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特許7329927コンクリート締固めシステム、及びコンクリート締固め方法
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  • 特許-コンクリート締固めシステム、及びコンクリート締固め方法 図1
  • 特許-コンクリート締固めシステム、及びコンクリート締固め方法 図2
  • 特許-コンクリート締固めシステム、及びコンクリート締固め方法 図3
  • 特許-コンクリート締固めシステム、及びコンクリート締固め方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】コンクリート締固めシステム、及びコンクリート締固め方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/08 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
E04G21/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019009377
(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公開番号】P2020117933
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591284601
【氏名又は名称】株式会社演算工房
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】宇野 昌利
(72)【発明者】
【氏名】根本 浩史
(72)【発明者】
【氏名】林 稔
(72)【発明者】
【氏名】白坂 紀彦
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-193601(JP,A)
【文献】特開2003-003795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/06-21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向における第1端部に振動部が配置され、前記第1端部とは反対側の端部である第2端部に対して前記長手方向に沿って離間して第1計測部と第2計測部とが設けられるバイブレータ装置と、
前記バイブレータ装置の前記第1計測部及び第2計測部の位置を検出し、検出された第1計測部及び第2計測部の位置に基づいて、前記第1端部の振動部の位置を求める振動部位置情報算出部と、
前記振動部位置情報算出部によって求められた振動部の位置を記憶する締固め位置記憶部と
を有するコンクリート締固めシステム。
【請求項2】
前記振動部がオンであるか否かの駆動状態を表す駆動情報を取得する駆動情報取得部と、
前記振動部の位置に前記駆動情報取得部によって取得した駆動情報を対応づけて前記締固め位置記憶部に記憶する位置情報管理部
を有する請求項1記載のコンクリート締固めシステム。
【請求項3】
前記振動部位置情報算出部は、トータルステーションを用いて前記第1計測部及び第2計測部の位置を測定する
請求項1から請求項2のうちいずれか1項に記載のコンクリート締固めシステム。
【請求項4】
長手方向における第1端部に振動部が配置され、前記第1端部とは反対側の端部である第2端部に対して前記長手方向に沿って離間して第1計測部と第2計測部とが設けられるバイブレータ装置を用意し、
前記バイブレータ装置の前記第1計測部及び第2計測部の位置を検出し、
検出された第1計測部及び第2計測部の位置に基づいて、前記第1端部の振動部の位置を求める
コンクリート締固め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート締固めシステム、及びコンクリート締固め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート施工工事では、コンクリートの打設を行った後、締固めを行う。締固めの作業では、特許文献1に示されるように、バイブレータをコンクリート中に挿入して、コンクリートに振動を与える。バイブレータとしては、ホースの先端に振動部を有するものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-198991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
締固めにおいてバイブレータの先端やホースを移動させる作業は、人手による作業であるため、平面的な位置管理、深さ管理などが定性的に行われている。このため、締固め作業が行われていない箇所が残っている場合には、ジャンカと呼ばれるセメントと砂利の分離等の不具合が発生する要因となっている。
【0005】
上述の課題を鑑み、本発明は、締固め作業を行った平面的な位置や深さを管理できるコンクリート締固めシステム、及びコンクリート締固め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係るコンクリート締固めシステムは、長手方向における第1端部に振動部が配置され、前記第1端部とは反対側の端部である第2端部に対して前記長手方向に沿って離間して第1計測部と第2計測部とが設けられるバイブレータ装置と、前記バイブレータ装置の前記第1計測部及び第2計測部の位置を検出し、検出された第1計測部及び第2計測部の位置に基づいて、前記第1端部の振動部の位置を求める振動部位置情報算出部と、前記振動部位置情報算出部によって求められた振動部の位置を記憶する締固め位置記憶部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係るコンクリート締固め方法は、長手方向における第1端部に振動部が配置され、前記第1端部とは反対側の端部である第2端部に対して前記長手方向に沿って離間して第1計測部と第2計測部とが設けられるバイブレータ装置を用意し、前記バイブレータ装置の前記第1計測部及び第2計測部の位置を検出し、検出された第1計測部及び第2計測部の位置に基づいて、前記第1端部の振動部の位置を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バイブレータの振動部の位置情報を求めることができ、この振動部の位置の測定結果を適宜記録することで、どの位置において締固めが行われたかを定量的に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係るコンクリート締固めシステムの概要の説明図である。
図2】本発明の実施の形態に係るコンクリート締固めシステムにおけるバイブレータ装置の概要の説明図である。
図3】振動部の3次元位置情報の取得の説明図である。
図4】本発明の実施の形態に係るコンクリート締固めシステムにおける制御装置の機能に基づくブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るコンクリート締固めシステム1の概要の説明図である。
【0012】
図1において、施工領域10は、コンクリートの締固め工事を実施する領域である。なお、施工領域10において、足場等については省略してある。施工領域10の周囲には、例えば3台のトータルステーション11a、11b、11cが配置されている。トータルステーション11a、11b、11cの設置位置はGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星12を用いて計測されている。トータルステーション11a、11b、11cの設置位置は、締固めの位置を管理するための基準点となる。
【0013】
作業員15は、バイブレータ装置20を使用して締固め作業を行う。図2は、本発明の第1の実施の形態に係るコンクリート締固めシステム1におけるバイブレータ装置20の概要の説明図である。図2に示すように、バイブレータ装置20は棒状の形状をしており、竿部21と、竿部21の長手方向の先端に取り付けられた振動部22と、竿部21の長手方向の他端に取り付けられた第1の反射プリズム(第1計測部)23aと、第1の反射プリズム23aから所定の距離だけ長手方向に離間して取り付けられた第2の反射プリズム(第2計測部)23bとから構成される。図1に示すように、作業員15は、振動部22を下方に向けて竿部21を把持し、振動部22をコンクリート内に挿入して締固め作業を行う。
【0014】
振動部22は、コンクリートに振動を与える。振動部22の内部にはモータが装着されており、モータの回転により回転振動を発生する。振動部22には、振動部22内のモータを可動させるための電力を送るケーブル24が接続されている。ケーブル24は、第1の反射プリズム23aまたは第2の反射プリズム23bの近傍から取り出され、振動部22に接続される端子とは異なる端子が設けられており、制御装置30に接続可能である。竿部21には、図示されていないが、振動部22の動作をオン/オフするスイッチが設けられている。ケーブル24からの信号により、振動部22内のモータのオン/オフを示す駆動情報を取得することができる。
【0015】
第1及び第2の反射プリズム23a及び23bは360度反射プリズムであり、各トータルステーション11a、11b、11cからの光波のターゲットとなる。各トータルステーション11a、11b、11cからの光波は、第1及び第2の反射プリズム23a及び23bで反射され、各トータルステーション11a、11b、11cで受信される。これにより、第1及び第2の反射プリズム23a及び23bの位置が測量される。なお、この例では、切梁等の障害物もあるため、3台のトータルステーション11a、11b、11cを設置し、補完して位置情報を把握するようにしている。
【0016】
制御装置30は、各トータルステーション11a、11b、11cから、第1及び第2の反射プリズム23a及び23bの位置情報を取得する。そして、制御装置30は、第1及び第2の反射プリズム23a及び23bの位置情報から、振動部22の三次元位置情報(x方向、y方向、z方向)を算出する。ここでは、第1及び第2の反射プリズム23a及び23b、振動部22の竿部21に設けられる位置については、予め決められており、把握可能である。また、制御装置30は、バイブレータ装置20のケーブル24からの信号により、振動部22内のモータのオン/オフを示す駆動情報取得する。そして、制御装置30は、各時間毎に振動部22の位置情報に駆動情報を対応づけて記憶する。これにより、締固め作業を行った平面的な位置や深さを定量的に管理できる。
【0017】
次に、振動部22の3次元の位置情報の取得について説明する。図3は、振動部22の3次元位置情報の取得の説明図である。図3(A)は、バイブレータ装置20の竿部21をコンクリート面に対して鉛直方向に操作したときを示し、図4(B)は、バイブレータ装置20の竿部21をコンクリート面に対して斜め方向に操作したときを示している。なお、図3において、x軸及びy軸は互いに直行する水平面の方向を示し、z軸は深さ方向を示している。
【0018】
図3(A)に示すように、バイブレータ装置20の竿部21をコンクリート面に対して鉛直方向に操作したとする。このとき、第1の反射プリズム23aの位置は(x1,y1,z1)であり、第2の反射プリズム23bの位置は(x1,y1,z2)であったとする。竿部21をコンクリート面に対して鉛直方向に操作したときには、第1の反射プリズム23aと第2の反射プリズム23bとは、その水平方向の位置は等しくなる。この例では、第1の反射プリズム23aのx方向の位置と第2の反射プリズム23bのx方向の位置は共にx1であり、第1の反射プリズム23aのy方向の位置と第2の反射プリズム23bのy方向の位置は共にy1である。第2の反射プリズム23bの深さ方向の位置z2は、第1の反射プリズム23aの深さ方向の位置z1に、第1の反射プリズム23aと第2の反射プリズム23bとの間の距離dを加算した値(z2=z1+d)となる。
【0019】
振動部22は、第1の反射プリズム23aの位置(x1,y1,z1)と第2の反射プリズム23bの位置(x1,y1,z2)との延長線上の位置(x1,y1,z3)にある。バイブレータ装置20の竿部21をコンクリート面に対して鉛直方向に操作したときには、振動部22の水平方向の位置は、第1の反射プリズム23a及び第2の反射プリズム23bの水平方向の位置と等しくなる。すなわち、振動部22のx方向の位置は、第1及び第2の反射プリズム23a及び23bのx方向の位置x1と等しく、振動部22のy方向の位置は、第1及び第2の反射プリズム23a及び23bのy方向の位置y1と等しい。振動部22のz方向の位置z3は、第1の反射プリズム23aのz方向の位置z1に、竿部21の長さLを加算した値(z3=z1+L)となる。
【0020】
これに対して、図3(B)に示すように、バイブレータ装置20の竿部21をx方向に傾斜するように操作したとする。なお、y方向への傾斜は無いものとする。このとき、第1の反射プリズム23aの位置は(x11,y11,z11)であり、第2の反射プリズム23bの位置は(x12,y11,z12)であったとする。竿部21をx方向に傾斜して操作したとき、その傾きθは、第1の反射プリズム23aのx方向の位置x11と第2の反射プリズム23bのx方向の位置x12と、第1の反射プリズム23aと第2の反射プリズム23bとの間の距離dとから求められる。
【0021】
振動部22の位置は、第1の反射プリズム23aの位置(x11,y11,z11)と第2の反射プリズム23bの位置(x12,y11,z12)との延長線上にあり、振動部22の位置は(x13,y11,z13)となる。ここで、振動部22のx方向の位置x13は、第1の反射プリズム23aのx方向の位置x11に対してLsinθだけずれが生じ、(x13=x11+Lsinθ)となる。y方向の傾斜ないとしているので、振動部22のy方向の位置は、第1及び第2の反射プリズム23a及び23bのy方向の位置y11と等しい。また、振動部22のz方向の位置z13は、第1の反射プリズム23aの深さ方向の位置z11にLcosθを加算した値(z13=z11+Lcosθ)となる。
【0022】
このように、本発明の第1の実施の形態に係るコンクリート締固めシステム1では、第1及び第2の反射プリズム23a及び23bが取り付けられた棒状のバイブレータ装置20を用いて締固め作業を行っている。これにより、振動部22の3次元の位置情報を求めることができる。
【0023】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係るコンクリート締固めシステム1における制御装置30の機能に基づくブロック図である。制御装置30は、例えばPC(Personal Computer)で実現できる。制御装置30と、トータルステーション11a、11b、11c及びバイブレータ装置20との間は、例えば無線でデータ通信を行うことができる。また、制御装置30と、トータルステーション11a、11b、11c及びバイブレータ装置20との間を、ネットワークを介して接続されるようにしても良い。
【0024】
図4に示すように、制御装置30は、計測部位置情報取得部31と、振動部位置情報算出部32と、駆動情報取得部33と、位置情報管理部34と、締固め位置記憶部35とを備えている。
【0025】
計測部位置情報取得部31は、トータルステーション11a、11b、11cから、第1及び第2の反射プリズム23a及び23bの位置情報を取得する。振動部位置情報算出部32は、第1及び第2の反射プリズム23a及び23bの位置情報から、振動部22の3次元の位置情報(x方向、y方向、z方向)を算出する。駆動情報取得部33は、バイブレータ装置20のケーブル24から、振動部22がオンであるか否かの駆動状態を表す駆動情報を取得する。位置情報管理部34は、各時間毎に、振動部22の位置と駆動情報取得部33によって取得した駆動情報を対応づけて締固め位置記憶部35に記憶させ、締固め位置の管理を行う。
【0026】
以上説明したように、本実施形態では、バイブレータ装置20として棒状の形状のものを用いており、バイブレータ装置20の竿部21には、第1及び第2の反射プリズム23a及び23bが取り付けられている。これにより、振動部22の3次元の位置情報を求めることができる。そして、振動部22の位置の測定結果を適宜記録することで、どの位置において締固めが行われたかを把握することができ、バイブレータ装置20による締固め作業の進捗状況を定量的に管理していくことができる。
【0027】
また、本実施形態では、バイブレータ装置20の位置をトータルステーション11a、11b、11cで測量している。なお、バイブレータ装置20にGPS端末を設けて位置を計測しても良い。しかしながら、バイブレータ装置20にGPS端末を設けたとしても、施工現場の環境によっては、遮蔽物等が周囲にあると、GPS電波を受信できない場合もあり得るが、トータルステーションを用いることで、GPS電波を受信できない環境であっても位置を測定することができる。
【0028】
上述した実施形態におけるコンクリート締固めシステム1の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0029】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0030】
11a,11b,11c…トータルステーション、20…バイブレータ装置、21…竿部、22…振動部、23a…第1の反射プリズム、23b…第2の反射プリズム、30…制御装置
図1
図2
図3
図4