(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】情報提供システム、情報提供方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0639 20230101AFI20230814BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20230814BHJP
G06Q 10/1091 20230101ALI20230814BHJP
【FI】
G06Q10/0639
G06Q50/04
G06Q10/1091
(21)【出願番号】P 2019133702
(22)【出願日】2019-07-19
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2018139427
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507234427
【氏名又は名称】公立大学法人岩手県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】中田 恵史
(72)【発明者】
【氏名】堀川 三好
(72)【発明者】
【氏名】岡本 東
【審査官】塩田 徳彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-118838(JP,A)
【文献】特開2014-056410(JP,A)
【文献】特開2013-080305(JP,A)
【文献】特開2017-016452(JP,A)
【文献】特開2017-083285(JP,A)
【文献】特開2015-180873(JP,A)
【文献】特開2015-055934(JP,A)
【文献】特開2016-006612(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0234693(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域内で複数の対象者の身体状態に関する情報を
対象者の識別情報と共に取得する第1取得手段と、
各対象者に設けられた端末装置と、前記所定領域内の複数の位置に設けられた通信装置との何れか一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する第2取得手段と、
前記通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて前記端末装置の位置を推定する位置推定手段と、
各対象者の身体状態に関する情報に基づいて各対象者の行動分類を推定する行動推定手段と、
各対象者の
行動分類及び身体状態に関する情報
と、前記端末装置の位置
とに基づいて、前記所定領域内での各対象者の行動状況に関する情報を提示する提示手段と、
を備える情報提供システム。
【請求項2】
前記行動状況に関する情報は、所定期間毎の行動分類、移動割合、作業量及び歩数のうち少なくとも1つに関する情報を含む、請求項1に記載の情報提供システム。
【請求項3】
前記行動状況に関する情報は、前記所定領域内の1つ以上の場所毎の滞在時間に関する情報を含む、請求項1又は2に記載の情報提供システム。
【請求項4】
前記行動状況に関する情報は、前記所定領域内の1つ以上の場所毎の作業量に関する情報を含む、請求項1~3の何れかに記載の情報提供システム。
【請求項5】
前記行動状況に関する情報は、前記所定領域内の1つ以上の場所での行動状況を表すヒートマップを含む、請求項1~4の何れかに記載の情報提供システム。
【請求項6】
前記行動状況に関する情報は、前記所定領域内の何れかの場所から他の場所への移動確率に関する情報を含む、請求項1~5の何れかに記載の情報提供システム。
【請求項7】
各対象者の属性に関する情報を取得する第3取得手段を備え、
前記提示手段は、各対象者のうち所定属性を有する対象者の行動状況に関する情報を提示する、請求項1~6の何れかに記載の情報提供システム。
【請求項8】
前記所定属性は、複数の属性の中から選択された属性である、請求項7に記載の情報提供システム。
【請求項9】
前記提示手段は
、前記所定領域内の1つ以上の場所での所定行動に関する行動状況を表すヒートマップを、各対象者の行動状況に関する情報として提示する、請求項1~8の何れかに記載の情報提供システム。
【請求項10】
前記所定行動は、複数の行動分類の中から選択された行動である、請求項9に記載の情報提供システム。
【請求項11】
前記行動推定手段は、複数の行動分類の各々に対応する身体状態に関する情報を学習用データとして用いた機械学習によって各対象者の行動分類を推定する、請求項9又は10に記載の情報提供システム。
【請求項12】
前記位置推定手段は、前記複数の位置に設けられた通信装置のうち、送信又は受信した無線信号の受信信号強度の最も高い通信装置を含む少なくとも2つの通信装置を選択し、選択した通信装置の間に受信信号強度の所定期間内の平均値の有意差があるか否かを検定し、前記有意差があると検定された場合に、受信信号強度の最も高い通信装置の位置を前記端末装置の位置として推定する、請求項1~11の何れかに記載の情報提供システム。
【請求項13】
前記位置推定手段は、前記複数の位置に設けられた通信装置のうち少なくとも3つの通信装置の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて生成された、前記少なくとも3つの通信装置の各々と前記端末装置との距離を要素とする第1ベクトルと、前記所定領域内の所定位置に対応する第2ベクトルであって、前記少なくとも3つの通信装置の各々と前記所定位置との距離を要素とする第2ベクトルとの類似度に基づいて、前記端末装置の位置を推定する、請求項1~12の何れかに記載の情報提供システム。
【請求項14】
コンピュータに、
所定領域内で複数の対象者の身体状態に関する情報を
対象者の識別情報と共に取得するステップと、
各対象者に設けられた端末装置と、前記所定領域内の複数の位置に設けられた通信装置との何れか一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得するステップと、
前記通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて前記端末装置の位置を推定するステップと、
各対象者の身体状態に関する情報に基づいて各対象者の行動分類を推定するステップと、
各対象者の
行動分類及び身体状態に関する情報
と、前記端末装置の位置
とに基づいて、前記所定領域内での各対象者の行動状況に関する情報を提示するステップと、
の各ステップを実行させる、情報提供方法。
【請求項15】
コンピュータに、
所定領域内で複数の対象者の身体状態に関する情報を
対象者の識別情報と共に取得する機能と、
各対象者に設けられた端末装置と、前記所定領域内の複数の位置に設けられた通信装置との何れか一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する機能と、
前記通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて前記端末装置の位置を推定する機能と、
各対象者の身体状態に関する情報に基づいて各対象者の行動分類を推定する機能と、
各対象者の
行動分類及び身体状態に関する情報
と、前記端末装置の位置
とに基づいて、前記所定領域内での各対象者の行動状況に関する情報を提示する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供システム、情報提供方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、生産/物流分野等では、例えば工場等で作業を行う複数の作業者の各々の行動分析を行うことによって、業務効率の改善を図ることが考えられている。かかる行動分析技術の一例としては、展示会場や大型店舗等の施設内における人の滞在時間をヒートマップ表示するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載された技術では、所定の位置に設置された電波発信機が発する電波を受信することによって携帯端末機の現在位置を検出するシステムにおいて、滞在時間を4段階に分類して滞在時間軌跡を表示することにより、どの位置にどの時間滞在していたのかを視認できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、施設内の各位置における滞在時間しか把握することができず、例えば、或る位置において何らかの作業を行っていて滞在時間が長くなっているのか、又は、当該位置において休憩しているために滞在時間が長くなっているのか等のように、行動分析の対象者が当該位置においてどのように行動していたのか(行動状況)を把握することは困難であった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、所定領域内での対象者毎の行動状況を容易に把握することの可能な情報提供システム、情報提供方法、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、所定領域内で複数の対象者の身体状態に関する情報を取得する第1取得手段と、各対象者に設けられた端末装置と、前記所定領域内の複数の位置に設けられた通信装置との何れか一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する第2取得手段と、前記通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて前記端末装置の位置を推定する位置推定手段と、各対象者の身体状態に関する情報及び前記端末装置の位置の少なくとも一方に基づいて、前記所定領域内での各対象者の行動状況に関する情報を提示する提示手段と、を備える情報提供システムを提供する(発明1)。
【0008】
ここで、対象者の身体状態に関する情報とは、例えば、対象者の加速度(所定箇所の加速度であってもよい)、角速度(所定箇所の角速度であってもよい)、心拍数(脈拍)、血圧、体温、発汗量、歩数、歩行速度、姿勢、運動強度(例えば、心拍数÷最大心拍数)又は消費カロリー等の値であってもよいし、対象者の加速度、角速度、心拍数(脈拍)、血圧、体温、発汗量、歩数、歩行速度、姿勢、運動強度、消費カロリー等の何れかの値を所定の計算式に代入することによって得られた値であってもよいし、対象者の加速度、角速度、心拍数(脈拍)、血圧、体温、発汗量、歩数、歩行速度、姿勢、運動強度、消費カロリー等の何れかの度合いを表す情報であってもよい。
【0009】
また、受信信号強度に関する情報とは、例えば、受信信号強度の値であってもよいし、受信信号強度の値を所定の計算式に代入することによって得られた値であってもよいし、受信信号強度の度合いを表す情報であってもよい。
【0010】
かかる発明(発明1)によれば、通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいて推定された端末装置の位置と、各対象者の身体状態に関する情報と、の少なくとも一方に基づいて、所定領域内での各対象者の行動状況に関する情報が提示されるので、例えば、所定領域内の1つ以上の場所での対象者の滞在時間が単にヒートマップで提示されるのではなく、当該所定領域内での各対象者の行動状況(例えば、当該所定領域内の1つ以上の位置において各対象者がどのように行動していたのか等)に関する情報を提示することが可能になることから、所定領域内での対象者毎の行動状況を容易に把握することができる。
【0011】
上記発明(発明1)においては、前記行動状況に関する情報は、所定期間毎の行動分類、移動割合、作業量及び歩数のうち少なくとも1つに関する情報を含んでもよい(発明2)。
【0012】
かかる発明(発明2)によれば、所定領域内での各対象者の所定期間毎の行動分類、移動割合、作業量及び歩数のうち少なくとも1つを容易に把握することができる。
【0013】
上記発明(発明1~2)においては、前記行動状況に関する情報は、前記所定領域内の1つ以上の場所毎の滞在時間に関する情報を含んでもよい(発明3)。
【0014】
かかる発明(発明3)によれば、所定領域内の1つ以上の場所毎の各対象者の滞在時間を容易に把握することができる。
【0015】
上記発明(発明1~3)においては、前記行動状況に関する情報は、前記所定領域内の1つ以上の場所毎の作業量に関する情報を含んでもよい(発明4)。
【0016】
かかる発明(発明4)によれば、所定領域内の1つ以上の場所毎の各対象者の作業量を容易に把握することができる。
【0017】
上記発明(発明1~4)においては、前記行動状況に関する情報は、前記所定領域内の1つ以上の場所での行動状況を表すヒートマップを含んでもよい(発明5)。
【0018】
かかる発明(発明5)によれば、所定領域内の1つ以上の場所毎の各対象者の行動状況を、ヒートマップによって容易に把握することができる。
【0019】
上記発明(発明1~5)においては、前記行動状況に関する情報は、前記所定領域内の何れかの場所から他の場所への移動確率に関する情報を含んでもよい(発明6)。
【0020】
かかる発明(発明6)によれば、各対象者が所定領域内をどのように移動しているのかを容易に把握することができる。
【0021】
上記発明(発明1~6)においては、各対象者の属性に関する情報を取得する第3取得手段を備え、前記提示手段は、各対象者のうち所定属性を有する対象者の行動状況に関する情報を提示してもよい(発明7)。
【0022】
かかる発明(発明7)によれば、複数の属性のうち所定属性を有する対象者の行動状況に関する情報を提示することが可能になるので、行動分析の対象となる者を、所定属性を有する対象者に限定した状態で、所定領域内での行動状況を把握することができる。
【0023】
上記発明(発明7)においては、前記所定属性は、複数の属性の中から選択された属性であってもよい(発明8)。
【0024】
かかる発明(発明8)によれば、複数の属性の中から選択された属性を有する対象者の行動状況に関する情報を提示することが可能になるので、例えば、複数の属性の中から所望の属性を選択することによって、行動分析の対象となる者を当該所望の属性を有する対象者に限定した状態で、所定領域内での行動状況を把握することができる。
【0025】
上記発明(発明1~8)においては、各対象者の身体状態に関する情報に基づいて各対象者の行動分類を推定する行動推定手段を備え、前記提示手段は、各対象者の行動分類及び身体状態に関する情報と、前記端末装置の位置とに基づいて、前記所定領域内の1つ以上の場所での所定行動に関する行動状況を表すヒートマップを、各対象者の行動状況に関する情報として提示してもよい(発明9)。
【0026】
かかる発明(発明9)によれば、通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいて推定された端末装置の位置と、各対象者の身体状態に関する情報に基づいて推定された各対象者の行動分類と、各対象者の身体状態に関する情報と、に基づいて、所定領域内の1つ以上の場所での所定行動に関する行動状況を表すヒートマップが提示されるので、例えば、所定領域内の1つ以上の場所での対象者の滞在時間が単にヒートマップで提示されるのではなく、対象者が当該所定領域内の1つ以上の場所で所定行動を行っていたときの滞在時間等をヒートマップで提示することが可能になる。
【0027】
上記発明(発明9)においては、前記所定行動は、複数の行動分類の中から選択された行動であってもよい(発明10)。
【0028】
かかる発明(発明10)によれば、複数の行動分類の中から選択された行動に関する行動状況を表すヒートマップを提示することが可能になるので、例えば、複数の行動分類の中から所望の行動を選択することによって、所定領域内での当該所望の行動に関する行動状況を把握することができる。
【0029】
上記発明(発明9~10)においては、前記行動推定手段は、複数の行動分類の各々に対応する身体状態に関する情報を学習用データとして用いた機械学習によって各対象者の行動分類を推定してもよい(発明11)。
【0030】
かかる発明(発明11)によれば、主観的な判断を必要とすることなく、各対象者の身体状態に関する情報に基づいて各対象者の行動分類を推定することができる。
【0031】
上記発明(1~11)においては、前記位置推定手段は、前記複数の位置に設けられた通信装置のうち、送信又は受信した無線信号の受信信号強度の最も高い通信装置を含む少なくとも2つの通信装置を選択し、選択した通信装置の間に受信信号強度の所定期間内の平均値の有意差があるか否かを検定し、前記有意差があると検定された場合に、受信信号強度の最も高い通信装置の位置を前記端末装置の位置として推定してもよい(発明12)。
【0032】
かかる発明(発明12)によれば、複数の通信装置の各々に対応する受信信号強度を単に大小比較するのではなく、特定の通信装置の受信信号強度と他の通信装置の受信信号強度との間に有意差があるのか否か(つまり、受信信号強度の差が偶然的なものであるのか否か)に基づいて端末装置の位置を推定することによって、例えば電波のゆらぎ等の影響を低減させた上で端末装置の位置を正確に推定することができる。
【0033】
上記発明(1~12)においては、前記位置推定手段は、前記複数の位置に設けられた通信装置のうち少なくとも3つの通信装置の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて生成された、前記少なくとも3つの通信装置の各々と前記端末装置との距離を要素とする第1ベクトルと、前記所定領域内の所定位置に対応する第2ベクトルであって、前記少なくとも3つの通信装置の各々と前記所定位置との距離を要素とする第2ベクトルとの類似度に基づいて、前記端末装置の位置を推定してもよい(発明13)。
【0034】
ここで、通信装置及び端末装置のうち無線信号を受信する一方の装置の受信特性(例えばアンテナ利得等)は、例えば当該一方の装置の種類毎及び/又は個体毎に異なり得ることから、端末装置が所定領域内の或る位置に存在する場合に当該一方の装置が受信した無線信号の受信信号強度は、当該一方の装置の種類毎及び/又は個体毎に異なる場合がある。すなわち、通信装置及び端末装置の距離と、受信信号強度との関係は、通信装置及び端末装置のうち無線信号を受信する一方の装置の種類毎及び/又は個体毎に異なる場合がある。
【0035】
かかる発明(発明13)によれば、少なくとも3つの通信装置の各々に対応する受信信号強度に関する情報に基づいて、少なくとも3つの通信装置の各々と端末装置との距離を要素とする第1ベクトルを生成しているので、例えば通信装置及び端末装置のうち無線信号を受信する一方の装置の受信特性が当該一方の装置の種類毎及び/又は個体毎に異なる場合であっても、第1ベクトルを、少なくとも3つの通信装置の各々に対応する受信信号強度と、少なくとも3つの通信装置の各々と端末装置との距離との関係に基づいて、少なくとも3つの通信装置毎に生成することができる。そして、第1ベクトルと、少なくとも3つの通信装置の各々と所定領域内の所定位置との距離を要素とする第2ベクトルとの類似度に基づいて端末装置の位置を推定しているので、例えば第1ベクトルと第2ベクトルとの類似度が高い場合には、第2ベクトルに対応する所定位置を端末装置の位置と推定することができる。このように、受信信号強度に関する情報に基づいてもとめた通信装置及び端末装置間の距離を単に比較するのではなく、第1ベクトルと第2ベクトルとの類似度から端末装置の位置を推定することにより、通信装置及び端末装置のうち無線信号を受信する一方の装置の受信特性の違いに拘らずに端末装置の位置を正確に推定することができる。
【0036】
第二に本発明は、コンピュータに、所定領域内で複数の対象者の身体状態に関する情報を取得するステップと、各対象者に設けられた端末装置と、前記所定領域内の複数の位置に設けられた通信装置との何れか一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得するステップと、前記通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて前記端末装置の位置を推定するステップと、各対象者の身体状態に関する情報及び前記端末装置の位置の少なくとも一方に基づいて、前記所定領域内での各対象者の行動状況に関する情報を提示するステップと、の各ステップを実行させる、情報提供方法を提供する(発明14)。
【0037】
第三に本発明は、コンピュータに、所定領域内で複数の対象者の身体状態に関する情報を取得する機能と、各対象者に設けられた端末装置と、前記所定領域内の複数の位置に設けられた通信装置との何れか一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する機能と、前記通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて前記端末装置の位置を推定する機能と、各対象者の身体状態に関する情報及び前記端末装置の位置の少なくとも一方に基づいて、前記所定領域内での各対象者の行動状況に関する情報を提示する機能と、を実現させるためのプログラムを提供する(発明15)。
【発明の効果】
【0038】
本発明の情報提供システム、情報提供方法、プログラムによれば、所定領域内での対象者毎の行動状況を容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の一実施形態に係る情報提供システムの基本構成を概略的に示す図である。
【
図3】情報提供装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】情報提供システムで主要な役割を果たす機能を説明するための機能ブロック図である。
【
図8】位置推定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】通信装置及び端末装置間の距離と、受信信号強度との関係を示す図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る情報提供システムの主要な処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】変形例に係る情報提供システムにおける位置推定の対象となる複数のサブ領域の一例を示す図である。
【
図15】第2ベクトルデータの構成例を示す図である。
【
図16】ベクトル空間モデルの一例を示す図である。
【
図17】行動状況データの他の構成例を示す図である。
【
図18】(a)は、所定期間毎の作業者の作業量の一例を示す図であり、(b)は、所定期間毎の作業者の移動及び静止の割合の一例を示す図である。
【
図19】(a)は、所定期間毎の作業者の1つ以上の位置における滞在時間の割合の一例を示す図であり、(b)は、所定期間内の作業者の1つ以上の位置における滞在時間の割合の一例を示す図である。
【
図20】(a)は、所定期間毎の作業者の1つ以上の位置における作業量の割合の一例を示す図であり、(b)は、所定期間内の作業者の1つ以上の位置における作業量の割合の一例を示す図である。
【
図21】1つ以上の位置での作業者の行動状況を表すヒートマップの一例を示す図である。
【
図22】何れかの位置から他の位置への作業者の移動確率の一例を示す図である。
【
図23】変形例に係る情報提供システムの主要な処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。ただし、この実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
(1)情報提供システムの基本構成
図1は、本発明の一実施形態に係る情報提供システムの基本構成を概略的に示す図である。
図1に示すように、この情報提供システムでは、例えば工場の屋内等の所定領域R内に設けられた複数の通信装置10と、領域R内に存在する1人以上の作業者(対象者)に装着された(設けられた)端末装置20との間で無線信号の送受信を行い、情報提供装置30が、通信網NWを介して各通信装置10から取得した情報に基づいて、領域R内の1つ以上の場所での所定行動に関する行動状況を表すヒートマップを提示するようになっている。各通信装置10と、情報提供装置30とは、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等の通信網NW(ネットワーク)に接続されている。
【0042】
各通信装置10は、領域R内で無線LAN(例えばWi-Fi(登録商標))を用いて端末装置20と無線通信を行うことが可能な位置に設けられている。また、各通信装置10には、端末装置20から送信された無線信号を受信したときの受信信号強度(RSSI)を検出するRSSI回路が設けられている。各通信装置10は、例えば、2つ以上の端末装置20間の無線通信を中継する装置であってもよいし、端末装置20と領域R内に存在する他の端末装置(図示省略)との間の無線通信を中継する装置であってもよいし、端末装置20と、通信網NWを介して接続された他の装置との間の通信を中継する装置であってもよい。また、各通信装置10は、パケットキャプチャであってもよい。
【0043】
端末装置20は、領域R内に存在する場合に、無線LANを用いて各通信装置10と無線通信を行うことができるように構成されている。また、端末装置20は、各通信装置10との間で無線通信を行うために、自身の識別情報(例えばMACアドレス等)を含む無線信号(例えばプローブ要求等)を所定間隔(例えば数秒)で送信するように構成されている。さらに、端末装置20には、端末装置20を装着した作業者の身体状態(本実施形態では、3軸方向の加速度及び3軸方向の角速度)を連続的又は断続的(例えば、所定間隔(例えば50ミリ秒や5秒等)毎)に測定する測定装置25(
図2に示す)が設けられている。ここで、端末装置20から送信される無線信号には、測定装置25によって測定された身体状態に関する情報が含まれてもよい。なお、端末装置20は、例えば作業者の身体に装着可能なウェアラブルデバイスであってもよいし、作業者が所持可能な携帯型デバイスであってもよい。また、端末装置20は、例えば、携帯端末、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ、双方向の通信機能を備えたテレビジョン受像機(いわゆる多機能型のスマートテレビも含む。)等のように、個々のユーザによって操作される端末装置であってもよい。
【0044】
なお、ここでは、Wi-Fi(登録商標)を用いて無線通信を行う場合を一例として説明しているが、通信方式は、この場合に限られない。例えば、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、UWB、光無線通信(例えば赤外線)等の無線通信方式が用いられてもよいし、USB等の有線通信方式が用いられてもよい。
【0045】
情報提供装置30は、作業者の身体状態に関する情報と、端末装置20から送信された無線信号を各通信装置10が受信したときの受信信号強度に関する情報と、を各通信装置10から取得するように構成されている。また、情報提供装置30は、各作業者の身体状態に関する情報に基づいて各作業者の行動分類(例えば、作業内容)を推定し、各通信装置10が受信した無線信号の受信信号強度に基づいて端末装置20の位置を推定し、各作業者の行動及び身体状態に関する情報と、端末装置20の位置とに基づいて、領域R内の1つ以上の場所での所定行動に関する行動状況を表すヒートマップを提示するように構成されている。情報提供装置30は、例えば、汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0046】
(2)端末装置の構成
図2を参照して端末装置20の構成について説明する。
図2は、端末装置20の内部構成を示すブロック図である。
図2に示すように、端末装置20は、CPU(Central Processing Unit)21と、ROM(Read Only Memory)22と、RAM(Random Access Memory)23と、記憶装置24と、測定装置25と、通信インタフェース部26とを備えており、各部間の制御信号又はデータ信号を伝送するためのバス20aが設けられている。
【0047】
CPU21は、電源が端末装置20に投入されると、ROM22又は記憶装置24に記憶された各種のプログラムをRAM23にロードして実行する。また、CPU21は、測定装置25が作業者の身体状態を測定する毎に、測定された身体状態に関する情報を、通信インタフェース部26を介して各通信装置10に送信するように構成されている。
【0048】
記憶装置24は、例えば、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、磁気記憶装置(例えばHDD(Hard Disk Drive)、フロッピーディスク(登録商標)、磁気テープ等)、光ディスク等の不揮発性の記憶装置であってもよいし、RAM等の揮発性の記憶装置であってもよく、CPU21が実行するプログラムやCPU21が参照するデータを格納する。
【0049】
測定装置25は、端末装置20が設けられた作業者の身体状態(3軸方向の加速度及び3軸方向の角速度)を連続的又は断続的に測定する装置(例えば、3軸加速度センサ、角速度センサ等)を含む。なお、本実施形態では、3軸方向の加速度及び3軸方向の角速度を身体状態に関する情報として取得する場合を一例として説明しているが、身体状態に関する情報は、例えば、心拍数(脈拍)、血圧、体温(例えば、皮膚温)、発汗量、運動強度(例えば、心拍数÷最大心拍数)、消費カロリー等であってもよい。この場合、測定装置25は、例えば、心拍計、血圧計、体温計、発汗計等を含んでもよい。
【0050】
通信インタフェース部26は、各通信装置10と通信を行うためのインタフェース回路を含む。なお、端末装置20には、例えば、CPU21から与えられた表示用データを表示するための表示装置(図示省略)が設けられてもよい。
【0051】
なお、端末装置20から送信される無線信号には、端末装置20の識別情報(例えば、MAC(Media Access Control)アドレス等)が含まれていてもよい。
【0052】
(3)情報提供装置の構成
図3を参照して情報提供装置30の構成について説明する。
図3は、情報提供装置30の内部構成を示すブロック図である。
図3に示すように、情報提供装置30は、CPU31と、ROM32と、RAM33と、記憶装置34と、表示処理部35と、表示部36と、入力部37と、通信インタフェース部38と、を備えており、各部間の制御信号又はデータ信号を伝送するためのバス30aが設けられている。
【0053】
CPU31は、電源が情報提供装置30に投入されると、ROM32又は記憶装置34に記憶された各種のプログラムをRAM33にロードして実行する。本実施形態では、CPU31は、ROM32又は記憶装置34に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、後述する第1取得手段41、第2取得手段42、第3取得手段43、行動推定手段44、位置推定手段45及び提示手段46(
図4に示す)の機能を実現する。
【0054】
記憶装置34は、例えば、フラッシュメモリ、SSD、磁気記憶装置(例えばHDD、フロッピーディスク(登録商標)、磁気テープ等)、光ディスク等の不揮発性の記憶装置であってもよいし、RAM等の揮発性の記憶装置であってもよく、CPU31が実行するプログラムやCPU31が参照するデータを格納する。また、記憶装置34には、後述する取得データ(
図5に示す)、作業者データ(
図6に示す)、学習用データ(
図7に示す)及び行動状況データ(
図10に示す)が記憶されている。
【0055】
表示処理部35は、CPU31から与えられる表示用データを表示部36に表示する。表示部36は、例えば、マトリクス状に画素単位で配置された薄膜トランジスタを含むLCD(Liquid Crystal Display)モニタであり、表示用データに基づいて薄膜トランジスタを駆動することで、表示されるデータを表示画面に表示する。
【0056】
情報提供装置30が釦入力方式の装置である場合には、入力部37は、ユーザの操作入力を受け入れるための方向指示釦及び決定釦等の複数の指示入力釦を含む釦群と、テンキーや文字キー等の複数の指示入力釦を含む釦群とを備え、各釦の押下(操作)入力を認識してCPU31へ出力するためのインタフェース回路を含む。
【0057】
情報提供装置30がタッチパネル入力方式の装置である場合には、入力部37は、主として表示画面に指先又はペンで触れることによるタッチパネル方式の入力を受け付ける。タッチパネル入力方式は、静電容量方式等の公知の方式でよい。
【0058】
また、情報提供装置30が音声入力可能な端末装置である場合には、入力部37は、音声入力用のマイクを含むように構成されてもよいし、外付けのマイクを介して入力された音声データをCPU31へ出力するためのインタフェース回路を備えてもよい。さらに、情報提供装置30が動画像及び/又は静止画像を入力可能な端末装置である場合には、入力部37は、画像入力用のデジタルカメラやデジタルビデオカメラを含むように構成されてもよいし、外付けのデジタルカメラやデジタルビデオカメラで撮像された画像データを受け付けてCPU31へ出力するためのインタフェース回路を備えてもよい。
【0059】
通信インタフェース部38は、通信網NWを介して通信を行うためのインタフェース回路を含む。
【0060】
(4)情報提供システムにおける各機能の概要
本実施形態の情報提供システムで実現される機能について、
図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態の情報提供システムで主要な役割を果たす機能を説明するための機能ブロック図である。
図4の機能ブロック図では、第1取得手段41、第2取得手段42、位置推定手段45及び提示手段46が本発明の主要な構成に対応している。他の手段(第3取得手段43及び行動推定手段44)は必ずしも必須の構成ではないが、本発明をさらに好ましくするための構成要素である。
【0061】
第1取得手段41は、所定領域R内で複数の作業者(対象者)の身体状態に関する情報を取得する機能を備える。ここで、作業者の身体状態に関する情報とは、例えば、作業者の加速度(所定箇所の加速度であってもよい)、角速度(所定箇所の角速度であってもよい)、心拍数(脈拍)、血圧、体温、発汗量、歩数、歩行速度、姿勢、運動強度(例えば、心拍数÷最大心拍数)又は消費カロリー等の値であってもよいし、作業者の加速度、角速度、心拍数(脈拍)、血圧、体温、発汗量、歩数、歩行速度、姿勢、運動強度、消費カロリー等の何れかの値を所定の計算式に代入することによって得られた値であってもよいし、作業者の加速度、角速度、心拍数(脈拍)、血圧、体温、発汗量、歩数、歩行速度、姿勢、運動強度、消費カロリー等の何れかの度合いを表す情報であってもよい。
【0062】
第1取得手段41の機能は、例えば以下のように実現される。先ず、端末装置20のCPU21は、測定装置25が作業者の身体状態(ここでは、3軸加速度及び3軸角速度)を測定する毎に、測定された身体状態に関する情報をRAM23又は記憶装置24に記憶する。そして、端末装置20のCPU21は、無線信号を、RAM23又は記憶装置24に記憶された身体状態に関する情報を含めた状態で、通信インタフェース部26を介して各通信装置10に送信する。ここで、身体状態に関する情報は、端末装置20の識別情報(端末装置ID)が対応付けられた状態で送信されてもよい。次に、各通信装置10は、無線信号を端末装置20から受信すると、受信した無線信号のデータ(端末装置20の識別情報と、身体状態に関する情報と、が含まれている)を、通信網NWを介して情報提供装置30に送信する。
【0063】
一方、情報提供装置30のCPU31は、無線信号のデータを、通信インタフェース部38を介して受信(取得)すると、受信した無線信号のデータに含まれている身体状態に関する情報を例えばRAM33又は記憶装置34に記憶する。このようにして、領域R内に存在する作業者の身体状態に関する情報を取得することができる。
【0064】
第2取得手段42は、各作業者(対象者)に設けられた端末装置20と、所定領域R内の複数の位置に設けられた通信装置10との何れか一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する機能を備える。ここで、受信信号強度に関する情報とは、例えば、受信信号強度の値であってもよいし、受信信号強度の値を所定の計算式に代入することによって得られた値であってもよいし、受信信号強度の度合いを表す情報であってもよい。
【0065】
第2取得手段42の機能は、例えば以下のように実現される。なお、ここでは、第2取得手段42が、端末装置20から送信された無線信号を各通信装置10が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する場合を一例として説明する。先ず、各通信装置10は、端末装置20から送信された無線信号を受信する毎に、受信した無線信号のデータ(端末装置20の識別情報(端末装置ID)と、身体状態に関する情報と、が含まれている)を、通信網NWを介して情報提供装置30に送信する。ここで、各通信装置10は、無線信号を受信する毎にRSSI回路によって検出された当該無線信号の受信信号強度の値を、当該無線信号のデータに対応付けた状態で情報提供装置30に送信する。
【0066】
一方、情報提供装置30のCPU31は、無線信号のデータと、当該無線信号の受信信号強度の値と、を通信インタフェース部38を介して受信(取得)する毎に、受信した無線信号のデータ(ここでは、端末装置ID及び身体状態に関する情報等)と、無線信号の受信信号強度の値と、を対応付けた状態で例えば
図5に示す取得データに記憶する。取得データは、端末装置20の識別情報(端末装置ID)毎に、1つの無線信号に対して各通信装置10(図の例では、通信装置A~D)のRSSI回路が検出した受信信号強度の値と、当該無線信号に含まれる身体状態に関する情報(ここでは、3軸加速度及び3軸角速度)と、が対応付けられた状態で記述されているデータである。このようにして、端末装置20から送信された無線信号を各通信装置10が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得することができる。
【0067】
第3取得手段43は、各作業者(対象者)の属性に関する情報を取得する機能を備える。
【0068】
第3取得手段43の機能は、例えば以下のように実現される。情報提供装置30のCPU31は、例えば、各作業者の属性に関する情報を、外部の装置から通信インタフェース部38を介して受信(取得)すると、受信した情報を例えば
図6に示す作業者データに記憶する。作業者データは、端末装置20の識別情報(端末装置ID)毎に、当該端末装置20が設けられた作業者の属性(図の例では、勤続年数、年齢、身長、体重、性別等)が対応付けられた状態で記述されているデータである。このようにして、各作業者の属性に関する情報を取得することができる。なお、作業者データに記憶される情報は、例えば、入力部37を用いて入力されてもよい。
【0069】
なお、端末装置20の記憶装置24には、当該端末装置20の識別情報(端末装置ID)と、当該端末装置20が設けられた作業者の属性に関する情報と、が対応付けられた状態で予め記憶されていてもよく、端末装置20から送信される無線信号には、当該作業者の属性に関する情報が含まれていてもよい。この場合、情報提供装置30のCPU31は、無線信号のデータを各通信装置10から受信すると、当該無線信号のデータに含まれている作業者の属性に関する情報を作業者データに記憶してもよい。
【0070】
行動推定手段44は、各作業者(対象者)の身体状態に関する情報に基づいて各作業者の行動分類を推定する機能を備える。
【0071】
また、行動推定手段44は、複数の行動分類の各々に対応する身体状態に関する情報を学習用データとして用いた機械学習によって各作業者(対象者)の行動を推定してもよい。これにより、主観的な判断を必要とすることなく、各作業者の身体状態に関する情報に基づいて各作業者の行動分類を推定することができる。
【0072】
行動推定手段44の機能は、例えば以下のように実現される。情報提供装置30のCPU31は、例えば、作業者が行った行動の分類(行動分類)と、当該行動を行ったときの当該作業者の身体状態との対応関係を示すデータを学習用データとした機械学習を行う。学習用データの一例を
図7に示す。
図7に示す学習用データは、行動分類(図の例では、「歩行」、「台車で搬送」、「荷物搬出」、「荷物積載」等)毎に、対応する行動を行った時の作業者の身体状態(図の例では、3軸加速度及び3軸角速度)が対応付けられた状態で記述されているデータである。これにより、機械学習の結果として、作業者の身体状態と、作業者の行動分類との関係を示す確率モデルを生成することが可能になる。この場合、CPU31は、例えば、第1取得手段41の機能に基づいて取得した身体状態に関する情報を確率モデルに入力することによって、当該身体状態に関する情報に対応する作業者の行動分類(ここでは、「歩行」、「台車で搬送」、「荷物搬出」、「荷物積載」の何れか)を推定することができる。なお、機械学習には、例えば、ニューラルネットワーク(ディープラーニング)やサポートベクターマシン等の任意のアルゴリズムが用いられてもよい。
【0073】
位置推定手段45は、通信装置10が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて端末装置20の位置を推定する機能を備える。
【0074】
また、位置推定手段45は、複数の位置に設けられた通信装置10のうち、送信又は受信した無線信号の受信信号強度の最も高い通信装置10を含む少なくとも2つの通信装置10を選択し、選択した通信装置10の間に受信信号強度の所定期間内の平均値の有意差があるか否かを検定し、有意差があると検定された場合に、受信信号強度の最も高い通信装置10の位置を端末装置20の位置として推定してもよい。これにより、複数の通信装置10の各々に対応する受信信号強度を単に大小比較するのではなく、特定の通信装置10の受信信号強度と他の通信装置10の受信信号強度との間に有意差があるのか否か(つまり、受信信号強度の差が偶然的なものであるのか否か)に基づいて端末装置20の位置を推定することによって、例えば電波のゆらぎ等の影響を低減させた上で端末装置20の位置を正確に推定することができる。
【0075】
位置推定手段45の機能は、例えば
図8に示すフローチャートを参照して以下のように実現される。ところで、1つの通信装置10と端末装置20との距離は、例えば、以下の式(1)及び(2)を用いることによって算出することができる。
P
r=P
t+G
r+G
t-L …(1)
【数1】
式(1)中、P
rは受信信号強度(dBm)を示し、P
tは電波発信装置(ここでは、端末装置20)の送信電力(dBm)を示し、G
rは通信装置10の受信アンテナの利得(dBi)を示し、G
tは端末装置20の送信アンテナの利得(dBi)を示し、Lは自由空間損失(dBm)を示している。このLは式(2)でもとめられ、式(2)中、dは通信装置10と端末装置20との距離(m)を示し、fは電波の周波数(Hz)を示し、cは光速(=2.99792458×10
8)(m/s)を示している。式(1)及び式(2)によってもとめられる距離と受信信号強度の値との関係は、例えば
図9に示す対数関数で表される。
図9に示すように、通信装置10と端末装置20との距離が短いほど、受信信号強度の値が大きいことがわかる。
【0076】
そこで、
図8のフローチャートを参照すると、情報提供装置30のCPU31は、複数の通信装置10のうち、1つの無線信号に対応する受信信号強度(RSSI)の最も高い通信装置10を含む少なくとも2つの通信装置10を選択する(ステップS100)。例えば、CPU31は、取得データにアクセスして、各通信装置10(
図5の例では、通信装置A~D)のうち、1つの無線信号に対応する受信信号強度の値が高い順に2つの通信装置10(例えば、通信装置A及び通信装置B)を選択する。
【0077】
次に、情報提供装置30のCPU31は、選択した2つの通信装置10に対応する受信信号強度の値が正規分布に従うか否か(正規性を有しているか否か)を、正規性検定(例えば、Kolmogorv-Smirnov検定やShapiro-Wilk検定等)を行うことにより判別する(ステップS102)。
【0078】
情報提供装置30のCPU31は、正規性を有していると判別した場合に(ステップS102:YES)、パラメトリック検定を行う。具体的には、CPU31は、選択した2つの通信装置10に対応する受信信号強度の値が等分散性を有しているか否かを、例えばF検定を行うことにより判別する(ステップS104)。さらに、CPU31は、等分散性を有していると判別した場合に(ステップS104:YES)、選択した2つの通信装置10の間に受信信号強度の平均値の有意差があるか否かを、例えばt検定を行うことにより判別する(ステップS106)。また、CPU31は、等分散性を有していないと判別した場合に(ステップS104:NO)、選択した2つの通信装置10の間に受信信号強度の所定期間内の平均値の有意差があるか否かを、例えばWelchのt検定を行うことにより判別する(ステップS108)。
【0079】
なお、情報提供装置30のCPU31は、正規性を有していないと判別した場合に(ステップS102:NO)、選択した2つの通信装置10の間に受信信号強度の所定期間内の平均値の有意差があるか否かを、例えばMann-WhitneyのU検定やWilcoxonの順位和検定等のノンパラメトリック検定を行うことにより判別する(ステップS110)。
【0080】
次に、情報提供装置30のCPU31は、ステップS106、ステップS108又はステップS110の処理において、選択した2つの通信装置10の間に受信信号強度の所定期間内の平均値の有意差があると判別した場合に(ステップS112:YES)、選択した2つの通信装置10のうち対応する受信信号強度の最も高い通信装置10の位置(例えば、領域R内で水平に延びる平面に対して鉛直方向に当該通信装置10を投影したときの当該平面における投影像の位置)を端末装置20の位置と推定してもよい(ステップS114)。また、情報提供装置30のCPU31は、受信信号強度の所定期間内の平均値の有意差がないと判別した場合には(ステップS112:NO)、端末装置20の現在位置の変更なし(つまり、端末装置20の位置は、端末装置20の事前の位置と同じ位置である)と判別して処理を終了してもよい。
【0081】
なお、情報提供装置30のCPU31は、端末装置20の位置を推定すると、
図10に示す行動状況データにアクセスして、当該端末装置20の識別情報(端末装置ID)と、行動推定手段44の機能に基づいて推定された、当該端末装置20が設けられた作業者の行動分類と、当該行動分類に関する行動状況と、を推定した位置に対応付けた状態で記憶する。行動状況データは、領域R内の1つ以上の位置毎に、当該位置に存在していた端末装置20の識別情報(端末装置ID)と、当該位置において当該端末装置20が設けられた作業者が行っていた行動の行動分類と、当該行動の行動状況(図の例では、「行動日時」、「速度」、「滞在時間」、「作業量」、「歩数」)と、が対応付けられた状態で記述されているデータである。
【0082】
ここで、行動状況は、第1取得手段41の機能に基づいて取得した身体状態に関する情報、及び、位置推定手段45の機能に基づいて推定した端末装置20の位置の少なくとも一方に基づいてもとめられてもよい。例えば、「行動日時」は、端末装置20の測定装置25が身体状態を測定したときの日時情報であってもよく、この場合、日時情報は、端末装置20のCPU21に内蔵されたタイマ(図示省略)等によって取得され、端末装置20から送信される無線信号に含まれてもよい。また、「速度」は、例えば、3軸加速度の値を積分することによってもとめられてもよい。さらに、「滞在時間」は、対応する位置に端末装置20が継続して存在している期間であってもよい。さらにまた、「歩数」は、例えば、3軸加速度センサや3軸角速度センサ等を用いた周知の歩数検出技術を利用してもとめられてもよい。また、「作業量」は、時間信号の平均的な大きさを表すRMS(Root Mean Square)を用いて表すことができ、3軸加速度に用いることによって平均的な作業量を得ることができる。ここで、tを時間とし、連続関数x(t)が非周期信号であると仮定すると、作業量x
rmsは、以下の式(3)を用いることによって算出することができる。
【数2】
【0083】
提示手段46は、各作業者(対象者)の身体状態に関する情報及び端末装置20の位置の少なくとも一方に基づいて、所定領域R内での各対象者の行動状況に関する情報を提示する機能を備える。
【0084】
また、提示手段46は、各作業者(対象者)の行動分類及び身体状態に関する情報と、端末装置20の位置とに基づいて、所定領域R内の1つ以上の場所での所定行動に関する行動状況を表すヒートマップを、各作業者の行動状況に関する情報として提示してもよい。これにより、例えば、所定領域R内の1つ以上の場所での作業者の滞在時間が単にヒートマップで提示されるのではなく、作業者が当該所定領域R内の1つ以上の場所で所定行動を行っていたときの滞在時間等をヒートマップで提示することが可能になる。
【0085】
ここで、所定行動は、複数の行動分類の中から選択された行動であってもよい。これにより、複数の行動分類の中から選択された行動に関する行動状況を表すヒートマップを提示することが可能になるので、例えば、複数の行動分類の中から所望の行動を選択することによって、所定領域R内での当該所望の行動に関する行動状況を把握することができる。
【0086】
また、提示手段46は、各作業者(対象者)のうち所定属性を有する作業者の行動状況に関する情報を提示してもよい。これにより、複数の属性のうち所定属性を有する作業者の行動状況に関する情報を提示することが可能になるので、行動分析の対象となる者を、所定属性を有する作業者に限定した状態で、所定領域R内での行動状況を把握することができる。
【0087】
さらに、所定属性は、複数の属性の中から選択された属性であってもよい。これにより、複数の属性の中から選択された属性を有する作業者の行動状況に関する情報を提示することが可能になるので、例えば、複数の属性の中から所望の属性を選択することによって、行動分析の対象となる者を当該所望の属性を有する作業者に限定した状態で、所定領域R内での行動状況を把握することができる。
【0088】
提示手段46の機能は、例えば以下のように実現される。情報提供装置30のCPU31は、例えば、領域R内での各作業者の行動状況を表示するための指示が入力部37を用いて入力されると、
図11に例示する表示画面を表示部36に表示する。この表示画面は、領域Rの地図情報を表示するための地図情報表示部S1と、ヒートマップによる表示対象となる行動(ここでは、「歩行」、「台車で搬送」、「荷物搬出」、「荷物積載」の何れか)及び表示項目(ここでは、「人数」、「速度」、「滞在時間」、「作業量」の何れか)を選択するためのドロップダウンメニューを含む行動入力部S2と、ヒートマップによる表示対象となる作業者の属性を選択するためのドロップダウンメニューを含む属性入力部S3と、から構成されている。
【0089】
属性入力部S3の「勤続年数」のドロップダウンメニューでは、例えば、「3年未満」、「3年以上10年未満」、「10年以上」等の複数の選択肢から何れかの選択肢が選択されてもよい。また、属性入力部S3の「年齢」のドロップダウンメニューでは、例えば、「20歳未満」、「20歳以上40歳未満」、「40歳以上」等の複数の選択肢から何れかの選択肢が選択されてもよい。さらに、属性入力部S3の「身長」のドロップダウンメニューでは、例えば、「150cm未満」、「150cm以上160cm未満」、「160cm以上170cm未満」、「170cm以上」等の複数の選択肢から何れかの選択肢が選択されてもよい。さらにまた、属性入力部S3の「体重」のドロップダウンメニューでは、例えば、「60kg未満」、「60kg以上80kg未満」、「80kg以上100kg未満」、「100kg以上」等の複数の選択肢から何れかの選択肢が選択されてもよい。また、属性入力部S3の「性別」のドロップダウンメニューでは、例えば、「男性」又は「女性」等の複数の選択肢から何れかの選択肢が選択されてもよい。
【0090】
ここで、行動入力部S2内でヒートマップによる表示対象となる行動(例えば、「台車で搬送」)及び表示項目(例えば、「速度」)が入力部37を用いて選択されると、情報提供装置30のCPU31は、行動状況データにアクセスして、全ての位置毎に、選択された行動(ここでは、「台車で搬送」)に対応する行動状況のうち、選択された表示項目に対応する行動状況(ここでは、「速度」)のデータを抽出する。
【0091】
そして、CPU31は、
図12に示すように、地図情報表示部S1に表示された地図情報において、行動状況データから抽出した全ての位置毎に、選択された行動及び行動状況の度合いを表すヒートマップを生成して地図情報にマッピングする。ここで、ヒートマップは、例えば、或る位置における選択された行動に関する行動状況の度合い(例えば、当該位置において各作業者が「台車で搬送」する「速度」の平均値であってもよいし、当該位置において「台車で搬送」する「速度」が所定値以上又は所定値以下の作業者の数であってもよい)が高いほど、当該位置に対応する部分が濃くなるように表示されてもよいし、当該位置に対応する部分の色が変化(例えば、寒色から暖色に変化する等)するように表示されてもよい。
【0092】
なお、CPU31は、行動入力部S2において「人数」が表示項目として選択された場合には、行動状況データにアクセスして、全ての位置毎に、当該位置において選択された行動(ここでは、「台車で搬送」)をほぼ同じ「行動時間」(例えば数秒以内の時間帯)に行っている作業者の数(対応する端末装置IDの数)を集計する。そして、CPU31は、全ての位置毎の作業者数を表すヒートマップを生成して地図情報にマッピングしてもよい。
【0093】
また、選択された表示項目が「滞在時間」又は「作業量」である場合の行動状況の度合いは、例えば、或る位置において各作業者が「台車で搬送」する「滞在時間」又は「作業量」の平均値で表されてもよいし、当該位置において「台車で搬送」する「滞在時間」又は「作業量」が所定値以上又は所定値以下の作業者の数で表されてもよい。
【0094】
さらに、属性入力部S3内でヒートマップによる表示対象となる属性(例えば、「身長」が「150cm以上160cm未満」及び「性別」が「女性」等)が入力部37を用いて選択されると、情報提供装置30のCPU31は、作業者データにアクセスして、属性入力部S3内で選択された属性に該当する属性が対応付けられた端末装置IDを抽出する。次に、CPU31は、行動状況データにアクセスして、全ての位置毎に、抽出された端末装置IDに対応付けられた行動及び行動状況であって、選択された行動(ここでは、「台車で搬送」)及び行動状況(ここでは、「速度」)のデータを抽出する。そして、CPU31は、抽出したデータを用いてヒートマップを生成し、生成したヒートマップを地図情報にマッピングしてもよい。
【0095】
なお、ここでは、
図11及び
図12に例示する表示画面が情報提供装置30の表示部36に表示される場合を一例として説明したが、この場合に限られない。例えば、
図11及び
図12に例示する表示画面が端末装置20上で表示されてもよい。この場合、端末装置20は、例えば、情報提供装置30が表示用に生成した情報の送信要求を情報提供装置30に送信し、情報提供装置30から受信した情報を用いて
図11及び
図12に例示する表示画面を生成し、生成した表示画面を例えばモニタ等の表示装置(図示省略)に表示してもよい。
【0096】
(5)本実施形態の情報提供システムの主要な処理のフロー
次に、本実施形態の情報提供システムにより行われる主要な処理のフローの一例について、
図13のフローチャートを参照して説明する。
【0097】
先ず、端末装置20のCPU21は、測定装置25が作業者の身体状態(ここでは、3軸加速度及び3軸角速度)を測定する毎に、測定された身体状態に関する情報をRAM23又は記憶装置24に記憶する。そして、端末装置20のCPU21は、無線信号を、RAM23又は記憶装置24に記憶された身体状態に関する情報を含めた状態で、通信インタフェース部26を介して各通信装置10に送信する。次に、各通信装置10は、無線信号を端末装置20から受信すると、受信した無線信号のデータ(端末装置20の識別情報と、作業者の身体状態に関する情報と、が含まれている)を、通信網NWを介して情報提供装置30に送信する。一方、情報提供装置30のCPU31は、無線信号のデータを、通信インタフェース部38を介して受信(取得)すると(ステップS200)、受信した無線信号のデータに含まれている作業者の身体状態に関する情報を例えばRAM33又は記憶装置34に記憶する。
【0098】
なお、ステップS200において、各通信装置10は、無線信号を端末装置20から受信する毎に、RSSI回路によって検出された当該無線信号の受信信号強度の値を、当該無線信号のデータに対応付けた状態で情報提供装置30に送信してもよい。一方、情報提供装置30のCPU31は、ステップS200で取得した無線信号のデータに加えて当該無線信号の受信信号強度の値を受信(取得)すると(ステップS202)、受信した無線信号のデータ(ここでは、端末装置ID及び身体状態に関する情報等)と、無線信号の受信信号強度の値と、を対応付けた状態で例えば
図5に示す取得データに記憶する。
【0099】
次に、情報提供装置30のCPU31は、例えば、各作業者の属性に関する情報を、外部の装置から通信インタフェース部38を介して受信(取得)すると(ステップS204)、受信した情報を例えば
図6に示す作業者データに記憶する。
【0100】
次いで、情報提供装置30のCPU31は、ステップS200で取得した各作業者の身体状態に関する情報に基づいて各作業者の行動を推定する(ステップS206)。ここで、CPU31は、例えば、作業者が行った行動と、当該行動を行ったときの当該作業者の身体状態との対応関係を示すデータを学習用データとした機械学習を行い、作業者の身体状態と、作業者の行動との関係を示す確率モデルを生成してもよい。そして、CPU31は、ステップS200で取得した各作業者の身体状態に関する情報を確率モデルに入力することによって、当該身体状態に関する情報に対応する作業者の行動(ここでは、「歩行」、「台車で搬送」、「荷物搬出」、「荷物積載」の何れか)を推定してもよい。
【0101】
また、情報提供装置30のCPU31は、通信装置10が受信した無線信号の受信信号強度に基づいて、端末装置20の位置を推定する(ステップS208)。ここで、CPU31は、複数の位置に設けられた通信装置10のうち、受信した無線信号の受信信号強度の最も高い通信装置10を含む少なくとも2つの通信装置10を選択し、選択した通信装置10の間に受信信号強度の所定期間内の平均値の有意差があるか否かを検定し、有意差があると検定された場合に、受信信号強度の最も高い通信装置10の位置を端末装置20の位置として推定してもよい。
【0102】
次に、情報提供装置30のCPU31は、各作業者の行動及び身体状態に関する情報と、端末装置20の位置とに基づいて、領域R内の1つ以上の場所での所定行動に関する行動状況を表すヒートマップを提示する(ステップS210)。
【0103】
このようにして、各作業者の行動及び身体状態に関する情報と、端末装置20の位置とに基づいて、領域R内の1つ以上の場所での所定行動に関する行動状況を表すヒートマップを提示することが可能になる。
【0104】
上述したように、本実施形態の情報提供システム、情報提供方法、プログラムによれば、通信装置10が受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいて推定された端末装置20の位置と、各作業者の身体状態に関する情報に基づいて推定された各作業者の行動と、各作業者の身体状態に関する情報とに基づいて、領域R内の1つ以上の場所での所定行動に関する行動状況を表すヒートマップが提示されるので、例えば、領域R内の1つ以上の場所での作業者の滞在時間(行動状況)が単にヒートマップで提示されるのではなく、当該1つ以上の場所で作業者が所定行動を行っていたときの滞在時間等をヒートマップで提示することが可能になることから、領域R内での所定行動に関する行動状況を容易に把握することができる。
【0105】
以下、上述した実施形態の変形例について説明する。
(変形例1)
本変形例において、位置推定手段45は、領域R内の複数の位置に設けられた通信装置10のうち少なくとも3つの通信装置10の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて生成された、少なくとも3つの通信装置10の各々と端末装置20との距離を要素とする第1ベクトルと、領域R内の所定位置に対応する第2ベクトルであって、少なくとも3つの通信装置10の各々と当該所定位置との距離を要素とする第2ベクトルとの類似度に基づいて、端末装置20の位置を推定する機能を備える。
【0106】
本実施形態における位置推定手段45の機能は、例えば以下のように実現される。なお、本実施形態における位置推定手段45の機能を説明するにあたって、端末装置20が設けられた作業者は、
図14に示すように、領域Rをx方向及びy方向の各々に沿って区分する複数のサブ領域(
図14の例では、R
11~R
33の9つのサブ領域)のうち何れかのサブ領域に存在している場合を想定する。
【0107】
先ず、情報提供装置30のCPU31は、第2取得手段42の機能に基づいて、端末装置20から送信された無線信号を複数の通信装置10(
図14の例では、複数の通信装置A,B,C,D)が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得すると、取得した受信信号強度に関する情報(例えばRSSI値)を用いて、複数の通信装置A,B,C,Dの各々と端末装置20との距離をもとめる。ここで、複数の通信装置A,B,C,Dの各々と端末装置20との距離は、上記の式(1)及び式(2)を用いてもとめられてもよい。
【0108】
次に、情報提供装置30のCPU31は、複数の通信装置A,B,C,Dのうち少なくとも3つ(ここでは、通信装置A,B,Cの3つ)と端末装置20との距離を要素とする第1ベクトルu(
図16に示す)を生成する。本実施形態では、第1ベクトルuは3次元ベクトルである。例えば、CPU31は、通信装置Aと端末装置20との距離をd
1、通信装置Bと端末装置20との距離をd
2、通信装置Cと端末装置20との距離をd
3とすると、d
1、d
2、d
3を要素とする第1ベクトルuを生成し、d
1、d
2、d
3の値を例えばRAM23に記憶する。
【0109】
次いで、情報提供装置30のCPU31は、複数のサブ領域R
11~R
33毎に、複数の通信装置A,B,C,Dのうち少なくとも3つ(ここでは、通信装置A,B,Cの3つ)と各サブ領域R
11~R
33との距離を要素とする第2ベクトルv(
図16に示す)を生成する。ここで、複数の通信装置A,B,C,Dの各々と各サブ領域R
11~R
33との距離は予め計測されていてもよい。また、CPU31は、複数のサブ領域R
11~R
33の各々に対応する第2ベクトルvの各要素を、例えば
図15に示す第2ベクトルデータに記憶してもよい。第2ベクトルデータは、複数の通信装置A,B,C,Dの各々と各サブ領域R
11~R
33の所定位置(例えばサブ領域の中央の位置)との距離が複数のサブ領域R
11~R
33毎に記述されているデータである。第2ベクトルデータは、例えば情報提供装置30の記憶装置34に記憶されている。
【0110】
次に、情報提供装置30のCPU31は、複数のサブ領域R
11~R
33毎に、第1ベクトルuと第2ベクトルvとの類似度をもとめる。ここで、類似度は、例えばコサイン類似度であってもよく、コサイン類似度は、以下の式(4)を用いてもとめることができる。また、第1ベクトルuと、第2ベクトルvと、角度θとの関係は、
図16のように示される。なお、
図16の例では、第1ベクトルuと、領域R
11に対応する第2ベクトルvとの関係を示している。
【数3】
【0111】
cosθの最大値は1であり、この場合には、第1ベクトルuと第2ベクトルvとが互いに同じ方向に向いていることを示している。また、cosθの最小値は-1であり、この場合には、第1ベクトルuと第2ベクトルvとが互いに逆の方向に向いていることを示している。さらに、cosθの値が0の場合には、第1ベクトルuと第2ベクトルvとが互いに直交する方向に向いていることを示している。例えば、第1ベクトルuの各要素の値(通信装置A,B,Cの各々と端末装置20との距離)と、第2ベクトルv(通信装置A,B,Cと各サブ領域R11~R33の所定位置との距離)の各要素の値とが近似しているほど、ベクトルの類似度が高くなる。
【0112】
そして、CPU31は、例えば、複数のサブ領域R11~R33のうち最大の類似度に対応するサブ領域(例えばサブ領域R11)を、端末装置20の位置と推定する。なお、ここでは、複数のサブ領域R11~R33のうち最大の類似度に対応するサブ領域を端末装置20の位置と推定する場合を一例として説明したが、この場合に限られない。例えば、類似度が所定値以上のサブ領域を端末装置20の位置と推定してもよい。
【0113】
上述したように、本変形例によれば、少なくとも3つの通信装置10の各々に対応する受信信号強度に関する情報に基づいて、少なくとも3つの通信装置10の各々と端末装置20との距離を要素とする第1ベクトルuを生成しているので、例えば通信装置10及び端末装置20のうち無線信号を受信する一方の装置の受信特性が当該一方の装置の種類毎及び/又は個体毎に異なる場合であっても、第1ベクトルuを、少なくとも3つの通信装置10の各々に対応する受信信号強度と、少なくとも3つの通信装置10の各々と端末装置20との距離との関係に基づいて、少なくとも3つの通信装置10毎に生成することができる。そして、第1ベクトルuと、少なくとも3つの通信装置10の各々と領域R内の所定位置との距離を要素とする第2ベクトルvとの類似度に基づいて端末装置20の位置を推定しているので、例えば第1ベクトルuと第2ベクトルvとの類似度が高い場合には、第2ベクトルvに対応する所定位置を端末装置20の位置と推定することができる。このように、受信信号強度に関する情報に基づいてもとめた通信装置10及び端末装置20間の距離を単に比較するのではなく、第1ベクトルuと第2ベクトルvとの類似度から端末装置20の位置を推定することにより、通信装置10及び端末装置20のうち無線信号を受信する一方の装置の受信特性の違いに拘らずに端末装置20の位置を正確に推定することができる。
【0114】
(変形例2)
上記実施形態では、第2取得手段42が、端末装置20から送信された無線信号を各通信装置10が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する場合を一例として説明したが、この場合に限られない。例えば、第2取得手段42は、各通信装置10から送信された無線信号を端末装置20が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得してもよい。ここで、端末装置20には、各通信装置10から送信された無線信号を受信したときの受信信号強度の値を検出するRSSI回路が設けられていてもよい。
【0115】
この場合、各通信装置10は、端末装置20に対して、無線信号の受信信号強度の値を各通信装置10に送信するように要求してもよい。そして、情報提供装置30のCPU31は、第2取得手段42の機能として、各通信装置10から送信された情報(無線信号の受信信号強度の値)を通信インタフェース部38を介して受信(取得)すると、受信した情報を取得データに記憶してもよい。
【0116】
このように、本変形例にかかる情報提供システム、情報提供方法、プログラムによれば、上述した実施形態と同様の作用効果を発揮することが可能である。
【0117】
(変形例3)
上記実施形態では、行動推定手段44が、複数の行動分類の各々に対応する身体状態に関する情報を学習用データとして用いた機械学習によって各作業者の行動分類を推定する場合を一例として説明したが、この場合に限られない。例えば、行動推定手段44は、第1取得手段41の機能に基づいて取得した身体状態に関する情報が、或る行動分類に対応付けられた身体状態に関する条件を満たす場合に、当該行動分類を作業者の行動分類と推定してもよい。
【0118】
本変形例における行動推定手段44の機能は、例えば以下のように実現される。情報提供装置30のCPU31は、例えば、第1取得手段41の機能に基づいて取得した身体状態に関する情報を用いて、複数の行動分類(ここでは、「歩行」、「台車で搬送」、「荷物搬出」、「荷物積載」)のうち何れかの行動分類に対応付けられた身体状態に関する条件を満たすか否かを判別する。ここで、複数の行動分類の各々には、対応する行動を行っていると推定される身体状態に関する条件(例えば、加速度及び/又は角速度が、所定値未満、所定値以上、又は、所定値未満所定値以上等)が設定されている。この設定された条件に関するデータは、例えば情報提供装置30の記憶装置34に記憶されていてもよい。そして、CPU31は、複数の行動分類のうち設定された条件を満たす行動分類を、作業者の行動分類と推定してもよい。
【0119】
このように、本変形例にかかる情報提供システム、情報提供方法、プログラムによれば、上述した実施形態と同様の作用効果を発揮することが可能である。
【0120】
(変形例4)
上記実施形態では、提示手段46が、所定領域R内の1つ以上の場所での所定行動に関する行動状況を表すヒートマップを、各作業者の行動状況に関する情報として提示する場合を一例として説明したが、この場合に限られない。提示手段46は、以下に説明するように、他の様々な情報を各作業者の行動状況に関する情報として提示してもよい。
【0121】
なお、本変形例において、情報提供装置30のCPU31は、例えば位置推定手段45の機能に基づいて端末装置20の位置を推定すると、
図17に示す行動状況データにアクセスして、日時と、推定した位置と、当該端末装置20が設けられた作業者の行動状況と、を当該端末装置20の識別情報(端末装置ID)に対応付けた状態で記憶してもよい。
図17の行動状況データは、端末装置20の識別情報(端末装置ID)毎に(つまり、作業者毎に)、日時(例えば、端末装置20の測定装置25が身体状態を測定したときの日時情報であってもよい)と、当該日時における端末装置20の位置と、当該端末装置20が設けられた作業者の行動状況(図の例では、「行動分類」、「速度」、「滞在時間」、「作業量」、「歩数」)と、が対応付けられた状態で記述されているデータである。
図17の行動状況データは、作業者の行動状況が、領域R内の1つ以上の位置毎にではなく端末装置20の識別情報(端末装置ID)毎に対応付けられた状態で記憶されている点において、
図10の行動状況データと異なっている。
【0122】
以下に、各作業者の行動状況に関する情報のいくつかの例について説明する。例えば、行動状況に関する情報は、所定期間毎の行動分類、移動割合、作業量及び歩数のうち少なくとも1つに関する情報を含んでもよい。この場合、所定領域R内での各対象者の所定期間毎の行動分類、移動割合、作業量及び歩数のうち少なくとも1つを容易に把握することができる。
【0123】
この場合における提示手段46の機能は、例えば以下のように実現される。情報提供装置30のCPU31は、例えば、複数の作業者のうち選択された作業者の領域R内での行動状況を表示するための指示が入力部37を用いて入力されると、選択された作業者の行動状況に関する情報を含む表示画面を表示部36に表示する。この表示画面には、例えば、
図18(a)に示すように、選択された作業者の所定期間(図の例では1時間)毎の作業量の推移を表す折れ線グラフが含まれてもよいし、
図18(b)に示すように、選択された作業者の所定期間(図の例では1時間)毎の移動及び静止の割合(移動割合)を表す棒グラフが含まれてもよい。
【0124】
CPU31は、例えば、選択された作業者の所定期間(例えば1時間)毎の作業量を表示する場合には、
図17の行動状況データにアクセスして、選択された作業者に設けられた端末装置20の識別情報(端末装置ID)に対応付けられた日時及び当該日時に対応する作業量を抽出し、所定期間(例えば1時間)毎に作業量の合計を算出し、算出された作業量をグラフ化して表示部36に表示してもよい。これにより、選択された作業者の所定期間毎の作業量の推移を容易に把握することができる。また、CPU31は、例えば、選択された作業者の所定期間(図の例では1時間)毎の移動及び静止の割合(移動割合)を表示する場合には、
図17の行動状況データにアクセスして、選択された作業者に設けられた端末装置20の識別情報(端末装置ID)に対応付けられた日時及び当該日時に対応する行動分類を抽出し、所定期間(例えば1時間)毎に移動(ここでは、「静止」以外の全ての行動分類を「移動」として含むことを想定している)及び静止の割合を算出し、算出された移動及び静止の割合をグラフ化して表示部36に表示してもよい。これにより、選択された作業者の所定期間毎の移動割合を容易に把握することができる。
【0125】
また、CPU31は、例えば、選択された作業者の所定期間(例えば1時間)毎の作業分類を表示する場合には、
図17の行動状況データにアクセスして、選択された作業者に設けられた端末装置20の識別情報(端末装置ID)に対応付けられた日時及び当該日時に対応する行動分類を抽出し、所定期間(例えば1時間)毎の行動分類の推移をグラフ化して表示部36に表示してもよいし、所定期間(例えば1時間)毎の行動分類の割合を算出し、算出された行動分類の割合をグラフ化して表示部36に表示してもよい。これにより、選択された作業者の所定期間毎の行動分類を容易に把握することができる。
【0126】
さらに、CPU31は、例えば、選択された作業者の所定期間(例えば1時間)毎の歩数を表示する場合には、
図17の行動状況データにアクセスして、選択された作業者に設けられた端末装置20の識別情報(端末装置ID)に対応付けられた日時及び当該日時に対応する歩数を抽出し、所定期間(例えば1時間)毎の歩数の合計を算出し、算出された歩数の合計をグラフ化して表示部36に表示してもよい。これにより、選択された作業者の所定期間毎の歩数を容易に把握することができる。
【0127】
また、行動状況に関する情報は、所定領域R内の1つ以上の場所毎の滞在時間に関する情報を含んでもよい。この場合、所定領域R内の1つ以上の場所毎の各対象者の滞在時間を容易に把握することができる。
【0128】
この場合における提示手段46の機能は、例えば以下のように実現される。情報提供装置30のCPU31は、例えば、複数の作業者のうち選択された作業者の領域R内での行動状況を表示するための指示が入力部37を用いて入力されると、選択された作業者の行動状況に関する情報を含む表示画面を表示部36に表示する。この表示画面には、例えば、
図19(a)に示すように、選択された作業者の所定期間(図の例では1時間)毎の1つ以上の位置(図の例では位置A~位置E)における滞在時間の割合を表す棒グラフが含まれてもよいし、
図19(b)に示すように、選択された作業者の所定期間(図の例では24時間又は作業期間(例えば9時~17時))内の各位置における滞在時間の割合を表す円グラフが含まれてもよい。
【0129】
CPU31は、例えば、選択された作業者の所定期間(例えば1時間)毎の1つ以上の位置(位置A~位置E)における滞在時間の割合を表示する場合には、
図17の行動状況データにアクセスして、選択された作業者に設けられた端末装置20の識別情報(端末装置ID)に対応付けられた日時並びに当該日時に対応する位置及び滞在時間を抽出し、所定期間(例えば1時間)毎に、各位置(ここでは、位置A~位置E)の滞在時間の割合を算出し、算出された各位置の滞在時間の割合をグラフ化して表示部36に表示してもよい。また、CPU31は、例えば、選択された作業者の所定期間(例えば24時間)内の各位置における滞在時間の割合を表示する場合には、
図17の行動状況データにアクセスして、選択された作業者に設けられた端末装置20の識別情報(端末装置ID)に対応付けられた日時並びに当該日時に対応する位置及び滞在時間を抽出し、所定期間(例えば24時間)内の各位置(ここでは、位置A~位置E)の滞在時間の割合を算出し、算出された各位置の滞在時間の割合をグラフ化して表示部36に表示してもよい。さらに、CPU31は、例えば、選択された作業者の1つ以上の位置(位置A~位置E)における滞在時間の所定期間(例えば1時間や24時間等)毎の合計を表示部36に表示してもよい。これにより、選択された作業者が所定領域R内の何れの場所(位置)によく滞在していたのかを容易に把握することができる。
【0130】
さらに、行動状況に関する情報は、所定領域R内の1つ以上の場所毎の作業量に関する情報を含んでもよい。この場合、所定領域R内の1つ以上の場所毎の各対象者の作業量を容易に把握することができる。
【0131】
この場合における提示手段46の機能は、例えば以下のように実現される。情報提供装置30のCPU31は、例えば、複数の作業者のうち選択された作業者の領域R内での行動状況を表示するための指示が入力部37を用いて入力されると、選択された作業者の行動状況に関する情報を含む表示画面を表示部36に表示する。この表示画面には、例えば、
図20(a)に示すように、選択された作業者の所定期間(図の例では1時間)毎の1つ以上の位置(図の例では位置A~位置E)における作業量の割合を表す棒グラフが含まれてもよいし、
図20(b)に示すように、選択された作業者の所定期間(図の例では24時間又は作業期間(例えば9時~17時))内の各位置における作業量の割合を表す円グラフが含まれてもよい。
【0132】
CPU31は、例えば、選択された作業者の所定期間(例えば1時間)毎の1つ以上の位置(位置A~位置E)における作業量の割合を表示する場合には、
図17の行動状況データにアクセスして、選択された作業者に設けられた端末装置20の識別情報(端末装置ID)に対応付けられた日時並びに当該日時に対応する位置及び作業量を抽出し、所定期間(例えば1時間)毎に、各位置(ここでは、位置A~位置E)の作業量の割合を算出し、算出された各位置の作業量の割合をグラフ化して表示部36に表示してもよい。また、CPU31は、例えば、選択された作業者の所定期間(例えば24時間)内の各位置における作業量の割合を表示する場合には、
図17の行動状況データにアクセスして、選択された作業者に設けられた端末装置20の識別情報(端末装置ID)に対応付けられた日時並びに当該日時に対応する位置及び作業量を抽出し、所定期間(例えば24時間)内の各位置(ここでは、位置A~位置E)の作業量の割合を算出し、算出された各位置の作業量の割合をグラフ化して表示部36に表示してもよい。さらに、CPU31は、例えば、選択された作業者の1つ以上の位置(位置A~位置E)における作業量の所定期間(例えば1時間や24時間等)毎の合計を表示部36に表示してもよい。これにより、選択された作業者が所定領域R内の何れの場所(位置)でよく作業していたのかを容易に把握することができる。
【0133】
さらにまた、行動状況に関する情報は、所定領域R内の1つ以上の場所での行動状況を表すヒートマップを含んでもよい。この場合、所定領域R内の1つ以上の場所毎の各対象者の行動状況を、ヒートマップによって容易に把握することができる。
【0134】
この場合における提示手段46の機能は、例えば以下のように実現される。情報提供装置30のCPU31は、例えば、複数の作業者の領域R内での行動状況を表示するための指示が入力部37を用いて入力されると、
図21に例示する表示画面を表示部36に表示してもよい。この表示画面には、例えば、領域Rの地図情報を表示するための地図情報表示部S1が含まれている。また、この表示画面には、例えば、ヒートマップによる表示対象となる行動状況に対応する期間(例えば、9時~10時、10時~11時等)を選択するためのドロップダウンメニュー(図示省略)が含まれてもよい。
【0135】
次に、CPU31は、例えば
図10の行動状況データにアクセスして、行動状況データ内の全ての位置毎に、ドロップダウンメニューで選択された期間内に行動日時が含まれているデータ(端末装置ID、行動分類及び行動状況)を抽出する。そして、CPU31は、抽出したデータに基づいて、各位置での行動状況の度合いを表すヒートマップを生成し、生成したヒートマップを地図情報にマッピングする。ここで、例えば、ヒートマップとして表される円のサイズは、選択された期間内に滞在する作業者の数が多いほど、大きくなるように設定されてもよい。また、例えば、ヒートマップとして表される円の色は、各作業者の作業量に応じて変化(例えば、各作業者の作業量が多いほど寒色から暖色に変化する等)してもよい。さらに、例えば、ヒートマップとして表される円の濃さは、対応する位置における作業者の滞在時間が長いほど、濃くなるように設定されてもよい。これにより、選択された期間内での各場所(位置)における各作業者の行動状況を容易に把握することができる。
【0136】
さらに、行動状況に関する情報は、所定領域R内の何れかの場所から他の場所への移動確率に関する情報を含んでもよい。この場合、各対象者が所定領域R内をどのように移動しているのかを容易に把握することができる。
【0137】
この場合における提示手段46の機能は、例えば以下のように実現される。情報提供装置30のCPU31は、例えば、複数の作業者のうち選択された作業者の領域R内での行動状況を表示するための指示が入力部37を用いて入力されると、
図22に例示する表示画面を表示部36に表示してもよい。この表示画面には、例えば、領域Rの地図情報を表示するための地図情報表示部S1が含まれている。
【0138】
次に、CPU31は、
図17の行動状況データにアクセスして、選択された作業者に設けられた端末装置20の識別情報(端末装置ID)に対応付けられた日時及び当該日時に対応する位置を抽出し、抽出した日時毎に、位置が所定の位置(例えば位置A)から他の位置(例えば位置B~位置E)に変化した回数をカウントする。そして、CPU31は、所定の位置(例えば位置A)から他の位置(例えば位置B~位置E)への移動確率を算出し、算出した移動確率を地図情報にマッピングしてもよい。また、CPU31は、所定の位置(例えば位置A)から他の位置(例えば位置B~位置E)への移動回数を地図情報にマッピングしてもよい。なお、
図22に示す例では、位置Aから他の位置B~Eの各々への移動確率のみが示されているが、位置A~Eの各々から他の位置への移動確率が示されてもよい。これにより、選択された作業者が所定領域R内をどのように移動しているのかを容易に把握することができる。
【0139】
次いで、本変形例の情報提供システムにより行われる主要な処理のフローの一例について、
図23のフローチャートを参照して説明する。
【0140】
先ず、情報提供装置30のCPU31は、
図13のフローチャートのステップS200と同様に、無線信号のデータを、通信インタフェース部38を介して受信(取得)すると(ステップS300)、受信した無線信号のデータに含まれている作業者の身体状態に関する情報を例えばRAM33又は記憶装置34に記憶する。
【0141】
次に、情報提供装置30のCPU31は、
図13のフローチャートのステップS202と同様に、ステップS300で取得した無線信号のデータに加えて当該無線信号の受信信号強度の値を受信(取得)すると(ステップS302)、受信した無線信号のデータ(ここでは、端末装置ID及び身体状態に関する情報等)と、無線信号の受信信号強度の値と、を対応付けた状態で例えば
図5に示す取得データに記憶する。
【0142】
また、情報提供装置30のCPU31は、
図13のフローチャートのステップS208と同様に、通信装置10が受信した無線信号の受信信号強度に基づいて、端末装置20の位置を推定する(ステップS304)。
【0143】
さらに、情報提供装置30のCPU31は、各作業者の身体状態に関する情報、及び、端末装置20の位置の少なくとも一方に基づいて、領域R内での各対象者の行動状況に関する情報を提示する(ステップS306)。
【0144】
上述したように、本変形例の情報提供システム、情報提供方法、プログラムによれば、通信装置10が受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいて推定された端末装置20の位置と、各作業者の身体状態に関する情報と、の少なくとも一方に基づいて、領域R内での各対象者の行動状況に関する情報が提示されるので、例えば、領域R内の1つ以上の場所での対象者の滞在時間が単にヒートマップで提示されるのではなく、当該領域R内での各対象者の行動状況(例えば、当該所定領域内の1つ以上の位置において各対象者がどのように行動していたのか等)に関する情報を提示することが可能になることから、領域R内での対象者毎の行動状況を容易に把握することができる。
【0145】
なお、本発明のプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されていてもよい。このプログラムを記録した記憶媒体は、
図2に示された端末装置20のROM22、RAM23又は記憶装置24であってもよいし、
図3に示された情報提供装置30のROM32、RAM33又は記憶装置34であってもよい。また、例えばCD-ROMドライブ等のプログラム読取装置に挿入されることで読み取り可能なCD-ROM等であってもよい。さらに、記憶媒体は、磁気テープ、カセットテープ、フレキシブルディスク、MO/MD/DVD等であってもよいし、半導体メモリであってもよい。
【0146】
以上説明した実施形態及び変形例は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態及び変形例に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0147】
例えば、上述した実施形態では、作業者の身体状態に関する情報が、各通信装置10を介して情報提供装置30に送信される場合を一例として説明したが、例えば、端末装置20が通信網NWに接続可能に構成されている場合には、作業者の身体状態に関する情報が、端末装置20から情報提供装置30に直接送信されてもよい。
【0148】
また、上述した実施形態では、測定装置25が端末装置20内に設けられている場合を一例として説明したが、例えば、測定装置25及び端末装置20の各々が個別の装置として設けられてもよい。この場合、測定装置25には、各通信装置10、端末装置20又は情報提供装置30に対して測定情報を送信するためのインタフェース部が設けられてもよい。
【0149】
さらに、上述した実施形態では、1つの情報提供装置30が設けられている場合を一例として説明したが、この場合に限られない。例えば、複数の情報提供装置30が設けられてもよく、この場合には、何れかの情報提供装置30上の操作内容及び処理結果等が他の情報提供装置30上でリアルタイムに提示されてもよいし、何れかの情報提供装置30での処理結果等が複数の情報提供装置30間で共有されてもよい。
【0150】
さらにまた、上述した実施形態では、工場内の作業者が本発明における「対象者」である場合を一例として説明したが、この「対象者」は、行動分析の対象となり得る者であれば如何なる者であってもよく、例えば、観光客、顧客、高齢者、障害者等であってもよい。
【0151】
また、上述した実施形態では、表示画面において複数の属性の中から選択された属性を有する作業者の所定行動に関する行動状況を表すヒートマップを提示する場合を一例として説明したが、この場合に限られない。例えば、複数の属性のうち予め決められた属性を有する作業者の所定行動に関する行動状況を表すヒートマップが表示画面において提示されてもよい。
【0152】
さらに、上述した実施形態では、表示画面において複数の行動分類の中から選択された行動分類に関する行動状況を表すヒートマップを提示する場合を一例として説明したが、この場合に限られない。例えば、複数の行動分類のうち予め決められた行動分類に関する行動状況を表すヒートマップが表示画面において提示されてもよい。
【0153】
上述した実施形態では、情報提供装置30によって、第1取得手段41、第2取得手段42、第3取得手段43、行動推定手段44、位置推定手段45及び提示手段46の各機能を実現する構成としたが、この構成に限られない。例えば、インターネットやLAN等の通信網を介して情報提供装置30と通信可能に接続されたコンピュータ等(例えば、汎用のパーソナルコンピュータやサーバコンピュータ等)によって、上記各手段41~46の機能を実現する構成としてもよい。また、上記各手段41~46のうち少なくとも1つの手段の機能を通信装置10又は端末装置20によって実現する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0154】
上述したような本発明の情報提供システム、情報提供方法、プログラムは、所定領域内での対象者毎の行動状況を容易に把握することができ、例えば、作業者等の行動分析を行う業務管理システム等に好適に利用することができるので、その産業上の利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0155】
10…通信装置
20…端末装置
41…第1取得手段
42…第2取得手段
43…第3取得手段
44…行動推定手段
45…位置推定手段
46…提示手段
R…領域