45076であり、
前記第3屈折率は、1.45076である、
請求項16に記載の勾配ステップクラッド光ファイバー。
【請求項29】
入力レーザービームを放射するビーム源と、
入力端と、前記入力端と反対側の出力端と、を有する、請求項1から28のいずれか1項に記載の光ファイバーと、
前記入力レーザービームを受信し、前記入力レーザービームを前記光ファイバーの前記入力端に向ける結合機構であって、前記入力レーザービームは、前記光ファイバーに結合され、前記光ファイバーの出力端から出力ビームとして放射される、結合機構と、
前記光ファイバーに対する前記結合機構を制御して、前記光ファイバーの前記入力端の1つまたは複数の結合位置に前記入力レーザービームを向ける制御部であって、前記1つまたは複数の結合位置により、前記出力ビームのビームパラメータ積または開口数のうち少なくとも一方が少なくとも部分的に決定される制御部と、
を備える、
レーザーシステム。
【請求項30】
前記結合機構は、前記入力レーザービームを前記光ファイバーの前記入力端に集光する光学素子、を備え、
前記光学素子は、前記制御部に応答して、(i)前記入力レーザービームの伝播方向に実質的に平行な軸と、(ii)前記入力レーザービームの前記伝播方向に実質的に垂直な1つまたは複数の軸と、のいずれか一方に沿って移動可能である、
請求項29に記載のレーザーシステム。
【請求項31】
前記結合機構は、前記入力レーザービームを受信し、前記入力レーザービームを前記光ファイバーに向けるステアリング機構、を備える、
請求項30に記載のレーザーシステム。
【請求項32】
前記ステアリング機構は、リフレクタ、を備える、
請求項31に記載のレーザーシステム。
【請求項33】
前記光学素子は、1つまたは複数のレンズ、1つまたは複数のミラー、および/または1つまたは複数のプリズム、を備える、
請求項30に記載のレーザーシステム。
【請求項34】
前記結合機構は、前記入力レーザービームを受信し、前記入力レーザービームを前記光ファイバーに向けて反射するリフレクタ、を備え、
前記リフレクタは、前記制御部に応答して回転可能である、
請求項29に記載のレーザーシステム。
【請求項35】
前記結合機構は、前記リフレクタから前記入力レーザービームを受信し、前記入力レーザービームを前記光ファイバーに集光する光学素子、を備える、
請求項34に記載のレーザーシステム。
【請求項36】
前記光学素子は、前記制御部に応答して、(i)前記入力レーザービームの伝播方向に実質的に平行な軸と、(ii)前記入力レーザービームの前記伝播方向に実質的に垂直な1つまたは複数の軸と、のいずれか一方に沿って移動可能である
請求項35に記載のレーザーシステム。
【請求項37】
前記光学素子は、1つまたは複数のレンズ、1つまたは複数のミラー、および/または1つまたは複数のプリズム、を備える、
請求項36に記載のレーザーシステム。
【請求項38】
前記ビーム源は前記制御部に応答し、
前記制御部は、前記入力レーザービームが異なる前記結合位置の間に向けられるときに、前記入力レーザービームの出力パワーを変調することなく、前記入力レーザービームを複数の前記異なる結合位置に向けるよう構成される、
請求項29に記載のレーザーシステム。
【請求項39】
前記制御部は、前記第1クラッドに少なくとも部分的に重複する少なくとも1つの結合位置に前記入力レーザービームを向けるよう構成され、そのため、前記第1クラッドに結合されたビームエネルギーは、前記出力ビームを少なくとも部分的に形成する、
請求項29に記載のレーザーシステム。
【請求項40】
前記制御部は、前記第1領域および/または前記第2領域に少なくとも部分的に重複する少なくとも1つの結合位置に前記入力レーザービームを向けるよう構成され、そこに結合されたビームエネルギーは、前記出力ビームを少なくとも部分的に形成する、
請求項29に記載のレーザーシステム。
【請求項41】
さらに、前記光ファイバーの前記出力端に結合され、前記出力ビームを加工するために加工対象物に向けるレーザーヘッド、を備える、
請求項29に記載のレーザーシステム。
【請求項42】
前記制御部は、(i)前記加工対象物で実施される加工の種類、(ii)前記加工対象物の特性、または(iii)前記加工対象物が加工される加工経路、のうち少なくとも1つに基づいて、前記光ファイバーの前記入力端の1つまたは複数の結合位置に前記入力レーザービームを向けるよう構成される、
請求項41に記載のレーザーシステム。
【請求項43】
前記加工の種類は、切断、溶接、エッチング、焼きなまし、穴あけ、半田付け、またはろう付け、からなるリストから選択される、
請求項42に記載のレーザーシステム。
【請求項44】
前記加工対象物の特性は、前記加工対象物の厚さ、前記加工対象物の組成、前記加工対象物の反射率、または前記加工対象物のトポグラフィ、のうち少なくとも1つを含む、
請求項42に記載のレーザーシステム。
【請求項45】
前記制御部は、前記加工経路における1つまたは複数の方向変化に基づいて、前記光ファイバーの前記入力端の1つまたは複数結合位置に前記入力レーザービームを向けるよう構成される、
請求項42に記載のレーザーシステム。
【請求項46】
前記ビーム源は、
複数の分散ビームを放射する1つまたは複数のビームエミッタと、
分散素子に前記複数の分散ビームを集光する集光光学系と、
受信した集光ビームを受信し分散する分散素子と、
前記分散ビームを受信し、前記分散ビームの一部を前記入力レーザービームとして透過させ、および、前記分散素子に戻るよう前記分散ビームの第2の一部を反射するよう配置された部分反射出力カプラと、
を備え、
前記入力レーザービームは、複数の波長により構成される、
請求項42に記載のレーザーシステム。
【請求項47】
前記分散素子は、回折格子を備える、
請求項46に記載のレーザーシステム。
【請求項48】
レーザービームで加工対象物を加工する方法であって、
請求項1から28のいずれか1項に記載の、入力端と前記入力端と反対側の出力端とを有する光ファイバーを提供するステップと、
前記光ファイバーの前記出力端に近接して前記加工対象物を配置するステップと、
(i)前記加工対象物で実施される加工の種類、(ii)前記加工対象物の特性、または(iii)前記加工対象物が加工される加工経路、のうち少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいて、前記加工対象物を加工するためのビームパラメータ積または開口数のうち少なくとも一方を決定するステップと、
前記光ファイバーの前記入力端の1つまたは複数の結合位置に入力レーザービームを向けて、前記光ファイバーの前記出力端から放射される前記レーザービームのビームパラメータ積または開口数のうち少なくとも一方を選択するステップと、
前記光ファイバーの前記出力端から放射される前記レーザービームで前記加工対象物を加工するステップと、
を含む、
方法。
【請求項49】
前記加工対象物を加工するステップは、前記加工対象物の表面の少なくとも一部を物理的に変化させること、を含む、
請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記加工対象物を加工するステップは、切断、溶接、エッチング、焼きなまし、穴あけ、半田付け、またはろう付け、のうち少なくとも1つを含む、
請求項48に記載の方法。
【請求項51】
(i)前記ビームパラメータ積または前記開口数のうち少なくとも一方は、前記加工対象物の特性に少なくとも部分的に基づいて決定される、および、
(ii)前記加工対象物の特性は、前記加工対象物の厚さ、前記加工対象物の組成、前記加工対象物の反射率、または前記加工対象物のトポグラフィ、のうちいずれか1つを含む、
請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記ビームパラメータ積または前記開口数のうち少なくとも一方は、前記加工経路における1つまたは複数の方向変化に少なくとも部分的に基づいて決定される、
請求項48に記載の方法。
【請求項53】
少なくとも1つの前記結合位置は、前記第1クラッドに少なくとも部分的に重複し、そのため、前記第1クラッドに結合されたビームエネルギーは、出力ビームの少なくとも一部を形成する、
請求項48に記載の方法。
【請求項54】
少なくとも1つの前記結合位置は、前記第1領域および/または前記第2領域に少なくとも部分的に重複し、そのため、そこに結合されたビームエネルギーは、出力ビームの少なくとも一部を形成する、
請求項48に記載の方法。
【請求項55】
前記光ファイバーの前記入力端の1つまたは複数の結合位置に入力レーザービームを向けるステップは、(i)1つまたは複数のリフレクタで前記レーザービームを反射するステップ、または(ii)1つまたは複数の光学素子で前記レーザービームを集光するステップ、のうち少なくとも一方を含む、
請求項48に記載の方法。
【請求項56】
前記1つまたは複数の結合位置は、複数の異なる結合位置を含む、
含む、
請求項48に記載の方法。
【請求項57】
さらに、前記加工対象物の加工中に、前記1つまたは複数の結合位置と異なる1つまたは複数の第2の結合位置に前記レーザービームを向けることにより、前記レーザービームのビームパラメータ積または開口数のうち少なくとも一方を変更するステップと、
請求項48に記載の方法。
【請求項58】
さらに、ビームエミッタから前記レーザービームを放射するステップ、を含み、
前記ビームエミッタは、
複数の分散ビームを放射する1つまたは複数のビームエミッタと、
分散素子に前記複数の分散ビームを集光する集光光学系と、
受信した集光ビームを受信し分散する分散素子と、
前記分散ビームを受信し、前記分散ビームの一部を前記入力レーザービームとして透過させ、および、前記分散素子に戻るよう前記分散ビームの第2の一部を反射するよう配置された部分反射出力カプラと、
を備え、
前記レーザービームは、複数の波長により構成される、
請求項48に記載の方法。
【請求項59】
前記分散素子は、回折格子を含む、
請求項58に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2018年11月12日に出願された米国仮特許出願第62/758,731号の利益および優先権を主張するものであり、その開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
様々な実施の形態において、本発明は、レーザーシステムおよび光ファイバーに関する。具体的には、制御可能なビームプロファイル、例えば、可変ビームパラメータ積を有するレーザーシステムおよび光ファイバーに関する。
【背景技術】
【0003】
高出力レーザーシステムは、溶接、切断、穴あけ、および材料加工のなどの多くの異なる用途に利用されている。このようなレーザーシステムには、一般的に、レーザー光を光ファイバー(または単に「ファイバー」)に結合するレーザーエミッタと、ファイバーからのレーザー光を加工対象物に集光する光学系と、が含まれる。光学系は、通常、最高品質のレーザービームを生成するよう、言い換えると、最も低いビームパラメータ積(BPP)のビームを生成するよう設計される。BPPは、レーザービームの発散角(半角)とビームの最も狭い点(すなわち、ビームウエスト、最小スポット径)の半径との積である。つまり、Dを焦点スポット(ウエスト)直径、NAを開口数、とすると、BPP=NA×D/2である。したがって、NAおよび/またはDの変化によりBPPを変化させることができる。BPPはレーザービームの品質と小さなスポットへの集光性とを数値化したものであり、一般的に、ミリメートル-ミリラジアン(mm-mrad)の単位で表される。ガウスビームは、レーザー光の波長を円周率(pi)で除算することで得られる、取り得る最低のBPPを有する。同じ波長での理想的なガウスビームのBPPに対する実際のビームのBPPの比率はMで表され、これは、波長に依存しないビーム品質の基準である。
【0004】
多くのレーザー加工用途において、所望のビームスポット径、発散角、およびビーム品質は、例えば、加工の種類および/または加工対象の材料の種類に応じて変化する場合がある。これは、特に、材料加工用途における産業用レーザーに当てはまる。例えば、低いBPP値、すなわち、より良いビーム品質は、薄い材料の切断に好適である場合がある。一方、長いBPP(すなわち、より悪いビーム品質)は、より厚い材料の切断に好適である場合がある。レーザーシステムのBPPを変更するために、出力光学系または光ファイバーを他の構成要素に交換する、および/または再調整する必要があり、これは、時間とコストのかかる処理であり、レーザーシステムの壊れやすい光学部品を誤って破損させてしまうことがある。したがって、光ファイバーの出力におけるレーザービームまたは光学系の調整を伴わない、レーザーシステムのBPPを変化させるための代替技術が求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の様々な実施の形態によると、光パワー損失を最小化または実質的に排除しながら、出力レーザービームのBPPおよび/または形状の変化を可能にするレーザーシステムおよび光ファイバーを提供する。本発明の実施の形態では、コア領域およびクラッド領域の複雑な構成を有する光ファイバーを提供する。同様に、レーザーエネルギーを例えば、その加工対象物に伝達するためにそのようなファイバーを利用するシステムを提供する。本発明の実施の形態にかかる例示的な光ファイバーは、(i)段階的な屈折率のサブ領域、(ii)段階的なプロファイルで異なる屈折率を有するサブ領域、または(iii)低屈折率バリア層、を組み込んだ環状のコア領域を特徴とする。したがって、本発明の実施の形態にかかる光ファイバーを利用することで、従来の光ファイバーでは達成不可能な、様々なBPPおよび/またはビーム形状を有する出口ビーム(exit beams)を形成することができる。
【0006】
本発明の実施の形態にかかる光ファイバーは、構造的には、本発明の原理を変更することなく、外部クラッドを超えて(すなわち、外側に)高屈折率および/または低屈折率の1つまたは複数の層を含んでもよい。このような追加の層は、クラッド、コート、または環状コアと呼ばれることもあるが、光を導かないこともある。このような変形は、本発明の範囲内である。本発明の様々な実施の形態にかかるファイバーの様々なコア層およびクラッド層は、実質的に純粋石英ガラス、および/または、フッ素、チタン、ゲルマニウム、および/またはボロンをドーピングした石英ガラスなどのガラスを含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。本発明の実施の形態にかかる光ファイバーの特定の層または領域に対して所望の屈折率を得ることは、当業者であれば過度の実験をすることなく(ドーピングなどの技術により)達成することができる。本明細書に記載される光ファイバーは、マルチモード光ファイバーであってもよい。
【0007】
本明細書において、「光学素子」は、特に明記のない限り、方向転換、反射、曲げ、または他の方法で電磁放射を光学的に操作する、レンズ、ミラー、プリズム、回折格子などのいずれかを示すことがある。本明細書において、ビームエミッタ、エミッタ、またはレーザーエミッタは、電磁ビームを生成するが自己共振する場合もしない場合もある、半導体素子などの任意の電磁ビーム生成装置を含む。また、電磁ビームには、ファイバーレーザー、ディスクレーザー、非半導体レーザーなどが含まれる。一般的に、それぞれのエミッタは、後方反射面、少なくとも1つの光学利得媒質、および前方反射面を含む。光学利得媒質は、電磁スペクトルの特定の部分に限定されないが、可視光線、赤外線、および/または紫外線であり得る電磁放射の利得を増加させる。エミッタは、複数のビームを放射するよう構成されたダイオードバーなどの複数のビームエミッタを含んでもよい、または本質的にそれにより構成されてもよい。本明細書における実施の形態で受信した入力ビームは、当技術分野で知られている様々な技術を使用して組み合わされた単一波長ビームまたは多重波長ビームであってもよい。本発明の実施の形態で生成された出力ビームは、単一波長ビームまたは多重波長ビームであってもよい。
【0008】
本発明の実施の形態は、分散素子を使用して組み合わせて多重波長ビームを形成する1つまたは複数のダイオードバーなどの複数のエミッタを含む波長合成技術(WBC)システムで使用することができる。WBCシステムにおけるそれぞれのエミッタは、個別に共振し、ビーム結合次元に沿った分散素子によりフィルタリングされる共通の部分反射出力カプラからの波長固有のフィードバックを通して安定化される。例示的なWBCシステムは、2000年2月4日に出願された米国特許第6,192,062号、1998年9月8日に出願された米国特許第6,208,679号、2011年8月25日に出願された米国特許第8,670,180号、および、2011年3月7日に出願された米国特許第8,559,107号に詳述されており、それらの開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている。WBCシステムの多重波長出力ビームは、例えば、BPP制御のために本発明の実施の形態と併せて入力ビームとして使用することができる。
【0009】
本発明の実施の形態に従って生成された出力ビームは、光で表面を検査するだけの光学技術(例えば、反射率測定)およびデータ伝送に使用される光学ビームと対照的に、加工対象物の表面を物理的に変化させるよう、および/または表面上または表面内にフィーチャー(a feature)を形成するよう、加工対象物を加工するために使用することができる。本発明の実施の形態にかかる例示的な加工には、切断、溶接、穴あけ、および、半田付けが含まれる。このように、本明細書に詳述される光ファイバーは、その出力端に、ファイバーから加工対象物に向かって出力ビームを集光するよう構成されたレーザーヘッドを有する。レーザーヘッドは、出力ビームを集光するおよび/またはコリメートする、および/またはビームの偏光および/または軌道を制御する1つまたは複数の光学素子を含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。レーザーヘッドは、加工対象物に向かっておよび/または加工対象物を配置することができる台(platform)または位置決め可能な構台(gantry)に向かって、出力ビームを放射する。
【0010】
本発明の様々な実施の形態ではまた、加工対象物の表面のすべてまたは実質的にすべてにレーザービームからの放射を照射するのではなく、1つまたは複数のスポットに、または、一次元の直線的または曲線的な加工経路に沿って、加工対象物を加工してもよい。一般的に、加工経路は、曲線的であっても直線的であってもよい。「直線的な」加工経路は、1つまたは複数の方向変化を特徴とすることがある。すなわち、直線的な加工経路は、必ずしも互いに平行ではない、2つ以上の実質的に直線であるセグメントから構成されてもよい。同様に、「曲線的な」加工経路は、それらの間で方向変化を有する複数の曲線であるセグメントから構成されてもよい。本発明の実施の形態にかかる他の加工経路は、それぞれのセグメントが直線的または曲線的であるセグメント化された経路を含む。任意の2つのセグメントの間に方向変化が存在してもよい。
【0011】
本発明の実施の形態では、様々な種類の加工技術または様々な種類の加工対象の材料に応じて性能を改善または最適化するために、ビーム形状および/またはBPPを変化させてもよい。本発明の実施の形態では、2015年2月26日に出願された米国特許出願第14/632,283号、2015年6月23日に出願された米国特許出願第14/747,073号、2015年9月14日に出願された米国特許出願第14/852,939号、2016年6月21日に出願された米国特許出願第15/188,076号、2017年4月5日に出願された米国特許出願第15/479,745号、および、2017年7月14日に出願された米国特許出願第15/649,841号、に記載されたBPPおよび/またはレーザービームの形状を変化させる様々な追加の技術を利用することができ、それぞれの開示内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0012】
一態様において、本発明の実施の形態は、センターコア、センターコアを取り囲む第1クラッド、第1クラッドを取り囲む環状コア、および環状コアを取り囲む第2クラッド、を含む、本質的にそれにより構成される、またはそれにより構成される、勾配ステップクラッド光ファイバーを特徴とする。センターコアは第1屈折率を有する。第1クラッドは、第1屈折率よりも小さい第2屈折率を有する。第2クラッドは、第1屈折率よりも小さい第3屈折率を有する。環状コアは、第1領域と第2領域とを含む、本質的にそれにより構成される、またはそれにより構成される。第1領域は、第2屈折率よりも大きい第4屈折率を有する。第2領域の屈折率は、(i)第4屈折率以下の第5屈折率と、(ii)第2屈折率以上の第6屈折率と、の間で変化する。
【0013】
本発明の実施の形態は、様々な組み合わせのいずれかで以下の1つまたは複数を含んでもよい。第2領域は、第2領域と第2クラッドとの間に配置されてもよい。第2領域は、第1領域と第2クラッドとの間に配置されてもよい。第2領域の屈折率の変化は、線形、非線形、放物線、多項式、または段階的であってもよい。第4屈折率は、第1屈折率に等しくてもよい。第4屈折率は、第1屈折率よりも大きくてもよい。第4屈折率は、第1屈折率よりも小さくてもよい。第2屈折率は、第3屈折率に等しくてもよい。第2屈折率は、第3屈折率よりも大きくてもよい。第2屈折率は、第3屈折率よりも小さくてもよい。第1領域の厚さは、第2領域の厚さに等しくてもよい。第1領域の厚さは、第2領域の厚さよりも小さくてもよい。第1領域の厚さは、第2領域の厚さよりも大きくてもよい。第5屈折率は、第4屈折率よりも小さくてもよい。第5屈折率は、第4屈折率に等しくてもよい。第6屈折率は、第2屈折率よりも大きくてもよい。第6屈折率は、第2屈折率に等しくてもよい。
【0014】
別の態様において、本発明の実施の形態は、センターコア、センターコアを取り囲む環状コア、および環状コアを取り囲む第1クラッドを含む、本質的にそれにより構成される、またはそれにより構成される勾配ステップクラッド光ファイバーを特徴とする。センターコアは、第1屈折率を有する。第1クラッドは、第1屈折率よりも小さい第2屈折率を有する。環状コアは、第1領域と第2領域とを含む、本質的にそれにより構成される、またはそれにより構成される。第1領域は、第2屈折率よりも大きい第3屈折率を有する。第2領域の屈折率は、(i)第3屈折率以下の第4屈折率と、(ii)第4屈折率よりも小さい第5屈折率と、の間で変化する。
【0015】
本発明の実施の形態は、様々な組み合わせのいずれかで以下の1つまたは複数を含んでもよい。第1領域は、第2領域と第1クラッドとの間に配置されてもよい。第2領域は、第1領域と第1クラッドとの間に配置されてもよい。第2領域の屈折率の変化は、線形、非線形、放物線、多項式、または段階的であってもよい。第3屈折率は、第1屈折率に等しくてもよい。第3屈折率は、第1屈折率よりも大きくてもよい。第3屈折率は、第1屈折率よりも小さくてもよい。第5屈折率は、第2屈折率に等しくてもよい。第5屈折率は、第2屈折率よりも大きくてもよい。第5屈折率は、第2屈折率よりも小さくてもよい。第1領域の厚さは、第2領域の厚さに等しくてもよい。第1領域の厚さは、第2領域の厚さよりも小さくてもよい。第1領域の厚さは、第2領域の厚さよりも大きくてもよい。第4屈折率は、第3屈折率よりも小さくてもよい。第4屈折率は、第3屈折率に等しくてもよい。
【0016】
さらに別の態様において、本発明の実施の形態は、センターコア、センターコアを取り囲む第1クラッド、第1クラッドを取り囲む環状コア、および、環状コアを取り囲む第2クラッドを含む、本質的にそれにより構成される、またはそれにより構成されるマルチステップクラッド光ファイバーを特徴とする。センターコアは、第1屈折率を有する。第1クラッドは、第1屈折率よりも小さい第2屈折率を有する。第2クラッドは、第1屈折率よりも小さい第3屈折率を有する。環状コアは、第1領域と第2領域とを含む、本質的にそれにより構成される、またはそれにより構成される。第1領域は、第2屈折率よりも大きい第4屈折率を有する。第2領域は、第2屈折率よりも大きく第4屈折率よりも小さい第5屈折率を有する。
【0017】
本発明の実施の形態は、様々な組み合わせのいずれかで以下の1つまたは複数を含んでもよい。第1領域は、第2領域と第2クラッドとの間に配置されてもよい。第2領域は、第1領域と第2クラッドとの間に配置されてもよい。第2屈折率は、第3屈折率に等しくてもよい。第2屈折率は、第3屈折率よりも大きくてもよい。第2屈折率は、第3屈折率よりも小さくてもよい。第4屈折率は、第1屈折率に等しくてもよい。第4屈折率は、第1屈折率よりも大きくてもよい。第4屈折率は、第1屈折率よりも小さくてもよい。第5屈折率は、第1屈折率に等しくてもよい。第5屈折率は、第1屈折率よりも大きくてもよい。第5屈折率は、第1屈折率よりも小さくてもよい。第1領域の厚さは、第2領域の厚さに等しくてもよい。第1領域の厚さは、第2領域の厚さよりも小さくてもよい。第1領域の厚さは、第2領域の厚さよりも大きくてもよい。
【0018】
別の態様において、本発明の実施の形態は、センターコア、センターコアを取り囲む第1クラッド、第1クラッドを取り囲む環状コア、および、環状コアを取り囲む第2クラッドを含む、本質的にそれにより構成される、またはそれにより構成されるバリアステップクラッド光ファイバーを特徴とする。センターコアは、第1屈折率を有する。第1クラッドは、第1屈折率よりも小さい第2屈折率を有する。第2クラッドは、第1屈折率よりも小さい第3屈折率を有する。環状コアは、第1領域、第2領域、および第1領域と第2領域との間に配置される第3領域を含む、本質的にそれにより構成される、またはそれにより構成される。第1領域は、第2屈折率よりも大きい第4屈折率を有する。第2領域は、第2屈折率よりも大きい第5屈折率を有する。第3領域は、第4屈折率および第5屈折率よりも小さい第6屈折率を有する。
【0019】
本発明の実施の形態は、様々な組み合わせのいずれかで以下の1つまたは複数を含んでもよい。環状コアは、第2屈折率よりも大きい第7屈折率を有する第4領域と、第2領域と第4領域との間に配置され、第5屈折率および第7屈折率よりも小さい第8屈折率を有する第5領域とを含んでもよい。第7屈折率は、第4屈折率および/または第5屈折率に等しくてもよい。第7屈折率は、第4屈折率および/または第5屈折率よりも大きくてもよい。第7屈折率は、第4屈折率および/または第5屈折率よりも小さくてもよい。第8屈折率は、第6屈折率に等しくてもよい。第8屈折率は、第6屈折率よりも大きくてもよい。第8屈折率は、第6屈折率よりも小さくてもよい。第5領域の厚さは、第3領域の厚さに等しくてもよい。第5領域の厚さは、第3領域の厚さよりも小さくてもよい。第5領域の厚さは、第3領域の厚さよりも大きくてもよい。
【0020】
第4屈折率は、第5屈折率に等しくてもよい。第4屈折率は、第5屈折率よりも大きくてもよい。第4屈折率は、第5屈折率よりも小さくてもよい。第4屈折率は、第1屈折率に等しくてもよい。第4屈折率は、第1屈折率よりも大きくてもよい。第4屈折率は、第1屈折率よりも小さくてもよい。第5屈折率は、第1屈折率に等しくてもよい。第5屈折率は、第1屈折率よりも大きくてもよい。第5屈折率は、第1屈折率よりも小さくてもよい。第6屈折率は、第2屈折率に等しくてもよい。第6屈折率は、第2屈折率よりも大きくてもよい。第6屈折率は、第2屈折率よりも小さくてもよい。第1領域の厚さは、第2領域の厚さに等しくてもよい。第1領域の厚さは、第2領域の厚さよりも小さくてもよい。第1領域の厚さは、第2領域の厚さよりも大きくてもよい。第3領域の厚さは、第1領域の厚さおよび/または第2領域の厚さよりも小さくてもよい。第3領域の厚さは、第1クラッドの厚さに等しくてもよい。第3領域の厚さは、第1クラッドの厚さよりも小さくてもよい。第3領域の厚さは、第1クラッドの厚さよりも大きくてもよい。
【0021】
さらに別の態様において、本発明の実施の形態は、センターコア、センターコアを取り囲む第1クラッド、第1クラッドを取り囲む環状コア、環状コアを取り囲む第2クラッドを含む、本質的にそれにより構成される、またはそれにより構成されるバリアステップクラッド光ファイバーを特徴とする。センターコアの屈折率は、センターコアの中心部分における第1屈折率と等しい。センターコアの屈折率は、センターコアの半径または厚さの少なくとも一部にわたって、第1屈折率よりも小さい第2屈折率まで低下する。第1クラッドは、第1屈折率よりも小さい第3屈折率を有する。第2クラッドは、第1屈折率よりも小さい第4屈折率を有する。環状コアは、第1領域、第2領域、および第1領域と第2領域との間に配置される第3領域を含む、本質的にそれにより構成される、またはそれにより構成される。第1領域は、第3屈折率よりも大きい第5屈折率を有する。第2領域は、第3屈折率よりも大きい第6屈折率を有する。第3領域は、第5屈折率および第6屈折率よりも小さい第7屈折率を有する。
【0022】
本発明の実施の形態は、様々な組み合わせのいずれかで以下の1つまたは複数を含んでもよい。第2屈折率は、第3屈折率に等しくてもよい。第2屈折率は、第3屈折率よりも大きくてもよい。第5屈折率は、第6屈折率に等しくてもよい。第5屈折率は、第6屈折率よりも大きくてもよい。第5屈折率は、第6屈折率よりも小さくてもよい。第5屈折率は、第1屈折率に等しくてもよい。第5屈折率は、第1屈折率よりも大きくてもよい。第5屈折率は、第1屈折率よりも小さくてもよい。第5屈折率は、第2屈折率に等しくてもよい。第5屈折率は、第2屈折率よりも大きくてもよい。第5屈折率は、第2屈折率よりも小さくてもよい。第6屈折率は、第1屈折率に等しくてもよい。第6屈折率は、第1屈折率よりも大きくてもよい。第6屈折率は、第1屈折率よりも小さくてもよい。第6屈折率は、第2屈折率に等しくてもよい。第6屈折率は、第2屈折率よりも大きくてもよい。第6屈折率は、第2屈折率よりも小さくてもよい。第7屈折率は、第3屈折率に等しくてもよい。第7屈折率は、第3屈折率よりも大きくてもよい。第7屈折率は、第3屈折率よりも小さくてもよい。第1領域の厚さは、第2領域の厚さに等しくてもよい。第1領域の厚さは、第2領域の厚さよりも小さくてもよい。第1領域の厚さは、第2領域の厚さよりも大きくてもよい。第3領域の厚さは、第1領域の厚さよりも小さくてもよい。第3領域の厚さは、第2領域の厚さよりも小さくてもよい。第3領域の厚さは、第1クラッドの厚さに等しくてもよい。第3領域の厚さは、第1クラッドの厚さよりも小さくてもよい。第3領域の厚さは、第1クラッドの厚さよりも大きくてもよい。
【0023】
別の態様において、本発明の実施の形態は、入力レーザービームの放射用ビーム源、入力端と入力端と反対側の出力端とを有する光ファイバー、結合機構(in-coupling mechanism)、および制御部を含む、本質的にそれにより構成される、またはそれにより構成される、レーザーシステムを特徴とする。光ファイバーは、上述のまたは本明細書に記載される任意の光ファイバーを含む、本質的にそれにより構成される、またはそれにより構成される。結合機構は、入力レーザービームを受信し、入力レーザービームを光ファイバーの入力端に向ける。入力レーザービームは、光ファイバーに結合され(in-coupled)、光ファイバーの出力端から出力ビームとして放射される。制御部は、光ファイバーに対して結合機構を制御して、光ファイバーの入力端における1つまたは複数の結合位置(in-coupling location)に入力レーザービームを向ける。出力ビームのビームパラメータ積および/または開口数および/またはビーム形状は、1つまたは複数の結合位置により少なくとも部分的に決定される。
【0024】
本発明の実施の形態は、様々な組み合わせのいずれかで以下の1つまたは複数を含んでもよい。結合機構は、入力レーザービームを光ファイバーの入力端に向かって集光する1つまたは複数の光学素子を含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。光学素子は、制御部に応答して、(i)入力レーザービームの伝播方向に実質的に平行な軸、および/または(ii)入力レーザービームの伝播方向に実質的に垂直な1つまたは複数の軸、に沿って移動可能であってもよい。結合機構は、入力レーザービームを受信し、光ファイバーに入力レーザービームを向けるステアリング機構を含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。ステアリング機構は、1つまたは複数のリフレクタを含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。光学素子は、1つまたは複数のレンズ、1つまたは複数のミラー、および/または1つまたは複数のプリズムを含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。結合機構は、入力レーザービームを受信し、光ファイバーに向けて入力レーザービームを反射させるリフレクタを含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。リフレクタは、制御部に応答して回転可能(すなわち、傾斜可能)であってもよい。結合機構は、リフレクタから入力レーザービームを受信して光ファイバーに向けて入力レーザービームを集光する光学素子を含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。光学素子は、制御部に応答して、(i)入力レーザービームの伝播方向に実質的に平行な軸、および/または(ii)入力レーザービームの伝播方向に実質的に垂直な1つまたは複数の軸、に沿って移動可能であってもよい。光学素子は、1つまたは複数のレンズ、1つまたは複数のミラー、および/または1つまたは複数のプリズムを含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。ビーム源は、制御部に応答してもよい。制御部は、入力レーザービームが異なる結合位置の間に向けられる場合に、入力レーザービームの出力パワーを変調することなく、複数の異なる結合位置に入力レーザービームを向けるよう構成されてもよい。制御部は、第1クラッドに少なくとも部分的に(または完全に)重複する少なくとも1つの結合位置に、入力レーザービームを向けるよう構成されてもよい。第1クラッドに結合されるビームエネルギーは、出力ビームの少なくとも一部を形成してもよい。制御部は、第1領域および/または第2領域に少なくとも部分的に(または完全に)重複する少なくとも1つの結合位置に入力レーザービームを向けるよう構成されてもよい。その中に結合されるビームエネルギーは、出力ビームの少なくとも一部を形成してもよい。レーザーヘッドは、光ファイバーの出力端に結合されてもよい。レーザーヘッドは、加工対象物に出力ビームを向けてそれを加工してもよい。制御部は、(i)加工対象物で実施される加工の種類、(ii)加工対象物の特性、および/または(iii)加工対象物が加工される加工経路に基づいて、光ファイバーの入力端の1つまたは複数の結合位置に、入力レーザービームを向けるよう構成されてもよい。加工の種類は、切断、溶接、エッチング、焼きなまし、穴あけ、半田付け、またはろう付け、からなるリストから選択することができる。加工対象物の特性は、加工対象物の厚さ、加工対象物の組成、加工対象物の反射率、および/または加工対象物のトポグラフィを含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。制御部は、加工経路における1つまたは複数の方向変化に基づいて、光ファイバーの入力端の1つまたは複数の結合位置に、入力レーザービームを向けるよう構成されてもよい。ビーム源は、(i)複数の分散ビームを放射する1つまたは複数のビームエミッタ、(ii)分散素子に向けて複数のビームを集光する集光光学系、(iii)受信した集光ビームを受信し分散する分散素子、および、(iv)分散ビームを受信し、分散ビームの一部を入力レーザービームとして透過させ、および、分散素子に(そして、例えば、その放射波長を安定させるために1つまたは複数のビームエミッタに)戻るよう分散ビームの第2の一部を反射するよう配置された部分反射出力カプラを含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。入力レーザービームは、複数の波長により構成されてもよい。分散素子は、回折格子(例えば、透過回折格子または反射回折格子)を含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。
【0025】
さらに別の態様において、本発明の実施の形態は、レーザービームで加工対象物を加工する方法を特徴とする。入力端と入力端と反対側の出力端とを有する光ファイバーが提供される。光ファイバーは、上述のまたは本明細書に記載される光ファイバーのいずれかを含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。加工対象物は、光ファイバーの出力端に近接して配置される。ビームパラメータ積、開口数、および/またはビーム形状は、(i)加工対象物で実施される加工の種類、(ii)加工対象物の特性、および/または(iii)加工対象物が加工される加工経路に少なくとも部分的に基づいて、加工対象物の加工のために決定される。レーザービームは、光ファイバーの入力端における1つまたは複数の結合位置に向けられて、光ファイバーの出力端から放射されるレーザービームのビームパラメータ積、開口数、および/またはビーム形状を選択する。加工対象物は、光ファイバーの出力端から放射されるレーザービームで加工される。
【0026】
本発明の実施の形態は、様々な組み合わせのいずれかで以下の1つまたは複数を含んでもよい。加工対象物を加工することは、加工対象物の表面の少なくとも一部を物理的に変化させることを含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。加工対象物を加工することは、切断、溶接、エッチング、焼きなまし、穴あけ、半田付け、および/またはろう付けを含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。ビームパラメータ積、開口数、および/またはビーム形状は、加工対象物の特性に少なくとも部分的に基づいて決定されてもよい。加工対象物の特性は、加工対象物の厚さ、加工対象物の組成、加工対象物の反射率、および/または加工対象物のトポグラフィを含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。ビームパラメータ積、開口数、および/またはビーム形状は、加工経路における1つまたは複数の方向変化に少なくとも部分的に基づいて決定されてもよい。少なくとも1つの結合位置は、第1クラッドに少なくとも部分的に重複していてもよい。第1クラッドに結合されるビームエネルギーは、出力ビームの少なくとも一部を形成してもよい。少なくとも1つの結合位置は、第1領域および/または第2領域に少なくとも部分的に重複していてもよい。その中に結合されたビームエネルギーは、出力ビームの少なくとも一部を形成してもよい。光ファイバーの入力端における1つまたは複数の結合位置にレーザービームを向けることは、(i)1つまたは複数リフレクタでレーザービームを反射させること、および/または(ii)1つまたは複数の光学素子でレーザービームを集光することを含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。1つまたは複数の結合位置は、複数の異なる結合位置を含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。加工対象物の加工中に、1つまたは複数の結合位置と異なる1つまたは複数の第2の結合位置に向けられることにより、レーザービームのビームパラメータ積、開口数、および/またはビーム形状が変更されてもよい。レーザービームは、(i)複数の分散ビームを放射する1つまたは複数のビームエミッタ、(ii)分散素子に向けて複数のビームを集光する集光光学系、(iii)受信した集光ビームを受信し分散する分散素子、および、(iv)分散ビームを受信し、分散ビームの一部をレーザービームとして透過させ、および、分散素子に(そして、例えば、その放射波長を安定させるためにビームエミッタに)戻るよう分散ビームの第2の一部を反射するよう配置された部分反射出力カプラ、を含む、本質的にそれにより構成される、またはそれにより構成される、ビームエミッタから放射されてもよい。レーザービームは、複数の波長により構成されてもよい。分散素子は、回折格子(例えば、透過回折格子または反射回折格子)を含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。
【0027】
これらのおよび他の目的は、本明細書に記載される本発明の利点および特徴とともに、以下の説明、添付の図面、および特許請求の範囲を参照することによって、より明らかになるであろう。さらに、本明細書に記載される様々な実施の形態の特徴は、相互排他的なものではなく、様々な組み合わせおよび変形が存在することがあることを理解されたい。本明細書では、「実質的に(substantially)」という用語は、±10%を意味し、いくつかの実施の形態では±5%を意味する。「本質的に構成される(consists essentially of)」という用語は、本明細書で特に記載されていない限り、機能に貢献する他の材料を除いたものを意味する。それにもかかわらず、そのような他の物質は、集合的にまたは個別に、微量に存在することがある。本明細書において、特に断りのない限り、「放射(radiation)」および「光(light)」という単語は互換的に使用される。本明細書において、「下流(downstream)」または「光学的に下流(optically downstream)」は、光ビームが第1要素に到達した後に当たる第2要素の相対位置を示し、第1要素が第2要素の「上流(upstream)」または「光学的に上流(optically upstream)」である。本明細書において、2つの構成要素の間の「光学的距離(optical distance)」は、光ビームが実際に移動する2つの構成要素間の距離である。光学的距離は、2つの構成要素の物理的距離に等しいことがある。しかし、例えば、ミラーからの反射、または1つの構成要素から他の構成要素へ移動する光の伝播方向における他の変化に起因して、必ずしもそうではないこともある。特に断りのない限り、本明細書で使用される距離は「光学的距離」であるとみなすことができる。
【0028】
図面において、類似の参照符号は、通常、異なる図を通して同じ部分を指している。また、図面は必ずしも縮尺通りではなく、本発明の原理を説明することに重点が置かれている。以下の説明では、本発明の様々な実施の形態が以下の図面を参照して説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1A】従来のダブルクラッド光ファイバーの様々な層の屈折率を示す概略図
図1B図1Aの光ファイバーの断面図
図2】従来のステップクラッド光ファイバーの様々な層の屈折率を示す概略図
図3】本発明の様々な実施の形態にかかる光ファイバーの様々な層の屈折率を示す概略図
図4】本発明の様々な実施の形態にかかる光ファイバーの様々な層の屈折率を示す概略図
図5A】本発明の様々な実施の形態にかかる光ファイバーの様々な層の屈折率を示す概略図
図5B】本発明の様々な実施の形態にかかる光ファイバーの様々な層の屈折率を示す概略図
図6】本発明の実施の形態にかかる光ファイバーを使用したレーザーシステムの一部を示す概略図
図7A】本発明の様々な実施の形態の効果を示すシミュレーション用の例示的な入力ビームを示す概略図
図7B図7Aの入力ビームを使用したシミュレーション用の例示的なファイバーパラメータを示す表
図8図7Aおよび図7Bの入力ビームおよびファイバーパラメータを使用したシミュレーションにおいて、本発明の実施の形態にかかる光ファイバーを使用した場合と従来のステップクラッド光ファイバーを使用した場合とを比較した、リフレクタの傾斜の関数としてのビームパラメータ積のシミュレーション結果を示すグラフ
図9A図8のグラフに示された異なるミラー傾斜における、本発明の実施の形態にかかる光ファイバーから発せられたレーザービームの平面図
図9B図8のグラフに示された異なるミラー傾斜における、本発明の実施の形態にかかる光ファイバーから発せられたレーザービームの平面図
図9C図8のグラフに示された異なるミラー傾斜における、本発明の実施の形態にかかる光ファイバーから発せられたレーザービームの平面図
図9D図8のグラフに示された異なるミラー傾斜における、本発明の実施の形態にかかる光ファイバーから発せられたレーザービームの平面図
図9E図8のグラフに示された異なるミラー傾斜における、本発明の実施の形態にかかる光ファイバーから発せられたレーザービームの平面図
図10A図8のグラフに示された異なるミラー傾斜における、従来のステップクラッド光ファイバーから発せられたレーザービームの平面図
図10B図8のグラフに示された異なるミラー傾斜における、従来のステップクラッド光ファイバーから発せられたレーザービームの平面図
図10C図8のグラフに示された異なるミラー傾斜における、従来のステップクラッド光ファイバーから発せられたレーザービームの平面図
図10D図8のグラフに示された異なるミラー傾斜における、従来のステップクラッド光ファイバーから発せられたレーザービームの平面図
図11】本発明の実施の形態にかかる波長合成(WBC)共振器を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1Aおよび図1Bは、直径Dおよび屈折率nのセンターコア110と、直径Dおよび屈折率nの内部クラッド115と、直径Dおよび屈折率nの環状コア120と、屈折率nの外部クラッド125と、を有する従来のダブルクラッドファイバー100を示す。このように、屈折率nは屈折率nに等しく、屈折率nは屈折率nと等しい。したがって、センターコア110と環状コア120とは、sqrt(n -n )((n -n )の平方根)と等しい同じNA(開口数)を有する。図1Aは、ファイバー100の直径方向の屈折率を示し、図1Bは、ファイバー100自体の概略断面図である。
【0031】
ダブルクラッドファイバー100は、通常、図1Aに示す位置Aまたは位置Bのいずれかまたは両方にレーザービームを結合することにより使用される。つまり、レーザービームは、センターコア110および/または環状コア120に結合され得る。したがって、ファイバー100を使用するシステムは、ファイバー100の出口で有効スポット径を変化させることにより、出力ビームのBPPを変化させるが、出力NAは変化しない。ファイバー100を使用することで、出力ビームの形状は、セントラルスポット(すべてのレーザーパワーが位置Aに結合される場合)、環状リング(すべてのレーザーパワーが位置Bに結合される場合)、またはその2つの混合(レーザーパワーが位置Aおよび位置Bに結合される場合)に制限される。
【0032】
重要なことに、内部クラッド115に結合されたレーザーパワーは、通常、完全に失われる。内部クラッド115に結合されたパワーは、従来非常に薄く、外部クラッド125に広がり、モードストリッパにより除去される。高出力レーザー伝送用のファイバーケーブルは、通常、外部クラッドからの放射を除去するためモードストリッパを有する。モードストリッパは、限られたレベルのレーザーパワーのみを扱うことができるため、外部クラッド125における過剰なパワーは、容易にモードストリッパおよびファイバー自体に損傷を与えることがある。モードストリッパのないファイバーでは、内部クラッド115に結合されたパワーは、ファイバー出力において、0ではない大口径背景放射となる。このような背景パワーは、下流の光学系に損傷を与えることがあり、通常無効な出力パワーであり、多くの用途で有害でさえあり得る。最後に、外部クラッドは通常、1つまたは複数のプラスチックコーティングで囲まれているため、外部クラッドに延びる大量のパワーが、結果としてファイバーの燃焼を引き起こすことがある。
【0033】
したがって、ファイバー100を使用するレーザーシステムは、位置Aと位置Bとの間のレーザーパワーの連続的なシフト(すなわち、レーザービームのパワーを有する内部クラッド115を横断すること)を回避する。このようなレーザーシステムは、通常、2つの異なるレーザー(すなわち、位置Aおよび位置Bのそれぞれに1つ)、または、複雑な可変パワー光分割システムのいずれかを使用し、内部クラッド115を照射することなく、位置Aと位置Bとの間にレーザーパワーを割り当てる。
【0034】
図2は、2017年4月5日に出願された米国特許第10,088,632号(’632号特許)に詳述されている、従来のステップクラッド光ファイバー200の対応する構造を示し、その開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている。図示されているように、ファイバー200は、直径Dおよび屈折率nを有するセンターコア210と、直径Dおよび屈折率nを有する第1クラッド215と、直径Dおよび屈折率nを有する環状コア220と、屈折率nを有する外部クラッド225と、を備えることを特徴とする。図示されている実施の形態において、屈折率nは屈折率nに等しく、屈折率nは屈折率nよりも小さい。’632号特許に詳述されているように、ファイバー200は、ファイバー100よりも動的に出力レーザービームを形成するために使用することができる。例えば、レーザーエネルギーをセンターコア210および/または環状コア220に結合することを可能にすることに加えて、ファイバー200は、一部のまたはすべてのレーザーパワーを第1クラッド215に結合させることも可能にする。
【0035】
具体的には、第1クラッド215に結合したレーザーパワーは失われず、そのエネルギーは通常、ファイバー200の中央(すなわち、センターコア210内)から環状コア220の外側の境界(すなわち、環状コア220と外部クラッド225との間の接触面)までの全領域に広がる。最初に第1クラッド215に結合するが、センターコア210および環状コア220から出るレーザービームは、NAout=sqrt(NAin +(n -n ))により計算される、入力NAinよりも大きい出力NAoutを有する。全体の出力NAに対する拡大されたNAの寄与は、第1クラッド215に結合したパワーの割合、およびセンターコア210および環状コア220の領域の合計に対する第1クラッド215の断面領域の比率にも依存する。加えて、外部クラッド225へのレーザーエネルギーの漏洩を回避するために、ファイバー200で使用されるレーザー入力NAinは、通常、第1クラッド215のNAよりも小さく、NAinはsqrt(n -n )と等しい。
【0036】
ファイバー100と比較して、ファイバー200は、ビーム形成の点で様々な利点を提供する。例えば、ファイバー200を使用するシステムは、入力NAを変えずにファイバー出口での有効スポット径およびNAの両方を変化させることにより、ビームのBPPを変化させる。加えて、ファイバー100と比較して、ファイバー200は、同じセンターコアおよび環状コアの直径に対して、広い範囲でBPPを変化させる。ファイバー200はまた、第1クラッド215に対するレーザーパワーの受容により追加のビーム形状の形成を可能にする。最後に、入力レーザービームエネルギーは、第1クラッド215を横断して、センターコア210と環状コア220との間で連続的にシフトされ得る。したがって、ファイバー200を使用するシステムは、入力レーザービームに対するデュアル入力レーザーまたは複雑なレーザーパワー分割システムを必要としない。
【0037】
ステップクラッド光ファイバー200は従来のデュアルコアファイバー100に対する多くの利点を有するが、本発明の実施の形態では、従来のステップクラッドファイバー200では実現できない追加の利点を提供する。図3は、本発明の実施の形態にかかる勾配ステップクラッド光ファイバー300の構造を示す。図示されているように、ファイバー300は、直径Dおよび屈折率nを有するセンターコア310と、直径Dおよび屈折率nを有する第1クラッド315と、直径Dを有する環状コア320と、屈折率nを有する外部クラッド325と、を備えることを特徴とする。図2に示すステップクラッドファイバー200と同様に、第1クラッド315は、屈折率nよりも小さく屈折率nよりも大きい中間屈折率nを有していてもよい。様々な実施の形態において、屈折率nと屈折率nとの間の差異により、センターコア310のNAが決定される。センターコア310のNAは、NAcore=sqrt(n -n )により計算される。屈折率nと屈折率nとの間の差異により、ファイバー300の全体のNAが少なくとも部分的に決定される。ファイバー300の全体のNAは、NAfiber=sqrt(n -n )により計算される。屈折率nは屈折率nよりも大きいため、NAfiberはNAcoreよりも大きい。
【0038】
様々な実施の形態において、環状コア320は、2つの異なる領域を含む、本質的にそれにより構成される、またはそれにより構成される。図3に示すように、環状コア320は、グレーデッドインデックス(graded-index)領域320gと、屈折率nを有するコンスタントインデックス(constant-index)領域とを備えることを特徴としてもよい。グレーデッドインデックス領域320gにおいて、屈折率は、低屈折率nと高屈折率nとの間で変化する。様々な実施の形態において、低屈折率nは、第1クラッド315の屈折率nとほぼ等しいかそれより高くてもよい。高屈折率nは、コンスタントインデックス領域の屈折率nにほぼ等しいかそれよりも低くてもよい。様々な実施の形態において、図3に示すように、屈折率nは屈折率nとほぼ等しくてもよい。様々な実施の形態において、屈折率nは屈折率nよりも大きくてもよい。屈折率nと屈折率nとのこれらの関係は、本明細書に記載される本発明の実施の形態にかかる光ファイバーのいずれにも適用することができる。
【0039】
本発明の様々な実施の形態によると、コアおよびクラッド領域の直径は、レーザー光源の様々な特性(例えば、出力パワー)、および/または光ファイバーにより伝送される出力ビームの所望のBPP範囲に少なくとも部分的に依存してもよい。例えば、センターコアの直径Dが約100μmの場合、約3.5mm-mradのBPPを有するレーザー光源と組み合わせると、通常、約4mm-mradの最小BPPを有する比較的低出力NA(約0.09)が得られる。例を続けると、第1クラッド315に、および/またはグレーデッドインデックス領域320g(例えば、低屈折率部分)に、いくつかのレーザーパワーが結合される場合に起こり得るNAの拡大を考慮しないと、所望のBPP変動範囲が約6倍である場合、環状コア320の直径Dは約600μmである。センターコア310のNAが約0.12であり、レーザー入力NAが約0.085であるとすると、拡大したNAは、約0.147(=sqrt(0.12×0.12+0.085×0.085))である。それは、入力NAよりも1.7倍大きい。上述のように、様々な実施の形態において、すべての入力パワーが低屈折率領域に結合される、または高屈折率領域から出るわけではないため、全体の出力NAの有効な拡大は、この1.7倍よりも小さくてもよい。全体のNA拡大が約1.5であるとすると、同じ所望のBPP変動範囲を達成するために、環状コアの直径は約400μmに縮小されてもよい。環状コア直径をより小さくすると、出力ビームの強度がより高くなる。それにより、多くのハイパワーレーザー用途において有利になる可能性がある。様々な実施の形態において、直径Dに対する直径Dの比率は、約2.5から約8の範囲、または約3から約6の範囲である。この比率は、本明細書に記載されるすべての異なる光ファイバーの実施の形態に適用することができる。
【0040】
様々な実施の形態において、第1クラッド315の厚さ(すなわち、((D-D)/2))は、直径Dの約1/2よりも小さくてもよい(すなわち、約D/2よりも小さくてもよい)。この第1クラッドの厚さは、本明細書に記載されるすべての異なる光ファイバーの実施の形態に適用することができる。光ファイバー300では、第1クラッド315の厚さは、例えば、グレーデッドインデックス領域320gの低屈折率部分の存在に起因して、例えば、直径Dの約25%、約10%、または約5%よりもさらに小さくてもよい。
【0041】
有利には、グレーデッドインデックス領域320gを含む環状コア320の屈折率プロファイルに結合されたレーザーエネルギーは、環状コア320における入力位置に応じて、異なる有効直径および幅を有する環状ビームを有する出力ビームをもたらす。様々な実施の形態において、グレーデッドインデックス領域320gは、異なるNAを有する入力ビームの内部全反射の異なる臨界角の接触面位置を提供し、可能にする。例えば、環状コア320のコンスタントインデックス領域に結合された入力NAinを有するレーザーパワーは、通常、環状コア320の全体には広がらないが、むしろ、屈折率n(屈折率nよりも大きい)よりも大きい屈折率を有するより限られた領域内に含まれる。ここで、屈折率nは、sqrt(n -n )=NAinを満たす。言い換えると、環状コア320の屈折率nを有する部分は、光線ストッパーとして機能する。同様に、NAドメイン内の入力パワーの異なる部分は、0からNAinまでの異なる入力NA範囲を有する。したがって、これらの異なる部分は、環状コア320内の異なる部分(すなわち、円筒形の「接触面」)により「ブロック」される。一般的に、高屈折率nを有する位置yにおいて環状コア320に結合された入力NA(NAin以下である)を有するz部分は、屈折率nよりも大きく、sqrt(n -n )=NAを満たす屈折率を有する環状コア320の体積内に閉じ込められる。この式は、本発明のすべての実施の形態に適用される。この一般命題は、本明細書に記載される本発明のあらゆる異なる実施の形態に適用することができる。
【0042】
様々な実施の形態において、図2に示される従来のステップクラッド光ファイバー200と比較して、勾配ステップクラッド光ファイバー300は、より多様なビーム形状を提供し、したがって、多様な用途、およびその出力ビームにより加工される加工対象物の要求を満たすよう展開することができる。上述の一般式が示すように、入力位置(y)の変化により、通常、強度および幅の異なる断面プロファイルを有する出力ビームにおいて異なる環状リングが生じる。入力位置の変化はまた、特にグレーデッドインデックス領域320gが環状コア320の外端部またはその近くに配置される場合、異なる有効直径の環状リングも生成することがある。従来のファイバー(例えば、光ファイバー200)では、そのようなファイバーの環状コア領域に結合されたレーザーパワーが環状コア領域の全体にほぼ均等に広がるため、そのようなダイナミクスは見られない。
【0043】
さらに、図3において、位置Aと位置Bとの間の両矢印に示すように、レーザー入力NAinがsqrt(n -n )と等しい第1クラッド315のNAよりも大きくないと仮定すると、勾配ステップクラッド光ファイバー300により、レーザー入力スポットを、感知できるほどのパワー損失なく位置Aから位置Bまで連続的にシフトさせることができる。
【0044】
様々な実施の形態において、グレーデッドインデックス領域320gの屈折率プロファイル(すなわち、位置の関数としての屈折率の変化)は、図3に示すように、実質的に線形の勾配であってもよい。他の実施の形態において、プロファイルは、放物線、平方根、多項式、段階的(すなわち、屈折率が離散的な段階で構成される)、または他の単調曲線を含む他の形状であってもよい。様々な実施の形態において、グレーデッドインデックス領域320gは、図3に示すように、第1クラッド315と環状コア320のコンスタントインデックス領域との間に配置されてもよい。他の実施の形態において、グレーデッドインデックス領域320gは、代わりに、コンスタントインデックス領域と外部クラッド325との間に配置されてもよい。または、グレーデッドインデックス領域320gは、コンスタントインデックス領域の両側に配置されてもよい。そのような実施の形態において、コンスタントインデックス領域の屈折率は、図3に示すように、屈折率nと屈折率nとの間であってもよい。
【0045】
様々な実施の形態において、環状クラッド320は、その全体がグレーデッドインデックス領域320gで構成されてもよい。つまり、環状クラッド320のコンスタントインデックス領域の幅がほぼ0であってもよい。加えて、または代わりに、グレーデッドインデックス領域320gは、センターコア310に接触するよう、延びていてもよい。すなわち、第1クラッド315の幅がほぼ0であってもよい。様々な実施の形態において、環状コア320内の屈折率nおよび/または屈折率nは、屈折率n、すなわち、センターコア310の屈折率よりも小さくても、大きくても、またはほぼ等しくてもよい。最後に、図3には示されていないが、勾配ステップクラッド光ファイバー300はまた、外部クラッド325の外側に配置される1つまたは複数の追加のクラッド層を含んでいてもよい。そのようなクラッド(コーティング層を含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい)は、主に保護的な性質を有してもよく、したがって、その中でレーザーエネルギーが直接伝送しなくてもよい。そのような層の屈折率は、外部クラッド325の屈折率である屈折率nよりも小さくてもよい。他の実施の形態において、そのような層の屈折率は、屈折率nよりも大きくてもよい。様々な実施の形態において、光ファイバーは、外部クラッド325を直接取り囲み、センターコアの屈折率とほぼ同じ屈折率を有する外部ガラス層と、そこに配置され、屈折率nよりも小さい屈折率をそれぞれ有する1つまたは複数の(例えば、1つまたは2つの)コーティング層と、を有する。
【0046】
図4は、本発明の実施の形態にかかる別の光ファイバーの内部構造を示す。図示されているように、マルチステップクラッド光ファイバー400は、直径Dおよび屈折率nを有するセンターコア410と、直径Dおよび屈折率nを有する第1クラッド415と、直径Dを有する環状コア320と、屈折率nを有する外部クラッド425と、を備えることを特徴とする。図3に示すファイバー300と同様に、第1クラッド415は、屈折率nよりも小さく屈折率nよりも大きい中間屈折率nを有してもよい。
【0047】
様々な実施の形態において、環状コア420は、2つの異なる領域を含む、本質的にそれにより構成される、またはそれにより構成される。図4に示すように、環状コア420は、屈折率n2sを有する内部ステップインデックス(interior step-index)領域420sと、屈折率nを有する外部ステップインデックス(exterior step-index)領域42eと、を有することを特徴としてもよい。様々な実施の形態において、屈折率n2sは、第1クラッド415の屈折率nよりも大きく、屈折率nよりも小さい。本発明の様々な実施の形態によると、外部ステップインデックス領域420eに結合されたレーザーパワーは、主に外部ステップインデックス領域420内に留まる。内部ステップインデックス領域420sに結合されたパワーは、主に、領域420s、420eの両方に含まれる。したがって、これらの領域のいずれかまたは両方に結合されたレーザーエネルギーは、環状コア420における入力位置に応じて(上述のファイバー300に関する議論と同様に)、異なる有効直径および幅を有する環状ビームを有する出力ビームをもたらす。
【0048】
様々な実施の形態にかかるマルチステップクラッド光ファイバー400の場合、内部ステップインデックス領域420sの厚さは、センターコアの直径Dの約10%よりも大きくてもまたは等しくても、あるいは直径Dの約25%よりも大きくてもまたは等しくてもよい。このような値は、同様に第1クラッド415の厚さにも適用することができる。様々な実施の形態において、光ファイバーの1つまたは複数の層の厚さは、入力レーザービームのスポット径が、例えば直径Dの約60%から約90%であり得るため、センターコアの直径Dに依存する。
【0049】
様々な実施の形態において、図2に示す従来のステップクラッド光ファイバー200と比較して、マルチステップクラッド光ファイバー400は、多様なビーム形状を提供し、したがって、多様な用途、およびその出力ビームにより加工される加工対象物の要求を満たすよう展開することができる。例えば、マルチステップクラッド光ファイバー400は、環状コア420内にレーザーエネルギー入力を受信する2つの離散領域420s、420eを提供し、それぞれ、ファイバー200などの従来のファイバーでは得られない異なる環状リングプロファイルをもたらす。様々な実施の形態において、離散領域420s、420eの存在により、2つのセクションの間での入力パワー比率を変化させることにより、環状リングプロファイル(例えば、強度および/または幅)を操作することができる。
【0050】
様々な実施の形態において、環状コア420は、異なる屈折率を有する2つの異なる領域を含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。さらに、様々な実施の形態において、外部ステップインデックス領域420eの屈折率nは、図4に示すように、内部ステップインデックス領域420sの屈折率n2sよりも大きくてもよい。あるいは、屈折率nは、屈折率n2sよりも小さくてもよい。
【0051】
図5Aは、本発明の実施の形態にかかる別の光ファイバーの内部構造を示す。図示されているように、バリアステップクラッド光ファイバー500は、直径Dおよび屈折率nを有するセンターコア510と、直径Dと屈折率nとを有する第1クラッド515と、直径Dを有する環状コア520と、屈折率nを有する外部クラッド525と、を備えることを特徴とする。ファイバー300およびファイバー400と同様に、第1クラッド515は、屈折率nよりも小さく屈折率nよりも大きい中間屈折率nを有してもよい。
【0052】
様々な実施の形態において、環状コア520は、3つの異なる領域を含む、本質的にそれにより構成される、またはそれにより構成される。図5に示すように、環状コア520は、内部領域520aと、外部領域520cと、領域520aと領域520cとの間に配置されるバリア領域520bと、を備えることを特徴としてもよい。様々な実施の形態において、領域520a、520cの両方の屈折率は屈折率nと等しい。屈折率nは、センターコア510の屈折率nにほぼ等しくてもよい。他の実施の形態において、屈折率nは屈折率nよりも大きくても、または小さくてもよい。バリア領域520bの屈折率n2bは、屈折率nよりも小さく、第1クラッド515の屈折率nよりも大きくても、またはほぼ等しくてもよい。図5Aに示すように、バリア領域520bは、第1クラッド515の直径Dよりも大きい内径Dと、層厚Tと、を有してもよい。様々な実施の形態において、バリア領域520bの層厚Tは、約30μmよりも小さいか、約20μmよりも小さいか、または約10μmよりも小さい。層厚Tは、約1μmより大きくても、約2μmより大きくても、約5μmより大きくても、または約10μmより大きくてもよい。
【0053】
本発明の様々な実施の形態において、パワーが最初に内部領域520aまたは外部領域520cのいずれかに結合される場合に、バリア領域520bは、第1クラッド515および外部クラッド525とともに、ファイバー500の他の領域にレーザーパワーが広がるのを実質的に阻止する。したがって、本発明の実施の形態にかかる出力ビームは、ファイバーの出口に2つの離散環状リングを有することを特徴としてもよい。つまり、ファイバー500は、領域520aと領域520cとの間に入力レーザーパワーを分配することにより、異なる出力強度を有する2つの環状リングを有する出力ビームを形成することができる。このような出力ビームは、通常、上述したファイバー100、200を使用することでは有効とはならない。さらに、バリア領域520bに結合されたレーザーパワーは、通常、出力ビームからは失われないが、代わりに、環状コア520全体に広がる。
【0054】
本発明の様々な実施の形態において、第1クラッド515に結合されたレーザーパワーは、環状コア領域520の全体に広がる傾向にあり、そのようなパワーは、センターコア510にも広がることがある。
【0055】
したがって、ビームエネルギーを第1クラッド515に結合すると、内部領域520aに結合する場合よりも、ファイバーの出口でより大きい有効ビーム径とすることができる。したがって、本発明の実施の形態において、レーザーエネルギーがファイバー500の様々な領域に結合されるため、出力ビーム径が非単調的に増加する。その結果、ファイバー100、200では実現できない、動的なBPP変化をもたらす。
【0056】
本発明の様々な実施の形態において、環状コア領域520は、1つ以上のバリア領域520bを含んでもよい。それぞれのバリア領域は、異なる厚さおよび/または異なる屈折率を有してもよい。ただし、そのようなバリア層の屈折率は、通常、屈折率nよりも小さく、屈折率nよりも大きいか、またはほぼ等しい。つまり、環状コア領域520は、N個のバリア領域520bにより、N+1個の領域(例えば、領域520a、520c)に分割されてもよい。2つ以上(またはすべて)の複数のバリア領域520bの厚さおよび/または屈折率は、互いに等しくても、または互いに異なっていてもよい。
【0057】
図5Bは、図5Aに示すバリアステップクラッド光ファイバー500の変形例である、本発明の実施の形態にかかる光ファイバーの内部構造を示す。図示されるように、バリアステップクラッド光ファイバー530は、センターコア510bと、第1クラッド515と、環状コア520と、外部クラッド525と、を備えることを特徴とする。ファイバー300、400、および500と同様に、第1クラッド515は、屈折率nよりも小さく屈折率nよりも大きい中間屈折率nを有してもよい。
【0058】
図5Bに示すように、センターコア510bは、センターコア510bの中心点に最も大きい屈折率nを有し、センターコア510bの屈折率は、中心点から離れる半径方向の距離の関数として減少する、勾配インデックス(gradient-index)プロファイルを有する。様々な実施の形態において、センターコア510bの中心点だけが、最も高い屈折率nを有するが、他の実施の形態では、センターコア510bは、有限の厚さを有し、最も大きい屈折率nを有する中心部分を有する。(つまり、センターコア510bの屈折率は、中心部分で横ばいになり、センターコア510bの外周に向かって小さくなってもよい。)センターコア510bの屈折率の減少は、実質的に線形、放物線であってもよく、または、多項式依存性を有していてもよい。言い換えると、センターコア510bの屈折率は、一連の1つまたは複数の(または2つ以上)の離散的なステップで減少してもよい。様々な実施の形態において、センターコア510bの屈折率は、センターコア510bと第1クラッド515との接触面における屈折率n’まで減少する。図示されているように、屈折率n’は、第1クラッド515の屈折率nよりも大きくてもよい。他の実施の形態において、屈折率n’は、第1クラッド515の屈折率nとほぼ等しくてもよい。
【0059】
図5Aの光ファイバー500と同様に、本発明の様々な実施の形態において、ファイバー530の環状コア領域520は、1つまたは複数のバリア領域520bを含んでもよい。それぞれのバリア領域は、異なる厚さおよび/または異なる屈折率を有していてもよい。ただし、そのようなバリア層の屈折率は、通常、屈折率nよりも小さく、屈折率nよりも大きいまたはほぼ等しい。
【0060】
本発明の実施の形態にかかるファイバー610を使用してBPPを変化させる例示的なレーザーシステム600が図6に示されている。図示されるように、レーザーシステム600は、入射する入力レーザービーム630を光学素子640(例えば、1つまたは複数のレンズ、反射ウェッジ、および/またはプリズム)に方向転換させる調整可能リフレクタ620(例えば、チップチルト(tip-tilt)調整可能および/または折り返し式ミラー)などのステアリング機構を含み、ビーム630をファイバー610に向けて集光する。リフレクタ630の調整または傾斜は、曲線矢印650で示されている。図示されているように、ビーム630が結合されるファイバー610の入力面の領域は、リフレクタ620の構成(例えば、位置および/または角度)、および/または光学素子640の位置の調整(ビーム630の経路内で矢印660に示されるように平行移動させてもよい)により少なくとも部分的に定義されてもよい。かわりに、または加えて、ファイバー610それ自体が、ファイバー610の長手方向軸に対して実質的に平行な、および/または実質的に垂直な方向に平行移動してもよい。最良の開始ビーム品質(すなわち、最小BPP)のために、ファイバー610の入力面は、光学素子640の焦点スポットに(すなわち、光学素子640からその焦点距離と等しい距離を隔てて)配置されてもよい。しかし、様々な実施の形態において、光学素子640および/またはファイバー610は、長手方向に(例えば、図6に示すファイバー610の長軸に沿った方向に)平行移動されてもよく、ファイバー610の入力面は、光学素子640の焦点距離よりも短いまたは長い距離の位置に配置される。本発明の様々な実施の形態において、ファイバー610は、本明細書に記載される任意のファイバー300、400、500、530を含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。
【0061】
本発明の様々な実施の形態では、フレクシャーマウント(flexure-mounted)リフレクタ620以外のステアリング機構、例えば、レンズおよび/またはプリズムなどのフレクシャーマウントおよび/またはアクチュエート(actuated)光学素子、を使用することができる。したがって、本明細書におけるリフレクタ620への言及は、非反射型の変形例(およびリフレクタと1つまたは複数の光学素子との両方を含む変形例)を包含すると理解される。
【0062】
リフレクタ620および/または光学素子640および/またはファイバー610の構成は、制御部670および/またはそれに動作可能に接続された1つまたは複数のアクチュエータ(図示省略)を介して制御されてもよい。したがって、リフレクタ620および/または光学素子640および/またはファイバー610および/または1つまたは複数のアクチュエータは、制御部670に応答してもよい。制御部670は、所望の目標放射パワー分布および/またはBPPまたはビーム品質の他の尺度(例えば、ユーザによる入力、および/または加工対象物への距離、加工対象物の組成、加工対象物のトポグラフィ、などの加工される加工対象物の1つまたは複数の特性に基づく)に応答してもよいし、ビーム630がファイバー610の入力面に当たり、ファイバー610から出力される出力ビームが目標放射パワー分布またはビーム品質を有するように、リフレクタ620および/または光学素子640および/またはファイバー610を配置するよう構成されてもよい。このようにして生成された出力ビームは、焼きなまし、切断、溶接、穴あけなどの加工のために加工対象物に向けられてもよい。制御部670は、例えば、本明細書に記載される特定のリフレクタ傾斜および/または光学素子640および/またはファイバー610の位置(および/または傾斜)を介して、所望のパワー分布および/または出力BPPおよび/またはビーム品質を達成するようプログラムされてもよい。
【0063】
したがって、様々な実施の形態において、ビーム源、リフレクタ620、ファイバー610、および/または光学素子640は、制御部670に応答してもよい。光ファイバー610の出力端(すなわち、ビーム630を受信する入力端と反対側のファイバーの端部)は、加工される加工対象物に出力ビームを向けるレーザーヘッドをそれに結合してもよい。レーザーヘッドは、出力ビームを集光するおよび/またはコリメートする、および/またはビームの偏光および/または軌道を制御する、1つまたは複数の光学素子を含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい。レーザーヘッドは、出力ビームを加工対象物に、および/または加工対象物を配置することができる台または位置決め可能な構台に向かって、出力ビームを放射するよう配置されてもよい。
【0064】
様々な実施の形態において、制御部670は、出力ビーム(および/またはレーザーヘッド)を使用して実施されるプロセスを開始し、それに応じて、1つまたは複数の結合位置でファイバー610に対してビーム630を位置決めしてもよい。様々な実施の形態において、制御部670は、例えば1つまたは複数のアクチュエータの制御を介して、加工対象物に対するファイバー610および/またはレーザーヘッドの動き制御することさえできる。制御部670はまた、出力レーザービームと加工中の加工対象物との間の相対的な動きを引き起こすよう構成された従来の位置決めシステムを操作することもできる。例えば、位置決めシステムは、2次元または3次元の加工対象物に沿った加工経路を通してビームを誘導するための、任意の制御可能な光学的、機械的、または光機械的システムであってもよい。加工中に、制御部670は、レーザービームが加工対象物に沿って加工経路を横断するよう、位置決めシステムおよびレーザーシステム600を操作してもよい。加工経路は、ユーザにより提供されてもよく、オンボードメモリまたはリモートメモリに格納されてもよい。このメモリは、加工の種類(切断、溶接、など)に関するパラメータ、および、加工を実行するために必要なまたは所望のビームパラメータ(例えば、ビーム形状および/またはBPP)もまた格納してもよい。これに関して、ローカルまたはリモートデータベースは、システムが処理する材料および厚さのライブラリを維持してもよい。材料パラメータ(材料の種類、厚さ、など)をユーザが選択すると、制御部670は、データベースを照会して対応するビーム特性を取得し、ファイバー610へのビーム630の適切な結合位置を決定する。格納された値は、材料の様々な加工(例えば、穴あけ、切断、など)、加工の種類、および/または加工経路の形状に適するビーム特性を含んでもよい。
【0065】
プロッティング(plotting)またはスキャニング(scanning)技術でよく知られているように、出力ビーム(および/またはレーザーヘッド)と加工対象物との間の必須の相対的な動きは、可動ミラーを使用したビームの光学的偏向、構台を使用したレーザーの物理的な動き、送りねじまたは他の構成、および/またはビームではなく(またはビームに加えて)加工対象物を動かすための機械的構成により生成され得る。いくつかの実施の形態において、制御部670は、フィードバック部から加工対象物に対するビームの位置および/または加工効率に関するフィードバックを受信してもよい。フィードバックユニットは、適切なモニタリングセンサに接続される。
【0066】
本発明の実施の形態によると、ユーザーは所望の加工経路に沿って加工対象物を加工(例えば、切断または溶接)することができる。出力ビームの特性(例えば、ビーム形状、BPP、またはその両方)、出力ビームのパワーレベル、および/または最大加工速度は、加工対象物の組成、加工対象物の厚さ、加工経路の形状などの、ただしそれらに限定されない要素に基づいて選択される。例えば、ユーザは、任意の適切な入力装置を使用して、またはファイル転送により、所望の加工経路および/または加工対象物の種類(および/または厚さなどの他の特性)を、システムに選択しても、または事前にプログラムしてもよい。その後、制御部670は、加工経路に沿った位置の関数として、最適な出力ビーム特性を決定してもよい。動作中、制御部670は、切断または溶接などの加工に対する適切な出力ビーム特性を使用して、レーザーシステムおよび加工対象物の位置を操作して、事前にプログラムされた経路に沿って加工対象物を加工してもよい。加工される材料の組成および/または厚さが変わる場合、その変化の位置および性質が事前にプログラムされてもよい。制御部670は、それに応じて、レーザービーム特性および/または加工対象物とビームとの間の相対的な動きの速度を調整してもよい。
【0067】
加えて、レーザーシステムには、加工対象物の厚さおよび/またはその上のフィーチャー(features)の高さを検出するための1つまたは複数のシステムが組み込まれていてもよい。例えば、レーザーシステムには、干渉法により加工対象物の干渉深さ(interferometric depth)を計測するシステム(またはその構成要素)が組み込まれていてもよく、これは、2015年4月1日に出願された米国特許出願第14/676,070号に詳述されており、その開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている。そのような深さまたは厚さ情報は、例えば加工される材料の種類に対応するデータベースのレコードに従い、加工対象物の加工を最適化する出力ビーム特性を制御するために制御部670により使用されてもよい。
【0068】
制御部670は、ソフトウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせのいずれかとして提供されてもよい。例えば、システムは、カリフォルニア州サンタクララのインテル社により製造されたPentium(登録商標)またはCeleron(登録商標)ファミリのプロセッサ、イリノイ州シャンバーグのモトローラ社により製造された、680x0およびPOWER PC(登録商標)ファミリのプロセッサ、および/または、カリフォルニア州サニーベールのアドバンストマイクロデバイセズ社により製造されたATHLON(登録商標)、などの1つまたは複数のプロセッサを含むCPU基板を有するPCなどの、1つまたは複数の従来のサーバクラスコンピュータに実装されてもよい。プロセッサはまた、本明細書に記載される方法に関するプログラムおよび/またはデータを格納するメインメモリユニットを含んでもよい。メモリは、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)、プログラマブル読み取り専用メモリ(PROM)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、または読み取り専用メモリ(ROM)などの一般的に利用可能なハードウェアに存在する、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、および/またはFLASH(登録商標)メモリを含んでもよい。いくつかの実施の形態において、プログラムは、光学ディスク、磁気ディスク、および他の一般的に使用されるストレージ装置などの、外部RAMおよび/またはROMを使用して提供されてもよい。機能が1つまたは複数のソフトウェアプログラムとして提供される実施の形態では、プログラムは、FORTRAN、PASCAL、JAVA(登録商標)、C、C++、C#、BASIC、様々なスクリプト言語、および/またはHTMLなどの多くの高級言語のうちのいずれかで記述されていてもよい。さらに、ソフトウェアは、ターゲットコンピュータに常駐するマイクロプロセッサに向けたアセンブリ言語で実装されていてもよい。例えば、ソフトウェアは、IBM PCまたはPCクローン上で実行されるよう構成されている場合、インテル80x86アセンブリ言語で実装されてもよい。ソフトウェアは、フロッピーディスク、ジャンプドライブ(jump drive)、ハードディスク、光学ディスク、磁気テープ、PROM、EPROM、EEPROM、フィールドプログラマブルゲートアレイ、またはCD-ROMを含むがそれに限定されない製造物に具現化されていてもよい。
【0069】
図7Aおよび図7Bは、本発明の様々な実施の形態の効果を実証するシミュレーションのための例示的な入力ビームおよびファイバーパラメータを示す。図6に示すものと同様の、焦点距離が30mmの集光レンズ(光学素子640に対応する)を有するシステムに基づく数値例である。図7Aは、入力ビームがシステム600の光学素子640に当たる前の入力レーザービームの断面を示す。図示されているように、入力ビームは、互いに同一でX軸に沿って整列した2つの矩形ビームを含むことを特徴とする。図示された例では、入力レーザービームは、2つの同一のWBC共振器の出力ビームの空間結合により形成された(図11参照)。4シグマでの個々のビームのフルサイズは、mmで約1.5×5.6(x×y)である。入力レーザービームの全体のBPPは、mm・mradで約3×4(x×y)である。システム600の光ファイバー610は、図5Aに示されるファイバー500に、図7Bに記載された様々なファイバーパラメータを加えたものに相当する。
【0070】
図8は、図7Aおよび図7B(曲線1)の例示的な構成におけるシミュレーション結果のBPP値を、リフレクタ/ミラーの傾斜角度の関数として示すグラフである。比較のために、従来のステップクラッド光ファイバー200(図2参照)を使用した場合のシミュレーション結果のBPP値を示す第2曲線(曲線2)もまた、表示されている。曲線2では、ステップクラッド光ファイバー200は、センターコア、第1クラッド、環状コアの直径がそれぞれ100μm、160μm、および360μmであり、図7Bに記載されている値と同様の屈折率を有する。シミュレーションにおいて、ファイバー結合システム(図6)は、ミラー傾斜がゼロである場合にファイバーの中心に入力スポットが来るよう配置されている。入力ビームスポットの中心からずれたシフトは、2×f×θにより計算されるミラーの傾斜に比例する。f(この例では30mmと等しい)は集光レンズ(図6の光学素子640に相当する)の焦点距離であり、θは、ミラーの傾斜角度である。
【0071】
図8に示すように、本発明の実施の形態による曲線1のBPP変化は、2つのこぶ(すなわち、極大値)を有するが、曲線2では1つだけである。本明細書で上述の通り、光ファイバー200の環状コア212に結合された入力パワーが、その入力位置に関わらず、環状コア212の全体に広がるため、曲線2は、約2mradのミラーの傾斜を超えた領域で平らになる。
【0072】
曲線2の単一のこぶは、主に、レーザービームが最初に低屈折率領域(図2の第1クラッド215)に結合されるが、高屈折率領域(例えば、図2のセンターコア210および環状コア220)から出る場合にもたらされるNAの拡大に起因する。曲線1の2つのこぶの特徴は、光ファイバー500の使用によりもたらされ、NA拡大だけでなく、上述のミラーの傾斜の増加によるファイバー出口での有効ビーム径に特有の非単調な増加の複合効果によるものである。
【0073】
図9A図9Eは、図7A図7B、および図8の数値例に対応する、異なるミラー傾斜での、ファイバー出口でのビーム画像の5つのシミュレーション結果を示す。対応するBPP値は、図8の曲線1に対応するミラー傾斜で示されている。図9A図9Eのそれぞれはまた、それぞれの画像の下部にファイバー出口でのビームの断面プロファイルを含む。図9Aは、最低BPP(約4mm・mrad)を有する出口ビームを示し、すべてのパワーが光ファイバーのセンターコアから出ている。図9Bは、図8の曲線1の第1ピーク(約19mm・mrad)に達するBPPを有する出口ビームを示し、レーザーパワーのかなりの部分が最初に光ファイバーの第1クラッド層(すなわち、図5Aの第1クラッド515)に結合している。図9Cに示すように、1.6mradのミラー傾斜では、入力パワーのかなりの部分が環状コアの内部領域(図5Aの領域520a)に結合され、ファイバーの出口で比較的小さい環状リングが生じている。図9Dに示すように、2.2mradのミラー傾斜では、出力プロファイルは2つの環状リングと図8のグラフの第2ピークに近いBPP(曲線1)を特徴としている。この場合、入力ビームは、バリア520bの近く、またはほぼバリア520bにあり、パワーのほとんどが内部領域520aおよび外部領域520cの両方に結合される。加えて、ビームプロファイルの中心にある明確な非ゼロパワー密度は、バリア520bに結合したパワーの一部がセンターコア510から出ることを示す。図9Eに示すように、2.7mradのミラー傾斜では、入力スポットが環状コアの外部領域(すなわち、図5Aの領域520c)にシフトし、したがって、大きな環状リングが生成されている。
【0074】
図10A図10Dは、光ファイバー200を使用した、図8の数値例に対応する、異なるミラー傾斜での、ファイバー出口でのビーム画像の4つのシミュレーション結果である。対応するBPP値は、対応するミラー傾斜での図8の曲線2に示されている。図10A図10Dのそれぞれはまた、それぞれの画像の下部にファイバー出口でのビーム断面プロファイルを含む。図10Aは、最低BPP(約4mm・mrad)を有する出口ビームを示し、図9Aと同様に、すべてのパワーが光ファイバーのセンターコアから出ている。図10Bは、図8の曲線2のピーク(約22mm・mrad)に達するBPPを有する出口ビームを示し、これは主に、レーザーパワーのかなりのパワーが第1クラッド215(図2参照)に結合する場合のNA拡大に起因する。図10Cおよび図10Dは、約1.8mradを超えるミラー傾斜で、出力プロファイルが感知できるほど変化しないことを示す。すなわち、入力スポットが第1クラッドの外側に配置されると、パワーの大部分が環状コア220に結合されるためである。図9C図9Eと比較すると、この挙動は、本発明の実施の形態に係る光ファイバーと比較した場合かなり異なる。
【0075】
したがって、本発明の実施の形態にかかる光ファイバーは、BPP、NAおよび出力ビームサイズのより動的で多様な変化を提供し、多様な用途および/またはより多様な異なる加工対象物の加工のために展開され得る。本発明の実施の形態に係るファイバーにより、様々な直径および/または幅の1つまたは複数の環状リングを有する出力ビームを形成することができ、異なるビームプロファイルおよびBPP値を有する様々な混合ビーム形状を可能にする。
【0076】
レーザーシステム600は、ビームがファイバーの入力面を横切って掃引されて、ビームの異なる部分がファイバーの異なる領域に結合されるため、入力レーザービームのパワーダウン(すなわち、スイッチオフ)の必要なく連続してレーザービームのBPP、形状、および/またはNAを変化させるために使用することができる。ファイバーは、クラッド領域(例えば、第1クラッド)に伝播するビームエネルギーが閉じ込められ、ファイバーまたはそれに関連する光学系(例えば、光学素子)に損傷につながらないよう構成されているため、入力ビームまたはその一部が光ファイバーのクラッドに当たるときに入力ビームをスイッチオフする必要がない。
【0077】
本発明の実施の形態により、本明細書に詳述されているレーザーシステムおよびレーザーデリバリーシステムは、WBCレーザーシステムで、またはWBCレーザーシステムとともに使用することができる。具体的には、本発明の様々な実施の形態において、WBCレーザーシステムの多重波長出力ビームは、本明細書に詳述されるように、BPPを変化させるためのレーザービームデリバリーシステム用の入力ビームとして使用することができる。図11は、本発明の実施の形態で使用される入力ビームを形成するために使用することができるWBCレーザーシステム(または「共振器」)1100の様々な構成要素を示す概略図である。図示された実施の形態において、共振器1100は、9つの異なるダイオードバーにより放射されるビームを組み合わせる(本明細書で使用される「ダイオードバー」は、任意のマルチビームエミッタ、すなわち、単一のパッケージから複数のビームを放射するエミッタを指す)。本発明の実施の形態は、9つよりも少ない、または多くのエミッタとともに使用してもよい。本発明の実施の形態において、それぞれのエミッタが単一のビームを放射してもよいし、または、それぞれのエミッタが複数のビームを放射してもよい。図11は、WBC次元、すなわち、バーからのビームが組み合わされた次元に沿っている。例示的な共振器1100は、9つのダイオードバー1105を備えることを特徴とし、それぞれのダイオードバー1105は、WBC次元に沿ったエミッタの配列(例えば、一次元配列)を含む、本質的にそれにより構成される、またはそれにより構成される。様々な実施の形態において、ダイオードバー1105のそれぞれのエミッタは、一方向において大きな発散(ここではWBC次元に対して垂直に方向づけられる「ファスト軸」として知られる)と、垂直方向において小さな発散(ここではWBC次元に沿った「スロー軸」として知られる)と、を有する非対称ビームを放射する。
【0078】
様々な実施の形態において、それぞれのダイオードバー1105は、放射されたビームのファスト軸をコリメートするファスト軸コリメータ(FAC:fast-axis collimator)/光学ツイスターマイクロレンズアセンブリに関連付けられている(例えば、取り付けられている、または、光学的に結合されている)。このため、ビームのファスト軸およびスロー軸を90°回転させているときに、それぞれの放射されたビームのスロー軸がマイクロレンズの下流のWBC次元に垂直になる。マイクロレンズアセンブリはまた、それぞれのダイオードバー1105から分散素子1110に向かってエミッタの主光線を集光させる。適切なマイクロレンズアセンブリは、2011年3月7日に出願された米国特許第8,553,327号、および2015年6月8日に出願された米国特許第9,746,679号に記載されており、その開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0079】
FACレンズおよび光学ツイスターの両方(例えば、マイクロレンズアセンブリ)がそれぞれのビームエミッタおよび/または放射されたビームに関連付けされている本発明の実施の形態において、SACレンズ(詳細は後述する)が非WBC次元においてビームに影響を与える。他の実施の形態において、放射されたビームは回転せず、FACレンズを使用して、非WBC次元においてポイント角度を変化させてもよい。したがって、本明細書におけるSACレンズへの言及は、非WBC次元においてパワーを有するレンズを指し、そのようなレンズには、様々な実施の形態におけるFACレンズを含んでもよい、ということが理解される。したがって、様々な実施の形態、例えば、放射されたビームが回転しない、および/またはビームのファスト軸が非WBC次元にある実施の形態では、SACレンズについて本明細書に詳述されるように、FACレンズを利用することができる。
【0080】
図11に示すように、共振器1100は、一連のSACレンズ1115を備えることを特徴とし、1つのSACレンズは、1つのダイオードバー1105に関連付けられ、1つのダイオードバー1105からビームを受信する。それぞれのSACレンズ1115は、単一のダイオードバー1105から放射されたビームのスロー軸をコリメートする。SACレンズ1115によりスロー軸がコリメートされると、ビームは一連のインターリーブミラー1120に伝播する。インターリーブミラー1120は、ビーム1125を分散素子1110に向けて方向転換する。インターリーブミラー1120の配置により、ダイオードバー1105のフリースペースを縮小するまたは最小化することができる。分散素子1110(図11に示す透過回折格子、または反射回折格子などの回折格子を含んでもよい、本質的にそれにより構成されてもよい、またはそれにより構成されてもよい)の上流では、レンズ1130がダイオードバー1105からのサブビーム(すなわち、主光線以外の放射光線)をコリメートするために任意に使用されてもよい。様々な実施の形態において、レンズ1130は、レンズ1130の焦点距離と実質的に等しいダイオードバー1105からの光学距離となる位置に配置される。典型的な実施の形態において、分散素子1110での主光線の重複は、主に、レンズ1130の集光力ではなく、インターリーブミラー1120の方向転換に起因することに留意されたい。
【0081】
また、図11には、光学的クロストークを軽減するための光学望遠鏡を形成するレンズ1135、1140が示されている。これらは、2013年3月15日に出願された米国特許第9,256,073号および2015年6月23日に出願された米国特許第9,268,142号に詳述されており、その開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている。共振器1100はまた、共振器1100がより小さい物理的設置面積(physical footprint)内に収まるようビームを方向転換するための、1つまたは複数のオプションの折りたたみ式ミラー1145を含んでもよい。分散素子1110は、ダイオードバー1105からのビームを、部分反射出力カプラ1155に伝播する単一の多重波長ビーム1150に結合する。カプラ1155は、共振器1100の出力ビームとしてのビームの一部を透過させる一方で、ビームの別の一部を反射させて分散素子1110に戻し、その後、それぞれのビームの放射波長を安定させるためにフィードバックとしてダイオードバー1105に戻す。
【0082】
本明細書において使用される用語および表現は、限定のためではなく説明のための用語として使用される。それらの用語および表現の使用において、図示され説明された特徴またはその一部と同等なものを排除する意図はない。しかし、請求項に記載された発明の範囲内において様々な変更が可能であることが認識されている。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図10C
図10D
図11