(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】X線撮像装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/10 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
A61B6/10 303
A61B6/10 351
(21)【出願番号】P 2019115539
(22)【出願日】2019-06-21
【審査請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌岳
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-079728(JP,A)
【文献】特開昭53-077192(JP,A)
【文献】特表2010-521992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を載せる寝台と、前記被検体にX線を照射するX線発生部と、前記X線発生部に対向配置され前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記寝台、前記X線発生部及び前記X線検出器を夫々支持する支持部と、を有する透視撮影台と、
前記X線発生部に着脱可能に設けられ、該X線発生部から自重により重力方向に垂れ下がることによりX線の照射範囲を囲繞する放射線防護装置と、
前記支持部を駆動させることにより前記寝台、前記X線発生部及び前記X線検出器を駆動させ
る駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記X線発生部に、前記放射線防護装置の着脱を検出する検出部が設けられ、
前記制御部が、前記検出部からの検出信号に基づいて前記放射線防護装置が取り付けられていると判断した場合に、前記駆動部を制御することにより、前記支持部の駆動を制限して前記寝台、前記X線発生部及び前記X線検出器のうち少なくとも1つの動作を制限するX線撮像装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記検出部からの検出信号に基づいて前記放射線防護装置が取り付けられていると判断した場合に、前記透視撮影台の動作中に前記被検体と前記放射線防護装置が接触しないように、前記駆動部を制御して前記支持部の駆動を制限して前記寝台、前記X線発生部及び前記X線検出器のうち少なくとも1つの動作を制限する請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項3】
前記制御部
は、前記検出部からの検出信号に基づいて前記放射線防護装置が取り付けられていると判断した場合であって、かつ、
前記X線発生部から出力されるX線ビームと前記X線検出器との間に前記放射線防護装置が入り込み、前記X線検出器から出力される信号から生成されるX線画像に欠損が生じる虞れがあると判定した場合に、前記駆動部を制御して前記支持部の駆動を制限して、前記寝台、前記X線発生部及び前記X線検出器のうち少なくとも1つの動作を制限する請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項4】
複数の放射線防護装置について、高さ、幅、奥行き等の大きさを示す情報の少なくとも1以上を示すデータテーブルを記憶した記憶部を備え、
前記制御部が、前記検出部からの検出信号に基づいて取り付けられた前記放射線防護装置の種類を識別し、識別した放射線防護装置の情報を前記データテーブルから読み込んで、撮影条件における
前記X線画像に前記欠損が生じる虞れがあるかどうかの判定に用いる請求項3記載のX線撮像装置。
【請求項5】
複数の放射線防護装置について、高さ、幅、奥行き等の大きさを示す情報の少なくとも1以上を示すデータテーブルを記憶した記憶部を備え、
前記制御部が、ユーザからの入力に従って前記X線発生部に取り付けられた前記放射線防護装置の種類を識別し、識別した放射線防護装置の情報を前記データテーブルから読み込んで、撮影条件におけるX線照射方向が重力方向と交わる方向であるか否かを判定する請求項3記載のX線撮像装置。
【請求項6】
前記制御部が、前記検出部からの検出信号に基づいて前記放射線防護装置が取り付けられていると判断した場合に、前記X線発生部からのX線出力を制限する請求項1記載のX線撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮像装置、特に、X線管、X線検出器及び寝台を駆動して撮影方向を異ならせた画像を取得するX線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線撮像装置は、被検体を載せる寝台、被検体にX線を照射するX線管及び寝台の支持枠内に設けられるX線検出器を有する透視撮影台と、透視撮影台の寝台、X線管及びX線検出器を駆動可能に支持する複数の可動軸からなる支持部と、支持部に含まれる複数の可動軸を駆動させる駆動部とを備えている。X線撮像装置は、X線管から被検体にX線を照射し、被検体を透過したX線をX線検出器により検出して被検体のX線信号を取得し、このX線信号に基づいてX線画像又は透視画像を生成し、表示させる。
【0003】
このようなX線撮像装置では、駆動部によって複数の可動軸を駆動させることで、透視撮影台に含まれる寝台及びX線管を共に或いは別個独立に移動させてX線照射位置を任意の位置に移動させることができる。すなわち、X線撮像装置では、例えば、X線管と寝台との位置関係を維持した状態でこれらを共に回転させたり、X線管を寝台に対して傾斜させたり、X線管とX線検出器との位置関係を維持した状態で寝台を長軸方向又は短軸方向に移動させたり、寝台を上下動させたりすることができる。
【0004】
ところで、X線撮像装置におけるX線画像の撮影時には、X線管から照射されたX線が患者を透過してX線検出器に入る。この際、一部のX線は患者で吸収・透過されず散乱X線として不特定方向に散乱される。このため、操作者等の被爆や、被検体における撮像部位以外の被爆を防止する必要があり、X線の照射を被検体の撮影部位のみに制限する放射線防護装置を用いる場合がある(例えば、特許文献1)。
【0005】
放射線防護装置は、通常、例えば、鉛等のX線を吸収する材料を含む布状の素材からなり、X線管と被検体との間に伸張しX線の照射野を覆うような円筒状又は円錐状に形成されている。放射線防護装置は、通常X線管の近傍に取り付けられ、その自重により常に重力方向に垂れ下がりX線の照射範囲を覆っている。このような放射線防護装置を取り付けることにより、散乱X線を減衰させ、寝台横で作業を行うユーザを散乱線による不必要な被爆から保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、X線撮像装置において、例えば、撮影方向を異ならせた複数枚のX線画像を取得する場合等、寝台やX線管等の位置を移動させて撮影を繰り返し行うことがある。上述したように放射線防護装置は、X線管の近傍に取り付けられ自重により重力方向に垂れ下がることでX線の照射範囲を覆っている。従って、放射線防護装置を取り付けた状態で寝台やX線管等を駆動させた場合には、X線の照射方向が必ずしも重力方向と一致せず、重力方向に垂れ下がる放射線防護装置によってX線の照射が遮蔽され、X線画像又は透視画像が欠損し所望の画像を取得することができない。また、放射線防護装置を装着した状態で透視撮影台を動作させた場合、被検体やX線撮像装置に放射線防護装置が不用意に接触する虞がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、X線撮像装置に放射線防護装置を取り付けた場合において、画像の欠損を防止し、X線撮像装置又は被検体と放射線防護装置との接触を回避させ、安全に撮影を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、被検体を載せる寝台と、前記被検体にX線を照射するX線発生部と、前記X線発生部に対向配置され前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記寝台、前記X線発生部及び前記X線検出器を夫々支持する支持部と、を有する透視撮影台と、前記X線発生部に着脱可能に設けられ、該X線発生部から自重により重力方向に垂れ下がることによりX線の照射範囲を囲繞する放射線防護装置と、前記支持部を駆動させることにより前記寝台、前記X線発生部及び前記X線検出器を駆動させる駆動させる駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、を備え、前記X線発生部に、前記放射線防護装置の着脱を検出する検出部が設けられ、前記制御部が、前記検出部からの検出信号に基づいて前記放射線防護装置が取り付けられていると判断した場合に、前記駆動部を制御することにより、前記支持部の駆動を制限して前記寝台、前記X線発生部及び前記X線検出器のうち少なくとも1つの動作を制限するX線撮像装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、X線撮像装置に放射線防護装置を取り付けた場合において、画像の欠損を防止し、X線撮像装置又は被検体と放射線防護装置との接触を回避させ、安全に撮影を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るX線撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に係るX線撮像装置の概略構成を示す外観斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るX線撮像装置において、放射線防護装置が取り付けられたことの検出からX線透視台の駆動の制限までの処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係るX線撮像装置の記憶装置に記憶され、複数種類の放射線防護装置の情報を記したデータテーブルの参考図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係るX線撮像装置において、放射線防護装置が取り付けられたことの検出からX線透視台の駆動の制限までの処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施形態に係るX線撮像装置について、図面を参照して説明する。
図1にX線撮像装置の概略構成を示す。X線撮像装置は、X線発生部2を搭載した透視撮影台20、画像処理部8、画像記憶部9、表示部10、透視撮影台10のX線発生部2に電力供給を行なう高電圧発生部14、透視撮影台10を動作させる駆動部13、ユーザによる操作に関する入力を受け付ける操作部12、X線撮像装置全体を制御する制御部11を備えている。
【0013】
透視撮影台20は、被検体1を載せるための寝台6、被検体1にX線を照射するX線発生部2、被検体1に対するX線照射領域を設定するX線絞り3、寝台6とX線発生部2とX線検出器7とを夫々支持する支持部15、X線発生部2に対向する位置に配置され被検体1を透過したX線を検出するX線検出器7を備えている。透視撮影台20に搭載されるX線発生部2には放射線防護装置5が着脱可能となっている(詳細は後述)。
【0014】
X線発生部2は、高電圧発生部14から電力供給を受けてX線を発生させるX線管球を有している。また、X線発生部2には、放射線防護装置5の取り付けを検出する複数のセンサからなる検出部4が設けられている。検出部4では、複数のセンサごとに検出信号を後述する制御部11に出力する。制御部11では、センサが複数設けられることで、各センサからの検出信号に基づいて放射線防護装置5が正常に取り付けられているか否か等の取り付け状態を判定することができる。なお、X線発生部2には、特定のエネルギーのX線を選択的に透過させるX線フィルタなどを有していてもよい。
【0015】
X線絞り3は、X線発生部2から照射されたX線を遮蔽するX線遮蔽用鉛板を複数有し、複数のX線遮蔽用鉛板をそれぞれ移動することにより、被検体1に対するX線照射領域を決定する。
【0016】
寝台6は、制御部11からの制御信号に基づいて駆動部13によって駆動され、被検体1とX線検出器7の位置関係を変更する。
X線検出器7は、例えば、X線を検出する複数の検出素子が二次元アレイ状に配置されて構成されており、X線発生部2から照射され、被検体1を透過したX線の入射量に応じたX線信号を検出し画像処理部8に出力する。
【0017】
支持部15は、寝台6とX線発生部2とX線検出器7とを夫々支持する支持軸(図示せず)を備え、後述する駆動部13によって寝台6、X線発生部2及びX線検出器7を同時に又は夫々独立して駆動させて、X線発生部2によるX線照射位置と被検体1との位置関係を変更する。
【0018】
画像処理部8は、X線検出器7から出力されたX線信号に対して所定の画像処理を行ってX線画像(透視画像を含む、以下同様)を生成する。画像処理としては、ガンマ変換、階調変換処理、画像の拡大・縮小等が挙げられる。画像記憶部9は、によって生成されたX線画像を記憶し、表示部10は、画像処理部8から出力されたX線画像、又は画像記憶部9に記憶されたX線画像を表示する。
【0019】
操作部12は、ユーザによる撮像条件を含むX線撮像装置の操作指示に関する入力を受け付け、この入力を操作指令として制御部11に出力する。操作部12には、撮影条件として、例えば、撮影対象の部位に応じた照射位置、照射範囲および照射X線量(X線出力)が入力される。照射X線量には管電圧、管電流、時間が含まれる。
【0020】
制御部11は、X線撮像装置全体を制御すると共に、特に、操作部12からの操作指令に従った制御信号を生成して駆動部13に出力し、支持部15、寝台6およびX線絞り3を含む透視撮影台20の動作を制御する。また、制御部11は、検出部4からの検出信号の入力状態に応じ、透視撮影台20の動作を制限する。
【0021】
すなわち、検出部4からの検出信号に基づいて放射線防護装置5が正しく取り付けられているか否を判別し、判別結果に応じて、透視撮影台20の支持部15が適切な配置となるよう駆動部13に対し制御信号を出力する。
【0022】
ここで、制御部11における検出部4のセンサからの検出信号に基づく判定についてより詳細に説明する。
制御部11は、検出部4に設けられた複数のセンサによる検出信号の入力を監視する。制御部11は、検出信号の入力がない場合は、X線発生部2に放射線防護装置が取り付けられていないと判断し、操作部12の操作指令に係る制御信号を駆動部13へ出力する。
【0023】
一方、制御部11は、複数のセンサのうち、予め指定されたセンサからの入力が不完全であった場合は、放射線防護装置5の取り付け状態に不備があると判断し、駆動部13への制御信号を遮断する。表示部10に警告を表示させるなどして、システムの異常状態をユーザに報知してもよい。
【0024】
制御部11は、指定されたすべてのセンサから検出信号の入力があった場合に、X線発生部2に放射線防護装置5が正常に取り付けられていると判断する。この場合に、制御部11は、操作指令に基づく動作が、例えば、以下のような被検体やユーザにとって好ましくない動作であるには、操作指令に基づく制御信号を遮断することにより駆動部を制御して、透視撮影台20の動作を制限する。具体的には、透視撮影台20の、寝台6、X線発生部2及びX線検出器7のうち少なくとも1つの動作を制限する。
【0025】
被検体やユーザにとって好ましくない動作として、放射線防護装置5が被検体1と接触する、放射線防護装置5がX線発生部2から外れる(落下も含む)、X線発生部2の回転動作やX線照射領域が放射線防護装置5の外側に広がるようなX線絞り3の操作等が考えられる。また、操作部12に入力された撮影条件に従って撮影を行った場合に、X線照射方向が重力方向と交わる方向である等、X線発生部2から出力されるX線ビームとX線検出器7との間に放射線防護装置5が入り込み、X線画像が欠損する虞がある場合も好ましくない。
【0026】
X線画像に欠損が生じるか否かは、例えば以下のように判断することができる。
支持部15、寝台6の角度から透視撮影台の接地面に対する相対位置を判断し、X線発生部2から広がりを持って照射される四角錐状のX線ビームエリアを制御部11が算出する。放射線防護装置5のサイズ等から導きだされた防護装置によって遮蔽される領域と、算出されたX線ビームエリアが交わる場合には画像欠損があると判断する。
【0027】
なお、放射線防護装置5と被検体1との位置関係や放射線防護装置5の取り付け状態に関与しない動作については制限する必要はない。駆動部13への制御信号を遮断する場合には、表示部10に警告を表示させるなどして、システムの異常状態をユーザに報知してもよい。
【0028】
このように構成されたX線撮像装置において、放射線防護装置5が取り付けられたことの検出からX線透視台の駆動の制限までの処理の流れについて、
図3のフローチャートに従って説明する。以下の説明においては、放射線防護装置が取り付けられており、かつ、X線画像が欠損する場合(撮影条件におけるX線照射方向が重力方向と交わる方向である場合)又は被検体と放射線防護装置5が接触する虞がある場合において動作制限を行う例について説明する。
【0029】
ステップS101において、制御部11は、検出部4による検出信号の入力を受け付け、放射線防護装置5の着脱状態を監視する。検出信号が入力されない場合には、ステップS102に進み、操作部12に入力された操作指令に従って透視撮影台を動作させる。ステップS103では、予め定めた全てのセンサから検出信号の入力があったか否かを判定する。制御部11は、ステップS103の判定において、一部のセンサから検出信号の入力がない場合には、放射線防護装置5が取り付けられているものの正しく取り付けられていないと判断してステップS104に進み、透視撮影台の動作を制限する。
【0030】
制御部11は、ステップS103の判定において、予め定めた全てのセンサから検出信号が入力された場合に、放射線防護装置5が正常に取り付けられていると判定し、ステップS105に進む。ステップS105では、操作指令に係る制御信号の入力の有無を判定し、制御信号の入力があった場合にはステップS106に進む。
【0031】
ステップS106では、放射線防護装置5によってX線画像に欠損が生じるか又は放射線防護装置5と被検体1とが接触するか否かを判定し、X線画像に欠損が生じず、放射線防護装置5と被検体1とが接触しないと判定した場合にはステップS107に進み、一旦X線発生部2を退避させ、その後ステップS106において透視撮影台20を所望の位置に移動させる。
【0032】
つまり、制御部11は、放射線防護装置5が取り付けられており、かつ、支持部15を天板6と平行方向に動作させる場合において、放射線防護装置5が被検者1と接触したまま移動することを避けるため、平行方向の動作開始の前に支持部15を伸ばしてX線発生部2の位置を高くするなど、天板6とX線管装置2の距離を一定以上とし、放射線防護装置5と被検者1が接触しない高さ位置関係となるよう動作指令を駆動部13へ伝達する。
【0033】
そして、制御部11は放射線防護装置5と被検者1が接触しない位置関係を維持しながら、操作指令に従って透視撮影台の動作を実施するよう駆動部13へ指令を出力する。操作部12からの指令が終了したとき、制御部11は支持部15の動作を停止させ、放射線防護装置5と被検者1の高さ位置関係が動作開始の前と同じになるよう、駆動部13に指令を出力する。
【0034】
ステップ106において、放射線防護装置5によってX線画像に欠損が生じる又は放射線防護装置5と被検体1とが接触すると判定した場合には、ステップS108に進み、透視撮影台20の駆動を制限させて本処理を終了する。
【0035】
これにより、X線発生部2に放射線防護装置5が取り付けられている状態にであっても、放射線防護装置5と被検者1とを接触させることなく支柱部15の動作が可能となる。また、欠損箇所を有する等の不適切なX線画像となる撮影を抑制することができる。すなわち、ユーザによる操作指令に従った動作が放射線防護装置5と被検者1の干渉を引き起こし危険な状態になることや、不適切なX線画像の撮影を抑制することができ、操作性が向上する。
【0036】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、放射線防護装置5が1種類であることを前提に説明した。本実施形態では、X線撮像装置に対して複数種類の放射線防護装置が準備され、撮影条件や被検体に応じて使い分ける場合について説明する。本実施形態に係るX線撮像装置の構成は、上述した第1の実施形態に係るX線撮像装置の構成と同様であるので、同一の構成には同符号を付し、その説明を省略する。
【0037】
複数種類の放射線防護装置を使い分ける場合、予め複数の放射線防護装置5に係るデータをX線撮像装置に接続された図示しない記憶装置に記憶させておく(
図4参照)。X線撮像装置では、取り付けられた放射線防護装置5の種類を識別し、識別された放射線防護装置に係るデータを記憶装置から読出して、放射線防護装置のサイズ等に基づいて放射線防護装置5と被検者1との接触や画像欠損の可能性を判断する。
【0038】
放射線防護装置5の識別については、種々の方法が考えられる。例えば、ユーザが操作部12を介してX線発生部2に取り付ける放射線防護装置を入力することにより、制御部11が放射線防護装置を識別したり、放射線防護装置の重量計測を検出部4によって行い、この結果に基づいて識別することもできる。
【0039】
この他、X線発生部2に設けられたセンサの検出信号に基づいて放射線防護装置を識別することもできる。すなわち、検出部4の複数のセンサのうち特定の組合せの検出信号の入力状態によって識別することができる。以下、例えば、X線発生部2に6つのセンサが設けられている場合について
図4を参照して説明する。
【0040】
図4は、記憶部に記憶させた複数の放射線防護装置の情報を記したデータテーブルの一例を示している。
図4に示すように、例えば、放射線防護装置Aは、6つのセンサ(センサ1~センサ6)のうち、センサ1~センサ4からの検出信号が入力された場合(
図4中ON表示)に制御部11においてX線発生部2に取り付けられた放射線防護装置はAであると識別する。また、センサ1,2,5,6からの検出信号が入力された場合には、取り付けられた放射線防護装置はBであると識別する。
【0041】
以下、本実施形態に係るX線撮像装置において、放射線防護装置の取り付け状態の判定からX線透視台の駆動の制限までの処理の流れについて、
図5のフローチャートに従って説明する。本実施例においても、放射線防護装置が取り付けられており、かつ、X線画像が欠損する場合(撮影条件におけるX線照射方向が重力方向と交わる方向である場合)又は被検体と放射線防護装置5が接触する虞がある場合において動作制限を行う例について説明する。
【0042】
ステップS201において、制御部11は、検出部4による検出信号の入力を受け付け、放射線防護装置5の着脱状態を監視する。検出信号が入力されない場合には、ステップS202に進み、操作部12に入力された操作指令に従って透視撮影台を動作させる。ステップS203では、予め定めた全てのセンサから検出信号の入力があったか否かを判定し、予め定めたセンサのうち一部のセンサから検出信号の入力がない場合には、放射線防護装置5が取り付けられているものの正しく取り付けられていないと判断してステップS204に進み、透視撮影台の動作を制限する。
【0043】
ステップS205において、制御部11は、入力された検出信号を出力したセンサの組み合わせに基づいてX線発生部2に取り付けられた放射線防護装置5の種類を識別し、次のステップS206で、識別された放射線防護装置5の情報を記憶装置5のデータテーブルから読み込む。ステップS207で、制御部11は、操作指令に係る制御信号の入力の有無を判定し、制御信号の入力があった場合にはステップS208に進む。
【0044】
ステップS208では、ステップS206で読み込んだ放射線防護装置5の情報に基づいて、放射線防護装置5によってX線画像に欠損が生じるか又は放射線防護装置5と被検体1とが接触するか否かを判定する。そして、X線画像に欠損が生じず、放射線防護装置5と被検体1とが接触しないと判定した場合にはステップS209に進み、一旦X線発生部2を退避させ、その後ステップS202において透視撮影台20を所望の位置に移動させる。
【0045】
つまり、制御部11は、放射線防護装置5が取り付けられており、かつ、支持部15を天板6と平行方向に動作させる場合において、放射線防護装置5が被検者1と接触したまま移動することを避けるため、平行方向の動作開始の前に支持部15を伸ばしてX線発生部2の位置を高くするなど、天板6とX線管装置2の距離を一定以上とし、放射線防護装置5と被検者1が接触しない高さ位置関係となるよう動作指令を駆動部13へ伝達する。
【0046】
そして、制御部11は放射線防護装置5と被検者1が接触しない位置関係を維持しながら、操作指令に従って透視撮影台の動作を実施するよう駆動部13へ指令を出力する。操作部12からの指令が終了したとき、制御部11は支持部15の動作を停止させ、放射線防護装置5と被検者1の高さ位置関係が動作開始の前と同じになるよう、駆動部13に指令を出力する。
【0047】
ステップS208において、放射線防護装置5によってX線画像に欠損が生じる又は放射線防護装置5と被検体1とが接触すると判定した場合には、ステップS210に進み、透視撮影台20の駆動を制限させて本処理を終了する。
【0048】
これにより、X線発生部2に放射線防護装置5が取り付けられている状態であっても、放射線防護装置5と被検者1とを接触させることなく支柱部15の動作が可能となる。また、欠損箇所を有する等の不適切なX線画像となる撮影を抑制することができる。すなわち、ユーザによる操作指令に従った動作が放射線防護装置5と被検者1の干渉を引き起こし危険な状態になることや、不適切なX線画像の撮影を抑制することができ、操作性が向上する。
【0049】
これに加えて、放射線防護装置5が取り付けられると同時に透視撮影台の最適なポジショニングが行われ、検査時間の短縮につながるとともに、放射線防護装置5の取り付け間違いにより放射線防護装置5の配置が不適切となって操作者が散乱線により被ばくする可能性を低減することができる。
【0050】
(変形例)
上述した第1の実施形態及び第2の実施形態に、さらにX線出力の制限を加えることにより、X線発生部2がオーバーヒートするまでの時間を延ばし、検査に影響を与えないという効果を得ることができる。
【0051】
X線発生部2は、一定以上蓄熱するとオーバーヒートしX線照射を停止する。X線発生部2に放射線防護装置5が取り付けられることによりX線発生部2の周囲が覆われると、放熱性能が低下しオーバーヒートまでの時間が短くなってしまう。そこで、このような放熱性能の低下を補うように、放射線防護装置の取り付けを検出した場合にX線出力を低下させることが好ましい。
【0052】
具体的には、制御部11は検出部4の検出信号に基づいて放射線防護装置5の取り付けを検出したときに、X線発生部2周辺の熱対流と放熱が滞ると判断し高電圧発生部14に対し、X線出力に制限をかけるための制御信号を出力する。この後に、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態に係る透視撮影台の駆動制限を行うことにより、放射線防護装置5が取り付けられた状態であっても、より安全にかつX線照射時間を確保して撮影を継続することができる。なお、放熱性能の低下を抑制するという観点において、透視撮影台の駆動制限を行わない場合であっても、放射線防護装置が取り付けられた場合にX線出力を制限することが好ましい。
【符号の説明】
【0053】
1・・・被検体、2・・・X線発生部、3・・・X線絞り、4・・・検出部、5・・・放射線防護装置、6・・・寝台、7・・・X線検出器、8・・・画像処理部、9・・・画像記憶部、10・・・表示部、11・・・制御部、12・・・操作部、13・・・駆動部、14・・・高電圧発生部、15・・・支持部、20・・・透視撮影台