(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】フィルム洗浄装置およびフィルム洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B08B 11/00 20060101AFI20230814BHJP
B08B 3/12 20060101ALI20230814BHJP
B65H 5/00 20060101ALI20230814BHJP
B65H 20/00 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
B08B11/00 A
B08B3/12 D
B65H5/00 B
B65H20/00 Z
(21)【出願番号】P 2021060850
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591230675
【氏名又は名称】株式会社サワーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 一也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 義弘
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-235259(JP,A)
【文献】特開平08-001920(JP,A)
【文献】特開2016-147254(JP,A)
【文献】特開2002-102806(JP,A)
【文献】特開2008-049263(JP,A)
【文献】特開2009-095720(JP,A)
【文献】特開2009-291733(JP,A)
【文献】特開2013-052328(JP,A)
【文献】特開2001-353474(JP,A)
【文献】特開2008-168202(JP,A)
【文献】特開平06-246251(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111672792(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00-17/00
B65H 5/00
B65H20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクの付いたフィルムを洗浄するフィルム洗浄装置であって、
前記フィルムを搬送する搬送機構と、
前記搬送機構により搬送中の前記フィルムの表面に洗浄液を供給する給液装置と、
前記給液装置により洗浄液が供給された前記フィルムに対して超音波振動を与える振動装置と、
前記振動装置により超音波振動が与えられた後の前記フィルムのインクの付いた印刷面を擦って清掃する清掃具と、を備え
、
前記搬送機構が前記フィルムを搬送する搬送経路は、前記フィルムが下向きに走行する下向き搬送経路、または前記フィルムが上向きに走行する上向き搬送経路を含み、
前記振動装置は、前記下向き搬送経路または前記上向き搬送経路に対して該下向き搬送経路または上向き搬送経路を通過する前記フィルムの厚さ方向における片側または両側に、当該フィルムとの間に隙間を形成するように配置され、
前記給液装置は、前記振動装置よりも上方に位置する給液口を有し、該給液口から前記隙間に洗浄液を導入して流下させる、フィルム洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたフィルム洗浄装置において、
前記振動装置は
、前記隙間の大きさを調整する隙間調整機構を有
する、フィルム洗浄装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたフィルム洗浄装置において、
前記清掃具として、搬送中の前記フィルムの幅方向に沿って延びる軸周りに回転する回転ブラシを備え、
前記回転ブラシの回転方向は、当該回転ブラシの毛材が前記印刷面と接する位置で前記フィルムの搬送方向とは反対方向に向けて移動する方向である、フィルム洗浄装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載されたフィルム洗浄装置において、
前記清掃具として、搬送中の前記フィルムの前記印刷面に接するブラシを備え、
前記ブラシに対して前記フィルムを押し付ける押付け装置をさらに備え、
前記押付け装置は、前記ブラシに対する前記フィルムの押し付け力を調整する押付け力調整機構を有する、フィルム洗浄装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載されたフィルム洗浄装置において、
前記振動装置および前記清掃具をそれぞれ複数備える、フィルム洗浄装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載されたフィルム洗浄装置において、
前記清掃具を、搬送中の前記フィルムに接した状態で、当該フィルムの幅方向に揺動させる揺動機構をさらに備える、フィルム洗浄装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載されたフィルム洗浄装置において、
前記フィルムのインクが混ざった使用済みの洗浄液から前記インクを除去し、前記洗浄液として再利用可能に再生させる再生装置をさらに備える、フィルム洗浄装置。
【請求項8】
インクの付いたフィルムを洗浄するフィルム洗浄方法であって、
前記フィルムを搬送しながら、当該フィルムの表面に洗浄液を供給する第1ステップと、
前記第1ステップで洗浄液が供給された前記フィルムに対して超音波振動を与える第2ステップと、
前記第2ステップで超音波振動が与えられた後の前記フィルムのインクの付いた印刷面を清掃具により擦って清掃する第3ステップと、を含
み、
前記第1ステップおよび前記第2ステップは、前記フィルムが下向きに走行する下向き搬送経路、または前記フィルムが上向きに走行する上向き搬送経路で行い、
前記第2ステップでは、下向きまたは上向きに搬送される前記フィルムの厚さ方向における片側または両側に、当該フィルムとの間に隙間を形成するように配置された振動装置を、前記フィルムに超音波振動を与える装置として使用し、
前記第1ステップでは、前記振動装置よりも上方の位置から前記隙間に洗浄液を導入して流下させる、フィルム洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルム洗浄装置およびフィルム洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品などの包装に使用される柔軟なフィルムには、所定の文字や図柄が印刷される。包装用フィルムへの印刷手法としては、グラビア印刷法が好適に用いられる。グラビア印刷法を用いた印刷機では、良質な仕上がりとするために、印刷の際に使用するインクの色を調整する試し刷り(校正刷り)が実施される。試し刷りに使用したフィルムは、日常的に多く発生するが、焼却処分される廃棄物となる。それに加え、印刷不良による廃棄フィルムも発生する。
【0003】
そこで、印刷済みのフィルムを再利用可能に洗浄するフィルム洗浄装置が提案されている。例えば、特許文献1には、印刷済みのフィルムを洗浄液に晒して洗浄するフィルム洗浄装置が開示されている。このフィルム洗浄装置は、ロールトゥロール方式でフィルムを搬送する複数のローラと、フィルムの搬送経路に設けられた洗浄槽とを備える。当該フィルム洗浄装置では、搬送中のフィルムが洗浄槽に溜められた洗浄液にくぐらせて浸漬され、水洗後に乾燥される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示のようなフィルム洗浄装置では、フィルムに付いたインクを効果的には落とせず、インクの残留物がフィルムに残るおそれがある。インクの残留物がフィルムに残ると、そのフィルムを再生利用するのに支障を来す。
【0006】
本開示の技術の目的は、印刷済みのフィルムに付いたインクを効果的に除去できるフィルム洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本開示の技術では、フィルムに超音波振動を与えることで洗浄液を浸透させた後に、フィルムのインクを擦り落とすようにした。
【0008】
具体的には、本開示の第1の態様は、インクの付いたフィルムを洗浄するフィルム洗浄装置を対象とする。第1の態様のフィルム洗浄装置は、前記フィルムを搬送する搬送機構と、前記搬送機構により搬送中の前記フィルムの表面に洗浄液を供給する給液装置と、前記給液装置により洗浄液が供給された前記フィルムに対して超音波振動を与える振動装置と、前記振動装置により超音波振動が与えられた後の前記フィルムのインクの付いた印刷面を擦って清掃する清掃具とを備える。
【0009】
この第1の態様では、洗浄液がフィルムの表面に供給された後、そのフィルムに超音波振動が与えられる。超音波振動がフィルムに与えられると、洗浄液がフィルムに浸透して、フィルムに付いたインクが浮いた状態となる。その状態で、フィルムの印刷面が清掃具により擦られると、浮いたインクが取り除かれる。これによって、フィルムに付いたインクを効果的に除去できる。
【0010】
本開示の第2の態様は、第1の態様のフィルム洗浄装置において、前記振動装置が、前記フィルムの搬送経路に対して該搬送経路を通過する前記フィルムの厚さ方向における片側または両側に、当該フィルムとの間に隙間を形成するように配置される、フィルム洗浄装置である。第2の態様のフィルム洗浄装置において、前記振動装置は、前記隙間の大きさを調整する隙間調整機構を有する。そして、前記給液装置は、前記隙間に洗浄液を供給する。
【0011】
この第2の態様では、フィルムと振動装置との間の隙間に洗浄液が供給され、洗浄液が超音波振動を伝達する媒体として機能する。振動装置からの超音波振動は、洗浄液を介してフィルムに与えられる。それにより、フィルムに洗浄液を好適に浸透させられる。
【0012】
また、この第2の態様では、隙間調整機構によりフィルムと振動装置との間の隙間の大きさを調整可能である。これによれば、フィルムと振動装置との間の隙間の大きさを、フィルムの厚さに応じて当該隙間が洗浄液で満たされるように設定できる。当該隙間が洗浄液で満たされると、振動装置からの超音波振動を、洗浄液を媒体としてフィルムに好適に与えることができる。
【0013】
本開示の第3の態様は、第1または第2の態様のフィルム洗浄装置において、前記清掃具として、搬送中の前記フィルムの幅方向に沿って延びる軸周りに回転する回転ブラシを備える、フィルム洗浄装置である。第5の態様のフィルム洗浄装置において、前記回転ブラシの回転方向は、当該回転ブラシの毛材が前記印刷面と接する位置で前記フィルムの搬送方向とは反対方向に向けて移動する方向である。
【0014】
この第3の態様では、清掃具としての回転ブラシの毛材と搬送中のフィルムとが、当該毛材が印刷面と接する位置で互いに反対方向に移動する。そのことで、回転ブラシによりフィルムの印刷面を擦る速度、ひいては毛材により当該印刷面を擦る頻度が高められる。これにより、フィルムの印刷面を効率的に清掃できる。
【0015】
本開示の第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つのフィルム洗浄装置において、前記清掃具として、搬送中の前記フィルムの前記印刷面に接するブラシを備える、フィルム洗浄装置である。第6の態様のフィルム洗浄装置は、前記ブラシに対して前記フィルムを押し付ける押付け装置をさらに備える。前記押付け装置は、前記ブラシに対する前記フィルムの押し付け力を調整する押付け力調整機構を有する。
【0016】
この第4の態様では、搬送中のフィルムの印刷面が押付け装置によりブラシに押し付けられる。ブラシへのフィルムの押し付け力は、押付け力調整機構により調整可能である。これによれば、ブラシへのフィルムの押し付け力を、ブラシの擦過によるフィルム表面の傷つきを抑制しつつ、フィルムに付いたインクを除去するのに適度な力に設定できる。
【0017】
本開示の第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つのフィルム洗浄装置において、前記振動装置および前記清掃具をそれぞれ複数備える、フィルム洗浄装置である。
【0018】
この第5の態様では、振動装置および清掃具がそれぞれ複数設けられる。振動装置および清掃具の各セットは、フィルムに洗浄液を供給した後に超音波振動を与えて洗浄液を浸透させ、フィルムに付いたインクを浮かせて清掃具により擦り落とす。すなわち、フィルムに対して、超音波振動を与えることによる洗浄液の浸透と、清掃具の擦り洗いによる清掃とが繰り返し行われる。このことは、フィルムに付いたインクを除去するのに有利である。
【0019】
本開示の第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか1つのフィルム洗浄装置において、前記清掃具を、搬送中の前記フィルムに接した状態で、当該フィルムの幅方向に揺動させる揺動機構をさらに備える、フィルム洗浄装置である。
【0020】
この第6の態様では、清掃具が搬送中のフィルムに接した状態で揺動機構によりフィルムの幅方向に揺動する。清掃具がフィルムの幅方向に揺動すると、フィルムの印刷面に対してフィルムの搬送方向とは異なる方向に向けて擦る力が作用し、フィルムに付いたインクを落とすのに有利である。また、清掃具に付いたインクを揺動動作により落とす効果も期待できる。
【0021】
本開示の第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか1つのフィルム洗浄装置において、前記フィルムのインクが混ざった使用済みの洗浄液から前記インクを除去し、前記洗浄液として再利用可能に再生させる再生装置をさらに備える、フィルム洗浄装置である。
【0022】
この第7の態様では、使用済みの洗浄液が再生装置により再生され、洗浄液として再利用可能となる。洗浄液を再利用することで、環境負荷の低減しつつ、ランニングコストを削減できる。
【0023】
本開示の第8の態様は、インクの付いたフィルムを洗浄するフィルム洗浄方法を対象とする。第8の態様のフィルム洗浄方法は、前記フィルムを搬送しながら、当該フィルムの表面に洗浄液を供給する第1ステップと、前記第1ステップで洗浄液が供給された前記フィルムに対して超音波振動を与える第2ステップと、前記第2ステップで超音波振動が与えられた後の前記フィルムのインクの付いた印刷面を清掃具により擦って清掃する第3ステップとを含む。
【0024】
この第8の態様では、洗浄液がフィルムの表面に供給された後、そのフィルムに超音波振動が与えられる。超音波振動がフィルムに与えられると、洗浄液がフィルムに浸透して、フィルムに付いたインクが浮いた状態となる。その状態で、フィルムの印刷面が清掃具により擦られると、浮いたインクが取り除かれる。これによって、フィルムに付いたインクを効果的に除去できる。
【発明の効果】
【0025】
本開示の技術によれば、印刷済みのフィルムに付いたインクを効果的に除去できるフィルム洗浄装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、フィルム洗浄装置の概略構成を例示する図である。
【
図2】
図2は、フィルム洗浄装置に含まれる洗浄機およびその関連構成を例示する図である。
【
図3】
図3は、洗浄機の概略構成を例示する平面図である。
【
図4】
図4は、洗浄機の概略構成を例示する断面図である。
【
図5】
図5は、
図4にVで囲んだ箇所における一対の振動装置およびその周辺構成を例示する断面図である。
【
図6】
図6は、洗浄機に含まれる回転ブラシ装置およびその周辺構成を例示する断面図である。
【
図7】
図7は、フィルム洗浄装置に含まれる平面ブラシ装置の一態様を示す図である。
【
図8】
図8は、フィルム洗浄装置に含まれる揺動ブラシ装置の一態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、フィルム洗浄装置について、処理対象であるフィルムの巻き出し側を「前」、フィルムの巻き取り側を「後」と称し、前方に向いて左側を「左」、右側を「右」と称し、鉛直方向(重力方向)における上側を「上」、下側を「下」と称する。
【0028】
《実施形態》
この実施形態のフィルム洗浄装置1は、インクの付いた印刷済みのフィルムFを処理対象とし、印刷済みのフィルムFを再利用可能とするように洗浄する用途で使用される。フィルム洗浄装置1は、長尺のフィルムFをロールトゥロール方式で搬送しながら、搬送中のフィルムFを洗浄した後に乾燥させる一連の処理を連続的に実行する装置である。
【0029】
印刷済みのフィルムFは、試し刷りで使用したフィルムや、印刷不良となったフィルムなどである。処理対象とするフィルムFは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)などからなる一般的なプラスチックフィルムである。当該フィルムFの片面は、インクの付いた印刷面Psである。フィルムFは、芯材にロール状に巻かれた状態でフィルム洗浄装置1にセットされる。
【0030】
-フィルム洗浄装置の構成-
以下に、フィルム洗浄装置1の構成を、
図1~
図6を参照しながら説明する。
【0031】
図1および
図2に示すように、フィルム洗浄装置1は、巻き出し装置10と、洗浄機20と、洗浄液タンク50と、再生装置60と、リンス水タンク70と、乾燥機80と、巻き取り装置90と、コントローラ100とを備える。
【0032】
〈巻き出し装置〉
巻き出し装置10は、ロール状のフィルムFを支持し、フィルムFを所定の速度とテンションで送り出す。巻き出し装置10は、複数のガイドローラ12を有する。フィルムFは、複数のガイドローラ12に掛け渡される。少なくとも1つのガイドローラ12は、回転軸と交差する方向へ揺動する。そうしたガイドローラ12の揺動により、巻き出し装置10は、フィルムFにテンションを付与する。
【0033】
〈洗浄機〉
洗浄機20は、フィルムFを洗浄液Lに晒して清掃した後に水洗する機器である。洗浄機20には、巻き出し装置10から送り出されたフィルムFが搬入される。そして、洗浄機20で清掃および水洗されたフィルムFは、洗浄機20から搬出される。洗浄機20には、プレ洗浄セクションS1と、洗浄セクションS2と、リンスセクションS3とが設けられる。
【0034】
プレ洗浄セクションS1、洗浄セクションS2およびリンスセクションS3は、洗浄機20の搬入側から搬出側に向かってこの順に配置される。プレ洗浄セクションS1は、洗浄機20に搬入されたフィルムFに洗浄液Lを供給し、フィルムFの印刷面Psを洗浄液Lに晒すセクションである。洗浄セクションS2は、フィルムFに対して洗浄液Lを浸透させ、擦り洗いを実施するセクションである。リンスセクションS3は、フィルムFを水洗するセクションである。
【0035】
〈洗浄液タンク〉
洗浄液タンク50は、洗浄液Lを溜める容器である。洗浄液タンク50の容量は、例えば180リットル~250リットル程度である。洗浄液タンク50は、ヒータ(不図示)を備え、洗浄液Lを加温する機能を有する。洗浄液Lの温度は、例えば50℃~70℃程度に調整される。本例では、洗浄液Lの調温は、洗浄液タンク50で行われる。洗浄液タンク50は、送り配管52および戻り配管54を介して洗浄機20に接続される。
【0036】
送り配管52は、洗浄液タンク50に溜められた洗浄液Lを洗浄機20に送る流路を構成する。洗浄液Lの調温は、洗浄液タンク50から洗浄機20に送られる途中、つまり送り配管52で行われてもよい。戻り配管54は、洗浄機20で使用された使用済みの洗浄液Lを洗浄液タンク50に戻す流路を構成する。送り配管52には、ポンプ56の運転により洗浄液Lが流通する。
【0037】
洗浄液Lとしては、人体にも環境にも負荷の少ない植物性の洗浄液が好適に使用される。洗浄液Lの引火点は、フィルム洗浄装置1での取り扱いがし易い観点から、200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがよりいっそう好ましい。洗浄液Lは、石油系の洗剤や界面活性剤を含む洗浄液であってもよい。洗浄液Lの種類は、処理対象とするフィルムFの材質とフィルムFに付いたインクの材料とに応じて選択される。
【0038】
〈再生装置〉
再生装置60は、使用済みの洗浄液Lからインクを除去し、洗浄液Lを再生利用可能に再生させる装置である。再生装置60としては、例えば、減圧環境下で洗浄液を蒸留して再生する減圧蒸留方式の再生装置が使用される。再生装置60には、大気圧環境下で洗浄液Lqを蒸留して再生する常圧蒸留式の再生装置など、他の方式の再生装置が使用されてもよい。再生装置60は、移送配管62および戻り配管64を介して洗浄液タンク50に接続される。
【0039】
移送配管62は、洗浄液タンク50に溜められた洗浄液Lを再生装置60に移送する流路を構成する。戻り配管64は、再生装置60で再生した洗浄液Lを洗浄液タンク50に戻す流路を構成する。移送配管62および戻り配管64には、ポンプ(不図示)の運転により洗浄液Lが流通する。洗浄液タンク50内の洗浄液Lqの不純物濃度は、再生装置60で洗浄液Lqを再生させることにより、所定の濃度以下に調整される。
【0040】
〈リンス水タンク〉
リンス水タンク70は、リンス水Wを溜める容器である。リンス水タンク70の容量は、例えば180リットル~250リットル程度である。リンス水タンク70は、フィルタやストレーナなどの濾過器(不図示)を備え、リンス水Wから不純物を除去する機能を有する。リンス水Wとしては、例えば水道水が使用される。リンス水タンク70は、送り配管72および戻り配管74を介して洗浄機20に接続される。
【0041】
送り配管72は、リンス水タンク70に溜められたリンス水Wを洗浄機20に送る流路を構成する。戻り配管74は、洗浄機20で使用された使用済みのリンス水Wをリンス水タンク70に戻す流路を構成する。送り配管72には、ポンプ76の運転によりリンス水Wが流通する。リンス水タンク70、送り配管72または戻り配管74には、リンス水Wを加温するヒータが設けられてもよい。
【0042】
〈乾燥機〉
乾燥機80は、フィルムFを搬送しながら乾燥させる機器である。乾燥機80には、洗浄機20から搬出されたフィルムFが搬入される。乾燥機80の内部には、複数のガイドローラおよび複数のドライヤー(共に不図示)が設けられる。乾燥機80に搬入されたフィルムFは、複数のガイドローラによって案内される。そして、搬送中のフィルムFには、各ドライヤーからドライエアーが吹き付けられる。フィルムFは、ドライエアーの吹き付けにより乾燥される。このように乾燥処理が施されたフィルムFは、乾燥機80から搬出される。
【0043】
〈巻き取り装置〉
巻き取り装置90は、フィルムFを所定の速度とテンションで芯材に巻き取り、巻き取ったロール状のフィルムFを支持する。巻き取り装置90には、乾燥機80から搬出されたフィルムFが巻き取られる。巻き取り装置90は、複数のガイドローラ92を有する。フィルムFは、複数のガイドローラ92に掛け渡される。少なくとも1つのガイドローラ92は、回転軸と交差する方向へ揺動する。そうしたガイドローラ92の揺動により、巻き取り装置90は、フィルムFにテンションを付与する。
【0044】
〈コントローラ〉
コントローラ100は、制御プログラムなどの各種ソフトウェアと、これらソフトウェアを実装したコンピュータなどのハードウェアとで構成される。コントローラ100は、フィルム洗浄装置1の全体を総合的に制御する。巻き出し装置10、洗浄機20、ポンプ56,76、再生装置60、乾燥機80および巻き取り装置90の動作は、コントローラ100によって制御される。
【0045】
-洗浄機の構成-
図3および
図4に示すように、洗浄機20は、フレーム構造体210と、搬送機構220と、給液装置230と、複数の振動装置240と、擦り洗い装置250と、給水装置310と、複数の払拭具320と、洗浄液回収装置330と、リンス水回収装置340とを備える。
【0046】
〈フレーム構造体〉
フレーム構造体210は、洗浄機20の躯体を構成する。フレーム構造体210は、前後方向を長辺とする直方体状に構成される。フレーム構造体210は、複数の鉛直フレーム211と、複数の第1横架フレーム212と、複数の第2横架フレーム213とを組み合わせてなる。
【0047】
複数の鉛直フレーム211はそれぞれ、上下方向に延びるフレームである。複数の第1横架フレーム212はそれぞれ、前後方向に延びるフレームである。複数の第2横架フレーム213はそれぞれ、左右方向に延びるフレームである。鉛直フレーム211と第1横架フレーム212、鉛直フレーム211と第2横架フレーム213、第1横架フレーム212と第2横架フレーム213とはそれぞれ、金属製の連結部材(不図示)を用いて連結される。
【0048】
フレーム構造体210の内部には、フィルムFに対して洗浄処理を実施するための処理空間SPが設けられる。処理空間SPには、プレ洗浄セクションS1、洗浄セクションS2およびリンスセクションS3が含まれ、フィルムFが搬送される搬送経路TRが設定される。処理空間SPには、一対の上支持フレーム214と、一対の下支持フレーム215と、複数の縦支持フレーム216とが設けられる。
【0049】
一対の上支持フレーム214および一対の下支持フレーム215はそれぞれ、前後方向に延びるフレームである。一対の上支持フレーム214は、処理空間SPの上部の左右両側に分けて配置される。各上支持フレーム214は、第2横架フレーム213に金属製の連結部材(不図示)を用いて連結される。一対の下支持フレーム215は、処理空間SPの下部の左右両側に分けて配置される。各下支持フレーム215は、複数の縦支持フレーム216を介して上支持フレーム214に支持される。
【0050】
複数の縦支持フレーム216はそれぞれ、上下方向に延びるフレームである。複数の縦支持フレーム216は、処理空間SPの左右両側にそれぞれ配置される。処理空間SPの左側に位置する複数の縦支持フレーム216、および処理空間SPの右側に位置する複数の縦支持フレーム216は、前後方向において互いに間隔をあけて配置される。各縦支持フレーム216の上端部は上支持フレーム214に、各縦支持フレーム216の下端部は下支持フレーム215に、それぞれ金属製の連結部材(不図示)を用いて連結される。
【0051】
〈搬送機構〉
搬送機構220は、洗浄機20内でフィルムFを搬送する機構である。搬送機構220は、複数の搬送ローラ221と、ローラ駆動装置(不図示)とを有する。複数の搬送ローラ221はそれぞれ、回転軸が左右方向に延びるように互いに平行な姿勢に設置される。搬送ローラ221は、フィルムFLの搬送経路に沿って並べられる。各搬送ローラ221の両端には、回転中心をなす軸部222が突出する。複数の搬送ローラ221は、上ローラ列223と、下ローラ列224とを構成する。
【0052】
上ローラ列223は、前後方向に互いに間隔をあけて並ぶ複数の上搬送ローラ221Aによって構成される。複数の上搬送ローラ221Aはそれぞれ、処理空間SPの上部に配置される搬送ローラ221である。各上支持フレーム214には、複数の軸受け体225が前後方向に互いに間隔をあけて固定される。各上搬送ローラ221の両端に設けられた軸部222は、軸受け体225に挿入される。そうして、各上搬送ローラ221Aは、処理空間SPの上側で左右両側にある軸受け体225に回転可能に支持される。
【0053】
下ローラ列224は、前後方向に互いに間隔をあけて並ぶ複数の下搬送ローラ221Bによって構成される。複数の下搬送ローラ221Bはそれぞれ、処理空間SPの下部に配置される搬送ローラ221である。各下支持フレーム215には、複数の軸受け体225が前後方向に互いに間隔をあけて固定される。各下搬送ローラ221Bの両端に設けられた軸部222は、軸受け体225に挿入される。そうして、各下搬送ローラ221Bは、処理空間SPの下側で左右両側にある軸受け体225に回転可能に支持される。
【0054】
上搬送ローラ221Aおよび下搬送ローラ221Bはそれぞれ、プレ洗浄セクションS1、洗浄セクションS2およびリンスセクションS3に配置される。下搬送ローラ221Aは、平面視で隣り合う上搬送ローラ221Bの間に位置する。例えば、プレ洗浄セクションS1およびリンスセクションS3にはそれぞれ、1つの下搬送ローラ221Bが設けられる。洗浄セクションS2には、前後方向に並ぶ一対の下搬送ローラ221Bが2組設けられる。複数の搬送ローラ221はいずれも、ローラ駆動装置の動力によって回転する。
【0055】
複数の上搬送ローラ221Aおよび複数の下搬送ローラ221Bにはそれぞれ、伝動ベルト(不図示)が巻き掛けられる。各上搬送ローラ221Aの回転および各下搬送ローラ221Bの回転は、伝動ベルトを介して動力が伝達されることで同期する。上搬送ローラ221Aと下搬送ローラ221Bとは、伝動ベルトを用いて同期がとられ、共通のローラ駆動装置の動力によって回転する。上搬送ローラ221Aと下搬送ローラ221Bとは、別々のローラ駆動装置の動力によって回転してもよい。
【0056】
フィルムFは、各上搬送ローラ221Aの上側を経由し、各下搬送ローラ221Bの下側を経由するように、複数の搬送ローラ221に架け渡される。これにより、フィルムFの搬送経路TRが処理空間SPに設定される。フィルムFは、例えば0.8m/秒~1.2m/秒程度の速度で連続的に搬送される。
【0057】
プレ洗浄セクションS1およびリンスセクションS3において、フィルムFは、処理空間SPの上側から下向きに走行した後に、処理空間SPの下側で折り返して上向きに走行するように、搬送ローラ221により案内される。洗浄セクションS2において、フィルムFは、処理空間SPの上側から下向きに走行し、さらに処理空間SPの下側で水平方向における後向きに走行した後に上向きに走行することを繰り返すように、搬送ローラ221により案内される。
【0058】
処理空間Spには、搬送経路ROとして、第1下向き搬送経路RD1と、第1上向き搬送経路RU1と、第1上水平搬送経路RT1と、第2下向き搬送経路RD2と、第1下水平搬送経路RL1と、第2上向き搬送経路RU2と、第2上水平搬送経路RT2と、第3下向き搬送経路RD3と、第2下水平搬送経路RL2と、第3上向き搬送経路RU3と、第3上水平搬送経路RT3と、第4下向き搬送経路RD4と、第4上向き搬送経路RU4とが含まれる。
【0059】
第1下向き搬送経路RD1は、洗浄機20に搬入された直後のフィルムFが下向きに走行する搬送経路である。第1上向き搬送経路RU1は、第1下向き搬送経路RD1の下流側でフィルムFが上向きに走行する搬送経路である。第1上水平搬送経路RT1は、第1上向き搬送経路RU1の下流側でフィルムFが水平方向における後向きに走行する搬送経路である。第1下向き搬送経路RD1および第1上向き搬送経路RU1は、プレ洗浄セクションS1に含まれる。第1上水平搬送経路RT1は、プレ洗浄セクションS1と洗浄セクションS2とに亘る。
【0060】
第2下向き搬送経路RD2は、第1上水平搬送経路RT1の下流側でフィルムFが下向きに走行する搬送経路である。第1下水平搬送経路RL1は、第2下向き搬送経路RD2の下流側でフィルムFが水平方向における後向きに走行する搬送経路である。第2上向き搬送経路RU2は、第1下水平搬送経路RL1の下流側でフィルムFが上向きに走行する搬送経路である。第2上水平搬送経路RT2は、第2上向き搬送経路RU2の下流側でフィルムFが水平方向における後向きに走行する搬送経路である。
【0061】
第3下向き搬送経路RD3は、第2上水平搬送経路RT2の下流側でフィルムFが下向きに走行する搬送経路である。第2下水平搬送経路RL2は、第3下向き搬送経路RD3の下流側でフィルムFが水平方向における後向きに走行する搬送経路である。第3上向き搬送経路RU3は、第2下水平搬送経路RL2の下流側でフィルムFが上向きに走行する搬送経路である。第2下向き搬送経路RD2、第1下水平搬送経路RL1、第2上向き搬送経路RU2、第2上水平搬送経路RT2、第3下向き搬送経路RD3、第2下水平搬送経路RL2および第3上向き搬送経路RU3は、洗浄セクションS2に含まれる。
【0062】
第3上水平搬送経路RT3は、第3上向き搬送経路RU3の下流側でフィルムFが水平方向における後向きに走行する搬送経路である。第4下向き搬送経路RD4は、第3上水平搬送経路RT3の下流側でフィルムFが下向きに走行する搬送経路である。第4上向き搬送経路RU4は、第4下向き搬送経路RD4の下流側でフィルムFが上向きに走行する搬送経路である。第3上水平搬送経路RT3は、洗浄セクションS2とリンスセクションS3とに亘る。第4下向き搬送経路RD4および第4上向き搬送経路RU4は、リンスセクションS3に含まれる。
【0063】
〈給液装置〉
給液装置230は、搬送機構220により搬送中のフィルムFの表面に洗浄液Lを供給する装置である。給液装置230は、複数の給液配管231と、共通配管233と、複数のガイド部材235と、ポンプ56とを備える。複数の給液配管231は、前後方向に互いに間隔をあけて配置される。各給液配管231は、左右方向に延びる分岐管であって、共通配管233に連通するように接続される。
【0064】
共通配管233には、ポンプ56の運転により洗浄液タンク50から洗浄液Lが送られる。各給液配管231には、共通配管233を通じて分配された洗浄液Lが流通する。各給液配管231には、複数の給液口232(
図4および
図5に1つのみ示す)が設けられる。複数の給液口232は、給液配管231の長手方向(左右方向)に沿って互いに間隔をあけて配置される。各給液口232は、給液配管231に流通する洗浄液Lを噴き出す開口である。
【0065】
給液配管231は、プレ洗浄セクションS1において、第1下向き搬送経路RD1に対して、当該搬送経路RD1を走行するフィルムFの厚さ方向における両側に位置するように一対に設けられる。プレ洗浄セクションS1を搬送中のフィルムFの両面には、給液配管231の各給液口232から噴き出した洗浄液Lが供給される。このとき供給される洗浄液Lqは、フィルムFの表面に被膜ができる程度の比較的少ない量である。
【0066】
給液配管231は、洗浄セクションS2において、第2下向き搬送経路RD2および第2上向き搬送経路RU2に対して、当該搬送経路RU2を走行するフィルムFの厚さ方向における両側に位置するように一対に設けられる。洗浄セクションS2を搬送中のフィルムFの両面には、給液配管231の各給液口232から噴き出した洗浄液Lが供給される。このとき供給される洗浄液Lは、フィルムFの表面に被膜ができる程度の比較的少ない量である。
【0067】
ガイド部材235は、洗浄液LをフィルムFの表面に導く板状物である。ガイド部材235は、洗浄セクションS2において、第2下向き搬送経路RD2、第2上向き搬送経路RU2および第3下向き搬送経路RD3のうち給液配管231と振動装置240との間の部分に対して、当該搬送経路RD2,RU2,RD3を走行するフィルムFの厚さ方向における両側に位置するように一対に設けられる。ガイド部材235は、振動装置240ごとに設けられる。各ガイド部材235は、フィルムFの搬送経路ROに向かって下側に傾く姿勢とされ、洗浄液Lを流下させることで導く。
【0068】
〈振動装置〉
図5に示すように、振動装置240は、給液装置230により洗浄液Lqが供給されたフィルムFに対して超音波振動を与える装置である。各振動装置240は、複数の超音波振動子241を有する。超音波振動子241は、超音波振動Usを発生させる素子である。超音波振動子241としては、例えば電歪型振動子が用いられる。超音波振動子241には、磁歪型振動子が用いられてもよい。
【0069】
複数の超音波振動子241は、振動子列242を複数(
図5に示す例では2列)構成する。振動子列242は、超音波振動子241が左右方向に互いに間隔をあけて配置されてなる。振動装置240によりフィルムFに与えられる超音波振動Usの周波数は、例えば20kHz以上且つ100kHz以下である。超音波振動Usの周波数は、洗浄対象のフィルムFやインクの種類に応じてその他の周波数に設定されてもよい。振動装置240は、超音波振動子241で発生した超音波振動Usを放つ加振面243を有する。
【0070】
振動装置240は、洗浄セクションS2において、第2下向き搬送経路RD2および第2上向き搬送経路RU2に対して、当該搬送経路RD2,RU2を走行するフィルムFの厚さ方向における両側に位置するように一対に設けられる。振動装置240は、洗浄セクションS2において、第3下向き搬送経路RD3に対して、当該搬送経路RD3を走行するフィルムFの厚さ方向における片側(
図3および
図4に示す例では前側)に位置するように設けられる。
【0071】
各振動装置240は、フィルムFの搬送経路ROに対してその搬送経路ROを通過するフィルムFとの間に隙間Gを形成するように配置される。この隙間Gには、給液装置230から供給された洗浄液Lが導入される。各振動装置240と搬送中のフィルムFとの間の隙間Gは、洗浄液Lで満たされる。各振動装置240は、洗浄液Lを介してフィルムFに超音波振動Usを与える。洗浄液Lは、超音波振動Usを伝達する媒体として機能する。
【0072】
一対の振動装置240は、隙間調整機構244を有する。隙間調整機構244は、振動装置240とフィルムFとの間の隙間Gの大きさを調整する機構である。隙間調整機構244は、複数の調整ボルト245と、複数のナット246とを含んで構成される。これら調整ボルト245およびナット246はそれぞれ、振動装置240のうちフィルムFの搬送経路ROの上流側の左右両側と下流側の左右両側との四隅に設けられる。
【0073】
調整ボルト245は、振動装置240の背面側(搬送経路ROとは反対側)から加振面243側(搬送経路RO側)に貫通し、当該装置240内部に設けられたナット246で留められる。一対の振動装置240における互いの調整ボルト245は、搬送経路ROの左右両側で突き合わせられる。振動装置240とフィルムFとの間隔、つまり隙間Gの大きさは、調整ボルト245を進退させて、振動装置240の加振面243側への調整ボルト245の突出具合を変更することで調整される。
【0074】
〈擦り洗い装置〉
擦り洗い装置250は、振動装置240により超音波振動Usが与えられた後のフィルムFの印刷面Psを擦って清掃する装置である。擦り洗い装置250は、回転ブラシ装置251と、平面ブラシ装置290と、複数の線状ブラシ300とを有する。ここで、線状ブラシ300は、清掃具の一例である。以下では、回転ブラシ装置251に含まれる回転ブラシ252と、平面ブラシ装置290に含まれる平面ブラシ291と、線状ブラシ300とを「ブラシBr」と総称することがある。
【0075】
図6に示すように、回転ブラシ装置251は、回転ブラシ252を用いてフィルムFの印刷面Psに能動的に擦り洗いを実施する装置である。回転ブラシ装置251は、4つの回転ブラシ252と、ブラシ駆動装置257と、動力伝達機構262と、第1押付け装置265とを含んで構成される。ここで、回転ブラシ252は、清掃具の一例である。
【0076】
4つの回転ブラシ252はそれぞれ、搬送中のフィルムFの幅方向に沿って延びる軸周りに回転するブラシである。4つの回転ブラシ252は、回転軸が左右方向に延びるように互いに平行な姿勢に設置される。4つの回転ブラシ252は、前後方向に互いに間隔をあけて配置され、下ローラ列224をなす下搬送ローラ221Bの間で第1下水平搬送経路RL1に沿って同経路RL1の上側に並べられる。各回転ブラシ252は、フィルムFの搬送経路ROの幅方向における全体を横切り、フィルムFが搬送中に蛇行しても印刷面Psを擦ることが可能な長さとされる。
【0077】
各回転ブラシ252は、ローラ体253と、毛材254とを有する。ローラ体253は、回転軸に沿って延びる円柱状の部材である。毛材254は、ローラ体253の外周面から外方へと放射状に突出するように設けられる。毛材254には、ポリプロピレン(PP)などの合成樹脂からなる毛材が用いられる。毛材254は、フィルムFの表面を傷つけない観点から、比較的柔らかいことが好ましい。毛材254としては、馬毛などの動物の毛が用いられてもよい。
【0078】
各ローラ体253の両端には、回転中心をなす軸部255が突出する。各ローラ体253の両端に設けられた軸部255は、軸受け体225に挿入される。そうして、各回転ブラシ252は、処理空間SPの上側で左右両側にある軸受け体225に回転可能に支持される。各回転ブラシ252の高さ位置は、毛材254の毛先がフィルムFの印刷面Psに接触する位置に設定される。各ローラ体253の一端側(
図3に示す例で左側)には、スプロケット256が設けられる。
【0079】
ブラシ駆動装置257は、鉛直フレーム211にボルト258で固定される。ブラシ駆動装置257は、2つの電動モータ259を有する。2つの電動モータ259は、前後方向に互いに間隔をあけて配置される。2つの電動モータ259は、互いに同じ方向に回転する。各電動モータ259は、所定のタイミングで外周面の後側に位置する部分が下側を経て前側、さらに上側を経て後側に戻る方向、つまり左側から見て時計回り方向へ回転する。各電動モータ259の駆動軸260には、スプロケット261が設けられる。
【0080】
動力伝達機構262は、ブラシ駆動装置257で発生した動力を各回転ブラシ252に伝達する機構である。動力伝達機構262は、回転ブラシ252のスプロケット256と、電動モータ259のスプロケット261と、2つの伝動チェーン263とを含んで構成される。1つの伝動チェーン263は、前側に位置する2つの回転ブラシ252の各スプロケット256と、前側に位置する電動モータ259のスプロケット261とに巻き掛けられる。他の伝動チェーン263は、後側に位置する2つの回転ブラシ252の各スプロケット256と、後側に位置する電動モータ259のスプロケット261とに巻き掛けられる。
【0081】
第1押付け装置265は、各回転ブラシ252に対して搬送中のフィルムFを押し付ける装置である。第1押付け装置265は、支持体266と、複数の筒体267と、押付け力調整機構270とを有する。
【0082】
支持体266は、第1下水平搬送経路RL1の下側に設けられた後述の液受け槽331によって構成される。複数の筒体267は、長さ方向が左右方向に一致するように互いに平行な姿勢に設置される。複数の筒体267は、前後方向に互いに間隔をあけて配置される。各筒体267は、平面視で隣り合う回転ブラシ252の間に位置する。各筒体267は、液受け槽331の底面に金属製の帯状の板体268を介して固定される。各筒体267の高さ位置は、外周面がフィルムFの裏面Bsに接する位置に設定される。
【0083】
押付け力調整機構270は、各回転ブラシ252に対するフィルムFの押し付け力を調整する機構である。押付け力調整機構270は、液受け槽331を下支持フレーム215に吊り下げる。押付け力調整機構270は、4つの支持機構271を有する。各支持機構271は、液受け槽331を下支持フレーム215に支持する。支持機構271は、液受け槽331の前部の左右両側と後部の左右両側との四隅にそれぞれ設けられる。各支持機構271は、引上げ機構272と、押下げ機構280とを有する。
【0084】
引上げ機構272は、被引掛け片273と、フック275と、レバー276とを有する。被引掛け片273は、液受け槽331の側壁に取り付けられた下プレート部材274に固定される。フック275およびレバー276は、下支持フレーム215に取り付けられた上プレート部材277に設けられる。フック275は、上プレート部材277に設けられたブラケット278にナットなどの締結具279で固定される。フック275は、被引掛け片273に引っ掛けられる。
【0085】
締結具279を緩めると、フック275は、上下方向にスライドさせることで変位可能となる。レバー276は、締結具279とは別にフック275を変位させるための操作部である。レバー276が立てられると、フック275が上がり、フック275が被掛止め片273に引っ掛けられる。レバー276が倒されると、フック275が下がり、被引掛け片273に対するフック275の引っ掛けが解除される。
【0086】
押下げ機構280は、一対の受け片281と、一対の締結片282と、一対の調整ボルト283とを有する。一対の受け片281は、下プレート部材274の前後方向における両側部分から側方へ突出する。一対の締結片282は、上プレート部材277の前後方向における両側部分から側方へ突出する。受け片281と締結片282とは、上下方向において互いに対向する。調整ボルト283は、締結片282にナット284で締結される。調整ボルト283の軸部は、受け片281に突き当てられる。調整ボルト283をねじ込むと、受け片281に下向きの荷重がかかり、下プレート部材274が押し下げられる。
【0087】
液受け槽331の高さ位置、ひいては各筒体267の高さ位置は、フック275の上下方向への位置調整と、調整ボルト283による下プレート部材274の押し下げ具合とによって決定される。各筒体267の高さ位置は、フィルムFを押し上げて程度な押付け力で回転ブラシ252に押し付ける高さに設定される。第1下水平搬送経路RL1を搬送されるフィルムFの印刷面Psには、各回転ブラシ252が接しながら回転することにより、フィルムFの走行に伴い擦り洗いが実施される。
【0088】
図4に示すように、平面ブラシ装置290は、平面ブラシ291を用いてフィルムFの印刷面Psに受動的に擦り洗いを実施する装置である。平面ブラシ装置290は、平面ブラシ291と、第2押付け機構295とを含んで構成される。ここで、平面ブラシ291は、清掃具の一例である。
【0089】
平面ブラシ291は、第3下向き搬送経路RD3を介して振動装置240の加振面243と対向する位置に設置される。平面ブラシ291の毛材は、第3下向き搬送経路RD3側に突出する。平面ブラシ291の毛材には、例えばポリプロピレン(PP)などの合成樹脂製の毛材が用いられる。平面ブラシ291の毛材としては、回転ブラシ252の毛材254と同じ材質の毛材を用いることができる。
【0090】
第2押付け機構295は、平面ブラシ291を搬送中のフィルムFの印刷面Psに押し付ける装置である。第2押付け機構295は、例えば、支持板と、固定板と、付勢部材とを含んで構成される。支持板は、平面ブラシ291を支持する。固定板は、支持板296と間隔をあけて対向する。固定板は、鉛直フレーム211に固定される。付勢部材は、支持板と固定板との間に介在される。付勢部材としては、例えばコイルばねが用いられる。
【0091】
付勢部材は、支持板と固定板との間における上下左右の4箇所に設けられる。付勢部材は、支持板を固定板から離間する方向へ付勢する。この付勢部材の付勢力を利用して、第2押付け機構295は、平面ブラシ291をフィルムFの印刷面Psに押し付ける。第2押付け機構295の前後方向における位置は、平面ブラシ291を適度な押付け力でフィルムFに押し付ける位置に設定される。第3下向き搬送経路RD3を搬送されるフィルムFの印刷面Psには、平面ブラシ291が接することで、フィルムFの走行に伴い擦り洗いが実施される。
【0092】
線状ブラシ300は、回転ブラシ252の毛材254と同じ材質の毛材を有するブラシである。線状ブラシ300は、第2下向き搬送経路RD2における振動装置240の下流側と、第2上向き搬送経路RU2における振動装置240の上流側および下流側と、第3下向き搬送経路RD3における振動装置240の下流側と、第3上向き搬送経路RU3における給液配管231の上流側と、第4下向き搬送経路RD4における給水配管311の下流側と、第4上向き搬送経路RU4における給水配管311の上流側とに対してそれぞれ、当該搬送経路を走行するフィルムFの厚さ方向における両側に位置するように一対に設けられる。
【0093】
一対の線状ブラシ300は、フィルムFの搬送方向に互いにずれた位置に配置される。各線状ブラシ300は、毛材がフィルムFに接する位置に固定される。搬送経路TPを搬送されるフィルムFの両面には、線状ブラシ300が接することで、フィルムFの走行に伴い擦り洗いが実施される。線状ブラシ300は、第2下向き搬送経路RD2、第2上向き搬送経路RU2、第3下向き搬送経路RD3、第3上向き搬送経路RU3、第4下向き搬送経路RD4および第4上向き搬送経路RU4のいずれか1つに設けられていればよい。線状ブラシ300は、フィルムFの搬送経路ROに対して印刷面Psが臨む側のみに設けられてもよい。
【0094】
〈給水装置〉
図3および
図4に示すように、給水装置310は、搬送機構220により搬送中のフィルムFの表面にリンス水Wを供給する装置である。給水装置310は、複数の給水配管311と、共通配管313と、ポンプ76とを備える。複数の給水配管311は、前後方向に互いに間隔をあけて配置される。各給水配管311は、左右方向に延びる分岐管であって、共通配管313に連通するように接続される。
【0095】
共通配管313には、ポンプ76の運転によりリンス水タンク70からリンス水Wが送られる。各給水配管311には、共通配管313を通じて分配されたリンス水Wが流通する。各給水配管311には、複数の給水口312(
図4に1つのみ示す)が設けられる。複数の給水口312は、給水配管311の長手方向(左右方向)に沿って互いに間隔をあけて配置される。各給水口312は、給水配管311に流通するリンス水Wを噴き出す開口である。
【0096】
給水配管311は、リンスセクションS3において、第4下向き搬送経路RD4および第4上向き搬送経路RU4に対してそれぞれ、当該搬送経路RD4,RU4を走行するフィルムFの厚さ方向における両側に位置するように一対に設けられる。リンスセクションS3を搬送中のフィルムFの両面には、給水配管311の各給水口312から噴き出したリンス水Wが供給される。それにより、リンス水WがフィルムFの表面に掛け流される。このとき供給されるリンス水Wは、フィルムFの表面に被膜ができる程度の比較的少ない量である。
【0097】
〈払拭具〉
払拭具320は、例えばワイパーブレードである。払拭具320は、第3上向き搬送経路RU3における給液配管231の下流側に対して、当該搬送経路RU3を走行するフィルムFの厚さ方向における両側に位置するように一対に設けられる。一対の払拭具320は、フィルムFの搬送方向に互いにずれた位置に配置される。各払拭具320は、フィルムFに接する位置に固定される。第3上向き搬送経路RU3を搬送されるフィルムFの両面に付いた洗浄液Lは、フィルムFの走行に伴い一対の払拭具320によって払拭される。
【0098】
払拭具320は、第4上向き搬送経路RU4における線状ブラシ300の下流側に対して、当該搬送経路RU4を走行するフィルムFの厚さ方向における両側に位置するように一対に設けられる。一対の払拭具320は、フィルムFの搬送方向に互いにずれた位置に配置される。各払拭具320は、フィルムFに接する位置に固定される。第4上向き搬送経路RU4を搬送されるフィルムFの両面に付いたリンス水Wは、フィルムFの走行に伴い一対の払拭具320によって払拭される。
【0099】
〈洗浄液回収装置〉
洗浄液回収装置330は、プレ洗浄セクションS1および洗浄セクションS2において、給液配管231の各給液口232からフィルムFに供給された洗浄液Lを回収して洗浄液タンク50に送る装置である。洗浄液回収装置330は、複数の液受け槽331と、戻り配管54とを有する。
【0100】
液受け槽331は、フィルムFから流下した洗浄液Lを受ける容器である。液受け槽331は、プレ洗浄セクションS1における下搬送ローラ221Bの下側と、洗浄セクションS2における第1下水平搬送経路RL1の下側と第2下水平搬送経路RL2の下側とに個別に設けられる。液受け槽331としては、1つの槽がプレ洗浄セクションS1および洗浄セクションS2に共通に設けられてもよい。戻り配管54は、液受け槽331と洗浄液タンク50とを接続する。液受け槽331に受けられた洗浄液Lは、戻り配管54を通じて洗浄液タンク50に戻される。
【0101】
〈リンス水回収装置〉
リンス水回収装置340は、リンスセクションS3において、給水配管311の各給水口312からフィルムFに供給されたリンス水Wを回収してリンス水タンク70に送る装置である。リンス水回収装置340は、水受け槽341と、戻り配管74とを有する。
【0102】
水受け槽341は、フィルムFから流下したリンス水Wを受ける容器である。水受け槽341は、リンスセクションS3における下搬送ローラ221Bの下側に設けられる。戻り配管74は、水受け槽341とリンス水タンク70とを接続する。水受け槽341に受けられたリンス水Wは、戻り配管74を通じてリンス水タンク70に戻される。
【0103】
-フィルム洗浄装置の動作-
以下に、上記構成のフィルム洗浄装置1の動作を説明する。
【0104】
フィルム洗浄装置1では、印刷済みのフィルムFが、ロール状にした状態で巻き出し装置10に支持され、巻き出し装置10のガイドローラ12、洗浄機20の搬送ローラ221、乾燥機80のガイドローラおよび巻き取り装置90のガイドローラ92に架け渡して、セットされる。そして、コントローラ100により洗浄開始の指示が入力されると、巻き出し装置10から送り出されたフィルムFが洗浄機20に搬入される。
【0105】
洗浄機20に搬入されたフィルムFは、プレ洗浄セクションS1を走行する。プレ洗浄セクションS1において、フィルムFは、第1下向き搬送経路RD1および第2下向き搬送経路RU1を順に走行する。
【0106】
フィルムFの両面には、第1下向き搬送経路RD1を搬送中に、給液配管231の各給液口232から噴き出された洗浄液Lが供給される。それにより、洗浄液LがフィルムFの両面に掛け流され、フィルムFの両面が洗浄液Lに晒される。このように、プレ洗浄セクションS1では、フィルムFの両面への洗浄液Lの掛け流しが実施される。洗浄液Lに晒されたフィルムFは、第1上水平搬送経路RT1を走行して、プレ洗浄セクションS1から洗浄セクションS2に搬送される。
【0107】
洗浄セクションS2に搬送されたフィルムFは、第2下向き搬送経路RD2、第1下水平搬送経路RL1、第2上向き搬送経路RU2、第2上水平搬送経路RT2、第3下向き搬送経路RD3、第2下水平搬送経路RL2および第3上向き搬送経路RU3を順に走行する。
【0108】
フィルムFの両面には、第2下向き搬送経路RD2を搬送中に、給液配管231の各給液口232から噴き出された洗浄液Lが供給される。洗浄液Lは、ガイド部材235により案内されてフィルムFと共に一対の振動装置240との間に導入される。それにより、各振動装置240とフィルムFとの間には洗浄液Lが介在し、フィルムFの両面が洗浄液Lに晒される。フィルムFは、一対の振動装置240の間を下向きに走行する。このとき、一対の振動装置240によりフィルムFに洗浄液Lを介して超音波振動Usが与えられる。第2下向き搬送経路RD2で一対の振動装置240の間から下流側に走行するフィルムFの両面は、その走行に伴い線状ブラシ300で擦られる。
【0109】
次いで、フィルムFは、第1下水平搬送経路RL1において、第1押付け装置265の各筒体267により押し上げられ、回転ブラシ装置251の各回転ブラシ252に押し付けられる。このとき、各回転ブラシ252は、毛材254がフィルムFと接する位置でフィルムFの搬送方向に逆らう方向へ回転する。第1下水平搬送経路RL1を搬送中のフィルムFの印刷面Psは、フィルムFの走行に伴い各回転ブラシ252で擦られる。
【0110】
さらに、フィルムFの両面は、第2上向き搬送経路RU1を搬送中に、その走行に伴い線状ブラシ300で擦られる。続いて、フィルムFは、一対の振動装置240の間を上向きに走行する。一対の振動装置240の間には、給液配管231の各給液口232から噴き出された洗浄液Lが、ガイド部材235に案内されて導入される。これにより、各振動装置240とフィルムFとの間には洗浄液Lが介在し、フィルムFの両面が洗浄液Lに晒される。このとき、一対の振動装置240によりフィルムFに洗浄液Lを介して超音波振動Usが与えられる。第2上向き搬送経路RU2で一対の振動装置240の間から下流側に走行するフィルムFの両面は、その走行に伴い線状ブラシ300で擦られる。
【0111】
次に、第2上水平搬送経路RT2を走行したフィルムFは、第3下向き搬送経路RD3を搬送中に、給液配管231の各給液口232から噴き出された洗浄液Lが供給される。洗浄液Lは、ガイド部材235により案内されてフィルムFの両面に掛け流される。それにより、振動装置240とフィルムFとの間には洗浄液Lが介在し、フィルムFの両面が洗浄液Lに晒される。フィルムFは、振動装置240と平面ブラシ装置290との間を下向きに走行する。このとき、フィルムFは、平面ブラシ291により振動装置240の加振面243に押し付けられる。さらに、振動装置240によりフィルムFに洗浄液Lを介して超音波振動Usが与えられる。そして、超音波振動Usが与えられているフィルムFの印刷面Psが、その走行に伴い平面ブラシ291で擦られる。第3下向き搬送経路RD3で振動装置240と平面ブラシ装置290との間から下流側に走行するフィルムFの両面は、その走行に伴い線状ブラシ300で擦られる。
【0112】
次いで、第2下水平搬送経路RL2を走行したフィルムFの両面は、第3上向き搬送経路RU3を搬送中に、給液配管231の各給液口232から噴き出された洗浄液Lに晒されつつ、その走行に伴い線状ブラシ300で擦られる。このように、洗浄セクションS2では、フィルムFに洗浄液Lを掛け流して超音波振動Usを与えた後に擦り洗いを実施することが繰り返される。続いて、第3上向き搬送経路RU3で給液配管231の間から下流側に走行するフィルムFの両面に付いた洗浄液Lは、フィルムFの走行に伴い払拭具320により払拭される。洗浄液Lが払拭されたフィルムFは、第3上水平搬送経路RT3を走行して、洗浄セクションS2からリンスセクションS3に搬送される。
【0113】
リンスセクションS3に搬送されたフィルムFは、第4下向き搬送経路RD4および第4上向き搬送経路RU4を順に走行する。
【0114】
フィルムFの両面には、第4下向き搬送経路RD4を搬送中に、給水配管311の各給水口312からリンス水Wが供給される。それにより、リンス水WがフィルムFの両面に掛け流され、フィルムFの両面がリンス水Wに晒される。第4下向き搬送経路RD4で給水配管311の間から下流側に走行するフィルムFの両面は、その走行に伴い線状ブラシ300で擦られる。
【0115】
さらに、フィルムFの両面は、第4上向き搬送経路RU4を搬送中に、給水配管311の各給水口312からリンス水Wが供給される。それにより、リンス水WがフィルムFの両面に掛け流され、フィルムFの両面が再びリンス水Wに晒される。第4上向き搬送経路RU4で給水配管311の間から下流側に走行するフィルムFの両面は、その走行に伴い線状ブラシ300で擦られる。このように、リンスセクションS3では、リンス水Wの掛け流しと線状ブラシ300の擦り洗いとにより水洗が実施される。そして、フィルムFの両面に付いたリンス水Wは、フィルムFの走行に伴い払拭具320により払拭される。リンス水Wが払拭されたフィルムFは、洗浄機20から搬出される。
【0116】
洗浄機20から搬出されたフィルムFは、乾燥機80に搬入される。乾燥機80に搬入されたフィルムFは、ドライエアーの吹き付けにより乾燥処理される。乾燥処理されたフィルムFは、乾燥機80から搬出される。乾燥機80から搬出されたフィルムFは、巻き取り装置90に巻き取られる。
【0117】
また、上述の如くフィルム洗浄装置1でフィルムFを連続的に洗浄しているとき、洗浄機20で使用された使用済みの洗浄液Lは、液受け槽331で受けられる。液受け槽331で受けられた洗浄液Lは、洗浄液タンク50に戻され、再利用される。洗浄液タンク50に溜められた洗浄液Lは、再生装置60で再生される。また、洗浄機20で使用された使用済みのリンス水Wは、水受け槽341で受けられる。水受け槽341で受けられたリンス水Wは、リンス水タンク70に戻され、再利用される。リンス水タンク70に戻されるリンス水W中の不純物は、濾過器により除去される。
【0118】
-フィルム洗浄方法-
以下に、上記構成のフィルム洗浄装置1を使用したフィルム洗浄方法を説明する。
【0119】
フィルム洗浄方法は、インクの付いた印刷済みのフィルムFを処理対象とし、印刷済みのフィルムFを再利用可能とする用途で利用される。フィルム洗浄方法は、長尺のフィルムFをロールトゥロールで搬送しながら実施される。フィルム洗浄方法は、プレ洗浄ステップと、洗浄ステップと、リンスステップと、乾燥ステップとを含む。これらプレ洗浄ステップ、洗浄ステップ、リンスステップおよび乾燥ステップは、この順に行う。
【0120】
〈プレ洗浄ステップ〉
プレ洗浄ステップでは、フィルムFを搬送しながら、当該フィルムFの両面に洗浄液Lを供給し、フィルムFの両面を洗浄液Lに晒す。そうすることで、洗浄ステップを行う前にフィルムFの印刷面Psを洗浄液Lに晒す時間を確保する。このプレ洗浄ステップは、洗浄機20のプレ洗浄セクションS1で実行される。
【0121】
〈洗浄ステップ〉
洗浄ステップでは、フィルムFの印刷面Psを擦り洗いする。洗浄ステップは、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップと、第4ステップとを含む。これら第1ステップ、第2ステップ、第3ステップおよび第4ステップは、この順に行う。
【0122】
第1ステップでは、フィルムFを搬送しながら、当該フィルムFの両面に洗浄液Lを供給し、フィルムFの印刷面Psを洗浄液Lに晒す。第2ステップでは、洗浄液Lが供給されたフィルムFに対して超音波振動Usを与える。第3ステップでは、超音波振動Usが与えられた後のフィルムFの印刷面PsをブラシBrで擦って清掃する。第4ステップでは、清掃後のフィルムFの表面に残った洗浄液Lを払拭する。この洗浄ステップは、洗浄機20の洗浄セクションS2で実行される。
【0123】
本例では、これら第1ステップ、第2ステップおよび第3ステップを順に3回繰り返し、3回目の第3ステップの後に第4ステップを行う。
【0124】
1回目の第1ステップは、第2下向き搬送経路RD2で給液配管231からの洗浄液Lの供給により行われる。1回目の第2ステップは、第2下向き搬送経路RD2で一対の振動装置240により行われる。1回目の第3ステップは、第2下向き搬送経路RD2および第2上向き搬送経路RU2で線状ブラシ300により、第1下水平搬送経路RL1で各回転ブラシ252により行われる。
【0125】
2回目の第1ステップは、第2上向き搬送経路RU2で給液配管231からの洗浄液Lの供給により行われる。2回目の第2ステップは、第2上向き搬送経路RU2で一対の振動装置240により行われる。2回目の第3ステップは、第2上向き搬送経路RU2で線状ブラシ300により行われる。
【0126】
3回目の第1ステップは、第3下向き搬送経路RD3で給液配管231からの洗浄液Lの供給により行われる。3回目の第2ステップは、第3下向き搬送経路RD3で振動装置240により行われる。3回目の第3ステップは、第3下向き搬送経路RD3および第3上向き搬送経路RU3で線状ブラシ300により行われる。
【0127】
〈リンスステップ〉
リンスステップでは、フィルムFを搬送しながら、当該フィルムFの両面にリンス水Wを供給し、フィルムFの両面をリンス水Wに晒して水洗する。そうすることで、フィルムFの表面に残ったインクの残留物などの異物を洗い流す。リンスステップではさらに、水洗後のフィルムFの表面に付いた洗浄液Wを払拭する。このリンスステップは、洗浄機20のリンスセクションS3で実行される。
【0128】
〈乾燥ステップ〉
乾燥ステップでは、フィルムFを搬送しながら、当該フィルムFの両面にドライエアーを吹き付けるなどして、フィルムFを乾燥させる。この乾燥ステップは、乾燥機80で実行される。
【0129】
以上のようにして、印刷済みのフィルムFを洗浄し、フィルムFの表面に付いたインクを除去できる。インクを除去したフィルムFは、そのまま再利用してもよいし、ペレット状に裁断して再生させてもよい。
【0130】
-実施形態の特徴-
この実施形態のフィルム洗浄装置1によると、洗浄液LがフィルムFの表面に供給された後、そのフィルムFに超音波振動Usが与えられる。超音波振動UsがフィルムFに与えられると、洗浄液LがフィルムFに浸透して、フィルムFに付いたインクが浮いた状態となる。その状態で、フィルムFの印刷面PsがブラシBrにより擦られると、浮いたインクが取り除かれる。これによって、フィルムFに付いたインクを効果的に除去できる。
【0131】
この実施形態のフィルム洗浄装置1によると、振動装置240がフィルムFの搬送経路ROを介して対向するように一対に配置される。これら各振動装置240とフィルムFとの間の隙間Gに洗浄液Lが供給される。振動装置240からの超音波振動Usは、洗浄液Lを媒体として、フィルムFに対してその厚さ方向における両側から与えられる。このことは、フィルムFに洗浄液Lを浸透させるのに有利である。
【0132】
この実施形態のフィルム洗浄装置1によると、隙間調整機構244によりフィルムFと振動装置240との間の隙間Gの大きさを調整可能である。これにより、フィルムFと振動装置240との間の隙間Gの大きさを、フィルムFの厚さに応じて当該隙間Gが洗浄液Lで満たされるように設定できる。当該隙間Gが洗浄液Lで満たされると、振動装置240からの超音波振動Usを、洗浄液Lを媒体としてフィルムFに好適に与えることができる。
【0133】
この実施形態のフィルム洗浄装置1によると、回転ブラシ252の毛材254と搬送中のフィルムFとが、当該毛材254が印刷面Psと接する位置で互いに反対方向に移動する。そのことで、回転ブラシ252によりフィルムFの印刷面Psを擦る速度、ひいては毛材254により当該印刷面Psを擦る頻度が高められる。これにより、フィルムFの印刷面Psを効率的に清掃できる。
【0134】
この実施形態のフィルム洗浄装置1によると、搬送中のフィルムFの印刷面Psが第1押付け装置265により回転ブラシ252に押し付けられる。回転ブラシ252へのフィルムFの押し付け力は、押付け力調整機構270により調整可能である。これにより、回転ブラシ252へのフィルムFの押し付け力を、回転ブラシ252の擦過によるフィルムF表面の傷つきを抑制しつつ、フィルムFに付いたインクを除去するのに適度な力に設定できる。
【0135】
この実施形態のフィルム洗浄装置1によると、振動装置240およびブラシBrが複数設けられる。振動装置240およびブラシBrの各セットはそれぞれ、フィルムFに洗浄液Lを供給した後に超音波振動Usを与えて洗浄液Lを浸透させ、フィルムFに付いたインクを浮かせてブラシBrにより擦り落とす。すなわち、フィルムFに対して、超音波振動Usを与えることによる洗浄液Lの浸透と、ブラシBrの擦り洗いによる清掃とが繰り返し行われる。このことは、フィルムFに付いたインクを除去するのに有利である。
【0136】
この実施形態のフィルム洗浄装置1によると、使用済みの洗浄液Lが再生装置60により再生され、洗浄液Lとして再利用可能となる。洗浄液Lを再利用することで、環境負荷の低減しつつ、ランニングコストを削減できる。
【0137】
この実施形態のフィルム洗浄方法によると、洗浄液LがフィルムFの表面に供給された後、そのフィルムFに超音波振動Usが与えられる。超音波振動UsがフィルムFに与えられると、洗浄液LがフィルムFに浸透して、フィルムFに付いたインクが浮いた状態となる。その状態で、フィルムFの印刷面PsがブラシBrにより擦られると、浮いたインクが取り除かれる。これによって、フィルムFに付いたインクを効果的に除去できる。
【0138】
-変形例1-
この変形例1のフィルム洗浄装置1において、
図7に示すように、平面ブラシ装置290は、平面ブラシ291と、揺動機構400と、駆動装置410とを備える。駆動装置410は、例えば正転および逆転を切換え可能なモータを含んで構成される。
【0139】
揺動機構400は、平面ブラシ291を、搬送中のフィルムFの印刷面Psに接した状態で、当該フィルムFの幅方向に揺動させる機構である。揺動機構400は、支持バー401と、一対の揺動リンク402とを有する。支持バー401は、第3下向き搬送経路RD3の後側を横切るように左右方向に延びる部材である。支持バー401は、縦支持フレーム216などに固定される。一対の揺動リンク402は、平面ブラシ291の左右両側と支持バー401とを連結する部材である。各揺動リンク402の一端部は支持バー401に、各揺動リンク402の他端部は平面ブラシ291の基体に、それぞれ揺動自在にボルトなどの留め具403で留められる。
【0140】
駆動装置410は、一対の揺動リンク402を、支持バー401への留め部分を中心として左右に揺動させる。それら各揺動リンク402の揺動に伴い、平面ブラシ291が搬送中のフィルムFに接した状態で左右方向に、つまりはフィルムFの幅方向に揺動する。平面ブラシ291がフィルムFの幅方向に揺動すると、フィルムFの印刷面Psに対してフィルムFの搬送方向とは異なる方向に向けて擦る力が作用し、フィルムFに付いたインクを落とすのに有利である。また、平面ブラシ291に付いたインクを揺動動作により落とす効果も期待できる。
【0141】
-変形例2-
この変形例2のフィルム洗浄装置1は、回転ブラシ装置251に代えて、
図8に示す揺動ブラシ装置500を備える。揺動ブラシ装置500は、3つの線状ブラシ501と、線状ブラシ501と、揺動機構502と、駆動装置510とを有する。
【0142】
3つの線状ブラシ501は、フィルムFの搬送経路ROに沿って互いに間隔をあけて並べられる。これら各線状ブラシ501は、フィルムFの搬送経路ROを、当該搬送経路ROを走行するフィルムFの厚さ方向における一方側で横切るように左右方向に延びる。3つの線状ブラシ501は、互いに平行な姿勢とされる。
【0143】
揺動機構502は、3つの線状ブラシ501を、搬送中のフィルムFの印刷面Psに接した状態で、当該フィルムFの幅方向に揺動させる機構である。揺動機構502は、線状ブラシ501ごとに設けられたガイドレール503、ロッド504および回転輪505を含んで構成される。各ガイドレール503は、線状ブラシ501の長手方向における一方側に配置される。このガイドレール503により、線状ブラシ501の左右方向へのスライド動作が案内される。
【0144】
各ロッド504は、線状ブラシ501の一端部と回転輪505とを連結する部材である。各ロッド504の一端部は線状ブラシ501に、各ロッド504の他端部は回転輪505に、それぞれネジなどの締結具506で揺動自在に留められる。回転輪505のうちロッド504の端部が留められる部分は、回転輪505の中心と外周面との間の部分である。複数の回転輪505は、前後方向に一列に配置される。各回転輪505は、中心を回転軸として回転自在に設けられる。隣り合う回転輪505は、外周面同士が接することで、互いに反対方向へ回転する。
【0145】
駆動装置510は、いずれかの1つの回転輪505(
図8に示す例では真ん中の回転輪505)を回転させる。1つの回転輪505が回転すると、残り2つの回転輪505が連動して回転する。これら各回転輪505が回転するのに伴って、各線状ブラシ501が左右方向へのスライド動作を繰り返す。そうした線状ブラシ501のスライド動作では、線状ブラシ501の折り返し時に動作が止まる死点が生じる。この死点が生じるタイミングを3つの線状ブラシ501でずらすように、各回転輪505に対するロッド504の留め部分の位置が互いにずれた位置に設定される。
【0146】
具体的には、フィルムFの搬送方向において、最も上流側に位置する線状ブラシ501に係るロッド504の回転輪505への留め部分の位置は、真ん中に位置する線状ブラシ501に係るロッド504の回転輪505への留め部分の位置に対して、反時計回りに180°ずれた位置に設定される。フィルムFの搬送方向において、真ん中に位置する線状ブラシ501に係るロッド504の回転輪505への留め部分の位置は、最も下流側に位置する線状ブラシ501に係るロッド504の回転輪505への留め部分の位置に対して、反時計回りに60°ずれた位置に設定される。最も下流側に位置する線状ブラシ501に係るロッド504の回転輪505への留め部分の位置は、最も上流側に位置する線状ブラシ501に係るロッド504の回転輪505への留め部分の位置に対して、反時計回りに120°ずれた位置に設定される。
【0147】
この揺動ブラシ装置500では、線状ブラシ501の折り返し時に動作が止まる死点のタイミングを各線状ブラシ501でずらし、常時いずれかの線状ブラシ501にスライド動作を行わせることができる。それにより、搬送中のフィルムFの印刷面Psに対して良好な擦り洗いを実施できる。
【0148】
《その他の実施形態》
平面ブラシ装置290は、平面ブラシ291をフィルムFの搬送方向に沿って上流側と下流側とに往復するようにスライド動作させる構成としてもよい。この構成によれば、平面ブラシ291でフィルムFの印刷面Psを擦る際、フィルムFにかかる力に強弱を付けることができる。このように搬送方向に沿ったスライド動作を行う構成は、線状ブラシ300に適用してもよい。
【0149】
回転ブラシ装置251が備える回転ブラシ252は、3つ以下であってもよく、5つ以上であってもよい。また、揺動ブラシ装置500が備える線状ブラシ501は、2つでもよく、4つ以上であってもよい。揺動ブラシ装置500において、複数の回転輪505は、伝動ベルトや伝動チェーンを用いる伝動機構により同期をとって回転させてもよい。
【0150】
線状ブラシ300は、適宜省略および追加してもよい。擦り洗い装置250は、回転ブラシ装置251、平面ブラシ装置290および線状ブラシ300に加えて、またはそれらのいずれかに代えて、スポンジなどの他の清掃具によりフィルムFの印刷面Psを擦り洗いする構成でもよい。
【0151】
擦り洗い装置250は、回転ブラシ装置251、揺動ブラシ装置500または平面ブラシ装置290のみで構成されてもよい。要は、洗浄機20は、搬送中のフィルムFの表面に洗浄液Lを供給し、洗浄液Lを介してフィルムFに超音波振動を与えた後に、フィルムFの印刷面PsをブラシBrなどの清掃具により擦って清掃するように構成されていればよい。
【0152】
以上のように、本開示の技術の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、本開示の技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて新たな実施の形態とすることも可能である。上記実施形態が例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せに、さらに色々な変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲に属することは当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0153】
以上説明したように、本開示の技術は、フィルム洗浄装置およびフィルム洗浄方法について有用である。
【符号の説明】
【0154】
F フィルム
G 隙間
L 洗浄液
Ps 印刷面
Us 超音波振動
1 フィルム洗浄装置
60 再生装置
220 搬送機構
230 給液装置
240 振動装置
244 隙間調整機構
252 回転ブラシ(清掃具)
254 毛材
265 第1押付け装置(押付け装置)
270 押付け力調整機構
291 平面ブラシ(清掃具)
300 線状ブラシ(清掃具)
400 揺動機構
501 線状ブラシ(清掃具)
502 揺動機構