(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】電力を自給する量子ドット放射線検出器モジュール
(51)【国際特許分類】
G01T 1/24 20060101AFI20230814BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20230814BHJP
H01L 31/08 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
G01T1/24 ZNM
G01T7/00 A
H01L31/00 A
(21)【出願番号】P 2020552862
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2019057660
(87)【国際公開番号】W WO2019185675
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-24
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(73)【特許権者】
【識別番号】500429332
【氏名又は名称】ケース ウェスタン リザーブ ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】CASE WESTERN RESERVE UNIVERSITY
(73)【特許権者】
【識別番号】520222900
【氏名又は名称】ウェイン ステート ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チャッポ マーク アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ブロック ステファニー リー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン アイナ テイラー
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-053534(JP,A)
【文献】特開2014-146701(JP,A)
【文献】国際公開第2017/025888(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0323685(US,A1)
【文献】特表2017-525297(JP,A)
【文献】特表2015-531052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/24
G01T 1/20
G01T 7/00
H01L 31/00
H01L 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の側、及び反対に位置する第2の側を有する光起電層であって、前記光起電層は、
前記第1の側において第1の放射線を吸収し、電荷を生成する、光起電層と、
前記光起電層の前記第2の側に配置され、第2の放射線を受光し、受光した前記第2の放射線を、受光した前記第2の放射線のエネルギーレベルを示す電気信号に変換する多孔性シリコン量子ドット層と、
前記多孔性シリコン量子ドット層に隣接して配置され、前記電気信号を受信し、前記電気信号を放射線検出器から遠隔したデバイスに送信する取得及び通信層と、
前記取得及び通信層に隣接して配置され、
前記電荷を蓄積し、蓄積された前記電荷を動作電力として前記取得及び通信層に供給するエネルギー蓄積層とを備える、
放射線検出器。
【請求項2】
前記光起電層は量子ドット層を備える、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記光起電層は、可視光及び赤外光からなるグループからの帯域内の放射線を吸収する、請求項1又は2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記光起電層は、量子ドット層太陽電池を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記エネルギー蓄積層は、充電式電池の1つ以上のセルを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記エネルギー蓄積層はスーパーキャパシタを備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記取得及び通信層は集積回路を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記集積回路は、前記電気信号を処理し、処理された前記電気信号を前記デバイスに送信する、請求項7に記載の放射線検出器。
【請求項9】
無人地上又は天空放射線検出モジュールと処理デバイスとを備える放射線検出及び処理システムであって、前記無人地上又は天空放射線検出モジュールは、
第1の側、及び反対に位置する第2の側を有する量子ドット光起電層であって、前記第1の側において第1の放射線を吸収し、電荷を生成する量子ドット光起電層と、
前記電荷を蓄積するエネルギー蓄積層と、
前記量子ドット光起電層の第2の側に配置され、第2の放射線を受光し、第2の放射線を示す電気信号を生成する多孔性シリコン量子ドット層と、
蓄積された前記電荷で電力を供給され、前記電気信号を測定し、測定値を前記無人地上又は天空放射線検出モジュールから搬送する取得及び通信層とを備え、
前記測定値を受信し、処理する前記処理デバイスは、前記無人地上又は天空放射線検出モジュールから遠隔している、
放射線検出及び処理システム。
【請求項10】
前記無人地上又は天空放射線検出モジュールは、前記測定値を前記処理デバイスに少なくともワイヤレス送信するワイヤレスインターフェースを備える、請求項9に記載の放射線検出及び処理システム。
【請求項11】
前記処理デバイスは、前記無人地上又は天空放射線検出モジュールから前記測定値を少なくともワイヤレス受信するワイヤレスインターフェースを備える、請求項9又は10に記載の放射線検出及び処理システム。
【請求項12】
前記処理デバイスは、
前記無人地上又は天空放射線検出モジュールからのデータを処理するための命令を記憶するメモリと、
前記無人地上又は天空放射線検出モジュールからの前記データを前記命令で処理するプロセッサとを更に備える、請求項9から11のいずれか一項に記載の放射線検出及び処理
システム。
【請求項13】
前記命令は1つ又は複数のスペクトルアルゴリズムを含む、請求項12に記載の放射線検出及び処理システム。
【請求項14】
前記量子ドット光起電層は、可視光及び赤外光からなるグループからの帯域内の放射線を吸収する、請求項9から13のいずれか一項に記載の放射線検出及び処理システム。
【請求項15】
前記量子ドット光起電層は量子ドット層太陽電池を備え、前記量子ドット光起電層は第1の厚さを有し、前記多孔性シリコン量子ドット層は第2の厚さを有し、前記第1の厚さは前記第2の厚さより薄い、請求項9から14のいずれか一項に記載の放射線検出及び処理システム。
【請求項16】
前記エネルギー蓄積層は、充電式電池及び/又はスーパーキャパシタを備える、請求項9から15のいずれか一項に記載の放射線検出及び処理システム。
【請求項17】
放射線検出器の光起電層
であって、第1の側、及び反対に位置する第2の側を有する光起電層の前記第1の側において、第1の放射線を受光するステップと、
前記光起電層を用いて、受光した前記第1の放射線を電荷に変換するステップと、
前記電荷を前記放射線検出器のエネルギー蓄積層内に蓄積するステップと、
蓄積された前記電荷で前記放射線検出器の取得及び通信層に電力を供給するステップと、
前記放射線検出器の電力を供給された前記取得及び通信層を用いて、
前記放射線検出器の多孔性シリコン量子ドット層
であって、前記光起電層の前記第2の側に配置される多孔性シリコン量子ドット層が第2の放射線を吸収するのに応答して、前記多孔性シリコン量子ドット層によって生成される電気信号を測定し、吸収された前記第2の放射線を示す電気信号を生成するステップと、
前記取得及び通信層を用いて、測定された前記電気信号を示すデータを前記放射線検出器から送信するステップとを含む、
方法。
【請求項18】
前記取得及び通信層を低電力スタンバイモードにおいて動作させるステップと、
前記放射線検出器を用いて放射線を受光するステップと、
前記
第2の放射線を受光するのに応答して、測定された前記電気信号を処理するように前記取得及び通信層をトリガするステップとを更に含み、前記データは処理済みの測定された前記電気信号を示す、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記放射線検出器から遠隔した処理デバイスによって、送信された前記データを受信するステップと、
遠隔した前記処理デバイスを用いて、受信された前記データを処理するステップとを更に含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記取得及び通信層は、前記エネルギー蓄積層からのみ動作電力を受電する、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下は、包括的には、多層放射線検出器モジュールに関し、より詳細には、遠隔無人地上及び天空用途のために構成される、電力を自給する多孔性シリコン(pSi)量子ドット(QD)放射線検出器(pSi QD放射線検出器)に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の放射線検出器は、フォトダイオードのような固体光検出器に直接取り付けられるクリスタル又はガーネットシンチレータから主に構成される。シンチレータ材料は、X線光子を照射するのに応答して、光量子を生成し、光量子は、その後、光検出器において電流又はパルスに変換される。放射線検出器のために、スペクトルを弁別し、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)又はテルル化カドミウム(CdTe)から形成される直接エネルギー変換材料も利用される。最近になって、ナノ粒子研究の結果として、性能を改善すると同時に、コストも下げるために、放射線検出器において有望な新規技術、すなわち、多孔性シリコン(pSi)の中に量子ドット(QD)を挿入する技術がもたらされた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
低電力の遠隔無人地上及び宇宙放射線検出器は、動力として電池などを用いて構成することができる。しかしながら、電池はある電池寿命(すなわち、元の充電が、放射線検出器に動作用の電荷を与えるには不十分なレベルまで降下するのにかかる時間)を有し、再充電(充電式電池が、十分なレベルまで依然として充電できる場合)及び/又は交換(非充電式電池、又は十分なレベルまでもはや充電できない充電式電池の場合)を必要とすることになる。さらに、これらのアセンブリは大きい質量/体積からなる。残念なことに、遠隔無人地上及び宇宙用途、並びに又は大きい質量/体積において、そのような電池を再充電及び/又は交換することは実現できない。
【0004】
本明細書に記述される態様は、上記で参照された問題などに対処する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、放射線検出器が、反対に位置する第1の側及び第2の側を有する光起電層を備える。光起電層は、第1の側において第1の放射線を吸収し、電荷を生成するように構成される。検出器は、光起電層の第2の側に配置され、第2の放射線を受光し、その後、受光した第2の放射線を、受光した第2の放射線のエネルギーレベルを示す電気信号に変換するように構成される多孔性シリコン量子ドット層を更に備える。検出器は、多孔性シリコン量子ドット層に隣接して配置され、電気信号を受信し、電気信号を放射線検出器から遠隔したデバイスに送信するように構成される取得及び通信層を更に備える。検出器は、取得及び通信層に隣接して配置され、電荷を蓄積し、蓄積した電荷を動作電力として取得及び通信層に供給するように構成されるエネルギー蓄積層を更に備える。
【0006】
別の態様では、放射線検出及び処理システムが、無人地上又は天空放射線検出モジュール及び処理デバイスを備える。無人地上又は天空放射線検出モジュールは、第1の放射線を吸収し、電荷を生成するように構成される量子ドット光起電層を備える。無人地上又は天空放射線検出モジュールは、電荷を蓄積するように構成されるエネルギー蓄積層を更に備える。無人地上又は天空放射線検出モジュールは、第2の放射線を受光し、第2の放射線を示す電気信号を生成するように構成される多孔性シリコン量子ドット層を更に備える。無人地上又は天空放射線検出モジュールは、蓄積した電荷で電力を供給され、電気信号を測定し、検出モジュールから測定値を搬送するように構成される取得及び通信層を更に備える。処理デバイスは、測定値を受信し、処理するように構成され、処理デバイスは、無人地上又は天空放射線検出モジュールから遠隔している。
【0007】
別の態様では、方法は、放射線検出器の光起電層を用いて、第1の放射線を受光することを含む。その方法は、光起電層を用いて、受光した第1の放射線を電荷に変換することを更に含む。その方法は、電荷を放射線検出器のエネルギー蓄積層に蓄積することを更に含む。その方法は、蓄積した電荷で放射線検出器の取得及び通信層に電力を供給することを更に含む。その方法は、放射線検出器の電力を供給された取得及び通信層を用いて、多孔性シリコン量子ドット層が第2の放射線を吸収するのに応答して、多孔性シリコン量子ドット層によって生成された電気信号を測定することと、吸収した第2の放射線を示す電気信号を生成することとを更に含む。その方法は、取得及び通信層を用いて、測定された信号を示すデータを放射線検出器から送信することを更に含む。一例において、データ(それは、未処理の、及び/又は処理済みの測定値とすることができる)は、検出器から遠隔したデバイスによって処理される。エネルギー吸収を高めるために、立方体又は3次元(3D)モジュールの複数の側に光起電層を追加することもできることは理解されたい。
【0008】
以下の詳細な説明を読み、理解すると、本発明の更に別の態様が当業者には理解されよう。
【0009】
本発明は、種々の構成要素及び構成要素の配置、並びに種々のステップ及びステップの配置において具現することができる。図面は、好ましい実施形態を例示するにすぎず、本発明を制限するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】QD-pSi放射線検出器の構成要素に電力を供給するために電力を自給する、例示的なQD-pSi放射線検出器の例示的な層の組立分解斜視図である。
【
図2】
図1の例示的なQD-pSi放射線検出器の例示的な層の概略的な正面図である。
【
図3】QD-pSi放射線検出器の非限定的な例を示す概略図である。
【
図4】受信した放射線を電荷に変換する、
図3のQD-pSi放射線検出器内のQDとSiとの間の相互作用の一例を示す概略図である。
【
図5】無人地上及び/又は宇宙用途のための、
図1~
図4のQD-pSi放射線検出器を備える例示的な放射検出及び処理システムを示す図である。
【
図6】本明細書の1つ又は複数の実施形態による例示的な方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下は、QD放射線変換層と、データ取得及び通信層と、電荷を生成するQD光起電層と、電荷を蓄積し、蓄積した電荷を、QD変換層によって生成された電荷を測定し、それを示す信号を読み出すデータ取得及び通信層に供給する電力蓄積層とを用いて構成される放射線検出器を包括的に記述する。一例において、このpSi QD放射線検出器は、無人地上及び/又は宇宙用途における遠隔検知及び報告のための、電力を自給し、低電力で、コンパクトなユニットとして構成される。
【0012】
図1及び
図2は、pSi QD放射線検出器のような例示的な放射線検出器100を概略的に示す。
図1は、平面として示される個々の層の組立分解斜視図を概略的に示し、
図2は、個々の層がブロックとして示される正面図を概略的に示す。これらの図は、説明を目的としており、限定するものではない。例えば、本明細書における1つ以上の層の相対的な形状、サイズ、幾何学的配置などは限定するものではなく、他の形状、サイズ、幾何学的配置などを有することもできる。一般に、場合によって、形状、サイズ、幾何学的配置などは、特定の用途に基づく。一変形形態では、検出器は、それより多くの、又は少ない層を備える。さらに、1つ以上の層はSi及び/又は他の層とすることができる。
【0013】
例示されるpSi QD放射線検出器100は、少なくとも1つのQD光起電層102と、pSi QD層104と、取得及び通信(Acq&Comm)層106と、エネルギー蓄積層108とを備える。QD及びQD放射線検出器の非限定的な例が、2014年9月23日に出願され、参照により全体として本明細書に組み込まれている、「Encapsulated materials in porous particles」と題する欧州特許出願公開第14186022.1号、及び2016年8月8日に出願され、参照により全体として本明細書に組み込まれている、「Quantum Dot Based Imaging Detector」と題する国際公開第2017/025888A1号に記述される。
【0014】
QD光起電層102は、特定の放射線を吸収し、それに応答して、光起電電荷(photovoltaic charge)を生成するように構成される。pSi QD層104は、特定の放射線を吸収し、吸収した放射線の電気エネルギーを示す電気信号を生成するように構成される。多孔性Siの正孔内のQDがSiと相互作用し、電子-正孔対生成及び分離によって、放射線を電荷に変換する。取得及び通信層106は、電気信号を測定し、電気信号を示すデータを放射線検出器から転送するように構成される。エネルギー蓄積層108は、光起電電荷を蓄積し、取得及び通信層106に動作電力を供給する。蓄積した電荷を用いて、電力を必要とする他のデバイスに電力を供給することもできる。
【0015】
例示的な放射線検出器100は、例えば、透光性コーティング、フィルム、カバーなどで封入することができる。pSi QD放射線検出器100は、個別に(図示されるように)使用することができるか、又は1つ以上の他のpSi QD放射線検出器100、及び/又は他の放射線検出器とともに、例えば、モジュール又は別の方法において使用することができる。pSi QD放射線検出器は、無人地上若しくは宇宙用途、及び/又はエネルギー蓄積層108を再充電するのが実現不可能であり、QS光起電層102が動作電力に十分な電荷を生成する他の用途などの用途に十分に適している。本明細書において、他の用途も考えられる。
【0016】
図1において、QD光起電層102は、入射方向に対して最上層である。一変形形態では、QD光起電層102は最下層であり、すなわち、エネルギー蓄積層108の下方にある。別の変形形態では、QD光起電層102は、pSi QD層104、取得及び通信層106、並びにエネルギー蓄積層108のうちの1つ以上の層の1つの側(例えば、左側、後側、右側、前側)に沿って、pSi QD層104、取得及び通信層106、並びにエネルギー蓄積層108に対して垂直に延在する。別の変形形態では、放射線検出器100は、同じ側及び/又は異なる側を含む、放射線検出器100の1つ以上の側(例えば、上側、下側、左側、後側、右側、前側)に複数のQD光起電層102を備える。一例において、QD光起電層を追加することによって、エネルギー吸収が高められる。
【0017】
図3は、
図1及び
図2のpSi QD放射線検出器100の非限定的な例を概略的に示す。サイズ、形状などは、説明することを目的とし、限定するものではないことは理解されたい。
【0018】
QD光起電層102は、放射線半透過性基板302と、QD吸収光起電材料304と、導電性コンタクト306とを備える。QD光起電層102は、pSi QD層104に比べて薄い層である。QD光起電層102は、放射線を吸収し、それに応答して、光起電力を生成するように構成される。例示されるQD光起電層102は、光スペクトルの特定のバンドギャップ/部分、例えば、可視光部分、赤外線(IR)部分及び/又は他の部分に同調するQDのマトリックスを備える。一例において、QDの寸法(例えば、サイズ)を通して水晶が同調する。放射線300(例えば、光子)が、放射線半透過性基板302によって受光される。
【0019】
QD光起電層の一例が、Bhandariら「Thin film solar cells based on the heterojunction of colloidal PbS quantum dots with CdS」(Solar Energy Materials & Solar Cells,Volume 117,October 2013,pages476‐482)に記述される。別の例が、Nozikら「Semiconductor Quantum Dots and Quantum Dot Arrays and Applications of Multiple Exciton Generation to Third-Generation Photovoltaic Solar Cells」(Chemical Reviews,Volume 110,Revision 2010,pages6873-6890)に記述される。別の例が、Semoninら「Quantum Dots for Next Generation Photovoltaics」(Materials Today,Volume 15,November 2012,Issue 11)に記述される。本明細書において、他の構成も考えられる。
【0020】
pSi QD層104は、バルクSi材料310及び柱状の穴312とともに、pSi膜308を備え、柱状の穴はQD314(この例では、硫化鉛(PbS))で満たされている。pSi QD層104は、QD光起電層102に比べて厚い層である。柱状の穴312内のQD314及びバルクSi材料310内のSiが相互作用し、電子-正孔対生成によって、受光した放射線300を電荷(信号、パルスなど)に変換する。pSi QD層104の一例が、2018年3月29日に出願され、参照により全体として本明細書に組み込まれている、「Pixel Definition in a Porous Silicon Quantum Dot Radiation Detector」と題する特許出願第62/649,615号に記述される。
【0021】
図4を手短に参照すると、受光した放射線を電荷に変換するためのQDとSiとの間の相互作用の一例が示される。この例において、pSi QD層104は、pSi 膜308の両側406及び408上に電気導体(この例では、アルミニウム(Al)コンタクト)402及び404を更に備える。再び、柱状の穴312内のQD314及びバルクSi材料310内のSiが相互作用し、電子-正孔対生成によって、受光した放射線300を電荷に変換する。
【0022】
図3に戻ると、取得及び通信層106は、金属層316と、基板318と、回路320とを備える。金属層316は、導電性接着剤などを通して、pSi QD層104のバルクSi材料310に電気的に結合される。ピクセル化を伴う一例が、特許出願第62/649,615号に記述される。回路320(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)など)が基板318上に配置される。この例において、pSi QD層104において生成される信号は、基板318内のスルーホールビア(THV)319によって(例えば、スルーSiビアを通して)回路320に転送される。一変形形態では、これらの信号はワイヤ、フレックス回路などによって転送される。一例において、回路320は、読み出し電子回路(図示せず)を備え、測定された信号を読み出す。別の例では、回路320は最初に、測定された信号を処理(例えば、増幅、フィルタリング、結合など)し、その後、処理済みの信号を読み出す。回路320は、データ取得及びデータ読み出しの両方を制御するように構成することができる。
【0023】
エネルギー蓄積層108は、充電式電池、スーパーキャパシタなどの電荷蓄積デバイス322を備える。この例において、QD光起電層102において生成される電荷は、pSi QD放射線検出器100の1つの側326に配置されるワイヤ、フレックス回路などの電線管324を通して、エネルギー蓄積層108に転送される。この例において、エネルギー蓄積層108に蓄積される電荷は、電荷蓄積デバイス322及びASIC320上の電気コンタクト328及び330によって、取得及び通信層106に転送される。一変形形態では、電荷は、ワイヤ、フレキシブルプリント配線板などを経由する。図示される例では、回路320は、エネルギー蓄積層108を制御する。一変形形態では、エネルギー蓄積層108は、自らの制御用回路を備える。
【0024】
シリコン電荷蓄積デバイスの一例が、Oakesら「Surface engineered porous silicon for stable, high performance electrochemical supercapacitors」(Scientific Reports,Volume 3,October 2013,Article number:3020)に記述される。電荷蓄積デバイスの別の例が、Gowdaら「Building Energy Storage Device on a Single Nanowire」(Nano Letters,11(8),July 2011,pages3329-3333)に記述される。電荷蓄積デバイスの別の例が、Gardnerら「Integrated on-chip energy storage using passivated nanoporous-silicon electrochemical capacitors」(Nano Energy, Volume 25,July 2016,Pages68-79)に記述される。本明細書において、他の構成も考えられる。
【0025】
1つの非限定的な例において、pSi QD放射線検出器100の幅332及び奥行333は、20ミリメートル~50ミリメートル(20mm~50mm)の範囲内にあり、放射線半透過性基板の厚さ334は約10ミクロン(10μm)であり、QD吸収光起電層材料304及び導電性コンタクト306の組み合わせの厚さ336は、約100ミクロン(100μm)であり、pSi膜の厚さ338は、300ミクロン~1000ミクロン(300μm~1000μm)の範囲内にあり、取得及び通信層106の厚さ340は、700ミクロン~1000ミクロン(700μm~1000μm)の範囲内にあり、エネルギー蓄積層108の厚さ342は、1ミリメートル(1mm)以上の範囲内にある。異なる層構成を有し、及び/又は異なる厚さの層を有するpSi QD放射線検出器100も本明細書において考えられる。
【0026】
図5は、例示的な放射線検出及び処理システムを示す。放射線検出及び処理システムは、1つ以上のQD-pSi放射線検出器100を備えるモジュール502と、処理デバイス504とを備え、処理デバイスは、1つ以上のQD-pSi放射線検出器から遠隔しているが、その一部である。
【0027】
1つ以上のQD-pSi放射線検出器100は、無人の地上位置に、又は宇宙空間内に位置する。一般に、これらの場所において、エネルギー蓄積層104のエネルギー蓄積デバイスを手動で再充電するのは実現不可能である。しかしながら、低電力の用途の場合、QD光起電層102によって生成され、エネルギー蓄積層104内に蓄積される電荷が、1つ以上のQD-pSi放射線検出器が検出された放射線を測定し、その放射線を処理デバイス504のような別のデバイス送信するための動作電力を与える。
【0028】
図示される例では、モジュール502及び/又は1つ以上のQD-pSi放射線検出器100は、少なくとも1つのワイヤレスインターフェース506を備える。一例において、ワイヤレスインターフェース506は、測定された信号を示すデータを処理デバイス504に送信するように構成されるワイヤレス送信機を用いて構成される。別の例では、ワイヤレスインターフェース506は、ワイヤレス送受信機を用いて構成され、データを送信するだけでなく、処理デバイス504からデータ(例えば、コマンド、データ要求など)を受信する。ワイヤレスインターフェース506も、エネルギー蓄積層108によって電力を供給される。
【0029】
処理デバイス504は、プロセッサ508(例えば、中央処理ユニット(CPU)、マイクロプロセッサなど)と、メモリデバイス(メモリ)510と、ワイヤレスインターフェース512とを備える。メモリデバイス510は、モジュール502から受信されたデータを処理するための、1つ以上のスペクトル及び/又は非スペクトルアルゴリズムのような、1つ以上のアルゴリズムを含む。そのような処理は、一例において、画像を生成することを含む。一例において、プロセッサ508はスタンバイ低電力モードのままであり、検出された放射線によってトリガされるときにのみデータを送信し、それにより電力を節約することができる。ワイヤレスインターフェース512は、データ(例えば、コマンド、データ要求など)を受信するか、又は受信及び送信するための相補的なワイヤレス受信機又はワイヤレス送受信機を用いて構成される。
【0030】
図6は、本明細書の1つ又は複数の実施形態による例示的な方法を示す図である。
【0031】
602において、pSi QD放射線検出器100のQD光起電層102によって、第1の放射線が受光される。
【0032】
604において、QD光起電層102が、受光した放射線を電荷に変換する。
【0033】
606において、pSi QD放射線検出器100のエネルギー蓄積層108が電荷を蓄積する。
【0034】
608において、pSi QD放射線検出器100の取得及び通信層106が、エネルギー蓄積層108から動作電力を受電する。
【0035】
610において、pSi QD放射線検出器100のpSi QD層104が、第2の放射線を受光する。
【0036】
612において、pSi QD層104が、第2の放射線を、第2の放射線のエネルギーレベルを示す信号に変換する。
【0037】
614において、取得及び通信層106が、第2の放射線のエネルギーレベルを示す信号を測定する。
【0038】
616において、取得及び通信層106が、(未処理、及び/又は処理済みの)測定値をpSi QD放射線検出器100から転送する。
【0039】
一例において、転送された(未処理、及び/又は処理済みの)測定値は、pSi QD放射線検出器100から遠隔したデバイスによって処理される。
【0040】
本発明は、図面及びこれまでの説明において詳細に図示及び説明されてきたが、そのような図示及び説明は、説明又は例示と見なされるべきであり、限定するものと見なされるべきではなく、本発明は開示される実施形態には限定されない。開示される実施形態に対する他の変形形態は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲を検討することから、特許請求される本発明を実施する際に当業者が理解し、達成することができる。
【0041】
特許請求の範囲において、「備える、含む」という用語は、他の要素又はステップを除外せず、単数形は複数を除外しない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲において列挙されるいくつかの項目の機能を実現してもよい。互いに異なる従属請求項において特定の手段が列挙されるという事実だけで、これらの手段の組み合わせを用いて利益をもたらすことができないことを示すものではない。
【0042】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアとともに、又は他のハードウェアの一部として供給される光学記憶媒体又は固体媒体のような適切な媒体上に記憶/分散することができるが、インターネット、又は他の有線若しくはワイヤレス電気通信システムなどを介して、他の形で分散されてもよい。特許請求の範囲におけるあらゆる参照符号は、その範囲を制限するものと解釈されるべきではない。