IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アー・ファウ・エル・リスト・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許7330193トルク発生装置の内部の実効トルクを推定する方法
<>
  • 特許-トルク発生装置の内部の実効トルクを推定する方法 図1
  • 特許-トルク発生装置の内部の実効トルクを推定する方法 図2
  • 特許-トルク発生装置の内部の実効トルクを推定する方法 図3
  • 特許-トルク発生装置の内部の実効トルクを推定する方法 図4
  • 特許-トルク発生装置の内部の実効トルクを推定する方法 図5
  • 特許-トルク発生装置の内部の実効トルクを推定する方法 図6
  • 特許-トルク発生装置の内部の実効トルクを推定する方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】トルク発生装置の内部の実効トルクを推定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/026 20190101AFI20230814BHJP
【FI】
G01M13/026
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020536033
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2018097066
(87)【国際公開番号】W WO2019129837
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】A51087/2017
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】398055255
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(72)【発明者】
【氏名】ヴァダマル・ラージャ・サンギリ
(72)【発明者】
【氏名】バイドル・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ビーア・マクシミーリアーン
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-300683(JP,A)
【文献】特開2017-122642(JP,A)
【文献】特開2007-163164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/026
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結要素(KE)を介してトルク低減部(DS)に結合されるトルク発生装置(DE)の内部の実効トルク(TE)の推定値(T^E)を提供する方法であって、生じる動的なシステムが
【数1】
又は
【数2】
の形態で用いられ、ここで、行列A,B,C,F,Mがシステム行列であり、システム行列は、実効トルク(TE)を含む動的なシステムのモデルに基づき得られ、ここで、uは入力ベクトルであり、yは出力ベクトルであり、xは動的なシステムの状態ベクトルであり、wは未知の入力としての実効トルク(TE)である、方法において、
当該動的なシステムについて、観測器(UIO)が観測器行列(N,L,G,E,Z,T,K,H)及び未知の入力wをもって設計され、観測器(UIO)が、入力ベクトルu及び/又は出力ベクトルyのノイズを有する少なくとも1つの測定信号を得るとともに、これに基づき、行列(N,Z)の固有値(λ)がf2/5>λ>5・f1の範囲にあるように観測器誤差(
【数3】
)のダイナミクスを状態ベクトル(x)と推定される状態ベクトル(x^)との差として決定する行列(N,Z)が設定されることで、状態ベクトル(x^)及び未知の入力wとしての実効トルク(T^Eを推定し、ここで、f1は少なくとも1つの測定信号の最大限期待される変化周波数であり、該少なくとも1つの測定信号におけるノイズが、周波数f2よりも大きな周波数帯に影響を与えることを特徴とする方法。
【請求項2】
観測器誤差(
【数4】
)のダイナミクスの安定性のために安定性条件が用いられ、安定性条件に基づき、観測機行列(N,L,G,E,Z,T,K,H)が演算されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複素固有値(λ)が、縦軸としての虚軸及び横軸としての実軸を有する座標系において考察され、減衰角度(β)が、虚軸と、固有値(λ)及び座標系の原点を通る直線との間の角度を表すこと、及び減衰角度(β)が、虚軸に最も近い固有値についてπ/4~3・π/4の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
観測器(UIO)によって推定される実効トルク(T^)の推定値がフィルタ(F)に供給され、フィルタは、推定される実効トルク(T^)を、ローパスフィルタ(LPF)において基本周波数(ω)より大きなあらかじめ設定された限界周波数でローパスフィルタリングすること、少なくとも1つの自己適合式の高調波フィルタ(LPVHn)において、推定される実効トルク(T^)の高調波振動成分(Hn)が基本周波数(ω)のn倍として検出され、少なくとも1つの高調波振動成分(Hn)が、ローパスフィルタリングされた推定されるトルク(T^EF)に加算され、生じる合計が、観測器(UIO)によって提供される推定されるトルク(T^)から減算され、生じる差がローパスフィルタ(LPF)への入力として用いられること、及びローパスフィルタ(LPF)の出力が、フィルタされた推定される実効トルク(T^EF)として出力されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの高調波フィルタ(LPVHn)が、実効トルク(T^)の推定値のd成分及びq成分を用いる直交システムとして実施され、d成分が推定値(T^)と同位相であり、q成分がd成分に対して90°位相変化していること、高調波フィルタ(LPVHn)への入力とd成分の間の第1の伝達関数(G)及び高調波フィルタ(LPVHn)への入力とq成分の間の第2の伝達関数(G)が設定されること、並びに伝達関数(G,G)のゲインファクタ(k,k)が高調波周波数(ω)の関数として算出されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
d成分が高調波の振動成分(Hn)として用いられることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ローパスフィルタ(LPF)から出力される、ローパスフィルタリングされた実効トルク(T^EF)の推定値が、実際の基本周波数(ω)を算出するために、少なくとも1つの高調波フィルタ(LPVHn)において用いられることを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
観測器(UIO)が第1及び第2の測定信号を処理し、実効トルク(T^)の推定値が第1のフィルタ(F1)でフィルタされ、第2の測定信号が第2のフィルタ(F2)でフィルタされ、第2のフィルタ(F2)のローパスフィルタ(LPF)から出力されるローパスフィルタリングされた第2の測定信号(MS)が、第1のフィルタ(F1)において実際の基本周波数(ω)を検出するために第1のフィルタ(F1)の少なくとも1つの高調波フィルタ(LPVHn)において用いられることを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項9】
トルク発生装置(DE)及び/又はトルク低減部(DS)を制御する制御器(R)における、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法により推定される実効トルク(T^)の使用。
【請求項10】
観測器(UIO)の固有値(λ)の実部が制御器(R)の固有値(λ)の実部よりも小さいことを特徴とする請求項9に記載の使用。
【請求項11】
連結要素(KE)を介してトルク低減部(DS)に結合されるトルク発生装置(DE)によって被試験物についての試験経過を実行する試験台であって、試験台(1)には試験台制御ユニット(5)が設けられており、試験台制御ユニットには、トルク発生装置(DE)又はトルク低減部(DS)を制御するために制御器(R)が実装されており、制御器(R)がトルク発生装置(DE)の内部の実効トルク(TE)を処理し、被試験物が動的なシステムとして
【数5】
又は
【数6】
の形態でモデル化されており、ここで、行列A,B,C,F,Mがシステム行列であり、システム行列は、実効トルク(TE)を含む動的なシステムのモデルに基づき得られ、ここで、uは入力ベクトルであり、yは出力ベクトルであり、xは動的なシステムの状態ベクトルであり、wは未知の入力としての実効トルク(TE)である、試験台において、
動的なシステムについて、観測器(UIO)が観測器行列(N,L,G,E,Z,T,K,H)及び未知の入力wをもって試験台制御ユニット(5)に実装されており、試験台(1)には測定センサが設けられており、測定センサは、入力ベクトルu及び/又は出力ベクトルyのノイズを有する少なくとも1つの測定信号を検出し、これに基づき、行列(N,Z)の固有値(λ)がf2/5>λ>5・f1の範囲にあるように観測器誤差(
【数7】
)のダイナミクスを状態ベクトル(x)と推定される状態ベクトル(x^)との差として決定する行列(N,Z)が設定されることで、観測器(UIO)は、状態ベクトル(x^)及び未知の入力wとしての実効トルク(T^Eを推定し、ここで、f1は少なくとも1つの測定信号の最大限期待される変化周波数であり、該少なくとも1つの測定信号におけるノイズが、周波数f2よりも大きな周波数帯に影響を与えることを特徴とする試験台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結要素を介してトルク低減部に結合されるトルク発生装置の内部の実効トルクの推定値を提供する方法であって、生じる動的なシステムが
【0002】
【数1】
【0003】
又は
【0004】
【数2】
【0005】
の形態で用いられ、ここで、行列A,B,C,F,Mがシステム行列であり、システム行列は、実効トルクを含む動的なシステムのモデルに基づき得られ、ここで、uは入力ベクトルであり、yは出力ベクトルであり、xは動的なシステムの状態ベクトルであり、wは未知の入力としての実効トルクである、方法に関するものである。また、本発明は、トルク発生装置又はトルク低減部を制御するために制御器を有する被試験物についての試験経過を実行する試験台であって、制御器が、実効トルクの推定値を提供する方法により推定されるトルク発生装置の内部の実効トルクを処理する、試験台に関するものである。
【背景技術】
【0006】
内燃エンジンにとって、実効トルク、すなわち内燃エンジンの質量慣性及び場合によってはこれに結合された構成要素(ドライブトレーン、車両)の加速に寄与するトルクは重要な量である。残念ながら、この内部の実効トルクは、測定技術的な大きな手間なしには直接測定することができない。
【0007】
特に、試験台又は道路上の車両プロトタイプでは、表示される燃焼モーメントがしばしば表示測定技術によって測定される。これは、内燃エンジンのシリンダ内のシリンダ圧力の測定に基づくものである。これは、一方では、測定技術的に手間がかかるとともにコストがかかるものであるため、試験台において、又は道路上の車両プロトタイプにおいてのみ応用される。しかし、表示された燃焼モーメントが測定されるとしても、内燃エンジンの摩擦モーメント及びその他の損失モーメントを表示された内燃モーメントから減算する場合、生じる内燃エンジンの実効トルクは得られない。通常、摩擦モーメント又は損失モーメントは、既知ではなく、更に、当然、内燃エンジンの動作状態(回転数、トルク、温度など)、経年状態及び負荷度合いに大きく依存する。
【0008】
類似の問題は、内部の実効トルクを場合によっては直接測定できない、例えば電気モータのような他のトルク発生装置においても生じる。電気モータの場合には、例えば空隙トルクである内部の実効トルクは、コンバータの信号を逆推定する必要なく直接的な測定にアクセスできない。
【0009】
表示される燃焼モーメントを算出するための装置による大きな手間の問題は、当該燃焼モーメントが他の測定可能な量に基づき観測器によって推定されることで既に解決されている。特許文献1では、例えば、クランクシャフトの測定量が燃焼モーメントの推定に用いられる。しかし、これは、当然、通常は最初から存在しない、クランクシャフトにおける適当な測定技術を必要とする。特許文献2でも、表示された燃焼モーメントを推定するために、クランクシャフトにおける測定量が用いられる。ここでは、統計的な信号処理の手法(確率的解析手法及び周波数解析技術)が応用される。しかし、両アプローチは、実効トルクには至らない。
【0010】
表示される燃焼モーメントを推定する、カルマンフィルタに基づく他の観測器も知られている。これについての例は、非特許文献1である。通常、カルマンフィルタは、演算技術上手間のかかるものであるため、実務上限定的にのみ使用可能である。
【0011】
非特許文献2から、内燃エンジンの実効トルクについての観測器が知られている。当該観測器は、未知の入力としての実効トルクをもったハイゲイン観測器として構成されている。観測器は、内燃エンジンのクランクシャフトにおける回転数及びトルクのフィルタされた(ローパス)測定に基づいており、観測器は、フィルタされた実効トルク、すなわち内燃エンジンの実効トルクの平均値を推定する。ハイゲイン観測器は、大きなゲインによって、試験構造の非線形のモデル化により生じ、抑制され、あるいは背後へ押しやられることに基づいている。非線形のアプローチにより当該コンセプトがより困難となる。加えて、測定のフィルタにより、当然、測定信号における多くの情報も損なわれてしまう。例えば、これにより、内燃エンジンにおける燃焼ショックによるトルク振動(トルク変動)又は電気モータのコンバータにおける切換による振動のような作用を推定される実効トルクにおいて再現することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第5771482号明細書
【文献】米国特許第6866024号明細書
【非特許文献】
【0013】
【文献】S.Jakubekら著、「Schaetzung des inneren Drehmoments von Verbrennungsmotoren durch parametrische Kalmanfilterung」、Automatisierungstechnik 57 (2009) 8, p.395-402
【文献】Jing Naら著、「Vehicle Engine Torque Estimation via Unknown Input Observer and Adaptive Parameter Estimation」、IEEE Transactions on Vehicular Technology, Volume: PP, Issue: 99, 14.8.2017
【文献】Mohamed Darouachら著、「Full-order observers for linear systems with unknown inputs」、IEEE Transactions on Automatic control、Institute of Electrical and Electronics Engineers、1994年、39(3)、pp.606~609
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
具体的な本発明の課題は、フィルタされていないノイズを有する測定信号も処理することができ、これにより推定される実効トルクにおける振動作用も再現することができる、トルク発生装置の内部の実効トルクのための観測器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
当該課題は、動的なシステムについて、観測器が観測器行列及び未知の入力をもって設計され、観測器誤差のダイナミクスを状態ベクトルと推定される状態ベクトルとの差として決定する行列が設定されることで、観測器が、入力ベクトル及び/又は出力ベクトルのノイズを有する少なくとも1つの測定信号を得るとともに、これに基づき状態ベクトル及び実効トルクを未知の入力として推定し、その結果、行列の固有値がf2/5>λ>5・f1の範囲にあり、ここで、f1は少なくとも1つの測定信号の最大限期待される変化周波数であり、該少なくとも1つの測定信号におけるノイズが、周波数f2よりも大きな周波数帯に影響を与えることによって解決される。このようにして、測定信号におけるノイズ及び有用な振動情報を観測器において分離することが可能である。これにより、観測器は、測定信号におけるノイズに対して影響されないとともに、実効トルクにおいて振動作用を再現することが可能である。本発明によるアプローチにおいては、動的なシステムは、更に線形のシステムとしてモデル化され、当該システムは、より簡単にコントロールされることができる。なぜなら、多くの用途、例えば試験台が線形のシステムとみなされ得るためである。
【0016】
観測器の固有値についての別の条件として、複素固有値が、縦軸としての虚軸及び横軸としての実軸を有する座標系において考察されることができ、虚軸と、固有値を通る直線と、座標系の原点との間の減衰角度がチェックされ、その結果、減衰角度が、虚軸に最も近い固有値についてπ/4~3・π/4の範囲にある。
【0017】
実効トルクの推定値における場合によっては存在するノイズを除去し、及び/又は推定値における高調波振動成分を除去するために、観測器によって推定される実効トルクの推定値をフィルタに供給することができ、フィルタでは、推定される実効トルクが、ローパスフィルタにおいて基本周波数より大きなあらかじめ設定された限界周波数でローパスフィルタリングされ、少なくとも1つの自己適合式の高調波フィルタにおいて、推定される実効トルクの高調波振動成分が基本周波数のn倍として検出され、少なくとも1つの高調波振動成分が、ローパスフィルタリングされた推定されるトルクへ加算され、生じる合計が、観測器によって提供される推定されるトルクから減算され、生じる差がローパスフィルタへの入力として用いられること、及びローパスフィルタの出力が、フィルタされた推定される実効トルクとして出力される。いくつかの用途では、このようなフィルタにより提供され得る、実効トルクのフィルタされた推定値が必要である。この場合、フィルタは、推定値における変化する基本周波数へ自動的に調整され得るようになっている。このアプローチにより、場合によってはあり得る推定値におけるノイズの容易な除去が可能となる。ローパスフィルタされた推定値及び高調波振動成分の合計が推定値から減算されることで、ローパスフィルタは、高調波振動成分のない信号を入力において得る。これにより、当然、この振動成分は、フィルタのフィルタされた出力信号においてもなくなり、これによって、ノイズも、また高調波も容易に除去することが可能である。このとき、当然、適宜の高調波振動成分を除去することが可能である。変化する基本周波数に高調波フィルタが適合されるため、フィルタは、変化する基本周波数に自動的に従う。
【0018】
少なくとも1つの高調波フィルタが、好ましくは推定値のd成分及びq成分を用いる直交システムとして実施され、d成分が推定値と同位相であり、q成分がd成分に対して90°位相変化しており、高調波フィルタへの入力とd成分の間の第1の伝達関数及び高調波フィルタへの入力とq成分の間の第2の伝達関数が設定され、伝達関数のゲインファクタが高調波周波数の関数として算出される。周波数が変化すると、伝達関数のゲインファクタも自動的に変化し、高調波フィルタが周波数に追従する。このとき、好ましくはd成分が高調波振動成分として出力される。
【0019】
特に有利な形態では、実際の基本周波数を検出するために、ローパスフィルタから出力されるローパスフィルタリングされた推定値は、少なくとも1つの高調波フィルタにおいて用いられる。これにより、フィルタが、完全に自動的に変化する周波数へ調整され得る。
【0020】
第1のフィルタにおいて実際の基本周波数を検出するために、観測器が第1及び第2の測定信号を処理し、実効トルクの推定値が第1のフィルタでフィルタされ、第2の測定信号が第2のフィルタでフィルタされ、第2のフィルタのローパスフィルタから出力される第2の測定信号が、第1のフィルタの少なくとも1つの高調波フィルタにおいて用いられれば、両フィルタは、容易に同期されることが可能である。
【0021】
特に有利には、実効トルクの推定値は、トルク発生装置及び/又はトルク低減部を制御するために用いられる。このとき、観測器の固有値の実部が制御器の固有値の実部よりも小さいように構成することができ、これにより、観測器が制御器よりも迅速であることを保証することができ、これにより、制御器は、実効トルクの実際の推定値を常に保持する。
【0022】
以下に、具体的な本発明を、例示的、概略的、かつ、制限せずに本発明の有利な形態を示す図1図7を参照しつつ詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実効トルクを推定する本発明による観測器構造を示す図である。
図2】試験台におけるトルク発生装置及びトルク低減部を有する試験構造を示す図である。
図3】試験構造の物理的なモデルである。
図4】本発明によるフィルタの構造を示す図である。
図5】本発明によるフィルタの高調波フィルタの構造を示す図である。
図6】観測器及びフィルタの考えられる組合せを示す図である。
図7】試験台における観測器の使用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、図2に例示的に図示されているように、トルク発生装置DE、例えば内燃エンジン2若しくは電気モータ又はその組合せと、これに結合されたトルク低減部DSとを有する、動的で技術的なシステムを基礎としている。トルク低減部DSは、トルク発生装置DEに対する負荷である。トルク発生装置DEのための試験台1(例えば図2)では、トルク低減部DSは負荷機械4である。トルク発生装置DEを有する車両において、トルク低減部DSは、実際には、車両全体によって引き起こされる抵抗である。トルク発生装置DEからトルク低減部DSへトルクを伝達することができるように、トルク低減部DSは、当然、連結要素KE、例えば結合軸3を介してトルク発生装置DEに連結されている。トルク発生装置は内部の実効トルクTEを発生させ、当該トルクは、固有の質量慣性JEの加速(負の場合もある)及び結合されたトルク低減部DSの質量慣性JDの加速に寄与する。トルク発生装置DEのこの内部の実効トルクTEは、測定技術的にアクセスできず、又は非常に手間をかけてアクセス可能であり、本発明によれば、観測器(オブザーバ)UIOによって検出(算出)、すなわち推定されるようになっている。
【0025】
技術的な動的なシステムの十分に知られた状態空間表現は、
【0026】
【数3】
【0027】
の形態を基礎とされる。ここで、xは技術的なシステムの状態ベクトルであり、uは既知の入力ベクトルであり、yは出力ベクトルであり、wは未知の入力である。A,B,F,Cは、図3に図示されているようなモデルにおける運動方程式による動的なシステムのモデル化から得られるシステム行列(マトリクス)である。このような動的なシステムについての未知の入力を有する観測器(UIO)は、例えば、非特許文献3から知られている。定義により観測器UIOは、
【0028】
【数4】
【0029】
について得られる。
【0030】
観測器構造(図1)の観測器(オブザーバ)行列N,L,G,Eは、未知であり、決定される必要があるため、推定される状態x^がxに対して収束する。zは、観測器の内部状態である。これにより、観測器UIOは、動的なシステムの状態量xを推定するとともに、入力ベクトルu及び出力ベクトルyを有する、監視マトリクスN,L,G,E及びシステムマトリクスA,B,C,Fの関数としての未知の入力wについての推定値の演算を可能とする。このために、観測器誤差eがe=x^-x=z-x-Eyをもって導入される。そして、観測器誤差eのダイナミクスは、M=I+EC及び単位行列Iを有する
【0031】
【数5】
【0032】
についての上述の方程式に従う。観測器誤差
【0033】
【数6】
【0034】
のダイナミクスが未知の入力wに依存しないようにECF=-Fが成り立つ必要があるとともに、観測器誤差
【0035】
【数7】
【0036】
のダイナミクスが既知の入力uに依存しないようにG=MBが成り立つ必要がある。加えて、観測器誤差
【0037】
【数8】
【0038】
のダイナミクスが状態xに依存しないこととなるように、更にN=MA-KC及びL=K(I+CE)-MAEが得られる。これにより、観測器誤差
【0039】
【数9】
【0040】
のダイナミクスが
【0041】
【数10】
【0042】
へ低減される。方程式ECR=-Fは、更にE=-F(CF)++Y(I-(CF)(CF)+)の形態で記述されることができ、ここで、行列Yは観測器UIOのための計画行列であり、()+はマトリクス()の左逆元である。
【0043】
観測器誤差
【0044】
【数11】
【0045】
のダイナミクスの安定性にリアプノフ条件を用いると、対称正定値行列Pによって、安定性条件NTP+PN<0が得られる。このとき、行列Pによって二次リアプノフ関数が定義される。
【0046】
U=-F(CF)+,V=I-(CF)(CF)+及びE=U+YVという簡略化によって、安定性条件を
【0047】
【数12】
【0048】
の形態で書き換えることが可能である。
【0049】
当該不等式は、
【0050】
【数13】
【0051】
により解くことができ、ここで、Y,Kは、
【0052】
【数14】
【0053】
及び
【0054】
【数15】
【0055】
として演算されることが可能である。これにより、行列N,L,G,Eを演算することができるとともに、漸近安定性を保証することが可能である。
【0056】
当然、他の安定性条件、例えばナイキスト条件を用いることも可能である。しかし、基礎となるアプローチは、全く変わらず、不等式の形態においてのみ変化する。
【0057】
行列N,L,G,Eの演算は、このような問題に用いることが可能な方程式ソルバ(ソルバ)が上記不等式を満たす行列N,L,G,Eを探し出すように行われる。このとき、複数の有効な解が得られ得る。
【0058】
未知の入力wを推定するために、外乱信号h=Fwを規定することができる。
【0059】
【数16】
【0060】
は、これに従う。推定された外乱信号は、
【0061】
【数17】
【0062】
の形態で記述されることができるとともに、推定誤差はh-h^=-(KC-ECA)eとして記述されることができる。
【0063】
したがって、外乱量hひいては未知の入力wの推定における誤差は、状態推定の誤差eと比例している。
【0064】
そして、未知の入力w^の推定は、
【0065】
【数18】
【0066】
として得られる。
【0067】
上記観測器UIOは、図1に図示されているような構造を有している。この観測器UIOの本質的な利点は、入力ベクトルuの入力量u(t)の測定量及び出力yの出力量y(t)の測定量をフィルタする必要はなく、測定装置UIOが、例えば測定ノイズ又はシステムノイズにより強くノイズが加えられ得るフィルタされていない測定量を処理することができることにある。これを可能とするために、観測器UIOは、測定される測定量の測定信号のノイズ及び周波数成分を分離することができるようになっている。このために、観測器UIOは、観測器UIOのダイナミクスが一方では測定信号の期待されるダイナミクスに従うことができ、他方では期待されるノイズが増幅されないように設計され得る。これは、観測器UIOの固有値λの適切な選択により達成される。ここで、ダイナミクスは、変化率と理解され得る。f1が測定信号の最大限期待される変化周波数であれば、観測器UIOの固有周波数fの下限は、周波数f1の最大で5倍に選択され得る。測定信号の期待される変化周波数は、システムダイナミクスによって決定されることができるか、すなわち、動的なシステム自体が測定された測定信号における所定の変化率のみを許容するか、又は測定信号自体によって決定されることができ、すなわち、例えば測定技術の速度によって、若しくは測定技術の速度のあらかじめ設定された制限によって、測定信号のダイナミクスがシステムにより制限される。ノイズが周波数f2より大きな周波数帯に影響を与える場合には、観測器UIOの固有値の上限は、f2/5をもって選択されることとなる。そのため、観測器UIOの固有値λについては、f2/5>λ>5・f1の範囲が生じる。通常、常に高周波のノイズが生じることから、通常、この分離は常に可能である。
【0068】
観測器UIOにおける複数の測定信号が処理される場合には、当該処理は全ての測定信号について行われ、最も動的な測定信号(最大の変化率を有する測定信号)又は最も強くノイズが加えられる測定信号が考慮に入れられる。
【0069】
上記観測器UIOの固有値λは、観測器UIOのダイナミクスを決定づける(
【0070】
【数19】
【0071】
に基づく)行列Nに基づき得られる。固有値λは、知られているように、単位行列I及び行列式detを有するλ=det(sI-N)=0に従って演算される。
【0072】
これにより、行列N,L,G,Eに対する可能な解について、固有値λが条件f2/5>λ>5・f1を満たさない解を消去(除去)することが可能である。そして、残った解は、観測器UIOを規定する。このとき、複数の解が残れば、1つの解を選択することができるか、又は別の条件を考慮することが可能である。
【0073】
別の1つの条件を、固有値λの状態に基づき得ることが可能である。通常、固有値λは、共役複素数対であり、縦軸としての虚軸及び横軸としての実軸を有する座標系において描かれることが可能である。安定性の理由から固有値λが全て虚軸の左方に配置されるべきであることが、システム理論から知られている。虚軸と、固有値λ及び座標系の原点を通る直線との間の角度を表す減衰角度βが導入されれば、虚軸に最も近い固有値λについての減衰角度βは、π/4及び3・π/4の範囲にあるべきである。これにより、観測器UIOによって、動的なシステムの自然周波数が減衰されないか、又はわずかにのみ減衰されることとなることが根拠づけられている。
【0074】
後述するように、観測器UIOが制御器Rと組み合わせて用いられれば、これに基づき、観測器UIOの固有値λが虚軸に関して制御器Rの固有値λRの左方に位置すべきという別の1つの条件が得られ、その結果、観測器UIOは、制御器Rよりもダイナミック(すなわちより迅速)である。したがって、観測器UIOの固有値λの実部は、全て制御器Rの固有値λRの実部よりも小さいこととなる。
【0075】
追加的な条件によってもまだ複数の解が残る場合には、これらのうちから1つの解、例えば観測器UIOの固有値λと制御器Rの固有値λRの間のできる限り大きな隔たり又は虚軸からの固有値λのできる限り大きな隔たりを有する解を選択することができる。
【0076】
上記観測器UIOについて線形システム、すなわち、トルク発生装置DEとトルク低減部DSの間の結合の一定のパラメータを有する線形システムが基礎とされる。しかし、上記観測器を、後述のように、非線形のシステムへの拡張することも可能である。
【0077】
非線形の動的なシステムは、一般に
【0078】
【数20】
【0079】
の形態で記述されることができ、ここで、Mは、非線形性の増幅(度)を表すとともにシステム行列でもある。これは、|f(x1)-f(x2)|≦|x1-x2|が成り立つリプシッツ非線形性について当てはまる。未知の入力wを有する観測器UIOは、規定に従い、
【0080】
【数21】
【0081】
によって設定されている。これに基づき、観測器誤差e及びそのダイナミクス
【0082】
【数22】
【0083】
を再び以下のように記述することができる:
【0084】
【数23】
【0085】
観測器UIOは状態x、入力u及び未知の入力wに依存しないべきという条件に基づき、再び行列がMF=0,ECF=-F,N=MA-KC,G=MB,L=K(I+CE)-MAE及びM=I+ECとして得られる。観測器誤差eのダイナミクス
【0086】
【数24】
【0087】
は、
【0088】
【数25】
【0089】
に従う。再びリアプノフ条件を安定性条件として用いると、当該条件を、NTP+PN+γPMMTP+γI<0の形態で記述することができる。ここで、γは、あらかじめ設定可能な計画パラメータである。U=-F(CF)+,V=I-(CF)(CF)+及びE=U+YVという単純化により、安定性条件を((I+UC)A)T+P(l+UC)A+(VCA)TTP+PY(VCA)-CTTP-PKC++γ(P(I+UC)+PY(VC))(P(I+UC)+PY(VC))T+γl<0の形態に書き換えることが可能である。
【0090】
当該不等式は、再びY,K,Pによる方程式ソルバによって解かれる。これにより、観測器行列N,L,G,Eを演算することができるとともに、漸近安定性を保証することが可能である。計画パラメータγを介して、入力値λを行列Nについて所望のように、及び上述のように設定することが可能である。
【0091】
しかし、観測器UIOを、以下に簡単に述べるように、他の態様で設計することも可能である。このために、動的なシステム
【0092】
【数26】
【0093】
について、上述のように再び観測器構造が基礎とされる:
【0094】
【数27】
【0095】
ここで、zは再び内部の観測器状態であり、x^は推定されるシステム状態であり、eは観測器誤差である。行列Z,T,K,Hは、再び観測器行列であり、当該観測器行列により、観測器UIOが設定される。観測器のダイナミクスは、
【0096】
【数28】
【0097】
として記述されることができる。このために、行列についてK=K1+K2と仮定され、Iは再び単位行列を表す。観測器誤差のダイナミクスが観測器誤差eにのみ依存すべきであるという条件に基づき、
【0098】
【数29】
【0099】
が得られる。
【0100】
そして、未知の入力w^の推定は、
【0101】
【数30】
【0102】
として得られる。
【0103】
したがって、観測器誤差
【0104】
【数31】
【0105】
のダイナミクスは、行列Z=(A-HCA-K1C)、したがって行列K1によって決定される。なぜなら、他の行列は、システム行列又はこれに基づき得られるためである。ここで、行列K1を、観測器UIOのための計画行列として用いることができるとともに、観測器UIOの固有値λを上述のように配置するために用いることが可能である。
【0106】
未知の入力を有する本発明による観測器UIOは、一般に、動的なシステム
【0107】
【数32】
【0108】
あるいは
【0109】
【数33】
【0110】
について当てはまる。これを、試験台1に基づいて、結合軸3(連結要素KE)によって負荷機械4(トルク低減部DS)に(図2に図示されているように)結合されている内燃エンジン2(トルク発生装置DE)について説明する。
【0111】
試験台1では、内燃エンジン2及び負荷機械4は、試験経過を実行する試験台制御ユニット5によって制御される。通常、試験経過は、適切な制御器Rによって試験台制御ユニット5において制御される内燃エンジン2及び負荷機械4についての目標値SWの順序(連続)である。典型的には、負荷機械4は、ダイノ回転数TωDへ制御され、内燃エンジン2は軸モーメントTSへ制御される。制御器Rによって目標値SW及び測定される実際値に基づき演算される、内燃エンジン2についての制御量STEとして、例えば、エンジン制御ユニットECUによって噴射量、噴射時点、排ガス再循環システムの調節などのような量へ変換されるアクセルペダル位置αが用いられる。負荷機械4についての制御量STDとして、例えば、ダイノ制御器RDによって負荷機械4のための対応する電流及び/又は電圧へ変換される目標モーメントTDsollが用いられる。試験経過についての目標値SWは、例えば、内燃エンジン2を有する車両の仮想の区間に沿った走行のシミュレーションに基づき算出されるか、又は単純に目標値SWの時系列として存在する。このために、シミュレーションは、観測器UIOによって上述のように推定される内燃エンジン2の実効トルクTEを処理するものとなっている。ここで、シミュレーションは、試験台制御ユニット5において行われることができるか、又は固有のシミュレーション環境(ハードウェア及び/又はソフトウェア)においても行われ得る。
【0112】
これにより、図3に示すように、図2の動的なシステムは、内燃エンジンの質量慣性JEと、回転剛性c及び回転減衰(係数)dで特徴付けられる試験台軸3と、負荷機械4の質量慣性JDとで構成されている。動的なシステムの動的な特性を決定付ける当該動的なシステムパラメータは、既知であると仮定される。
【0113】
通常、試験台1では、例えば回転センサ、トルクセンサのような適切な公知の測定センサによって、内燃エンジン2の回転数ωEの実際値、軸モーメントTSの実際値、負荷機械4の回転数ωDの実際値及び負荷機械4のトルクTDの実際値が測定される。ただし、全ての測定量が常に使用可能ではない。なぜなら、各試験台1では常に全ての測定量が測定されないためである。しかし、適当な構成によって、観測器UIOは測定量を扱うことができるとともに、いかなる場合にも内燃エンジン2の実効トルクT^Eを推定することが可能である。これを、図3による内燃エンジン2、試験台軸3及び負荷機械4の組合せの動的なモデルにおいて説明する。
【0114】
第1の可能な形態では、内燃エンジン2のみが考察され、y=ωEをもって運動方程式
【0115】
【数34】
【0116】
が得られる。TEが未知の入力wとして用いられれば、軸モーメントTSが入力量uとして、ωEが状態量xとして、システム行列がA=1/JE,B=-1,C=1,F=1に従う。これにより、軸モーメントTSの測定信号に基づき内燃エンジン2の実効トルクT^Eについての推定値を算出する観測器UIOを構成することが可能である。
【0117】
第2の態様では、動的なシステムのモデルは結合軸3も含んでおり、負荷機械4のトルクTDが入力uとして用いられる。出力として、内燃エンジン2の回転数ωE及び軸モーメントTSが用いられる。入力u及び出力yは、試験台1において、観測器UIOを実現するために測定信号として測定される。状態ベクトルxはxT=[ΔΦ ωD ωE]で規定されており、ここで、ΔΦは、内燃エンジン2における結合軸3の回転角度ΦEと負荷機械4における結合軸3の回転角度ΦDの差異であり、すなわちΔΦ=ΦE-ΦDである。未知の入力wは、内燃エンジン2の実効トルクTEである。これに基づき、
【0118】
【数35】
【0119】
【0120】
【数36】
【0121】
【0122】
【数37】
【0123】
及び
【0124】
【数38】
【0125】
としてのシステム行列A,B,C,Fは、この場合図3の動的なシステムについて記述された運動方程式に従う。これにより、測定量に基づき内燃エンジン2の実効トルクT^Eについての推定値を算出する観測器UIOを構成することが可能である。
【0126】
第3の態様では、モデルは、再び内燃エンジン2、結合軸3及び負荷機械4を有する動的なシステム全体を含んでいる。入力uは用いられない。出力yとして、内燃エンジン2の回転数ωE、負荷機械4の回転数ωD及び軸モーメントTSが用いられる。出力yは、試験台1において、観測器UIOを実現するために測定信号として測定される。状態ベクトルxは、再びxT=[ΔΦ ωD ωE]によって規定されている。未知の入力wは、内燃エンジン2の実効トルクTEである。これに基づき、
【0127】
【数39】
【0128】
、B=0、
【0129】
【数40】
【0130】
及び
【0131】
【数41】
【0132】
としてのシステム行列A,B,C,Fは、この場合図3の動的なシステムについて記述された運動方程式に従う。これにより、測定量に基づき内燃エンジン2の実効トルクT^Eについての推定値を算出する観測器UIOを構成することが可能である。
【0133】
第4の態様では、モデルは、再び内燃エンジン2、結合軸3及び負荷機械4を有する動的なシステム全体を含んでいる。入力u及び負荷機械4のトルクTDが用いられる。出力yとして、内燃エンジン2の回転数ωE及び負荷機械4の回転数ωDが用いられる。入力u及び出力yは、試験台1において、観測器UIOを実現するために測定信号として測定される。当該実施形態は、特に有利である。なぜなら、観測器UIOの実現のために軸モーメントTSが不要であり、これにより、試験台において軸モーメントセンサを削減することができるためである。状態ベクトルxは、再びxT=[ΔΦ ωD ωE]によって規定されている。未知の入力wは、内燃エンジン2の実効トルクTEである。これに基づき、
【0134】
【数42】
【0135】
【0136】
【数43】
【0137】
【0138】
【数44】
【0139】
及び
【0140】
【数45】
【0141】
としてのシステム行列A,B,C,Fは、この場合図3の動的なシステムについて記述された運動方程式に従う。これにより、測定量に基づき内燃エンジン2の実効トルクT^Eについての推定値を算出する観測器UIOを構成することが可能である。
【0142】
上述のように、観測器UIOによって、状態ベクトルxの状態量も同時に推定される。
【0143】
したがって、現存の試験台構造に応じて、特に現存の測定技術に依存して適切な観測器UIOを構成することができ、これにより、本発明による観測器UIOが非常にフレキシブルとなる。ここで、当然、例えばより多くの振動する質量、例えば追加的なデュアルマスフライホイールを有するより複雑な試験台構造、又は個々の質量間の他の若しくは追加の結合部を同様に動的な運動方程式を介してモデル化することも可能である。このとき得られるシステム行列A,B,C,Fに基づき、同様に、観測器UIOは、実効トルクTEについて構成されることが可能である。
【0144】
観測器UIOは、当然、試験台1におけるものとは異なる用途においても用いられることが可能である。特に、トルク発生装置DEとしての内燃エンジン2及び/又は電気モータを有する車両における使用も考慮に値する。ここで、観測器UIOは、利用可能な測定量に基づきトルク発生装置DEの実効トルクT^Eを推定するために用いられることができ、当該実効トルクは、例えばエンジン制御ユニットECU、ハイブリッドパワートレーン制御ユニット、トランスミッション制御ユニットなどにおいて車両の制御のために用いられることが可能である。
【0145】
本発明による観測器UIOがフィルタされていないノイズを有する測定信号によって動作するため、実効トルクT^Eについての推定値もノイズを有する。同様に、実効トルクT^Eについての推定値には、高調波(倍音)成分も含まれ、当該高調波成分は、したがって内燃エンジン2における燃焼から実効トルクTEが得られ、燃焼ショックにより、基本周波数及び調和周波数(倍音)を有する周期的な実効トルクTEが生じる。このことは、ある程度の用途には非常に望ましい。特に、例えばハイブリッドパワートレーンを試験すべき場合やドライブトレーンへの内燃ショックの影響を考慮すべき場合に、燃焼ショックによりもたらされる振動をしばしば試験台において再現すべきである。ただし、例えば車両においては、ノイズを有し、高調波で重ね合わされた実効トルクT^Eが不都合な用途もあり得る。このとき、燃焼ショックの基本周波数ωと、当然高調波の周波数も、当然内燃エンジン2、特に内燃エンジン2の気筒数及びタイプ(例えばガソリンエンジン又はディーゼルエンジン、2サイクル又は4サイクルなど)に依存するが、内燃エンジン2の実際の回転数ωEにも依存する。内燃エンジン2の回転数ωEの依存に基づき、周期的でノイズを有する調和してゆがめられた測定信号MSをフィルタするフィルタFは重要である。
【0146】
しかし、電気モータの実効トルクT^Eも、通常、高調波(倍音)を有する周期的な振動を含んでおり、当該周期的な振動は、この場合、電気モータのコンバータにおける切り換えにより生じ得る。当該振動も回転数に依存している。これにも、本発明によるフィルタFを用いることが可能である。
【0147】
したがって、本発明は、測定信号MSに適したフィルタFも含んでおり、当該測定信号は、変化する基本周波数ωに従って周期的であるとともに、基本周波数ωの高調波によりゆがめられているとともに、(測定ノイズ及び/又はシステムノイズによって)ノイズを加えられ得る。ここで、フィルタFは、このような適宜の測定信号MS、例えば回転数若しくはトルク、回転角度、加速度、速度、電流又は電圧の測定に適用可能である。このとき、フィルタFは、本発明による観測器UIOに依存しないか、又は観測器によって推定される実効トルクT^Eを測定信号MSとして処理することも可能である。したがって、フィルタFは、独立した発明である。
【0148】
本発明によるフィルタFは、図4に図示されているように、ローバスフィルタLPFと、基本周波数ωのn倍の少なくとも1つの高調波周波数ωnのための少なくとも1つの自己適合式の高調波フィルタLPVHnとを含んでいる。通常、複数の高調波フィルタLPVHnが様々な高調波周波数ωnのために設けられており、好ましくは、より低い高調波が考慮される。ここで、当然、nは、整数である必要はなく、各測定信号MS又はその由来に依存する。しかし、通常、nは、各用途に基づき、既知なものと仮定されることが可能である。基本周波数ωが変化し得ることから、当然、高調波周波数ωnも変化し得るため、高調波フィルタLPVHnは、基本周波数ωに関して自己適合式であり、すなわち、高調波フィルタLPVHnが自動的に基本周波数ωの変化へ適応する。
【0149】
ローバスフィルタLPFは、測定信号MSの高周波のノイズ成分を除去するために用いられるとともに、当然ノイズの特徴に依存し得る所定の限界周波数ωGへ調整されることが可能である。ローパスフィルタLPFは、例えばIIRフィルタ(無限インパルス応答フィルタ)として、一般にz領域の記述形態y(k)=b0x(k)+...+bN-1x(k-N+1)-a1y(k-1)-...-aMy(k-M)で(フィルタFは通常デジタルで実施されるため)実現されることが可能である。ここで、yはフィルタされた出力信号であり、xは入力信号(すなわちここでは測定信号MS)であり、それぞれ実際の時点k及び過去の時点についてのものである。所望のフィルタ特性(特に限界周波数、増幅(ゲイン)、位相変化)を得るために、フィルタは公知のフィルタ設計方法によって設計されることが可能である。これに基づき、
【0150】
【数46】
【0151】
の形態の単純なローパスフィルタを導出することができる。ここで、k0は、所望のダイナミクス(動力)及びノイズ抑制に関して設定され得る1つの計画パラメータである。ここで、通常、迅速なローパスフィルタLPFがより劣るノイズ抑制を備え、またその逆であることが当てはまる。したがって、通常、パラメータk0によって、これらの間にある程度の妥協が設定される。
【0152】
しかし、このとき、当然、例えばFIRフィルタ(有限インパルス応答フィルタ)としてのローパスフィルタLPFの他の適宜の実施も考慮に値する。
【0153】
ローパスフィルタLPFの出力は、ノイズ成分がフィルタされた、フィルタされた測定信号MSFである。ローパスフィルタLPFは、移動平均値を生じさせる。ローパスフィルタLPFの入力は、測定信号MS及び測定信号MSの平均値の合計と考慮される高調波成分Hnとの差である。これにより、ローパスフィルタLPFは、基本周波数ω(及び場合によってはあり得る残った高調波)における測定信号MSの交番成分のみが処理される。
【0154】
高調波フィルタLPVHnは、測定信号MSの高調波成分Hnを検出する。高調波成分は、それぞれ高調波周波数を有する振動である。高調波フィルタLPVHnは、二次一般化積分器(SOGI)に基づいて実施される直交システムを基礎としている。直交システムは、所定の周波数ωの正弦振動(d成分)及び直交する余弦振動(90°位相変化;q成分)を生じさせ、これは、ωで回転し、これにより調和振動を示す、dq座標系における回転する指標として考慮され得る。SOGIは、
【0155】
【数47】
【0156】
として規定されているとともに、ωにおいて共振周波数を有している。高調波フィルタLPVHnにおける直交システムは、図5に図示されているような構造を有している。dvは、入力vの基本振動と同一の位相を有しており、好ましくは同一の振幅も有している。qvは、90°の移送変化である。それゆえ、dvとvの間の伝達関数Gd(s)及びqvとvの間の伝達関数Gq(s)は、
【0157】
【数48】
【0158】
及び
【0159】
【数49】
【0160】
として得られる。ここで、高調波フィルタLPVHnの高調波成分Hnは、d成分に対応している。
【0161】
高調波フィルタLPVHnの統合された特性により、高調波フィルタLPVHnの入力における変化時には、出力が新たな共振周波数への振動状態へ至り、これにより、高調波成分Hnが測定信号MSにおける変化に追随する。測定信号MSが変化しない場合には、(規則的な)振動状態へ至った後に高調波成分Hnも変化しない。
【0162】
目的は、高調波フィルタLPVHn自体が変化する周波数へ適合できるように、ゲインkd,kqを周波数ωの関数として設定することである。このために、例えば、固有値の極配置をもったルーエンバーガー観測器アプローチ(A-LC)を選択することが可能である。このとき、
【0163】
【数50】
【0164】
は、システム行列及びC=[1 0]出力行列であり、出力においては、d成分のみが考慮される。これにより、
【0165】
【数51】
【0166】
が得られる。これにより、固有値λは、
【0167】
【数52】
【0168】
として得られる。解くことで、最終的に固有値
【0169】
【数53】
【0170】
が得られる。固有値λの振動モードが高調波フィルタLPVHnにおける高調波の周波数と同一の周波数を有するという目的により、
【0171】
【数54】
【0172】
が得られ、これにより、k2 d+4qω=0となる。計画パラメータα=k2 d+k2 qを導入することで、k2 d=-4kqωにより、最終的に
【0173】
【数55】
【0174】
が得られる。これにより、
【0175】
【数56】
【0176】
及び
【0177】
【数57】
【0178】
の形態で、両ゲインkd及びkqについての方程式となる。これに基づき、ゲインkd及びkqが、変化する周波数ωに容易に適合されることができ、これにより、周波数ωに追随することができることが分かる。基本周波数ωへのn番目の調和振動のための高調波フィルタLPVHnは、ゲインkd,kqについての方程式において単純にn倍の周波数n・ωが用いられることで、簡単に達成されることが可能である:
【0179】
【数58】
【0180】
計画パラメータαを適切に選択することが可能である。例えば、計画パラメータαは、高調波フィルタLPVHnの入力信号vにおけるSN比によって選択されることが可能である。入力信号vがわずかなノイズを含んでいるか又はノイズを含んでいない場合、計画パラメータα>1を選択することができる。これに対して、入力信号vがノイズを含んでいれば、計画パラメータα<1を選択すべきである。
【0181】
高調波フィルタLPVHnにおいて必要な実際の基本周波数ωは、ここでもローバスフィルタLPFにより生じる平均値に基づき得られ得る。なぜなら、これには基本周波数ωが含まれているためである。それゆえ、図4では、高調波フィルタLPVHnへの別の入力として、ローパスフィルタLPFからの出力が設定されている。しかし、当然、実際の基本周波数ωは、他の方法で提供されることも可能である。例えば、当該基本周波数を、内燃エンジン2の情報及び内燃エンジン2の既知の実際の回転数に基づいて演算することも可能である。
【0182】
フィルタFの好ましい使用が図6に図示されている。本発明による観測器UIOは、例えば、(例えば試験台1における、又は車両における)内燃エンジン2の測定された軸モーメントTSh及び回転数nEに基づき、内燃エンジン2(トルク発生装置DE)の実効トルクT^Eを推定する。周期的でノイズを有する、高調波Hnで重ねられた、推定される実効トルクT^Eは、後続配置されたフィルタF1においてフィルタされる。これにより生じる平均値T^EFは、例えば制御器Rにおいて、又は車両の制御ユニットにおいて更に処理されることが可能である。
【0183】
多くの場合、観測器UIOは、図6における軸モーメントTSh及び回転数nEのように少なくとも2つの入力信号u(t)を処理する。これにより、特に有利な形態では、更なる処理に有利な他の信号の同期を行うために、両信号のうち1つを処理することが可能である。例えば、観測器UIOへの入力信号を本発明によるフィルタF2によってフィルタすることが可能である。実際の基本周波数ωについての情報を得るために、及びこれにより両フィルタF1,F2を互いに同時に同期させるために、このとき生じる平均値MSF(ここではnEF)は、推定される実効トルクT^Eのための第2の高調波フィルタF1において処理されることが可能である。これにより、両フィルタF1,F2のフィルタされた両出力信号は、互いに同期されている。
【0184】
しかし、周期的でノイズを有する、高調波で重ねられた信号をフィルタするために、及びフィルタされた信号を更に処理するために、本発明によるフィルタFは、観測器UIOなしでも用いられることが可能である。トルク発生装置DEの所定の用途、例えば試験台1においては、測定された測定信号MS、例えば軸モーメントTSh又は回転数nE,nDは、本発明によるフィルタFによってフィルタされることが可能である。これにより、必要に応じて、フィルタされていない信号又はフィルタされた信号を処理することが可能となる。
【0185】
本発明による観測器UIO及びフィルタFの典型的な応用が図7に図示されている。試験台1には、結合軸3と結合された、トルク発生装置DEとしての内燃エンジン2及びトルク低減部DSとしての負荷機械4を有する試験装置が配置されている。試験経過を実行するために、内燃エンジン2の目標モーメントTEsoll及び内燃エンジン2の目標回転数nEsollがあらかじめ設定される。ここで、目標回転数nEsollは、負荷機械4と共にダイノ制御器RDによって調整され、目標モーメントTEsollはエンジン制御器REによって内燃エンジン2において直接調整される。エンジン制御器REのための実際量として、軸モーメントTShの測定量、内燃エンジンの回転数ωEの測定量及び負荷機械の回転数ωDに基づき、観測器UIOによって、内燃エンジンの実効トルクT^Eが推定される。当該実効トルクは、第1のフィルタF1においてフィルタされ、例えばエンジン制御ユニットECUを介して内燃エンジン2を制御するエンジン制御器REへ引き渡される。ダイノ制御器RDは、実際量として、実際に測定されるエンジン回転数ωE及び負荷機械の測定される回転数ωDを得るとともに、負荷機械4において設定されるべき負荷機械4のトルクTDを演算する。しかし、ダイノ制御器RDは、測定された測定信号を処理するのではなく、本発明による第2及び第3のフィルタF2,F3においてフィルタされる測定信号ωEF,ωDFを処理する。図6に基づき記載されているように、第1のフィルタF1は、破線で示唆されているように、内燃エンジン2の回転数ωEへ同期されることができる。
【0186】
本発明によるフィルタFは、必要に応じて、又は用途に応じて、オン又はオフされることが可能である。これにより、例えば、推定される実効トルクT^Eを処理する制御器Rは、実効トルクについてのフィルタされていない推定値又はフィルタされた推定値によって動作する。
なお、本発明は、以下の態様も包含し得る:
1.連結要素(KE)を介してトルク低減部(DS)に結合されるトルク発生装置(DE)の内部の実効トルク(T E )の推定値(T^ E )を提供する方法であって、生じる動的なシステムが
【0187】
【数59】
【0188】
又は
【0189】
【数60】
【0190】
の形態で用いられ、ここで、行列A,B,C,F,Mがシステム行列であり、システム行列は、実効トルク(T E )を含む動的なシステムのモデルに基づき得られ、ここで、uは入力ベクトルであり、yは出力ベクトルであり、xは動的なシステムの状態ベクトルであり、wは未知の入力としての実効トルク(T E )である、方法において、
当該動的なシステムについて、観測器(UIO)が観測器行列(N,L,G,E,Z,T,K,H)及び未知の入力wをもって設計され、観測器誤差(
【0191】
【数61】
【0192】
のダイナミクスを状態ベクトル(x)と推定される状態ベクトル(x^)との差として決定する行列(N,Z)が設定されることで、観測器(UIO)が、入力ベクトルu及び/又は出力ベクトルyのノイズを有する少なくとも1つの測定信号を得るとともに、これに基づき状態ベクトル(x^)及び実効トルク(T^ E )を未知の入力wとして推定し、その結果、行列(N,Z)の固有値(λ)がf2/5>λ>5・f1の範囲にあり、ここで、f1は少なくとも1つの測定信号の最大限期待される変化周波数であり、該少なくとも1つの測定信号におけるノイズが、周波数f2よりも大きな周波数帯に影響を与えることを特徴とする方法。
2.観測器誤差(
【0193】
【数62】
【0194】
)のダイナミクスの安定性のために安定性条件が用いられ、安定性条件に基づき、観測機行列(N,L,G,E,Z,T,K,H)が演算されることを特徴とする上記1.に記載の方法。
3.複素固有値(λ)が、縦軸としての虚軸及び横軸としての実軸を有する座標系において考察され、減衰角度(β)が、虚軸と、固有値(λ)及び座標系の原点を通る直線との間の角度を表すこと、及び減衰角度(β)が、虚軸に最も近い固有値についてπ/4~3・π/4の範囲にあることを特徴とする上記1.又は2.に記載の方法。
4.観測器(UIO)によって推定される実効トルク(T^ E )の推定値がフィルタ(F)に供給され、フィルタは、推定される実効トルク(T^ E )を、ローパスフィルタ(LPF)において基本周波数(ω)より大きなあらかじめ設定された限界周波数でローパスフィルタリングすること、少なくとも1つの自己適合式の高調波フィルタ(LPVHn)において、推定される実効トルク(T^ E )の高調波振動成分(Hn)が基本周波数(ω)のn倍として検出され、少なくとも1つの高調波振動成分(Hn)が、ローパスフィルタリングされた推定されるトルク(T^ EF )に加算され、生じる合計が、観測器(UIO)によって提供される推定されるトルク(T^ E )から減算され、生じる差がローパスフィルタ(LPF)への入力として用いられること、及びローパスフィルタ(LPF)の出力が、フィルタされた推定される実効トルク(T^ EF )として出力されることを特徴とする上記1.~3.のいずれか1つに記載の方法。
5.少なくとも1つの高調波フィルタ(LPVHn)が、実効トルク(T^ E )の推定値のd成分及びq成分を用いる直交システムとして実施され、d成分が推定値(T^ E )と同位相であり、q成分がd成分に対して90°位相変化していること、高調波フィルタ(LPVHn)への入力とd成分の間の第1の伝達関数(G d )及び高調波フィルタ(LPVHn)への入力とq成分の間の第2の伝達関数(G q )が設定されること、並びに伝達関数(G d ,G q )のゲインファクタ(k d ,k q )が高調波周波数(ω n )の関数として算出されることを特徴とする上記4.に記載の方法。
6.d成分が高調波の振動成分(Hn)として用いられることを特徴とする上記5.に記載の方法。
7.ローパスフィルタ(LPF)から出力される、ローパスフィルタリングされた実効トルク(T^ EF )の推定値が、実際の基本周波数(ω)を算出するために、少なくとも1つの高調波フィルタ(LPVHn)において用いられることを特徴とする上記5.又は6.に記載の方法。
8.観測器(UIO)が第1及び第2の測定信号を処理し、実効トルク(T^ E )の推定値が第1のフィルタ(F1)でフィルタされ、第2の測定信号が第2のフィルタ(F2)でフィルタされ、第2のフィルタ(F2)のローパスフィルタ(LPF)から出力されるローパスフィルタリングされた第2の測定信号(MS F )が、第1のフィルタ(F1)において実際の基本周波数(ω)を検出するために第1のフィルタ(F1)の少なくとも1つの高調波フィルタ(LPVHn)において用いられることを特徴とする上記5.又は6.に記載の方法。
9.トルク発生装置(DE)及び/又はトルク低減部(DS)を制御する制御器(R)における、上記1.~8.のいずれか1つに記載の方法により推定される実効トルク(T^ E )の使用。
10.観測器(UIO)の固有値(λ)の実部が制御器(R)の固有値(λ R )の実部よりも小さいことを特徴とする上記9.に記載の使用。
11.連結要素(KE)を介してトルク低減部(DS)に結合されるトルク発生装置(DE)によって被試験物についての試験経過を実行する試験台であって、試験台(1)には試験台制御ユニット(5)が設けられており、試験台制御ユニットには、トルク発生装置(DE)又はトルク低減部(DS)を制御するために制御器(R)が実装されており、制御器(R)がトルク発生装置(DE)の内部の実効トルク(T E )を処理し、被試験物が動的なシステムとして
【0195】
【数63】
【0196】
又は
【0197】
【数64】
【0198】
の形態でモデル化されており、ここで、行列A,B,C,F,Mがシステム行列であり、システム行列は、実効トルク(T E )を含む動的なシステムのモデルに基づき得られ、ここで、uは入力ベクトルであり、yは出力ベクトルであり、xは動的なシステムの状態ベクトルであり、wは未知の入力としての実効トルク(T E )である、試験台において、
動的なシステムについて、観測器(UIO)が観測器行列(N,L,G,E,Z,T,K,H)及び未知の入力wをもって試験台制御ユニット(5)に実装されており、試験台(1)には測定センサが設けられており、測定センサは、入力ベクトルu及び/又は出力ベクトルyのノイズを有する少なくとも1つの測定信号を検出し、これに基づき、観測器誤差(
【0199】
【数65】
【0200】
)のダイナミクスを状態ベクトル(x)と推定される状態ベクトル(x^)との差として決定する行列(N,Z)が設定されることで、観測器(UIO)は、状態ベクトル(x^)及び実効トルク(T^ E )を未知の入力wとして推定し、その結果、行列(N,Z)の固有値(λ)がf2/5>λ>5・f1の範囲にあり、ここで、f1は少なくとも1つの測定信号の最大限期待される変化周波数であり、該少なくとも1つの測定信号におけるノイズが、周波数f2よりも大きな周波数帯に影響を与えることを特徴とする試験台。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7