(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】多剤式化粧料、及び多剤式化粧料を用いた美容方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20230814BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230814BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230814BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20230814BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230814BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/73
A61Q5/00
A61Q7/00
A61Q19/00
A61K8/02
(21)【出願番号】P 2019123381
(22)【出願日】2019-07-02
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100165685
【氏名又は名称】田中 信治
(72)【発明者】
【氏名】荒木 健志
(72)【発明者】
【氏名】川越 紘
(72)【発明者】
【氏名】小林 典史
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190290(JP,A)
【文献】特開2006-282532(JP,A)
【文献】特開2008-297295(JP,A)
【文献】特開2019-073467(JP,A)
【文献】特開2011-195553(JP,A)
【文献】特開2011-195554(JP,A)
【文献】特開2014-129267(JP,A)
【文献】ID 325775,Mintel GNPD[online]
【文献】ID 1444088,Mintel GNPD
【文献】ID 1711683,Mintel GNPD
【文献】ID 1735151,Mintel GNPD
【文献】ID 1088339,Mintel GNPD
【文献】ID 1355774,Mintel GNPD
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
KOSMET(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルピロリドン、ポリクオタニウム-51、
カチオン化セルロース、及び、ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩の群から選ばれる1種又は2種以上が配合されたA剤と、
ポリクオタニウム-65が配合されたB剤と、を含む多剤式化粧料。
【請求項2】
前記A剤に少なくともポリビニルピロリドンが配合されたものであるか、又は、前記A剤に少なくともポリクオタニウム-51が配合されたものである、請求項1に記載の多剤式化粧料。
【請求項3】
前記A剤に、0.01質量%以上のポリビニルピロリドン、0.01質量%以上のポリクオタニウム-51、0.01質量%以上のビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、又は、0.01質量%以上のカチオン化セルロースの少なくともいずれかが配合され、
前記B剤に、0.01質量%以上のポリクオタニウム-65が配合されたものである、請求項1又は2に記載の多剤式化粧料。
【請求項4】
前記A剤の使用と前記B剤の使用との間に他の剤が使用されないものである請求項1
~3のいずれか1項に記載の多剤式化粧料。
【請求項5】
前記多剤式化粧料が毛髪及び/又は頭皮に用いられるものである請求項1~
4のいずれか1項に記載の多剤式化粧料。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の多剤式化粧料を用いた美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多剤式化粧料、及び多剤式化粧料を用いた美容方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧料は、各消費者の必要や好みに応じて選択されるものであり、その用途や目的に合わせて様々な種類が提供されている。化粧料の例としては、単剤で用いられる1剤式化粧料や、複数の構成剤を含む多剤式化粧料が知られている。
【0003】
多剤式化粧料は、複数の構成剤を用いることで、1剤式化粧料に比べて所望の効果をより向上させることや、その効果の持続を目的として用いられることがある。また、多剤式化粧料は、複数の構成剤を使用するため、1剤式化粧料よりも使用する際の施術時間が長くなり、手間がかかる傾向にあるが、そのような手間によって被験者の得られる施術の満足感を向上させるという利点を有している。
【0004】
多剤式化粧料の一例をあげると、例えば、特開2008-137995号公報(特許文献1)には、所定量の四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、アミノ変性シリコーン、ジアルキルエーテル、及び水を含有するI剤と、所定量の酸類、多価アルコール、及び水を含有するII剤を含む毛髪化粧料により、毛髪の根本から毛先まで均一に優れた滑らかさ等が付与できる毛髪化粧料を提供する技術が提案されている。また、特開2002-363055号公報(特許文献2)には、所定量のアルギン酸及び/又はその水可溶性塩を含む組成物とカルシウムの塩を含む組成物の2種の組成物を含有する多剤混合型パック化粧料により、使用性と使用感に優れたエステティックのパック化粧料を提供する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-137995号公報
【文献】特開2002-363055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、多剤式化粧料は、求める効果によって様々なものが提供されており、多剤式化粧料の使用方法や、多剤式化粧料における構成剤の剤型や配合させる成分等に特徴を持たせている。そのような現状においても、新たな多剤式化粧料を求める消費者の要望が依然として存在する。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、新規の多剤式化粧料を提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、上記新規の多剤式化粧料を用いた美容方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、ポリビニルピロリドン、ポリクオタニウム-51、及びカチオン性高分子の群から選ばれる1種又は2種以上と、ポリクオタニウム-65とを接触させると、複合体を生成するという知見を新たに得た。
さらに、本発明者らは、上記知見を踏まえて多剤式化粧料の開発を進めたところ、ポリビニルピロリドン、ポリクオタニウム-51、及びカチオン性高分子の群から選ばれる1種又は2種以上が配合された剤と、ポリクオタニウム-65が配合された他の剤とを含む多剤式化粧料とすれば、複合体が生成可能な新規の多剤式化粧料が提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る多剤式化粧料は、ポリビニルピロリドン、ポリクオタニウム-51、及びカチオン性高分子の群から選ばれる1種又は2種以上が配合されたA剤と、ポリクオタニウム-65が配合されたB剤と、を含む多剤式化粧料である。これにより、複合体を生成可能な新規の多剤式化粧料が提供できる。
【0010】
本発明に係る多剤式化粧料は、より均一な複合体を生成させることが可能となるため、前記A剤に少なくともポリビニルピロリドンが配合されたものであるか、又は、前記A剤に少なくともポリクオタニウム-51が配合されたものが好ましい。
【0011】
本発明に係る多剤式化粧料は、複合体の生成がより促進されるため、前記A剤の使用と前記B剤の使用との間に他の剤が使用されないものが好ましい。
【0012】
本発明に係る多剤式化粧料は、例えば、前記多剤式化粧料が毛髪及び/又は頭皮に用いられるものである。
【0013】
また、本発明の美容方法は、ポリビニルピロリドン、ポリクオタニウム-51、及びカチオン性高分子の群から選ばれる1種又は2種以上が配合されたA剤と、ポリクオタニウム-65が配合されたB剤と、を含む多剤式化粧料を用いた美容方法である。これにより、複合体を生成可能な多剤式化粧料を用いた美容方法が提供できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る多剤式化粧料によれば、複合体を生成可能な新規の多剤式化粧料を提供することができる。また、本発明に係る美容方法によれば、複合体を生成可能な新規の多剤式化粧料を用いた美容方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1~4、比較例1、2の各A剤及び各B剤を混合した後の写真
【
図2】比較例3~5の各A剤及び各B剤を混合した後の写真
【
図3】実施例1、比較例6~8の各A剤及び各B剤を混合した後の写真
【
図4】実施例1、5、6の各A剤及び各B剤を混合した後の写真
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態(以下、本実施形態)に基づき、本発明を以下に説明する。
【0017】
本実施形態に係る多剤式化粧料は、ポリビニルピロリドン、ポリクオタニウム-51、及びカチオン性高分子の群から選ばれる1種又は2種以上が配合されたA剤と、ポリクオタニウム-65が配合されたB剤と、を含むものである。
【0018】
本実施形態の多剤式化粧料において、A剤に配合されたポリビニルピロリドン、ポリクオタニウム-51、及びカチオン性高分子の群から選ばれる1種又は2種以上と、B剤に配合されたポリクオタニウム-65とが多剤式化粧料の使用の際に接触することで複合体を生成することが可能になる。上記複合体は、適用部位(例えば、毛髪、頭皮又は皮膚)に付着し、適用部位において含水性のある皮膜を形成することができるため、適用部位の保湿性を高めることができると考えられる。また、上記複合体が適用部位に付着することで、上記適用部位の保湿性の持続に寄与すると考えられる。そのため、本実施形態の多剤式化粧料を毛髪、頭皮又は皮膚に使用すれば、保湿性の向上とその持続が可能となる。
上記複合体が生成する理由は明らかではないが、A剤に配合されたポリビニルピロリドン、ポリクオタニウム-51、及びカチオン性高分子の群から選ばれる1種又は2種以上と、B剤に配合されたポリクオタニウム-65との静電気的な相互作用に起因する可能性が考えられる。
【0019】
[A剤]
本実施形態の多剤式化粧料におけるA剤は、ポリビニルピロリドン、ポリクオタニウム-51、及びカチオン性高分子の群から選ばれる1種又は2種以上、並びに水(水の配合量は、例えば、65質量%以上95質量%以下)が配合されたものである。
なお、より均一な複合体を生成させる観点から、前記A剤に少なくともポリビニルピロリドンが配合されたものであるか、又は、前記A剤に少なくともポリクオタニウム-51が配合されたものが好ましい。
【0020】
(ポリビニルピロリドン)
本実施形態のA剤に配合されるポリビニルピロリドンは、1-ビニル-2-ピロリドン(VP)の重合体である。上記ポリビニルピロリドンは、市販品を用いることができる。
【0021】
上記ポリビニルピロリドンは、特に限定されないが、例えば、重量平均分子量が9,000以上のものを用いることができる。なお、上記ポリビニルピロリドンとして、重量平均分子量が40,000以上のものを用いると、毛髪、頭皮又は皮膚に対してより含水性に優れた皮膜を形成できるため、好ましい。
また、上記ポリビニルピロリドンは、例えば、重量平均分子量が5,000,000以下のものを用いることができる。
【0022】
上記ポリビニルピロリドンは、例えば、ポリビニルピロリドンの10質量%水溶液における粘度の値が、40mPa・s以上1000mPa・s以下であるものを用いることができる(増粘に優れる複合体を生成させる観点から、好ましくは100mPa・s以上1000mPa・s以下)。
なお、上記「粘度」の値は、応力制御型レオメーター(例えば、HAAKE社製「Rheo Stress 6000」)を使用し、測定温度:25℃、コーンプレートセンサーの直径:35mm、コーンプレートセンサーの傾斜角:2°とし、応力依存モードで、応力:0.1Paから3000PaまでのG’を測定し(データ間隔:30ポイント)、応力(τ)が2.4PaのときのG’として求められる値を意味する(本明細書の「発明を実施するための形態」において、以下に記載される粘度の値についても同様の意味で用いる)。
【0023】
本実施形態のA剤におけるポリビニルピロリドンの配合量は、特に限定されない。配合量の下限値としては、生成した複合体による毛髪、頭皮又は皮膚への皮膜形成がより優れたものとなる観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。また、ポリビニルピロリドンの配合量の上限値としては、毛髪、頭皮又は皮膚のべたつきを抑える観点から、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
【0024】
(ポリクオタニウム-51)
本実施形態のA剤に配合されるポリクオタニウム-51は、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸ブチルとの重合体である。上記ポリクオタニウム-51は、市販品を用いることができる。
【0025】
上記ポリクオタニウム-51は、例えば、ポリクオタニウム-51の5質量%水溶液における粘度の値が、10mPa・s以上1000mPa・s以下であるものを用いることができる。
【0026】
本実施形態のA剤におけるポリクオタニウム-51の配合量は、特に限定されない。配合量の下限値としては、生成した複合体による毛髪、頭皮又は皮膚への皮膜形成がより優れたものとなる観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。また、ポリクオタニウム-51の配合量の上限値としては、毛髪、頭皮又は皮膚のべたつきを抑える観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0027】
(カチオン性高分子)
本実施形態のA剤に配合されるカチオン性高分子は、陽イオン化する置換基を有する高分子であり、その置換基は、アミノ基、アンモニウム基等がある。上記カチオン性高分子は、市販品を用いることができる。
本実施形態のA剤に配合されるカチオン性高分子としては、カチオン性多糖類又はカチオン性モノマー由来の構造単位を含むカチオン性高分子が挙げられる。
【0028】
カチオン性多糖類としては、例えば、ポリクオタニウム-4(塩化ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム)、ポリクオタニウム-10(塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース)等のカチオン化セルロース;グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド等のカチオン化グアーガム;カチオン化ローカストビーンガム;カチオン化カッシア;カチオン化フェヌグリークガム;カチオン化タラガム;カチオン化デンプン;が挙げられる。
【0029】
カチオン性モノマー由来の構造単位を含むカチオン性高分子におけるカチオン性モノマーとしては、例えば、塩化ジメチルジアリルアンモニウム、塩化ジエチルジアリルアンモニウム、塩化(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリル酸ジエチルの硫酸塩(硫酸塩として、例えばジエチル硫酸)、塩化2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム、塩化(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、塩化(メタ)アクリル酸エチルトリメチルアンモニウム、塩化(メタ)アクリル酸アミドプロピルラウリルジモニウム等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリルアミドは、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、アクリル酸アミドとメタクリル酸アミドの混合物のいずれかを意味する。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸の混合物のいずれかを意味する。(メタ)アクリロイルは、アクリロイル基含有、メタクリロイル基含有、メタクリロイル基含有とメタクリロイル基含有のいずれかを意味する。
【0030】
カチオン性モノマー由来の構造単位を含むカチオン性高分子としては、例えば、ポリクオタニウム-6等のポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム;ポリクオタニウム-7等の塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体;ポリクオタニウム-11等のビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩;ポリクオタニウム-16等のビニルピロリドン・メチルビニルイミダゾリウム共重合体;ポリクオタニウム-52等のエチル[(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニウムエチル硫酸塩・N,N-ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体;が挙げられる。
【0031】
上記カチオン性高分子は、例えば、カチオン性高分子の5質量%水溶液における粘度の値が5mPa・s以上100,000mPa・s以下であるものを用いることができる。
【0032】
本実施形態のA剤に配合されるカチオン性高分子として、例えば、カチオン化セルロース、及びビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩の群から選ばれる1種以上を用いてよい。
上記カチオン化セルロースとしては、例えば、カチオン化セルロースの5質量%水溶液における粘度の値が10mPa・s以上100,000mPa・s以下であるものを用いることができる。また、ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩としては、例えば、ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩の10質量%水溶液における粘度の値が10mPa・s以上100,000mPa・s以下であるものを用いることができる。
【0033】
本実施形態のA剤におけるカチオン性高分子の配合量は、特に限定されない。A剤に配合されるカチオン性高分子の配合量の下限値としては、生成した複合体による毛髪、頭皮又は皮膚への皮膜形成がより優れたものとなる観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。また、カチオン性高分子の配合量の上限値としては、毛髪、頭皮又は皮膚のべたつきを抑える観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0034】
(A剤の任意成分)
本実施形態のA剤に配合される任意成分(但し、ポリビニルピロリドン、ポリクオタニウム-51、及びカチオン性高分子を除く)は、化粧料に配合可能な公知の成分から、多剤式化粧料の用途、目的に応じて適宜に選定される。上記成分としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、アルコール、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤(例えば、フェノキシエタノール等)、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0035】
(A剤の剤型)
本実施形態のA剤の剤型については、特に制限はなく、液状、クリーム状、ゲル状、ローション状、スプレー状、フォーム状等の各種の剤型とすることができる。
【0036】
(A剤の粘度)
本実施形態のA剤の粘度は、A剤の剤型等に応じて適宜設定すればよい。A剤の粘度は、特に限定されないが、例えば、1mPa・s以上5,000,000mPa・s以下である。
【0037】
(A剤のpH)
本実施形態のA剤のpHは、A剤の剤型等に応じて適宜設定すればよい。A剤のpHは、特に限定されないが、例えば、4以上7以下である。なお、上記pHの値は、pHメーターを用いて25℃で測定した際の測定値を意味する。
【0038】
[B剤]
本実施形態の多剤式化粧料におけるB剤は、ポリクオタニウム-65、及び水(水の配合量は、例えば、70質量%以上95質量%以下)が配合されたものである。
【0039】
(ポリクオタニウム-65)
本実施形態のB剤に配合されるポリクオタニウム-65は、メタクリロイルオキシエチレンホスホリルコリン、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸ナトリウムからなる第4級アンモニウム塩である。上記ポリクオタニウム-65は、市販品を用いることができる。
【0040】
上記ポリクオタニウム-65は、例えば、ポリクオタニウム-65の5質量%水溶液における粘度の値が10mPa・s以上100mPa・s以下であるものを用いることができる。
【0041】
本実施形態のB剤におけるポリクオタニウム-65の配合量は、特に限定されない。B剤に配合されるポリクオタニウム-65の配合量の下限値としては、生成した複合体による毛髪、頭皮又は皮膚への皮膜形成がより優れたものとなる観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。また、ポリクオタニウム-65の配合量の上限値としては、毛髪、頭皮又は皮膚のべたつきを抑える観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0042】
(B剤の任意成分)
本実施形態のB剤に配合される任意成分(但し、ポリクオタニウム-65を除く)は、化粧料に配合可能な公知の成分から、多剤式化粧料の用途、目的に応じて適宜に選定される。上記成分としては、例えば、アニオン界s面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、アルコール、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤(例えば、フェノキシエタノール等)、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0043】
(B剤の剤型)
本実施形態のB剤の剤型については、特に制限はなく、液状、クリーム状、ゲル状、ローション状、スプレー状、フォーム状等の各種の剤型とすることができる。
【0044】
(B剤の粘度)
本実施形態のB剤の粘度は、B剤の剤型等に応じて適宜設定すればよい。B剤の粘度については、特に限定されないが、例えば、1mPa・s以上5,000,000mPa・s以下である。
【0045】
(B剤のpH)
本実施形態のB剤のpHは、B剤の剤型等に応じて適宜設定すればよい。B剤のpHは、特に限定されないが、例えば、4以上7以下である。なお、上記pHの値は、pHメーターを用いて25℃で測定した際の測定値を意味する。
【0046】
[多剤式化粧料]
本実施形態の多剤式化粧料は、ポリビニルピロリドン、ポリクオタニウム-51、及びカチオン性高分子の群から選ばれる1種又は2種以上が配合されたA剤と、ポリクオタニウム-65が配合されたB剤と、を含むものである。
本実施形態の多剤式化粧料は、上記のA剤及びB剤から構成される2剤式化粧料としてもよく、多剤式化粧料の構成剤が上記のA剤及びB剤に加えて1又は2以上の別の剤を含む3剤式以上の多剤式化粧料(例えば、3剤式化粧料、4剤式化粧料等)としてもよい。なお、本実施形態の多剤式化粧料は、複合体の生成をより促進させる観点から、1又は2以上の別の剤を含まない2剤式化粧料が好ましい。
また、本実施形態の多剤式化粧料は、多剤式化粧料の使用前に1又は2以上の前処理剤を用いたものとしてよく、多剤式化粧料の使用後に1又は2以上の後処理剤を用いてもよく、上記の1又は2以上の前処理剤と1又は2以上の後処理剤との両方を用いたものとしてもよい。上記の前処理剤及び/又は後処理剤は、化粧料に使用可能な公知の成分を配合した剤を適宜設定することができる。
【0047】
(使用方法)
本実施形態の多剤式化粧料の使用方法は、多剤式化粧料における公知の使用方法を採用することができる。例えば、適用対象(例えば、毛髪、頭皮又は皮膚等)に応じて、適量のA剤及びB剤を適用対象に塗布する等により使用することができる。
【0048】
(2剤式化粧料の使用方法)
本実施形態の多剤式化粧料が2剤式化粧料である場合は、A剤とB剤の使用順は特に限定されない。そのため、A剤の使用後にB剤を使用する多剤式化粧料であって良く、B剤の使用後にA剤を使用する多剤式化粧料であって良い。使用態様としては、A剤及びB剤のいずれも使用後に洗い流す態様であって良く、A剤及びB剤のいずれも使用後に洗い流さない態様であっても良く、A剤又はB剤の一方が使用後に洗い流さない態様であり、他方の使用後に洗い流す態様であっても良い。なお、複合体の生成をより促進させる観点から、A剤又はB剤の一方を使用した後に洗い流さずに他方を使用した後に洗い流す態様、又は、A剤及びB剤のいずれも使用後に洗い流さない態様が好ましい。
【0049】
また、本実施形態の多剤式化粧料は、事前にA剤及びB剤を用時混合してから使用する2剤式化粧料であっても良い。使用態様としては、用時混合されたA剤とB剤との混合後の剤を使用した後において、使用後に洗い流す態様であっても良く、使用後に洗い流さない態様であっても良い。
【0050】
(3剤式以上の多剤式化粧料の使用方法)
本実施形態の多剤式化粧料が、A剤及びB剤に加えて1又は2以上の別の剤を含む3剤式以上の多剤式化粧料である場合は、各構成剤(A剤、B剤、1又は2以上の別の剤)の使用順は特に限定されない。使用態様としては、例えば、以下の(ア)~(ウ)が挙げられる。
(ア)A剤の使用後にB剤を使用する場合において、B剤の使用前に1又は2以上の別の剤を使用する態様。
(イ)B剤の使用後にA剤を使用する場合において、A剤の使用前に1又は2以上の別の剤を使用する態様。
(ウ)事前にA剤、B剤及び1又は2以上の別の剤を用時混合してから使用する態様。
【0051】
なお、上記(ア)、(イ)の使用態様における各構成剤の使用後は洗い流してもよく、又は洗い流さなくてもよい。複合体の生成をより促進させる観点から、上記(ア)の使用態様の場合において、A剤の使用後及び1又は2以上の別の剤の使用後は洗い流さずにB剤の使用後に洗い流す又は洗い流さない態様が好ましい。同様の観点から、上記(イ)の使用態様の場合において、B剤の使用後及び1又は2以上の別の剤の使用後は洗い流さずにA剤の使用後に洗い流す又は洗い流さない態様が好ましい。
なお、上記(ウ)の使用態様においては、用時混合されたA剤とB剤と1又は2以上の別の剤を混合した後の剤を使用した後において、使用後に洗い流す使用態様であっても良く、使用後に洗い流さない使用態様であっても良い。
【0052】
(用途)
本実施形態の多剤式化粧料の用途は、化粧目的に用いるものであれば、特に限定されない。そのため、毛髪、頭皮、皮膚(頭皮を除く)を適用対象とすることができる。
【0053】
本実施形態の多剤式化粧料は、毛髪及び/又は頭皮に用いられるものであっても良い。なお、「及び/又は」とは、両方又はいずれか一方を意味する(以下の記載においても同じ)。
毛髪及び/又は頭皮に用いられる多剤式化粧料として、例えば、多剤式のヘアケア剤、多剤式のスカルプケア剤、多剤式のスタイリング剤、多剤式のヘアカラーリング剤、多剤式のブリーチ剤、多剤式のパーマ剤、多剤式の育毛剤等が挙げられる。
【0054】
上記多剤式のヘアケア剤は毛髪の手入れ、手当て等を行うために用いられるものである。なお、多剤式のヘアケア剤は、パーマ、カラーリング又はブリーチの前処理又は後処理のために用いてもよい。
多剤式のヘアケア剤としては、例えば、A剤及びB剤が、ヘアシャンプー、洗い流すヘアトリートメント(ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアパック、ヘアマスク、スタイリング兼用トリートメントも含む)、洗い流さないヘアトリートメント(スタイリング兼用リーブオントリートメントも含む)の群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる(なお、A剤及びB剤以外の他の剤を含む場合において、他の剤は上記群から任意に選ばれる)。多剤式のヘアケア剤におけるA剤、B剤としては、例えば、以下の[1a]~[1i]が挙げられる。
[1a]A剤及びB剤がいずれもヘアシャンプー
[1b]A剤がヘアシャンプー、B剤が洗い流すヘアトリートメント
[1c]A剤がヘアシャンプー、B剤が洗い流さないヘアトリートメント
[1d]A剤が洗い流すヘアトリートメント、B剤がヘアシャンプー
[1e]A剤及びB剤がいずれも洗い流すヘアトリートメント
[1f]A剤が洗い流すヘアトリートメント、B剤が洗い流さないヘアトリートメント
[1g]A剤が洗い流さないヘアトリートメント、B剤がヘアシャンプー
[1h]A剤が洗い流さないヘアトリートメント、B剤が洗い流すヘアトリートメント
[1i]A剤及びB剤がいずれも洗い流さないヘアトリートメント
【0055】
上記多剤式のスカルプケア剤は頭皮の手入れ、状態改善等を行うために用いられるものである。多剤式のスカルプケア剤としては、例えば、A剤及びB剤が、頭皮用シャンプー、洗い流す頭皮用トリートメント(頭皮用リンス、頭皮用コンディショナー、頭皮用パック、頭皮用マスクも含む)、洗い流さない頭皮用トリートメントの群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる(なお、A剤及びB剤以外の他の剤を含む場合において、他の剤は上記群から任意に選ばれる)。多剤式のスカルプケア剤におけるA剤、B剤としては、例えば、以下の[2a]~[2i]が挙げられる。
[2a]A剤及びB剤がいずれも頭皮用シャンプー
[2b]A剤が頭皮用シャンプー、B剤が洗い流す頭皮用トリートメント
[2c]A剤が頭皮用シャンプー、B剤が洗い流さない頭皮用トリートメント
[2d]A剤が洗い流す頭皮用トリートメント、B剤が頭皮用シャンプー
[2e]A剤及びB剤がいずれも洗い流す頭皮用トリートメント
[2f]A剤が洗い流す頭皮用トリートメント、B剤が洗い流さない頭皮用トリートメント
[2g]A剤が洗い流さない頭皮用トリートメント、B剤が頭皮用シャンプー
[2h]A剤が洗い流さない頭皮用トリートメント、B剤が洗い流す頭皮用トリートメント
[2i]A剤及びB剤がいずれも洗い流さない頭皮用トリートメント
【0056】
本実施形態の毛髪及び/又は頭皮に用いられる多剤式化粧料として、毛髪の手入れ、手当て等を行うヘアケア剤と頭皮の手入れ、状態改善等を行うスカルプケア剤の両方を兼ねるものであってもよい。そのため、本実施形態の多剤式化粧料は、多剤式のヘアケア剤及びスカルプケア剤とすることができる。
【0057】
上記多剤式のスタイリング剤は、髪型を一時的に保持するために用いられるものである。多剤式のスタイリング剤としては、例えば、A剤及びB剤が、ヘアスプレー、ヘアミスト、ムース、フォーム、ヘアジェル、セットローション、ヘアクリーム、ヘアワックスの剤型から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる(なお、A剤及びB剤以外の他の剤を含む場合において、他の剤は上記剤型から任意に選ばれる)。
【0058】
上記多剤式のヘアカラーリング剤は、毛髪を着色するために用いられるものである。ヘアカラーリング剤としては、例えば、直接染料が配合された染毛料、毛髪の染毛時に反応が必要になる反応型染料が配合された染毛剤、毛髪への着色を一時的に施す毛髪着色料が挙げられる。なお、直接染料および反応型染料が配合されたものは染毛料および染毛剤の双方に該当するから、ヘアカラーリング剤における染毛料と染毛剤の分類は便宜的なものである。例えば、多剤式のヘアカラーリング剤を、酸化染料およびアルカリ剤が配合された第1剤と、酸化剤が配合された第2剤とが毛髪への使用直前に混合されて調製される2剤式の染毛剤にする場合には(この場合、第1剤と第2剤の混合比は、例えば、第1剤:第2剤=1質量部:0.3~3質量部)、A剤は酸化染料およびアルカリ剤が配合された第1剤又は酸化剤が配合された第2剤の一方であってよく、B剤がその他方であってよい。
【0059】
上記多剤式のブリーチ剤は、毛髪の色素を脱色させるために用いられるものである。例えば、上記多剤式のブリーチ剤を2剤式のブリーチ剤とする場合には、A剤はアルカリ剤が配合された第1剤又は酸化剤が配合された第2剤の一方であってよく、B剤がその他方であってよい。
【0060】
上記多剤式のパーマ剤は、還元反応、酸化反応等の化学反応を利用して毛髪形状を変化させるために用いられるものである。多剤式のパーマ剤としては、例えば、毛髪をウェーブ状に形成するためのウェーブ剤、ウェーブ状等の毛髪を直毛に近づけるためのストレート剤が挙げられる。例えば、上記多剤式のパーマ剤を2剤式のパーマ剤とする場合には、A剤は還元剤が配合された第1剤又は酸化剤が配合された第2剤の一方であってよく、B剤がその他方であってよい。
【0061】
上記多剤式の育毛剤は、発毛、育毛促進または脱毛防止のために用いられるものである。
多剤式の育毛剤としては、例えば、A剤及びB剤が、育毛用ローション、育毛用シャンプー、育毛用トリートメントの群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる(なお、A剤及びB剤以外の他の剤を含む場合において、他の剤は上記群から任意に選ばれる)。
【0062】
本実施形態の多剤式化粧料は、皮膚(頭皮を除く)に用いられるものであっても良い。
皮膚に用いられる多剤式化粧料として、例えば、多剤式のスキンケア剤が挙げられる。多剤式のスキンケア剤としては、A剤及びB剤が、例えば、洗顔料、ボディシャンプー、クレンジング料、化粧水、美容液、乳液、ジェル、クリーム、化粧オイル、パック、マスクの群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる(なお、A剤及びB剤以外の他の剤を含む場合において、他の剤は上記群から任意に選ばれる)。
【0063】
(製造方法)
本実施形態の多剤式化粧料の製造方法は、A剤及びB剤の剤型に応じた公知の化粧料の製法を採用すれば、本実施形態の多剤式化粧料に係るA剤及びB剤を製造できる。また、本実施形態の多剤式化粧料に、A剤及びB剤だけでなく、A剤及びB剤以外の他の剤を含む場合であっても、公知の化粧料の製法を採用して前記他の剤を製造すればよい。
【0064】
[美容方法]
本実施形態に係る美容方法としては、美容目的で適用対象(例えば、毛髪、頭皮又は皮膚等)に多剤式化粧料に用いる方法である。
【実施例】
【0065】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0066】
(多剤式化粧料の調製:実施例1~6及び比較例1~8)
実施例1~6及び比較例1~8における各A剤、各B剤を、表1~4に示す組成となるように各成分を混合して調製した。なお、表中のA剤及びB剤の欄における数値は質量%であり、「―」は未配合であることを示す。
【0067】
なお、表1~4に示す実施例1のA剤に配合されたポリビニルピロリドン(※1)、表4に示す実施例5、6の各A剤に用いたポリビニルピロリドン(※2)、ポリビニルピロリドン(※3)は、10質量%水溶液としたときの粘度が異なるポリビルピロリドンを用いた(粘度の値については表1~4におけるA剤の粘度を参照)。また、表2における比較例10のB剤に配合したポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸Na(2E.O.)の2E.O.の表記は酸化エチレンの平均付加モル数が2であることを示す。
【0068】
(官能評価)
実施例1~6及び比較例1~8の多剤式化粧料を用いて、次に示す評価方法及び評価基準に従い、「複合体の生成」、「混合後の剤の均一性」、「混合後の剤の粘着性」について官能評価を行った。
【0069】
(評価手順)
上記で調製した実施例1~6及び比較例1~8の各A剤及び各B剤を用いて、各A剤、各B剤をそれぞれ0.5g測りとり、別々のビニールラップの上に置いた。次に、実施例1のA剤とB剤を新たなビニールラップに移して、平面上で人差し指で円を描くようにして実施例1のA剤とB剤とを約30回混合した。また、実施例2~6及び比較例1~8の各A剤及び各B剤においても、実施例1のA剤とB剤と同様の手順で混合した。その後、「複合体の生成」及び「混合後の剤の均一性」の評価を下記の評価基準に従い官能評価した。なお、比較例1~8は複合体の生成が認められなかったため(複合体の生成:評価×)、「混合後の剤の均一性」の評価を行っていない。
また、上記の手順とは別に、実施例1~6及び比較例1~8における0.5gの各A剤と各B剤を準備した。続いて、実施例1のA剤及びB剤を新たなビニールラップに移して、平面上で人差し指で円を描くようにして実施例1のA剤とB剤とを5回混合した際の「混合後の剤の粘着性」をそれぞれ下記評価基準に従って官能評価した。また、実施例2~6及び比較例1~8の各A剤及び各B剤においても、実施例1のA剤とB剤と同様の手順で混合し「混合後の剤の粘着性」を評価した。
【0070】
(評価基準)
各評価基準を次に示す。
【0071】
「複合体の生成」の評価基準
〇:混合後の剤において複合体を生成している(混合前のA剤及びB剤をそれぞれ指で触った際に感じる粘度より、A剤とB剤とを混合した剤を指で触った際に感じる粘度が高く感じる)。
×:混合後の剤において複合体を生成していない(混合前のA剤及びB剤をそれぞれ指で触った際に感じる粘度より、A剤とB剤とを混合した剤を指で触った際に感じる粘度が、同等又は低く感じる)。
【0072】
「混合後の剤の均一性」の評価基準
〇:混合後の剤を指で円を描くように2~3回混ぜた際に、指に感じる粘度が剤全体で均一。
×:混合後の剤を指で円を描くように2~3回混ぜた際に、指に感じる粘度が剤全体において高い部分と低い部分が混在しており、剤全体が不均一。
【0073】
「粘着性」の評価基準
○:粘着性に優れる(混合前のA剤及びB剤をそれぞれ、片方の手の人指し指にとり、人指し指と親指で剤を伸ばした際の糸引きよりも、A剤とB剤とを混合した剤を人指し指と親指で伸ばした際の糸引きのほうが強い)。
×:粘着性に劣る(混合前のA剤及びB剤をそれぞれ、片方の手の人指し指にとり、人指し指と親指で剤を伸ばした際の糸引きよりも、A剤とB剤とを混合した剤を人指し指と親指で伸ばした際の糸引きが同等又は弱い)。
【0074】
(粘度測定)
上記の官能評価とは別に、実施例1~6及び比較例1~8の多剤式化粧料における各A剤及び各B剤、並びに上記の「複合体の生成」及び「混合後の剤の均一性」の評価手順により得た実施例1~6及び比較例1~8の各A剤及び各B剤の混合後の剤の粘度測定を行った。
粘度測定は、応力制御型レオメーター(HAAKE社製「Rheo Stress 6000」)を使用し、測定温度:25℃、コーンプレートセンサーの直径:35mm、コーンプレートセンサーの傾斜角:2°とし、応力依存モードで、応力:0.1Paから3000PaまでのG’を測定し(データ間隔:30ポイント)、応力(τ)が2.4PaのときのG’として求められる値を粘度の測定値として採用した。
なお、実施例3、4は混合後の剤が不均一であり(混合後の剤の均一性:評価×)、比較例4は混合後の剤に白い析出が認められたため、それぞれ混合後の剤の粘度測定は行っていない。
【0075】
また、複合体の生成を増粘度合いによって評価するため、上記で測定した各実施例、各比較例におけるA剤、B剤、及び混合後の剤の粘度の値を用いて、下記の式を用いて増粘度パラメーター(α)の値を算出した(実施例3、4と比較例4は未算出)。
増粘度パラメーター(α)=(A剤とB剤の混合後の剤の粘度値)/{(A剤の粘度値+B剤の粘度値)/2}
なお、この増粘度パラメーター(α)の値が大きいと、各A、B剤を混合した剤における理論上の粘度の値に比べて、各A、B剤を混合した剤における実際の粘度が高いことから、より増粘に優れる複合体が生成していると評価できる。
【0076】
(評価結果)
下記表1~4に、官能評価の結果及び粘度の測定結果を示す。
【0077】
【0078】
【0079】
表1、2に示す結果から、実施例1~4の多剤式化粧料は複合体の生成が認められたが、比較例1~5の多剤式化粧料は複合体の生成が認められなかった。なお、実施例3、4は、複合体の生成が認められたものの、混合後の剤が不均一であった(表1、
図1)。また、実施例1~3は、混合後の剤の粘着性に優れる結果であった。
実施例1、2の多剤式化粧料における増粘度パラメーター(α)は、比較例1~3、5の多剤式化粧料における増粘度パラメーター(α)よりも大きい値であった。そのため、実施例1、2は、比較例1~3、5に比べて、より増粘に優れる複合体を生成していることがわかる。
【0080】
【0081】
表3に示す結果から、比較例6~8の多剤式化粧料は、複合体の生成が認められなかった。また、実施例1の多剤式化粧料は粘着性の評価が優れていたが、比較例6~7の粘着性の評価は劣っていた。
また、実施例1の多剤式化粧料の増粘度パラメーター(α)は、比較例6~8の多剤式化粧料における増粘度パラメーター(α)よりも大きい値であった。そのため、実施例1は、比較例6~8に比べて、より増粘に優れる複合体を生成していることがわかる。
【0082】
【0083】
表4に示す結果から、実施例1、5、6の多剤式化粧料は、複合体の生成が認められた。また、実施例1、5、6の多剤式化粧料において、混合後の剤の均一性と粘着性の評価にが優れたものであった。
実施例1、5、6の多剤式化粧料における増粘度パラメーター(α)は、表2、3に示す比較例1~3、5~8の多剤式化粧料における増粘度パラメーター(α)よりも大きい値であった。そのため、実施例1、5、6は、比較例1~3、5~8に比べて、より増粘に優れる複合体を生成していることがわかる。また、用いるポリビニルピロリドンの種類に応じて、増粘度パラメーター(α)の値に違いが見られた(実施例1、5、6)。
【0084】
上記官能評価での評価手順に基づき、実施例1~6及び比較例1~8の各A剤及び各B剤をそれぞれ混合して得られた混合後の剤を平面に静置した後、写真撮影した。撮影像を
図1~4に示す。
図1~4に示す結果から、実施例1~6は、比較例1~8に比べて混合後の剤が上方に盛り上がっており、複合体の生成が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、複合体が生成可能な新規の多剤式化粧料、及び新規の多剤式化粧料を用いた美容方法を提供することができる。また、本発明の多剤式化粧料及び美容方法は、毛髪、頭皮、皮膚(頭皮を除く)に用いることができる。