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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】基板処理装置、および、基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230814BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20230814BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20230814BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20230814BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230814BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
H01L21/304 651B
H01L21/68 A
H01L21/306 K
H01L21/306 R
H01L21/30 564C
G06T7/00 610Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019166984
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021044478
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】角間 央章
(72)【発明者】
【氏名】沖田 有史
(72)【発明者】
【氏名】猶原 英司
(72)【発明者】
【氏名】増井 達哉
(72)【発明者】
【氏名】出羽 裕一
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-110270(JP,A)
【文献】特開2019-036634(JP,A)
【文献】特開2019-149423(JP,A)
【文献】特開2003-344037(JP,A)
【文献】国際公開第2009/031612(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/677
H01L 21/306
H01L 21/027
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を回転させつつ保持するための保持部と、
保持された回転している前記基板の外縁部を含む撮像範囲を複数箇所で撮像し、かつ、回転している前記基板の複数の画像データを出力するための撮像部と、
複数の前記画像データ間の差分画像から、前記基板の前記外縁部を抽出するための抽出部と、
前記差分画像における前記基板の前記外縁部に基づいて、前記基板の保持状態を判定するための判定部とを備える、
基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であり、
前記判定部は、前記差分画像における前記外縁部の長さに基づいて、前記基板の保持状態を判定する、
基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理装置であり、
前記判定部は、前記差分画像における前記外縁部の長さの最大値に基づいて、前記基板の保持状態を判定する、
基板処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれか1つに記載の基板処理装置であり、
前記撮像部は、保持された前記基板の前記外縁部に沿って延びる前記撮像範囲を撮像する、
基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置であり、
前記撮像部は、前記基板の前記外縁部に沿って延びるアーチ状の前記撮像範囲を撮像する、
基板処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のうちのいずれか1つに記載の基板処理装置であり、
前記撮像部は、保持された前記基板を前記基板の上方から撮像する、
基板処理装置。
【請求項7】
請求項1から6のうちのいずれか1つに記載の基板処理装置であり、
前記撮像部は、保持された前記基板を前記基板の外周側から撮像する、
基板処理装置。
【請求項8】
請求項1から7のうちのいずれか1つに記載の基板処理装置であり、
前記判定部において前記基板の保持状態が異常状態と判定された場合に、警報を発報する発報部をさらに備える、
基板処理装置。
【請求項9】
基板を保持し、かつ、回転させる工程と、
回転している前記基板の外縁部を含む撮像範囲を複数箇所で撮像し、かつ、前記基板の複数の画像データを出力する工程と、
複数の前記画像データ間の差分画像から、前記基板の前記外縁部を抽出する工程と、
前記差分画像における前記基板の前記外縁部に基づいて、前記基板の保持状態を判定する工程とを備える、
基板処理方法。
【請求項10】
請求項9に記載の基板処理方法であり、
前記基板の保持状態を判定する工程は、前記差分画像における前記外縁部の長さに基づいて、前記基板の保持状態を判定する工程である、
基板処理方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の基板処理方法であり、
前記基板の保持状態を判定する工程は、前記差分画像における前記外縁部の長さの最大値に基づいて、前記基板の保持状態を判定する工程である、
基板処理方法。
【請求項12】
請求項9から11のうちのいずれか1つに記載の基板処理方法であり、
回転している前記基板を撮像する工程の後に、前記基板を処理する工程をさらに備える、
基板処理方法。
【請求項13】
請求項9から12のうちのいずれか1つに記載の基板処理方法であり、
回転している前記基板を撮像する工程の前に、前記基板を洗浄処理する工程をさらに備え、
回転している前記基板を撮像する工程は、前記洗浄処理後で前記基板を乾燥処理する前に行われる工程である、
基板処理方法。
【請求項14】
請求項9から13のうちのいずれか1つに記載の基板処理方法であり、
前記基板の保持状態を判定する工程において前記基板の保持状態が異常状態であると判定された場合に、前記基板の回転を停止する工程をさらに備える、
基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願明細書に開示される技術は、基板処理装置、および、基板処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスなどの製造工程においては、基板に対して純水、フォトレジスト液またはエッチング液などの処理液を供給することによって、洗浄処理またはレジスト塗布処理などの基板処理が行われる。
【0003】
これらの処理液を用いる液処理を行う装置として、基板を回転させつつ、その基板の上面にノズルからの処理液を吐出する基板処理装置が用いられる場合がある。
【0004】
たとえば、特許文献1においては、基板が正常に保持されているか否かを判定するために、撮像画像と基準画像とを比較する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-110270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術では、基板が正常に保持されているか否かを判定するためには、正常に保持された基板を撮像した画像である基準画像が必要となる。したがって、正常に保持された基板をあらかじめ撮像しておかなければ、基板が正常に保持されているか否かを判定することができないという問題があった。
【0007】
本願明細書に開示される技術は、以上に記載されたような問題を鑑みてなされたものであり、基準画像を必要とせずに、基板が正常に保持されているか否かを判定する技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願明細書に開示される技術の第1の態様は、基板を回転させつつ保持するための保持部と、保持された回転している前記基板の外縁部を含む撮像範囲を複数箇所で撮像し、かつ、回転している前記基板の複数の画像データを出力するための撮像部と、複数の前記画像データ間の差分画像から、前記基板の前記外縁部を抽出するための抽出部と、前記差分画像における前記基板の前記外縁部に基づいて、前記基板の保持状態を判定するための判定部とを備える。
【0009】
本願明細書に開示される技術の第2の態様は、第1の態様に関連し、前記判定部は、前記差分画像における前記外縁部の長さに基づいて、前記基板の保持状態を判定する。
【0010】
本願明細書に開示される技術の第3の態様は、第1または2の態様に関連し、前記判定部は、前記差分画像における前記外縁部の長さの最大値に基づいて、前記基板の保持状態を判定する。
【0011】
本願明細書に開示される技術の第4の態様は、第1から3のうちのいずれか1つの態様に関連し、前記撮像部は、保持された前記基板の前記外縁部に沿って延びる前記撮像範囲を撮像する。
【0012】
本願明細書に開示される技術の第5の態様は、第4の態様に関連し、前記撮像部は、前記基板の前記外縁部に沿って延びるアーチ状の前記撮像範囲を撮像する。
【0013】
本願明細書に開示される技術の第6の態様は、第1から5のうちのいずれか1つの態様に関連し、前記撮像部は、保持された前記基板を前記基板の上方から撮像する。
【0014】
本願明細書に開示される技術の第7の態様は、第1から6のうちのいずれか1つの態様に関連し、前記撮像部は、保持された前記基板を前記基板の外周側から撮像する。
【0015】
本願明細書に開示される技術の第8の態様は、第1から7のうちのいずれか1つの態様に関連し、前記判定部において前記基板の保持状態が異常状態と判定された場合に、警報を発報する発報部をさらに備える。
【0016】
本願明細書に開示される技術の第9の態様は、基板を保持し、かつ、回転させる工程と、回転している前記基板の外縁部を含む撮像範囲を複数箇所で撮像し、かつ、前記基板の複数の画像データを出力する工程と、複数の前記画像データ間の差分画像から、前記基板の前記外縁部を抽出する工程と、前記差分画像における前記基板の前記外縁部に基づいて、前記基板の保持状態を判定する工程とを備える。
【0017】
本願明細書に開示される技術の第10の態様は、第9の態様に関連し、前記基板の保持状態を判定する工程は、前記差分画像における前記外縁部の長さに基づいて、前記基板の保持状態を判定する工程である。
【0018】
本願明細書に開示される技術の第11の態様は、第9または10の態様に関連し、前記基板の保持状態を判定する工程は、前記差分画像における前記外縁部の長さの最大値に基づいて、前記基板の保持状態を判定する工程である。
【0019】
本願明細書に開示される技術の第12の態様は、第9から11のうちのいずれか1つの態様に関連し、回転している前記基板を撮像する工程の後に、前記基板を処理する工程をさらに備える。
【0020】
本願明細書に開示される技術の第13の態様は、第9から12のうちのいずれか1つの態様に関連し、回転している前記基板を撮像する工程の前に、前記基板を洗浄処理する工程をさらに備え、回転している前記基板を撮像する工程は、前記洗浄処理後で前記基板を乾燥処理する前に行われる工程である。
【0021】
本願明細書に開示される技術の第14の態様は、第9から13のうちのいずれか1つの態様に関連し、前記基板の保持状態を判定する工程において前記基板の保持状態が異常状態であると判定された場合に、前記基板の回転を停止する工程をさらに備える。
【発明の効果】
【0022】
本願明細書に開示される技術の第1から14の態様によれば、基板の複数箇所における画像データを用いて差分画像を作成し、さらに、差分画像から基板の外縁部を抽出することによって、差分画像における当該外縁部の長さなどから基板の保持状態を判定することができる。よって、正常に保持された基板の画像データを基準画像データとして保持していなくとも、基板の保持状態を判定することができる。
【0023】
また、本願明細書に開示される技術に関連する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施の形態に関する、基板処理装置の全体構成の例を示す図である。
図2】実施の形態に関する、洗浄処理ユニットの平面図である。
図3】実施の形態に関する、洗浄処理ユニットの断面図である。
図4】基板が他の方法によって保持される場合の、スピンチャックの構成の例を示す断面図である。
図5】カメラ、ノズルおよび基板の位置関係を示す図である。
図6】制御部の機能ブロック図である。
図7図6に例が示された制御部を実際に運用する場合のハードウェア構成を概略的に例示する図である。
図8】実施の形態に関する、基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
図9】回転している基板の画像フレームの例を示す図である。
図10】回転している基板の画像フレームの例を示す図である。
図11図8に例が示された画像フレームと、図9に例が示された画像フレームとの差分画像である。
図12図10に例が示された差分画像に基づいて、Cannyエッジ抽出を行った結果を示す図である。
図13】差分画像に基づいてCannyエッジ抽出を行った結果の他の例を示す図である。
図14図1または図1のように抽出されたエッジの基板周方向の長さの、各画像フレームまでの最大値を示す図である。
図15】基板が正常に保持されている場合の、差分画像に基づいて抽出されるエッジの基板周方向の長さの最大値を、基板処理装置のそれぞれの動作において測定した場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。以下の実施の形態では、技術の説明のために詳細な特徴なども示されるが、それらは例示であり、実施の形態が実施可能となるためにそれらすべてが必ずしも必須の特徴ではない。
【0026】
なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化が図面においてなされるものである。また、異なる図面にそれぞれ示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。また、断面図ではない平面図などの図面においても、実施の形態の内容を理解することを容易にするために、ハッチングが付される場合がある。
【0027】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0028】
また、以下に記載される説明において、ある構成要素を「備える」、「含む」または「有する」などと記載される場合、特に断らない限りは、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0029】
また、以下に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「側」、「底」、「表」または「裏」などの特定の位置または方向を意味する用語が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、実際に実施される際の位置または方向とは関係しないものである。
【0030】
<実施の形態>
以下、本実施の形態に関する基板処理装置、および、基板処理方法について説明する。
【0031】
<基板処理装置の構成について>
図1は、本実施の形態に関する基板処理装置100の全体構成の例を示す図である。図1に例が示されるように、基板処理装置100は、処理対象である基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。なお、処理対象となる基板には、たとえば、半導体基板、液晶表示装置用基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などのflat panel display(FPD)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、または、太陽電池用基板などが含まれる。
【0032】
本実施の形態に関する基板処理装置100は、円形薄板状であるシリコン基板である基板Wに対して、薬液および純水などのリンス液を用いて洗浄処理を行った後、乾燥処理を行う。
【0033】
上記の薬液としては、たとえば、アンモニアと過酸化水素水との混合液(SC1)、塩酸と過酸化水素水との混合水溶液(SC2)、または、DHF液(希フッ酸)などが用いられる。
【0034】
以下の説明では、薬液とリンス液とを総称して「処理液」とする。なお、洗浄処理のみならず、成膜処理のためのフォトレジスト液などの塗布液、不要な膜を除去するための薬液、または、エッチングのための薬液なども「処理液」に含まれるものとする。
【0035】
基板処理装置100は、複数の洗浄処理ユニット1と、インデクサ102と、主搬送ロボット103とを備える。
【0036】
インデクサ102は、装置外から受け取る処理対象である基板Wを装置内に搬送するとともに、基板処理(処理カップの昇降、洗浄処理および乾燥処理を含む)が完了している処理済みの基板Wを装置外に搬出する。インデクサ102は、複数のキャリア(図示省略)を配置するとともに、移送ロボット(図示省略)を備える。
【0037】
キャリアとしては、基板Wを密閉空間に収納するfront opening unified pod(FOUP)、standard mechanical inter face(SMIF)ポッド、または、基板Wを外気にさらすopen cassette(OC)が採用されてもよい。また、移送ロボットは、キャリアと主搬送ロボット103との間で基板Wを移送する。
【0038】
洗浄処理ユニット1は、1枚の基板Wに対して洗浄処理および乾燥処理を行う。本実施の形態に関する基板処理装置100には、12個の洗浄処理ユニット1が配置されている。
【0039】
具体的には、各々が鉛直方向に積層された3個の洗浄処理ユニット1を含む4つのタワーが、主搬送ロボット103の周囲を取り囲むようにして配置されている。
【0040】
図1では、3段に重ねられた洗浄処理ユニット1の1つが概略的に示されている。なお、基板処理装置100における洗浄処理ユニット1の数量は、12個に限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。
【0041】
主搬送ロボット103は、洗浄処理ユニット1が積層された4個のタワーの中央に設置されている。主搬送ロボット103は、インデクサ102から受け取る処理対象の基板Wを各洗浄処理ユニット1に搬入する。また、主搬送ロボット103は、各洗浄処理ユニット1から処理済みの基板Wを搬出してインデクサ102に渡す。
【0042】
以下、基板処理装置100に搭載された12個の洗浄処理ユニット1のうちの1つについて説明するが、他の洗浄処理ユニット1についても、ノズルの配置関係が異なること以外は、同一の構成を有する。
【0043】
図2は、本実施の形態に関する洗浄処理ユニット1の平面図である。また、図3は、本実施の形態に関する洗浄処理ユニット1の断面図である。
【0044】
図2は、スピンチャック20に基板Wが保持されていない状態を示しており、図3は、スピンチャック20に基板Wが保持されている状態を示している。
【0045】
洗浄処理ユニット1は、チャンバー10内に、基板Wを水平姿勢(すなわち、基板Wの上面の法線が鉛直方向に沿う姿勢)に保持するスピンチャック20と、スピンチャック20に保持された基板Wの上面に処理液を供給するための3つのノズル30、ノズル60およびノズル65と、スピンチャック20の周囲を取り囲む処理カップ40と、スピンチャック20の上方の空間を撮像するカメラ70とを備える。
【0046】
また、チャンバー10内における処理カップ40の周囲には、チャンバー10の内側空間を上下に仕切る仕切板15が設けられている。
【0047】
チャンバー10は、鉛直方向に沿うとともに四方を取り囲む側壁11と、側壁11の上側を閉塞する天井壁12、側壁11の下側を閉塞する床壁13とを備える。側壁11、天井壁12および床壁13によって囲まれた空間が基板Wの処理空間となる。
【0048】
また、チャンバー10の側壁11の一部には、チャンバー10に対して主搬送ロボット103が基板Wを搬出入するための搬出入口、および、その搬出入口を開閉するシャッターが設けられている(いずれも図示省略)。
【0049】
チャンバー10の天井壁12には、基板処理装置100が設置されているクリーンルーム内の空気をさらに清浄化してチャンバー10内の処理空間に供給するためのファンフィルタユニット(FFU)14が取り付けられている。FFU14は、クリーンルーム内の空気を取り込んでチャンバー10内に送り出すためのファンおよびフィルタ(たとえば、high efficiency particulate air filter(HEPA)フィルタ)を備えている。
【0050】
FFU14は、チャンバー10内の処理空間に清浄空気のダウンフローを形成する。FFU14から供給された清浄空気を均一に分散させるために、多数の吹出し孔が形成されたパンチングプレートを天井壁12の直下に設けてもよい。
【0051】
スピンチャック20は、スピンベース21、スピンモータ22、カバー部材23および回転軸24を備える。スピンベース21は、円板形状を有しており、鉛直方向に沿って延びる回転軸24の上端に水平姿勢で固定されている。スピンモータ22は、スピンベース21の下方に設けられており、回転軸24を回転させる。スピンモータ22は、回転軸24を介してスピンベース21を水平面内において回転させる。カバー部材23は、スピンモータ22および回転軸24の周囲を取り囲む筒状形状を有する。
【0052】
円板形状のスピンベース21の外径は、スピンチャック20に保持される円形の基板Wの径よりも若干大きい。よって、スピンベース21は、保持すべき基板Wの下面の全面と対向する保持面21aを有する。
【0053】
スピンベース21の保持面21aの周縁部には複数(本実施の形態では4本)のチャックピン26が設けられている。複数のチャックピン26は、円形の基板Wの外周円の外径に対応する円周上に沿って、均等な間隔をあけて配置されている。本実施の形態では、4個のチャックピン26が90°間隔で設けられている。
【0054】
複数のチャックピン26は、スピンベース21内に収容された図示省略のリンク機構によって連動して駆動される。スピンチャック20は、複数のチャックピン26のそれぞれを基板Wの外周端に当接させて基板Wを把持することにより、当該基板Wをスピンベース21の上方で保持面21aに近接する水平姿勢で保持する(図3を参照)。また、スピンチャック20は、複数のチャックピン26のそれぞれを基板Wの外周端から離間させることによって、基板Wの把持を解除する。なお、基板Wを保持する方法は、本実施の形態に示されたチャックピンを用いる方法に限られるものではなく、たとえば、基板Wを真空吸着する真空チャック、または、気体を噴出してベルヌーイの原理によって基板Wを吸引するベルヌーイチャック(後述)などであってもよい。
【0055】
スピンモータ22を覆うカバー部材23は、その下端がチャンバー10の床壁13に固定され、上端がスピンベース21の直下にまで到達している。カバー部材23の上端部には、カバー部材23から外方へほぼ水平に張り出し、さらに下方に屈曲して延びる鍔状部材25が設けられている。
【0056】
複数のチャックピン26による把持によってスピンチャック20が基板Wを保持している状態で、スピンモータ22が回転軸24を回転させることにより、基板Wの中心を通る鉛直方向に沿った回転軸線CXまわりに基板Wを回転させることができる。なお、スピンモータ22の駆動は制御部9によって制御される。
【0057】
ノズル30は、ノズルアーム32の先端に吐出ヘッド31を取り付けて構成されている。ノズルアーム32の基端側はノズル基台33に固定して連結されている。ノズル基台33に設けられたモータ332(ノズル移動部)によって鉛直方向に沿った軸のまわりで回動可能とされている。
【0058】
ノズル基台33が回動することにより、図2中の矢印AR34にて示すように、ノズル30は、スピンチャック20の上方の位置と処理カップ40よりも外側の待機位置との間で水平方向に沿って円弧状に移動させる。ノズル基台33の回動によって、ノズル30はスピンベース21の保持面21aの上方において揺動する。詳細には、スピンベース21よりも上方において、水平方向に延びる既定の処理区間PS1(後述)を移動する。なお、ノズル30を処理区間PS1内で移動させることは、先端の吐出ヘッド31を処理区間PS1内で移動させることと同意である。
【0059】
ノズル30には、複数種の処理液(少なくとも純水を含む)が供給されるように構成されており、吐出ヘッド31から複数種の処理液が吐出可能である。なお、ノズル30の先端に複数の吐出ヘッド31を設けて、それぞれから個別に同一または異なる処理液が吐出されてもよい。ノズル30(詳細には吐出ヘッド31)は、水平方向に円弧状に延びる処理区間PS1を移動しながら、処理液を吐出する。ノズル30から吐出された処理液は、スピンチャック20に保持された基板Wの上面に着液する。
【0060】
本実施の形態の洗浄処理ユニット1には、上記のノズル30に加えてさらに2つのノズル60およびノズル65が設けられている。本実施の形態のノズル60およびノズル65は、上記のノズル30と同一の構成を備える。
【0061】
すなわち、ノズル60は、ノズルアーム62の先端に吐出ヘッドを取り付けて構成され、ノズルアーム62の基端側に連結されたノズル基台63によって、矢印AR64によって示されるように、スピンチャック20の上方の処理位置と処理カップ40よりも外側の待機位置との間で円弧状に移動する。
【0062】
同様に、ノズル65は、ノズルアーム67の先端に吐出ヘッドを取り付けて構成され、ノズルアーム67の基端側に連結されたノズル基台68によって、矢印AR69によって示されるように、スピンチャック20の上方の処理位置と処理カップ40よりも外側の待機位置との間で円弧状に移動する。
【0063】
ノズル60およびノズル65にも、少なくとも純水を含む複数種の処理液が供給されるように構成されており、処理位置にてスピンチャック20に保持された基板Wの上面に処理液を吐出する。なお、ノズル60およびノズル65の少なくとも一方は、純水などの洗浄液と加圧した気体とを混合して液滴を生成し、その液滴と気体との混合流体を基板Wに噴射する二流体ノズルであってもよい。また、洗浄処理ユニット1に設けられるノズル数は3本に限定されるものではなく、1本以上であればよい。
【0064】
ノズル30、ノズル60およびノズル65各々を、円弧状に移動させることは必須ではない。たとえば、直道駆動部を設けることによって、ノズルを直線移動させてもよいし、周回してもよい。
【0065】
回転軸24の内側を挿通するようにして鉛直方向に沿って、下面処理液ノズル28が設けられている。下面処理液ノズル28の上端開口は、スピンチャック20に保持された基板Wの下面中央に対向する位置に形成されている。下面処理液ノズル28にも複数種の処理液が供給されるように構成されている。下面処理液ノズル28から吐出された処理液は、スピンチャック20に保持された基板Wの下面に着液する。
【0066】
スピンチャック20を取り囲む処理カップ40は、互いに独立して昇降可能な内カップ41、中カップ42および外カップ43を備えている。内カップ41は、スピンチャック20の周囲を取り囲み、スピンチャック20に保持された基板Wの中心を通る回転軸線CXに対してほぼ回転対称となる形状を有する。この内カップ41は、平面視円環状の底部44と、底部44の内周縁から上方に立ち上がる円筒状の内壁部45と、底部44の外周縁から上方に立ち上がる円筒状の外壁部46と、内壁部45と外壁部46との間から立ち上がり、上端部が滑らかな円弧を描きつつ中心側(スピンチャック20に保持される基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる第1案内部47と、第1案内部47と外壁部46との間から上方に立ち上がる円筒状の中壁部48とを一体的に備えている。
【0067】
内壁部45は、内カップ41が最も上昇された状態で、カバー部材23と鍔状部材25との間に適当な隙間を保って収容されるような長さに形成されている。中壁部48は、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、中カップ42の後述する第2案内部52と処理液分離壁53との間に適当な隙間を保って収容されるような長さに形成されている。
【0068】
第1案内部47は、滑らかな円弧を描きつつ中心側(基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる上端部47bを有する。また、内壁部45と第1案内部47との間は、使用済みの処理液を集めて廃棄するための廃棄溝49とされている。第1案内部47と中壁部48との間は、使用済みの処理液を集めて回収するための円環状の内側回収溝50とされている。さらに、中壁部48と外壁部46との間は、内側回収溝50とは種類の異なる処理液を集めて回収するための円環状の外側回収溝51とされている。
【0069】
廃棄溝49には、この廃棄溝49に集められた処理液を排出するとともに、廃棄溝49内を強制的に排気するための図示省略の排気液機構が接続されている。排気液機構は、たとえば、廃棄溝49の周方向に沿って等間隔で4つ設けられている。また、内側回収溝50および外側回収溝51には、内側回収溝50および外側回収溝51にそれぞれ集められた処理液を基板処理装置100の外部に設けられた回収タンクに回収するための回収機構(いずれも図示省略)が接続されている。
【0070】
なお、内側回収溝50および外側回収溝51の底部は、水平方向に対して微少角度だけ傾斜しており、その最も低くなる位置に回収機構が接続されている。これにより、内側回収溝50および外側回収溝51に流れ込んだ処理液が円滑に回収される。
【0071】
中カップ42は、スピンチャック20の周囲を取り囲み、スピンチャック20に保持された基板Wの中心を通る回転軸線CXに対してほぼ回転対称となる形状を有する。この中カップ42は、第2案内部52と、この第2案内部52に連結された円筒状の処理液分離壁53とを有する。
【0072】
第2案内部52は、内カップ41の第1案内部47の外側において、第1案内部47の下端部と同軸円筒状である下端部52aと、下端部52aの上端から滑らかな円弧を描きつつ中心側(基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる上端部52bと、上端部52bの先端部を下方に折り返して形成される折り返し部52cとを有する。下端部52aは、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、第1案内部47と中壁部48との間に適当な隙間を保って内側回収溝50内に収容される。また、上端部52bは、内カップ41の第1案内部47の上端部47bと上下方向に重なるように設けられ、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、第1案内部47の上端部47bに対してごく微小な間隔を保って近接する。折り返し部52cは、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、折り返し部52cが第1案内部47の上端部47bの先端と水平方向に重なる。
【0073】
第2案内部52の上端部52bは、下方ほど肉厚が厚くなるように形成されている。処理液分離壁53は、上端部52bの下端外周縁部から下方に延びるように設けられた円筒形状を有する。処理液分離壁53は、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、中壁部48と外カップ43との間に適当な隙間を保って外側回収溝51内に収容される。
【0074】
外カップ43は、スピンチャック20に保持された基板Wの中心を通る回転軸線CXに対してほぼ回転対称となる形状を有する。外カップ43は、中カップ42の第2案内部52の外側において、スピンチャック20を取り囲む。この外カップ43は、第3案内部としての機能を有する。外カップ43は、第2案内部52の下端部52aと同軸円筒状をなす下端部43aと、下端部43aの上端から滑らかな円弧を描きつつ中心側(基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる上端部43bと、上端部43bの先端部を下方に折り返して形成される折り返し部43cとを有する。
【0075】
下端部43aは、内カップ41と外カップ43とが最も近接した状態で、中カップ42の処理液分離壁53と内カップ41の外壁部46との間に適当な隙間を保って外側回収溝51内に収容される。上端部43bは、中カップ42の第2案内部52と上下方向に重なるように設けられ、中カップ42と外カップ43とが最も近接した状態で、第2案内部52の上端部52bに対してごく微小な間隔を保って近接する。中カップ42と外カップ43とが最も近接した状態で、折り返し部43cが第2案内部52の折り返し部52cと水平方向に重なる。
【0076】
内カップ41、中カップ42および外カップ43は互いに独立して昇降可能とされている。すなわち、内カップ41、中カップ42および外カップ43各々には個別に昇降機構(図示省略)が設けられており、それによって別個独立して昇降される。このような昇降機構としては、たとえば、ボールネジ機構またはエアシリンダなどの公知の種々の機構を採用することができる。
【0077】
仕切板15は、処理カップ40の周囲においてチャンバー10の内側空間を上下に仕切るように設けられている。仕切板15は、処理カップ40を取り囲む1枚の板状部材であってもよいし、複数の板状部材をつなぎ合わせたものであってもよい。また、仕切板15には、厚さ方向に貫通する貫通孔や切り欠きが形成されていても良く、本実施の形態ではノズル30、ノズル60およびノズル65のノズル基台33、ノズル基台63およびノズル基台68を支持するための支持軸を通すための貫通穴が形成されている。
【0078】
仕切板15の外周端は、チャンバー10の側壁11に連結されている。また、仕切板15の処理カップ40を取り囲む外縁部は、外カップ43の外径よりも大きな径の円形状となるように形成されている。よって、仕切板15が外カップ43の昇降の障害となることはない。
【0079】
また、チャンバー10の側壁11の一部であり、かつ、床壁13の近傍には、排気ダクト18が設けられている。排気ダクト18は、図示省略の排気機構に連通接続されている。FFU14から供給されてチャンバー10内を流下した清浄空気のうち、処理カップ40と仕切板15との間を通過した空気は、排気ダクト18から装置外に排出される。
【0080】
図4は、基板Wが他の方法によって保持される場合の、スピンチャック20Aの構成の例を示す断面図である。
【0081】
図4に例が示されるように、複数のチャックピン26Aおよび図示しない複数の支持ピンによって基板Wの外縁部および下面が補助的に支持されるが、本実施の形態では厚さがたとえば100μmである極めて薄い基板Wを保持するため、回転時に基板Wが変形したり、最悪の場合には破損するおそれがある。このため、以下のようにして、主にベルヌーイ効果によって基板Wの中心部を非接触で吸引して基板Wを保持する。
【0082】
複数のチャックピン26Aが基板Wの外縁部を把持し、搬送ロボットが基板Wの吸着保持を解除するのと同時に、気体バルブ(図示せず)が開放されて気体供給機構(図示せず)から気体流路155に窒素ガスが送給される。気体流路155は、その先端において液流路154に合流してノズルヘッド150の吐出口156に連通している。よって、気体流路155に供給された窒素ガスはノズルヘッド150の吐出口156から噴出されることとなる。
【0083】
ここで、ノズルヘッド150は、円筒状の管部の上端にフランジ部152を設けて構成される。フランジ部152は、スピンベース21Bの保持面21aに突設される。
【0084】
フランジ部152の上面は、平坦な吸引面153とされている。ノズルヘッド150は、吸引面153が水平方向に沿うようにスピンベース21Bに設けられる。すなわち、ノズルヘッド150の吸引面153は、スピンベース21Bの保持面21aと平行である。
【0085】
また、ノズルヘッド150はスピンベース21Bの保持面21aの中央部に設けられており、ノズルヘッド150の吸引面153は複数のチャックピン26Aによって外縁部を把持される基板Wの中心部に対向する。
【0086】
吐出口156は、複数のチャックピン26Aによって把持される基板Wの中心に対向する位置に形成されているため、吐出口156から噴出された窒素ガスは当該基板Wの中心に吹き付けられる。これにより、以下に説明されるように、基板Wのうちの吸引面153と対向する領域をベルヌーイ効果によって吸引面153に非接触で吸引している。なお、この段階では処理液の吐出は行われていない。
【0087】
図4に示すように、ノズルヘッド150の吐出口156から基板Wの中心に吹き付けられた窒素ガスは、吸引面153と基板Wの下面との間の空間を高速で流れる。この窒素ガス流の方向は、吸引面153および基板Wの下面と平行である。液流路154は、鉛直方向に形成されているので、液流路154内では窒素ガスは真上向きに流れ、吐出口156から出ると吸引面153と基板Wの下面との間を水平方向に流れるように流れ向きを変更することになる。この際、吐出口156近傍において液流路154が上方の吐出口156に向かって先端部側が大きくなる逆円錐面154aに形成されているので、吐出口156近傍において窒素ガスの流れは逆円錐面154aに沿って真上向きから斜め上向きに方向を変えることとなり、上述した流れ向きの変更が円滑におこなわれ、良好な吸引力が得られる。なお、吸引面153と基板Wの下面との間隔d2は、0.5mm程度である。
【0088】
基板Wの下面とノズルヘッド150の吸引面153との間の狭い空間を窒素ガスが高速で流れると、当該空間の圧力が減少して大気圧によって基板Wの中心部が吸引面153に吸引される。ただし、基板Wと吸引面153との間には窒素ガスが流れているため、基板Wが吸引面153に接触することはない。すなわち、吐出口156から窒素ガスを噴出することにより、図4の矢印AR6で示されるように、複数のチャックピン26Aによって外縁部を把持される基板Wのうちの吸引面153と対向する領域が、ベルヌーイ効果によって吸引面153に非接触で吸引されるのである。このように、複数のチャックピン26Aによる基板Wの外縁部における機械的把持に加えて、基板Wの中心部をベルヌーイ効果によってノズルヘッド150の吸引面153に非接触で吸引することにより、基板Wを回転させたときにも基板Wの変形を抑制して破損を防止することができる。
【0089】
次に、スピンモータ(図示せず)によってスピンベース21Bおよびそれに保持された基板Wの回転を開始する。スピンベース21Bの回転力はチャックピン26Aおよび支持ピンを介して基板Wに伝達される。また、回転時における基板Wの水平方向の位置ずれは複数のチャックピン26Aによって規制されている。そして、ノズル30から基板Wの上面に薬液を吐出しての薬液処理、ノズル30およびノズルヘッド150の双方から基板Wの上面および下面に純水を吐出する純水リンス処理、基板Wを高速回転させての振り切り乾燥処理が続けて行われる。処理液を使用しての液処理を行うときには、遠心力によってスピンベース21Bおよび基板Wから飛散した処理液は、処理カップ40によって回収する。
【0090】
一連の薬液処理、純水リンス処理、乾燥処理において、ノズルヘッド150の吐出口156からは常に窒素ガスが噴出され続け、ベルヌーイ効果による基板W中心部の非接触吸引が継続して実行される。ここで、少なくとも純水リンス処理を行うときには、ノズル30のみならず、下面側のノズルヘッド150からも処理液としての純水が吐出される。つまり、ノズルヘッド150からは窒素ガスと処理液とが同時に吐出されるのである。
【0091】
純水リンス処理を行うときには、ノズル30および液流路154に処理液が送給される。ノズル30に供給された処理液はノズル30から回転する基板Wの上面に吐出される。一方、液流路154に供給された処理液は、ノズルヘッド150の吐出口156から基板Wの下面に吐出される。このときに、吐出口156の近傍において気体流路155の先端が液流路154に合流しているため、当該合流点にて気体流路155から送給された窒素ガスと液流路154を流れる処理液とが混合され、吐出口156からはその窒素ガスと処理液との混合流体が吐出される。
【0092】
吐出口156から混合流体が吐出された場合であっても、基板Wの下面とノズルヘッド150の吸引面153との間の空間を窒素ガスが流れており、基板Wが把持されたまま基板Wの下面と吸引面153との位置関係は維持される。これは次の作用によるものと推測される。
【0093】
すなわち、当該空間に液体である処理液も流れることによって、基板Wの中心部に下方から押し上げようとする力が作用する可能性がある。ここで、従来よりの典型的なベルヌーイチャックであれば、処理液によって基板Wに押し上げようとする力が作用すると容易に基板Wが押し上げられてチャック面と基板Wとの間隔が拡がり、その結果ベルヌーイ効果が喪失されることが考えられる。
【0094】
これに対し、本実施の形態では、基板Wの外縁部が複数のチャックピン26Aによって機械的に把持されてベルヌーイ効果が残存していることと相まって、処理液の吐出によって基板Wの中心部に下方から押し上げようとする力が作用した場合であっても、基板Wが容易に押し上げられることはなく、基板Wの下面と吸引面153との位置関係は維持されることとなる。これにより、吐出口156から窒素ガスと処理液とを同時に吐出した場合であっても、基板Wの非接触吸引を維持しつつ、基板Wの下面に処理液を供給して液処理を行うことができる。なお、薬液処理および乾燥処理時には、ノズルヘッド150の吐出口156から窒素ガスのみが噴出されるため、ベルヌーイ効果によって基板Wの中心部が非接触吸引される。
【0095】
図5は、カメラ70、ノズル30および基板Wの位置関係を示す図である。カメラ70は、チャンバー10内であって仕切板15(図3を参照)よりも上方(すなわち、基板Wよりも上方)に設置されている。また、カメラ70は、基板Wの外周側の、基板Wとは平面視において重ならない位置に配置されている。また、カメラ70は、たとえば固体撮像素子のひとつであるCCDと、電子シャッター、レンズなどの光学系とを備える。
【0096】
ノズル30は、ノズル基台33の駆動によって、スピンチャック20に保持された基板Wの上方の処理区間PS1(図5の点線位置)と処理カップ40よりも外側の待機位置(図5の実線位置)との間で往復移動される。
【0097】
処理区間PS1は、ノズル30からスピンチャック20に保持された基板Wの上面に処理液を吐出して洗浄処理を行う区間である。ここでは、処理区間PS1は、スピンチャック20に保持された基板Wにおける一方側の縁部付近の第1端TE1と、その反対側の縁部付近の第2端TE2との間で、水平方向に延びる区間である。
【0098】
待機位置は、ノズル30が洗浄処理を行わないときに処理液の吐出を停止して待機する位置である。待機位置には、ノズル30の吐出ヘッド31(図3を参照)を収容する待機ポッドが設けられていてもよい。
【0099】
カメラ70は、その撮像視野に、少なくとも基板Wの外縁部が含まれる位置に設置されている。また、カメラ70は、基板Wの外縁部を含む撮像範囲で、基板Wの複数箇所について撮像する。
【0100】
本実施の形態では、図3および図5に示すように、基板W、さらには、処理区間PS1におけるノズル30を撮像する位置にカメラ70が設置される。よって、カメラ70は、基板Wの外縁部を含む撮像領域を撮像できる。
【0101】
図3に示すように、チャンバー10内であって仕切板15よりも上方の位置に、照明部71が設けられている。チャンバー10内が暗室である場合、カメラ70が撮像を行う際に照明部71が光を照射するように、制御部9が照明部71を制御してもよい。
【0102】
図6は、制御部9の機能ブロック図である。基板処理装置100に設けられた制御部9のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同一である。すなわち、制御部9は、後述するように、各種演算処理を行うCPUと、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるリードオンリーメモリ(read only memory、すなわち、ROM)、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるランダムアクセスメモリ(random access memory、すなわち、RAM)および制御用ソフトウェアまたはデータなどを記憶しておく磁気ディスクなどである記憶部とを備えて構成される。制御部9のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって、基板処理装置100の各動作機構が制御部9に制御され、基板処理装置100における処理が進行する。
【0103】
図6に示すエッジ抽出部90、判定部91およびコマンド送信部92は、制御部9のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって制御部9内に実現される機能処理部である。
【0104】
エッジ抽出部90は、カメラ70から入力される複数の画像データ間の比較によって得られる差分画像から、基板Wのエッジを抽出する。
【0105】
判定部91は、エッジ抽出部90によって抽出されたエッジに基づいて、基板Wの保持状態を判定する。
【0106】
コマンド送信部92は、基板Wを処理するための各種条件が記述されたレシピに従って、コマンド(制御情報)を出力することによって、洗浄処理ユニット1の各要素を動作させる。具体的には、コマンド送信部92は、ノズル30、ノズル60およびノズル65にコマンドを出力して、ノズル基台33、ノズル基台63およびノズル基台68に内蔵された駆動源(モータ)を動作させる。たとえば、コマンド送信部92がノズル30に対して処理区間PS1の第1端TE1に移動させるコマンドを送信すると、ノズル30が待機位置から第1端TE1に移動する。さらに、コマンド送信部92がノズル30に対して処理区間PS1の第2端TE2に移動させるコマンドを送信すると、ノズル30が第1端TE1から第2端TE2に移動する。ノズル30からの処理液の吐出も、コマンド送信部92からのコマンド送信に応じて行われるようにしてもよい。
【0107】
また、制御部9には、表示部95、入力部96および複数の洗浄処理ユニット1が接続されている。表示部95は、制御部9からの画像信号に応じて各種情報を表示する。入力部96は、制御部9に接続されたキーボードおよびマウスなどの入力デバイスで構成されており、操作者が制御部9に対して行う入力操作を受け付ける。複数の洗浄処理ユニット1は、コマンド送信部92から送信される各種コマンド(制御情報)に基づいて、それぞれの洗浄処理ユニット1における各要素を動作させる。
【0108】
図7は、図6に例が示された制御部9を実際に運用する場合のハードウェア構成を概略的に例示する図である。
【0109】
図7では、図6中のエッジ抽出部90、判定部91およびコマンド送信部92を実現するためのハードウェア構成として、演算を行う処理回路1102Aと、情報を記憶することができる記憶装置1103とが示される。
【0110】
処理回路1102Aは、たとえば、CPUなどである。記憶装置1103は、たとえば、ハードディスクドライブ(Hard disk drive、すなわち、HDD)、RAM、ROM、フラッシュメモリなどのメモリ(記憶媒体)である。
【0111】
<基板処理装置の動作について>
基板処理装置100における基板Wの通常の処理は、順に、主搬送ロボット103がインデクサ102から受け取った処理対象の基板Wを各洗浄処理ユニット1に搬入する工程、当該洗浄処理ユニット1が基板Wに基板処理を行う工程、および、主搬送ロボット103が当該洗浄処理ユニット1から処理済みの基板Wを搬出してインデクサ102に戻す工程を含む。
【0112】
次に、図8を参照しつつ、各洗浄処理ユニット1における典型的な基板Wの基板処理のうちの洗浄処理および乾燥処理の手順について説明する。なお、図8は、本実施の形態に関する基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
【0113】
まず、基板Wの表面に薬液を供給して所定の薬液処理を行う(ステップST01)。その後、純水を供給して純水リンス処理を行う(ステップST02)。
【0114】
さらに、基板Wを高速回転させることによって純水を振り切り、それによって基板Wを乾燥させる(ステップST03)。
【0115】
洗浄処理ユニット1が基板処理を行う際、スピンチャック20が基板Wを保持するとともに、処理カップ40が昇降動作を行う。
【0116】
洗浄処理ユニット1が薬液処理を行う場合、たとえば外カップ43のみが上昇し、外カップ43の上端部43bと中カップ42の第2案内部52の上端部52bとの間に、スピンチャック20に保持された基板Wの周囲を取り囲む開口が形成される。この状態で基板Wがスピンチャック20とともに回転され、ノズル30および下面処理液ノズル28から基板Wの上面および下面に薬液が供給される。供給された薬液は、基板Wの回転による遠心力によって基板Wの上面および下面に沿って流れ、やがて基板Wの外縁部から側方に向けて飛散される。これにより、基板Wの薬液処理が進行する。回転する基板Wの外縁部から飛散した薬液は外カップ43の上端部43bによって受け止められ、外カップ43の内面を伝って流下し、外側回収溝51に回収される。
【0117】
洗浄処理ユニット1が純水リンス処理を行う場合、たとえば、内カップ41、中カップ42および外カップ43の全てが上昇し、スピンチャック20に保持された基板Wの周囲が内カップ41の第1案内部47によって取り囲まれる。この状態で基板Wがスピンチャック20とともに回転され、ノズル30および下面処理液ノズル28から基板Wの上面および下面に純水が供給される。供給された純水は基板Wの回転による遠心力によって基板Wの上面および下面に沿って流れ、やがて基板Wの外縁部から側方に向けて飛散される。これにより、基板Wの純水リンス処理が進行する。回転する基板Wの外縁部から飛散した純水は第1案内部47の内壁を伝って流下し、廃棄溝49から排出される。なお、純水を薬液とは別経路にて回収する場合には、中カップ42および外カップ43を上昇させ、中カップ42の第2案内部52の上端部52bと内カップ41の第1案内部47の上端部47bとの間に、スピンチャック20に保持された基板Wの周囲を取り囲む開口を形成するようにしてもよい。
【0118】
洗浄処理ユニット1が振り切り乾燥処理を行う場合、内カップ41、中カップ42および外カップ43の全てが下降し、内カップ41の第1案内部47の上端部47b、中カップ42の第2案内部52の上端部52bおよび外カップ43の上端部43bのいずれもがスピンチャック20に保持された基板Wよりも下方に位置する。この状態で基板Wがスピンチャック20とともに高速回転され、基板Wに付着していた水滴が遠心力によって振り切られ、乾燥処理が行われる。
【0119】
<保持状態判定について>
以下においては、スピンチャック20に保持された基板Wの複数箇所をカメラ70を用いて撮像し、得られた複数の画像データ間の差分画像に基づいて、基板Wの保持状態判定を行う方法について説明する。当該判定は、主に、制御部9におけるエッジ抽出部90および判定部91によって行われる。当該方法によれば、正常に保持された基板を別途撮像して基準となる画像を登録しておく必要がない。
【0120】
本実施の形態では、回転している基板Wの特定箇所を、固定されたカメラ70で撮像することによって、基板Wの複数箇所を撮像する。ただし、基板Wが回転していることは必須ではなく、また、基板Wを撮像するカメラが複数あってもよい。
【0121】
図9および図10は、回転している基板Wの画像フレームの例を示す図である。図9および図10における画像フレームは、基板Wの外縁部に沿う範囲を含む撮像範囲に対応している。なお、画像フレームの撮像範囲(または、撮像範囲において画像データ間の比較に用いられる領域であるターゲット領域)は、基板Wの外縁部に沿う円弧状(アーチ状)であることが望ましい。また、画像フレームの撮像範囲は、基板Wの少なくとも一部の外縁部を含んでいればよく、基板Wの外縁部の全周を含む場合であってもよい。また、画像フレームの撮像範囲は、カメラ70から見て手前側の基板Wの外縁部であってもよいし、奥側の基板Wの外縁部であってもよい。
【0122】
また、図9図10とでは、基板Wの撮像範囲が一部重複しているが、複数の画像フレーム間で、基板Wの撮像される範囲が重複していなくともよい。
【0123】
また、図9図10とでは、スピンチャック20に保持された基板Wが回転していることによって、チャックピン26の位置が大きく異なっている。
【0124】
図11は、図9に例が示された画像フレームと、図10に例が示された画像フレームとの差分画像である。図11においては、チャックピン差分26Xと、外縁部差分200とが示されている。
【0125】
図9および図10におけるチャックピン26は、基板Wの回転によって位置が大きく異なる。そのため、その差分がチャックピン差分26Xとして示されている。
【0126】
また、図11においては、基板Wの回転によって生じた外縁部のゆらぎ(偏心を含む)が、外縁部差分200として示されている。
【0127】
なお、図3および図5に示されたように、本実施の形態におけるカメラ70は、基板Wの外周側に位置しているため、差分画像において、基板Wの鉛直方向のゆらぎが外縁部差分200として示される。また、図3および図5に示されたように、本実施の形態におけるカメラ70は、基板Wの上方にも位置しているため、差分画像において、基板Wの水平方向のゆらぎ(たとえば、偏心)が外縁部差分200として示される。
【0128】
次に、図11に例が示された差分画像に基づいてエッジ抽出部90がエッジ抽出を行うことによって、差分画像に示される外縁部差分200の基板周方向の長さを抽出する。
【0129】
図12は、図11に例が示された差分画像に基づいて、Cannyエッジ抽出を行った結果を示す図である。図12に例が示されるように、抽出されたエッジ201は、差分画像においてゆらぎが生じた外縁部に沿って延びる部分と、チャックピン26に対応する成分とを含んでいる。
【0130】
上記のエッジ抽出によって得られるエッジ201の基板周方向の長さは、複数の画像フレーム(すなわち、図9および図10)間で生じた基板Wの外縁部のゆらぎの程度を反映する(詳細については、後述)。すなわち、回転する基板Wの外縁部が大きくゆらぐほど、エッジ201の基板周方向の長さは長くなる。よって、判定部91は、エッジ201の長さに基づいて、スピンチャック20に保持された基板Wの保持状態を判定することができる。
【0131】
ここで、エッジ201の基板周方向の長さは、エッジ201の、基板周方向に沿って連続するピクセル数に基づいて算出される。
【0132】
図12に例が示された場合では、エッジ201の長さは撮像範囲の両端に達している。このような場合は、回転する基板Wの外縁部のゆらぎが大きいと考えられるため、基板Wが正常に保持されていない(保持異常)と判定することができる。
【0133】
図13は、差分画像に基づいてCannyエッジ抽出を行った結果の他の例を示す図である。
【0134】
図13に例が示された場合では、エッジ201の長さは撮像範囲の一部に留まっている。このような場合は、回転する基板Wの外縁部のゆらぎが十分に小さいと考えられるため、基板Wが正常に保持されている(保持正常)と判定することができる。
【0135】
図14は、図12または図13のように抽出されたエッジの基板周方向の長さの、各画像フレームまでの最大値を示す図である。図14において、縦軸はエッジの基板周方向の長さの最大値[ピクセル]を示し、横軸は画像フレーム数を示す。
【0136】
図14においては、保持正常に対応するサンプル1種類(実線)と、保持異常に対応するサンプル4種類(太い点線、細い点線、太い1点鎖線、細い1点鎖線)とが、それぞれ示されている。
【0137】
撮像される基板Wの回転速度は、たとえば、500rpmとし、画像フレームを取得する間隔は、たとえば、60fpsとする。しかしながら、基板Wの回転速度に対応して、基板Wの異なる外縁部が撮像範囲に含まれるように画像フレームを取得する間隔が調整されてもよいし、基板Wの回転速度とは無関係に画像フレームを取得する間隔が調整されてもよいし、画像フレームを取得する間隔がランダムであってもよい。
【0138】
また、本実施の形態では、差分画像は、スピンチャック20に保持された基板Wについて最初に取得された画像フレームを基準として、その後順次取得される画像フレームとの比較によって作成されるものとするが、基準とする画像フレームは、最初に取得された画像フレームに限られるものではない。
【0139】
図14に例が示されるように、各画像フレームまでのエッジ201の基板周方向の長さの最大値(以下、単にエッジ201の最大値とも称する)を保持していくと、基板Wが保持異常(基板Wの外縁部のゆらぎが大きい)である場合には、エッジ201の最大値が、撮像範囲における基板周方向の最大ピクセル数(たとえば、600ピクセル)に達している。
【0140】
一方で、基板Wが保持正常(基板Wの外縁部のゆらぎが小さい)である場合には、エッジ201の最大値が、撮像範囲における基板周方向の最大ピクセル数の一部(本実施の形態では、半分程度)に抑えられていることが分かる。すなわち、エッジ201の最大値が、保持された基板Wの外縁部のゆらぎの程度を反映していることが分かる。
【0141】
よって、判定部91は、差分画像に基づいて抽出されるエッジ201の長さに基づいて、たとえば、エッジ201の最大値が所定のしきい値よりも大きくなった場合に、基板Wの保持異常が生じているとして、基板Wの保持状態を判定することができる。
【0142】
<保持異常の例について>
上記の保持異常が生じる場合の例としては、複数のチャックピン26のうちの少なくとも1つが適切に基板Wを挟持していない場合(挟持していない場合、または、スピンベース21に平行でない姿勢で基板Wを挟持してしまっている場合などを含む)、または、基板Wが割れるまたは一部欠けることによってチャックピン26が適切に機能しない場合(チャックピン26に対応する箇所に基板Wが位置していない場合、または、スピンベース21に平行でない姿勢で基板Wを挟持してしまっている場合などを含む)などが想定される。
【0143】
<保持状態判定のタイミングについて>
図15は、基板Wが正常に保持されている場合の、差分画像に基づいて抽出されるエッジの基板周方向の長さの最大値を、基板処理装置100のそれぞれの動作において測定した場合の例を示す図である。図15においては、縦軸はエッジの基板周方向の長さの最大値に相当する評価値であり、横軸は画像フレーム数である。
【0144】
図15に例が示されるように、基板処理装置の動作工程としては、主搬送ロボット103がインデクサ102から受け取った処理対象の基板Wを各洗浄処理ユニット1に搬入する搬入工程1001と、基板Wをスピンチャック20に挟持するチャック工程1002と、基板処理のために基板Wの回転を開始する回転開始工程1003と、処理カップ40を上昇させるカップ上昇工程1004と、基板Wを洗浄する洗浄工程1005(図8におけるステップST01、ステップST02およびステップST03に対応)と、処理カップ40を下降させるカップ下降工程1006と、基板Wをスピンチャック20から開放する開放工程1007と、主搬送ロボット103が洗浄処理ユニット1から処理済みの基板Wを搬出する搬出工程1008とが示されている。
【0145】
そのうち、回転開始工程1003と、開放工程1007とでは、相対的に評価値が低く、基板Wの外縁部のゆらぎが小さいことが分かる。これらの工程のうち回転開始工程1003は、カップ上昇工程1004、洗浄工程1005およびカップ下降工程1006からなる基板処理の前の工程であり、洗浄工程1005において基板Wの回転がさらに加速されて高速回転となることを考慮すると、保持異常であるために基板Wが飛散するなどの不具合が生じないようにするためには、基板Wの回転が加速中であり、かつ、基板Wの外縁部のゆらぎが小さいこの回転開始工程1003で保持状態判定を行うことが望ましい。保持状態判定を行うタイミングを最適化することによって、常時監視する場合よりも制御部9の負荷を軽減することもできる。
【0146】
なお、基板処理中(たとえば、図8のステップST03に対応する乾燥処理の前)などに保持状態判定を行ってもよい。図8のステップST03に対応する乾燥処理の前に保持状態判定を行う場合には、少なくとも、基板Wが乾燥のための回転速度に到達する前の加速中の状態で行うことが望ましい。
【0147】
回転開始工程1003において保持状態判定を行い、基板Wの保持状態が正常である場合は、次のカップ上昇工程1004に進む。一方で、基板Wの保持状態が正常でない場合は、基板Wの回転を停止し、必要に応じて警報を発報する。
【0148】
ここで、警報は、制御部9の制御によって表示部95に表示させることができるが、たとえば、画面における識別可能な強調表示(点滅表示など)、または、音による警報が行われてもよい。
【0149】
<以上に記載された実施の形態によって生じる効果について>
次に、以上に記載された実施の形態によって生じる効果の例を示す。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施の形態に例が示された具体的な構成に基づいて当該効果が記載されるが、同様の効果が生じる範囲で、本願明細書に例が示される他の具体的な構成と置き換えられてもよい。
【0150】
以上に記載された実施の形態によれば、基板処理装置は、保持部と、撮像部と、抽出部と、判定部91とを備える。ここで、保持部は、たとえば、スピンチャック20などに対応するものである。また、撮像部は、たとえば、カメラ70などに対応するものである。また、抽出部は、たとえば、エッジ抽出部90などに対応するものである。スピンチャック20は、チャックピン26によって基板Wを保持する。カメラ70は、保持された基板Wの外縁部を含む撮像範囲を複数箇所で撮像する。そして、カメラ70は、基板Wの複数の画像データを出力する。エッジ抽出部90は、複数の画像データ間の差分画像から、基板Wの外縁部を抽出する。判定部91は、差分画像における基板Wの外縁部に基づいて、基板Wの保持状態を判定する。
【0151】
また、以上に記載された実施の形態によれば、基板処理装置は、基板Wを保持するスピンチャック20と、保持された基板Wの外縁部を含む撮像範囲を複数箇所で撮像し、かつ、基板Wの複数の画像データを出力するカメラ70とを備える。また、基板処理装置は、プログラムを実行する処理回路1102Aと、実行されるプログラムを記憶する記憶装置1103とを備える。そして、処理回路1102Aがプログラムを実行することによって、以下の動作が実現される。
【0152】
すなわち、複数の画像データ間の差分画像から、基板Wの外縁部が抽出される。そして、差分画像における基板Wの外縁部に基づいて、基板Wの保持状態が判定される。
【0153】
このような構成によれば、基板Wの複数箇所における画像データを用いて差分画像を作成し、さらに、差分画像から基板Wの外縁部を抽出することによって、差分画像における当該外縁部の長さなどから基板Wの保持状態を判定することができる。よって、正常に保持された基板Wの画像データを基準画像データとして保持していなくとも、基板Wの保持状態を判定することができる。
【0154】
なお、上記の構成に本願明細書に例が示された他の構成を適宜追加した場合、すなわち、上記の構成としては言及されなかった本願明細書中の他の構成が適宜追加された場合であっても、同様の効果を生じさせることができる。
【0155】
また、以上に記載された実施の形態によれば、判定部91は、差分画像における外縁部の長さに基づいて、基板Wの保持状態を判定する。このような構成によれば、差分画像における基板Wの外縁部の長さが長い場合に、基板Wの保持状態が異常状態(すなわち、保持異常)であると判定することができる。
【0156】
また、以上に記載された実施の形態によれば、判定部91は、差分画像における外縁部の長さの最大値に基づいて、基板Wの保持状態を判定する。このような構成によれば、差分画像における基板Wの外縁部の長さの最大値がしきい値よりも大きい場合に、基板Wが保持異常であると判定することができる。
【0157】
また、以上に記載された実施の形態によれば、カメラ70は、保持された基板Wの外縁部に沿って延びるアーチ状の撮像範囲を撮像する。このような構成によれば、外縁部の長さを効率的に撮像範囲に含めることができる。また、外縁部に沿って延びる撮像範囲を有することによって、基板Wの外縁部を含んで直線状に生じる基板Wの割れ、または、基板Wの外縁部の欠けを効果的に発見し、高い精度で保持状態を判定することができる。
【0158】
また、以上に記載された実施の形態によれば、カメラ70は、保持された基板Wを基板Wの上方から撮像する。このような構成によれば、偏心などによって基板Wが保持異常となっている場合に、高い精度で判定することができる。
【0159】
また、以上に記載された実施の形態によれば、カメラ70は、保持された基板Wを基板Wの外周側から撮像する。このような構成によれば、割れまたはゆらぎなどによって基板Wが保持異常となっている場合に、高い精度で判定することができる。また、基板Wの上方かつ外周側から撮像する場合には、割れまたはゆらぎに加えて、偏心も同時に判定することができる。
【0160】
また、以上に記載された実施の形態によれば、基板処理装置は、判定部91において基板Wの保持状態が異常状態(すなわち、保持異常)と判定された場合に、警報を発報する発報部を備える。ここで、発報部は、たとえば、表示部95などに対応するものである。このような構成によれば、基板Wが保持異常である場合に、警報によって注意喚起することができる。
【0161】
以上に記載された実施の形態によれば、基板処理方法において、基板Wを保持し、かつ、回転させる。そして、回転している基板Wの外縁部を含む撮像範囲を複数箇所で撮像し、かつ、基板Wの複数の画像データを出力する。そして、複数の画像データ間の差分画像から、基板Wの外縁部を抽出する。そして、差分画像における基板Wの外縁部に基づいて、基板Wの保持状態を判定する。
【0162】
このような構成によれば、回転している基板Wの複数箇所における画像データを用いて差分画像を作成し、さらに、差分画像から基板Wの外縁部を抽出することによって、差分画像における外縁部の長さなどから基板Wの保持状態を判定することができる。
【0163】
なお、特段の制限がない場合には、それぞれの処理が行われる順序は変更することができる。
【0164】
なお、上記の構成に本願明細書に例が示された他の構成を適宜追加した場合、すなわち、上記の構成としては言及されなかった本願明細書中の他の構成が適宜追加された場合であっても、同様の効果を生じさせることができる。
【0165】
また、以上に記載された実施の形態によれば、基板Wの保持状態を判定する工程は、差分画像における外縁部の長さに基づいて、基板Wの保持状態を判定する工程である。このような構成によれば、差分画像における基板Wの外縁部の長さが長い場合に基板Wが保持異常であると判定することができる。
【0166】
また、以上に記載された実施の形態によれば、基板Wの保持状態を判定する工程は、差分画像における外縁部の長さの最大値に基づいて、基板Wの保持状態を判定する工程である。このような構成によれば、差分画像における基板Wの外縁部の長さの最大値がしきい値よりも大きい場合に、基板Wが保持異常であると判定することができる。
【0167】
また、以上に記載された実施の形態によれば、基板処理方法は、回転している基板Wを撮像する工程の後に、基板Wを処理する工程を備える。このような構成によれば、処理カップ40の昇降を含む基板処理を行う前に、ゆらぎ、偏心または割れなどによって基板Wが保持異常となっているか否かを判定することができる。よって、基板処理における基板Wの高速回転が行われる前に保持状態の判定を行うことができるため、基板処理において、基板Wの保持状態が正常でないために基板Wが飛散するなどの不具合が生じることを抑制することができる。
【0168】
また、以上に記載された実施の形態によれば、基板処理方法は、回転している基板Wを撮像する工程の前に、基板Wを洗浄処理する工程を備える。そして、回転している基板Wを撮像する工程は、洗浄処理後で基板Wを乾燥処理する前に行われる工程である。このような構成によれば、乾燥処理を行う前に、薬液処理によって割れなどが生じて基板Wが保持異常となっているか否かを判定することができる。よって、乾燥処理における高速回転が行われる前に判定を行うことができるため、熱処理などによって基板Wの保持状態が正常でなくなった場合にも、基板処理後の乾燥処理において基板Wが飛散するなどの不具合が生じることを抑制することができる。また、基板処理の前の保持状態判定と合わせれば、洗浄処理の前後で、基板Wの保持状態が変化しているか否かを確認することもできる。
【0169】
また、以上に記載された実施の形態によれば、基板処理方法は、基板Wの保持状態を判定する工程において基板Wの保持状態が異常状態(すなわち、保持異常)であると判定された場合に、基板Wの回転を停止する工程を備える。このような構成によれば、基板Wが保持異常であると判定された場合に、直ちに基板Wの回転を停止することができるため、後の工程(たとえば、洗浄工程または乾燥工程など)において基板Wが飛散するなどの不具合が生じることを抑制することができる。
【0170】
<以上に記載された実施の形態の変形例について>
以上に記載された実施の形態では、それぞれの構成要素の材質、材料、寸法、形状、相対的配置関係または実施の条件などについても記載する場合があるが、これらはすべての局面においてひとつの例であって、本願明細書に記載されたものに限られることはないものとする。
【0171】
したがって、例が示されていない無数の変形例、および、均等物が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。たとえば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【0172】
また、以上に記載された実施の形態で記載されたそれぞれの構成要素は、ソフトウェアまたはファームウェアとしても、それと対応するハードウェアとしても想定され、その双方の概念において、それぞれの構成要素は「部」または「処理回路」(circuitry)などと称される。
【符号の説明】
【0173】
1 洗浄処理ユニット
9 制御部
10 チャンバー
11 側壁
12 天井壁
13 床壁
14 FFU
15 仕切板
18 排気ダクト
20,20A スピンチャック
21,21B スピンベース
21a 保持面
22 スピンモータ
23 カバー部材
24 回転軸
25 鍔状部材
26,26A チャックピン
26X チャックピン差分
28 下面処理液ノズル
30,60,65 ノズル
31 吐出ヘッド
32,62,67 ノズルアーム
33,63,68 ノズル基台
40 処理カップ
41 内カップ
42 中カップ
43 外カップ
43a,52a 下端部
43b,47b,52b 上端部
43c,52c 折り返し部
44 底部
45 内壁部
46 外壁部
47 第1案内部
48 中壁部
49 廃棄溝
50 内側回収溝
51 外側回収溝
52 第2案内部
53 処理液分離壁
70 カメラ
71 照明部
90 エッジ抽出部
91 判定部
92 コマンド送信部
95 表示部
96 入力部
100 基板処理装置
102 インデクサ
103 主搬送ロボット
150 ノズルヘッド
152 フランジ部
153 吸引面
154 液流路
154a 逆円錐面
155 気体流路
156 吐出口
200 外縁部差分
201 エッジ
332 モータ
1001 搬入工程
1002 チャック工程
1003 回転開始工程
1004 カップ上昇工程
1005 洗浄工程
1006 カップ下降工程
1007 開放工程
1008 搬出工程
1102A 処理回路
1103 記憶装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15