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特許7330093太陽光発電設備の管理システム、及び太陽光発電設備の管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】太陽光発電設備の管理システム、及び太陽光発電設備の管理方法
(51)【国際特許分類】
   H02S 50/00 20140101AFI20230814BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230814BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
H02S50/00
H02J13/00 301D
H02J3/38 130
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019234799
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021103926
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】前田 和茂
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-162252(JP,A)
【文献】特開2014-154728(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0310427(US,A1)
【文献】特開2016-127763(JP,A)
【文献】特開2006-174609(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104485889(CN,A)
【文献】特開2018-046727(JP,A)
【文献】特開2005-275491(JP,A)
【文献】特開2018-201282(JP,A)
【文献】国際公開第2011/092882(WO,A1)
【文献】特開2006-278712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広域に分散配置される複数の太陽光発電設備が正常か否かを判定する、太陽光発電設備の管理システムであって、
複数の前記太陽光発電設備のうちの判定対象の前記太陽光発電設備の所定期間における複数の時刻での特定時間幅の発電電力量と、前記判定対象を除く複数の前記太陽光発電設備のうちで相関導出対象の前記太陽光発電設備の前記所定期間における前記複数の時刻での前記特定時間幅の発電電力量とから相関係数を導出し、当該相関係数を直接用いて判定対象の前記太陽光発電設備の異常を判定する制御装置を備え
前記制御装置は、現時点よりも前の過去の時点において前記相関係数が予め定められる異常判定閾値以上で、且つ現時点において前記相関係数が前記異常判定閾値未満である場合に、前記判定対象の前記太陽光発電設備が異常の可能性があると判定する第1判定処理を実行する太陽光発電設備の管理システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記第1判定処理を複数の前記判定対象の前記太陽光発電設備に対して実行するものであり、
少なくとも3つ以上の前記判定対象の前記太陽光発電設備に異常の可能性があるという停止条件が満たされる場合、異常の判定を停止する停止処理を実行する請求項1に記載の太陽光発電設備の管理システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記広域内の天候情報を外部から取得可能に構成され、
前記天候情報に前記広域内で天候異常を含むという停止条件が満たされる場合、異常の判定を停止する停止処理を実行する請求項1又は2に記載の太陽光発電設備の管理システム。
【請求項4】
前記制御装置は、系統が停電状態にあるか否かを判定可能に構成され、
前記系統が前記停電状態であるという停止条件が満たされる場合、異常の判定を停止する停止処理を実行する請求項1~3の何れか一項に記載の太陽光発電設備の管理システム。
【請求項5】
前記制御装置は、系統電圧が所定閾値以上である系統電圧上昇状態であるか否かに係る系統電圧情報を保持可能に構成され、
前記制御装置が、前記系統電圧情報から前記系統電圧が前記系統電圧上昇状態であるという停止条件が満たされる場合、異常の判定を停止する停止処理を実行する請求項1~4の何れか一項に記載の太陽光発電設備の管理システム。
【請求項6】
前記制御装置は、広域に分散配置する複数の前記太陽光発電設備の前記所定期間における前記複数の時刻での前記特定時間幅の発電電力量を経時的に記憶する記憶部を有し、
前記停止処理を実行しているときの前記記憶部に記憶された発電電力量は、前記相関係数の導出から除外する請求項2~5の何れか一項に記載の太陽光発電設備の管理システム。
【請求項7】
前記制御装置は、
一の前記判定対象の前記太陽光発電設備の異常の判定に際し、異なる2以上の前記相関導出対象の前記太陽光発電設備との間で導出される前記相関係数に基づいて、前記第1判定処理を実行し、前記第1判定処理の判定結果の複数において異常の可能性があると判定された場合に、前記判定対象の前記太陽光発電設備の異常の可能性が高いと判定する第2判定処理を実行する請求項1又は2に記載の太陽光発電設備の管理システム。
【請求項8】
前記制御装置は、複数の太陽光発電設備の少なくとも一つを構成する機器として設けられている請求項1~7の何れか一項に記載の太陽光発電設備の管理システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記太陽光発電設備とは別に設けられ、且つ通信回線を介して前記太陽光発電設備の前記発電電力量を受信可能に構成されている請求項1~7の何れか一項に記載の太陽光発電設備の管理システム。
【請求項10】
広域に分散配置される複数の太陽光発電設備が正常か否かを判定する管理方法であって、
複数の前記太陽光発電設備のうちの判定対象の前記太陽光発電設備の所定期間における複数の時刻での特定時間幅の発電電力量と、前記判定対象を除く複数の前記太陽光発電設備のうちで相関導出対象の前記太陽光発電設備の前記所定期間における前記複数の時刻での前記特定時間幅の発電電力量とから相関係数を導出し、当該相関係数を直接用いて判定対象の前記太陽光発電設備の異常を判定し、
現時点よりも前の過去の時点において前記相関係数が予め定められる異常判定閾値以上で、且つ現時点において前記相関係数が前記異常判定閾値未満である場合に、前記判定対象の前記太陽光発電設備が異常の可能性があると判定する第1判定処理を実行する管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広域に分散配置される複数の太陽光発電設備が正常か否かを判定する太陽光発電設備の管理システム、及び太陽光発電設備の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、太陽光発電設備の管理システムとして、広域に分散配置される複数の太陽光発電設備の発電データを収集し、当該発電データに基づいて夫々の太陽光発電設備が正常か否かを判定するものが知られている(特許文献1を参照)。
より詳細には、当該管理システムは、例えば、特定の地域に存在する特定の太陽光発電設備が正常か否かを判定するのに際し、特定の地域における日照時間データや太陽高度データ等に基づいて、特定の地域の標準発電量を算出し、当該標準電力量から、特定の太陽光発電設備の発電電力量が大きく乖離している場合に、特定の太陽光発電設備が正常でないと判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-174609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示の技術は、特定の太陽光発電設備が正常か否かの判定を、特定の太陽光発電設備の所定時間における発電電力量に基づいて判定するものであるから、当該所定時間における気象変化に伴う日照時間の変化等による発電電力量の変動が、正常か異常かの判定に大きく影響を及ぼす虞があり、新たな技術の開発が望まれていた。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、気象変動に伴う日照時間の変化等がある場合であっても、判定対象の太陽光発電設備が正常か否かを比較的精度良く判定できる太陽光発電設備の管理システム、及び太陽光発電設備の管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための太陽光発電設備の管理システムは、
広域に分散配置される複数の太陽光発電設備が正常か否かを判定する管理システムであって、その特徴構成は、
複数の前記太陽光発電設備のうちの判定対象の前記太陽光発電設備の所定期間における複数の時刻での特定時間幅の発電電力量と、前記判定対象を除く複数の前記太陽光発電設備のうちで相関導出対象の前記太陽光発電設備の前記所定期間における前記複数の時刻での前記特定時間幅の発電電力量とから相関係数を導出し、当該相関係数を直接用いて判定対象の前記太陽光発電設備の異常を判定する制御装置を備え
前記制御装置は、現時点よりも前の過去の時点において前記相関係数が予め定められる異常判定閾値以上で、且つ現時点において前記相関係数が前記異常判定閾値未満である場合に、前記判定対象の前記太陽光発電設備が異常の可能性があると判定する第1判定処理を実行する点にある。
【0007】
上記目的を達成するための太陽光発電設備の管理方法は、
広域に分散配置される複数の太陽光発電設備が正常か否かを判定する管理方法であって、その特徴構成は、
複数の前記太陽光発電設備のうちの判定対象の前記太陽光発電設備の所定期間における複数の時刻での特定時間幅の発電電力量と、前記判定対象を除く複数の前記太陽光発電設備のうちで相関導出対象の前記太陽光発電設備の前記所定期間における前記複数の時刻での前記特定時間幅の発電電力量とから相関係数を導出し、当該相関係数を直接用いて判定対象の前記太陽光発電設備の異常を判定し、
現時点よりも前の過去の時点において前記相関係数が予め定められる異常判定閾値以上で、且つ現時点において前記相関係数が前記異常判定閾値未満である場合に、前記判定対象の前記太陽光発電設備が異常の可能性があると判定する第1判定処理を実行する点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、判定対象の太陽光発電設備の所定期間における複数の時刻での特定時間幅の発電電力量と、相関導出対象の太陽光発電設備の所定期間における複数の時刻での特定時間幅の発電電力量とから導出される相関係数を直接用いて判定対象の太陽光発電設備の異常を判定するから、例えば、所定期間のある特定時間幅において広域で発生する気象変化があり、所定期間のある特定時間幅での発電電力量が変化する場合であっても、判定対象の太陽光発電設備の発電電力量と相関導出対象の太陽光発電設備の発電電力量の双方に略同傾向の変化が発生するため、当該広域で発生する気象変化が相関係数に与える影響は十分に小さいものとなる。
これにより、これまで説明してきた相関係数を直接用いた太陽光発電設備の異常の判定によれば、特定時間幅での発電電力量を直接用いて太陽光発電設備の正常か否かの判定を行う場合に比べ、広域で発生する気象変化の影響を良好に排除した判定を実現できる。
また、上記特徴構成によれば、相関係数を直接用いることで判定対象の太陽光発電設備の異常を判定するから、所定期間における複数の時刻での特定時間幅の発電電力量の夫々の相関度合いを反映した値(相関係数)に基づいて異常を判定することができ、例えば、所定期間の発電電力量の移動平均等を比較して異常の判定を行う場合に比べて、より精度の高い異常の判定を実行できる。
尚、太陽光発電設備のソーラーパネルは、可動部がないシステムであることから、故障の少ない安定した発電システムとして知られている。このことから、本発明では、複数の太陽光発電設備のうち、2つ以上の太陽光発電設備が、同じタイミングで故障することがないという前提で異常の判定を行っている。
【0010】
太陽光発電設備の発電電力量は日照状態に応じて変化するため、設置箇所(例えば、経度や緯度)や設置方向や設置角度等が異なる太陽光発電設備同士の相関係数は、予め低い場合がある。一例を挙げると、南東向きに設置された太陽光発電設備と南西向きに設置された太陽光発電設備では、1日のうちで日照状態になる時間帯がずれるため、両者が正常な状態である場合であっても、相関係数は低くなる場合がある。
上記特徴構成によれば、制御装置が、第1判定処理において、現時点よりも前の過去の時点において相関係数が予め定められる異常判定閾値以上で、且つ現時点において相関係数が異常判定閾値未満である場合に、判定対象の太陽光発電設備が異常の可能性があると判定することで、過去の時点において相関係数の低い太陽光発電設備の現時点での相関係数を、判定対象から除外することができ、判定の精度をより向上させることができる。
因みに、過去の時点の相関係数としては、昨年同月同時刻での特定時間幅における相関係数の平均、前月同時刻での特定時間幅における相関係数の平均、前日同時刻での特定時間幅における相関係数等を用いることができる。
【0011】
太陽光発電設備の管理システムの更なる特徴構成は、
前記制御装置は、前記第1判定処理を複数の前記判定対象の前記太陽光発電設備に対して実行するものであり、
少なくとも3つ以上の前記判定対象の前記太陽光発電設備に異常の可能性があるという停止条件が満たされる場合、異常の判定を停止する停止処理を実行する点にある。
【0012】
上述したように、太陽光発電設備は、システムの安定性が高い等の理由により複数が同時に異常と判定される可能性は十分に低いと考えられている。
上記特徴構成の如く、第1判定処理において、少なくとも3つ以上の前記判定対象の前記太陽光発電設備の異常の可能性があるという停止条件が満たされる判定した場合、天候異常の可能性があると判断し、異常判定の停止処理を実行することで、判定精度の向上を図ることができる。
【0013】
太陽光発電設備の管理システムの更なる特徴構成は、
前記制御装置は、前記広域内の天候情報を外部から取得可能に構成され、
前記天候情報に前記広域内で天候異常を含むという停止条件が満たされる場合、異常の判定を停止する停止処理を実行する点にある。
【0014】
広域内で天候異常がある場合には、導出された相関係数が、判定対象の太陽光発電設備が正常であるにも関わらず、低い値となることがある。
上記特徴構成によれば、天候情報に広域内で天候異常を含むという停止条件が満たされる場合には、異常の判定を停止する停止処理を実行することで、判定対象の太陽光発電設備が正常であるにも関わらず異常であると判定されることを防止できる。
【0015】
太陽光発電設備の管理システムの更なる特徴構成は、
前記制御装置は、系統が停電状態にあるか否かを判定可能に構成され、
前記系統が前記停電状態であるという停止条件が満たされる場合、異常の判定を停止する停止処理を実行する点にある。
【0016】
落雷等の自然災害により系統が停電状態にある場合、太陽光発電設備は系統から切り離されるので、通常、発電電力量は0となる。また、太陽光発電設備のうち自立して重要負荷へ電力供給するものについては、発電及び電力供給を継続することになるが、自立時は系統連系時と異なり、無効電力も太陽光発電設備から供給されることになるので、供給できる有効電力は一般的に減少する。
上記特徴構成によれば、系統が停電状態であるという停止条件が満たされる場合、異常の判定を停止する停止処理を実行することで、停電時で通常時とは発電電力量が大きくことなる場合に、妥当でない異常の判定が実行されることを防止できる。
【0017】
太陽光発電設備の管理システムの更なる特徴構成は、
前記制御装置は、系統電圧が所定閾値以上である系統電圧上昇状態であるか否かに係る系統電圧情報を保持可能に構成され、
前記制御装置が、前記系統電圧情報から前記系統電圧が前記系統電圧上昇状態であるという停止条件が満たされる場合、異常の判定を停止する停止処理を実行する点にある。
【0018】
例えば、多くの発電電力を供給可能な太陽光発電設備が過密に系統連系している箇所においては、太陽光発電設備からの逆潮流により、系統電圧が法定で定められる上限値よりも高くなる場合があり、このような場合には、太陽光発電設備のパワーコンディショナの系統電圧上昇抑制機能が働き、太陽光発電設備の有効電力制御により発電電力量が抑制されるため、このような場合に本発明に係る異常判定を実行すると、太陽光発電設備の現状を適正に反映しない判定がなされる虞がある。
上記特徴構成によれば、制御装置は、系統電圧情報から系統電圧が系統電圧上昇状態であるという停止条件が満たされる場合、異常の判定を停止する停止処理を実行するから、太陽光発電設備の現状を適切に反映しない判定が行われることを防止できる。
【0019】
太陽光発電設備の管理システムの更なる特徴構成は、
前記制御装置は、広域に分散配置する複数の前記太陽光発電設備の前記所定期間における前記複数の時刻での前記特定時間幅の発電電力量を経時的に記憶する記憶部を有し、
前記停止処理を実行しているときの前記記憶部に記憶された発電電力量は、前記相関係数の導出から除外する点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、停止処理が発生したときの発電電力量のデータを、異常の判定を行う基礎とするデータから除外するから、特に、現時点よりも過去の時点の発電電力量を用いて太陽光発電設備の異常の判定を行う場合において、その判定精度を向上できる。
【0021】
太陽光発電設備の管理システムの更なる特徴構成は、
前記制御装置は、一の前記判定対象の前記太陽光発電設備の異常の判定に際し、異なる2以上の前記相関導出対象の前記太陽光発電設備との間で導出される前記相関係数に基づいて、前記第1判定処理を実行し、前記第1判定処理の判定結果の複数において異常の可能性があると判定された場合に、前記判定対象の前記太陽光発電設備の異常の可能性が高いと判定する第2判定処理を実行する点にある。
【0022】
上記特徴構成の如く、異なる2つ以上の相関導出対象の太陽光発電設備との間で実行される複数の第1判定処理の判定結果により「異常の可能性がある」と判定された場合、その判定結果の確度が高いとして、「異常の可能性が高い」と判定することで、判定結果に信頼度を付与して提示することができる。
【0023】
太陽光発電設備の管理システムの更なる特徴構成は、
前記制御装置は、複数の太陽光発電設備の少なくとも一つとして設けられている点にある。
【0024】
上記特徴構成によれば、例えば、ネットワーク回線に接続された太陽光発電設備のパワーコンディショナとして上述の制御装置を備えることにより、当該パワーコンディショナとしての制御装置が、例えば、近傍の太陽光発電設備からの発電電力量を定期的に受信し、自身の太陽光発電設備の発電電力量との相関係数を導出し、自身が設けられる太陽光発電設備が正常か否かの判定を、別途管理サーバ等を設けることなく良好に行うことができる。
【0025】
太陽光発電設備の管理システムの更なる特徴構成として、前記制御装置は、前記太陽光発電設備とは別に設けられ、且つ通信回線を介して前記太陽光発電設備の前記発電電力量を受信可能に構成されていても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る太陽光発電設備の管理システムの概略構成図である。
図2】本発明の管理システムによる制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態に係る太陽光発電設備PVの管理システム100、及びその管理方法は、気候変動に伴う日照時間の変化がある場合であっても、判定対象の太陽光発電設備が正常か否かを比較的精度良く判定できるものに関する。
以下、図面に基づいて実施形態に係る太陽光発電設備PVの管理システム100、及びその管理方法を説明する。
【0028】
図1に示すように、当該実施形態に係る管理システム100では、広域に分散配置される複数(当該実施形態では、n個)の太陽光発電設備PV1~PVn(nは2以上の整数)の夫々の発電電力量WPV1~WPVnを電気通信回線Nを介して受信可能な制御装置Sを備えており、当該制御装置Sが、受信した発電電力量WPV1~WPVnに基づいて、判定対象の太陽光発電設備PVm(mは、n以下の任意の整数:図示省略)が正常か否かを判定するものである。制御装置Sは、一般に知られるハードウェアとソフトウェアの協働により実現されるサーバとして設けられる。
尚、判定対象の太陽光発電設備PVmは、固定されたものではなく、制御装置Sが、複数の太陽光発電設備PV1~PVnの中から選択できるものである。
【0029】
太陽光発電設備PV1~PVnは、実質的に同一の構成を有しているので、以下では、太陽光発電設備PV1を例として説明する。
太陽光発電設備PV1は、複数のソーラーパネルSPを直列に接続したストリングST1a、ST1bを複数(当該実施形態では2つ)備えており、ストリングST1aは逆流防止ダイオードD1aを介して接続箱CB1に接続されており、ストリングST1bは逆流防止ダイオードD1bを介して接続箱CB1に接続されている。
尚、図示は省略するが、ソーラーパネルSPの夫々には、バイパスダイオードが設けられている。これにより、ストリングST1a、ST1bは、何れかのソーラーパネルSPが日照条件の変化等により発電していない状態でも、他のソーラーパネルSPが発電している場合には、他のソーラーパネルSPの出力の合計がストリングの出力となる。
接続箱CB1にてまとめられた電力線は、直流を交流に変換する機能等を有するパワーコンディショナPCS1に接続され、当該パワーコンディショナPCS1は、電力線を介して所定の電力負荷PL1及び系統Kへ接続され、電力負荷PL1及び系統Kへ発電電力が供給可能に構成されている。
【0030】
因みに、複数の太陽光発電設備PV1~PVnの夫々の定格出力は、異なっていても良く、複数の太陽光発電設備PV1~PVnの夫々に設けられるソーラーパネルSPの発電性能及び枚数は、異なっていても構わない。
【0031】
パワーコンディショナPCS1~PCSnの夫々は、自身に接続される太陽光発電設備PV1~PVnのソーラーパネルSPの総発電電力(単位時間(例えば1時間)当たりの発電電力量)を計測可能に構成されており、当該総発電電力を自身に設けられている記憶部(図示せず)に、逐次経時的に記憶する。
制御装置Sは、電気通信回線Nを通じて、パワーコンディショナPCS1~PCSnに接続されており、パワーコンディショナPCS1~PCSnの記憶部に記憶される経時的な発電電力を、逐次受信可能に構成されている。制御装置Sは、受信した発電電力を、自身の記憶部Dにおいて、パワーコンディショナPCS1~PCSn毎に経時的に記憶する。
【0032】
ここで、判定対象の太陽光発電設備PVmが「正常」であることについて説明を加える。
一般に、太陽光発電設備PVを構成するソーラーパネルSPの発電電力量は、その材質が単結晶シリコン、多結晶シリコン、薄膜アモルファスシリコン及びCISやCIGS等の化合物半導体の何れにおいても、10年で数%以上の出力が低下し、多い場合には10%程度低下することが知られている。
このため、太陽光発電設備PVが「正常」であることの判定を行うには、予め定めた固定の判定閾値と発電電力量との比較により判定することができないという事情がある。
そこで、制御装置Sでは、以下に示す方法にて、判定対象の太陽光発電設備PVmが正常か否かの判定を行っている。
【0033】
制御装置Sは、気象サーバ(図示せず)から電気通信回線Nを介して受信した天候情報と、複数の太陽光発電設備PV1~PVnの経時的に変化する発電電力量と、複数の太陽光発電設備PV1~PVnが接続される系統の停電情報及び系統電圧情報と、異常の判定に用いる処理条件(判定閾値等)とを少なくとも記憶する記憶部Dを備えると共に、判定対象の太陽光発電設備PV1~PVnの異常を判定する第1判定処理部S4a及び第2判定処理部S4bと、第1~4停止条件を満たす場合に停止処理を実行する停止処理部S4cとを有する演算部S4を備えている。
更に、制御装置Sには、演算部S4にて演算される演算結果を表示する液晶ディスプレイ等から成る表示部S3が接続されると共に、演算部S4の処理条件(判定閾値等)の更新等を行うためのキーボードやマウス等の操作部S2が接続されている。
制御装置Sは、複数の太陽光発電設備PV1~PVnのうち判定対象の太陽光発電設備PVmの所定期間(例えば、6時間以上9時間以内の期間:一日の主な日照時間)における複数時刻での特定時間幅(例えば、単位時間としての1時間:雲等の影響による一時的な変動が平準化できる時間)の発電電力量と、判定対象を除く複数の太陽光発電設備PVnのうちで相関導出対象の太陽光発電設備PVk(kは、n以下の任意の整数:図示せず)の所定期間における複数の時刻での特定時間幅の発電電力量とから相関係数Rab(以下の〔表3〕を参照)を導出し、当該相関係数Rabを直接用いて判定対象の太陽光発電設備PVmの異常を判定する。
因みに、判定対象の太陽光発電設備PVm及び相関導出対象の太陽光発電設備PVkは、図2に示す制御フローに従って、制御装置Sにより複数の太陽光発電設備PV1~PVnの中から適宜選択可能に構成される。
【0034】
ここで、太陽光発電設備PVnの時刻(Ti:i=1~N:Nは2以上の任意の整数)毎の単位時間(例えば、1時間)当たりの発電電力量を〔表1〕に示すものとし、複数の太陽光発電設備PV1~PVnの発電電力量の相関係数Rab(a、bは、n以下の任意の整数)を〔表2〕に示すものとする場合、相関係数Rabを導出するための数式は、以下の〔数1〕で表される。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【数1】
【0038】
以下、制御装置Sが実行する太陽光発電設備PV1~PVnの異常判定制御を、図2の制御フローに基づいて説明する。
制御装置Sは、複数の太陽光発電設備PV1~PVnが配設される広域の天候情報を図示しない気象サーバから電気通信回線Nを介して受信して、記憶部Dに記憶する。
また、制御装置Sは、複数の太陽光発電設備PV1~PVnの夫々に設けられるパワーコンディショナPCS1~PCSnから、複数の太陽光発電設備PV1~PVnの経時的に変化する発電電力量を電気通信回線Nを介して受信すると共に、複数の太陽光発電設備PV1~PVnの夫々が接続される系統Kの停電情報及び系統電圧情報を電気通信回線Nを介して受信し、受信した各種情報を、太陽光発電設備PV1~PVn毎に記憶部Dに記憶する(#01)。
【0039】
停止処理部S4cは、記憶部Dに記憶される天候情報に広域内で天候異常を含むという第2停止条件が満たされる場合(#02でYES)、以降の異常の判定を実行せず(異常の判定を停止)、表示部S3に「天候異常のため異常の判定不可」と表示する。一方、第2停止条件を満たさない場合、#03のステップへ移行する。
【0040】
制御装置Sは、複数の太陽光発電設備PV1~PVnから判定対象の太陽光発電設備PVmを選択して登録する(#03)。
【0041】
停止処理部S4cは、判定対象の太陽光発電設備PVmの系統への接続箇所において、系統が停電状態であるという第3停止条件が満たされる場合、又は系統が電圧上昇状態(例えば、系統電圧が予め定められた所定閾値以上である系統電圧上昇状態)であるという第4停止条件が満たされる場合(#04でYES)、選択されている判定対象の太陽光発電設備PVmをその後の異常判定処理において判定対象及び相関導出対象として用いない非演算対象の太陽光発電設備として記憶部Dへ登録する(#05)。その後、制御装置Sは、新たに判定対象の太陽光発電設備PVmを更新する(#03)。尚、当該選択の更新は、複数の太陽光発電設備PV1~PVnの中から重複することなく順次選ばれて実行される。
一方、第3停止条件及び第4停止条件が満たされない場合(#04でNO)、#06のステップへ移行する。
【0042】
制御装置Sは、複数の太陽光発電設備PV1~PVnから相関導出対象の太陽光発電設備PVkを選択して登録する(#06)。
【0043】
停止処理部S4cは、相関導出対象の太陽光発電設備PVkの系統への接続箇所において、系統が停電状態であるという第3停止条件が満たされる場合、又は系統が電圧上昇状態であるという第4停止条件が満たされる場合(#07でYES)、選択されている相関導出対象の太陽光発電設備PVkをその後の異常判定処理において判定対象及び相関導出対象として用いない非演算対象の太陽光発電設備として記憶部Dへ登録する(#08)。その後、制御装置Sは、新たに判定対象の太陽光発電設備PVkを更新する(#06)。尚、当該選択の更新は、複数の太陽光発電設備PV1~PVnの中から重複することなく順次選ばれて実行される。
一方、第3停止条件及び第4停止条件が満たされない場合(#07でNO)、#09のステップへ移行する。
【0044】
第1判定処理部S4aは、選択された判定対象の太陽光発電設備PVmの所定期間における複数の時刻での特定時間幅の発電電力量と、選択された相関導出対象の太陽光発電設備PVkの所定期間における複数の時刻での特定時間幅の発電電力量とから相関係数Rmkを導出し、当該相関係数Rmkを直接用いて判定対象の太陽光発電設備PVmの異常を判定する第1判定処理を実行する(#09)。
例えば、第1判定処理部S4aは、導出した相関係数Rmkが予め選択された異常判定閾値(例えば、0.3)未満であれば、判定対象の太陽光発電設備PVmが異常の可能性があると判定する。
尚、第1判定処理部S4aは、判定精度を高める場合、判定対象の太陽光発電設備PVmと相関導出対象の太陽光発電設備PVkとに関し、記憶部Dに記憶される現時点よりも前の過去の時点における相関係数Rmkが異常判定閾値以上で、且つ現時点において相関係数Rmkが異常判定閾値未満である場合に、判定対象の太陽光発電設備が異常の可能性があると判定しても構わない。
因みに、過去の時点の相関係数としては、昨年同月同時刻での特定時間幅における相関係数の平均、前月同時刻での特定時間幅における相関係数の平均、前日同時刻での特定時間幅における相関係数等を用いることができる。
尚、記憶部Dに経時的に記憶される太陽光発電設備PV1~PVnの過去の発電電力量は、第1~第4停止条件が満たされた場合の発電電力量が除外されており、これらの値に基づいた第1判定処理は実行されないようになっている。
【0045】
制御装置Sは、選択されている判定対象の太陽光発電設備PVmに関し、非演算対象以外の相関導出対象の太陽光発電設備PVkすべてについて第1判定処理を実行した場合(#10でYES)、#11のステップへ移行し、非演算対象以外の相関導出対象の太陽光発電設備PVkすべての第1判定処理の実行が完了していない場合(#10でNO)、#06のステップに戻って、相関導出対象の太陽光発電設備PVkを更新する。
【0046】
#10のステップでYESの場合、第2判定処理部S4bは、判定対象の太陽光発電設備PVmが、異なる2以上の相関導出対象の太陽光発電設備PVkとの間で導出される相関係数に基づいて実行された第1判定処理の判定結果の複数(当該実施形態では2つ)において、異常の可能性があると判定されている場合、判定対象の太陽光発電設備PVmの異常の可能性が高いと判定する第2判定処理を実行する。
【0047】
更に、制御装置Sは、これまでに少なくとも異なる3つ以上の判定対象の太陽光発電設備PVmの第1判定処理が実行され、且つ少なくとも3つ以上の判定対象の太陽光発電設備PVmに異常の可能性があるという第1停止条件が満たされるか否かを判定し、第1停止条件が満たされる場合(#13でYES)、天候異常として記憶部Dに登録し(#12)、第1停止条件が満たされない場合(#13でNo)、#14のステップを実行する。
【0048】
#13のステップでYESの場合、制御装置Sは、すべての判定対象の太陽光発電設備PVmに関し、非演算対象以外の相関導出対象の太陽光発電設備PVkすべてについて第1判定処理及び第2判定処理を実行したか否かを判定し、実行した場合(#14でYES)、#15のステップへ移行し、非演算対象以外の相関導出対象の太陽光発電設備PVkすべてについて第1判定処理及び第2判定処理の実行が完了していない場合(#14でNO)、#03のステップに戻って、判定対象の太陽光発電設備PVmを更新する。
【0049】
制御装置Sは、最後に第1判定処理、第2判定処理、非演算対象として登録された太陽光発電設備及び天候異常であったか否かにつき、表示部S3に表示して、異常判定制御を終了する。
【0050】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、第1停止条件~第4停止条件に基づいて、停止処理を実行する構成例を示したが、当該停止処理は実行しなくても構わないし、すべてを実行せずに何れか一つ以上を実行する構成であっても構わない。
【0051】
(2)上記実施形態では、比較的規模の大きい太陽光発電設備PV1~PVnに関する管理システム100について説明してきた。
しかしながら、本発明の管理システムは、小規模の太陽光発電設備PV1~PVnに対しても適用可能である。
例えば、太陽光発電設備PV1~PVnの夫々を単体のソーラーパネルとし、当該ソーラーパネルの複数の出力を個別に識別可能なパワーコンディショナPCSをこれまで説明してきた制御装置Sとして働かせる構成をとっても構わない。
当該構成により、夫々のソーラーパネル自体が、正常か否かを個別に判定できる。
【0052】
(3)制御装置Sは、複数の太陽光発電設備PV1~PVnに設けられるパワーコンディショナPCS1~PCSnから、夫々の発電電力量を逐次受信可能に構成されている例を示した。
しかしながら、制御装置Sは、所定時間間隔(例えば、ローカルで集計するなら0.5秒間隔、ネットワーク回線を介した遠隔で集計するなら1分間隔)で、発電電力量を受信する構成を採用しても構わない。
【0053】
(4)上記実施形態では、制御装置Sは、複数の太陽光発電設備PV1~PVnに対して電気通信回線Nを介して電気的に接続されるサーバとして設けられる構成例を示した。
しかしながら、当該制御装置Sは、複数の太陽光発電設備PV1~PVnの少なくとも一つを構成する機器(例えば、パワーコンディショナ)として設けても構わない。
【0054】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の太陽光発電設備の管理システム、及び太陽光発電設備の管理方法は、気象変動に伴う日照時間の変化等がある場合であっても、対象の太陽光発電設備の正常か否かを比較的精度良く判定できる太陽光発電設備の管理システム、及び太陽光発電設備の管理方法として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
100 :管理システム
K :系統
N :電気通信回線
PVk :相関導出対象の太陽光発電設備
PVm :判定対象の太陽光発電設備
Rab :相関係数
S :制御装置
S4a :第1判定処理部
S4b :第2判定処理部
S4c :停止処理部
WPV :発電電力量
図1
図2