(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】埋め込み型漏水検知通報装置、断熱材、防水構造物および漏水を検知する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/00 20060101AFI20230814BHJP
E04D 11/00 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
G01N27/00 Z
E04D11/00 J
(21)【出願番号】P 2020079280
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000217365
【氏名又は名称】田島ルーフィング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】臼倉 拓人
(72)【発明者】
【氏名】安部 和広
(72)【発明者】
【氏名】若山 恵英
(72)【発明者】
【氏名】山宮 輝夫
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173387(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0094103(US,A1)
【文献】特開2013-148491(JP,A)
【文献】特開2005-024484(JP,A)
【文献】特開2005-078473(JP,A)
【文献】特開平09-071397(JP,A)
【文献】特開平09-302858(JP,A)
【文献】特開2008-233031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 11/00
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の防水層の漏水を検知するための埋め込み型漏水検知通報装置であって、
埋め込み型漏水検知通報装置は、基板、信号発生器を格納するために基板の片面に設けられた中空の凸部、基板に取り付けられた水検知センサーおよび凸部に格納された信号発生器を含み、
凸部の基板と反対側は閉鎖しており、
水検知センサーと信号発生器は電気的に接続され、
水検知センサーは第一の電極と第二の電極を含み、
第一の電極と第二の電極は異種の金属または合金からなり、
第一の電極と第二の電極は離間して配置され、
信号発生器は水検知センサーに水が浸入したときに信号を発生させる、埋め込み型漏水検知通報装置。
【請求項2】
請求項1に記載の埋め込み型漏水検知通報装置が埋め込まれた断熱材。
【請求項3】
防水下地、防水層および請求項1に記載の埋め込み型漏水検知通報装置を含む防水構造物であって、防水下地と防水層の間に埋め込み型漏水検知通報装置が設置されている、防水構造物。
【請求項4】
防水構造物が防水下地と防水層の間に断熱材を含み、断熱露出防水仕様の断熱材の平面に、断熱露出防水仕様の断熱材の側面に、断熱露出防水仕様の断熱材の相杓り部平面に、断熱露出防水仕様の断熱材の相杓り部側面に、断熱保護防水仕様に対して防水改修を行う際に保護コンクリートの目地部に、または立上り部に設けられた断熱材に、埋め込み型漏水検知通報装置の凸部が埋め込まれている、請求項3に記載の防水構造物。
【請求項5】
防水構造物が立上り部入隅部にキャントを含み、キャントに埋め込み型漏水検知通報装置の凸部が埋め込まれている、請求項3に記載の防水構造物。
【請求項6】
防水下地の上に設けた防水層の漏水を検知する方法であって、防水層の下に請求項1に記載の埋め込み型漏水検知通報装置を設置し、水検知センサーに水が浸入したときに信号発生器が発生させる信号を受信機で受信し、受信機に漏水があったことを表示させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込み型漏水検知通報装置、断熱材、防水構造物および漏水を検知する方法に関する。より詳しくは、本発明は、建築物の屋上、バルコニー、パントリー、便所などに設けられた防水層の漏水を検知するための埋め込み型漏水検知通報装置、前記埋め込み型漏水検知通報装置が埋め込まれた断熱材、前記埋め込み型漏水検知通報装置を含む防水構造物、および防水下地の上に設けた防水層の漏水を検知する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋上、バルコニー、パントリー、便所などにはアスファルト防水、シート防水、塗膜防水等の工法を用いて防水層を設けることが一般的に行われている。その防水層に漏水が生じ、その発見が遅れると、建築物に甚大な被害を及ぼすことがある。そこで、防水層の漏水を検知する方法が種々考案されている。
【0003】
たとえば、特開2004-233142号公報(特許文献1)は、防水層と躯体の間に敷設した導電層と、導電層に電気的に接続した第1の電極と、躯体に埋め込まれた鉄筋に電気的に接続された第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電気伝導度を測定する電流測定装置と、前記電流測定装置の測定データに基づいて漏水を判定する判定手段とを有する、建築構造物の躯体上に表装された防水層の漏水を検知する漏水検知システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
防水層に漏水が生じ、その発見が遅れると、建築物に甚大な被害を及ぼすことがあることは前述のとおりである。また、漏水部を特定することができれば、部分補修等で漏水を止めることは可能であるが、漏水部を特定することができないことが多く、全面改修を余儀なくされることが多い。
また、断熱防水仕様において漏水が生じた際、部分補修等で漏水を止めることができたとしても、それ以前に漏水した水が多量であり、漏水範囲が不明な場合、防水材下部に敷設されている断熱材の吸水範囲もわからない。そのため、断熱性能の復旧を行う場合は、屋根などの全面に断熱材を新設することになり、復旧工事の工期が長く、費用がかさむ。
特許文献1の漏水検知システムは、建築構造物の躯体の全面の上に導電層を設けるので、施工工事が大掛かりであり、施工費用もかさむ。
本発明は、建築物の屋上、バルコニー、パントリー、便所などに設けた防水層の漏水を効率的に検知することができ、設置が容易な装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、水検知センサーおよび信号発生器を含む埋め込み型漏水検知通報装置を用いることにより、建築物の防水層の漏水を効率的に検知することができることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
本発明(I)は、建築物の防水層の漏水を検知するための埋め込み型漏水検知通報装置であって、
埋め込み型漏水検知通報装置は、基板、基板の片面に設けられた中空の凸部、基板に取り付けられた水検知センサーおよび凸部に格納された信号発生器を含み、
水検知センサーと信号発生器は電気的に接続され、
水検知センサーは第一の電極と第二の電極を含み、
第一の電極と第二の電極は異種の金属または合金からなり、
第一の電極と第二の電極は離間して配置され、
信号発生器は水検知センサーに水が浸入したときに信号を発生させることを特徴とする。
【0008】
本発明(II)は、本発明(I)の埋め込み型漏水検知通報装置が埋め込まれた断熱材である。
【0009】
本発明(III)は、防水下地、防水層および本発明(I)の埋め込み型漏水検知通報装置を含む防水構造物であって、防水下地と防水層の間に埋め込み型漏水検知通報装置が設置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明(IV)は、防水下地の上に設けた防水層の漏水を検知する方法であって、防水層の下に本発明(I)の埋め込み型漏水検知通報装置を設置し、水検知センサーに水が浸入したときに信号発生器が発生させる信号を受信機で受信し、受信機に漏水があったことを表示させることを特徴とする。
【0011】
本発明は、次の実施態様を含む。
[1]建築物の防水層の漏水を検知するための埋め込み型漏水検知通報装置であって、
埋め込み型漏水検知通報装置は、基板、基板の片面に設けられた中空の凸部、基板に取り付けられた水検知センサーおよび凸部に格納された信号発生器を含み、
水検知センサーと信号発生器は電気的に接続され、
水検知センサーは第一の電極と第二の電極を含み、
第一の電極と第二の電極は異種の金属または合金からなり、
第一の電極と第二の電極は離間して配置され、
信号発生器は水検知センサーに水が浸入したときに信号を発生させる、埋め込み型漏水検知通報装置。
[2][1]に記載の埋め込み型漏水検知通報装置が埋め込まれた断熱材。
[3]防水下地、防水層および[1]に記載の埋め込み型漏水検知通報装置を含む防水構造物であって、防水下地と防水層の間に埋め込み型漏水検知通報装置が設置されている、防水構造物。
[4]防水構造物が防水下地と防水層の間に断熱材を含み、断熱露出防水仕様の断熱材の平面に、断熱露出防水仕様の断熱材の側面に、断熱露出防水仕様の断熱材の相杓り部平面に、断熱露出防水仕様の断熱材の相杓り部側面に、断熱保護防水仕様に対して防水改修(非断熱)を行う際に保護コンクリートの目地部に、または立上り部に設けられた断熱材に、埋め込み型漏水検知通報装置の凸部が埋め込まれている、[3]に記載の防水構造物。
[5]防水構造物が立上り部入隅部にキャントを含み、キャントに埋め込み型漏水検知通報装置の凸部が埋め込まれている、[3]に記載の防水構造物。
[6]防水下地の上に設けた防水層の漏水を検知する方法であって、防水層の下に[1]に記載の埋め込み型漏水検知通報装置を設置し、水検知センサーに水が浸入したときに信号発生器が発生させる信号を受信機で受信し、受信機に漏水があったことを表示させる、方法。
【発明の効果】
【0012】
屋上などの全体もしくは断続的に本発明の埋め込み型漏水検知通報装置を施すことで、万一の漏水をいち早く発見することができ、防水層の漏水部位の特定および補修が容易となり、吸水した断熱材の交換が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の埋め込み型漏水検知通報装置の1つの実施形態の投影図である。
【
図2】
図2は、本発明の埋め込み型漏水検知通報装置の別の実施形態の投影図である。
【
図3】
図3は、本発明の埋め込み型漏水検知通報装置のさらに別の実施形態の投影図である。
【
図5】
図5は、本発明の防水構造物の1つの実施形態の断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の防水構造物の別の実施形態の断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の防水構造物のさらに別の実施形態の断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の防水構造物のさらに別の実施形態の断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の防水構造物のさらに別の実施形態の断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の防水構造物のさらに別の実施形態の断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の防水構造物のさらに別の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明を詳細に説明するが、本発明は図面に示されたものに限定されない。
【0015】
図1は本発明の埋め込み型漏水検知通報装置の1つの実施形態の投影図であり、
図1(a)は平面図、
図1(b)はI-I線断面図である。
図2は本発明の埋め込み型漏水検知通報装置の別の実施形態の投影図であり、
図2(a)はII-II線断面図、
図2(b)は底面図である。
図3は本発明の埋め込み型漏水検知通報装置のさらに別の実施形態の投影図であり、
図3(a)はIII-III線断面図、
図3(b)は底面図である。
【0016】
埋め込み型漏水検知通報装置1は、基板2、基板の片面に設けられた中空の凸部3、基板に取り付けられた水検知センサー4および凸部に格納された信号発生器5を含む。水検知センサー4と信号発生器5はコード6によって電気的に接続されている。
【0017】
基板2は、水検知センサー4を支持する板である。基板2を構成する材料は、特に限定されないが、たとえば金属、樹脂などである。基板2として金属板、樹脂板、樹脂で被覆された金属板などを使用することができる。基板2は1つまたは複数の孔を有していてもよいし、基板2の少なくとも一部が網状物(たとえば金網)であってもよい。
【0018】
図1および
図2の基板は、正方形の形状を有するが、基板の形状は特に限定されない。基板の形状は、長方形でもよいし、その他の多角形でもよいし、円形でもよいし、楕円形でもよい。
図3は、基板が長方形の形状を有する例を示す。
【0019】
基板2に水検知センサー4を固定する方法は、特に限定されない。たとえば、接着剤、紐、ビス、クリップなどで固定することができる。また、2枚の基板で水検知センサー4を挟んで固定してもよい。2枚の基板で水検知センサー4を挟む場合は、複数の孔を有する基板、少なくとも一部が網状物である基板のような通水性の基板を用いる。
【0020】
埋め込み型漏水検知通報装置1は凸部3を有する。凸部3は基板2の片面に設けられる。凸部3は中空である。凸部は、各種下地に埋め込み易くする効果とともに、信号発生器を格納できる効果を兼ね備え持つ。
【0021】
図1および
図2の凸部3は四角柱の形状を有するが、凸部の形状は限定されない。凸部の形状は、三角柱や六角柱などの角柱でもよいし、円柱でもよいし、円錐でもよいし、円錐台でもよいし、三角錐や四角錐等の角錐でもよいし、角錐台でもよい。凸部の形状は、縦横比が1:1でなくてもよい。
図3は凸部3が円錐台の形状を有する例を示す。
【0022】
図1の凸部3の基板側は開放している。すなわち凸部は突起部であってもよい。
図1の凸部3の基板側は開放しているが、閉鎖していてもよい。
図2は凸部3の基板側が閉鎖した例を示す。
図2のように、信号発生器5の上下左右前後のすべてが基板2と凸部3によって囲まれている場合は、基板2と凸部3が金属製であると、信号発生器が無線送信器である場合、無線送信機の無線の電波を遮蔽する虞があるので、基板2と凸部3の少なくとも一方、たとえば基板2は、金属製ではなく、樹脂製であることが好ましい。
図2の凸部3の基板と反対側は閉鎖しているが、開放していてもよい。
【0023】
凸部の数は単数でもよいし、複数でもよい。
図1および
図2の埋め込み型漏水検知通報装置はそれぞれ1つの凸部を有する。
図3は複数の凸部を有する例を示す。すなわち、
図3は、凸部3に加え、第二の凸部3′を有する。埋め込み型漏水検知通報装置が複数の凸部を有する場合は、複数の凸部のうちの少なくとも1つに水検知センサーが格納されていればよく、すべての凸部に水検知センサーが格納されている必要はない。
【0024】
埋め込み型漏水検知通報装置1は水検知センサー4を有する。水検知センサー4は基板2に取り付けられている。
図1、
図2および
図3の水検知センサー4は基板2の凸部側の面に取り付けられているが、反対側の面に取り付けられていてもよい。埋め込み型漏水検知通報装置1を設置する場所にもよるが、太陽光や人の歩行などの外的要因による水検知センサーの品質低下を抑制するためには、水検知センサー4は基板2の凸部側の面に取り付けられていることが好ましい。
【0025】
図4に水検知センサーの模式図を示す。
水検知センサー4は第一の電極31と第二の電極32を含む。第一の電極31と第二の電極32は異種の金属または合金からなる。異種の金属または合金の組み合わせは、両者のイオン化傾向が相違する限りにおいて、特に限定されない。たとえば、銀とアルミニウムの組み合わせ、ステンレス鋼と亜鉛の組み合わせ、銅と亜鉛の組合せなどが挙げられる。電極は、単一の金属または合金で形成されている必要はなく、基材に金属または合金をめっきしたものであってもよいし、金属または合金を含む導電インクで基材を被覆したものであってもよい。
【0026】
第一の電極31と第二の電極32は異種の金属または合金からなるので、第一の電極31と第二の電極32はイオン化傾向が相違する。したがって、漏水により水検知センサー4に水が浸入すると、水が電界液として振る舞い、第一の電極31と第二の電極32と間に電位差が生じ、第一の電極31と第二の電極32は電池として機能し、その電池を電源として信号発生器5が駆動し、信号を発生させる。
【0027】
異種の金属または合金からなる第一の電極31と第二の電極32を用いることで、自ら発電するので、別途、電源を必要としない。したがって、装置を小型化することができ、設置が容易であり、電源交換などのメンテナンスが不要である。
【0028】
水検知センサー4は、好ましくは、第一の電極31と第二の電極32とそれらを収納する透水性かつ電気絶縁性の包覆体33とからなる。透水性かつ電気絶縁性の包覆体33の材料は、限定されないが、たとえば、合成繊維の網状物などを挙げることができる。水検知センサーは、また、電気絶縁性の繊維からなる編物または織物の中に第一の電極と第二の電極を編み込んだまたは織り込んだものであってもよい。
【0029】
第一の電極31と第二の電極32は、直接接触しないように、離間して配置されている。
図4の実施形態では、1本の第一の電極31と1本の第二の電極32が平行に配置されているが、このような配置に限定されない。たとえば、複数本の第一の電極と複数本の第二の電極を配置してもよいし、櫛形の第一の電極と櫛形の第二の電極を配置してもよい。また、板状の第一の電極と板状の第二の電極を透水性かつ電気絶縁性の部材を挟んで重ね合わせたものでもよい。
【0030】
基板上の水検知センサー4の形状(配置形態)は、特に限定されない。たとえば、
図1のように凸部3を取り囲むように配置してもよいし、
図2のように環状に配置してもよいし、
図3のように直線状に配置してもよいし、曲線状に配置してもよいし、ジグザクに配置してもよい。
【0031】
埋め込み型漏水検知通報装置1は信号発生器5を含む。信号発生器5は凸部3に格納されている。信号発生器5はコード6によって水検知センサー4と電気的に接続されている。水検知センサー4と信号発生器5は、コネクターを介して、接続されていてもよい。信号発生器5は水検知センサー4に水が浸入したときに信号を発生させる。信号発生器5が発生させた信号は、無線または有線で表示装置(図示せず)に送られ、表示装置に漏水があったことが表示される。表示装置としては、限定するものではないが、スマートフォンまたはコンピュータを用いることができる。信号を無線で送る場合は、漏水検知機能付き防水副資材はさらに無線送信機(図示せず)を含む。無線送信機は信号発生器が発生させた信号を送信する。送信された信号は、無線受信機(図示せず)で受信し、無線受信機に漏水があったことを表示させる。無線受信機は、たとえば、スマートフォンまたはコンピュータである。無線送信機を使用せずに、有線で信号を受信する例としては、屋上点検などの際に、必要に応じて信号発生器に有線受信機などを繋いで、信号を受信する方法が挙げられる。この場合は、予め信号発生器からの配線を防水層の上部に露出させておくか、または点検時に通報装置直上部の防水層を局部的に切り取って信号発生器に有線受信機などを繋ぐ。
【0032】
本発明の埋め込み型漏水検知通報装置は、建築物の防水層の漏水を検知するために用いられる。本発明の埋め込み型漏水検知通報装置の設置部位は、好ましくは、雨水が集まる水下部や側溝部のほか、漏水の経路となりやすい立上り部である。
本発明の埋め込み型漏水検知通報装置は、好ましくは、断熱露出防水仕様の断熱材の平面に、断熱露出防水仕様の断熱材の側面に、断熱露出防水仕様の断熱材の相杓り部平面に、断熱露出防水仕様の断熱材の相杓り部側面に、断熱保護防水仕様に対して防水改修(非断熱)を行う際に保護コンクリートの目地部に、または立上り部に設けられた断熱材に、埋め込み型漏水検知通報装置の凸部を埋め込んで、設置する。
本発明の埋め込み型漏水検知通報装置は、必要に応じて現場で留め付けてもよいが、あらかじめ埋め込み型漏水検知通報装置を断熱材に埋め込み、現場に供給してもよい。
【0033】
本発明(II)は、本発明(I)の埋め込み型漏水検知通報装置が埋め込まれた断熱材である。断熱材の素材としては、特に限定されないが、たとえば発泡プラスチック断熱材、人造鉱物繊維断熱材、有機繊維断熱材が用いられる。発泡プラスチック断熱材としては、主に硬質ウレタンフォーム、押出法ポリスチレンフォーム、フェノールフォームが用いられる。また人造鉱物繊維断熱材としては、グラスウールやロックウールが用いられる。
【0034】
本発明(III)は、防水下地、防水層および本発明(I)の埋め込み型漏水検知通報装置を含む防水構造物であって、防水下地と防水層の間に埋め込み型漏水検知通報装置が設置されていることを特徴とする。
【0035】
図5は、本発明の防水構造物の1つの実施形態の断面図である。
図5の防水構造物7は、断熱露出防水仕様の構造物であり、防水下地71、断熱材72、防水層73および埋め込み型漏水検知通報装置1を含み、埋め込み型漏水検知通報装置1は、防水下地71と防水層73の間であって、断熱材72の平面に設置されている。
【0036】
図6は、本発明の防水構造物の別の実施形態の断面図である。
図6の防水構造物7は、断熱露出防水仕様の構造物であり、防水下地71、断熱材72、防水層73および埋め込み型漏水検知通報装置1を含み、埋め込み型漏水検知通報装置1は、防水下地71と防水層73の間であって、断熱材72の側面に設置されている。
【0037】
図7は、本発明の防水構造物のさらに別の実施形態の断面図である。
図7の防水構造物7は、断熱露出防水仕様の構造物であり、防水下地71、断熱材72、防水層73および埋め込み型漏水検知通報装置1を含み、埋め込み型漏水検知通報装置1は、防水下地71と防水層73の間であって、断熱材72の相杓り部平面に設置されている。
【0038】
図8は、本発明の防水構造物のさらに別の実施形態の断面図である。
図8の防水構造物7は、断熱露出防水仕様の構造物であり、防水下地71、断熱材72、防水層73および埋め込み型漏水検知通報装置1を含み、埋め込み型漏水検知通報装置1は、防水下地71と防水層73の間であって、断熱材72の相杓り部側面に設置されている。
【0039】
図9は、本発明の防水構造物のさらに別の実施形態の断面図である。
図9の防水構造物7は、断熱保護防水仕様に対して、防水改修(非断熱)を行う際、保護コンクリート74の目地部75に埋め込み型漏水検知通報装置1を設置したものであり、防水下地71、既存の防水層73′、断熱材72、保護コンクリート74、防水層73および埋め込み型漏水検知通報装置1を含み、埋め込み型漏水検知通報装置1は、防水下地71と防水層73の間であって、保護コンクリート74の目地部75に設置されている。
【0040】
図10は、本発明の防水構造物のさらに別の実施形態の断面図である。
図10の防水構造物7は、防水下地71、断熱材72、防水層73、立上り部76および埋め込み型漏水検知通報装置1を含み、埋め込み型漏水検知通報装置1は、防水下地71と防水層73の間であって、立上り部76に設けられた断熱材72に設置されている。
【0041】
図11は、本発明の防水構造物のさらに別の実施形態の断面図である。
図11の防水構造物7は、防水下地71、防水層73、立上り部76、キャント77および埋め込み型漏水検知通報装置1を含み、埋め込み型漏水検知通報装置1は、防水下地71と防水層73の間であって、立上り部入隅部に設けられたキャント77に設置されている。
【0042】
なお、
図5~
図11は、RC造の図面を描いているが、RC造に限らずS造であってもよい。断熱材等の柔らかい下地の場合、凸部を有した形状であれば、工具等を使用せず、突き刺すことが可能である。また、
図5~
図8、
図10および
図11では、埋め込み型漏水検知通報装置1は断熱材に埋め込まれているが、野地板などの防水下地材や躯体に対して、穴や溝を掘り、埋め込み型漏水検知通報装置を埋め込んでもよい。
【0043】
本発明の埋め込み型漏水検知通報装置を、防水層を設けた屋上に設置する場合に、埋め込み型漏水検知通報装置の設置個数は、限定されないが、好ましくは100m2あたりに1個、より好ましくは10m2あたりに1個、さらに好ましくは1m2あたりに1個である。また、漏水の懸念がある部位として、例えば水下部、側溝部、立上り部に対して、埋め込み型漏水検知通報装置を集中的に設置することが望ましい。
【0044】
本発明(IV)は、防水下地71の上に設けた防水層73の漏水を検知する方法であって、防水層73の下に本発明(I)の埋め込み型漏水検知通報装置1を設置し、水検知センサー4に水が浸入したときに信号発生器5が発生させる信号を受信機で受信し、受信機に漏水があったことを表示させることを特徴とする。受信機は、たとえば、スマートフォンまたはコンピュータである。好ましくは、受信機に漏水箇所を表示させる。受信機に漏水箇所を表示させるには、信号発生器5に水検知センサー4の設置箇所の情報を記憶させ、信号発生器5が信号を送信する際に設置箇所の情報も同時に送信するようにすればよい。本発明の漏水を検知する方法は、建築物の防水層の漏水を早期に発見することができ、漏水による被害を最小限に抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の埋め込み型漏水検知通報装置は、建築物の屋上、バルコニー、パントリー、便所などに設けた防水層の漏水を検知するのに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 埋め込み型漏水検知通報装置
2 基板
3 凸部
4 水検知センサー
5 信号発生器
6 コード
7 防水構造物
31 第一の電極
32 第二の電極
33 包覆体
71 防水下地
72 断熱材
73 防水層
73′ 既存の防水層
74 保護コンクリート
75 目地部
76 立上り部
77 キャント