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特許7329979閉そく区間のための電子制御装置及び制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】閉そく区間のための電子制御装置及び制御システム
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/16 20060101AFI20230814BHJP
   B61L 19/06 20060101ALI20230814BHJP
   B61L 23/14 20060101ALI20230814BHJP
   B61L 27/33 20220101ALI20230814BHJP
【FI】
B61L23/16 E
B61L19/06
B61L23/14 C
B61L27/33
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019114007
(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公開番号】P2021000856
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】516327044
【氏名又は名称】奥谷 民雄
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100077539
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 義仁
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 民雄
(72)【発明者】
【氏名】神能 敏章
(72)【発明者】
【氏名】石川 了
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-189080(JP,A)
【文献】特開2018-131120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/16
B61L 27/33
B61L 19/06
B61L 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1閉そく区間に対応して地上に設置される電子制御装置であって、前記閉そく区間には、軌道回路及び閉そく信号機が設置され、複数の閉そく区間の間で情報を送受信するための通信ネットワークが前記軌道回路とは別に設けられており、前記電子制御装置は、
前記通信ネットワークに接続される通信インターフェースと、
前記軌道回路に接続され、対応する閉そく区間における列車の在線を検知する軌道回路制御部と、
前記閉そく信号機に接続され、該閉そく信号機の現示を制御する信号機制御部と、
論理制御部とを備え、
前記論理制御部は、
前記軌道回路制御部を介して検知した前記対応する閉そく区間における列車の在線状況を示す情報を、前記通信インターフェースを介して前記通信ネットワーク上に送信すること、
前記通信ネットワークを介して提供される、内方で隣接する1以上の他の閉そく区間又は駅構内における列車の在線状況を示す情報を、前記通信インターフェースを介して受信すること、
前記対応する閉そく区間における列車の在線状況を示す情報及び前記内方で隣接する1以上の他の閉そく区間又は駅構内における列車の在線状況を示す情報に基づいて、前記閉そく信号機の現示を決定し、該決定に従って前記信号機制御部を介して該閉そく信号機の現示を制御すること、
を実行するように構成されていることを特徴する電子制御装置。
【請求項2】
前記閉そく区間には、車上装置と通信するための対列車通信手段が設置されており、
前記電子制御装置は、前記対列車通信手段に接続された列車制御部を備えており、
前記論理制御部は、前記決定した前記閉そく信号機の現示に従う列車制御用信号を前記列車制御部を介して前記対列車通信手段に与えること、を実行するように構成されている、請求項1の電子制御装置。
【請求項3】
中央監視装置に通じる通信ネットワークに接続される監視インターフェースを更に備え、
前記論理制御部は、前記閉そく区間に設置された設備及び前記電子制御装置内の構成要素のうち少なくとも1つで検知された故障検知信号及び状態検知情報の少なくとも一方を、前記監視インターフェースを介して前記中央監視装置に通じる通信ネットワークに送信すること、を実行するように構成されている、請求項1又は2の電子制御装置。
【請求項4】
前記閉そく区間に設置された設備及び前記電子制御装置内の構成要素のうち少なくとも1つは二重系からなり、該二重系からなる前記設備及び前記構成要素のうち少なくとも1つは故障時に故障検知信号を生成し、該故障検知信号は、二重系のどちらの故障かを示す識別情報を含む、請求項3の電子制御装置。
【請求項5】
複数の閉そく区間の各々に対応して請求項1乃至4のいずれかの前記電子制御装置を具備し、各電子制御装置を前記通信ネットワークを介して接続してなる制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の各閉そく区間に対応して設置される電子制御装置に関し、さらには複数の閉そく区間のための制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の信号機制御には、大別して、駅構内の信号機制御と駅間の閉そく信号機制御とがある。通常、駅単位に電子連動装置が設置され、各駅構内の信号機及び転てつ機等現場機器が該対応する電子連動装置によって連動制御される。1つの電子連動装置は1つの駅の構内を制御範囲としており、各駅に設置した電子連動装置にCTC(centralized traffic control)伝送装置などを接続することにより、各駅の情報を指令所(CTC中央装置)に伝送するようになっている。一方、駅間に設定される1以上の自動閉そく区間における閉そく信号機制御(自動閉そく制御)は、基本的には、個々の自動閉そく区間毎の軌道回路による列車在線状況に基づき当該自動閉そく区間の閉そく信号機を制御することからなっている。従来、複数の閉そく区間における列車在線状況を考慮した複雑な自動閉そく制御は、個々の自動閉そく区間において独立に行うことができず、駅単位の電子連動装置によって行われるようになっていた。この場合、駅間に存在する複数の閉そく区間のそれぞれにおいて小型端末が設置され、該各閉そく区間における自動閉そく制御及び列車追跡制御等は、駅構内に設置された電子連動装置の制御によって該各閉そく区間における小型端末に対して行われるようになっていた。下記特許文献1には、そのような列車制御システムの一例が示されている。そこに示された列車制御システムは、駅集中型の制御システムということができる。また、制御の集中性をさらに高めて、線区全体の制御を中央の線区集中連動制御装置によって行うことも提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-100623号
【文献】特開2018-69971号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、自己の閉そく区間のみならず他の閉そく区間における列車在線状況をも考慮した自動閉そく制御を、閉そく区間毎に独立して行うことができる電子制御装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、1閉そく区間に対応して地上に設置される電子制御装置である。閉そく区間には、軌道回路及び閉そく信号機が設置される。また、複数の閉そく区間の間で情報を送受信するために通信ネットワークが前記軌道回路とは別に設けられる。本発明に係る電子制御装置は、前記通信ネットワークに接続される通信インターフェースと、前記軌道回路に接続され、対応する閉そく区間における列車の在線を検知する軌道回路制御部と、前記閉そく信号機に接続され、該閉そく信号機の現示を制御する信号機制御部と、論理制御部とを備え、該論理制御部は、前記軌道回路制御部を介して検知した前記対応する閉そく区間における列車の在線状況を示す情報を、前記通信インターフェースを介して前記通信ネットワーク上に送信すること、前記通信ネットワークを介して提供される、内方で隣接する1以上の他の閉そく区間又は駅構内における列車の在線状況を示す情報を、前記通信インターフェースを介して受信すること、前記対応する閉そく区間における列車の在線状況を示す情報及び前記内方で隣接する1以上の他の閉そく区間又は駅構内における列車の在線状況を示す情報に基づいて、前記閉そく信号機の現示を決定し、該決定に従って前記信号機制御部を介して該閉そく信号機の現示を制御すること、を実行するように構成されていることを特徴する。
【0006】
本発明によれば、複数の閉そく区間の間で情報を送受信するために通信ネットワークが前記軌道回路とは別に設けられ、電子制御装置が具備する通信インターフェースは、そのような前記軌道回路とは別に設けられた通信ネットワークに対する情報の送信及び受信を行うように構成されている。これにより、1閉そく区間に対応する電子制御装置が、対応する閉そく区間における列車の在線状況を示す情報のみならず、他の閉そく区間又は駅構内における列車の在線状況を示す情報も受信し、複数の閉そく区間及び/又は駅構内における列車の在線状況を示す情報に基づいて、該対応する閉そく区間の閉そく信号機の現示を決定し、制御する。したがって、自己の閉そく区間のみならず他の閉そく区間における列車在線状況をも考慮した自動閉そく制御を、閉そく区間毎に独立して行うことができる。また、電子制御装置が具備する論理制御部は、対応する閉そく区間に関連する論理制御のみを実行すればよいので、小規模・コンパクトな構成であってよい。また、通信ネットワークを介して伝送される情報は必要最小限で済むので、小規模なデータ伝送レートの通信システムを採用することができる。したがって、各閉そく区間に対応して本発明に係る電子制御装置を設置することにより、駅毎に又は線区全体で集中連動制御する場合に比べて、小規模・コンパクトかつローコストな自動閉そく制御システムを提供することができる。
【0007】
一実施例として、前記閉そく区間には、車上装置と通信するための対列車通信手段が設置され、前記電子制御装置は、前記対列車通信手段に接続された列車制御部を備え、前記論理制御部は、前記決定した前記閉そく信号機の現示に従う列車制御用信号を前記列車制御部を介して前記対列車通信手段に与えること、をさらに実行するように構成されていてよい。これにより、前記決定した閉そく信号機の現示に従う列車制御用信号が対列車通信手段に与えられ、走行する列車の車上装置によって受信され得る。列車の車上装置では、該受信した列車制御用信号に従って例えばATS制御(自動列車停止制御)及び/又は速度制御等を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施例に係る閉そく区間のための電子制御装置のブロック図。
図2図1の論理制御部が実行する処理の一例を示すフローチャート。
図3図1に示した電子制御装置を駅間の各閉そく区間に配置し、かつ各駅の電子連動装置を通信ネットワーク内に組み込んだ本発明の一実施例に係る制御システムを示す模式図。
図4】単線軌道における本発明の電子制御装置の一実施例を示すブロック図。
図5図4に示す単線軌道仕様の電子制御装置を複線の各軌道に適用する例(単線並列運行)を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
公知のように、鉄道の駅と駅との間においては、1以上の閉そく区間が設定される。各閉そく区間に対応して軌道回路及び閉そく信号機が設けられ、軌道回路を介して列車の在線が検知され、各閉そく区間における列車在線状況に応じて各閉そく信号機の現示が制御される(自動閉そく制御)。本発明に係る電子制御装置10は、各閉そく区間に対応して地上側にそれぞれ設けられ、対応する閉そく区間における自動閉そく制御及びATS制御等を自己の判断で行う電子制御装置である。
【0010】
典型的な軌道回路について図1により説明する。鉄道線区の全域にわたって、列車1が走行するレール2a,2bを利用して軌道回路RC0,RC1,RC2,・・・が連続的に形成される。図1は、一例として、軌道回路RC0,RC1,RC2,・・・が複軌条式軌道回路からなる例を示しており、レール2a,2bにおいて各軌道回路RC0,RC1,RC2,・・・の境界にレール絶縁3が設けられている。公知のように、各軌道回路RC0,RC1,RC2,・・・は、レール2a,2bと、該軌道回路の一端(送信端Tx)において両レール2a,2b間に接続された送信器5と、該軌道回路の他端(受信端Rx)において両レール2a,2b間に接続された受信器6とで構成される。
【0011】
図1において、1つの自動閉そく区間CS1に対応して、閉そく信号機SG1、軌道回路RC1、地上子P11,P12,P13が設置されている。閉そく信号機SG1は自動閉そく区間CS1の始端に配置され、地上子P11,P12,P13は該閉そく信号機SG1の手前の所定位置に配置される。各地上子P11,P12,P13は、列車1の車上装置4と通信し(非接触的通信、例えば電磁誘導原理に基づく通信)、列車制御用信号(例えば、停止指示、速度指示等)を列車1に与える。すなわち、地上子P11,P12,P13は、車上装置4と通信するための対列車通信手段として機能する。具体的には、自動閉そく区間CS1に対応する地上子P11,P12,P13は、該自動閉そく区間CS1の外方で隣接する自動閉そく区間CS0に属する領域に配置される。これら複数の地上子P11,P12,P13は、自動閉そく区間CS0に属する領域における異なる位置に設置され、各地上子P11,P12,P13から内方直近の閉そく信号機SG1までの距離がそれぞれ異なっている。これにより、各地上子P11,P12,P13の位置から列車1の車上装置4に対して、停止すべき閉そく信号機までの距離に応じた異なる列車制御用信号(停止指示、速度指示等)を与えることができる。なお、停止すべき閉そく信号機とは、内方直近の閉そく信号機SG1の現示内容に応じて、該内方直近の閉そく信号機SG1又はその先の閉そく信号機SG2等である。なお、各自動閉そく区間CS0,CS1,CS2,・・・は、自動閉そく制御に限らず、半自動閉そく制御されるものであってもよいので、以下、単に、閉そく区間CS0,CS1,CS2,・・・という。
【0012】
図1は、1つの閉そく区間CS1のための電子制御装置10の詳細を示している。他の閉そく区間CS0,CS2,・・・においても同様の構成からなる電子制御装置10が設けられる。また、複数の閉そく区間CS0,CS1,CS2,・・・の間で情報を送受信するために通信ネットワーク7(例えば光LAN)が設けられる。
【0013】
電子制御装置10は、通信ネットワーク7に接続される通信インターフェース(I/F)11と、軌道回路RC1に接続され、対応する閉そく区間CS1における列車1の在線状況を検知する軌道回路制御部12と、地上子P11,P12,P13に接続された列車制御部13と、閉そく信号機SG1に接続され、該閉そく信号機SG1の現示を制御する信号機制御部14と、論理制御部15とを備える。
【0014】
軌道回路制御部12、列車制御部13、信号機制御部14は、既存又は公知の構成を適宜用いてよい。軌道回路制御部12は、軌道回路の一端(送信端Tx)から送信器5を介してレール2a,2bに列車検知用信号を送信し、軌道回路の他端(受信端Rx)にて受信器6を介してレール2a,2bから列車検知用信号を受信する。公知のように、対応する閉そく区間CS1に列車1が在線しているときは、レール2a,2bが短絡することにより、軌道回路RC1の受信端Rx(受信器6)において列車検知用信号が受信されず、これにより、当該閉そく区間CS1に列車1が在線していることを検知することができる。図示の例では、列車1の進行方向を矢印Fで示し、対応する閉そく区間CS1の始端を受信端Rxとし、閉そく区間CS1の終端を送信端Txとしている。電子制御装置10の装置筐体は、対応する閉そく区間CS1の始端寄りの位置に配置するものとしている。そのため、軌道回路制御部12は、対応する軌道回路RC1の受信端Rx(受信器6)から得られる信号を入力するが、出力した列車検知用信号は、送信器5を介して、外方直近で隣接する閉そく区間CS0の終端(送信端Tx)に対して送信するようにしている。この場合、対応する軌道回路RC1の終端(送信端Tx)に入力される列車検知用信号は、内方直近で隣接する閉そく区間CS2に対応して設けられた電子制御装置10から送信器5を介して送信出力された列車検知用信号である。このように、軌道回路の送信端Txに入力される列車検知用信号を、最も近くに位置する電子制御装置10から送信出力された列車検知用信号とすることにより、軌道回路の送信端Txに対して最短距離の電子制御装置10から列車検知用信号を供給することができ、経済的であり、また、配線故障等のリスクも最小にすることができる。しかし、これに限らず、同じ軌道回路RC1の受信端Rx(受信器6)及び送信端Tx(送信器5)を同じ電子制御装置10の軌道回路制御部12に接続してもよい。
【0015】
論理制御部15は、
(1)軌道回路RC1及び軌道回路制御部12を介して検知した、対応する閉そく区間CS1における列車1の在線状況を示す情報を、通信インターフェース11を介して通信ネットワーク7上に送信すること、
(2)通信ネットワーク7を介して提供される、内方で隣接する1以上の他の閉そく区間(CS2等)における列車の在線状況を示す情報を、通信インターフェース11を介して受信すること、及び
(3)対応する閉そく区間CS1における列車1の在線状況を示す情報及び内方で隣接する1以上の他の閉そく区間(CS2等)における列車の在線状況を示す情報に基づいて、対応する閉そく信号機SG1の現示を決定し、該決定に従って信号機制御部14を介して該閉そく信号機の現示を制御すること、
を実行するように構成されている。
【0016】
さらに、好ましい実施例として、論理制御部15は、
(4)前記決定した閉そく信号機SG1の現示に従う列車制御用信号を、列車制御部13を介して各地上子P11,P12,P13(つまり、対列車通信手段)に与えること、
を実行するように構成されている。
【0017】
なお、後述するように、駅に近い閉そく区間にあっては、その内方で隣接する1以上の区間(CS2等)としては、閉そく区間に限らず、駅構内の区間も含まれる。その場合、前記(2)の処理において受信する「内方で隣接する1以上の他の閉そく区間における列車の在線状況を示す情報」としては、閉そく区間における列車の在線状況を示す情報に限らず、内方の駅構内における列車の在線状況を示す情報も含まれる。また、前記(3)の処理では、内方で隣接する1以上の他の閉そく区間における列車の在線状況を示す情報に限らず、内方の駅構内における列車の在線状況を示す情報にも基づいて、対応する閉そく信号機の現示を決定する。なお、以下の説明では、通信ネットワーク7を介して授受される「列車の在線状況を示す情報」を、「在線検知情報」とも言う。
【0018】
論理制御部15の具体的な回路構成は、例えば、CPU(プロセッサ)と半導体メモリ等からなり、この明細書において例示的に述べる諸機能を実現するように組まれたコンピュータプログラムをCPU(プロセッサ)が実行するような構成からなっていてよい。しかし、そのようなコンピュータ方式に限らず、専用の集積回路あるいはディスクリート回路等任意の回路構成によって論理制御部15を構成してもよい。
【0019】
図2は、論理制御部15が実行する処理の具体例を示すフローチャートである。ステップS1では、上記(1)の処理を行う。すなわち、軌道回路RC1及び軌道回路制御部12を介して検知した、対応する閉そく区間CS1における在線検知情報を、当該閉そく区間CS1を特定する区間IDを付属させて、通信インターフェース11を介して通信ネットワーク7上に送信する。通信ネットワーク7上に送信された在線検知情報は、他の閉そく区間に設置された電子制御装置10において利用される。
【0020】
ステップS2では、上記(2)の処理を行う。すなわち、通信ネットワーク7を介して提供される、内方で隣接する1以上の他の閉そく区間(CS2等)における在線検知情報を、通信インターフェース11を介して受信する。具体的には、在線検知情報に付属する区間IDから必要な区間(CS2等)を判定し、必要な区間の在線検知情報を通信インターフェース11を介して取り込み、内部メモリに一時記憶する。必要な区間は、閉そく信号機において表示可能な信号パターンによって定まる。例えば、R,Y,YG,Gの4パターンのいずれかを表示可能な場合は、内方で隣接する2つの閉そく区間(CS2等)における在線検知情報を取り込む。
【0021】
ステップS3及びS4では、上記(3)の処理を行う。ステップS3では、対応する閉そく区間CS1における在線検知情報(前記ステップS1で通信ネットワーク7上に送信した自己の閉そく区間の在線検知情報)、及び内方で隣接する1以上の他の閉そく区間における在線検知情報(前記ステップS2で通信ネットワーク7から取り込んだ他の必要な区間の在線検知情報)に基づいて、対応する閉そく信号機SG1の現示を決定する。具体例を示すと、次のような条件にしたがって、R現示(停止を指示する「赤」)、Y現示(注意走行を指示する「黄」)、YG現示(減速走行を指示する「黄・緑」)、G現示(通常走行を指示する「緑」)のいずれかに決定される。
【0022】
R現示:対応する(自己の)閉そく区間CS1における在線検知情報が列車1の在線を示している場合は、R現示に決定する。
【0023】
Y現示:対応する(自己の)閉そく区間CS1における在線検知情報が列車1の非在線を示しているが、内方直近で隣接する閉そく区間CS2における在線検知情報が列車1の在線を示している場合は、Y現示に決定する。
【0024】
YG現示:対応する(自己の)閉そく区間CS1における在線検知情報が列車1の非在線を示し、かつ、内方直近(つまり内方1番目)で隣接する閉そく区間CS2における在線検知情報も列車1の非在線を示しているが、内方2番目で隣接する閉そく区間(便宜上、CS3という)における在線検知情報が列車1の在線を示している場合は、YG現示に決定する。なお、「内方2番目で隣接する閉そく区間CS3」とは、前記閉そく区間CS2に内方直近で隣接している区間である。
【0025】
G現示:対応する(自己の)閉そく区間CS1における在線検知情報、内方直近(つまり内方1番目)で隣接する閉そく区間CS2における在線検知情報、及び内方2番目で隣接する閉そく区間CS3における在線検知情報がいずれも列車1の非在線を示している場合は、G現示に決定する。
【0026】
ステップS4では、ステップS3における決定にしたがって、信号機制御部14を介して、対応する閉そく信号機SG1の現示を制御する。
【0027】
ステップS5では、上記(4)の処理を行う。すなわち、ステップS3で決定した閉そく信号機SG1の現示に従う列車制御用信号を、列車制御部13を介して各地上子P11,P12,P13に与えるための処理を行う。一例として、論理制御部15は、ステップS5の処理として、前記ステップS3で決定した閉そく信号機SG1の現示を示す信号現示情報を列車制御部13に与える。列車制御部13は、該与えられた信号現示情報に応じた列車制御用信号を、地上子P11,P12,P13に与える。一例として、ステップS5の処理によって各地上子P11,P12,P13に与えられる列車制御用信号は、該地上子から停止すべき閉そく信号機までの距離に対応する情報を含む。
【0028】
各地上子P11,P12,P13から内方直近の閉そく信号機SG1までの距離をそれぞれa,b,cとし(参考値を示すと、aは30m程度、bは180m程度、cは600m程度)、対応する(自己の)閉そく区間CS1の全長をL、内方直近で隣接する閉そく区間CS2の全長をM、内方2番目で隣接する閉そく区間CS3の全長をNとすると、各現示に対応して、各地上子P11,P12,P13から停止すべき閉そく信号機までの距離は、次のようである。
【0029】
R現示の場合、停止すべき閉そく信号機は、自己の閉そく区間CS1の信号機SG1であり、各地上子P11,P12,P13から停止すべき閉そく信号機SG1までの距離は、次のとおり。
地上子P11:a
地上子P12:b
地上子P13:c
【0030】
Y現示の場合、停止すべき閉そく信号機は、内方直近で隣接する閉そく区間CS2の閉そく信号機SG2であり、各地上子P11,P12,P13から停止すべき閉そく信号機SG2までの距離は、次のとおり。
地上子P11:a+L
地上子P12:b+L
地上子P13:c+L
【0031】
YG現示の場合、停止すべき閉そく信号機は、内方2番目で隣接する閉そく区間CS3の閉そく信号機(便宜上、SG3という)であり、各地上子P11,P12,P13から停止すべき閉そく信号機SG3までの距離は、次のとおり。
地上子P11:a+L+M
地上子P12:b+L+M
地上子P13:c+L+M
【0032】
G現示の場合、停止すべき閉そく信号機は、内方3番目で隣接する閉そく区間(便宜上、CS4という)の閉そく信号機(便宜上、SG4という)であり、各地上子P11,P12,P13から停止すべき閉そく信号機SG4までの距離は、次のとおり。
地上子P11:a+L+M+N
地上子P12:b+L+M+N
地上子P13:c+L+M+N
【0033】
一例として、列車制御部13は、論理制御部15の前記ステップS5の処理によって与えられた閉そく信号機SG1の現示を示す信号現示情報に従って、各地上子P11,P12,P13から停止すべき閉そく信号機までの距離を上記のように求める。上記のように距離を求めることは、リアルタイムの計算によって行ってもよいが、メモリに予め記憶されたデータを該信号現示情報に従って読み出すようにしてもよい。列車制御部13は、こうして求めた距離を示す情報を、前記列車制御用信号として、各地上子P11,P12,P13に与え、各地上子P11,P12,P13から該距離を示す情報(列車制御用信号)を発信させる。列車1が各地上子P11,P12,P13を通過するとき、その車上装置4によって各地上子P11,P12,P13から発信された情報(列車制御用信号)が受信され、受信した情報(列車制御用信号)が当該列車1におけるATS制御に利用される。
【0034】
一例として、列車1の車上装置4は、該受信した情報(列車制御用信号)に基づき、所定の速度パターン(列車の現在位置から停止目標位置までの距離を独立変数とし、該距離に応じた列車速度を従属変数とする関数)に従い、各地上子P11,P12,P13に対応する軌道位置における目標列車速度(停止を含む)を求める。なお、目標列車速度(停止を含む)を求めることは、リアルタイムの計算によって行ってもよいが、メモリに予め記憶されたデータを前記距離を示す情報信号に従って読み出すようにしてもよい。ATS制御で知られているように、車上装置4で求めた目標列車速度は、列車1の運転パネルで表示されて運転者に対して該目標列車速度で運転するよう(停止を含む)促すか、若しくは列車1の速度(停止を含む)を自動制御するために利用される。
【0035】
勿論、列車制御部13から各地上子P11,P12,P13を介して車上装置4に与えられる列車制御用信号は、各地上子P11,P12,P13から停止すべき閉そく信号機までの距離を示す情報に限らず、軌道の勾配を示す情報等、その他任意の列車制御関連情報であってもよい。
【0036】
なお、地上子P11,P12,P13の具体的構成及び列車制御部13によるATS制御方式等は、どのような構成及び方式であってもよい。例えば、ATS-P地上子あるいはATS-P(N)地上子が公知であり、このどちらの構成及び方式を用いてもよい。勿論、1つの閉そく区間に対応して設置する地上子の数は、3個に限らず、1個以上の任意の数であってよい。
【0037】
別の例として、列車制御部13から各地上子P11,P12,P13を介して車上装置4に与えられる列車制御用信号は、各地上子P11,P12,P13から停止すべき閉そく信号機までの距離を示す情報に限らず、該距離によって規定される各地上子P11,P12,P13に対応する軌道位置における前記目標列車速度(停止を含む)を示す情報であってもよい。その場合、前記所定の速度パターンに従う目標列車速度(停止を含む)の算出(又はメモリ読み出し)は、車上装置4ではなく、列車制御部13において行われる。
【0038】
さらに別の例として、列車制御部13から各地上子P11,P12,P13を介して車上装置4に与えられる列車制御用信号は、ステップS5の処理によって決定された対応する閉そく信号機SG1の現示を示す信号現示情報そのものであってもよく、その場合、該対応する閉そく区間CS1及び各地上子P11,P12,P13を識別するIDも一緒に車上装置4に与えるものとする。その場合、上記のようにして求められる各地上子P11,P12,P13から停止すべき閉そく信号機までの距離は、列車制御部13ではなく、列車1の車上装置4において算出(又はメモリ読み出し)されることになる。
【0039】
上記実施例においては、車上装置4と通信するための対列車通信手段は、地上子P11,P12,P13,P21,P22,P23,・・・からなっている。しかし、これに限らず、対列車通信手段は、任意の構成からなっていてよい。例えば、軌道回路RC0,RC1,RC2,・・・を介して列車制御用信号を車上装置4にデータ伝送することが公知であり、そのような軌道回路を介したデータ伝送技術によって対列車通信手段を構成してもよい。その場合、図1において、各地上子P11,P12,P13,P21,P22,P23,・・・を省略し、閉そく区間CS1の電子制御装置10の列車制御部13の出力を送信器5に接続し、該送信器5を介して外方直近の閉そく区間CS0の軌道回路RC0の一端(送信端Tx)に列車制御用信号をデータ伝送するように構成すればよい。その場合、車上装置4の側で、列車1の現走行位置を把握する処理を行う一方で、該データ伝送された列車制御用信号に基づき、前記信号現示情報に応じた前記所定の速度パターンに従う前記目標列車速度(停止を含む)を該現走行位置に応じて算出(又はメモリ読み出し)する。
【0040】
別の例として、車上装置4と通信するための対列車通信手段は、無線通信技術を用いてもよい。その場合、図1において、各地上子P11,P12,P13,P21,P22,P23,・・・を省略して、無線送信機(又は送受信機)を設け、閉そく区間CS1の電子制御装置10の列車制御部13の出力を該無線送信機に接続し、該無線送信機を介して外方直近の閉そく区間CS0に在線する列車1に対して、列車制御用信号を、少なくとも閉そく区間IDと共に、無線データ伝送するように構成すればよい。勿論、列車1の側でも無線送信機(又は送受信機)を具備し、無線データ伝送された列車制御用信号及び閉そく区間IDを無線受信する。その場合においても、車上装置4の側で、列車1の現走行位置を把握する処理を行う一方で、該無線データ伝送された列車制御用信号に基づき、前記信号現示情報に応じた前記所定の速度パターンに従う前記目標列車速度(停止を含む)を該現走行位置に応じて算出(又はメモリ読み出し)する。
【0041】
図1に戻り、電子制御装置10は、中央監視装置(不図示)に通じる監視用通信ネットワーク8に接続される監視インターフェース16を更に備えてもよい。鉄道制御システムにおいては、各部品及び装置等がフェールセーフのために故障検知機能を備えていることが知られており、また、各機器の状態検知機能(例えば軌道回路の電圧及び電流状態、信号機の電圧及び電流状態等)を備えていることも知られている。本実施例においては、中央監視装置(不図示)に通じる監視用通信ネットワーク8と、電子制御装置10に設けた監視インターフェース16とによって、これらの故障検知機能及び/又は状態検知機能を活用し、集中的に監視できるようにしている。
【0042】
論理制御部15は、対応する閉そく区間CS1に設置された諸設備(軌道回路RC1、閉そく信号機SG1、地上子P11,P12,P13(対列車通信手段)等)及び当該電子制御装置10内の諸構成要素(通信インターフェース11、軌道回路制御部12、列車制御部13、信号機制御部14、論理制御部15等)のうち少なくとも1つの設備又は構成要素で検知された故障検知信号及び/又は状態検知情報を、監視インターフェース16を介して前記中央監視装置に通じる監視用通信ネットワーク8に送信する機能を備えている。
【0043】
これにより、いずれかの閉そく区間に対応する軌道回路、現場機器、制御装置等で故障が生じた場合、該閉そく区間に対応する電子制御装置10から監視用通信ネットワーク8を介して中央監視装置に故障情報が通知され、故障に速やかに対処できる。また、各閉そく区間に対応する電子制御装置10から監視用通信ネットワーク8を介して中央監視装置に通知される状態検知情報にもとづいて、中央監視装置は各閉そく区間における各回路・機器・装置の状態を常時監視することができ、故障未満の異常前兆等を把握し、適切な対処を講ずることができる。
【0044】
さらに好ましくは、対応する閉そく区間CS1に設置された諸設備(軌道回路RC1、閉そく信号機SG1、地上子P11,P12,P13(対列車通信手段)等)及び当該電子制御装置10内の諸構成要素(通信インターフェース11、軌道回路制御部12、列車制御部13、信号機制御部14、論理制御部15等)のうち少なくとも1つの設備又は構成要素は、稼働率向上のために二重系(冗長システム)からなるものとするのがよい。その場合、論理制御部15は、監視用通信ネットワーク8を介して中央監視装置に送信する前記故障検知信号において、二重系のどちらの故障かを示す識別情報を含ませるようにするとよい。このような識別情報によって故障対処の緊急度を中央監視装置で判定することができる。すなわち、二重系の一方のみの故障であれば故障対処の緊急度は低いが、両方の故障であれば故障対処の緊急度が高いと判断できる。
【0045】
他の閉そく区間CS0,CS2,・・・においても閉そく区間CS1のための電子制御装置10と同様の構成からなる電子制御装置10が設けられる。図1においては、閉そく区間CS2のための電子制御装置10をブロックで示している。この閉そく区間CS2に対応する地上子P21,P22,P23は、前述と同様に、該閉そく区間CS2の外方で隣接する閉そく区間CS1に属する領域に配置され、各地上子P21,P22,P23から内方直近の閉そく信号機SG2までの距離がそれぞれ異なっている。
【0046】
このように、各閉そく区間CS0,CS1,CS2,・・・に対応して設けられた電子制御装置10が通信ネットワーク7及び監視用通信ネットワーク8を介して接続されることで、制御システムが構成される。
【0047】
この通信ネットワーク7及び監視用通信ネットワーク8は、1線区内の全域にわたってネットワークを構成する。1線区内には複数の駅が存在し、それらの駅間に上述した閉そく区間CS0,CS1,CS2,・・・が存在する。各駅の構内においては、閉そく区間CS0,CS1,CS2,・・・とは幾分異なる制御が行われる。公知のように、駅構内における現場機器(場内信号機、出発信号機、転てつ機等)の連動制御のために、電子連動装置が設けられる。図3に示すように、本実施例における通信ネットワーク7には各駅A,B,・・・の電子連動装置20も接続される。
【0048】
図3は、本発明の一実施例に係る制御システムを示す模式図であり、2つの駅A,Bの構内と、その駅間の複線軌道RL,RLxにおいてそれぞれ設定された閉そく区間を示している。A駅からB駅に向かう下りの軌道RLにおいては、A駅とB駅の間に、単なる一例として2つの閉そく区間CS1,CS2が設定されている。各閉そく区間CS1,CS2には、図1に示したものと同様に、軌道回路RC1,RC2(詳細図示省略)、閉そく信号機SG1,SG2、及び対列車通信手段P1,P2(地上子P11~P13,P21~P23に対応)がそれぞれ設置されている。そして、B駅からA駅に向かう上りの軌道RLxにおいても、B駅とA駅の間に2つの閉そく区間CS1x,CS2xが設定され、各閉そく区間CS1x,CS2xには、軌道回路RC1x,RC2x、閉そく信号機SG1x,SG2x、及び対列車通信手段P1x,P2xがそれぞれ設置されている。上りの軌道RLxの各閉そく区間CS1x,CS2xに設置される、軌道回路RC1x,RC2x、閉そく信号機SG1x,SG2x、及び対列車通信手段P1x,P2xは、下りの軌道RLにおける同一機能の前記軌道回路RC1,RC2、閉そく信号機SG1,SG2及び対列車通信手段P1,P2と同一構成及び配置であり、列車進行方向に対応して配列の向きが互いに反対とされる。
【0049】
既に説明したように、下りの軌道RLにおける各閉そく区間CS1,CS2に対応して前述した構成からなる電子制御装置10がそれぞれ設けられる。また、既に説明したことから明らかなように、上りの軌道RLxの各閉そく区間CS1x,CS2xに対応しても前述した構成と同様の電子制御装置10がそれぞれ設けられる。なお、図3では、便宜上、下りの軌道RLにおける各閉そく区間CS1,CS2に対応して設けられる電子制御装置10と、上りの軌道RLxの各閉そく区間CS1x,CS2xに対応して設けられる電子制御装置10を同一のブロックで図示しているが、実体的には、異なる2つの電子制御装置10が設けられる。しかし、鉄道軌道における物理的配置が互いに近接している2つの電子制御装置10(例えば、下りの閉そく区間CS1の電子制御装置10と上りの閉そく区間CS2xの電子制御装置10、あるいは、下りの閉そく区間CS2の電子制御装置10と上りの閉そく区間CS1xの電子制御装置10)は、同一の筐体内に一緒に収納した状態で配置してよい。なお、通信ネットワーク7及び監視用通信ネットワーク8については、上り及び下りのどちらに対応する電子制御装置10もが、同じ通信ネットワークに接続されてよい。すなわち、各閉そく区間CS1,CS2,・・・,CS1x,CS2x,・・・は上り及び下りを区別したユニークなIDによって識別されるので、各電子制御装置10は、上り及び下りを区別することなく同じ通信ネットワークに接続されても、自己が取り込むべき情報がどれであるかを、該区間IDから容易に判別しうる。
【0050】
各駅の構内における現場機器として、図3では、便宜上、場内信号機SGsと出発信号機SGdのみを図示しているが、公知のように、そのほかに、転てつ機、本線及び支線毎の在線検知回路等が設置されている。駅構内の電子連動装置20は、公知のように、列車の運行が適切に行われるように、これら駅構内の現場機器を連動制御する。駅毎に駅制御装置10sが設けられ、通信ネットワーク7に接続される。駅制御装置10sは、電子連動装置20に接続され、通信ネットワーク7を介して伝送されてくる各閉そく区間CS1,CS2,・・・,CS1x,CS2x,・・・の在線検知情報を受信し、当該駅における連動制御にとって必要とされる閉そく区間の及び他の駅の在線検知情報を取り込み、該電子連動装置20に与える。また、駅制御装置10sは、当該駅における列車の在線検知情報を対応する電子連動装置20から受取り、通信ネットワーク7上に送信する。こうして、駅構内の電子連動装置20は、駅制御装置10sを介して通信ネットワーク7に接続し、該通信ネットワーク7を介して自己の駅の在線検知情報の送信を行うと共に他の閉そく区間からの在線検知情報の受信を行う。送信した自己の駅の在線検知情報は、それを必要とする閉そく区間の電子制御装置10で利用され、受信した他の閉そく区間の在線検知情報は駅構内の電子連動装置20で利用される。こうして、駅構内の電子連動装置20は、駅制御装置10sを介して通信ネットワーク7内に組み込まれ、本実施例に従う列車制御システム内に組み込まれ得る。なお、駅制御装置10s(若しくは電子連動装置20)は、駅構内の1以上の現場機器から故障検知情報を収集し、これに基づき故障検知信号を監視用通信ネットワーク8を介して中央監視装置に送信するようになっていてもよい。
【0051】
本実施例に従う各閉そく区間の電子制御装置10においては、通信ネットワーク7を介して受信される駅構内の電子連動装置20から送信された該駅構内における列車の在線状況を示す情報(在線検知情報)は、他の閉そく区間における列車の在線状況を示す情報(在線検知情報)と同等の情報として取り扱われる。例えば、図1において閉そく区間CS2の内方直近で隣接する区間が閉そく区間ではなく、図3に示すようにB駅構内であるとすると、図2のステップS2、S3で取り扱うべき「内方で隣接する1以上の他の閉そく区間における在線検知情報」としては、閉そく区間に限らず、駅構内における在線検知情報も含まれることになる。
【0052】
したがって、電子制御装置10の論理制御部15は、好適には、通信ネットワーク7を介して提供される、内方で隣接する1以上の他の閉そく区間又は駅構内における列車の在線状況を示す情報を、通信インターフェース11を介して受信し、対応する閉そく区間(例えばCS1)における列車の在線状況を示す情報及び内方で隣接する1以上の他の閉そく区間(例えばCS2等)又は駅構内における列車の在線状況を示す情報に基づいて、閉そく信号機(例えばSG1)の現示を決定するように構成される。
【0053】
図1の例においては、列車1の進行方向が一方向Fのみであるとして説明した。しかし、単線軌道のように列車1の進行方向を上りと下りの双方向に切り換えられる場合においても本発明は適用可能である。単線軌道の場合、原理的には、図1に示した一進行方向Fに関する列車制御用の現場機器と電子制御装置10のセットを、反対方向に関しても同様に設ければよい。しかし、軌道回路等一部の機器及び装置は上り及び下りの両方に共用できるので、完全な二重構成に比べて簡素化した構成によって本発明を適用することができる。
【0054】
図4は単線軌道における本発明の適用例を示す図である。図4において、図1と同一符号は同一機能の装置を示すので、重複説明を省略する。列車1の進行方向Fに関して、図1と同様に、各閉そく区間に対応して閉そく信号機SG1,SG2,・・・及び地上子P11,P12,P13,P21,P22,P23,・・・が設置される。一方、逆向きの進行方向/Fに関して、独自の閉そく信号機SGa,SGb,・・・及び地上子Pa1,Pa2,Pa3,Pb1,Pb2,Pb3,・・・が各閉そく区間に対応して設置される。例えば、逆方向/Fに関して、閉そく区間CS1の終端位置つまり閉そく区間CS0の始端位置に閉そく信号機SGaが設置され、また、閉そく区間CS2の終端位置つまり閉そく区間CS1の始端位置に閉そく信号機SGbが設置される。そして、閉そく区間CS0に対応する地上子Pa1,Pa2,Pa3は、該閉そく区間CS0の外方で隣接する閉そく区間CS1に属する領域に配置され、また、閉そく区間CS1に対応する地上子Pb1,Pb2,Pb3は、該閉そく区間CS1の外方で隣接する閉そく区間CS2に属する領域に配置される。
【0055】
各閉そく区間CS1,CS2,・・・に対応する軌道回路RC1,RC2,・・・の構成は、図1に示されたものと同様の構成を両方向F,/Fに関して共用することができ、送信器5及び受信器6も図1と同様に設けられる。
【0056】
図4において、1つの閉そく区間CS1に対応する電子制御装置10においては、図1に示された各構成要素11~16に加えて、反対方向用の列車制御部13aと信号機制御部14aをさらに備える。信号機制御部14aは、閉そく区間CS1の終端位置つまり閉そく区間CS0の始端位置に設置された閉そく信号機SGaに接続され、論理制御部15の制御にしたがって該閉そく信号機SGaの現示を制御する。列車制御部13aは、閉そく区間CS0に対応する地上子Pa1,Pa2,Pa3に接続され、論理制御部15の制御にしたがって該地上子Pa1,Pa2,Pa3に対して列車制御用信号を供給する。
【0057】
図4において、電子制御装置10は、通信ネットワーク7を介して上位装置(例えば隣接する駅構内の電子連動装置20)から当該単線軌道における列車進行方向を指示する情報を受信し、論理制御部15は、該受信した情報に応じて該指示された列車進行方向(F又は/F)に応じて、一方の方向Fに対応する軌道回路制御部12、列車制御部13、信号機制御部14のグループに関与して前述した自動閉そく制御を行う、又は、他方の方向/Fに対応する軌道回路制御部12、列車制御部13a、信号機制御部14aのグループに関与して前述した自動閉そく制御を行う。それぞれのグループに対する自動閉そく制御の詳細は、図1図2を参照して前述したとおりであるから、その詳細説明を繰り返すことはしない。なお、図4の例においては、1つの筐体内にまとめて収納された1つの閉そく区間CS1に対応する電子制御装置10は、列車進行方向がFの場合は前述のとおり該閉そく区間CS1の自動閉そく制御を行うが、列車進行方向が反対方向/Fの場合はその内方直近の閉そく区間CS0の自動閉そく制御を行うことになることが理解されよう。換言すれば、列車進行方向が反対方向/Fの場合の閉そく区間CS1の自動閉そく制御は、その外方直近の閉そく区間CS2に対応する電子制御装置10によって行われる。これは、単に、より近くに設置されている現場機器の制御を電子制御装置10が担当するという設計上の要請に起因する食い違いでしかなく、発明の本質に関わるものではない。すなわち、図4において、信号機制御部14aを閉そく区間CS1の他端に設置された閉そく信号機SGbに接続し、列車制御部13aを閉そく区間CS1の他端寄りの領域に設置された地上子Pb1,Pb2,Pb3に接続するように設計変更したとすれば、1つの筐体内にまとめて収納された1つの閉そく区間CS1に対応する電子制御装置10が、どちらの列車進行方向F,/Fにおいても、同じ閉そく区間CS1の自動閉そく制御に関与することになることが容易に理解できる。したがって、そのような設計変更は適宜行ってよい。しかし、図4に示すような、より近くに設置されている現場機器の制御を電子制御装置10が担当するという設計思想は、電子制御装置10と各現場機器との間の配線長を最小限にすることができるというメリットをもたらすので、好ましい。
【0058】
図4に示すような単線軌道仕様の電子制御装置10は、単線軌道の鉄道区間に限らず、図3に示したような複線軌道の鉄道区間においても適用可能である。すなわち、複線軌道の鉄道線区の少なくとも部分的な区間で単線並列運行(複線の各軌道を単線軌道仕様で並列運行すること)を行うという運行法が従来より知られている。図4に示すような単線軌道仕様の電子制御装置10は、このような単線並列運行の制御システムにおいても活用することができる。例えば、図5に示すように、複線の各軌道RL,RLxにおける各閉そく区間が図4に示すような単線軌道仕様とされる。その場合、各軌道RL,RLxにおける列車進行方向は、適宜の上位装置(例えば隣接する駅構内の電子連動装置20)によって任意に指示され得る。一例として、一方の軌道RLを故障又は保守のために閉鎖する場合、他方の軌道RLxを単線双方向運行する、という列車運行を行うことができるので、有利である。
【符号の説明】
【0059】
CS0,CS1,CS2 閉そく区間
RC0,RC1,RC2 軌道回路
SG1,SG2,SG1x,SG2x,SGa,SGb 閉そく信号機
P11,P12,P13,P21,P22,P23,P1,P2,P1x,P2x,Pa1,Pa2,Pa3,Pb1,Pb2,Pb3 地上子(対列車通信手段)
1 列車
2a,2b レール
4 車上装置
5 送信器
6 受信器
7 通信ネットワーク
8 監視用通信ネットワーク
10 電子制御装置
11 通信インターフェース
12 軌道回路制御部
13,13a 列車制御部
14,14a 信号機制御部
15 論理制御部
16 監視インターフェース
10s 駅制御装置
20 駅構内の電子連動装置
50,60 送受信器
図1
図2
図3
図4
図5