(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】仮想展示システム
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20230814BHJP
G06T 15/50 20110101ALI20230814BHJP
【FI】
G06T19/00 300B
G06T15/50
(21)【出願番号】P 2021031987
(22)【出願日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載アドレス:https://anchor200.github.io/ChinaGraphy/ 掲載年月日:令和3年1月29日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521278612
【氏名又は名称】Virtualion株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158366
【氏名又は名称】井戸 篤史
(72)【発明者】
【氏名】五十里 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】武澤 里映
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 謙
【審査官】岡本 俊威
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-342673(JP,A)
【文献】林正樹 他,4K超高精細リアルタイムCGによるバーチャル美術館,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2014年06月18日,第113巻第109号,p39-44
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 15/00-19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閲覧ユーザが、仮想空間内を疑似的に移動することで、前記仮想空間内に配設された仮想展示物を閲覧できる仮想展示システムであって、
展示ユーザの操作に基づいて、仮想展示物を仮想空間上の任意の位置に配設する展示物配設手段と、
展示ユーザの操作に基づいて、仮想展示台を仮想空間上の任意の位置に配設する展示台配設手段と、
照明の数、照明の位置、照明の方向、照射角度、照射光の色、照射光の明るさ、照射光の到達距離、及び照射範囲の広さ若しくは形状からなる群から選ばれる一又は複数のパラメータを設定する展示ユーザの操作に基づいて、前記仮想展示物に対する仮想照明を配設する照明配設手段と、
設定されたパラメータの仮想照明が仮想的に照射されることにより変化する前記仮想展示物の表面を描画する画像処理手段と、
前記展示物配設手段、前記展示台配設手段、及び/又は前記照明配設手段の動作をイベントログとして記憶する記憶手段と、
展示ユーザ毎に前記イベントログを出力する出力手段と、
を備えた仮想展示システム
【請求項2】
前記照明配設手段が、照明の数、照明の位置、照明の方向、照射角度、照射光の色、照射光の明るさ、照射光の到達距離、及び照射範囲の広さ若しくは形状を設定する展示ユーザの操作に基づいて、前記仮想展示物に対する仮想照明を配設する、
請求項1に記載の仮想展示システム
【請求項3】
前記仮想展示物が立体であって、
前記画像処理手段が、前記仮想展示物の表面に加え、設定されたパラメータの前記仮想照明が前記仮想展示物に仮想的に照射されることにより形成される影を、さらに描画する、
請求項1又は2に記載の仮想展示システム
【請求項4】
前記展示物配設手段が、前記仮想展示物を前記仮想展示台の上に配置する展示物配設手段であって、
前記画像処理手段が、前記仮想展示物の表面に加え、設定されたパラメータの前記仮想照明が前記仮想展示台に仮想的に照射されることにより変化する仮想展示台表面、及び/又は設定されたパラメータの前記仮想照明が前記仮想展示台に仮想的に照射されることにより形成される影を、さらに描画する、
請求項1~3いずれか一項に記載の仮想展示システム
【請求項5】
前
記照明配設手段が、
照射光の明るさと照射光の到達距離を独立に、及び/又は、照射角度と照射範囲を独立に設定可能である、請求項1~4いずれか一項に記載の仮想展示システム
【請求項6】
前記仮想展示物に関する説明の文章データ及び/又は画像データを受け付ける、説明受付手段と、
前記仮想空間上での前記説明の表示位置を受け付ける、説明表示位置受付手段と、
前記仮想展示物から任意の距離の閲覧ユーザに対し前記説明を前記表示位置で表示可能な状態とする、説明表示手段と
をさらに備える、請求項1~5いずれか一項に記載の仮想展示システム
【請求項7】
前記仮想展示物に関する音声データを受け付ける、音声受付手段と、
前記仮想展示物から任意の距離の閲覧ユーザに対し前記音声を出力可能な状態とする、音声出力手段と
をさらに備える、請求項1~6いずれか一項に記載の仮想展示システム
【請求項8】
展示ユーザ及び/又は閲覧ユーザの端末装置が、コンピュータネットワークを介して接続可能なサーバを含み、
前記サーバは、展示ユーザが構築した仮想空間を、展示ユーザ毎に記憶する記憶部を備え、
前記閲覧ユーザは、前記展示ユーザの識別情報に基づいて、前記識別情報に紐付けられた仮想空間を閲覧することができる、
請求項1~7いずれか一項に記載の仮想展示システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想展示物が配設された仮想空間内で、ユーザが仮想展示物を閲覧可能な仮想展示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
美術展や博覧会、博物館等で行われていた展示を仮想的に実施するため、インターネット等のネットワークを介してユーザに配信するシステムが知られている。例えば、ユーザ操作により仮想展示会場における展示品の配設位置を変更させる手段を具備する展示会システム(特許文献1参照)、現実空間に重ね合わせて表示するオブジェクト出力システムを利用したバーチャル博物館システム(特許文献2参照)、3D画像によるバーチャル美術館システム(特許文献3参照)、インターネット上の仮想三次元空間にて美術展等の展示会を開催する仮想展示会システム(特許文献4参照)、特定の商品情報を容易な操作で収集可能な展示会システム(特許文献5参照)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-155230号公報
【文献】特開2004-145657号公報
【文献】特開2003-296587号公報
【文献】特開2002-342673号公報
【文献】特開2001-160065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現実の美術館や博物館における展示物は、展示物に対する照明の条件により、閲覧者への見え方が大きく異なるため、閲覧者に対して展示物を好ましく演出するために、展示物に対する照明の位置や照度等のパラメータが細かく調整されている。しかし、従来の仮想空間内での仮想展示システムでは、展示物を好ましく見せる目的で、照明の条件を設定することができなかった。
【0005】
例えば、特許文献1では、仮想展示会場に配設される小道具の一つとして照明光源が挙げられている。また、特許文献3では、展示された絵画に対してライトを好みに応じて設定すると記載されている。しかし、これらの文献からは、具体的にどのように仮想的な照明を設定すれば、仮想空間内の展示物を演出可能であるか、明らかになってはいない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決する仮想展示システムである。すなわち、本発明は、閲覧ユーザが、展示ユーザが構築した仮想空間内を疑似的に移動することで、仮想空間内に配設された仮想展示物を閲覧できる仮想展示システムである。展示ユーザの操作に基づいて、仮想展示物を仮想空間上の任意の位置に配設する展示物配設手段と、照明の数、照明の位置、照明の方向、照射角度、照射光の色、照射光の明るさ、照射光の到達距離、及び照射範囲の広さ若しくは形状からなる群から選ばれる一又は複数のパラメータを設定する展示ユーザの操作に基づいて、仮想展示物に対する仮想照明を配設する照明配設手段と、設定されたパラメータの仮想照明が仮想的に照射されることにより変化する仮想展示物の表面を描画する画像処理手段とを備えた仮想展示システムである。
【0007】
別の本発明は、照明配設手段が、照明の数、照明の位置、照明の方向、照射角度、照射光の色、照射光の明るさ、照射光の到達距離、及び照射範囲の広さ若しくは形状を設定する展示ユーザの操作に基づいて、仮想展示物に対する仮想照明を配設する、仮想展示システムである。
【0008】
さらに別の本発明は、仮想展示物が立体であって、画像処理手段が、仮想展示物の表面に加え、設定されたパラメータの仮想照明が仮想展示物に仮想的に照射されることにより形成される影を、さらに描画する。
【0009】
また、別の本発明は、展示ユーザの操作に基づいて、仮想展示台を仮想空間上の任意の位置に配設する展示台配設手段をさらに備え、展示物配設手段が、仮想展示物を仮想展示台の上に配置する展示物配設手段であって、画像処理手段が、仮想展示物の表面に加え、設定されたパラメータの仮想照明が仮想展示台に仮想的に照射されることにより変化する仮想展示台表面、及び/又は設定されたパラメータの仮想照明が仮想展示台に仮想的に照射されることにより形成される影を、さらに描画する。
【0010】
別の本発明は、仮想照明配設手段が、照射光の明るさと照射光の到達距離を独立に、及び/又は、照射角度と照射範囲を独立に設定可能である。
【0011】
また、別の本発明は、仮想展示物に関する説明の文章データ及び/又は画像データを受け付ける、説明受付手段と、仮想空間上での説明の表示位置を受け付ける、説明表示位置受付手段と、仮想展示物から任意の距離の閲覧ユーザに対し説明を表示位置で表示可能な状態とする、説明表示手段とをさらに備える。さらに、別の本発明は、仮想展示物に関する音声データを受け付ける、音声受付手段と、仮想展示物から任意の距離の閲覧ユーザに対し音声を出力可能な状態とする、音声出力手段とをさらに備える。
【0012】
さらに別の本発明は、記憶手段、及び出力手段をさらに備え、記憶手段は、前記記憶手段は、前記展示物配設手段、前記展示台配設手段、及び/又は前記照明配設手段の動作、すなわち、仮想展示物、仮想照明、及び/又は仮想展示台の配設及び撤去をイベントログとして記憶し、出力手段は展示ユーザ毎にイベントログを出力する。
【0013】
さらに別の本発明は、展示ユーザ及び/又は閲覧ユーザの端末装置が、コンピュータネットワークを介して接続可能なサーバを含み、サーバは、展示ユーザが構築した仮想空間を、展示ユーザ毎に記憶する記憶部を備え、閲覧ユーザは、展示ユーザの識別情報に基づいて、識別情報に紐付けられた仮想展示空間を閲覧することができる仮想展示システムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、仮想展示物に対する仮想照明のパラメータを調整することで、仮想展示物の様々な表現が可能となる。展示ユーザは、閲覧ユーザの鑑賞目的や、仮想展示物の表面の素材等を考慮して、適切な照明及びそのパラメータを調整し、閲覧ユーザは好ましく表現された仮想展示物を閲覧することができる。
【0015】
また、本発明は、仮想展示物、仮想照明、及び/又は仮想展示台の配設及び撤去をイベントログとして出力する。展示ユーザ毎に、仮想展示物、仮想照明、及び/又は仮想展示台の配設や撤去の経時的な操作を把握することが可能であり、展示ユーザに対する教育ツールとして活用することもできる。
【0016】
本発明では、サーバを備えた仮想展示システムであり、展示ユーザが構築した仮想空間を、展示ユーザ毎に記憶する。閲覧ユーザは、ユーザ毎にアーカイブされた仮想空間を閲覧することができるため、閲覧ユーザの好みの展示ユーザの仮想空間を網羅できるだけでなく、同一の展示ユーザが構築した仮想空間を比較することで、同ユーザの仮想空間構築能力がどのように向上したかを把握することが可能である。また、本発明は、仮想空間のアーカイブによりユーザー間のコミュケーションが促進されるため、SNSツールとしても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の仮想展示システムのシステム構成を示す図である。
【
図2】本発明の仮想展示システムにおける展示ユーザの操作画面を示す図である。
【
図3】本発明の仮想展示システムにおける展示ユーザの操作画面を示す図である。
【
図4】本発明の仮想展示システムにおける展示ユーザ毎の仮想展示物(立体)、仮想展示物(平面)、仮想照明、及び仮想展示台の配設数の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の仮想展示システムの実施形態では、展示物配設手段と、照明配設手段と、画像処理手段と、提示手段とを備える。別の実施形態では、さらに記憶手段、入力手段、出力手段とを備える。記憶手段は、仮想空間を構築するための情報を記憶し、入力手段は、展示ユーザ及び/又は閲覧ユーザの入力操作を受け付ける。提示手段は、閲覧ユーザに対し、構築された仮想空間内のデータを三次元ビューワにより閲覧可能な状態で提示する。本発明の仮想展示システム10のシステム構成の一例を
図1に示す。
【0019】
仮想空間は、複数の部屋と部屋同士を接続する通路から構成される。ユーザ操作により、仮想空間内における壁や間仕切りの位置を変更又は撤去したり、新たに配設したりすることで部屋や通路の構成は自在に変更可能である。部屋を構成する壁や、間仕切りは、一の展示物と、他の展示物との間の照明の干渉を防ぐ役割も有する。
【0020】
仮想展示システムで仮想的に展示される展示物は、具体的には芸術作品や学術資料であり、平面の展示物と立体の展示物があり得る。具体的には、平面の展示物としては、絵画、文章、写真、書作、及びこれらの複製品等が挙げられ、立体の展示物としては、彫刻等の立体芸術、陶磁器、木工品、剥製や化石等の生物標本、石器や土器、金属器等の考古学資料、及びこれらの複製品等が挙げられる。
【0021】
仮想展示物は、実在の展示物を基に構築されてもよく、創作されたものであっても良い。展示物が平面である場合、仮想展示物は二次元画像データファイル(TIFFファイル、JPGファイル、GIFファイル等)で構築される。展示物が立体である場合、仮想展示物は三次元画像データファイル(MDLファイル等)で構築される。仮想展示物は、実在の展示物の二次元又は三次元の撮像画像から構築し得る。
【0022】
展示物配設手段では、展示ユーザの操作により、仮想空間内の任意の位置に仮想展示物を配設する。展示ユーザは、キーボードやマウス、タッチパネル等の入力手段を用いて、仮想展示物を配設する位置及び方向を指示し、展示物配設手段がユーザからの指示に基づいて仮想展示物を配設する。本発明の別の実施形態は、展示台配設手段を備える。展示台破折手段は、展示ユーザの操作により、仮想空間内の任意の位置に仮想展示台を配設する。仮想展示物が立体である場合、ユーザは、仮想展示台を先に配設し、当該展示台の上に仮想展示物を配設するよう指示することができる。記憶手段には、複数の仮想展示台のオブジェクトデータが記憶されており、展示ユーザは、好みの仮想展示台のオブジェクトデータを選択し、好みの場所に配設することができる。
【0023】
展示ユーザは、仮想展示物や仮想展示台が配設された仮想的空間を、閲覧ユーザの視点から確認し、必要に応じて、一度配設した仮想展示物や仮想展示台を撤去したり、配設場所を変更する操作をすることが可能である。展示物配設手段又は展示台配設手段は、それらの操作に基づいて、仮想展示物や仮想展示台の撤去や、配設場所の変更を実行する
【0024】
照明配設手段は、照明の数、位置、方向、及びその他パラメータを設定する展示ユーザの操作に基づいて、当該パラメータを満たす仮想照明を仮想的に配設する。照明配設手段で配設される仮想照明の被照射物は、仮想展示物である。仮想展示物が立体であり仮想展示台の上に配置されている場合、被照射物には仮想展示物に加えて仮想展示台も含み得る。
【0025】
照明配設手段において設定可能なその他パラメータとしては、照射角度、照射光の色、照射光の明るさ、照射光の到達距離、及び照射範囲の広さ又は形状が挙げられる。
【0026】
照射角度とは、ビーム角とも呼称され、照明から照射された光の広がりを示すパラメータである。集光形であれば照射範囲は狭いが照度は高くなり、散光形であれば照射範囲は広いが照度は低くなる。照射光の色は、照明から出射される光の色であり、暖色、寒色及び中性色からなる群からの選択だけでなく、RGB 表色系、色温度、波長等によって決定し得る。
【0027】
照射光の明るさは、光度として定義し得る。光度は、光源から照射される光の強さを示す指標であり、より具体的には波長毎に視感度で重み付けされた光の放射強度である。照明光の明るさは、光度以外にも、照射光の光束、光度、輝度、被照射物表面の照度としても調整し得る。
【0028】
照射光の到達距離とは、仮想照明から照射された照射光が一定の照度として到達する距離である。一実施形態では、照射光の明るさと照射光の到達距離を独立したパラメータとして調整が可能である。実在の照明では、照射光の到達距離は、照明の光度に依存するが、本実施形態の仮想照明では、照射光の光度に対して独立に照射光の到達距離が調整可能である。例えば、高い光度の照射光の到達距離を短く設定するなど、現実世界では不可能な演出を可能とする。
【0029】
照射範囲の広さ又は形状は、仮想照明から照射された照射光により照射される被照射物上の範囲の広さ又は形状である。一実施形態では、照射光の照射角と照射範囲を独立したパラメータとして調整が可能である。実在の照明では、照射範囲は、照射角に依存するが、本実施形態では、照射角に対して独立に照射範囲が調整可能である。例えば、狭い照射角にも関わらず、照射範囲を広く設定するなど、現実世界では不可能な演出を可能とする。展示ユーザが、被照射物である仮想展示物や仮想展示台上で、照射したい範囲を選択することで、当該範囲やその形状が照射範囲として設定される。
【0030】
また、仮想展示物に対する照明に限定されず、仮想空間内に配設される全ての照明に対しても、展示ユーザは、位置、方向及びその他パラメータを調整することができる。例えば、仮想空間の入口及び出口に仮想的に設けられる照明や、仮想展示室間を結ぶ仮想通路に仮想的に設けられる照明等が挙げられる。
【0031】
本発明の実施形態においては、照明配設手段は、人工的な照明に限定されず、太陽光(昼光)も照明の一つとして配設可能である。展示ユーザの操作に基づいて、照明配設手段は、仮想空間内に、仮想的に太陽光の取り込みが可能な天窓及び/又は側窓を配設し、パラメータが調節される。パラメータとしては、天窓及び/又は側窓の数、天窓及び/又は側窓の位置、天窓及び/又は側窓の仮想展示物に対する角度が挙げられる。さらに、季節や時間、天気というパラメータを設けることで、実在の太陽光の光度及び入射角を再現し、リアルな演出が可能となる。
【0032】
展示ユーザは入力手段において、例えばドラッグアンドドロップ動作により配設する位置及び方向を指示し、照明配設手段は照明の位置及び方向を決定する。また、展示ユーザが入力手段を用いて照明を選択すると、パラメータ調整用のウィンドウが開かれ、当該ウィンドウ内でパラメータの調整が可能である。
【0033】
照明配設手段の一態様について、図面を用いて説明する。
図2及び
図3は、仮想展示システムにおける展示ユーザの操作画面であり、照明配設時の操作画面を示す。
図2では、展示ユーザは、仮想展示物12が好ましく表現されるよう、仮想照明14の照射範囲16を調整する。具体的には、展示ユーザは、仮想照明12の配設位置をコントロールバーA18で、仮想照明14の照射方向をコントロールバーB20で、それぞれの位置を入力手段により変更することで、照射範囲16の位置及び/又は形状を調整することができる。小窓20では、別角度からの仮想展示物12及び仮想照明14の照射範囲16を表示することが可能である。展示ユーザは、例えば小窓20で閲覧者ユーザの視点を確認しながら、仮想照明14の照射範囲16を調整することが可能である。
【0034】
図3は、仮想照明14のパラメータのうち、照射光の明るさ、照射範囲の広さ、照射光の入射角、及び照射光の色を調整可能な、展示ユーザの操作画面である。展示ユーザの操作に基づいて、パラメータ調整用の小窓24が開かれるため、展示ユーザは小窓24内でパラメータ調整のための入力操作を行う。展示ユーザは、各パラメータのコントロールバーの位置又は数値を、入力手段により変更することで、各パラメータを自在に調整することができる。照明配設手段は、これらのパラメータの設定に基づいて、仮想照明を配設する。
【0035】
照明配設手段は、展示ユーザの入力に基づき、一又は複数の照明を仮想的に配設する。複数の照明が配設される場合、それぞれの照明について、個別にパラメータを調整することもできるが、一の照明で調整したパラメータを他の照明にコピーすることもできる。展示ユーザの入力の手間を省くためである。
【0036】
展示ユーザは、仮想照明が配設された仮想的空間を、閲覧ユーザの視点から確認し、必要に応じて、一度配設した仮想照明を撤去したり、配設場所を変更する操作をすることが可能である。照明配設手段は、それらの操作に基づいて、仮想照明の撤去や、配設場所の変更を実行する。
【0037】
画像処理手段は、仮想照明の照射光により照射された展示物等の被照射物の表面を、ユーザが調整したパラメータを基に描画し、表示手段が描画した画像を表示する。別の実施形態では、被照射物の表面だけでなく、照射光により仮想的に形成される被照射物の影も描画する。
【0038】
画像処理手段では、仮想展示物の表面に加えて、仮想照明の照射光の軌跡を描画することもできる。画像処理手段は、被照射物表面が光線を反射し得る素材で構成される場合には、反射光の軌跡を計算し、仮想空間内に描画する。仮想照明の照射光が、床面及び/又は壁面を照射した場合は、その照射範囲や反射光を描画する。画像処理手段における描画は、レイトレーシングやフォトンマッピング等の既知のレンダリング手法を利用することできる。
【0039】
画像処理手段は、低解像度又は高解像度で描画する。例えば、展示ユーザが仮想照明のパラメータを調整している際には、仮想照射光の照射領域を低い解像度で描画し、表示手段は速やかに画像を表示する。展示ユーザは、ほぼリアルタイムで、描画された画像を見ながら、仮想照明を好みのパラメータに調整することができる。展示ユーザが、仮想照明のパラメータを確定する旨の入力を行うと、画像処理手段は、解像度が高い状態で表面を描画し、表示手段が描画した画像を表示する。
【0040】
本発明の仮想展示システムは、ネットワークを介してサーバに接続され、仮想空間を構築するデータをサーバに保存する。閲覧者ユーザは、パーソナルコンピュータやスマートフォン、ヘッドマウントディスプレイ等、画像を表示可能な閲覧端末によりサーバにアクセスすることで、仮想空間内を移動しながら、仮想展示物を閲覧することができる。
【0041】
本発明の仮想展示システムは、閲覧者ユーザの操作に対応し、展示ユーザが構築した仮想空間内を自在に移動するような閲覧画面を表示することで、閲覧者ユーザの仮想的な視点から、仮想展示品を閲覧することができる。閲覧者ユーザの操作に基づいて、閲覧者の仮想的な視線と展示物の角度を360度自由に変更することができる。
【0042】
閲覧者ユーザは、事前に構築された仮想空間のマップに基づき、仮想空間内を移動する。閲覧画面では、閲覧者ユーザが、仮想空間内のどこにいるか一目で把握できるよう、仮想空間の二次元マップと、当該マップ上のユーザの位置を表示するマップウィンドウを表示してもよい。また、例えば閲覧者を示すアバタ等の、閲覧者に対応するオブジェクトを表示し、閲覧者ユーザの操作に対応して、仮想空間内をアバタが移動する画像を表示しても良い。
【0043】
本発明の別の実施形態は、説明受付手段と、説明表示位置受付手段と、説明表示手段とを備え、閲覧ユーザに対し、仮想空間内に仮想展示物に関する説明や解説を含む文章データ及び/又は画像データを表示する。
【0044】
展示ユーザは、入力手段によって文章データ及び/又は画像データを入力し、説明受付手段は、当該データを受け付ける。さらに、展示ユーザは、入力手段によって、仮想空間内で説明を表示する位置を選択し、説明表示位置受付手段がこれを受け付ける。
【0045】
説明表示手段は、閲覧ユーザに対し、説明受付手段が受け付けた説明を、説明表示位置受付手段が受け付けた位置で表示する。説明は、当該説明に関する仮想展示物に任意の距離の閲覧ユーザに対して表示可能な状態となる。閲覧ユーザにとっては、仮想空間内である仮想展示物に近付くと、当該仮想展示物に関する説明が表示される。別の態様では、一定距離の閲覧ユーザに対し、説明表示を求めるか否かの選択肢が提示され、説明表示を求めると回答した閲覧ユーザのみに説明が表示される。説明表示を求めない閲覧ユーザに対して、説明を表示しないようにするためである。
【0046】
本発明の別の実施形態は、音声受付手段と音声出力手段とを備え、閲覧ユーザに対し、仮想空間内に仮想展示物に関する音声を出力する。当該音声は、仮想展示物の説明に関する音声の他、仮想展示物から仮想的に発せられる音声であってもよい。
【0047】
音声受付手段は、展示ユーザから音声データを受け付ける。音声は、音声出力手段により、当該音声に関する仮想展示物に任意の距離の閲覧ユーザに対して出力可能な状態となる。閲覧ユーザにとっては、仮想空間内である仮想展示物に近付くと、当該仮想展示物に関する音声が出力される。別の態様では、一定距離の閲覧ユーザに対し、音声出力を求めるか否かの選択肢が提示され、音声出力を求めると回答した閲覧ユーザのみに音声が出力される。音声出力を求めない閲覧ユーザに対して、音声を出力しないようにするためである。
【0048】
記憶手段は、記憶手段は、展示物配設手段、展示台配設手段、及び/又は照明配設手段の動作、すなわち、展示ユーザの操作に基づいた仮想展示物、仮想照明、及び/又は仮想展示台の配設及び撤去をイベントログとして記憶する。さらに、出力手段は、展示ユーザ毎にイベントログを出力する。本実施形態によれば、仮想展示物、仮想照明、及び/又は仮想展示台の配設や撤去の経緯を展示ユーザ毎に把握することが可能である。
【0049】
一実施形態としては、出力手段は、イベントログに基づいて、展示ユーザの仮想展示物、仮想照明、及び/又は仮想展示台の配設数の変化を出力する。
図4は、横軸を展示ユーザの操作ステップ数、縦軸を配設数としたグラフとして出力した一実施形態であり、3つのグラフはそれぞれ別の展示ユーザの操作による配設数の変化を示している。ユーザの操作ステップ毎の仮想展示物、仮想照明、及び/又は仮想展示台の変化量を把握することができることで、展示物等の配設のユーザごとの傾向を容易に把握することができる。
【0050】
例えば、
図4では、左に示したグラフの展示ユーザは、序盤から仮想照明の数画像化しており、一の展示物に対して照明を配設した後で、次の展示物の配設に移っていたことが分かる。
図4の真ん中に示したグラフの展示ユーザは、序盤に仮想展示物(平面)の数が5個付近で前後していることから、仮想展示物(平面)の配設を繰り返していることが読み取れる。さらに、
図4の右に示したグラフの展示ユーザは、序盤に仮想展示物(平面)の数が減っており、その時点で展示方法を変更したことが分かる。このように、本実施態様では、展示ユーザ毎の展示行動が可視化されるため、展示ユーザがどのように展示を工夫したかを教育者側が評価することができる。
【0051】
本発明の別の形態は、展示ユーザ及び/又は閲覧ユーザの端末装置が、コンピュータネットワークを介して接続可能なサーバを含む。展示ユーザ及び/又は閲覧ユーザは、それぞれ固有のユーザ識別情報が付与され、当該識別情報に基づいてサーバ内の記憶部が割り当てられる。サーバは、、展示ユーザが構築した仮想空間を、展示ユーザ毎に記憶部に記憶する。閲覧ユーザは、展示ユーザの識別情報に基づいて、サーバに接続し、識別情報に紐付けられた仮想空間を閲覧することができる。
【0052】
以上に説明した本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。
【符号の説明】
【0053】
10 仮想展示システム
12 仮想展示物
14 仮想照明