(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】スリットノズル、スリットノズルの調整方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20230814BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/02
(21)【出願番号】P 2021104551
(22)【出願日】2021-06-24
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】安陪 裕滋
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-015461(JP,A)
【文献】特開2003-024855(JP,A)
【文献】特開2012-030164(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0148727(US,A1)
【文献】国際公開第2020/196355(WO,A1)
【文献】特開平11-188301(JP,A)
【文献】特開2014-008465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-21/00
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1本体部と第2本体部とが第1ギャップを隔てて互いに対向することで、スリット状に開口する吐出口を形成するノズル本体と、
前記第1本体部および前記第2本体部の対向方向に前記第2本体部を変位させて前記吐出口の開口寸法を調整する調整機構と、を備え、
前記調整機構は、
前記第2本体部に取り付け可能な調整本体部と、前記調整本体部から吐出口側に突設された突出部とを有し、前記調整本体部の前記第2本体部への取付により、前記突出部が、前記第2本体部に対して前記第1本体部の反対側で、前記対向方向において第2ギャップを隔てて前記第2本体部と対向するブロック体と、
前記第2ギャップの増大により前記吐出口の近傍において前記第2本体部を前記第1本体部に近接させて前記開口寸法を狭める狭小動作を少なくとも実行させて前記開口寸法を調整するギャップ調整部と、
を備え、
前記ギャップ調整部は、前記狭小動作を実行するための狭小調整機構を有し、
前記突出部は、前記第2本体部と対向する対向面に対して前記第2本体部の反対側に設けられる凹部または貫通孔を、前記狭小調整機構を設置するための狭小設置部位として機能させ、
前記狭小調整機構は、前記対向方向に延設されたねじ棒と、前記ねじ棒の中央部に螺合するナットと、を有し、前記ねじ棒の先端部が前記第2本体部に係合されるとともに前記ねじ棒の後端部が前記狭小設置部位に挿入された状態で、前記ナットを前記突出部に当接させたまま前記ナットの回転により前記ねじ棒を前記第2本体部側に変位させることによって、前記第2本体部を前記第1本体部側に押し遣って前記開口寸法を狭める、スリットノズル。
【請求項2】
請求項
1に記載のスリットノズルであって、
前記突出部は前記狭小設置部位を複数個有し、
前記複数の狭小設置部位が前記対向方向と直交する方向に並設されるとともに、前記狭小設置部位毎に前記狭小調整機構の設置が可能となっている、スリットノズル。
【請求項3】
請求項
2に記載のスリットノズルであって、
前記突出部は、前記対向方向と直交する方向において互いに隣接する前記狭小設置部位の間に形成されるスリットにより複数の区画される、スリットノズル。
【請求項4】
第1本体部と第2本体部とが第1ギャップを隔てて互いに対向することで、スリット状に開口する吐出口を形成するノズル本体と、
前記第1本体部および前記第2本体部の対向方向に前記第2本体部を変位させて前記吐出口の開口寸法を調整する調整機構と、を備え、
前記調整機構は、
前記第2本体部に取り付け可能な調整本体部と、前記調整本体部から吐出口側に突設された突出部とを有し、前記調整本体部の前記第2本体部への取付により、前記突出部が、前記第2本体部に対して前記第1本体部の反対側で、前記対向方向において第2ギャップを隔てて前記第2本体部と対向するブロック体と、
前記第2ギャップの減少により前記吐出口の近傍において前記第2本体部を前記第1本体部から離間させて前記開口寸法を広げる広大動作と、前記第2ギャップの増大により前記吐出口の近傍において前記第2本体部を前記第1本体部に近接させて前記開口寸法を狭める狭小動作との少なくとも一方を実行させて前記開口寸法を調整するギャップ調整部と、
を備え、
前記ギャップ調整部は、前記広大動作を実行するための広大調整機構と、前記狭小動作を実行するための狭小調整機構とを選択的に設置可能となっており、
前記突出部は、前記対向方向に貫通する貫通孔を前記広大調整機構および前記狭小調整機構を選択的に設置するための共通設置部位として機能させ、
前記広大調整機構は、頭部と、前記頭部の座面から前記対向方向に延設されるとともに前記第2本体部に螺合可能となっているねじ部とを有するボルトを有し、前記突出部に対して前記第2本体部の反対側から前記ボルトを前記共通設置部位に挿通して前記頭部の座面で前記突出部を係止した状態で、前記ボルトの回転により前記ねじ部が前記第2本体部に螺入されることによって、前記第2本体部を前記突出部側に引き寄せて前記開口寸法を広げ、
前記狭小調整機構は、前記対向方向に延設されたねじ棒と、前記ねじ棒の中央部に螺合するナットと、を有し、前記ねじ棒の先端部が前記第2本体部に係合されるとともに前記ねじ棒の後端部が前記共通設置部位に挿入された状態で、前記ナットを前記突出部に当接させたまま前記ナットの回転により前記ねじ棒を前記第2本体部側に変位させることによって、前記第2本体部を前記第1本体部側に押し遣って前記開口寸法を狭める、スリットノズル。
【請求項5】
請求項
4に記載のスリットノズルであって、
前記突出部は前記共通設置部位を複数個有し、
前記複数の共通設置部位が前記対向方向と直交する方向に並設されるとともに、前記共通設置部位毎に前記広大調整機構または前記狭小調整機構の設置が可能となっている、スリットノズル。
【請求項6】
請求項
5に記載のスリットノズルであって、
前記突出部は、前記対向方向と直交する方向において互いに隣接する前記共通設置部位の間に形成されるスリットにより複数の区画される、スリットノズル。
【請求項7】
第1本体部と第2本体部とが第1ギャップを隔てて互いに対向することで、スリット状に開口する吐出口を形成するノズル本体と、
前記第1本体部および前記第2本体部の対向方向に前記第2本体部を変位させて前記吐出口の開口寸法を調整する調整機構と、を備え、
前記調整機構は、
前記第2本体部に取り付け可能な調整本体部と、前記調整本体部から吐出口側に突設された突出部とを有し、前記調整本体部の前記第2本体部への取付により、前記突出部が、前記第2本体部に対して前記第1本体部の反対側で、前記対向方向において第2ギャップを隔てて前記第2本体部と対向するブロック体と、
前記第2ギャップの減少により前記吐出口の近傍において前記第2本体部を前記第1本体部から離間させて前記開口寸法を広げる広大動作と、前記第2ギャップの増大により前記吐出口の近傍において前記第2本体部を前記第1本体部に近接させて前記開口寸法を狭める狭小動作との少なくとも一方を実行させて前記開口寸法を調整するギャップ調整部と、
を備え、
前記ギャップ調整部は、前記広大動作を実行するための広大調整機構と、前記狭小動作を実行するための狭小調整機構とのうち少なくとも一方を設置可能となっており、
前記突出部は、前記対向方向に貫通して設けられた広大用貫通孔を、前記広大調整機構を設置するための広大設置部位として機能させるとともに、前記第2本体部と対向する対向面に対して前記第2本体部の反対側に設けられる凹部または前記対向方向に貫通して設けられた狭小用貫通孔を、前記狭小調整機構を設置するための狭小設置部位として機能させ、
前記広大調整機構は、頭部と、前記頭部の座面から前記対向方向に延設されるとともに前記第2本体部に螺合可能となっているねじ部とを有するボルトを有し、前記突出部に対して前記第2本体部の反対側から前記ボルトを前記広大設置部位に挿通して前記頭部の座面で前記突出部を係止した状態で、前記ボルトの回転により前記ねじ部が前記第2本体部に螺入されることによって、前記第2本体部を前記突出部側に引き寄せて前記開口寸法を広げ、
前記狭小調整機構は、前記対向方向に延設されたねじ棒と、前記ねじ棒の中央部に螺合するナットと、を有し、前記ねじ棒の先端部が前記第2本体部に係合されるとともに前記ねじ棒の後端部が前記狭小設置部位に挿入された状態で、前記ナットを前記突出部に当接させたまま前記ナットの回転により前記ねじ棒を前記第2本体部側に変位させることによって、前記第2本体部を前記第1本体部側に押し遣って前記開口寸法を狭める、スリットノズル。
【請求項8】
請求項
7に記載のスリットノズルであって、
前記広大設置部位および前記狭小設置部位は前記対向方向と直交する方向に並設されている、スリットノズル。
【請求項9】
請求項
8に記載のスリットノズルであって、
前記突出部は、前記対向方向において互いに隣接する前記広大設置部位および前記狭小設置部位の間に形成されるスリットにより複数の区画される、スリットノズル。
【請求項10】
第1本体部と第2本体部とを第1ギャップを隔てて互いに対向させることでスリット状に開口する吐出口の開口寸法を調整するスリットノズルの調整方法であって、
前記第2本体部に取り付け可能な調整本体部と、前記調整本体部から吐出口側に突設された突出部とを有する、ブロック体を準備する第1工程と、
前記突出部が、前記第2本体部に対して前記第1本体部の反対側で、前記第1本体部および前記第2本体部の対向方向において前記第2本体部から第2ギャップを隔てて対向するように、前記ブロック体の前記調整本体部を前記第2本体部に取り付ける第2工程と、
前記第2工程後に
、前記第2ギャップの増大により前記吐出口の近傍において前記第2本体部を前記第1本体部に近接させて前記開口寸法を狭める狭小動作
を少なくと
も実行させて前記開口寸法を調整する第3工程と、
を備え
、
前記第3工程では、前記突出部において前記第2本体部と対向する対向面に対して前記第2本体部の反対側に設けられる凹部または貫通孔を、前記狭小動作を実行するための狭小調整機構を設置するための狭小設置部位として機能させ、
前記狭小調整機構は、前記対向方向に延設されたねじ棒と、前記ねじ棒の中央部に螺合するナットと、を有し、前記ねじ棒の先端部が前記第2本体部に係合されるとともに前記ねじ棒の後端部が前記狭小設置部位に挿入された状態で、前記ナットを前記突出部に当接させたまま前記ナットの回転により前記ねじ棒を前記第2本体部側に変位させることによって、前記第2本体部を前記第1本体部側に押し遣って前記開口寸法を狭めることを特徴とするスリットノズルの調整方法。
【請求項11】
第1本体部と第2本体部とを第1ギャップを隔てて互いに対向させることでスリット状に開口する吐出口の開口寸法を調整するスリットノズルの調整方法であって、
前記第2本体部に取り付け可能な調整本体部と、前記調整本体部から吐出口側に突設された突出部とを有する、ブロック体を準備する第1工程と、
前記突出部が、前記第2本体部に対して前記第1本体部の反対側で、前記第1本体部および前記第2本体部の対向方向において前記第2本体部から第2ギャップを隔てて対向するように、前記ブロック体の前記調整本体部を前記第2本体部に取り付ける第2工程と、
前記第2工程後に、前記第2ギャップの減少により前記吐出口の近傍において前記第2本体部を前記第1本体部から離間させて前記開口寸法を広げる広大動作と、前記第2ギャップの増大により前記吐出口の近傍において前記第2本体部を前記第1本体部に近接させて前記開口寸法を狭める狭小動作との少なくとも一方を実行させて前記開口寸法を調整する第3工程と、
を備え、
前記第1工程では、前記突出部の曲げ剛性が互いに異なる複数種類の前記ブロック体が準備され、
前記第2工程では、前記複数種類のブロック体から前記第3工程での前記開口寸法の調整に用いられるブロック体が選択される、
スリットノズルの調整方法。
【請求項12】
請求項1ないし
9のいずれか一項に記載のスリットノズルと、
前記スリットノズルの前記吐出口と対向させて基板を配置するとともに、前記スリットノズルと前記基板とを前記対向方向に相対移動させる相対移動機構と、
前記スリットノズルに処理液を供給する処理液供給機構と、
を備え、
前記吐出口から吐出した前記処理液を前記基板の表面に塗布することを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スリット状の吐出口を有するスリットノズル、当該スリットノズルの調整方法および当該スリットノズルを用いて基板に処理液を塗布する基板処理装置に関するものである。なお、上記基板には、半導体基板、フォトマスク用基板、液晶表示用基板、有機EL表示用基板、プラズマ表示用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの電子デバイス等の製造工程では、基板の表面に処理液を供給し、当該処理液を基板に塗布する基板処理装置が用いられている。基板処理装置は、基板を浮上させた状態で当該基板を搬送しながら処理液をスリットノズルに送給してスリットノズルの吐出口から基板の表面に吐出して基板のほぼ全体に処理液を塗布する。また、別の基板処理装置は、ステージ上で基板を吸着保持しながら、スリットノズルの吐出口から基板の表面に向けて吐出した状態でスリットノズルを基板に対して相対移動させて基板のほぼ全体に処理液を塗布する。
【0003】
近年製品の高品質化に伴って、基板処理装置により塗布される処理液の膜厚の均一性を高めることが重要となっている。この目的のために、スリット状の吐出口における開口寸法を、スリットの長手方向に沿った位置ごとに個別に調整することを可能とするための構成が提案されている。例えば特許文献1には、差動ねじなどの調整ねじが複数個、吐出口の長手方向に沿って配列されている。そして、各調整ねじの回転に応じて第1リップ部および第2リップ部が互いに接近および離間可能となっている。これによって、きめ細やかな開口寸法の調整が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記調整機構はスリットノズルの製造段階で組み込まれているため、開口寸法の調整範囲はスリットノズルのノズル本体の構成に依存する。したがって、スリットノズルの製造後において、上記調整範囲を超えてスリットノズルの開口寸法を調整したいとしても、その要望に対応することは難しく、スリットノズルを作り直す必要があった。
【0006】
また、電子デバイスの微細化や材料の効率的利用等の見地から、塗布の均一性に関してこれまで以上に高い水準が求められるようになってきている。このため、吐出口の長手方向にわたる全域において、吐出量をきめ細かく調整することが必要となっている。しかしながら、上記従来技術では、調整ねじを単位回転量(例えば1回転)だけ回転させることにより調整される範囲、いわゆる調整の分解能は固定されている。つまり、開口寸法の調整精度は製造段階で決まっている。そのため、スリットノズルの製造後において、製造段階で一義的に決まっている精度を超えて開口寸法を調整することは困難であり、上記要望に対応できないことがあった。
【0007】
これらのように、従来のスリットノズルおよびこれを備えた基板処理装置では、吐出口の開口寸法を調整することができる範囲や精度などが制限されていた。その結果、スリットノズルの使用可能範囲が狭く、このことがスリットノズルの長期使用を阻害する要因のひとつになっていた。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、スリット状の吐出口を有するスリットノズルおよびこれを備え基板に処理液を塗布する基板処理装置において、吐出口の開口寸法の調整許容度を高め、スリットノズルを長期使用可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、スリットノズルであって、第1本体部と第2本体部とが第1ギャップを隔てて互いに対向することで、スリット状に開口する吐出口を形成するノズル本体と、第1本体部および第2本体部の対向方向に第2本体部を変位させて吐出口の開口寸法を調整する調整機構と、を備え、調整機構は、第2本体部に取り付け可能な調整本体部と、調整本体部から吐出口側に突設された突出部とを有し、調整本体部の第2本体部への取付により、突出部が、第2本体部に対して第1本体部の反対側で、対向方向において第2ギャップを隔てて第2本体部と対向するブロック体と、第2ギャップの増大により吐出口の近傍において第2本体部を第1本体部に近接させて開口寸法を狭める狭小動作を少なくとも実行させて開口寸法を調整するギャップ調整部と、を備えることを特徴としている。
本発明の第2の態様は、スリットノズルであって、第1本体部と第2本体部とが第1ギャップを隔てて互いに対向することで、スリット状に開口する吐出口を形成するノズル本体と、第1本体部および第2本体部の対向方向に第2本体部を変位させて吐出口の開口寸法を調整する調整機構と、を備え、調整機構は、第2本体部に取り付け可能な調整本体部と、調整本体部から吐出口側に突設された突出部とを有し、調整本体部の第2本体部への取付により、突出部が、第2本体部に対して第1本体部の反対側で、対向方向において第2ギャップを隔てて第2本体部と対向するブロック体と、第2ギャップの減少により吐出口の近傍において第2本体部を第1本体部から離間させて開口寸法を広げる広大動作と、第2ギャップの増大により吐出口の近傍において第2本体部を第1本体部に近接させて開口寸法を狭める狭小動作との少なくとも一方を実行させて開口寸法を調整するギャップ調整部と、を備え、ギャップ調整部は、広大動作を実行するための広大調整機構と、狭小動作を実行するための狭小調整機構とを選択的に設置可能となっており、突出部は、対向方向に貫通する貫通孔を広大調整機構および狭小調整機構を選択的に設置するための共通設置部位として機能させ、広大調整機構は、頭部と、頭部の座面から対向方向に延設されるとともに第2本体部に螺合可能となっているねじ部とを有するボルトを有し、突出部に対して第2本体部の反対側からボルトを共通設置部位に挿通して頭部の座面で突出部を係止した状態で、ボルトの回転によりねじ部が第2本体部に螺入されることによって、第2本体部を突出部側に引き寄せて開口寸法を広げ、狭小調整機構は、対向方向に延設されたねじ棒と、ねじ棒の中央部に螺合するナットと、を有し、ねじ棒の先端部が第2本体部に係合されるとともにねじ棒の後端部が共通設置部位に挿入された状態で、ナットを突出部に当接させたままナットの回転によりねじ棒を第2本体部側に変位させることによって、第2本体部を第1本体部側に押し遣って開口寸法を狭めることを特徴としている。
本発明の第3の態様は、スリットノズルであって、第1本体部と第2本体部とが第1ギャップを隔てて互いに対向することで、スリット状に開口する吐出口を形成するノズル本体と、第1本体部および第2本体部の対向方向に第2本体部を変位させて吐出口の開口寸法を調整する調整機構と、を備え、調整機構は、第2本体部に取り付け可能な調整本体部と、調整本体部から吐出口側に突設された突出部とを有し、調整本体部の第2本体部への取付により、突出部が、第2本体部に対して第1本体部の反対側で、対向方向において第2ギャップを隔てて第2本体部と対向するブロック体と、第2ギャップの減少により吐出口の近傍において第2本体部を第1本体部から離間させて開口寸法を広げる広大動作と、第2ギャップの増大により吐出口の近傍において第2本体部を第1本体部に近接させて開口寸法を狭める狭小動作との少なくとも一方を実行させて開口寸法を調整するギャップ調整部と、を備え、ギャップ調整部は、広大動作を実行するための広大調整機構と、狭小動作を実行するための狭小調整機構とのうち少なくとも一方を設置可能となっており、突出部は、対向方向に貫通して設けられた広大用貫通孔を、広大調整機構を設置するための広大設置部位として機能させるとともに、第2本体部と対向する対向面に対して第2本体部の反対側に設けられる凹部または対向方向に貫通して設けられた狭小用貫通孔を、狭小調整機構を設置するための狭小設置部位として機能させ、広大調整機構は、頭部と、頭部の座面から対向方向に延設されるとともに第2本体部に螺合可能となっているねじ部とを有するボルトを有し、突出部に対して第2本体部の反対側からボルトを広大設置部位に挿通して前記頭部の座面で突出部を係止した状態で、ボルトの回転によりねじ部が第2本体部に螺入されることによって、第2本体部を突出部側に引き寄せて開口寸法を広げ、狭小調整機構は、対向方向に延設されたねじ棒と、ねじ棒の中央部に螺合するナットと、を有し、ねじ棒の先端部が第2本体部に係合されるとともにねじ棒の後端部が狭小設置部位に挿入された状態で、ナットを突出部に当接させたままナットの回転によりねじ棒を第2本体部側に変位させることによって、第2本体部を第1本体部側に押し遣って開口寸法を狭めることを特徴としている。
【0010】
本発明の第4の態様は、第1本体部と第2本体部とを第1ギャップを隔てて互いに対向させることでスリット状に開口する吐出口の開口寸法を調整するスリットノズルの調整方法であって、第2本体部に取り付け可能な調整本体部と、調整本体部から吐出口側に突設された突出部とを有する、ブロック体を準備する第1工程と、突出部が、第2本体部に対して第1本体部の反対側で、第1本体部および第2本体部の対向方向において第2本体部から第2ギャップを隔てて対向するように、ブロック体の調整本体部を第本体部に取り付ける第2工程と、第2工程後に、第2ギャップの増大により吐出口の近傍において第2本体部を第1本体部に近接させて開口寸法を狭める狭小動作を少なくとも実行させて開口寸法を調整する第3工程と、を備え、第3工程では、突出部において第2本体部と対向する対向面に対して第2本体部の反対側に設けられる凹部または貫通孔を、狭小動作を実行するための狭小調整機構を設置するための狭小設置部位として機能させ、狭小調整機構は、対向方向に延設されたねじ棒と、ねじ棒の中央部に螺合するナットと、を有し、ねじ棒の先端部が第2本体部に係合されるとともにねじ棒の後端部が狭小設置部位に挿入された状態で、ナットを突出部に当接させたままナットの回転によりねじ棒を第2本体部側に変位させることによって、第2本体部を第1本体部側に押し遣って開口寸法を狭めることを特徴としている。
本発明の第5の態様は、第1本体部と第2本体部とを第1ギャップを隔てて互いに対向させることでスリット状に開口する吐出口の開口寸法を調整するスリットノズルの調整方法であって、第2本体部に取り付け可能な調整本体部と、調整本体部から吐出口側に突設された突出部とを有する、ブロック体を準備する第1工程と、突出部が、第2本体部に対して第1本体部の反対側で、第1本体部および第2本体部の対向方向において第2本体部から第2ギャップを隔てて対向するように、ブロック体の調整本体部を第2本体部に取り付ける第2工程と、第2工程後に、第2ギャップの減少により吐出口の近傍において第2本体部を第1本体部から離間させて開口寸法を広げる広大動作と、第2ギャップの増大により吐出口の近傍において第2本体部を第1本体部に近接させて開口寸法を狭める狭小動作との少なくとも一方を実行させて開口寸法を調整する第3工程と、を備え、第1工程では、突出部の曲げ剛性が互いに異なる複数種類のブロック体が準備され、第2工程では、複数種類のブロック体から第3工程での開口寸法の調整に用いられるブロック体が選択されることを特徴としている。
【0011】
本発明の第6の態様は、基板処理装置であって、上記スリットノズルと、スリットノズルの吐出口と対向させて基板を配置するとともに、スリットノズルと基板とを対向方向に相対移動させる相対移動機構と、スリットノズルに処理液を供給する処理液供給機構と、を備え、吐出口から吐出した処理液を基板の表面に塗布することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明では、第1本体部と第2本体部とが第1ギャップを隔てて互いに対向することで、スリット状に開口する吐出口が形成されている。吐出口の開口寸法を調整する際には、第2本体部にブロック体が装着される。より詳しくは、第2ギャップを隔てて突出部が第2本体部と対向するように、第2ギャップに対して調整本体部が取り付けられる。その後で、第2ギャップの減少や増大により、吐出口の近傍において第2本体部が第1本体部から離間または近接して開口寸法が調整される。このように、ノズル本体以外の部品(ブロック体)を取り付け、開口寸法を調整している。したがって、ブロック体に対応した範囲で開口寸法を調整することでき、調整許容度を高めることができる。その結果、スリットノズルを長期使用ことが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るスリットノズルを装備する基板処理装置の一実施形態である塗布装置の全体構成を模式的に示す図である。
【
図2A】
図1の塗布装置で使用されるスリットノズルの第1実施形態の主要構成を模式的に示す分解組立図である。
【
図2B】スリットノズルを鉛直下方から見た図である。
【
図3】第1実施形態において外付方式の調整機構を採用したことによる作用効果を説明するための図である。
【
図4】本発明に係るスリットノズルの第2実施形態の一部を示す図である。
【
図5】本発明に係るスリットノズルの第3実施形態の一部を示す図である。
【
図6】本発明に係るスリットノズルの第4実施形態の一部を示す図である。
【
図7A】
図1の塗布装置で使用されるスリットノズルの第5実施形態の主要構成を模式的に示す分解組立図である。
【
図7B】第5実施形態に係るスリットノズルを鉛直下方から見た図である。
【
図8A】
図1の塗布装置で使用されるスリットノズルの第6実施形態を鉛直下方から見た図である。
【
図9】本発明に係るスリットノズルの第7実施形態の一部を示す図である。
【
図10A】本発明に係るスリットノズルの第8実施形態の一部を示す図である。
【
図11】本発明に係るスリットノズルの第9実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<塗布装置の全体構成>
図1は、本発明に係るスリットノズルを装備する基板処理装置の一実施形態である塗布装置の全体構成を模式的に示す図である。この塗布装置1は、
図1の左手側から右手側に向けて水平姿勢で搬送される基板Sの表面Sfに塗布液を塗布するスリットコータである。例えば、ガラス基板や半導体基板等各種の基板Sの表面Sfに、レジスト膜の材料を含む塗布液、電極材料を含む塗布液等、各種の処理液を塗布し均一な塗布膜を形成する目的に、この塗布装置1を好適に利用することができる。
【0015】
なお、以下の各図において装置各部の配置関係を明確にするために、
図1に示すように右手系XYZ直交座標を設定する。基板Sの搬送方向を「X方向」とし、
図1の左手側から右手側に向かう水平方向を「+X方向」と称し、逆方向を「-X方向」と称する。また、X方向と直交する水平方向Yのうち、装置の正面側(図において手前側)を「-Y方向」と称するとともに、装置の背面側を「+Y方向」と称する。さらに、鉛直方向Zにおける上方向および下方向をそれぞれ「+Z方向」および「-Z方向」と称する。
【0016】
まず
図1を用いてこの塗布装置1の構成および動作の概要を説明し、その後で本発明の技術的特徴を備えるスリットノズルの詳細な構造および開口寸法の調整動作について説明する。塗布装置1では、基板Sの搬送方向Dt、つまり(+X方向)に沿って、入力コンベア100、入力移載部2、浮上ステージ部3、出力移載部4、出力コンベア110がこの順に近接して配置されており、以下に詳述するように、これらにより略水平方向に延びる基板Sの搬送経路が形成されている。
【0017】
処理対象である基板Sは
図1の左手側から入力コンベア100に搬入される。入力コンベア100は、コロコンベア101と、これを回転駆動する回転駆動機構102とを備えており、コロコンベア101の回転により基板Sは水平姿勢で下流側、つまり(+X)方向に搬送される。入力移載部2は、コロコンベア21と、これを回転駆動する機能および昇降させる機能を有する回転・昇降駆動機構22とを備えている。コロコンベア21が回転することで、基板Sはさらに(+X)方向に搬送される。また、コロコンベア21が昇降することで基板Sの鉛直方向位置が変更される。このように構成された入力移載部2により、基板Sは入力コンベア100から浮上ステージ部3に移載される。
【0018】
浮上ステージ部3は、基板の搬送方向Dtに沿って3分割された平板状のステージを備える。すなわち、浮上ステージ部3は入口浮上ステージ31、塗布ステージ32および出口浮上ステージ33を備えており、これらの各ステージの表面は互いに同一平面の一部をなしている。入口浮上ステージ31および出口浮上ステージ33のそれぞれの表面には浮上制御機構35から供給される圧縮空気を噴出する噴出孔がマトリクス状に多数設けられており、噴出される気流から付与される浮力により基板Sが浮上する。こうして基板Sの裏面Sbがステージ表面から離間した状態で水平姿勢に支持される。基板Sの裏面Sbとステージ表面との距離、つまり浮上量は、例えば10マイクロメートルないし500マイクロメートルとすることができる。
【0019】
一方、塗布ステージ32の表面では、圧縮空気を噴出する噴出孔と、基板Sの裏面Sbとステージ表面との間の空気を吸引する吸引孔とが交互に配置されている。浮上制御機構35が噴出孔からの圧縮空気の噴出量と吸引孔からの吸引量とを制御することにより、基板Sの裏面Sbと塗布ステージ32の表面との距離が精密に制御される。これにより、塗布ステージ32の上方を通過する基板Sの表面Sfの鉛直方向位置が規定値に制御される。浮上ステージ部3の具体的構成としては、例えば特許第5346643号に記載のものを適用可能である。なお、塗布ステージ32での浮上量については後で詳述するセンサ61、62による検出結果に基づいて制御ユニット9により算出され、また気流制御によって高精度に調整可能となっている。
【0020】
なお、入口浮上ステージ31には、図には現れていないリフトピンが配設されており、浮上ステージ部3にはこのリフトピンを昇降させるリフトピン駆動機構34が設けられている。
【0021】
入力移載部2を介して浮上ステージ部3に搬入される基板Sは、コロコンベア21の回転により(+X)方向への推進力を付与されて、入口浮上ステージ31上に搬送される。入口浮上ステージ31、塗布ステージ32および出口浮上ステージ33は基板Sを浮上状態に支持するが、基板Sを水平方向に移動させる機能を有していない。浮上ステージ部3における基板Sの搬送は、入口浮上ステージ31、塗布ステージ32および出口浮上ステージ33の下方に配置された基板搬送部5により行われる。
【0022】
基板搬送部5は、基板Sの下面周縁部に部分的に当接することで基板Sを下方から支持するチャック機構51と、チャック機構51上端の吸着部材に設けられた吸着パッド(図示省略)に負圧を与えて基板Sを吸着保持させる機能およびチャック機構51をX方向に往復走行させる機能を有する吸着・走行制御機構52とを備えている。チャック機構51が基板Sを保持した状態では、基板Sの裏面Sbは浮上ステージ部3の各ステージの表面よりも高い位置に位置している。したがって、基板Sは、チャック機構51により周縁部を吸着保持されつつ、浮上ステージ部3から付与される浮力により全体として水平姿勢を維持する。なお、チャック機構51により基板Sの裏面Sbを部分的に保持した段階で基板Sの表面の鉛直方向位置を検出するために板厚測定用のセンサ61がコロコンベア21の近傍に配置されている。このセンサ61の直下位置に基板Sを保持していない状態のチャック(図示省略)が位置することで、センサ61は吸着部材の表面、つまり吸着面の鉛直方向位置を検出可能となっている。
【0023】
入力移載部2から浮上ステージ部3に搬入された基板Sをチャック機構51が保持し、この状態でチャック機構51が(+X)方向に移動することで、基板Sが入口浮上ステージ31の上方から塗布ステージ32の上方を経由して出口浮上ステージ33の上方へ搬送される。搬送された基板Sは、出口浮上ステージ33の(+X)側に配置された出力移載部4に受け渡される。
【0024】
出力移載部4は、コロコンベア41と、これを回転駆動する機能および昇降させる機能を有する回転・昇降駆動機構42とを備えている。コロコンベア41が回転することで、基板Sに(+X)方向への推進力が付与され、基板Sは搬送方向Dtに沿ってさらに搬送される。また、コロコンベア41が昇降することで基板Sの鉛直方向位置が変更される。出力移載部4により、基板Sは出口浮上ステージ33の上方から出力コンベア110に移載される。
【0025】
出力コンベア110は、コロコンベア111と、これを回転駆動する回転駆動機構112とを備えており、コロコンベア111の回転により基板Sはさらに(+X)方向に搬送され、最終的に塗布装置1外へと払い出される。なお、入力コンベア100および出力コンベア110は塗布装置1の構成の一部として設けられてもよいが、塗布装置1とは別体のものであってもよい。また例えば、塗布装置1の上流側に設けられる別ユニットの基板払い出し機構が入力コンベア100として用いられてもよい。また、塗布装置1の下流側に設けられる別ユニットの基板受け入れ機構が出力コンベア110として用いられてもよい。
【0026】
このようにして搬送される基板Sの搬送経路上に、基板Sの表面Sfに塗布液を塗布するための塗布機構7が配置される。塗布機構7はスリットノズル71を有している。また、図示を省略するが、スリットノズル71には位置決め機構が接続されており、位置決め機構によりスリットノズル71は塗布ステージ32の上方の塗布位置(
図1中で実線で示される位置)やメンテナンス位置に位置決めされる。さらに、スリットノズル71には、本発明の「処理液供給機構」の一例に相当する塗布液供給機構8が接続されており、塗布液供給機構8から塗布液が供給され、ノズル下部に下向きに開口する吐出口から塗布液が吐出される。本実施形態では、基板Sは、本発明の「相対移動機構」の一例に相当する吸着・走行制御機構52によってスリットノズル71に対して相対的に移動され、塗布液の塗布が実行される。なお、スリットノズル71の実施形態については後で詳述する。
【0027】
スリットノズル71には、
図1に示すように、基板Sの浮上高さを非接触で検知するための浮上高さ検出センサ62が設置されている。この浮上高さ検出センサ62によって、浮上した基板Sと、塗布ステージ32のステージ面の表面との離間距離を測定することが可能であり、その検出値に伴って、制御ユニット9を介して、スリットノズル71が下降する位置を調整することができる。なお、浮上高さ検出センサ62としては、光学式センサや、超音波式センサなどを用いることができる。
【0028】
スリットノズル71に対して所定のメンテナンスを行うために、
図1に示すように、塗布機構7にはノズル洗浄待機ユニット79が設けられている。ノズル洗浄待機ユニット79は、主にローラ791、洗浄部792、ローラバット793などを有している。そして、スリットノズル71がメンテナンス位置に位置決めされた状態で、これらによってノズル洗浄および液だまり形成を行い、スリットノズル71の吐出口を次の塗布処理に適した状態に整える。
【0029】
この他、塗布装置1には、装置各部の動作を制御するための制御ユニット9が設けられている。制御ユニット9は、所定のプログラムや各種レシピなどを記憶する記憶部、当該プログラムを実行することで装置各部に所定の動作を実行させるCPUなどの演算処理部、液晶パネルなどの表示部およびキーボードなどの入力部を有している。
【0030】
以下、スリットノズル71の具体的な構成例および吐出口の開口寸法の調整方法などについて詳述する。なお、ここでいう開口寸法の調整とは、開口寸法が一定あるいは予め定められた規定値となることを目指す調整ではなく、吐出の結果として基板Sの表面に形成される塗布膜の厚さを均一にすることを目指す調整である。
【0031】
<第1実施形態>
図2Aは
図1の塗布装置で使用されるスリットノズルの第1実施形態の主要構成を模式的に示す分解組立図であり、
図2Bは当該スリットノズルを鉛直下方から見た図であり、
図2Cは
図2B中のC-C線断面図である。なお、理解容易の目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。この点については、以下の図面においても同様である。
【0032】
スリットノズル71の第1実施形態であるスリットノズル71Aでは、ノズル使用開始前および使用開始後を問わず、任意のタイミングで調整機構がノズル本体に装着され、オペレータまたはユーザ(以下、単に「オペレータ」と称する)による開口寸法の部分的な広大調整動作(以下「広大動作」という)が可能となっている。以下、
図2A~
図2Cを参照しつつスリットノズル71Aの構成および開口寸法の広大動作について説明する。
【0033】
スリットノズル71は、
図2Aに示すように、第1本体部711、第2本体部712、第1側板713および第2側板714を有している。一点鎖線矢印で示すように、第1本体部711と第2本体部712とがX方向(本発明の「対向方向」に相当)に対向する状態で結合され、その結合体の(-Y)側端面に第1側板713が、また(+Y)側端面に第2側板714がそれぞれ結合されてノズル本体710が構成される。このノズル本体710に対して調整機構720が取り付け可能となっている。
【0034】
ノズル本体710の各部材は、例えばステンレス鋼やアルミニウム等の金属ブロックから削り出されたものである。また、各部材は例えばボルトのような適宜の固結部材で固結されることによって互いに結合されるが、そのような結合構造は公知である。そこで、図面を見やすくするため、ここでは固定ボルトやこれを挿通するためのねじ穴等、固結に関わる構成の記載を省略するものとする。一方、調整機構720を取り付けるためのねじ穴や固定ボルト、ならびに調整機構720の構成要素である調整用のボルトなどについては、詳細に図示説明する。この点は後述の他の実施形態においても同様とする。
【0035】
第1本体部711の第2本体部712と対向する側の主面、つまり(+X)側の主面のうち下半分は、YZ平面と平行な平坦面711aとなるように仕上げられている。以下では、この平坦面711aを「第1平坦面」と称する。第1本体部711の第2本体部712と対向する側の主面のうち上半分も、YZ平面と平行な平坦面711bとなるように仕上げられている。また、第1本体部711の下部は下向きに突出して第1リップ部711cを形成している。平坦面711a、711bは、Y方向を長手方向とするとともにX方向を深さ方向とする略半円柱形状の溝711dによって隔てられている。この溝711dは、塗布液の流路におけるマニホールドとして機能するものである。
【0036】
一方、第2本体部712の第1本体部711と対向する側の主面、つまり(-X)側の主面は、YZ平面と平行な単一の平坦面712aとなっている。以下では、この平坦面712aを「第2平坦面」と称する。また、第2本体部712の下部は下向きに突出して第2リップ部712cを形成している。平坦面711bと、第2平坦面712aのうち上半分とが密着するように、第1本体部711と第2本体部712とが結合される。
【0037】
第1平坦面711aは、平坦面711bより僅かに(-X)側に後退している。このため、第1本体部711と第2本体部712とが結合された状態では、第1平坦面711aと第2平坦面712aとは、微小な第1ギャップG1を隔てて平行に対向することとなる。このように互いに対向する対向面(第1平坦面711a、第2平坦面712a)の間のギャップ部分がマニホールドからの塗布液の流路となり、その下端が基板Sの表面Sfに向けて下向きに開口する吐出口715として機能する。吐出口715は、Y方向を長手方向とし、X方向における開口寸法Wが微小なスリット状の開口である。
【0038】
第2本体部712では、第2リップ部712cの近傍において、上下2段に分かれてねじ穴列が設けられている。上方側のねじ穴列では、複数(本実施形態では、24個)の取付用ねじ穴712fがY方向に列状に配設されている。一方、下方側のねじ穴列では、複数(本実施形態では、12個)の調整用ねじ穴712gがY方向に列状に配設されている。より詳しくは、
図2Aに示すように、Y方向において最上流に位置する調整用ねじ穴712gが、Y方向において最上流側で互いに隣接する2つの取付用ねじ穴712fから等距離の下方位置に配置されている。つまり、(+X)方向側から見ると、上記取付用ねじ穴712f、721fと調整用ねじ穴712gとはそれぞれ倒立2等辺三角形の頂点に位置している。この倒立2等辺三角形状の領域が次に説明する調整機構720のブロック体721の取付領域として機能する。また、取付用ねじ穴712f、721fと調整用ねじ穴712gとの組み合わせは、(+Y)方向に複数繰り返され、第2本体部712の第2リップ部712cの近傍部位がY方向全体にわたってブロック体721の取付領域として機能する。すなわち、第2平坦面712aのY方向寸法を12で割った長さ単位で、最大12個のブロック体721がノズル本体710の(+X)方向側の側面に対して取付自在となっている。
【0039】
ブロック体721は、
図2A中の部分拡大図に示すように、調整本体部721aと、突出部721bとを有している。ブロック体721は、例えばステンレス鋼やアルミニウム等の金属ブロックから削り出されたものである。ブロック体721では、調整本体部721aに2つの貫通孔721c、721cがX方向に貫通して設けられるとともに、突出部721bに1つの貫通孔721dがX方向に貫通して設けられている。これら3つの貫通孔721c、721c、721dは、ブロック体721の各取付領域に対応している。つまり、貫通孔721c、721c、721dは、それぞれ倒立2等辺三角形状の頂点に相当する位置に設けられている。これらのうち調整本体部721aに設けられた貫通孔721c、721cは、それぞれ取付領域を構成する2つの取付用ねじ穴712f、712fに対応している。このため、貫通孔721c、721cがそれぞれ取付用ねじ穴712f、712fとX方向に並ぶように、調整本体部721aを位置決めした状態で、固定ボルト723、723によってブロック体721を第2本体部712に取り付けることができる。つまり、固定ボルト723、723がそれぞれ貫通孔721c、721cを介して第2本体部712に挿入され、取付用ねじ穴712f、712fに螺刻された雌ねじと螺合することで、ブロック体721がしっかりと第2本体部712に固定される。こうして、ブロック体721の調整本体部721aがノズル本体710に取り付けられる。
【0040】
この調整本体部721aの下端部のうち(+X)方向側の部位では、突出部721bが吐出口715側、つまり鉛直下方(-Z)に突設されている。このため、
図2Cに示すように、第2本体部712への調整本体部721aの取付によって、突出部721bが第2本体部712に対して第1本体部711の反対側、つまり(+X)方向側で、対向方向Xにおいて第2本体部712から第2ギャップG2を隔てて第2本体部712と対向する。
【0041】
このように第2本体部712と対向する突出部721bには、調整用貫通孔721dがX方向に貫通して設けられている。貫通孔721dは、
図2Aに示すように、取付用の貫通孔721c、721cから等距離の下方位置に配置されている。つまり、(+X)方向側から見ると、ブロック体721に設けられた3つの貫通孔721c、721c、721dも、取付領域と同一形状(倒立2等辺三角形)の頂点に位置している。
【0042】
突出部721bに対し、上記第2ギャップG2を調整することで吐出口715の開口寸法Wを調整するギャップ調整部722が装着可能となっている。この第1実施形態では、上記したように、開口寸法Wを部分的に広大調整するために、ギャップ調整部722は、調整ボルト725で構成される広大調整機構724を有している。
【0043】
調整ボルト725は、
図2Cに示すように、頭部725aと、頭部725aの座面から対向方向(-X)に延設されたねじ部725bとを有している。ねじ部725bは、第2リップ部712cの近傍で、第2本体部712の調整用ねじ穴712gに螺合可能となっている。例えば
図2Aに示すように、Y方向に延びる吐出口715のうち5箇所で開口寸法Wを現状よりも広大させる必要が生じると、次のようにして開口寸法Wの広大動作がオペレータにより実行される。なお、説明の便宜から、開口寸法Wを調整する箇所に対応する取付領域を以下「被調整領域」と称する。
【0044】
スリットノズル71Aから塗布液を吐出した結果、基板Sの表面に形成される塗布膜の厚さを解析したところ、例えば
図2Aに示すように5つの被調整領域で開口寸法Wを広大調整するのが望まれることがある。そこで、被調整領域毎に次の広大動作が実行される。つまり、オペレータは、第2本体部712の被調整領域に設けられた取付用ねじ穴712f、712fと貫通孔721c、721cとが1対1で対応するように、ブロック体721を配置する。その状態で、オペレータは、固定ボルト723、723をそれぞれ貫通孔721c、721cを介して第2本体部712に挿入し、取付用ねじ穴712f、712fに設けられた雌ねじと螺合させる。これにより、
図2Cに示すように、突出部721bが第2ギャップG2を隔てて第2本体部712と対向する。しかも、調整用貫通孔721dと調整用ねじ穴712gとがX方向に揃う。そこで、オペレータは、突出部721bに対して第2本体部712の反対側(
図2Cの右手側)から調整ボルト725を調整用貫通孔721d(本発明の「広大設置部位」の一例に相当)に挿通してねじ部725bを第2本体部712の調整用ねじ穴712gに螺入する。そして、頭部725aの座面で突出部721bが係止された時点より、さらにオペレータが調整ボルト725を回転させて上記螺入を進行させると、第2ギャップG2が減少する。より具体的には、調整ボルト725の回転量に応じた距離だけ、第2本体部712のうち第2リップ部712cの近傍部位が突出部721b側(
図2C中の右手側)に引き寄せられ、第2ギャップG2が減少する。その結果、第2リップ部712cが第1リップ部711cから(+X)方向に離れ、開口寸法Wが広がる(広大動作)。
【0045】
以上のように、第1実施形態によれば、吐出口715を構成する第1本体部711および第2本体部712以外の部品(ブロック体721)を外付方式で取り付け、開口寸法Wを調整している。したがって、ブロック体721に対応した範囲で開口寸法Wを調整することでき、調整許容度を高めることができる。その結果、スリットノズル71Aの長期使用が可能となる。
【0046】
また、開口寸法Wを調整する調整機構を外付しているため、次のような作用効果も得られる。この点について、
図3を参照しつつ説明する。
【0047】
図3は、第1実施形態において外付方式の調整機構を採用したことによる作用効果を説明するための図である。同図中の符号ΔWは、調整ボルト725の螺入に伴う開口寸法Wの変化量を示している。この変化量ΔWはブロック体721の断面構造に依存している。つまり、ブロック体721の選択により変化量ΔWを異ならせることができ、上記したようにブロック体721に対応した範囲で開口寸法Wを調整可能となっている。この点について、さらに詳しく説明する。
【0048】
ブロック体721は調整本体部721aと突出部721bとで構成されている。そして、調整ボルト725の螺入時には、
図2Cに示すように、第2本体部712の吐出口近傍部位と突出部721bが互いに近接して第2ギャップG2が減少する。そのギャップ減少特性は突出部721bの曲げ剛性に応じて変化する。つまり、ブロック体721の断面構造に応じてギャップ減少特性が異なり、吐出口715の開口寸法Wを調整できる範囲も異なる。したがって、例えば
図3に示すように、互いに断面構造が異なる3種類のブロック体721を準備しておき、開口寸法Wの調整範囲に応じて適切なブロック体721を選択することができる。
【0049】
例えば、
図3中の下段に示すように2次断面モーメントIcが最も大きく、高い曲げ剛性を有するブロック体721を用いると、その他のブロック体721を用いる場合よりも突出部721bが曲がり難く、第2本体部712の吐出口近傍部位が大きくなる。したがって、開口寸法Wを大きく調整する、例えば+20%の範囲で調整したい場合には、突出部721bの断面積が比較的大きなブロック体721を用いるのが好適である。ただし、この場合、調整ボルト725の単位回転量当たりの開口寸法Wの調整量ΔWcは最も大きい、換言すると調整の分解能が低く、精密な開口寸法Wの調整には不向きである。
【0050】
これに対し、精密調整の観点から検討すると、
図3中の上段に示すように2次断面モーメントIaは最も小さいが、調整ボルト725の単位回転量当たりの開口寸法Wの調整量ΔWaも小さく、高い分解能を有するブロック体721を用いるのが有利である。また、
図3の中段に示すように、中程度の2次断面モーメントIbおよび調整量ΔWbを有するブロック体721を用いることで、開口寸法Wおよび精度をバランス良く調整することができる。なお、本実施形態では、3種類のブロック体721を予め準備しているが、準備するブロック体721の種類数はこれに限定されるものではなく、任意である。また、本実施形態では、断面形状の変更により曲げ剛性を相違させているが、ブロック体721の材質や大きさなどを相違させる、あるいは材質、大きさおよび形状などを任意に組み合わせて曲げ剛性を相違させてもよい。
【0051】
なお、第1実施形態では、調整機構720が5つの広大調整機構724を含んでいるが、広大調整機構724の個数はこれに限定されるものではなく、被調整領域の大きさや個数などに応じて上記個数を1ないし最大個数(第1実施形態では、12)の間で変更可能である。
【0052】
<第2実施形態>
図4は、本発明に係るスリットノズルの第2実施形態の一部を示す図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、1つのブロック体721に対して2本の調整ボルト725を適用可能となっていることである。より詳しくは、各ブロック体721に対し、2つの貫通孔721d、721dがY方向に並設されている。第2本体部712に対し、第1実施形態の2倍に取付用ねじ穴712fが設けられている。したがって、第1実施形態よりも、きめ細かく開口寸法Wを調整することができる。
【0053】
<第3実施形態>
図5は、本発明に係るスリットノズルの第3実施形態の一部を示す図である。この第3実施形態が第2実施形態と大きく相違する点は、ブロック体721の突出部721bにおいて、貫通孔721d、721dの間にスリット721hが設けられることで、突出部721bが2つの突出部位721b1、721b2に区画されている点である。このように区画された突出部位721b1、721b2は、それぞれ独立して曲げ変形可能となっている。したがって、例えば突出部位721b1に設けられる貫通孔721dに適用された調整ボルト725による開口寸法Wの調整は、他方の突出部位721b2の影響を受けることなく、実行される。したがって、開口寸法Wの調整をさらに高精度に行うことができる。
【0054】
<第4実施形態>
図6は、本発明に係るスリットノズルの第4実施形態の一部を示す図である。上記第3実施形態では、突出部721bの分割数は2であるが、3以上であってもよい。つまり、N本(
図6ではN=2)のスリット721hを導入することで、(N+1)個の突出部位721b1、721b2、721b3、…を形成し、ブロック体721をいわゆる櫛歯状に仕上げてもよい。そして、各突出部位721b1、721b2、721b3、…に貫通孔721dを配置し、調整ボルト725を適用可能に構成してもよい。この第4実施形態によれば、1つのブロック体721により開口寸法Wの調整が可能な範囲がY方向に広がる。
【0055】
<第5実施形態>
図7Aは
図1の塗布装置で使用されるスリットノズルの第5実施形態の主要構成を模式的に示す分解組立図であり、
図7Bは第5実施形態に係るスリットノズルを鉛直下方から見た図であり、
図7Cは
図7B中のC-C線断面図である。この第5実施形態に係るスリットノズル71Bが第1実施形態と大きく相違する点は、調整機構720が開口寸法Wを部分的に狭小調整するための狭小調整機構726を有している点であり、その他の構成は基本的に第1実施形態と同一である。したがって、以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成および動作については同一符号を付して構成説明を省略する。
【0056】
狭小調整機構726は、第2本体部712の調整用ねじ穴712gに螺合可能な雄ねじが螺刻されたねじ棒727と、ねじ棒727の中間部に螺合されたナット728と、を有している。ナット728は、
図7Cに示すように、第2本体部712と突出部721bとの間に形成される第2ギャップG2の間に位置している。一方、ねじ棒727は(+X)方向側から貫通孔721dに挿入され、ナット728と螺合されながら第2本体部712に送り込まれる。そして、ねじ棒727の先端部が調整用ねじ穴712gに螺入される。これにより、ねじ棒727は、ブロック体721の貫通孔721dに遊挿された状態で第2本体部712の吐出口近傍部位と一体化される。ここで、オペレータがナット728を回転操作して(+X)方向に移動させると、開口寸法Wの狭小調整が実行される。より詳しくは、(+X)方向に移動するナット728は突出部721bの(-X)方向側の側面に当接する。それ以降も、ナット728を突出部721bに当接させたままナット728が回転すると、ねじ棒727は第2本体部712と連結されたまま(-X)方向に移動する。この移動に伴って第2ギャップG2が増大する。すなわち、ナット728の回転量に応じた距離だけ、ねじ棒727が(-X)方向に移動し、第2本体部712の吐出口近傍部位を(-X)方向に押し遣りながら第2ギャップG2が増大する。その結果、第2リップ部712cが第1リップ部711cに近づき、開口寸法Wが狭まる(狭小動作)。
【0057】
以上のように、第5実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。つまり、スリットノズル71Bから塗布液を吐出した結果、基板S(
図1)の表面に形成される塗布膜の厚さを解析したところ、
図7Aに示すように、例えば5つの被調整領域で開口寸法Wを狭小調整するのが望まれることがある。そこで、第5実施形態では、各被調整領域において、吐出口715を構成する第1本体部711および第2本体部712以外の部品(ブロック体721)を外付方式で取り付け、ナット728の操作により開口寸法Wを調整している。したがって、ブロック体721に対応した範囲で開口寸法Wを調整することでき、調整許容度を高めることができる。その結果、スリットノズル71Bの長期使用が可能となっている。
【0058】
また、開口寸法Wを調整する調整機構を外付しているため、第1実施形態と同様に、互いに異なる曲げ剛性を有するブロック体721を準備しておき、ブロック体721の選択により変化量ΔWを異ならせることができる。したがって、上記したようにブロック体721に対応した範囲(調整可能範囲および分解能)で開口寸法Wを調整することができる。
【0059】
また、上記第5実施形態では、1つのブロック体721に対して1つの貫通孔721dを設け、1つの狭小調整機構726(=ねじ棒727+ナット728)を適用している。しかしながら、第2実施形態と同様に、2つの貫通孔721dを並設し、各貫通孔721dに対して狭小調整機構726を適用してもよい。また、第3実施形態と同様に突出部721bにスリット721hを設けたり、第4実施形態と同様に櫛歯形状のブロック体721を用いてもよい。これらにより、開口寸法Wの調整精度の向上や調整可能範囲の拡大が可能となる。
【0060】
なお、第5実施形態では、調整機構720が5つの狭小調整機構726を含んでいるが、狭小調整機構726の個数はこれに限定されるものではなく、被調整領域の大きさや個数などに応じて上記個数を1ないし最大個数(第1実施形態では、12)の間で変更可能である。
【0061】
<第6実施形態>
上記第1実施形態ないし第4実施形態では、調整機構720は広大調整機構724のみで構成され、上記第5実施形態では調整機構720は狭小調整機構726のみで構成されているが、一定条件を満足させることで広大調整機構724および狭小調整機構726の混合使用が可能である。その一定条件とは、貫通孔721cが調整ボルト725およびねじ棒727のいずれも挿通可能であり、本発明の「共通設置部位」として機能することである。さらに、調整ボルト725のねじ部725bおよびねじ棒727のいずれもが調整用ねじ穴712gに螺合可能となるように構成することである。このような条件においては、第2本体部712に対し、広大調整機構724および狭小調整機構726を任意の取付領域に適用することができる。
【0062】
図8Aは、
図1の塗布装置で使用されるスリットノズルの第6実施形態を鉛直下方から見た図であり、
図8Bは
図8A中のB-B線断面図である。
図8Cは
図8A中のC-C線断面図である。第6実施形態に係るスリットノズル71Cから塗布液を吐出した結果、基板S(
図1)の表面に形成される塗布膜の厚さを解析したところ、例えばY方向において吐出口715の上流側(
図8Aの左手側)で開口寸法Wを狭める一方、下流側(
図8Aの右手側)で開口寸法Wを広げたいことがある。このような要望を満足するために、スリットノズル71Cでは、例えば
図8Aに示すように、(-Y)方向側の被調整領域に狭小調整機構726が適用されるとともに、(+Y)方向側の被調整領域に広大調整機構724が適用されている。つまり、開口寸法Wを広げたい(+Y)方向側の被調整領域では、
図8Bに示すように、第1実施形態と同様にして、広大動作が実行される。また、開口寸法Wを狭めたい(-Y)方向側の被調整領域では、
図8Cに示すように、第5実施形態と同様にして、狭小動作が実行される。
【0063】
以上のように、第6実施形態によれば、1つの吐出口715に対して広大動作および狭小動作を組み合わせて行うことができる。したがって、吐出口715の開口寸法Wの調整許容度がさらに高まり、スリットノズル71Cをさらに長期間にわたって使用することができる。
【0064】
また、上記第6実施形態では、1つのブロック体721に対して1つの貫通孔721dを設け、当該貫通孔721dに対して広大調整機構724(=調整ボルト725)または狭小調整機構726(=ねじ棒727+ナット728)を適用している。しかしながら、第2実施形態と同様に、2つの貫通孔721dを並設し、各貫通孔721dに対して広大調整機構724または狭小調整機構726を選択的に適用してもよい。また、第3実施形態と同様に突出部721bにスリット721hを設けたり、第4実施形態と同様に櫛歯形状のブロック体721を用いてもよい。これらにより、開口寸法Wの調整精度の向上や調整可能範囲の拡大が可能となる。
【0065】
<第7実施形態>
図9は、本発明に係るスリットノズルの第7実施形態の一部を示す図である。この第7実施形態は、1つのブロック体721に対して2つの貫通孔721d1、721d2が並設されている点で第2実施形態と共通する。しかしながら、貫通孔721d1は広大調整機構724(=調整ボルト725)を装着するための「広大用貫通孔」であり、貫通孔721d2は狭小調整機構726(=ねじ棒727+ナット728)を装着するための「狭小用貫通孔」である。したがって、貫通孔721d1、721d2の一方を用いることで、第2本体部712の被調整領域に対して広大動作および狭小動作の一方が選択的実行される。
【0066】
第7実施形態においても、第3実施形態と同様に突出部721bにスリット721hを設けたり、第4実施形態と同様に櫛歯形状のブロック体721を用いてもよい。これらにより、開口寸法Wの調整精度の向上や調整可能範囲の拡大が可能となる。
【0067】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば第5実施形態および第6実施形態では、狭小調整機構726を適用するために突出部721bに設けられた貫通孔721dを本発明の「狭小設置部位」として用いているが、この代わりに凹部を設けてもよい(第8実施形態)。
【0068】
図10Aは、本発明に係るスリットノズルの第8実施形態の一部を示す図である。また、
図10Bは、第8実施形態の部分断面図である。この第8実施形態では、狭小調整機構726をブロック体721に適用するために、凹部721eが狭小設置部位として突出部721bに設けられている。凹部721eは、突出部721bの(-X)方向側の側面から(+X)方向に延設され、ねじ棒727の(+X)方向側の端部を遊挿自在に設けられている。
【0069】
また、上記実施形態では、広大調整用として調整ボルト725を用い、狭小調整機構726としてねじ棒727およびナット728の組み合わせを用いている。ここで、例えば
図11に示すように、ねじ棒の中央部にナット状部材を固着したスタッドボルト729を用いてもよい(第9実施形態)。ナット状部材からX方向の両端に延びるねじ部729a、729bは、互いに逆方向に雄ねじが螺刻されている。また、それぞれに対応して第2本体部712と突出部721bに雌ねじが螺刻されている。このため、オペレータがナット状部材を一方向に回転させると、同図の実線に示すように、第2ギャップG2が広がる。このとき、第2本体部712の吐出口近傍部位が(-X)方向に押し遣られ、その結果、第2リップ部712cが第1リップ部711cに近づき、開口寸法Wが狭まる(狭小動作)。逆に、オペレータがナット状部材を逆方向に回転させると、同図の点線に示すように、第2ギャップG2が減少する。このとき、第2本体部712の吐出口近傍部位が突出部721b側に引き寄せられ、その結果、第2リップ部712cが第1リップ部711cから(+X)方向に離れ、開口寸法Wが広がる(広大動作)。
【0070】
また、上記第4実施形態ではブロック体721を3本の固定ボルト723で第2本体部712に取り付け、第4実施形態以外の実施形態ではブロック体721を2本の固定ボルト723で第2本体部712に取り付けている。ここで、第2本体部712へのブロック体721の取付態様はこれらに限定されるものではない。例えば固定ボルト723の本数は1または4本以上であってもよい。また、ボルト以外の手段によりブロック体721を3本の固定ボルト723で第2本体部712に取り付けてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、第2本体部712のみに調整機構720を外付けしている。ただし、さらに別の調整機構720を第1本体部711に取り付け、第1本体部711の吐出口近傍部位についても変位させるように構成してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、上記した調整機構720以外の調整機構を有さないスリットノズルに対して本発明を適用しているが、例えば特許文献1に記載されているように、調整機構が本来的に組み込まれたスリットノズルに対し、上記した調整機構720を外付けして開口寸法Wを調整してもよい。つまり、調整機構が本来的に組み込まれているか否かを問わず、従来より市場に流通しているスリットノズル全般に対し、本発明を適用することができる。
【0073】
さらに、上記実施形態ではスリットノズル71の下方で基板Sを搬送することでスリットノズル71と基板Sとの相対移動が実現されている。しかしながら、これらの相対移動の実現方法は上記に限定されない。例えばステージ上に保持された基板に対しスリットノズルが走査移動する構成においても、本発明は有効に機能する。また、基板の搬送形式は上記のような浮上式のものに限定されず、例えばローラ搬送、ベルト搬送、移動ステージによる搬送など各種のものを適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
この発明は、スリット状の吐出口を有するスリットノズル、当該スリットノズルの調整方法および当該スリットノズルを用いて基板に処理液を塗布する基板処理装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1…塗布装置(基板処理装置)
8…塗布液供給機構(処理液供給部)
52…吸着・走行制御機構(相対移動機構)
71,71A,71B,71C…スリットノズル
710…ノズル本体
712g…調整用ねじ穴
715…吐出口
720…調整機構
721…ブロック体
721a…(ブロック体の)調整本体部
721b…(ブロック体の)突出部
721d,721d1,721d2…貫通孔(広大設置部位、狭小設置部位)
721b1,721b2,721b3…突出部位
721e…凹部(狭小設置部位)
721h…スリット
722…ギャップ調整部
723…固定ボルト
724…広大調整機構
725…調整ボルト
725a…(調整ボルトの)頭部
725b…(調整ボルトの)ねじ部
726…狭小調整機構
727…ねじ棒
728…ナット
G1…第1ギャップ
G2…第2ギャップ
S…基板
W…開口寸法
X…対向方向