(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】放射線検出装置
(51)【国際特許分類】
G01T 7/00 20060101AFI20230814BHJP
G01T 1/16 20060101ALN20230814BHJP
G01T 1/169 20060101ALN20230814BHJP
【FI】
G01T7/00 A
G01T1/16 A
G01T1/169 A
(21)【出願番号】P 2019129016
(22)【出願日】2019-07-11
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小迫 和明
(72)【発明者】
【氏名】木下 哲一
(72)【発明者】
【氏名】能任 琢真
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-034761(JP,A)
【文献】特表2009-506327(JP,A)
【文献】特表2012-527101(JP,A)
【文献】特開2015-075480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 - 1/16
G01T 1/167- 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質からの放射線を検出するための装置であって、
放射線を検出する対象物の異なる位置に配置された複数のセルと、各セルにそれぞれ設けられ、放射線を検知する検知手段と、検知した放射線に応じて発光する発光手段とを備え
、
前記検知手段は、pn接合型ダイオードで構成され、前記発光手段は、LEDの半導体構造または有機ELの発光層で構成されることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
各セルが、面状の本体にメッシュ状に配置されることを特徴とする請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
面状の本体が、室内の壁、床、什器の表面材として使用されていることを特徴とする請求項2に記載の放射線検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非密封放射性物質は放射線管理区域内で取り扱うが、事故や不注意により放射性物質が机、床、壁、廊下などに飛散すると、放射性物質による放射能汚染が起きることがある。放射性物質が色付きの溶剤などに含まれていないと、無色透明や極微量であるために汚染場所と範囲がわからない。その場合、GM検出器やシンチレーションサーベイメータなどの放射線測定器により放射性物質が放出する放射線をマッピング計測し、場所と範囲を特定する必要がある。マッピング計測には多大な時間と労力を要する。また、管理区域内全てを計測することは通常困難であるため、汚染が想定される場所を中心に測定がなされると、見落としが生じる可能性もある。
【0003】
汚染場所を特定した後は、汚染を除去するために拭き取りなどの除染作業を実施する。除染作業を行ってから除染が完了したかどうかを確認するために、再度測定を実施する。まだ放射性物質が残留していれば、再度除染を行ってから測定することを繰り返す。このように、目視等により簡便に放射性物質の存在の有無が確認できないために、除染作業は多大な労力を要するものとなっていた。
【0004】
一方、従来の放射能測定装置として、例えば特許文献1に示すようなものが知られている。この装置は、球殻状の遮蔽体を含むマルチコリメータと、複数のγ線検出器とを備えた放射能検出装置を用いて放射能分布を測定する装置であり、処理手段を有する。マルチコリメータは、球殻状に選ばれた遮蔽体であって、放射線の入射方向を制限するために、球殻上に複数の筒状の透孔を形成して複数のコリメータを配置する。複数のγ線検出器は、複数のコリメータの夫々に対応して配置され、対応のコリメータによって制限された特定の視野の放射線を個別に検出する。処理手段は、各γ線検出器の取得信号を基に、平滑化処理、補間処理し、1個のγ線検出器の検出視野よりも微細なメッシュに細分化し、細分化された信号強度分布を算出する。
【0005】
また、従来の放射線計測装置として、例えば特許文献2に示すようなものが知られている。この装置は、所望の方位角及び仰角にて対象空間内の放射線強度分布を得る放射線強度分布検出手段と、対象空間内の放射線量率を検出する放射線量検出手段と、対象空間内の1点で放射線強度分布検出手段が得た異なる複数の放射線強度分布を用いて得られる当該1点を中心とする全方向を網羅する放射線強度分布、前記放射線量率、前記対象空間の空間レイアウト情報、並びに放射線強度分布検出手段及び放射線量検出手段の位置情報に基づいて、前記対象空間のレイアウトを示す画像に、前記全方向を網羅する放射線強度分布と、放射線量検出手段が配置される地点及び当該地点の放射線量率とを重畳した画像を生成する画像生成部と備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-020820号公報
【文献】特開2016-080529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の従来の特許文献1は、複雑な細分化処理を要し、上記の従来の特許文献2は、複雑な画像処理を要するため、いずれも放射能汚染した場所と範囲を瞬時に確認することは難しい。このため、汚染場所と範囲を瞬時に確認することができる技術が求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、汚染場所と範囲を瞬時に確認することができる放射線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る放射線検出装置は、放射性物質からの放射線を検出するための装置であって、放射線を検出する対象物の異なる位置に配置された複数のセルと、各セルにそれぞれ設けられ、放射線を検知する検知手段と、検知した放射線に応じて発光する発光手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の放射線検出装置は、上述した発明において、各セルが、面状の本体にメッシュ状に配置されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の放射線検出装置は、上述した発明において、面状の本体が、室内の壁、床、什器の表面材として使用されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る放射線検出装置によれば、放射性物質からの放射線を検出するための装置であって、放射線を検出する対象物の異なる位置に配置された複数のセルと、各セルにそれぞれ設けられ、放射線を検知する検知手段と、検知した放射線に応じて発光する発光手段とを備えるので、放射線を検知した位置のセルが発光するため、放射性物質による放射能汚染場所と範囲を瞬時に確認することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る他の放射線検出装置によれば、各セルが、面状の本体にメッシュ状に配置されるので、この本体を放射性物質による放射能汚染が疑われる場所に配置すれば、汚染場所と範囲を瞬時に確認することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他の放射線検出装置によれば、面状の本体が、室内の壁、床、什器の表面材として使用されているので、放射性物質による放射能汚染が発生した時点で場所と範囲を容易に特定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係る放射線検出装置の実施の形態を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る放射線検出装置の実施の形態を示す室内斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本発明の基本原理)
まず、本発明の基本原理について説明する。
一般に、放射性物質は、崩壊時に固有の壊変形式に従ってγ線、β線、α線、中性子線などを放出する。放出されたβ線、α線、中性子線は、物質と反応してγ線(X線)を生成する。そのため、放射性物質は壊変形式に依らず最終的にγ線(X線)を生成することになる。γ線(X線)のエネルギーは可視光よりも高い。
【0017】
一方、太陽電池は、光のエネルギーを電子によって直接吸収し(光励起)、その電子を電界により外部へ導き電力として取り出すことができる。一般的な太陽電池は、p型とn型の半導体を接合した構造を持つ(pn接合型ダイオード)。
【0018】
発光ダイオード(LED)は、基本的にはpn接合の半導体構造であり、電子の持つエネルギーを光エネルギーに直接変換する。この一種である有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)は、発光層が有機化合物からなる発光ダイオードを構成しており、有機化合物中に注入された電子と正孔の再結合により生じた励起子によって発光する。
【0019】
そこで、本発明者は、一辺が1mmから数cmの正方形のセル内に太陽電池のpn接合型ダイオードとLEDの半導体構造または有機ELの発光層を組み込み、電子を介して両者を結合することを考えた。1つのpn接合型ダイオードが太陽電池とLEDに共用できれば最もよい。これらのセルを1枚のシート中に平面メッシュ状に配置すると、放射性物質から生じたγ線(X線)はこのシートに入り太陽電池で励起した電子をLEDに取り込むことにより可視光が発生するので、この光をユーザが認識することにより放射性物質の存在場所が明確にわかる。本発明は、このような着想に基づいてなされたものである。
【0020】
(本発明の実施の形態)
以下に、本発明に係る放射線検出装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0021】
図1に示すように、本発明に係る放射線検出装置10は、放射性物質からの放射線を検出するための装置であって、シート状(面状)の本体12と、本体12の表面にメッシュ状に配置された複数のセル14とを備えている。各セル14内には、放射線を検知する検知手段16と、検知した放射線に応じて発光する発光手段18とが設けられている。
【0022】
シート状の本体12は、母材がエポキシ樹脂やリノリウム等の樹脂系の材料、プラスチックのような材料で構成することができる。この本体12は、折り曲げ可能な板材で構成することができる。セル14は、例えば一辺が1mmから数cmの正方形状の格子で構成することができる。
【0023】
検知手段16は、太陽電池のpn接合型ダイオードで構成する。発光手段18は、LEDの半導体構造または有機ELの発光層で構成する。検知手段16と発光手段18は、電子を介して互いに結合されている。1つのpn接合型ダイオードが太陽電池とLEDに共用できれば最もよい。太陽電池による電子の励起量がLEDで発光するのに不足するようであれば、外部供給電力により電子を増倍する機能をシート状の本体12に付与することが好ましい。また、発光手段18の発光量(光の明るさ)により放射能汚染の濃度を判定し、判定結果を報知する機能を有してもよい。
【0024】
本実施の形態によれば、放射性物質から生じたγ線(X線)はこのシート状の本体12に入り、セル14内の検知手段16の太陽電池で励起した電子が発光手段18のLEDに取り込まれて可視光が発生する。放射線を検知した位置のセル14が発光するため、この光をユーザが認識することにより放射性物質による放射能汚染場所と範囲を瞬時に確認することができる。また、除染作業により放射性物質を除去できたかどうかの確認も直ぐに行うことができる。
【0025】
放射線検出装置10は、
図2に示すように、例えば、机(什器)の表面材20、床材22や壁材24(表面材)として使用してもよい。このようにすれば、放射性物質による放射能汚染が発生した時点でその場所と範囲を容易に特定することができる。
【0026】
また、放射線検出装置10のシート状の本体12は、可搬型に構成してもよい。このようにすれば、放射能汚染が疑われる場所に置くだけで、放射能汚染場所と範囲を容易に確認することができる。放射性物質による放射能汚染だけでなく、原子炉や加速器施設の中性子等による放射化生成物の量と範囲も調査することができる。
【0027】
上記の実施の形態では、複数のセル14がシート状の本体12にメッシュ状に配置される場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではない。複数のセル14は、放射線を検出する対象物の異なる位置に配置されるものであればいかなる態様でもよく、例えばシート状の本体12に複数のセルが点在するように配置してもよい。また、上記の実施の形態では、放射線検出装置10がシート状の本体12を備える場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、本体はシート状でなくてもよい。これらのようにしても、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0028】
以上説明したように、本発明に係る放射線検出装置によれば、放射性物質からの放射線を検出するための装置であって、放射線を検出する対象物の異なる位置に配置された複数のセルと、各セルにそれぞれ設けられ、放射線を検知する検知手段と、検知した放射線に応じて発光する発光手段とを備えるので、放射線を検知した位置のセルが発光するため、放射性物質による放射能汚染場所と範囲を瞬時に確認することができる。
【0029】
また、本発明に係る他の放射線検出装置によれば、各セルが、面状の本体にメッシュ状に配置されるので、この本体を放射性物質による放射能汚染が疑われる場所に配置すれば、汚染場所と範囲を瞬時に確認することができる。
【0030】
また、本発明に係る他の放射線検出装置によれば、面状の本体が、室内の壁、床、什器の表面材として使用されているので、放射性物質による放射能汚染が発生した時点で場所と範囲を容易に特定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明に係る放射線検出装置は、放射線取扱施設などに有用であり、特に、放射能汚染場所と範囲を瞬時に確認するのに適している。
【符号の説明】
【0032】
10 放射線検出装置
12 本体
14 セル
16 検知手段
18 発光手段
20 表面材
22 床材
24 壁材