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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】電極再調整ツール及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/30 20060101AFI20230814BHJP
   B23K 11/11 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
B23K11/30 350
B23K11/11
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020537240
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2019052094
(87)【国際公開番号】W WO2020068575
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】62/735,565
(32)【優先日】2018-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520238129
【氏名又は名称】ケイティーエイチ パーツ インダストリーズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギンドルズバーガー、エリック
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0211677(US,A1)
【文献】特開平04-339573(JP,A)
【文献】特開昭54-148151(JP,A)
【文献】特開2008-290120(JP,A)
【文献】特開2016-074027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/30
B23K 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部先端表面を備える上部電極及び/又は下部先端表面を備える下部電極を調整する方法であって、
前記上部先端表面及び前記下部先端表面の一方又は両方から材料を除去し、新しい上部先端表面及び/又は新しい下部先端表面を形成するステップと、
前記新しい上部先端表面及び/又は前記新しい下部先端表面の間にツールを配置するステップであって、前記ツールは、上面及び/又は下面を備え、前記上面及び/又は前記下面はテクスチャ処理された表面を備え、前記テクスチャ処理された表面は、前記上部電極及び/又は前記下部電極の前記新しい上部先端表面及び/又は前記新しい下部先端表面よりも硬い、前記ツールを配置するステップと、
前記上部電極の前記新しい上部先端表面が、前記上面の前記テクスチャ処理された表面に対して圧入され、前記下部電極の前記新しい下部先端表面が、前記下面の前記テクスチャ処理された表面に対して圧入され、それによって前記テクスチャ処理された表面のテクスチャを前記新しい上部先端表面及び/又は前記新しい下部先端表面にインプリントするように、前記ツールに対して前記上部電極及び/又は下部電極を圧入するステップと、
前記圧入動作を逆方向に戻して、前記上部電極及び/又は下部電極の間から前記ツールを取り外すステップと
を含み、
前記ツールの前記テクスチャ処理された表面は、前記ツールの前記上面及び前記下面の一方又は両方、並びに前記ツールの1つの側端に形成され、
前記テクスチャ処理された表面の表面積は、前記新しい上部先端表面及び/又は新しい下部先端表面の表面積よりも大きく、
前記ツールは略均一な厚みを有し、
前記上部電極及び/又は下部電極は、溶接機で支持され、前記上部電極及び/又は下部電極を圧入するステップは、前記溶接機を使用して、前記ツールに対して前記上部電極及び/又は下部電極を圧入するステップをさらに含む、方法。
【請求項2】
前記溶接機は、ロボット式又は固定式の溶接機である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記上部電極及び前記下部電極の一方又は両方を使用して、少なくとも1つの溶接工程を実行するステップと、
前記上部先端表面及び/又は前記下部先端表面に、前記テクスチャを再び圧入するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記上部電極及び前記下部電極の一方又は両方を使用して、多数の溶接工程を実行するステップと、
前記新しい上部先端表面及び/又は前記新しい下部先端表面の一方又は両方から材料を除去して、他の新しい上部先端表面及び他の新しい下部先端表面の一方又は両方を形成するステップと、
前記上部電極の前記他の新しい上部先端表面を、前記上面の前記テクスチャ処理された表面に対して圧入でき、且つ前記下部電極の前記他の新しい下部先端表面を、前記下面の前記テクスチャ処理された表面に対して圧入でき、それによって前記テクスチャ処理された表面の前記テクスチャを、前記他の新しい上部先端表面及び/又は前記他の新しい下部先端表面にインプリントするように、前記ツールを、前記他の新しい上部先端表面及び他の新しい平坦な溶接下部先端表面の間に配置するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記上部電極及び前記下部電極の一方又は両方を使用して、多数の溶接工程を実行するステップと、
前記新しい上部先端表面及び/又は前記新しい下部先端表面の一方又は両方から材料を除去して、他の新しい上部先端表面及び他の新しい下部先端表面の一方又は両方を形成するステップと、
前記上部電極の前記他の新しい上部先端表面を、前記上面の前記テクスチャ処理された表面に対して圧入でき、且つ前記下部電極の前記他の新しい下部先端表面を、前記下面の前記テクスチャ処理された表面に対して圧入でき、それによって前記テクスチャ処理された表面の前記テクスチャを、前記他の新しい上部先端表面及び/又は前記他の新しい下部先端表面にインプリントするように、前記ツールを、前記他の新しい上部先端表面及び前記他の新しい下部先端表面の間に配置するステップと
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記上部電極及び前記下部電極の一方又は両方を使用して、少なくとも1つの溶接工程を実行するステップと、
前記上部電極及び/又は前記下部電極の損傷に応じて、
前記新しい上部先端表面及び/又は前記新しい下部先端表面に、前記テクスチャを再び圧入すること、又は
前記新しい上部先端表面及び/又は前記新しい下部先端表面の一方又は両方から材料を除去して、他の新しい上部先端表面及び/又は他の新しい下部先端表面の一方又は両方を形成して、その後に、前記上部電極の前記他の新しい上部先端表面を、前記上面の前記テクスチャ処理された表面に対して圧入でき、且つ前記下部電極の前記他の新しい下部先端表面を、前記下面の前記テクスチャ処理された表面に対して圧入でき、それによって前記テクスチャ処理された表面の前記テクスチャを、前記他の新しい上部先端表面及び前記他の新しい下部先端表面にインプリントするように、前記ツールを、前記他の新しい上部先端表面及び前記他の新しい下部先端表面の間に配置すること
のいずれかを行うステップと
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記新しい上部先端表面及び/又は前記新しい下部先端表面は平坦な溶接面であり、前記ツールがプレートであり、前記平坦な溶接面に対応する形状を有する前記上面及び/又は前記下面がテクスチャ処理された表面を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上部電極及び/又は下部電極を再調整する方法であって、
上部電極先端面を露出させるように前記上部電極を成形し、下部電極先端面を露出させるように前記下部電極を成形するステップと、
前記上部電極先端面及び前記下部電極先端面の間にツールを配置するステップであって、前記ツールは、前記上部及び下部電極先端面よりも硬いテクスチャ処理された表面をそれぞれが具備する、上側ツール表面及び下側ツール表面を備える、ステップと、
前記上部電極先端面が、前記上側ツール表面の前記テクスチャ処理された表面に対して押圧され、前記下部電極先端面が、前記下側ツール表面の前記テクスチャ処理された表面に対して押圧されるように、前記上部及び下部電極の間で前記ツールを圧入するステップと、
前記上部電極先端面及び下部電極先端面の材料を変位させ、前記上側及び下側ツール表面それぞれの前記テクスチャ処理された表面に対応するテクスチャを、前記上部及び下部電極先端面上に形成するステップと
を含み、
前記テクスチャ処理された表面は、前記ツールの側端に配置され、
前記上側ツール表面の前記テクスチャ処理された表面の表面積は、前記上部電極先端面の表面積よりも大きく、
前記下側ツール表面の前記テクスチャ処理された表面の表面積は、前記下部電極先端面の表面積よりも大きく、
前記ツールは略均一な厚みを有し、
前記上部電極及び/又は下部電極は、溶接機で支持され、前記上部電極及び/又は下部電極を圧入するステップは、前記溶接機を使用して、前記ツールに対して前記上部電極及び下部電極を圧入するステップをさらに含む、方法。
【請求項9】
前記押圧動作を逆方向に戻して、前記上部電極先端面及び/又は下部電極先端面の間から前記ツールを取り外すステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、上部電極先端面を露出させるように前記上部電極を成形するステップ、及び下部電極先端面を露出させるように下部電極を成形するステップの前に、
前記上部又は下部電極の一方又は両方を使用して、多数の溶接工程を実行するステップ
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
第1の電極の先端面を再調整する方法であって、
前記第1の電極の新しい先端面を露出させるために、前記第1の電極の前記先端面を取り除くステップと、
前記第1の電極の前記新しい先端面に近接してツールを配置するステップであって、前記ツールは、前記新しい先端面よりも硬いテクスチャ処理された表面を具備する、少なくとも第1のツール表面を備える、ステップと、
前記新しい先端面を、前記第1のツール表面の前記テクスチャ処理された表面に対して圧入するステップと、
前記テクスチャ処理された表面のテクスチャを、前記第1の電極の前記新しい先端面に圧入するステップと
を含み、
前記テクスチャ処理された表面は、前記ツールの側端に配置され、
記テクスチャ処理された表面の表面積は、前記第1の電極の前記新しい先端面の表面積よりも大きく、
前記ツールは略均一な厚みを有し、
前記第1の電極は、溶接機で支持され、前記新しい先端面を圧入するステップは、前記溶接機を使用して、前記第1のツール表面に対して前記第1の電極を圧入するステップをさらに含む、方法。
【請求項12】
前記第1の電極の前記先端面を取り除くステップの前に、前記第1の電極を使用して多数の溶接工程を実行するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の電極の新しい先端面を露出させるために、前記第1の電極の前記先端面を取り除くステップは、第2の電極の第2の新しい先端面を露出させるために、前記第2の電極の第2の先端面を取り除くステップをさらに含み、
前記第1の電極の前記新しい先端面に近接して前記ツールを配置するステップは、前記第2の電極の前記第2の新しい先端面に近接して前記ツールを配置するステップであって、前記ツールは、前記第2の新しい先端面よりも硬い、テクスチャ処理された表面を具備する第2のツール表面を備える、ステップをさらに含み、
前記新しい先端面を、前記第1のツール表面の前記テクスチャ処理された表面に対して押圧するステップは、前記第2の新しい先端面を、前記第2のツール表面の前記テクスチャ処理された表面に対して押圧するステップをさらに含み、
前記テクスチャ処理された表面の前記テクスチャを、前記第1の電極の前記新しい先端面へ圧入するステップは、前記第2のツール表面の前記テクスチャ処理された表面のテクスチャを、前記第2の電極の前記新しい第2の先端面にインプリントするステップをさらに含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記圧入動作を逆方向に戻して、前記第1及び第2の電極先端面の間から前記ツールを取り外すステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
抵抗スポット溶接は、被加工物の接触する金属表面の点が、電流に対する抵抗によって得られる熱で接合される(すなわち、一体に溶接される)プロセスである。
【背景技術】
【0002】
抵抗スポット溶接では、被加工物を同時に一緒に締め付けながら、一対の電極が電流をスポットに集中させる。被加工物には、溶接プロセスの際に、電極がかける圧力下で一緒に保持される金属シートが含まれ得る。スポットを通して電流を流すと、金属が溶融し、通常、再凝固後に圧力点で、境界面に溶融したナゲットが形成されることになる。この再凝固した材料は、2つの材料を一体に接合するのに役立つ。
【0003】
抵抗スポット溶接は、いくつかの用途、特に自動組立ライン用途で利用される、経済的且つ効率的な接合プロセスであり得る。抵抗スポット溶接は、自動車業界で、自動車の車体及び大型部品の組立てに利用される主な接合プロセスであり、また家具及び家庭用品などの製造にも広く使用される。抵抗スポット溶接は、短時間で多数のスポット溶接を生成できるので、効率的である。抵抗スポット溶接により、たとえば、金属シートの残りの部分を過度に加熱することなく、金属シートの局部エリアで溶接を行うことができる。ただし、一部の量産用途では、電極の寿命及び摩耗した電極を交換するための機器の停止時間が、重要な考慮すべき点である。
【0004】
抵抗スポット溶接では、電極表面と板金との間に電気抵抗がある。この抵抗の大きさは、(アルミニウムなどの材料を溶接する間に)被加工物に成長する酸化物層が存在することによって影響を受け、次に境界面での接触抵抗が増加する。これにより、発熱量が増加し、時間と共に電極の劣化及び摩耗が増す。さらに、電極抵抗によって、所望のナゲットを実現させるために、電流を増加させる必要があり得る。したがって、電極抵抗は、溶接間で、様々な溶接場所に存在する酸化物の量に応じて変わる可能性があり、電極先端は、連続する各溶接の後に継続的に劣化し得るので、こうしたばらつきが溶接品質に影響を与える。
【0005】
抵抗スポット溶接用途で利用されるいくつかの電極は、テクスチャ処理又は粗面化された電極先端を備える。こうしたテクスチャ処理又は粗面化された電極先端は、酸化物層を突き破って被加工物と直接接触し、それによって電極抵抗を低減する。テクスチャ処理又は粗面化される電極先端は、たとえば2次カッタ、研磨ブラスタなどを使用して、溶接電極先端に凹凸、又は様々な形体、テクスチャ、若しくは形状を研削又は切削することによって形成され得る。ただし、こうした従来のテクスチャ処理又は粗面化プロセスは、追加の機器を使用することで、新しい機械装置及び運用コストが追加されるばかりでなく、溶接機がオフラインになる(すなわち、スポット溶接しない)停止時間がより一層長くなり、溶接あたりのコストにさらに影響を与えるので、代償が大きい。
【0006】
加えて、電極先端と板金との間の電流及び冶金学的相互作用により、時間の経過と共に電極が劣化することになる。高品質の溶接を維持するために、劣化した電極を、新しい電極に交換するか、又は電極先端を再切断することにより「仕上げる(dress)」。どちらのオプションも代償が大きく、電極を交換又は仕上げるのに溶接機をオフラインにする必要があるため、生産が中断される。一部の用途では、わずか数十回の溶接後に電極先端を仕上げる必要があり、電極の交換は、かかる用途では法外なコストになる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、電極の劣化は溶接あたりのコストに大きな影響を与え、プロセスをより効率的且つ安全にするために、抵抗スポット溶接の方法及びデバイスの進歩及び改善が常に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の図は、本開示の特定の態様を示すために含まれており、排他的な実施例と見なされるべきではない。開示された主題は、この開示の範囲から逸脱することなく、形態及び機能においてかなりの修正、変更、組合せ、及び同等物が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本開示の原理の一部又はすべてによる、例示的な溶接工程の際の溶接機の側面図である。
図1B】溶接ナゲットの形成を示す、金属シートの断面を撮った光学顕微鏡画像の図である。
図2A】本主題による、溶接機の電極を粗面化するか又は再調整するために利用することができる、例示的なツールの等角上面図である。
図2B】本主題による、溶接機の電極を粗面化するか又は再調整するために利用することができる、例示的なツールの等角上面図である。
図3】切断線3-3に沿った、図2A図2Bのツールの例示的な側断面図である。
図4】本主題による、例示的な粗面化するか又は再調整する工程の際の、図1Aの溶接機及び図2図3のツールの側面図である。
図5A図4に示すようにテクスチャ処理され得る、滑らかな先端を備える例示的な電極の等角図である。
図5B図4に示すように、例示的な電極のテクスチャが電極の先端にインプリントされた後の、図1Aに示す溶接工程で利用され得る、図5Aの電極の等角図である。
図6】本開示の原理の一部又はすべてを組み込むことができる、電極先端に電極のテクスチャを形成する例示的な方法の流れ図である。
図7】本主題による、図6による方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、抵抗スポット溶接機器及び使用方法に関し、より詳細には、溶接電極先端のテクスチャ処理された表面、電極先端のテクスチャ処理された表面を作り出すための、溶接電極先端再調整ツール、及びその使用方法に関する。
【0011】
本明細書で論じる実施例は、溶接機の電極先端を仕上げるツールの改良について説明する。本明細書に記載するいくつかのツールの実施例は、上側及び下側ツール表面を具備する本体を備え、テクスチャ処理される領域又は表面が、少なくとも上側又は下側ツール表面に配置される。上側及び下側ツール表面の一方又は両方のテクスチャ処理テクスチャ処理された表面は、複数の凹凸、ローレットのパターン、又は他の形体を含むテクスチャを有することができる。実例の工程では、ツールは、電極先端間に配置され、各電極先端は、ツールのテクスチャ処理される表面に近接して向きを合わされるか又は整列され、溶接機が作動されて、電極先端をそれぞれのテクスチャ処理される表面に押圧するか又は圧入し(squeeze)、電極先端の材料を変位又は移動させ、ツールのテクスチャを電極先端にインプリントする。
【0012】
本明細書に開示する実施例はまた、ツールを使用して電極先端にテクスチャを加える方法を説明する。いくつかの実施例では、電極先端を仕上げる方法を説明する。かかる方法には、テクスチャ処理された表面のテクスチャを電極先端にインプリントするために、電極先端を上側及び下側ツール表面のテクスチャ処理された表面に対して押圧するステップが含まれ得る。他の実施例では、電極を再調整する方法を説明する。かかる他の実施例には、摩耗していない電極材料を有する新しい電極先端を提供するために電極先端を成形するステップと、次いで、テクスチャ処理された表面のテクスチャを新しい電極先端にインプリントするために、新しい電極先端を上側及び下側ツール表面のテクスチャ処理された表面に対して押圧するステップとが含まれ得る。
【0013】
現在開示している実施例は、酸化物層を機械的に突き破り、電極先端と被加工物表面との間の電極抵抗を低減するのに役立つ集中圧力点を提供する。電極先端にインプリントされたパターン又はテクスチャは、電極抵抗を下げ、それによって境界面で発生する熱を最小限にすることにより、電極に対するストレスを最小限に抑えるのに役立つ。これによって次に、電極先端を仕上げる頻度が減少し、電極先端の寿命が延び、さもなければ電極先端の仕上げに費やされた可能性がある時間が節約され、さもなければ溶接電極を頻繁に交換するときに費やされた可能性があるコストが節約されるであろう。加えて、現在開示している実施例を利用して、同じ材料及び/又は異種の材料の2つ以上の被加工物を接合することができる。異なる材料を接合する用途では、現在開示している実施例はまた、たとえば、電極先端の仕上げ頻度を減らし、電極先端の寿命を延ばし、さもなければ電極先端の仕上げに費やされた可能性がある時間を節約し、さもなければ溶接電極を頻繁に交換するときに費やされた可能性があるコストを節約することにより、(上記で論じた利点に加えて)接合品質にも影響を及ぼし得る。
【0014】
従来型のスポット溶接ツール及び方法とは対照的に、現在開示している実施例は、溶接機の力を使用して(たとえば、溶接機のサーボ・モータ、空気圧アクチュエータなどを使って)パターンを電極先端の表面に圧入することにより、パターン又はテクスチャを電極先端にインプリントすることができる。このようにして溶接機を利用すると、追加の機器を利用する必要がなくなり、溶接機の停止時間が短縮される。加えて、現在開示している実施例では、パターンを、(既存の市場の解決策と比較して)溶接ナゲットに著しいぎざぎざを残すほど十分に深くなく、電極先端の表面に圧入する。ぎざぎざは、ジョイントの破損につながることがある亀裂の開始点として作用する可能性があるので、所与のプロジェクトの該当する溶接規格の下では受け入れられ得ない。さらに、現在開示している実施例では、均一な材料の流れを有し、所与のプロジェクトでの強度及び内部品質要件を満たすナゲットを形成する。現在開示している実施例における集中接触点は、金属シート表面の酸化物層を機械的に破壊し、それによって電流が材料を通って均等に流れることを可能にし、より均質な溶接ナゲットを提供し(該当する場合は常に)、電極先端の寿命を改善する。また、酸化物層の破壊により、表面で発生する熱が減少し、次に電極先端の摩耗が減少し、電極の寿命が延びる。
【0015】
図1Aは、本主題による例示的な溶接機100を示す。溶接機100には、様々な種類のロボット式又は非ロボット式溶接装置が含まれてもよく、概して、パターンを電極先端の所望の深さまで施すのに必要な最小圧入力を加えることができる、任意の種類のウェルダが含まれ得る。いくつかの実例では、溶接機100は、サーボ駆動のウェルダであるが、一方他の実例では、溶接機100は、空気圧駆動のウェルダである。しかし、本開示から逸脱することなく、当技術分野で知られている他の種類のウェルダも利用できる。
【0016】
図示のように、溶接機100は、上部電極先端112を具備する上部電極110と、下部電極先端122を具備する下部電極120とを備える。上部及び下部電極先端112、122はそれぞれ、上部及び下部電極110、120の溶接面であり、これ以降で説明するように、接合されるべき金属シート又は他の被加工物と接触する。ここで、上部及び下部電極110、120はそれぞれ、電極先端112、122を画定する均一な半径及び円形の端部又は面を有する、円筒形の本体として示している。図示のように、電極先端112、122は、上部及び下部電極110、120の円形の面の半径で画定される円形の溶接面である。図示する実施例では、上部及び下部電極110、120は円筒形であるが、他の実施例では、電極110、120は、他の任意の形状又はさらに形状の組合せで構成されてもよい。同様に、図示する実施例では、電極先端112、122は平坦な溶接面であるが、他の実施例では、電極先端112、122は、内側又は外側に突出する湾曲又はパターンが設けられてもよい。
【0017】
上部及び下部電極110、120の一方又は両方には、様々な他の幾何形状が含まれ得る。たとえば、上部及び下部電極110、120の一方又は両方は、それぞれ、円錐台形状の本体であってもよく、それにより電極先端112、122は、円錐台形状の本体の切頭端部の円形の溶接面であり、切頭端部の切頭された端部の半径で画定される。さらに他の実施例では、上部電極110の幾何形状は、下部電極120の幾何形状とは異なる。しかし、本開示から逸脱することなく、上部及び下部電極110、120には、さらに別の幾何学形状が含まれ得る。電極110、120の幾何形状及び電極先端112、122によって画定される溶接面の形状に関係なく、電極先端112、122は、本開示から逸脱することなく、平坦な溶接面として、又は内側若しくは外側に突出する湾曲を備えて、提供され得る。いくつかの実例では、上部及び下部電極先端112、122は、同じ又は異なる面直径及び湾曲部半径を有することができる。いくつかの実例では、上部及び下部電極先端112、122は、本質的に同様に凹状であり得る。
【0018】
例示的なスポット溶接工程の際に、上部電極110の上部電極先端112は、適切な負荷Lで上側の金属部品130に対して押圧され、一方、下部電極120の下部電極先端122は(上部電極110と同時に)、適切な負荷Lで下側の金属部品140に対して(上部電極先端112と同時に)押圧される。図示のように、上部及び下部電極先端112、122は、それぞれ、上側の金属部品130の外面132及び下側の金属部品140の外面142に同時に接触する。次いで、溶接機100は、上部電極110と下部電極120との間に、上側及び下側の金属部品130、140の境界面をわたって適切な電流を流し、溶融及び再凝固後に溶接ナゲット(図1B参照)を作り出す。溶接ナゲットは、上側及び下側の金属部品130、140の内部の場所に形成され、したがって図1Aの視点からは見えないが、ナゲットが金属部品内のどのあたりに形成されるかを、上側及び下側の金属部品130、140の外側から示すために、溶接ナゲット領域150を図1A上で特定している。図1Bは、図1Aの溶接ナゲット領域150に対応する金属部品内の場所における、上側及び下側の金属部品130、140内の溶接ナゲット150の形成を示す断面での光学顕微鏡画像である。ただし、従来の溶接ナゲットが形成されないいくつかの適用例もあり得るが、上側及び下側の金属部品130、140を接合するボンディングの仕組みが、何か異なる可能性がある。上部及び下部電極先端112、122は、特別の溶接用途向けに設計された、特定の硬度及び輪郭を有することができる。
【0019】
酸化物層は、上部電極110と下部電極112との間で押圧されることに応答して、上側及び下側の金属部分130、140に形成され得る。したがって、上部及び下部電極先端112、122の一方又は両方は、上側及び下側の金属部品130、140の外面132、142の酸化物層を貫通するために、テクスチャ処理又は粗面化された溶接面(図5参照)を備えることができる。テクスチャ処理又は粗面化された表面は、上部及び下部電極110、120と上側及び下側の金属部品130、140との間に電流を流すためのより多くの接触点を作り出することによって、電極抵抗を減らすために、酸化物層を機械的に突き破るのに十分鋭利であり得る複数の形体を有することができる。テクスチャ処理又は粗面化された表面はまた、金属部品130、140の外面132、142にわたって電気エネルギーを分散し、それにより、金属部品の表面温度を低下させることによって、熱密度を大幅に降下させる。加えて、テクスチャ処理又は粗面化された表面は、上部及び下部電極110、120と上側及び下側の金属部品130、140との間に機械的干渉を与え、金属部品130、140の外面132、142での、電極先端112、122の意図しない相対移動(すなわち、電極の横滑り)をなくす又は低減することができる。上部及び下部電極先端112、122に施されるテクスチャ処理又は粗面化された表面は、何度かの溶接後に劣化する可能性があり、以下に説明するように、上部及び下部電極先端112、122を定期的に、再調整する必要がある。
【0020】
図2A図2B、及び図3は、本開示の1つ又は複数の実施例による例示的な圧入ブロック又はツール200(これ以降、ツール200)を示す。特に、図2A図2Bは、ツール200の2つの異なる例示的な形態の等角上面図を示し、図3は、図2A図2Bの切断線3-3に沿ったツール200の側断面を示す。以下に説明するように、ツール200は、電極先端112、122の溶接面を粗面化又はテクスチャ処理し、必要に応じて何度かの溶接後に溶接面を再調整するために利用できる。
【0021】
ツール200は、上面220及び下面230を具備するプレート210で作製される(図3参照)。ツール200はまた、ツール200が、電極110、120の一方をテクスチャ処理又は粗面化するために利用されるべきか、又は電極110、120の両方をテクスチャ処理又は粗面化するために利用されるべきかに応じて、上面220及び下面230の一方又は両方に形成された粗いテクスチャ又は凹凸のパターンを有することができる。図示する実施例では、ツール200の上面220及び下面230はそれぞれ、テクスチャ処理された表面240を備える。このようにして、上部及び下部電極先端112、122は、同時にテクスチャ処理又は粗面化され得る。別法として、テクスチャ処理された表面240は、ツール200が単一のテクスチャ又は凹凸のパターンを有するように、上面220又は下面230のどちらに設けられてもよい。
【0022】
テクスチャ処理された表面240は、様々な形態を有することができ、任意の寸法の電極に施すことができる。たとえば、テクスチャ処理された表面240は、雄型の(隆起した)又は雌型の(窪んだ)形体のパターン250を有することができ、該形体には、それに限定されるものではないが、歯、ローレット、突起、窪み、隆起部、凹凸、「クロスハッチ」、平行線又は非平行の線、星型、三角形、六角形などが含まれ得る。したがって、パターン250には、線及び/又は様々な幾何学的形状を有し、雄又は雌方向であり、平行又は非平行、同心状又は非同心状、且つ/或いは重複している又は重複していない形態で配置される、様々なテクスチャ又は形体が含まれ得る。図示する実施例では、パターン250は、図3に示すように、複数の突出した又は窪んだピラミッドを有する。しかし、パターン250は、様々に構成されてもよい。たとえば、パターン250は、同じ又は異なる向きに配置された、より多い又はより少ない歯を有することができる。加えて、パターン250は、対称的又は非対称的であり得る。さらに、パターン250は、テクスチャ処理された表面240に規則的に分散されてもよく、又はそうではなくて、テクスチャ処理された表面240に不規則に分散されてもよい。理解されるように、ツール200のテクスチャ処理された表面240及びその上のパターン250は、本開示から逸脱することなく、様々なプロセスによって形成され得る。たとえば、テクスチャ処理された表面240及びパターン250は、圧入、機械加工、プレス、成形、ローレット加工、打抜き加工、エッチング、鍛造、切削、ローリング、又は当技術分野で知られる他のインプリント・プロセスによって形成され得る。
【0023】
テクスチャ処理された表面240の形態に関係なく、パターン250は、材料表面の酸化物層を機械的に破壊することが可能な粗面の平均高さ(又は深さ)を有することができる。加えて、パターン250は、電極110、120の硬度よりも高い、特に、電極先端112、122の硬度よりも高い硬度を有することができる。一実施例では、ツール200は硬化工具鋼で作製され、電極先端112、122は銅合金で作製される。しかし、ツール200は、用途及び/又は電極先端112、122の材料に応じて、他の様々な材料で作製されてもよい。概ね、ツール200は、電極表面にパターンを作り出すのに十分な硬さの、任意の材料で作製され得る。さらに、ツール200は、本開示から逸脱することなく、様々な厚さを有し得ることを理解されたい。たとえば、図2A図2Bに示すツール200は、12ミリメートルの厚さを有し得る。しかし、ツール200は、本開示から逸脱することなく、他の厚さを有してもよい。
【0024】
様々なプロセスを利用して、表面の形態に関係なく、テクスチャ処理された表面240を電極先端112、122の表面にインプリントできる。図4は、溶接機100が、上部電極110と下部電極120との間にあるツール200をそれぞれ「圧入する」と、ツール200のテクスチャ処理された表面240が電極先端112、122にインプリントされる、例示的な実施例を示す。具体的には、電極先端112、122は、それぞれ、上側及び下側220、230のテクスチャ処理された表面240に近接して置かれ、溶接機100は、上部及び下部電極110、120を(負荷Lで)、ツール200の(それぞれの)テクスチャ処理された表面240内に押圧する。負荷Lは、溶接プロセスの際に、溶接機100のサーボ・モータ又は電極110、120を作動させる他の任意の仕組みによって、上部及び下部電極110、120に加えることができるが、負荷Lは、本開示から逸脱することなく、様々に加えられ得る。このようにして、理論に縛られることなく、電極先端112、122の材料よりも硬い材料で作製されるツール200を圧縮することにより、テクスチャ処理された表面240(たとえば、図3のパターン250)の凹凸が、電極先端112、122にインプリントされ、それにより、テクスチャ処理された表面240をミラーリングした圧痕が電極先端に生成される。したがって、雄型の形態で配置されたパターン250を有するテクスチャ処理された表面240は、電極先端の材料を変位させることによって電極先端112、122を据込みし(upset)、ツール200のテクスチャ処理された表面240を「ミラーリングした」複数の雌型のパターンによる一パターンである圧痕を形成することになる。理解されるように、テクスチャ処理された表面は、場合によっては、図3に示すもの以外のどんな形状も有することができる。本明細書で使用される用語「ミラー」は、第2の画像又は物体の忠実な表現である第1の画像又は物体を指し、ここで第1の画像又は物体は、第2と同一の形であるが、ミラーと同様に構造が逆になっている。
【0025】
図4に示すように、電極先端112、122は、上部及び下部電極110、120を溶接機100から取り外す必要なしに、同時にテクスチャ処理することができる。したがって、ツール200は、上部及び下部電極110、120を溶接機100から取り外すことなく上部及び下部電極先端112、122に接近できるように、適切にサイズ決めされ得る。しかし、他の実施例では、ツール200を利用して、溶接機100から取り外された電極110、120の一方又は両方を、同時に又は一度に1つずつテクスチャ処理することができる。さらにツール200は、操作者によって、電極先端112、122を手動でテクスチャ処理するよう使用されてもよく、又はツール200は、電極先端112、122の自動粗面化又はテクスチャ処理のためのロボット式スポット溶接用途に使用されてもよい。
【0026】
ロボット式スポット溶接用途では、上部及び下部電極110、120をツール200のところに持ってきて、電極先端112及び122のテクスチャ処理は、上記と同じやり方で実行され得る。また、こうした実施例では、溶接機200が、何度かの溶接を実行した後に、必要に応じて上部及び下部電極110、120を移動してツール200と係合させることができるように、ツール200を溶接機200に近接して置くことができる。溶接機100が組立ラインのセル内に配設されたロボット溶接機(図示せず)である一実例では、ツール200は、セル内の、上部及び下部電極110、120を支持する溶接機200のロボット式アーム(図示せず)の届く範囲内にある場所に固定され得る(たとえば、テーブル又は他の構造体へ締め付けられる)。この実例では、溶接機200は、最初にロボット式アーム並びにそれに連結された上部及び下部電極110、120を、上部及び下部電極先端112、122がそれぞれ、テクスチャ処理された表面240がその上に形成された、ツール200の上部及び下部表面220、230に近接して置かれる位置まで、関節運動させる(articulate)ことができる。次いで、溶接機200を作動させて、たとえば、上部及び下部電極110、120に負荷Lを加えて(たとえば、溶接機のサーボ・モータを作動させることによって)、それぞれを、ツール200の上面及び下面220、230に向けて駆動し、次いで、テクスチャ処理された表面240が電極先端112、122にインプリント(又は「圧入」)されるように、ツール200を上部電極110と下部電極120との間で圧縮することで、電極先端112、122にテクスチャを加えることができる。電極先端112、122がテクスチャ処理されると、溶接機100の押圧動作が逆方向に戻され、ツール200が上部電極110と下部電極120との間から取り外される。上部電極110のみがテクスチャ処理を必要とする場合、下部電極120の代わりに押さえ面(図示せず)を使用することができ、その逆も可能である。
【0027】
図5Aに示すように、上部又は下部電極110、120は、本明細書で説明するツール200を使ってテクスチャ処理され得る。図5Aに示す上部又は下部電極110、120の上部又は下部電極先端112、122は、滑らかであり、テクスチャを有しない。図5Bは、本明細書で開示する1つ又は複数の実施例による、図5Aの電極先端112、122に圧入され得る、例示的な電極のテクスチャ500を示す。図5Bは、テクスチャ500が複数のピラミッド状突起を備える実例を示す。しかし、テクスチャ500は、様々に構成され、ツール200のテクスチャ処理された表面240の凹凸の配置に応じて、様々な形体又はパターンを有することができる。図3図4を参照しながら論じたように、ウェルダ又は機械の操作者は、ツール200を利用して、電極先端間にツール200を配置することにより、上部電極先端112及び/又は下部電極先端122にテクスチャ500をインプリントし、次いで十分な力(たとえば、負荷L)で上部及び下部電極110、120をツール200のテクスチャ処理された表面240に対して押圧するか又は「圧入」し、電極先端112、122の材料を変位させ、それにより電極先端上にテクスチャを作り出すことができる。
【0028】
図6図7は、1つ又は複数の実施例による、1つ又は複数の電極先端(たとえば、電極先端112、122)にテクスチャ(たとえば、電極のテクスチャ500)を加えるために利用できる、様々な方法を表す図である。
【0029】
具体的には、図6は、1つ又は複数の実施例による、テクスチャ処理する方法600の流れ図であり、電極先端にテクスチャを施すために利用されるステップを示す。ここで、テクスチャ処理する方法600には、テクスチャ処理されていない電極先端を具備する1つ又は複数の電極を準備する第1のステップ(610)が含まれる。次いで、テクスチャ処理する方法600には、電極先端を成形する第2のステップ(620)と、その後に続く、電極のテクスチャを電極先端内に圧入する第3のステップ(630)とが含まれる。電極のテクスチャが電極先端内に圧入されると、任意選択の第4のステップ(640)には、1つ又は複数の被加工物に少なくとも1回の溶接工程を実行することが含まれる。したがって、テクスチャ処理する方法600には、以下のステップが含まれ得る。テクスチャ処理されていない電極を準備するステップ610と、電極先端を成形するステップ620と、電極のテクスチャをテクスチャ処理されていない電極先端に圧入するステップ630と、次いで、テクスチャ処理された電極を使用して1つ又は複数の被加工物を溶接するステップ640。1回又は複数回の溶接工程の際に電極を使用すると、電極先端の残留物(たとえば、酸化物層)の蓄積又は堆積を含む、電極先端の摩耗及び劣化が生じるであろう。電極先端が使用後に深刻な劣化又は摩耗を示す場合、電極先端は、摩耗した材料の層を取り除くために成形することができ(620)、テクスチャを電極先端に圧入することができ(630)、次いで1回又は複数回の溶接を実行することができる(640)。電極先端が使用後に軽度の劣化又は摩耗を示す場合、成形する(620)ことなくテクスチャを電極先端に圧入することができ(630)、次いで1回又は複数回の溶接を実行することができる(640)。
【0030】
この実例では、テクスチャ処理する方法600は、テクスチャ処理されていない電極先端に関して説明している。かかるテクスチャ処理されていない電極先端は、どんな事前のテクスチャ処理もない、新しい電極先端を含んでもよく、又はかかるテクスチャ処理されていない電極先端は、以前にテクスチャ処理された可能性のある使用済み電極先端を含んでもよい。たとえば、テクスチャ処理されていない電極先端は、以前にテクスチャ処理され、次いで使用された可能性があるが、かかるその後の使用により、電極先端が、被覆する、マスキングする、又はさもなければ以前に形成されたどんなテクスチャ又は圧力点の外観及び/若しくは機能をも実質的に取り除くのに十分なほど、劣化及び/又は摩耗している。したがって、電極先端を成形する第2のステップ620は、摩耗及び/又は劣化した電極先端に実行することができ、それによって材料のスライス(たとえば、劣化及び/又は摩耗を含む材料のスライス)が電極先端の遠位端から取り除かれ、きれいな電極先端が提供される。このきれいな電極先端は、以前に溶接工程の際に露出されなかった(すなわち、成形ステップ620の際に取り除かれた材料のスライスで覆われていた)材料で形成されるので、劣化又は摩耗がほとんど示さないか又はまったく示さない可能性がある。しかし、他の実例では、成形ステップ620を省略してもよく、その結果電極のテクスチャを電極先端内に圧入する第3のステップ630が、電極先端のきれいな新しい材料を提供するための、どんな直前の材料除去工程も経ていない電極先端に実行される。たとえば、電極先端を成形する第2のステップ620は、第1のステップ610の際に準備される電極先端が真新しい場合には省略できる。
【0031】
テクスチャ処理する方法600の圧入ステップ630(すなわち、第3のステップ)には、図1図5を参照しながら上記で説明したように、いくつかのサブステップがさらに含まれ得る。たとえば、図7は、図6のテクスチャ処理する方法600の実施例を示しており、方法600の圧入ステップ630には、追加のサブステップが含まれる。ここで、圧入ステップ630には、以下のステップ(又はサブステップ)が含まれる。電極をツールの両側に位置決めする(又はツールを電極先端間に位置決めする)ステップ710と、ツールの両側それぞれに配設されたテクスチャ処理される表面に最も近い場所に、電極先端を置くステップ720と、電極を互いに向かって移動させるステップ730と、電極先端でツールのテクスチャ処理される表面を圧入するステップ740と、電極先端をツールのテクスチャ処理された表面から離すために、電極を逆方向に動かすか、又は電極を互いとは反対側へ移動させるステップ750と、次いで、ツールから離れた電極を再度位置決めする(又は電極先端間からツールを取り外す)ステップ760。上記のように、ロボット式溶接機器を利用することができる。かかる実施例では、ステップの一部、たとえば、位置決めするステップ710、置くステップ720、及び再度位置決めするステップ760などは、ロボット溶接アームを使って実行され得る。しかし、他の実施例では、これらのステップ及び他の任意のステップも、ロボット機器なしで、手動で実行されてもよい。
【0032】
何度かの溶接を実行した後、電極先端に形成された電極のテクスチャは劣化し、摩耗するであろう。高品質の溶接を維持するために、時々、電極を再調整して、電極先端に作りたての又は新しい電極のテクスチャを提供することができる。本明細書で説明する電極のテクスチャを有する電極は、再調整することなしに、多数の溶接工程を実行することを示してきた。
【0033】
前述のように、成形するステップ620は、摩耗又は劣化した電極のテクスチャを含み得る、摩耗又は劣化した電極先端の少なくとも一部を取り除くステップを含む。いくつかの実施例では、チップ・ドレッサ又は他の何らかの方法を使用して、電極先端の薄いスライスを取り除くことができる。チップ・ドレッサを利用することは、電極先端の表面にパターンを圧入する前に電極先端を整列させるという利点をもたらすことになる。さらに、チップ・ドレッサは、開示した方法で許容される最大回数の溶接が実行された後に生じ得る、電極先端表面からのどんな酸化物の蓄積又は孔食をも洗浄するというさらなる利点をもたらす。
【0034】
電極先端を成形するとき、電極は、溶接機から取り外されてもよく、又はパターンを圧入する際に溶接機内にとどまってもよい。たとえば、電極を支持する溶接機のロボット式アームは、電極を、ツールに最も近い場所に関節運動させることができ、次いで、上記に詳述したように、電極先端は、一度に1つずつ又は同時にテクスチャ処理され得る。
【0035】
したがって、開示したシステム及び方法は、言及した目的及び利点、並びに開示したシステム及び方法の中に固有のものを達成するように、適切に構成される。本開示の教示は、本明細書の教示の恩恵を受ける当業者には明らかな、異なるが同等のやり方で修正及び実施できるので、上記で開示した特定の実施例は、単なる例示にすぎない。さらに、以下の特許請求の範囲に記載されている場合を除いて、本明細書に示す構造又は設計の詳細に対して、制限することを意図しない。したがって、上記で開示した特定の例示的な実施例は、変更、組合せ、又は修正することができ、かかるすべての変形例は、本開示の範囲内であると考えられることは明らかである。本明細書に例示的に開示しているシステム及び方法は、本明細書に具体的に開示していないどの要素、及び/又は本明細書に開示したどの任意選択の要素がない場合でも、好適に実施できる。構成物及び方法が、様々な構成要素及びステップを「備える」「含む」又は「有する」の用語で説明されているが、構成物及び方法はまた、様々な構成要素及びステップで「本質的に構成される」又は「構成される」場合もある。上記に開示するすべての数値及び範囲は、ある程度異なる場合がある。下限及び上限を伴う数値範囲について開示する場合は常に、その範囲内に入るどの数値及びどの含まれる範囲も具体的に開示している。特に、本明細書に開示するすべての値の範囲(「約aから約bまで」、又は同じことであるが「およそaからbまで」、又は同じことであるが「およそa~b」の形式の)は、値のより広い範囲内に包含されるすべての数値及び範囲を示すと理解されたい。また、特許請求の範囲の用語は、特許権者が別段明示的且つ明確に定義していない限り、平易で通常の意味を持つ。さらに、特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」又は「an」は、本明細書では、不定冠詞が導く要素の1つ又は複数を意味するように定義されている。この明細書及び本明細書に援用され得る1つ又は複数の特許又は他の文書において、単語又は用語の使用法にどんな矛盾がある場合も、この明細書と一貫する定義が採用されるべきである。
【0036】
本明細書で使用する、一連の項目の前にある「少なくとも1つの」という句は、項目のいずれかを区切る用語「及び」若しくは「又は」を伴って、リストの各部材(すなわち各項目)ではなく、リスト全体を修飾する。「少なくとも1つの」という句は、項目のいずれか1つの少なくとも1つ、項目の任意の組合せの少なくとも1つ、及び/又はそれぞれの項目の少なくとも1つを含む意味であり得る。実例として、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」又は「A、B、若しくはCのうちの少なくとも1つ」という句はそれぞれ、Aのみ、Bのみ、若しくはCのみ、A、B、及びCの任意の組合せ、並びに/又はA、B、及びCのそれぞれのうちの少なくとも1つを指す。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7