(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】シートリクライニング装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/225 20060101AFI20230814BHJP
A47C 1/025 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
B60N2/225
A47C1/025
(21)【出願番号】P 2021123663
(22)【出願日】2021-07-28
【審査請求日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0132717
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520181434
【氏名又は名称】ヒュンダイ トランシス インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI TRANSYS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】105, Sindang 1-ro, Seongyeon-myeon, Seosan-si, Chungcheongnam-do 31930, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【氏名又は名称】木村 高明
(72)【発明者】
【氏名】チャング, セウング フン
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-094375(JP,A)
【文献】特開2014-040133(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0367758(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/225
A47C 1/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内接ギヤが形成されるギヤ部と、前記ギヤ部の中心に形成されるカラーと、前記カラーと前記ギヤ部とを連結するフランジ部と、を含んでなり、前記フランジ部の半径方向の断面が円周方向に沿って繰り返し変化するように形成されたモバイルフランジ;
を含み、
前記モバイルフランジのフランジ部の半径方向の断面は、円周方向に沿って、
前記ギヤ部からカラーに向かって半径方向に進行するにつれて、前記カラーが突出した反対方向に次第に突出する傾斜面を形成する傾斜部と、
前記ギヤ部からカラーに向かって半径方向に進行するにつれてモバイルフランジの中心軸に対して垂直な平面部とが配置されたことを特徴とする
、シートリクライニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるシートのリクライニング装置の構造に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
シートリクライニング装置は、車両などのシートに装着され、シートクッションに対してシートバックの角度を調整し、調整されたシートバックの角度を維持することができるようにして着座者の利便性を図る機能をする。
【0003】
前記リクライニング装置は、シートクッション側にギヤプレートが固定され、シートバック側にモバイルフランジが固定され、前記ギヤプレートと前記モバイルフランジは、互いに偏心した状態で噛合されたサイクロイド(Cycloid)減速機を構成して、インプットデバイスを介して入力される回転力により、前記ギヤプレートに対する前記モバイルフランジの偏心位置が回転するようにして、最終的に前記ギヤプレートに対して前記モバイルフランジが回転しながらシートクッションに対するシートバックの角度が調節されるように構成される。
【0004】
また、前記ギヤプレートと前記モバイルフランジとの間には、ばねによって弾性支持されたカムが挿入され、前記カムを、前記インプットデバイスが回転しながら移動させることができるようにして、前記インプットデバイスを介して入力される回転力が前記カムを移動させて、前記ギヤプレートに対する前記モバイルフランジの偏心位置を変更させることは可能であるが、逆に、モバイルフランジに入力される回転力によっては前記カムを移動させることができないため、前記ギヤプレートに対する前記モバイルフランジの偏心位置が安定するように固定され、最終的にはシートバックの調整された角度を安定的に維持することができるように構成される。
【0005】
前記モバイルフランジは、中央部に、前記インプットデバイスが挿入されるカラー(collar)が備えられるが、前記インプットデバイスは、前記ギヤプレートに対する前記モバイルフランジの偏心位置を回転させるとき、前記カラーに挿入された状態で自転と公転を行うので、前記モバイルフランジのカラーは、その剛性と耐久性が確実に確保されるべきである。
【0006】
上記の背景技術として説明された事項は、本発明の背景に対する理解を増進するためのものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者に既に知られている従来技術に該当することを認めるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0064262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、車両シートのリクライニング装置に使用されるモバイルフランジの冷間鍛造の際にブランクサイズを縮小することによりコストを低減することができるようにし、前記モバイルフランジの小型軽量化を実現しながらも十分な剛性と耐久性を確保することができるようにしたシートリクライニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明のシートリクライニング装置は、内接ギヤが形成されるギヤ部と、前記ギヤ部の中心に形成されるカラーと、前記カラーと前記ギヤ部とを連結するフランジ部と、を含んでなり、前記フランジ部の半径方向の断面が円周方向に沿って繰り返し変化するように形成されたモバイルフランジを含み、前記モバイルフランジのフランジ部の半径方向の断面は、円周方向に沿って、前記ギヤ部からカラーに向かって半径方向に進行するにつれて、前記カラーが突出した反対方向に次第に突出する傾斜面を形成する傾斜部と、前記ギヤ部からカラーに向かって半径方向に進行するにつれてモバイルフランジの中心軸に対して垂直な平面部とが配置される。
【0010】
前記平面部は、前記ギヤ部からカラーに向かって形成され、前記平面部のカラー側の端部には、前記傾斜部の突出高さと同じ高さに次第に突出する突出回復部が連結されることができる。
【0011】
前記傾斜部の円周方向の両側面は、前記平面部及び前記突出回復部と出会う二辺を含む三角平面を形成し、前記三角平面は、前記平面部と突出回復部がなす頂点が前記頂点の対辺位置よりも前記傾斜部から平面方向に離間した位置に形成されることにより、前記傾斜部の幅を広げる形状に形成されることができる。
【0012】
また、上記の目的を達成するための本発明のモバイルフランジは、内接ギヤが形成されるギヤ部と、前記ギヤ部の中心に形成されるカラーと、前記カラーと前記ギヤ部とを連結するフランジ部と、を含んでなり、前記フランジ部は、前記カラーが形成された反対面に、前記ギヤ部から中心に行くほど前記カラーが突出した反対方向に突出する多数の傾斜部が備えられたことを特徴とする。
【0013】
前記フランジ部の傾斜部は、前記フランジ部の円周方向に沿って、多数個が、前記カラーが形成された部位から放射状に配置されることができる。
前記フランジ部の傾斜部は、前記フランジ部の半径方向に沿って長く突出した形状に形成されることができる。
【0014】
前記フランジ部の傾斜部同士の間には、前記モバイルフランジの中心軸に対して垂直な平面をなす平面部が形成されることができる。
【0015】
前記フランジ部の平面部には、前記カラーが形成された部位で前記傾斜部の突出高さと同じ高さに次第に突出する突出回復部が連結されることができる。
前記傾斜部は、前記傾斜部が前記平面部と出会う部分、及び前記傾斜部が前記突出回復部と出会う部分からそれぞれ前記平面部と前記突出回復部とが連結される部分に向かって次第に広がるように形成されることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、車両シートのリクライニング装置に使用されるモバイルフランジの冷間鍛造の際にブランクサイズを縮小することによりコストを低減することができるようにし、前記モバイルフランジの小型軽量化を実現しながらも十分な剛性と耐久性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明によるシートリクライニング装置の主要構成要素を羅列した分解斜視図である。
【
図2】本発明によるシートリクライニング装置の主要構成要素が結合された状態を説明する図である。
【
図3】本発明によるモバイルフランジの前面を示す図である。
【
図4】
図3のモバイルフランジの背面を示す図である。
【
図7】平面部なしに傾斜部のみを備えたモバイルフランジの冷間鍛造過程を説明する図である。
【
図8】
図7のような過程によってモバイルフランジを製作するためのブランクの断面を例示する図である。
【
図9】
図8と比較して本発明のモバイルフランジを製作するためのブランクの断面を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書又は出願に開示されている本発明の実施形態に対して、特定の構造的又は機能的説明は単に本発明に係る実施形態を説明するために例示されたものに過ぎず、本発明に係る実施形態は、様々な形態で実施でき、本明細書又は出願に説明された実施形態に限定されるものではない。
【0019】
本発明に係る実施形態は、多様な変更を加えることができ、種々の形態を有することができるので、特定の実施形態を図面に例示して本明細書又は出願で詳細に説明しようとする。しかし、これは本発明の概念による実施形態を特定の開示形態に限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物又は代替物を含む。
「第1」及び/又は「第2」等の用語は多様な構成要素の説明に使用できるが、これらの構成要素はこれらの用語によって限定されない。
【0020】
前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使われる。例えば、
本発明の概念による権利範囲から逸脱することなく、第1構成要素は第2構成要素とも命名でき、同様に、第2構成要素も第1構成要素とも命名できる。
【0021】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いる或いは「接続されて」いると言及された場合には、該他の構成要素に直接連結又は接続されていることもあるが、それらの間に別の構成要素が介在することもあると理解されるべきである。これに対し、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いる或いは「直接接続されて」いると言及された場合には、それらの間に別の構成要素が介在しないと理解されるべきである。構成要素間の関係を説明する他の表現、すなわち「~間に」と「すぐに~間に」又は「~に隣り合う」と「~に直接隣り合う」等も同様に解釈されるべきである。
【0022】
本明細書で使用した用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたもので、本発明を限定するものではない。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」又は「有する」などの用語は、説示された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品又はこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするもので、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品又はこれらの組み合わせの存在又は付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0023】
また、別に定義しない限り、技術的或いは科学的用語を含めて、ここで使用される全ての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。一般に使用される辞典に定義されているような用語は、関連技術の文脈上において有する意味と一致する意味であると解釈されるべきであり、本明細書において明白に定義しない限りは、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されない。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を説明することにより、本発明を詳細に説明する。各図面に提示された同一の参照符号は、同一の部材を示す。
【0024】
図1及び
図2を参照すると、本発明のシートリクライニング装置は、シートクッション側に固定されるギヤプレート1と、シートバック側に固定され、前記ギヤプレート1と偏心した状態で噛合されてサイクロイド(Cycloid)減速機を構成するモバイルフランジ3と、前記モバイルフランジ3のカラー5に回転可能に挿入され、外部から回転軸7を介して回転力の伝達を受けるインプットデバイス9と、前記ギヤプレート1の内側に挿入されるベアリング11と、前記ベアリング11と前記モバイルフランジ3のカラー5との間に挿入され、前記ギヤプレート1とモバイルフランジ3の偏心状態をばね13の弾性力で支持するカム15と、を含んで構成される。
【0025】
シートクッションに対してシートバックの角度を回転させる動作は、前記回転軸7を介して前記インプットデバイス9に回転力が入力されると、前記入力デバイス9のデバイス突起17が回転しながら前記カム15を回転させて、前記ギヤプレート1に対するモバイルフランジ3の偏心位置が回転するようにすることでサイクロイド減速作用が行われ、前記モバイルフランジ3が前記ギヤプレート1に対して回転することにより行われる。
【0026】
上述したようにモバイルフランジ3が回転してシート着座者の所望の角度でシートバックが回転した後、前記回転軸7の回転力を解除すると、前記カム15は、前記ばね13の弾性力によって前記ギヤプレート1に対するモバイルフランジ3の偏心位置を固定させることにより、前記モバイルフランジ3側から入力される回転力に対しては、前記モバイルフランジ3とギヤプレート1との間の回転が禁止されるようにするので、結果としてシートバックの調整された角度を安定的に維持することができるようになる。
【0027】
上述したような本発明のシートリクライニング装置に含まれているモバイルフランジ3は、
図3乃至
図6に示すように、内接ギヤ19が形成されるギヤ部21、前記ギヤ部21の中心に形成されるカラー5、及び前記カラー5とギヤ部21とを連結するフランジ部23を含んで構成され、前記フランジ部23の半径方向の断面が円周方向に沿って繰り返し変化するように形成される。
【0028】
つまり、前記モバイルフランジ3のフランジ部23の半径方向の断面は、前記ギヤ部21からカラー5に向かって半径方向に進行するにつれて、前記カラー5が突出した反対方向に次第に突出する傾斜面を形成する傾斜部25と、前記ギヤ部21からカラー5に向かって半径方向に進行するにつれてモバイルフランジ3の中心軸に対して垂直な平面部27とが、円周方向に沿って繰り返し配置されたものである。
【0029】
すなわち、前記モバイルフランジ3のカラー5が形成された方向を前面とし、その反対方向を背面とするとき、前記傾斜部25は、フランジ部23の背面に、前記ギヤ部21から中心に行くほど突出する形状に多数個が形成されたのである。
【0030】
図示の如く、前記フランジ部23の傾斜部25は、前記フランジ部23の円周方向に沿って、多数個が、前記カラー5が形成された部位から放射状に配置され、前記フランジ部23の半径方向に沿って長く突出した形状に形成される。
【0031】
また、前記フランジ部23の傾斜部25同士の間に形成された平面部27は、前記ギヤ部21からカラー5に向かって形成され、前記平面部27のカラー5側の端部には、前記傾斜部25の突出高さと同じ高さに次第に突出する突出回復部29が連結される。
【0032】
したがって、前記カラー5がフランジ部23に連結される部位は、滑らかな円形の表面が形成されることにより、前記カラー5を強く支持することができる。
前記傾斜部25の円周方向の両側面は、前記平面部27及び突出回復部29と出会う二辺を含む三角形平面31を形成し、前記三角平面31は、前記平面部27と突出回復部29とがなす頂点が前記頂点の対辺位置よりも前記傾斜部25から外側に外れた位置に形成されることにより、前記傾斜部25の幅を広げる形状に形成される。
【0033】
つまり、前記傾斜部25は、前記傾斜部25が前記平面部27と出会う部分、及び前記傾斜部25が前記突出回復部29と出会う部分が、それぞれ前記平面部27と突出回復部29とが連結される部分に向かって次第に広がるように形成されている。
【0034】
このような形状により、前記傾斜部25と平面部27との連結構造をさらに丈夫にし、前記傾斜部25と突出回復部29によって前記カラー5をさらに堅固かつ強く支持することができる。
【0035】
上述したようにモバイルフランジ3のフランジ部23が前記平面部27、傾斜部25及び突出回復部29によって形成されると、前記フランジ部23が単純な平面で形成された場合と比較して、前記カラー5をより堅固かつ丈夫に支持することができる剛性の確保が可能であるため、究極的にはモバイルフランジ3及びシートリクライニング装置の耐久性を向上させることができる。
【0036】
一方、カラーの支持剛性を確保するためには、上述した本発明とは異なり、モバイルフランジのフランジ部の背面が全体的に突出して傾斜面33のみからなり、平面部を備えない場合を考えることができる。
【0037】
ところが、この場合には、モバイルフランジの冷間鍛造による製作の際に、
図7で説明したように、傾斜面33に沿って材料の肉厚が、矢印で表示された方向に沿って比較的迅速に充填されるので、
図8に示すように比較的中央ホールの直径Aが大きく且つ厚さBも厚いブランクを用いてモバイルフランジ3を製作しなければならない。この場合、前記ギヤ部21の肉厚が足りなくなり、内接ギヤ19の歯形充填が足りない現象が発生する確率が大幅に増加する。
【0038】
また、上述したように厚いブランクを使用すると、それほど生産単価が上昇し、金型の面圧が過剰に発生して金型の破損可能性が高くなるという問題点がある。
しかし、上述した本発明を使用すると、上述した冷間鍛造によってモバイルフランジ3を製作するにあたり、前記平面部27が存在することにより、前記傾斜部25による過度な肉厚の移動が防止されるので、ギヤ部21の内接ギヤ19の歯形充填が確実に確保され、使用されるブランクも
図9に例示しているようにブランクの全体直径C´=Cと互いに同一でありながらも、中央ホール直径A´がAより小さく、厚さB´もBより小さいものを使用することができる。
【0039】
つまり、本発明によるモバイルフランジ3の構造を使用すると、これを製作するためのブランクの外径は同一であるが、その厚さと中央ホールがより小さいブランクを用いてモバイルフランジ3をより容易に製作することができる。このモバイルフランジ3は、前記傾斜部25によってカラー5の強い支持剛性を確保することにより、モバイルフランジ3自体及びシートリクライニング装置の全体的な耐久性を向上させることができ、前記平面部27によるモバイルフランジ3の鍛造作業の際に、材料の肉厚の流動が適切に制御されてギヤ部21の内接ギヤ19の歯形を確実に確保することができ、モバイルフランジ3の成形性を向上させることができる。
【0040】
本発明の特定の実施形態に関連して図示及び説明したが、以下の特許請求の範囲によって提供される本発明の技術的思想を逸脱することなく、本発明に多様な改良及び変化を加え得るのは、当業分野における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【符号の説明】
【0041】
1 ギヤプレート
3 モバイルフランジ
5 カラー
7 回転軸
9 インプットデバイス
11 ベアリング
13 ばね
15 カム
17 デバイス突起
19 内接ギヤ
21 ギヤ部
23 フランジ部
25 傾斜部
27 平面部
29 突出回復部
31 三角平面
33 傾斜面