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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/08 20060101AFI20230814BHJP
   B60S 9/12 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
E02F9/08 A
B60S9/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018054168
(22)【出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2019167679
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-01-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】湯澤 良充
(72)【発明者】
【氏名】宮川 力
(72)【発明者】
【氏名】奥山 実
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-128439(JP,A)
【文献】特開2000-344469(JP,A)
【文献】特開2015-105161(JP,A)
【文献】実開昭51-001908(JP,U)
【文献】実開昭58-016254(JP,U)
【文献】特開2015-063867(JP,A)
【文献】実開平02-120502(JP,U)
【文献】特開昭56-064041(JP,A)
【文献】実開昭50-031701(JP,U)
【文献】実公昭57-016881(JP,Y2)
【文献】特開2010-159579(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0072579(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/08
B60S 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
前記下部走行体に取り付けられ、設置面に対する前記下部走行体の位置を固定するスリップ防止手段と、
を有し、
前記スリップ防止手段は、前記設置面に前記下部走行体を磁力で固定するマグネットと、前記マグネットを昇降させる油圧シリンダと、前記マグネットの磁力のオン・オフを切り替える油圧アクチュエータと、を有し、
前記油圧シリンダと前記油圧アクチュエータとは並列に接続されている、
作業機械。
【請求項2】
前記スリップ防止手段は、前記設置面に前記下部走行体を磁力で固定する2つのマグネットを有する、
請求項に記載の作業機械。
【請求項3】
前記2つのマグネットは、前記下部走行体の前後に取り付けられている、
請求項に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上部旋回体に軸支されたブーム及びブームに支持されたアームを駆動して、アームの先端に取り付けられたエンドアタッチメントを操作して所望の作業を実施する作業機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-156708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の作業機械では、濡れた鉄板や凍結した鉄板の上で作業をする場合等、下部走行体と地面との間の摩擦力が小さい場合、上部旋回体の旋回加速時や旋回減速時に大きな反力が下部走行体に作用すると、下部走行体がスリップしてしまう。このため、上部旋回体の旋回時に下部走行体が回転してしまい、操作者が意図したとおりに旋回動作を行うことができないといった問題が生じ得る。特に、リフティングマグネットやグラップル等を装着している場合、エンドアタッチメントが重たくなるため、遠心力が大きくなり、下部走行体がスリップし易くなる。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、下部走行体のスリップを防止することが可能な作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る作業機械は、下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、前記下部走行体に取り付けられ、設置面に対する前記下部走行体の位置を固定するスリップ防止手段と、を有し、前記スリップ防止手段は、前記設置面に前記下部走行体を磁力で固定するマグネットと、前記マグネットを昇降させる油圧シリンダと、前記マグネットの磁力のオン・オフを切り替える油圧アクチュエータと、を有し、前記油圧シリンダと前記油圧アクチュエータとは並列に接続されている
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、下部走行体のスリップを防止することが可能な作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る作業機械の一例を示す側面図
図2図1の作業機械の一部を断面で示す側面図
図3図1の作業機械の正面図
図4図1の作業機械に搭載される油圧システムの一例を示す概略図
図5】スリップ防止手段を構成する油圧システムの一例を示す概略図
図6】マグネットの一例の断面図
図7】本発明の第2実施形態に係る作業機械の一例の一部を断面で示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〔第1実施形態〕
最初に、図1から図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る作業機械の一例の全体構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る作業機械の一例を示す側面図である。図2は、図1の作業機械の一部を断面で示す側面図である。図3は、図1の作業機械の正面図である。
【0011】
作業機械100の下部走行体1には、旋回機構2を介して旋回可能に上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には、アーム5が取り付けられている。アーム5の先端には、エンドアタッチメント(作業部位)としてリフティングマグネット(以下「リフマグ6」という。)が取り付けられている。リフマグ6とは、磁力を用いて、破材、鉄板などを吸着するエンドアタッチメントである。なお、エンドアタッチメントとしては、グラップル、ブレーカ、バケット等が取り付けられていてもよい。
【0012】
ブーム4、アーム5、及びリフマグ6は、アタッチメントの一例であり、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びリフマグシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
【0013】
上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10が設けられ、エンジン等の動力源が搭載されている。下部走行体1には、スリップ防止手段20が取り付けられている。
【0014】
スリップ防止手段20は、設置面Aに対する下部走行体1の位置を固定する。本実施形態では、スリップ防止手段20は、下部走行体1の前方に取り付けられており、マグネットの磁力を用いて鉄板等の磁性体である設置面Aに下部走行体1の位置を固定する。スリップ防止手段20は、マグネット21と、マグネット昇降シリンダ22と、マグネット支持部材23と、マグネット用油圧モータ24と、を有する。
【0015】
マグネット21は、マグネット昇降シリンダ22の伸縮動作によって、下部走行体1の前方で昇降駆動される。例えば図2(a)に示されるように、マグネット昇降シリンダ22が伸張すると、マグネット21が下降してマグネット21の下面21fと設置面Aとが接触する。一方、図2(b)に示されるように、マグネット昇降シリンダ22が収縮すると、マグネット21が上昇してマグネット21の下面21fと設置面Aとが離間する。マグネット21は、マグネット用油圧モータ24により磁力のオン・オフを切り替えることが可能に構成されている。マグネット21は、下面21fを設置面Aに接触させて磁力をオンすることで、設置面Aに下部走行体1を磁力で固定する。マグネット用油圧モータ24による磁力のオン・オフを切り替える動作については後述する。
【0016】
マグネット昇降シリンダ22は、下部走行体1に対してマグネット21を昇降可能に支持する油圧シリンダである。マグネット昇降シリンダ22は、一端が下部走行体1の前方に回動可能に取り付けられており、他端がマグネット21の上面21eに回動可能に取り付けられている。
【0017】
マグネット支持部材23は、下部走行体1に対してマグネット21を支持する。マグネット支持部材23は、一端が下部走行体1の前方に回動可能に取り付けられており、他端がマグネット21の上面21eに回動可能に取り付けられている。マグネット支持部材23は、例えば所定長さを有する棒状部材により形成されている。
【0018】
マグネット用油圧モータ24は、マグネット21の磁力のオン・オフを切り替える油圧アクチュエータである。例えば、マグネット用油圧モータ24を一方の方向に回転させることでマグネット21の磁力がオンされ、他方の方向に回転させることでマグネット21の磁力がオフされる。
【0019】
なお、スリップ防止手段20は、設置面Aに対する下部走行体1の位置を固定できればよく、マグネット21の磁力以外の吸着力を用いて設置面Aに下部走行体1の位置を固定する構成であってもよい。また、スリップ防止手段20は、例えば下部走行体1の後方に取り付けられていてもよく、下部走行体1における上部旋回体3の旋回中心の直下に取り付けられていてもよい。スリップ防止手段20が下部走行体1における上部旋回体3の旋回中心の直下に取り付けられている場合、作業機械100の姿勢の安定性が向上する。
【0020】
次に、図4を参照して、作業機械100に搭載される油圧システムについて説明する。図4は、図1の作業機械100に搭載される油圧システムの一例を示す概略図である。図4において、高圧油圧ライン、パイロットライン、及び電気駆動・制御系をそれぞれ実線、点線、及び2点鎖線で示す。なお、本発明に係る作業機械100に搭載される油圧システムは、図4に示される油圧システムに限定されるものではない。
【0021】
油圧システムは、エンジンによって駆動されるメインポンプP1、P2から、それぞれ管路L1、L2を経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
【0022】
管路L1は、制御弁Vt1、Vsw、Vb1、Va1を通る高圧油圧ラインである。管路L2は、制御弁Vt2、Vm、Vb2、Va2、Vsを通る高圧油圧ラインである。
【0023】
制御弁Vt1は、メインポンプP1が吐出する作動油を左側走行油圧モータへ供給し、且つ、左側走行油圧モータが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り替える左側走行油圧モータ用スプール弁である。
【0024】
制御弁Vt2は、メインポンプP2が吐出する作動油を右側走行油圧モータへ供給し、且つ、右側走行油圧モータが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り替える右側走行油圧モータ用スプール弁である。
【0025】
制御弁Vswは、メインポンプP1が吐出する作動油を旋回油圧モータへ供給し、且つ、旋回油圧モータが吐出す作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り替える旋回油圧モータ用スプール弁である。
【0026】
制御弁Vmは、メインポンプP2が吐出する作動油をリフマグシリンダ9へ供給し、且つ、リフマグシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り替えるリフマグシリンダ用スプール弁である。
【0027】
制御弁Vb1、Vb2は、メインポンプP1、P2が吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り替えるブームシリンダ用スプール弁である。
【0028】
制御弁Va1、Va2は、メインポンプP1、P2が吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り替えるアームシリンダ用スプール弁である。
【0029】
制御弁Vsは、メインポンプP2が吐出する作動油をスリップ防止手段20のマグネット昇降シリンダ22及びマグネット用油圧モータ24へ供給し、且つ、マグネット昇降シリンダ22内の作動油及びマグネット用油圧モータ24が吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り替えるスリップ防止手段用スプール弁である。
【0030】
開閉弁V1は、制御弁Vsのパイロットラインの連通・遮断を制御する弁である。本実施形態では、開閉弁V1は、スイッチSWのオン・オフの操作に応じて動作する電磁弁であり、パイロットポンプPrから制御弁Vsの一方のパイロットポートまで伸びるパイロットライン上に設置される。また、パイロットポンプPrから制御弁Vsの他方のパイロットポートまで伸びるパイロットライン上にも同様に開閉弁及びスイッチが設置される。
【0031】
次に、図5及び図6を参照して、スリップ防止手段20を構成する油圧システムについて説明する。図5は、スリップ防止手段20を構成する油圧システムの一例を示す概略図である。図5において、高圧油圧ラインを実線で示す。なお、スリップ防止手段20を構成する油圧システムは、図5に示される油圧システムに限定されるものではない。図6は、マグネット21の一例の断面図である。図6(a)は磁力がオフであるときの磁石の状態を示し、図6(b)は磁力がオンであるときの磁石の状態を示す。
【0032】
スリップ防止手段20を構成する油圧システムは、メインポンプP2から制御弁Vs及び管路L3を経てマグネット昇降シリンダ22まで作動油を供給し、且つ、マグネット昇降シリンダ22内の作動油を、管路L4及び制御弁Vsを経て作動油タンクへ排出する。また、メインポンプP2から制御弁Vs、管路L3、L5を経てマグネット用油圧モータ24まで作動油を供給し、且つ、マグネット用油圧モータ24が吐出する作動油を、管路L6、L4、制御弁Vsを経て作動油タンクへ排出する。
【0033】
管路L3、L4は、センタージョイント25を通る高圧油圧ラインである。管路L5、L6は、管路L3、L4と並列に設けられた高圧油圧ラインである。メインポンプP2から制御弁Vsを通って管路L3に作動油が供給されると、管路L3を流れる作動油はマグネット昇降シリンダ22のボトム側油室22bに流入すると共に、管路L5を通ってマグネット用油圧モータ24の一次側24aに流入する。また、マグネット昇降シリンダ22のロッド側油室22rから流出する作動油は管路L4を通って作動油タンクへ排出され、且つ、マグネット用油圧モータ24の二次側24bから吐出される作動油は管路L6、L4を通って作動油タンクへ排出される。
【0034】
マグネット21は、マグネット用油圧モータ24の回転動作により磁力のオン・オフが切り替わる。本実施形態では、マグネット21は、筐体21aと、第1磁石21bと、第2磁石21cと、ハンドル21dと、を有する。筐体21aは、第1磁石21b及び第2磁石21cを収容する。第1磁石21bは、永久磁石により形成されている。第2磁石21cは、永久磁石により形成され、第1磁石21b内に回転可能に設けられている。ハンドル21dは、第2磁石21cを回転させる。マグネット21では、ハンドル21dの操作により第2磁石21cを回転させることで、図6(a)に示されるように、第1磁石21bのN極及びS極がそれぞれ第2磁石21cのS極及びN極と近接するように動作させると、筐体21aの内部で2つの磁石が吸着し、筐体21aの外部に磁力が発生しない。即ち、マグネット21の磁力がオフとなる。一方、ハンドル21dの操作により第2磁石21cを回転させることで、図6(b)に示されるように、第1磁石21bのN極及びS極がそれぞれ第2磁石21cのN極及びS極と近接するように動作させると、筐体21aの内部で2つの磁石が反発する。これにより、マグネット21の吸着面である下面21fに磁性体があると、磁力線がその磁性体を通ってN極からS極へと向かい、磁性体を吸着する。即ち、マグネット21の磁力がオンとなる。
【0035】
マグネット昇降シリンダ22は、作動油がボトム側油室22bに流入すると伸張し、作動油がロッド側油室22rに流入すると収縮する。本実施形態では、制御弁Vsの一方のパイロットポート側のスイッチSWがオンされると、開閉弁V1が開いて制御弁Vsのパイロットラインが連通されるので、パイロットポンプPrが吐出する作動油が制御弁Vsの一方のパイロットポートに供給される。これにより、管路L2と管路L3とが制御弁Vsを介して連通し、メインポンプP2が吐出する作動油が管路L2、L3を介してマグネット昇降シリンダ22のボトム側油室22bに流入する。また、管路L4と作動油タンクとが制御弁Vsを介して連通し、マグネット昇降シリンダ22のロッド側油室22r内の作動油が管路L4を介して作動油タンクへ排出される。その結果、マグネット昇降シリンダ22が伸張する。一方、制御弁Vsの他方のパイロットポート側のスイッチがオンされると、開閉弁が開いて制御弁Vsの他方のパイロットラインが連通されるので、パイロットポンプPrが吐出する作動油が制御弁Vsの他方のパイロットポートに供給される。これにより、管路L2と管路L4とが制御弁Vsを介して連通し、メインポンプP2が吐出する作動油が管路L2、L4を介してマグネット昇降シリンダ22のロッド側油室22rに流入する。また、管路L3と作動油タンクとが制御弁Vsを介して連通し、マグネット昇降シリンダ22のボトム側油室22b内の作動油が管路L3を介して作動油タンクへ排出される。その結果、マグネット昇降シリンダ22が収縮する。
【0036】
マグネット用油圧モータ24は、作動油が供給されると、軸の回転運動を発生させて、マグネット21の磁力のオン・オフを切り替える。本実施形態では、マグネット用油圧モータ24の出力軸は、ハンドル21dを介して間接的に第2磁石21cの入力軸に接続されている。これにより、マグネット用油圧モータ24が発生させる軸の回転運動がハンドル21dを所定角度(ハンドル21dがストッパに当接するまで)回動させることで第2磁石21cが回転し、マグネット21の磁力のオン・オフが切り替わる。但し、マグネット用油圧モータ24の出力軸は、直接的に又は間接的に第2磁石21cの入力軸に接続されていればよく、マグネット21にはハンドル21dが設けられていなくてもよい。係る構成においては、制御弁Vsの一方のパイロットポート側のスイッチSWがオンされると、開閉弁V1が開いて制御弁Vsのパイロットラインが連通し、パイロットポンプPrが吐出する作動油が制御弁Vsの一方のパイロットポートに供給される。これにより、管路L2と管路L3とが制御弁Vsを介して連通し、メインポンプP2が吐出する作動油が管路L2、L3、L5を介してマグネット用油圧モータ24の一次側24aに流入する。また、管路L4と作動油タンクとが制御弁Vsを介して連通し、マグネット用油圧モータ24の二次側24bから吐出される作動油が管路L6、L4を介して作動油タンクへ排出される。その結果、マグネット用油圧モータ24が一方の方向に回転し、マグネット21のハンドル21dが回転することで、マグネット21の磁力がオンされる。一方、制御弁Vsの他方のパイロットポート側のスイッチがオンされると、開閉弁が開いて制御弁Vsのパイロットラインが連通し、パイロットポンプPrが吐出する作動油が制御弁Vsの他方のパイロットポートに供給される。これにより、管路L2と管路L4とが制御弁Vsを介して連通し、メインポンプP2が吐出する作動油が管路L2、L4、L6を介してマグネット用油圧モータ24の二次側24bに流入する。また、管路L4と作動油タンクとが制御弁Vsを介して連通し、マグネット用油圧モータ24の一次側24aから吐出される作動油が管路L5、L3を介して作動油タンクへ排出される。その結果、マグネット用油圧モータ24が他方の方向に回転し、マグネット21のハンドル21dが回転することで、マグネット21の磁力がオフされる。
【0037】
センタージョイント25は、上部旋回体3から下部走行体1に作動油を供給するための部品である。管路L3、L4にセンタージョイント25が設けられていることにより、上部旋回体3の旋回角度に関わらず、上部旋回体3に設けられた制御弁Vsから下部走行体1に設けられたマグネット昇降シリンダ22及びマグネット用油圧モータ24に作動油を供給できる。
【0038】
次に、本実施形態に係る作業機械100の動作について、作業開始時及び走行開始時の動作を例に挙げて説明する。
【0039】
作業開始時、操作者が制御弁Vsの一方のパイロットポート側のスイッチSWをオンする。これにより、管路L3、L5に作動油が流入する。このとき、マグネット21は、自重方向(マグネット昇降シリンダ22が伸張する方向)に力を受けるため、マグネット昇降シリンダ22のボトム側油室22bにおける作動油の圧力が低下する。このとき、マグネット昇降シリンダ22のボトム側油室22bにおける作動油の圧力は、マグネット用油圧モータ24の一次側24aにおける作動油の圧力よりも小さい。このため、作動油は、先に圧力の低いマグネット昇降シリンダ22へ流入し、マグネット昇降シリンダ22が伸張し、マグネット21が下降して設置面に接地する。マグネット21が設置面に接地すると、マグネット昇降シリンダ22内のピストンが移動しなくなるため、マグネット昇降シリンダ22のボトム側油室22bにおける作動油の圧力が上昇する。このとき、マグネット昇降シリンダ22のボトム側油室22bにおける作動油の圧力がマグネット用油圧モータ24の一次側24aにおける作動油の圧力よりも高くなる。このため、圧力が低いマグネット用油圧モータ24へ作動油が流れ、マグネット用油圧モータ24が所定角度(ハンドル21dがストッパに当接するまで)回転し、マグネット21の磁力がオンされる。これにより、マグネット21が設置面に吸着し、下部走行体1が設置面に固定される。その結果、下部走行体1のスリップが防止される。また、スイッチSWは、例えば、所定時間が経過した後やマグネット21の磁力がオンされた後に自動的にオフされる。ここで、マグネット21が設置面に吸着した後は、油圧回路内の圧力が上昇するため、所定圧力に達した時点でスイッチSWは、オフされてもよい。また、スイッチがオフされた場合、つまり、マグネット21の設置面への吸着が完了した場合、吸着が完了した旨を画面表示や音声等によって作業者に報知してもよい。
【0040】
走行開始時、操作者が制御弁Vsの他方のパイロットポート側のスイッチをオンにする。これにより、管路L4、L6に作動油が流入する。このとき、マグネット21が磁力により設置面に吸着しているので、マグネット21が上昇する方向(マグネット昇降シリンダ22が収縮する方向)とは逆の力を受ける。このとき、マグネット昇降シリンダ22内のピストンが移動できないため、マグネット昇降シリンダ22のロッド側油室22rにおける作動油の圧力が上昇する。そのため、マグネット昇降シリンダ22のロッド側油室22rにおける作動油の圧力がマグネット用油圧モータ24の二次側24bにおける作動油の圧力よりも高くなる。したがって、作動油は、先に圧力の低いマグネット用油圧モータ24へ流入し、マグネット用油圧モータ24が所定角度(ハンドル21dがストッパに当接するまで)回転し、マグネット21の磁力がオフされる。このとき、磁力がオフされて、マグネット21が上昇する方向(マグネット昇降シリンダ22が収縮する方向)とは逆の力が軽減するため、マグネット昇降シリンダ22のロッド側油室22rにおける作動油の圧力が小さくなる。また、ハンドル21dがストッパに当接し、これ以上回動できなくなるため、マグネット用油圧モータ24の二次側24bにおける作動油の圧力が大きくなる。したがって、マグネット昇降シリンダ22のロッド側油室22rにおける作動油の圧力がマグネット用油圧モータ24の二次側24bにおける作動油の圧力よりも低くなる。そのため、圧力が低いマグネット昇降シリンダ22へ作動油が流れ、マグネット昇降シリンダ22が収縮し、マグネット21が上昇して設置面から離間する。これにより、下部走行体1の走行が可能となる。また、スイッチは、例えば、所定時間が経過した後やマグネット21が上昇して設置面から所定距離だけ離間した後に自動的にオフされる。ここで、マグネット21が設置面から離間した後は、油圧回路内の圧力が上昇するため、所定圧力に達した時点でスイッチSWは、オフされてもよい。また、スイッチがオフされた場合、つまり、マグネット21の設置面からの離間が完了した場合、離間が完了した旨を画面表示や音声等によって作業者に報知してもよい。
【0041】
次に、本実施形態に係る作業機械100の作用効果について説明する。
【0042】
濡れた鉄板や凍結した鉄板の上で作業をする場合等、下部走行体1と設置面との間の摩擦力が小さい場合、上部旋回体3の旋回加速時や旋回減速時に大きな反力が下部走行体1に作用すると、下部走行体1がスリップしてしまう。このため、上部旋回体3の旋回時に下部走行体1が回転してしまい、操作者が意図したとおりに旋回動作を行うことができないといった問題が生じ得る。特に、リフティングマグネットやグラップル等を装着している場合、エンドアタッチメントが重たくなるため、遠心力が大きくなり、下部走行体1がスリップし易くなる。
【0043】
本実施形態に係る作業機械100では、下部走行体1に、設置面Aに対する下部走行体1の位置を固定するスリップ防止手段20が取り付けられている。これにより、下部走行体1のスリップを防止できる。このため、操作者に不快感を与えてしまうことがない。また、操作者が意図しない方向に下部走行体1がスリップして作業機械100の周囲物に損傷を与えてしまうことを防止できる。また、下部走行体1が基準位置からずれることがないため、作業効率が向上する。
【0044】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る作業機械100Aの一例の全体構成について説明する。図7は、本発明の第2実施形態に係る作業機械100の一例の一部を断面で示す側面図である。
【0045】
本実施形態に係る作業機械100Aは、設置面に下部走行体1を磁力で固定する2つのマグネット21A、21Bを有することを特徴とする。なお、その他の構成については、第1実施形態に係る作業機械100と同様であるので、作業機械100と同様の構成については説明を省略する。
【0046】
マグネット21Aは、下部走行体1の前方に回動可能に取り付けられたマグネット昇降シリンダ22A及びマグネット支持部材(図示せず)に回動可能に取り付けられている。マグネット21Aは、マグネット昇降シリンダ22Aの伸縮動作により昇降する。マグネット21Aは、マグネット用油圧モータ(図示せず)の回転動作により磁力のオン・オフが切り替えられる。
【0047】
マグネット21Bは、下部走行体1の後方に回動可能に取り付けられたマグネット昇降シリンダ22B及びマグネット支持部材(図示せず)に回動可能に取り付けられている。マグネット21Bは、マグネット昇降シリンダ22Bの伸縮動作により昇降する。マグネット21Bは、マグネット用油圧モータ(図示せず)の回転動作により磁力のオン・オフが切り替えられる。
【0048】
本実施形態に係る作業機械100Aでは、第1実施形態と同様に、下部走行体1に、設置面Aに対する下部走行体1の位置を固定するスリップ防止手段20が取り付けられている。これにより、下部走行体1のスリップを防止できる。このため、操作者に不快感を与えてしまうことがない。また、操作者が意図しない方向に下部走行体1がスリップして作業機械100の周囲物に損傷を与えてしまうことを防止できる。また、下部走行体1が基準位置からずれることがないため、作業効率が向上する。
【0049】
特に、本実施形態では、スリップ防止手段20が下部走行体1の前後に取り付けられたマグネット21A、21Bを有するので、作業機械100Aの姿勢の安定性が向上する。
【0050】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【0051】
例えば、上述の実施形態では、マグネット21は、マグネット用油圧モータ24の回転動作により永久磁石の磁力のオン・オフを切り替えるように構成されていたが、電磁石を用いて磁力のオン・オフを切り替えるように構成されてもよい。具体的に、ワイヤレス給電システムを用いて、マグネット21に電力を供給し、電磁石の磁力をオンにしてもよい。また、マグネット21に油圧モータと発電機を設け、発電機で発生させる電力を用いて電磁石のオン・オフを切り替えられるように構成されてもよい。具体的に、センタージョイントを通して上部旋回体から供給される作動油を用いて油圧モータを回転させる。この回転力を用いて発電機で電力を発生させ、得られた電力を用いて、電磁石をオンにさせる。
【符号の説明】
【0052】
1 下部走行体
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 リフマグ
20 スリップ防止手段
21 マグネット
22 マグネット昇降シリンダ
23 マグネット支持部材
24 マグネット用油圧モータ
25 センタージョイント
100 作業機械
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7