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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】状態評価装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/04 20060101AFI20230814BHJP
   G01N 29/11 20060101ALI20230814BHJP
   G01N 29/48 20060101ALI20230814BHJP
   G01M 7/08 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
G01N29/04
G01N29/11
G01N29/48
G01M7/08 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022184809
(22)【出願日】2022-11-18
(62)【分割の表示】P 2018129913の分割
【原出願日】2018-07-09
(65)【公開番号】P2023022127
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2017209718
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】598105732
【氏名又は名称】株式会社シスミック
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 智洋
(72)【発明者】
【氏名】千葉 拓史
(72)【発明者】
【氏名】三上 貴正
(72)【発明者】
【氏名】岸村 雄平
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-205900(JP,A)
【文献】特開2001-124744(JP,A)
【文献】特開2000-074889(JP,A)
【文献】特開2003-185542(JP,A)
【文献】特開2016-050801(JP,A)
【文献】特開2004-101413(JP,A)
【文献】特開2016-080380(JP,A)
【文献】特開平08-261995(JP,A)
【文献】特開2006-017741(JP,A)
【文献】特開2015-028467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00 - G01M 13/045
G01M 99/00
G01N 29/00 - G01N 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出ユニットと本体ユニットとを有し、
前記検出ユニットは、1つの打撃ヘッドと、打撃力センサと、前記打撃ヘッドを中心に前記打撃ヘッドから等距離に設けられた複数のマイクと、を有し、
前記本体ユニットは、波形特性値検出部と、最大打撃力検出部とを有し、
前記波形特性値検出部は、前記マイクから生成された検出信号に基づいた打音検出波形のN番目の波形を第1波形として、前記第1波形の振幅値Aを検出し、
前記最大打撃力検出部は、前記打撃力センサから生成された検出信号に基づき最大打撃力Fを検出し、
標準試験体を前記打撃ヘッドにより打撃することにより測定した最大打撃力Fの平均値を打撃力標準値F0とし、前記標準試験体を前記打撃ヘッドにより打撃することにより測定した前記第1波形の振幅値Aの平均値を第1波振幅標準値A0とし、
検査対象物を前記打撃ヘッドにより打撃することにより検出される前記第1波形の振幅値AをAi、前記検査対象物を前記打撃ヘッドにより打撃することにより検出される最大打撃力をFiとしたとき、
評価値E=Ar/√Fr(但し、相対振幅値Ar=Ai/A0、相対打撃力Fr=Fi/F0)に基づいて前記検査対象物の状態を評価する状態評価装置。
【請求項2】
検出ユニットと本体ユニットとを有し、
前記検出ユニットは、1つの打撃ヘッドと、打撃力センサと、前記打撃ヘッドを中心に前記打撃ヘッドから等距離に設けられた複数のマイクと、を有し、
前記本体ユニットは、波形特性値検出部と、最大打撃力検出部とを有し、
前記波形特性値検出部は、前記マイクから生成された検出信号に基づいた打音検出波形のN番目の波形を第1波形として、前記第1波形の振幅値Aを検出し、
前記最大打撃力検出部は、前記打撃力センサから生成された検出信号に基づき最大打撃力Fを検出し、
標準試験体を前記打撃ヘッドにより打撃することにより測定した最大打撃力Fの平均値を打撃力標準値F0とし、前記標準試験体を前記打撃ヘッドにより打撃することにより測定した前記第1波形の振幅値Aの平均値を第1波振幅標準値A0とし、
検査対象物を前記打撃ヘッドにより打撃することにより検出される前記第1波形の振幅値AをAi、前記検査対象物を前記打撃ヘッドにより打撃することにより検出される最大打撃力をFiとしたとき、
評価値E=Ar/Fr(但し、相対振幅値Ar=Ai/A0、相対打撃力Fr=Fi/F0)に基づいて前記検査対象物の状態を評価する状態評価装置。
【請求項3】
前記複数のマイクは4つであり、
前記打撃ヘッドを中心とする円周上に互いに90°の角度をおいて点対称に配置される、請求項1または2記載の状態評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の状態を評価する検査対象物の状態評価装置および状態評価方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外装材(外壁材)の剥離、剥落を未然に防止するため、建物の状態を診断する方
法が種々提案されている。
特許文献1には、検査対象物の表面をハンマーで打撃した際に発生する打音をマイクを
用いて検出し、マイクからの信号に基づいて打音検出波形を生成し、打音検出波形に発生
する1周期分の波形の振幅に基づいて検査対象物の状態を評価する検査対象物の状態評価
装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-205900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、状態評価装置毎のばらつき、例えば、マイクの感度の個体差、ハン
マーを駆動するアクチュエータの個体差などの影響を受けて、生成された打音検出波形の
振幅がばらつくことが懸念される。
また、同一の状態評価装置であっても、ハンマーを駆動するアクチュエータの動作毎の
ばらつきや状態評価装置の設置状態の影響を受けてハンマーの駆動力がばらつき、生成さ
れた打音検出波形の振幅がばらつくことが懸念される。
打音検出波形の振幅にばらつきが生じると、同一の検査対象物に対する評価結果にもば
らつきが生じやすくなるため何らかの改善が求められる。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、検査対象物の状態の
評価を正確に行なう上で有利な検査対象物の状態評価装置および状態評価方法を提供する
ことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、検査対象物をハンマーで打撃する
打撃部と、打音を検出するマイクと、前記マイクからの信号に基づいて打音検出波形を生
成する波形生成部と、前記打音検出波形を構成する複数の1周期の波形のうちN番目(N
は1以上の自然数)の波形を第1の波形としたとき、前記第1の波形の振幅値または実効
値を波形特性値として検出する波形特性値検出部と、予め定められた標準試験体を検査対
象物としたときに前記波形特性値検出部で検出された前記波形特性値を用いて基準特性値
を算出し、任意の検査対象物を検査対象とした時に前記波形特性値検出部で検出された前
記波形特性値に基づく値を前記基準特性値で除すことによって正規化された正規化特性値
を算出し、前記正規化特性値を底、任意の数をべき指数としたべき乗演算を行うことによ
り評価値を算出する評価値算出部と、前記評価値に基づいて前記任意の検査対象物の状態
を評価する評価部と、を備えることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、前記評価値算出部は、前記ハンマーにより前記標準試験体を打
撃して前記波形特性値検出部による前記波形特性値の検出を複数回行なうことで得られた
複数の波形特性値の平均値を基準特性値として決定する基準特性値決定部と、前記任意の
検査対象物を検査対象とした際に前記波形特性値検出部で検出された波形特性値を、前記
基準特性値決定部で決定された前記基準特性値で除すことによって正規化した正規化特性
値を算出する正規化特性値算出部と、前記正規化特性値算出部で算出された前記正規化特
性値を底、前記任意の数をべき指数としたべき乗演算を行い、評価値を算出するべき乗演
算部と、を備えることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、前記評価値算出部は、前記ハンマーによる打撃時に前記ハンマ
ーに生じる打撃力の最大値である最大打撃力を検出する最大打撃力検出部と、前記波形特
性値検出部で検出された前記波形特性値を前記最大打撃力で除すことで1次正規化特性値
を算出する1次正規化特性値算出部と、前記ハンマーにより前記標準試験体を打撃して前
記波形特性値検出部による前記波形特性値の検出を複数回行なうことで得られた複数の前
記1次正規化特性値の平均値を前記基準特性値として決定する基準特性値決定部と、前記
任意の検査対象物を検査対象とした際に前記1次正規化特性値算出部で算出された前記1
次正規化特性値を前記基準特性値で除すことで2次正規化特性値を算出する2次正規化特
性値算出部と、前記2次正規化特性値のうち前記波形特性値に関する係数および前記最大
打撃力に関する係数を底、前記任意の数をべき指数としたべき乗演算を行い前記評価値を
算出するべき乗演算部と、を備えることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、前記打撃部は、前記ハンマーと、前記ハンマーに打撃方向の駆
動力を加えるアクチュエータと、前記アクチュエータを駆動する駆動部と、前記駆動部を
制御して前記駆動力を調節する調整部と、前記ハンマー、前記アクチュエータ、前記駆動
部および前記調整部の少なくともいずれかを収容する筐体と、を備え、前記筐体は、前記
ハンマーで前記検査対象物を打撃する際には、前記検査対象物から離れた位置に配置され
る、ことを特徴とする。
請求項5記載の発明は、前記評価部は、前記評価値と予め定められた第1のしきい値と
の比較結果に基づいて前記任意の検査対象物の内側の剥離の有無を判定する、ことを特徴
とする。
請求項6記載の発明は、前記ハンマーの打撃力を検出して打撃力検出波形を生成する打
撃力波形生成部をさらに備え、前記波形生成部は、前記打音検出波形をサンプリングして
波形データとしてサンプリングするサンプリング部を備え、前記打撃力検出波形のうち前
記打音検出波形の前記第1の波形を発生させる1周期分の波形を第2の波形とし、前記第
2の波形の最大値または最小値のうち時間的に早い方の値に対応する時刻を基準時刻とし
たとき、前記波形特性値検出部による前記第1の波形の波形特性値の検出は、前記サンプ
リング部によりサンプリングされた前記波形データのうち前記基準時刻よりも前の時点か
らサンプリングされた前記波形データに基づいてなされる、ことを特徴とする。
請求項7記載の発明は、前記評価部は、前記打撃力検出波形の波形特性値が予め定めら
れた第2のしきい値未満であるときに前記検査対象物の状態の評価を中止する、ことを特
徴とする。
請求項8記載の発明は、前記マイクは、前記ハンマーを中心にして当該中心から等距離
で対称に配置された複数のマイクで構成され、前記波形生成部、前記波形特性値検出部、
前記評価値算出部は、前記各マイクに対応して1つずつ設けられ、それぞれの前記評価値
算出部による前記評価値の算出は、前記各マイクに対応して検出された前記波形特性値を
用いてなされ、前記評価部による前記任意の検査対象物の状態の評価は、それぞれの前記
評価値算出部で算出された前記評価値に基づいてなされる、ことを特徴とする。
請求項9記載の発明は、検査対象物をハンマーで打撃したときの打音をマイクで検出し
、前記マイクからの信号に基づいて打音検出波形を生成し、前記打音検出波形を構成する
複数の1周期の波形のうちN番目(Nは1以上の自然数)の波形を第1の波形としたとき
、前記第1の波形の振幅値または実効値を波形特性値として検出し、予め定められた標準
試験体を検査対象物としたときに前記波形特性値検出部で検出された前記波形特性値を基
準特性値とし、任意の検査対象物を検査対象とした時に前記波形特性値検出部で検出され
た前記波形特性値を前記基準特性値で除すことによって正規化された正規化特性値を算出
し、前記正規化特性値を底、任意の数をべき指数としたべき乗演算を行うことにより評価
値を算出し、前記評価値に基づいて前記任意の検査対象物の状態を評価する、ことを特徴
とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1および9記載の発明によれば、検査対象物をハンマーで打撃した際に発生する
打音を検出して打音検出波形を生成し、打音検出波形を構成する複数の1周期の波形のう
ちN番目(Nは1以上の自然数)の波形を第1の波形としたとき、第1の波形の振幅値ま
たは実効値を波形特性値として検出し、この波形特性値に基づく値を基準特性値で除すこ
とによって正規化された正規化特性値を算出し、更に正規化特性値にべき乗演算を行って
評価値を算出し、評価値に基づいて検査対象物の状態の評価を行なうようにした。
したがって、状態評価装置毎のばらつき、例えば、マイクの感度の個体差、ハンマーを
駆動するアクチュエータの個体差などの影響を受けて、生成された打音検出波形の振幅や
実効値がばらついたとしても、評価値はばらつきの影響を受けないので、検査対象物の状
態の評価を正確に行なう上で有利となる。
請求項2記載の発明によれば、任意の検査対象物を打撃した際の波形特性値を、基準特
性値で除すことによって正規化した正規化特性値を算出し、当該正規化特性値にべき乗演
算を行って評価値を算出するので、例えばハンマーに生じる打撃力等を検出する必要がな
く、簡易な方法で検査対象物の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
請求項3記載の発明によれば、任意の検査対象物を打撃した際の波形特性値を最大打撃
力で除すことで1次正規化特性値を算出し、標準試験体を用いて算出した1次正規化特性
値である基準特性値により1次正規化特性値を除すことで2次正規化特性値を算出し、2
次正規化特性値のうち波形特性値に関する係数および前記最大打撃力に関する係数にべき
乗演算を行って評価値を算出するので、打撃時の打撃力に関わらず一定のしきい値により
評価値を評価することができ、1台の状態評価装置による検査対象物の状態の評価を行な
う毎に生じるハンマーの打撃力のばらつき、および、状態評価装置毎のばらつきの双方の
影響を受けること無く、検査対象物の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
請求項4記載の発明によれば、検査対象物の状態や材料に応じて適切な音圧の打音が得
られるようにハンマーの打撃力を調整できるため、検査対象物の状態の評価を正確に行な
う上でより有利となる。また、ハンマーで前記検査対象物を打撃する際には、筐体が検査
対象物から離れた位置に配置されるので、第1の波形の波形特性値を安定して検出する上
で有利となる。
請求項5記載の発明によれば、評価値と第1のしきい値との比較結果に基づいて検査対
象物の内側の剥離の有無を判定するので、検査対象物の内側の剥離の有無を簡単かつ確実
に判定する上で有利となる。
請求項6記載の発明によれば、打撃力検出波形に基づいて基準時刻を設定し、基準時刻
よりも前の時点からサンプリングされた波形データから第1の波形の波形特性値を検出す
るので、第1の波形を正確に得ることができ、検査対象物の状態の評価を正確に行なう上
で有利となる。
請求項7記載の発明によれば、打撃力検出波形の波形特性値が予め定められた第2のし
きい値未満であるときに検査対象物の状態の評価を中止するので、検査対象物の状態を誤
って評価することを回避でき、検査対象物の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
請求項8記載の発明によれば、各マイク毎に生成されたそれぞれの打音検出波形の第1
の波形の波形特性値に対応する評価値を検査対象物の状態評価に用いるようにしたので、
検査対象物の内部の剥離の有無及び健全部と剥離部と境界である剥離境界の評価判定を効
率よく的確に行なう上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置の構成を示すブロック図である。
図2】検査対象物の状態評価装置の検出ユニットの側面図である。
図3図2のA-A線矢視図である。
図4図2のB矢視図である。
図5】(A)は標準試験体の平面図、(B)は(A)の断面図である。
図6】外装材の状態と外装材の打音の音圧との関係を示す線図である。
図7】標準試験体を用いた基準振幅値の決定処理を説明するフローチャートである。
図8】第1の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置の動作フローチャートである。
図9】第2の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置の構成を示すブロック図である。
図10】検査対象物の状態評価装置の検出ユニットの側面図である。
図11図10のA-A線断面図である。
図12図10のB矢視図である。
図13】標準試験体を用いた基準振幅値の決定処理を説明するフローチャートである。
図14】(A)~(D)は第1~第4マイクと標準試験体の第1、第2中心線との位置関係を90°ずつ位相を変えて示した説明図である。
図15】第2の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置の動作フローチャートである。
図16】検出ユニットを建物外面部にタイルが貼り付けられている部分に位置させた状態を示す正面図である。
図17図16のA-A線断面図である。
図18】(A)~(D)は第1~第4マイクに対応する4つの打音検出波形を示す波形図である。
図19】方法1における評価値算出部46の機能的構成を示すブロック図である。
図20】方法2における評価値算出部46の機能的構成を示すブロック図である。
図21】間隔Hを変更した場合の第1の波形の振幅値を比較するグラフである。
図22】H=1mm時を基準値として相対振幅値と相対打撃力との関係を示すグラフである。
図23】H=1mm時を基準値として相対振幅値と相対打撃力との関係を示すグラフである。
図24】H=1mm時を基準値とした相対振幅値と相対打撃力との関係を示すグラフである。
図25】H=1mm時を基準値とした相対振幅値と相対打撃力との関係を示すグラフである。
図26】実施例にかかる状態評価装置の検出ユニットの構成図である。
図27】検出ユニットの外観写真である。
図28】実施例で使用する試験体の構成図および外観写真である。
図29】隙間有測定時における測定方法を示す写真である。
図30】相対振幅値Arと相対打撃力Frとの関係を示すグラフである。
図31】相対振幅値Arと相対打撃力Frとの関係を示すグラフである。
図32】相対振幅値Arと相対打撃力Frとの関係を示すグラフである。
図33】相対振幅値Arと相対打撃力Frとの関係を示すグラフである。
図34】ケース1における評価値EとFrとの関係を示すグラフである。
図35】ケース2における評価値EとFrとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置(以下、状態評価装置とい
う)について状態評価方法と共に図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、本実施の形態の状態評価装置10の構成について説明する。
本実施の形態では、状態評価装置10が、検査対象物である建物外面部の状態、すなわ
ち、タイルなどの外装材の浮きや剥がれなどの接着状態を評価する場合について説明する

なお、本明細書において、検査対象物とは建物や構造物であり、検査対象物が建物であ
った場合、検査対象物は、建物外面部の他、例えば、室内の床、天井、壁面、室内のコン
クリート躯体などを広く含むものである。
また、本明細書において建物外面とは、建物の最も外側に位置する建物の外面をいい、
建物外面部とは、タイルやモルタルなどの外装材が設けられていない場合には、建物外面
に加え、この建物外面近くの内部の状態を含むものとする。また、建物外面部とは、タイ
ルやモルタルなどの外装材が設けられている場合には、外装材の表面に加え、外装材の表
面の内側の外装材部分や外装材の内側の建物躯体の表面や表面近くの内部を含むものとす
る。
状態評価装置10は、検出ユニット12と、本体ユニット14とで構成されている。
検出ユニット12は、作業者が把持して状態を評価すべき外装材2の表面に当て付けて
使用されるものであり、本体ユニット14は、検出ユニット12で検出された打撃力、打
音および振動のうち一以上の物理量を表す信号に基づいて外装材2の状態を評価するもの
である。
検出ユニット12と本体ユニット14とは、前記の信号を伝送する不図示のケーブルに
よって接続されている。
【0009】
図2から図4に示すように、検出ユニット12は、筐体16と、3個のローラ18A、
18B、18Cと、ハンマー20と、アクチュエータ22と、第1マイク24Aと、第2
マイク24Bと、打撃力センサ26とを含んで構成されている。
筐体16は、矩形状の底壁1602と、底壁1602の四辺から起立する4つの側壁1
604、1606、1608、1610と、4つの側壁1604、1606、1608、
1610の上部を接続する上壁1612とを備えている。
底壁1602には後述するハンマー20が出没する開口1620が設けられている。
3個のローラ18A、18B、18Cのうち、2個のローラ18A、18Bは、底壁1
602の対向する一対の端面に回転可能に取着され、同軸上に配置されている。
残りの1個のローラ18Cは、側壁1608の下部に金具17を介して回転可能に取着
され、平面視したときにローラ18Cは、2個のローラ18A、18Bの軸線と平行する
軸線上に配置されている。
そして、3個のローラ18A、18B、18Cは、それら3個のローラ18A、18B
、18Cの外周面が外装材2の表面に当接された状態で底壁1602の下面と外装材2の
表面とが一定の間隔Hをおいて互いに平行するように設けられている。
すなわち、筐体16は、ハンマー20で検査対象物2を打撃する際には、検査対象物2
から離れた位置に配置される。なお、図2等では底壁1602の下面と外装材2の表面と
の間隔Hがローラ18の半径程度となっているが、例えば間隔Hが数ミリ程度となるよう
に筐体16に対するローラ18の取付位置を設計してもよい。または、ハンマー20によ
る検査対象物2の打撃時に間隔Hが任意の値になるように、筐体16を昇降させる昇降機
構を設けてもよい。
【0010】
図3に示すように、ハンマー20は検査対象物である外装材2を打撃するものであり、
アクチュエータ22はハンマー20に打撃方向の駆動力を加えるものである。
本実施の形態では、アクチュエータ22としてソレノイド22Aを用いている。
ソレノイド22Aは、筐体16の内部に配置され1つの側壁1606に取着されている

ソレノイド22Aは、コイルを備えるソレノイド本体2202、3個のローラ18A、
18B、18Cが外装材2の表面に当接された状態で外装材2の表面と直交する方向に移
動可能に設けられたプランジャ2204とを備えている。
プランジャ2204は、コイルに駆動電力が供給されることでソレノイド本体2202
から突出する突出位置に移動され、駆動電力の供給が停止されることでソレノイド本体2
202に没入する没入位置に移動されるように構成されている。
図3図4に示すように、ハンマー20は、プランジャ2204の下端に設けられ、プ
ランジャ2204の移動により底壁1602の開口1620を介して出没する。
3個のローラ18A、18B、18Cの外周面が外装材2の表面に当接された状態で、
プランジャ2204が突出位置に移動することでハンマー20が外装材2の表面を打撃し
、プランジャ2204が没入位置に移動することでハンマー20が外装材2の表面から離
間する。
【0011】
第1マイク24Aおよび第2マイク24Bは、ハンマー20が外装材2の表面を打撃し
たときに発生する打音を収音して打音に対応する検出信号を生成するものである。
図2図3図4に示すように、第1マイク24Aは、底壁1602の下面に取着され
、第2マイク24Bは、側壁1610の外面の下部に防振ゴム23を介して取着されてい
る。
本実施の形態では、第1マイク24A、第2マイク24Bの2つのマイクを備える場合
について説明するがマイクの数は1つでも3つ以上であってもよい。
【0012】
図3に示すように、打撃力センサ26は、ハンマー20に取着され、ハンマー20の外
装材2への打撃によってハンマー20に発生する反力(振動)、言い換えるとハンマー2
0の打撃力を検出して打撃力に対応する検出信号を生成するものである。このような打撃
力センサ26として圧電センサなど従来公知の様々なセンサが使用可能である。
【0013】
図1に示すように、本体ユニット14は、駆動部30と、操作部32と、調整部34と
、打音波形検出回路36と、打撃力波形検出回路38と、打音波形サンプリング部40と
、打撃力波形サンプリング部42と、波形特性値検出部44と、評価値算出部46と、評
価部50と、出力部52とを含んで構成されている。
【0014】
駆動部30は、ソレノイド本体2202のコイルに駆動電力を供給するものである。
操作部32は、作業者によって操作されることで駆動部30に対してコイルへの駆動電
力の供給を指示するものであり、押しボタンスイッチなどにより構成されている。
調整部34は、駆動部30を制御してハンマー20に与える駆動力を調節するものであ
る。
本実施の形態では、調整部34は、作業者によって操作されることでソレノイド本体2
202のコイルに供給する駆動電力の電圧を増減するものであり、例えば、回転ボリュー
ム(可変抵抗器)などにより構成されている。
このようにハンマー20に与える駆動力を調節可能とすることで、検査対象物の状態や
材料に応じて適切な音圧の打音が得られるようにハンマー20の打撃力を調整できるよう
に図られている。
本実施の形態では、ハンマー20、アクチュエータ22、駆動部30、操作部32、調
整部34によって特許請求の範囲の打撃部が構成されている。
【0015】
打音波形検出回路36は、第1マイク24Aまたは第2マイク24Bで生成された検出
信号をA/D変換して打音検出波形を生成するものである。
本実施の形態では、打音波形検出回路36は、基本的に筐体16の外部にある第2の2
4Bで生成された検出信号を用いて打音検出波形を生成する。これは、筐体16の外部に
ある第2の24Bを使用する方が筺体16内の反響音等の影響を受けにくく、精度よく剥
離判定できるためである。
一方、底壁1602の下面に取着された第1マイク24Aは、例えば第2マイク24B
で正常に集音が行えているかの判定や、第2マイク24Bでの集音に不具合があった場合
のバックアップ用などに用いられる。
なお、後述する第2の実施の形態のように、第1マイク24Aで生成された検出信号と
第2マイク24Bで生成された検出信号とを別系統で処理し、それぞれの評価値を適宜利
用できるようにしてもよい。
【0016】
打撃力波形検出回路38は、打撃力センサ26で生成された検出信号をA/D変換して
打撃力検出波形を生成するものである。
【0017】
打音波形サンプリング部40は、打音波形検出回路36によって生成された打音検出波
形を予め定められたサンプリング周期でサンプリングするものである。
本実施の形態では、打音波形検出回路36、打音波形サンプリング部40によって特許
請求の範囲の波形生成部が構成されている。
【0018】
打撃力波形サンプリング部42は、打撃力波形検出回路38によって生成された打撃力
検出波形を予め定められたサンプリング周期でサンプリングするものである。
本実施の形態では、打撃力センサ26、打撃力波形検出回路38、打撃力波形サンプリ
ング部42によって特許請求の範囲の打撃力波形生成部が構成されている。
【0019】
波形特性値検出部44は、打音波形サンプリング部40でサンプリングされた打音検出
波形を構成する複数の1周期の波形のうちN番目(Nは1以上の自然数)の波形を第1の
波形としたとき、この第1の波形の振幅値または実効値を波形特性値として検出するもの
である。
なお、第1の波形は、その振幅値または実効値が大きいほど、振幅や波長、実効値等の
波長特性値を正確に計測する上で有利となる。したがって、本実施の形態では、打音検出
波形のうち最初に発生する1周期分の波形が2番目以降の波形に比較して振幅値または実
効値が大きく、そのため、打音検出波形のうち最初に発生する1周期分の波形を第1の波
形とした場合について説明する。
しかしながら、第1マイク24A、第2マイク24B、打音波形検出回路36の特性、
検出時の環境、あるいは、検査対象物の状態などの諸条件によっては、打音検出波形のう
ち2番目以降に発生する波形が最も振幅値または実効値が大きなものとなる場合がある。
したがって、その場合は、2番目以降に発生する振幅値または実効値が最も大きくなる
波形を第1の波形とすればよい。
また、本実施の形態では、波形特性値として振幅値を用いる場合について説明する。波
形特性値として実行値を用いる場合には、以下の説明の「振幅値」を「実効値」と読み替
えればよい。
なお、本実施の形態では、第1の波形の振幅は、第1の波形の最大値と最小値との差分
の絶対値とした。しかしながら、第1の波形の振幅は、振幅の基準値(0V)を基準とし
て第1の波形の1周期のうち前半の波形のピーク値(極値)の絶対値としてもよく、ある
いは、第1の波形の1周期のうち後半の波形のピーク値(極値)の絶対値としてもよい。
【0020】
ここで、打撃力波形検出回路38で検出され打撃力波形サンプリング部42でサンプリ
ングされた打撃力検出波形のうち、打音検出波形の第1の波形を発生させる1周期分の波
形を第2の波形とし、第2の波形の最大値または最小値のうち時間的に早い方の値に対応
する時刻を基準時刻とする。
本実施の形態では、打撃力検出波形のうち最初に発生する1周期分の波形を第2の波形
とする。
波形特性値検出部44は、打撃力波形サンプリング部42から供給される打撃力検出波
形に基づいて前記の基準時刻を決定する。
波形特性値検出部44による第1の波形の振幅値の検出は、打音波形サンプリング部4
0によりサンプリングされた波形データのうち基準時刻よりも前の時点からサンプリング
された波形データに基づいてなされる。
このようにすることで第1の波形を確実に検出する上で有利となる。
【0021】
評価値算出部46(46αまたは46β)は、予め定められた標準試験体(図5参照)
を検査対象物としたときに波形特性値検出部44で検出された振幅値を基準振幅値とし、
任意の検査対象物2(標準試験体以外の検査対象物)を検査対象とした時に波形特性値検
出部44で検出された振幅値を基準振幅値で除すことによって正規化された正規化振幅値
を算出し、正規化振幅値を底、任意の数をべき指数としたべき乗演算を行うことにより評
価値(剥離判定パラメータ)を算出する。
本実施の形態では、評価値算出部46の具体的な演算方法について2つ例を挙げて説明
する。
【0022】
評価値算出部46の説明に先立って、標準試験体について説明する。
図5(A)、(B)に標準試験体の一例を示す。
標準試験体54は、本体部5402と、閉塞板5404とを含んで構成されている。
本体部5402は、平面視正方形の扁平な板状を呈しており、例えば、一辺の長さが3
00mm、高さが60mmである。
本体部5402の中央には、高さ方向に沿って円形の孔5406が貫通形成されており
、例えば、孔5406の内径は160mmである。
本実施の形態では、本体部5402の材料としてコンクリートを用いたが、金属材料、
合成樹脂材料など従来公知の様々なソリッドな材料が使用可能である。
【0023】
閉塞板5404は、本体部5402の上面と同じ寸法の正方形のガラス板で構成され、
例えば、閉塞板5404の厚さは10mmである。
本実施の形態では、閉塞板5404の材料としてガラスを用いたが、コンクリート、金
属材料、合成樹脂材料など従来公知の様々なソリッドな材料が使用可能である。
閉塞板5404は、本体部5402と輪郭を合致させた状態で本体部5402の上面に
重ね合わされた状態で閉塞板5404の下面と本体部5402の上面とが図示しない接着
剤により接着され固定されている。
接着剤は、本体部5402の上面の全域と閉塞板5404の下面との間に介在している

本実施の形態では、接着剤としてエポキシ系接着剤を用いたが、接着剤としてシリコー
ン樹脂系接着剤、変性シリコーン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系
接着剤、ゴム系接着剤など従来公知の様々な接着剤が使用可能である。
【0024】
閉塞板5404の上面には、閉塞板5404の対向する2辺の中央を延在し直交する2
本の中心線CL1、CL2が表示されており、それら2本の中心線CL1、CL2の交差
点が孔5406の中心軸と一致しており、交差点がハンマー20で打撃する打撃目標点5
408となっている。
なお、中心線CL1、CL2と、閉塞板5404の四辺との交点方向を、それぞれN方
向、E方向、S方向、W方向とする(以下、単に「N」「E」「S」「W」等と記す)。
このように構成された標準試験体54によれば、閉塞板5404ががたつくことなく本
体部5402にしっかりと固定されているので、状態評価装置10を用いてハンマー20
により打撃目標点5408を打撃したときに閉塞板5404の箇所から発生する打音のば
らつきが少なく、したがって、打音検出波形の振幅のばらつきが抑制されたものとなる。
このような標準試験体54を予め用意しておく。
【0025】
つぎに、評価値算出部46の具体的な演算方法について説明する。
<方法1>
図19は、方法1における評価値算出部46(評価値算出部46αとする)の機能的構
成を示すブロック図である。
評価値算出部46αは、基準特性値決定部4602、正規化特性値算出部4604、べ
き乗演算部4606を備える。
【0026】
基準特性値決定部4602は、ハンマー20により標準試験体54を打撃して波形特性
値検出部44による振幅値の検出を複数回行なうことで得られた複数の振幅値の平均値を
基準振幅値A0として決定するものである。
すなわち、作業者が状態評価装置10を用いて標準試験体54の打撃目標点5408を
ハンマー20で打撃して波形特性値検出部44で振幅値を検出する操作を複数回繰り返す
ることで、複数の振幅値を得られる。
基準特性値決定部4602は、得られた複数の振幅値の平均値を算出し、平均値を基準
振幅値A0として決定する。
【0027】
正規化特性値算出部4604は、任意の検査対象物2を検査対象とした際に波形特性値
検出部44で検出された振幅値Aiを、基準特性値決定部4602で決定された基準振幅
値A0で除すことによって正規化された正規化振幅値Ar=Ai/A0を算出するもので
ある。
正規化振幅値Arを用いる理由は以下の通りである。
状態評価装置10を構成するマイクは、感度に個体差があり、同一音圧の打音を検出し
ても出力する検出信号の大きさにばらつきがある。
そこで、波形特性値検出部44で検出された振幅値Aiを、基準振幅値A0で除すこと
によって正規化された正規化振幅値Arを求めると、マイクの感度のばらつきの影響を受
けることなく、同一音圧の打音を検出すると同一の正規化振幅値を得ることができる。
【0028】
べき乗演算部4606は、正規化特性値算出部4604で算出された正規化振幅値Ar
を底、任意の数をべき指数としたべき乗演算を行い、評価値Eを算出する。本実施の形態
では、べき指数を2とする。すなわち、評価値E=Ar=(Ai/A0)となる。
なお、べき指数となる任意の数とは、例えば自然数(正の整数)の他、分数(3/4な
ど)や小数を含む実数(1.5など)などであってもよい。また、任意の数=1の場合は
、実質的にべき乗演算が行われないこととなる。よって、任意の数は1以外とする。
また、正規化振幅値Ar=Ai/A0の分子部分と分母部分のべき指数を異なる値にし
てもよい。具体的には、例えば評価値E=Ai/A0などとする場合である。この場
合、分子部分と分母部分のべき指数が共に1とならないようにする。すなわち、分子部分
または分母部分いずれかのべき指数が1以外であればよい。
【0029】
<方法2>
図20は、方法2における評価値算出部46(評価値算出部46βとする)の機能的構
成を示すブロック図である。
評価値算出部46βは、最大打撃力検出部4610、1次正規化特性値算出部4612
、基準特性値決定部4614、2次正規化特性値算出部4616、べき乗演算部4618
を備える。
【0030】
最大打撃力検出部4610は、打撃力検出サンプリング部42でサンプリングされた打
撃力検出波形からハンマー20による打撃時にハンマー20に生じる打撃力の最大値、言
い換えると打撃力のピーク値である最大打撃力Fを特定するものである。
【0031】
1次正規化特性値算出部4612は、波形特性値検出部44で検出された第1の波形の
振幅値Aを、最大打撃力Fで除すことによって1次正規化振幅値を算出するものである。
ハンマー20の打撃力は、アクチュエータ22の動作状態や検出ユニット12の設置状
態などの影響を受けることから、ある程度の範囲でばらつくことがある。
そこで、第1の波形の振幅値Aを最大打撃力Fで除すことで振幅値を正規化した1次正
規化振幅値A/Fを得ることにより振幅値に対する打撃力のばらつきの影響の抑制が図ら
れている。
【0032】
基準特性値決定部4614は、ハンマー20により標準試験体54を打撃して波形特性
値検出部44による振幅値の検出を複数回行なうことで得られた複数の1次正規化振幅値
の平均値を基準振幅値A0/F0として決定するものである。
すなわち、作業者が状態評価装置10を用いて標準試験体54の打撃目標点5808を
ハンマー20で打撃して波形特性値検出部44で振幅値を検出し1次正規化特性値算出部
48で1次正規化振幅値を算出する処理を複数回繰り返することで、複数の1次正規化振
幅値を得る。
基準特性値決定部4614は、得られた複数の1次正規化振幅値の平均値を算出し、平
均値を基準振幅値A0/F0として決定する。
なお、基準振幅値A0/F0のうち、A0(第1の波形の振幅値Aの平均値に対応)を
「第1波振幅標準値」、F0(最大打撃力Fの平均値に対応)を「打撃力標準値」と称す
る。
【0033】
2次正規化特性値算出部4616は、任意の検査対象物2を検査対象とした際に1次正
規化特性値算出部48で算出された1次正規化振幅値Ai/Fiを、基準特性値決定部で
決定された基準振幅値A0/F0で除すことによって正規化された2次正規化振幅値Ar
/Fr=(Ai/Fi)/(A0/F0)=(Ai/A0)/(Fi/F0)を算出する
ものである。
なお、2次正規化振幅値Ar/Frのうち、振幅値Aに関する係数(Ar=Ai/A0
)を「相対振幅値」、打撃力に関する係数(Fr=Fi/F0)「を相対打撃力」という

2次正規化振幅値を用いる理由は以下の通りである。
状態評価装置10を構成するマイク24A、24Bは、感度に個体差があり、同一音圧
の打音を検出しても出力する検出信号の大きさにばらつきがある。
そこで、1次正規化特性値算出部4612で算出された1次正規化振幅値Ai/Fiを
、基準振幅値A0/F0で除すことによって正規化された2次正規化振幅値を求めると、
マイク24A、24Bの感度のばらつきの影響を受けることなく、同一音圧の打音を検出
すると同一の2次正規化振幅値を得ることができる。
【0034】
べき乗演算部4618は、2次正規化振幅値Ar/Frのうち、振幅値Aに関する係数
および最大打撃力Fに関する係数をそれぞれ底とし、それぞれ底に対して任意の整数をべ
き指数としたべき乗演算を行い、評価値Eを算出する。振幅値Aに関する係数とは、2次
正規化振幅値Ar/Fr=(Ai/A0)/(Fi/F0)のうち(Ai/A0)部分で
ある。また、最大打撃力Fに関する係数とは、2次正規化振幅値Ar/Fr=(Ai/A
0)/(Fi/F0)のうち(Fi/F0)部分である。
すなわち、方法2における評価値Eは、E=(Ar)/(Fr)(i,jは任意の
数)とする。
例えば、振幅値Aに関する係数に対するべき指数を2、最大打撃力Fに関する係数に対
するべき指数を1とすれば、評価値E=Ar/Fr=(Ai/A0)/(Fi/F0
)となる。
なお、方法1と同様、べき指数となる任意の数とは、例えば自然数(正の整数)の他、
分数(3/4など)や小数を含む実数(1.5など)などであってもよい。
また、任意の数=1の場合は、実質的にべき乗演算が行われないこととなる。よって、
振幅値Aに関する係数または最大打撃力Fに関する係数の少なくともいずれかは、任意の
数を1以外とする。
また、振幅値Aに関する係数および最大打撃力Fに関する係数におけるべき指数が、異
なる値であってよいことは無論である。具体的には、例えば上記のように評価値E=Ar
/Frなどとする場合である。
【0035】
評価部50は、評価値Eに基づいて検査対象物の状態を評価するものである。
詳細に説明すると、評価部50は、評価値Eと予め定められた第1のしきい値T1との
比較結果に基づいて任意の検査対象物、すなわち外装材2の内側の剥離の有無を判定する
【0036】
ここで、第1の波形の振幅と外装材2の剥離の有無との関係について説明する。
図6は、外装材2の状態と外装材2の打音の音圧との関係を示す線図であり、言い換え
ると打音検出波形を示す。図6において、横軸は外装材2をハンマー20で打撃してから
の経過時間(μs)を示し、縦軸は打音の音圧(Pa)を示す。
ハンマー20で打撃する外装材2の箇所として以下の4箇所を選んでいる。
なお、本明細書において、外装材2の健全部とは建物躯体に対する外装材2の接着状態
が良好で剥離が無い部分を示し、外装材2の剥離部とは外装材2が部分的に建物躯体から
剥離した部分を示す。
a:健全部
b:健全部きわ(健全部のうち外装材2が建物躯体から剥離した剥離部に近接した部分)
c:剥離部きわ(剥離部のうち健全部に近接した部分)
d:剥離部
図6から明らかなように、a健全部、b健全部きわの打音検出波形の振幅に対して、c
剥離部きわ、d剥離部の打音検出波形の振幅が大きな値となっていることがわかる。
このような知見から第1の波形の振幅に対応する評価値Eと予め定められた第1のしき
い値T1との比較結果に基づいて外装材2の剥離の有無を判定することが可能となる。
なお、第1のしきい値T1は、図6のように、外装材2の接着状態、言い換えると、外
装材2の剥離の有無のそれぞれに対応した評価値Eを求め、外装材2の剥離を確実に判定
するに足る第1のしきい値T1を設定すればよい。
あるいは、外装材2の健全部において評価値Eを求め、その評価値Eに予め定められた
定数を乗算しあるいは定数を加算するなどして第1のしきい値T1を設定すればよい。
なお、評価値算出部46が方法1を採る場合には、第1のしきい値T1を一定値ではな
く、打撃力F(特に相対打撃力(Fi/F0))の関数として定めてもよい。
【0037】
また、評価部50は、打撃力検出波形の振幅、言い換えると、最初に発生する打撃力検
出波形の振幅が予め定められた第2のしきい値T2を下回ったときに外装材2の状態の評
価を中止する。
すなわち、何らかの原因によってハンマー20による外装材2の表面に対する打撃がな
されなかった場合(空打ち)か、打撃が不十分であった場合には、外装材2の状態の評価
を中止することで、外装材2の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
なお、第2のしきい値T2は、ハンマー20により外装材2の表面を打撃した場合と、
空打ちした場合とのそれぞれで検出された打撃力検出波形の振幅を実測し、外装材2に対
して正確に打撃がなされた状態と、空打ちあるいは不十分な打撃がなされた状態とを確実
に判定するに足る第2のしきい値T2を設定すればよい。
【0038】
出力部52は、判定部による外装材2の剥離の有無の判定結果、および、判定部による
空洞の位置検出結果を出力するものである。
出力部52として以下のものが例示される。
判定結果を表示するディスプレイ装置。
判定結果を印刷媒体に印刷するプリンタ装置。
判定結果を記録媒体に記録する記録装置。
判定結果を回線を介して各種端末装置やデータロガーに送信する通信装置。
【0039】
なお、波形特性値検出部44、評価値算出部46、評価部50は、コンピュータによっ
て構成することができる。
コンピュータは、CPU、ROM、RAM、ハードディスク装置、キーボード、マウス
、ディスプレイ装置、入出力インターフェースなどを有している。
ROMは所定の制御プログラムなどを格納し、RAMはワーキングエリアを提供するも
のである。
ハードディスク装置は、波形特性値検出部44、評価値算出部46、評価部50を実現
するための制御プログラムを格納している。
キーボードおよびマウスは、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ装置は、画像を表示するものであり、例えば、液晶表示装置などで構成さ
れる。ディスプレイ装置は出力部52として機能させることができる。
【0040】
ここで、筐体16の底壁1602の下面と外装材2の表面とに間隔H(隙間)を設ける
理由について説明する。
図21は、間隔Hを0mm、1mm、2mm、3mmとした場合(全ての方向に等しく
隙間を開けた場合)の第1の波形の振幅値を比較するグラフである。
図21では、間隔H=1mmの振幅値とした場合を基準に、H=0mm、2mm、3m
mの場合の振幅値を、ハンマー20に加える駆動力(駆動電圧)ごとに比較している。横
軸が間隔H=1mmの振幅値、縦軸がH=0mm、2mm、3mmの場合の振幅値である

隙間のある間隔H=1mmにおける振幅値と、同じく隙間のある間隔H=2mmおよび
3mmにおける振幅値とは相関は高くなっている(R=0.98以上)。これに対して
、隙間のないH=0mmにおける振幅値との相関はばらつきがみられる。
このことから、筐体16の底壁1602の下面と外装材2の表面とに間隔Hを設けた時
の方が、安定して振幅値を計測できるものと考えられる。
【0041】
つぎに、正規化振幅値に対してべき乗演算を行う理由について説明する。
図22は、H=1mm時を基準値(A0)とした相対振幅値(Ai/A0)と相対打撃
力(Fi/F0)との関係を示すグラフであり、図22(A)は剥離部、図22(B)は
健全部の値を示している。図22の縦軸は方法1における正規化振幅値に対応する。
なお、図22図24において、「gap(またはken_gap)_nαSβ.xlsx」(αおよびβは
整数)との表記があるが、これは標準試験体54(図5参照)のN方向にαmm、S方向
にβmmの隙間をそれぞれ設けたことを示す。αまたはβが0の場合は(その方向には)
隙間なし、またαとβの値が異なる場合には場所によって隙間の高さが異なる(傾きがあ
る)ことになる。
隙間をあけたH=1mm時を基準とした場合、相対打撃力(Fi/F0=Fr)と相対
振幅値(Ai/A0)との相関関係は良好であり、実際の外壁診断時においても安定した
結果を得やすいと考えられる。ただし、隙間がない(H=0mm)場合や一部(片側)の
み隙間を設けた場合には、相関が悪くなっている。
一方で、相対打撃力(Fi/F0)と相対振幅値(Ai/A0)との関係は、原点を通
る比例関係ではない。
【0042】
図23は、図22の縦軸を(Ai/A0)/(Fi/F0)としたグラフであり、図2
3(A)は剥離部、図23(B)は健全部の値を示している。図23の縦軸は方法2にお
ける2次正規化振幅値に対応する。
縦軸を(Ai/A0)/(Fi/F0)=Ar/Frとした場合、打撃力が変わると値
が変化し、一定のしきい値(第1のしきい値T1)で検査対象物の状態を判定することが
不自然なことがわかる。
【0043】
ここで、本発明者らは、打撃に対する音の出力を考えた場合、打撃が1点で行われるの
に対し、被打撃面の振動は面的に伝播して拡散するため、そもそも打撃力と振幅値はそも
そも線形近似とはならないのではと考えた。そこで、Ai/A0にべき乗演算(本実施の
形態では2乗)を行い、相対打撃力との関係を確認したところ、良好な比例関係が得られ
た。
図24は、図22の縦軸を2乗したグラフであり、図24(A)は剥離部、図24(B
)は健全部の値を示している。図24の縦軸は方法1の評価値Eに対応する。
図24に示す通り、(Ai/A0)と相対打撃力Fi/F0はほぼ原点を通る比例関
係となることが確認された。
また、図25は、図24の縦軸を相対打撃力Fi/F0で除した((Ai/A0)
(Fi/F0))グラフであり、図25の縦軸は方法2の評価値Eに対応する。なお、図
25では剥離部の値と健全部の値とを同一のグラフ上にプロットしている。
図25に示すように、(Ai/A0)をFi/F0で除した値を評価値Eとすること
によって、打撃力によらず一定のしきい値(第1のしきい値T1)を用いて検査対象物の
状態を判定することができる。
また、図24に示す通り、(Ai/A0)と相対打撃力Fi/F0はほぼ原点を通る
比例関係となることから、例えば相対打撃力Fi/F0を変数とする1次式などによって
第1のしきい値T1を設定することができる。
【0044】
次に状態評価装置10の動作について説明する。以下の説明では、評価値算出部46に
上記方法1を適用した場合の動作について説明する。
まず、標準試験体54を用いた基準振幅値A0の決定について図7のフローチャートを
参照して説明する。
まず、状態評価装置10の検出ユニット12を標準試験体54の閉塞板5404の上に
載置し、ハンマー20が打撃目標点5408の直上に位置するように位置決めする(ステ
ップS10)。
次に、作業者は、操作部32を操作し(ステップS12)、これによりハンマー20が
閉塞板5404の打撃目標点5408を打撃する(ステップS14)。
ハンマー20が閉塞板5404の打撃目標点5408を打撃することで発生した打音は
、第1マイク24A、第2マイク24Bによって検出され、それら2つのマイクから生成
された検出信号(本実施の形態においては主に第2マイク24B)に基づいて打音波形検
出回路36により打音検出波形が生成され、生成された打音検出波形は打音波形サンプリ
ング部40によってサンプリングされ、サンプリングされた波形データは波形特性値検出
部44に供給される(ステップS16)。
波形特性値検出部44は、供給された波形データに基づいて第1の波形の振幅値を検出
する(ステップS18)。
基準特性値決定部4602は、基準振幅値A0を決定するための波形特性値検出部44
による第1の振幅値の検出動作が所定回数なされたか否かを判定する(ステップS20)

判定結果が否定であれば、基準特性値決定部4602は、操作部32の操作が必要であ
る旨をディスプレイ装置に表示させ、これにより制御はステップS12に戻る。
判定結果が肯定であれば、基準特性値決定部4602は、振幅値の平均値を算出し基準
振幅値を決定し、基準振幅値A0を正規化特性値算出部4604に供給する(ステップS
22)。
以上で基準振幅値の決定動作が終了する。
【0045】
次に、状態評価装置10を用いて検査対象物である建物外面部の状態、すなわち、タイ
ルなどの外装材2(任意の検査対象物)の浮きや剥がれなどの接着状態を評価する場合に
ついて図8のフローチャートを参照して説明する。
まず、作業者は、検出ユニット12の3個のローラ18A、18B、18Cを診断対象
となる外装材2の表面に当接させる(ステップS30)。必要があれば、底壁1602の
下面と外装材2の表面との間隔Hが所定値になるように調整する。
次に、作業者は、操作部32を操作し(ステップS32)、これにより打撃部20が外
装材2の表面を打撃する(ステップS34)。
打撃部20が外装材2の表面を打撃することで発生した打音は、第1マイク24A、第
2マイク24Bによって検出され、それら2つのマイク(本実施の形態においては主に第
2マイク24B)から生成された検出信号に基づいて打音波形検出回路36により打音検
出波形が生成され、生成された打音検出波形は打音波形サンプリング部40によってサン
プリングされ波形特性値検出部44に供給される(ステップS36)。
また、打撃部20が外装材2の表面を打撃することでハンマー20で発生した打撃力は
、打撃力センサ26によって検出され、打撃力センサ26から生成された検出信号に基づ
いて打撃力波形検出回路38により打撃力検出波形が生成され、打撃力検出波形は、打撃
力波形サンプリング部42によってサンプリングされ、サンプリングされた波形データは
波形特性値検出部44に供給され、これにより波形特性値検出部44は基準時刻を決定す
る(ステップS38)。
【0046】
波形特性値検出部44は、サンプリングされた打音検出波形に基づいて、言い換えると
、打音波形サンプリング部40によりサンプリングされた波形データのうち基準時刻より
も前の時点からサンプリングされた波形データによって形成される第1の波形に基づいて
振幅値を検出し正規化特性値算出部4604に供給する(ステップS40)。
正規化特性値算出部4604は、波形特性値検出部44で検出された振幅値Ai、すな
わち、打音波形サンプリング部40によってサンプリングされた波形データを、基準振幅
値A0で除すことによって正規化された正規化振幅値Ar=Ai/A0を算出する(ステ
ップS41)。また、べき乗演算部4606は、正規化特性値算出部4604で算出され
た正規化振幅値Arを底、任意の整数(本実施の形態では2)をべき指数としたべき乗演
算を行い、評価値E=Ar=(Ai/A0)を算出し、評価部50に供給する(ステ
ップS42)。
【0047】
評価部50は、打撃力検出波形の振幅が予め定められた第2のしきい値T2未満である
か否かを判定する(ステップS44)。
打撃力検出波形の振幅が予め定められた第2のしきい値T2未満であると判定された場
合には、評価部50は、外装材2の状態の評価を中止し、出力部52から測定のやり直し
を促す旨の報知を行なう(ステップS50)。このような報知は例えばディスプレイ装置
により所定のやり直しを促す旨のコメントを表示することでなされる。
そして、ステップS30に移行する。
一方、ステップS44で打撃力検出波形の振幅が予め定められた第2のしきい値T2未
満でないと判定された場合には、評価部50は、正規化振幅値と第1のしきい値T1との
比較に基づいて外装材2の剥離の有無の判定を行なう(ステップS46)。
出力部52は、評価部50から供給された外装材2の剥離の有無の判定結果を出力し(
ステップS48)、一連の動作を終了する。これ以降、次の診断対象となる外装材2につ
いて上記と同様の処理を繰り返して行なう。
【0048】
なお、打撃力検出波形の振幅が予め定められた第2のしきい値T2未満であるか否かを
判定する処理ステップ(ステップS44)と、打撃力検出波形の振幅が予め定められた第
2のしきい値T2未満であると判定された場合には、評価部50は、外装材2の状態の評
価を中止し、出力部52から測定のやり直しを促す旨の報知を行なう処理ステップ(ステ
ップS50)とは、打撃力検出波形の検出後であればどの時点で行っても良い。
【0049】
また、方法2の場合には、上記図7および図8のフローチャートの以下の点を変更する

図7については、ステップS18とステップS20の間に、最大打撃力検出部4610
により今回の打撃時にハンマー20に生じる最大打撃力を特定するステップ、1次正規化
特性値算出部4612により第1の波形の振幅値を最大打撃力で除すことで1次正規化振
幅値を算出するステップ、を行う。
また、ステップS20では、基準特性値決定部4614が、基準振幅値を決定するため
1次正規化特性値算出部4612による1次正規化振幅値の算出動作が所定回数なされた
か否かを判定する。
ステップS20の判定結果が否定であれば、基準特性値決定部4614は、操作部32
の操作が必要である旨をディスプレイ装置に表示させ、これにより制御はステップS12
に戻る。
ステップS20の判定結果が肯定であれば、基準特性値決定部4614は、1次正規化
振幅値の平均値を算出し基準振幅値A0/F0を決定し、基準振幅値A0/F0を2次正
規化特性値算出部4616に供給する。
【0050】
図8については、ステップS41およびS42に代えて、最大打撃力検出部4610に
よりサンプリングされた打撃力検出波形に基づいて、外装材2の打撃時の最大打撃力Fi
を特定し1次正規化特性値算出部4612に供給するステップ、1次正規化特性値算出部
4612により第1の波形の振幅値Aiを最大打撃力Fiで除して1次正規化振幅値を算
出するステップ、2次正規化特性値算出部4616により1次正規化特性値算出部461
2から供給された1次正規化振幅値Ai/Fiを基準振幅値A0/F0で除して2次正規
化振幅値Ar/Frを算出するステップ、2次正規化振幅値Ar/Frの振幅値Aに関す
る係数Arおよび打撃力に関する係数をそれぞれ底、任意の整数(本実施の形態では2お
よび1)をべき指数としたべき乗演算を行い、評価値E=Ar/=(Ai/A0)
(Fi/F0)を算出し、評価部50に供給するステップ、を行う。
【0051】
本実施の形態の状態評価装置10によれば、建物躯体に接着された外装材2の表面をハ
ンマー20で打撃した際に発生する打音を検出して打音検出波形を生成し、打音検出波形
を構成する複数の1周期の波形のうち1番目の波形を第1の波形としたとき、第1の波形
の振幅値を検出し、この振幅値に基づく値を基準振幅値で除すことによって正規化された
正規化振幅値を算出し、更に正規化振幅値にべき乗演算を行って評価値を算出し、評価値
に基づいて検査対象物の状態の評価を行なうようにした。
したがって、状態評価装置10毎のばらつき、例えば、マイクの感度の個体差、ハンマ
ー20を駆動するアクチュエータ22の個体差などの影響を受けて、生成された打音検出
波形の振幅がばらついたとしても、正規化振幅値はばらつきの影響を受けないので、検査
対象物の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、正規化振幅値と予め定められた第1のしきい値との比較
結果に基づいて検査対象物の内側の剥離の有無を判定するようにしたので、外装材2の剥
離の有無を簡単かつ確実に判定する上で有利となる。
【0053】
また、本実施の形態によれば、ハンマー20により標準試験体54を打撃して振幅値の
検出を複数回行なうことで得られた複数の振幅値の平均値、またはそれぞれの振幅値ごと
に算出した1次正規化振幅値の平均値を基準振幅値として決定するようにしたので、基準
振幅値の精度の向上を図れることから、評価値をより正確に得ることができ、検査対象物
の状態の評価を正確に行なう上でより有利となる。
【0054】
また、本実施の形態では、ハンマー20に加える打撃方向の駆動力を調節できるように
したので、検査対象物の状態や材料に応じて適切な音圧の打音が得られるようにハンマー
20の打撃力を調整できるため、検査対象物の状態の評価を正確に行なう上でより有利と
なる。
【0055】
また、本実施の形態では、波形特性値検出部44による第1の波形の振幅値の検出は、
打音波形サンプリング部40によりサンプリングされた波形データのうち基準時刻よりも
前の時点からサンプリングされた前波形データに基づいてなされる。
したがって、第1の波形を正確に得ることができ、外装材2の状態の診断を正確に行な
う上で有利となる。
なお、駆動部30からソレノイド22Aに供給される駆動信号からトリガ信号を生成し
、打音波形検出回路36によって生成された打音検出波形を打音波形サンプリング部40
でトリガ信号に同期してサンプリングして第1の波形を得るようにしてもよいが、駆動信
号は時間的なばらつきがあるため、第1の波形を安定して正確に得る上で不利となる。
これに対して、本実施の形態のようにすると、打撃力検出波形から生成された第2の波
形から得た基準時刻よりも前の時点からサンプリングされた波形データによって第1の波
形を得ることができるため、第1の波形を安定して正確に得る上でより有利となる。
【0056】
また、本実施の形態では、打撃力検出波形の振幅が予め定められた第2のしきい値未満
であるときに検査対象物の状態の評価を中止するようにした。
したがって、ハンマー20による外装材2の表面に対する打撃がなされなかった場合(
空打ち)か、打撃が不十分であった場合には、外装材2の状態の評価を中止することによ
り、誤った評価を行なうことが回避でき、外装材2の状態の評価を正確に行なう上で有利
となる。
【0057】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、ハンマー20やアクチュエータ22の部分から発生する不要な
音をマイク20A、20Bが検出しないようにするために、マイク20A、20Bをハン
マー20の外装材2(例えばタイル)への打点から一定の距離(例えばタイル一枚分に相
当する距離)離した位置に配置することが好ましい。
そのため、検査対象物が多数のタイルから構成されている場合は、以下のような点が懸
念される。
すなわち、タイルの打点がタイルの剥離箇所であるにもかかわらず、音をピックアップ
するマイクの位置が剥離のない健全部の真上にある場合、マイク20A、20Bからは健
全部と同等の打音検出信号、すなわち、健全部の場合と同程度に小さい振幅の打音検出信
号しか出力されない場合がある。
その結果、タイルの剥離箇所を健全部と誤判定するおそれがあり、このような誤判定は
、健全部と剥離部との境界付近で発生しやすい傾向となることから、剥離境界の様相をよ
り正確に把握することで正確な検査対象物の状態評価を行なう必要がある。
【0058】
そこで、第2の実施の形態では、検査対象物の表面をハンマー20で打撃した際に発生
する打音を、ハンマー20による打撃点P1を中心に配置した複数のマイクにより検出し
て打音検出波形を各マイク毎に生成し、各マイク毎に打音検出波形をそれぞれ生成するよ
うにした。
そして、第1の実施の形態と同様に各打音検出波形から検出される第1の波形の振幅値
から評価値Eをそれぞれ求め、それら複数の評価値Eに基づいて検査対象物の状態の評価
を行なうようにした。
【0059】
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の部分、部材については第1の
実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について重点的に説明す
る。
図9に示すように、第1の実施の形態と同様に、状態評価装置10Aは、検出ユニット
12Aと、本体ユニット14Aとで構成されている。
【0060】
図10から図12に示すように、検出ユニット12Aは、筐体16と、3個のローラ1
8A、18B、18Cと、ハンマー20と、アクチュエータ22と、第1~第4マイク2
5A~25Dと、打撃力センサ26とを含んで構成されている。
【0061】
図11に示すように、アクチュエータ22は第1の実施の形態と同様にソレノイド22
Aで構成され、ソレノイド22Aの本体部2202は、筐体16内の底壁1602上に設
けられた台1614上に設置されている。
【0062】
第1マイク25A、第2マイク25B、第3マイク25C及び第4マイク25Dは、ハ
ンマー20が外装材2の表面を打撃したときに発生する打音を収音して打音に対応する検
出信号を生成するもので、ハンマー20による外装材2への打撃点P1(図11参照)を
中心にして当該中心から等距離(例えばタイル一枚分に相当する距離:53mm)離して
対称に配置されている。具体的には、打撃点P1を中心とする半径53mmの円周上に互
いに90°の角度をおいて点対称に配置されている。
なお、本実施の形態では、打撃点P1から各マイク25A~25Dまでの距離を53m
mとした場合について説明するが、これに限らず、100mm以内であればよい。
【0063】
このように配置された第1マイク25A、第2マイク25B、第3マイク25C及び第
4マイク25Dのうち、第1マイク25Aは、図10図12に示すように、筐体16を
構成する前面側の側壁1604の外面下部に防振ゴム23を介して取着されている。
第2マイク25Bは、図10図12に示すように、筐体16を構成する後面側の側壁
1606の外面下部に防振ゴム23を介して取着されている。
第3マイク25Cは、図11図12に示すように、筐体16を構成する左面側の側壁
1608の外面下部に防振ゴム23を介して取着されている。
第4マイク25Dは、図10図11図12に示すように、筐体16を構成する右面
側の側壁1610の外面下部に防振ゴム23を介して取着されている。
本実施の形態では、第1マイク25A、第2マイク25B、第3マイク25C及び第4
マイク25Dの4つのマイクを備える場合について説明するが、マイクの数は2つまたは
6つ乃至それ以上であってもよい。
また、各マイク25A~25Dの受音面は、外装材2の検査対象面である表面に対して
正対するように配置されており、外装材2の表面から各マイク25A~25Dまでの高さ
は5mm以内であることが望ましい。
【0064】
図11に示すように、打撃力センサ26は、第1の実施の形態と同様にハンマー20に
取着されている。
【0065】
本体ユニット14Aは、図9に示すように、駆動部30と、操作部32と、調整部34
と、第1~第4打音波形検出回路36A~36Dと、打撃力波形検出回路38と、第1~
第4打音波形サンプリング部40A~40Dと、打撃力波形サンプリング部42と、第1
~第4波形特性値検出部44A~44Dと、第1~第4評価値算出部46A~46Dと、
評価部50と、出力部52とを含んで構成されている。
【0066】
駆動部30、操作部32、調整部34、打撃力波形検出回路38、打撃力波形サンプリ
ング部42は、第1の実施の形態と同様に構成されている。
【0067】
第1~第4打音波形検出回路36A~36Dは、第1~第4マイク25A~25Dで生
成された検出信号をA/D変換してそれぞれ打音検出波形を生成するものである。
第1~第4打音波形サンプリング部40A~40Dは、第1~第4打音波形検出回路3
6A~36Dによって生成された打音検出波形を予め定められたサンプリング周期でサン
プリングするものである。
本実施の形態では、第1~第4打音波形検出回路36A~36D、第1~第4打音波形
サンプリング部40A~40Dが特許請求の範囲の波形生成部を構成している。
【0068】
第1~第4波形特性値検出部44A~44Dは、第1~第4打音波形サンプリング部4
0A~40Dでサンプリングされた各打音検出波形を構成する複数の1周期の波形のうち
N番目(Nは1以上の自然数)の波形を第1の波形としたとき、この第1の波形の振幅値
をそれぞれ検出するものである。
なお、第1~第4波形特性値検出部44A~44Dによる第1の波形の振幅値の検出は
、第1~第4打音波形サンプリング部40A~40Dによりサンプリングされたそれぞれ
の波形データのうち基準時刻よりも前の時点からサンプリングされた波形データに基づい
てなされることは第1の実施の形態と同様である。
【0069】
第1~第4評価値算出部46A~46Dは、第1~第4マイク25A~25Dのそれぞ
れに対応して評価値Eを算出するものであり、第1~第4評価値算出部46A~46Dの
動作は第1の実施の形態の評価値算出部46と同様である。すなわち、第1~第4評価値
算出部46A~46Dは、第1の実施の形態で説明した方法1(図19参照)または方法
2(図20)のいずれかの動作を行う。なお、第1~第4評価値算出部46A~46Dの
動作方法(方法1を採るか、方法2を採るか)は統一されている。
【0070】
評価部50は、第1~第4評価値算出部46A~46Dで算出された各評価値Eに基づ
いて検査対象物の状態を評価するものである。
図6で説明したように、健全部a、健全部きわb、剥離部きわc、剥離部dの打音検出
波形をそれぞれ打音検出波形a、b、c、dとした場合、健全部aの打音検出波形a、健
全部きわbの打音検出波形bの振幅に対して、剥離部きわcの打音検出波形c、剥離部d
の打音検出波形dの振幅が大きな値となっていることがわかる。
このような知見から第1の波形の振幅に対応する評価値Eと予め定められた第1のしき
い値T1との比較結果に基づいて、第1~第4マイク25A~25Dがそれぞれ対向する
箇所の外装材2の剥離の有無の判定を行なうと共に、外装材2の健全部と剥離部の剥離境
界を判定することが可能となる。
したがって、本実施の形態では、評価部50は、第1~第4マイク25A~25Dで検
出された各打音検出波形に対応する評価値Eと、予め定められた第1のしきい値T1との
比較結果に基づいて検査対象物の内側の剥離の有無を判定し、また、検査対象物の健全部
と剥離部の剥離境界を判定する。
【0071】
次に、標準試験体54を用いた基準振幅値の決定について図13のフローチャートを参
照して説明する。以下の説明でも、第1~第4評価値算出部46A~46Dに上記方法1
を適用した場合の動作について説明する。
まず、状態評価装置10の検出ユニット12Aを標準試験体54の閉塞板5404の上
に載置し、ハンマー20が打撃目標点5408の直上に位置するように位置決めする(ス
テップS60)。
この際、平面視した状態で第1~第4マイク25A~25Dが図14(A)に示す2本
の中心線CL1、CL2と一致するように、検出ユニット12Aの位置決めを行なう。
なお、第1~第4マイク25A~25Dと、標準試験体54の第1、第2中心線CL1
、CL2との位置関係は、図14(A)~(D)に示すように、90°ずつ位相が異なる
4種類の位置関係が存在する。
そこで、本実施の形態では、4種類の位置関係のそれぞれで第1~第4マイク25A~
25Dのそれぞれから第1の波形の振幅値を得るようにする。
【0072】
次に、作業者は、操作部32を操作し(ステップS62)、これによりハンマー20が
閉塞板5404の打撃目標点5408を打撃する(ステップS64)。
ハンマー20が閉塞板5404の打撃目標点5408を打撃することで発生した打音は
、第1~第4マイク25A~25Dによって検出され、それら4つのマイクから生成され
た検出信号に基づいて第1~第4打音波形検出回路36A~36Dにより打音検出波形が
それぞれ生成され、生成された各打音検出波形は第1~第4打音波形サンプリング部40
A~40Dによってサンプリングされ、サンプリングされた各波形データは第1~第4波
形特性値検出部44A~44Dに供給される(ステップS66)。
第1~第4波形特性値検出部44A~44Dは、供給された各波形データに基づいて第
1~第4マイク25A~25Dに対応する第1の波形の振幅値をそれぞれ検出する(ステ
ップS68)。
第1~第4評価値算出部46A~46Dの基準振幅算出部4602(図19参照)は、
それぞれ基準振幅値A0を決定するための第1~第4波形特性値検出部44A~44Dに
よる第1の振幅値の検出動作が所定回数なされたか否かを判定する(ステップS70)。
判定結果が否定であれば、基準振幅算出部4602は、操作部32の操作が必要である
旨をディスプレイ装置に表示させ、これにより制御はステップS62に戻る。
次に、作業者は、第1~第4マイク25A~25Dと、標準試験体54の第1、第2中
心線CL1、CL2との4種類の位置関係の全てについて第1の振幅値の検出動作がなさ
れたか否かを判定する(ステップS72)。
ステップS72の判定結果が否定であれば、検出ユニット12Aを90°回転させ(ス
テップS74)、ステップS62に戻る。
ステップS72の判定結果が肯定であれば、第1~第4評価値算出部46A~46Dの
基準特性値決定部4602(図19参照)は、それぞれ各振幅値の平均値を算出して第1
~第4のマイクのそれぞれに対応する基準振幅値A0を決定し、各基準振幅値A0を正規
化特性値算出部4604(図19参照)に供給する(ステップS76)。
以上で基準振幅値の決定動作が終了する。
なお、本実施の形態では、第1~第4マイク25A~25Dと、標準試験体54の第1
、第2中心線CL1、CL2との位置関係の位相を90°ずつ変えて第1の波形の振幅値
を複数個得るとともに、マイク毎に第1の波形の振幅値を平均化して各基準振幅値を決定
したので、標準試験体54の形状や構造の影響が抑制された基準振幅値を得る上で有利と
なる。
【0073】
次に、状態評価装置10を用いて検査対象物である建物外面部の状態、すなわち、タイ
ルなどの外装材2の浮きや剥がれなどの接着状態を評価する場合について図15のフロー
チャートを参照して説明する。
まず、作業者は、検出ユニット12Aの3個のローラ18A、18B、18Cを診断対
象となる外装材2(任意の検査対象物)の表面に当接させる(ステップS80)。
次に、作業者は、操作部32を操作し(ステップS82)、これにより打撃部20が外
装材2の表面を打撃する(ステップS84)。
打撃部20が外装材2の表面を打撃することで発生した打音は、第1~第4マイク25
A~25Dによって検出され、それら4つのマイクから生成された検出信号に基づいて第
1~第4打音波形検出回路36A~36Dによりそれぞれ打音検出波形が生成され、生成
された各打音検出波形は第1~第4打音波形サンプリング部40A~40Dによってサン
プリングされ第1~第4波形特性値検出部44A~44Dに供給される(ステップS86
)。
また、打撃部20が外装材2の表面を打撃することでハンマー20に発生した打撃力は
、打撃力センサ26によって検出され、打撃力センサ26から生成された検出信号に基づ
いて打撃力波形検出回路38により打撃力検出波形が生成され、生成された打撃力検出波
形は打撃力波形サンプリング部42によってサンプリングされ第1~第4波形特性値検出
部44A~44Dに供給される(ステップS88)。
【0074】
第1~第4波形特性値検出部44A~44Dは、サンプリングされた各打音検出波形に
基づいて、言い換えると、第1~第4打音波形サンプリング部40A~40Dによりサン
プリングされたそれぞれの波形データのうち基準時刻よりも前の時点からサンプリングさ
れた波形データによって形成される第1の波形に基づいて第1~第4マイク25A~25
Dに対応する振幅値Aiをそれぞれ検出し第1~第4評価値算出部46A~46Dに供給
する(ステップS90)。
第1~第4評価値算出部46A~46Dにそれぞれ設けられた正規化特性値算出部46
04(図19参照)は、第1~第4波形特性値検出部44A~44Dで検出された振幅値
Ai、すなわち、第1~第4打音波形サンプリング部40A~40Dによってサンプリン
グされた各波形データを、各基準振幅値A0で除すことによって正規化された正規化振幅
値Arを算出する(ステップS91)。そして、第1~第4評価値算出部46A~46D
にそれぞれ設けられたべき乗演算部4606(図19参照)は、正規化特性値算出部46
04で算出された正規化振幅値Arを底、任意の数(本実施の形態では2)をべき指数と
したべき乗演算を行い、評価値E=Ar=(Ai/A0)を算出し、評価部50に供
給する(ステップS92)。
【0075】
評価部50は、打撃力検出波形の振幅が予め定められた第2のしきい値T2未満である
か否かを判定する(ステップS94)。
打撃力検出波形の振幅が予め定められた第2のしきい値T2未満であると判定された場
合には、評価部50は、外装材2の状態の評価を中止し、出力部52から測定のやり直し
を促す旨の報知を行なう(ステップS100)。
そして、ステップS80に移行する。
一方、ステップS94で打撃力検出波形の振幅が予め定められた第2のしきい値T2未
満でないと判定された場合には、評価部50は、評価値Eと第1のしきい値T1との比較
に基づいて外装材2の剥離の有無の判定と、健全部と剥離部の剥離境界の判定とを行なう
(ステップS96)。
出力部52は、評価部50から供給された外装材2の剥離の有無の判定結果、健全部と
剥離部の剥離境界の検出結果を出力し(ステップS98)、一連の動作を終了する。これ
以降、次の診断対象となる外装材2について上記と同様の処理を繰り返して行なう。
【0076】
次に、外装材の健全部と剥離部の剥離境界の判定について具体的に説明する。
図16は、建物外面部にタイルが貼り付けられている部分の正面図であり、検出ユニッ
ト12Aを4箇所の異なる位置P10~P13に位置させた状態を示している。
より詳細に説明すると、建物のコンクリート躯体4の外表面には、外装材2が設けられ
ている。
外装材2は、コンクリート躯体4の外表面に層状に設けられた下地モルタル202と、
下地モルタル202の外表面に張り付け材204により張り付けられたタイル206とを
備えている。
また、図16は、コンクリート躯体4の外表面と下地モルタル202との間に剥離部8
が発生している場合を示しており、L1は剥離部8と健全部6との境界を表わす剥離境界
線を示している。
図中、ハッチングが無い部分が健全部6であり、ハッチングが有る部分が剥離部8であ
る。
図17は、図16のAA線断面図である。なお、図17では、筐体16の底壁1602
の下面と外装材2の表面との間隔Hは図示を省略している。
図18(A)~(D)は検出ユニット12Aの位置P10~P13に対応して検出され
た第1~第4マイク25A~25Dに対応する4つの打音検出波形を示す波形図である。
なお、説明の都合上、図18(A)~(C)に比較して図18(D)は時間軸(横軸)
の単位距離当たりの時間(μs)を拡大して記載している。
また、図18(A)~(C)では、4つの打音検出波形の振幅が非常に小さいため、4
つの打音検出波形が重なり合って表示されている。
【0077】
(1)検出ユニット12Aが位置P10に位置し、打撃点P1および第1~第4マイク2
5A~25Dの全てが健全部6に位置している場合、図17(A)に示すように、第1~
第4マイク25A~25Dの打音検出波形は振幅が小さいものとなっている。
したがって、各マイクの打音検出波形から得られる評価値Eと第1のしきい値T1との
比較に基づいて打撃点P1が健全部6に位置していることがわかる。
(2)検出ユニット12Aが位置P11に位置し、打撃点P1および第2~第4マイク2
5B~25Dが健全部6に位置し、第1マイク25Aが剥離部8きわに位置している場合
図17(B)に示すように、第2~第4マイク25B~25Dの打音検出波形は振幅が
小さいものとなっており、第1マイク25Aの打音検出波形は他の3つのマイクの打音検
出波形の振幅よりも僅かに振幅が大きくなっているものの、その差は無視できる程度であ
る。
したがって、各マイクの打音検出波形から得られる評価値Eと第1のしきい値T1との
比較に基づいて打撃点P1が健全部6に位置していることがわかる。
(3)検出ユニット12Aが位置P12に位置し、打撃点P1および第2~第4マイク2
5B~25Dが健全部6に位置し、第4マイク25Dが剥離部8きわに位置している場合
図17(C)に示すように、第1~第3マイク25A~25Cの打音検出波形は振幅が
小さいものとなっており、第4マイク25Dの打音検出波形は他の3つのマイクの打音検
出波形の振幅よりも僅かに振幅が大きくなっているものの、その差は無視できる程度であ
る。
したがって、各マイクの打音検出波形から得られる評価値Eと第1のしきい値T1との
比較に基づいて打撃点P1が健全部6に位置していることがわかる。
(4)検出ユニット12Aが位置P13に位置し、打撃点P1および第2、第3マイク2
5B、25Cが剥離部8に位置し、第1マイク25A、第4マイク25Dが健全部6に位
置している場合、図17(D)に示すように、第1、第4マイク25A、25Dの打音検
出波形の振幅に比較して、第2、第3マイク25B、25Cの打音検出波形の振幅が顕著
に大きくなっており、振幅の差が明瞭にあらわれている。
したがって、各マイクの打音検出波形から得られる評価値Eと第1のしきい値T1との
比較に基づいて打撃点P1が剥離部8に位置していることが判定される。
【0078】
上述したように第2の実施の形態の状態評価装置10によれば、ハンマー20(打撃点
P1)を中心にして当該中心から等距離で対称な位置に第1~第4マイク25A~25D
を配置することで、第1~第4マイク25A~25Dにより打音検出波形を各マイク毎に
生成し、この各マイク毎に生成されたそれぞれの打音検出波形の第1の波形の振幅に対応
する評価値Eを検査対象物の状態評価に用いるようにした。
言い換えると、第1~第4マイク25A~25Dの打音検出波形から得られる評価値E
と第1のしきい値との比較に基づいて、打撃点P1が健全部6、剥離部8の何れに位置し
ているか判定するようにした。
したがって、第1の実施の形態と同様の効果が奏されることは無論のこと、外装材2の
剥離の有無及び外装材2の健全部6と剥離部8と境界である剥離境界の評価判定を効率よ
く的確に行なう上で有利となる。また、打撃点の周辺に複数のマイクを設けることで、一
つの打撃点の周辺の浮き状況を面で捉えることが可能である。このため、検査対象物の状
態評価を効率よく的確に行なう上で有利となる。
【0079】
なお、実施の形態では、検査対象物が建物であり、タイル206などの外装材2の浮き
や剥がれなどの接着状態を評価する場合について説明したが、本発明は、タイル206や
モルタルなどの外装材2が設けられていない場合には、建物外面に加え、この建物外面近
くの内部の状態を評価する場合、また、タイル206やモルタルなどの外装材2が設けら
れている場合には、外装材2の表面に加え、外装材2の表面の内側の外装材2部分や外装
材2の内側の建物躯体の表面や表面近くの内部を評価する場合に広く適用可能である。
さらに、本発明は、建物の室内の床、天井、壁面、室内のコンクリート躯体などを評価
する場合に広く適用可能である。
また、本発明は、検査対象物が建物に限定されず、高架橋やダムなどの構造物などを評
価する場合に広く適用可能である。
【0080】
(実施例)
以下、本発明にかかる検査対象物の状態評価装置および状態評価方法の実施例について
説明する。
本実施例では、第2の実施の形態に示したような4方向にマイクを配置した検出ユニッ
トを用い、また評価値Eについては方法2のように打撃力を用いて算出するものとする。
<検出ユニットの構成>
図26は実施例にかかる状態評価装置の検出ユニット60の構成図、図27は検出ユニ
ット60の外観写真、表1は検出ユニット60の仕様を示す表である。
なお、図26および図27は検出ユニット60の主要部のみを示し、例えばローラ等の
移動機構については図示を省略している。また、視認性の観点から図27では符号の表示
を省略している。
図26に示すように、実施例にかかる状態評価装置の検出ユニット60は、アルミニウ
ム製の筐体602(筐体602の装置底板612)、マイク604、ソレノイドアクチュ
エータ606、圧電素子608、打撃ヘッド(ハンマー)610を備える。
ソレノイドアクチュエータ606は、最大打撃周波数10Hzでの高速打撃が可能であ
り、打撃ストロークは10mmである。ソレノイドアクチュエータ606の先端に取り付
けられている打撃ヘッド610は、直径6mm、先端曲率半径5mmのステンレス鋼であ
る。最大ストローク時における打撃ヘッド610の装置底板612からの突出長を5mm
とし(図26(B)参照)、多少の凹凸のあるタイル面でも打撃できるようにした。
打撃力センサとして、打撃ヘッド610とソレノイドアクチュエータ606のシャフト
間に圧電素子608を取り付け、打撃時の圧電効果によって生じる電圧値を測定すること
とした。この打撃力センサ(圧電素子608)を用いれば、打撃応答音を補正できるだけ
でなく、打撃力をトリガとして、打撃応答音の大小によらず測定を行うことができるため
、高速連続打撃におけるデータ収録を的確に行える利点がある。
ソレノイドアクチュエータ606の駆動電圧は、3.5,4,5,6,8Vの5段階で
可変とし、検査対象に応じて適切に打撃力の変更ができるようにした。また,打撃力を可
変とすることで、打撃力が打撃応答音に与える影響について実験的に検討を行えるように
した。
【0081】
打撃応答音収録用のマイク604として、表1に示すように、小型かつ軽量で、十分な
周波数特性を持つコンデンサマイクを選定した。マイク604の取り付け位置は、打撃機
構を内蔵するアルミニウム製の筐体602の外部とし、打撃点Pを中心に4方向均等とな
るように4個取り付けた。打撃点Pからマイク中心までの水平距離は40mm(±0.5
mm)とし、マイク602と検査対象物(検査対象面)との距離は、装置底板612を検
査対象面に密着させた場合に7.5mm(±0.5mm)とした。
サンプリング周波数は、打撃力および打撃応答音の波形を適切に収録できるように、2
00kHzとした。
【0082】
【表1】
【0083】
<試験体の構成>
つぎに、実施例で使用する試験体について説明する。
実施例では、図28に示すような3種類の試験体を作製した。高精度で均質性を確保で
き、陶磁器質タイルと似た物性とすることを意図して、いずれの試験体も試験面はガラス
製とした。
試験体Aは、直径300mm、厚さ60mmの円板状の石英ガラス製試験体である。裏
面中央部には直径160mm,深さ50mmの空洞を設けた。結果として、試験体表面に
厚さ10mmの試験面を残存させたものである。
試験体Aは、高精度で加工され、長期間変質することがないことから、装置較正のため
の標準試験体として位置づける。
【0084】
試験体Bは、300mm角、厚さ60mのコンクリート平板の中央を直径160mmで
コア抜きしたものに、厚さ10mmのソーダ石灰ガラス(フロート板ガラス)を硬質のエ
ポキシ樹脂系接着剤で接着(張代約1mm)した試験体である。
試験体Bは、タイルがコンクリートに張り付けられた状態に近い構成で剥離状態を模し
た試験体である。安価で作製可能なため、検査現場などで日常的に用いるのに適している
【0085】
試験体Cは、300mm角、厚さ60mのコンクリート平板に、厚さ10mmのソー
ダ石灰ガラスをエポキシ樹脂系接着剤で全面接着(張代約1mm)した試験体である。
試験体Cは、タイルがコンクリートに完全に接着され、剥離の生じていない健全状態を
模したもので、試験体Aおよび試験体Bの比較対象用の試験体として作製したものである

なお、試験体A~Cに用いたガラス(石英ガラスおよびソーダ石灰ガラス)の仕様を表
2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
<試験体測定条件の設定>
試験体の打撃箇所は、4つのマイク604に対して均等な打撃応答音が入力されると想
定される試験体中央部とした。ここで、検出ユニット60が傾いたり壁面から離れたりす
る状況として、表3に示すように装置底板612と試験面との間に種々の隙間が生じた場
合を想定した測定条件を設定した。
【0088】
【表3】
【0089】
例えば表3に示すケース「n1s1」とは、各試験体における装置底板612と試験体
表面間との隙間が、図28の各試験体平面図に示すN,E,S,Wの4方向のうちN方向
は1mm、S方向は1mmの状態であることを表す。この条件を満たすために、隙間が0
mm以外の場合には、図29に示すとおり、所定の厚みのスペーサー620を装置底板6
12(図中符号なし)の四隅の位置に挿入して測定を行った。測定時における各マイク6
04の向きは、N,E,S,Wのすべての方向を向くように、図29に示す要領で90度
ずつ筐体602を回転させた。
同一測定条件・方向における測定回数は各2回とした。また,打撃力が打撃応答音に与
える影響について考察するため、ソレノイドアクチュエータの駆動電圧606は、3.5
,4,5,6,8Vの5通りとした。
【0090】
<最大打撃力および第1波最大振幅の相対化>
最大打撃力Fおよび第1の波形の振幅値A(以下「第1波振幅値A」とする)を較正す
るための標準値として、標準試験体である試験体Aの試験体中央を測定した際の、最大打
撃力Fの平均値を打撃力標準値F0、また、第1波最大振幅Aの平均値を第1波振幅標準
値A0とする。なお、標準値F0およびA0は、駆動電圧ごとおよび各マイク602ごと
に設定した。
つぎに、上記の標準値を用いて最大打撃力および第1波振幅値を相対化することとし、
下記式(1)および式(2)のように相対打撃力Frおよび相対振幅値Arとして定義し
た。
Fr=(Fi/F0)・・・(1)
Ar=(Ai/A0)・・・(2)
すなわち、第1の実施の形態で説明した2次正規化振幅値Ar/Frのうち、振幅値A
に関する係数を相対振幅値Ar、最大打撃力Fに関する係数を相対打撃力Frとした。
上述のように、装置底板612と試験体表面との間に生じる隙間を想定して表3のとお
り種々の隙間条件を設定したが、どの隙間条件で測定した値を2次正規化用(較正用)の
標準値F0,A0とするかを検討した。
【0091】
<2次正規化における標準値設定のための隙間条件に関する考察>
(1)密着状態(n0s0)を標準的な隙間条件として設定した場合
装置底板612と試験体Aを密着させた状態(n0s0)での測定値FおよびAを標準
値F0およびA0とした場合の、相対振幅値Arと相対打撃力Frとの関係を図30に示
す。なお、図30図33において、(A)には表3に示す全ての隙間条件の結果を示し
、(B)には装置を傾けない4種の隙間条件(n0s0,n1s1,n2s2,n3s3
)のみの結果を示した。
図30では、密着状態である隙間条件n0s0の時のFrおよびArが1となる。
また、図30より、隙間厚が大きくなるとソレノイドアクチュエータ606のストロー
クが増すために相対打撃力Frが増大し、それに応じて相対振幅値Arも増大する傾向が
あることがわかる。
また、密着状態を標準条件とすると、隙間がある条件におけるArとFrの関係におい
て大きなばらつきが生じる。さらに、装置を傾けて片側だけを密着させた条件(n2s0
)では、装置底板612と試験体表面が密着している側のマイク604と、装置底板61
2と試験体表面に隙間がある側のマイク604とで、収録・算出されるArが大きく異な
ることがわかる。
【0092】
(2)隙間状態(n1s1)を標準的な隙間条件として設定した場合
装置底板612と試験体Aとに均等に1mmの隙間を設けた状態(n1s1)での測定
値FおよびAを標準値F0およびA0とした場合の、相対振幅値Arと相対打撃力Frの
関係を図31に示す。
図31について検討すると、ソレノイドアクチュエータ606のストロークが増すこと
でFrが増大し、それに伴いArも増大する傾向は図30と同様である。しかし、密着状
態(n0s0)にある隙間条件を除いたその他の隙間条件においては、ArとFrの関係
におけるばらつきは小さく、より明確な関係性が認められる。
【0093】
(3)標準値F0およびA0を得るための標準隙間条件の設定
図30および図31の結果から、標準試験体である試験体Aを用いて標準値F0および
A0を測定する場合や、タイル壁面など実際の評価対象物の測定を行う場合に、安定した
ArおよびFrを得るためには、所定のスペーサーを装置底板612に取り付けるなどし
て、測定時に常に隙間状態が保持されることが望ましいことが推測される。
一方で、隙間を大きくとりすぎると、ソレノイドアクチュエータ606のストロークの
限界のため、打撃ヘッド610が壁面を打撃しにくくなる。
本実施の形態では、種々検討の結果、隙間条件n1s1を標準隙間条件に設定した。
【0094】
(4)試験体Bおよび試験体CのFr,Arに関する考察
試験体BにおけるArとFrの関係を図32に示す。標準値F0およびA0は、標準試
験体である試験体Aの隙間条件n1s1での測定値FおよびAである。
図32より、試験体BにおけるArとFrの関係は、試験体Aの場合とほぼ同等であり
、最大打撃力Fおよび第1波振幅Aについては試験体Aと試験体Bとの差異がほとんどな
いことがわかる。
つぎに、試験体CにおけるArとFrの関係を図33に示す。標準値F0およびA0は
図32と同様に、試験体Aの隙間条件n1s1での測定値FおよびAである。
図33より、試験体CのFrは、試験体Aのそれと比較して15%程度大きいが、試験
体CのArは非常に小さいことがわかる。
【0095】
<評価値Eについての検討>
以上の検討結果をもとに、相対打撃力Frおよび相対振幅値Arの関係を利用して、相
対打撃力の変動によらず、安定して剥離判定ができるパラメータを検討することとした。
図31のArとFrの関係から、下記式(3)に示す評価値Eを定義する。
E=(Ar)/(Fr)・・・(3)(i,jは任意の数)
本実施例では、変数iおよびjの値として、試行的に式(4)および式(5)の2つの
場合について検討することとした。
(ケース1)E=Ar/Fr・・・(4)(i=1,j=1)
(ケース2)E=Ar/√Fr・・・(5)(i=1,j=1/2)
【0096】
ケース1の場合のEとFrの関係を図34に示す。
なお、図34および図35において(A)は試験体A、(B)は試験体B、(C)は試
験体Cのグラフをそれぞれ示す。
図34より、べき乗演算を行わないケース1ではFrの増加に対して、Eは減少傾向に
あることがわかる。しかしながら、評価値Eは、駆動電圧や隙間条件により打撃力が変動
した場合でも変動せずに安定していることが望ましい。
ケース2の場合のEとFrの関係を図35に示す。
図35より、ケース2ではいずれの試験体においても、隙間条件によらずEはほぼ一定
となることがわかる。したがって、本発明にかかる状態評価装置においては、ケース2の
方が、評価値Eとしてより適していると考える。
また、図35において、剥離状態を模して裏面に空洞部を設けた試験体Aおよび試験体
Bの評価値E(図35(A)および(B)参照)と、コンクリートに完全に接着された健
全状態を模した試験体Cの評価値E(図35(C)参照)とを比較すると、空洞の有無に
よりEの値が大きく異なることがわかる。このことからも、タイルの剥離判定を行う際に
評価値Eを剥離判定パラメータとして用いることは有効であるといえる。
【符号の説明】
【0097】
2 外装材(検査対象物)
10、10A 状態評価装置
20 ハンマー
22 アクチュエータ
24A 第1マイク
24B 第2マイク
25A 第1マイク
25B 第2マイク
25C 第3マイク
25D 第4マイク
26 打撃力センサ
30 駆動部
32 操作部
34 調整部
36 検出回路
36A 第1検出回路
36B 第2検出回路
36C 第3検出回路
36D 第4検出回路
38 打撃力波形検出回路
40 サンプリング部
40A 第1サンプリング部
40B 第2サンプリング部
40C 第3サンプリング部
40D 第4サンプリング部
42 打撃力波形サンプリング部
44 波形特性値検出部
44A 第1波形特性値検出部
44B 第2波形特性値検出部
44C 第3波形特性値検出部
44D 第4波形特性値検出部
46(46α、46β) 評価値算出部
46A 第1評価値算出部
46B 第2評価値算出部
46C 第3評価値算出部
46D 第4評価値算出部
4602 基準特性値決定部
4604 正規化特性値算出部
4606 べき乗演算部
4610 最大打撃力検出部
4612 1次正規化特性値算出部
4614 基準特性値決定部
4616 2次正規化特性値算出部
4618 べき乗演算部
50 評価部
52 出力部
54 標準試験体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図17
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図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35