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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】スイッチ回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/687 20060101AFI20230814BHJP
   H03K 17/00 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
H03K17/687 G
H03K17/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020135050
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030801
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】上嶋 浩二
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0373680(US,A1)
【文献】特開2014-200020(JP,A)
【文献】特開2012-069562(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0187368(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0329891(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0305768(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0229720(US,A1)
【文献】特開2010-178026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00-17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1MOSトランジスタと、
前記第1MOSトランジスタの第1端に接続された第1端を有する第1容量と、
前記第1MOSトランジスタの第2端に接続された第1端を有する第2MOSトランジスタと、
前記第1MOSトランジスタの前記第2端に接続された第1端を有する第2容量と、
前記第1容量の第2端と前記第2容量の第2端の間に接続され、前記第1MOSトランジスタの前記第1端の電圧に基づいてオン又はオフする、第3MOSトランジスタと、
前記第1MOSトランジスタの前記第1端に接続された第1入力端子と、前記第3MOSトランジスタの制御端子に接続された出力端子を有し、前記第1MOSトランジスタの前記第1端の第1電圧と、第2入力端子に印加される第2電圧を比較する、コンパレータと、
前記第1MOSトランジスタの制御端子と、前記第2MOSトランジスタの制御端子とが接続されたバイアス回路と、
前記第1容量の前記第2端及び前記第3MOSトランジスタの第1端に接続された第1端を有する第1抵抗と、
前記第2容量の前記第2端及び前記第3MOSトランジスタの第2端に接続された第1端を有する第2抵抗と、
前記第1抵抗の第2端及び前記第2抵抗の第2端に接続された第1端を有する第3抵抗と、
前記第3抵抗の第2端及び前記コンパレータの前記第2入力端子に接続された第1端を有する第4抵抗と、を備える、
スイッチ回路。
【請求項2】
第4MOSトランジスタと、
前記第4MOSトランジスタの第1端に接続された第1端を有する第3容量と、
前記第4MOSトランジスタの第2端に接続された第1端を有する第5MOSトランジスタと、
前記第4MOSトランジスタの前記第2端に接続された第1端を有する第4容量と、
前記第3容量の第2端と前記第4容量の第2端の間に接続され、前記第1MOSトランジスタの前記第1端の電圧に基づいてオン又はオフする、第6MOSトランジスタと、
をさらに備える、
請求項1に記載のスイッチ回路。
【請求項3】
前記第1容量と、前記第2容量と、前記第1MOSトランジスタと、前記第2MOSトランジスタと、前記第3MOSトランジスタとが、同一の基板上に形成された、
請求項1に記載のスイッチ回路。
【請求項4】
前記基板が、シリコンに比べて高抵抗である、
請求項3に記載のスイッチ回路。
【請求項5】
前記第1電圧が前記第2電圧よりも大きいとき、
前記第3MOSトランジスタがONする、
請求項に記載のスイッチ回路。
【請求項6】
第1MOSトランジスタと、
前記第1MOSトランジスタの第1端に接続された第1端を有する第1容量と、
前記第1MOSトランジスタの第2端に接続された第1端を有する第2MOSトランジスタと、
前記第1MOSトランジスタの前記第2端に接続された第1端を有する第2容量と、
前記第2MOSトランジスタの前記第1端に接続された第1端を有する第3容量と、
前記第2MOSトランジスタの第2端に接続された第1端を有する第3MOSトランジスタと、
前記第2MOSトランジスタの前記第2端に接続された第1端を有する第4容量と、
前記第1容量の第2端と前記第2容量の第2端の間に接続され、前記第1MOSトランジスタの前記第1端の電圧に基づいてオン又はオフする、第4MOSトランジスタと、
前記第3容量の第2端と前記第4容量の第2端の間に接続され、前記第1MOSトランジスタの前記第1端の電圧に基づいてオン又はオフする、第5MOSトランジスタと、
前記第1MOSトランジスタの前記第1端に接続された第1入力端子と、前記第4MOSトランジスタの制御端子及び前記第5MOSトランジスタの制御端子に接続された出力端子を有し、前記第1MOSトランジスタの前記第1端の第1電圧と、第2入力端子に印加される第2電圧を比較する、コンパレータと、
前記第1MOSトランジスタの制御端子と、前記第2MOSトランジスタの制御端子と、前記第3MOSトランジスタの制御端子とが接続されたバイアス回路と、
前記第1容量の前記第2端及び前記第4MOSトランジスタの第1端に接続された第1端を有する第1抵抗と、
前記第2容量の前記第2端及び前記第4MOSトランジスタの第2端に接続された第1端を有する第2抵抗と、
前記第3容量の前記第2端及び前記第5MOSトランジスタの第1端に接続された第1端を有する第3抵抗と、
前記第4容量の前記第2端及び前記第5MOSトランジスタの第2端に接続された第1端を有する第4抵抗と、
前記第1抵抗の第2端、前記第2抵抗の第2端、前記第3抵抗の第2端、及び前記第4抵抗の第2端に接続された第1端を有する第5抵抗と、
前記第5抵抗の第2端及び前記コンパレータの前記第2入力端子に接続された第1端を有する第6抵抗と、を備える、
スイッチ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、概してスイッチ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの用途で、無線通信システムに対するスイッチ回路が知られている。そのようなスイッチ回路は、寄生容量を低減できることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4680134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スイッチ回路100の寄生容量を低減することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のスイッチ回路は、第1乃至第3MOSトランジスタと、第1及び第2容量と、コンパレータと、バイアス回路と、第1乃至第4抵抗とを備える。第1容量は、第1MOSトランジスタの第1端に接続された第1端を有する。第2MOSトランジスタは、第1MOSトランジスタの第2端に接続された第1端を有する。第2容量は、第1MOSトランジスタの前記第2端に接続された第1端を有する。第3MOSトランジスタは、第1容量の第2端と第2容量の第2端の間に接続され、第1MOSトランジスタの第1端の電圧に基づいてオン又はオフする。コンパレータは、第1MOSトランジスタの第1端に接続された第1入力端子と、第3MOSトランジスタの制御端子に接続された出力端子を有し、第1MOSトランジスタの第1端の第1電圧と、第2入力端子に印加される第2電圧を比較する。バイアス回路は、第1MOSトランジスタの制御端子と、第2MOSトランジスタの制御端子と接続されている。第1抵抗は、第1容量の第2端及び第3MOSトランジスタの第1端に接続された第1端を有する。第2抵抗は、第2容量の第2端及び第3MOSトランジスタの第2端に接続された第1端を有する。第3抵抗は、第1抵抗の第2端及び第2抵抗の第2端に接続された第1端を有する。第4抵抗は、第3抵抗の第2端及びコンパレータの第2入力端子に接続された第1端を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係るシステム800における機能ブロックの一例を示す。
図2図2は、第1実施形態に係るスイッチ回路100における回路図の一例を示す。
図3図3は、第1実施形態に係るスイッチ回路100がV1<V3であるときの容量に関する等価回路図の一例を示す。
図4図4は、第1実施形態に係るスイッチ回路100がV1>V3であるときの容量に関する等価回路図の一例を示す。
図5図5は、第1実施形態の比較例に係るスイッチ回路101における回路図の一例を示す。
図6図6は、第1実施形態の比較例に係るスイッチ回路101の容量に関する等価回路図の一例を示す。
図7図7は、第2実施形態に係るスイッチ回路100Bにおける回路図の一例を示す。
図8図8は、第3実施形態に係るスイッチ回路100Cにおける回路図の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に実施形態が図面を参照して記述される。以下の記述において、略同一の機能および構成を有する構成要素は同一符号を付され、繰り返しの説明は省略される場合がある。各機能ブロックは、ハードウェア、コンピュータソフトウェアのいずれかまたは両者を組み合わせたものとして実現することができる。このため、各機能ブロックがこれらのいずれでもあることが明確となるように、概してそれらの機能の観点から記述される。また、各機能ブロックが、以下の例のように区別されていることは必須ではない。例えば、一部の機能が例示の機能ブロックとは別の機能ブロックによって実行されてもよい。さらに、例示の機能ブロックがさらに細かい機能サブブロックに分割されていてもよい。
【0008】
また、実施形態の方法のフローにおけるいずれのステップも、例示の順序に限定されず、そうでないと示されない限り、例示の順序とは異なる順序でおよび(または)別のステップと並行して起こることが可能である。
【0009】
本明細書および特許請求の範囲において、ある第1要素が別の第2要素に「接続されている」とは、第1要素が直接的または常時あるいは選択的に導電性となる要素を介して第2要素に接続されていることを含む。
【0010】
以下の説明において、トランジスタの一端はソース及びドレインの一方を示し、他端はソース及びドレインの他方を示す。また、トランジスタの制御端子は、ゲートを示す。
【0011】
[1]第1実施形態
[1-1]システムの構成
図1は、第1実施形態に係るシステム800における機能ブロックの一例を示す。システム800は、例えば、無線通信システムであり、例えば、携帯電話として実現されることができ、例えば高周波信号を扱う。
【0012】
図1に示されるように、システム800は、信号処理装置600及びアンテナ700を含む。信号処理装置600は、アンテナ700と接続されており、アンテナ700によって送信される高周波信号を生成し、生成された高周波信号をアンテナ700に送信する。アンテナ700は、受信した高周波信号を、システム800と通信する装置、例えば、基地局等(図示せず)に送信する。
【0013】
信号処理装置600は、データ処理部400、送信回路500、ノードPin及びPout、及びスイッチ回路100を含む。データ処理部400は、例えばシステム800によって送信されるデータを処理及び生成し、生成したデータを送信回路500に送信する。送信回路500は、データを、無線送信に適する周波数の信号へと変換し、変換された信号を出力する。送信回路500によるデータの変換は、データの周波数を変調することを含む。送信回路500によって出力される信号は、高周波信号であり、例えば100MHz以上の周波数を有する。送信回路500は、高周波信号をノードPinにおいて出力する。ノードPinは、信号処理装置600のノードPoutと接続されている。ノードPoutは、アンテナ700と接続されている。
【0014】
スイッチ回路100は、ノードPinとノードPoutを接続する配線に接続される。スイッチ回路100は、ノードPin上の高周波信号が、ノードPoutへ伝達されるのを制御する。すなわち、スイッチ回路100は、ノードPin上の高周波信号を入力として受け取り、スイッチ回路100の処理に基づく高周波信号をノードPoutから送信する。この観点に基づいて、以下、ノードPinは高周波信号受信ノードと称され、ノードPoutは高周波信号送信ノードと称される。スイッチ回路100の詳細については後述される。
【0015】
[1-2]スイッチ回路100の回路図
図2は、第1実施形態に係るスイッチ回路100における回路図の一例を示す。図2に示されるように、スイッチ回路100は、高周波信号受信ノードPinと、高周波信号送信ノードPoutとを接続する配線に接続される。スイッチ回路100は、高周波スイッチFET1及び高周波スイッチFET2、容量Cc1及び容量Cc2、NMOS(N metal oxide silicon)トランジスタNMOS、抵抗R1~R4、バイアス回路10、並びにコンパレータ11を含む。また、スイッチ回路100は、ノードA、B、C、D、E、F、G、H、及びIを含む。
【0016】
スイッチ回路100における各要素の接続が以下に記述される。スイッチ回路100は、高周波信号受信ノードPinと、高周波信号送信ノードPoutとの間のノードAに接続される。ノードAは、スイッチ回路100のノードBに接続される。ノードBは、高周波スイッチFET1の一端に接続される。高周波スイッチFET1は、例えば、n型のMOSトランジスタである。高周波スイッチFET1の他端はノードCに接続される。高周波スイッチFET1の制御端子は、ノードDに接続される。
【0017】
容量Cc1の一端は、ノードBに接続され、他端はノードEに接続される。NMOSトランジスタNMOSの一端はノードEに接続され、他端はノードFに接続される。NMOSトランジスタNMOSの制御端子は、ノードGに接続される。容量Cc2の一端は、ノードFに接続され、他端はノードCに接続される。ノードCは、高周波スイッチFET2の一端に接続される。高周波スイッチFET2は、例えばn型のMOSトランジスタである。高周波スイッチFET2は、高周波スイッチFET1と実質的に同じ特性及び(又は)同じサイズを有する。「実質的に」は、同じであることが意図されているものの、高周波スイッチFET1のような素子の製造プロセスのばらつきによる違いを含むことを意味する。FETのサイズは、例えば、同じゲート幅に依存する。
【0018】
高周波スイッチFET2の他端は接地電圧VSSqのノードに接続される。接地電圧VSSqは、例えば、0Vである。高周波スイッチFET2の制御端子は、ノードDに接続される。バイアス回路10は、電源電圧Vc1のノードから電圧Vc1を受け取る。バイアス回路10はノードDに接続され、ノードDにFET電圧を供給する。FET電圧は、「H」レベル又は「L」レベルの電圧である。FET電圧が「H」レベルであるとき、高周波スイッチFET1及び高周波スイッチFET2はON状態となる。FET電圧が「L」レベルであるとき、高周波スイッチFET1及び高周波スイッチFET2はOFF状態となる。
【0019】
抵抗R1の一端は、ノードEに接続され、他端はノードHに接続される。抵抗R2の一端は、ノードFに接続され、他端はノードHに接続される。抵抗R3の一端は、ノードHに接続され、他端はノードIに接続される。抵抗R4の一端は、ノードIに接続され、他端は接地電圧VSSqのノードに接続される。ノードIはコンパレータ11の非反転入力端子に接続される。コンパレータ11の反転入力端子はノードBに接続される。コンパレータ11の出力端子は、ノードGに接続される。コンパレータ11は、非反転入力端子の電圧と反転入力端子の電圧を比較する。コンパレータ11は、その比較結果に応じた電圧を、出力端子を経てノードGに送信する。コンパレータ11は、非反転入力端子の電圧>反転入力端子の電圧であるとき、「H」レベルの電圧を生成する。非反転入力端子の電圧<反転入力端子の電圧であるとき、「L」レベルの電圧を生成する。コンパレータ11が出力した電圧が「H」レベルであるとき、NMOSトランジスタNMOSはONになる。コンパレータ11が出力した電圧が「L」レベルであるとき、NMOSトランジスタNMOSはOFFになる。言い換えると、ノードIの電圧>ノードBの電圧であるとき、NMOSトランジスタNMOSはONになり、ノードIの電圧<ノードBの電圧であるとき、NMOSトランジスタNMOSはOFFになる。以下では、ノードBの電圧、ノードCの電圧、及びノードIの電圧は、それぞれV1、V2、及びV3と記述される。
【0020】
[1-3]スイッチ回路100の動作
スイッチ回路100は、V1<V3である場合と、V1>V3である場合の両方の状態を遷移する。すなわちスイッチ回路100は、NMOSトランジスタNMOSがOFFである状態と、ONである状態を遷移する。遷移する理由は、V1(ノードBの電位)はノードAに伝送される高周波信号の電位に依存するからである。高周波信号は電位が時間に依存して変化するため、V1の電位の状態に依存して、V1<V3となる場合と、V1>V3となる場合を繰り返すことが考えられる。
【0021】
[1-3-1]スイッチ回路100における容量の等価回路図
前述のように、スイッチ回路100は、高周波信号受信ノードPin上の高周波信号が、高周波信号送信ノードPoutへ伝達されるのを制御する。具体的には、スイッチ回路100は、高周波信号を高周波信号受信ノードPinから高周波信号送信ノードPoutへ、減衰させて伝送する場合と、何ら加工せず、そのまま伝送する場合とを任意に切り替えることが可能である。スイッチ回路100は次のような挙動で高周波信号を制御する。スイッチ回路100は、高周波信号を減衰させる場合において、高周波スイッチFET1及びFET2をONにすることで、高周波信号受信ノードPinから高周波信号送信ノードPoutに伝送される高周波信号を減衰させる。高周波信号を減衰させない場合においては、高周波スイッチFET1及びFET2はOFFであり、スイッチ回路100は高周波信号に対して意図的な制御は行わない。このときスイッチ回路100は高周波信号に対して意図的な制御は行わないが、寄生容量として作用することで高周波信号に対して影響を与えてしまう場合がある。そこで以下では、高周波スイッチFET1及びFET2がOFFであるときに、スイッチ回路100が有してしまう寄生容量に関して記述される。具体的には、V1<V3である場合と、V1>V3である場合における、容量に関する等価回路について記述される。
【0022】
[1-3-1-1]V1<V3のとき
図3は、第1実施形態に係るスイッチ回路100がV1<V3であるときの容量に関する等価回路図の一例を示す。図3に示されるように、高周波スイッチFET1及びFET2はOFF状態であるため、スイッチ回路100は、高周波スイッチFET1及びFET2の位置において、それぞれ寄生容量C1及びC2を有する。また、V1<V3のときNMOSトランジスタNMOSはOFF状態であるため、スイッチ回路100は、NMOSトランジスタNMOSの位置において、寄生容量CNMOSを有する。スイッチ回路100は、等価回路においても変わらずに容量Cc1及びCc2を有する。また、スイッチ回路100は、ノードC(ノードC’)において対地容量Cgを有する。
【0023】
これらを踏まえて、以下に等価回路の構成が記述される。スイッチ回路100は、高周波信号受信ノードPinと、高周波信号送信ノードPoutとの間のノードAに接続される。ノードAは、スイッチ回路100のノードBに接続される。ノードBは、寄生容量C1(高周波スイッチFET1)の一端に接続される。寄生容量C1の他端はノードCに接続される。
【0024】
容量Cc1の一端は、ノードBに接続され、他端はノードEに接続される。寄生容量CNMOS(NMOSトランジスタNMOS)の一端はノードEに接続され、他端はノードFに接続される。容量Cc2の一端は、ノードFに接続され、他端はノードCに接続される。すなわち、V1<V3であるときスイッチ回路100は、寄生容量C1に対して並列に、直列接続された容量Cc1、寄生容量CNMOS、及び容量Cc2が接続される。
【0025】
ノードCは、ノードC’に接続される。ノードC’は、寄生容量C2(高周波スイッチFET2)の一端に接続される。寄生容量C2の他端は接地電圧VSSqのノードに接続される。対地容量Cgの一端はノードC’に接続され、他端は接地電圧VSSqのノードに接続される。
【0026】
上記を踏まえ、V1<V3であるときにスイッチ回路100が有する寄生容量を算出する。ノードB―ノードC間の容量は、以下ではCtotal1と記述される場合がある。Ctotal1は、数式(1)のように記述される。
【0027】
【数1】
【0028】
ここで、容量Cc1及びCc2は、それぞれ対地容量Cgの2倍の容量になるように付加されている。この為、数式(1)は、数式(2)のように変換される。
【0029】
【数2】
【0030】
ノードC’―ノードVSSq間の容量は、以下ではCtotal2と記述される場合がある。高周波スイッチFET1及びFET2は、上記のように同デバイス且つ同サイズである場合を想定している為、C1=C2である。この為Ctotal2は、数式(3)のように記述される。
【0031】
【数3】
【0032】
ここで、スイッチ回路100が有する寄生容量は、Ctotal1と、Ctotal2との合成容量で記述される。
【0033】
[1-3-1-2]V1>V3のとき
図4は、第1実施形態に係るスイッチ回路100がV1>V3であるときの容量に関する等価回路図の一例を示す。図4に示されるように、NMOSトランジスタNMOSがON状態であること以外は、図3と同様である。V1>V3のとき、NMOSトランジスタNMOSはON状態であるため、ノードEとノードFとは、同じ電位を有する。すなわち、V1>V3であるときスイッチ回路100は、高周波スイッチFET1(寄生容量C1)に対して並列に、直列接続された容量Cc1及びCc2が接続される。
【0034】
上記を踏まえ、V1>V3であるときにスイッチ回路100が有する寄生容量を算出する。Ctotal1は、数式(4)のように記述される。
【0035】
【数4】
【0036】
ここで、容量Cc1及びCc2は、それぞれ対地容量Cgの2倍の容量になるように付加されている。このため、数式(4)は、数式(5)のように変換される。
【0037】
【数5】
【0038】
Ctotal2については、V1<V3の場合(数式(3))と同様である。
【0039】
ここで、V1<V3の場合とV1>V3の場合とにおける寄生容量の差について述べられる。V1<V3の場合とV1>V3の場合とでは、Ctotal2の値は同様であるため、Ctotal1についてのみ比較される。
【0040】
数式(2)と数式(5)とを比較すると、数式(6)のようになる。
【0041】
【数6】
【0042】
数式(6)に示されるように、数式(5)から数式(2)を引いた値は正の数となり、数式(2)の方が、数式(5)より小さい。つまりV1<V3の場合の方が、Ctotal1の値、すなわち寄生容量の値が、V3<V1の場合よりも小さくなる。
【0043】
前述の通り、スイッチ回路100は、V1<V3である場合と、V1>V3である場合の両方の状態を遷移する。すなわちスイッチ回路100における寄生容量は、V1<V3のときの寄生容量の値と、V1>V3であるときの寄生容量の値を遷移する。ここでスイッチ回路100における平均的な寄生容量の値を考えると、V1<V3のときの寄生容量の値以上、V1>V3であるときの寄生容量の値以下の値となる。ここで、平均的な寄生容量は、例えば、ノードAに伝送される高周波信号の1周期に亘るスイッチ回路100における寄生容量の平均値を指す。
【0044】
[1-3-2]スイッチ回路100における入力可能電圧
次に、スイッチ回路100の入力可能電圧について記述される。第1実施形態に係るスイッチ回路100では、V1<V3である場合と、V1>V3である場合の両方の状態を遷移することから、入力可能電圧についても2つの場合について考える必要がある。
【0045】
高周波信号受信ノードPinからスイッチ回路100に高周波信号が入力された場合、高周波信号の電圧の振幅(振幅電圧)Vpが、ノードB―ノードC間とノードC’―ノードVSSq間とで分圧される。振幅電圧Vpは、ノードB―ノードC間のインピーダンス(容量性リアクタンス)とノードC’―ノードVSSq間のインピーダンスとに比例して配分される。ノードB―ノードC間のインピーダンス(Ctotal1のインピーダンス)は、以下ではZtotal1と記述される場合がある。ノードC’―ノードVSSq間のインピーダンス(Ctotal2のインピーダンス)は、以下ではZtotal2と記述される場合がある。
【0046】
ノードB―ノードC間に加わる振幅電圧は、以下ではVp1と記述される場合がある。ノードC’―ノードVSSq間に加わる振幅電圧は、以下ではVp2と記述される場合がある。
【0047】
高周波信号の振幅電圧Vpが、Vp1とVp2とに分圧されるため、高周波スイッチFET1及びFET2には、それぞれVp1及びVp2が印加される。このため、スイッチ回路100の入力可能電圧は、高周波スイッチFET1及びFET2の耐圧に依存する。Vp1は高周波スイッチFET1の耐圧より小さい必要があり、Vp2は高周波スイッチFET2の耐圧より小さい必要がある。
【0048】
前述の通り、V1<V3の場合、容量はCtotal1<Ctotal2となる。V1>V3の場合、容量はCtotal1=Ctotal2となる。
【0049】
[1-3-2-1]V1<V3のとき
V1<V3の場合、容量はCtotal1<Ctotal2である。よって、Ztotal1とZtotal2は、異なる値を有し、それぞれ数式(7)及び数式(8)のように記述される。
【0050】
【数7】
【0051】
【数8】
【0052】
ここで、fは高周波信号の周波数である。次に、Vp1及びVp2は数式(9)及び数式(10)のように記述される。
【0053】
【数9】
【0054】
【数10】
【0055】
ここで、Ztotal1>Ztotal2であることから、V1<V3のとき、Vp1>Vp2となる。すなわち、スイッチ回路100の入力可能電圧は、高周波スイッチFET1の耐圧に依存する。
【0056】
[1-3-2-2]V1>V3のとき
V1>V3の場合、容量はCtotal1=Ctotal2である。よって、Ztotal1及びZtotal2は、同じ値を有し、数式(11)のように記述される。
【0057】
【数11】
【0058】
Vp1及びVp2は、V1<V3の場合と同様に、数式(9)及び数式(10)のように記述される。ここで、Ztotal1=Ztotal2であることから、V1<V3のとき、Vp1=Vp2となる。Vp1=Vp2となることから、高周波信号の振幅電圧Vpは、ノードB―ノードC間とノードC’―ノードVSSq間とにおいて均等に分圧される。すなわちV1>V3の場合は、高周波信号の振幅電圧Vpの値を均等に分圧出来ることにより、V1<V3の場合よりも入力可能電圧の値が大きくなる。
【0059】
[1-4]利点(効果)
以上で説明した第1実施形態に係るスイッチ回路100は、スイッチ回路の入力可能電圧を維持したまま、スイッチ回路100の寄生容量を低減することが可能である。以下に、第1実施形態に係るスイッチ回路100の詳細な効果について説明される。
【0060】
例えば携帯電話等に搭載されたスイッチ回路は、必要に応じて携帯電話が伝送する高周波信号を減衰させる等、重要な役割を担っている。しかしながら、スイッチ回路が高周波信号の減衰を行わない場合において、スイッチ回路は寄生容量として回路に悪影響を与える場合がある。スイッチ回路の寄生容量の増加を抑制することが出来ない場合、スイッチ回路は信号の高周波動作を阻害する場合がある。この場合について、図5及び図6を用いて説明される。
【0061】
図5は、第1実施形態の比較例に係るスイッチ回路101における回路図の一例を示す。図5に示されるように、スイッチ回路101は、高周波信号受信ノードPinと、高周波信号送信ノードPoutとを接続する配線に接続される。スイッチ回路101は、高周波スイッチFET1及び高周波スイッチFET2、容量Cc、並びにバイアス回路10を含む。また、スイッチ回路100は、ノードA、B、C、及びDを含む。スイッチ回路101は、第1実施形態に係るスイッチ回路100と異なり、抵抗、トランジスタ、及びコンパレータを有していない。
【0062】
スイッチ回路101における各要素の接続が以下に記述される。スイッチ回路101は、高周波信号受信ノードPinと、高周波信号送信ノードPoutとの間のノードAに接続される。ノードAは、スイッチ回路100のノードBに接続される。ノードBは、高周波スイッチFET1の一端に接続される。高周波スイッチFET1の他端はノードCに接続される。高周波スイッチFET1の制御端子は、ノードDに接続される。
【0063】
容量Ccの一端は、ノードBに接続され、他端はノードCに接続される。ノードCは、高周波スイッチFET2の一端に接続される。高周波スイッチFET2の他端は接地電圧VSSqのノードに接続される。高周波スイッチFET2の制御端子は、ノードDに接続される。バイアス回路10は、電源電圧Vc1のノードから電圧Vc1を受け取る。バイアス回路10はノードDに接続され、ノードDにFET電圧を供給する。FET電圧は、第1実施形態のFET電圧と同様の役割を有しており、高周波スイッチFET1及びFET2のON状態とOFF状態の切り替えを行う。
【0064】
次に、スイッチ回路101の等価回路を用いてスイッチ回路101の寄生容量を算出する。具体的には、高周波スイッチFET1及びFET2がOFFであるときに、スイッチ回路101が有してしまう寄生容量に関して記述される。
【0065】
図6は、第1実施形態の比較例に係るスイッチ回路101の容量に関する等価回路図の一例を示す。図6に示されるように、高周波スイッチFET1及びFET2はOFF状態であるため、スイッチ回路101は、高周波スイッチFET1及びFET2の位置において、それぞれ寄生容量C1及びC2を有する。スイッチ回路101は、等価回路においても変わらずに容量Ccを有する。また、スイッチ回路101は、ノードC(ノードC’)において対地容量Cgを有する。
【0066】
これらを踏まえて、以下に等価回路の構成が記述される。スイッチ回路101は、高周波信号受信ノードPinと、高周波信号送信ノードPoutとの間のノードAに接続される。ノードAは、スイッチ回路101のノードBに接続される。ノードBは、寄生容量C1(高周波スイッチFET1)の一端に接続される。寄生容量C1の他端はノードCに接続される。容量Ccの一端は、ノードBに接続され、他端はノードCに接続される。すなわちスイッチ回路101は、寄生容量C1に対して並列に、容量Ccが接続される。
【0067】
ノードCは、ノードC’に接続される。ノードC’は、寄生容量C2(高周波スイッチFET2)の一端に接続される。寄生容量C2の他端は接地電圧VSSqのノードに接続される。対地容量Cgの一端はノードC’に接続され、他端は接地電圧VSSqのノードに接続される。
【0068】
上記を踏まえ、スイッチ回路101が有する寄生容量を算出する。ノードB―ノードC間の容量は、以下ではCtotal1と記述される場合がある。Ctotal1は、数式(12)のように記述される。
【0069】
【数12】
【0070】
ここで、容量Ccは、対地容量Cgと同じ容量になるように付加されている。この為、数式(12)は、数式(13)のように変換される。
【0071】
【数13】
【0072】
ノードC’―ノードVSSq間の容量は、以下ではCtotal2と記述される場合がある。高周波スイッチFET1及びFET2は、上記のように同デバイス且つ同サイズである場合を想定している為、C1=C2である。この為Ctotal2は、数式(14)のように記述される。
【0073】
【数14】
【0074】
ここで、スイッチ回路101が有する寄生容量は、Ctotal1と、Ctotal2との合成容量で記述される。数式(3)及び数式(5)より、スイッチ回路101におけるCtotal1及びCtotal2は、V1>V3の場合のスイッチ回路100におけるCtotal1及びCtotal2と同様である。
【0075】
スイッチ回路101におけるCtotal1及びCtotal2は、寄生容量C1及び対地容量Cgから構成されている。寄生容量C1と対地容量Cgとは、意図して付加している容量ではないため、削減することは出来ない。このように、削減不可能な容量に依存してしまうことから、第1実施形態の比較例に係るスイッチ回路101は、寄生容量の増加を抑制することが出来ない場合がある。
【0076】
これに対して、第1実施形態に係るスイッチ回路100は、V1<V3の場合において、寄生容量CNMOS(NMOSトランジスタNMOS)を、容量Cc1及びCc2に直列に接続することにより、合成される寄生容量を低下させることが可能である(数式(2))。
【0077】
前述の通り、V1>V3の場合のスイッチ回路100の寄生容量(=スイッチ回路101の寄生容量)は、V1<V3の場合のスイッチ回路100の寄生容量より大きい。また、スイッチ回路100の平均的な寄生容量の値は、V1<V3のときの寄生容量の値以上、V1>V3であるときの寄生容量の値以下の値である。これらのことから、スイッチ回路100における寄生容量は、スイッチ回路101における寄生容量よりも小さくすることが可能である。
【0078】
[2]第2実施形態
[2-1]構成
第2実施形態に係るスイッチ回路100は、第1実施形態に係るスイッチ回路100を1セットとして、これを複数セット並べるとともに一部が共有された構造を有している。第2実施形態に係るスイッチ回路100は、第1実施形態に係るスイッチ回路100との区別のために、スイッチ回路100Bと称される。以下では、第2実施形態に係るスイッチ回路100Bについて、第1実施形態と異なる点について主に説明される。
【0079】
図7は、第2実施形態に係るスイッチ回路100Bにおける回路図の一例を示す。図7に示されるように、スイッチ回路100Bは、第1実施形態のスイッチ回路100と、第1実施形態のスイッチ回路100から抵抗R3及びR4、バイアス回路10、並びにコンパレータ11が除かれた構成を含む。すなわち、スイッチ回路100Bは、第1実施形態のスイッチ回路100に加えて、第1実施形態のスイッチ回路100から抵抗R3及びR4、バイアス回路10、並びにコンパレータ11が除かれた構成を含む。
【0080】
スイッチ回路100に付け加えられた点として、スイッチ回路100Bは、高周波スイッチFET3及び高周波スイッチFET4、容量Cc3及び容量Cc4、NMOSトランジスタNMOS2、並びに抵抗R5及びR6を更に含む。また、スイッチ回路100Bは、ノードJ、K、L、M、N、O、P、Q、及びRを更に含む。
【0081】
スイッチ回路100Bにおける各要素の接続が以下に記述される。スイッチ回路100Bは、高周波信号受信ノードPinと、ノードAとの間のノードJに接続される。ノードJは、スイッチ回路100BのノードKに接続される。ノードKは、高周波スイッチFET3の一端に接続される。高周波スイッチFET3は、例えば、n型のMOSトランジスタである。高周波スイッチFET3は、高周波スイッチFET1及びFET2と実質的に同じ特性及び(又は)同じサイズを有する。高周波スイッチFET3の他端はノードLに接続される。高周波スイッチFET3の制御端子は、ノードMに接続される。
【0082】
容量Cc3の一端は、ノードKに接続され、他端はノードNに接続される。NMOSトランジスタNMOS2の一端はノードNに接続され、他端はノードOに接続される。NMOSトランジスタNMOS2の制御端子は、ノードPに接続される。ノードPは、コンパレータ11の出力端子に接続される。容量Cc4の一端は、ノードOに接続され、他端はノードLに接続される。ノードLは、高周波スイッチFET4の一端に接続される。高周波スイッチFET4は、例えばn型のMOSトランジスタである。高周波スイッチFET4は、高周波スイッチFET1~FET3と実質的に同じ特性及び(又は)同じサイズを有する。
【0083】
高周波スイッチFET4の他端は接地電圧VSSqのノードに接続される。高周波スイッチFET4の制御端子は、ノードMに接続される。ノードMはバイアス回路10に接続され、FET電圧を受け取る。
【0084】
抵抗R5の一端は、ノードNに接続され、他端はノードQに接続される。抵抗R6の一端は、ノードOに接続され、他端はノードQに接続される。ノードQは、抵抗R3の一端に接続される。この他の構成要素の接続は、第1実施形態のスイッチ回路100と同様である。
【0085】
図7は高周波信号受信ノードPinと高周波信号送信ノードPoutとの間に、抵抗R3及びR4、バイアス回路10、及びコンパレータ11を共通としてスイッチ回路100が2セット接続された、スイッチ回路100Bの一例を示しているが、スイッチ回路100Bは、抵抗R3及びR4、バイアス回路10、及びコンパレータ11を共通としてスイッチ回路100が3セット以上接続された構造でも良い。
【0086】
[2-2]利点(効果)
以上で説明された第2実施形態に係るスイッチ回路100Bによれば、高周波信号受信ノードPinと高周波信号送信ノードPoutとの間に複数のスイッチ回路を有した構造であっても、第1実施形態と同等の効果を得ることが可能である。
【0087】
[3]第3実施形態
[3-1]構成
第3実施形態に係るスイッチ回路100は、高周波スイッチFETを3個以上用いる構造を有している。第3実施形態に係るスイッチ回路100は、第1実施形態に係るスイッチ回路100との区別のために、スイッチ回路100Cと称される。2個の高周波スイッチFETを用いて高周波信号の振幅電圧Vpを分圧していた第1実施形態に係るスイッチ回路100に対して、第3実施形態に係るスイッチ回路100Cは、3個の高周波スイッチFETを用いて高周波信号の振幅電圧Vpを分圧している。振幅電圧Vpを3個の高周波スイッチFETで分圧することで入力可能電圧を向上可能な構造を有する。以下では、第3実施形態に係るスイッチ回路100Cについて、第1実施形態と異なる点について主に説明される。
【0088】
図8は、第3実施形態に係るスイッチ回路100Cにおける回路図の一例を示す。図8に示されるように、スイッチ回路100Cは、一例として高周波スイッチFETを3個有しているが、高周波スイッチFETは3個に限定されず、3個以上の構造を有していれば良い。スイッチ回路100Cは、高周波スイッチFET1~FET3、容量Cc1~Cc4、NMOSトランジスタNMOS及びNMOS2、抵抗R1~R6、バイアス回路10、並びにコンパレータ11を含む。また、スイッチ回路100は、ノードA、B、C、D、E、F、G、H、I、K、L、N、O、P、及びQを含む。
【0089】
スイッチ回路100Cにおける各要素の接続が以下に記述される。スイッチ回路100Cは、高周波信号受信ノードPinと、高周波信号送信ノードPoutとの間のノードAに接続される。ノードAは、スイッチ回路100のノードBに接続される。ノードBは、高周波スイッチFET1の一端に接続される。高周波スイッチFET1の他端はノードCに接続される。高周波スイッチFET1の制御端子は、ノードDに接続される。
【0090】
容量Cc1の一端は、ノードBに接続され、他端はノードEに接続される。NMOSトランジスタNMOSの一端はノードEに接続され、他端はノードFに接続される。NMOSトランジスタNMOSの制御端子は、ノードGに接続される。容量Cc2の一端は、ノードFに接続され、他端はノードCに接続される。ノードCは、ノードKに接続される。
【0091】
ノードKは、高周波スイッチFET2の一端に接続される。高周波スイッチFET2は、例えばn型のMOSトランジスタである。高周波スイッチFET2は、高周波スイッチFET1と実質的に同じ特性及び(又は)同じサイズを有する。高周波スイッチFET2の他端はノードLに接続される。高周波スイッチFET2の制御端子は、ノードDに接続される。
【0092】
容量Cc3の一端は、ノードKに接続され、他端はノードNに接続される。NMOSトランジスタNMOS2の一端はノードNに接続され、他端はノードOに接続される。NMOSトランジスタNMOS2の制御端子は、ノードPに接続される。ノードPは、コンパレータ11の出力端子に接続される。容量Cc4の一端は、ノードOに接続され、他端はノードLに接続される。ノードLは、高周波スイッチFET3の一端に接続される。高周波スイッチFET3は、例えばn型のMOSトランジスタである。高周波スイッチFET3は、高周波スイッチFET1及び2と実質的に同じ特性及び(又は)同じサイズを有する。
【0093】
高周波スイッチFET3の他端は接地電圧VSSqのノードに接続される。高周波スイッチFET3の制御端子は、ノードDに接続される。バイアス回路10は、電源電圧Vc1のノードから電圧Vc1を受け取る。バイアス回路10はノードDに接続され、ノードDにFET電圧を供給する。FET電圧が「H」レベルであるとき、高周波スイッチFET1~3はON状態となる。FET電圧が「L」レベルであるとき、高周波スイッチFET1~3はOFF状態となる。
【0094】
抵抗R1の一端は、ノードEに接続され、他端はノードHに接続される。抵抗R2の一端は、ノードFに接続され、他端はノードHに接続される。抵抗R5の一端は、ノードNに接続され、他端はノードQに接続される。抵抗R6の一端は、ノードOに接続され、他端はノードQに接続される。
【0095】
抵抗R3の一端は、ノードH及びノードQに接続され、他端はノードIに接続される。抵抗R4の一端は、ノードIに接続され、他端は接地電圧VSSqのノードに接続される。ノードIはコンパレータ11の非反転入力端子に接続される。コンパレータ11の反転入力端子はノードBに接続される。コンパレータ11の出力端子は、ノードG及びノードPに接続される。
【0096】
[3-3]利点(効果)
以上で説明した第3実施形態に係るスイッチ回路100Cによれば、第1実施形態よりも寄生容量を低減させることが出来ることに加え、高周波信号の入力可能電圧の許容範囲を向上させることが可能である。
【0097】
まず高周波信号の入力可能電圧の向上に関して記述される。高周波信号受信ノードPinからスイッチ回路100Cに高周波信号が入力された場合、高周波信号の振幅電圧Vpが、ノードB―ノードC間と、ノードK―ノードL間と、ノードL―ノードVSSq間とで分圧される。振幅電圧Vpは、ノードB―ノードC間のインピーダンスと、ノードK―ノードL間のインピーダンスと、ノードL―ノードVSSq間のインピーダンスとに比例して配分される。このため、スイッチ回路100Cの入力可能電圧は、高周波スイッチFET1、FET2、及びFET3の耐圧に依存する。
【0098】
ここで、第1実施形態に係るスイッチ回路100の場合は、ノードB―ノードC間とノードC―VSSq間との2カ所で振幅電圧Vpを分圧していた。これに対して、第3実施形態に係るスイッチ回路100Cの場合は、振幅電圧Vpは、ノードB―ノードC間と、ノードK―ノードL間と、ノードL―VSSq間との3カ所で分圧される。分圧する場所が増えることにより、1カ所に印加される電圧は、スイッチ回路100Cの方が、スイッチ回路100よりも小さくなる。すなわち、同じ振幅電圧Vpを印加した場合において、スイッチ回路100Cとスイッチ回路100とでは、スイッチ回路100Cの方が高周波スイッチFETに印加される電圧が小さくなる。このことから、スイッチ回路100Cは、スイッチ回路100に比べて、高周波信号の入力可能電圧の許容範囲が大きくなる。
【0099】
次に寄生容量の低減に関して記述される。スイッチ回路100Cにおいて、3個の高周波スイッチFET1~FET3は、ノードAに対して直列に接続されている。このことから、スイッチ回路100Cは、2個の高周波スイッチFET1及びFET2がノードAに対して直列に接続されているスイッチ回路100より、寄生容量が小さくなる。
【0100】
スイッチ回路100とスイッチ回路100Cの寄生容量を具体的に比較する。スイッチ回路100における寄生容量は、ノードB―ノードC間の構成要素(高周波スイッチFET1及び、高周波スイッチFET1に対して並列に、直列接続された容量Cc1、寄生容量CNMOS、並びに容量Cc2)による寄生容量と、ノードC―VSSq間の構成要素(高周波スイッチFET2)による寄生容量との合成容量である。ノードB―ノードC間の構成要素による寄生容量をCtotal1、ノードC―VSSq間の構成要素による寄生容量をCtotal2とする。
【0101】
スイッチ回路100Cにおける寄生容量は、ノードB―ノードC間の構成要素(高周波スイッチFET1及び、高周波スイッチFET1に対して並列に、直列接続された容量Cc1、寄生容量CNMOS、並びに容量Cc2)による寄生容量と、ノードK―ノードL間の構成要素(高周波スイッチFET2及び、高周波スイッチFET2に対して並列に、直列接続された容量Cc3、寄生容量CNMOS2、並びに容量Cc4)による寄生容量と、ノードL―VSSq間の構成要素(高周波スイッチFET3)による寄生容量との合成容量である。ノードB―ノードC間の構成要素による寄生容量をCtotal1’、ノードK―ノードL間の構成要素による寄生容量をCtotal2’、ノードL―VSSq間の構成要素による寄生容量をCtotal3’とする。
【0102】
スイッチ回路100におけるCtotal1及びCtotal2は、スイッチ回路100CにおけるCtotal1’及びCtotal3’にそれぞれ相当する。すなわち、スイッチ回路100Cの寄生容量を生む構成は、スイッチ回路100の寄生容量を生む構成にCtotal2’を直列接続させた構成である。或る容量を有する構成に別の容量が直列に付加される場合、付加された容量を含んだ構成の合成容量は、付加されていない構成の合成容量より小さい。ここで、スイッチ回路100の寄生容量はCtotal1及びCtotal2の合成容量であり、スイッチ回路100Cの寄生容量はCtotal1’(=Ctotal1)、Ctotal2’及びCtotal3’(=Ctotal2)の合成容量である。そして、Ctotal2’の値は、Ctotal1の値と等しい。このため、スイッチ回路100Cの寄生容量は、Ctotal2’を直列に合成した分だけ、スイッチ回路100の寄生容量より小さい。よって、スイッチ回路100Cは、スイッチ回路100に比べて、寄生容量を低減させることが出来る。
【0103】
[4]その他の変形例等
本発明の第1~3実施形態において、スイッチ回路100の構成要素は、同一の半導体基板上で形成されていても良い。例えば高周波スイッチFET1及びFET2のような素子を同一の半導体基板上で形成することにより、これらの素子の製造プロセスのばらつきによる違いを低減することが出来る。
【0104】
具体的には、素子を同一の半導体基板上で形成することにより、回路内部における高周波スイッチFETの特性の均一性、バイアス回路10に使用される素子の特性の均一性、コンパレータ11に使用される素子の特性の均一性、基準電圧生成に使用される抵抗の均一性等が向上する。この事により、振幅電圧Vpに関する検出精度が向上する為、より一層、入力可能電圧の維持及び寄生容量の低減を実現できる。
【0105】
また、それぞれ別々の半導体基板上で形成した素子を、同一のプリント基板上で使用することも可能である。同一のプリント基板上で使用した場合も、同一の半導体基板上で形成した場合と同様の効果が期待できる。
【0106】
また、プリント基板には、例えばシリコンよりも高抵抗の材料を用いても良い。シリコンよりも高抵抗の材料を用いることにより、スイッチ回路100は、対地容量を低減することが可能である。対地容量が低減できると、スイッチ回路100に付加する容量を小さくすることが可能である為、スイッチ回路100の寄生容量を低減することが可能である。
【0107】
本発明の第1~3実施形態において、スイッチ回路100の構造はその他の構造であっても良い。例えば、図示されていない構成要素を含み、図示されていない配線等によって接続された構造であっても良い。
【0108】
本発明の第1~3実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。第1~3実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。第1~3実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0109】
10…バイアス回路、11…コンパレータ、100…スイッチ回路、400…データ処理部、500…送信回路、600…信号処理装置、700…アンテナ、800…システム
C1,C2…寄生容量、Cc1~Cc4…容量、FET1~FET4…高周波スイッチ、NMOS…NMOSトランジスタ、R1~R6…抵抗、Vc1…電源電圧、Pin…高周波信号受信ノード、Pout…高周波信号送信ノード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8