(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】HAPLN1(hyaluronan and proteoglycan link protein 1)を含む肺疾患の予防用または治療用の組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20230814BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230814BHJP
A61P 11/08 20060101ALI20230814BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230814BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230814BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230814BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20230814BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20230814BHJP
A23L 33/17 20160101ALI20230814BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230814BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P11/00
A61P11/08
A61P11/06
A61P29/00
A61P3/00
A61P3/02
C07K14/47 ZNA
A23L33/17
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2021521505
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(86)【国際出願番号】 KR2021001374
(87)【国際公開番号】W WO2021158000
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2021-04-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0012742
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519321708
【氏名又は名称】ハプルサイエンス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】テ・キョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ウェイ・ピャオ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ミン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ダン・ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ヨン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ボ・キュン・パク
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】Ecker, Brett L. et al.,Age-Related Changes in HAPLN1 Increase Lymphatic Permeability and Affect Routes of Melanoma Metastasis,Cancer Discovery,2019年,vol.9, no.1,pp.82-95
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A23L、C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HAPLN1(hyaluronan and proteoglycan link protein 1)タンパク
質を有効成分として含む、老化またはエラスチン減少による肺胞損傷により発病する肺疾患の予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項2】
前記HAPLN1タンパク質は、配列番号1と、少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記肺疾患は、
慢性気管支炎、喘息、肺気腫及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群のうちから選択される1以上であることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
HAPLN1(hyaluronan and proteoglycan link protein 1)タンパク
質を有効成分として含む、老化またはエラスチン減少による肺胞損傷により発病する肺疾患の予防用または治療用の健康機能食品組成物。
【請求項5】
前記肺疾患は、
慢性気管支炎、喘息、肺気腫及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群のうちから選択される1以上であることを特徴とする請求項4に記載の健康機能食品組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、それを必要とする個体における、老化またはエラスチン減少による肺胞損傷により発病する、人間以外の動物の肺疾患を予防したり治療したりする方法。
【請求項7】
前記肺疾患は、
慢性気管支炎、喘息、肺気腫及び慢性閉鎖性肺疾患(COPD)からなる群のうちから選択される1以上である、請求項6に記載の肺疾患を予防したり治療したりする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み換えHAPLN1(hyaluronan and proteoglycan link protein 1)蛋白質、及びそれを有効成分として含む肺疾患の予防用または治療用の組成物に係わり、前記組成物は、HAPLN1タンパク質、HAPLN1タンパク質を暗号化する遺伝子、及びHAPLN1タンパク質または遺伝子の発現を促進させたり、機能を活性化させたりする効能剤からなる群から選択される少なくとも一つを含む。
【背景技術】
【0002】
全世界的に、死亡原因4位である慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary diseases)は、2016年基準で、約2億5100万人(世界総人口の4.8%)が慢性閉塞性肺疾患(COPD)によって苦痛を受けており、2015年基準では、約317万人が慢性閉塞性肺疾患(COPD)によって死亡したとのことである。また、女性よりも男性において、さらに頻繁に示され、毎年、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の数は、増加する勢いである。
【0003】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺癌よりさらに多く発生する慢性呼吸器疾患であり、咳、喀痰、呼吸困難により、呼吸器症状が持続的に進むことと、非可逆的な気道閉塞とが特徴である。慢性閉塞性肺疾患(COPD)の主な原因としては、喫煙、職業的露出、微細ほこりのような大気汚染などによって発生すると広く知られている。そのようなさまざまな原因により、小気道肺疾患と肺実質破壊とが複合的に作用し、気流制限を起こすので、多くの臨床症状を誘発する。
【0004】
最近の研究によれば、老化(aging)それ自体が慢性閉塞性肺疾患(COPD)の重要な原因にもなり、危険因子であることと明らかにされている。特に、50代を基点に急増し、その後、年齢に比例して増加するが、60歳以上の高齢における発病率は、それより若い年齢層に比べ、2~3倍高い。慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺に甚だしい影響を及ぼし、その過程において、肺胞の損傷が起こり、肺胞の損傷により、空気交換が円滑になされなくなる。若年層においては、喫煙をしながらも、疾病が起こらないのは、損傷と同時に、回復と再生とが活発に起こるためであると知られている。
【0005】
世界的な高齢化傾向と共に、細胞老化(cell senescence)、短くなるテロメア(telomere)、ある種の抗老化分子の低減などは、肺に慢性的炎症反応(inflammaging)を起こし、小気道が細くなり、肺組織内エラスチン(elastin)などが破壊されながら示されると知られた肺気腫(emphysema)の直接的な原因にもなる。そのような老化性肺気腫(senile emphysema)の発病メカニズムと生物化学的変化は、折々言われる一般的な肺気腫で起こるところに非常に類似している。肺気腫は、喘息(asthma)や気管支炎(bronchitis)のように可逆的ではなく、非可逆的であるので、治療が非常に困難であり、効果的に治療することができる治療医薬品または予防医薬品がない実情である。
【0006】
特に、細胞外基質(ECM:extracellular matrix)の構成成分であるエラスチン蛋白質は、肺胞のガス交換機能に必須な弾性力(elasticity)と反動力(elastic recoil)とを提供する非常に重要な蛋白質であり、その生成低減または分解促進などにより、肺胞壁が破壊されたり損傷されたりするとき、回復不可能状態になることにより、肺胞の拡張・収縮作用、すなわち、呼吸に問題を起こすというように、結局、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に進んでしまう。
【0007】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、高齢化傾向と共に、重要なグローバルイシューになっている中、老化に起因して発生する慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療と予防は、実際に可能であるか否かという質問に対し、つい先般までは、肺は、回復や再生が不可能な臓器であると知られてきたために、それに係わる可能性は、非常に低いものであると認識されてきた。しかし、2012年、Butlerらの研究により、成人の肺組織は、新たに再生されうる臓器であることを立証されて以来、極めて最近のさまざまな研究は、一群の肺上皮細胞が、自家分化と増殖能力とを有することにより、損傷されたり退行化されたりする肺胞をさらに回復させたり再生させたりすることができることを、細胞生物学的な根拠とメカニズムとを介して明らかにすることにより、退行化された肺胞の再生と回復との技術発展と共に、今後の治療及び予防の医薬品がさらに活発に研究される展望みである。
【0008】
そのように、慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、非可逆的な気流制限を特徴とする肺疾患であり、慢性炎症による気道と肺実質組織との損傷によって発生し、続けて進行するが、前述のように、予防と治療とが可能な疾患であると知られている。現在、全世界的に、最も頻繁に使用される慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療剤としては、喘息治療剤である吸入コルチコステロイド(ICS:inhaled corticosteroids)、長期持続型ムスカリン拮抗剤(LAMA:long-acting muscarinic antagonist)、長期持続型ベータ作用剤(LABA:long-acting β-agonist)のような慢性気管支炎と肺気腫との治療剤があるが、そのような治療剤が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を完全に治療するものではない。特に、吸入用ステロイドは、気道内に薬物を直接的に投与するので、強い部分的抗炎症効果を発揮するが、気道内に投与されたステロイド剤が、気道を介して肺胞から血液に出て、全身に運搬される過程において、全身副作用が増大しうる。そのような既存製品の副作用により、患者が不安感を感じもし、甚だしい場合、投与を拒否することにも行き着くために、副作用が少ない薬物を開発しようとする努力が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】大韓民国公開特許第10-2007-0112086号(2007.11.22.公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、組み換え蛋白質、及びそれを有効成分として含む優秀な肺疾患の予防用または治療用の組成物を提供し、前記組成物は、HAPLN1(hyaluronan and proteoglycan link protein 1)タンパク質、HAPLN1タンパク質を暗号化させる遺伝子、及びHAPLN1タンパク質または遺伝子の発現を促進させたり、機能を活性化させたりする効能剤からなる群から選択される少なくとも一つを含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による組み換え蛋白質は、配列番号1のアミノ酸配列を有する組み換えHAPLN1(hyaluronan and proteoglycan link protein 1)蛋白質でもある。
【0012】
本発明による肺疾患の予防用または治療用の薬学的組成物は、HAPLN1タンパク質、HAPLN1タンパク質を暗号化させる遺伝子、及びHAPLN1タンパク質または遺伝子の発現を促進させたり、機能を活性化させたりする効能剤からなる群から選択される少なくとも一つを有効成分として含んでもよい。
【0013】
本発明による肺疾患の予防用または改善用の健康機能食品組成物は、HAPLN1タンパク質、HAPLN1タンパク質を暗号化させる遺伝子、及びHAPLN1タンパク質または遺伝子の発現を促進させたり、機能を活性化させたりする効能剤からなる群から選択される少なくとも一つを有効成分として含んでもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明による組み換えHAPLN1蛋白質は、老化またはエラスチン減少による肺胞損傷を改善させる優秀な効果を有し、老化またはエラスチン減少によって生じる慢性気管支炎、喘息、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺疾患の予防用または治療用の薬学組成物、健康機能食品組成物などに活用することができる。
【0015】
前記組成物は、既存の前記肺疾患治療薬物による副作用が少なく、世界的な高齢化傾向と共に、毎年増加している前記肺疾患を、安全であって効果的に予防または治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実験例による高齢マウスの肺胞実験結果であり、(A)は、肺胞組織を染色した後、顕微鏡で観察したイメージであり、(B)及び(C)は、肺胞の稠密度を定量化したグラフである。ここで、「若年マウス-食塩水」は、正常対照群(若年マウス群)にリン酸緩衝食塩水(PBS:phosphate buffered saline)を投与した群、「老化マウス-食塩水」は、高齢対照群(老化マウス群)にPBSを投与した群、「老化マウス-rhHAPLN1」は、高齢マウスrhHAPLN1投与群(老化マウス+rhHAPLN1群)にPBSに希釈したrhHAPLN1を投与した群を意味する。
【
図2】本発明の一実験例による噴霧注入(aerosolization)方式に係わる模式図である。
【
図3】本発明の一実験例によるエアロゾル吸入群(aerosol inhalation group)の実験結果であり、(A)は、各群別に肺胞組織を染色し、顕微鏡で観察したイメージであり、(B)及び(C)は、その平均線形切片(MLI:mean linear intercepts)値を測定した結果グラフである。
【
図4】本発明の一実験例による気管内点滴吸入群(intratracheal instillation group)の実験結果であり、(A)は、各群別肺胞組織を染色し、顕微鏡で観察したイメージであり、(B)及び(C)は、その平均線形切片(MLI)値を測定した結果グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明者は、組み換えHAPLN1(hyaluronan and proteoglycan link protein 1)蛋白質を生産し、その肺胞損傷改善効果、及び慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary diseases)動物モデルでの治療効果を確認することにより、本発明を完成した。
【0018】
本明細書において、「予防」とは、本発明による薬学的組成物または健康機能食品組成物の投与により、肺疾患、または前記疾患の少なくとも1以上の症状の発生を抑制させるか、あるいは発病を遅延させる全ての行為を意味する。また、再発を予防するか、あるいは防止するために、前記疾病に快癒程度がある対象の治療を含む。
【0019】
本明細書において、「治療」とは、本発明による薬学組成物の投与により、肺疾患、または前記疾患の少なくとも1以上の症状を緩和、低減または消滅させるというように、その症状を好転させるか、あるいは好ましく変更させる全ての行為を意味する。
【0020】
本明細書において、「改善」とは、本発明による健康機能食品組成物の摂取により、肺疾患、または前記疾患の少なくとも1以上の症状が緩和、低減または消滅させるというように、その症状を好転させるか、あるいは好ましく変更させる全ての行為を意味する。
【0021】
本明細書において、「薬学的組成物」とは、特定目的のために投与される組成物であり、本発明の目的上、肺疾患、または前記疾患の少なくとも1以上の症状を予防するか、あるいは治療するために投与されるものを意味する。
【0022】
本明細書において、「健康機能食品」とは、健康機能食品に係わる法律第6727号による人体に有用な機能性を有する原料や成分を使用して製造及び加工した食品を含み、栄養供給以外にも、本発明の目的上、肺疾患の予防または改善、生体防御、免疫、回復のような生体調節機能が効率的に示されるように加工された医学、医療の効果が高い食品を意味する。
【0023】
本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を有する組み換えHAPLN1蛋白質を提供する。
【0024】
前記「HAPLN1蛋白質」は、ヒアルロン酸をプロテオグリカンに連結し、ヒアルロン酸を安定化させる蛋白質であり、脊椎動物の関節において初めて発見された細胞外基質内の構成蛋白質である。
【0025】
本発明による「組み換えHAPLN1蛋白質」は、前記HAPLN1蛋白質を利用して製造した組み換え蛋白質である。
【0026】
本発明は、肺疾患の予防用または治療用の薬学組成物を提供し、前記組成物は、HAPLN1タンパク質、HAPLN1タンパク質を暗号化させる遺伝子、及びHAPLN1タンパク質または遺伝子の発現を促進させたり、機能を活性化させたりする効能剤からなる群から選択される少なくとも一つを有効成分として含んでもよい。
【0027】
所定の具体例において、本願に提供されたHAPLN1タンパク質は、配列番号1と、少なくとも95%の配列同一性(sequence identity)を有するアミノ酸配列を含んでもよい。それらのうち所定の具体例において、HAPLN1タンパク質は、配列番号1に提示されたアミノ酸配列と、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。また、本明細書に開示されたポリペプチドは、配列番号1のペプチド、その断片、及び少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個のアミノ酸が変形されたペプチドを含んでもよい。
【0028】
本願に使用された用語「同一性(identity)」は、2以上のポリペプチド配列の関係であり、それは、配列の比較によって決定されうる。当業界において「同一性」は、またポリペプチド配列間の配列関連性(sequence relatedness)程度を意味し、それは、それら配列のストリング(string)間のマッチング容易に計算され、例えば、BLAST(NCBI(National Center for Biological Information) Basic Local Alignment Search Tool)version 2.2.1 softwareを、デフォルト媒介変数(default parameter)でもって使用することができる。
【0029】
前記組み換えHAPLN1蛋白質は、老化またはエラスチン減少による肺胞損傷を改善させる効果を有することができ、肺疾患の予防用または治療用の薬学的組成物としても使用される。また、本発明の一実験例によれば、前記組み換えHAPLN1タンパク質は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)動物モデルにおいて、有意の治療効果を示す確認を行うことができる。
【0030】
本願において、用語「製剤(agent)」は、任意の(any)物質を指し、化学的化合物、小分子、抗体、ペプチドミメティック、ペプチドまたはタンパク質を含むが、それらに制限されるものではない。
【0031】
本願において、用語「効能剤(an effective agent)」は、HAPLN1タンパク質または遺伝子の発現を促進させるHAPLN1発現促進剤(HAPLN1 promoting agent)、またはHAPLN1タンパク質または遺伝子の機能を活性化させるHAPLN1活性剤(HAPLN1 activating agent)を指称する。本願で使用された効能剤は、HAPLN1遺伝子、あるいはHAPLN1タンパク質及び/またはその断片の発現を促進させたり、HAPLN1タンパク質または遺伝子の機能を活性化させたりすることができる多様な化合物、タンパク質またはペプチド、塩基配列などを含む。該活性化剤は、また多様な代謝産物(metabolites)、前駆物質(precursors)、あるいは前述の化合物、タンパク質またはペプチド、あるいは塩基配列の薬学的等価物(pharmaceutical equivalents)を含む。
【0032】
本発明による薬学的組成物において、前記肺疾患は、慢性気管支炎(chronic bronchitis)、喘息(asthma)、肺気腫(emphysema)及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群のうちから選択される1以上でもあるが、それらに制限されるものではなく、肺損傷によるさまざまな疾患を含んでもよい。
【0033】
本発明による薬学的組成物は、薬学的分野の一般的な方法によっても製造される。前記薬学的組成物は、前記有効成分以外に、剤形により、薬学的に許容可能な適切な担体とも配合され、必要によっては、賦形剤、希釈剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、結合剤、崩壊剤、溶剤などをさらに含んでも製造される。前記適切な担体などは、本発明による組み換えHAPLN1蛋白質の活性及び特性を阻害しないものであり、投与の形態及び剤形により、異なっても選択される。
【0034】
本発明による薬学的組成物は、いかなる剤形にも適用され、さらに詳細には、通常の方法により、経口型剤形、外用剤、坐剤、及び滅菌注射溶液の非経口型剤形に剤形化しても使用される。
【0035】
前記経口型剤形において、固形剤形は、錠剤、丸薬、散剤、顆粒剤、カプセル剤などの形態であり、少なくとも1以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、セルロース、ゼラチンなどを混ぜて調製することができ、単純な賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も含まれる。また、カプセル剤形の場合、前述の物質以外にも、脂肪油のような液体担体をさらに含んでもよい。
【0036】
前記経口型剤形において、液状剤形は、懸濁液剤、耐溶液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、一般的に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外にmさまざまな賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。
【0037】
前記非経口剤形は、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁液剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれてもよい。非水性溶剤、懸濁液剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されうる。坐剤の基剤としては、ウィテプソル(witepsol)、マクロゴール、ツイン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラテンなどが使用されうるが、それらに制限されるものではなく、当該技術分野に知られた適する製剤であるならば、いずれも使用可能である。
【0038】
また、本発明による薬学的組成物は、治療効能の増進のために、カルシウムやビタミンD3などをさらに添加することができる。
【0039】
本発明による薬学的組成物は、薬学的に有効量で投与されうる。
【0040】
本明細書において、「薬学的に有効量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/危険の比率で疾患の治療に適用するに十分であり、副作用を起こさないほどの量を意味する。
【0041】
前記薬学的組成物の有効用量レベルは、使用目的、患者の年齢・性別・体重及び健康状態、疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与方法、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、配合、または同時に使用される薬物を含んだ要素、及びその他医学分野に周知の要素によって異なっても決定される。例えば、一定ではないが、一般的に、0.001ないし100mg/kgであり、望ましくは、0.01ないし10mg/kgが、1日に1回ないし数回投与されうる。前記投与量は、いかなる面においても、本発明の範囲を限定するものではない。
【0042】
本発明による薬学的組成物は、肺疾患が発生しうる任意の動物に投与することが、前記動物は、例えば、ヒト及び霊長類だけではなく牛、豚、馬、犬などの家畜などを含んでもよい。
【0043】
本発明による薬学的組成物は、製剤形態による適当な投与経路によっても投与され、目的組織に逹することができる限り、経口または非経口の多様な経路を介しても投与される。投与方法は、特に限定する必要はなく、例えば、経口、直腸、静脈、筋肉、皮膚塗布、皮下、呼吸器内吸入、子宮内硬膜注射または脳血管内(intracere-broventricular)注射のような一般的な方法によっても投与される。
【0044】
本発明による薬学的組成物は、肺疾患の予防または治療のために、単独で使用され、手術、または他の薬物治療などと併用しても使用される。
【0045】
また、本発明は、肺疾患の予防用または改善用の健康機能食品組成物を提供し、前記組成物は、HAPLN1タンパク質、HAPLN1タンパク質を暗号化させる遺伝子、及びHAPLN1タンパク質または遺伝子の発現を促進させたり、機能を活性化させたりする効能剤からなる群から選択される少なくとも一つを有効成分として含んでもよい。。
【0046】
所定の具体例において、本願に提供されたHAPLN1タンパク質は、配列番号1と、少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。それらのうち所定の具体例において、HAPLN1タンパク質は、配列番号1に提示されたアミノ酸配列と、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。また、本明細書に開示されたポリペプチドは、配列番号1のペプチド、その断片、及び少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個のアミノ酸が変形されたペプチドを含んでもよい。
【0047】
前記組み換えHAPLN1蛋白質は、老化またはエラスチン減少による肺胞損傷を改善させる効果を有することができ、肺疾患の予防用または改善用の健康機能食品組成物としても使用される。
【0048】
本発明による健康機能食品組成物において、前記肺疾患は、慢性気管支炎、喘息、肺気腫及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群のうちから選択される1以上でもあるが、それらに制限されるものではなく、肺損傷によるさまざまな疾患を含んでもよい。
【0049】
本発明による健康機能食品組成物において、前記健康機能食品は、肺疾患の予防または改善の目的で、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、シロップまたは飲料などにも製造され、前記食品が取ることができる形態には、制限がなく、一般的な意味の食品をいずれも含んでもよい。例えば、飲料及び各種ドリンク、果実及びその加工食品(果物缶詰、ジャムなど)、魚類・肉類、及びその加工食品(ハム、ベーコンなど)、パン類及び麺類、クッキー類及びスナック類、乳製品(バター、チーズなど)などが可能であり、一般的な意味での機能性食品をいずれも含んでもよい。また、動物のための飼料に利用される食品を含んでもよい。
【0050】
本発明による健康機能食品組成物は、当業界で一般的に使用される食品学的に許容可能な食品添加剤(食品添加物)、及び適切なその他補助成分をさらに含んでも製造される。
【0051】
前記食品添加物としての適合いかんは、他の規定がない限り、食品医薬品安全庁に承認された食品添加物公典の総則、並びに一般試験法などによる当該品目に係わる規格及び基準によって判定することができる。前記「食品添加物公典」に収載された品目としては、例えば、ケトン類、グリシン、クエン酸カルシウム、ニコチン酸、桂皮酸のような化学的合成物;柿色素、甘草抽出物、結晶セルロース、コウリャン色素、グアガムのような天然添加物;L-グルタミン酸ナトリウム製剤、麺類添加アルカリ剤、保存料製剤、タール色素製剤のような混合製剤類などを挙げることができる。
【0052】
前記その他補助成分は、例えば、香味剤、天然炭水化物、甘味剤、ビタミン、電解質、着色剤、ペクチン酸、アルギン酸、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸化剤などを追加して含んでもよい。特に、前記天然炭水化物としては、ブドウ糖、果糖のようなモノサッカライド;マルトース、スクロースのようなジサッカライド;及びデキストリン、シクロデキストリンのようなポリサッカライド;キシリトール、ソルビトール、エリトリトールのような糖アルコールを使用することができ、甘味剤としては、ソーマチン、ステビア抽出物のような天然甘味剤や、サッカリン、アスパルタムのような合成甘味剤などを使用することができる。
【0053】
本発明による健康機能食品に含有された組み換えHAPLN1蛋白質の有効用量は、肺疾患の予防または改善のようなその使用目的によっても適切に調節される。前記組成物は、食品を原料にし、一般薬品の長期服用時に発生しうる副作用などがない長所があり、携帯性にすぐれて、肺疾患の予防または改善のための補助剤としても摂取される。
【0054】
以下、本発明理解の一助とするために、実施例を挙げ、詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明の内容を例示することであるのみ、本発明の範囲は、下記実施例に限定されるものではない。本発明の実施例は、当業界で当業者に、本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0055】
また、本開示内容は、本開示内容による薬学的組成物を個体(subject)に投与することを含む、それを必要とする個体において、肺疾患を予防したり治療したりする方法を提供することができる。
【0056】
前記個体は、望ましくは、ヒトを含む哺乳動物、及び肺疾患治療を必要とする患者でもある。前記患者は、肺疾患治療を受けている患者、肺疾患治療を受けたことがある患者、肺疾患治療が必要な患者、及び肺疾患治療のために手術を受けた患者を含んでもよい。本開示内容による薬学的組成物を個体に投与すれば、肺疾患が緩和されたり(alleviated)治療されたりもする(treated)。
【0057】
本願に使用された、用語「緩和(alleviation)」は、本開示内容による薬学的組成物の投与を介し、肺疾患が低減されたり、そこから利益を得る任意の作用を指称する。本開示内容による薬学的組成物は、薬学的に有効な量(pharmaceutically effective amount)でもって投与される。
【0058】
本願に使用された用語「投与(administration)」は、任意の適する方法を使用し、個体に、本開示内容による薬学的組成物を導入することを指称する。投与経路は、器官内(intratracheal)または気管支内(intrabronchial)への点滴(instillation)または吸入(inhalation)、任意類型の注射(injections)、任意類型の経口薬物(oral medication)、または任意類型の経皮薬物(transdermal medication)を含んでもよいが、それらに制限されるものではない。例示のうち一つとして、前記薬学的組成物は、エアロゾル(aerosol)形態によっても投与され、点滴投与もされる。
【0059】
本開示内容による薬学的組成物は、ネブライザー(nebulizer)によって生成されうるエアロゾル、または点滴によっても投与される。前記薬学的組成物は、単独、または食塩水、DMSO、アルコールまたは水のような担体(carrier)と共に投与されうる。また、弾性纎維の分解を防止したり、その再合成を促進させるような多様な製剤の器官内投与のための媒介体(vehicle)としても使用される。該組成物の有効一日量は、体重(body weight)に対し、約0.001mg/kgないし100mg/kg、望ましくは、0.01mg/kgないし10mg/kgである。投与量は、任意の側面において、本開示内容の範囲を制限するものではない。例えば、ヒトに毎日器官内に投与される薬学的組成物の量は、体重に対し、約0.001mg/kgないし約100mg/kgと、多様でもある。望ましくは、一日投与量は、治療を受ける者の体重1kg当たり、約0.01mg/kgないし約10mgである(毎日)。
【0060】
また、薬学的組成物が投与される時間は、所望結果を達成するために、当業界に周知されているように、多様でもある。例えば、該薬学的組成物は、エアロゾルとして、治療療法当たり約30秒ないし約1時間、毎日1ないし5回、または所望一日投与量が完全に投与されるまで投与されうる。
【0061】
また、本開示内容によるHAPLN1タンパク質、HAPLN1タンパク質を暗号化させる遺伝子、及びHAPLN1タンパク質または遺伝子の発現を促進させたり、機能を活性化させたりする効能剤からなる群から選択される少なくとも一つを含む、肺疾患の予防用または治療用の薬学的組成物は、既存に存在する肺疾患治療のための薬物または治療方法と組み合わせ、同時に(simultaneously)/順次に(sequentially)投与することができる。そのような投与は、単一または多重の投与でもある。全て要因を考慮しながら、副作用なしに、最小限量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要である。前記量は、当業者によって容易に決定されうる。
【実施例】
【0062】
<実施例1>組み換えヒトHAPLN1蛋白質(rhHAPLN1)の生産
1.組み換えヒトHAPLN1蛋白質のアミノ酸配列
組み換えHAPLN1蛋白質を構成するアミノ酸配列は、次の通りである。
DHLSDNYTLDHDRAIHIQAENGPHLLVEAEQAKVFSHRGGNVTLPCKFYRDPTAFGSGIHKIRIKWTKLTSDYLKEVDVFVSMGYHKKTYGGYQGRVFLKGGSDSDASLVITDLTLEDYGRYKCEVIEGLEDDTVVVALDLQGVVFPYFPRLGRYNLNFHEAQQACLDQDAVIASFDQLYDAWRGGLDWCNAGWLSDGSVQYPITKPREPCGGQNTVPGVRNYGFWDKDKSRYDVFCFTSNFNGRFYYLIHPTKLTYDEAVQACLNDGAQIAKVGQIFAAWKILGYDRCDAGWLADGSVRYPISRPRRRCSPTEAAVRFVGFPDKKHKLYGVYCFRAYN(配列番号1)
【0063】
2.組み換えヒトHAPLN1蛋白質(rhHAPLN1)の発現、精製及び保管
組み換えヒトHAPLN1(rhHAPLN1:gene number 2678736)の製造のために、組み換えヒトHAPLN1アミノ酸配列が符号化されたDNAベクターを、宿主細胞であるExpiTM293細胞(Thermo Fisher Scientific Co.、Waltham、MA,米国)に感染させた。精製のために、アミノ末端に、分泌信号ペプチド、及び10個のヒスチジン(H、His、histidine)、そしてTEV蛋白質分解酵素(TEV protease)認知配列(TEV recognition site)を挿入した状態で発現させた。ベクター感染3日後、培養液を収集し、HisTrap column(GE Healthcare、IL、米国)を介して精製した後、TEVタンパク質分解酵素で、TEVタンパク質分解酵素認知配列を切断し、ヒスチジンを含む分子をDynaBeads(Thermo Fisher Scientific)を使用して除去した。そのように得られた溶液を、40mM Tris-HCl、1M NaCl、pH8.0に対し、16時間透析を行った。最終精製品の蛋白質濃度は、0.11mg/mlであり、溶媒は、20mM Tris-HCl、0.5M NaCl、pH8.0、50%グリセロールにし、1回投与量として小分した後、-20℃冷蔵庫に保管して使用した。
【0064】
<実験例1>組み換え人HAPLN1蛋白質(rhHAPLN1)の反復腹腔投与による高齢マウスの肺胞構造改善効果の確認
1.実験動物の準備及び飼育
実験動物は、2ヵ月齢の雄C57BL/6J((株)Young Bio、大韓民国)マウスを若年(young)マウスに設定し、20ヵ月齢の雄C57BL/6Jマウスを、老化(old)マウスに設定した。水と飼料は、自由に摂取することができるようにし、飼育室内の温度は、21~24℃、湿度は、40%~60%に維持し、昼と夜との周期は、それぞれ12時間にした。
【0065】
正常対照群(若年マウス群)は、5匹、高齢対照群(老化マウス群)と高齢rhHAPLN1投与群(老化マウス+rhHAPLN1群)は、それぞれ5匹ずつ割り当てた。高齢rhHAPLN1投与群(老化マウス+rhHAPLN1群)は、リン酸緩衝食塩水(PBS:phosphate buffered saline)に希釈したrhHAPLN1を、1回80μlの用量で、0.1mg/kgの投与量として、腹腔内注射(IP(intraperitoneal) injection)し、それは、週3回総3週間進められた。残り2つの対照群は、同量のPBSを同一方法で投与した。
【0066】
2.肺胞組織の染色及び顕微鏡観察
実験終了時、心臓灌流を施した後、左肺を上下部に二等分し、中性緩衝10%ホルマリン(NBF:neutral buffered 10% formalin)に固定し、上側切片の切断面が見えるように、パラフィン組織切片を作製した。該組織切片を、ヘマトキシリン&エオシン(H&E:hematoxylin & eosin)法で染色し、それを、Ni-U(Nikon)顕微鏡及びDS-Ri1(Nikon)デジタルカメラを利用して撮影し、その結果を
図1(A)に示した(縮尺バー=100μm)。
【0067】
また、各個体の染色された組織切片に対し、肺胞の稠密度を定量化するために、Image Jプログラムを利用し、平均線形切片(MLI:mean linear intercepts)値を算出した。該MLI値が高いほど、肺胞表面積が縮小することを意味し、肺気腫または慢性閉塞性肺疾患(COPD)の程度を示す指標として使用される。公式は、Lm(μm)=number of intersections/(grid length(μm)×number of lines)であり、匹当たり任意の3ヵ所を測定し、平均値を求めた後、5匹値に対し、Sigma plot 12.0及びGraph Pad Prism 8を利用して統計処理した。その結果を、
図1(B)に示した。
【0068】
図1(A)及び
図1(B)のように、老化マウスの肺胞MLI値(μm)は、若年マウスの値に比べ、約141%上昇した(p<0.001)。一方、老化それ自体の原因により、そのような上昇は、rhHAPLN1の処理により、56%ほど低下することが分かった(p<0.0435)。
【0069】
<実験例2>豚膵臓エラスチン分解酵素(PPE:porcine pancreatic elastase)によって誘導される慢性閉塞性肺疾患(COPD)モデルにおける組み換え人HAPLN1蛋白質(rhHAPLN1)の効能
1.実験動物の準備及び飼育
実験動物は、体重20~25gの6週齢から10週齢のめすC57BL6/N((株)Young Bio、大韓民国)マウスを使用し、該マウスは、各群当たり5匹に分けた。水と飼料は、自由に摂取することができるようににし、飼育室内の温度は、21~24℃、湿度は、40%~60%に維持し、昼と夜との周期は、それぞれ12時間にした。
【0070】
2.慢性閉塞性肺疾患(COPD)の誘発
慢性閉塞性肺疾患(COPD)が誘発されたマウスモデルを製造するために、Suki et al (2017, Methods Mol. Biol. 1639: 67-75)及びWright et al (2008, Am J Physiol Lung Mol Physiol 295: L1-L15)を参照した。
【0071】
肺内にエラスターゼ(elastase)を吸入させるために、まず、豚膵臓由来のエラスターゼ(EC134:PPE:porcine pancreatic elastase)を、Elastin Products Company Inc.(Owensville, Missouri、米国)から購入し、匹当たり6 IU/30μlを薬剤処理1日前に1回投与した。吸入方法により、2群に分けて投与した。
【0072】
具体的には、エアロゾル吸入群(AH:aerosol inhalation)は、20G(0.9×50mm)経口用針(oral zoned needle)を使用し、口腔を介して投与した。慎重に口を開け、舌を引っ張り、その裏側、すなわち、末端咽頭中央部(distal oropharynx)上にエラスターゼ溶液を落とすと共に、両鼻孔を塞いで吸入を誘導することによって投与した。一方、気管内点滴吸入群(TI:intratracheal instillation)は、エッペンドルフピペットを使用し、鼻腔に点滴を施すことにより、マウスの自発的吸入を誘導して投与した。マウスの体重は、週2回測定し、組成物薬剤投与のために、各群は、さらにそれぞれ4個小群に分けた。
【0073】
3.組成物薬剤の効能
エアロゾル吸入群(AH群)は、さらにAH-1:PPE未処理(正常)群、AH-2:PPE+食塩水群、AH-3:PPE+rhHAPLN1群、AH-4:PPE+ヒアルロン酸(HA)群に分け、気管内点滴吸入群(TI群)は、さらにTI-1:PPE未処理(正常)群、TI-2:PPE+食塩水群、TI-3:PPE+rhHAPLN1群、TI-4:PPE+HA群に分けた。ここで、ヒアルロン酸(HA)は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に効能があると知られており、陽性対照群として使用した。ヒアルロン酸(HA)の投与根拠と濃度決定とのために、Cantor et al (2005, Experimental Lung Research, 31: 417-430)を参照し、それにより、ストレブトコックスエキ(Streptococcus equi)由来のヒアルロン酸ナトリウム塩(hyaluronic acid sodium salt)(Sigma-Aldrich; St. Louis, MO、米国;Cat. 73641-10MG)形態で購入して使用した。
【0074】
各薬剤組成物試料は、Mass Dosing Systemを利用し、具体的には、Aerosol chamber(Data Science International)を使用し、エラスターゼ投与1日後から、噴霧注入(aerosolization)方式で、週5回投与した(Ball flow meter 3、aerosol 1hour、duty 30%)。噴霧注入方式について説明する模式図は、
図2に提示した。
【0075】
各試料は、生理食塩水を溶媒にし、1回当り6.8mlに調整し、0.33%(w/v)rhHAPLN1、5.71%(w/v)ヒアルロン酸(HA)の濃度でもって、噴霧注入装置で噴霧し、21日目最後の噴霧投与1日後、麻酔状態で心臓灌流を施した後、左肺を横に二等分し、その下部を取り、中性緩衝10%ホルマリン(NBF)に固定し、上側切片の切断面が見えるように、パラフィン組織切片を作製した。該組織切片を、ヘマトキシリン&エオシン(H&E)法で染色し、それをNi-U(Nikon)顕微鏡及びDS-Ri1(Nikon)デジタルカメラを利用し、200倍率で撮影し、肺胞組織写真データ(縮尺バー=100μm)を得て、肺胞の平均線形切片(MLI)を測定した。MLI値が高いほど、肺胞表面積が縮小することを意味し、肺気腫または慢性閉塞性肺疾患(COPD)の程度を示す指標として、使用される。公式は、Lm(μm)=number of intersections/(grid length(μm)×number of lines)であり、匹当たり任意の3ヵ所を測定し、平均値を求めた後、5匹値に対し、Sigma plot 12.0及びGraph Pad Prism 8を利用して統計処理した。
【0076】
エアロゾル吸入群(AH group)の実験結果は、
図3に、気管内点滴吸入群(TI group)の実験結果は、
図4にそれぞれ提示した。
【0077】
図3は、エアロゾル吸入(AH)群の結果であり、
図3Aないし
図3Cを参照すれば、PPE処理群(AH-2)21.2μmは、処理していない正常群(AH-1)13.8μmに比べ、約1.5倍増大加した(p<0.001)。PPE処理群21.2μmに比べ、rhHAPLN1処理群(AH-3)は、14.5μmと、約95%低減し(p<0.00002)、ほぼ正常群状態に回復したことが分かる。
【0078】
それに比べ、濃度面において、0.33%(w/v)に比べ、約17倍高い5.71%(w/v)ヒアルロン酸(HA)処理群(AH-4)は、約73%に低減することにより(p<0.002)、陽性対照群ヒアルロン酸(HA)処理は、効果面において、rhHAPLN1処理の約95%より若干落ちる効能を示していることが分かる。
【0079】
図4は、気管内点滴吸入(TI)群の実験結果であり、
図4Aないし
図4Cを参照すれば、PPE処理群(TI-2)22.1μmは、処理していない正常群(TI-1)13.8μmに比べ、約1.6倍増大した(p<0.001)。PPE処理群(TI-2)22.1μmに比べ、rhHAPLN1処理群(TI-3)は、16.1μmと、約72%低減した(p<0.0009)。
【0080】
それに比べ、濃度面において、0.33%(w/v)に比べ、約17倍高い5.71%(w/v)ヒアルロン酸(HA)処理群(TI-4)は、約64%に低減することにより(p<0.00123)、陽性対照群ヒアルロン酸(HA)処理も、効果面において、rhHAPLN1処理の約72%より若干落ちる効能を示していることが分かる。
【0081】
以上のように、本発明内容の特定部分について詳細に記述したが、当業界の当業者において、そのような具体的技術は、ただ、望ましい実施様態であるのみ、それにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。すなわち、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲と、それらの等価物とによって定義される。
【配列表】