(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体回路
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230814BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230814BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
H01L29/78 656A
H01L29/78 653A
H01L29/78 652L
H01L29/78 652K
H01L29/78 652P
H01L29/78 652Q
H01L29/78 655A
H01L29/78 655B
H01L29/78 655D
H01L29/78 655C
H01L29/78 655G
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
H01L29/78 652F
H01L29/78 652H
H01L29/06 301D
H01L29/78 654Z
(21)【出願番号】P 2020155895
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】末代 知子
(72)【発明者】
【氏名】岩鍜治 陽子
(72)【発明者】
【氏名】糸数 裕子
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-046255(JP,A)
【文献】特開2017-054968(JP,A)
【文献】特開2020-053466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/06
H01L 29/739
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面を有する半導体層であって、
前記第1の面の側に設けられた第1のトレンチと、
前記第1の面の側に設けられた第2のトレンチと、
前記第1の面の側に設けられた第3のトレンチと、
を含む半導体層と、
前記第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、
前記第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、
前記第3のトレンチの中に設けられた第3のゲート電極と、
前記第2の面の側に設けられた第4のゲート電極と、
前記第2の面の側に設けられた第5のゲート電極と、
前記第1の面に接する第1の電極と、
前記第2の面に接する第2の電極と、
前記第1のゲート電極に電気的に接続された第1の電極パッドと、
前記第2のゲート電極に電気的に接続された第2の電極パッドと、
前記第3のゲート電極に電気的に接続された第3の電極パッドと、
前記第4のゲート電極に電気的に接続された第4の電極パッドと、
前記第5のゲート電極に電気的に接続された第5の電極パッドと、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記半導体層は、
第1導電形の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1のゲート電極と対向し、前記第2のゲート電極と対向し、前記第3のゲート電極と対向する第2導電形の第2の半導体領域と、
前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1の電極と接する第1導電形の第3の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第2の面との間に設けられ、前記第4のゲート電極と対向し、前記第2の電極と接する第2導電形の第4の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第2の面との間に設けられ、前記第5のゲート電極と対向し、前記第2の電極と接する第2導電形の第5の半導体領域と、
前記第4の半導体領域と前記第2の面との間に設けられ、前記第2の電極と接する第1導電形の第6の半導体領域と、
前記第5の半導体領域と前記第2の面との間に設けられ、前記第2の電極と接する第1導電形の第7の半導体領域と、を含む請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体層は、セル部と前記セル部を囲む終端部とを有し、
前記第1のトレンチ、前記第2のトレンチ、及び前記第3のトレンチは、前記セル部の前記第1の面の側に設けられ、
前記第4のゲート電極は、前記セル部の前記第2の面の側に設けられ、
前記第5のゲート電極は、前記終端部の前記第2の面の側に設けられる請求項1又は請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1のゲート電極は、前記第1の面に平行な第1の方向に延び、
前記第4のゲート電極は、前記第1の面に平行で、前記第1の方向に直交する第2の方向に延びる請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第5のゲート電極は、前記第4のゲート電極と直交する方向に延びる請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1の電極パッド、前記第2の電極パッド、及び前記第3の電極パッドは、前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、
前記第4の電極パッド及び前記第5の電極パッドは、前記半導体層の前記第2の面の側に設けられる請求項1ないし請求項5いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6いずれか一項記載の半導体装置と、
前記第1の電極パッド、前記第2の電極パッド、前記第3の電極パッド、前記第4の電極パッド、及び前記第5の電極パッドに印加する電圧を制御する制御回路を、備える半導体回路。
【請求項8】
前記制御回路は、
前記第1の電極パッド、前記第2の電極パッド、及び前記第3の電極パッドに、前記半導体層の前記第1のゲート電極と対向する部分、前記第2のゲート電極と対向する部分、及び前記第3のゲート電極と対向する部分に反転層が形成される閾値電圧以上のターンオン電圧を印加した後、所定の時間経過後に前記第3の電極パッドに前記閾値電圧未満のターンオフ電圧を印加し、
前記第3の電極パッドにターンオフ電圧を印加した後、所定の時間経過後に前記第5の電極パッドにターンオン電圧を印加し、
前記第5の電極パッドにターンオン電圧を印加した後、所定の時間経過後に前記第4の電極パッドにターンオン電圧を印加する請求項7記載の半導体回路。
【請求項9】
前記制御回路は、
前記第1の電極パッド、前記第2の電極パッド、及び前記第3の電極パッドにターンオン電圧を印加した後、所定の時間経過後に前記第1の電極パッドにターンオフ電圧を印加し、
前記第1の電極パッドにターンオフ電圧を印加する前に、前記第5の電極パッドにターンオン電圧を印加する請求項8記載の半導体回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及び半導体回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用の半導体装置の一例として、トレンチゲート構造のInsulated Gate Bipolar Transistor(IGBT)がある。トレンチゲート構造のIGBTは、例えば、コレクタ電極上に、p形のコレクタ領域、n形のドリフト領域、p形のベース領域が設けられる。そして、p形のベース領域を貫通し、n形のドリフト領域に達するトレンチ内に、ゲート絶縁膜を間に挟んでゲート電極が設けられる。さらに、p形のベース領域表面のトレンチに隣接する領域に、エミッタ電極に接続されるn形のエミッタ領域が設けられる。
【0003】
上記IGBTでは、ゲート電極に閾値電圧より高い正電圧が印加されることにより、p形のベース領域にチャネルが形成される。そして、n形のエミッタ領域からn形ドリフト領域に電子が注入され、p形のコレクタ領域からn形ドリフト領域に正孔が注入される。これにより、コレクタ電極とエミッタ電極との間に電子と正孔をキャリアとするオン電流が流れる。
【0004】
トレンチゲート構造が設けられたセル領域の周囲には、終端領域が設けられる。終端領域は、例えば、ガードリングなどの電界緩和構造を備える。終端領域を設けることでセル領域の端部の電界強度が低下し、IGBTがオフ状態の時の耐圧の低下が抑制される。
【0005】
セル領域の端部では、IGBTがオン状態の際にセルの存在しない終端領域までキャリアが広がる。IGBTがオン状態からオフ状態に移行するターンオフ動作の際に、終端領域に広がったキャリアがセル領域の端部に集中して排出される。したがって、セル領域の端部に電流集中が生じる。よって、電流集中によるIGBTの破壊が生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ターンオフ損失が低減され、電流集中による破壊が抑制される半導体装置及び半導体回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の半導体装置は、第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面を有する半導体層であって、前記第1の面の側に設けられた第1のトレンチと、前記第1の面の側に設けられた第2のトレンチと、前記第1の面の側に設けられた第3のトレンチと、を含む半導体層と、前記第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、前記第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、前記第3のトレンチの中に設けられた第3のゲート電極と、前記第2の面の側に設けられた第4のゲート電極と、前記第2の面の側に設けられた第5のゲート電極と、前記第1の面に接する第1の電極と、前記第2の面に接する第2の電極と、前記第1のゲート電極に電気的に接続された第1の電極パッドと、前記第2のゲート電極に電気的に接続された第2の電極パッドと、前記第3のゲート電極に電気的に接続された第3の電極パッドと、前記第4のゲート電極に電気的に接続された第4の電極パッドと、前記第5のゲート電極に電気的に接続された第5の電極パッドと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】第1の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図。
【
図4】第1の実施形態の半導体装置のタイミングチャート。
【
図6】第3の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図。
【
図7】第3の実施形態の半導体装置のタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する。
【0011】
本明細書中、半導体領域の不純物濃度の分布及び絶対値は、例えば、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)を用いて測定することが可能である。また、2つの半導体領域の不純物濃度の相対的な大小関係は、例えば、走査型静電容量顕微鏡法(Scanning Capacitance Microscopy:SCM)を用いて判定することが可能である。また、不純物濃度の分布及び絶対値は、例えば、拡がり抵抗測定法(Spreading Resistance Analysis:SRA)を用いて測定することが可能である。SCM及びSRAでは、半導体領域のキャリア濃度の相対的な大小関係や絶対値が求まる。不純物の活性化率を仮定することで、SCM及びSRAの測定結果から、2つの半導体領域の不純物濃度の間の相対的な大小関係、不純物濃度の分布、及び、不純物濃度の絶対値を求めることが可能である。
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の半導体装置は、第1の面と、第1の面と対向する第2の面を有する半導体層であって、第1の面の側に設けられた第1のトレンチと、第1の面の側に設けられた第2のトレンチと、第1の面の側に設けられた第3のトレンチと、を含む半導体層と、第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、第3のトレンチの中に設けられた第3のゲート電極と、第2の面の側に設けられた第4のゲート電極と、第2の面の側に設けられた第5のゲート電極と、第1の面に接する第1の電極と、第2の面に接する第2の電極と、第1のゲート電極に電気的に接続された第1の電極パッドと、第2のゲート電極に電気的に接続された第2の電極パッドと、第3のゲート電極に電気的に接続された第3の電極パッドと、第4のゲート電極に電気的に接続された第4の電極パッドと、第5のゲート電極に電気的に接続された第5の電極パッドと、を備える。
【0013】
また、第1の実施形態の半導体回路は、上記半導体装置と、第1の電極パッド、第2の電極パッド、第3の電極パッド、第4の電極パッド、及び第5の電極パッドに印加する電圧を制御する制御回路を、備える。
【0014】
第1の実施形態の半導体装置は、半導体層の表面側及び裏面側にゲート電極を備える両面ゲート構造のIGBT100である。また、IGBT100は、半導体層の表面側に独立に制御される3種のゲート電極を備える。また、IGBT100は、半導体層の裏面側に独立に制御される2種のゲート電極を備える。半導体層の表面側のゲート電極は、トレンチの中に設けられたトレンチゲート構造を有する。以下、第1導電形がn形、第2導電形がp形である場合を例に説明する。
【0015】
図1は、第1の実施形態の半導体回路の模式図である。第1の実施形態の半導体回路は、半導体モジュール1000である。
【0016】
半導体モジュール1000は、IGBT100と制御回路150を備える。
【0017】
図1は,IGBT100のレイアウトを示す。IGBT100は、セル領域100a、終端領域100b、第1の表面ゲート電極パッド101(第1の電極パッド)、第2の表面ゲート電極パッド102(第2の電極パッド)、第3の表面ゲート電極パッド103(第3の電極パッド)、第1の裏面ゲート電極パッド104(第4の電極パッド)、及び第2の裏面ゲート電極パッド105(第5の電極パッド)を有する。
【0018】
終端領域100bは、セル領域100aを囲む。第1の表面ゲート電極パッド101、第2の表面ゲート電極パッド102、及び第3の表面ゲート電極パッド103は、IGBT100の表面側に位置する。第1の裏面ゲート電極パッド104及び第2の裏面ゲート電極パッド105は、IGBT100の裏面側に位置する。
【0019】
図2は、第1の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図2は、
図1のAA’断面である。
【0020】
第1の実施形態のIGBT100は、半導体層10、エミッタ電極12(第1の電極)、コレクタ電極14(第2の電極)、第1の表面ゲート絶縁膜21、第2の表面ゲート絶縁膜22、第3の表面ゲート絶縁膜23、第1の裏面ゲート絶縁膜24、第2の裏面ゲート絶縁膜25、メインゲート電極31(第1のゲート電極)、コントロールゲート電極32(第2のゲート電極)、プリゲート電極33(第3のゲート電極)、裏面セルゲート電極34(第4のゲート電極)、裏面終端ゲート電極35(第5のゲート電極)、表面層間絶縁層40、裏面層間絶縁層42を備える。
【0021】
半導体層10の中には、メインゲートトレンチ51(第1のトレンチ)、コントロールゲートトレンチ52(第2のトレンチ)、プリゲートトレンチ53(第3のトレンチ)、n形のセルドレイン領域60(第6の半導体領域)、n形の終端ドレイン領域62(第7の半導体領域)、p形のセルコレクタ領域64(第4の半導体領域)、p形の終端コレクタ領域65(第5の半導体領域)、n形のバッファ領域66、n形のドリフト領域68(第1の半導体領域)、p形のベース領域70(第2の半導体領域)、n形のエミッタ領域72(第3の半導体領域)、p形のコンタクト領域74、p形の境界領域76(第8の半導体領域)、p型のガードリング領域78が設けられる。
【0022】
半導体層10は、第1の面P1と、第1の面P1に対向する第2の面P2とを有する。第1の面P1は半導体層10の表面、第2の面P2は半導体層10の裏面である。
【0023】
本明細書中、第1の面P1に平行な一方向を第1の方向と称する。また、第1の面P1に平行で第1の方向に直交する方向を第2の方向と称する。
【0024】
半導体層10は、セル部10aと終端部10bを含む。セル部10aは、半導体層10のセル領域100aに含まれる。終端部10bは、半導体層10の終端領域100bに含まれる。終端部10bは、セル部10aを囲む。
【0025】
半導体層10は、例えば、単結晶シリコンである。半導体層10の膜厚は、例えば、40μm以上700μm以下である。
【0026】
エミッタ電極12は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。エミッタ電極12の少なくとも一部は半導体層10の第1の面P1に接する。エミッタ電極12は、例えば、金属である。エミッタ電極12には、エミッタ電圧(Ve)が印加される。エミッタ電圧は、例えば、0Vである。
【0027】
コレクタ電極14は、半導体層10の第2の面P2の側に設けられる。コレクタ電極14の少なくとも一部は半導体層10の第2の面P2に接する。コレクタ電極14は、例えば、金属である。
【0028】
コレクタ電極14には、コレクタ電圧(Vc)が印加される。コレクタ電圧は、例えば、200V以上6500V以下である。
【0029】
メインゲートトレンチ51は、セル領域100aに設けられる。メインゲートトレンチ51は、セル部10aの第1の面P1側に設けられる。メインゲートトレンチ51は、セル部10aに設けられた溝である。メインゲートトレンチ51は、第1の方向に延びる。メインゲートトレンチ51は、第2の方向に繰り返し設けられる。
【0030】
コントロールゲートトレンチ52は、セル領域100aに設けられる。コントロールゲートトレンチ52は、セル部10aの第1の面P1側に設けられる。コントロールゲートトレンチ52は、セル部10aに設けられた溝である。コントロールゲートトレンチ52は、第1の方向に延びる。コントロールゲートトレンチ52は、第2の方向に繰り返し設けられる。
【0031】
プリゲートトレンチ53は、セル領域100aに設けられる。プリゲートトレンチ53は、セル部10aの第1の面P1側に設けられる。プリゲートトレンチ53は、セル部10aに設けられた溝である。プリゲートトレンチ53は、第1の方向に延びる。プリゲートトレンチ53は、第2の方向に繰り返し設けられる。
【0032】
メインゲート電極31は、セル領域100aに設けられる。メインゲート電極31は、セル部10aの第1の面P1の側に設けられる。メインゲート電極31の少なくとも一部は、メインゲートトレンチ51の中に設けられる。第1の表面ゲート電極パッド101は、図示しない配線を用いてメインゲート電極31に電気的に接続される。
【0033】
メインゲート電極31は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む多結晶シリコンである。メインゲート電極31には、第1のゲート電圧(Vg1)が印加される。第1のゲート電圧(Vg1)は、エミッタ電圧(Ve)を基準とする電圧である。
【0034】
以下、メインゲート電極31に印加される第1のゲート電圧(Vg1)で制御されるトランジスタをメインゲートトランジスタと称する。
【0035】
第1の表面ゲート絶縁膜21は、メインゲート電極31とセル部10aとの間に設けられる。第1の表面ゲート絶縁膜21の少なくとも一部は、メインゲートトレンチ51の中に設けられる。第1の表面ゲート絶縁膜21は、例えば、酸化シリコン膜である。
【0036】
コントロールゲート電極32は、セル領域100aに設けられる。コントロールゲート電極32は、セル部10aの第1の面P1の側に設けられる。コントロールゲート電極32の少なくとも一部は、コントロールゲートトレンチ52の中に設けられる。第2の表面ゲート電極パッド102は、図示しない配線を用いてコントロールゲート電極32に電気的に接続される。
【0037】
コントロールゲート電極32は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む多結晶シリコンである。コントロールゲート電極32には、第2のゲート電圧(Vg2)が印加される。第2のゲート電圧(Vg2)は、エミッタ電圧(Ve)を基準とする電圧である。
【0038】
以下、コントロールゲート電極32に印加される第2のゲート電圧(Vg2)で制御されるトランジスタをコントロールゲートトランジスタと称する。
【0039】
第2の表面ゲート絶縁膜22は、コントロールゲート電極32とセル部10aとの間に設けられる。第2の表面ゲート絶縁膜22の少なくとも一部は、コントロールゲートトレンチ52の中に設けられる。第2の表面ゲート絶縁膜22は、例えば、酸化シリコン膜である。
【0040】
プリゲート電極33は、セル領域100aに設けられる。プリゲート電極33は、セル部10aの第1の面P1の側に設けられる。プリゲート電極33の少なくとも一部は、プリゲートトレンチ53の中に設けられる。第3の表面ゲート電極パッド103は、図示しない配線を用いてプリゲート電極33に電気的に接続される。
【0041】
プリゲート電極33は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む多結晶シリコンである。プリゲート電極33には、第3のゲート電圧(Vg3)が印加される。第3のゲート電圧(Vg3)は、エミッタ電圧(Ve)を基準とする電圧である。
【0042】
以下、プリゲート電極33に印加される第3のゲート電圧(Vg3)で制御されるトランジスタをプリゲートトランジスタと称する。
【0043】
第3の表面ゲート絶縁膜23は、プリゲート電極33とセル部10aとの間に設けられる。第3の表面ゲート絶縁膜23の少なくとも一部は、プリゲートトレンチ53の中に設けられる。第3の表面ゲート絶縁膜23は、例えば、酸化シリコン膜である。
【0044】
裏面セルゲート電極34は、セル領域100aに設けられる。裏面セルゲート電極34は、セル部10aの第2の面P2の側に設けられる。第1の裏面ゲート電極パッド104は、図示しない配線を用いて裏面セルゲート電極34に電気的に接続される。
【0045】
裏面セルゲート電極34は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む多結晶シリコンである。裏面セルゲート電極34には、第4のゲート電圧(Vg4)が印加される。第4のゲート電圧(Vg4)は、コレクタ電圧(Vc)を基準とする電圧である。
【0046】
以下、裏面セルゲート電極34に印加される第4のゲート電圧(Vg4)で制御されるトランジスタを裏面セルトランジスタと称する。
【0047】
第1の裏面ゲート絶縁膜24は、裏面セルゲート電極34とセル部10aとの間に設けられる。第1の裏面ゲート絶縁膜24は、例えば、酸化シリコン膜である。
【0048】
裏面終端ゲート電極35は、終端領域100bに設けられる。裏面終端ゲート電極35は、終端部10bの第2の面P2の側に設けられる。第2の裏面ゲート電極パッド105は、図示しない配線を用いて裏面終端ゲート電極35に電気的に接続される。
【0049】
裏面終端ゲート電極35は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む多結晶シリコンである。裏面終端ゲート電極35には、第5のゲート電圧(Vg5)が印加される。第5のゲート電圧(Vg5)は、コレクタ電圧(Vc)を基準とする電圧である。
【0050】
以下、裏面終端ゲート電極35に印加される第5のゲート電圧(Vg5)で制御されるトランジスタを裏面終端トランジスタと称する。
【0051】
第2の裏面ゲート絶縁膜25は、裏面終端ゲート電極35と終端部10bとの間に設けられる。第2の裏面ゲート絶縁膜25は、例えば、酸化シリコン膜である。
【0052】
図3は、第1の実施形態の半導体装置の模式平面図である。
図3(a)はIGBT100の表面側、すなわち、半導体層10の第1の面P1側から見た平面図である。
図3(b)はIGBT100の裏面側、すなわち、半導体層10の第2の面P2側から見た平面図である。
【0053】
図3(a)は、メインゲート電極31、コントロールゲート電極32、及びプリゲート電極33の配置を模式的に示す図である。
図3(b)は、裏面セルゲート電極34及び裏面終端ゲート電極35の配置を模式的に示す図である。
【0054】
図3(a)に示すように、メインゲート電極31、コントロールゲート電極32、及びプリゲート電極33は、セル領域100aに設けられる。メインゲート電極31、コントロールゲート電極32、及びプリゲート電極33は、第1の方向に延びる。
【0055】
図3(b)に示すように、裏面セルゲート電極34はセル領域100aに設けられる。また、裏面終端ゲート電極35は、終端領域100bに設けられる。裏面セルゲート電極34及び裏面終端ゲート電極35は、第1の方向に延びる。
【0056】
表面層間絶縁層40は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。表面層間絶縁層40は、半導体層10の一部とエミッタ電極12との間に設けられる。表面層間絶縁層40は、半導体層10の一部とエミッタ電極12を電気的に分離する。表面層間絶縁層40は、メインゲート電極31、コントロールゲート電極32、及びプリゲート電極33と、エミッタ電極12を電気的に分離する。
【0057】
表面層間絶縁層40は、例えば、酸化シリコンである。
【0058】
裏面層間絶縁層42は、半導体層10の第2の面P2の側に設けられる。裏面層間絶縁層42は、半導体層10の一部とコレクタ電極14との間に設けられる。裏面層間絶縁層42は、半導体層10の一部とコレクタ電極14を電気的に分離する。裏面層間絶縁層42は、裏面セルゲート電極34及び裏面終端ゲート電極35と、コレクタ電極14を電気的に分離する。
【0059】
裏面層間絶縁層42は、例えば、酸化シリコンである。
【0060】
p形のセルコレクタ領域64は、セル部10aに設けられる。セルコレクタ領域64は、ドリフト領域68と第2の面P2との間の一部に設けられる。セルコレクタ領域64の一部は、第2の面P2に接する。
【0061】
セルコレクタ領域64の一部は、第1の裏面ゲート絶縁膜24を間に挟んで、裏面セルゲート電極34に対向する。セルコレクタ領域64は、第2の面P2で第1の方向に延びる。裏面セルゲート電極34に対向するセルコレクタ領域64には、裏面セルゲート電極34によって制御される裏面セルトランジスタのチャネルが形成される。
【0062】
セルコレクタ領域64は、コレクタ電極14に電気的に接続される。セルコレクタ領域64の一部は、コレクタ電極14に接する。
【0063】
p形の終端コレクタ領域65は、終端部10bに設けられる。終端コレクタ領域65は、ドリフト領域68と第2の面P2との間の一部に設けられる。終端コレクタ領域65の一部は、第2の面P2に接する。
【0064】
終端コレクタ領域65の一部は、第2の裏面ゲート絶縁膜25を間に挟んで、裏面終端ゲート電極35に対向する。終端コレクタ領域65は、第2の面P2で第1の方向に延びる。裏面終端ゲート電極35に対向する終端コレクタ領域65には、裏面終端ゲート電極35によって制御される裏面終端トランジスタのチャネルが形成される。
【0065】
終端コレクタ領域65は、コレクタ電極14に電気的に接続される。終端コレクタ領域65の一部は、コレクタ電極14に接する。
【0066】
n形のセルドレイン領域60は、セル部10aに設けられる。セルドレイン領域60は、セルコレクタ領域64と第2の面P2との間の一部に設けられる。セルコレクタ領域64の一部は、第1の裏面ゲート絶縁膜24を間に挟んで、裏面セルゲート電極34に対向する。
【0067】
セルドレイン領域60の一部は、コレクタ電極14に接する。セルドレイン領域60は、第1の方向に延びる。セルドレイン領域60は、裏面セルトランジスタのドレインとして機能する。
【0068】
。セルドレイン領域60のn形不純物濃度は、ドリフト領域68のn形不純物濃度より高い。
【0069】
n形の終端ドレイン領域62は、終端部10bに設けられる。終端ドレイン領域62は、終端コレクタ領域65と第2の面P2との間の一部に設けられる。終端ドレイン領域62の一部は、第2の裏面ゲート絶縁膜25を間に挟んで、裏面終端ゲート電極35に対向する。
【0070】
終端ドレイン領域62の一部は、コレクタ電極14に接する。終端ドレイン領域62は、第1の方向に延びる。終端ドレイン領域62は、裏面終端トランジスタのドレインとして機能する。
【0071】
終端ドレイン領域62のn形不純物濃度は、ドリフト領域68のn形不純物濃度より高い。
【0072】
n形のドリフト領域68は、セルコレクタ領域64と第1の面P1との間に設けられる。ドリフト領域68は、終端コレクタ領域65と第1の面P1との間に設けられる。ドリフト領域68は、セルコレクタ領域64とベース領域70との間に設けられる。
【0073】
ドリフト領域68は、IGBT100がオン状態の際にオン電流の経路となる。ドリフト領域68は、IGBT100のオフ状態の際に空乏化し、IGBT100の耐圧を維持する機能を有する。
【0074】
n形のバッファ領域66は、ドリフト領域68とセルコレクタ領域64との間に設けられる。バッファ領域66は、ドリフト領域68と終端コレクタ領域65との間に設けられる。
【0075】
バッファ領域66の一部は第2の面P2に接する。バッファ領域66の一部は、第1の裏面ゲート絶縁膜24を間に挟んで、裏面セルゲート電極34に対向する。バッファ領域66の一部は、第2の裏面ゲート絶縁膜25を間に挟んで、裏面終端ゲート電極35に対向する。
【0076】
バッファ領域66のn形不純物濃度は、ドリフト領域68のn形不純物濃度よりも高い。
【0077】
バッファ領域66は、ドリフト領域68よりも低抵抗である。バッファ領域66を設けることで、裏面セルトランジスタがオン状態となる時に、ドリフト領域68から裏面セルトランジスタを経由したコレクタ電極14への電子の排出が促進される。バッファ領域66を設けることで、裏面終端トランジスタがオン状態となる時に、ドリフト領域68から裏面終端トランジスタを経由したコレクタ電極14への電子の排出が促進される。
【0078】
また、バッファ領域66は、IGBT100のオフ状態の際に、空乏層の伸びを抑制する機能も有する。なお、バッファ領域66を設けない構成とすることも可能である。
【0079】
p形のベース領域70は、セル領域100aに設けられる。ベース領域70は、セル部10aに設けられる。ベース領域70は、ドリフト領域68と第1の面P1との間に設けられる。
【0080】
ベース領域70の一部は、第1の表面ゲート絶縁膜21を間に挟んで、メインゲート電極31に対向する。メインゲート電極31に対向するベース領域70には、メインゲート電極31によって制御されるメインゲートトランジスタのチャネルが形成される。
【0081】
ベース領域70の一部は、第2の表面ゲート絶縁膜22を間に挟んで、コントロールゲート電極32に対向する。コントロールゲート電極32に対向するベース領域70には、コントロールゲート電極32によって制御されるコントロールゲートトランジスタのチャネルが形成される。
【0082】
ベース領域70の一部は、第3の表面ゲート絶縁膜23を間に挟んで、プリゲート電極33に対向する。プリゲート電極33に対向するベース領域70には、プリゲート電極33によって制御されるプリゲートトランジスタのチャネルが形成される。
【0083】
n形のエミッタ領域72は、セル領域100aに設けられる。エミッタ領域72は、セル部10aに設けられる。エミッタ領域72は、ベース領域70と第1の面P1との間に設けられる。エミッタ領域72は、第1の面P1において第1の方向に延びる。
【0084】
エミッタ領域72の一部は、第1の表面ゲート絶縁膜21を間に挟んで、メインゲート電極31に対向する。エミッタ領域72の一部は、メインゲートトレンチ51に接する。エミッタ領域72の一部は、第1の表面ゲート絶縁膜21に接する。
【0085】
エミッタ領域72の一部は、第2の表面ゲート絶縁膜22を間に挟んで、コントロールゲート電極32に対向する。エミッタ領域72の一部は、コントロールゲートトレンチ52に接する。エミッタ領域72の一部は、第2の表面ゲート絶縁膜22に接する。
【0086】
エミッタ領域72の一部は、第3の表面ゲート絶縁膜23を間に挟んで、プリゲート電極33に対向する。エミッタ領域72の一部は、プリゲートトレンチ53に接する。エミッタ領域72の一部は、第3の表面ゲート絶縁膜23に接する。
【0087】
エミッタ領域72は、エミッタ電極12に電気的に接続される。エミッタ領域72の一部は、エミッタ電極12に接する。
【0088】
。エミッタ領域72のn形不純物濃度は、ドリフト領域68のn形不純物濃度よりも高い。エミッタ領域72は、IGBT100のオン状態の際に電子の供給源となる。
【0089】
p形のコンタクト領域74は、セル領域100aに設けられる。コンタクト領域74は、セル部10aに設けられる。コンタクト領域74は、ベース領域70と第1の面P1との間に設けられる。コンタクト領域74は、第1の面P1において、第1の方向に延びる。
【0090】
コンタクト領域74は、エミッタ電極12に電気的に接続される。コンタクト領域74は、エミッタ電極12に接する。
【0091】
コンタクト領域74のp形不純物濃度は、ベース領域70のp形不純物濃度よりも高い。
【0092】
p形の境界領域76は、終端領域100bに設けられる。境界領域76は、終端部10bに設けられる。境界領域76は、ドリフト領域68と第1の面P1との間に設けられる。境界領域76は、セル部10aを囲む。
【0093】
p形のガードリング領域78は、終端領域100bに設けられる。ガードリング領域78は、終端部10bに設けられる。ガードリング領域78は、ドリフト領域68と第1の面P1との間に設けられる。ガードリング領域78は、セル部10aを囲む。ガードリング領域78は、例えば、複数設けられる。
【0094】
境界領域76及びガードリング領域78を設けることにより、セル領域100aの端部の電界強度が低下し、IGBT100がオフ状態の時の耐圧の低下が抑制される。
【0095】
制御回路150は、IGBT100を制御する。制御回路150は、例えば、ゲートドライバ回路である。ゲートドライバ回路は、第1の表面ゲート電極パッド101、第2の表面ゲート電極パッド102、第3の表面ゲート電極パッド103、第1の裏面ゲート電極パッド104、及び第2の裏面ゲート電極パッド105に印加する電圧の大きさ及びタイミングを独立に制御する。
【0096】
制御回路150は、メインゲート電極31に印加される第1のゲート電圧(Vg1)、コントロールゲート電極32に印加される第2のゲート電圧(Vg2)、プリゲート電極33に印加される第3のゲート電圧(Vg3)、裏面セルゲート電極34に印加される第4のゲート電圧(Vg4)、裏面終端ゲート電極35に印加される第5のゲート電圧(Vg5)を、独立に制御する。
【0097】
次に、IGBT100の動作について説明する。
【0098】
図4は、第1の実施形態の半導体装置のタイミングチャートである。
図4は、第1のゲート電圧(Vg1)、第2のゲート電圧(Vg2)、第3のゲート電圧(Vg3)、第4のゲート電圧(Vg4)、及び第5のゲート電圧(Vg5)の変化タイミングを示す。
【0099】
第1のゲート電圧(Vg1)は、メインゲート電極31によって制御されるメインゲートトランジスタに印加されるゲート電圧である。第2のゲート電圧(Vg2)は、コントロールゲート電極32によって制御されるコントロールゲートトランジスタに印加されるゲート電圧である。第3のゲート電圧(Vg3)は、プリゲート電極33によって制御されるプリゲートトランジスタに印加されるゲート電圧である。第4のゲート電圧(Vg4)は、裏面セルゲート電極34によって制御される裏面セルトランジスタに印加されるゲート電圧である。第5のゲート電圧(Vg5)は、裏面終端ゲート電極35によって制御される裏面終端トランジスタに印加されるゲート電圧である。
【0100】
IGBT100のオフ状態では、エミッタ電極12には、エミッタ電圧(Ve)が印加される。例えば、時刻t0では、エミッタ電極12には、エミッタ電圧(Ve)が印加される。エミッタ電圧(Ve)は、例えば、0Vである。
【0101】
IGBT100のオフ状態では、コレクタ電極14には、コレクタ電圧(Vc)が印加される。コレクタ電圧(Vc)は、例えば、200V以上6500V以下である。コレクタ電極14とエミッタ電極12の間に印加されるコレクタ-エミッタ間電圧(Vce)は、例えば、200V以上6500V以下である。
【0102】
なお、第1のゲート電圧(Vg1)、第2のゲート電圧(Vg2)、及び第3のゲート電圧(Vg3)はエミッタ電圧(Ve)を基準とする電圧である。また、第4のゲート電圧(Vg4)及び第5のゲート電圧(Vg5)は、コレクタ電圧(Vc)を基準とする電圧である。
【0103】
最初に、メインゲートトランジスタに印加される第1のゲート電圧(Vg1)の変化タイミングについて説明する。
【0104】
例えば、時刻t0では、第1のゲート電圧(Vg1)として第1のターンオフ電圧(Voff1)が印加されている。第1のターンオフ電圧(Voff1)とは、メインゲートトランジスタがオン状態とならない閾値電圧以下の電圧である。
【0105】
第1のターンオフ電圧(Voff1)は、例えば、0V又は負電圧である。
図4には、第1のターンオフ電圧(Voff1)が-15Vである場合を例示する。
【0106】
時刻t1で、第1のゲート電圧(Vg1)として第1のターンオン電圧(Von1)が印加される。第1のターンオン電圧(Von1)は、メインゲートトランジスタの閾値電圧を超える正電圧である。
図4には、第1のターンオン電圧(Von1)が15Vである場合を例示する。
【0107】
メインゲートトランジスタに第1のターンオン電圧(Von1)が印加されることで、IGBT100がオン状態になる。IGBT100を時刻t1でターンオン動作させる。
【0108】
メインゲートトランジスタに第1のターンオン電圧(Von1)を印加することにより、p形のベース領域70の第1の表面ゲート絶縁膜21との界面近傍にn形反転層が形成される。n形反転層が形成されることにより、n形のエミッタ領域72から電子がn形反転層を通ってn形のドリフト領域68に注入される。n形のドリフト領域68に注入された電子は、n形のバッファ領域66とp形のセルコレクタ領域64との間、及び、n形のバッファ領域66とp形の終端コレクタ領域65との間で形成されるpn接合を順バイアスする。電子は、コレクタ電極14に到達するとともにp形のセルコレクタ領域64及びp形の終端コレクタ領域65からホールの注入を引き起こす。したがって、IGBT100がオン状態となる。
【0109】
時刻t4で、第1のゲート電圧(Vg1)として第1のターンオフ電圧(Voff1)が印加される。メインゲートトランジスタに第1のターンオフ電圧(Voff1)が印加されることで、IGBT100がオフ状態になる。時刻t1から時刻t4の間で、IGBT100がオン状態にある。
【0110】
次に、コントロールゲートトランジスタに印加される第2のゲート電圧(Vg2)の変化タイミングについて説明する。
【0111】
例えば、時刻t0では、第2のゲート電圧(Vg2)として第2のターンオフ電圧(Voff2)が印加されている。第2のターンオフ電圧(Voff2)とは、コントロールゲートトランジスタがオン状態とならない閾値電圧以下の電圧である。
【0112】
第2のターンオフ電圧(Voff2)は、例えば、負電圧である。
図4には、第2のターンオフ電圧(Voff2)が-15Vである場合を例示する。
【0113】
時刻t1で、第2のゲート電圧(Vg2)として第2のターンオン電圧(Von2)が印加される。第2のターンオン電圧(Von2)は、コントロールゲートトランジスタの閾値電圧を超える正電圧である。
図4には、第2のターンオン電圧(Von2)が15Vである場合を例示する。
【0114】
コントロールゲートトランジスタに第2のターンオン電圧(Von2)を印加することにより、p形のベース領域70の第2の表面ゲート絶縁膜22との界面近傍にn形反転層が形成される。n形反転層が形成されることにより、n形のエミッタ領域72から電子がn形反転層を通ってn形のドリフト領域68に注入される。
【0115】
時刻t4に先立つ時刻t3で、第2のゲート電圧(Vg2)として第2のターンオフ電圧(Voff2)が印加される。コントロールゲートトランジスタに第2のターンオフ電圧(Voff2)が印加されることで、コントロールゲートトランジスタを介したドリフト領域68への電子の注入が遮断される。また、第2のゲート電圧(Vg2)を負電圧とすることで、コントロールゲートトレンチ52近傍のp型のベース領域70にp型蓄積層が形成される。p型蓄積層が形成されることで、ホールのエミッタ電極12への排出が促進される。したがって、ドリフト領域68のキャリアが減少する。
【0116】
次に、プリゲートトランジスタに印加される第3のゲート電圧(Vg3)の変化タイミングについて説明する。
【0117】
例えば、時刻t0では、第3のゲート電圧(Vg3)として第3のターンオフ電圧(Voff3)が印加されている。第3のターンオフ電圧(Voff3)とは、プリゲートトランジスタがオン状態とならない閾値電圧以下の電圧である。
【0118】
第3のターンオフ電圧(Voff3)は、例えば、0V又は負電圧である。
図4には、第3のターンオフ電圧(Voff3)が0Vである場合を例示する。
【0119】
時刻t1で、第3のゲート電圧(Vg3)として第3のターンオン電圧(Von3)が印加される。第3のターンオン電圧(Von3)は、プリゲートトランジスタの閾値電圧を超える正電圧である。
図4には、第3のターンオン電圧(Von3)が15Vである場合を例示する。
【0120】
プリゲートトランジスタに第3のターンオン電圧(Von3)を印加することにより、プリゲートトランジスタがオン状態になる。プリゲートトランジスタに第3のターンオン電圧(Von3)を印加することにより、p形のベース領域70の第3の表面ゲート絶縁膜23との界面近傍にn形反転層が形成される。n形反転層が形成されることにより、n形のエミッタ領域72から電子がn形反転層を通ってn形のドリフト領域68に注入される。
【0121】
時刻t3に先立つ時刻t2で、第3のゲート電圧(Vg3)として第3のターンオフ電圧(Voff3)が印加される。プリゲートトランジスタに第3のターンオフ電圧(Voff3)が印加されることで、プリゲートトランジスタがオフ状態になる。プリゲートトランジスタがオフ状態になることで、プリゲートトランジスタを介したドリフト領域68への電子の注入が遮断される。よって、ドリフト領域68に注入される電子が減少する。
【0122】
なお、例えば、時刻t3で、第3のゲート電圧(Vg3)として負電圧を印加しても構わない。第3のゲート電圧(Vg3)として負電圧を印加することで、プリゲートトレンチ53近傍のp型のベース領域70にp型蓄積層が形成される。p型蓄積層が形成されることで、ホールのエミッタ電極12への排出が促進される。したがって、ドリフト領域68のキャリアが減少する。
【0123】
次に、裏面セルトランジスタに印加される第4のゲート電圧(Vg4)の変化タイミングについて説明する。
【0124】
例えば、時刻t0では、第4のゲート電圧(Vg4)として第4のターンオフ電圧(Voff4)が印加されている。第4のターンオフ電圧(Voff4)とは、裏面セルトランジスタがオン状態とならない閾値電圧以下の電圧である。
【0125】
第4のターンオフ電圧(Voff4)は、例えば、0V又は負電圧である。
図4には、第4のターンオフ電圧(Voff4)が0Vである場合を例示する。
【0126】
時刻tyで、第4のゲート電圧(Vg4)として第4のターンオン電圧(Von4)が印加される。第4のターンオン電圧(Von4)は、裏面セルトランジスタの閾値電圧を超える正電圧である。
図4には、第4のターンオン電圧(Von4)が15Vである場合を例示する。
【0127】
裏面セルトランジスタに第4のターンオン電圧(Von4)を印加することにより、p形のセルコレクタ領域64の第1の裏面ゲート絶縁膜24との界面近傍に、n形反転層が形成される。
【0128】
p形のセルコレクタ領域64の第1の裏面ゲート絶縁膜24との界面近傍にn形反転層が形成されることにより、電子がセル部10aのn形のバッファ領域66から、n形反転層、n形のセルドレイン領域60を通ってコレクタ電極14へと排出される経路が形成される。つまり、セル部10aのn形のバッファ領域66とコレクタ電極14とが短絡する状態、いわゆる、アノード・ショートが生じる。
【0129】
アノード・ショートが生じることにより、電子がセル部10aのn形のバッファ領域66からp形のセルコレクタ領域64を通ってコレクタ電極14へ到達することが妨げられる。このため、p形のセルコレクタ領域64からセル部10aのドリフト領域68へのホールの注入が抑制される。
【0130】
その後、時刻t5で、第4のゲート電圧(Vg4)として第4のターンオフ電圧(Voff4)を印加して、裏面セルトランジスタをオフ状態にする。
【0131】
次に、裏面終端トランジスタに印加される第5のゲート電圧(Vg5)の変化タイミングについて説明する。
【0132】
例えば、時刻t0では、第5のゲート電圧(Vg5)として第5のターンオフ電圧(Voff5)が印加されている。第5のターンオフ電圧(Voff5)とは、裏面終端トランジスタがオン状態とならない閾値電圧以下の電圧である。
【0133】
第5のターンオフ電圧(Voff5)は、例えば、0V又は負電圧である。
図4には、第5のターンオフ電圧(Voff5)が0Vである場合を例示する。
【0134】
時刻tyに先立つ時刻txで、第5のゲート電圧(Vg5)として第5のターンオン電圧(Von5)が印加される。第5のターンオン電圧(Von5)は、裏面終端トランジスタの閾値電圧を超える正電圧である。
図4には、第5のターンオン電圧(Von5)が15Vである場合を例示する。
【0135】
裏面終端トランジスタに第5のターンオン電圧(Von5)を印加することにより、p形の終端コレクタ領域65の第2の裏面ゲート絶縁膜25との界面近傍に、n形反転層が形成される。
【0136】
p形の終端コレクタ領域65の第2の裏面ゲート絶縁膜25との界面近傍にn形反転層が形成されることにより、電子が終端部10bのn形のバッファ領域66から、n形反転層、n形の終端ドレイン領域62を通ってコレクタ電極14へと排出される経路が形成される。つまり、n形の終端部10bのバッファ領域66とコレクタ電極14とが短絡する状態、いわゆる、アノード・ショートが生じる。
【0137】
アノード・ショートが生じることにより、電子が終端部10bのn形のバッファ領域66からp形の終端コレクタ領域65を通ってコレクタ電極14へ到達することが妨げられる。このため、p形の終端コレクタ領域65から終端部10bのドリフト領域68へのホールの注入が抑制される。
【0138】
なお、時刻txは、時刻t3の前であっても、時刻t3の後であっても構わない。また、時刻txは、時刻t4の前であっても、時刻t4の後であっても構わない。
【0139】
その後、時刻t5で、第5のゲート電圧(Vg5)として第5のターンオフ電圧(Voff5)を印加して、裏面終端トランジスタをオフ状態にする。
【0140】
制御回路150は、第1の表面ゲート電極パッド101に印加する第1のゲート電圧(Vg1)、第2の表面ゲート電極パッド102に印加する第2のゲート電圧(Vg2)、第3の表面ゲート電極パッド103に印加する第3のゲート電圧(Vg3)、第1の裏面ゲート電極パッド104に印加する第4のゲート電圧(Vg4)、及び第2の裏面ゲート電極パッド105に印加する第5のゲート電圧(Vg5)の大きさ及びタイミングを制御して、上記IGBT100の動作を実現する。
【0141】
例えば、制御回路150は、第1の表面ゲート電極パッド101に第1のターンオン電圧(Von1)を時刻t1に印加し、第2の表面ゲート電極パッド102に第2のターンオン電圧(Von2)を時刻t1に印加し、第3の表面ゲート電極パッド103に第3のターンオン電圧(Von3)を時刻t1に印加する。その後、時刻t1から所定の時間経過後の時刻t2に第3の表面ゲート電極パッド103に第3のターンオフ電圧(Voff3)を印加する。そして、時刻t2から所定の時間経過後の時刻txに第2の裏面ゲート電極パッド105に第5のターンオン電圧(Von5)を印加する。そして、時刻txから所定の時間経過後の時刻tyに第1の裏面ゲート電極パッド104に第4のターンオン電圧(Von4)を印加する。
【0142】
例えば、制御回路150は、第3の表面ゲート電極パッド103に第3のターンオン電圧(Von3)を時刻t1に印加した後、所定の時間経過後の時刻t4に第1の表面ゲート電極パッド101に第1のターンオフ電圧(Voff1)を印加する。そして、時刻t4の前の時刻txに、第2の裏面ゲート電極パッド105に第5のターンオン電圧(Von5)を印加する。
【0143】
次に、第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果について説明する。
【0144】
第1の実施形態のIGBT100は、半導体層10の表面側にメインゲートトランジスタと独立に制御可能なコントロールゲートトランジスタを備える。IGBT100がターンオフ動作する時刻t4より前の時刻t3に、コントロールゲートトランジスタのゲート電極に負電圧を印加してオフ状態にすることで、ホールのエミッタ電極12への排出が促進される。したがって、コントロールゲートトランジスタを備えない場合と比較して、IGBT100のターンオフ動作時に排出すべきキャリアの量を低減できる。よって、IGBT100のターンオフ損失を低減できる。
【0145】
例えば、時刻t3に、プリゲートトランジスタのゲート電極に負電圧を印加することで、更にターンオフ動作時に排出すべきキャリアの量を低減できる。よって、IGBT100のターンオフ損失を更に低減できる。
【0146】
また、第1の実施形態のIGBT100は、半導体層10の表面側にメインゲートトランジスタ及びコントロールゲートトランジスタと独立に制御可能なプレトランジスタを備える。IGBT100がターンオン動作する時刻t1に、プレトランジスタをオン状態にすることで、プレトランジスタを備えない場合と比較して、ドリフト領域68への電子の注入量が増加する。したがって、プレトランジスタを備えない場合と比較して、IGBT100のターンオン時間が短縮される。よって、IGBT100のターンオン損失を低減できる。
【0147】
そして、IGBT100がターンオフ動作する時刻t4より前の時刻t2に、プレトランジスタをオフ状態にする。プレトランジスタをオフ状態にすることにより、IGBT100の飽和電流が低減する。したがって、例えば負荷短絡が生じIGBT100に大電流が流れる場合のIGBT100の破壊を抑制できる。
【0148】
また、第1の実施形態のIGBT100は、半導体層10の裏面側に、裏面セルトランジスタを備える。IGBT100のターンオフ動作の際に、裏面セルトランジスタをオン状態にすることで、セル部10aのドリフト領域68へのホールの注入を抑制する。ドリフト領域68へのホールの注入を抑制することで、裏面セルトランジスタを備えない場合と比較して、ターンオフ損失が低減する。よって、IGBT100の消費電力の低減が可能である。
【0149】
また、第1の実施形態のIGBT100は、セル領域100aの周囲に、終端領域100bが設けられる。終端領域100bには、境界領域76及びガードリング領域78が設けられる。境界領域76及びガードリング領域78が設けられることにより、セル領域100aの端部の電界強度が低下し、IGBT100がオフ状態の時の耐圧の低下が抑制される。
【0150】
IGBT100のオン状態では、エミッタ電極12と、終端領域100bのコレクタ電極14との間にもオン電流が流れる。このため、IGBT100のオン状態では、終端部10bのドリフト領域68にもキャリアが蓄積する。言い換えれば、IGBT100がオン状態の際に、表面にトランジスタの存在しない終端領域100bまでキャリアが広がった状態になる。
【0151】
IGBT100のターンオフ動作の際に、終端部10bのドリフト領域68に蓄積されたキャリアを輩出する必要がある。しかし、終端領域100bの表面側には、キャリアの排出経路が存在しない。このため、キャリアがセル領域100aの端部に集中して排出される。したがって、セル領域100aの端部に電流集中が生じる。よって、電流集中によるIGBT100の破壊が生じるおそれがある。
【0152】
第1の実施形態のIGBT100は、終端領域100bの半導体層10の裏面側に、裏面セルトランジスタとは独立に制御可能な裏面終端トランジスタを備える。裏面セルトランジスタをオン状態にする時刻tyより前の時刻txに裏面終端トランジスタをオン状態にする。裏面終端トランジスタをオン状態にすることで、終端部10bのn形のドリフト領域68へのホールの注入を抑制する。
【0153】
裏面セルトランジスタよりも先に裏面終端トランジスタをオン状態にすることで、終端部10bのドリフト領域68に蓄積されたキャリアを選択的に減少させることができる。したがって、IGBT100のターンオフ動作の際に、セル領域100aの端部に電流集中が生じることを抑制できる。よって、電流集中によるIGBT100の破壊を抑制できる。
【0154】
電流集中によるIGBT100の破壊を抑制する観点から、IGBT100のターンオフ動作の前に、裏面終端トランジスタをオン状態にすることが好ましい。言い換えれば、IGBT100がターンオフ動作する時刻t4より前に、裏面終端トランジスタをオン状態にすることが好ましい。言い換えれば、時刻txは、時刻t4よりも前であることが好ましい。言い換えれば、第1の表面ゲート電極パッド101に第1のターンオフ電圧(Voff1)を印加する前に、第2の裏面ゲート電極パッド105に第5のターンオン電圧(Von5)を印加することが好ましい。
【0155】
以上、第1の実施形態によれば、ターンオフ損失が低減され、電流集中による破壊が抑制される半導体装置及び半導体回路が実現できる。
【0156】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の半導体装置及び半導体回路は、第1のゲート電極は、第1の面に平行な第1の方向に延び、第4のゲート電極は、第1の面に平行で、第1の方向に直交する第2の方向に延びる点、及び、第5のゲート電極は、第4のゲート電極と直交する方向に延びる点で、第1の実施形態の半導体装置及び半導体回路と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する場合がある。
【0157】
第2の実施形態の半導体装置は、第1の実施形態と同様、半導体層の表面側及び裏面側にゲート電極を備える両面ゲート構造のIGBT200である。また、IGBT200は、半導体層の表面側に独立に制御される3種のゲート電極を備える。また、IGBT200は、半導体層の裏面側に独立に制御される2種のゲート電極を備える。
【0158】
図5は、第2の実施形態の半導体装置の模式平面図である。
図5(a)はIGBT200の表面側、すなわち、半導体層10の第1の面P1側から見た平面図である。
図5(b)はIGBT200の裏面側、すなわち、半導体層10の第2の面P2側から見た平面図である。
【0159】
図5(a)は、メインゲート電極31、コントロールゲート電極32、及びプリゲート電極33の配置を模式的に示す図である。
図5(b)は、裏面セルゲート電極34及び裏面終端ゲート電極35の配置を模式的に示す図である。
【0160】
IGBT200は、セル領域100a、終端領域100b、第1の表面ゲート電極パッド101(第1の電極パッド)、第2の表面ゲート電極パッド102(第2の電極パッド)、第3の表面ゲート電極パッド103(第3の電極パッド)、第1の裏面ゲート電極パッド104(第4の電極パッド)、及び第2の裏面ゲート電極パッド105(第5の電極パッド)を有する。
【0161】
終端領域100bは、セル領域100aを囲む。第1の表面ゲート電極パッド101、第2の表面ゲート電極パッド102、及び第3の表面ゲート電極パッド103は、IGBT200の表面側に位置する。また、第1の裏面ゲート電極パッド104及び第2の裏面ゲート電極パッド105は、IGBT200の裏面側に位置する。
【0162】
図5(a)に示すように、メインゲート電極31、コントロールゲート電極32、及びプリゲート電極33は、セル領域100aに設けられる。メインゲート電極31、コントロールゲート電極32、及びプリゲート電極33は、セル領域100aは、第1の方向に延びる。
【0163】
図5(b)に示すように、裏面セルゲート電極34はセル領域100aに設けられる。裏面セルゲート電極34は、第1の方向と直交する第2の方向に延びる。
【0164】
また、裏面終端ゲート電極35は、終端領域100bに設けられる。裏面終端ゲート電極35は、第2の方向と直交する第1の方向に延びる。裏面終端ゲート電極35は、裏面セルゲート電極34と直交する方向に延びる。
【0165】
裏面セルゲート電極34が、メインゲート電極31、コントロールゲート電極32、及びプリゲート電極33と直交する方向に延びることで、IGBT200のオン電流の流れが均一化する。したがって、局所的なオン電流の集中が生じにくい。したがって、IGBT200の電流集中による破壊が抑制される。
【0166】
以上、第2の実施形態によれば、ターンオフ損失が低減され、電流集中による破壊が抑制される半導体装置及び半導体回路が実現できる。
【0167】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の半導体装置及び半導体回路は、第3の半導体領域と第2のトレンチは離間する点で、第1の実施形態の半導体装置及び半導体回路と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する場合がある。
【0168】
第3の実施形態の半導体装置は、第1の実施形態と同様、半導体層の表面側及び裏面側にゲート電極を備える両面ゲート構造のIGBT300である。また、IGBT300は、半導体層の表面側に独立に制御される3種のゲート電極を備える。また、IGBT300は、半導体層の裏面側に独立に制御される2種のゲート電極を備える。
【0169】
図6は、第3の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図6は、第1の実施形態の
図2に対応する図である。
【0170】
第3の実施形態のIGBT300は、半導体層10、エミッタ電極12(第1の電極)、コレクタ電極14(第2の電極)、第1の表面ゲート絶縁膜21、第2の表面ゲート絶縁膜22、第3の表面ゲート絶縁膜23、第1の裏面ゲート絶縁膜24、第2の裏面ゲート絶縁膜25、メインゲート電極31(第1のゲート電極)、コントロールゲート電極32(第2のゲート電極)、プリゲート電極33(第3のゲート電極)、裏面セルゲート電極34(第4のゲート電極)、裏面終端ゲート電極35(第5のゲート電極)、表面層間絶縁層40、裏面層間絶縁層42を備える。
【0171】
半導体層10の中には、メインゲートトレンチ51(第1のトレンチ)、コントロールゲートトレンチ52(第2のトレンチ)、プリゲートトレンチ53(第3のトレンチ)、n形のセルドレイン領域60(第6の半導体領域)、n形の終端ドレイン領域62(第7の半導体領域)、p形のセルコレクタ領域64(第4の半導体領域)、p形の終端コレクタ領域65(第5の半導体領域)、n形のバッファ領域66、n形のドリフト領域68(第1の半導体領域)、p形のベース領域70(第2の半導体領域)、n形のエミッタ領域72(第3の半導体領域)、p形のコンタクト領域74、p形の境界領域76、p型のガードリング領域78が設けられる。
【0172】
エミッタ領域72は、コントロールゲートトレンチ52と離間する。エミッタ領域72は、コントロールゲートトレンチ52と接しない。
【0173】
エミッタ領域72は、第2の表面ゲート絶縁膜22と離間する。エミッタ領域72は、第2の表面ゲート絶縁膜22と接しない。
【0174】
図7は、第3の実施形態の半導体装置のタイミングチャートである。
図7は、第1のゲート電圧(Vg1)、第2のゲート電圧(Vg2)、第3のゲート電圧(Vg3)、第4のゲート電圧(Vg4)、及び第5のゲート電圧(Vg5)の変化タイミングを示す。
【0175】
図7は、第1の実施形態の
図4で示したタイミングチャートと、コントロールゲート電極32に印加される第2のゲート電圧(Vg2)の変化タイミングのみが異なる。したがって、第2のゲート電圧(Vg2)のタイミングのみについて説明する。
【0176】
なお、コントロールゲート電極32に印加する第2のゲート電圧(Vg2)を変化させても、エミッタ領域72がコントロールゲートトレンチ52と接しないことからトランジスタ動作は生じない。しかし、以下、第1の実施形態の説明と整合をとるため、便宜上、第2のターンオン電圧(Von2)及び第2のターンオフ電圧(Voff2)という用語を用いる。
【0177】
例えば、時刻t0では、第2のゲート電圧(Vg2)として第2のターンオン電圧(Von2)が印加されている。第2のターンオン電圧(Von2)とは、コントロールゲートトレンチ52近傍のp型のベース領域70にp型蓄積層が形成される電圧より高い電圧である。
【0178】
第2のターンオン電圧(Von2)は、例えば、0V又は正電圧である。
図7には、第2のターンオン電圧(Von2)が0Vである場合を例示する。
【0179】
時刻t4に先立つ時刻t3で、第2のゲート電圧(Vg2)として第2のターンオフ電圧(Voff2)が印加される。第2のターンオフ電圧(Voff2)は、コントロールゲートトレンチ52近傍のp型のベース領域70にp型蓄積層が形成される電圧以下の電圧である。第2のターンオフ電圧(Voff2)は、負電圧である。
図7には、第2のターンオフ電圧(Voff2)が-15Vである場合を例示する。
【0180】
コントロールゲートトランジスタに第2のターンオフ電圧(Voff2)が印加されることで、コントロールゲートトレンチ52近傍のp型のベース領域70にp型蓄積層が形成される。p型蓄積層が形成されることで、ホールのエミッタ電極12への排出が促進される。したがって、ドリフト領域68のキャリアが減少する。
【0181】
その後、時刻t5で、第2のゲート電圧(Vg2)として第2のターンオン電圧(Von2)を印加して、p型蓄積層を消滅させる。
【0182】
第3の実施形態のIGBT300は、コントロールゲート電極32に印加する第2のゲート電圧(Vg2)を変化させても、トランジスタ動作は生じない。したがって、IGBT100と比べて、IGBT300の動作が安定する。
【0183】
また、コントロールゲートトレンチ52と接するエミッタ領域72がないことで、エミッタ領域72がある場合と比べ、ホールのエミッタ電極12への排出が促進される。したがって、IGBT100と比較して、更にターンオフ損失が低減する。
【0184】
以上、第3の実施形態によれば、ターンオフ損失が低減され、電流集中による破壊が抑制される半導体装置及び半導体回路が実現できる。
【0185】
第1ないし第3の実施形態においては、半導体層が単結晶シリコンである場合を例に説明したが、半導体層は単結晶シリコンに限られることはない。例えば、単結晶炭化珪素など、その他の単結晶半導体であっても構わない。
【0186】
第1ないし第3の実施形態においては、メインゲート電極31、コントロールゲート電極32、プリゲート電極33、裏面セルゲート電極34、及び裏面終端ゲート電極35が、いずれもストライプ形状である場合を例に説明した。しかし、メインゲート電極31、コントロールゲート電極32、プリゲート電極33、裏面セルゲート電極34、及び裏面終端ゲート電極35の形状はストライプ形状に限定されるものではない。例えば、メインゲート電極31、コントロールゲート電極32、プリゲート電極33、裏面セルゲート電極34、及び裏面終端ゲート電極35のいずれか、又は、全てが、多角形状等、ストライプ形状以外の形状であっても構わない。
【0187】
第1ないし第3の実施形態においては、半導体層10の表面側に、メインゲート電極31、コントロールゲート電極32、及びプリゲート電極33の3種のゲート電極を備える場合を例に説明したが、上記3種のゲート電極に加えて、更にダミーゲート電極を備えていても構わない。ダミーゲート電極は、例えば、トレンチ内のゲート電極の電位がエミッタ電極12の電位に固定されたゲート電極である。
【0188】
第1ないし第3の実施形態においては、裏面セルトランジスタ及び裏面終端トランジスタがプレーナゲート型のトランジスタである場合を例に説明したが、裏面セルトランジスタ及び裏面終端トランジスタのいずれか一方又は両方が、トレンチゲート型のトランジスタであってもかまわない。
【0189】
第1ないし第3の実施形態においては、第1導電形がn形、第2導電形がp形である場合を例に説明したが、第1導電形をp形、第2導電形をn形とすることも可能である。
【0190】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0191】
10 半導体層
10a セル部
10b 終端部
12 エミッタ電極(第1の電極)
14 コレクタ電極(第2の電極)
31 メインゲート電極(第1のゲート電極)
32 コントロールゲート電極(第2のゲート電極)
33 プリゲート電極(第3のゲート電極)
34 裏面セルゲート電極(第4のゲート電極)
35 裏面終端ゲート電極(第5のゲート電極)
51 メインゲートトレンチ(第1のトレンチ)
52 コントロールゲートトレンチ(第2のトレンチ)
53 プリゲートトレンチ(第3のトレンチ)
60 セルドレイン領域(第6の半導体領域)
62 終端ドレイン領域(第7の半導体領域)
64 セルコレクタ領域(第4の半導体領域)
65 終端コレクタ領域(第5の半導体領域)
68 ドリフト領域(第1の半導体領域)
70 ベース領域(第2の半導体領域)
72 エミッタ領域(第3の半導体領域)
100 IGBT(半導体装置)
101 第1の表面ゲート電極パッド(第1の電極パッド)
102 第2の表面ゲート電極パッド(第2の電極パッド)
103 第3の表面ゲート電極パッド(第3の電極パッド)
104 第1の裏面ゲート電極パッド(第4の電極パッド)
105 第2の裏面ゲート電極パッド(第5の電極パッド)
150 制御回路
200 IGBT(半導体装置)
300 IGBT(半導体装置)
1000 半導体モジュール(半導体回路)
P1 第1の面
P2 第2の面