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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】周期的屈曲を行う環境チャンバ及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20230814BHJP
   G01N 3/32 20060101ALI20230814BHJP
   B64F 5/60 20170101ALI20230814BHJP
【FI】
G01N17/00
G01N3/32 E
B64F5/60
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019189989
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2020118670
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】16/223,285
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ, クリステン スミス
(72)【発明者】
【氏名】センデロス, ブルーノ サモラーノ
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン, デーヴィッド アダム
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-044682(JP,A)
【文献】特開昭59-214733(JP,A)
【文献】特開昭59-111042(JP,A)
【文献】特開2015-145866(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0143126(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
G01N 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料システムの材料性能を判定するための装置(100)であって、
屈曲、湿度、圧力、または温度のうちの1つ以上を制御するように構成されたコントローラ(138)と、
前記コントローラ(138)によって、湿度、圧力、または温度のうちの1つ以上を制御するように構成されたチャンバ(160)と、
前記材料システムを支持するように前記チャンバ(160)内に配置され、前記材料システムを屈曲させるように構成された顎部(124a)と、
前記チャンバ(160)内に配置され、断熱材料を含む外側筐体(136)と、
前記外側筐体(136)内に配置され、前記顎部(124a)を動作させるように構成されたモータまたはアクチュエータ(126)と、
第1の端部において前記外側筐体(136)と、且つ第2の端部において前記チャンバ(160)の第1の壁と連結された注入管(128)と、
第1の端部において前記外側筐体(136)と、且つ第2の端部において前記チャンバ(160)の前記第1の壁または第2の壁に連結された排出管(134)と、
第1のガス源(304)と第2のガス源(306)と、
を備え
前記外側筐体(136)は、前記モータまたは前記アクチュエータ(126)と連結された断熱プレート(302)を含み、前記第1のガス源(304)は、前記モータまたは前記アクチュエータ(126)の第1の部分にガスを供給し、前記第2のガス源(306)は、前記断熱プレート(302)の表面に沿って配置され、前記外側筐体(136)の表面(310)に配置された凹部(308)を通してガスを導入することによって、前記モータまたは前記アクチュエータ(126)の第2の部分にガスを供給し、前記第1のガス源(304)及び前記第2のガス源(306)のガスは、前記注入管(128)によって供給される、
材料システムの材料性能を判定するための装置(100)
【請求項2】
前記チャンバ(160)が、前記コントローラ(138)によって、湿度、圧力、及び温度のそれぞれを制御するように構成された、請求項1に記載の材料システムの材料性能を判定するための装置(100)。
【請求項3】
前記断熱材料がポリエチレンまたはガラス繊維である、請求項1または2に記載の材料システムの材料性能を判定するための装置(100)。
【請求項4】
前記断熱材料が前記モータまたは前記アクチュエータ(126)に直接連結されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の材料システムの材料性能を判定するための装置(100)。
【請求項5】
前記外側筐体(136)と前記顎部(124a)の間に配置されたプレート(146)をさらに備え、前記プレート(146)が断熱材料を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の材料システムの材料性能を判定するための装置(100)。
【請求項6】
前記顎部(124a)が断熱材料を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項7】
第1のブロック(404)及び第2のブロック(406)、
第1の端部において前記第1のブロック(404)と、且つ第2の端部において前記第2のブロック(406)と連結された第1のガイドロッド(408a)、並びに
第1の端部において前記第1のブロック(404)と、且つ第2の端部において前記第2のブロック(406)と連結された第2のガイドロッド(408b)
をさらに備え、
前記顎部(124a)が、前記顎部(124a)の第1の端部において前記第1のブロック(404)上に配置され、前記顎部(124a)の第2の端部において前記第2のブロック(406)上に配置される、請求項1からのいずれか一項に記載の材料システムの材料性能を判定するための装置(100)。
【請求項8】
配線(312)が、前記モータまたは前記アクチュエータ(126)と連結され、前記モータまたは前記アクチュエータ(126)と、前記コントローラ(138)との間、及び/または前記モータまたは前記アクチュエータ(126)と前記顎部(124a)との間の、電気連通を提供している、請求項1に記載の材料システムの材料性能を判定するための装置(100)。
【請求項9】
前記配線(312)は、1つ以上の断熱材料(314)で断熱されている、請求項8に記載の材料システムの材料性能を判定するための装置(100)。
【請求項10】
前記断熱材料(314)は、前記配線(312)の電気構成要素の周囲に配置された、ポチエチレン、断熱導電性テープ、及び/またはガラス繊維である、請求項9に記載の材料システムの材料性能を判定するための装置(100)。
【請求項11】
材料性能を判定するための方法であって、
0%から98%の相対湿度に材料システムを曝露すること、及び材料システム(500)をチャンバ(160)内で第1の温度で屈曲させることであって、前記チャンバ(160)が前記チャンバ(160)内に配置された外側筐体(136)、前記材料システムを支持するように前記チャンバ(160)内に配置され、前記材料システムを屈曲させるように構成された顎部(124a)、及び前記外側筐体(136)内に配置され、前記顎部(124a)を動作させるように構成されたモータまたはアクチュエータ(126)を備え、前記外側筐体(136)が断熱材料を含む、材料システム(500)を曝露すること及び材料システム(500)を屈曲させること
前記屈曲中に、第1の温度とは異なる第2の温度において前記モータまたはアクチュエータ(126)を作動させること、及び
前記外側筐体(136)にガスを供給することを含み、
前記外側筐体(136)にガスを供給することは、注入管(128)から第1のガス源(304)及び第2のガス源(306)にガスを供給することを含み、前記第1のガス源(304)は、前記モータまたは前記アクチュエータ(126)の第1の部分にガスを供給し、前記外側筐体(136)は、前記モータまたは前記アクチュエータ(126)に連結された断熱プレート(302)を含み、前記第2のガス源(306)は、前記断熱プレートの表面に沿って配置され、前記外側筐体(136)の表面(310)に配置された凹部(308)を通してガスを導入することによって、前記モータまたは前記アクチュエータ(126)の第2の部分にガスを供給する、材料性能を判定するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の諸態様は、概して、材料システムの動作性能を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機は、その運航の寿命にわたって、繰り返して過酷な条件を体験する。この繰り返される過酷な条件は、航空機の構成要素部品のうちのいくつかを劣化させる結果を招き得る。こうした劣化は、例えば、被覆破損、及び/または腐食の形態をとり得る。腐食は、航空機の構成要素の完全性と強度の低下に寄与し得る。具体的には、航空機の構成要素といった材料システムは、胴体もしくは外板のパネル、2枚の金属パネル間の被覆済みラップジョイント、または航空機外装の翼と胴体の組立部を含み得る。材料システムは、航空機が使用されている間に機械的ストレス及び化学的ストレスに曝露されるせいで、時間の経過に伴って腐食し得る。ある材料が航空機の材料システムとしての使用に適していると判定される前に、その材料システムの腐食傾向を判定することが、望ましくあり得る。しかし、航空機を実際に現実世界で使用している間のパネルといった航空機の材料システムの性能は、被覆及び/または腐食の試験データと相関しない可能性がある。例えば、温度、圧力、及び湿度の水準を上昇/下降させた際に材料システムが経験するであろう条件をシミュレートするために、地・空・地(GAG)チャンバが使用される。しかし、これらのチャンバは、チャンバのモータ及びアクチュエータの性能が低下するせいで、非常に寒冷な条件(例えば極低温)をシミュレートすることができない。このことは、低温・高湿度の条件において、特に該当する。なぜならば、GAGチャンバでは、極低温条件下において、チャンバのモータまたはアクチュエータの性能を実質的に低下させることなく、且つパネル屈曲器(flexer)自体の上に着霜させることなく実現できるのは、周囲湿度のみだからである。加えて、モータ/アクチュエータの機能性は、高温(例えば70°C以上)での動作中にもまた低下し得る。
【0003】
したがって、当該技術分野において、材料システムの動作性能を判定するために、制御された且つ正確な曝露、並びに被覆及び腐食検出のための、装置及び方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0004】
一態様においては、装置は、湿度、圧力、または温度のうちの1つ以上を制御するように構成されたチャンバ、及び材料システムを屈曲させるように構成された顎部を含む。チャンバは、チャンバ内に配置された筐体であって、断熱材料を有する筐体と、この筐体内に配置されたモータまたはアクチュエータを含む。チャンバは、第1の端部において筐体に、且つ第2の端部においてチャンバの第1の壁に連結された、注入管を含む。チャンバは、第1の端部において筐体に、且つ第2の端部においてチャンバの第1の壁または第2の壁に連結された、排出管をさらに含む。
【0005】
別の態様においては、材料性能を判定するための方法は、材料を0%から98%の相対湿度に曝露することと、チャンバ内で第1の温度において材料システムを屈曲させることであって、チャンバが、チャンバ内に配置された筐体及び筐体内に配置されたモータまたはアクチュエータを備える、材料システムを屈曲させることと、を含む。方法は、屈曲中、モータまたはアクチュエータを第1の温度とは異なる第2の温度で運転することを含む。
【0006】
本開示の上記の特徴が詳細に理解されるように、上記で簡単に要約したものよりもさらに詳細である本開示の説明が、諸態様を参照することによってなされてよい。これらの諸態様のうちのいくつかは、添付の図面中に例示されている。ただし、本開示は他の等しく有効な態様を認めるものであってよく、添付図面が、本開示の典型的な態様のみを例示していることと、したがって本開示の範囲を限定しているとみなすべきではないことは、留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一態様による、材料システムの被覆破損モード及び腐食関連破損モードを促進及び制御するための装置の上面断面図である。
図2】本開示の一態様による、材料システムの被覆破損モード及び/または腐食関連破損モードを促進及び制御するための装置の側面断面図である。
図3】本開示の一実施態様による、筐体の斜視図である。
図4】本開示の一態様による、周期的屈曲を実施するように構成された屈曲器の斜視図である。
図5】本開示の一実施態様による、材料システムの側面図である。
図6】本開示の一実施態様による、材料システムの側面図である。
図7A】本開示の一実施態様による、材料システムの平面図である。
図7B】本開示の一実施態様による、材料システムの平面図である。
図7C】本開示の一実施態様による、材料システムの平面図である。
図8】3つの設定点の間で循環する環境試験プロファイルに関する、「温度(摂氏)及びパーセント相対湿度」対「曝露時間(時)」のグラフである。3つの設定点は、35°C/95%RHの高温高湿条件に8時間、-54°Cの極低温(非制御の周囲湿度)に8時間、25°C/30%RHの低温乾燥条件に8時間である。
図9】氷点下温度における周期的試験に曝露された模擬ラップジョイントパネルに関する、「導電性被覆層のインピーダンス(Ohm)」対「経過時間(日)」のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
理解を容易にするため、複数の図に共通する同一の要素を指し示すのに、可能な場合には同一の参照番号を使用している。図面は縮尺どおりには描かれておらず、明確化するために簡略化されていることがある。一態様の要素及び特徴は、さらなる説明なしに他の態様に有利に組み込むことができると考えられる。
【0009】
本開示の様々な態様の説明は、例示を目的として提示されているものであり、網羅的であること、または開示された態様に限定されることを意図してはいない。記載した態様の範囲及び主旨から逸脱することのない多数の修正及び変形が、当業者には明らかであろう。本明細書で使用されている用語は、諸態様の原理や、市場に見られる技術に関する実際的応用もしくは技術的改善を最もよく解説するため、または本明細書に開示した諸態様を他の当業者にも理解可能にするために、選ばれたものである。
【0010】
本開示の諸態様は、概して、材料システムの動作性能を判定する装置及び方法に関する。材料システムは、航空機の構成要素であることができ、典型的には、金属といった基板と、基板上に配置された、エポキシといった1つ以上の被覆とを備える。材料システムの動作性能、例えば腐食または被覆インピーダンスを電気化学的に検出するため、材料システムの表面上または表面内に、電極対といった1つ以上の電極が配置される。材料システムの動作性能の判定は、材料システムが屈曲及び/または水分処理に曝露される前、曝露される間(その場で)、または曝露された後に、作業人員または製造業者によって、研究室内または航空機上において、実施され得る。例えば、材料システムは、材料システムの屈曲中及び湿気への曝露中に、材料システムの動作性能を判定するのを補助すべく、材料システムの1つ以上の表面のインピーダンスデータを提供するため、分光計と電気連通していることができる。
【0011】
一態様では、装置は、湿度、圧力、または温度といった、1つ以上の環境パラメータを制御するように構成されたチャンバを含む。少なくとも1つの態様では、チャンバは、湿度、圧力、及び温度を制御するように構成されている。装置は、材料システムを屈曲させるように構成された顎部をさらに含む。チャンバは、チャンバ内に配置された筐体であって、断熱材料を有する筐体と、この筐体内に配置されたモータまたはアクチュエータを含む。モータは、任意の適切な電気モータ、ガス動力モータ、空気圧モータ、または油圧モータであり得る。アクチュエータは、任意の適切な電気アクチュエータ、ガス動力アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、または油圧アクチュエータであり得る。チャンバは、第1の端部において筐体に、且つ第2の端部においてチャンバの第1の壁に連結された、注入管を含む。チャンバは、第1の端部において筐体に、且つ第2の端部においてチャンバの第1の壁または第2の壁に連結された、排出管をさらに含む。別の態様においては、材料性能を判定するための方法は、材料システムを0%から98%の相対湿度に曝露することと、任意選択的に、チャンバ内で第1の温度において材料システムを屈曲させることであって、チャンバが、チャンバ内に配置された筐体及び筐体内に配置されたモータまたはアクチュエータを備える、材料システムを屈曲させることと、を含む。方法は、屈曲中、モータまたはアクチュエータを第1の温度とは異なる第2の温度で運転することを含む。
【0012】
本開示の装置及び方法は、極低温条件及び高温条件に適切な湿度制御環境、並びにパネル、2つ以上のパネルの間の被覆済みラップジョイント、翼と胴体の組立部、またはこれらの組み合わせといった航空機の材料システムといった様々な材料システムに関する、腐食または被覆インピーダンスといった材料性能のモニタリングを提供する。本開示の材料システム、装置、及び方法は、極低温条件下及び高温条件下といった、制御して曝露される環境内における、運航中の現実世界の故障モード及び故障メカニズムを再現する機能を提供する。
【0013】
本開示の装置内における材料システムの機械的屈曲の結果、材料システムの腐食は増進し、被覆性能は低下し得る。機械的ストレスと化学的ストレスの複合効果が結合して、現実世界環境における航空機パネルといった材料システムが受ける腐食及び被覆破損をより正確に再現する、低下が引き起こされる。その結果、本開示の方法及び装置によって、極低温条件及び高温条件といった航空機の現実世界における利用中に、航空機の材料システムに見られる被覆破損と腐食が、より正確にシミュレートされる。本開示の材料システム、方法、および装置によって、スタンドアロンの材料システム及び被覆層間の界面の、被覆劣化及び腐食の試験が可能になる。それによって、材料システムが航空機の一部として実際に使用されている間の、パネルといった材料システムが受ける劣化が、より正確に表現される。本開示の材料システム、方法、および装置は、不規則な飛行固有のひずみプロファイルの再現をさらに提供する。それによって、航空機の材料システムの、予測的調査及び法科学的調査の改良が実施され得る。
【0014】
装置
パネルといった材料システムは、表面仕上げ、下塗り剤、及び/またはトップコートといった、1つ以上の表面層を有し得る。腐食及び/または被覆劣化は、機械的ストレス及び化学的ストレスによって、使用中にこれらの層のうちの1つ以上において生じ得る。本開示の材料システム、装置、及び方法は、実際の使用条件において材料システムが受ける劣化を模倣した状況における腐食及び/または被覆破損を判定するための、その場におけるインピーダンスの電気化学的モニタリングを提供する。材料システムは、電気化学的モニタリングシステムが劣化することなしに、機械的ストレス及び化学的ストレスに曝される。本開示の材料システム、装置及び方法は、材料システム表面、仕上げ面、下塗り面、及び/またはトップコート面のうちの1つ以上における、腐食及び/または被覆破損を判定するための、インピーダンスの電気化学的モニタリングを提供する。
【0015】
図1は、本開示の一態様による、材料システムの被覆関連故障モード及び腐食関連故障モードを促進及び制御するための、装置100の平面図である。図2は、図1の装置100の側面図である。装置100の1つ以上の構成要素が、水分を含む環境(例えば塩水噴霧)といった、腐食環境に対して耐性を示す材料から作られている。図1及び図2に示すとおり、装置100は、筐体160であって、その内部に配置され、塩水噴霧といったように、処理流体をチャンバ160内に噴霧するように構成された、1つ以上のフォグノズル102(1つが示されている)を有する、(湿度、圧力、または温度のうちの1つ以上を制御するように構成されたチャンバである)筐体160を含む。材料システムを支持するため、筐体内に1つ以上の顎部が配置されている。これは材料システムを筐体内で曝露し、筐体内で屈曲させるためである。装置100は、フォグノズル102に処理流体を供給するための液体リザーバ104を含む。フォグノズル102は、噴霧ノズル、空気中で消費するように調整されたノズル、フルコーンノズル(例えば、マサチューセッツ州グリーンフィールドのBETE Fog Nozzle, Inc.から入手できる)中空コーンノズル、ミストファン用ノズル、タンク洗浄用スプレーノズル、水噴霧霧化用及び液滴制御用のNASA Mod1ノズル、Q-Lab社の相手先商標製品製造(OEM)によるフォグノズル、Cool Clean ChilAire Lite噴霧塗布器ノズル、またはこれらの組み合わせといった、ノズルであってよい。フォグノズル102は、硬質ゴム、プラスチック、または他の不活性材料といった材料から作られていることができる。
【0016】
顎部124a-124eは、材料システムを屈曲するように構成されている。プレート146は、顎部124a-eを支持するように構成されている。少なくとも1つの態様では、プレート146は、(I型ビームとして知られる、I字形状のビームを含む格子といった)格子の上に配置された取り付け用プレートを備える。プレート146は、フォグノズル102と顎部124a-124e(図1及び図2に示す)の間に位置しており、処理流体が、1つ以上の顎部125a-eによって保持されている材料システムと直接衝突することなく筐体内に入ることを可能にしている。この構成は、航空機の材料システムへの直接降雨と比べて、全体的に湿潤な大気条件を模倣している。代替形態では、顎部124a-eは、フォグノズル102とプレート146の間に位置して(この構成は示されていない)、1つ以上の顎部124a-eによって保持されている材料システムに向けた処理流体の直接の流動を提供してもよい。この構成は、航空機の材料システムへの直接の降雨またはエアロゾル沈着を模倣している。フォグノズル102は、流動角度を調整するように構成されていてよく、それによって処理流体が材料システム表面に対して1つ以上の角度で流動することが可能になっていてよい。少なくとも1つの態様では、材料システム表面は、試験されている主表面に応じて、装置100を通る流体の流動の主方向に平行であってよい。これによって、装置100内における劣化試験の実施中の、材料システム上への液体の集積が減少する。こうした態様では、フォグノズル102は、方向づけされていてよいか、またはバッフル板による調整がされ(baffled)ていてよく、それによって、液体が、直接材料システム上に集積しない。(フォグノズル102、排出口122、モータ/アクチュエータ126、外側筐体136、および脚部148a-fは、これらの部品が図1に示す態様ではプレート146の背後に設置されていることを示すため、図1では破線で示されている。)
【0017】
フォグポンプ108は、液体リザーバ104から、第1の流体ライン106及び第2の流体ライン110を経由してフォグノズル102までの、液体の流動を補助するように構成されている。第1の流体ライン106は、第1の端部で液体リザーバ104に、第2の端部でフォグポンプ108につながって両者を連結しており、液体リザーバ104とフォグポンプ108との液体連通を提供している。第2の流体ライン110は、第1の端部でフォグポンプ108に、第2の端部でフォグノズル102につながって両者を連結しており、フォグポンプ108とフォグノズル102との液体連通を提供している。
【0018】
圧縮空気源112及びバブルタワー114が、フォグノズル102に加湿空気を提供するように構成されている。少なくとも1つの態様では、現実世界での使用中に様々な高度において航空機が受ける圧力を模倣するため、チャンバ内の圧力が調節され得る。その結果、圧縮空気源112は、空気を流動させて、約0.1PSIから約200PSIまで、例えば約2PSIから約100PSIまで、例えば約15PSIから約60PSIまで、例えば約20PSIといった圧力に、チャンバ(チャンバ内の曝露ゾーン)を加圧するように構成されている。これらの範囲においては、低圧力値側が、より高い高度において航空機が受ける圧力を模倣している一方、高圧力値側は、より低い高度且つより海面に近い地点で航空機が受ける圧力を模倣している。例えば、約0.16PSIの圧力は約100,000フィートの高度を表し、約14.7PSIの圧力は、ほぼ海面(約0フィート)における高度を表す。約10.1PSIから約8.29PSIまでの圧力は、約10,000フィートから約15,000フィートまでの高度を表す。これは、回転翼航空機にとっての典型的な高度である。加えて、チャンバ内における約4.4PSIの圧力は、約30,000フィートの高度を表す。これは、民間航空機にとっての典型的な高度である。
【0019】
空気は、大気中に見られるものと同様のガスの混合物を含んでいてよく、他のガスの中でも、例えば、約78%のN、約21%のO、及び約0.039%のCOを含んでいてよい。第3の流体ライン116は、第1の端部でバブルタワー114に、第2の端部でフォグノズル102につながって両者を連結しており、バブルタワー114とフォグノズル102との液体連通を提供している。圧縮空気ライン118が、第1の端部で圧縮空気源112に、第2の端部でバブルタワー114につながって両者を連結しており、圧縮空気源112とバブルタワー114の液体連通を提供している。バブルタワー114は、圧縮空気源112から圧縮空気ライン118を経由して流される空気に対して初期加湿または追加加湿を提供するため、水といった液体を含んでいてよい。
【0020】
排出口122は、装置100内部の圧力を調節するため、第1のチャンバ壁130、第2のチャンバ壁132、または第3のチャンバ壁152(図2)を通って延在していてよい。ヒータ120が設けられてよく、ヒータ120は、湿度、圧力、または温度160のうちの1つ以上を制御するように構成されたチャンバといった、装置100内部の温度を調節するように構成されていてよい。ヒータ120は、装置100の第1の壁130に隣接して配置されていてよく、第3の壁152(図2)に連結されていてよい。ヒータ120は、リベットといった、任意の適切な付着具によって、第3の壁152に付着していてよい。ヒータ120は、コントローラ138に連結され、コントローラ138に制御されてよい。
【0021】
顎部124a-eは、試験用に筐体内に配置された材料システムを支持し、屈曲させるように構成されている。例えば、顎部124a、124b、124c、124d、及び124eは、パネル、2つの金属パネル間の被覆済みラップジョイント、翼と胴体の組立部、またはこれらの組み合わせといった材料システムを、屈曲させるように構成されている。材料システムは、外板または胴体のフラットパネルなどのパネルといった、航空機の材料システムであり得る。材料システムは、例えば約4インチといった幅と、例えば約6インチから約14.5インチといった長さを有していてよい。1つ以上の顎部は、約0.05%から約50%まで、約0.1%から約30%まで、約0.3%から約5%までの範囲の、例えば約0.37%といったひずみを与えるように、材料システムを屈曲させ得る。
【0022】
顎部124a-124eは、材料システムを把持及び解放するように構成されている。顎部124a-eは、第1の開始位置から、完全にまたは部分的に屈曲した第2の位置まで、材料システムを屈曲させるように構成されている。顎部124a-eは、第1の位置から第2の位置まで、材料システムを屈曲させるように構成されている。第2の位置は、屈曲処理中、開始位置から、約0°を上回って約180°まで、例えば約5°から約90°まで、例えば約5°から約45°までといった位置にある。顎部124a-124eは同一のサイズまたは異なるサイズであってよい。例えば、顎部124aは顎部124bと同じサイズであってよいが、(図1に示すとおり)顎部124dとは異なるサイズであってよい。さらに、顎部124a-124eの互いの間の距離は、顎部124a-124eの別のペア間の距離と、同じであるか、または異なっていてよい。例えば、顎部124aと124bの間の第1の距離は、顎部124dと124eの間の第2の距離とは異なっていてよい。顎部の様々なサイズと顎部間の様々な距離とによって、例えば、装置100内部の曝露中及び屈曲処理中に、種々のサイズの(パネルといった)材料システムを、同時に試験することが可能になる。少なくとも1つの態様では、顎部124a-eのうちの1つ以上は、鋼を含む。少なくとも1つの態様では、顎部124a-eのうちの1つ以上は、陽極酸化処理されている。少なくとも1つの態様では、顎部124a-eのうちの1つ以上は、硬質ゴム及び/またはプラスチックといった、不活性材料を含む。顎部124a~eのうちの1つ以上は、ポリエチレン(例えば、(例えば、0.94g/cm以上の密度)の高密度ポリエチレン)及び/またはガラス繊維といった、断熱材料を含むことができ、それによってチャンバのモータまたはアクチュエータの温度から独立して、顎部(及び材料システム)の温度が維持される。こうした態様では、顎部124a-eの温度を所望の温度に維持する一方で、(例えば、以下でより詳細に説明する筐体の断熱によって、)モータ/アクチュエータ126もまた、所望の温度に維持することができる。
【0023】
以下(図4)でより詳細に説明するように、少なくとも1つの態様では、顎部124a-eは、第1の壁130及び/または第2の壁132に対して約0°~約30°、例えば約15°~約30°で、パネルといった材料システムを支持するように構成されており、これによって、装置100内で実施される劣化試験中の材料システム上への液体集積が低減される。少なくとも1つの態様では、顎部124aは、材料システムの第1の端部において材料システムを把持するように構成されており、顎部124bは、材料システムの第2の端部において材料システムを把持するように構成されている。少なくとも1つの態様では、顎部124a-eは、材料システムを同時にまたは交互に屈曲するように構成されている。
【0024】
モータ/アクチュエータ126は、顎部124a-eを動作させる。空気といったガスをモータ/アクチュエータ126に供給するため、注入管128が、第1の端部において筐体136に連結され、第2の端部において第1の壁130に連結されている。モータ/アクチュエータ126から高温の排気を除去するため、排出管134が、第1の端部において筐体136に連結され、第2の端部において第1の壁130に連結されている。フォグノズル102から排出される流体、または装置100の内部に存在する任意の他の流体からモータ/アクチュエータ126を囲って保護するため、外側筐体136がモータ/アクチュエータを取り囲んでいる。外側筐体136は、ポリエチレン(例えば高密度ポリエチレン)、及び/またはガラス繊維といった、1つ以上の断熱材料を含み得る。断熱材料は、外側筐体136の1つ以上の壁に、及び/または外側筐体136内に配置されたモータ/アクチュエータ126に、(直接的または間接的に)連結されていることができる。外側筐体の壁及び/またはモータ/アクチュエータに連結された断熱材料によって、モータ/アクチュエータの温度が、所望の温度に維持される。特に、外側筐体の外部にあるチャンバ内の低温条件下において、このことが該当する。加えて、空気といったガスをモータ/アクチュエータに供給することによって、モータまたはアクチュエータ及び他のモータまたはアクチュエータの構成要素(例えば配線)の温度がさらに制御(加温または冷却)され、対流の発生を可能にする。例えば、(例えば、チャンバ(露出ゾーン)内における約-50℃の)低温周期的屈曲プロセス中、または(例えば、約50℃の)高温周期的屈曲プロセス中に、エンクロージャ136に供給されるガスは、約-30℃から約50℃、例えば、約-10℃から約25℃の温度を有することができ、これによって、筐体(例えば、筐体内の大気)の温度を、約-30℃から約50℃、例えば、約-10℃から約25℃にすることができる。筐体136に供給されるガスは、約0%から約90%、例えば約0%から約50%、例えば約0.1%から約10%の相対湿度を有することができる。これによって、筐体の相対湿度を、約0%から約90%、例えば約0%から約50%、例えば約0.1%から約10%にすることができる。筐体内にガスが導入され、それによって筐体が約1気圧から真空圧(例えば約0.01気圧)の圧力に加圧される。これらの圧力が筐体内で実現可能なことが分かっており、それによって、チャンバ内に極低温条件または高温条件が存在しているときでさえも、モータまたはアクチュエータに十分な操作性が与えられる。
【0025】
顎部124a-eは、プレート146によって支持されている。プレート146は、脚部148a、148b、148c、148d、148e、及び148fによって支持されている。脚部148a-fは、第1の端部においてプレート146に連結され、第2の端部においてチャンバ壁、ラック150a、またはラック150bに連結されている。プレート146は、筐体136と顎部124a-eとの間に配置され得る。モータまたはアクチュエータ126と顎部124a-eとの間に温度制御用バリアを設けるため、プレート146は、(例えば高密度ポリエチレンといった)ポリエチレン、及び/またはガラス繊維といった、断熱材料からできていることができる。こうした態様では、顎部124a-eの温度を所望の温度に維持する一方で、モータ/アクチュエータ126もまた、所望の温度に維持することができる。
【0026】
追加形態または代替形態では、モータ/及びアクチュエータ126は、顎部124a-3eに連結されたボールねじ、アクメねじ、送りねじ、ローラーねじ、及びスクリューマウントといったねじ、または軸(図示せず)を介して、チャンバ内の屈曲動作を変換する。以下でより詳細に説明されるとおり、ねじは、屈曲中の静止ブロック406と可動ブロック404との間の間隙を維持する。電気モータの代わりに、油圧もしくは空気圧のアクチュエータ、または圧縮空気駆動式モータを使用することができる。
【0027】
本開示の装置及び材料システムは、1つ以上の電極対といった、1つ以上の電極を含む。(材料システムを形成するため)、及び材料システムの動作性能を試験するための装置100のその後の使用のために、基板に電極が連結されていてよい。屈曲中、材料システムの中心部は、材料システムの端部よりもより多くのひずみを受ける。したがって、材料システムの同じ側面に配置された電極対は、材料システムの同じ側面を通じたインピーダンスの検出を行う。
【0028】
図1及び図2に示すとおり、装置100は、電極対156及び158を含む。図1及び図2には電極対が示されているが、代替的な態様では、装置100は単一の電極を備える。電極対156が材料システムの第1の側面(図示せず)に連結され、電極対158が材料システムの第2の側面(図示せず)に連結されるように構成されている。電極は、導電性エポキシ、ニッケル、金、銀、銅、プラチナ、パラジウム、またはこれらの混合物で作られていることができる。少なくとも1つの態様では、少なくとも1つの電極は、電極対156及び/または158といった導電性エポキシである。少なくとも1つの態様では、導電性エポキシは、導電性銀エポキシである。電極対156は、電極対156と分光計164との間に電気連通を提供するため、電気ライン162を介して分光計164に連結されている。さらに、電極対158は、電極対156と分光計164との間に電気連通を提供するため、電気ライン166を介して分光計164に連結されている。電気ライン162、166は、絶縁電線(例えば、絶縁鋼線)、または絶縁済み導電性テープを有する電線であることができる。以下でより詳細に説明されるとおり、電極対156が材料システムの第1の側面に連結され、電極対158が材料システムの第2の側面に連結されるように構成されている。少なくとも1つの態様では、分光計164は、ポテンショスタット、ガルバノスタット、及び/または無抵抗電流計を含む。分光計164は、電気化学式インピーダンス分光計であり得る。電極(例えば電極対156及び158)は、材料システムに連結されているときに、材料システムからの電気信号を検出し、この電気信号を分光計164といった分光計に対して送信する。分光計164は、電気信号を解釈して、材料システムの被覆破損及び/または腐食といった条件に関する、インピーダンスといった電気データを提供するように構成されている。電気化学的インピーダンスは、通常、電気化学セルに対してAC電位を印加し、次いでこのセルを通る電流を測定することによって測定される。この電位に対する応答、例えば正弦波電位は、交流電流信号である。この電流信号は、正弦関数の和(フーリエ級数)として分析することができる。電気化学的インピーダンスは、通常、小さい励起信号を用いて測定される。これは、セルの応答が擬似線形になるようにするために行われる。線形の(または擬似線形の)システムにおいては、正弦波電位に対する電流の応答は、同一の周波数であるが位相がシフトした正弦曲線であろう。電気化学的インピーダンス分光法(EIS)のデータは、典型的には、等価回路モデルの観点から分析される。(ドイツのソフトウェア製品である)Echem Analystは、インピーダンスが測定されたデータに一致するモデルを見つけ出す。
【0029】
本明細書に記載の装置100の部品は、周期的屈曲のフォグ噴霧処理中に装置100内の条件に対して適切に不活性である材料を含んでいてよい。適切に不活性な材料は、ポリエチレン(例えば高密度ポリエチレン)、ガラス繊維、プラスチック、ガラス、石、金属、ゴム、及び/またはエポキシを含んでいてよい。装置100の1つ以上の部品のうちの部品を製造するために使用され得る他の材料は、高密度ポリプロピレン、ポリエチレンインサート付きの商用グレードのチタニウム(II)、ポリエチレンインサート付きのステンレス鋼、及びこれらの組み合わせを含む。
【0030】
装置100は、コントローラ138といった、プロセッサに基づいたシステムコントローラによって制御されてよい。例えば、コントローラ138は、装置100の部品、及び屈曲、湿度、圧力、または温度のうちの1つ以上の制御に関連した処理パラメータを制御するように構成されていてよい。コントローラ138は、装置100の様々な構成要素に結合されて、周期的に屈曲するフォグ噴霧処理の制御を容易にする、メモリ142及び大容量記憶デバイスと共に動作可能なプログラマブル中央処理装置(CPU)140、入力制御ユニット、並びに表示ユニット(図示せず)、例えば電源、クロック、キャッシュ、入出力(I/O)回路などを含む。コントローラ138は、例えば、注入管128、排出管132、排出口122、ヒータ120、及び/または顎部124a-eと電気連通していてよい。
【0031】
上記の装置100の制御を容易にするため、CPU140は、様々なチャンバおよびサブプロセッサを制御するための、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)といった産業環境で使用することができる任意の形態の汎用コンピュータプロセッサのうちの1つであってよい。メモリ142はCPU140に連結されており、且つメモリ142は非一過性であって、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、フロッピーディスクドライブ、ハードディスク、または任意の他の形態のローカルもしくはリモートのデジタルストレージといった、容易に入手可能なメモリの1つ以上であってよい。従来型の様態でプロセッサをサポートするため、サポート回路144が、CPU140に連結されている。装置100によって周期的に屈曲するフォグ噴霧処理から得られた情報は、典型的にはソフトウェアルーチンとして、メモリ142内に記憶され得る。ソフトウェアルーチンはまた、CPU140によって制御されるハードウェアからは遠隔して位置する第2のCPU(図示せず)によって、記憶され、且つ/または実行されてよい。メモリ142は、コンピュータ可読記憶媒体であって、CPU140によって実行されたときに装置100の動作を容易にする命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体の形態をしている。メモリ142内の命令は、本開示のプロセスを実装しているプログラムといった、プログラム製品の形態をしている。プログラムコードは、数々の異なるプログラム言語のうちの任意の1つに準拠していてよい。少なくとも1つの態様では、本開示は、コンピュータシステムで使用するためにコンピュータ可読記憶媒体に記憶された、プログラム製品として実装されてよい。プログラム製品のプログラムは、(本明細書に記載の方法を含む)諸態様の機能を規定する。例示的なコンピュータ可読記憶媒体は、限定しないが、以下を含む。(i)情報が恒久的に記憶される、非書き込み可能型記憶媒体(例えば、CD-ROMドライブで読み取り可能なCD-ROMディスクといった、コンピュータ内部の読み取り専用メモリデバイス、フラッシュメモリ、ROMチップ、または任意のタイプのソリッドステート式非揮発性半導体メモリ)、及び(ii)代替情報が記憶される書き込み可能記憶媒体(例えば、ディスケットドライブ内のフロッピーディスクもしくはハードディスクドライブ、または任意のタイプのソリッドステート式ランダムアクセス半導体メモリ)。こうしたコンピュータ可読記憶媒体が、本開示の方法及び装置の機能を管理するコンピュータ可読命令を保持しているときには、こうしたコンピュータ可読記憶媒体が、本開示の諸態様である。
【0032】
図3は、図1及び図2の筐体136といった、筐体の斜視図である。図3に示すとおり、筐体136は、モータまたはアクチュエータ126、及び筐体136内に配置された断熱プレート302を含む。断熱プレート302は、格子上に配置された取り付け用プレートを備え得る。断熱プレート302は、ポリエチレン(例えば高密度ポリエチレン)、及び/またはガラス繊維といった、1つ以上の断熱材料を含む。断熱プレート302は、モータ/アクチュエータ126の温度を維持するため、モータ/アクチュエータ126に連結されて(例えば直接接触して)いる。第1のガス源304が、モータまたはアクチュエータ126の第1の部分に対して空気といったガスを供給する。例えばモータ/アクチュエータ126の下面に凹部308を通してガスを導入することによって、モータ/アクチュエータ126の第2の部分に空気といったガスを供給するため、断熱プレートの表面に沿って(例えば、断熱プレート302の下面の下に)、第2のガス源306が配置されている。凹部308は、筐体136の表面310内に配置されている。第1のガス源304と第2のガス源306のガスは、(図1の)注入管128によって供給され得る。複数のガス源を使用することによって、モータ/アクチュエータ126の周囲に、ほぼ均一なガス流が提供される。これによって、モータ/アクチュエータ126を冷却することができ、モータ/アクチュエータ126の外側表面の温度がほぼ均等にされる。代替形態では、第1のガス源304がモータ/アクチュエータ126にガスを供給する一方、第2のガス源306が存在していないか、またはオフモードに維持されていてよい。代替形態では、第2のガス源306がモータ/アクチュエータ126にガスを供給する一方、第1のガス源304が存在していないか、またはオフモードに維持されていてよい。
【0033】
図3に示すとおり、モータ/アクチュエータ126には配線(または配管)312が連結されており、(i)モータ/アクチュエータ126と、コントローラ138といったコントローラとの間、及び/または(ii)モータ/アクチュエータ126と顎部124a-eとの間の、電気連通を提供している。配管が使用されている場合は、モータ/アクチュエータ126は、配線/配管312の温度を維持するために加圧された油または空気が配管内を通ることができる、油圧式または空気圧式アクチュエータであることができる。追加形態または代替形態では、筐体136内へのガス流は、配線/配管312の温度維持もさらに提供する。配線/配管312の電気構成要素の温度を維持するため、配線/配管312は、配線/配管312の電気構成要素の周囲に配置された、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン)、断熱導電性テープ、及び/またはガラス繊維などといった、1つ以上の断熱材料314で断熱されていてよい。
【0034】
図4は、本開示の一態様による、周期的屈曲を実施するように構成された屈曲器400の斜視図である。図1に関して説明されているとおり、屈曲器400は、装置100といった材料性能チャンバの内部に設置されていてよい。図4に図示するとおり、屈曲器400は、可動ブロック404及び静止ブロック406を含む。静止ブロック406は、取付ボルト410a及び410bによって、プレート146に取り付けられている。可動ブロック404は、静止ブロック406に隣接して、プレート146上に摺動可能に配置されている。静止ブロック406と可動ブロック404との間の直線移動は、ガイドロッド408a及び408bによって維持される。ガイドロッド408a及び408bは、ステンレス鋼、高密度ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、アーモロイ(Armoloy)被覆といったクロム、及びこれらの組み合わせを含み得る。ガイドロッド408aと408bのそれぞれは、静止ブロック406と可動ブロック404に連結されている。ガイドロッド408aと408bは、互いに平行である。静止ブロック406と可動ブロック404は、顎部124a-fを搭載しているか、または別様に支持している。静止ブロック406は、屈曲中の静止位置内に、顎部124a-fの第1の側部を搭載している。一方、可動ブロック404は、顎部124a-fの第2の側部を搭載しており、屈曲中の顎部124a-fの第2の側部の動作を可能にしている。静止ブロック406及び可動ブロック404は、高密度ポリエチレンを含み得る。屈曲中、可動ブロックは、開始地点から終了地点まで、静止ブロックに対して水平方向に移動する。この結果、顎部124a-f内に配置されたた材料システムが屈曲する。開始地点、終了地点、及び移動距離は、屈曲器400のユーザによって、試験装置の力学的境界限度、機械的な停止ブロック、または装置駆動システムのソフトウェア制御に基づいて制御され得る。静止ブロック406及び可動ブロック404のそれぞれは、基部及び、基部から基部に対して垂直に延びる複数の支柱を含む。各支柱は、直角であるか、または角度付けされていてよく、それによって、顎部124a-fのそれぞれを搭載し得る角度が設けられる。顎部124a-fはヒンジ止めされており、それによって材料システムを圧縮する間に材料システムを屈曲することが可能になっている。例えば、顎部124a-fは、各支柱の片側に搭載され、基部に垂直な線に対して、例えば15°から30°の角度で配置されていてよい。材料パネルに対する所望の試験条件を達成するため、垂直と対比して他の角度も検討される。顎部124a-fの角度が、材料システムの角度位置を決定する。少なくとも1つの態様では、材料システムは、基部に垂直な線に対して、例えば15°から30°の角度で配置される。少なくとも1つの態様では、顎部124a-fは非導電性且つ非金属であり、それによって材料システムに対するガルバニック効果はほとんどまたは全くない。1つ以上の顎部124a-fは、高密度ポリエチレン、ポリエチレンのインサートを有する商用グレードのチタン(II)、ポリエチレンのインサートを有する犠牲用の316SS、またはこれらの組み合わせを含み、それによって、試験中の顎部及び材料システムの(部分的なまたは完全な)ガルバニック腐食が防止される。1つ以上の顎部124a-fは、例えばポリエチレンを含む、スリーブカバーを備え得る。これによって、試験中の顎部及び材料システムのガルバニック腐食がさらに防止される。装置100の電極対158は、顎部124f内に配置された材料システムの第1の側面上に直接配置されており、装置100の電極対156(図示せず)は、第1の側面とは反対側の材料システムの第2の側面上に配置されている。装置100の使用中、例えば材料システムの試験中に電極対158及び156を腐食環境から保護するため、これらの電極上に、非導電性の保護被覆412(簡素化のため、透明な被覆として示す)が配置されている。非導電性保護被覆は、非導電性エポキシの、テープ、接着剤、密封剤、またはこれらの混合物を含む。少なくとも1つの態様では、非導電性エポキシは、2液性の防水エポキシである。図4は、顎部124f内に配置された材料システム上に直接配置された電極を示しているが、本開示の材料システム(及び装置)が、1つ以上の電極及び/または電極対が1つ以上の顎部124a-e内に配置された材料システム上に直接配置されていない態様を包含していること、並びに電極及び/または電極対が、電線162、166と同様または同一の電線を介して分光計と電気連通していることができることは、理解すべきである。こうした態様によって、装置100といった材料性能チャンバ内における複数の材料システムの電気化学的な「その場の」モニタリングが提供される。さらに、前記電極及び/または電極対上に、被覆412といった非導電性の保護被覆が配置され得る。
【0035】
本開示の少なくとも1つの態様では、装置が1つ以上の屈曲器400を含んでいる。材料性能チャンバが1つ以上の屈曲器400を含んでいる少なくとも1つの態様では、ガイドロッド408aと408bが、複数の屈曲器400を通って延びている。
【0036】
屈曲器400といった屈曲器は、様々な周期によって可動ブロックと材料システムの様々な移動を提供する。この周期は、リアルタイムで調整可能である。屈曲器は、材料システムに対する張力と圧縮力の印加もまた提供する。
【0037】
材料システム
材料システムは、図1または図2の装置内で使用され得る。少なくとも1つの態様では、材料システムは、平坦であることができ、且つ被覆されることができる、金属パネルである。フラットパネルの材料性能は、このパネルを、このパネルを少なくとも1周期の湿気に曝露する間、例えば塩水噴霧する間に、材料システムを周期的に屈曲することによって試験される。材料システムは、曝露及び屈曲の前、最中、及び/または後に、被覆インピーダンス、被覆の亀裂/層剥離、腐食の発現、伝播速度、及び実績に関して評価される。
【0038】
少なくとも1つの態様では、材料システムは、少なくとも1周期の湿気に曝露される前に金属製のファスナ、ねじ、ボルト、または他のハードウェアを用いて互いに接続、接合、溶接、接着、または固定された、2つの平坦な金属パネルを有する基板を備える。
【0039】
少なくとも1つの態様では、材料システムは、金属材料または複合材料から作られており、周期的な湿気に曝露される前、及び/または、被覆インピーダンス、被覆の亀裂/層剥離、腐食の発現、伝播速度、及び実績に関して評価される前に被覆されていてよい、機械継ぎ手またはナックル継ぎ手を含む。
【0040】
少なくとも1つの態様では、材料システムは、本体側部の接合部、ストリンガと胴体の組立部、胴体パネル、または翼のスパーと胴体の組立部を表す航空機の構成要素を再現可能な、構造システムを含む。製造された組立体は、本明細書に記載のとおり、被覆インピーダンス、被覆の亀裂/層剥離、腐食の発現、伝播速度、及び実績に関して評価される前もしくは最中の、少なくとも1周期の湿気に曝露されている最中に、作動または屈曲させられてよい。
【0041】
図5は、図1または図2に示す装置の内部で試験され得る、材料システム500の側面図である。材料システム500は、導電性の金属基板502、及び基板502上に配置された被覆層504を備える。金属基板502は、チタニウム、アルミニウム、銅、またはこれらの合金から作られていることができる。金属基板502は、クロメート入り下塗り剤といった1つ以上の下塗り剤、表面仕上げ剤、及び/またはトップコート剤で被覆されていてよい。例えば、被覆層504は、クロメート入り下塗り剤、エポキシ下塗り剤、ウレタン下塗り剤、またはこれらの混合物から作られていることができる。電極対158といった電極対の一部であり得る)電極506は、被覆層504上に直接配置されており、基準電極である。電極対156といった電極対の一部であり得る)電極508は、金属基板502上に直接配置されており、作用電極である。少なくとも1つの態様では、電極508と金属基板502との間に、非導電性エポキシといった絶縁接着剤が配置されている。試験中の分光学的測定のために、導電性の金属基板502に作用電極508が付着しており、作用電極(または電極対)を通じて電気信号が送信される。この信号は次に、被覆層504を通って移動し、(電極対158の)電極506によって受信されて、分光計164へと送信される。代替的な態様では、作用電極508及び基準電極506は、それぞれ被覆層504上に配置(例えば、直接配置)されている。
【0042】
被覆層504といった被覆層がエポキシから作られており、被覆騒擾に配置された電極が導電性エポキシから作られている諸態様では、被覆層のエポキシ材料と電極が、互いに吸収しあうことが分かっている。代替形態では、電極はニッケルであるか、またはニッケルを含んでいる。電極が被覆層上に直接配置されるようにして2つの材料を互いに接着するために接着剤を使用するのは、任意選択的である。こうした態様では、被覆層の表面が、軽度に研磨され、続いて研磨された表面上に、直接電極を付けることができる。エポキシ電極の場合には、被覆層と電極との間のこの「同類のものの上に同類のものを置く」(like-on-like)相互作用によって、電極と被覆層との間の界面の適合性が向上する。電極と被覆層の間の適合性の向上によって、被覆層と電極の間の熱的特性および機械的特性が向上する。従来型の電極は、非導電性接着剤によって基板表面に接着されている。これらの接着剤は、電極と、被覆層といった基板との電気連通を阻害し、不正確な分光学的データを生み出す。こうした接着剤を使用することで、材料システムの電気特性が、材料システムの商業用途において使用される可能性が高い、材料システムの構成要素ではない構成要素(接着剤)によって影響される。この接着剤は、電極が設置されている材料システムの、機械的実績、化学的実績、及び熱的実績に急勾配を生じさせる。本開示の材料システムの電極と被覆層との間の適合性の向上によって、電極と被覆層との間の同質性がもたらされ、それによって分光学的信号内で観察されるノイズが低減する。
【0043】
エポキシ電極を有する材料システムとの比較例として、被覆層上に堆積された金属電極を有する材料システムが試験された。被覆層上に堆積された金属電極を有する材料システムの電気化学的モニタリングによって、「空気」(air)の曲線のみを示すEISスペクトルがもたらされる。このことは、金属電極と被覆層との間の相互作用が不十分であることを表す。本明細書で使用する場合、「空気の曲線」とは、オープンリードの実験を表す。この実験では、セルが一切付着しないEISスペクトルが記録される。オープンリードの実験によるスペクトルは、パラレルなRCネットワークに関するノイズの多いスペクトルに非常によく似て見える。したがって、データ中に空気の曲線が観察されたときには、分光計からのリードは被覆と電気的接触を全くしておらず、開放空気のEISスペクトル(即ち「空気の曲線」)が収集されているのである。
【0044】
さらに、材料システムの電極の厚さが、電気化学的モニタリングの分光学的結果に影響を与え得ることが、発見されている。電極506並びに、電極対156及び/または158の電極506及び508は、約100マイクロメートル(μm)以下、例えば40マイクロメートル以下、例えば約30マイクロメートルから約40マイクロメートル、例えば約35マイクロメートル以下、例えば約20マイクロメートル以下、例えば約12マイクロメートル以下の厚さを有し得る。例えば、約12μm以下の厚さを有する電極は、材料システム上及び/または材料システム内に配置された電極の柔軟性を提供し、材料システムの1つ以上の層の上に配置された電極を有するように動作可能な、材料システムを提供する。これは、材料システムの1つ以上の層のそれぞれをより正確に電気化学的にモニタリングするためである。少なくとも1つの態様においては、本開示の電極は、約1μmから約12μm、例えば約2μmから約11μm、例えば約3μmから約10μmの厚さを有する。少なくとも1つの態様においては、本開示の被覆層は、約1μmから約500μm、例えば約2μmから約250μm、例えば約3μmから約100μm、例えば約4μmから約15μmの厚さを有する。さらに、本開示の電極のサイズが使用されることによって、本開示の材料システムに対して、多層化された材料システムの層内に埋め込むのには大きすぎる従来型の電線と比べて、(第1の端部及び第2の端部において電極と連結された)より細い/より薄い電線が使用される。
【0045】
比較すると、(交互嵌合型電極といった)13μm以上の厚さを有する電極は、より薄い電極と比べて剛性がより大きく、屈曲試験中に材料システムから接続解除してしまう傾向がある。厚い電極の剛性によって、材料システムの表面と適合するための電極の能力が損なわれる。さらに、電極上に(組立用下塗り剤、内装用下塗り剤、燃料タンク用下塗り剤といった)従来どおりの薄さの被覆層が堆積している場合、13μm以上の厚さを有する電極では、上層内に欠陥が生じる傾向があり、次にこの欠陥が、屈曲試験の間に際立たせられる。さらに、ある従来型の電極の設計は、層内に電極を埋め込むために基板を貫通して穿孔することを伴う。こうした埋め込み式電極は、厚い電極に関して記載されたのと同様の欠点を有する。
【0046】
少なくとも1つの態様では、(例えば図1または図2に示す装置内で試験され得る)本開示の材料システムの電極は、互いにオフセットされている。例えば、図5に示すとおり、電極506と508とは、距離(d)によって互いにオフセットされている。本開示の材料システムの電極をオフセットすることによって、湿気の影響が低減される。なぜならば、電気信号は、電子が最も小さい抵抗を有するところに流れるからである。電極が互いにオフセットされていない場合には、基準電極の下のエリアは、湿気から電解質を吸収することから保護される。試験中に被覆内部(例えば亀裂/割れ目内部)の含水量が増加するにつれて、電気的データの正確性も向上する。なぜならば、最も損なわれていない被覆の誘電率と比べて、水及び食塩水の誘電率は比較的高いからである。例えば、電極自体が湿気から保護されているか、または電気信号が不正確であり得る。湿気からの電極の保護は、非導電性エポキシといった保護被覆で電極を密封することによって、達成され得る。
【0047】
図6は、本開示の一態様による、図1または図2に示す装置の内部で試験され得る、材料システム600の側面図である。図6に示すとおり、材料システム600は、金属基板502、第1の被覆層602、及び第2の被覆層504を含む、多層の材料システムである。(電極対であり得る)電極608が金属基板502上に配置されており、電気ライン610を介して、分光計164といった分光計と電気連通している。さらに、(電極対であり得る)電極604が第1の被覆層602上に配置されており、電気ライン606を介して、分光計164といった分光計と電気連通している。被覆412といった保護被覆(図示せず)が、電極及び基板の上に後続する被覆層を堆積する前に、電極608と604のうちの一方または双方の上に配置され得る。図6に示すとおり、電極608と604は、材料システムの内部にある(例えば、埋め込まれている)。多層化された材料システムの被覆と基板の界面で被覆の劣化及び/または腐食を判定するため、内部電極によって、材料システムの個々の層の、その場における電気化学的モニタリングが提供される。少なくとも1つの態様では、電極608と金属基板502との間に、非導電性エポキシといった絶縁接着剤が配置されている。
【0048】
図6に示すとおり、電極608と電極508とは、距離(d1)でオフセットしている。電極508と電極506とは、距離(d2)でオフセットしている。電極506と電極604とは、距離(d3)でオフセットしている。(d1)、(d2)、及び(d3)は、電極の分極化を防止するようにしてサイズ決めされている。そうでなければ、電圧電流応答曲線の擬似線形部分から離れて行くであろう。少なくとも1つの態様では、(d1)=(d2)=(d3)である。少なくとも1つの態様では、(d1)、(d2)、及び/または(d3)は、約0.3cmと約10cmの間、例えば約0.5cmと約3cmの間、例えば約1cmである。
【0049】
さらに、下層の表面と接触する電極の表面の表面積が変動することによって、電極と下層の表面との電気化学的相互作用が影響を受ける。所望の用途用の表面積の変動を利用するための1つの方法は、1つ以上の電極の形状を変化させることである。なぜならば、他のパラメータが等しいとすると、形状が異なることによって、電極の接触面の表面積が異なる結果となるからである。このことは、以下でより詳細に説明する。本開示の材料システムの電極は、様々な形状を有し得る。例えば、本開示の電極は、正方形の形状である。代替形態では、本開示の電極は、円形、星形、長方形、または、五角形、六角形、七角形、もしくは八角形といった多角形の形状を有する。さらに、本開示の電極は、その形状から(例えば外向きに)突き出している1つ以上のスポークを有していてよい。
【0050】
本開示の電極は、下層と接触する表面積(即ち接触表面積、スポークが存在する場合にはスポークも含む)を有する。このことは、所望の用途にとって適切である。少なくとも1つの態様では、電極は、約0.2cmから約10cm、例えば約0.5cmから約5cm、例えば約1cmから約2cmといった接触表面積を有する。本開示の特定の試験用途に関しては、全体的形状、スポーク、及び表面積が、電気化学的モニタリングの方法に影響し得る。
【0051】
図7A図7B、及び図7Cのそれぞれは、本開示の一態様による、図1または図2に示す装置の内部で試験され得る、材料システムの平面図である。図7Aに示すとおり、(図5の)材料システム500は、円形の形状を有する電極506を備える電極対158を備える。電極506上に、保護被覆412が配置されている。少なくとも1つの態様では、屈曲中及び/または湿気への曝露中に配線166をさらに保護するため、電線166(図示せず)上に保護被覆412もまた配置される。図7Bに示すとおり、材料システム700は、長方形の形状を有する電極702を備える電極対706を備える。電極702のそれぞれが、材料層704上に配置されている。電極702上に、保護被覆720(分かりやすくするため、透明であるとして示されている)が配置されている。少なくとも1つの態様では、屈曲中及び/または湿気への曝露中に配線708をさらに保護するため、電線708(図示せず)上にもまた保護被覆720が配置される。電極702のそれぞれは、電気ライン708を介して分光計と電気連通していることができる。図7Cに示すとおり、材料システム710は、五角形の形状を有する電極712を備える電極対714を備える。各電極712は、五角形の電極712から外向きに突き出している5つのスポーク712aを有する。電極712のそれぞれが、材料層718上に配置されている。電極712/712a上に、保護被覆722(分かりやすくするため、透明であるとして示されている)が配置されている。少なくとも1つの態様では、屈曲中及び/または湿気への曝露中に配線708をさらに保護するため、電線716(図示せず)上にもまた保護被覆722が配置される。電極702は、電気ライン716を介して分光計と電気連通していることができる。
【0052】
追加形態または代替形態では、本開示の材料システムの腐食の程度は、周期的屈曲処理の後に材料システムの重量を測定し、その重量を、周期的屈曲処理の前の材料システムの重量から減算することによる、質量損失法によって判定されてよい。電極が本開示の材料システム上に配置されていない態様においては、質量損失法は有利である。
【0053】
材料システムの製造
本開示の図1または図2に示す装置の内部で試験され得る材料システムの製造は、電極が付けられる予定の被覆層のエリアを軽度に研磨することを含み得る。研磨されたエリアは、任意の溶媒で洗浄し、乾燥させることができる。製造は、被覆層の研磨エリアといった被覆層上に、電極を配置することをさらに含む。電線の露出部を形成するために、配線166といった電線の絶縁体の端部を取り除くことができる。次に、露出部が電極と接触させられ、続いて非導電性テープ及び/または保護被覆412といった保護被覆が付けられる。
【0054】
本開示の電極(及び被覆層)は、任意の適切な堆積処理によって、金属の基板または層の上に配置されてよい。堆積処理は、スクリーン印刷及び三次元印刷を含む。加えて、被覆層に対してフォトリソグラフィが適用されてよく、続いて、層のフォトリソグラフィ処理された領域内に、電極が堆積されてよい。
【0055】
電極は、例えば、任意の適切なスクリーン印刷装置(例えばドイツ国ミュンヘンのASM Assembly Systemsによって供給される)を用いて堆積されてよい。スクリーン印刷は、電極形成用の所望の形状寸法で形作られた1つ以上の開口を有するスクリーンを用いて、実施され得る。堆積材料が、スクリーンの一部の上に置かれてよく、続いて、スキージー(squeegee)を用いて、開口を横切ってスキージー拭きされてよい。具体的には、スクリーンは、印刷面の上方且つ印刷面の真上に設置されており、それによって、インクが所望の位置に正確に堆積され得る。スキージーがスクリーンを横切って動くのにつれて、スクリーンのメッシュが、スキージーによって表面と接触させられる。空いたエリアにインクが押し出され、パターンが形成される。余剰分は、スキージーの刃によって取り除かれる。メッシュは、スキージーの通過後、直ちに表面から剥がされ、メッシュ内にあった全てのインクが印刷面に堆積して残されるようにすべきである。次に、スクリーンを上昇させて離すことができる。推奨されるスクリーンの張力は、印刷後にスクリーンを基板から剥がすのに十分なほどメッシュを引き延ばすが、損傷が発生するほどには引き延ばさないのに必要な張力である。印加される張力は、スクリーンの材料に依存する。例えば、ナイロンメッシュに使用される張力は通常6%であり、ポリエステルでは3%である。スキージーがフレームエリアに対して45°の角度で保持されるのは、通常の慣行である。
【0056】
電極は、例えば、任意の適切な3D印刷装置(例えばフロリダ州オーランドのnScrypt,Inc.によって供給される)を用いて堆積されてよい。nScript装置は、ノズルに対する背圧によって調整された材料流量で、例えばDuPont CB230銀被覆銅導電性インクまたはDuPont CB028フレキシブル銀インクといった、導電性インクを分注する。パターニングが一定である間のノズルの移動速度、及びノズル内の材料の背圧は、流量に対して直接比例する。nScript印刷装置は、0psiから約30psiまでの範囲の背圧を有する。被覆済みパネル上に導電性インクを堆積するために、18psiの背圧を使用することができる。この背圧は、約0.052グラム/分の流量に対応する。nScript装置による電極の堆積の後、硬化を促進するため、インクは一定時間高温で、例えば170°Cで30分間、ベークされる。
【0057】
被覆層は、例えば、任意の適切なフォトリソグラフィ装置を用いてフォトリソグラフィ処理されてよい。フォトリソグラフィによって形成された電極は、通常、交互嵌合型の電極である。
【0058】
適切な交互嵌合型電極は、例えば、コロラド州ロングモントのSynkera Technologies, Inc.、またはスペイン国オビエドのMicrux Technologies,S.L.から入手することができる。
【0059】
試験方法
例えば装置100内における周期的屈曲フォグスプレー処理法といった材料試験プロセスは、パネルといった材料システムを、塩水噴霧といったように処理流体に曝露し、且つ材料システムを屈曲することによって、実施され得る。曝露は、約1時間から約4500時間、例えば約200時間から約2000時間、例えば約500時間から約1000時間にわたって、実施され得る。少なくとも1つの態様では、湿度、圧力、または温度のうちの1つ以上を制御するように構成されたチャンバ160といったチャンバ内の曝露ゾーンは、約0%から約98%、例えば約30%から約95%、例えばほぼ周囲湿度といった、相対湿度を有する。材料システムを約1時間にわたって処理流体に曝露すること、及び/または約30%の相対湿度は、例えば、乾燥気候において航空機の一部としての材料システムが受ける湿度への曝露を模倣したものである。材料システムを約4500時間にわたって処理流体に曝露すること、及び/または約80%の相対湿度は、例えば、非常に湿潤な気候または中度に湿潤な気候において、長期間、航空機の一部としての材料システムが受ける湿度への曝露を模倣したものである。本開示の処理中、任意の数の湿度サイクルが実施されてよく、また、任意の数の湿度サイクルは、約1周期から約100,000周期、例えば約2周期から約1,000周期、例えば約3周期から約100周期、例えば約5周期から約10周期であってよい。周期的屈曲中には、これらの湿度が周期的に適用され得る。例えば、第1の湿度において、第1の屈曲(例えば100屈曲周期)が実施され得る。第1の湿度とは異なる第2の湿度において、第2の屈曲(例えば100屈曲周期)が実施され得る。
【0060】
流体は、試薬グレード水である水を含み得る。流体は、食塩水であり得る。食塩水は、塩化ナトリウムを含み得る。食塩水は、98%の水中に約2%の塩化ナトリウム、94%の水中に約6%の塩化ナトリウム、例えば約95%の水中に約5%の塩化ナトリウムを含んでいてよい。食塩水といった液体は、約0.1%未満の臭化物、フッ化物、及びヨウ化物を含んでいてよい。食塩水といった液体は、約1質量ppm未満、例えば約0.3質量ppmの銅を含んでいてよい。食塩水といった液体は、凝固防止剤を含んでいなくてよい。なぜなら、そうした化学物質は、腐食防止剤の役割を果たし得るからである。試験され得る材料システムは、例えば、航空機の外板または胴体を形成し得る航空機パネル、2つの金属パネル間の被覆済みラップジョイント、翼と胴体の組立部、及びこれらの組み合わせを含む。液体は、噴霧用塩水といった処理流体を形成するために霧化されてよい。この噴霧用塩水は、約3から約11、例えば約5から約8、例えば約6.5から約7.2といった範囲のpHを有していてよい。pHは、適切なpH応答性ガラス電極、基準電極、及びpHメーターシステムを使用して測定され得る。液体のpHを調整することが、望ましくあり得る。例えば、低pHを有する液体は、酸性雨などを含有する汚染された大気を模倣していてよい。さらに、処理流体へと霧化された液体のpHは、曝露処理中の液体を再較正するために調整され得る。pHは、例えば、pHを下げるためには塩酸(HCl)を加えるか、またはpHを上げるためには水酸化ナトリウム(NaCl)を加えることによって、調整され得る。噴霧用塩水といった流体は、80cmの水平集積面積当たり、約0.5ミリリットル毎時(mL/h)から約5mL/h、例えば80cmの水平集積面積当たり、約1ミリリットル毎時(mL/h)から約2mL/hの流量で流されてよい。
【0061】
少なくとも1つの態様では、パネルといった材料システムが、顎部124a-eのうちの1つによって、または顎部124a-eのうちの複数によって、屈曲されてよい。現実世界条件下の航空機材料システムが受ける腐食条件の機械的ストレスの影響を模倣するため、屈曲は、様々な頻度で実施され得る。例えば、材料システムは、約0.1ヘルツ(Hz)から約150Hz、約0.1Hzから約100Hz、約0.1Hzから約60Hzの周波数で屈曲されてよい。周期的屈曲中の任意の数の周期は、約1周期から約100,000周期、例えば約500周期から約5,000周期、例えば約500周期から約3,000周期であってよい。
【0062】
さらに、屈曲している材料システムの曲率が大きくなればなるほど、本開示の装置及び方法を用いた材料システムの劣化が大きくなる。例えば、6インチの長さを有するフラットパネルが、2つの顎部によって把持されてよく、この2つの顎部間の距離は6インチであってよい。パネルは、流体への曝露中に0.33Hzのレートで屈曲され得る。別の例では、7.5インチの長さを有するフラットパネルが、2つの顎部であって、顎部間の距離が同様に6インチである、顎部によって把持されてよい。パネルは、流体への曝露中に0.33Hzのレートで屈曲され得る。7.5インチの長さを有するパネルは、より大きい曲率を有し、6インチの長さを有し且つそれ以外の条件がすべて同じであるパネルと比べると、より一層の劣化を受ける。理論に束縛されるものではないが、機械的ストレスが材料システムに曲率を与える結果、材料システムに亀裂が生じ、それによって噴霧用塩水といった腐食性流体が材料システムの亀裂内に侵入することが可能になってしまう。腐食性流体は、材料システムの亀裂内に侵入した後、(下にある被覆層といった)様々なさらなる層が存在する場合には、これらの層間にさらに侵入し得る。その結果、腐食性流体が、材料システム及び/または材料システムのさらなる層のうちの1つ以上に、腐食を生じさせ得る。こうした条件は、現実世界で使用中に、パネルといった航空機材料システムが受ける条件を模倣している。
【0063】
少なくとも1つの態様では、装置100の湿度、圧力、または温度160のうちの1つ以上を制御するように構成されたチャンバといった曝露ゾーンは、材料システムの(噴霧用塩水へと霧化された食塩水といった)処理流体への曝露中、及び/または材料システムの屈曲中、約-196°Cから約100°C、例えば約-196°Cから約100°C、例えば約-50°Cから約95°C、例えば約0°Cから約50°C、例えば約33°Cから約37°Cの範囲、例えば約35°Cといった温度で維持されてよい。例えば、温度は例えば約-70°Cから約-20°C、例えば約-55°Cといった、極低温に維持され得る。代わりに、温度は例えば約50°Cから約80°C、例えば約60°Cといった、高温にも維持され得る。温度は、装置100といった装置の外表面から読み取ることが可能な、記録装置または温度計(図示せず)によってモニタリングされてよい。少なくとも1つの態様では、パネルといった材料システムを、塩水噴霧といったように流体に曝露することと、材料システムを屈曲させることとは、同時に実施されてよい。少なくとも1つの態様では、パネルといった材料システムを、塩水噴霧といったように流体に曝露することと、材料システムを屈曲させることとは、逐次的に実施されてよい。少なくとも1つの態様では、材料システムの湿気への曝露と屈曲は、同時に行われても逐次的に行われてもよく、それによって、運行中の材料システムが受け得る不規則なまたは変動し得る飛行固有のひずみプロファイルの再現がもたらされる。少なくとも1つの態様では、材料システムの流体への曝露及び/または材料システムの屈曲は、材料システムの目視点検、再配置、もしくは取り外しのため、及び/または液体リザーバ104内の溶液といった溶液の補充のため、中断されてよい。チャンバ(曝露ゾーン)内で低湿度の空気を使用するプロセスについては、塩水噴霧といったように流体を導入することなく、チャンバ(曝露ゾーン)から空気を除去するために真空を使用することができ、及び/またはチャンバ(曝露ゾーン)内に(例えば相対湿度30%未満の)乾燥空気を供給することができる。
【0064】
空気といったガスが、約15PSIから約200PSI、例えば約15PSIから約20PSI、例えば約60PSIといった圧力で、装置内に導入され得る。本開示の処理中、任意の数の湿度サイクルが実施されてよく、また、任意の数の湿度サイクルは、約1周期から約100,000周期、例えば約2周期から約1,000周期、例えば約3周期から約100周期、例えば約5周期から約10周期であってよい。周期的屈曲中には、これらの圧力が周期的に適用され得る。例えば、第1の圧力において、第1の屈曲(例えば100屈曲周期)が実施され得る。第1の圧力とは異なる第2の圧力において、第2の屈曲(例えば100屈曲周期)が実施され得る。ガスの温度は、チャンバ(曝露ゾーン)の温度に基づいた温度であることができる。例えば、極低温条件下では、チャンバに導入されるガスの温度は、高温の曝露ゾーン条件下においてチャンバに導入されるガスの温度よりも低くてよい。にも関わらず、低温の周期的屈曲処理中、または高温の周期的屈曲処理中には、チャンバ内に提供されるガスの温度は、約-30°Cから約50°C、例えば約-10°Cから約25°C、例えば約0°Cから約20°C、例えば約10°Cまたは約25°Cであることができる。これによって、約-30°Cから約50°C、例えば約-10°Cから約25°C、例えば約0°Cから約20°C、例えば約10°Cまたは約25°Cである、チャンバ(例えばチャンバ内の空気)の温度がもたらされる。本開示の処理中、任意の数の温度サイクルが実施されてよく、また、任意の数の温度サイクルは、約1周期から約100,000周期、例えば約2周期から約1,000周期、例えば約3周期から約100周期、例えば約5周期から約10周期であってよい。周期的屈曲中には、これらの温度が周期的に適用され得る。例えば、第1の温度において、第1の屈曲(例えば100屈曲周期)が実施され得る。第1の温度とは異なる第2の温度において、第2の屈曲(例えば100屈曲周期)が実施され得る。
【0065】
さらに、または代わりに、モータ/アクチュエータに連結された任意の適切な温度制御装置(例えばヒータ)を使用して、モータ/アクチュエータの温度を制御することができる。例えば、モータ/アクチュエータの表面は、モータ/アクチュエータの表面に連結された熱電対によって決定されるとおり、約-30°Cから約50°C、例えば約-10°Cから約25°C、例えば約0°Cから約20°C、例えば約10°Cまたは約25°Cである温度を有し得る。
【0066】
本開示の周期的処理の前、最中(その場)、及び/または後に、電気化学的インピーダンス分光計を使用して、材料システムの1つ以上の層のインピーダンスを測定するこができる。電気化学的インピーダンス分光法(EIS)は、材料システムの1つ以上の層のインピーダンスの、その場における測定を提供する。この測定によって、被覆劣化、基板と被覆の界面における腐食、及び一定期間にわたって吸収された湿気といった、被覆特性を判定するための情報が提供される。本開示の電気化学的インピーダンス分光法プロセスは、約5mVから約150mV、例えば約10mVから約20mVといった励起電位において実施され得る。EIS用の電気的周波数は、約0.1Hz~10,000Hz、例えば約1Hzから約5,000Hz、例えば約1Hzから約100Hz、例えば約0.01Hzから約10Hz、または約100Hzから約4,000Hzであってよい。少なくとも1つの態様では、EISは、約0.5Hzから約100Hz、例えば約1Hzから約10Hzの固定周波数で、一定の間隔で連続的に実施される。
【0067】
態様
条項1. 装置であって、
湿度、圧力、または温度のうちの1つ以上を制御するように構成されたチャンバと、
材料システムを屈曲するように構成された顎部と、
チャンバ内に配置された筐体であって、断熱材料を含む筐体と、
筐体内に配置されたモータまたはアクチュエータと、
第1の端部において筐体と、且つ第2の端部においてチャンバの第1の壁と連結された注入管と、
第1の端部において筐体と、且つ第2の端部においてチャンバの第1の壁または第2の壁に連結された排出管と、
を備える装置。
【0068】
条項2. 断熱材料がポリエチレンまたはガラス繊維である、条項1に記載の装置。
【0069】
条項3. 断熱材料が高密度ポリエチレンである、条項1または2に記載の装置。
【0070】
条項4. 断熱材料がモータまたはアクチュエータに直接連結されている、条項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【0071】
条項5. 筐体と顎部の間に配置されたプレートをさらに備え、該プレートが断熱材料を含む、条項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【0072】
条項6. プレートの断熱材料がポリエチレンまたはガラス繊維である、条項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【0073】
条項7. プレートの断熱材料が高密度ポリエチレンである、条項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【0074】
条項8. 顎部が断熱材料を含む、条項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【0075】
条項9. 顎部の断熱材料が高密度ポリエチレンである、条項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【0076】
条項10. 第1の注入管が第1のガス源及び第2のガス源を備える、条項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【0077】
条項11. 第1のブロック及び第2のブロック、
第1の端部において第1のブロックと、且つ第2の端部において第2のブロックと連結された第1のガイドロッド、並びに
第1の端部において第1のブロックと、且つ第2の端部において第2のブロックと連結された第2のガイドロッド
をさらに備える、条項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【0078】
条項12. 第1のブロックと第2のブロックが基部及び、基部から延びる複数の支柱を備える、条項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【0079】
条項13. 筐体と顎部の間に配置されたプレートに第1のブロックが搭載され、プレートが断熱材料を含む、条項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【0080】
条項14. 顎部が顎部の第1の端部において第1のブロック上に配置され、顎部の第2の端部において第2のブロック上に配置される、条項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【0081】
条項15. 排出口、ヒータ、及び顎部と電気連通するコントローラ
をさらに備える、条項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【0082】
条項16. 顎部が、基部に垂直な線に対して約0°から90°、例えば15°から30°で配置されている、条項1から15のいずれか一項に記載の装置。
【0083】
条項17. 第2の材料システムを屈曲させるように構成された第2の顎部をさらに備える、条項1から16のいずれか一項に記載の装置。
【0084】
条項18. チャンバが、湿度、圧力、及び温度のそれぞれを制御するように構成された、請求項1から17のいずれか一項に記載の装置。
【0085】
条項19. 材料性能を判定するための方法であって、
0%から98%の相対湿度に材料システムを曝露すること、及び材料システムをチャンバ内で第1の温度で屈曲させることであって、チャンバがチャンバ内に配置された筐体及び筐体内に配置されたモータまたはアクチュエータを備え、筐体が断熱材料を含む、材料システムを曝露すること及び材料システムを屈曲させること、並びに、
屈曲中に、第1の温度とは異なる第2の温度においてモータまたはアクチュエータを作動させること、を含む方法。
【0086】
条項20. ガスを筐体に提供することをさらに含む、条項19に記載の方法。
【0087】
条項21. ガスが空気である、条項19または20に記載の方法。
【0088】
条項22. 筐体にガスを提供することが、第1のガス源からモータまたはアクチュエータの第1の表面にガスを提供することと、第2のガス源からモータまたはアクチュエータの第2の表面にガスを提供することとを含む、条項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【0089】
条項23. チャンバが約-70°Cから約-20°Cの温度を有し、筐体が約-10°Cから約25°Cの温度を有する、条項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【0090】
条項24. チャンバが約50°Cから約80°Cの温度を有し、筐体が約-10°Cから約25°Cの温度を有する、条項19から23のいずれか一項に記載の方法。
【0091】
条項25. 第1の温度とは異なる第2の温度においてモータまたはアクチュエータを作動することが、モータまたはアクチュエータに連結された温度制御装置を使用して実施される、条項19から24のいずれか一項に記載の方法。
【0092】
条項26. 屈曲が、約0.1Hzから約60Hzまでの周波数で、約500周期以上にわたって実施される、条項19から25のいずれか一項に記載の方法。
【0093】
条項27. チャンバが30%以下である相対湿度を有する、条項19から26のいずれか一項に記載の方法。
【0094】
条項28. チャンバが80%以上である相対湿度を有する、条項19から27のいずれか一項に記載の方法。
【0095】
条項29. 材料システムの曝露と材料システムの屈曲とが同時に実施される、条項19から28のいずれか一項に記載の方法。
【0096】
条項30. 材料システムの曝露と材料システムの屈曲とが逐次的に実施される、条項19から29のいずれか一項に記載の方法。
【0097】
条項31. 電気化学的インピーダンス分光計を用いて、材料システムのインピーダンスを検出することをさらに含む、条項19から30のいずれか一項に記載の方法。
【0098】
条項32. 装置であって、
湿度、圧力、または温度のうちの1つ以上を制御するように構成されたチャンバと、
材料システムを屈曲するように構成された顎部と、
チャンバ内に配置された筐体であって、断熱材料を含む筐体と、
筐体内に配置されたモータまたはアクチュエータと、
第1の端部において筐体と、且つ第2の端部においてチャンバの第1の壁と連結された注入管と、
第1の端部において筐体と、且つ第2の端部においてチャンバの第1の壁または第2の壁に連結された排出管と、
顎部、モータまたはアクチュエータ、注入管、及び排出管のうちの1つ以上の電気連通するコントローラと、
を備える装置。
【0099】
条項33. コントローラと電気連通するヒータをさらに備える、条項32に記載の装置。
【0100】
条項34. モータを備える装置であって、
コントローラがモータと電気連通しており、
モータが顎部と電気連通している、
条項32または33に記載の装置。
【0101】
条項35. モータまたはアクチュエータと、
モータまたはアクチュエータに連結された断熱体プレートと、
第1のガス源と
を備える筐体。
【0102】
条項36. 筐体の表面内に配置された凹部と、
断熱プレートの表面に沿って配置された第2のガス源と、
をさらに備える、条項35に記載の筐体。
【0103】
条項37. 断熱プレートが、ポリエチレンまたはガラス繊維のうちの1つ以上を含む、条項35または36に記載の筐体。
【0104】
条項38. 断熱プレートがモータまたはアクチュエータに直接接触している、条項35から37のいずれか一項に記載の筐体。
【0105】

材料
Gamry Reference 600ポテンショスタット(2)
一体型屈曲装置付きThermotron SE-2000環境チャンバ
Omegaワイヤレス温度/湿度センサまたはイーサネットデータ接続
【0106】
試験手順
1. 試験前のパネルの特性評価
ベンチ頂面に、広範囲の試験パネルを置く。
周囲実験室条件において、全て良好な双極電極接続のEISを、フルに1スイープ実施する。
【0107】
2. ポテンショスタットを、EISのモニタリング用にプログラムする。
35°C/相対湿度95%を維持するようにあらかじめセットされた環境チャンバ内に、パネルを置く。
以下のパラメータを用いて、Gamryポテンショスタットを、連続した双極電極EISモニタリング用にプログラムする。
導電層のインピーダンスのモニタリング
・L1-R1接続(両電極とも、導電層内に埋め込まれている)
・10Hz周波数
・10mVの励起電圧
完全被覆のスタックアップ用のインピーダンスのモニタリング
・R3-SまたはL3-S(電極の1つはトップコート内にあり、1つは基板に直接はんだ付けされている)
・10Hz周波数
・10mVの励起電圧
連続したモニタリングのために、試験中ずっと、電極の接続はそのまま放置する。
【0108】
3. 環境試験の周期をプログラムする
Thermotron Se-2000チャンバを、24時間の湿/乾周期で運転するようにプログラムする。
ステップ1. 周囲環境から25°C/相対湿度30%まで、10分間で勾配を付けて移行する。
ステップ2. 8時間にわたって、25°C/相対湿度30%を保つ(冷涼、乾燥のステップ)。
ステップ3. 35°C/相対湿度95%まで、10分間で勾配を付けて移行する。
ステップ4. 8時間にわたって、35°C/相対湿度95%を保つ(高温、湿潤のステップ)。
ステップ5. -54°C/相対湿度不制御まで、10分間で勾配を付けて移行する。
ステップ6. 8時間にわたって、-54°C/相対湿度不制御を保つ(極低温のステップ)。
【0109】
4. 機械的屈曲
極低温のステップの最後の3時間中に、動的装置内で、8mmの移動量を用いて0.1Hでパネルをゆっくりと屈曲させる。500周期にわたって屈曲させる。6周期にわたって、または試験用パネルが破損するまで、複合効果試験を繰り返す。
【0110】
5. 試験後のパネルの特性評価
テストの完了後、全て良好な双極電極接続のEISを、フルに1スイープ実施する。
チャンバからパネルを取り外し、標準的な実験室条件内に、最短24時間放置する。
周囲実験室条件において、全ての双極EIS測定を繰り返す。
これで試験が終了する。
【0111】
本明細書に記載の装置及び方法を用いた一試験において、アルミニウム基板と、ノッチ付き間隙と、(1つ以上の導電層を有する)多層式被覆システムと、埋め込み式センサとを有する、模擬ラップジョイントパネルが、極低温の維持を含む環境への周期的曝露と同時に行う動的な機械的屈曲からなる、周期的試験プロトコルに供された。この試験の目的は、テストパネルが、周期的な環境への曝露及び氷点下温度における動的な機械的屈曲を含む複数のストレス要因を同時に受ける際の、被覆スタックアップの劣化を調査することであった。対象とする劣化モードは、被覆スタックアップを通る水分の拡散、(被覆インピーダンスによって測定される)導電層内における亀裂の形成、並びに、ノッチ付き間隙上に生じる亀裂の形成及び成長である。
【0112】
これらのメカニズムを開始するために、試験パネルは、3つの設定点の間の環境周期に供された。3つの設定点とは、35°C/相対湿度(RH)95%の高温高湿条件に8時間、-54°Cの極低温(非制御の周囲湿度)に8時間、25°C/30%RHの低温乾燥条件に8時間である(図8)。パネルは、極低温ステップの終了時には、500周期の動的屈曲を受けた(図8)。屈曲は、8mmの移動距離で行われた。これは、間隙に対する1%のひずみと同等である。導電層(電極L1-R1)及びスタックアップ(電極L3-S/R3-S)の連続インピーダンスによって、被覆劣化がモニタリングされた。温度/湿度の周期実施中、及び凍結条件における屈曲中の双方で、その場におけるEISの測定を介して、導電層の亀裂がモニタリングされた。
【0113】
測定された被覆インピーダンスは、-54°Cへの凍結によって低下し、加熱によって上昇した(図9)。パネルが-54°Cで屈曲され、間隙を横切ってひずみが加えられたときに、インピーダンスの急激な上昇が測定された(図9、破線の四角内)。しかし、パネルが屈曲されていない期間中にはインピーダンスは低下し、基礎値近くまで戻った。数日にわたって周期を実施した後、インピーダンスの基礎値はわずかに上昇した。理論に束縛されるものではないが、間隙のパネル上のひずみが解放されると、導電層内の導電性粒子が、被覆の亀裂部分にわたる接触を再確立することが可能になるという仮説を立てることができる。しかし、この限界到達未満の損傷が何周期かにわたって蓄積されるにつれて、被覆は完全に回復することができなくなる。
【0114】
概して、本開示の装置及び方法は、極低温条件及び高温条件に適切な制御試験環境、並びにパネル、2つ以上のパネルの間の被覆済みラップジョイント、翼と胴体の組立部、またはこれらの組み合わせなどといった航空機の材料システムといった様々な材料システムに関する、被覆劣化及び/または腐食といった材料性能のモニタリングを提供する。本開示の材料システム、装置、及び方法は、極低温条件下及び高温条件下といった、制御して曝露される環境内における、運航中の現実世界の故障モード及び故障メカニズムを再現する機能を提供する。
【0115】
本開示の装置内における材料システムの機械的屈曲の結果、材料システムの腐食は増進し、被覆性能は低下し得る。機械的ストレスと環境的ストレスの複合効果が結合して、現実世界環境における航空機パネルといった材料システムが受ける被覆破損及び/または腐食をより正確に再現する、低下が引き起こされる。その結果、本開示の方法及び装置によって、極低温条件及び高温条件といった航空機の現実世界における利用中に、航空機の材料システムに見られる被覆損傷、及び/または腐食が、より正確にシミュレートされる。本開示の材料システム、方法、および装置によって、スタンドアロンの材料システム及び材料層間の界面の、被覆のインピーダンス及び腐食の試験が可能になる。この試験によって、材料システムが航空機の一部として使用されている間の、パネルといった材料システムが受ける劣化が、より正確に表現される。本開示の材料システム、方法、および装置は、不規則な飛行固有のひずみプロファイルの再現をさらに提供する。それによって、航空機の材料システムの、予測的調査及び法科学的調査の改良が実施され得る。
【0116】
本開示の材料システム、方法、及び装置は、屋外曝露中、の被覆の電気化学的モニタリング、環境チャンバ内の加速試験、及び使用中の(例えばその場における)材料システムの電気化学的モニタリングを提供する。その場における電気化学的モニタリングによって、材料システムを目視点検することなしに材料システムの完全性の評価が提供され、材料システムを屈曲及び/または環境条件に曝露するために停止することは必要とされない。
【0117】
以上は本開示の態様を対象としているが、本開示の他の態様及びさらなる態様は、その基本的な範囲を逸脱しない限り、考案してもよい。さらに、上記はパネル、2つ以上のパネルの間の被覆済みラップジョイント、及び翼と胴体の組立部といった、航空機材料システムといった、材料システムを対象としているが、本開示の諸態様は、航空宇宙産業、自動車産業、海洋産業、エネルギー産業などで使用される、多要素型の材料システムといった、航空機に関連付けられていない他の材料システムを対象とし得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9