(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】RC造の躯体を有する建物の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/14 20060101AFI20230814BHJP
E04B 1/20 20060101ALI20230814BHJP
E04B 1/348 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
E04G21/14
E04B1/20 A
E04B1/348 Z
(21)【出願番号】P 2020028623
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓮尾 孝一
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩本 毅
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 和人
(72)【発明者】
【氏名】河井 慶太
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-272315(JP,A)
【文献】特開昭63-297643(JP,A)
【文献】特開平11-081679(JP,A)
【文献】特開昭51-132617(JP,A)
【文献】特公昭52-012486(JP,B1)
【文献】特開昭49-112422(JP,A)
【文献】特開平11-124902(JP,A)
【文献】特開2016-121471(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0066589(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0066422(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14
E04B 1/20
E04B 1/34
E04B 1/348
E04B 1/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RC造の躯体を有する建物の構築方法であって、
それぞれPCaコンクリートからなり、前記躯体の外周部に配置される複数の外周柱部材、前記躯体の内部に配置される複数の内部柱部材、桁行方向に延在する複数の第1梁部材、及び、梁間方向に延在する複数の第2梁部材を用意するステップと、
前記躯体の内部に配置され、室を画定する複数の内装ユニットを用意するステップと、
前記躯体の前記外周部に前記桁行方向に沿って複数の前記外周柱部材を配置するステップと、
互いに隣接する1対の前記外周柱部材を前記第1梁部材によって連結し、前記躯体の前記外周部に外周架構部を構築するステップと、
少なくとも1つの前記内装ユニットを、当該内装ユニットの一端部が前記外周架構部の内部に進入するように前記躯体の構築済み部分の上に配置するステップと、
前記躯体の内部に前記桁行方向に沿って複数の前記内部柱部材を配置するステップと、
前記梁間方向に互いに隣接する各対の前記外周柱部材及び前記内部柱部材を、少なくとも1つの前記内装ユニットの上方に配置した前記第2梁部材によって連結するステップと、
前記桁行方向に互いに隣接する1対の前記内部柱部材を、少なくとも1つの前記内装ユニットの上方に配置した前記第1梁部材によって連結するステップとを備えることを特徴とする構築方法。
【請求項2】
少なくとも1つの前記内装ユニットを配置する前に、前記外周架構部の外面に沿って外壁を取り付けるステップを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の構築方法。
【請求項3】
前記外周柱部材を配置する前に、スラブを構築するステップを更に備え、
少なくとも1つの前記内装ユニットを配置するステップでは、前記スラブの上で少なくとも1つの前記内装ユニットを配置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の構築方法。
【請求項4】
少なくとも1つの前記内装ユニットが、前記梁間方向に互いに隣接する1対の前記第1梁部材の間且つ前記桁行方向に互いに隣接する1対の前記第2梁部材の間にて、1対の前記第1梁部材の各下面及び1対の前記第2梁部材の各下面よりも上方に膨出する膨出部を備えることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の構築方法。
【請求項5】
互いに隣接する1対の前記外周柱部材の間に前記桁行方向に並ぶ複数の前記内装ユニットが配置されることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の構築方法。
【請求項6】
複数の前記内装ユニットが互いに連結され、協働して1つの前記室を画定することを特徴とする請求項5に記載の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、RC造の躯体を有する建物の構築方法に関し、より詳細には、内装部品を内装ユニットとして予め用意しておき、現場での内装工事の簡略化が可能な建物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホテルや集合住宅等に利用される建物を構築する際に、建物を複数のユニット(建物ユニット)に分けて工場で予め製作しておき、これらの建物ユニットを建築現場で組み立てることで工期の短縮が可能なユニット工法が実施されている。そのようなユニット工法として、各階の建物ユニットが鋼管からなる柱、H形鋼からなる床梁及び天井梁を有し、床梁及び天井梁の周囲が耐火被覆材で予め被覆されることで、鉄骨梁の建築現場での被覆作業を不要にしたものが公知である(特許文献1)。
【0003】
また、工期を短縮し、且つ居住部ごとの引っ越しを可能にした建物の構築方法として、建物を、互いに分離独立した、平行フレーム壁構造からなる柱梁部躯体と、ブロック化した居住部躯体(インフィル)とから構成し、柱梁部躯体を組み立てた後、予め製作された居住部躯体を柱梁部躯体の梁に沿って柱梁部躯体内の収納空間に入れ込むものが公知である(特許文献2)。この構築方法では、建物の柱がコンクリート製又はスチール製とされ、梁がスチール製の3本のパイプ主材(弦材)を備えた断面三角形のトラス梁とされる。上部に配置される2本のパイプ主材が柱を挟むように取り付けられ、レールとして利用されることにより、居住部躯体を梁に沿って移動させることが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4553649号公報
【文献】特開平11-229497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構築方法は、鉄骨造の建物を対象とするものである。そのため、建物ユニットが柱や梁を一体に備える構造であっても、建物ユニットの重量が揚重機で揚重できる程度の重さで済む。一方、RC造の建物を構築する場合にこの構造の建物ユニットを適用すると、建物ユニットの重量が重くなり過ぎ、揚重機で揚重することができない虞がある。
【0006】
また特許文献2に記載の構築方法では、柱梁部躯体平行フレーム壁は壁厚方向について居住部躯体によって連結されるだけである。そのため、建物の耐震性能を確保することができない。また、居住部躯体を柱間の幅よりも大きくすることができない。そのため、居住部躯体間に大きなデッドスペースが生じ、建物に対する居住部の面積比が小さくなる。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑み、工期を短縮可能であり、且つ、建物の耐震性能を確保すると共にデッドスペースの発生を抑制できる建物の構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明のある実施形態は、RC造の躯体(2)を有する建物(1)の構築方法であって、それぞれPCaコンクリートからなり、前記躯体の外周部に配置される複数の外周柱部材(16A)、前記躯体の内部に配置される複数の内部柱部材(16B)、桁行方向に延在する複数の第1梁部材(17(17A、17B))、及び、梁間方向に延在する複数の第2梁部材(19(19A、19B))を用意するステップと、前記躯体の内部に配置され、室(6)を画定する複数の内装ユニット(12)を用意するステップと、前記躯体の前記外周部に前記桁行方向に沿って複数の前記外周柱部材を配置するステップ(
図4(A))と、互いに隣接する1対の前記外周柱部材を前記第1梁部材によって連結し、前記躯体の前記外周部に外周架構部(18)を構築するステップ(
図4(B))と、少なくとも1つの前記内装ユニットを、当該内装ユニットの一端部(12a)が前記外周架構部の内部に進入するように前記躯体の構築済み部分の上に配置するステップ(
図5(D)~(F))と、前記躯体の内部に前記桁行方向に沿って複数の前記内部柱部材を配置するステップ(
図6(G))と、前記梁間方向に互いに隣接する各対の前記外周柱部材及び前記内部柱部材を、少なくとも1つの前記内装ユニットの上方に配置した前記第2梁部材によって連結するステップ(
図6(H))と、前記桁行方向に互いに隣接する1対の前記内部柱部材を、少なくとも1つの前記内装ユニットの上方に配置した前記第1梁部材によって連結するステップ(
図6(I))とを備える。
【0009】
この構成によれば、躯体がRC造であるため建物の耐震性能を容易に確保することができる。また、外周柱部材、内部柱部材、第1梁部材及び第2梁部材がPCaコンクリートからなるため、躯体の構築に係る工期を短縮することができる。建物の内装部分は予め用意された内装ユニットによって構成されるため、内装の施工に係る工期を短縮することができる。更に、内装ユニットの一端部が外周架構部の内部に進入するように内装ユニットが配置されるため、外周架構部の内部を室として利用することができる。
【0010】
好ましくは、少なくとも1つの前記内装ユニットを配置する前に、前記外周架構部の外面に沿って外壁(9)を取り付けるステップ(
図4(C))を更に備えるとよい。
【0011】
この構成によれば、内装ユニットが配置されていない状態で外壁を取り付けるため、外周架構部の外側に足場がなくても、外壁を取り付けることが可能である。そのため、足場の組立・解体が必要なく、更に工期を短縮することができる。
【0012】
好ましくは、前記外周柱部材を配置する前に、スラブ(5)を構築するステップ(
図7(J))を更に備え、少なくとも1つの前記内装ユニットを配置するステップでは、前記スラブの上で少なくとも1つの前記内装ユニットを配置するとよい。
【0013】
この構成によれば、内装ユニットがない状態でスラブを構築するため、構築作業が行い易い。また、スラブの上で内装ユニットを配置することができるため、内装ユニットの配置作業も行い易い。
【0014】
好ましくは、少なくとも1つの前記内装ユニットが、前記梁間方向に互いに隣接する1対の前記第1梁部材(17)の間且つ前記桁行方向に互いに隣接する1対の前記第2梁部材(19)の間にて、1対の前記第1梁部材の各下面及び1対の前記第2梁部材の各下面よりも上方に膨出する膨出部(20)を備えるとよい。
【0015】
この構成によれば、膨出部によって室が上方に拡大され、デッドスペースの発生が更に抑制される。また、膨出部が1対の第1梁部材及び1対の第2梁部材によって囲まれるため、内装ユニットが大きく水平方向にずれることもない。また、内装ユニットを躯体の上に配置した後に、外周柱部材及び内部柱部材を第2梁部材によって連結し、1対の内部柱部材を第1梁部材によって連結するため、内装ユニットが膨出部を備えていても内装ユニットの配置が可能である。
【0016】
好ましくは、互いに隣接する1対の前記外周柱部材の間に前記桁行方向に並ぶ複数の前記内装ユニットが配置されるとよい。
【0017】
この構成によれば、内装ユニットの大きさによって制限されることなく、外周柱部材の間隔を大きくすることができ、躯体を、PCaコンクリート部材の運搬や組立が容易な合理的な構造にすることがきる。
【0018】
好ましくは、複数の前記内装ユニットが互いに連結され、協働して1つの前記室を画定するとよい。
【0019】
この構成によれば、運搬のために制限される内装ユニットの寸法よりも大きな室を形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
このように本発明によれば、工期を短縮可能であり、且つ、建物の耐震性能を確保すると共にデッドスペースの発生を抑制できる建物の構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図8】内装ユニットの配置手順を説明するための建物の側面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は実施形態に係る建物1の平面図である。
図1に示すように、建物1は、RCラーメン構造の躯体2を有する多層建物である。躯体2は、複数の柱3(3A、3B)と、柱3に剛接合される複数の梁4(4A、4B、
図2参照)と、梁4に支持されるスラブ5とを含んでいる。建物1は、ホテルや宿舎、オフィス、集合住宅等として利用される。建物1は、客室や部屋、住戸等として利用される複数の利用空間(以下、室6という)からなる専用部分と、廊下7や内階段、エレベーター、エントランス等の共用空間からなる共用部分とを画定している。
【0024】
本実施形態の建物1は、複数の室6が桁行方向に並べられた板状型をなしている。他の実施形態では、建物1が雁行型建物やタワー型建物であってもよい。複数の室6は廊下7の両側方に廊下7に面するように配置されている。廊下7は建物1の内部に設けられる内部廊下とされている。廊下7のスラブ5の上にはカーペットやフロアマット等の内装床材が敷設されている。柱3は梁間方向に4列に並べられ、且つ桁行方向に等間隔に複数列に並べられている。桁行方向に互いに隣接する柱3の間には、桁行方向に並んだ2つの室6が廊下7を挟んで対峙するように配置されている。各室6は平面視で梁間方向に長い略長方形とされ、桁行方向に並ぶ2つの室6は線対称の形状とされている。他の実施形態では、桁行方向に互いに隣接する柱3の間に1つや3つ以上の室6が配置されてもよい。また、廊下7の一側方にみに室6が配置されてもよい。この場合、廊下7は側面が開放された外廊下とされてよい。
【0025】
複数の柱3は、梁間方向について建物1の外周部分に配置される柱3(以下、外周柱3Aという)と、梁間方向について建物1の内部に配置される柱3(以下、内部柱3Bという)とを含んでいる。外周柱3Aは略正方形の断面形状とされている。内部柱3Bは梁間方向の寸法が桁行方向の寸法よりも大きい略長方形の断面形状とされている。本実施形態では、内部柱3Bは廊下7の両側方且つ廊下7から離れた位置、すなわち室6の長手方向の中間部に配置されている。他の実施形態では、内部柱3Bが廊下7に隣接して、或いは廊下7に突出するように配置されてもよい。室6が廊下7の一側方のみに配置された建物1の場合、外周柱3Aは建物1の室6側の外周部分のみに1列に配置される。またこの場合、内部柱3Bは室6と廊下7との境界近傍に配置される列を含むように少なくとも1列に配置されるとよい。
【0026】
桁行方向に隣接配置される各対の外周柱3A間の開口は、窓開口8が形成されたRC造の外壁9によって閉鎖されている。桁行方向の端部(建物1の妻部)に配置された柱3間の開口も外壁9によって閉鎖されている。1対の内部柱3B間に設けられる外壁9の廊下7に面する部分には非常扉10が設けられており、非常扉10の外側には外階段11が設けられている。外階段11は鉄骨造であってよい。
【0027】
各室6は、ユニットバス14や入口扉15、内装ボード、配管、配線等の内装品が工場にて予め一体に形成された内装ユニット12により画定されている。内装ユニット12は、工場から建物1の建築現場までトレーラーによって運搬される。そのため、内装ユニット12の大きさ(特に、幅及び高さ)は、トレーラーに積載された状態で、車載物を含めたトレーラーの大きさが道路交通法によって認められる大きさ(幅2.99m、長さ15.91m、高さ4.1m)を超えないように設定されている。室6の廊下7側にはPS13(パイプスペース)とトイレ一体型のユニットバス14とが長手方向に沿ってこの順に設けられ、これらの側方部分は入口扉15から奥側に設けられたベッドルーム等の部屋部に至る通路となっている。
【0028】
他の実施形態では、桁行方向に並べられた複数の内装ユニット12が協働して1つの室6を画定してもよい。この場合、少なくとも1つの内装ユニット12に入口扉15が設けられればよい。桁行方向に互いに隣接する2つの内装ユニット12は、互いに対向する位置に設けられる少なくとも1対の開口を介して人の行き来ができるように互いに連結される。開口には扉が設けられても設けられなくてもよい。このように複数の内装ユニット12が互いに連結され、協働して1つの室6を画定することにより、運搬のために制限される内装ユニット12の寸法よりも大きな室6を形成することが可能である。
【0029】
室6の平面積を大きくするために、各内装ユニット12は外壁9や隣接する内装ユニット12に沿う外輪郭を有しており、内装ユニット12の外周柱3A及び内部柱3Bに対応する部分には室6に突出する柱型が形成されている。外周柱3Aの柱型は室6の隅に形成されている。一方、内部柱3Bの柱型は、内部柱3Bが室6の長手方向の中間部に配置されていることから、室6の一側面の中間部に形成されている。本実施形態では、桁行方向に互いに隣接する内装ユニット12間は空間になっている。ただし、桁行方向に互いに隣接する内装ユニット12間に防音部材が設けられてもよい。また、内部柱3Bを挟んで桁行方向に互いに隣接する内装ユニット12間にはRC造の壁が設けられてもよい。
【0030】
図2は、構築中の建物1の要部斜視図である。
図2に示すように、桁行方向に互いに隣接する各対の外周柱3Aは、桁行方向に延在する第1梁4Aによって互いに連結される。桁行方向に互いに隣接する各対の内部柱3Bも桁行方向に延在する第1梁4Aによって互いに連結される。梁間方向に互いに隣接する外周柱3A及び内部柱3Bの各対は、梁間方向に延在する第2梁4Bによって互いに連結される。梁間方向に互いに隣接する各対の内部柱3B(
図2には一方のみが示される)も、梁間方向に延在する第2梁4Bによって互いに連結される。
【0031】
本実施形態では、外周柱3Aは、1階層の高さと略同じ長さを有するPCaコンクリート製の複数の外周柱部材16Aを鉛直方向に連結することによって構成される。内部柱3Bは、1階層の高さと略同じ長さを有するPCaコンクリート製の複数の内部柱部材16Bを鉛直方向に連結することによって構成される。ここで、略同じとは、目地の厚さ分だけ異なる程度を含むことを意味する。
【0032】
各対の外周柱3Aを連結する第1梁4Aは、外周柱3A間隔と略同じ長さを有するPCaコンクリート製の第1外周梁部材17Aによって構成される。互いに隣接する1対の外周柱部材16Aとこれらを連結する第1外周梁部材17Aとにより、躯体2の外周部に門型の外周架構部18が構成される。各対の内部柱3Bを連結する第1梁4Aは、内部柱3B間隔と略同じ長さを有するPCaコンクリート製の第1内部梁部材17Bによって構成される。
【0033】
外周柱3A及び内部柱3Bを連結する第2梁4Bは、外周柱3Aと内部柱3Bとの間隔と略同じ長さを有するPCaコンクリート製の第2外側梁部材19Aによって構成される。内部柱3B同士を連結する第2梁4Bは、内部柱3B間隔と略同じ長さを有するPCaコンクリート製の第2内側梁部材19Bによって構成される。
【0034】
他の実施形態では、外周柱3Aや内部柱3Bが共にPCaコンクリート製の1つの柱部材と仕口部材とによって構成されてもよい。また、第1梁4Aや第2梁4Bが、1つの梁部材とその両側に設けられる2つの仕口部材の梁部分とによって構成されてもよい。更に、第1梁部材17(17A、17B)は2つの仕口部材の梁部分のみによって構成されてもよい。
【0035】
これらのPCaコンクリート部材は、工場で予め製作され、トレーラーによって建築現場まで搬送されて建築現場にて組み立てられる。PCaコンクリート部材同士の連結は、一方の部材から突出する鉄筋(図示せず)が他方の部材に設けられた機械継手(図示せず)に継ぎ合わされることにより行われる。2つのPCaコンクリート部材の間に鉄筋挿通孔を備えた他のPCaコンクリート部材が配置されてもよい。PCaコンクリート部材同士の連結は、この工法に限られず、公知の他の工法によって行われてもよい。
【0036】
上記のように内装ユニット12の幅は運搬のために制限される。一方、桁行方向に隣接配置される各対の外周柱部材16A間に複数の内装ユニット12が配置されることにより、外周柱部材16Aの間隔は、内装ユニット12の大きさによって制限されることなく大きくすることが可能である。これにより、躯体2を、PCaコンクリート部材の運搬や組立が容易な合理的な構造にすることができる。
【0037】
図3は、建物1の内装ユニット12の斜視図である。
図2及び
図3に示されるように、内装ユニット12は、略直方体をなしており、室6の天井高さを高くして空間を大きくするために、一部において第1梁4Aの下面及び第2梁4Bの下面よりも上方に膨出する膨出部20を備えている。本実施形態では、内装ユニット12の入口扉15と相反する他端側の部屋部に1つの膨出部20が設けられている。
【0038】
膨出部20は、第1梁4A及び第2梁4Bを避けた位置、すなわち、梁間方向に互いに隣接する1対の第1梁部材17の間且つ桁行方向に互いに隣接する1対の第2梁部材19(より詳しくは、第2外側梁部材19A)の間に位置している。膨出部20の第1梁4A及び第2梁4Bに対応する2辺(一端部12a及び一側部12bの上部)には室6の部屋部に突出する梁型が形成されている。
【0039】
なお、内装ユニット12の入口扉15側の、膨出部20が設けられていない部分(以下、一般部21という)には梁型は形成されていない。膨出部20は一般部21の上面よりも高い上面を形成している。言い換えれば、内装ユニット12の上面は、長手方向の一端側に位置する膨出部20の第1上面20aと、長手方向の他端側に位置し、第1上面20aよりも低い一般部21の第2上面21aとを含んでいる。
【0040】
このように内装ユニット12が膨出部20を備えることにより、室6が上方に拡大され、室6の上方にデッドスペースが発生することが抑制される。また、膨出部20が1対の第1梁部材17及び1対の第2梁部材19によって囲まれるため、内装ユニット12が大きく水平方向にずれることもない。
【0041】
内装ユニット12は、下端部に配置された架台22と、架台22の上に組み立てられた立体形状の枠体23と、枠体23の内側に配置されて枠体23に組み付けられた内装ボード等の内装材24とを有している。架台22は、H形鋼やI形鋼、チャンネル等、枠体23に比べて剛性が高い鋼材によって形成されている。架台22に形成された支持部に冶具を取り付けることにより、揚重機による内装ユニット12の揚重が可能とされている。枠体23は、角パイプ25やLGS26(Light Gage Steel)等、架台22に比べて剛性が低く軽量な鋼材によって形成されている。枠体23の矩形の各面は、少なくとも4辺を角パイプ25によって構成され、角パイプ25の間隔が所定の値以上になる場合に、間隔が所定の値以下となるように少なくとも1本のLGS26が配置される。内装ユニット12の一端部12aの側面には、外壁9の窓開口8に整合する位置に開口部27が形成されている。
【0042】
なお、
図3では、1つの面に配置されたLGS26のみを示し、他の面に配置されるLGS26は図示省略している。LGS26は枠体23の側面だけでなく上面にも設けられる。ユニットバス14が設けられる部分には、LGS26や内装材24が設けられなくてもよい。ユニットバス14の上面には、点検扉によって開閉可能な点検口28が形成されている。電気配線や上水配管(図示せず)は、内装ユニット12の上面に載置される。図示しない下水配管(図示せず)は、内装ユニット12の下部、具体的には架台22の内部空間に収容される。
【0043】
建物1は以上のように構成されている。このように建物1の躯体2がRC造であるため、建物1の耐震性能を容易に確保することができる。
【0044】
次に、このように構成された建物1の構築方法について
図4~
図8を参照して説明する。
図4~
図7の(A)~(J)は、建物1の構築手順を説明するために、建物1の要部を簡略化して示す斜視図であり、
図8は、内装ユニット12の配置手順(
図5(D)~(F))を説明するために、建物1の要部を簡略化して示す側面図である。なお、
図5(D)~
図7(J)では、
図4(C)にて取り付けられる外壁9を、建物1の内部をわかり易くするために図示省略している。
【0045】
以下では、建物1のうち、廊下7の一側方且つ桁行方向に互いに隣接する1対の柱3を含むブロックの1階層の構築手順を説明する。建物1の他のブロックや他の階層の構築手順も同様である。
【0046】
図4(A)に示すように、構築済みのスラブ5上(最下階の場合は基礎スラブ上)にて、予め用意された1対の外周柱部材16Aを躯体2の外周部に桁行方向に沿って配置し、下階の外周柱部材16A(図示省略、最下階の場合は基礎フーチング)に連結する。次に、
図4(B)に示すように、予め用意された第1外周梁部材17Aによって互いに隣接する1対の外周柱部材16Aを連結し、躯体2の外周部に外周架構部18を構築する。なお、
図4(A)及び(B)に示す作業は、最初に一方の外周柱部材16Aを配置し、続いて第1外周梁部材17Aを所定位置に配置した後に他方の外周柱部材16Aを配置して、これらの部材を連結する手順で行われてもよい。
【0047】
次に、
図4(C)に示すように、外周架構部18の外面に沿って外壁9を取り付ける。外壁9の取付は、工場で予め製作され、建築現場に搬送された外壁パネルを外周架構部18の外面側に取り付けることで行われる。このとき、外周架構部18の内面側(建物1の内方)に内装ユニット12が配置されていないため、作業員は外壁9の取付作業をスラブ5上で行うことができる。つまり、外周架構部18の外側に足場がなくても、外壁9を取り付けることが可能である。そのため、足場の組立・解体が必要なく、構築する建物1の工期を短縮することができる。
【0048】
続いて、
図5(D)に示すように、予め用意された2つの内装ユニット12のうちの一方を揚重機で吊り上げ、構築中の躯体2の上方から矢印で示すように吊り下ろす。このとき、第1外周梁部材17Aが既に配置され、配置すべき位置の真上から内装ユニット12を吊り下ろすことはできないため、建物1の内方(廊下7側)にずれた位置の真上から内装ユニット12を吊り下ろす。次に、
図5(E)に示すように、内装ユニット12を吊った状態のまま矢印で示すように建物1の外方(外周架構部18側)へ移動させ、内装ユニット12の一端部12aが外周架構部18の内部に進入するように躯体2の構築済み部分の上に配置する。
【0049】
図8に示すように、内装ユニット12の一端部12aの第1高さH1は、外周架構部18の内部の第2高さH2(スラブ5の上面から第1外周梁部材17Aの下面までの高さ)よりも小さく設定されている。これにより、内装ユニット12を吊った状態で、一端部12aが外周架構部18の内部に進入するように移動させることが可能である。内装ユニット12は所定の位置まで移動させた後に吊り下ろされ、構築済みのスラブ5上に載置される。図示省略するが、スラブ5の上面には、複数のピンが上方へ突出するように固定されており、架台22の下面に形成された位置決め孔にピンが挿入されることにより、内装ユニット12は所定の位置に固定される。ピンの突出寸法は外周架構部18の内部の第2高さH2と内装ユニット12の一端部12aの第1高さH1との差よりも小さい。
【0050】
続いて、
図5(F)に示すように、同様にして内装ユニット12のうちの他方を、一端部12aが外周架構部18の内部に進入するように躯体2の構築済み部分の上に配置する。2つの内装ユニット12が協働して1つの室6を画定する場合には、2つの内装ユニット12を互いに連結する。
【0051】
その後、
図6(G)に示すように、予め用意された1対の内部柱部材16Bを躯体2の内部に桁行方向に沿って配置する。次に、
図6(H)に示すように、予め用意された1対の第2外側梁部材19Aを、対応する側の内装ユニット12の一側部12bの上方に配置する。そして、梁間方向に互いに隣接する各対の外周柱部材16A及び内部柱部材16Bを第2外側梁部材19Aによって連結する。また、予め用意された1対の第2内側梁部材19Bを所定位置に配置し、梁間方向に互いに隣接する各対の内部柱部材16B同士(
図6等には各対の一方のみが示される)を第2内側梁部材19Bによって連結する。なお、
図6(G)及び(H)に示す作業は、最初に第2外側梁部材19Aを配置し、続いて内部柱部材16Bを所定位置に配置した後に第2内側梁部材19Bを配置して、これらの部材を連結する手順で行われてもよい。
【0052】
次に、
図6(I)に示すように、予め用意された第1内部梁部材17Bを2つ内装ユニット12の上方に配置し、桁行方向に互いに隣接する1対の内部柱部材16Bを第1内部梁部材17Bによって連結する。なお、
図6(G)及び(I)に示す作業は、最初に一方の内部柱部材16Bを配置し、続いて第1内部梁部材17Bを所定位置に配置した後に他方の内部柱部材16Bを配置して、これらの部材を連結してもよい。
【0053】
このように、
図5(F)にて内装ユニット12を躯体2の上に配置した後に、
図6(H)にて外周柱部材16A及び内部柱部材16Bを第2外側梁部材19Aによって連結し、
図6(I)にて1対の内部柱部材16Bを第1内部梁部材17Bによって連結する。このような手順をとることにより、内装ユニット12が膨出部20を備えていても内装ユニット12の配置が可能である。
【0054】
最後に、
図7(J)に示すように、第1梁部材17(17A、17B)及び第2梁部材19(19A、19B)と一体となるようにスラブ5を構築する。スラブ5は、PCaコンクリート床版をこれらの梁部材に接合して構築してもよく、ハーフプレキャスト床版をこれらの梁部材に接合した後にその上にコンクリートを打設して構築してもよい。更にスラブ5の全体を現場打ちコンクリートの打設により構築してもよい。
【0055】
その後、
図4(A)以降の手順を繰り返すことにより、建物1の上層階の部分を構築してゆく。このように、
図4(A)にて外周柱部材16Aを配置する前に、
図7(J)にてスラブ5を構築し、内装ユニット12がない状態でスラブ5を構築できるため、スラブ5の構築作業が行い易い。また、
図5(D)~(F)にて内装ユニット12を配置する際には、スラブ5の上で内装ユニット12を配置することができるため、内装ユニット12の配置作業も行い易い。
【0056】
以上説明したように、本実施形態では、外周柱部材16A、内部柱部材16B、第1梁部材17(17A、17B)及び第2梁部材19(19A、19B)がPCaコンクリートからなるため、躯体2の構築に係る工期を短縮することができる。また、建物1の内装部分は予め用意された内装ユニット12によって構成されるため、内装の施工に係る工期を短縮することができる。更に、内装ユニット12の一端部12aが外周架構部18の内部に進入するように内装ユニット12が配置されるため、外周架構部18の内部を室6として利用することができ、デッドスペースの発生を抑制できる。
【0057】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。また、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、材料、手順等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 建物
2 躯体
3 柱
3A 外周柱
3B 内部柱
4 梁
4A 第1梁
4B 第2梁
5 スラブ
6 室
9 外壁
12 内装ユニット
12a 一端部
16A 外周柱部材
16B 内部柱部材
17 第1梁部材
17A 第1外周梁部材
17B 第1内部梁部材
18 外周架構部
19 第2梁部材
19A 第2外側梁部材
19B 第2内側梁部材
20 膨出部