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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】コンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 W
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019107525
(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公開番号】P2020202644
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】指田 和之
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 健一
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-222998(JP,A)
【文献】特開2017-051082(JP,A)
【文献】特開2017-070083(JP,A)
【文献】特開2008-011665(JP,A)
【文献】国際公開第2010/098486(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低電圧出力モードと、中電圧出力モードと、高電圧出力モードとを切り替えて実施することにより同極性の所望の出力電圧を出力する絶縁共振型のコンバータであって、
1次巻線及び2次巻線を有するトランス、前記トランスの1次巻線側に接続され、1次側スイッチング素子でブリッジ回路が構成されている1次側スイッチ部、及び、前記1次巻線と直列に接続されている共振コンデンサをそれぞれ有し、並列に接続された2つのコンバータ部であって、それぞれの前記2次巻線が互いに直列に接続された第1及び第2のコンバータ部と、
前記第1及び第2のコンバータ部の各トランスの前記2次巻線側に接続され、ハイサイドに接続された2つのダイオードとローサイドに接続された2つの2次側スイッチング素子とでブリッジ回路が構成され、直列に接続された2つの前記2次巻線が、前記2つのダイオード、及び、前記2つの2次側スイッチング素子とそれぞれ並列に接続された整流部と、
前記中電圧出力モード及び前記高電圧出力モードにおいては、前記第1のコンバータ部の前記1次側スイッチング素子と、前記第2のコンバータ部の前記1次側スイッチング素子とのオンオフタイミングを同期させ、前記低電圧出力モードにおいては、前記第1のコンバータ部の前記1次側スイッチング素子の制御電圧の位相と、前記第2のコンバータ部の前記1次側スイッチング素子の制御電圧の位相との間に位相差が生じるように前記第1及び第2のコンバータ部の前記1次側スイッチング素子のオンオフタイミングを制御する1次側制御部と、
前記低電圧出力モード及び前記中電圧出力モードにおいては、前記整流部の前記2次側スイッチング素子をオフにし、前記高電圧出力モードにおいては、前記第1及び第2のコンバータ部の1次側スイッチング素子がオンするタイミングに同期して前記整流部の前記2つの2次側スイッチング素子のうちの少なくともいずれかを所定時間オンするように前記整流部の前記2つの2次側スイッチング素子を制御する2次側制御部とを備えることを特徴とするコンバータ。
【請求項2】
前記低電圧出力モードにおいては、前記1次側制御部は、前記第1のコンバータ部の前記1次側スイッチング素子の制御電圧の位相と前記第2のコンバータ部の前記1次側スイッチング素子の制御電圧の位相との間の位相差を調整することにより前記出力電圧を制御することを特徴とする請求項1に記載のコンバータ。
【請求項3】
前記高電圧出力モードにおいては、前記2次側制御部は、前記整流部の前記2つの2次側スイッチング素子のうちの少なくともいずれかをオンする時間を調整することにより前記出力電圧を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンバータ。
【請求項4】
前記高電圧出力モードにおいて、前記2次側制御部は、前記整流部の前記2つの2次側スイッチング素子が同期して所定時間オンするように前記整流部の前記2つの2次側スイッチング素子を制御することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のコンバータ。
【請求項5】
前記高電圧出力モードにおいて、前記2次側制御部は、前記第1及び第2のコンバータ部の前記1次側スイッチング素子がオンするタイミングに同期して前記整流部の前記2つの2次側スイッチング素子のうちの一方をオンさせ、所定時間オン状態にするとともに、前記第1及び第2のコンバータ部の前記1次側スイッチング素子に同期して前記整流部の前記2つの2次側スイッチング素子のうちの他方をオンし、これを交互に繰り返すように前記整流部の前記2つの2次側スイッチング素子を制御することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のコンバータ。
【請求項6】
前記1次側スイッチ部においては、前記1次側スイッチング素子でハーフブリッジ回路が構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のコンバータ。
【請求項7】
前記1次側スイッチ部においては、前記1次側スイッチング素子でフルブリッジ回路が構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のコンバータ。
【請求項8】
前記第1及び第2のコンバータ部は、前記1次巻線と直列に接続されているインダクタをさらに有し、
前記第1及び第2のコンバータ部においては、前記インダクタ、前記共振コンデンサ及び前記1次巻線で共振回路を構成することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のコンバータ。
【請求項9】
前記第1及び第2のコンバータ部においては、寄生インダクタ、前記共振コンデンサ及び前記1次巻線で共振回路を構成することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動バイクやEVなどバッテリを備えた様々な電子機器が普及してきており、電動バイクのバッテリ(50Vのバッテリ)とEVのバッテリ(500又は1000Vのバッテリ)のように必要とされる電圧が大きく異なる電子機器に対応可能なコンバータ(電源)が求められている。
【0003】
しかしながら、入力電圧を所定の出力電圧に変換するコンバータ(コンバータ部)は、出力可能な電圧の範囲が限られている。このため、出力電圧の大きさを元の入力電圧から大きく変えた電圧に変えようとするとコンバータ部の後段に追加のコンバータ部を搭載する等の対応をする必要がある。このようなコンバータとしては、例えば以下のようなコンバータ(従来のコンバータ900)が考えられる。
【0004】
図11は、従来のコンバータ900を示す図である。図11中、符号Vinは入力端子を示し、Voutは出力端子を示し、C3は入力コンデンサを示し、C4は出力コンデンサを示す。
従来のコンバータ900は、図11に示すように、1次巻線T1-1及び2次巻線T1-2を有するトランスT1、トランスT1の1次巻線T1-1側に接続され、スイッチング素子Q1、Q2でブリッジ回路が構成されている1次側スイッチ部SW1、及び、1次巻線T1-1と直列に接続されている共振コンデンサC1及び共振インダクタL1を有するコンバータ部910と、コンバータ部910のトランスT1の2次巻線T1-2側に接続され、4つのダイオードD1、D2、D3及びD4でブリッジ回路が構成された整流部930と、整流部930の後段に設けられ、スイッチング素子Q7、ダイオードD5及びインダクタL3で昇圧チョッパ回路を構成する追加のコンバータ部960とを備える。
【0005】
従来のコンバータ900によれば、追加のコンバータ部960を備えるため、追加のコンバータ部960をデューティ制御することにより、出力電圧を入力電圧から大きく変えることができる。
【0006】
なお、特許文献1には、追加のコンバータ部として、昇圧チョッパ回路の代わりにコイル及びコンデンサで構成される高圧バッテリ型フィルタ部を備え、当該高圧バッテリ型フィルタ部で昇圧するコンバータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-213202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のコンバータ900においては、追加のコンバータ部960を準備する必要があるため、部品が占める面積が大きくなり、コンバータ(電源)を小型化することが難しい、という問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたものであり、広範囲の出力電圧に対応可能でありながら、小型化することが可能なコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明のコンバータは、低電圧出力モードと、中電圧出力モードと、高電圧出力モードとを切り替えて実施することにより所望の出力電圧を出力する絶縁共振型のコンバータであって、1次巻線及び2次巻線を有するトランス、前記トランスの1次巻線側に接続され、1次側スイッチング素子でブリッジ回路が構成されている1次側スイッチ部、及び、前記1次巻線と直列に接続されている共振コンデンサをそれぞれ有し、並列に接続された2つのコンバータ部であって、それぞれの前記2次巻線が互いに直列に接続された第1及び第2のコンバータ部と、前記第1及び第2のコンバータ部の各トランスの前記2次巻線側に接続され、ハイサイドに接続された2つのダイオードとローサイドに接続された2つの2次側スイッチング素子とでブリッジ回路が構成され、直列に接続された2つの前記2次巻線が、前記2つのダイオード、及び、前記2つの2次側スイッチング素子とそれぞれ並列に接続された整流部と、前記中電圧出力モード及び前記高電圧出力モードにおいては、前記第1のコンバータ部の前記1次側スイッチング素子と、前記第2のコンバータ部の前記1次側スイッチング素子とのオンオフタイミングを同期させ、前記低電圧出力モードにおいては、前記第1のコンバータ部の前記1次側スイッチング素子の制御電圧の位相と、前記第2のコンバータ部の前記1次側スイッチング素子の制御電圧の位相との間に位相差が生じるように前記第1及び第2のコンバータ部の前記1次側スイッチング素子のオンオフタイミングを制御する1次側制御部と、前記低電圧出力モード及び前記中電圧出力モードにおいては、前記整流部の前記2次側スイッチング素子をオフにし、前記高電圧出力モードにおいては、前記第1及び第2のコンバータ部の1次側スイッチング素子がオンするタイミングに同期して前記整流部の前記2つの2次側スイッチング素子のうちの少なくともいずれかを所定時間オンするように前記整流部の前記2つの2次側スイッチング素子を制御する2次側制御部とを備えることを特徴とする。
【0011】
[2]本発明のコンバータにおいては、前記低電圧出力モードにおいて、前記1次側制御部は、前記第1のコンバータ部の前記1次側スイッチング素子の制御電圧の位相と前記第2のコンバータ部の前記1次側スイッチング素子の制御電圧の位相との間の位相差を調整することにより前記出力電圧を制御することが好ましい。
【0012】
[3]本発明のコンバータにおいては、前記高電圧出力モードにおいて、前記2次側制御部は、前記整流部の前記2つの2次側スイッチング素子のうちの少なくともいずれかをオンする時間を調整することにより前記出力電圧を制御することが好ましい。
【0013】
[4]本発明のコンバータにおいては、前記高電圧出力モードにおいて、前記2次側制御部は、前記整流部の前記2つの2次側スイッチング素子が同期して所定時間オンするように前記整流部の前記2つの2次側スイッチング素子を制御することが好ましい。
【0014】
[5]本発明のコンバータにおいては、前記高電圧出力モードにおいて、前記2次側制御部は、前記第1及び第2のコンバータ部の前記1次側スイッチング素子がオンするタイミングに同期して前記整流部の前記2つの2次側スイッチング素子のうちの一方をオンさせ、所定時間オン状態にするとともに、前記第1及び第2のコンバータ部の前記1次側スイッチング素子に同期して前記整流部の前記2つの2次側スイッチング素子のうちの他方をオンし、これを交互に繰り返すように前記整流部の前記2つの2次側スイッチング素子を制御することが好ましい。
【0015】
[6]本発明のコンバータにおいては、前記1次側スイッチ部においては、前記1次側スイッチング素子でハーフブリッジ回路が構成されていることが好ましい。
【0016】
[7]本発明のコンバータにおいては、前記1次側スイッチ部においては、前記1次側スイッチング素子でフルブリッジ回路が構成されていることが好ましい。
【0017】
[8]本発明のコンバータにおいて、前記第1及び第2のコンバータ部は、前記1次巻線と直列に接続されているインダクタをさらに有し、前記第1及び第2のコンバータ部においては、前記インダクタ、前記共振コンデンサ及び前記1次巻線で共振回路を構成することが好ましい。
【0018】
[9]本発明のコンバータにおいては、前記第1及び第2のコンバータ部において、寄生インダクタ、前記共振コンデンサ及び前記1次巻線で共振回路を構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のコンバータによれば、中電圧出力モードにおいて、1次側制御部は、第1及び第2のコンバータ部の入力側スイッチング素子のオンオフタイミングを同期させ、2次側制御部は、整流部の出力側スイッチング素子をオフにするため、従来の電流共振型のコンバータ900と同様に、出力可能な電圧の範囲において周波数制御を行うことで所定の出力範囲内で所望の出力電圧を出力することができる。
【0020】
また、本発明のコンバータによれば、低電圧出力モードにおいて、1次側制御部は、第1のコンバータ部の入力側スイッチング素子の制御電圧の位相と、第2のコンバータ部の入力側スイッチング素子の制御電圧の位相との間に位相差が生じるように第1及び第2のコンバータ部の入力側スイッチング素子のオンオフタイミングを制御し、2次側制御部は、整流部の出力側スイッチング素子をオフにするため、第1及び第2のコンバータ部の各トランスの2次巻線において逆電圧区間を発生させて出力電圧を低くすることができる。その結果、比較的低電圧の出力電圧を出力することができる。
【0021】
また、本発明のコンバータによれば、高電圧出力モードにおいて、1次側制御部は、第1及び第2のコンバータ部の入力側スイッチング素子のオンオフタイミングを同期させ、2次側制御部は、第1及び第2のコンバータ部の入力側スイッチング素子がオンするタイミングに同期して整流部の2つの出力側スイッチング素子のうちの少なくともいずれかを所定時間オンするように整流部の2つの出力側スイッチング素子を制御するため、当該所定期間のみ、整流部が昇圧チョッパ動作を行うことができ、出力電圧を高くすることができる。その結果、比較的高電圧において所望の出力電圧を出力することができる。
【0022】
従って、本発明のコンバータによれば、上記した構成とすることにより、低電圧出力モードと、中電圧出力モードと、高電圧出力モードとを切り替えて実施することができるため、広範囲の出力電圧に対応可能なコンバータとなる。
【0023】
また、本発明のコンバータによれば、上記した構成とすることにより、絶縁型コンバータの後段に非絶縁チョッパ回路を搭載することなく、低電圧出力モードと、中電圧出力モードと、高電圧出力モードとを切り替えて実施することができるため、広範囲の出力電圧に対応可能なコンバータでありながら、小型化することが可能なコンバータとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態1に係るコンバータ1の回路図を示す図である。
図2】実施形態1における中電圧出力モード(同相モード)の波形図である。
図3】実施形態1における中電圧出力モード(同相モード)における回路動作を説明するために示す回路図である。
図4】実施形態1における低電圧出力モード(位相シフトモード)において位相差が90°の場合の波形図である。
図5】実施形態1における低電圧出力モード(位相シフトモード)において位相差が90°の場合における回路動作を説明するために示す回路図である。
図6】実施形態1における低電圧出力モード(位相シフトモード)において位相差が180°(逆位相)の場合の波形図である。
図7】実施形態1における高電圧出力モード(昇圧モード)のときの波形図である。
図8】実施形態1における高電圧出力モード(昇圧モード)における回路動作を説明するために示す回路図である。
図9】実施形態1における高電圧出力モード(昇圧モード)における回路動作を説明するために示す回路図である。
図10】実施形態2に係るコンバータにおける高電圧出力モード(昇圧モード)の波形図である。
図11】従来のコンバータ900を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のコンバータについて、図に示す実施形態に基づいて説明する。以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。各実施形態においては、基本的な構成、特徴、機能等が同じ構成、要素については、実施形態をまたいで同じ符号を使用するとともに再度の説明を省略することがある。
【0026】
[実施形態1]
1.実施形態1に係るコンバータ1の構成
図1は、実施形態1に係るコンバータ1の回路図を示す図である。
実施形態1に係るコンバータ1は、低電圧出力モードと、中電圧出力モードと、高電圧出力モードとを切り替えて実施することにより所望の出力電圧を出力する絶縁共振型のコンバータである。
実施形態1に係るコンバータ1は、図1に示すように、第1のコンバータ部10と、第2のコンバータ部20と、整流部30と、1次側制御部40と、2次側制御部50とを備える。
【0027】
第1のコンバータ部10は、1次巻線T1-1及び2次巻線T1-2を有するトランスT1、トランスT1の1次巻線T1-1側に接続され、スイッチング素子(1次側スイッチング素子)Q1、Q2でハーフブリッジ回路が構成されている1次側スイッチ部SW1、及び、1次巻線T1-1と直列に接続されている共振コンデンサC1及び共振インダクタL1を有する電流共振型のコンバータ部である。1次巻線T1-1、共振コンデンサC1及び共振インダクタL1でLLC方式の共振回路が構成されている。なお、1次巻線T1-1、共振コンデンサC1及び共振インダクタL1の順序は任意である。
【0028】
第2のコンバータ部20は、1次巻線T2-1及び2次巻線T2-2を有するトランスT2、トランスT2の1次巻線T2-1側に接続され、スイッチング素子(1次側スイッチング素子)Q3、Q4でハーフブリッジ回路が構成されている1次側スイッチ部SW2、及び、1次巻線T2-1と直列に接続されている共振コンデンサC2及び共振インダクタL2を有する電流共振型のコンバータ部である。1次巻線T2-1、共振コンデンサC2及び共振インダクタL2でLLC方式の共振回路が構成されている。なお、1次巻線T2-1、共振コンデンサC2及び共振インダクタL2の順序は任意である。
【0029】
第1のコンバータ部10及び第2のコンバータ部20は、入力端子Vinに対して並列に接続されており、1次側スイッチ部SW1、SW2が入力端子Vinと接続されている。入力端子Vin側に入力コンデンサC3が接続されている。また、それぞれの2次巻線T1-2、T2-2が互いに直列に接続されている。
なお、実施形態1において、スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q5及びQ6は、MOSFETを用いるが、IGBT等その他適宜のスイッチング素子を用いてもよい。
【0030】
整流部30は、第1のコンバータ部10及び第2のコンバータ部20の各トランスT1、T2の2次巻線T1-2、T2-2側に接続され、ハイサイドに接続された2つのダイオードD1、D2とローサイドに接続された2つのスイッチング素子(2次側スイッチング素子)Q5、Q6とでブリッジ回路が構成され、直列に接続された2つの2次巻線T1-2、T2-2が、2つのダイオードD1、D2、及び、2つのスイッチング素子Q5、Q6とそれぞれ並列に接続されている。2つのダイオードD1、D2のカソード電極間においては出力端子Vout(以下、出力電圧をVoutということもある)と接続されており、2つのスイッチング素子Q5、Q6間においては接地(接地端子と接続)されている。出力端子Voutと出力側の他方の端子(例えば、接地端子)との間においては、出力コンデンサC4が接続されている。
【0031】
整流部30は、2つのスイッチング素子Q5、Q6がオフのときには、フルブリッジの整流回路として機能し、2つのスイッチング素子Q5、Q6がオンのときには昇圧チョッパ回路及び整流回路として機能する。
【0032】
1次側制御部40は、第1のコンバータ部10のスイッチング素子Q1、Q2、及び、第2のコンバータ部20のスイッチング素子Q3、Q4のオンオフを制御する。具体的には、中電圧出力モード及び高電圧出力モードにおいては、スイッチング素子Q1(Q2)と、スイッチング素子Q3(Q4)を同期させ(位相差0で同時にオンオフさせ)、低電圧出力モードにおいては、スイッチング素子Q1(Q2)の位相と、スイッチング素子Q3(Q4)の位相との間に位相差が生じるようスイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4のオンオフを制御する。
【0033】
2次側制御部50は、整流部30のスイッチング素子Q5、Q6のオンオフを制御する。具体的には、低電圧出力モード及び中電圧出力モードにおいては、スイッチング素子Q5、Q6をオフにし、高電圧出力モードにおいては、スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4がオンするタイミングに同期して2つのスイッチング素子Q5、Q6の両方を所定時間オンするように制御する。
【0034】
2.実施形態1に係るコンバータ1の動作
次に、実施形態1に係るコンバータ1の動作について説明する。実施形態1に係るコンバータ1は、出力端子と接続される対象物によって低電圧出力モードと、中電圧出力モードと、高電圧出力モードとを切り替えて実施する(例えばバッテリが必要な電圧によって各出力モードを切り替えて実施する)。
【0035】
(1)中電圧出力モード(同相モード)
まず、中電圧出力モード(同相モード)について説明する。
図2は、実施形態1における中電圧出力モード(同相モード)の波形図である。図2において、Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6はスイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6のゲート電圧波形を示し、VT1はトランスT1の2次巻線T1-2の電圧を示し、VT2はトランスT2の2次巻線T2-2の電圧を示し、VT1+VT2は2次巻線T1-2の電圧と2次巻線T2-2の電圧を足し合わせた電圧を示し、Voutは出力電圧を示す(以下、図4、6、7、10において同じ)。
また、時刻t1、t9はスイッチング素子Q2がオフになるタイミングを示し、時刻t2、t10はスイッチング素子Q1がオンになるタイミングを示し、時刻t5、t13はスイッチング素子Q1がオフになるタイミングを示し、時刻t6、t14はスイッチング素子Q2がオンになるタイミングを示す(以下、図4、6、7、10において同じ)。
図3は、実施形態1における中電圧出力モード(同相モード)を説明するために示す回路図である。図3(a)はスイッチング素子Q1、Q3がオン、Q2、Q4がオフのときの負荷電流及び励磁電流を説明するために示す回路図であり、図3(b)はスイッチング素子Q1、Q3がオフ、Q2、Q4がオンのときの負荷電流及び励磁電流を説明するために示す回路図である。
【0036】
中電圧出力モードは、第1のコンバータ部10のスイッチング素子Q1(Q2)と第2のコンバータ部20のスイッチング素子Q3(Q4)とを同期させて周波数制御を行うモードである。
【0037】
(1-1)Q1、Q3オン、Q2、Q4オフの場合
まず、図2に示すように、時刻t1においてスイッチング素子Q2、Q4がオフになり、時刻t2において、スイッチング素子Q1、Q3がオンになったとすると、図3(a)実線に示すように、1次側の第1のコンバータ部10においては、入力端子Vinからスイッチング素子Q1、共振インダクタL1、共振コンデンサC1、1次巻線T1-1を経由して入力端子の接地端子に戻る経路で負荷電流が流れる。これに対応して2次側においては、図3(a)の実線で示すような負荷電流が流れる。このとき、入力コンデンサC3からスイッチング素子Q1、共振インダクタL1、共振コンデンサC1、1次巻線T1-1を経由して入力コンデンサC3に戻る励磁電流が生じる(図3(a)一点鎖線参照。)。
また、第2のコンバータ部20においても同様に、入力端子Vinからスイッチング素子Q2、共振インダクタL2、共振コンデンサC2、1次巻線T2-1を経由して入力端子の接地側端子に戻る経路で負荷電流が流れる(図3(a)実線参照)。これに対応して2次側において、第1のコンバータ部の2次巻線T1-2とT2-2は同じ方向に、負荷電流が流れる(図3(a)実線参照。)。このとき、入力コンデンサC3からスイッチング素子Q3、共振インダクタL2、共振コンデンサC2、1次巻線T2-1を経由して入力コンデンサC3に戻る励磁電流が生じる(図3(a)一点鎖線参照。)。
【0038】
(1-2)Q1、Q3オフ、Q2、Q4オンの場合
やがて、LLC共振が終了すると励磁電流(図3(a)一点鎖線参照。)のみが残り、スイッチング素子Q1、Q3をオフにする(時刻t5)と、第1のコンバータ部10においては、共振コンデンサC1、1次巻線T1-1、スイッチング素子Q2の寄生ダイオード、共振インダクタL1を経由して共振コンデンサC1に戻る励磁電流が生じる(図3(b)一点鎖線参照。)。また、第2のコンバータ部20においても、共振コンデンサC2-1次巻線T2-1-スイッチング素子Q4の寄生ダイオード―共振インダクタL2を通って共振コンデンサC2に戻る励磁電流が生じる(図3(b)一点鎖線参照。)。
【0039】
次に、時刻t6において、スイッチング素子Q2、Q4をオンする。すると、今度は共振コンデンサC1、共振インダクタL1、スイッチング素子Q2、1次巻線T1-1を経由して共振コンデンサC1に流れる負荷電流が流れる(図3(b)実線参照。)。また、第2のコンバータ部20においても、共振コンデンサC2-共振インダクタL2―スイッチング素子Q4-1次巻線T2-1-共振コンデンサC2に流れる負荷電流が流れる(図3(b)実線参照。)。
【0040】
これに伴い、2次側において、2次巻線T1-2、T2-2には同じ向き(図2(b)の下側方向)に向かって負荷電流が流れる。
【0041】
すなわち、上記(1-1)及び(1-2)からわかるように、2つのコンバータ部10、20の両方によって2次側に同じ方向に電流が流れるような電圧が発生するため、ダイオードD1に印加される電圧は、第1のコンバータ部10の2次巻線T1-2の電圧VT1と、第2のコンバータ部20の2次巻線T2-2の電圧VT2とを足し合わせた値となる。
【0042】
中電圧出力モードにおいては第1のコンバータ部10と第2のコンバータ部20とを並列に接続させた他は従来の電流共振コンバータと同様の動作をする。従って、周波数制御を行うことにより所定の範囲内で所望の出力電圧(例えば、所定の電圧V)を出力することができる。
【0043】
(2)低電圧出力モード(位相シフトモード)
低電力出力モードは、第1のコンバータ部10と第2のコンバータ部20との間に位相差を設け、トランスの2次巻線側で逆電圧期間を設けることで、出力電圧を低く出力するモードである。まずは、説明を容易にするために第1のコンバータ部10と第2のコンバータ部20の位相差が90°である場合について説明する。
【0044】
図4は、実施形態1における低電圧出力モード(位相シフトモード)においてスイッチング素子Q1とQ3(Q2とQ4)の位相差が90°の場合の波形図である。図4において、時刻t3、t12はスイッチング素子Q4がオフになるタイミングを示し、時刻t4、t13はスイッチング素子Q3がオンになるタイミングを示し、時刻t7、t15はスイッチング素子Q3がオフになるタイミングを示し、時刻t8、t16はスイッチング素子Q4がオンになるタイミングを示す。
図5は、実施形態1における低電圧出力モード(位相シフトモード)において位相差が90°の場合を説明するために示す回路図である。図5(a)はスイッチング素子Q1、Q4がオン、Q2、Q3がオフのときの負荷電流及び励磁電流を説明するために示す回路図であり、図5(b)はスイッチング素子Q1、Q4がオフ、Q2、Q3がオンのときの負荷電流及び励磁電流を説明するために示す回路図である。
【0045】
(2-1)時刻t2~t3
時刻t1において、スイッチング素子Q2がオフになり、時刻t2において、スイッチング素子Q1がオンすると、図5(a)実線に示すように、1次側の第1のコンバータ部10においては、入力端子Vinからスイッチング素子Q1、共振インダクタL1、共振コンデンサC1、1次巻線T1-1を経由して入力端子の接地端子に戻る経路で負荷電流が流れる。これに対応して2次側においては、図5(a)の実線で示すような負荷電流が流れる。このとき、入力コンデンサC3からスイッチング素子Q1、共振インダクタL1、共振コンデンサC1、1次巻線T1-1を経由して入力コンデンサC3に戻る励磁電流が生じる(図5(a)一点鎖線参照。)。
【0046】
一方、第2のコンバータ部20においては、第1のコンバータ部10とは位相差があるため、スイッチング素子Q3がオフ、スイッチング素子Q4がオンであり、共振コンデンサC2-1次巻線T2-1―スイッチング素子Q4-共振インダクタL2-共振コンデンサC2に流れる負荷電流が流れる(図5(a)実線参照。)。これに伴い、第2のコンバータ部20の2次側において、2次巻線T2-2は、第1のコンバータ部10における2次巻線T1-2とは逆向き(図5(a)の下側方向。破線矢印参照。)に向かって負荷電流が流れる。
【0047】
従って、2次巻線T1-2と2次巻線T2-2とでは負荷電流が流れる向きが逆になるため、逆電圧区間を発生させることとなり、打ち消しあって出力電圧を低くすることができる(図4のVout参照。)。なお、出力電圧Voutは整流され、直流変換されて出力されており、所定の電圧Vよりも低い電圧を出力する。
そして、時刻t3において、スイッチング素子Q4をオフにする。
【0048】
(2-2)時刻t4~t5
次に、時刻t4において、スイッチング素子Q1、Q2をそのままに(Q1:オン、Q2:オフ)、スイッチング素子Q3をオンにすると(Q4はオフ)、上記した中電圧出力モードの(1-1)の場合と同様の動作を行う(図3(a)参照。)。そして、時刻t5において、スイッチング素子Q1をオフにする。
【0049】
(2-3)時刻t6~t7
次に、時刻t6において、スイッチング素子Q2をオンすると、第1のコンバータ部10において、コンデンサC1-1次巻線T1-1―スイッチング素子Q2-共振インダクタL1-コンデンサC1の経路で負荷電流が流れる(図5(b)参照。)。これに伴い、第1のコンバータ部10の2次側において、2次巻線T1-2には、T2-2と逆向き(図5(b)の上側方向。破線矢印参照。)に向かって負荷電流が流れる。
従って、2次巻線T1-2と2次巻線T2-2とでは負荷電流が流れる向きが逆になるため、逆電圧区間を発生させて出力電圧を低くすることができる(図4のVoutのグラフ参照。)。そして、時刻t7において、スイッチング素子Q3をオフにする。
【0050】
(2-4)時刻t8~t9
次に、時刻t8において、スイッチング素子Q4をオンにすると、上記した中電圧出力モードの(1-2)の場合と同様の動作を行う(図3(b)参照。)。
そして、時刻t9において、スイッチング素子Q2をオフにする。
【0051】
以後、これを繰り返す。
【0052】
なお、低電圧出力モードにおいては、1次側制御部40によって第1のコンバータ部10のスイッチング素子Q1(Q2)の制御電圧の位相と第2のコンバータ部20のスイッチング素子Q3(Q4)の制御電圧の位相との間の位相差を調整することにより所望の出力電圧を出力するように制御する。
図6は、実施形態1における低電圧出力モード(位相シフトモード)においてスイッチング素子Q1とQ3(Q2とQ4)とのオンオフタイミングの位相差が180°(逆位相)の場合の波形図である。
例えば、当該位相差が180°(逆位相)の場合には、逆電圧区間が発生する期間が長く続くため、出力電圧をかなり低くすることができる(図6参照。)。なお、出力電圧をトランスT1、T2の巻線比を変える等で調整することもできる。
【0053】
(3)高電圧出力モード(昇圧モード)
高電圧出力モードは、所定期間のみ、整流部30が昇圧チョッパ動作を行い出力電圧を高くするモードである。
図7は、実施形態1における高電圧出力モード(昇圧モード)のときの波形図である。なお、図7において、Q’Idは、スイッチング素子Q1~Q4のいずれかのドレイン電流を示し、時刻t3、t7、t11、t15はスイッチング素子Q5、Q6がオフになるタイミングを示し、時刻t4、t8、t12は、Q’Idが0になるタイミングを示す。なお、Q’Idの実線はスイッチング素子Q1,Q3のドレイン電流を示し、Q’Idの破線はスイッチング素子Q2,Q4のドレイン電流を示す。
図8は、実施形態1における高電圧出力モード(昇圧モード)を説明するために示す回路図である。図8(a)はスイッチング素子Q1、Q3がオン、Q2、Q4がオフ、Q5、Q6がオンのとき(時刻t2~t3)の負荷電流及び励磁電流を説明するために示す回路図であり、図8(b)はスイッチング素子Q1、Q3がオン、Q2、Q4がオフ、Q5、Q6がオフのとき(時刻t3~t4)の負荷電流及び励磁電流を説明するために示す回路図である。
図9は、実施形態1における高電圧出力モード(昇圧モード)を説明するために示す回路図である。図9(a)はスイッチング素子Q1、Q3がオフ、Q2、Q4がオン、Q5、Q6がオンのとき(時刻t6~t7)の負荷電流及び励磁電流を説明するために示す回路図であり、図8(b)はスイッチング素子Q1、Q3がオフ、Q2、Q4がオン、Q5、Q6がオフのとき(時刻t7~t8)の負荷電流及び励磁電流を説明するために示す回路図である。
【0054】
高電圧出力モードにおいては、スイッチング素子Q1とQ3、Q2とQ4が同期するようにスイッチング素子のオンオフを制御する。従って、スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4の波形は中電圧出力モード(同相モード)と同様であるが(図2参照。)、2次側制御部50によって、スイッチング素子Q1とQ3又はQ2とQ4がオンするタイミングに同期して整流部30の2つのスイッチング素子Q5、Q6の両方を所定時間オンするように2つのスイッチング素子Q5、Q6を制御する。言い換えると、スイッチング素子Q1とQ3、又はQ2とQ4をオンする機関の内、オン開始後の所定時間のみスイッチング素子Q5,Q6をオンさせる。
【0055】
(3-1)時刻t2~t3
図7に示すように、時刻t2において、スイッチング素子Q1、Q3がオンとなり、スイッチング素子Q2、Q4がオフになったとすると、1次側の第1のコンバータ部10においては、入力端子Vinからスイッチング素子Q1、共振インダクタL1、共振コンデンサC1、1次巻線T1-1を経由して入力端子の接地端子に戻る経路で負荷電流が流れる(図8(a)実線参照。)。これに対応して2次側においては、図8(a)の実線で示すような負荷電流が流れる。このとき、入力コンデンサC3からスイッチング素子Q1、共振インダクタL1、共振コンデンサC1、1次巻線T1-1を経由して入力コンデンサC3に戻る励磁電流が生じる(図8(a)一点鎖線参照。)。
また、第2のコンバータ部20においても同様に、入力端子Vinからスイッチング素子Q2、共振インダクタL2、共振コンデンサC2、1次巻線T2-1を経由して入力端子の接地側端子に戻る経路で負荷電流が流れる(図8(a)実線参照。)。これに対応して2次側においては、第1コンバータ部の2次巻線T1-2とT2-2は同じ方向に、負荷電流が流れる(図8(a)破線参照。)。このとき、入力コンデンサC3からスイッチング素子Q2、共振インダクタL2、共振コンデンサC2、1次巻線T2-1を経由して入力コンデンサC3に戻る励磁電流が生じる(図8(a)一点鎖線参照。)。
【0056】
時刻t2~t3においては、整流部30の2つのスイッチング素子Q5、Q6をオンさせる。これにより、トランスT1、T2の2次巻線T1-2、T2-2を短絡させる(図8(a)実線参照。)。このとき、共振インダクタL1、L2に昇圧用のエネルギーが蓄積される。また、スイッチング素子Q1、Q3には、昇圧された電圧に対する負荷電流に対応して誘導された電流成分が流れる(図7のQ’Id実線参照)。
【0057】
(3-2)時刻t3~t4
次に、時刻t3において、スイッチング素子Q5、Q6をオフにする(開放する)ことで、図8(b)の実線に示すような電流が流れる。
このように時刻t2~t4においては、トランスT1、T2の2次巻線T1-2、T2-2を部分的に短絡させたのち、開放することにより、整流部30において昇圧チョッパ動作を行うこととなり、出力電圧Voutを昇圧させることができる。
そして、時刻t4において、スイッチング素子Q1、Q3の電流成分Q’Idが0になる。
【0058】
やがて、LLC共振が終了すると励磁電流(図8(b)一点鎖線参照。)のみが残り、スイッチング素子Q1、Q3をオフにすると(時刻t5)、第1のコンバータ部10においては、共振コンデンサC1-1次巻線T1-1-スイッチング素子Q2の寄生ダイオード―共振インダクタL1を通って共振コンデンサC1に戻る励磁電流が生じる(図9(a)一点鎖線参照。)。また、第2のコンバータ部20においても、共振コンデンサC2-1次巻線T2-1-スイッチング素子Q4の寄生ダイオード―共振インダクタL2を通って共振コンデンサC2に戻る励磁電流が生じる(図9(a)一点鎖線参照。)。
【0059】
(3-3)時刻t6~t7
次に、時刻t6において、スイッチング素子Q2、Q4をオンする。すると、今度は共振コンデンサC1-共振インダクタL1―スイッチング素子Q2-1次巻線T1-1-共振コンデンサC1に流れる負荷電流が流れる(図9(a)実線参照。)。また、第2のコンバータ部20においても、共振コンデンサC2-共振インダクタL2―スイッチング素子Q4-1次巻線T2-1-共振コンデンサC2に流れる負荷電流が流れる(図9(a)実線参照。)。
【0060】
時刻t6~t7においては、整流部30の2つのスイッチング素子Q5、Q6をオンさせる。これにより、トランスT1、T2の2次巻線T1-2、T2-2を部分的に短絡させる(図9(a)実線参照。)。このとき、共振インダクタL1、L2に昇圧用のエネルギーが蓄積される。また、スイッチング素子Q2、Q4には、昇圧された負荷電流に対応して誘導された電流成分が流れる(図7のQ’Id破線参照)。
【0061】
(3-4)時刻t7~t8
次に、時刻t7において、スイッチング素子Q5、Q6をオフにする(開放する)ことで図9(b)の実線に示すような電流が流れる。
このように時刻t6~t8においては、整流部30において昇圧チョッパ動作を行うこととなり、出力電圧Voutを昇圧させることができる。
そして、時刻t8において、スイッチング素子Q2、Q4の電流成分Q’Idが0になる。
【0062】
やがて、LLC共振が終了すると励磁電流(図9(b)一点鎖線参照。)のみが残り、スイッチング素子Q2、Q4をオフにする(時刻t9)と、第1のコンバータ部10においては、入力コンデンサC3からスイッチング素子Q1、共振インダクタL1、共振コンデンサC1、1次巻線T1-1を経由して入力コンデンサC3に戻る励磁電流が生じる(図8(a)一点鎖線参照。)。また、第2のコンバータ部20においても、入力コンデンサC3からスイッチング素子Q2、共振インダクタL2、共振コンデンサC2、1次巻線T2-1を経由して入力コンデンサC3に戻る励磁電流が生じる(図8(a)一点鎖線参照。)。
【0063】
次に、時刻t10において、スイッチング素子Q1、Q3をオンする。以下、同様に、繰り返す。
【0064】
3.実施形態1に係るコンバータ1の効果
実施形態1に係るコンバータ1によれば、中電圧出力モードにおいて、1次側制御部40は、第1及び第2のコンバータ部10、20のスイッチング素子Q1とQ3、Q2とQ4のオンオフタイミングを同期させ、2次側制御部50は、整流部30のスイッチング素子Q5、Q6をオフにするため、一般的な電流共振型のコンバータと同様に、出力可能な電圧の範囲において周波数制御を行うことで所定の出力範囲内で所望の出力電圧を出力することができる。
【0065】
また、実施形態1に係るコンバータ1によれば、低電圧出力モードにおいて、1次側制御部40は、スイッチング素子Q1(Q2)の位相と、スイッチング素子Q3(Q4)の位相との間に位相差(オンオフタイミングの位相差)が生じるようにスイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4のオンオフを制御し、2次側制御部50は、スイッチング素子Q5、Q6をオフにするため、2次巻線T1-2、T2-2において逆電圧区間を発生させて出力電圧を低くすることができる。その結果、比較的低電圧の出力電圧を出力することができる。
【0066】
また、実施形態1に係るコンバータ1によれば、高電圧出力モードにおいては、1次側制御部40は、スイッチング素子Q1とQ3、Q2とQ4を同期させ、2次側制御部50は、スイッチング素子Q1とQ3又はQ2とQ4がオンするタイミングに同期して整流部30の2つのスイッチング素子Q5、Q6を所定時間オンするようにスイッチング素子Q5、Q6を制御するため、当該所定期間のみ、整流部30が昇圧チョッパ動作を行うことができ、出力電圧を高くすることができる。その結果、比較的高電圧において所望の出力電圧を出力することができる。
【0067】
従って、実施形態1に係るコンバータ1によれば、上記した構成とすることにより、低電圧出力モードと、中電圧出力モードと、高電圧出力モードとを切り替えて実施することができるため、広範囲の出力電圧に対応可能なコンバータとなる。
【0068】
また、実施形態1に係るコンバータ1によれば、上記した構成とすることにより、絶縁型コンバータの後段に非絶縁チョッパ回路を搭載することなく、低電圧出力モードと、中電圧出力モードと、高電圧出力モードとを切り替えて実施することができるため、広範囲の出力電圧に対応可能なコンバータでありながら、小型化することが可能なコンバータとなる。
【0069】
また、実施形態1に係るコンバータ1によれば、低電圧出力モードにおいては、1次側制御部40によって第1のコンバータ部10のスイッチング素子Q1、Q2の位相と第2のコンバータ部20のスイッチング素子Q3、Q4の位相との間の位相差(スイッチング素子Q1とQ3又はQ2とQ4の位相差)を調整することにより出力電圧を制御するため、比較的低電圧において所望の出力電圧を確実に出力することができる。
【0070】
また、実施形態1に係るコンバータ1によれば、高電圧出力モードにおいては、2次側制御部50によって整流部30の2つのスイッチング素子Q5、Q6をオンする時間を調整することにより出力電圧を制御するため、比較的高電圧において所望の出力電圧を確実に出力することができる。
【0071】
また、実施形態1に係るコンバータ1によれば、1次側スイッチ部SW1、SW2においては、スイッチング素子Q1、Q2及びQ3、Q4でそれぞれハーフブリッジ回路が構成されているため、スイッチング素子Q1~Q4について高耐圧のスイッチング素子を使用しなくても済み、かつ、効率が良いコンバータとなる。
【0072】
また、実施形態1に係るコンバータ1によれば、第1及び第2のコンバータ部10、20は、それぞれ1次巻線T1-1、T2-1と直列に接続されている共振インダクタL1、L2を有し、第1及のコンバータ部10(第2のコンバータ部20)においては、共振インダクタL1(L2)、共振コンデンサC1(C2)及び1次巻線T1-1(T2-1)で共振回路を構成するため、比較的簡便な構成でソフトスイッチングを実現することができる。
【0073】
[実施形態2]
図10は、実施形態2に係るコンバータにおける高電圧出力モード(昇圧モード)の波形図である。なお、図10において、Q’Idは、スイッチング素子のドレイン電流を示し、時刻t3、t11はスイッチング素子Q6がオフになるタイミングを示し、時刻t7、t15はスイッチング素子Q5がオフになるタイミングを示し、時刻t4、t8、t12はQ’Idが0になるタイミングを示す。
【0074】
実施形態2に係るコンバータのハードウェア構成回路は、図1に示す実施形態1に係るコンバータ1と同様であるが、高電圧出力モードにおけるスイッチング素子Q5、Q6のオンオフタイミングが実施形態1に係るコンバータ1の場合とは異なる。すなわち、実施形態2に係るコンバータの高電圧出力モードにおいて、2次側制御部50は、スイッチング素子Q1、Q3がオンするタイミング(図10の時刻t2、t10参照。)に同期して整流部のスイッチング素子Q6をオンし、所定時間(時刻t2~t3、t10~t11)オン状態とするとともに(昇圧期間)、第1及び第2のコンバータ部10、20のスイッチング素子Q1、Q3に同期して整流部のスイッチング素子Q5をオンする(同期整流期間)。また、スイッチング素子Q2、Q4がオンするタイミング(図10の時刻t6、t14参照。)に同期して整流部のスイッチング素子Q5をオンして、所定時間(時刻t6~t7、t14~t15)オン状態とするとともに(昇圧期間)、スイッチング素子Q2、Q4のオン期間に同期して整流部30のスイッチング素子Q6をオンする(同期整流期間)。このようにこれを交互に繰り返すように整流部30の2つのスイッチング素子Q5、Q6を制御する(図10参照。)。
【0075】
このように、実施形態2に係るコンバータは、電圧出力モードにおけるスイッチング素子Q5、Q6のオンオフタイミングが実施形態1に係るコンバータ1の場合とは異なるが、実施形態1に係るコンバータ1の場合と同様に、中電圧出力モード及び高電圧出力モードにおいては、第1のコンバータ部のスイッチング素子と、第2のコンバータ部のスイッチング素子が同期し、低電圧出力モードにおいては、第1のコンバータ部のスイッチング素子の制御電圧の位相と、第2のコンバータ部のスイッチング素子の制御電圧の位相との間に位相差が生じるように第1及び第2のコンバータ部のスイッチング素子のオンオフを制御する1次側制御部と、低電圧出力モード及び中電圧出力モードにおいては、整流部のスイッチング素子をオフにし、高電圧出力モードにおいては、第1及び第2のコンバータ部のスイッチング素子がオンするタイミングに同期して整流部の2つのスイッチング素子のうちの少なくともいずれかを所定時間オンするように整流部の2つのスイッチング素子を制御する2次側制御部とを備えるため、低電圧出力モードと、中電圧出力モードと、高電圧出力モードとを切り替えて実施することができるため、広範囲の出力電圧に対応可能なコンバータとなる。
【0076】
また、実施形態2に係るコンバータによれば、高電圧出力モードにおいて、2次側制御部は、第1及び第2のコンバータ部のスイッチング素子がオンするタイミングに同期して整流部の2つのスイッチング素子のうちの一方を所定時間オンするとともに、第1及び第2のコンバータ部のスイッチング素子に同期して整流部の2つのスイッチング素子のうちの他方をオンし、これを交互に繰り返すように整流部の2つのスイッチング素子を制御するため、同期整流動作となり、出力整流時の電力損失を軽減することができる。その結果、電力変換効率の向上に寄与するとともに、発熱の抑制に寄与する。
【0077】
なお、実施形態2に係るコンバータは、電圧出力モードにおけるスイッチング素子Q5、Q6のオンオフタイミング以外の点においては実施形態1に係るコンバータ1と同様の構成を有するため、実施形態1に係るコンバータ1が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0078】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0079】
(1)上記各実施形態において記載した構成要素の数、位置等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0080】
(2)上記各実施形態において、1次側スイッチ部SW1,SW2において、入力側スイッチング素子でハーフブリッジ回路を構成したが、本発明はこれに限定されるものではない。1次側スイッチ部において、入力側スイッチング素子でフルブリッジ回路を構成してもよい。
【0081】
(3)上記各実施形態において、第1及び第2のコンバータ部10、20は、1次巻線T1-1、T2-1と直列に接続されているインダクタL1、L2を有し、インダクタL1、L2、共振コンデンサC1、C2及び1次巻線T1-1、T2-1で共振回路を構成したが、本発明はこれに限定されるものではない。第1及び第2のコンバータ部10、20においては、寄生インダクタ、共振コンデンサ及び1次巻線で共振回路を構成してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1、900…コンバータ、10、910…第1のコンバータ部、20…第2のコンバータ部、30、930…整流部、960…追加のコンバータ部、Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6…スイッチング素子、SW1、SW2…1次側スイッチ部、C1、C2、C3、C4…コンデンサ、L1、L2…インダクタ、T1、T2…トランス、T1-1、T2-1…1次巻線、T1-2、T2-2…2次巻線、D1、D2、D3、D4…ダイオード(D3、D4は寄生ダイオード)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11