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特許7330011ロータ、モータ及びブラシレスワイパーモータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】ロータ、モータ及びブラシレスワイパーモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/278 20220101AFI20230814BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20230814BHJP
   H02K 21/14 20060101ALN20230814BHJP
【FI】
H02K1/278
H02K1/22 A
H02K21/14 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019144496
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021027717
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大堀 竜
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-120916(JP,A)
【文献】特開平06-178476(JP,A)
【文献】特開2019-022431(JP,A)
【文献】特開2019-037033(JP,A)
【文献】特開2013-258887(JP,A)
【文献】特開2013-090368(JP,A)
【文献】特開2012-249416(JP,A)
【文献】特開2013-099050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/278
H02K 1/22
H02K 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転し、前記軸線の軸方向における端面に形成された取付孔を有するロータコアと、
前記ロータコアの外周面に配置され、前記方向における少なくとも一方の端部が前記ロータコアより前記軸方向の外側に突出する永久磁石と、
前記ロータコアから前記軸方向に突出した前記永久磁石の前記端部を保持するカバー部材と、
前記ロータコアに前記カバー部材を固定する固定部材と、
を備え
前記カバー部材は、
前記永久磁石の外周面に当接する径方向保持部と、
前記径方向保持部の端部から前記ロータコアの径方向の内側に向かって突出する周方向保持部と、
前記周方向保持部の一部に設けられ、前記永久磁石の前記軸方向の端面に当接する軸方向保持部と、
前記周方向保持部の前記径方向の内側端部に設けられ、前記ロータコアの周方向において隣り合う前記周方向保持部の間に配置される係合部と、
を有し、
前記固定部材は、
前記カバー部材より前記軸方向の外側に配置される本体部と、
前記本体部から前記軸方向の内側に向かって突出するとともに前記カバー部材の前記係合部よりも前記径方向の外側に配置され、前記ロータコアの前記取付孔に挿入又は圧入される突起部と、
を有することを特徴とするロータ。
【請求項2】
前記永久磁石は、前記ロータコアの周方向に複数配置されており、
前記ロータコアは、前記ロータコアの径方向の外側に向かって、かつ前記周方向で隣り合う前記永久磁石の間を通って突出する突極を有し、
前記固定部材は、前記カバー部材の前記軸方向の移動を規制していることを特徴とする請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記突起部は、
前記カバー部材の前記係合部に当接する第一突起部と、
前記第一突起部より前記径方向の外側に設けられ、前記第一突起部よりも前記軸方向に沿う突出長さが短い第二突起部と、
を有することを特徴とする請求項に記載のロータ。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記第一突起部が前記ロータコアの前記取付孔に挿入又は圧入されることにより前記ロータコアに固定されていることを特徴とする請求項に記載のロータ。
【請求項5】
前記カバー部材は、弾性部材であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のロータと、
前記ロータの外周部に間隔をあけて配置され、前記ロータコアの径方向の内側に向かって形成されている複数のティースを有する環状のステータと、
前記ティースに巻回されるコイルと、
を備え、
前記ステータは、前記カバー部材よりも前記軸方向の内側において前記ロータと対向していることを特徴とするモータ。
【請求項7】
車両のワイパー装置用として請求項に記載のモータを備えたことを特徴とするブラシレスワイパーモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ、モータ及びブラシレスワイパーモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のワイパー駆動用としてブラシレスワイパーモータが適用されている。
この種のモータとして、ロータコアの外周面に永久磁石を配置した表面磁石型(SPM:Surface Permanent Magnet)モータの構成が知られている。表面磁石型モータでは、ロータが回転する際の遠心力により永久磁石が飛散するのを防止するための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、ロータコアと、ロータコアの外周面に配置された複数の永久磁石と、周方向に隣り合う永久磁石間で径方向外側に向かって突出する突極と、を備えるモータの構成が開示されている。特許文献1に記載の技術によれば、突極には、永久磁石と対向する端面において周方向に突出する凸部が設けられているので、凸部に永久磁石が嵌合することにより、永久磁石の径方向への移動が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/017161号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、ロータコアの突極に凸部を形成する必要があるため、ロータコアの形状が複雑になり、製造コストが増加するおそれがある。
一方、永久磁石の飛散を防止する他の方法として、永久磁石の外周部に筒状のカバーを設ける構成が一般に知られている。しかしながら、このようにロータの外周部にカバーを配置した場合、突極の径方向の長さがカバーにより制限され、ステータとの間のギャップが大きくなることによりモータトルクが低下するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、低コストかつ簡素な構成で永久磁石を安定的に保持し、モータトルクを向上したロータ、このロータを用いたモータ及びブラシレスワイパーモータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係るロータは、軸線回りに回転し、前記軸方向の端面に形成された取付孔を有するロータコアと、前記ロータコアの外周面に配置され、前記軸線の軸方向における少なくとも一方の端部が前記ロータコアより前記軸方向の外側に突出する永久磁石と、前記ロータコアから前記軸方向に突出した前記永久磁石の前記端部を保持するカバー部材と、前記ロータコアに前記カバー部材を固定する固定部材と、を備え、前記カバー部材は、前記永久磁石の外周面に当接する径方向保持部と、前記径方向保持部の端部から前記ロータコアの径方向の内側に向かって突出する周方向保持部と、前記周方向保持部の一部に設けられ、前記永久磁石の前記軸方向の端面に当接する軸方向保持部と、前記周方向保持部の前記径方向の内側端部に設けられ、前記ロータコアの周方向において隣り合う前記周方向保持部の間に配置される係合部と、を有し、前記固定部材は、前記カバー部材より前記軸方向の外側に配置される本体部と、前記本体部から前記軸方向の内側に向かって突出するとともに前記カバー部材の前記係合部よりも前記径方向の外側に配置され、前記ロータコアの前記取付孔に挿入又は圧入される突起部と、を有することを特徴としている。
【0008】
本発明に係るロータにおいて、前記永久磁石は、前記ロータコアの周方向に複数配置されており、前記ロータコアは、前記ロータコアの径方向の外側に向かって、かつ前記周方向で隣り合う前記永久磁石の間を通って突出する突極を有し、前記固定部材は、前記カバー部材の前記軸方向の移動を規制していることを特徴としている。
【0010】
本発明に係るロータにおいて、前記突起部は、前記カバー部材の前記係合部に当接する第一突起部と、前記第一突起部より前記径方向の外側に設けられ、前記第一突起部よりも前記軸方向に沿う突出長さが短い第二突起部と、を有することを特徴としている。
【0011】
本発明に係るロータにおいて、前記カバー部材は、前記第一突起部が前記ロータコアの前記取付孔に挿入又は圧入されることにより前記ロータコアに固定されていることを特徴としている。
【0012】
本発明に係るロータにおいて、前記カバー部材は、弾性部材であることを特徴としている。
【0016】
本発明に係るモータは、上述のロータと、前記ロータの外周部に間隔をあけて配置され、前記ロータコアの径方向の内側に向かって形成されている複数のティースを有する環状のステータと、前記ティースに巻回されるコイルと、を備え、前記ステータは、前記カバー部材よりも前記軸方向の内側において前記ロータと対向していることを特徴としている。
【0017】
本発明に係るブラシレスワイパーモータは、車両のワイパー装置用として上述のモータを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低コストかつ簡素な構成で永久磁石を安定的に保持し、モータトルクを向上したロータ及びこのロータを用いたモータ及びブラシレスワイパーモータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係るブラシレスワイパーモータの断面図。
図2図1のII-II線に沿う断面図。
図3】第1実施形態に係るロータの斜視図。
図4】第1実施形態に係るロータの分解図。
図5図3のV-V線に沿う断面図。
図6】第1実施形態に係るカバー部材の斜視図。
図7図5のVII-VII線に沿う断面図。
図8】第1実施形態に係る固定部材の斜視図。
図9】第2実施形態に係るロータの斜視図。
図10】第2実施形態に係るロータの分解図。
図11図9のXI-XI線に沿う断面図。
図12図11のXII-XII線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(第1実施形態)
(ブラシレスワイパーモータ)(モータ)
図1は、第1実施形態に係るブラシレスワイパーモータ1の断面図である。
ブラシレスワイパーモータ1(以下、単にモータ1という。)は、例えば車両に搭載される電装品の駆動源となるものである。電装品とは、例えば、ワイパー装置等(不図示)である。ワイパー装置は、車両のウィンドウガラス(不図示)に設けられ、ウィンドウガラスに付着した雨や汚れ等を払拭して運転者の視界を確保する。
なお、モータ1は、ブラシレスワイパーモータ以外のモータ1として利用してもよい。
【0022】
モータ1は、モータ部2と、モータ部2の回転を減速して出力する減速部3と、モータ部2の駆動制御を行うコントローラ部4と、を備えている。
以下の説明において、単に軸方向という場合は、モータ部2の回転軸(シャフト31)の軸方向をいい、単に周方向という場合は、シャフト31の周方向をいい、単に径方向という場合は、シャフト31の径方向をいうものとする。
【0023】
(モータ部)
モータ部2は、モータケース5と、モータケース5内に収納されている環状のステータ6と、ステータ6の径方向内側に設けられ、ステータ6に対して回転可能に設けられたロータ7と、を備えている。モータ部2は、ステータ6に電力を供給する際にブラシを必要としない、いわゆるブラシレスモータである。
【0024】
モータケース5は、例えばアルミダイキャスト等の放熱性の優れた材料に形成されている。モータケース5は、軸方向に分割可能に構成された第一モータケース11と、第二モータケース12と、からなる。第一モータケース11及び第二モータケース12は、それぞれ有底筒状に形成されている。
第一モータケース11は、軸方向の一方からモータ部2を覆っている。第一モータケース11は、円形状の第一底部11aと、第一底部11aの外周部から軸方向の他方に突出する筒状の第一側部11bと、第一側部11bの軸方向における他方の端部から周方向全体に亘って径方向外側に突出する第一縁部11cと、を有している。第一縁部11cには、軸方向に貫通するボルト孔(不図示)が形成されている。
【0025】
第二モータケース12は、軸方向の他方からモータ部2を覆っている。第二モータケース12は、第二底部12aと、第二底部12aの外周部から軸方向の一方に突出する筒状の第二側部12bと、第二側部12bの軸方向における一方の端部から周方向全体に亘って径方向外側に突出する第二縁部12cと、を有している。第二モータケース12は、第二底部12aが減速部3のギヤケース13と接合されるように、このギヤケース13と一体成形されている。第二縁部12cには、軸方向に貫通するボルト孔(不図示)が形成されている。第二底部12aの径方向略中央には、ロータ7のシャフト31を挿通可能な孔14が形成されている。
【0026】
第一モータケース11の第一縁部11cと、第二モータケース12の第二縁部12cと、は互いに軸方向から接している。また、第一縁部11cと第二縁部12cとに形成されたボルト孔は、第一縁部11cと第二縁部12cとが接触した状態において、同軸となるように形成されている。ボルト孔にはボルト17が挿入される。これにより、第一縁部11cと第二縁部12cとを篏合させ、内部空間を有するモータケース5を形成している。そして、モータケース5の内部空間に、第一モータケース11及び第二モータケース12の内周面にステータ6が嵌合されるように配置されている。
【0027】
(ステータ)
図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。
図1及び図2に示すように、ステータ6は、シャフト31と同軸に配置された環状のコア部21と、コア部21から径方向内側に向かって突出する複数のティース22とが一体形成されたステータコア23と、ステータコア23のティース22に装着されたコイル24と、を備えている。ステータ6は、この外周面がモータケース5の内周面に固定され、ロータ7に対して回転磁界を作用させる。
ステータコア23は、電磁鋼板が軸方向に積層されて構成されている。なお、ステータコア23は、いわゆる圧粉コアであってもよい。
【0028】
図2に示すように、ティース22は、コア部21の内周面から径方向内側に向かって突出するティース本体25と、ティース本体25の径方向内側端から周方向に沿って延びる鍔部26と、が一体成形されたものである。そして、周方向で隣り合う鍔部26の間に、スロット27が形成されている。
【0029】
図1に示すように、コア部21の内周面及びティース22は、樹脂製のインシュレータ28によって覆われている。このインシュレータ28の上から各ティース22にコイル24が巻回されている。各コイル24は、コントローラ部4からの給電により、ロータ7を回転させるための磁界を生成する。
【0030】
(ロータ)
図3は、第1実施形態に係るロータ7の斜視図である。
ロータ7は、ステータ6の径方向内側に微小隙間を介して回転自在に設けられている(図1参照)。ロータ7は、軸線C回りに回転するシャフト31(図1参照)と、軸線Cを径方向中心としてシャフト31と一体に回転する円柱状のロータコア32と、ロータコア32の外周面に配置された複数(本実施形態では4個)の永久磁石33と、ロータコア32の軸方向の両端に配置されるカバー部材34と、ロータコア32にカバー部材34を固定する固定部材35と、を備える。シャフト31は、後述する減速部3を構成するウォーム軸54と一体成形されている。
【0031】
図4は、第1実施形態に係るロータ7の分解図である。
ロータコア32は、複数の金属板が軸方向に積層されて構成されている。なお、ロータコア32は、いわゆる圧粉コアであってもよい。ロータコア32は、径方向中央にシャフト保持孔38を有する円筒部36と、円筒部36の外周面から径方向の外側へ向かって突出する突極37と、が一体形成されている。シャフト保持孔38には、シャフト31(図1参照)が圧入固定されている。なお、シャフト保持孔38に対してシャフト31を挿入とし、接着剤等を用いてシャフト31の外周面にロータコア32の内周面を固定してもよい。
【0032】
円筒部36には、複数(本実施形態では4個)の取付孔39が周方向に等間隔で形成されている。取付孔39は、ロータコア32に固定部材35を固定するためのものである。取付孔39は、軸方向から見て、円形状に形成されている。取付孔39は、軸線Cと平行にロータコア32を軸方向に貫通している。
【0033】
突極37は、周方向において取付孔39と対応する位置に設けられている。突極37は、周方向に等間隔で複数(本実施形態では4個)形成されている。各突極37の軸方向の長さは、円筒部36の軸方向の長さと同等である。突極37の径方向外側の先端には、U字溝40が、軸方向全体に亘って形成されている。
このように形成された円筒部36の外周面には、周方向で隣り合う2つの突極37の間に、それぞれ永久磁石33が配置される。換言すれば、周方向で隣り合う永久磁石33の間に、突極37が配置されている。永久磁石33は、例えば接着剤等によりロータコア32に固定される。
【0034】
永久磁石33は、ロータコア32の突極37の間において、長手方向が軸方向に沿って配置されている。永久磁石33は、磁束線80(図2参照)が径方向外向きのものと径方向内向きのものとが周方向において交互に並ぶように、それぞれ複数配置されている。
【0035】
図5は、図3のV-V線に沿う断面図である。
永久磁石33の軸方向の長さは、ロータコア32の軸方向の長さよりも長い。永久磁石33の軸方向の両端部は、ロータコア32の軸方向を向くコア端面32s(請求項のロータコアの軸方向の端面)より軸方向の外側にそれぞれ突出している。
【0036】
図2に示すように、永久磁石33は、軸方向から見て扇形状に形成されている。軸方向から見て、永久磁石33の径方向外側の外表面81及び径方向内側の内表面82は、それぞれ円弧中心が異なる円弧状に形成されている。具体的に、内表面82の円弧中心はシャフト31の軸線Cと一致し、外表面81の円弧中心はシャフト31の軸線Cよりも対応するロータコア32の外周面寄りに設定されている。これにより、永久磁石33は、周方向端部における径方向の厚さが、周方向中間部における径方向の厚さよりも小さい。つまり、永久磁石33の外表面81とティース22の内周面との間のギャップは、永久磁石33の周方向中央が最も小さく、この周方向中央から周方向に離間するに従って徐々にギャップが大きくなるように構成されている。
このように形成された永久磁石33の内表面82は、ロータコア32の円筒部36の外周面に接着されている。軸方向から見て永久磁石33の周方向両側に位置する側面83,83は、各側面83,83が対向する突極37にそれぞれ当接している。
【0037】
(カバー部材)
図6は、第1実施形態に係るカバー部材34の斜視図である。図7は、図5のVII-VII線に沿う断面図である。
図6に示すように、カバー部材34は、弾性部材により形成されている。具体的に、カバー部材34は、例えばバネ鋼等の弾性を有する板金を折り曲げた帯状に形成されている。図7に示すように、カバー部材34は、ロータコア32の軸方向を向くコア端面32sから軸方向のロータコア32と反対側に突出した永久磁石33の端部を保持している。図6及び図7に示すように、カバー部材34は、永久磁石33の外周面(外表面81)に当接する径方向保持部42と、永久磁石33の側面83に当接する周方向保持部43と、永久磁石33の軸方向を向く磁石端面33s(請求項における、永久磁石の軸方向の端面)に当接する軸方向保持部44と、周方向に隣り合う永久磁石33間に設けられる係合部45と、を有する。
【0038】
径方向保持部42は、永久磁石33の外表面81を径方向の外側から覆っている。径方向保持部42は、複数の永久磁石33のうちの1個である一の永久磁石33aの外表面81を覆う一の径方向保持部42aと、周方向において一の永久磁石33aと隣り合う他の永久磁石33bの外表面81の一部を覆う他の径方向保持部42bと、を有する。
一の径方向保持部42aは、ロータコア32から軸方向に突出した一の永久磁石33aの端部における外表面81を全周に亘って覆っている。一の径方向保持部42aは、永久磁石33の外表面81に沿って湾曲している。
他の径方向保持部42bは、一の径方向保持部42aの周方向における両側に間隔をあけて一対設けられている。他の径方向保持部42bは、詳しくは後述する周方向保持部43及び係合部45を介して一の径方向保持部42aと一体に形成されている。各々の他の径方向保持部42bは、ロータコア32から軸方向に突出した他の永久磁石33bの端部において、一の永久磁石33a側に位置する外表面81の一部を覆っている。他の径方向保持部42bは、永久磁石33の外表面81に沿って湾曲している。
【0039】
周方向保持部43は、径方向保持部42の端部から径方向の内側に向かって突出している。周方向保持部43は、一の径方向保持部42aの両端部から一の永久磁石33aの側面83に沿って配置される一の周方向保持部43aと、他の永久磁石33bの一端部から他の永久磁石33bの側面83に沿って配置される他の周方向保持部43bと、を有する。
一の周方向保持部43aは、一の径方向保持部42aの両端に一対設けられている。一の周方向保持部43aは、径方向保持部42の両端部からロータコア32の取付孔39に対応する位置まで突出している。一の周方向保持部43aは、直線状に形成されている。
他の周方向保持部43bは、一対の一の周方向保持部43aにそれぞれ対向している。他の周方向保持部43bは、他の永久磁石33bのうち一の永久磁石33a側を向く側面83に沿って直線状に形成されている。他の周方向保持部43bの径方向の外側端部には、他の径方向保持部42bが一体形成されている。
【0040】
図6に示すように、軸方向保持部44は、周方向保持部43における径方向の中間部に設けられている。軸方向保持部44は、周方向保持部43と一体形成されている。軸方向保持部44は、一の周方向保持部43aに連結される一の軸方向保持部44aと、他の周方向保持部43bに連結される他の軸方向保持部44bと、を有する。
一の軸方向保持部44aは、一の周方向保持部43aから周方向の一の永久磁石33a側に向かって突出している。一の軸方向保持部44aは、軸方向から見て波形状に形成されている。一の軸方向保持部44aには、一の永久磁石33aの磁石端面33sが当接している。
他の軸方向保持部44bは、他の周方向保持部43bから周方向の他の永久磁石33b側に向かって突出している。他の軸方向保持部44bは、軸方向から見て波形状に形成されている。他の軸方向保持部44bには、他の永久磁石33bの磁石端面33sが当接している。
【0041】
図6及び図7に示すように、係合部45は、周方向保持部43の径方向の内側端部に設けられている。係合部45は、周方向保持部43と一体に形成されている。軸方向から見て、係合部45は、径方向の外側に開口する半円状に形成されている。係合部45の一端は、一の周方向保持部43aの径方向の内側端部に連結されている。係合部45の他端は、他の周方向保持部43bの径方向の内側端部に連結されている。係合部45は、ロータコア32の取付孔39より径方向の内側に配置されている。
これにより、軸方向から見て、カバー部材34は、一の径方向保持部42a、一の径方向保持部42aに連結されて径方向の内側に突出する一の周方向保持部43a、一の周方向保持部43aに連結される係合部45、係合部45に連結されて径方向の外側に突出する他の周方向保持部43b、他の周方向保持部43bに連結される他の径方向保持部42b、の順で互いに連結されている。
【0042】
このように形成されたカバー部材34は、ロータコア32のコア端面32sよりロータコア32の反対側(軸方向の外側)に全体が配置されている。また、カバー部材34は、ロータコア32の軸線Cに対して対称に配置されるとともに、ロータコア32の軸方向の両側に配置されている。すなわち、1個のロータ7に対して、カバー部材34は合計4個設けられている。
【0043】
ここで、図4に示すように、ロータコア32の軸方向の一方に配置された一対のカバー部材34は、軸方向の他方に配置された一対のカバー部材34に対して軸線C回りに90°回転した状態で配置されている。具体的に、複数の永久磁石33を周方向に順に1番から4番までの番号を付し、軸方向の一方に配置された一対のカバー部材34,34の一の径方向保持部42a,42aが、1番及び3番の永久磁石33の外表面81を覆っているとする。このとき、軸方向の他方に配置された一対のカバー部材34,34の一の径方向保持部42a,42aは、それぞれ2番及び4番の永久磁石33の外表面81を覆っている。
【0044】
(固定部材35)
図8は、第1実施形態に係る固定部材35の斜視図である。
ロータコア32にカバー部材34を固定する固定部材35は、カバー部材34を軸方向のロータコア32と反対側から覆っている。固定部材35は、カバー部材34より軸方向のロータコア32と反対側に配置される本体部46と、本体部46から軸方向のロータコア32側に向かって突出する突起部47と、を有する。
【0045】
本体部46は、径方向の中央にシャフト挿通孔85が形成された軸線Cを中心とする環状に形成されている。シャフト挿通孔85は、軸線Cと同軸な円形状に形成されている。図5に示すように、本体部46の外径は、ロータコア32の外径とほぼ同等であり、永久磁石33及びカバー部材34の外径よりも小さい。本体部46のロータコア32側を向く端面は、カバー部材34に当接している。
図8に示すように、本体部46の内周部には、径方向の内側に凸となる張出部86が形成されている。張出部86は、周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では4個)設けられている。
【0046】
本体部46の外周部とシャフト挿通孔85との間には、逃げ部87が形成されている。逃げ部87は、本体部46を軸方向に貫通する孔である。逃げ部87は、軸方向から見て矩形状に形成されている。逃げ部87は、固定部材35がカバー部材34を軸方向から覆った状態において、カバー部材34の軸方向保持部44と対応する位置に設けられている(図3も参照)。逃げ部87には、カバー部材34の軸方向保持部44が収容されている。逃げ部87は、周方向に複数(本実施形態では8個)設けられている。
【0047】
突起部47は、第一突起部48と、第一突起部48よりも径方向の外側に設けられる第二突起部49と、を有する。
第一突起部48は、本体部46と一体形成されている。第一突起部48は、本体部46の張出部86に設けられている。図5に示すように、第一突起部48は、本体部46からロータコア32のコア端面32sよりロータコア32の内側まで突出している。第一突起部48は、ロータコア32の取付孔39に圧入されている。第一突起部48が取付孔39に圧入されることにより、固定部材35がロータコア32に固定されている。第一突起部48は、周方向に複数(本実施形態では4個)設けられている。第一突起部48は、カバー部材34の係合部45と対応する位置に配置され、径方向の外側から係合部45に当接している(図7参照)。
【0048】
第二突起部49は、本体部46と一体形成されている。第二突起部49は、周方向において第一突起部48と同じ位置に設けられている。第二突起部49は、隣り合う逃げ部87の間に配置されている。第二突起部49の突出長さは、第一突起部48の突出長さより短い。具体的に、固定部材35をロータコア32に取り付けた状態において、第二突起部49は、コア端面32sに達しない長さとなっている。図7に示すように、第二突起部49の外径は、第一突出部の外径より大きい。第二突起部49は、カバー部材34における一の周方向保持部43aと他の周方向保持部43bとの間に配置され、一の周方向保持部43a及び他の周方向保持部43bに当接している。
【0049】
このように形成されたロータ7は、ステータ6の内周部に間隔をあけて配置される際、ロータ7のロータコア32とステータ6とが径方向で対向するように配置される。換言すれば、ステータ6は、カバー部材34よりも軸方向の内側においてロータ7と径方向で対向している。これにより、ステータ6とロータ7との間のギャップにカバー部材34が配置されることなく、ギャップが狭い状態に維持される。
【0050】
(減速部)
図1に戻り、減速部3は、軸方向の一端にモータケース5が取り付けられているギヤケース13と、ギヤケース13内に収容されるウォーム減速機構51と、を備えている。ギヤケース13は、例えばアルミダイキャスト等の放熱性の優れた材料により形成されている。ギヤケース13は、一面が開口した箱状に形成されており、内部にウォーム減速機構51を収容するギヤ収容部52を有する。ギヤケース13の軸方向の一方には、第二モータケース12が一体形成されている。ギヤケース13の側壁には、第二モータケース12が一体成形されている箇所に、この第二モータケース12の孔14とギヤ収容部52とを連通する開口部15が形成されている。これにより、ギヤケース13の軸方向の一端にモータケース5が設けられている。
【0051】
ギヤケース13の側壁には、円筒状の軸受ボス53が突設されている。軸受ボス53は、ウォーム減速機構51の出力軸60を回転自在に支持するためのものであって、内周面に不図示の滑り軸受が設けられている。さらに、軸受ボス53の先端内周縁には、不図示のOリングが装着されている。これにより、軸受ボス53を介して外部から内部に塵埃や水が侵入してしまうことが防止される。また、軸受ボス53の外周面には、複数のリブが設けられている。これにより、軸受ボス53の剛性が確保されている。
【0052】
ギヤ収容部52に収容されたウォーム減速機構51は、ウォーム軸54と、ウォーム軸54に噛合されるウォームホイール55と、により構成されている。ウォーム軸54は、モータ部2のシャフト31と同軸上に配置されている。ウォーム軸54は、両端がギヤケース13に設けられた軸受56,57によって回転自在に支持されている。ウォーム軸54の軸方向におけるモータ部2側の端部は、軸受56を介してギヤケース13の開口部15に至るまで突出している。この突出したウォーム軸54の端部とモータ部2のシャフト31との端部が接合され、ウォーム軸54とシャフト31とが一体化されている。なお、ウォーム軸54とシャフト31は、1つの母材からウォーム軸54部分とシャフト31部分とを成形することにより一体として形成してもよい。
【0053】
ウォーム軸54に噛合されるウォームホイール55には、このウォームホイール55の径方向中央に出力軸60が設けられている。出力軸60は、ウォームホイール55の回転軸方向と同軸上に配置されており、ギヤケース13の軸受ボス53を介してギヤケース13の外部に突出している。出力軸60の突出した先端には、電装品(不図示)と接続可能なスプライン61が形成されている。
【0054】
また、ウォームホイール55の径方向中央には、出力軸60が突出されている側とは反対側に、不図示のセンサマグネットが設けられている。このセンサマグネットは、ウォームホイール55の回転位置を検出する回転位置検出部の一方を構成している。この回転位置検出部の他方を構成する磁気検出素子70は、ウォームホイール55のセンサマグネット側(ギヤケース13の開口部15側)でウォームホイール55と対向配置されているコントローラ部4に設けられている。
【0055】
(コントローラ部)
モータ部2の駆動制御を行うコントローラ部4は、磁気検出素子70が実装されたコントローラ基板71と、ギヤケース13の開口部15を閉塞するように設けられたカバー72と、を有している。そして、コントローラ基板71が、ウォームホイール55のセンサマグネット側(ギヤケース13の開口部15側)に対向配置されている。
【0056】
コントローラ基板71は、いわゆるエポキシ基板に複数の導電性のパターン(不図示)が形成されたものである。コントローラ基板71には、モータ部2のステータコア23から引き出されたコイル24の端末部が接続されていると共に、カバー72に設けられたコネクタの端子(何れも不図示)が電気的に接続されている。また、コントローラ基板71には、磁気検出素子70の他に、コイル24に供給する電流を制御するFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子からなるパワーモジュール(不図示)が実装されている。さらに、コントローラ基板71には、このコントローラ基板71に印加される電圧の平滑化を行うコンデンサ(不図示)等が実装されている。
【0057】
このように構成されたコントローラ基板71を覆うカバー72は、樹脂により形成されている。カバー72は、若干外側に膨出するように形成されている。そして、カバー72の内面側は、コントローラ基板71等を収容するコントローラ収容部73となる。
また、カバー72の外周部に、不図示のコネクタが一体成形されている。このコネクタは、不図示の外部電源から延びるコネクタと嵌着されている。そして、不図示のコネクタの端子に、コントローラ基板71が電気的に接続されている。これにより、外部電源の電力がコントローラ基板71に供給される。
【0058】
さらに、カバー72の開口縁には、ギヤケース13の側壁の端部と嵌め合わされる嵌合部74が突出形成されている。嵌合部74は、カバー72の開口縁に沿う2つの壁74a,74bにより構成されている。そして、これら2つの壁74a,74bの間に、ギヤケース13の側壁の端部が挿入(嵌め合い)される。これにより、ギヤケース13とカバー72との間にラビリンス部75が形成される。このラビリンス部75によって、ギヤケース13とカバー72との間から塵埃や水が浸入してしまうことが防止される。なお、ギヤケース13とカバー72との固定は、不図示のボルトを締結することにより行われる。
【0059】
(モータの製造手順)
次に、上述のモータ1を製造する手順について説明する。
まず、ロータ7を製造する。ロータ7の製造手順では、まず、ロータコア32の外周面に接着剤を用いて永久磁石33を接着する。このとき、永久磁石33の軸方向の両端部がロータコア32のコア端面32sよりも軸方向の外側にそれぞれ突出するように、永久磁石33を配置する。次に、ロータコア32から突出した永久磁石33の端部にカバー部材34を取り付ける。具体的に、一の永久磁石33aの外表面81に一の径方向保持部42aを当接させ、一の永久磁石33aと隣り合う他の永久磁石33bの外表面81に他の径方向保持部42bを当接させる。周方向に隣り合う永久磁石33間に周方向保持部43及び係合部45を配置する。また、軸方向保持部44を永久磁石33の磁石端面33sに当接させる。このように、径方向保持部42、周方向保持部43及び軸方向保持部44により、カバー部材34に対する永久磁石33の位置決めを行い、永久磁石33とカバー部材34とを固定する。
【0060】
次に、ロータコア32に固定部材35を取り付ける。具体的に、ロータコア32の取付孔39に固定部材35の第一突起部48を圧入することにより、ロータコア32に固定部材35を固定する。このとき、固定部材35の本体部46が軸方向のロータコア32と反対側からカバー部材34を覆うことにより、本体部46は、カバー部材34の軸方向への移動を規制する。また、固定部材35の第一突起部48は、カバー部材34の係合部45より径方向の外側に配置される。第一突起部48に係合部45が係合することにより、第一突起部48は、カバー部材34の径方向への移動及び周方向への移動を規制する。このように、固定部材35をロータコア32に固定することにより、固定部材35によりカバー部材34をロータコア32に固定する。
その後、周方向においてN極とS極とが交互に並ぶように、ロータコア32に装着された永久磁石33を着磁する。これにより、ロータ7が製造される。
【0061】
次に、ステータ6を製造する。ステータ6の製造手順では、ステータコア23のティース22にコイル24を巻回する。これにより、コイル24が装着されたステータ6が製造される。なお、ステータ6及びロータ7を製造する順番は、逆でもよい。
【0062】
次に、製造したステータ6を第二モータケース12の内壁に固定する。次に、ステータ6の径方向内側に、ステータ6と間隔をあけてロータ7を配置する。このとき、軸方向において、ステータ6と、ロータ7のロータコア32と、が対向するように配置する。最後に、第一モータケース11を被せて第一モータケース11と第二モータケース12とをボルト17で締結する。これにより、モータ1の製造が完了する。
【0063】
(作用、効果)
次に、上述のロータ7及びモータ1の作用、効果について説明する。
ロータ7は、ロータコア32より軸方向の外側に設けられたカバー部材34及び固定部材35を備える。カバー部材34は、ロータコア32より軸方向の外側に突出する永久磁石33の両端部を保持し、固定部材35は、ロータコア32にカバー部材34を固定する。これにより、カバー部材34と固定部材35とを用いた簡素な構成によりロータコア32に対して永久磁石33を安定的に保持できる。特に、カバー部材34を板金で形成し、カバー部材34を樹脂材料により形成した場合、カバー部材34と固定部材35とを形成し易い。よって、カバー部材34及び固定部材35を簡素かつ低コストな構成とすることができる。また、カバー部材34は、応力の集中し易い永久磁石33の角部を保持するので、永久磁石33を保護し、永久磁石33の割れを抑制できる。
【0064】
カバー部材34及び固定部材35は、ロータコア32の軸方向を向くコア端面32sより軸方向の外側に配置される。このため、ロータ7の外周部で軸方向においてロータコア32と対向する位置にステータ6が配置された際、ロータ7とステータ6とのギャップにカバー部材34及び固定部材35が介在しない。これにより、ギャップにカバー部材34及び固定部材35が介在する場合と比較して、ギャップを狭くできる。よって、モータトルクを向上し、モータの性能を高めることができる。また、永久磁石33の有効磁束をカバー部材34及び固定部材35に阻害されることがなく、有効磁束を効率的に利用できる。
したがって、低コストかつ簡素な構成で永久磁石33を安定的に保持し、モータトルクを向上したロータ7を提供できる。
【0065】
ロータコア32は突極37を有し、周方向に隣り合う突極37の間に永久磁石33が配置される。カバー部材34は、軸方向において突極37(ロータコア32)と固定部材35との間に配置されるので、固定部材35をロータコア32に固定することにより、カバー部材34の軸方向の移動を規制できる。よって、カバー部材34を軸方向から固定部材35で覆うことで、簡素な構成によりカバー部材34をロータコア32に取り付けることができる。
【0066】
カバー部材34は、径方向保持部42と、周方向保持部43と、軸方向保持部44と、係合部45と、を有する。径方向保持部42は、永久磁石33の外周面に当接し、永久磁石33の径方向への移動を制限している。周方向保持部43は、永久磁石33の側面83に当接している。軸方向保持部44は、永久磁石33の軸方向を向く磁石端面33sに当接し、永久磁石33の軸方向への移動を制限している。このように、径方向保持部42と、周方向保持部43と、軸方向保持部44と、により永久磁石33を安定的に保持できる。係合部45は、隣り合う周方向保持部43の間に配置され、係合部45より径方向の外側には固定部材35の突起部47が配置される。このため、係合部45が突起部47に係合することにより、カバー部材34の径方向外側への移動及び周方向への移動が制限される。また、固定部材35の本体部46によりカバー部材34の軸方向への移動が制限される。これにより、カバー部材34を容易にロータコア32に固定できる。
固定部材35は、ロータコア32の取付孔39に突起部47が圧入されることによりロータコア32に固定される。よって、容易な方法で固定部材35をロータコア32に取り付けることができる。
【0067】
突起部47は第一突起部48と第二突起部49とを有し、第一突起部48は、カバー部材34の係合部45に当接する。このように、固定部材35は、カバー部材34の係合部45に当接するとともにロータコア32の取付孔39に圧入される第一突起部48を有するので、第一突起部48により、ロータコア32と、カバー部材34と、カバー部材34に保持される永久磁石33と、を固定できる。また、第二突起部49は、第一突起部48より径方向の外側に設けられるとともに一の周方向保持部43aと他の周方向保持部43bとの間に配置される。ここで、例えばロータ7の回転時に、遠心力により永久磁石33が径方向外側に移動しようとして径方向保持部42を径方向の外側に押圧することにより、隣り合う周方向保持部43a,43bが互いに近接する方向に変形する場合がある。周方向保持部43a,43bが互いに近接すると、他の周方向保持部43bに連結された他の径方向保持部42bが永久磁石33の外周面から離間し、カバー部材34から永久磁石33が外れるおそれがある。これに対し、第二突起部49は、隣り合う周方向保持部43a,43b間に配置されて周方向保持部43a,43bが互いに近接する方向に変形するのを抑制するので、他の径方向保持部42bが永久磁石33から離間するのを抑制できる。よって、永久磁石33とカバー部材34とが離間するのを抑制し、永久磁石33を安定的に保持できる。
【0068】
固定部材35の第一突起部48がロータコア32の取付孔39に圧入されることにより、固定部材35及びカバー部材34がロータコア32に固定される。このように、第一突起部48は、カバー部材34の係合部45に当接してカバー部材34の径方向の移動を制限する機能に加え、固定部材35及びカバー部材34をロータコア32に固定する機能を有する。また、第一突起部48をロータコア32の取付孔39に挿入するだけで固定部材35及びカバー部材34を固定できる。よって、単一かつ簡素な構成により固定部材35及びカバー部材34をロータ7に取り付け、ロータ7の製造時の作業性を向上できる。
【0069】
カバー部材34は弾性部材であるので、カバー部材34を弾性変形させることにより、永久磁石33に容易にカバー部材34を装着することができる。また、永久磁石33にカバー部材34が装着された状態で、永久磁石33がカバー部材34から受ける応力を低減し、永久磁石33の割れを抑制できる。
【0070】
ロータコア32の軸方向の一方に配置された一対のカバー部材34は、軸方向の他方に配置された一対のカバー部材34に対して90°回転した状態で配置される。これにより、4個の永久磁石33は、それぞれ少なくとも軸方向の一端が一の径方向保持部42aにより周方向の全周を覆われている。よって、複数の永久磁石33を均一かつ安定的に保持できる。
【0071】
モータは、上述のロータ7と、ステータ6と、を備え、ステータ6は、カバー部材34よりも軸方向の内側においてロータ7と対向している。これにより、ステータ6とロータ7とのギャップにカバー部材34を介在させることなく、ステータ6とロータ7とのギャップを狭めることができる。これにより、モータトルクを向上し、モータ1の性能を高めることができる。また、固定部材35は、軸方向からカバー部材34を覆うことによりカバー部材34をロータコア32に固定している。このため、永久磁石33の有効磁束がカバー部材34及び固定部材35に阻害されることなく、有効磁束を効率的に利用できる。
したがって、低コストかつ簡素な構成で永久磁石33を安定的に保持し、モータトルクを向上したロータ7を備えた、高性能なモータ1を提供できる。
また、ブラシレスワイパーモータ1は、車両のワイパー装置用としてこのモータ1を備えるので、低コストかつ簡素な構成で永久磁石33を安定的に保持し、モータトルクを向上したロータ7を備えたブラシレスワイパーモータ1を提供できる。
【0072】
(第2実施形態)
次に、図9から図12に基づいて、本発明に係る第2実施形態について説明する。
図9は、第2実施形態に係るロータ207の斜視図である。図10は、第2実施形態に係るロータ207の分解図である。図11は、図9のXI-XI線に沿う断面図である。図12は、図11のXII-XII線に沿う断面図である。以下の説明において、上述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
本第2実施形態と前述の第1実施形態との相違点は、本第2実施形態では、カバー部材34及び固定部材35の構成が上述した第1実施形態と相違している。
【0073】
本第2実施形態において、カバー部材234は、ロータコア32のコア端面32sから軸方向に突出した永久磁石33の端部を保持している。図9及び図10に示すように、カバー部材234は、例えば板状の部材を曲げて形成されている。具体的に、カバー部材234は、ロータコア32の軸方向を向くコア端面32sに当接する基部231と、基部231から径方向の外側に向かって突出する腕部232と、腕部232の径方向の外側端部に連結される爪部233と、を有する。
また、ロータコア32の円筒部36には、周方向において隣り合う突極37同士の間に取付孔39が形成されている。取付孔39は、周方向に等間隔で形成され、ロータコア32を軸方向に貫通している。
【0074】
図10に示すように、基部231は、軸線Cを中心とする環状に形成されている。基部231には、複数(本実施形態では4個)の貫通孔236が形成されている。貫通孔236は、基部231を軸方向に貫通している。貫通孔236は、ロータコア32の取付孔39と同軸上に設けられている。
図9に示すように、腕部232は、基部231の外周部に連結されている。腕部232は、基部231と一体形成されている。腕部232は、周方向に複数(本実施形態では4個)設けられている。腕部232は、周方向において基部231に形成された貫通孔236の間に設けられている。腕部232は、基部231から軸方向に沿ってロータコア32と反対側に立ち上がる立上がり部237と、立上がり部237の上端(軸方向のロータコア32と反対側の端部)から径方向の外側に向かって突出する押さえ部238と、を有する。押さえ部238は、軸方向から見て、ロータコア32の突極37と重なる位置に設けられている。押さえ部238の周方向の両側部には、周方向に向かってそれぞれ突出する突出部239が一体形成されている。突出部239は、永久磁石33の磁石端面33sに当接している。
【0075】
爪部233は、腕部232の径方向の外側端部から軸方向に沿ってロータコア32側に突出している。爪部233は、永久磁石33の外周面(外表面81)に当接している。爪部233の周方向に沿う長さは、腕部232の周方向に沿う長さより長い。爪部233は、永久磁石33の外表面81に沿って湾曲している。ここで、図12に示すように、爪部233の内径r1寸法は、ロータコア32の突極37の外径r2寸法以下となっている(r1≦r2)。換言すれば、軸方向から見て、突極37の径方向外側の端部は、爪部233の内周面より径方向の外側に位置している。より具体的に、軸方向から見て、突極37の径方向外側の端部は、径方向において爪部233の内周面と外周面との間に位置している。
【0076】
図9及び図10に示すように、固定部材235は、基部231の貫通孔236及びロータコア32の取付孔39に挿入されることにより、カバー部材234をロータコア32に固定している。図11に示すように、固定部材235は、貫通孔236及び取付孔39に挿入される挿入部241と、挿入部241の軸方向の両端部に設けられる頭部242と、を有する。固定部材235は、例えばリベットである。
頭部242は、カバー部材234の基部231に当接している。これにより、固定部材235は、カバー部材234の軸方向への移動を制限している。
【0077】
本実施形態によれば、カバー部材234は、基部231と、腕部232と、爪部233と、を有する。固定部材235は、挿入部241と、頭部242と、を有する。ロータコア32の軸方向を向くコア端面32sにカバー部材234の基部231が当接するとともに、貫通孔236に固定部材235が挿入されることにより、カバー部材234はロータコア32に固定される。腕部232は、永久磁石33の磁石端面33sに当接することにより、永久磁石33の軸方向の移動を制限している。爪部233は、永久磁石33の外表面81に当接することにより、永久磁石33の径方向外側への移動を制限している。このように、基部231と、腕部232と、爪部233と、により永久磁石33を安定的に保持できる。
【0078】
カバー部材234はロータコア32のコア端面32sから突出した永久磁石33の端部を保持するので、ロータ7の外周部にステータ6を配置した際、ロータ7とステータ6とのギャップにカバー部材234が介在せず、ギャップを狭くできる。これにより、モータトルクを向上し、モータ1の性能を高めることができる。また、永久磁石33の有効磁束がカバー部材234に阻害されることなく、有効磁束を効率的に利用できる。
したがって、低コストかつ簡素な構成で永久磁石33を安定的に保持し、モータトルクを向上したロータ207を提供できる。
また、特にリベットを固定部材235として使用した場合は、固定部材235の構成を簡素化することができる。
【0079】
また、爪部233の内径r1寸法は、ロータコア32の突極37の外径r2寸法以下となっている。これにより、軸方向から見て、突極37は、爪部233の内周面よりも径方向の外側に位置している。このため、ロータ207の外周部にステータ6を配置した際、カバー部材の内径寸法や厚みによらず、ロータ207の突極37とステータ6とのギャップを狭めることができる。よって、モータトルクを向上したロータ207を提供できる。
【0080】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
【0081】
例えば、上述した実施形態では、永久磁石33の軸方向の両端部がロータコア32よりも軸方向の外側に突出する構成について説明したが、この構成のみに限られない。永久磁石33のうち軸方向の少なくとも一方の端部がロータコア32よりも軸方向の外側に突出していればよく、永久磁石33の他方の端部は軸方向においてロータコア32のコア端面32sと面一となるように配置されてもよい。この場合、永久磁石33の端部がロータコア32よりも突出した一方側にのみカバー部材34及び固定部材35を配置してもよい。また、一方の端部と他方の端部とでロータコア32のコア端面32sに対する永久磁石33の突出高さが異なっていてもよい。ただし、永久磁石33の一方の端部及び他方の端部がコア端面32sから同等の長さで突出し、かつカバー部材34及び固定部材35がロータ7の両端に設けられる本実施形態の構成は、ロータ7の重量バランスや永久磁石33の保持力を安定的に維持できる点で優位性がある。
【0082】
第1実施形態における突起部47の個数、永久磁石33の個数及び第2実施形態における固定部材235の個数は上述した実施形態に限定されない。
第1実施形態において、ロータコア32の取付孔39は、軸方向に貫通しない凹陥部であってもよい。
永久磁石33の内表面82の円弧中心と外表面81の円弧中心とは一致していてもよい、例えば、内表面82の円弧中心と外表面81の円弧中心とがいずれもシャフトの軸線Cと同軸の円弧状に形成されていてもよい。
【0083】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…モータ(ブラシレスワイパーモータ)
6…ステータ
7…ロータ
32…ロータコア
32s…コア端面(ロータコアの軸方向の端面)
33…永久磁石
33s…磁石端面(永久磁石の軸方向の端面)
34…カバー部材
35…固定部材
37…突極
39…取付孔
42…径方向保持部
43…周方向保持部
44…軸方向保持部
45…係合部
46…本体部
47…突起部
48…第一突起部
49…第二突起部
231…基部
232…腕部
233…爪部
236…貫通孔
241…挿入部
242…頭部
C…軸線
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