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特許7329891貯槽管理システム、貯槽管理方法、および貯槽管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】貯槽管理システム、貯槽管理方法、および貯槽管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/137 20060101AFI20230814BHJP
   B65D 90/00 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
B65G1/137 A
B65D90/00 J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023025359
(22)【出願日】2023-02-21
【審査請求日】2023-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593204650
【氏名又は名称】東西化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】北村 駿
(72)【発明者】
【氏名】西坂 和幸
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-153984(JP,A)
【文献】特開2016-056659(JP,A)
【文献】特開2019-218169(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113562957(CN,A)
【文献】特開2023-010043(JP,A)
【文献】特開2017-065704(JP,A)
【文献】特開2006-063613(JP,A)
【文献】特開平10-046885(JP,A)
【文献】特開2016-003077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/00
B65G 1/137
G05B 19/418
A61J 3/00
E05B 41/00
E05B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯槽の投入口を施錠する施錠装置と、
情報を取得可能な取得ユニット、前記施錠装置と通信可能な通信ユニット、および、演算処理を行う演算ユニット、を有する端末装置と、を備え、
前記演算ユニットが、
指定された貯槽に付与された貯槽情報を取得する貯槽識別機能と、
前記取得ユニットを用いて薬剤に付与された薬剤情報を取得する薬剤識別機能と、
前記貯槽情報および前記薬剤情報に基づいて、前記薬剤情報が付された前記薬剤の前記貯槽への投入可否を判定する判定機能と、
前記判定機能によって前記薬剤を前記貯槽に投入可能だと判定したときに、前記通信ユニットを用いて、前記施錠装置に前記投入口を解錠させる信号を発信する解錠機能と、
前記通信ユニットを用いて、前記施錠装置による施錠の状態を確認する確認機能と、を実現可能であり、
前記解錠機能によって前記投入口を解錠させる信号を発信した後、前記確認機能によって前記投入口の施錠を確認するまでの間、前記確認機能以外の機能が制限される貯槽管理システム。
【請求項2】
貯槽の投入口を施錠する施錠装置と、
情報を取得可能な取得ユニット、前記施錠装置と通信可能な通信ユニット、および、演算処理を行う演算ユニット、を有する端末装置と、を備え、
前記施錠装置が、全ての機能を実現可能な通常モードと、実現可能な機能が制限されるとともに消費電力が抑制される省電力モードと、で運転可能であり、
前記演算ユニットが、
指定された貯槽に付与された貯槽情報を取得する貯槽識別機能と、
前記取得ユニットを用いて薬剤に付与された薬剤情報を取得する薬剤識別機能と、
前記貯槽情報および前記薬剤情報に基づいて、前記薬剤情報が付された前記薬剤の前記貯槽への投入可否を判定する判定機能と、
前記判定機能によって前記薬剤を前記貯槽に投入可能だと判定したときに、前記通信ユニットを用いて、前記施錠装置に前記投入口を解錠させる信号を発信する解錠機能と、
前記通信ユニットを用いて、前記施錠装置による施錠の状態を確認する確認機能と、
前記通信ユニットを用いて、前記施錠装置を前記通常モードに移行させるとともに、前記端末装置と通信可能な状態にさせる起動機能と、
前記確認機能によって前記施錠装置による施錠を確認したときに、前記通信ユニットを用いて、前記施錠装置を前記省電力モードに移行させる休止機能と、を実現可能である貯槽管理システム。
【請求項3】
前記解錠機能によって前記投入口を解錠させる信号を発信した後、前記確認機能によって前記投入口の施錠を確認するまでの間、前記確認機能以外の機能が制限される請求項2に記載の貯槽管理システム。
【請求項4】
前記演算ユニットが、前記貯槽に投入される予定の前記薬剤の量である投入予定量を取得する数量取得機能をさらに実現可能であり、
前記判定機能において、前記貯槽情報、前記薬剤情報、および前記投入予定量に基づいて、前記薬剤情報が付された前記薬剤の前記貯槽への投入可否を判定する請求項1~3のいずれか一項に記載の貯槽管理システム。
【請求項5】
前記貯槽が、複数の種類の薬剤を貯留するものであり、
前記演算ユニットが、
前記薬剤識別機能において、複数の種類の薬剤に付与された薬剤情報をそれぞれ取得し、
前記判定機能において、指定された前記貯槽と、前記複数の種類の薬剤からなる組と、の組合せに基づいて、前記薬剤の前記貯槽への投入可否を判定する請求項1~3のいずれか一項に記載の貯槽管理システム。
【請求項6】
前記通信ユニットが、さらにサーバ装置と通信可能であり、
前記演算ユニットが、前記通信ユニットを用いて、前記貯槽情報および前記薬剤情報を前記サーバ装置に送信する送信機能をさらに実現可能である請求項1~3のいずれか一項に記載の貯槽管理システム。
【請求項7】
施錠装置によって施錠される貯槽の投入口の施錠状態を、コンピュータを用いて管理する貯槽管理方法であって、
指定された貯槽に付与された貯槽情報を前記コンピュータが取得する貯槽識別工程と、
薬剤に付与された薬剤情報を前記コンピュータが取得する薬剤識別工程と、
前記貯槽情報および前記薬剤情報に基づいて、前記薬剤情報が付された前記薬剤の前記貯槽への投入可否を前記コンピュータが判定する判定工程と、
前記判定工程において前記薬剤を前記貯槽に投入可能だと前記コンピュータが判定したときに、前記投入口を解錠する解錠工程と、
前記施錠装置による施錠の状態を前記コンピュータが確認する確認工程と、を備え、
前記解錠工程において前記投入口を解錠した後、前記確認工程において前記投入口の施錠を確認するまでの間、前記コンピュータが前記確認工程以外の工程を実施しない貯槽管理方法。
【請求項8】
全ての機能を実現可能な通常モードと、実現可能な機能が制限されるとともに消費電力が抑制される省電力モードと、で運転可能な施錠装置によって施錠される貯槽の投入口の施錠状態を、コンピュータを用いて管理する貯槽管理方法であって、
指定された貯槽に付与された貯槽情報を前記コンピュータが取得する貯槽識別工程と、
薬剤に付与された薬剤情報を前記コンピュータが取得する薬剤識別工程と、
前記貯槽情報および前記薬剤情報に基づいて、前記薬剤情報が付された前記薬剤の前記貯槽への投入可否を前記コンピュータが判定する判定工程と、
前記判定工程において前記薬剤を前記貯槽に投入可能だと前記コンピュータが判定したときに、前記投入口を解錠する解錠工程と、
前記施錠装置による施錠の状態を前記コンピュータが確認する確認工程と、
前記コンピュータが前記施錠装置を前記通常モードに移行させる起動工程と、
前記確認工程において前記施錠装置による施錠を確認したときに、前記コンピュータが前記施錠装置を前記省電力モードに移行させる休止工程と、を備える貯槽管理方法。
【請求項9】
貯槽の投入口の施錠装置を管理する貯槽管理プログラムであって、
指定された貯槽に付与された貯槽情報を取得する貯槽識別機能と、
薬剤に付与された薬剤情報を取得する薬剤識別機能と、
前記貯槽情報および前記薬剤情報に基づいて、前記薬剤情報が付された前記薬剤の前記貯槽への投入可否を判定する判定機能と、
前記判定機能によって前記薬剤を前記貯槽に投入可能だと判定したときに、前記施錠装置に前記投入口を解錠させる信号を発信する解錠機能と、
前記施錠装置による施錠の状態を確認する確認機能と、をコンピュータに実現させ、
前記解錠機能によって前記投入口を解錠させる信号を発信した後、前記確認機能によって前記投入口の施錠を確認するまでの間、前記確認機能以外の機能が制限される貯槽管理プログラム。
【請求項10】
貯槽の投入口の施錠装置であって、全ての機能を実現可能な通常モードと、実現可能な機能が制限されるとともに消費電力が抑制される省電力モードと、で運転可能である施錠装置を管理する貯槽管理プログラムであって、
指定された貯槽に付与された貯槽情報を取得する貯槽識別機能と、
薬剤に付与された薬剤情報を取得する薬剤識別機能と、
前記貯槽情報および前記薬剤情報に基づいて、前記薬剤情報が付された前記薬剤の前記貯槽への投入可否を判定する判定機能と、
前記判定機能によって前記薬剤を前記貯槽に投入可能だと判定したときに、前記施錠装置に前記投入口を解錠させる信号を発信する解錠機能と、
前記施錠装置による施錠の状態を確認する確認機能と、
前記施錠装置を前記通常モードに移行させる起動機能と、
前記確認機能によって前記施錠装置による施錠を確認したときに、前記施錠装置を前記省電力モードに移行させる休止機能と、をコンピュータに実現させる貯槽管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を貯留する貯槽を管理する貯槽管理システム、貯槽管理方法、および貯槽管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤を取り扱う作業現場では、薬剤を貯留する貯槽が設置され、当該貯槽から薬剤が供給される場合がある。このような場合に、貯槽に対して正しい薬剤が投入されることは、薬剤を正しく機能させるために重要である。そのため、薬剤の誤投入を防ぐ種々のシステムが提案されている。
【0003】
たとえば特開2005-259161号公報(特許文献1)には、材料に付されたバーコードを読み取るバーコードリーダと、ホッパを閉塞するシャッタとを備え、バーコードリーダの読み取り情報とホッパに供給すべき材料の品種情報とが一致した場合にシャッタを開放する生産ライン管理システムが開示されている。また、特開2023-10043号公報(特許文献2)には、タンクに対する電子錠の取り付けを容易にした誤投入防止システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-259161号公報
【文献】特開2023-10043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2の技術では、システムを構成する装置が貯槽自体に設けられていた。そのため、使用する薬剤が変更される場合などに、柔軟な対応が難しい場合があった。また、管理すべき貯槽の数が比較的多い場合に、装置構成が複雑になったり、一括管理が難しかったりする課題があった。
【0006】
そこで、貯槽とシステムとの関係を固定化せずに貯槽を管理し、誤投入を防止できる貯槽管理システム、貯槽管理方法、および貯槽管理プログラムの実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第一の貯槽管理システムは、貯槽の投入口を施錠する施錠装置と、情報を取得可能な取得ユニット、前記施錠装置と通信可能な通信ユニット、および、演算処理を行う演算ユニット、を有する端末装置と、を備え、前記演算ユニットが、指定された貯槽に付与された貯槽情報を取得する貯槽識別機能と、前記取得ユニットを用いて薬剤に付与された薬剤情報を取得する薬剤識別機能と、前記貯槽情報および前記薬剤情報に基づいて、前記薬剤情報が付された前記薬剤の前記貯槽への投入可否を判定する判定機能と、前記判定機能によって前記薬剤を前記貯槽に投入可能だと判定したときに、前記通信ユニットを用いて、前記施錠装置に前記投入口を解錠させる信号を発信する解錠機能と、前記通信ユニットを用いて、前記施錠装置による施錠の状態を確認する確認機能と、を実現可能であり、前記解錠機能によって前記投入口を解錠させる信号を発信した後、前記確認機能によって前記投入口の施錠を確認するまでの間、前記確認機能以外の機能が制限されることを特徴とする。
本発明に係る第二の貯槽管理システムは、貯槽の投入口を施錠する施錠装置と、情報を取得可能な取得ユニット、前記施錠装置と通信可能な通信ユニット、および、演算処理を行う演算ユニット、を有する端末装置と、を備え、前記施錠装置が、全ての機能を実現可能な通常モードと、実現可能な機能が制限されるとともに消費電力が抑制される省電力モードと、で運転可能であり、前記演算ユニットが、指定された貯槽に付与された貯槽情報を取得する貯槽識別機能と、前記取得ユニットを用いて薬剤に付与された薬剤情報を取得する薬剤識別機能と、前記貯槽情報および前記薬剤情報に基づいて、前記薬剤情報が付された前記薬剤の前記貯槽への投入可否を判定する判定機能と、前記判定機能によって前記薬剤を前記貯槽に投入可能だと判定したときに、前記通信ユニットを用いて、前記施錠装置に前記投入口を解錠させる信号を発信する解錠機能と、前記通信ユニットを用いて、前記施錠装置による施錠の状態を確認する確認機能と、前記通信ユニットを用いて、前記施錠装置を前記通常モードに移行させるとともに、前記端末装置と通信可能な状態にさせる起動機能と、前記確認機能によって前記施錠装置による施錠を確認したときに、前記通信ユニットを用いて、前記施錠装置を前記省電力モードに移行させる休止機能と、を実現可能であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る第一の貯槽管理方法は、施錠装置によって施錠される貯槽の投入口の施錠状態を、コンピュータを用いて管理する貯槽管理方法であって、指定された貯槽に付与された貯槽情報を前記コンピュータが取得する貯槽識別工程と、薬剤に付与された薬剤情報を前記コンピュータが取得する薬剤識別工程と、前記貯槽情報および前記薬剤情報に基づいて、前記薬剤情報が付された前記薬剤の前記貯槽への投入可否を前記コンピュータが判定する判定工程と、前記判定工程において前記薬剤を前記貯槽に投入可能だと前記コンピュータが判定したときに、前記投入口を解錠する解錠工程と、前記施錠装置による施錠の状態を前記コンピュータが確認する確認工程と、を備え、前記解錠工程において前記投入口を解錠した後、前記確認工程において前記投入口の施錠を確認するまでの間、前記コンピュータが前記確認工程以外の工程を実施しないことを特徴とする。
本発明に係る第二の貯槽管理方法は、全ての機能を実現可能な通常モードと、実現可能な機能が制限されるとともに消費電力が抑制される省電力モードと、で運転可能な施錠装置によって施錠される貯槽の投入口の施錠状態を、コンピュータを用いて管理する貯槽管理方法であって、指定された貯槽に付与された貯槽情報を前記コンピュータが取得する貯槽識別工程と、薬剤に付与された薬剤情報を前記コンピュータが取得する薬剤識別工程と、前記貯槽情報および前記薬剤情報に基づいて、前記薬剤情報が付された前記薬剤の前記貯槽への投入可否を前記コンピュータが判定する判定工程と、前記判定工程において前記薬剤を前記貯槽に投入可能だと前記コンピュータが判定したときに、前記投入口を解錠する解錠工程と、前記施錠装置による施錠の状態を前記コンピュータが確認する確認工程と、前記コンピュータが前記施錠装置を前記通常モードに移行させる起動工程と、前記確認工程において前記施錠装置による施錠を確認したときに、前記コンピュータが前記施錠装置を前記省電力モードに移行させる休止工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る第一の貯槽管理プログラムは、貯槽の投入口の施錠装置を管理する貯槽管理プログラムであって、指定された貯槽に付与された貯槽情報を取得する貯槽識別機能と、薬剤に付与された薬剤情報を取得する薬剤識別機能と、前記貯槽情報および前記薬剤情報に基づいて、前記薬剤情報が付された前記薬剤の前記貯槽への投入可否を判定する判定機能と、前記判定機能によって前記薬剤を前記貯槽に投入可能だと判定したときに、前記施錠装置に前記投入口を解錠させる信号を発信する解錠機能と、前記施錠装置による施錠の状態を確認する確認機能と、をコンピュータに実現させ、前記解錠機能によって前記投入口を解錠させる信号を発信した後、前記確認機能によって前記投入口の施錠を確認するまでの間、前記確認機能以外の機能が制限されることを特徴とする。
本発明に係る第二の貯槽管理プログラムは、貯槽の投入口の施錠装置であって、全ての機能を実現可能な通常モードと、実現可能な機能が制限されるとともに消費電力が抑制される省電力モードと、で運転可能である施錠装置を管理する貯槽管理プログラムであって、指定された貯槽に付与された貯槽情報を取得する貯槽識別機能と、薬剤に付与された薬剤情報を取得する薬剤識別機能と、前記貯槽情報および前記薬剤情報に基づいて、前記薬剤情報が付された前記薬剤の前記貯槽への投入可否を判定する判定機能と、前記判定機能によって前記薬剤を前記貯槽に投入可能だと判定したときに、前記施錠装置に前記投入口を解錠させる信号を発信する解錠機能と、前記施錠装置による施錠の状態を確認する確認機能と、前記施錠装置を前記通常モードに移行させる起動機能と、前記確認機能によって前記施錠装置による施錠を確認したときに、前記施錠装置を前記省電力モードに移行させる休止機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とする。
【0010】
これらの構成によれば、指定された貯槽と、薬剤情報を取得された薬剤と、の双方を特定し、これらに基づいて薬剤の貯槽への投入可否を判定して、誤投入を防止できる。また、これらの構成であれば、貯槽とシステムとの関係を固定化する必要がない。第一の貯槽管理システム、貯槽管理方法、および貯槽管理プログラムによれば、たとえば一つの貯槽に対する投入操作が完了するなどして当該貯槽が施錠状態にならない限り他の貯槽を指定した操作を行えないので、薬剤の誤投入が生じにくい。第二の貯槽管理システム、貯槽管理方法、および貯槽管理プログラムによれば、施錠装置の消費電力を低減しうる。
【0011】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0012】
本発明に係る貯槽管理システムは、一態様として、前記演算ユニットが、前記通信ユニットを用いて、前記施錠装置による施錠の状態を確認する確認機能をさらに実現可能であることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、端末装置において施錠装置の施錠状態を把握できる。
【0014】
本発明に係る貯槽管理システムは、一態様として、前記解錠機能によって前記投入口を解錠させる信号を発信した後、前記確認機能によって前記投入口の施錠を確認するまでの間、前記確認機能以外の機能が制限されることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、たとえば一つの貯槽に対する投入操作が完了するなどして当該貯槽が施錠状態にならない限り他の貯槽を指定した操作を行えないので、薬剤の誤投入が生じにくい。
【0018】
本発明に係る貯槽管理システムは、一態様として、前記演算ユニットが、前記貯槽に投入される予定の前記薬剤の量である投入予定量を取得する数量取得機能をさらに実現可能であり、前記判定機能において、前記貯槽情報、前記薬剤情報、および前記投入予定量に基づいて、前記薬剤情報が付された前記薬剤の前記貯槽への投入可否を判定することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、貯槽に投入される薬剤の量を適切に管理できる。
【0020】
本発明に係る貯槽管理システムは、一態様として、前記貯槽が、複数の種類の薬剤を貯留するものであり、前記演算ユニットが、前記薬剤識別機能において、複数の種類の薬剤に付与された薬剤情報をそれぞれ取得し、前記判定機能において、指定された前記貯槽と、前記複数の種類の薬剤からなる組と、の組合せに基づいて、前記薬剤の前記貯槽への投入可否を判定することが好ましい。
【0021】
この構成によれば、一つの貯槽に複数種類の薬剤が投入される場合に、その組合せを適切に維持しやすい。
【0022】
本発明に係る貯槽管理システムは、一態様として、前記通信ユニットが、さらにサーバ装置と通信可能であり、前記演算ユニットが、前記通信ユニットを用いて、前記貯槽情報および前記薬剤情報を前記サーバ装置に送信する送信機能をさらに実現可能であることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、サーバ装置を介して貯槽情報および薬剤情報を利用できるので、たとえば在庫管理が容易になる。
【0024】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第一の実施形態に係る管理システムの使用状況を示す模式図である。
図2】第一の実施形態に係る管理システムの構成を示すブロック図である。
図3】第一の実施形態に係る管理システムが管理対象とする貯槽の側面図である。
図4】第一の実施形態に係る管理方法の手順を示すフロー図である。
図5】第二の実施形態に係る管理システムの使用状況を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第一の実施形態〕
本発明に係る貯槽管理システム、貯槽管理方法、および貯槽管理プログラムの第一の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る貯槽管理システムを、循環式浴槽に設置される殺菌剤供給装置の貯槽10を管理する貯槽管理システム1に適用した例について説明する。ここでは、貯槽10に薬剤Aが貯留されるものとする。
【0027】
(貯槽管理システムの構成)
貯槽管理システム1は、施錠装置2と端末装置3と、を備える(図1)。施錠装置2は貯槽10に設けられており、貯槽10の投入口11を施錠する。貯槽管理システム1は、概して、施錠装置2によって施錠されている各貯槽の投入口の施錠および解錠を、端末装置3を用いて制御することによって、貯槽と投入される薬剤との対応関係が適切であるように管理するシステムである。
【0028】
施錠装置2は、ロック板21と、ロック板21を固定する固定ユニット22と、端末装置3と通信可能な通信ユニット23と、演算ユニット24と、電源ユニット25と、を有する(図2)。施錠装置2は、貯槽10に装着されている。
【0029】
貯槽10の投入口11は、通常時は蓋12によって閉鎖されており、貯槽10に薬剤を投入するときは蓋12を取り外して投入口11を開放する(図3)。蓋12は投入口11に螺合されており、通常時は蓋12の回転を抑止するストッパー13が装着されている。ストッパー13は挿通孔13aを有し、殺菌剤供給装置の本体に設けられた突起部材14が挿通孔13aに挿通されている。突起部材14もまた挿通孔14aを有し、ロック板21に接続されたワイヤWが挿通孔14aに挿通されている。
【0030】
以上の構造により、蓋12の回転がストッパー13によって抑止され、ストッパー13の取り外しがロック板21およびワイヤWによって抑止されている状態が実現される。投入口11を開放するためには、まず固定ユニット22によるロック板21の固定を解除してロック板21およびワイヤWを挿通孔14aから取り外し、次にストッパー13を突起部材14から取り外し、最後に蓋12を回転させて投入口11から取り外す、という手順を経る。
【0031】
固定ユニット22は、ロック板21を固定するものであり、演算ユニット24によって、ロック板21が固定されている施錠姿勢と、ロック板21を取り外すことができる解錠姿勢と、に姿勢変更することができる。その機械的構造は特に限定されないが、たとえば、固定ユニット22が進退可能な棒状部材を有し、ロック板21に設けられた孔に対して当該棒状部材を出し入れする構成によって、施錠および解錠が可能である。この場合は、棒状部材を進退させるサーボモータやピストン等が、固定ユニット22の姿勢変更を実現する具体的な機械装置として実装されうる。
【0032】
施錠姿勢にある固定ユニット22は、演算ユニット24からの制御信号によって、解錠姿勢に姿勢変更する。解錠姿勢にある固定ユニット22に対してロック板21が挿入されると、これを検知した固定ユニット22が施錠姿勢に姿勢変更する。
【0033】
通信ユニット23は、端末装置3と通信可能なユニットであり、この種のユニットとして市販されている装置を使用できる。通信の態様は、ハードウェア、ソフトウェアの両面において限定されないが、利便性の観点から汎用の無線通信規格が採用されることが好ましい。たとえば、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)等の無線通信規格に適合する装置が、通信ユニット23として使用されうる。なお、消費電力を低減する観点から、Bluetooth(登録商標)Law Energy(Bluetooth(登録商標)LE)規格に適合する装置が使用されることが好ましい。
【0034】
演算ユニット24は、固定ユニット22の制御(姿勢変更)や端末装置3との通信など、施錠装置2の機能を実現するための種々の演算処理を行う装置である。演算ユニット24は公知の演算処理装置であってよく、たとえばマイクロコンピュータでありうる。
【0035】
電源ユニット25は、固定ユニット22、通信ユニット23、および演算ユニット24に電力を供給する装置である。電源ユニット25は公知の電源であってよく、たとえば、乾電池等の交換可能な電源であってもよいし、外部電源から電力供給を受けるものであってもよい。なお、貯槽10の設置状況によっては、外部電源からの電力供給が難しい場合があるので、そのような場合は電源ユニット25を電池式とするのがよい。
【0036】
施錠装置2は、全ての機能を実現可能な通常モードと、実現可能な機能が制限されるとともに消費電力が抑制される省電力モードと、で運転可能である。通常は省電力モードによる待機状態を取り、何らかのトリガによって通常モードに移行する。施錠装置2を通常モードに移行させるトリガとしては、施錠装置2に設けられた物理スイッチ(不図示)の操作や、端末装置3からのアクセスなどが例示される。
【0037】
端末装置3は、タッチパネル31と、カメラ32と、通信ユニット33と、演算ユニット34と、を有する。端末装置3の各構成要素としては、それぞれの構成要素として市販されている装置を使用できる。また、上記の構成要素を備える市販の装置を端末装置3として用いてもよく、たとえば、市販のスマートフォンやタブレット端末等を端末装置3として使用できる。これらの例のように、端末装置3を使用者が携帯可能な構成とすると、たとえば一人の使用者が複数の貯槽10を管理する運用を行いやすいため、好ましい。なお、各構成要素の装置としての基本的な構成および機能は、同種の装置として公知のものであるので、ここでは説明を省略する。
【0038】
通信ユニット33は、施錠装置2およびサーバ装置Sと通信可能である。施錠装置2との通信と、サーバ装置Sとの通信と、の方式が異なる場合は、それぞれの方式に対応するモジュールが通信ユニット33に含まれうる。たとえば、Bluetooth(登録商標)LE規格に適合する装置を用いて施錠装置2との通信を行うとともに、WiFi(登録商標)規格に適合する装置を用いてインターネット経由でサーバ装置Sとの通信を行う、といった構成が採用されうる。以上の構成についても、市販のスマートフォン等によって実現可能な範疇にある。
【0039】
(貯槽管理システムの機能)
次に、貯槽管理システム1の機能について説明する。以下では、端末装置3(演算ユニット34)において実現される機能について、主として説明する。なお以下は、貯槽管理システム1を用いて貯槽10の施錠状態を管理する方法の手順に従って、貯槽管理システム1上で動作するプログラムの諸機能を説明するものであり、すなわち、本発明に係る貯槽管理方法および貯槽管理プログラムの実施形態の説明でもある(図4)。
【0040】
前述の通り、貯槽10には薬剤Aが貯留される。ここで貯槽10と薬剤Aとの対応関係を誤り、他の薬剤が貯槽10に投入されると、薬剤同士の思わぬ化学反応が生じるなどして、不具合が生じるおそれがある。そのため貯槽管理システム1は、薬剤の誤投入を防ぐことを主眼として運用される。
【0041】
(1)貯槽識別機能(貯槽識別工程#10)
貯槽識別機能は、演算ユニット34が、指定された貯槽10に付与された貯槽情報を取得する工程である。貯槽情報は、施錠状態の管理が行われる対象となる貯槽10を特定する情報であり、貯槽10の名称や識別記号などでありうる。貯槽10に薬剤Aを投入しようとする使用者は、まず、タッチパネル31に表示される貯槽10を示すアイコンをタッチして、貯槽10に薬剤Aを投入する作業の開始を示す入力操作を行う。この入力操作を介して、施錠状態の管理が行われる対象となる貯槽10が指定され、指定された貯槽10を特定する貯槽情報が取得される。
【0042】
(2)数量取得機能(数量受付工程#20)
数量取得機能は、貯槽10に投入される予定の薬剤の量である投入予定量を取得する機能である。投入予定量の単位は任意であり、薬剤の販売単位の容器(以下、単に「容器」と称する。)の本数などの実操作において管理しやすい単位であってもよいし、体積や重量などの物理量の単位であってもよい。ここでは容器の本数を単位とする例について説明する。
【0043】
貯槽識別機能において行われた入力操作により、貯槽10を示す貯槽情報が取得されている。これに連動して、貯槽10で使用される薬剤としてあらかじめ登録されている薬剤Aが、投入されるべき薬剤として選択された状態になる。タッチパネル31に「薬剤A」の表示とともに、投入される薬剤Aの本数(容器単位で投入される。)の入力欄が表示される。使用者は、タッチパネル31を通じて行う入力操作によって、投入しようとする薬剤Aの本数を当該入力欄に入力する。ここで入力された本数が、投入予定量として取得される。
【0044】
(3)薬剤識別機能(薬剤識別工程#30)
薬剤識別機能は、演算装置が、薬剤に付与された薬剤情報を取得する工程である。薬剤情報は、貯槽10に投入される薬剤を特定する情報である。ここで、薬剤を特定する程度は、貯槽10を管理する目的等によって適宜選択されうる。たとえば、薬剤の種類ごとに異なる薬剤情報を付与する、薬剤のロット番号ごとに異なる薬剤情報を付与する、薬剤の容器ごとに異なる薬剤情報を付与する、などの態様が選択されうる。そして、薬剤識別機能において、薬剤情報によって特定される程度で薬剤が特定される。
【0045】
ここでは、薬剤の容器ごとに異なる薬剤情報が付与されている構成を例として説明する。すなわち、薬剤の種類およびロット番号が同一であっても、容器が異なる場合は異なる薬剤情報が付与されており、容器ごとに個体識別される。
【0046】
薬剤情報は、それぞれの容器のラベルに二次元コードの形式で印刷されている。端末装置3のカメラ32を用いて二次元コードを読み込むと、演算ユニット34が、二次元コードを読み取った容器の薬剤情報を取得する。すなわちここで、カメラ32は、薬剤情報を取得する取得ユニットとして機能している。
【0047】
(4)判定機能(判定工程#40)
判定機能は、薬剤の貯槽10への投入可否を判定する機能である。具体的には、薬剤識別機能において取得された薬剤情報によって特定される薬剤の種類が薬剤Aであり、かつ、当該薬剤情報によって特定される薬剤の量が数量取得機能において取得された投入予定量に適合している場合は、貯槽10に対して用意された薬剤A(薬剤識別機能によって二次元コードを読み取られた薬剤)の投入が可能だと判定する。一方、薬剤の種類および数量の少なくとも一方が適合しない場合は、薬剤の投入が不能だと判定する。
【0048】
引き続き、従前の例に従って具体的に説明する。ここでは、貯槽10が選択され(貯槽識別機能)、薬剤Aの投入予定量が2本であると入力されている(数量取得機能)とする。薬剤識別機能において取得された薬剤情報により特定される薬剤の個体数が1である場合は、必要な数量(2本)に適合しないため、薬剤の投入が不能だと判定される。この場合は、他の容器の読み取りが求められる。また、薬剤情報により特定される薬剤の種類が薬剤Aではない場合は、薬剤情報によって特定される薬剤の種類が貯槽10に投入されるべき薬剤(薬剤A)と適合しないため、薬剤の投入が不能だと判定される。すなわち、薬剤Aの容器が2本用意され、これらの2本の容器の二次元コードがそれぞれ読み取られて、薬剤A2本分の薬剤情報が取得されたときに、薬剤の投入が可能だと判定される。
【0049】
なお、判定の結果が使用者に通知されることが好ましい。通知の方法は、タッチパネル31に判定の結果を表示する方法や、音、光、振動などの手段を用いる方法などでありうる。
【0050】
(5)解錠機能(解錠工程#50)
解錠機能は、通信ユニット33を用いて、施錠装置2に投入口11を解錠させる信号(以下、解錠信号と称する。)を発信する機能である。解錠機能の実現は、判定機能において薬剤の投入が可能だと判定されていることを要する。判定機能において薬剤の投入が不能だと判定されているときは、解錠機能の実現が許可されない。
【0051】
解錠機能において、使用者の操作の要否は任意である。使用者の操作を要する構成とする場合は、判定機能において薬剤の投入が可能だと判定したときに、タッチパネル31に「解錠」ボタンが表示され、使用者がこのボタンに対する入力操作を行ったときに、解錠信号が発信される。使用者の操作を要さない構成とする場合は、判定機能において薬剤の投入が可能だと判定したときに、解錠信号が自動的に発信される。
【0052】
なお、施錠装置2(通信ユニット23)と端末装置3(通信ユニット33)との間に通信を確立するタイミングは限定されないが、たとえば、貯槽識別機能において貯槽10が選択されたとき、薬剤の投入が可能だと判定したとき、解錠機能において解錠信号を発信するとき、などでありうる。なお、薬剤の投入が可能だと判定したときに施錠装置2が省電力モードから通常モードに移行するとともに端末装置3との通信を確立し、その後に解錠信号を発信する構成とすれば、解錠の直前まで施錠装置2を省電力モードで運転できるため、消費電力を低減する観点で有利である。特に、電源ユニット25が電池式である場合は、施錠装置2が省電力モードで運転できることによって施錠装置2の稼働時間を長くしやすい。
【0053】
施錠装置2が解錠信号を受信すると、演算ユニット24は、固定ユニット22を制御して施錠姿勢から解錠姿勢に姿勢変更させる。これによって、投入口11を開放でき、薬剤の投入を実行できる。
【0054】
(6)確認機能(確認工程#60)
確認機能は、通信ユニット33を用いて、施錠装置2による施錠の状態を確認する機能である。確認機能を実現するときは、端末装置3から、施錠装置2の状態を照会する照会信号が発信される。施錠装置2が照会信号を受信すると、演算ユニット24は、固定ユニット22の姿勢(施錠姿勢または解錠姿勢)を示す回答信号を端末装置3に返信する。端末装置3は、受信した回答信号に基づいて施錠装置2による施錠の状態を確認する。
【0055】
引き続き、従前の例に従って具体的に説明する。確認機能によって確認された施錠装置2の状態が解錠状態である場合は、貯槽10に薬剤Aを投入する作業が進行中であり、貯槽10の投入口11が開放され、薬剤Aが取り扱われている状態にある。この状態において、他の貯槽10に対する作業を行なったり、他の種類の薬剤の容器を取り扱う作業を行ったりすると、薬剤の誤投入を引き起こす可能性がある。また、投入口11を閉め忘れることによって、貯槽10に異物が混入するおそれがある。
【0056】
そこで、確認機能において確認された施錠装置2の状態が解錠状態である場合は、確認機能以外の機能が制限される。これによって、薬剤識別機能を実現できないから、他の薬剤を取り扱う必要が生じえず、貯槽10に対して薬剤Aではない薬剤が投入されることを防止しやすい。また、機能が制限されていることをもって使用者が投入口11の閉め忘れに気づくことを期待できる。
【0057】
(7)休止機能(休止工程#70)
休止機能は、通信ユニット33を用いて、施錠装置2を省電力モードに移行させる機能である。確認機能によって、施錠装置2の状態が施錠状態であることを確認したとき、端末装置3は、施錠装置2を省電力モードに移行させる信号を発信する。この信号を受信した施錠装置2は、端末装置3との接続を解除するとともに、省電力モードに移行する。
【0058】
(8)送信機能(送信工程#80)
送信機能は、通信ユニット33を用いて、貯槽情報および薬剤情報をサーバ装置Sに送信する機能である。サーバ装置Sは、貯槽情報および薬剤情報に基づいて、貯槽10に対する薬剤投入作業の履歴を記録する。上記の例であれば、貯槽10に対して薬剤Aが投入された作業につき、作業が実施された日時、ならびに、投入された薬剤Aのロット番号および量(容器の本数)が記録される。なお、休止機能(休止工程#70)と送信機能(送信工程#80)との順序は逆でもよい。また、休止機能の後に送信機能を実現する場合、施錠装置2の省電力モードへの移行の完了を待つことなく、送信機能を実現してもよい。
【0059】
また、サーバ装置Sは、薬剤情報に基づいて、あらかじめ記録されている薬剤の在庫情報を更新する。上記の例であれば、薬剤Aの容器が2本使用されたので、記録上の薬剤Aの在庫量を2本減らす処理を行う。
【0060】
なお、サーバ装置Sは、端末装置3以外の情報端末からもアクセスできる。そのため、他の情報端末から、薬剤投入作業の履歴および薬剤の在庫を確認できる。
【0061】
(貯槽管理システムの作用効果)
本実施形態に係る貯槽管理システム1によれば、貯槽10と薬剤との一対一対応の関係が守られている場合に限って、貯槽10を解錠することができる。そのため、薬剤の誤投入を防ぎやすい。また、薬剤に付与された薬剤情報を読み取って薬剤を識別するので、操作が容易である上、薬剤の取り違えが生じにくい。さらに、薬剤の在庫をサーバ装置S上で管理できるため、適切な時期に薬剤を補充できる。
【0062】
(変形例)
変形例として、貯槽10に薬剤B1と薬剤B2との組が貯留される場合について説明する。この例のように、一つの貯槽10において複数の種類(ここでは二種類)の薬剤が混合され、混合後の薬剤が殺菌剤供給装置に供給される場合がある。
【0063】
この場合の判定機能(判定工程#40)について説明する。ここでは、貯槽10が指定され(貯槽識別機能)、薬剤B1および薬剤B2の投入予定量が各1本であると入力されている(数量取得機能)とする。この場合は、薬剤情報により特定される薬剤の種類の組合せが薬剤B1と薬剤B2との組である場合のみ、貯槽10に投入される薬剤として適合すると判断される。したがって、貯槽10に投入されることが適切ではない薬剤が用意された場合に加えて、適切な薬剤であってもその組合せが不適切である場合(たとえば薬剤B1のみが用意された場合)も、薬剤の投入が不能だと判定される。
【0064】
〔第二の実施形態〕
次に、本発明に係る貯槽管理システム、貯槽管理方法、および貯槽管理プログラムを、三つの貯槽10(10A、10B、10C)の管理に供される貯槽管理システム4に適用した例について説明する。ここでは、管理対象の施設に三系統の循環式浴槽が設置されており、それぞれ個別に殺菌剤供給装置が設置されている構成を例とする。ただし、当該施設の構成は本実施形態の説明のために仮想的に設定したものに過ぎず、本発明を限定しない。三基の殺菌剤供給装置はそれぞれ使用する薬剤の種類が異なり、第一の殺菌剤供給装置の貯槽10Aには薬剤Aが、第二の殺菌剤供給装置の貯槽10Bには薬剤B1および薬剤B2の組が、第三の殺菌剤供給装置の貯槽10Cには薬剤Cが、それぞれ貯留されるものとする。なお、各貯槽10の構成は、いずれも第一の実施形態における貯槽10と同様である。
【0065】
(貯槽管理システムの構成)
貯槽管理システム4の構成は、三つの貯槽10(10A、10B、10C)にそれぞれ装着されている施錠装置2(2A、2B、2C)を備える点において、第一の実施形態に係る貯槽管理システム1と異なる(図5)。なお、施錠装置2および端末装置3の構成は、第一の実施形態と同様である。
【0066】
(貯槽管理システムの機能)
本実施形態では、貯槽10A、貯槽10B、および貯槽10Cと、薬剤A、薬剤B1および薬剤B2の組、ならびに薬剤Cとは、一対一で対応している。貯槽管理システム4は、貯槽10間で薬剤を取り違える等して誤投入が生じることを防ぐ役割を果たす。貯槽管理システム4の各機能は、基本的に第一の実施形態に係る貯槽管理システム1の機能と同様である。以下では、貯槽10の数が異なることに起因する相違点について述べる。
【0067】
貯槽識別機能(貯槽識別工程#10)では、たとえば使用者による入力操作を介して、操作対象の貯槽10を特定する。一例として、タッチパネル31に貯槽10の一覧が表示され、そこから操作対象の特定の貯槽(貯槽10A、貯槽10B、または貯槽10C)を選択する入力操作を使用者が行う態様が例示される。
【0068】
判定機能(判定工程#40)は第一の実施形態と同様である。ただし、貯槽識別機能において特定された貯槽10に従って、判定条件が変化する。本実施形態では、貯槽10Aまたは貯槽10Cが指定された場合は投入されるべき薬剤の種類が一種類であり、判定機能における処理が第一の実施形態に準じたものとなる。一方、貯槽10Bが選択された場合は投入されるべき薬剤の種類が二種類であり、判定機能における処理が第一の実施形態の変形例に準じたものとなる。
【0069】
解錠機能(解錠工程#50)について、本実施形態では、端末装置3と通信可能な施錠装置2が複数存在する可能性がある。その場合は、貯槽識別機能において貯槽情報が取得された貯槽10(たとえば貯槽10B)に装着されている施錠装置2(たとえば施錠装置2B)と端末装置3との間に通信が確立される。すなわち、貯槽識別機能によって取得された貯槽情報が、通信を確立する際に参照されうる。
【0070】
確認機能(確認工程#60)について、本実施形態では、薬剤の取り違えに加えて、貯槽10の取り違えを防ぐ効果も期待できる。すなわち、同時に解錠される貯槽10の数を一つに制限できるので、用意された薬剤が本来投入されるべき貯槽10と異なる貯槽10に投入される事態を避けやすい。
【0071】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る貯槽管理システム、貯槽管理方法、および貯槽管理プログラムのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0072】
上記の各実施形態では、貯槽識別機能において、管理対象の貯槽10を指定する入力操作が行われる構成を例として説明した。しかし本発明において、貯槽が指定される態様は限定されない。たとえば、各貯槽に対して二次元コード等の形態で貯槽情報を付しておき、取得ユニットを用いて当該貯槽情報を読み取ることで貯槽の指定がなされる態様や、端末装置の位置情報に基づいて近傍の貯槽が指定される態様、などが例示される。
【0073】
上記の各実施形態では、薬剤情報が二次元コードの形式で印刷されている構成を例として説明した。しかし本発明において、薬剤に薬剤情報が付される態様は限定されず、たとえば文字列やバーコード等の態様であってもよい。なお、取得ユニットの構成は、薬剤情報の態様に応じて適宜選択されうる。
【0074】
上記の各実施形態では、判定機能において薬剤の種類および数量に基づいて薬剤の投入可否を判定する構成を例として説明した。しかし本発明において、判定基準として用いられる薬剤情報の種類は限定されない。たとえば、薬剤の種類のみを判定に用いてもよい。
【0075】
上記の各実施形態では、確認機能において施錠状態が確認されるまで他の機能が制限される構成を例として説明した。しかし本発明において、確認機能の実施可否は任意である。たとえば貯槽の設置状況や使用される薬剤などの関係で、確認機能を省略する不利益が限定的である場合は、確認機能は省略されうる。また、確認機能が実施可能である場合についても、機能制限の可否は任意である。
【0076】
上記の各実施形態では、施錠装置2のロック板21および固定ユニット22の働きによって、貯槽10の投入口11がワイヤWを用いて施錠される構成を例として説明した。しかし本発明において、施錠装置が貯槽の投入口を施錠する機械的構成は限定されず、上記のワイヤを用いた例のほか、たとえば、開閉状態が電子的に制御される南京錠様ものや、進退状態が電子的に制御されるピストン様のものなど、が例示される。施錠装置の態様は、貯槽の投入口の形状や投入口の付近に施錠装置を設置する際の構造的制約などに応じて適宜選択されうる。
【0077】
上記の各実施形態では、施錠装置2が通常モードと省電力モードとで運転可能であり、端末装置3との通信によって運転モードが切り替えられる構成を例として説明した。しかし本発明において、施錠装置の運転モードの切替可否は任意である。
【0078】
上記の各実施形態では、貯槽情報および薬剤情報がサーバ装置Sに送信される構成を例として説明した。しかし本発明において、送信機能の実施可否は任意である。
【0079】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、たとえば殺菌剤供給装置の貯槽の管理に利用できる。
【符号の説明】
【0081】
1 :貯槽管理システム(第一の実施形態)
4 :貯槽管理システム(第二の実施形態)
2 :施錠装置
21 :ロック板
22 :固定ユニット
23 :通信ユニット
24 :演算ユニット
25 :電源ユニット
3 :端末装置
31 :タッチパネル
32 :カメラ
33 :通信ユニット
34 :演算ユニット
S :サーバ装置
10 :貯槽
11 :投入口
12 :蓋
13 :ストッパー
13a :挿通孔
14 :突起部材
14a :挿通孔
W :ワイヤ
【要約】
【課題】貯槽とシステムとの関係を固定化せずに貯槽を管理し、誤投入を防止する。
【解決手段】貯槽の投入口を施錠する施錠装置2と、情報を取得可能な取得ユニット32、施錠装置2と通信可能な通信ユニット33、および、演算処理を行う演算ユニット34、を有する端末装置3と、を備え、演算ユニット34が、指定された貯槽に付与された貯槽情報を取得する貯槽識別機能と、取得ユニット32を用いて薬剤に付与された薬剤情報を取得する薬剤識別機能と、貯槽情報および薬剤情報に基づいて、薬剤情報が付された薬剤の貯槽への投入可否を判定する判定機能と、判定機能によって薬剤を貯槽に投入可能だと判断したときに、通信ユニットを用いて、施錠装置2に投入口を解錠させる信号を発信する解錠機能と、を実現可能である。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5