(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】コンベア式X線検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/10 20180101AFI20230814BHJP
【FI】
G01N23/10
(21)【出願番号】P 2021565184
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2019049256
(87)【国際公開番号】W WO2021124423
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】511006476
【氏名又は名称】つくばテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194869
【氏名又は名称】榎本 慎一
(72)【発明者】
【氏名】王 波
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 典生
(72)【発明者】
【氏名】劉 小軍
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 修一
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-152515(JP,U)
【文献】特開昭49-083176(JP,A)
【文献】特開昭49-084198(JP,A)
【文献】特表2015-512033(JP,A)
【文献】特開平11-230918(JP,A)
【文献】特開2018-017663(JP,A)
【文献】特開2018-124084(JP,A)
【文献】特開2005-003480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00―G01N 23/2276
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚部を備え、前記脚部に
枠が載置され、被検体を載せX線撮影箇所さらに取り出し位置に移動させるコンベアと、
前記コンベアにおけるX線撮影箇所を囲むX線遮蔽性の筐体と、
前記筐体内部に設置され、前記被検体にX線を照射するX線照射部と、
前記被検体を透過したX線を感知する
シンチレータ、CCD、CMOS、及びCdTe半導体の内から選ばれる何れか1つのデジタル式の検出器と、
前記検出器で感知した前記X線強度に対応する検出信号をデジタルX線画像として表示可能に処理する制御装置と、
前記デジタルX線画像を表示するモニタと、
からなり、
さらに、前記筐体が、
前記コンベアの前記枠に接続するX線遮蔽性の鉛板を内在する載置部を介して或いは直接連結する受けに嵌められ、溝を備えた4本の柱及び梁によって骨組みされ、
前記柱の対向する溝にX線遮蔽性の鉛板を内在する左側面板及び右側面板を嵌め、前記梁の対向する溝にX線遮蔽性の鉛板を内在する天板を嵌め、X線撮影箇所を囲み、前記被検体の入口及び出口には、鉛入り短冊を複数本垂らした入口ユニット及び出口ユニットを前記柱の対向する溝に嵌めてなり、
前記コンベアの停止と前記X線の照射及び前記検出器の感知を同期させ、前記被検体のX線撮影を行い、前記コンベアの停止と移動を繰り返す間欠運転をする
ことを特徴とす
るコンベア式X線検査装置。
【請求項2】
前記X線撮影箇所前に前記被検体の通過を感知する第一センサを備え、前記第一センサの感知から所定時間後に前記コンベアの駆動を前記制御装置の制御信号で停止させ、前記X線撮影を行うことを特徴とする請求項1に記載
のコンベア式X線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動が容易で設置が簡単、被検体のX線検査をコンベア上で準連続的に行い、高速、高精度X線検査の両立を可能にするコンベア式X線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンベア式の手荷物のX線検査装置は、空港などに設置されているが、大型で移動使用を想定しておらず、また放射線量も高い。
【0003】
他方、ポータブル性を備えた手荷物のX線検査装置としては、特許文献1の手荷物検査X線装置が公開されている。特許文献1の発明は、手荷物検査台13のX線照射範囲設定領域11を参考にして手荷物4を搭載し、下部本体7内のX線発生部からX線を照射すると、手荷物4を通過してX線受像部9に到達し、鏡10によって反射されるので、検査官はX線照射範囲設定領域11に手を入れないようにして手荷物4の位置をずらしながら手荷物4の不審なもの6の存在の有無を確認する、というものである。
【0004】
しかしながら、特許文献1の手荷物検査X線装置はポータブル可能であっても、被検体を手で手荷物検査台13に載置する必要があり、煩雑で、検査に長時間を要し、多量の被検体のX線検査には向かない。また、X線の遮断性が不十分であるので、放射線被曝の対策が必要であり、使い勝手がよくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-10057号公報
【文献】特開2017-191057号公報「つくばテクノロジー(株):ポータブルX線検査装置」
【文献】特開2017-015412号公報「つくばテクノロジー(株):ポータブル電線端部X線検査装置」
【文献】特開2015-217137号公報「つくばテクノジー(株):ポータブル3D表示X線撮影装置」
【文献】特開2012-154627号公報「つくばテクノロジー(株):X線非破壊検査装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、移動が容易で設置が簡単、被検体のX線検査をコンベア上で準連続的に行い、高速、高精度X線検査の両立を可能にするコンベア式X線検査装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、
(1)
脚部を備え、前記脚部に載置され、被検体を載せX線撮影箇所さらに取り出し位置に移動させるコンベアと、
前記コンベアにおけるX線撮影箇所を囲むX線遮蔽性の筐体と、
前記筐体内部に設置され、前記被検体にX線を照射するX線照射部と、
前記被検体を透過したX線を感知するデジタル式の検出器と、
前記検出器で感知した前記X線強度に対応する検出信号をデジタルX線画像として表示可能に処理する制御装置と、
前記デジタルX線画像を表示するモニタと、
からなり、
前記コンベアの停止と前記X線の照射及び前記検出器の感知を同期させ、前記被検体のX線撮影を行い、前記コンベアの停止と移動を繰り返す間欠運転をすることで、コンベアを用いて高速、高精度X線検査の両立を可能にしたことを特徴とするコンベア式X線検査装置。
(2)
前記X線撮影箇所前に前記被検体の通過を感知する第一センサを備え、前記第一センサの感知から所定時間後に前記コンベアの駆動を前記制御装置の制御信号で停止させ、前記X線撮影を行うことを特徴とする(1)に記載のコンベア式X線検査装置。
(3)
前記筐体が、前記コンベアに連結する受けに嵌められ、溝を備えた柱及び梁によって骨組みされ、前記溝にX線遮蔽性の鉛板を嵌め、X線撮影箇所を囲み、前記被検体の入口及び出口には、鉛入り短冊を複数本垂らしてなることを特徴とする(1)に記載のコンベア式X線検査装置。
(4)
検査場所へ分解移動し、検査場所で組み立てることを特徴とする(1)に記載のコンベア式X線検査装置。
(5)
(1)に記載のコンベア式X線検査装置を用いて、乗物、或いは会場の入口で手荷物検査を行うことを特徴とする防犯方法。
(6)
前記乗物が、飛行機、船、又は新幹線の何れか1であることを特徴とする(5)に記載の防犯方法。
(7)
前記会場が、スポーツ会場、ライブ会場、セミナー会場、討論会場、政治集会、テーマパークの何れか1つであることを特徴とする(5)に記載の防犯方法。
とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記構成であるので、移動が容易で設置が簡単、すなわち検査現地にて組み立て、分解でき、次の会場に移動させることができるので、乗物、多種多様な室内、野外イベントにおける目視等による手荷物検査を、X線検査に置き換え、短時間(高速)、高精度の検査を可能にし、犯罪、事故の予防に大いに貢献できる。
【0009】
被検体のX線検査をコンベア上で準連続的(間欠的:移動するコンベアを撮影時にのみ停止させる)に行うことができ、X線検査が容易で、検査効率がよく、多量の手荷物、工業製品のX線検査を可能にする。
【0010】
また、X線撮影は、コンベアが停止して行われるため、すなわちコンベアの停止とX線の照射及び検出器の感知を同期させるため、X線画像が鮮明になる。さらに、フラットパネル検出器を採用すれば、0.1mmの異物であっても見分けることができる高精度X線検査が可能になる。
【0011】
鉛筐体で、出入口は、鉛板入り短冊を配置し、それ以外も放射線遮蔽性の鉛板で囲んであるため、放射線漏洩が防止でき、被曝の危険性が低く、X線作業主任者なしで、X線検査装置の周辺に放射線管理区域を設定することなしでX線撮影が可能になる。
【0012】
本発明は、上述のように、小型で、可搬式で、短時間検査可能であるので、空港設備が十分でない空港の手荷物検査、その他、乗船、新幹線への乗車の際に、手荷物のX線検査を実施することが可能になる。それにより、それらの運行の安全と、犯罪予防に資する。特に、一部車両、フロアーだけの客に実施するなどすることで、安全運行の差別化を図ることもできる。
【0013】
X線検査装置が、常備されていない、スポーツ会場、ライブ会場、セミナー会場、討論会場、政治集会、テーマパークの入り口において、手荷物のX線検査を実施することも可能になる。それにより、安全な会場、イベントの運営に資する。
【0014】
加えて、本発明は、手荷物検査だけでなく、高速・高精度な食品や靴また工業製品の電池や基板などの異物検査にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明である
コンベア式X線検査装置の側面模式図で、筐体については縦断面模式図である。の模式図である。
【
図2】
図2は、本発明である
コンベア式X線検査装置の平面模式図で、筐体については水平断面模式図である。
【
図3】
図3は、筐体の説明図である。
図3(A)は縦断面模式図で、
図3(B)のA-A‘位置に相当する筐体の完全体の断面模式図で、
図3(B)は水平断面で、
図3(A)のB-B’位置に相当する筐体の完全体の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はそれら実施形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
図1-3に示すように、本願発明である
コンベア式X線検査装置1は、コンベア2と、筐体3と、X線照射部4と、検出器5と、制御装置6と、モニタ7とからなる。
【0018】
コンベア2は、脚部2aを備え、例えば、脚部2aに載置される枠2cと、検査前の被検体10aを載せ、モータ2eの駆動で回転し、X線撮影箇所に被検体10を移動させ、さらに取り出し位置に被検体10bを移動させるベルト2dからなる。脚部3aにはキャスタ2bを備えると設置位置の調整が容易になる。ベルト2dに替えモータ2eで駆動するローラであってもよい。
【0019】
筐体3は、コンベア2におけるX線撮影箇所を囲むX線遮蔽性の材料から組み立てられ、例えば、
コンベア2の枠2cに接続する載置部3qを介して連結する受け3p、或いは枠2cに直接連結する受け3pと、
受け3pに嵌められ、溝3m或いは溝3oを備えた柱3l及び梁3nと、
X線撮影箇所を囲む、対向する溝3m、3oに嵌められるX線遮蔽性の鉛板3kを内在する板(入口ユニット3b、出口ユニット3e、天板3j、左側面板3h、右側面板3i、載置部3q)とからなる。筐体3は、ここのあげるほか、簡易組み立て、分解、移動可能であれば、特に制限されない。
【0020】
被検体10aの入口3c、被検体10の出口3fには、鉛入り短冊3d、短冊3gを複数本垂らしてなる。柱3lと梁3nで骨組3aを形成する。載置部3qは、後述のX線照射部4を設置する。
【0021】
筐体3には、さらに、コンベア2の枠2cに立設する前係止部3r、後係止部3s、或いは筐体3内の左右側面板3h、3iの筐体3の内側に係止して、それぞれ第一センサ3t、第二センサ3uを備える。
【0022】
第一センサ3tは、X線撮影箇所前に被検体10aの通過を感知し、第一センサ3tの感知から所定時間後にコンベア2の駆動を制御装置6の制御信号6cで停止させ、X線撮影のタイミングの時間制御に利用する。
【0023】
第二センサ3uは、X線検査終了した被検体10bの通過を感知し、次の手荷物の検査部へ搬入を許可する。例えば、ベルト2dへの手荷物の載置許可シグナル、表示を点灯させる。第二センサ3uの感知がない場合には、筐体3内での手荷物の停滞が推測されるため、X線検査を一端中止して、筐体3内から停滞手荷物を取り出す。
【0024】
X線照射部4は、筐体3内部に設置され、被検体10にX線4aを照射するものであって、筐体3の側面内側に設置されるX線4aを照射するX線源4bと、駆動源、例えば、バッテリ4c、AC-DCアダプタなどを備える。
【0025】
X線源4bとしては、特許文献2-5に記載のカーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管などが、採用でき、それらはそれら先行技術文献に詳述されている。詳細は、それらを参照されたい。
【0026】
検出器5は、被検体10を挟みX線源4bが設置された側面内側の対向側面に設置され、被検体10を透過したX線4aを感知するデジタル式のX線検出器で、2次元画像データとして感知し、制御装置6に、有線、或いは無線で検出信号5aを送信する。検出器5としては、例えば、シンチレータ、CCD、CMOS、CdTe半導体などが例示される。
【0027】
X線の照射、検出器による検出方向は、筐体3における水平方向、垂直方向、それら両方向の何れであってもよい。
【0028】
制御装置6は、PCなどで、X線4aの照射タイミングを制御信号6aで制御するとともに、検出器5の感知タイミングを制御信号6bで制御し、さらに、ベルトの駆動を制御し、撮影のタイミングで停止させる。すなわち、X線4aの照射タイミング、検出器5の感知タイミング、ベルトの停止を同期させる。そして、検出器5で感知したX線強度に対応する検出信号5aをデジタルX線画像7aとして表示可能に処理する。
【0029】
さらに制御装置6は、撮影した画像を画像処理し、或いは予め記録された画像などとの対比により、対象物形状が危険物と類似する場合に、危険物であると判定し、音、光によるアラート生成機能を備えてもよい。また、爆発物、麻薬などの柔らかい危険物と刃物や銃などの硬い危険物を色分けしてモニタ7に表示することで目視判定をしやすくすることもできる。
【0030】
モニタ7は、デジタルX線画像7aを表示する。モニタ7としては、PCのディスプレイ、ノートPCの一体ディスプレイ、タブレットなどが例示できる。
【0031】
このようにしてなるコンベア式X線検査装置1は、コンベア2の駆動停止(ベルト2dの回転停止)と、X線4aの照射及び検出器5の感知を同期させ、被検体10のX線撮影を行い、コンベア2の(ベル2dトの回転)の停止と移動を繰り返す間欠運転をすることで、コンベア2を用いて高速、高精度X線検査の両立を可能にする。
【符号の説明】
【0032】
1 コンベア式X線検査装置
2 コンベア
2a 脚部
2b キャスタ
2c 枠
2d ベルト
2e モータ
3 筐体
3a 骨組
3b 入口ユニット
3c 入口
3d 短冊
3e 出口ユニット
3f 出口
3g 短冊
3h 左側面板
3i 右側面板
3j 天板
3k 鉛板
3l 柱
3m 溝
3n 梁
3o 溝
3p 受け
3q 載置部
3r 前係止部
3s 前係止部
3t 第一センサ
3u 第二センサ
4 X線照射部
4a X線
4b X線源
4c バッテリ
4d AC-DCアダプタ
5 検出器
5a 検出信号
6 制御装置
6a 制御信号
6b 制御信号
6c 制御信号
7 モニタ
7a デジタルX線画像
10 被検体(撮影中)
10a 被検体(検査前)
10b 被検体(検査後)