IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本製紙株式会社の特許一覧 ▶ 白石カルシウム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ゴム組成物 図1
  • 特許-ゴム組成物 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20230814BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230814BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230814BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20230814BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20230814BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/04
C08K3/36
C08L1/02
C08L7/00
C09K3/00 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019120785
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2020007548
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2018126258
(32)【優先日】2018-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593119527
【氏名又は名称】白石カルシウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 俊一朗
(72)【発明者】
【氏名】杉田 智明
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-137105(JP,A)
【文献】特開2005-075856(JP,A)
【文献】特開2018-070667(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136902(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
C09K 3/00
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム、カーボンブラック若しくはシリカである充填材、及び、平均粒子径20μm~50μm且つ結晶化度70~90%の粉末状セルロースを少なくとも含み、下記条件(A)~(B)の少なくとも1つを満たす防振用ゴム組成物。
(A)防振用ゴム組成物に含まれる前記充填材及び前記粉末状セルロースの合計の配合部数をxとし、防振用ゴム組成物の動倍率をyとした際に、y<0.011x+0.67の関係式を満たすこと。
(B)防振用ゴム組成物に含まれる前記充填材及び前記粉末状セルロースの合計の配合部数をxとし、防振用ゴム組成物の静的ばね定数をKsとした際に、Ks>4.543x+135.86の関係式を満たすこと。
【請求項2】
下記条件(C)をさらに満たす請求項1に記載の防振用ゴム組成物。
(C)防振用ゴム組成物の、前記動倍率yと前記静的ばね定数Ksが、Ks/y≧300の関係式を満たすこと。
【請求項3】
前記防振用ゴム組成物に含まれる前記粉末状セルロースが、ゴム固形分量に対し、1~50重量部の範囲である請求項1又は2に記載の防振用ゴム組成物。
【請求項4】
前記防振用ゴム組成物に含まれる前記充填材が、ゴム固形分量に対し、20~120重量部の範囲である請求項1~3のいずれか1項に記載の防振用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴムが、天然ゴムである請求項1~4のいずれか1項に記載の防振用ゴム組成物。
【請求項6】
前記粉末状セルロースの平均重合度が150以上4800以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の防振用ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品の騒音や振動の軽減という目的に好適なゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム組成物は、産業に広く用いられており、例えば車両部品等をはじめ、機械部品の騒音や振動の軽減を目的にゴム部材が使用されている。このような目的に適した防振用ゴムと呼ばれるゴム部材(組成物)の性能向上についても様々な検討が行われている。
【0003】
そのような防振用ゴム組成物としては、防振特性(動倍率)の向上のため、ゴムに配合する炭酸カルシウムの表面処理を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、防振性の改良や他物性との調整を行えることが開示されている。
【0004】
また、動倍率の低減と耐熱性の向上のため、ジエン系ゴムに、複合亜鉛華およびビスマレイミド化合物を含有するゴム組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-160826号公報
【文献】特開2012-077080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、防振特性を高めるために表面処理炭酸カルシウムを用いている。そのため、炭酸カルシウムの表面処理が均質に行われていない場合には期待される効果が得られないことが懸念される。また、処理工程が多いため、経済的にも望ましくない。
【0007】
特許文献2のゴム組成物では、複合亜鉛華(酸化亜鉛)を用いている。酸化亜鉛は、比表面積が大きく、凝集し易い。そのため、複合亜鉛華がゴム組成物中で均一に分散されにくく、期待される効果が得られないことが懸念される。
【0008】
ところで、防振用ゴムに要求されるその他の性能の一つに、静的な状態でものを支える強さの指標となる静的ばね定数が挙げられる。静的ばね定数は、ゴムの硬度が高い方が大きくなる傾向にあることが知られている。そのため、より重いものを支える場合、あるいは同一荷重でも小さいサイズの防振用ゴムで支えたい場合などには、静的ばね定数を高くする必要からゴムの硬度を高めることが求められる。
しかしながら、一般的には静的ばね定数を高くすると防振特性の指標となる動倍率が悪化する。そのため、静的ばね定数を高めつつ動倍率が上がりにくい材料が求められており、上記特許文献1及び2の発明では静的ばね定数の観点からもいまだ改良の余地がある。
【0009】
そこで本発明では、動倍率と静的ばね定数に優れたゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、ゴム、カーボンブラック若しくはシリカである充填材、及び粉末状セルロースを少なくとも含み、動倍率又は静的ばね定数と、充填材及び粉末状セルロースの配合部数と、で設定した関係式の少なくとも1つを満たすことにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕~〔6〕を提供する。
〔1〕ゴム、カーボンブラック若しくはシリカである充填材、及び平均粒子径20μm~50μmの粉末状セルロースを少なくとも含み、下記条件(A)~(B)の少なくとも1つを満たすゴム組成物。
(A)ゴム組成物に含まれる前記充填材及び前記粉末状セルロースの合計の配合部数をxとし、ゴム組成物の動倍率をyとした際に、y<0.011x+0.67の関係式を満たすこと。
(B)ゴム組成物に含まれる前記充填材及び前記粉末状セルロースの合計の配合部数をxとし、ゴム組成物の静的ばね定数をKsとした際に、Ks>4.543x+135.86の関係式を満たすこと。
〔2〕下記条件(C)をさらに満たす上記〔1〕に記載のゴム組成物。
(C)ゴム組成物の、前記動倍率yと前記静的ばね定数Ksが、Ks/y≧300の関係式を満たすこと。
〔3〕前記ゴム組成物に含まれる前記粉末状セルロースが、ゴム固形分量に対し、1~50重量部の範囲である上記〔1〕又は〔2〕に記載のゴム組成物。
〔4〕前記ゴム組成物に含まれる前記充填材が、ゴム固形分量に対し、20~120重量部の範囲である上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のゴム組成物。
〔5〕前記ゴムが、天然ゴムである上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のゴム組成物。
〔6〕上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のゴム組成物を用いた、防振用ゴム組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、動倍率と静的バネ定数に優れたゴム組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、ゴム組成物に含まれるカーボンブラック及び粉末状セルロースの合計の配合部数xを横軸にとり、ゴム組成物の動倍率yを縦軸にとった際の、実施例及び比較例のゴム組成物におけるxとyの関係性を示すグラフである。
図2図2は、ゴム組成物に含まれるカーボンブラック及び粉末状セルロースの合計の配合部数xを横軸にとり、ゴム組成物の静的ばね定数Ksを縦軸にとった際の、実施例及び比較例のゴム組成物におけるxとKsの関係性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、特に規定がない限り、「AA~BB%」という記載は、「AA%以上BB%以下」を示すこととする。
【0014】
本発明は、ゴム、カーボンブラック若しくはシリカである充填材、及び平均粒子径20μm~50μmの粉末状セルロースを少なくとも含み、下記条件(A)~(B)の少なくとも1つを満たすゴム組成物である。
(A)ゴム組成物に含まれる充填材及び粉末状セルロースの合計の配合部数をxとし、ゴム組成物の動倍率をyとした際に、y<0.011x+0.67の関係式を満たすこと。
(B)ゴム組成物に含まれる充填材及び粉末状セルロースの合計の配合部数をxとし、ゴム組成物の静的ばね定数をKsとした際に、Ks>4.543x+135.86の関係式を満たすこと。
【0015】
<ゴム>
本発明のゴム組成物は、ゴムを含む。
【0016】
ゴムとして、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、ハロゲン化ブチルゴム、多硫化ゴム等の合成ゴムが挙げられ、特に限定されるものではない。さらに、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン系熱可塑エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、塩素系熱可塑性エラストマー、エンジニアリングプラスチックス系エラストマーといった熱可塑性エラストマーも使用できる。
【0017】
ゴムとしては、天然ゴム(NR)又はエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)が好ましい。天然ゴムと、後述する粉末状セルロースを用いることで、環境負荷の低いゴム組成物を得ることができる。
【0018】
また、これらのゴムの加硫は、一般に、イオウまたはイオウ供与性化合物と、スルフェンアミド系、チウラム系化合物等の汎用の各種加硫促進剤と、を組合せて用いた加硫系によって行われる。有機過酸化物架橋も可能である。有機過酸化物としては、例えば、第3ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、1,1-ジ(第3ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ジ(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、第3ブチルパーオキシベンゾエート、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、n-ブチル-4,4-ジ(第3ブチルパーオキシ)バレレート等の一般的に用いられている化合物が用いられる。有機過酸化物架橋の際には、多官能性不飽和化合物、例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、N,N’-m-フェニレンビスマレイミドを併用することが好ましい。
【0019】
<充填材>
本発明のゴム組成物は、カーボンブラック又はシリカである充填材を含むことが重要である。
【0020】
本発明において、シリカは、特に限定されず、例えば、天然シリカ、合成シリカ(沈降シリカ、乾式シリカ、湿式シリカ)が挙げられる。シリカとして、例えば、タイヤの充填材として使用されるシリカを使用してよい。シリカの表面をシランカップリング剤で処理することで、各種ゴムに対する親和性が向上する。従って、充填材としてシリカを使用する場合、シランカップリング剤で処理することが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に制限はなく、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリメトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等のスルフィド基を有するシランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基を有するシランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のグリシドキシ基を有するシランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ基を有するシランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、2-クロロエチルトリメトキシシラン、2-クロロエチルトリエトキシシラン等のクロロ基を有するシランカップリング剤が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
本発明において、カーボンブラックとは、工業的に品質制御して製造される、通常、直径3~500nm程度の炭素の微粒子をいう。また、カーボンブラックには、その粒子表面の官能基を制御することにより、ゴムとなじみがよい性質を付与したものも含まれる。
【0022】
<粉末状セルロース>
粉末状セルロースは、平均粒子径が20~50μmであれば特に限定はない。粉末状セルロースは、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸(すなわち、無機酸)で酸加水分解処理したパルプなどのセルロース原料を粉砕処理、あるいは酸加水分解処理を施さないパルプなどのセルロース原料を機械粉砕して得ることができる。
なお、本発明のゴム組成物に用いられる粉末状セルロースとしては、酸加水分解処理したパルプなどのセルロース原料を粉砕処理した、不純物の少ない粉末状セルロースが好ましい。
【0023】
粉末状セルロースの平均粒子径は、20μm以上であり、好ましくは23μm以上であり、より好ましくは25μm以上である。また、平均粒子径は、50μm以下であり、好ましくは42μm以下であり、より好ましくは35μm以下である。
【0024】
平均粒子径が大きくなると、ゴム組成物の粗さが目立つようになり見栄えが悪くなる。加えて、ゴムや充填材と粉末状セルロースが均一に混ざりづらくなるために本発明の効果が得られにくい傾向もある。一方、平均粒子径が小さくなると、ゴムや充填材と粉末状セルロースを均一に混ぜることができるけれども、ゴム組成物から製造したゴムの動倍率や静ばね定数が劣る傾向にある。
【0025】
本明細書において、平均粒子径は、レーザー散乱法を用いて測定される、粒度分布を蓄積分布として表した場合の、蓄積分布が50%となるときの値である。
【0026】
粉末状セルロースの平均重合度は、好ましくは150以上4800以下であり、より好ましくは600以上4500以下、さらに好ましくは1000以上4000以下、さらにより好ましくは1250以上3500以下、特に好ましくは1400以上3500以下である。平均重合度が低すぎると、静ばね定数が劣る場合がある。また、平均重合度が高すぎると、混練時の負荷が上がる等により本発明の効果が得られにくい場合がある。
【0027】
平均重合度の測定は、公知の方法で行うことができ、本明細書では次の方法で算出した値を用いる。平均重合度350以下の範囲については、第14改正日本薬局方結晶セルロースの確認試験(3)を用いる方法である。また、平均重合度350超の範囲においては、パルプ・ポリマー用全自動粘度測定システムRPV-1(RHEOTEK製)を用い、極限粘度を計測し、「VISCOSITY MEASUREMENTS OF CELLULOSE/SO-AMINE DIMETHYLSULFOXIDE SOLUTION」(磯貝ら著、1989)に記載の〔η〕=0.909×DP0.85(文献中の式(2))の式に代入して導く方法である。
【0028】
粉末状セルロースの結晶化度は、70~90%が好ましく、80~90%がより好ましい。結晶化度が低いと、加熱加硫の際に必要な時間が長くなるので、作業性が悪化する傾向にある。結晶化度が80%以上であれば、加硫速度への影響はほとんど確認されていないためより好ましい。
なお、粉末状セルロースの結晶化度は、原料とするパルプの種類以外に、製造方法が影響して変化する。例えば、酸加水分解処理されたセルロース原料を使用することで高い結晶化度を有する粉末状セルロースを得ることができる。一方、酸加水分解処理を行わずに、機械的な処理のみで製造された粉末状セルロースは、結晶化度が低い傾向がある。
【0029】
本明細書において、粉末状セルロースの結晶化度は、試料のX線回折を測定することで求めた値である。結晶化度は、Segalらの手法(L.Segal,J.J.Greely,etal,Text.Res.J.,29,786,1959)、および、Kamideらの手法(K.Kamide et al,Polymer J.,17,909,1985)を用いてX線回折測定を行い、該X線回折測定から得られた回折図の2θ=4°~32°の回折強度をベースラインとして、002面の回折強度と、2θ=18.5°のアモルファス部分の回折強度から、次式により算出する。
Xc=(I002C-Ia)/I002C×100
Xc:セルロースの結晶化度(%)
002C:2θ=22.6°、002面の回折強度
Ia:2θ=18.5°、アモルファス部分の回折強度
【0030】
粉末状セルロースの見掛け比重は、好ましくは0.15g/mL以上であり、より好ましくは0.18g/mL以上であり、さらに好ましくは0.20g/mL以上であり、さらにより好ましくは0.30g/mL以上である。粉末状セルロースの見掛け比重は、好ましくは0.60g/mL以下であり、より好ましくは0.50g/mL以下であり、さらに好ましくは0.45g/mL以下であり、さらにより好ましくは0.35g/mL以下である。見掛け比重が小さいと、粉体が嵩高く、ゴム組成物の成分(例、ゴム、カーボンブラック等)への分散性が低下する傾向がある。一方、見掛け比重が大きいと、粉体は嵩が低く、コンパクトであるため、ゴム組成物の成分(例、ゴム、カーボンブラック等)への分散性は良好であるけれども、粉体の平均粒子径が小さくなるため、本発明の効果が小さくなる傾向がある。
【0031】
本明細書において、見掛け比重は、100mlメスシリンダーに試料を10g投入し、メスシリンダーの底を試料の高さが低下しなくなるまでたたき続けた後、平らになった表面の目盛を読み、算出した値である。
【0032】
粉末状セルロースの安息角は、好ましくは45°以上であり、より好ましくは48°以上である。粉末状セルロースの安息角は、好ましくは60°以下であり、より好ましくは58°以下であり、さらに好ましくは56°以下である。安息角が大きいと、粉体流動性が悪い傾向があり、作業上好ましくない場合がある。一方、安息角が小さいと、粉体流動性が良好となり作業性が向上するものの、粉舞いなどが生じる傾向がある。
本明細書中、安息角は、パウダーテスター(PT-N型、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて測定したAngle Reposeの値とする。
【0033】
粉末状セルロースの製造方法として、例えば、セルロース原料の調製工程、酸加水分解反応工程、中和・洗浄・脱液工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程からなる製造方法、或いはセルロース原料に対して酸加水分解処理を行わずに機械粉砕を行う方法が挙げられる。
【0034】
粉末状セルロースの製造方法として、より詳細には、以下の方法が挙げられる。まず、酸濃度0.1~2.0Nに調整した、パルプ濃度3~10重量%(固形分換算)の分散液を、温度80~100℃、時間30分間~3時間の条件で酸加水分解処理を行う。次に、脱水工程で酸加水分解処理されたパルプと廃酸とに固液分離し、酸加水分解処理を施したパルプにアルカリ剤を添加して中和し、洗浄する。その後、乾燥機で乾燥して粉末状セルロースを得る。乾燥後、場合により、粉砕機や分級機を利用して、機械的に粉砕/分級して粉末状セルロースとしてもよい。また、省エネ等のために、乾燥前に脱水機を利用して、乾燥前の水分濃度を調整してもよい。
【0035】
なお、パルプ漂白工程からの流動パルプを原料とする場合、加水分解反応槽へ投入する前に濃度を高めるために、脱水機(例、スクリュープレス、ベルトフィルター)で濃縮した後に反応槽へ所定量を投入してもよい。また、パルプのドライシートを原料とする場合、解砕機(例、ロールクラッシャー)などでパルプをほぐした後、反応槽へ投入してもよい。
【0036】
粉末状セルロースのセルロース原料としては、例えば、広葉樹由来のパルプ、針葉樹由来のパルプ、あるいは非木材パルプのパルプが挙げられる。パルプ化の方法としては、例えば、サルファイト蒸解法、クラフト蒸解法、ソーダ・キノン蒸解法、オルガノソルブ蒸解法が挙げられる。また、セルロース原料の形態は特に限定されず、スラリー状でもシート状でも使用することができる。
【0037】
セルロース原料を酸化加水分解処理する際の酸濃度は、特に限定されるものではないが、通常、0.1~2.0N程度である。酸加水分解処理の酸濃度が0.1Nより低いと、酸によるセルロースの解重合を抑制出来るため、粉末状セルロースの平均重合度の低下を軽減し得るけれども、セルロース本来の靱性のため、微細化するのが非常に困難になる場合がある。一方、酸濃度が2.0Nより高いと、セルロースの解重合が進み、粉末状セルロースの平均粒子径のコントロールは容易になり、粉体流動性は向上するけれども、平均重合度の低下が引き起こされ、機械的物性が低下する傾向がある。
【0038】
反応、中和後のパルプを乾燥する装置としては、必要に応じて公知のものを適宜選択することができ、例えば以下のような各種の装置を用いることができる。傾斜式流動層乾燥機ロッキングフロードライヤ(愛知電気株式会社)、真空加熱乾燥機ロッキングドライヤー(愛知電気株式会社)、真空乾燥機ハイスピードバキュームドライヤー(株式会社アーステクニカ)、棚式通風乾燥機TRAY DRYER FOR FOODS(岡田精工株式会社)、噴霧乾燥装置スプレードライヤ(大川原化工機株式会社)、振動/流動乾燥装置バイブロ/フロードライヤ(不二パウダル株式会社)、流動層乾燥装置フロードライヤー(不二パウダル株式会社)、流動層乾燥機ミゼットドライヤー(株式会社ダルトン)、攪拌型間接加熱式乾燥機CDドライヤー(株式会社栗本鐵工所)、間接加熱型液体乾燥機CDドライヤー(株式会社西村鐵工所)、ドラムドライヤ(富士工機株式会社)、ロータリードライヤ(富士工機株式会社)。
【0039】
粉砕機としては、例えば、カッティング式ミル:メッシュミル(株式会社ホーライ製)、アトムズ(株式会社山本百馬製作所製)、ナイフミル(パルマン社製)、カッターミル(東京アトマイザー製造株式会社製)、CSカッタ(三井鉱山株式会社製)、ロータリーカッターミル(株式会社奈良機械製作所製)、パルプ粗砕機(株式会社瑞光製)、シュレッダー(神鋼パンテック株式会社製)等、ハンマー式ミル:ジョークラッシャー(株式会社マキノ製)、ハンマークラッシャー(槇野産業株式会社製)、衝撃式ミル:パルベライザ(ホソカワミクロン株式会社製)、ファインインパクトミル(ホソカワミクロン株式会社製)、スーパーミクロンミル(ホソカワミクロン株式会社製)、イノマイザ(ホソカワミクロン株式会社製)、ファインミル(日本ニューマチック工業株式会社製)、CUM型遠心ミル(三井鉱山株式会社製)、イクシードミル(槇野産業株式会社製)、ウルトラプレックス(槇野産業株式会社製)、コントラプレックス(槇野産業株式会社製)、コロプレックス(槇野産業株式会社製)、サンプルミル(株式会社セイシン製)、バンタムミル(株式会社セイシン製)、アトマイザー(株式会社セイシン製)、トルネードミル(日機装株式会社製)、ネアミル(株式会社ダルトン製)、HT形微粉砕機(株式会社ホーライ製)、自由粉砕機(株式会社奈良機械製作所製)、ニューコスモマイザー(株式会社奈良機械製作所製)、ギャザーミル(株式会社西村機械製作所製)、スパーパウダーミル(株式会社西村機械製作所製)、ブレードミル(日清エンジニアリング株式会社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング株式会社製)、Npaクラッシャー(三庄インダストリー株式会社製)、ウイレー粉砕機(株式会社三喜製作所製)、パルプ粉砕機(株式会社瑞光製)、ヤコブソン微粉砕機(神鋼パンテック株式会社製)、ユニバーサルミル(株式会社徳寿工作所製)、気流式ミル:CGS型ジェットミル(三井鉱山株式会社製)、ミクロンジェット(ホソカワミクロン株式会社製)、カウンタジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)、クロスジェットミル(株式会社栗本鐵工所製)、超音速ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製)、カレントジェット(日清エンジニアリング株式会社製)、ジェットミル(三庄インダストリー株式会社製)、エバラジェットマイクロナイザ(株式会社荏原製作所製)、エバラトリアードジェット(株式会社荏原製作所製)、セレンミラー(増幸産業株式会社製)、ニューミクロシクトマット(株式会社増野製作所製)、クリプトロン(川崎重工業株式会社製)、竪型ローラーミル:竪型ローラーミル(シニオン株式会社製)、縦型ローラーミル(シェフラージャパン株式会社製)、ローラーミル(コトブキ技研工業株式会社製)、VXミル(株式会社栗本鐵工所)、KVM型竪形ミル(株式会社アーステクニカ)、ISミル(株式会社IHIプラントエンジニアリング)、ターボミル(フロイント産業株式会社製)が挙げられる。
これらの中では、微粉砕性に優れる、トルネードミル(日機装株式会社製)、ブレードミル(日清エンジニアリング株式会社製)、自由粉砕機(株式会社奈良機械製作所製)、ターボミル(フロイント産業株式会社製)を用いることが好ましい。
【0040】
粉末状セルロースに、機能性付与、もしくは機能性向上を目的として、粉末状セルロースの原料と、その他有機成分、及び/又は、無機成分と、を1種単独もしくは2種類以上任意の割合で混合し、粉砕することも可能である。また、原料に使用する天然セルロースの平均重合度を大幅に損なわない範囲で、化学的処理を施すことが可能である。
【0041】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、ゴム組成物に含まれる粉末状セルロースが、ゴムの固形分量に対して、1~50重量部の範囲にあることが好ましい。
【0042】
本発明のゴム組成物は、ゴム組成物に含まれる充填材が、ゴムの固形分量に対して20~120重量部の範囲にあることが好ましく、45~120重量部の範囲にあることがより好ましく、45~100重量部の範囲であることがさらに好ましく、45~90重量部の範囲にあることがさらにより好ましい。
【0043】
本発明のゴム組成物には、上記ゴムと配合成分(粉末状セルロース、充填材)に加えて、通常の各種ゴム用配合剤、例えば、クレーや炭酸カルシウムなどの他の充填材;シランカップリング剤;活性剤;オイル;亜鉛華;ステアリン酸;軟化剤;老化防止剤;リターダー;分散助剤;加工助剤;相溶化剤などの添加剤;硫黄、加硫促進剤等の加硫剤等も適宜配合することができ、その配合量も本発明の効果を損なわない範囲で用いることができる。
【0044】
加硫促進剤としては、例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)などのグアニジン系、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)などのチアゾール系、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(OBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)などのスルフェンアミド系、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)などのチウラム系、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnMDC)、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBDC)などのチオカルバミン酸系、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛(ZIX)などのキサントゲン酸塩系の加硫促進剤が挙げられる。
【0045】
上記ゴムに、カーボンブラック、シリカ、粉末状セルロース等の充填材、各種添加剤を配合する方法としては、バンバリーミキサーや加圧ニーダー、インターミックス等の密閉式混練機や、オープンロール等でゴムを混練しながら充填材を適宜配合する方法等が挙げられる。
【0046】
このようにして得られた本発明のゴム組成物は、ゴム組成物中に含まれるカーボンブラック、シリカ及び粉末状セルロースなどの充填材の合計の配合部数をx、動倍率をy、静的ばね定数をKsとして際に、y<0.011x+0.67の関係式、またはKs>4.543x+135.86の関係式のうち、少なくとも1つを満たす。
【0047】
なお、本明細書中、動倍率と静的ばね定数とは、以下の方法で得た値である。
【0048】
(静的ばね定数(Ks))
各ゴム組成物を加硫しつつプレス成形して、円柱形状(直径50mm、高さ25mm)の加硫ゴムサンプルを作製する。かかる加硫ゴムサンプルの上下面に対し、円柱状金具(直径60mm、厚み6mm)の一対を、接着剤を使用して接着することによりテストピースを作製する。作製したテストピースを円柱軸方向に2回、7mm圧縮させた後、歪が復元する際の荷重たわみ曲線から、1.5mmおよび3.5mmのたわみ荷重を測定し、これらの値から静的ばね定数(Ks)(N/mm)を算出する。
【0049】
(動的ばね定数(Kd))
静的ばね定数(Ks)を測定する際に使用したテストピースを円柱軸方向に2.5mm圧縮する。この2.5mm圧縮した位置を中心として、下方から100Hzの周波数で振幅0.05mmの定変位調和圧縮振動を与え、上方のロードセルにて動的加重を検出し、JIS-K 6394に準拠して動的ばね定数(Kd)(N/mm)を算出する。
【0050】
(動倍率:Kd/Ks)
動倍率は、算出した動的ばね定数と静的ばね定数とに基づき、以下の式より算出する。
(動倍率)=(動的ばね定数(Kd))/(静的ばね定数(Ks))
【0051】
本発明のゴム組成物は、上述される関係式を満たすものであるので、本発明の優れた効果を得ることができる。条件(B)は、Ks>4.543x+135.86の関係式を満たすことであり、Ks>4.543x+140の関係式を満たすことがより好ましい。
【0052】
本発明のゴム組成物は、条件(C)を満たすことが好ましい。
(C)ゴム組成物の、動倍率yと静的ばね定数Ksが、Ks/y≧300の関係式を満たすこと。
【0053】
本発明のゴム組成物は、条件(B)及び条件(C)を満たすことが好ましく、条件(A)~条件(C)全てを満たすことがより好ましい。
【0054】
本発明のゴム組成物は、静的ばね定数を高く設定した時(つまり、ゴムの硬度が高い)でも、相対的に動倍率に優れる(低い値を示す)。よって、本発明のゴム組成物は、防振用ゴム組成物として優れた性能を発揮することができる。
そのような防振用ゴム組成物としては、例えば、エンジンマウント、液封エンジンマウント、ボディマウント、キャップマウント、メンバーマウント、マフラーマウント、キャブマウント、デフマウント、ストラットマウント、ストラットバークッション、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ、テンションロッドブッシュ、ロアーリングブッシュ、アームブッシュ、すべりブッシュ、ダンパープーリ、トーショナルダンパー、チェーンダンパー、ハンドルダンパー、センタベアリングサポート、ステアリングラバーカップリング、バンプストラッパー、FFエンジンロールストッパー、マフラーハンガー、バンパゴム、バンパガード、ヘルパーゴム、スプリングシート、ショックアブソーバー、空気ばね、クラッチ用ゴム、ラジエターサポーター等の自動車用防振ゴム;鉄道車両用防振ゴム、産業機械用防振ゴム、建築用免震ゴム、免震ゴム支承等の防振、免震ゴム;コンピューターのハードディスクの制振ダンパー、洗濯機等の一般家電製品の制振ダンパー;建築・住宅分野における建築用制震壁、制震(制振)ダンパー等の制震(制振)装置及び免震装置の用途等に好適に使用し得る。またその他にも、タイヤトレッド、サイドウォール、ショルダー、インナーライナー、ビードフィラー、カーカス、ベルト、ホース、シール材、オイルシール、フロート、軟式ボール、テニスボール、ゴム板、ゴムタイル長靴、靴底、防弦剤、スポーツシューズ、スポンジ製品、ゴム系シーリング材等としても好適に使用することができる。
【実施例
【0055】
以下、本発明を具体的な実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、物性値等の測定方法は、別途記載がない限り、上記に記載した測定方法である。
【0056】
(製造例1:粉末状セルロースの調製)
広葉樹由来パルプを、パルプ濃度5.5%、塩酸濃度を0.15Nに調整した条件下において95℃で2時間反応させた。反応が終了した後、水酸化ナトリウムで中和し、十分に水洗した後、60℃の温度条件下で約1日、送風乾燥した。乾燥後のサンプルを、ハンマーミル(ホソカワミクロン社製、AP-S型)を用いて機械的に粉砕を行い、粉末状セルロース1(平均粒子径30.2μm、平均重合度1950、結晶化度85.3%、見掛け比重0.33g/mL、安息角53.8°)を得た。
【0057】
(製造例2)
広葉樹由来パルプを、パルプ濃度5.5%、塩酸濃度を1.10Nに調整した条件下において95℃で2時間反応させた。反応が終了した後、水酸化ナトリウムで中和し、十分に水洗した後、60℃の温度条件下で約1日、送風乾燥した。乾燥後のサンプルを、ハンマーミル(ホソカワミクロン社製、AP-S型)を用いて機械的に粉砕を行い、粉末状セルロース2(平均粒子径25.9μm、平均重合度1536、結晶化度86.9%、見掛け比重0.50g/mL、安息角50.7°)を得た。
【0058】
<ゴム組成物の調製>
(実施例1)
製造例1で得られた粉末状セルロース1を5質量部、FT級カーボンブラック(FTブラック、商品名「アサヒサーマル」、旭カーボン社製)60質量部を、天然ゴム(商品名「RSS#3」)100質量部に配合した。天然ゴム100質量部に対し、亜鉛華5質量部、ステアリン酸1質量部、加硫促進剤CBS(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)1.5質量部、及び硫黄2質量部をさらに添加し、二本ロールで混練して、未加硫ゴムを得た。この試料を150℃でプレス加硫し加硫ゴムとした。
【0059】
(実施例2)
粉末状セルロース1を10質量部としたこと以外は上記実施例1と同様にして、加硫ゴムを得た。
【0060】
(実施例3)
粉末状セルロース1を15質量としたこと以外は上記実施例1と同様にして、加硫ゴムを得た。
【0061】
(比較例1)
粉末状セルロースを配合せず、FT級カーボンブラックを65質量部配合したこと以外は上記実施例1と同様にして、加硫ゴムを得た。
【0062】
(比較例2)
粉末状セルロースを配合せず、FT級カーボンブラックを75質量部配合したこと以外は上記実施例1と同様にして、加硫ゴムを得た。
【0063】
(比較例3)
粉末状セルロースを配合せず、FT級カーボンブラックを80質量部配合したこと以外は上記実施例1と同様にして、加硫ゴムを得た。
【0064】
<動倍率>
動倍率は、上記に記載した方法で動的バネ定数(Kd)、静的バネ定数(Ks)を求め、その比(Kd/Ks)から算出した。測定結果を、配合処方、静的バネ定数(Ks)、条件(A)~(C)の充足/非充足の結果とともに表1に示す。
【0065】
また実施例及び比較例で用いたゴム組成物について、カーボンブラック及び粉末状セルロースの合計の配合部数xを横軸にとり、図1では実施例2~3及び比較例1~3の動倍率yを縦軸に、図2では実施例1~3及び比較例1~3の静的バネ定数Ksを縦軸に取り、各々の比較例の近似式を算出(使用ソフト:Excel 2016)し、記載した。
【0066】
【表1】
【0067】
(実施例4)
FT級カーボンブラックを20質量部配合したこと以外は上記実施例1と同様にして、加硫ゴムを得た。
【0068】
(実施例5)
FT級カーボンブラックを40質量部配合したこと以外は上記実施例2と同様にして、加硫ゴムを得た。
【0069】
(実施例6)
製造例1で得られた粉末セルロース1の代わりに製造例2で得られた粉末セルロース2を配合したこと以外は上記実施例5と同様にして、加硫ゴムを得た。
【0070】
(実施例7)
FT級カーボンブラックを80質量部配合したこと以外は上記実施例2と同様にして、加硫ゴムを得た。
【0071】
(実施例8)
FT級カーボンブラックの代わりにFEF級カーボンブラック(FEFブラック、商品名「旭#60UG」)を80質量部配合したこと以外は上記実施例2と同様にして、加硫ゴムを得た。
【0072】
(実施例9)
FT級カーボンブラックの代わりに、湿式シリカ(商品名「Nipsil AQ」、東ソー・シリカ社製)40質量部とシランカップリング剤(商品名「カブラス4」、大阪ソーダ社製)3.2質量部を配合したこと以外は上記実施例2と同様にして、加硫ゴムを得た。
【0073】
(実施例10)
天然ゴムの代わりに、EPDM(商品名「JSR EP21」、JSR社製)を用い、FEF級カーボンブラックを50質量部配合した以外は、実施例8と同様にして、加硫ゴムを得た。
【0074】
(比較例4)
粉末状セルロース1を配合せず、FT級カーボンブラックを40質量部配合したこと以外は上記実施例1と同様にして、加硫ゴムを得た。
【0075】
(比較例5)
粉末状セルロース1を配合せず、FEF級カーボンブラックを80質量部配合したこと以外は上記実施例1と同様にして、加硫ゴムを得た。
【0076】
(比較例6)
FT級カーボンブラックの代わりに、湿式シリカ(商品名「Nipsil AQ」、東ソー・シリカ社製)50質量部とシランカップリング剤(商品名「カブラス4」、大阪ソーダ社製)4質量部を配合したこと以外は、比較例4と同様にして、加硫ゴムを得た。
【0077】
(比較例7)
天然ゴムの代わりに、EPDM(商品名「JSR EP21」、JSR社製)を用い、FEF級カーボンブラックを60質量部配合したこと以外は、比較例5と同様にして、加硫ゴムを得た。
【0078】
実施例4~10及び比較例4~7の配合処方、静的バネ定数(Ks)、動倍率、条件(A)~(C)の充足/非充足の結果とともに表2に示す。
【0079】
【表2】
図1
図2