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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】イヤホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
H04R1/10 104Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022540762
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(86)【国際出願番号】 JP2021022837
(87)【国際公開番号】W WO2022130661
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2020206846
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】佐土島 哲次
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 周二
【審査官】中嶋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-012310(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0348372(US,A1)
【文献】特開2017-103581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波を発生させるスピーカーユニットと、
一端及び前記一端と反対側の他端を有し、且つ前記スピーカーユニットを収容するケースと、
前記ケースの前記一端側に接続され、且つ前記スピーカーユニットから発生される前記音波を放出する音孔が設けられた音導管と、
を備え、
前記ケース内において、前記スピーカーユニットと前記音導管との間には、前記音孔に接続される内部空間が設けられており、
前記ケースには、前記内部空間と前記ケースの外側である外部空間とを連通する複数の通気孔が設けられており、
前記ケースは、
内部に前記スピーカーユニットを収納し、且つ前記内部空間と前記複数の通気孔とを連通する複数の内部開口が設けられた側壁を有する筒状のケース本体と、
前記ケース本体の前記側壁において前記複数の内部開口が設けられた側壁部に配置され、且つ前記複数の通気孔を画定する複数の凹壁部と、
を有する、
イヤホン。
【請求項2】
音波を発生させるスピーカーユニットと、
一端及び前記一端と反対側の他端を有し、且つ前記スピーカーユニットを収容するケースと、
前記ケースの前記一端側に接続され、且つ前記スピーカーユニットから発生される前記音波を放出する音孔が設けられた音導管と、
を備え、
前記ケース内において、前記スピーカーユニットと前記音導管との間には、前記音孔に接続される内部空間が設けられており、
前記ケースには、前記内部空間と前記ケースの外側である外部空間とを連通する複数の通気孔が設けられており、
更に、
前記スピーカーユニットよりも前記他端側で前記ケースに収納され、且つ前記複数の通気孔の開閉を行う複数の開閉部を備える、
イヤホン。
【請求項3】
前記複数の開閉部には、前記複数の通気孔に接続される複数の開閉ポートが設けられており、
前記複数の開閉部は、前記複数の開閉ポート内を移動可能な複数の可動部を有する、
請求項2に記載のイヤホン。
【請求項4】
前記複数の通気孔は、前記ケースの前記他端側に向かって延びており、
前記ケースの前記他端側には、前記外部空間に向かって開口する前記複数の通気孔の複数の外部開口が設けられている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のイヤホン。
【請求項5】
前記複数の通気孔は、前記ケースの前記一端から前記他端に向かって見たとき、放射状に設けられている、
請求項1~のいずれか一項に記載のイヤホン。
【請求項6】
前記複数の通気孔は、前記ケースの前記一端から前記他端に向かって見たとき、等間隔で設けられている、
請求項に記載のイヤホン。
【請求項7】
前記複数の通気孔のそれぞれの長さは、前記スピーカーユニットの高さよりも大きい、
請求項1~のいずれか一項に記載のイヤホン。
【請求項8】
前記複数の通気孔のそれぞれは、前記内部空間から前記外部空間に向かって略一定の開口断面積を有する、
請求項1~のいずれか一項に記載のイヤホン。
【請求項9】
更に、
前記音導管に取り付けられ、且つ前記音孔に接続される貫通孔が設けられたイヤーチップを備える、
請求項1~のいずれか一項に記載のイヤホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、イヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、外耳道挿入型イヤホンの通気構造が開示されている。特許文献1に記載のイヤホンは、スピーカーユニットと、音導管と、イヤーチップと、を備え、音導管には、スピーカーユニットから発生する音波を放出する音孔と、外耳道内と外部空間とを連通する通気孔と、が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/014852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のイヤホンにおいては、音質の向上という点で未だ改善の余地がある。
【0005】
したがって、本開示の目的は、前記課題を解決することにあって、音質を向上させることができるイヤホンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本開示の一態様に係るイヤホンは、
音波を発生させるスピーカーユニットと、
一端及び前記一端と反対側の他端を有し、且つ前記スピーカーユニットを収容するケースと、
前記ケースの前記一端側に接続され、且つ前記スピーカーユニットから発生される前記音波を放出する音孔が設けられた音導管と、
を備え、
前記ケース内において、前記スピーカーユニットと前記音導管との間には、前記音孔に接続される内部空間が設けられており、
前記ケースには、前記内部空間と前記ケースの外側である外部空間とを連通する複数の通気孔が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るイヤホンによれば、音質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施の形態1に係るイヤホンの一例の概略斜視図である。
図2図2は、図1のイヤホンの分解斜視図である。
図3図3は、図1のイヤホンの平面図である。
図4図4は、図1のイヤホンの断面図である。
図5図5は、本開示の実施の形態2に係るイヤホンの一例の概略斜視図である。
図6図6は、図5のイヤホンの分解斜視図である。
図7図7は、図5のイヤホンの断面図である。
図8図8は、開閉部の開閉動作機構の一例を説明する概略図である。
図9図9は、開閉部の開閉動作機構の一例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見)
外耳道内にレシーバを挿入して使用する外耳道挿入型のイヤホンには、密閉型と開放型が存在する。密閉型は、レシーバの先端に装着されたイヤーチップにより外耳道を密閉状態にする。開放型は、通気孔によって外耳道内と外部空間とを繋げ、開放状態(非密閉状態)にする。
【0010】
特許文献1に記載のイヤホンでは、スピーカーユニットに接続される音導管に、音孔及び通気孔が設けられている。音孔は、スピーカーユニットからの音波を放出する。通気孔は、外耳道内と外部空間とを連通する。音導管は外耳道内に挿入できる外形寸法で設計されるため、音導管に音孔及び通気孔を設ける場合、音孔の開口寸法が大幅に制限される。このため、特許文献1に記載のイヤホンのように、音導管に通気孔と音孔を設ける構成においては、音孔が小さく設計されることになり、音質が低下するという問題がある。
【0011】
そこで、本発明者らは、音質を向上させることができるイヤホンの構成を見出し、以下の発明に至った。
【0012】
本開示の第1態様のイヤホンは、音波を発生させるスピーカーユニットと、一端及び前記一端と反対側の他端を有し、且つ前記スピーカーユニットを収容するケースと、前記ケースの前記一端側に接続され、且つ前記スピーカーユニットから発生される前記音波を放出する音孔が設けられた音導管と、を備え、前記ケース内において、前記スピーカーユニットと前記音導管との間には、前記音孔に接続される内部空間が設けられており、前記ケースには、前記内部空間と前記ケースの外側である外部空間とを連通する複数の通気孔が設けられている。
【0013】
本開示の第2態様のイヤホンにおいて、前記複数の通気孔は、前記ケースの前記他端側に向かって延びており、前記ケースの前記他端側には、前記外部空間に向かって開口する前記複数の通気孔の複数の外部開口が設けられていてもよい。
【0014】
本開示の第3態様のイヤホンにおいて、前記ケースは、内部に前記スピーカーユニットを収納し、且つ前記内部空間と前記複数の通気孔とを連通する複数の内部開口が設けられた側壁を有する筒状のケース本体と、前記ケース本体の前記側壁において前記複数の内部開口が設けられた側壁部に配置され、且つ前記複数の通気孔を画定する複数の凹壁部と、を有していてもよい。
【0015】
本開示の第4態様のイヤホンにおいて、前記複数の通気孔は、前記ケースの前記一端から前記他端に向かって見たとき、放射状に設けられていてもよい。
【0016】
本開示の第5態様のイヤホンにおいて、前記複数の通気孔は、前記ケースの前記一端から前記他端に向かって見たとき、等間隔で設けられていてもよい。
【0017】
本開示の第6態様のイヤホンにおいて、前記複数の通気孔のそれぞれの長さは、前記スピーカーユニットの高さよりも大きくてもよい。
【0018】
本開示の第7態様のイヤホンにおいては、更に、前記スピーカーユニットよりも前記他端側で前記ケースに収納され、且つ前記複数の通気孔の開閉を行う複数の開閉部を備えていてもよい。
【0019】
本開示の第8態様のイヤホンにおいては、前記複数の開閉部には、前記複数の通気孔に接続される複数の開閉ポートが設けられており、前記複数の開閉部は、前記複数の開閉ポート内を移動可能な複数の可動部を有していてもよい。
【0020】
本開示の第9態様のイヤホンにおいて、前記複数の通気孔のそれぞれは、前記内部空間から前記外部空間に向かって略一定の開口断面積を有していてもよい。
【0021】
本開示の第10態様のイヤホンにおいては、更に、前記音導管に取り付けられ、且つ前記音孔に接続される貫通孔が設けられたイヤーチップを備えていてもよい。
【0022】
以下、本開示の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。また、各図においては、説明を容易なものとするため、各要素を誇張して示している。
【0023】
(実施の形態1)
[全体構成]
本開示の実施の形態1に係るイヤホンの一例について説明する。図1は、本開示の実施の形態1に係るイヤホン1の一例の概略斜視図である。図2は、図1のイヤホン1の分解斜視図である。図3は、図1のイヤホン1の平面図である。図4は、図1のイヤホン1の断面図である。なお、図中のX、Y、Z方向は、それぞれ、イヤホン1の幅方向、奥行き方向、高さ方向を示している。
【0024】
図1図4に示すように、イヤホン1は、スピーカーユニット10、ケース20、音導管30及びイヤーチップ40を備える。実施の形態1のイヤホン1は、開放型の外耳道挿入型イヤホンである。
【0025】
<スピーカーユニット>
スピーカーユニット10は、音波を発生させる。具体的には、スピーカーユニット10は、外部装置(図示せず)から有線又は無線を介して入力される信号に基づいて、図4に示す矢印D1の方向に向かって音波を発生させる。
【0026】
スピーカーユニット10は、電気信号を振動に変換して音波を発生させる。スピーカーユニット10は、磁気回路と、磁気回路の磁気ギャップ中で移動可能なボイスコイルと、ボイスコイルに取り付けられた振動板と、磁気回路及び振動板を支持するフレームと、を有する。スピーカーユニット10は、ボイスコイルに電気信号を供給し、この電気信号に応じて振動板を振動させることによって音波を発生する。なお、スピーカーユニット10の駆動方式等は、これに限定されるものではない。
【0027】
例えば、スピーカーユニット10は、円板形状を有する。
【0028】
<ケース>
ケース20は、スピーカーユニット10を収容する。ケース20は、一端E1及び一端E1と反対側の他端E2を有する筒形状を有する。ケース20の一端E1には、音導管30が接続されている。ケース20は、略円筒形状を有する。例えば、ケース20を構成する材料は、ABS等の樹脂、あるいはアルミ、ステンレス、マグネシウム合金等の金属であってもよい。
【0029】
図4に示すように、ケース20内において、スピーカーユニット10と音導管30との間には、内部空間21が設けられている。内部空間21は、後述する音導管30の音孔31と繋がっている。
【0030】
ケース20には、内部空間21とケース20の外側である外部空間とを連通する複数の通気孔22が設けられている。複数の通気孔22は、それぞれ、内部空間21と接続される内部開口22aと、外部空間と接続される外部開口22bと、を有する。
【0031】
複数の通気孔22は、ケース20の他端E2側に向かって延びている。具体的には、複数の通気孔22は、イヤホン1の高さ方向(Z方向)においてケース20の一端E1側から他端E2に向かって真っすぐ延びている。複数の内部開口22aは、ケース20の一端E1側で内部空間21に向かって開口している。複数の外部開口22bは、ケース20の他端E2側で外部空間に向かって開口している。
【0032】
複数の通気孔22は、ケース20の一端E1から他端E2に向かって見たとき、放射状に設けられている。複数の通気孔22は、ケース20の一端E1から他端E2に向かって見たとき、同一円周上に設けられている。具体的には、複数の通気孔22は、ケース20の一端E1から他端E2に向かって見たとき、ケース20の周方向に等間隔で設けられている。また、複数の通気孔22は、スピーカーユニット10の外側に設けられている。
【0033】
複数の通気孔22のそれぞれの長さは、スピーカーユニット10の高さよりも大きい。通気孔22の長さとは、内部開口22aから外部開口22bまでの距離を意味する。スピーカーユニット10の高さとは、イヤホン1の高さ方向(Z方向)の長さを意味する。
【0034】
実施の形態1では、複数の通気孔22の数は4つである。なお、複数の通気孔22の数は4つに限定されない。複数の通気孔22の数は、2つ以上であればよい。
【0035】
複数の通気孔22のそれぞれは、内部空間21から外部空間に向かって略一定の開口断面積Saを有する。本明細書において、「略一定」とは±10%以内の誤差を含む。好ましくは、「略一定」とは±5%以内の誤差を含む。
【0036】
複数の通気孔22の開口面積の合計は、音導管30の音孔31の断面積より小さい。複数の通気孔22の開口面積の合計は、3.16平方ミリメートル以上が好ましい。これにより、開放感のあるサウンドを実現することができる。複数の通気孔22の開口面積の合計とは、複数の内部開口22aの開口面積の合計を意味する。音孔31の断面積とは、音孔31において断面積が最も小さくなる部分の断面積を意味する。実施の形態1では、通気孔22が内部空間21から外部空間に向かって略一定の開口断面積Saを有するため、通気孔22の開口面積は、開口断面積Saと等しい。なお、内部開口22aと外部開口22bとのサイズが異なる場合、通気孔22の開口面積はサイズの小さい方の開口の開口面積が適用される。
【0037】
実施の形態1では、ケース20は、ケース本体(筒状体)23、複数の凹壁部24、底板25及び蓋体26を備える。
【0038】
ケース本体23は、内部にスピーカーユニット10を収納する筒形状の部材である。具体的には、ケース本体23は、円筒形状を有する。ケース本体23は、内部空間21と複数の通気孔22とを連通する複数の内部開口22aが設けられた側壁を有する。
【0039】
複数の内部開口22aは、ケース本体23の側壁において等間隔に設けられている。具体的には、ケース本体23の側壁は、内部開口22aが設けられている複数の第1側壁部23aと、内部開口22aが設けられていない複数の第2側壁部23bと、を有する。ケース本体23の周方向において、第1側壁部23aと第2側壁部23bとは交互に配置されている。第1側壁部23aには、後述する凹壁部24が配置される。第2側壁部23bは、外部空間に露出する部分となる。
【0040】
複数の内部開口22aは、ケース本体23の第1側壁部23aを貫通している。複数の内部開口22aは、それぞれ、長手方向と短手方向を有する矩形状に形成されている。実施の形態1では、内部開口22aの長手方向はケース20の周方向であり、短手方向はケース20の高さ方向(Z方向)である。
【0041】
また、ケース本体23の一端E1側の内部には、ケース本体23の内側に突出する環状の突出部23cが設けられている。突出部23cは、複数の内部開口22aを画定する内壁の一部を形成している。突出部23cの内径は、スピーカーユニット10の外径より小さい。これにより、イヤホン1の高さ方向(Z方向)におけるスピーカーユニット10の位置を規制し、内部空間21を確保することができる。また、複数の内部開口22aを内部空間21に滑らかに接続することができる。
【0042】
複数の凹壁部24は、ケース本体23の側壁において複数の内部開口22aが設けられた第1側壁部23aに配置され、複数の第1貫通孔22cを画定する。第1貫通孔22cは、ケース本体23の第1側壁部23aと凹壁部24によって画定される。具体的には、第1貫通孔22cは、ケース本体23の第1側壁部23aを凹壁部24によって覆うことで画定される空間によって形成される。第1貫通孔22cは、通気孔22の一部を形成している。
【0043】
凹壁部24は、略円弧状に湾曲した板状部材と、板状部材の外縁からケース本体23の側壁に向かって突出する外壁と、を有する。板状部材においてケース20の他端E2側は開口端となっており、外壁が設けられていない。板状部材には、ケース20の他端E2側を除いて外壁が設けられている。外壁は、ケース20の一端E1から他端E2に向かう方向に延びる第1外壁と、ケース20の一端E1側においてケース本体23の周方向に延びる第2外壁と、を有する。
【0044】
図3に示すように、複数の凹壁部24は、ケース20の一端E1から他端E2に向かって見たとき、放射状に設けられている。具体的には、ケース20の一端E1から他端E2に向かって見たとき、ケース本体23の周方向に等間隔で設けられている。
【0045】
実施の形態1では、ケース20の他端E2側から見たとき、複数の第1貫通孔22cは、ケース20の周方向に沿って丸く湾曲した形状を有する。
【0046】
底板25は、ケース20の他端E2側において、ケース本体23の端部と接続して配置される。底板25は、中央に円形の貫通孔が設けられた円環形状を有する板部材である。底板25の外径は、ケース本体23の外径より大きい。底板25は、ケース本体23の端部と、複数の凹壁部24の開口端と、に接続されている。底板25の厚み方向(Z方向)から見たとき、丸く湾曲して形成された複数の第2貫通孔22dが同心円上に設けられている。複数の第2貫通孔22dは、複数の凹壁部24の開口端の位置に対応して設けられており、複数の通気孔22の一部を形成している。具体的には、複数の第2貫通孔22dは、複数の凹壁部24の開口端と対向している。即ち、底板25において、複数の第2貫通孔22dは複数の凹壁部24の開口端の直下に設けられている。これにより、第1貫通孔22cと第2貫通孔22dとが繋がっている。
【0047】
蓋体26は、底板25に取り付けられる蓋である。蓋体26は、中央に円形の貫通孔が設けられた円環形状を有する板部材と、円板部材の外縁から底板25の外周に沿って延びる側壁と、を有する。蓋体26の外径は、底板25の外径より大きい。底板25と同様に、蓋体26の厚み方向(Z方向)から見たとき、丸く湾曲した形状を有する複数の第3貫通孔22eが同心円上に設けられている。複数の第3貫通孔22eは、底板25の複数の第2貫通孔22dの位置に対応して設けられており、複数の通気孔22の一部を形成している。具体的には、複数の第3貫通孔22eは、底板25の複数の第2貫通孔22dと対向している。即ち、蓋体26において、複数の第3貫通孔22eは、底板25の複数の第2貫通孔22dの直下に設けられている。これにより、第2貫通孔22dと第3貫通孔22eとが繋がっている。また、ケース20の高さ方向(Z方向)において、蓋体26の外面はケース20の他端E2となる。他端E2となる蓋体26の外面には、外部空間に向かって開口する複数の通気孔22の複数の外部開口22bが設けられている。
【0048】
底板25に対する蓋体26の取り付け構造は、特に限定されない。例えば、取り付けは、嵌合、接着、溶接、ねじなどの取り付け構造を採用してもよい。
【0049】
底板25及び蓋体26の中央の円形の貫通孔には、例えば、イヤホン1が有線である場合、スピーカーユニット10に接続されるケーブルが配置される。
【0050】
実施の形態1では、第1貫通孔22c、第2貫通孔22d及び第3貫通孔22eが繋がることによって通気孔22が形成されている。第1貫通孔22cは、ケース本体23と凹壁部24とによって画定される。第2貫通孔22dは、底板25に設けられている。第3貫通孔22eは、蓋体26に設けられている。第1貫通孔22c、第2貫通孔22d及び第3貫通孔22eによって形成される通気孔22の一端が内部開口22aとなり、通気孔22の他端が外部開口22bとなっている。
【0051】
また、実施の形態1では、ケース20の他端E2側から見たとき、複数の通気孔22は、ケース20の周方向に沿って丸く湾曲した形状を有する。
【0052】
<音導管>
音導管30は、ケース20の一端E1側に接続される筒状の部材である。具体的には、音導管30は、ケース20のケース本体23に接続される円筒形状の部材である。音導管30には、スピーカーユニット10から発生される音波を放出する音孔31が設けられている。音孔31は、音導管30の高さ方向(Z方向)から見て音導管30の中心に設けられ、音導管30の高さ方向(Z方向)に貫通する孔である。音孔31は、イヤホン1の外部とケース20の内部空間21とを連通している。また、ユーザがイヤホン1を外耳に装着したとき、音孔31は外耳道内とケース20の内部空間21とを連通する。例えば、音導管30を構成する材料は、ABS等の樹脂、あるいはアルミ、ステンレス、マグネシウム合金等の金属であってもよい。
【0053】
実施の形態1では、音導管30は、音導管本体(筒状部材)32、フランジ33及び取付部34を有する。
【0054】
音導管本体32は、一端と他端とを有する円筒形状の筒状部材である。音導管本体32の外径は、ケース20の外径よりも小さい。音導管本体32の一端はイヤーチップ40が取り付けられる側の端部であり、音導管本体32の他端はケース20に接続される側の端部である。
【0055】
フランジ33は、音導管本体32の他端において音導管本体32の外側に向かって突出する環状の板部材である。フランジ33は、ケース20の一端E1に接続されている。実施の形態1では、音導管本体32の他端側から見て、フランジ33の中央には、音導管本体32の他端から一端に向かって窪む凹部33aが設けられている。音導管本体32の他端側から見て、凹部33aは、音孔31より大きい円形状を有する。凹部33aの深さを調整することによって、内部空間21の大きさを調整することができる。これにより、音導管30の高さ方向(Z方向)の長さを長くしなくても音質を向上させることができる。
【0056】
取付部34は、音導管本体32の一端において音導管本体32の外側に突出する環状の凸部材である。取付部34には、イヤーチップ40が取り付けられる。
【0057】
<イヤーチップ>
イヤーチップ40は、音導管30に取り付けられる略筒状の部品である。イヤーチップ40には、音孔31に接続される貫通孔41が設けられている。イヤーチップ40は、一端と他端とを有する円筒形状を有する。イヤーチップ40の一端には、ドーム状の傘が形成されている。イヤーチップ40の他端は、音導管30の取付部34に取り付けられる。例えば、イヤーチップ40の他端側において、貫通孔41を画定する内壁に凹部が設けられている。当該凹部が取付部34に嵌合することによって、イヤーチップ40が音導管30に取り付けられてもよい。イヤーチップ40を構成する材料は、例えば、シリコン等のゴム材料であってもよい。
【0058】
イヤホン1が外耳道に挿入された状態において、イヤーチップ40のドーム状の傘が外耳壁面に接触することによってイヤホン1が外耳道内に固定される。
【0059】
以上のように構成された実施の形態1に係るイヤホン1が外耳道内に装着されると、イヤホン1は開放型のイヤホンとして使用することができる。
【0060】
[動作]
イヤホン1の動作について説明する。
【0061】
イヤホン1が外耳道内に装着された状態で、スピーカーユニット10から生じる音波は、内部空間21及び音孔31を通って外耳道内に放出され、鼓膜に伝搬する。ケース20には、内部空間21と外部空間とを連通する複数の通気孔22が設けられているため、外耳道内が密閉状態にならず、開放状態となる。外耳道内が開放状態となることによって、外耳道内と外部空間との圧力との差がなくなり、こもり感を低減し、開放感のあるサウンドを実現することができる。
【0062】
複数の通気孔22の長さによって、外部空間から外耳道内へ入ってくる外音の特性は変化する。イヤホン1では、複数の通気孔22をケース20の他端E2側に設けることによって、複数の通気孔22の長さをスピーカーユニット10の高さよりも大きくしている。このため、外音は、外部空間から複数の通気孔22、内部空間21及び音孔31を通って外耳道内に入ってくる。このように、通気孔22を外音が通過することによって、外音のうち高音域のノイズを低減することができる。外音による高音域のノイズを低減することによって、スピーカーユニット10から生じる音が聞き取りやすくなり、音質が向上する。また、電車のアナウンスなどの外音は中音域となるため、複数の通気孔22でカットされずに外耳道内に入ってくる。このため、イヤホン1を使用しているユーザは、スピーカーユニット10から生じる音を聴きながら、高音域のノイズ以外の外音を聴くことができる。
【0063】
スピーカーユニット10から生じる音は、内部空間21及び複数の通気孔22を通じて外部空間へと放出される。この場合においても、外部空間から複数の通気孔22を通って外部空間へ放出される音のうち高音域が低減される。このため、複数の通気孔22を通ってイヤホン1から漏れる音のうち高音域を低減するができる。これにより、イヤホン1からの音漏れを抑制することができる。
【0064】
[効果]
実施の形態1のイヤホン1によれば、以下の効果を奏することができる。
【0065】
イヤホン1は、スピーカーユニット10、ケース20及び音導管30を備える。スピーカーユニット10は、音波を発生させる。ケース20は、一端E1及び一端E1と反対側の他端E2を有し、且つスピーカーユニット10を収容する。音導管30は、ケース20の一端E1側に接続されている。音導管30には、スピーカーユニット10から発生される音波を放出する音孔31が設けられている。ケース20内において、スピーカーユニット10と音導管30との間には、音孔31と繋がる内部空間21が設けられている。ケース20には、内部空間21とケース20の外側である外部空間とを連通する複数の通気孔22が設けられている。
【0066】
このような構成により、音質を向上させることができる。具体的には、ケース20内において、スピーカーユニット10と音導管30との間に内部空間21を設け、内部空間21と外部空間とを連通する複数の通気孔22をケース20に設けている。イヤホン1では、音導管30に通気孔22を設けなくてもよいため、音導管30の設計の自由度が向上する。これにより、音導管30の音孔31の開口寸法を十分に確保することができるため、音質を向上させることができる。
【0067】
また、イヤホン1では、音導管に通気孔を設ける構成のイヤホンに比べて、低音域の音漏れによる音質劣化を抑制することができる。音導管に通気孔を設ける構成のイヤホンでは、スピーカーユニットから放射された音が外耳道に伝達される前に通気孔から外部空間に放出されてしまい、鼓膜と外耳道で構成される空間の空気圧が低くなり、低音域の音漏れが生じて音質劣化の要因となる。イヤホン1では、音導管30に通気孔22を設けていないため、スピーカーユニット10から放射された音が通気孔22から外部空間に放出されることを抑制し、低音域の音漏れによる音質劣化を抑制することができる。
【0068】
また、音導管30の設計の自由度が向上することによって、音導管30を専用のイヤーチップしか取り付けられない特殊な形状にしなくてもよいため、既製品のイヤーチップを装着可能な音導管30の構成とすることも可能となる。
【0069】
また、イヤホン1では、音導管30の設計の自由度が向上するため、小型化を実現することができる。
【0070】
また、複数の通気孔22が内部空間21と外部空間とを連通することによって、こもり感を低減しつつ、開放感のあるサウンドを実現することができる。
【0071】
複数の通気孔22は、ケース20の他端E2側に向かって延びており、ケース20の他端E2側には、外部空間に向かって開口する複数の通気孔22の複数の外部開口22bが設けられている。このような構成により、複数の通気孔22の複数の外部開口22bがケース20の他端E2側に設けられるため、音質をより向上させることができる。具体的には、外部空間から複数の通気孔22を通って外耳道内に入ってくる外音のうち高音域のノイズを低減することができる。外音による高音域のノイズを低減することによって、スピーカーユニット10から生じる音が聞き取りやすくなり、音質が向上する。また、内部空間21及び複数の通気孔22を通じて外部空間へと放出されるスピーカーユニット10から生じる音においても高音域を低減することができる。これにより、イヤホン1からの音漏れを抑制することができる。
【0072】
ケース20は、ケース本体23と、複数の凹壁部24と、を有する。ケース本体23は、内部にスピーカーユニット10を収納し、且つ内部空間21と複数の通気孔22とを連通する複数の内部開口22aが設けられた側壁を有する筒状体である。複数の凹壁部24は、ケース本体23の側壁において複数の内部開口22aが設けられた第1側壁部23aに配置され、且つ複数の通気孔22を画定する。このような構成により、複数の通気孔22を容易に画定することができる。
【0073】
複数の通気孔22は、ケース20の一端E1から他端E2に向かって見たとき、放射状に設けられている。このような構成により、音質をより向上させることができる。具体的には、スピーカーユニットの歪特性の悪化を抑制し、広帯域低歪の音響特性を実現することができる。
【0074】
複数の通気孔22は、ケース20の一端E1から他端E2に向かって見たとき、等間隔で設けられている。このような構成により、音質をより向上させることができる。また、イヤホン1の美観性が向上する。
【0075】
複数の通気孔22のそれぞれの長さは、スピーカーユニット10の長さよりも大きい。このような構成により、複数の通気孔22において高音域を低減しやすくなり、音質を更に向上させることができる。
【0076】
複数の通気孔22のそれぞれは、内部空間21から外部空間に向かって略一定の開口断面積Saを有する。このような構成により、音抜けが良くなり、より高音域を低減しやすくなる。これにより、音質を更に向上させることができる。
【0077】
イヤホン1は、音導管30に取り付けられ、且つ音孔31に接続される貫通孔41が設けられたイヤーチップ40を更に備える。このような構成により、イヤーチップ40によって外耳道の壁面をシールすることができる。これにより、スピーカーユニット10から生じた音を聴き取りやすくなる。
【0078】
なお、実施の形態1では、イヤホン1がイヤーチップ40を備える例について説明したが、これに限定されない。イヤーチップ40は必須の構成ではない。
【0079】
実施の形態1では、複数の通気孔22の複数の外部開口22bがケース20の他端E2に設けられる例について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の外部開口22bは、ケース20の側壁に設けられていてもよい。
【0080】
実施の形態1では、ケース20の他端E2側から見たとき、複数の通気孔22は、ケース20の周方向に沿って丸く湾曲した形状を有する例について説明したが、これに限定されない。例えば、ケース20の他端E2側から見たとき、複数の通気孔22は、略矩形状、略楕円形状、略円形状、略半円形状などを有していてもよい。
【0081】
実施の形態1では、複数の通気孔22のそれぞれが内部空間21から外部空間に向かって略一定の開口断面積Saを有する例について説明したが、これに限定されない。複数の通気孔22の開口断面積Saは、変化してもよい。例えば、開口断面積Saは、内部空間21から外部空間に向かって大きくなってもよいし、小さくなってもよい。
【0082】
実施の形態1では、複数の通気孔22のそれぞれの長さがスピーカーユニット10の高さよりも大きい例について説明したが、これに限定されない。例えば、通気孔22の長さは、スピーカーユニット10の高さと同じであってもよいし、スピーカーユニット10の高さより小さくてもよい。
【0083】
実施の形態1では、複数の通気孔22がケース20の一端E1から他端E2に向かって見たとき、放射状に設けられている例について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の通気孔22は、ケース20の一端E1から他端E2に向かって見たとき、放射状に設けられていなくてもよい。
【0084】
実施の形態1では、複数の通気孔22がケース20の一端E1から他端E2に向かって見たとき、等間隔で設けられている例について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の通気孔22は、ケース20の一端E1から他端E2に向かって見たとき、異なる間隔で設けられていてもよい。
【0085】
(実施の形態2)
本開示に係る実施の形態2のイヤホンについて説明する。
【0086】
実施の形態2では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態2においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0087】
実施の形態2では、複数の開閉部50を備える点で、実施の形態1と異なる。
【0088】
図5は、本開示の実施の形態2に係るイヤホン1Aの一例の概略斜視図である。図6は、図5のイヤホン1Aの分解斜視図である。図7は、図5のイヤホン1Aの断面図である。
【0089】
図5図7に示すように、イヤホン1Aは、複数の開閉部50を備える。イヤホン1Aでは、複数の開閉部50が複数の通気孔22の開閉を行うことによって、開放状態と密閉状態とを切り替えることができる。実施の形態2では、複数の開閉部50の数は、複数の通気孔22の数と等しい。即ち、複数の開閉部50の数は4つである。
【0090】
イヤホン1Aのケース20Aでは、底板25Aと蓋体26Aがケース20の高さ方向(Z方向)に離れて配置されることによって、底板25Aと蓋体26Aとの間に複数の開閉部50を収納する収納空間27が設けられている。複数の開閉部50は、底板25Aの複数の第2貫通孔22d及び蓋体26Aの複数の第3貫通孔22eの位置に対応して配置されている。具体的には、複数の開閉部50は、収納空間27内において、ケース20の他端E2側から見て、同心円上に配置されている。また、複数の開閉部50は、ケース20の一端E1から他端E2に向かって見たとき、等間隔で配置されている。
【0091】
底板25Aには、複数の開閉部50が配置される複数の第1凹部28aが設けられている。複数の第1凹部28aは、底板25Aにおいて蓋体26Aと対向する側の面に設けられている。複数の第1凹部28aは、ケース20の他端E2側から見て、同心円上に設けられている。また、複数の第1凹部28aは、ケース20の他端E2側から見て、等間隔で設けられている。第1凹部28aは、開閉部50の外形形状に応じた形状を有する。例えば、第1凹部28aは、ケース20の他端E2側から見て、矩形状を有する。第1凹部28aの凹面には、第2貫通孔22dが設けられている。
【0092】
蓋体26Aには、複数の開閉部50が配置される複数の第2凹部28bが設けられている。複数の第2凹部28bは、蓋体26Aにおいて底板25Aと対向する側の面に設けられている。複数の第2凹部28bは、ケース20の一端E1側から見て、同心円上に設けられている。また、複数の第2凹部28bは、ケース20の一端E1側から見て、等間隔で設けられている。第2凹部28bは、開閉部50の外形形状に応じた形状を有する。例えば、第2凹部28bは、ケース20の一端E1側から見て、矩形状を有する。第2凹部28bの凹面には、第3貫通孔22eが設けられている。
【0093】
複数の開閉部50について詳細に説明する。
【0094】
<複数の開閉部>
複数の開閉部50は、スピーカーユニット10よりも他端E2側でケース20Aに収納され、且つ複数の通気孔22の開閉を行う。複数の開閉部50は、底板25Aと蓋体26Aとの間の収納空間27に配置されている。また、複数の開閉部50は、底板25Aの複数の第1凹部28aと蓋体26Aの複数の第2凹部28bに配置された状態で、底板25Aと蓋体26Aとによって挟持される。
【0095】
複数の開閉部50には、複数の通気孔22に接続される複数の開閉ポート51が設けられている。具体的には、1つの開閉部50には、1つの通気孔22に接続される1つの開閉ポート51が設けられている。開閉ポート51は、貫通孔で形成されている。ケース20の他端E2側から見て、開閉ポート51は、第2貫通孔22dと第3貫通孔22eと同様に、丸く湾曲した形状を有する。開閉ポート51は、通気孔22の一部を形成しており、第2貫通孔22dと第3貫通孔22eとを繋いでいる。
【0096】
複数の開閉部50は、制御部(図示せず)によって制御され、複数の開閉ポート51を開閉することによって複数の通気孔22の開閉を行う。具体的には、複数の開閉部50は、複数の開閉ポート51を開くことによって複数の通気孔22を開き、イヤホン1Aを開放状態にする。複数の開閉部50は、複数の開閉ポート51を閉じることによって複数の通気孔22を閉じ、イヤホン1Aを密閉状態にする。実施の形態2では、複数の開閉部50における開閉操作は、制御部によって一括で行われる。
【0097】
図8及び図9は、開閉部50の開閉動作機構の一例を説明する概略図である。図8は、開閉部50が開閉ポート51を開いている状態の一例を示す。図9は、開閉部50が開閉ポート51を閉じている状態の一例を示す。図8及び図9に示すように、開閉部50は、可動部52、電磁石53及び電極54を備える。
【0098】
可動部52は、開閉ポート51内を移動可能な部品である。例えば、可動部52は、プランジャ(可動鉄心)と、プランジャの先端に設けられたロッドと、を有する。可動部52は、電磁石53に電流が流れることによって移動する。
【0099】
電磁石53に電流が流れることによって、可動部52は開閉ポート51内へ移動し、開閉ポート51を塞ぐ。電磁石53に電流が流れなくなると、可動部52は開閉ポート51から退避し、開閉ポート51を開く。例えば、電磁石53は、コイルである。電磁石53は、電極54と電気的に接続されている。
【0100】
電極54は、電磁石53と電気的に接続される導体である。電極54は、有線又は無線を介して制御部に電気的に接続される。電極54は、制御部によって電圧が印加される。これにより、電極54から電磁石53に電流が流れ、可動部52を移動させることができる。
【0101】
[動作]
イヤホン1Aの動作について説明する。
【0102】
イヤホン1Aを外耳道内に装着した状態で、複数の開閉部50のそれぞれにおいて開閉ポート51を開くことによって、イヤホン1Aが開放型として機能する。具体的には、複数の開閉部50のそれぞれにおいて、電極54に電圧が印加されておらず、電磁石53に電流が流れない。このため、可動部52は、開閉ポート51から退避した位置に配置される(図8参照)。これにより、複数の通気孔22が外部空間とつながり、外耳道内が開放状態となる。
【0103】
イヤホン1Aを外耳道内に装着した状態で、複数の開閉部50のそれぞれにおいて開閉ポート51を閉じることによって、イヤホン1Aが密閉型として機能する。具体的には、複数の開閉部50のそれぞれにおいて、電極54に電圧が印加され、電磁石53に電流が流れる。このため、可動部52は、開閉ポート51内に移動し、開閉ポート51を塞ぐ。これにより、複数の通気孔22が外部空間と遮断され、外耳道内が密閉状態となる。
【0104】
このように、イヤホン1Aでは、複数の開閉部50のそれぞれにおいて、可動部52の移動によって開閉ポート51の開閉を行っている。これにより、イヤホン1Aでは、開放状態と密閉状態とを切り替えて使用することができる。
【0105】
[効果]
実施の形態2のイヤホン1Aによれば、以下の効果を奏することができる。
【0106】
イヤホン1Aは、スピーカーユニット10よりも他端E2側でケース20Aに収納され、且つ複数の通気孔22の開閉を行う複数の開閉部50を備える。このような構成により、開放状態と密閉状態とを切り替えることができる。開放状態においては、実施の形態1で述べた効果と同様の効果を奏する。密閉状態においても、通気孔22による音漏れが抑制されるため、低音域の音圧レベルが上昇して高音質の低音再生が可能となる。
【0107】
また、複数の開閉部50をケース20Aの他端E2側に収納することによって、複数の開閉部50により音導管30の設計が制限されることがなくなるため、音質劣化を低減しつつ、小型化を実現することができる。
【0108】
複数の開閉部50には、複数の通気孔22に接続される複数の開閉ポート51が設けられており、複数の開閉部50は、複数の開閉ポート51内を移動可能な複数の可動部52を有する。このような構成により、開放状態と密閉状態とを容易に切り替えることができる。
【0109】
なお、実施の形態2では、複数の開閉部50が4つである例について説明したが、これに限定されない。複数の開閉部50は、複数の通気孔22の開閉を行うことができればよく、複数の開閉部50の数は2つ以上であればよい。例えば、1つの開閉部50が2つ以上の通気孔22の開閉を行ってもよい。
【0110】
実施の形態2では、開閉部50が電気的制御によって複数の通気孔22の開閉を行う例について説明したが、これに限定されない。例えば、開閉部50はユーザの操作によって機械的に複数の通気孔22を開閉する構造を有していてもよい。具体的には、開閉部50は、可動部52を手動で移動させるスイッチを有していてもよい。
【0111】
実施の形態2では、複数の開閉部50における開閉操作が制御部によって一括で行われる例について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の開閉部50における開閉操作は、制御部によって別々に行われてもよい。また、制御部は、複数の開閉部50それぞれの開度を制御してもよい。開度とは、開閉部50の開いている度合いを意味する。例えば、制御部は、入力信号に基づいて、0%以上100%以下の範囲で開閉部50の開度を調節してもよい。例えば、開放感のある音を実現したい場合、制御部によって、複数の開閉部50の開度を大きく制御してもよい。低音を重視した音を実現したい場合、制御部によって複数の開閉部50の開度を小さく制御してもよい。あるいは、開放感と低音とのバランスを調整するために、制御部によって複数の開閉部50の開度を調節してもよい。
【0112】
また、制御部は、複数の開閉部50のそれぞれの開度を異なるように制御してもよい。即ち、制御部は、複数の開閉部50のそれぞれの開度を独立して制御してもよい。あるいは、制御部は、複数の開閉部50を複数のグループに分けて、グループ毎に複数の開閉部50の開度を制御してもよい。例えば、4つの開閉部50を対称に配置している場合、対向する2つの開閉部50をそれぞれ第1グループ及び第2グループと設定してもよい。制御部は、同じグループ内の開閉部50の開度が同じになるように制御してもよい。例えば、制御部は、第1グループに含まれるすべての開閉部50を一括して「開」に制御してもよい。あるいは、制御部は、第1グループに含まれる開閉部50の開度と、第2グループに含まれる開閉部50の開度とが異なるように制御してもよい。例えば、制御部は、第1グループに含まれる開閉部50を「開」に制御し、第2グループに含まれる開閉部50を「閉」に制御してもよい。なお、複数の開閉部50のグルーピングは、これに限定されず、任意の方法で行ってもよい。
【0113】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本開示に係るイヤホンは、外耳道挿入型イヤホンに関する分野に適用できる。
【符号の説明】
【0115】
1,1A イヤホン
10 スピーカーユニット
20,20A ケース
21 内部空間
22 通気孔
22a 内部開口
22b 外部開口
22c 第1貫通孔
22d 第2貫通孔
22e 第3貫通孔
23 ケース本体
23a 第1側壁部
23b 第2側壁部
23c 突出部
24 凹壁部
25,25A 底板
26,26A 蓋体
27 収納空間
28a 第1凹部
28b 第2凹部
30 音導管
31 音孔
32 音導管本体
33 フランジ
34 取付部
40 イヤーチップ
41 貫通孔
50 開閉部
51 開閉ポート
52 可動部
53 電磁石
54 電極
E1 一端
E2 他端
Sa 開口断面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9