(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】水素ガス送出装置
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
(21)【出願番号】P 2021018638
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】593225596
【氏名又は名称】株式会社フラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【氏名又は名称】吉田 芳春
(72)【発明者】
【氏名】松木 清悟
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-151325(JP,A)
【文献】特開平10-246500(JP,A)
【文献】特開2017-086857(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0230053(US,A1)
【文献】特開2019-039590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガス供給手段から供給された水素ガスを先端から軸方向に沿って放出する水素ガス放出ノズルと、
前記水素ガス放出ノズルの外側に同軸に設置され、空気供給手段から供給された空気を先端から軸方向に沿って吹出す筒状のアウターノズルと、
前記水素ガス放出ノズルと前記アウターノズルとの間に同軸に配置され、前記アウターノズルから吹出される空気によって付勢される空気を先端から軸方向に沿って吹出す筒状のインナーノズルとを備え、
前記アウターノズルから吹出される空気の流速が、前記水素ガス放出ノズルから放出される水素ガスの流速より高くなるように構成されていることを特徴とする水素ガス送出装置。
【請求項2】
前記アウターノズルから吹出される空気の流速が、前記水素ガス放出ノズルから放出される水素ガスの流速より高くなるように、前記水素ガス供給手段と前記空気供給手段との動作を制御する制御手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の水素ガス
送出装置。
【請求項3】
前記アウターノズルと前記インナーノズルとの間の先端部に設けられ、スパイラル気流を形成するためのスパイラル気流形成手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素ガス送出装置。
【請求項4】
前記水素ガス放出ノズルの先端は、前記インナーノズルの先端より後方に配置され、前記インナーノズルの先端は、前記アウターノズルの先端より後方に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の水素ガス送出装置。
【請求項5】
前記水素ガス放出ノズル、前記アウターノズル及び前記インナーノズルからなる3重ノズルの先端部が、一体的に構成され、かつ、軸線に対して所定角度範囲を回動可能に構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の水素ガス送出装置。
【請求項6】
前記空気供給手段は、ブロワファンであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の水素ガス送出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カニューラ等の吸引器具を使用することなく、十分な量及び濃度の水素ガスを送り込むことができる水素ガス送出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、体内に取り込まれると還元力によって老化や病気のもととなる体内の活性酸素を除去し、疲労回復、若返り、美肌などの効果があると言われている。近年、水素が体内に起こる炎症や活性酸素を抑えることや、細胞のエネルギー代謝を促進することが発見され、様々な病気の予防や治療に活躍できると期待されている。また、水素に関する医学的な研究が進められており、注目が集まっている。
【0003】
従来、水素を人体内取り込む方法は、鼻腔カニューラ(特許文献1)又はガス吸引用マスク(特許文献2)等の水素ガス吸引器具を面部に装着して水素ガスを直接吸引する方法が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載の水素ガス吸引装置は、水素ガスを発生する容器と、接続チューブと、鼻腔カニューラとを備えている。発生した水素ガスは、接続チューブ内に流入し、第2の容器内に収容された多孔質材に形成された微細な貫通穴から細かい泡状となって第2の容器内に充填された水内に放出され、一部はこの水に溶解しながら上方に移動し、その後に中間チューブを介して鼻腔カニューラ内に流入し、使用者の鼻腔から体内に吸引される。
【0005】
また、特許文献2に記載の水素ガス吸入器は、本体部、操作部、誤動作防止装置及びキャップとで構成されている。水素ガス吸入器の使用時には、本体部に設置される管接続部に水素ガス吸入管が接続され、更に利用者が装着する吸入具(吸入マスク)へ続いている。水素ガス発生剤と反応液が混合された水素ガス吸入器の内部では、水素ガスが発生し、本体部の上部に貯留されながら、水素ガス吸入管を通して、吸入者が装着する吸入具(吸入マスク)に水素ガスが送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3184470号公報
【文献】実用新案登録第3207282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の水素ガス吸引装置(水素ガス吸入器)は、鼻腔カニューラ又はガス吸引用マスクを利用者の面部に装着することが必要となり、医療行為であることから使用に制約が生じて手軽に利用することができなかった。また、鼻腔カニューラ又はガス吸引用マスク等の水素ガス吸引器具と水素発生装置(又は、水素貯蔵容器)との間には水素ガスを供給するチューブが連結されているため、利用者は自由に動くことができないという問題点もあった。さらに、水素ガス吸引器具は消耗品として定期的に購入する必要があるという問題点もあった。
【0008】
これら水素ガス吸引装置を使用することなく、水素ガスを空中に放出して利用者に供給しようとすると、水素ガスは空気よりはるかに軽いことから発散してしまい、十分な量及び濃度の水素ガスを利用者に供給することができなかった。
【0009】
従って、本発明は従来技術の上述した問題点を解消するものであり、その目的は、鼻腔カニューラ等の吸引器具を利用することなく十分な量及び濃度の水素ガスを利用者に供給できる水素ガス送出装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、所定距離離れた利用者にも十分な量及び濃度の水素ガスを供給できる水素ガス送出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、水素ガス送出装置は、水素ガス供給手段から供給された水素ガスを先端から軸方向に沿って放出する水素ガス放出ノズルと、水素ガス放出ノズルの外側に同軸に設置され、空気供給手段から供給された空気を先端から軸方向に沿って吹出す筒状のアウターノズルと、水素ガス放出ノズルとアウターノズルとの間に同軸に配置され、アウターノズルから吹出される空気によって付勢される空気を先端から軸方向に沿って吹出す筒状のインナーノズルとを備え、アウターノズルから吹出される空気の流速が、水素ガス放出ノズルから放出される水素ガスの流速より高くなるように構成されている。
【0012】
水素ガス放出ノズルから軸方向に水素ガスが放出され、その外側に同軸設置された筒状のアウターノズルから空気が軸方向に沿って吹出され、水素ガス放出ノズルとアウターノズルとの間に同軸に配置された筒状のインナーノズルから、アウターノズルから吹出される空気によって付勢された空気が軸方向に沿って吹出される。このように、放出された水素ガス流とその外側の流速が高い空気流との間にクッションとなる空間を形成して空気流としているため、水素ガスの加速が抑制されてその拡散を防ぐことができる。その結果、十分な量及び濃度の水素ガスを、鼻腔カニューラ等の吸引器具を用いることなく、所定距離離れた利用者に供給することができる。
【0013】
アウターノズルから吹出される空気の流速が、水素ガス放出ノズルから放出される水素ガスの流速より高くなるように、水素ガス供給手段と空気供給手段との動作を制御する制御手段をさらに備えていることが好ましい。
【0014】
アウターノズルとインナーノズルとの間の先端部に設けられ、スパイラル気流を形成するためのスパイラル気流形成手段をさらに備えていることも好ましい。
【0015】
水素ガス放出ノズルの先端は、インナーノズルの先端より後方に配置され、インナーノズルの先端は、アウターノズルの先端より後方に配置されていることも好ましい。
【0016】
水素ガス放出ノズル、アウターノズル及びインナーノズルからなる3重ノズルの先端部が、一体的に構成され、かつ、軸線に対して所定角度範囲を回動可能に構成されていることも好ましい。
【0017】
空気供給手段は、ブロワファンであることも好ましい。
【0018】
本発明によれば、水素ガス送出方法は、水素ガスを放出して軸方向の水素ガス流を形成し、水素ガス流の外側に水素ガスの流速より高い速度の軸方向の高速空気流を形成し、高速空気流によって付勢され、水素ガスの流速より速くかつ高速空気流の流速より遅い流速を有する中速空気流を、水素ガス流と高速空気流との間に形成する。
【0019】
水素ガス流とその外側の高速の空気流との間にクッションとなる空間を形成して空気流としているため、水素ガスの加速が抑制されてその拡散を防ぐことができる。その結果、十分な量及び濃度の水素ガスを、鼻腔カニューラ等の吸引器具を用いることなく、所定距離離れた利用者に供給することができる。
【0020】
高速空気流として、スパイラル気流を形成することが好ましい。これにより、空気流及び水素ガス流の直進性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、十分な量及び濃度の水素ガスを、鼻腔カニューラ等の吸引器具を用いることなく、所定距離離れた利用者に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の水素ガス送出装置の一実施形態の外観構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1の水素ガス送出装置の3重ノズルの構成例及び水素ガス送出状態を概略的に示す断面図である。
【
図3】本発明の水素ガス送出装置の他の実施形態として、スパイラル気流形成手段が無い場合の3重ノズルの構成例及び水素ガス送出状態を概略的に示す説明図である。
【
図4】本発明の水素ガス送出装置のさらに他の実施形態の3重ノズルの構成例及び水素ガス送出状態を概略的に示す断面図である。
【
図5】水素送出効果を比較するための、
図1の水素ガス送出装置と比較例との比較実験の構成を概略的に示す図である。
【
図6】本発明の水素ガス送出装置の使用状態(その1)を概略的に示す図である。
【
図7】本発明の水素ガス送出装置の使用状態(その2)を概略的に示す図である。
【
図8】本発明の水素ガス送出装置の使用状態(その3)を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は本発明の一実施形態における水素ガス送出装置100の外観構成を概略的に示しており、
図2はこの水素ガス送出装置100の3重ノズルの構成及び水素ガス送出状態を示している。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る水素ガス放出装置100は、空気及び水素を吹き出す3重ノズル10と、水素ガス供給手段20と、空気を吹き出すための空気供給手段30と、制御手段40とを備えている。
【0026】
また、
図2に示すように、3重ノズル10は、水素ガス供給手段20から供給された水素ガスを先端から軸方向に沿って放出する水素ガス放出ノズル11と、水素ガス放出ノズル11の外側に同軸に設置され、空気供給手段30から供給された空気を先端から軸方向に沿って吹出す筒状のアウターノズル12と、水素ガス放出ノズル11とアウターノズル12との間に同軸に配置され、アウターノズル12から吹出された空気によって付勢される空気を先端から軸方向に沿って吹出す筒状のインナーノズル13とを備えている。また、本実施形態において、3重ノズル10は、アウターノズル12とインナーノズル13との間の先端部に設けられ、スパイラル気流を形成するためのスパイラル気流形成手段14をさらに備えている。スパイラル気流形成手段14としては、例えばスクリューフィンを用いる。このスパイラル気流形成手段14を設けることにより、空気流及び水素ガス流の直進性能を高めることができる。また、3重ノズル10において、水素ガス放出ノズル11の先端は、インナーノズル13の先端より後方に配置され、インナーノズル13の先端は、アウターノズル12の先端より後方に配置されている。これにより、水素ガスの拡散を抑制することができる。また、インナーノズル13の後端側は、外気に連通されており、アウターノズル12から空気を高速に吹き出す際に、インナーノズル13内部の空気が引っ張られて先端から吹き出し、同時に付勢されて、水素ガスの流速より速くかつ高速空気流の流速より遅い流速を有する中速空気流(クッションとなる空間)を、水素ガス流と高速空気流との間に形成するように構成されている。
【0027】
水素ガス供給手段20は、水素ガス発生装置からなる。この水素ガス発生装置は、例えば、水の電気分解により水素を生成するような装置を用いる。水素ガス発生装置は、水素の高圧ガスボンベの代わりとして使用できる安全かつ便利な手段で、水素ガス発生装置を利用することで一般的にコスト効率がより高くなる。水素ガス発生装置を用いる場合は、必要な時に必要な量だけ水を電気分解し、純度99.999%の水素ガスを製造できる。なお、水素ガス供給手段20として、市販の小型水素ガスボンベ又は水素吸蔵合金キャニスタを用いても良い。
【0028】
空気供給手段30は、アウターノズル12に空気を供給するものであり、ブロワファン、軸流ファン又はコンプレッサーを用いることができる。この空気供給手段30として、本実施形態ではブロワファンを用いている。ブロワファンから供給された空気流は、整流されているため、水素ガスを直線に近い流れで送出することができ、また、空気の流速が速いため、水素ガスの拡散による濃度低下を抑えることができる。
【0029】
制御手段40は、水素ガス供給手段20と空気供給手段30とを制御するものであり、例えば、マイクロコンピュータを用いている。制御プログラムに従って、水素ガス吸引装置100の全体の動作を制御する。本実施形態において、制御手段40は、使用者が電源をオンにした場合、水素ガス放出ノズル11から水素ガスを放出すると共に、アウターノズル12から空気を吹き出すように、さらに、アウターノズル12から吹出される空気の流速が、水素ガス放出ノズル11から放出される水素ガスの流速より高くなるように、水素ガス供給手段11と空気供給手段12との動作を制御するように構成されている。また、制御手段40は、水素ガス供給手段20の水素ガスの生成過程も制御するように構成されている。
【0030】
このような構成により、水素ガス放出装置100を使用する際に、3重ノズル10の水素ガス放出ノズル11から水素ガスを放出すると共に、アウターノズル12から空気を吹き出す。これにより、
図2に示すように、水素ガス流の外側に水素ガスの流速より高い速度の軸方向の高速空気流が形成され、この高速空気流はスパイラル気流形成手段14によって旋回しながら軸方向に直進する高速スパイラル空気流となる。この高速スパイラル空気流によってインナーノズル13からの空気が付勢され、水素ガスの流速より速くかつ高速空気流の流速より遅い流速を有する中速空気流が、水素ガス流と高速スパイラル空気流との間に形成される。これらの高速スパイラル空気流と中速空気流により水素ガスの拡散を抑えながら、所定距離まで十分な量及び濃度の水素ガスを送出することができる。
【0031】
図3は本発明の水素ガス送出装置の他の実施形態として、
図2に示すスパイラル気流形成手段14が無い場合の3重ノズル10aの構成及び水素ガス送出状態を示している。
【0032】
図3に示すように、本実施形態の3重ノズル10aは、アウターノズル12とインナーノズル13との間の先端部に、
図2に示すようなスパイラル気流を形成するためのスパイラル気流形成手段14が設けられていない以外に、上述した実施形態の3重ノズル10と同様な構成を有している。この3重ノズル10aにおいて、スパイラル気流を形成するスパイラル気流形成手段を有しないため、アウターノズル12から吹出された空気が旋回することなく軸方向に沿って直進するようになっている。この直進の高速空気流によってインナーノズル13からの空気が付勢され、水素ガスの流速より速くかつ高速空気流の流速より遅い流速を有する中速空気流(クッションとなる空間)が、水素ガス流と高速空気流との間に形成される。これらの高速空気流と中速空気流により水素ガスの拡散を抑えながら、所定距離まで十分な量及び濃度の水素ガスを送出することができる。
【0033】
図4は本発明の水素ガス送出装置のさらに他の実施形態として、3重ノズル10Aの構成例及び水素ガス送出状態を示している。
【0034】
図4に示すように、3重ノズル10Aは、水素ガス供給手段20から供給された水素ガスを先端から軸方向に沿って放出する水素ガス放出ノズル11Aと、水素ガス放出ノズル11Aの先端の外側に同軸に設置され、空気供給手段30から供給された空気を先端から軸方向に沿って吹出す筒状のアウターノズル12Aと、水素ガス放出ノズル11とアウターノズル12Aとの間にかつ同軸に配置され、空気吹出ノズル12Aから空気が吹出す際に、後端の側面から空気供給手段30から供給された空気の一部を導入し、先端から吹き出す筒状のインナーノズル13Aとを備えている。また、本実施形態において、3重ノズル10Aは、アウターノズル12Aとインナーノズル13Aとの間の先端部に設けられ、スパイラル気流を形成するためのスパイラル気流形成手段14Aをさらに備えている。また、3重ノズル10Aにおいて、水素ガス放出ノズル11Aの先端は、インナーノズル13Aの先端より後方に配置され、インナーノズル13Aの先端は、アウターノズル12Aの先端より後方に配置されている。さらに、インナーノズル13Aの後端側の側面に複数開口が設けられており、これらの複数開口から空気供給手段30から供給された空気の一部を導入することができ、かつ導入された空気の流速を落とすことができるように構成されている。
【0035】
また、本実施形態において、水素ガス放出ノズル11A、アウターノズル12A及びインナーノズル13Aからなる3重ノズル10Aの先端部が、一体的に構成され、かつ、軸線に対して所定角度範囲を回動可能に構成されている。例えば、
図4に示すように、水素ガス放出ノズル11Aの後端がゴム等の可動性チューブを介して水素ガス供給手段20に連結され、アウターノズル12Aの後端側が側面視略扇形に形成されている。これにより、3重ノズル10Aの先端部が、上下方向に所定角度範囲を回動可能となり、使用時に3重ノズル10Aの向きを調整することができる。
【0036】
3重ノズル10Aにおいて、水素ガス送出は、
図4に示すように、水素ガス供給手段20から供給された水素ガスが水素ガス放出ノズル11Aの先端から軸方向に沿って放出する際に、空気供給手段30から供給された空気がスパイラル気流形成手段14Aを介してアウターノズル12Aの先端から軸方向に沿って吹出し、これにより、筒状の高速の空気流(スパイラル気流)が形成される。空気供給手段30から供給された空気の一部がインナーノズル13Aの後端から導入され、高速の空気流の流れによって付勢され、水素ガスの流速より速くかつ高速空気流の流速より遅い流速を有する中速空気流(クッションとなる空間)が、水素ガス流と高速スパイラル空気流との間に形成される。これらの高速の空気流と中速の空気流の層により水素ガスの拡散を抑えながら、所定距離まで十分な量及び濃度の水素ガスを送出することができる。
【0037】
水素ガス送出効果を比較するため、本発明の水素ガス送出装置と比較例である水素ガス送出装置との比較実験を行った。
図6は
図1及び
図2の実施形態の水素ガス送出装置100と比較例との比較実験の構成を示しており、同図(A)は水素ガス吸引装置100を用いた構成、(B)は比較例を用いた構成をそれぞれ示している。比較例として、ブロワファンの空気排出口に水素ガス放出ノズルを設置するものを用いた。水素濃度測定器として、水素ガス測定器UPX4型(株式会社ユーピー)を用いた。
【0038】
実験条件:水素濃度測定器を3重ノズル10又は水素ガスノズルの先端から200mmを離れた位置に設置した。また、水素ガスの流量は100mL/min、空気供給手段30から供給された空気の流速は2.84m/sとした。測定結果を表1に示している。
【0039】
【表1】
表1に示すように、
図2の実施形態の水素ガス送出装置100を用いた場合、3重ノズル10の先端から200mm離れた位置で、比較的高い水素濃度(1.225%)が維持され、水素吸引に適正な水素濃度が得られた(一般的な水素吸引では水素濃度が0.5%~2%である)。比較例では、200mm離れた位置での水素濃度が大きく低下することが分かった。即ち、単なる高速空気流で水素を送出(搬送)しても、水素ガスの拡散により水素濃度の低下を抑えることができないことが分かった。
【0040】
また、
図4の実施形態における3重ノズル10Aを有する水素ガス送出装置100の水素ガス送出効果の実験も行った。この場合、水素濃度測定器を3重ノズル10Aの先端から500mmを離れた位置に設置した。水素ガスの流量は100mL/min、空気供給手段30から供給された空気の流速は2.84m/sとした。水素濃度の測定結果は1.053%であった。これにより、
図4の実施形態における水素ガス送出装置100を用いた場合、3重ノズル10Aの先端から500mmを離れた位置でも、比較的高い水素濃度が維持され、水素吸引に適正な水素濃度が得られた。
【0041】
図6から
図8は、本発明の水素ガス送出装置100の使用状態を示している。
図6において、水素ガス吸引装置100の一使用状態として、テーブル等に設置された水素ガス放出装置100に向かって座った状態で水素ガスを吸引する例を示している。
図7において、水素ガス吸引装置100の他の使用状態として、テーブル等に設置された水素ガス放出装置100の近くに他の作業をしながら水素ガスを吸引する例を示している。
図8において、水素ガス吸引装置100のさらに他の使用状態として、就寝中にベッド付近設置された水素ガス放出装置100から放出された水素ガスを吸引する例を示している。
図6から
図8に示すように、本発明の水素ガス送出装置100を用いて、従来のような装置と使用者をつなぐ水素供給用管がないため、使用者は自由に動くことが可能となり、気軽で日常的に使用することができる。
【0042】
以上説明したように、
図2(
図3及び
図4)の実施形態の水素ガス送出装置100は、空気及び水素を吹き出す3重ノズル10(10a、10A)と、水素ガス供給手段20と、空気を吹き出すための空気供給手段30と、制御手段40とを備えている。3重ノズル10(10a、10A)は、水素ガス供給手段20から供給された水素ガスを先端から軸方向に沿って放出する水素ガス放出ノズル11(11A)と、水素ガス放出ノズル11(11A)の外側に同軸に設置され、空気供給手段30から供給された空気を先端から軸方向に沿って吹出す筒状のアウターノズル12(12A)と、水素ガス放出ノズル11(11A)とアウターノズル12(12A)との間に同軸に配置され、アウターノズル12(12A)から吹出された空気によって付勢される空気を先端から軸方向に沿って吹出す筒状のインナーノズル13(13A)とを備えている。
【0043】
これにより、水素ガス放出ノズル11(11A)から軸方向に水素ガスが放出され、その外側に同軸設置された筒状のアウターノズル12(12A)から空気が軸方向に沿って吹出され、水素ガス放出ノズル11(11A)とアウターノズル12(12A)との間に同軸に配置された筒状のインナーノズル13(13A)から、アウターノズル12(12A)から吹出される空気によって付勢された空気が軸方向に沿って吹出される。このように、放出された水素ガス流とその外側の流速が高い空気流との間にクッションとなる空間を形成して空気流としているため、水素ガスの加速が抑制されてその拡散を防ぐことができる。その結果、十分な量及び濃度の水素ガスを、鼻腔カニューラ等の吸引器具を用いることなく、所定距離離れた利用者に供給することができる。かつ便利性が向上する。
【0044】
また、
図2及び
図4の実施形態における水素ガス送出装置100の3重ノズル10(10A)においては、スパイラル気流を形成するためのスパイラル気流形成手段14を設けることにより、空気流及び水素ガス流の直進性能を高めることができる。水素ガスをより遠方に到達させることができる利点がある。
【0045】
さらに、
図4の実施形態における水素ガス送出装置100においては、水素ガス放出ノズル11A、アウターノズル12A及びインナーノズル13Aからなる3重ノズル10Aの先端部が、一体的に構成され、かつ、軸線に対して所定角度範囲を回動可能に構成されているため、使用時に3重ノズル10Aの向きを調整することができ、より便利になる。
【0046】
なお、上述した実施形態の水素ガス送出装置100の3重ノズル10において、インナーノズル13の後端側が外気に連通されて、アウターノズル12から空気を高速に吹き出す際に、インナーノズル13内部の空気が引っ張られて先端から吹き出すように構成されている例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、インナーノズル13の後端側から空気供給手段30から供給される空気の一部を導入するように構成されても良い。他のファン等で空気を供給するようにしても良い。
【0047】
また、上述した実施形態の水素ガス送出装置100において、空気供給手段30には、ブロワファンを用いる例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。他の空気供給手段を用いても良い。
しても良い。
【0048】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、カニューラ等の吸引器具を使用せず、水素ガスを吸引し体内に取り込む目的に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
10、10a、10A 3重ノズル
11、11A 水素ガス放出ノズル
12、12A アウターノズル
13、13A インナーノズル
14、14A スパイラル気流形成手段
20 水素ガス供給手段
30 空気供給手段
40 制御手段
100 水素ガス送出装置