(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】設備基礎の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/32 20060101AFI20230814BHJP
E02D 27/01 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
E02D27/32 Z
E02D27/01 D
(21)【出願番号】P 2019221076
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】来栖 徳治
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-200533(JP,A)
【文献】特開平08-284415(JP,A)
【文献】特開2003-193490(JP,A)
【文献】特開2016-132917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/32
E02D 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面から傾斜した傾斜屋上面を有する建物において当該傾斜屋上面から上方に立ち上った設備基礎の構築方法であって、
(A)前記傾斜屋上面において第1型枠を設置する設置領域を区画するように、区画部材を前記傾斜屋上面に固定し、
(B)
前記(A)の後、前記第1型枠を前記設置領域に配置するとともに、
前記第1型枠が前記区画部材により位置決めされた状態で、前記傾斜屋上面と前記第1型枠の下端面の一部との間に高さ調整部材を差し込むことにより、第1型枠の姿勢を水平に調整し、
(C)前記第1型枠の内部空間にコンクリートを打設する、設備基礎の構築方法。
【請求項2】
前記(B)において、前記傾斜屋上面と前記第1型枠の前記下端面の前記一部との前記間に前記高さ調整部材を差し挟むことにより前記第1型枠の姿勢を水平に調整した状態で、前記高さ調整部材の下面が前記傾斜屋上面に接しているとともに、前記高さ調整部材の全体が、前記傾斜屋上面よりも上方に位置している、請求項1に記載の設備基礎の構築方法。
【請求項3】
前記間に差し挟んだ前記高さ調整部材は、前記(C)の前において、前記第1型枠の前記下端面を上方へ移動させることなく、前記傾斜屋上面に沿って移動させるだけで前記間から取り外し可能である、請求項1又は2に記載の設備基礎の構築方法。
【請求項4】
水平な姿勢の前記第1型枠は、鉛直を向く中心軸回りに延びて前記内部空間を形成する本体部と、前記中心軸から離れる外方に前記本体部の上端部から延びる水切り部を備えるものであり、
前記(B)の後であって、前記(C)の前に、前記第1型枠の外周面を囲む第2型枠を組み立てるとともに、当該第2型枠を前記第1型枠に固定し、
前記第1型枠に固定された前記第2型枠は、傾斜屋上面に直接又は他の部材を介して支持され、前記水切り部の外周面に密着しており、前記水切り部よりも上方の位置まで延びており、
前記(C)において、前記第1型枠の前記内部空間だけでなく、前記第1型枠よりも上方側において前記第2型枠の内部空間にも、コンクリートを打設する、請求項1
~3のいずれか一項に記載の設備基礎の構築方法。
【請求項5】
前記(A)において、前記区画部材は、前記設置領域を区画するとともに、前記傾斜屋上面に密着した状態で前記傾斜屋上面に固定され、
前記(C)において、前記区画部材は、姿勢が水平に調整された前記第1型枠の下端部を囲み、該下端部に密着している、請求項1
~4のいずれか一項に記載の設備基礎の構築方法。
【請求項6】
前記(B)の後であって前記(C)の前に、前記高さ調整部材を、前記傾斜屋上面と前記第1型枠の前記下端面との間から取り除く、請求項1~
5のいずれか一項に記載の設備基礎の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋上に設置される設備基礎の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物(例えば集合住宅)の屋上において、各種水槽、避雷針、各種アンテナ、各種配管、太陽光発電パネルなどの設備機器を設置するために設備基礎を設けている。設備機器は、屋上の上面(以下で屋上面ともいう)から上方に立ち上がるように屋上面に設けられる。設備基礎は、屋上面に取り付けた型枠にコンクリートを打設することにより形成されている(例えば特許文献1、2)。
【0003】
屋上面が、雨水を排水ために、水平面に対して傾斜している面(以下で傾斜屋上面ともいう)である場合には、従来において、上記型枠が水平になるように傾斜屋上面に対する型枠の姿勢を調整している。これにより、傾斜屋上面が水平面から傾斜していても、設備基礎の各部が水平となる。
【0004】
例えば、特許文献1では、上記型枠である土台管と、傾斜屋上面を形成する鉄筋コンクリート躯体とを、複数の調整ボルトを介して結合させている。各調整ボルトの下端部は、鉄筋コンクリート躯体に形成したボルト穴に螺着される。各調整ボルトの調整により、鉄筋コンクリート躯体に対する土台管の傾きを調整している。これにより、鉄筋コンクリート躯体の上面(傾斜屋上面)が傾斜していても、土台管を水平に設置できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-132917号公報
【文献】特開2018-165436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、型枠の傾きを調整するには、傾斜屋上面と本体部との間に、複数の調整ボルトを配置する必要がある。したがって、特許文献1では、調整ボルトの下端部が螺着されるボルト穴を鉄筋コンクリート躯体に形成し、ボルトの上端部を型枠に高さ調整可能に連結する機構(ナットなど)を設ける必要がある。そのため、第1型枠を水平に調整するための手間をより少なくすることが望まれる。
【0007】
なお、特許文献2には、建物の屋上に設置される設備基礎が記載されているが、屋上面が傾斜している場合に設備基礎用の型枠を水平に調整するための手段が開示されていない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、傾斜屋上面に設備基礎を構築する場合に、設備基礎用の型枠を水平に調整するための手間を減らすことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水平面から傾斜した傾斜屋上面を有する建物において当該傾斜屋上面から上方に立ち上った設備基礎の構築方法であって、
(A)前記傾斜屋上面において第1型枠を設置する設置領域を区画するように、区画部材を前記傾斜屋上面に固定し、
(B)前記第1型枠を前記設置領域に配置するとともに、前記傾斜屋上面と前記第1型枠の下端面の一部との間に高さ調整部材を差し込むことにより、第1型枠の姿勢を水平に調整し、
(C)前記第1型枠の内部空間にコンクリートを打設する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、第1型枠を傾斜屋上面に設置する場合に、第1型枠と傾斜屋上面との間に高さ調整部材を差し込むだけで、第1型枠を水平に調整するので、第1型枠を水平に調整するための手間を減らすことができる。
【0011】
しかも、第1型枠が区画部材に囲まれた状態で、第1型枠を水平に調整できる。したがって、第1型枠が区画部材により位置決めされた状態で、第1型枠を水平に調整できる。
【0012】
よって、第1型枠の姿勢調整と位置決めを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態による設備基礎の構成例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態による設備基礎の構築方法を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態による設備基礎の構築方法の説明図である。
【
図5】本発明の実施形態による設備基礎の構築方法の別の説明図である。
【
図6】本発明の実施形態による設備基礎の構築方法の別の説明図である。
【
図7】本発明の実施形態による設備基礎の構築方法の別の説明図である。
【
図8】本発明の実施形態による設備基礎の構築方法の別の説明図である。
【
図9】本発明の実施形態による設備基礎の構築方法の別の説明図である。
【
図10】本発明の実施形態による設備基礎の構築方法の別の説明図である。
【
図11】本発明の実施形態による設備基礎の構築方法の別の説明図である。
【
図12】本発明の実施形態による設備基礎の構築方法の別の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0015】
(設備基礎の構成)
図1は、本発明の実施形態による設備基礎10の構成例を示す図であって鉛直面による断面図である。
図2は、
図1のII-II矢視図である。
図1は、
図2のA-A断面図である。
【0016】
設備基礎10は、建物(例えば集合住宅)の屋上の上面1aに設置される。この上面1aは平面であってよい。また、この上面1aは、建物の屋上に形成されたコンクリートスラブ1の上面であってよい。本実施形態では、屋上の上面1aは、雨水を流すために水平面に対して傾いた面(以下で、傾斜屋上面という)である。傾斜屋上面1aの水勾配は、例えば1/50~1/100の範囲内の勾配であってよい。すなわち、水平面に対する傾斜屋上面1aの水勾配θは、arctan1/50~arctan1/100の範囲内の角度であってよい。なお、
図1では、傾斜屋上面1aの水勾配を強調して図示している。
【0017】
設備基礎10は、傾斜屋上面1aから上方に立ち上るように構築されている。設備基礎10の上面10aには、設備機器が設置される。この設備機器としては、各種水槽(例えば消防用水槽)、避雷針、各種アンテナ(例えばテレビアンテナ)、各種配管、又は太陽光発電パネルがある。
【0018】
設備基礎10は、第1型枠3とコンクリート9と防水シート11を備える。
【0019】
第1型枠3は、傾斜屋上面1aに設置される。第1型枠3は、本実施形態では、本体部5と水切り部7を有する。
【0020】
本体部5は、第1型枠3の内部空間を囲むとともに傾斜屋上面1aから上方に立ち上がっている。本体部5は、第1型枠3の中心軸Cを回る周方向に延びて1周している外周面5aを有する。外周面5aは、中心軸Cと平行な方向から見た場合に、多角形(
図2では矩形)であるのがよいが、他の形状(例えば円形)であってもよい。
【0021】
本体部5の下端面3aは、全体が平面に形成されていてよい。この場合、本体部5の外周面5aは、下端面3aに対して垂直に形成されていてよい。
【0022】
水切り部7は、中心軸Cから離れる外方(例えば中心軸Cと直交する方向)に本体部5の上端部から延びている。また、水切り部7は、中心軸Cを回る周方向に延びて1周している。水切り部7の外周面7aは、中心軸Cと平行な方向から見た場合に、多角形(
図2では矩形)であるのがよいが、他の形状(例えば円形)であってもよい。
【0023】
水切り部7の下面には、上方に窪んだ溝7bが形成されている。この溝7bは、周方向に延びて1周している。溝7bは、外周面7aからの雨水が、水切り部7の下面を伝わって本体部5まで流れるのを防止する機能を有する。
【0024】
本体部5の高さは、周方向位置によらず一定であってよい。また、水本体部5の下面に対する水切り部7の高さは、周方向位置によらず一定である。
【0025】
構築された設備基礎10において、第1型枠3の姿勢は水平になっている。すなわち、この状態で、中心軸Cが鉛直を向いている。また、中心軸Cを回る周方向の位置によらず、平面である下端面3aに対する水切り部7の高さ(中心軸C方向の位置)は一定であってよい。
【0026】
第1型枠3は、一例では、ガラス繊維補強セメントにより形成されていてよいが、他の材料で形成されていてもよい。なお、本体部5と水切り部7とは、互いに一体的に形成されてもよいし、互いに別部材である本体部5と水切り部7とを結合させることにより第1型枠3を形成してもよい。
【0027】
コンクリート9は、第1型枠3の内部空間に形成された第1コンクリート部9aを含む。コンクリート9の上面は、設備基礎10の上面10aとしての水平面となっている。
【0028】
本実施形態では、コンクリート9は、第2コンクリート部9bを更に含む。第2コンクリート部9bは、第1コンクリート部9aおよび水切り部7の上部において第1コンクリート部9aと一体に形成されている。第2コンクリート部9bは、外周面9b1と上面10aとを有している。外周面9b1は鉛直面であってよい。なお、コンクリート9の内部には、鉄筋4が設けられている。
【0029】
傾斜屋上面1aにおいて、設備基礎10が存在しない領域には、防水シート12が設けられている。
図1の例では、傾斜屋上面1aにおいて、設備基礎10が存在しない領域には断熱材15が設けられ、この断熱材15上に防水シート12が設けられている。断熱材15は、断熱板であってよい。
【0030】
防水シート11は、本体部5の外周面5aを覆うように設けられる。
図1の例では、防水シート11を外周面5aに取り付けるために、上側塩ビ鋼板17と下側塩ビ鋼板18が設けられる。上側塩ビ鋼板17と下側塩ビ鋼板18の各々は、鋼板の外面をポリ塩化ビニール樹脂でコーティングしたものである。
【0031】
上側塩ビ鋼板17は、本体部5の上側部分の外周面5aを覆うように、アンカー21により当該上側部分に固定されており、下側塩ビ鋼板18は、本体部5の下側部分の外周面5aを囲むように、アンカー22により傾斜屋上面1aに固定されている。上側塩ビ鋼板17と下側塩ビ鋼板18の各々は、
図1に示すように断面がL字形であってよい。防水シート11の上端部は、溶着又は接着剤により上側塩ビ鋼板17に結合され、防水シート11の下端部は、溶着又は接着剤により下側塩ビ鋼板18に結合されている。また、防水シート12は、防水シート11の下端部に溶着又は接着剤により結合されている。
【0032】
(設備基礎の構築方法)
図3は、本発明の実施形態による設備基礎10の構築方法を示すフローチャートである。
図4~
図12は、本発明の実施形態による設備基礎10の構築方法を示す説明図である。本実施形態による構築方法は、ステップS1~S8を有する。
【0033】
図4は、水平方向に見た断面図であり、
図5のIV-IV断面図である。
図5は、
図4のV-V矢視図である。
【0034】
ステップS1において、例えば
図4と
図5に示すように、傾斜屋上面1aへの第1型枠3の設置領域R(
図5の破線で囲んだ領域)を区画するように、区画部材31を傾斜屋上面1aに固定する。この状態で、区画部材31における設置領域R側の側面が、設置領域Rの外周縁に位置している。
図5の例では、設置領域Rは、傾斜屋上面1aと垂直な方向から見た場合に矩形である。なお、
図4と
図5の例のように、区画部材31の外周において複数本の固定部材35が傾斜屋上面1aに固定されてもよい。
【0035】
区画部材31と固定部材35は、例えば桟木であってよいが、これに限定されない。傾斜屋上面1aへの区画部材31と固定部材35の固定は、コンクリート釘(図示せず)によりなされてよい。
【0036】
なお、
図4と
図5のように、設置領域Rには、コンクリートスラブ1から延びる鉄筋4が予め設けられていてよい。
【0037】
ステップS2において、例えば水平方向に見た
図6のように、第1型枠3を設置領域において傾斜屋上面1aに配置する。この時、第1型枠3を区画部材31の内側の傾斜屋上面1aに置くだけで、第1型枠3を設置領域Rに位置決めできる。
【0038】
ステップS3において、例えば
図7のように、傾斜屋上面1aと第1型枠3の下端面3aの一部との間に1つ又は複数の高さ調整部材33を差し込むことにより、第1型枠3の姿勢が水平になるように(すなわち中心軸Cが鉛直を向くように)第1型枠3の姿勢を調整する。
図7は、水平方向に見た断面図であり、
図8のVII-VII断面図である。
図8は、
図7のVIII-VIII矢視図である。高さ調整部材33は、くさび形状を有するものであってよい。高さ調整部材33は、ベニヤ板の小片であってもよい。なお、ステップS2とステップS3とは同時に行われてもよい。
【0039】
ステップS4において、例えば
図9のように、第1型枠3の外周面5a,7aを囲む第2型枠19を組み立てるとともに、当該第2型枠19を第1型枠3に固定する。
図9は、水平方向に見た断面図であり、
図10のIX-IX断面図である。
図10は、
図9のX-X矢視図である。
【0040】
第1型枠3に固定された第2型枠19は、傾斜屋上面1aに直接又は他の部材(
図9の例では、固定部材35)を介して支持される。これにより、第1型枠3の姿勢(第1型枠3の下端面3a)が水平に保たれた状態で、第1型枠3は、第2型枠19を介して傾斜屋上面1aに支持される。また、第1型枠3に固定された第2型枠19は、水切り部7の外周面7aに密着しており、水切り部7よりも上方の位置まで延びている。また、この状態で、第1型枠3の内部空間と第2型枠19の内部空間とは連通している。
【0041】
図10の例では、水切り部7の外周面7aは、鉛直方向(中心軸C方向)から見た場合に矩形である。すなわち、水切り部7の外周面7aは、当該矩形の4辺にそれぞれ相当する4つの平面からなる。この場合、第2型枠19は、水切り部7の当該4つの平面にそれぞれ密着する4枚のパネル19aにより構成される。このように各パネル19aは、水切り部7の外周面7aにおける対応する平面に密着するように固定機構34により第1型枠3に固定される。
【0042】
固定機構34は、例えば、
図9のように1対の螺合部材34a,34bとボルト34cを備える。ステップS4において、ボルト34cが貫通する穴を、パネル19aと第1型枠3(本体部5)に形成し、その後、これらの穴を貫通するようにボルト34cを配置し、1対の螺合部材34a,34bをボルト34cの両端部にそれぞれ螺合させ、1対の螺合部材34a,34bにより、第1型枠3とパネル19aとを挟み込んで両者を互いに締め付ける。これにより、パネル19aを第1型枠3に固定する。このように各パネル19aを固定機構34により第1型枠3に固定する。なお、各パネル19aを、複数の固定機構34により第1型枠3に固定してよい。固定機構34の一例では、詳しい図示を省略するが、一方の螺合部材34aはPコン(登録商標)であり、他方の螺合部材34bはフォームタイ(登録商標)であってよい。
【0043】
ステップS5において、傾斜屋上面1aと第1型枠3の下端面3aとの間から高さ調整部材32を取り外す。この時、第1型枠3は、第2型枠19を介して傾斜屋上面1aに支持されているので、高さ調整部材32を取り外しても、第1型枠3の姿勢は、変化せず、水平に保たれる。すなわち、第1型枠3の下端面3aが水平に保たれる。
【0044】
ステップS6において、水平方向に見た断面図である
図11のように、第1型枠3の内部空間と、第1型枠3よりも上方側における第2型枠19の内部空間とに、コンクリート9を打設する。
【0045】
ステップS6の時に、区画部材31は、第1型枠3の下端面3aと傾斜屋上面1aとの隙間を第1型枠3の外周面5aの側から塞いでいる、これにより、コンクリート9が当該隙間を通して第1型枠3の外部へ流出することを防止できる。
【0046】
また、打設したコンクリート9の流動性が残っているうちに、当該コンクリート9の上面10aを水平に均す。これにより、コンクリート9の上面10aが水平になる。
【0047】
その後、打設したコンクリート9が固まったら、ステップS7において、第2型枠19を第1型枠3から取り外すとともに、螺合部材34bとボルト34cを第1型枠3から取り外す。また、ボルト34cが貫通していた第1型枠3における穴にはモルタルを充填してもよい。更に、区画部材31と固定部材35をコンクリートスラブ1から取り外す。
【0048】
ステップS8において、防水施工により例えば
図1に示すような設備基礎10が構築される。すなわち、ステップS8において、例えば、
図1のように、コンクリートスラブ1の上面1aに断熱材15を取り付け、上側塩ビ鋼板17を本体部5の上側部分にアンカー21で固定し、下側塩ビ鋼板18をコンクリートスラブ1にアンカー22で固定する。次いで、本体部5を覆うように防水シート11を配置し、防水シート11の上端部を溶着又は接着剤により上側塩ビ鋼板17に結合させ、防水シート11の下端部を、本体部5の下端部から傾斜屋上面1aに沿う方向へ延びるように曲げて、溶着又は接着剤により下側塩ビ鋼板18に結合させる。
【0049】
図12は、
図10において上述のようにパネル19a、固定機構34、区画部材31、及び固定部材35を取り外し、断熱材15を傾斜屋上面1aに取り付け、本体部5を囲むように4枚の下側塩ビ鋼板18を取り付けた直後の状態を示す。各下側塩ビ鋼板18は、アンカー22により、断熱材15の上からコンクリートスラブ1に固定される。各下側塩ビ鋼板18は、コンクリートスラブ1の上面1aに沿う第1部分18aと、第1部分18aから本体部5に接触しながら立ち上がる第2部分18bとを有する。このように4枚の下側塩ビ鋼板18が、それぞれ、本体部5の下側部分の外周面5aを構成する4つの平面に取り付けられる。同様に、4枚の上側塩ビ鋼板17が、それぞれ、本体部5の上側部分の外周面5aを構成する4つの平面に取り付けられる。
【0050】
なお、上側塩ビ鋼板17の上端面と水切り部7の下面との隙間に、シーリング材36を充填してよい。シーリング材36は、例えばシリコンを主成分とするものであってよい。
【0051】
(実施形態による効果)
本実施形態によると、第1型枠3を傾斜屋上面1aに対して設置する場合に、第1型枠3と傾斜屋上面1aとの間に高さ調整部材32を差し込むだけで、第1型枠3を水平に調整するので、第1型枠3を水平に調整するための手間を減らすことができる。しかも、第1型枠3が区画部材31に囲まれた状態で、第1型枠3を水平に調整できる。したがって、第1型枠3が区画部材31により位置決めされた状態で、第1型枠3を水平に調整できる。よって、第1型枠3の姿勢調整と位置決めを容易に行うことができる。
【0052】
また、第1型枠3の姿勢が高さ調整部材32により水平に調整されている状態で、第1型枠3を囲む第2型枠19を第1型枠3に固定し、第2型枠19が傾斜屋上面1aに支持される。したがって、高さ調整部材32を取り外しても、第1型枠3の姿勢は変化せず水平に保たれる。
【0053】
設置領域を区画する区画部材31は、傾斜屋上面1aに密着した状態で傾斜屋上面1aに固定され、姿勢が水平に調整された第1型枠3の下端部を囲み、該下端部に密着している。これにより、区画部材31は、第1型枠3の下端面3aと傾斜屋上面1aとの隙間を第1型枠3の外周面5aの側から塞ぐ。したがって、区画部材31は、第1型枠3の位置決め機能と、コンクリート9が当該隙間を通して第1型枠3の外部へ流出することを防止する機能とを兼ね備える。なお、当該隙間は、高さ調整部材32が差し込まれていた箇所を含む隙間である。
【0054】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変更例1、2の一方又は両方が採用されてもよい。この場合、以下で説明しない点は、上述と同じであってもよいし、上述の内容から適宜に変更されてもよい。
【0055】
(変更例1)
外周面5aと傾斜屋上面1aに対して防水シート11,12を設ける代わりに、外周面5aと傾斜屋上面1aには、アスファルト熱工法によりアスファルト防水材を取り付けてもよい。
【0056】
(変更例2)
第1型枠3は、水切り部7を有していなくてもよい。この場合、第2型枠19は用いなくてもよい。また、この場合、上述のステップS4が省略され、ステップS3の次にステップS5が行われる。
【符号の説明】
【0057】
1 コンクリートスラブ、1a 傾斜屋上面、3 第1型枠、3a 下端面、4 鉄筋、5 本体部、5a 外周面、7 水切り部、7a 外周面、7b 溝、9 コンクリート、9a 第1コンクリート部、9b 第2コンクリート部、9b1 外周面、10 設備基礎、10a 上面、11 防水シート、12 防水シート、15 断熱材、17 上側塩ビ鋼板、18 下側塩ビ鋼板、18a 第1部分、18b 第2部分、19 第2型枠、19a パネル、21,22 アンカー、31 区画部材、32 高さ調整部材、34 固定機構、34a,34b 螺合部材、34c ボルト、35 固定部材、36 シーリング材、C 中心軸、R 設置領域、S 隙間