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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】洗面器
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/18 20060101AFI20230814BHJP
   C04B 41/89 20060101ALN20230814BHJP
【FI】
E03C1/18
C04B41/89 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018117448
(22)【出願日】2018-06-20
(65)【公開番号】P2019218244
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕志
(72)【発明者】
【氏名】森 俊徳
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一男
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 俊三
(72)【発明者】
【氏名】吉永 勲
(72)【発明者】
【氏名】宮本 博幸
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 忠
(72)【発明者】
【氏名】澤田 英明
(72)【発明者】
【氏名】崔 宰熏
(72)【発明者】
【氏名】川合 秀治
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-272988(JP,A)
【文献】特開2005-298250(JP,A)
【文献】特開2018-089263(JP,A)
【文献】特開2002-212990(JP,A)
【文献】特開2006-028861(JP,A)
【文献】特開2001-061689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B
E03C
A47K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に凹むボウル部を有し、陶器素地と、該陶器素地の表面側に配置される中間層と、該中間層の表面側に配置される上釉層と、を備えた洗面器であって、
床面から前記洗面器の手前側の端部までの高さは800mmであり、
前記上釉層は、前記中間層よりも透明であり、
前記ボウル部の表面における少なくとも利用者が使用する際の手前側であって、前記利用者が視認できる箇所に、下方に凹む連続した傾斜面が形成され、
前記傾斜面の接線の水平面に対する角度は、前記利用者が前記洗面器に近づくまでの間に、身長170cmの前記利用者の視線に入る光の入射角が75度以上であるフレネル反射率が急激に変化する領域を通過する角度を含むことを特徴とする洗面器。
【請求項2】
連続した前記傾斜面における前記手前側の端部は、前記ボウル部の周縁部をなしている請求項1に記載の洗面器。
【請求項3】
連続した前記傾斜面における前記手前側の端部には、上方に立設する壁部及び前記手前側に延出する壁部が設けられておらず、
前記端部の接線は、水平面に対して35度から45度で形成されている請求項1または2に記載の洗面器。
【請求項4】
前記上釉層を厚さ方向に切断した切断面の面積に対する気泡の面積の割合が3%以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の洗面器。
【請求項5】
前記上釉層を厚さ方向に切断した切断面における気泡の平均気泡径が50μm以下である請求項1から4のいずれか一項に記載の洗面器。
【請求項6】
前記切断面における気泡数が1mm当たり120個以下である、請求項4または5に記載の洗面器。
【請求項7】
前記上釉層の厚さの最大値と、前記上釉層の厚さの最小値との差が、50μm以下であり、
前記上釉層の厚さに対する前記差の割合が25%以下である請求項1から6のいずれか一項に記載の洗面器。
【請求項8】
前記中間層を厚さ方向に切断した切断面における気泡の平均気泡径が25μm以下である請求項1から7のいずれか一項に記載の洗面器。
【請求項9】
前記中間層を厚さ方向に切断した切断面の面積に対する気泡の面積の割合が20%以下である請求項1から8のいずれか一項に記載の洗面器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗面所に設置される洗面器では、汚れの付着を抑制したり、外観の意匠性を良好にしたりするために、上釉層(釉薬層)が最表面に形成されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、陶器素地表面に、着色性の第一釉薬層が形成され、さらにその上に透明性の第二釉薬層が形成された衛生陶器が提案されている。この衛生陶器では、表面平滑性の向上及び耐熱衝撃性の向上が図られている。
【0004】
また、近年、洗面器には、デザイン性等の向上とともに、品位の高さが求められている。品位を表す指標の一つに、写像性がある。写像性とは、衛生陶器の表面に映り込んだ像の鮮明さを表現するものであり、映り込んだ像が鮮明であるほど写像性が高いと判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-298250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
品位を表す指標として、写像性の他に「深み」が挙げられる。「深み」とは、衛生陶器の表面の上釉層の厚み(深さ)の表現であり、人間の視覚で認められる。写像性だけでは上釉層の美しさを全て感じることができないため、「深み」を感じることができる洗面器が望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、陶器の「深み」を感じることができる洗面器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る洗面器は、下方に凹むボウル部を有し、陶器素地と、該陶器素地の表面側に配置される中間層と、該中間層の表面側に配置される上釉層と、を備えた洗面器であって、床面から前記洗面器の手前側の端部までの高さは800mmであり、前記上釉層は、前記中間層よりも透明であり、前記ボウル部の表面における少なくとも利用者が使用する際の手前側であって、前記利用者が視認できる箇所に、下方に凹む連続した傾斜面が形成され、前記傾斜面の接線の水平面に対する角度は、前記利用者が前記洗面器に近づくまでの間に、身長170cmの前記利用者の視線に入る光の入射角が75度以上であるフレネル反射率が急激に変化する領域を通過する角度を含むことを特徴とする。
また、前記上釉層を厚さ方向に切断した切断面の面積に対する気泡の面積の割合が3%以下であってもよい。
また、前記上釉層を厚さ方向に切断した切断面における気泡の平均気泡径が50μm以下であってもよい。
また、前記切断面における気泡数が1mm当たり120個以下であってもよい。
また、前記上釉層の厚さの最大値と、前記上釉層の厚さの最小値との差が、50μm以下であり、前記上釉層の厚さに対する前記差の割合が25%以下であってもよい。
また、前記中間層を厚さ方向に切断した切断面における気泡の平均気泡径が25μm以下であってもよい。
また、前記中間層を厚さ方向に切断した切断面の面積に対する気泡の面積の割合が20%以下であってもよい。
【0009】
一般的に、フレネル反射率が高かったり、更にフレネル反射率の変化を感じられたりすると、深みを感じやすい。上記のように構成された洗面器では、上釉層が中間層よりも透明であり、傾斜面の接線と水平面とのなす角度を5度から75度とすることで、利用者が、洗面器に近づいた位置までの間に、詳細について後述するフレネル反射率が急激に変化する領域を通過するため、「深み」を感じることができる。
【0010】
また、本発明に係る洗面器では、連続した前記傾斜面における前記手前側の端部は、前記ボウル部の周縁部をなしていることが好ましい。
【0011】
このように構成された洗面器では、連続した傾斜面における手前側の端部は、ボウル部の周縁部をなしている。つまり、傾斜面における手前側の端部には、当該端部から上方に立設する壁部や利用者側に延びる壁部等が設けられていない。よって、利用者が洗面器を使用する際に、曲面の接線の延長線に沿って洗面器の傾斜面を視認することになるため、「深み」をより一層高めることができる。
【0012】
また、本発明に係る洗面器では、連続した前記傾斜面における前記手前側の端部には、上方に立設する壁部及び前記手前側に延出する壁部が設けられておらず、前記端部の接線は、水平面に対して35度から45度で形成されていてもよい。
【0013】
このように構成された洗面器では、連続した傾斜面における手前側の端部の接線は水平面に対して35度から45度で形成されているため、「深み」をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る洗面器によれば、写像性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る洗面器が設置される空間の側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る洗面器の平面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る洗面器の断面構造を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る洗面器の上釉層のDTA曲線の一例である。
図6】フレネル反射率を示すグラフである。
図7】本発明の一実施形態の変形例1に係る洗面器が設置される空間の側面図である。
図8】本発明の一実施形態の変形例1に係る洗面器の平面図である。
図9図8のB-B線断面図である。
図10】本発明の一実施形態の変形例2に係る洗面器の断面図である。
図11】本発明の一実施形態の変形例3に係る洗面器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る洗面器について、図1から図6に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る洗面器が設置される空間の側面図である。図1では、洗面器を断面図で示している。
図1に示すように、本実施形態の洗面器100は、洗面所等の壁部Wに沿って設置されている。洗面器100は、壁部Wに支持された設置台W1の上に設置されている。壁部Wには、不図示の吐水部及び配管等が設けられている。
【0017】
[洗面器]
洗面器100は、材料となる衛生陶器1が所望の形状に形成されたものである。
まず、洗面器100の形状について説明する。
ここで、利用者Mが洗面器100を使用する際に、洗面器100における利用者M側(A1側)を手前側と称し、反対側(A2側)を奥側と称する。
洗面器100は、下向きに凹む凹部が形成されたボウル部101を有している。
【0018】
図2は洗面器100の平面図である。
図2に示すように、洗面器100は、平面視で略矩形状をなしつつ、四隅が湾曲形成されている。
【0019】
平面視で、ボウル部101の平面視略中央には、排水口部102が設けられている。壁部W等に設けられた吐水部(不図示。以下同じ。)から吐水された水が、排水口部102を通過して排水管(不図示。以下同じ。)等に排出される。
【0020】
図3は、図2のA-A線断面図である。
図1及び図3に示すように、ボウル部101の表面は、下方に凹む連続した曲面(傾斜面)101uで形成されている。詳細には、ボウル部101の表面は、排水口部102及び排水口部102近傍を除いて、曲面101uで形成されている。曲面101uは、ボウル部101の周縁部104から平面視の中央側に向かうにしたがって下方に傾斜している。
【0021】
図1に示すように、ボウル部101の曲面101uの手前側の端部101aは、ボウル部101の周縁部104をなしている。つまり、ボウル部101の曲面101uの手前側の端部101aには、端部101aから上方に立設する壁部や、手前側に延出する壁部等が設けられていない。
【0022】
曲面101uのうち手前側では、奥側(A2側)に向かうにしたがって次第に下方に向かうように傾斜している。
【0023】
ボウル部101の曲面101uの手前側の端部101aの接線と水平面Hとのなす角度(縁角度)X1は、約5~75度で形成されていることが好ましく、より好ましくは35度~45度である。なお、縁角度X1が約5~75度であるに限らず、曲面101uにおける端部101よりも奥側、つまり曲面101uの手前側であって利用者Mが視認できる箇所の接線が、水平面に対して5度から75度で形成されていればよい。本実施形態では、角度X1は、約45度である。
【0024】
標準的な尺モジュール(1坪空間の内寸L1=約1690mm)の戸建住宅の場合、洗面器100を床面Fから高さH1=約800mmに設置することが一般的である。利用者Mの身長を約170cmとすると、利用者Mが壁際まで下がった際に、利用者Mから洗面器100の端部101aに向けられて視線J1と水平面Hとのなす角度Y1は、角度X1と略同一である。よって、利用者Mの視線J1は、ボウル部101の端部101aから曲面101uに沿うようになる。
【0025】
[衛生陶器]
次に、衛生陶器1について説明する。
図4は、洗面器100を形成する衛生陶器1の断面構造を示す図である。
図4に示すように、衛生陶器1は、陶器素地10と、陶器素地10の表面側に配置された中間層20と、中間層20の表面側に配置された上釉層30と、を備える。
【0026】
衛生陶器1の厚さTは、特に限定されないが、例えば、1~50mmが好ましく、2~30mmがより好ましく、3~20mmがさらに好ましい。厚さTが上記下限値以上であると、衛生陶器1の強度が高められやすい。厚さTが上記上限値以下であると、衛生陶器1を軽量にでき、取り扱いが容易になる。
衛生陶器1の厚さTは、例えば、ノギスを用いて測定できる。
【0027】
衛生陶器1の写像性は、80以上が好ましく、85以上がより好ましく、90以上がさらに好ましい。衛生陶器1の写像性が上記下限値以上であると、高品位の印象を与えやすい。衛生陶器1の写像性の上限値は、特に限定されないが、実質的には99以下である。
なお、本明細書において、写像性は、ウェーブスキャンDOI測定装置(BYK Gardner社製、Wave-Scan-DUAL)により測定されるDOI値を意味する。
【0028】
[陶器素地]
陶器素地10としては、長石、陶石、カオリン、粘土等を原料として含む陶器素地組成物(陶器素地泥漿)を石膏型あるいは樹脂型を用いて所定の形状に成形し、1100~1300℃で焼成した素地が挙げられる。
陶器素地組成物は、水を含有する。陶器素地組成物の総質量に対する水の含有量は、30~50質量%が好ましく、30~40質量%がより好ましい。
【0029】
陶器素地10の厚さT10は、特に限定されないが、例えば、1~50mmが好ましく、2~30mmがより好ましく、3~20mmがさらに好ましい。厚さT10が上記下限値以上であると、陶器素地10の強度が高められやすい。厚さT10が上記上限値以下であると、陶器素地10を軽量にでき、取り扱いが容易になる。
陶器素地10の厚さT10は、例えば、ノギスを用いて測定できる。
【0030】
[上釉層]
上釉層30は、本発明の衛生陶器用の上釉層組成物(以下、単に上釉層組成物ともいう。)の焼成物である。上釉層30は、衛生陶器1の最表面に位置する層を形成するための釉(釉薬)からなる層である。上釉層組成物は、いわゆる釉薬である。上釉層組成物は、釉原料であるケイ砂、長石、石灰、粘土等が水に分散されたスラリー(泥漿)である。
上釉層組成物の総質量に対する水の含有量は、40~80質量%が好ましく、40~70質量%がより好ましい。
【0031】
上釉層組成物に含まれる固形分の平均粒子径は、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。上釉層組成物に含まれる固形分の平均粒子径が上記上限値以下であると、上釉層組成物に含まれる固形分の溶融開始温度を低くしやすい。
上釉層組成物に含まれる固形分の平均粒子径の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上である。
上釉層組成物に含まれる固形分の平均粒子径は、例えば、釉原料を粉砕することにより調整できる。釉原料を粉砕する道具としては、例えば、ボールミルが挙げられる。
【0032】
本明細書において、「平均粒子径」とは、50%平均粒子径(D50)を意味する。D50は、個数基準でのメジアン径であり、累積分布における50%の平均粒子径を意味する。粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定器(日機装(株)製、「MT3300EX(型番)」)を用いて測定できる。
なお、上釉層組成物に含まれる固形分は、上釉層組成物の乾燥物である。
【0033】
上釉層組成物としては、ケイ砂5~25質量部、長石20~40質量部、石灰5~15質量部、粘土1~5質量部を含有する組成物が挙げられる。
上釉層組成物は、上記の他、フリットを含有することが好ましい。
フリットは、フリット原料を1300℃以上で溶融した後冷却し、非晶質のガラスとしたものである。上釉層組成物がフリットを含有することで、上釉層組成物の溶融開始温度を低くしやすい。加えて、上釉層組成物がフリットを含有することで、上釉層組成物をより均一に溶融しやすく、上釉層中の気泡を減少させやすい。
フリット原料としては、フリット原料の総質量に対して、二酸化ケイ素(SiO)を40~70質量%、酸化アルミニウム(Al)を5~15質量%、酸化ナトリウム(NaO)と酸化カリウム(KO)と酸化カルシウム(CaO)と酸化マグネシウム(MgO)と酸化亜鉛(ZnO)と酸化ストロンチウム(SrO)と酸化バリウム(BaO)と酸化ホウ素(B)との合計を10~50質量%含有する組成物が挙げられる。
なお、フリット原料の各成分の含有量の合計は、フリット原料の総質量に対して100質量%を超えないものとする。
【0034】
上釉層組成物がフリットを含有する場合、フリットの含有量は、上釉層組成物に含まれる固形分の総質量に対して、50~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましい。フリットの含有量が上記下限値以上であると、上釉層組成物の溶融開始温度を低くしやすい。なお、フリットの含有量は、上釉層組成物に含まれる固形分の総質量に対して100質量%を超えないものとする。
【0035】
上釉層組成物の溶融開始温度は、第一溶融温度、第二溶融温度又は第三溶融温度のいずれかで規定できる。
第一溶融温度は、下記測定方法1-1により測定される。
<測定方法1-1>
アルミナ粉末を基準物質とし、衛生陶器用の上釉層組成物の乾燥物を試料粉末としてDTA測定を行い、DTA曲線を求める。得られたDTA曲線の700℃超の領域において、試料粉末の温度から基準物質の温度を減じた値ΔTを示す電位差ΔVが、小さくなる最初の変曲点における基準物質の温度を第一溶融温度とする。第一溶融温度よりも高温側の領域において、電位差ΔVが、大きくなる最初の変曲点における基準物質の温度を第二溶融温度とする。
【0036】
DTA曲線は、示差熱分析(DTA)装置を用いて、DTA測定を行うことにより求められる。DTA測定は、TG-DTA測定(熱重量示差熱分析測定)であってもよい。DTA測定は、アルミナ粉末を基準物質とし、上釉層組成物の乾燥物を試料粉末とする。上釉層組成物の乾燥物は、例えば、上釉層組成物を20~110℃に加熱して、水分を蒸発させることにより得られる。上釉層組成物の乾燥物の総質量に対する水分量は、例えば、0~1質量%である。
DTA測定においては、試料粉末の温度及び基準物質の温度を一定のプログラムによって変化させながら、試料粉末の温度から基準物質の温度を減じた値ΔT((試料粉末の温度)-(基準物質の温度))を示す電位差ΔVを温度の関数として測定する。DTA曲線において、基準物質の温度が700℃超の領域で現れる変曲点のうち、電位差ΔVが、小さくなる最初の変曲点を第一変曲点とする。第一変曲点における基準物質の温度を第一溶融温度とする。第一溶融温度よりも高温側の領域で現れる変曲点のうち、電位差ΔVが、大きくなる最初の変曲点を第二変曲点とする。第二変曲点における基準物質の温度を第二溶融温度とする。
【0037】
図5は、衛生陶器1の上釉層30を形成する上釉層組成物のTG-DTA測定を行ったときに得られるTG-DTAのグラフである。TG-DTAのグラフにおいて、横軸は基準物質の温度(℃)を表す。縦軸の第一軸は、試料粉末の質量変化(質量%)を表す。縦軸の第二軸は、試料粉末の温度から基準物質の温度を減じた値ΔTを示す電位差ΔV(μV)を表す。
図5において、C1は、TG曲線を表す。C2は、DTA曲線を表す。C2は、基準物質の温度の上昇とともに電位差ΔVが大きくなり、基準物質の温度が700℃超の領域で第一変曲点P1が現れる。第一変曲点P1では、上釉層組成物が溶融を開始し、上釉層組成物のガラス構造が緩み始めているものと考えられる。第一変曲点P1は、C2の傾き(ΔVの増加量/基準物質の温度の増加量)が最大となるときのC2に引いた接線と、C2の傾きが最小となるときのC2に引いた接線との交点で与えられる。第一変曲点P1における基準物質の温度が第一溶融温度である。なお、第一溶融温度は、一般的なTG-DTAのグラフにおける補外溶融開始温度の求め方と同様にして求められる(JIS K7121-1987参照)。
C2は、第一変曲点P1が現れた後、ΔVが減少し、再びΔVが大きくなる第二変曲点P2を有する。第二変曲点P2では、上釉層組成物が溶融し、上釉層組成物のガラス構造が完全に緩んでいるものと考えられる。第二変曲点P2は、C2の傾きが最小となるときのC2に引いた接線と、C2の傾きが正となるときのC2に引いた接線との交点で与えられる。第二変曲点P2における基準物質の温度が第二溶融温度である。なお、第二溶融温度は、一般的なTG-DTAのグラフにおける溶融ピーク温度の求め方と同様にして求められる(JIS K7121-1987参照)。
【0038】
DTA測定において、基準物質の質量は、例えば、5~50mgが好ましい。
試料粉末の質量は、例えば、5~50mgが好ましい。
上釉層組成物の乾燥物を得る際の加熱温度は、例えば、20~110℃が好ましい。
試料粉末を加熱する際の昇温速度は、例えば、2~10℃/分が好ましい。
【0039】
上釉層組成物の第一溶融温度は、800~1050℃が好ましく、820~1000℃がより好ましく、840~950℃がさらに好ましい。上釉層組成物の第一溶融温度が上記下限値以上であると、上釉層組成物を焼成するときの気泡の発生を抑制しやすい。上釉層組成物の第一溶融温度が上記上限値以下であると、上釉層組成物を焼成するときに発生した気泡を大気中に拡散しやすい。
【0040】
第二溶融温度は、上記測定方法1-1により測定される。
上釉層組成物の第二溶融温度は、850~1150℃が好ましく、870~1100℃がより好ましく、900~1050℃がさらに好ましい。上釉層組成物の第二溶融温度が上記下限値以上であると、上釉層組成物を焼成するときの気泡の発生を抑制しやすい。上釉層組成物の第二溶融温度が上記上限値以下であると、上釉層組成物を焼成するときに発生した気泡を大気中に拡散しやすい。
【0041】
上釉層組成物の第二溶融温度と第一溶融温度との差(上釉層溶融温度差)は、50~120℃が好ましく、60~100℃がより好ましく、70~90℃がさらに好ましい。上釉層溶融温度差が上記下限値以上であると、上釉層組成物を焼成するときに発生する気泡の平均気泡径を小さくしやすい。上釉層溶融温度差が上記上限値以下であると、上釉層組成物を焼成するときの気泡の発生を抑制しやすい。
上釉層溶融温度差は、上釉層組成物の第二溶融温度から、上釉層組成物の第一溶融温度を減じることにより求められる。
【0042】
上釉層組成物の第一溶融温度は、釉原料の種類、釉原料の配合割合、上釉層組成物の固形分の平均粒子径、及びこれらの組合せにより調整できる。
上釉層組成物の第二溶融温度は、上釉層組成物の第一溶融温度と同様に調整できる。
【0043】
第三溶融温度は、下記測定方法1-2により測定される。
<測定方法1-2>
衛生陶器用の上釉層組成物の乾燥物を加圧成形して円柱状試料を得る。得られた円柱状試料を加熱しつつ、光を照射する。円柱状試料の表面が反射する反射光の光量を測定する。反射光の光量が、光り始めに検出した反射光の光量の10倍以上となる最初の温度を第三溶融温度とする。
【0044】
測定方法1-2において、円柱状試料は、衛生陶器用の上釉層組成物の乾燥物を加圧成形することにより得られる。
円柱状試料の直径は、例えば、2~10mmが好ましい。円柱状試料の高さは、例えば、5~20mmが好ましい。円柱状試料の質量は、例えば、100~500mgが好ましい。上釉層組成物の乾燥物を加圧成形する際の圧力は、例えば、10~50MPaが好ましい。
反射光の光量は、望遠レンズ付きデジタルカメラで撮影し、画像処理システムによりピクセル数に換算される値とする。
円柱状試料を加熱する際の反射光の光量は、1℃ごとに測定される。「光り始め」は、円柱状試料の表面が反射する反射光の光量が0でなくなったときを意味する。
円柱状試料を加熱する際の昇温速度は、例えば、1~10℃/分が好ましい。
円柱状試料に照射する光の光量は、例えば、500~2000ルーメンが好ましい。
第三溶融温度では、上釉層組成物が溶融を開始し、上釉層組成物のガラス構造が完全に緩んでいるものと考えられる。
【0045】
上釉層組成物の第三溶融温度は、850~1150℃が好ましく、870~1100℃がより好ましく、900~1050℃がさらに好ましい。上釉層組成物の第三溶融温度が上記下限値以上であると、上釉層組成物を焼成するときの気泡の発生を抑制しやすい。上釉層組成物の第三溶融温度が上記上限値以下であると、上釉層組成物を焼成するときに発生した気泡を大気中に拡散しやすい。
【0046】
上釉層組成物の第三溶融温度は、上釉層組成物の第一溶融温度と同様に調整できる。
【0047】
上釉層30を備える衛生陶器1から上釉層30の溶融開始温度を求める場合、第一溶融温度、第二溶融温度は、下記測定方法2-1により測定される。
<測定方法2-1>
アルミナ粉末を基準物質とし、上釉層30の粉末を試料粉末としてDTA測定を行い、DTA曲線を求める。得られたDTA曲線の700℃超の領域において、試料粉末の温度から基準物質の温度を減じた値ΔTを示す電位差ΔV(μV)が、小さくなる最初の変曲点における基準物質の温度を第一溶融温度とする。第一溶融温度よりも高温側の領域において、電位差ΔVが、大きくなる最初の変曲点における基準物質の温度を第二溶融温度とする。
【0048】
上釉層30の粉末は、上釉層30を適宜切り出し、研磨等することにより得られる。DTA測定の条件は、上記測定方法1-1におけるDTA測定の条件と同様である。
上釉層30の第一溶融温度は、上釉層組成物の第一溶融温度と同様である。
上釉層30の第二溶融温度は、上釉層組成物の第二溶融温度と同様である。
上釉層30の第二溶融温度と第一溶融温度との差は、上釉層組成物の第二溶融温度と第一溶融温度との差(上釉層溶融温度差)と同様である。
【0049】
上釉層30を備える衛生陶器1から上釉層30の第三溶融温度を求める場合、下記測定方法2-2により測定される。
<測定方法2-2>
上釉層30の粉末を加圧成形して円柱状試料を得る。得られた円柱状試料を加熱しつつ、光を照射する。円柱状試料の表面が反射する反射光の光量を測定する。反射光の光量が、光り始めに検出した反射光の光量の10倍以上となる最初の温度を第三溶融温度とする。
【0050】
上釉層30の粉末は、上釉層30を適宜切り出し、研磨等することにより得られる。円柱状試料を得る際の条件は、上記測定方法1-2における円柱状試料を得る際の条件と同様である。
上釉層30の第三溶融温度は、上釉層組成物の第三溶融温度と同様である。
【0051】
本明細書において、「気泡」とは、実際に上釉層30又は中間層20に含まれる気泡を意味する。気泡は、例えば、上釉層30、陶器素地10、中間層組成物に含まれる成分の酸化反応、分解反応、上釉層30、陶器素地10、中間層組成物に含まれる空隙等により発生する。気泡は、上釉層30の切断面をマイクロスコープ等により観察した画像において、画像処理ソフトを用いて画像の明るさを2値化し、相対的に暗い箇所を気泡として判断することにより計数される。計数する気泡の大きさは、切断面における気泡を真円換算し、直径2μm以上とする。
【0052】
計数する気泡は、例えば、以下の手順で求められる。
衛生陶器1を上釉層30の厚さ方向に小型試料切断機を用いて切断する。切断した切断面をマイクロスコープ(オリンパス(株)製、DSX510)により、倍率125倍で観察する。観察した画像において、画像処理ソフトを用いて画像の明るさを2値化し、相対的に暗い箇所のそれぞれの面積で、πμm(直径2μmの気泡相当面積)以上のものを気泡として検出する。
【0053】
上釉層30を厚さ方向に切断した切断面の面積に対する気泡の面積の割合(以下、「上釉層30の気泡面積率」ともいう。)は、3%以下であり、2%以下が好ましい。上釉層30の気泡面積率が上記上限値以下であると、上釉層30に入射する光が上釉層30中の気泡で乱反射されることを抑制しやすい。このため、衛生陶器1の「深み」をより向上しやすい。上釉層30の気泡面積率の下限値は、特に限定されないが、通常、0.01%以上である。
上釉層30の気泡面積率(%)は、上述したマイクロスコープ等を用いて観察される画像において検出される気泡の総面積(mm)を、観察される画像における視野面積(mm)で除することにより求められる。
【0054】
上釉層30を厚さ方向に切断した切断面における気泡の平均気泡径(以下、「上釉層30の切断面における気泡の平均気泡径」ともいう。)は、50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。上釉層30の切断面における気泡の平均気泡径が上記上限値以下であると、上釉層30に入射する光が上釉層30中の気泡で乱反射されることを抑制しやすい。このため、衛生陶器1の「深み」をより向上しやすい。上釉層30の切断面における気泡の平均気泡径の下限値は、2μmとする。
上釉層30の切断面における気泡の平均気泡径(μm)は、上述したマイクロスコープ等を用いて観察される画像において、気泡として検出された部分のそれぞれの面積より真円換算で気泡径(直径)を計算し、気泡径の合計を検出された気泡数で除した平均値である。
【0055】
上釉層30を厚さ方向に切断した切断面における気泡数(以下、「上釉層30の切断面における気泡数」ともいう。)は、1mm当たり120個以下が好ましく、100個以下がより好ましく、80個以下がさらに好ましい。上釉層30の切断面における気泡数が上記上限値以下であると、上釉層30に入射する光が上釉層30中の気泡で乱反射されることを抑制しやすい。このため、衛生陶器1の「深み」をより向上しやすい。上釉層30の切断面における気泡数の下限値は、特に限定されないが、通常、1個以上である。
上釉層30の切断面における気泡数(個/mm)は、上述したマイクロスコープ等を用いて観察される画像において検出される気泡の数を、観察される画像における視野面積(mm)で除することにより求められる。
【0056】
上釉層30の厚さT30は、例えば、100μm以上が好ましく、100~1000μmがより好ましく、150~800μmがさらに好ましく、200~600μmが特に好ましい。厚さT30が上記下限値以上であると、上釉層30の表面を平坦に形成しやすい。厚さT30が上記上限値以下であると、上釉層組成物中の気泡を上釉層30の外部に放出しやすい。
【0057】
上釉層30の厚さT30は、例えば、以下の手順で求められる。
衛生陶器1を上釉層30の厚さ方向に小型試料切断機を用いて切断する。切断した切断面をマイクロスコープ(オリンパス(株)製、DSX510)により、倍率125倍で観察する。観察した画像において、上釉層30の表面と、上釉層30と中間層20との境界線(上中境界線)との距離を任意の20か所について測定する。測定した距離の算術平均値を上釉層30の厚さT30とする。
衛生陶器1を切断する部位は特に限定されず、人の目に触れやすい部位が好ましい。人の目に触れやすい部位としては、例えば、洗面器の鉢面、洗面器の天面、小便器の天面、便器のリム部分、便器の鉢面、便器の側面等が挙げられる。
【0058】
上釉層30の厚さT30の最大値T30MAXと、上釉層30の厚さT30の最小値T30MINとの差T30Δは、50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。差T30Δが上記上限値以下であると、上釉層30と中間層20との界面における光の乱反射を抑制しやすい。その結果、衛生陶器1の「深み」をより向上しやすい。差T30Δの下限値は、特に限定されないが、通常、0.1μm以上である。
【0059】
差T30Δの厚さT30に対する割合(以下、「T30Δ/T30比」ともいう。)は、25%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。T30Δ/T30比が上記上限値以下であると、上釉層30と中間層20との界面における光の乱反射を抑制しやすい。その結果、衛生陶器1の「深み」をより向上しやすい。T30Δ/T30比の下限値は、特に限定されないが、通常、0.01%以上である。
【0060】
厚さT30の最大値T30MAX厚さT30の最小値T30MINとは、例えば、以下の手順で求められる。
上釉層30の厚さT30を求める手順と同様に、上釉層30の表面と上中境界線との距離を任意の20か所について測定する。測定した20か所のうち、上釉層30の表面と上中境界線との距離が最大となるものを最大値T30MAXとする。測定した20か所のうち、上釉層30の表面と上中境界線との距離が最小となるものを最小値T30MINとする。
【0061】
差T30Δは、上釉層30と中間層20との界面を平坦に形成することにより制御できる。後述する中間層組成物の溶融開始温度、中間層20を厚さ方向に切断した切断面における平均気泡径、中間層20を厚さ方向に切断した切断面の面積に対する気泡の面積の割合、及びこれらの組合せにより、上釉層30と中間層20との界面の平滑性を制御できる。
【0062】
[中間層]
中間層20は、中間層組成物の焼成物である。中間層20は、陶器素地10と上釉層30との間に位置する釉を含む層である。中間層組成物は、中間層20を形成する原料(中間層原料)が水に分散されたスラリー(泥漿)である。
中間層組成物の総質量に対する水の含有量は、40~60質量%が好ましく、40~50質量%がより好ましい。
【0063】
中間層20には、例えば以下の物質の結晶相が含まれている。例えば、Al、ZrO、ZrO-SiO系、Al-SiO系、CaO-SiO系、MgO-SiO系、BaO-SiO系、SrO-SiO系、NaO-Al-SiO系、KO-Al-SiO系、CaO-Al-SiO系、MgO-Al-SiO系、BaO-Al-SiO系、SrO-Al-SiO系化合物などで、SiO、Al、ZrO、NaO、K20、CaO、MgO、SrO、BaOの化合物。
【0064】
中間層20は、上記結晶相を含んでおり不透明である。上釉層30は、上記結晶相を含んでいないため、中間層20よりも透明である。
【0065】
中間層組成物に含まれる固形分の平均粒子径は、10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましく、6μm以下がさらに好ましい。中間層組成物に含まれる固形分の平均粒子径が上記上限値以下であると、中間層組成物に含まれる固形分の溶融開始温度を低くしやすい。
中間層組成物に含まれる固形分の平均粒子径の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.05μm以上である。
中間層組成物に含まれる固形分の平均粒子径は、例えば、中間層原料を粉砕することにより調整できる。中間層原料を粉砕する道具としては、例えば、ボールミルが挙げられる。
【0066】
中間層組成物に含まれる固形分の平均粒子径は、上釉層組成物に含まれる固形分の平均粒子径と同様の方法により測定できる。
なお、中間層組成物に含まれる固形分は、中間層組成物の乾燥物である。
【0067】
中間層組成物としては、中間層組成物に含まれる固形分の総質量に対して、SiOを50~80質量%、Alを5~40質量%、NaOとKOとCaOとMgOとZnOとの合計を5~30質量%含有する組成物が挙げられる。
なお、中間層組成物に含まれる固形分の各成分の含有量の合計は、中間層組成物に含まれる固形分の総質量に対して、100質量%を超えないものとする。
【0068】
中間層組成物の組成としては、NaOとKOとCaOとMgOとZnOとの合計のモル数を1としたときのモル比で、SiOを2~16モル、Alを0~5モル含有する組成が好ましい。
【0069】
中間層組成物は、フリットを含有してもよい。フリットの含有量は、中間層組成物に含まれる固形分の総質量に対して、0~30質量%が好ましく、0~20質量%がより好ましい。
【0070】
中間層組成物の乾燥物(以下、中間層原料ともいう。)は、陶器素地組成物の乾燥物(以下、陶器素地原料ともいう。)と上釉層組成物の乾燥物(以下、釉原料ともいう。)との混合物であってもよい。
中間層原料が陶器素地原料と釉原料との混合物である場合、陶器素地原料/釉原料で表される質量比(以下、「素地/釉薬比」ともいう。)は、20/80~80/20が好ましく、30/70~70/30がより好ましく、40/60~60/40がさらに好ましい。素地/釉薬比が上記下限値以上であると、陶器素地10と中間層20との結着性を高めやすい。素地/釉薬比が上記上限値以下であると、中間層20と上釉層30との界面を平坦にしやすい。
衛生陶器1の「深み」をより向上する観点から、中間層原料は、陶器素地原料と釉原料との混合物が好ましい。
また、中間層組成物は、陶器素地組成物と上釉層組成物とを上記素地/釉薬比となるように混合した混合物であってもよい。
【0071】
中間層組成物は、顔料を含有することが好ましい。中間層組成物が顔料を含有することで、中間層20を着色できる。中間層20を着色することで、陶器素地10の色を隠蔽できる。
顔料としては、ケイ酸ジルコニウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。
中間層組成物が顔料を含有する場合、顔料の含有量は、中間層組成物に含まれる固形分の総質量に対して、3~15質量%が好ましく、6~15質量%がより好ましい。
【0072】
中間層組成物の溶融開始温度は、第一溶融温度で規定できる。
中間層組成物の第一溶融温度は、850~960℃が好ましく、910~950℃がより好ましく、930~950℃がさらに好ましい。中間層組成物の第一溶融温度が上記下限値以上であると、中間層組成物を焼成するときの気泡の発生を抑制しやすい。中間層組成物の第一溶融温度が上記上限値以下であると、上釉層30と中間層20との界面を平坦にしやすい。
中間層組成物の第一溶融温度は、上釉層組成物の第一溶融温度と同様の方法で測定できる。
【0073】
上釉層組成物の第一溶融温度と中間層組成物の第一溶融温度との温度差(第一温度差)は、10~120℃が好ましく、30~115℃がより好ましく、60~110℃がさらに好ましい。第一温度差が上記数値範囲内であると、上釉層30と中間層20との界面を平坦にしやすい。その結果、上釉層30と中間層20との界面における光の乱反射を抑制でき、衛生陶器1の「深み」をより向上しやすい。
【0074】
中間層組成物の第二溶融温度は、1090~1230℃が好ましく、1095~1225℃がより好ましく、1100~1220℃がさらに好ましい。中間層組成物の第二溶融温度が上記下限値以上であると、中間層組成物を焼成するときの気泡の発生を抑制しやすい。中間層組成物の第二溶融温度が上記上限値以下であると、上釉層30と中間層20との界面を平坦にしやすい。
中間層組成物の第二溶融温度は、上釉層組成物の第二溶融温度と同様の方法で測定できる。
【0075】
上釉層組成物の第二溶融温度と中間層組成物の第二溶融温度との温度差(第二温度差)は、10~330℃が好ましく、100~325℃がより好ましく、200~320℃がさらに好ましい。第二温度差が上記数値範囲内であると、上釉層30と中間層20との界面を平坦にしやすい。その結果、上釉層30と中間層20との界面における光の乱反射を抑制でき、衛生陶器1の「深み」をより向上しやすい。
【0076】
中間層組成物の第二溶融温度と第一溶融温度との差(中間層溶融温度差)は、50~300℃が好ましく、100~300℃がより好ましく、230~300℃がさらに好ましい。中間層溶融温度差が上記下限値以上であると、中間層組成物を焼成するときに発生する気泡の平均気泡径を小さくしやすい。中間層溶融温度差が上記上限値以下であると、中間層組成物を焼成するときの気泡の発生を抑制しやすい。
中間層溶融温度差は、中間層組成物の第二溶融温度から、中間層組成物の第一溶融温度を減じることにより求められる。
【0077】
中間層組成物の第一溶融温度は、中間層原料の種類、中間層原料の配合割合、中間層組成物の固形分の平均粒子径、及びこれらの組合せにより調整できる。
中間層組成物の第二溶融温度は、中間層組成物の第一溶融温度と同様に調整できる。
【0078】
中間層20を備える衛生陶器1から中間層20の溶融開始温度を求める場合、第一溶融温度、第二溶融温度は、中間層20の粉末を試料粉末として、上記測定方法2-1と同様の方法により測定される。
中間層20の粉末は、中間層20を適宜切り出し、研磨等することにより得られる。
中間層20の第一溶融温度は、中間層組成物の第一溶融温度と同様である。
中間層20の第二溶融温度は、中間層組成物の第二溶融温度と同様である。
中間層20の第二溶融温度と第一溶融温度との差は、中間層組成物の第二溶融温度と第一溶融温度との差(中間層溶融温度差)と同様である。
【0079】
中間層20を厚さ方向に切断した切断面の面積に対する気泡の面積の割合(以下、「中間層20の気泡面積率」ともいう。)は、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、12%以下がさらに好ましい。中間層20の気泡面積率が上記上限値以下であると、上釉層30に入射する光が中間層20中の気泡で乱反射されることを抑制しやすい。その結果、上釉層30と中間層20との界面における光の乱反射を抑制でき、衛生陶器1の「深み」をより向上しやすい。中間層20の気泡面積率の下限値は、特に限定されないが、通常、1.0%以上である。
中間層20の気泡面積率は、上釉層30の気泡面積率と同様の方法により求められる。
【0080】
中間層20を厚さ方向に切断した切断面における気泡の平均気泡径(以下、「中間層20の切断面における気泡の平均気泡径」ともいう。)は、25μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましい。中間層20の切断面における気泡の平均気泡径が上記上限値以下であると、上釉層30に入射する光が中間層20中の気泡で乱反射されることを抑制しやすい。その結果、上釉層30と中間層20との界面における光の乱反射を抑制でき、衛生陶器1の「深み」をより向上しやすい。中間層20の切断面における気泡の平均気泡径の下限値は、2μmとする。
中間層20の切断面における気泡の平均気泡径は、上釉層30の切断面における気泡の平均気泡径と同様の方法により求められる。
【0081】
中間層20を厚さ方向に切断した切断面における気泡数(以下、「中間層20の切断面における気泡数」ともいう。)は、1mm当たり1000個以下が好ましく、700個以下がより好ましく、500個以下がさらに好ましい。中間層20の切断面における気泡数が上記上限値以下であると、上釉層30に入射する光が中間層20中の気泡で乱反射されることを抑制しやすい。その結果、上釉層30と中間層20との界面における光の乱反射を抑制でき、衛生陶器1の「深み」をより向上しやすい。中間層20の切断面における気泡数の下限値は、特に限定されないが、通常、1個以上である。
中間層20の切断面における気泡数は、上釉層30の切断面における気泡数と同様の方法により計数できる。
【0082】
中間層20の厚さT20は、例えば、200μm以上が好ましく、200~1000μmがより好ましく、250~800μmがさらに好ましく、300~600μmが特に好ましい。厚さT20が上記下限値以上であると、中間層20と上釉層30との界面を平坦にしやすい。厚さT20が上記上限値以下であると、中間層組成物中の気泡を中間層20の外部に放出しやすい。
【0083】
中間層20の厚さT20は、例えば、以下の手順で求められる。
衛生陶器1を中間層20の厚さ方向に小型試料切断機を用いて切断する。切断した切断面をマイクロスコープ(オリンパス(株)製、DSX510)により、倍率125倍で観察する。観察した画像において、上釉層30と中間層20との境界線(上中境界線)と、中間層20と陶器素地10との境界線(中素境界線)との距離を任意の20か所について測定する。測定した距離の算術平均値を中間層20の厚さT20とする。
【0084】
中間層20の厚さT20の最大値T20MAXと、中間層20の厚さT20の最小値T20MINとの差T20Δは、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。差T20Δが上記上限値以下であると、上釉層30と中間層20との界面における光の乱反射を抑制しやすい。その結果、衛生陶器1の「深み」をより向上しやすい。差T20Δの下限値は、特に限定されないが、通常、0.1μm以上である。
【0085】
差T20Δの厚さT20に対する割合(以下、「T20Δ/T20比」ともいう。)は、25%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。T20Δ/T20比が上記上限値以下であると、上釉層30と中間層20との界面における光の乱反射を抑制しやすい。その結果、衛生陶器1の「深み」をより向上しやすい。T20Δ/T20比の下限値は、特に限定されないが、通常、0.01%以上である。
【0086】
厚さT20の最大値T20MAX厚さT20の最小値T20MINとは、例えば、以下の手順で求められる。
中間層20の厚さT20を求める手順と同様に、上中境界線と中素境界線との距離を任意の20か所について測定する。測定した20か所のうち、上中境界線と中素境界線との距離が最大となるものを最大値T20MAXとする。測定した20か所のうち、上中境界線と中素境界線との距離が最小となるものを最小値T20MINとする。
【0087】
[衛生陶器の製造方法]
次に、本実施形態の衛生陶器1の製造方法について説明する。
まず、陶器素地10を用意する。陶器素地10は、陶器素地組成物を成形したもの以外に、焼成して成形したものでもよく、予め成形された、又は成形して焼成された市販品であってもよい。
陶器素地組成物を焼成する場合、焼成温度は、例えば、1100~1300℃が好ましく、1150~1250℃がより好ましい。焼成温度が上記下限値以上であると、陶器素地10の強度を高めやすい。焼成温度が上記上限値以下であると、陶器素地10の変形を抑制しやすい。
【0088】
次に、中間層組成物を陶器素地10の表面に塗布する。中間層組成物を陶器素地10の表面に塗布する方法は、特に限定されず、浸し掛け、流し掛け、吹き掛け、塗り掛け等、一般的な方法を適宜選択できる。中間層20の厚さを確保する観点から、中間層組成物を陶器素地10の表面に塗布する方法は、浸し掛け、流し掛け、塗り掛け、又は吹き掛けのうちのいずれかが好ましい。中間層20の厚さを均一にしやすい観点から、中間層組成物を陶器素地10の表面に塗布する方法は、吹き掛けが好ましい。
浸し掛けとしては、ディップコーティング法が挙げられる。吹き掛けとしては、スプレーコーティング法が挙げられる。
【0089】
中間層組成物の塗布量は、特に限定されず、焼成後の中間層20の厚さを200μm以上にできるように調整することが好ましい。中間層組成物の塗布量は、中間層組成物の水の含有量、中間層組成物の粘度、中間層組成物に含まれる固形分の平均粒子径等を適宜調整することにより調整できる。
中間層組成物を陶器素地10の表面に塗布することにより、一次塗布体が得られる。
【0090】
一次塗布体を乾燥することにより、一次塗布体の表面に上釉層組成物を塗布しやすくなる。このため、一次塗布体は、乾燥することが好ましい。
一次塗布体を乾燥する際の温度は、20~110℃が好ましく、30~100℃がより好ましく、40~90℃がさらに好ましい。一次塗布体を乾燥する際の温度が上記下限値以上であると、中間層組成物の水の含有量を低減しやすい。一次塗布体を乾燥する際の温度が上記上限値以下であると、中間層20の表面を平坦にしやすい。
一次塗布体を乾燥する時間は、0.5~48時間が好ましい。一次塗布体を乾燥する時間が上記下限値以上であると、中間層組成物を充分に乾燥しやすい。一次塗布体を乾燥する時間が上記上限値以下であると、衛生陶器1の生産性を向上しやすい。
【0091】
次に、一次塗布体の表面に上釉層組成物を塗布する。上釉層組成物を塗布する方法は、上釉層30の厚さを調整しやすくする観点から、吹き掛け(スプレー掛け)が好ましい。
【0092】
上釉層組成物の塗布量は、特に限定されず、焼成後の上釉層30の厚さを100μm以上にできるように調整することが好ましい。上釉層組成物の塗布量は、上釉層組成物の水の含有量、上釉層組成物の粘度、上釉層組成物に含まれる固形分の平均粒子径等を適宜調整することにより調整できる。
上釉層組成物を一次塗布体の表面に塗布することにより、二次塗布体が得られる。
【0093】
次に、二次塗布体を焼成する。二次塗布体を焼成する際の焼成温度としては、陶器素地10が焼結し、かつ、中間層組成物と上釉層組成物とが軟化する温度が好ましい。二次塗布体を焼成する際の焼成温度は、例えば、1100~1300℃が好ましく、1150~1250℃がより好ましい。二次塗布体を焼成する際の焼成温度が上記下限値以上であると、上釉層組成物を充分に溶融しやすい。加えて、二次塗布体を焼成する際の焼成温度が上記下限値以上であると、中間層組成物を充分に溶融しやすい。二次塗布体を焼成する際の焼成温度が上記上限値以下であると、上釉層30の表面を平坦に形成しやすい。加えて、二次塗布体を焼成する際の焼成温度が上記上限値以下であると、中間層20と上釉層30との界面を平坦にしやすい。
【0094】
二次塗布体を焼成する焼成時間は、1~168時間が好ましく、2~72時間がより好ましく、3~24時間がさらに好ましい。二次塗布体を焼成する焼成時間が上記下限値以上であると、上釉層30の表面を平坦に形成しやすい。加えて、二次塗布体を焼成する焼成時間が上記下限値以上であると、中間層20と上釉層30との界面を平坦にしやすい。二次塗布体を焼成する焼成時間が上記上限値以下であると、衛生陶器1の生産性を向上しやすい。
【0095】
二次塗布体を焼成することにより、焼成品が得られる。焼成品は、冷却することにより、衛生陶器1となる。衛生陶器1は、焼成品を自然放冷することにより得てもよく、送風する等、冷却することにより得てもよい。
焼成品を冷却する際の温度域は、800~1300℃が好ましく、900~1250℃がより好ましい。焼成品を冷却する際の温度域が上記下限値以上であると、気泡を上釉層30の外部に放出しやすい。焼成品を冷却する際の温度域が上記上限値以下であると、上釉層30の表面を平坦に形成しやすい。
焼成品を冷却する際の降温速度は、30℃/分以下が好ましく、10℃/分以下がより好ましく、0.1℃/分以下がさらに好ましい。焼成品を冷却する際の降温速度が上記上限値以下であると、気泡を上釉層30の外部に放出しやすい。加えて、焼成品を冷却する際の降温速度が上記上限値以下であると、上釉層30の表面を平坦に形成しやすい。
【0096】
衛生陶器1は、中間層組成物を陶器素地10の表面に、浸し掛け、流し掛け、塗り掛け、又は吹き掛けのいずれかにより塗布した後焼成して一次焼成体を得(第一焼成工程)、前記一次焼成体に上釉層組成物を塗布して焼成すること(第二焼成工程)によって得てもよい。
【0097】
第一焼成工程の焼成温度は、800~1000℃が好ましく、850~950℃がより好ましい。第一焼成工程の焼成温度が上記下限値以上であると、中間層組成物を充分に溶融しやすい。加えて、陶器素地10、中間層20のガス抜きがされ、上釉層30への気泡の混入を抑制しやすい。第一焼成工程の焼成温度が上記上限値以下であると、中間層20の表面を平坦に形成しやすく、上釉層組成物との密着性を向上しやすい。
第一焼成工程の焼成時間は、1~168時間が好ましく、2~72時間がより好ましく、3~24時間がさらに好ましい。第一焼成工程の焼成時間が上記下限値以上であると、中間層20の表面を平坦に形成しやすい。加えて、陶器素地10、中間層20のガス抜きがされ、上釉層30への気泡の混入を抑制しやすい。第一焼成工程の焼成時間が上記上限値以下であると、衛生陶器1の生産性を向上しやすい。
一次塗布体を焼成することにより一次焼成体が得られる。
【0098】
一次焼成体は、上釉層組成物を塗布する前に冷却することが好ましい。一次焼成体を冷却する際の温度は、800~1000℃が好ましく、850~950℃がより好ましい。一次焼成体を冷却する際の温度が上記下限値以上であると、気泡を中間層20の外部に放出しやすい。一次焼成体を冷却する際の温度が上記上限値以下であると、中間層20の表面を平坦に形成しやすい。
一次焼成体を冷却する際の降温速度は、30℃/分以下が好ましく、10℃/分以下がより好ましい。一次焼成体を冷却する際の降温速度が上記上限値以下であると、気泡を中間層20の外部に放出しやすい。加えて、一次焼成体を冷却する際の降温速度が上記上限値以下であると、中間層20の表面を平坦に形成しやすい。
【0099】
次に、一次焼成体の表面に上釉層組成物を塗布する。一次焼成体の表面に上釉層組成物を塗布する方法は、上釉層30の厚さを調整しやすくする観点から、吹き掛け(スプレー掛け)が好ましい。
一次焼成体の表面に上釉層組成物を塗布する際の塗布量は、一次塗布体の表面に上釉層組成物を塗布する際の塗布量と同様である。
上釉層組成物を一次焼成体の表面に塗布することにより、二次塗布体が得られる。
【0100】
次に、二次塗布体を焼成する(第二焼成工程)。第二焼成工程の焼成温度は、1100~1300℃が好ましく、1150~1250℃がより好ましい。第二焼成工程の焼成温度が上記下限値以上であると、上釉層組成物を充分に溶融しやすい。第二焼成工程の焼成温度が上記上限値以下であると、上釉層30の表面を平坦に形成しやすい。
第二焼成工程の焼成時間は、1~168時間が好ましく、2~72時間がより好ましく、3~24時間がさらに好ましい。第二焼成工程の焼成時間が上記下限値以上であると、上釉層30の表面を平坦に形成しやすい。第二焼成工程の焼成時間が上記上限値以下であると、衛生陶器1の生産性を向上しやすい。
第二焼成工程により焼成品が得られる。焼成品は、冷却することにより、衛生陶器1となる。焼成品を冷却する際の温度は、上述した焼成品を冷却する際の温度と同様である。焼成品を冷却する際の降温速度は、上述した焼成品を冷却する際の降温速度と同様である。
【0101】
一次焼成体を経由して衛生陶器1を得ることにより、中間層20と上釉層30との界面をより平坦に形成しやすい。また、中間層20及び上釉層30に含まれる気泡の数を減らしやすい。このため、衛生陶器1の「深み」をより向上しやすい。
衛生陶器1の「深み」をより向上しやすい観点から、本発明の衛生陶器の製造方法は、一次焼成体を経由して衛生陶器1を得ることが好ましい。
【0102】
上述した実施形態では、衛生陶器1は、陶器素地10と中間層20と上釉層30とを備える。しかしながら、本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば、衛生陶器は、中間層を有していなくてもよい。すなわち、衛生陶器は、陶器素地の表面に上釉層(釉薬層)を備える形態であってもよい。また、上釉層30と中間層20の間に他の釉薬層を有していても良く、釉薬層は、複数層になってもよい。すなわち、衛生陶器は、陶器素地の表面に、中間層、次いで、単層又は複層の釉薬層、さらにその上に、上釉層(釉薬層)を備える形態であってもよい。
衛生陶器の「深み」をより向上しやすい観点から、衛生陶器は、中間層を備えることが好ましい。
なお、衛生陶器が中間層を有していない場合、上釉層(釉薬層)の厚さは、例えば、以下の手順で求められる。
衛生陶器を上釉層の厚さ方向に小型試料切断機を用いて切断する。切断した切断面をマイクロスコープ(オリンパス(株)製、DSX510)により、倍率125倍で観察する。観察した画像において、上釉層の表面と、上釉層と陶器素地との境界線(上素境界線)との距離を任意の20か所について測定する。測定した距離の算術平均値を上釉層の厚さとする。
【0103】
[「深み」]
次に、上記の衛生陶器1で形成された洗面器100の「深み」について説明する。
図6は、フレネル反射率を示すグラフである。鉄、ダイヤモンド、ガラス、水のフレネル反射率を示している。
入射角と反射率との関係を示すフレネル反射率が急激に変化する範囲では、光の反射が変わり、「深み」を非常に感じやすい。図6では、入射角が0度~約45度のフレネル反射率がほとんど変化しない領域を細かいドッドで示し、入射角が約75度以上のフレネル反射率が急激に変化する領域を荒いドッドで示し、入射角が約45度~約75度のフレネル反射率が少し変化する領域を両者の中間のドッドで示している。なお、上釉層30のフレネル反射率を示すグラフは、図6に示すガラスと近い曲線となる。
【0104】
上釉層30は、透明であり、気泡が少なく、光の入射の支障となるものがない。上釉層30を通過した光は、透明な上釉層30と不透明な中間層20との界面での乱れが少なくなり、「深み」を感じやすい。
【0105】
つまり、利用者Mが、洗面室に入って壁際に立った位置から洗面器100に近づいた位置までの間に、フレネル反射率が急激に変化する領域を通過することで、「深み」を感じることができる。本実施形態では、角度(縁角度)X1を約45度とすることで、フレネル反射率が急激に変化する領域を通過することができる。
【0106】
一般的に、フレネル反射率が高かったり、更にフレネル反射率の変化を感じられたりすると、深みを感じやすい。上記のように構成された洗面器100では、上釉層30が中間層20よりも透明であり、角度(縁角度)X1を約45度とすることで、利用者Mが洗面室に入って壁際に立った位置から洗面器100に近づいた位置までの間に、フレネル反射率が急激に変化する領域を通過するため、「深み」を感じることができる。
【0107】
また、ボウル部101の曲面101uの手前側の端部101aは、ボウル部101の周縁部104をなしている。つまり、ボウル部101の曲面101uの手前側の端部101aには、端部101aから上方に立設する壁部や利用者M側に延びる壁部等が設けられていない。よって、利用者Mが洗面器100を使用する際に、表面(曲面)101uの端部101aの接線の延長線に沿って洗面器100の曲面101uを視認することになるため、「深み」をより一層高めることができる。
【0108】
また、ボウル部101の曲面101uの手前側の端部101aの接線は水平面に対して35度から45度で形成されているため、「深み」をより一層高めることができる。
【0109】
(変形例1)
次に、本発明の一実施形態の変形例1に係る洗面器について、主に図7図9を用いて説明する。
図7は、本発明の一実施形態の変形例1に係る洗面器が設置される空間の側面図である。図8は、本発明の一実施形態の変形例1に係る洗面器の平面図である。図9は、図8のB-B線断面図である。図5では、洗面器を断面図で示している。
下記に示す変形例の説明において、前述した部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0110】
図7図9に示すように、本変形例では、洗面器110は、洗面本体110Aを有している。洗面本体110Aは、下向きに凹む凹部が形成されたボウル部111と、略平坦に形成された平坦部118と、を有している。洗面器110は、平面視で略矩形状をなしつつ、四隅が湾曲形成されている。
【0111】
平面視で、ボウル部111の平面視略中央には、排水口部112が設けられている。
【0112】
ボウル部111の表面は、下方に凹む連続した曲面111u及び奥側立設面111vで形成されている。曲面111uは、ボウル部111の奥側を除く周縁部114から平面視の中央側に向かうにしたがって下方に傾斜している。
【0113】
奥側立設面111vは、曲面111uの奥側の端部から上方に立設されている。平坦部118は、奥側立設面111vの上端部に設けられている。平坦部118は、上面が略水平に形成されている。
【0114】
ボウル部111の曲面111uの手前側の端部111aは、ボウル部111の周縁部114をなしている。つまり、ボウル部111の曲面111uの手前側の端部111aには、端部111aから上方に立設する壁部や、手前側に延出する壁部等が設けられていない。
【0115】
本変形例では、ボウル部111の曲面111uの手前側の端部111aの接線と水平面Hとのなす角度X2は、約35度である。
【0116】
標準的な尺モジュールの戸建住宅で、身長約170cmの利用者Mが洗面室に入った際に、利用者Mから洗面器110の端部111aに向けられて視線J2と水平面Hとのなす角度Y2は、角度X2と略同一である。よって、利用者Mの視線J2は、ボウル部111の端部111aから曲面111uに沿うようになる。
【0117】
このように構成された洗面器110では、上釉層30が中間層20よりも透明であり、角度(縁角度)X2を約35度とすることで、利用者Mが洗面室に入って壁際に立った位置から洗面器110に近づいた位置までの間に、フレネル反射率が急激に変化する領域を通過するため、「深み」を感じることができる。
【0118】
(変形例2)
次に、本発明の一実施形態の変形例2に係る洗面器について、主に図10を用いて説明する。
図10は、本発明の一実施形態の変形例2に係る洗面器の断面図である。
図10に示すように、本変形例では、洗面器120は、洗面本体120Aを有している。洗面本体120Aは、下向きに凹む凹部が形成されたボウル部121と、立設壁部122と、を有している。
【0119】
ボウル部121の表面は、下方に凹む連続した曲面121uで形成されている。曲面121uは、平面視の中央側に向かうにしたがって下方に傾斜している。
【0120】
立設壁部122は、ボウル部121の曲面121uの手前側の端部121a及び奥側の端部121bからそれぞれ上方に立設されている。立設壁部122は、ボウル部121の端部121a,121bから幅方向(利用者がボウル部121を使用する際に、利用者から見た左右方向)に延在していてもよい。
【0121】
ボウル部121の曲面121uの手前側の端部121aの接線と水平面Hとのなす角度X3は、約35度である。
【0122】
このように構成された洗面器120では、上釉層30が中間層20よりも透明であり、角度X3を約35度とすることで、利用者Mが洗面室に入って壁際に立った位置から洗面器120に近づいた位置までの間に、フレネル反射率が急激に変化する領域を通過するため、「深み」を感じることができる。
【0123】
(変形例3)
次に、本発明の一実施形態の変形例3に係る洗面器について、主に図11を用いて説明する。
図11は、本発明の一実施形態の変形例3に係る洗面器の断面図である。
図11に示すように、本変形例では、洗面器130は、洗面本体130Aを有している。洗面本体130Aは、下向きに凹む凹部が形成されたボウル部131と、平坦部136と、立設壁部137と、を有している。
【0124】
ボウル部131の表面は、下方に凹む連続した曲面131uで形成されている。曲面131uは、平面視の中央側に向かうにしたがって下方に傾斜している。
【0125】
平坦部136は、曲面131uの手前側の端部131a及び奥側の端部131bにそれぞれ設けられている。平坦部136は、上面が略水平に形成されている。
【0126】
立設壁部137は、平坦部136の手前側の端部136a及び奥側の端部136bからそれぞれ上方に立設されている。平坦部136及び立設壁部137は、幅方向に延在していてもよい。ボウル部131の曲面131uの手前側の端部131aの接線と水平面Hとのなす角度X4は、約35度である。
【0127】
このように構成された洗面器130では、上釉層30が中間層20よりも透明であり、角度X4を約35度とすることで、利用者Mが洗面室に入って壁際に立った位置から洗面器130に近づいた位置までの間に、フレネル反射率が急激に変化する領域を通過するため、「深み」を感じることができる。
【0128】
(実施例A~G)
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0129】
実施例A~G、比較例A,Bでは、見る位置、洗面器縁角度、入射角を下記の表1に示す条件で、それぞれ「深み」を評価している。なお、実施例A~Gは、後述する実施例4と同じ釉薬構成の洗面器を使用している。
【0130】
【表1】
【0131】
「深み」の評価は、図6に示すフレネル反射率が急激に変化する領域(荒いドッド)では、わずかに目線をずらすだけで光の反射が変わり、「深み」を非常に感じるとして「◎」としている。また、フレネル反射率がほとんど変化しない領域(細かいドッド)では、目線をずらしても光の反射がなく、「深み」を感じないとして「×」としている。また、フレネル反射率が少し変化する領域(両者の中間のドッド)では、ある程度目線をずらすと光の反射が変わり、「深み」を感じるとして「○」としている。
【0132】
表1に示すように、実施例A,B,Eでは「深み」を感じ、実施例C、D,F,Gでは「深み」を非常に感じ、比較例A,Bでは「深み」を感じないという結果になっている。よって、縁角度5度~75度では「深み」を感じ、さらに縁角度35度~75度では「深み」を非常に感じることが分かる。
【0133】
(実施例1~18)
本実施例において使用した原料は、下記の[使用原料]に示す通りである。
【0134】
[使用原料]
<陶器素地原料>
A-1:陶石10質量部、長石40質量部、粘土50質量部(SiO70質量%、Al25質量%、NaOとKOとCaOとMgOとZnOとの合計5質量%)。
A-2:陶石30質量部、粘土70質量部(SiO65質量%、Al30質量%、NaOとKOとCaOとMgOとZnOとの合計5質量%)。
【0135】
<中間層原料>
B-1:SiO65質量%、Al20質量%、NaOとKOとCaOとMgOとZnOとの合計12質量%、その他3質量%。
B-2:陶器素地原料A-2と、下記釉原料C-9とを質量比(素地/釉薬比)80/20で混合した混合物。
B-3:陶器素地原料A-2と、下記釉原料C-9とを質量比(素地/釉薬比)70/30で混合した混合物。
B-4:陶器素地原料A-2と、下記釉原料C-9とを質量比(素地/釉薬比)60/40で混合した混合物。
B-5:陶器素地原料A-2と、下記釉原料C-9とを質量比(素地/釉薬比)50/50で混合した混合物。
B-6:陶器素地原料A-2と、下記釉原料C-9とを質量比(素地/釉薬比)40/60で混合した混合物。
B-7:陶器素地原料A-2と、下記釉原料C-9とを質量比(素地/釉薬比)30/70で混合した混合物。
B-8:陶器素地原料A-2と、下記釉原料C-9とを質量比(素地/釉薬比)20/80で混合した混合物。
B-9:陶器素地原料A-2と、下記釉原料C-9とを質量比(素地/釉薬比)10/90で混合した混合物。
B-10:陶器素地原料A-2と、下記釉原料C-9とを質量比(素地/釉薬比)0/100で混合した混合物。
【0136】
<釉原料>
C-1:SiO63質量%、Al12質量%、NaOとKOとCaOとMgOとZnOとSrOとBaOとBとの合計24質量%、その他1質量%。
C-2:SiO62質量%、Al13質量%、NaOとKOとCaOとMgOとZnOとSrOとBaOとBとの合計24質量%、その他1質量%。
C-3:SiO62質量%、Al13質量%、NaOとKOとCaOとMgOとZnOとSrOとBaOとBとの合計24質量%、その他1質量%。
C-4:SiO64質量%、Al12質量%、NaOとKOとCaOとMgOとZnOとSrOとBaOとBとの合計24質量%。
C-5:SiO57質量%、Al10質量%、NaOとKOとCaOとMgOとZnOとSrOとBaOとBとの合計32質量%、その他1質量%。
C-6:SiO63質量%、Al12質量%、NaOとKOとCaOとMgOとZnOとSrOとBaOとBとの合計24質量%、その他1質量%。
C-7:SiO66質量%、Al12質量%、NaOとKOとCaOとMgOとZnOとSrOとBaOとBとの合計22質量%。
C-8:SiO70質量%、Al11質量%、NaOとKOとCaOとMgOとZnOとSrOとBaOとBとの合計19質量%。
C-9:SiO63質量%、Al10質量%、NaOとKOとCaOとMgOとZnOとSrOとBaOとBとの合計20質量%、その他7質量%。
C-10:SiO61質量%、Al12質量%、NaOとKOとCaOとMgOとZnOとSrOとBaOとBとの合計27質量%。
C-11:SiO57質量%、Al11質量%、NaOとKOとCaOとMgOとZnOとSrOとBaOとBとの合計25質量%、その他7質量%。
【0137】
[陶器素地の調製]
陶器素地原料A-1を1kg、水を0.4kg混合し、混合物を得た。その混合物をボールミルにより20時間粉砕し、陶器素地組成物を得た。レーザー回折式粒度分布測定器(日機装(株)製、「MT3300EX(型番)」)を用いて、陶器素地組成物の固形分の粒子径を測定したところ、D50が12μmであった。
【0138】
次に、長さ100mm、幅100mm、厚さ10mmの石膏型に前記陶器素地組成物を流し込み、陶器素地を得た。
【0139】
[フリットの調製]
フリット原料として釉原料C-1~C-11を1500℃で溶融させてフリットF-1~F-11を得た。
【0140】
[中間層組成物の調製]
中間層原料B-1を1kg、水を0.4kg混合し、混合物を得た。その混合物をボールミルにより20時間粉砕し、中間層組成物M-1を得た。前記レーザー回折式粒度分布測定器を用いて、中間層組成物M-1の固形分の粒子径を測定したところ、D50が8μmであった。
【0141】
中間層原料B-1の代わりに中間層原料B-2~B-10を用いた以外は、中間層組成物M-1と同様の方法で、中間層組成物M-2~M-10を得た。中間層組成物M-11は、中間層原料として釉原料C-11を1kg、水を0.6kg混合し、混合物を得ることにより調製した。
なお、表2~3中、中間層組成物の「種類」は、上記中間層組成物M-1~M-11のいずれかを表す。中間層組成物の「D50(μm)」は、上記中間層組成物M-1~M-11のいずれかの50%平均粒子径(D50)を表す。
【0142】
[上釉層組成物の調製]
フリットF-1を1kg、水を0.6kg混合し、混合物を得た。その混合物をボールミルにより30時間粉砕し、粘性調整のため、カルボキシメチルセルロース等の粘性調整剤を添加し、上釉層組成物G-1を得た。前記レーザー回折式粒度分布測定器を用いて、上釉層組成物G-1の固形分の粒子径を測定したところ、D50が15μmであった。
【0143】
フリットF-1の代わりにフリットF-2~F-10を用いた以外は、上釉層組成物G-1と同様の方法で、上釉層組成物G-2~G-10を得た。
なお、表2~3中、上釉層組成物の「種類」は、上記上釉層組成物G-1~G-10のいずれかを表す。上釉層組成物の「D50(μm)」は、上記上釉層組成物G-1~G-10のいずれかの50%平均粒子径(D50)を表す。
【0144】
[実施例1~18、比較例1~2]
[衛生陶器の調製]
上記陶器素地に表2~3に記載の中間層組成物をスプレーコーティング法により塗布して、60℃で1時間乾燥させた後、表2~3に記載の上釉層組成物をスプレーコーティング法により塗布して二次塗布体を得た。二次塗布体を1220℃で20時間焼成し、直方体の衛生陶器の試料を得た。
【0145】
<上釉層の厚さの測定>
小型試料切断機を用いて、各例の試料を試料の長さ方向の一辺の中点を通り試料の幅方向と平行な面で厚さ方向に切断した。切断した切断面をマイクロスコープ(オリンパス(株)製、DSX510)により、倍率125倍で観察した。観察した画像の幅方向の一端から他端までを幅方向に10等分して、それぞれ2か所の上釉層の表面と上中境界線との距離(L30)を測定した。一つの試料につき合計20か所の上記距離(L30)を測定し、上釉層の厚さの最大値、最小値、最大値と最小値との差、平均値を求めた。上記距離(L30)の平均値を上釉層の厚さとした。結果を表2~3に示す。表中、「差」は、上釉層の厚さの最大値と最小値との差を表す。
【0146】
<中間層の厚さの測定>
上釉層の厚さで観察した画像を用いて、観察した画像の幅方向の一端から他端までを幅方向に10等分して、それぞれ2か所の上中境界線と中素境界線との距離(L20)を測定した。一つの試料につき合計20か所の上記距離(L20)を測定し、平均値を求め、中間層の厚さとした。結果を表2~3に示す。
【0147】
<平均気泡径、気泡面積率、気泡数の測定>
上記のマイクロスコープにより観察した画像を用いて、装置処理ソフト(三谷商事(株)、WinROOF2015)により、画像を2値化し、画像解析により、上釉層の切断面における平均気泡径、気泡面積率、気泡数を求めた。加えて、中間層の切断面における平均気泡径、気泡面積率、気泡数を求めた。結果を表2~3に示す。
【0148】
<写像性の測定>
各例の試料を準備し、ウェーブスキャンDOI測定装置(BYK Gardner社製、Wave-Scan-DUAL)によって、DOI値を測定した。結果を表2~3に示す。
【0149】
<「深み」の評価>
各例の試料を準備し、室内で蛍光灯にかざし、「深み」として光の奥行感、表面の綺麗さを感じるか、という観点から、外観感応評価を実施した。外観感応評価は、被験者10人で実施し、下記評価基準に基づいて、「深み」を評価した。結果を表2~3に示す。
《評価基準》
○:「深み」を感じる被験者の数が5人以上。
×:「深み」を感じる被験者の数が4人以下。
【0150】
【表2】
【0151】
【表3】
【0152】
表2~3に示すように、本発明を適用した実施例1~18は、「深み」の評価が「○」で、「深み」をより向上できていることが分かった。
一方、上釉層の切断面における平均気泡径、気泡面積率、気泡数のいずれかが本発明の適用範囲外である比較例1~2は、「深み」の評価が「×」だった。
【0153】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0154】
例えば、上記に示す実施形態では、ボウル部101の曲面101uは、底部101bを除いて、曲面で形成されているが、本発明はこれに限られず、ボウルの表面における少なくとも利用者が対向する側が下方に凹む連続した曲面で形成されていればよい。
【符号の説明】
【0155】
1…衛生陶器
10…陶器素地
20…中間層
30…上釉層
100…洗面器
101…ボウル部
101u…曲面(傾斜面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11