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特許7330265着用物品の製造方法、着用物品、および着用物品の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】着用物品の製造方法、着用物品、および着用物品の製造装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20230814BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20230814BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
A61F13/15 390
A61F13/51
A61F13/15 353
A61F13/15 355B
A61F13/49 410
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021514823
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2020010359
(87)【国際公開番号】W WO2020213299
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2019076917
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】部坂 和義
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/002207(WO,A1)
【文献】特開2008-148942(JP,A)
【文献】国際公開第2018/186318(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する伸縮シートと、前記伸縮シートにおける所定の取付場所に取り付けられ、水分を吸収することが可能な吸収性本体とを備えた着用物品の製造方法であって、
伸長状態の弾性フィルムを一対のシート体で挟み込むことにより形成されたシート積層体がアンビルロールと超音波ホーンとの間を通過するように、前記シート積層体を所定の搬送方向に搬送することにより、前記取付場所を含む領域において前記搬送方向に互いに離間する複数の接合部で一対のシート体と弾性フィルムとを互いに超音波溶着して前記伸縮シートを形成する溶着工程と、
前記溶着工程の後に、前記伸縮シートのうち前記取付場所の少なくとも一部において、前記弾性フィルムの伸縮性を弱化させた弱化領域を形成する弱化工程と、
前記吸収性本体を、前記弱化領域に重なるように前記取付場所に取り付ける取付工程とを含む着用物品の製造方法。
【請求項2】
前記弱化工程では、前記取付場所の少なくとも一部において、複数の切込みを前記伸縮シートに形成することにより前記弱化領域を形成する、
請求項1に記載の着用物品の製造方法。
【請求項3】
前記弱化工程では、前記伸縮シートを連続的に搬送しながら、ロール本体の周面にカッターが設けられたカッターロールを用いて、前記取付場所の少なくとも一部において前記切込みを形成する、
請求項2に記載の着用物品の製造方法。
【請求項4】
前記弱化工程では、前記カッターを前記弾性フィルムの融点よりも高い温度に加熱した状態で、前記切込みを形成する、
請求項3に記載の着用物品の製造方法。
【請求項5】
前記弱化工程では、前記取付場所の少なくとも一部において、前記伸縮シートに対して超音波溶着を追加的に行って追加の接合部を形成することによって前記弱化領域を形成する、
請求項1に記載の着用物品の製造方法。
【請求項6】
前記弱化工程では、前記取付場所の少なくとも一部の部分において、当該部分を加熱された部材に接触させて前記一対のシート体および前記弾性フィルムを互いにヒートシールすることによって前記弱化領域を形成する、
請求項1に記載の着用物品の製造方法。
【請求項7】
前記ヒートシールとして、前記伸縮シートを加熱しながら当該伸縮シートの厚さ方向へ部分的に押圧して所定の型を付けるヒートエンボス加工を行う、
請求項6に記載の着用物品の製造方法。
【請求項8】
前記溶着工程の後に、前記弾性フィルムに通気孔を形成する通気孔形成工程をさらに含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の着用物品の製造方法。
【請求項9】
伸縮性を有する伸縮シートと、
水分を吸収することが可能な吸収性本体と
を備えており、
前記吸収性本体が前記伸縮シートにおける所定の取付場所に取り付けられ、
前記伸縮シートは、所定の伸縮方向において伸縮性を有する弾性フィルムと、一対のシート体とを有し、
前記弾性フィルムが伸長状態で前記一対のシート体に挟み込まれた状態で、前記弾性フィルムと前記一対のシート体とが前記伸縮方向に互いに離間する複数の接合部で複数の接合部において互いに超音波溶着され、
前記伸縮シートのうち前記取付場所の少なくとも一部において、複数の切込みにより前記弾性フィルムの伸縮性を弱化させた弱化領域が形成されており、
前記吸収性本体は、前記弱化領域に重なるように、前記取付場所に取り付けられている、着用物品。
【請求項10】
伸縮性を有する伸縮シートと、
水分を吸収することが可能な吸収性本体と
を備えており、
前記吸収性本体が前記伸縮シートにおける所定の取付場所に取り付けられ、
前記伸縮シートは、所定の伸縮方向において伸縮性を有する弾性フィルムと、一対のシート体とを有し、
前記弾性フィルムが伸長状態で前記一対のシート体に挟み込まれた状態で、前記弾性フィルムと前記一対のシート体とが前記伸縮方向に互いに離間する複数の接合部で複数の接合部において互いに超音波溶着され、
前記伸縮シートのうち前記取付場所の少なくとも一部において、前記一対のシート体および前記弾性フィルムが互いにヒートシールされた部分によって前記弾性フィルムの伸縮性を弱化させた弱化領域が形成されており、
前記吸収性本体は、前記弱化領域に重なるように、前記取付場所に取り付けられている、着用物品。
【請求項11】
前記伸縮シートは、前記ヒートシールされた部分において当該伸縮シートの厚さ方向へ部分的に押圧されて所定の型が付けられている、
請求項10に記載の着用物品。
【請求項12】
伸縮性を有する伸縮シートと、前記伸縮シートにおける所定の取付場所に取り付けられ、水分を吸収することが可能な吸収性本体とを備えた着用物品を製造する製造装置であって、
伸長状態の弾性フィルムを一対のシート体で挟み込むことにより形成されたシート積層体がアンビルロールと超音波ホーンとの間を通過するように、前記シート積層体を所定の搬送方向に搬送することにより、前記取付場所を含む領域において前記搬送方向に互いに離間する複数の接合部で一対のシート体と弾性フィルムとを互いに超音波溶着して前記伸縮シートを形成する溶着部と、
前記搬送方向において前記溶着部の下流側に配置され、前記伸縮シートのうち前記取付場所の少なくとも一部において、前記弾性フィルムの伸縮性を弱化させた弱化領域を形成する弱化部と、
前記搬送方向において前記弱化部の下流側に配置され、前記吸収性本体を、前記弱化領域に重なるように前記取付場所に取り付ける取付部と、
を備える着用物品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用物品の製造方法、着用物品、および着用物品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に用いられる使い捨ておむつなどの着用物品は、前身頃および後身頃を有する外装体と、水分を吸収することが可能な内装体とを備えている。
【0003】
外装体は身体にフィットして装着されるために伸縮性を必要とするが、外装体のうち内装体が固定される部分については、内装体の保持性の観点から部分的に伸縮性を抑える、すなわち、伸縮性を弱化させる必要がある。
【0004】
そこで、特許文献1記載の吸収性物品のように、弾性フィルムを一対のシート体で挟んでなる伸縮シートを有する外装体において、内装体が固定される部分の弾性フィルムの伸縮性を部分的に弱化させた構造がある。
【0005】
具体的には、この特許文献1では、一対のシート体の間に弾性フィルムが伸長状態で挟み込まれた積層体が、アンビルロール表面に巻かれた状態で、超音波ホーンによって超音波溶着される。この超音波溶着においては、アンビルロール表面に形成された複数の加圧凸部の位置で積層体に複数の点状の接合部を形成し、当該接合部で積層体を互いに接合することにより、積層構造の伸縮シートが形成されている。伸縮シートのうち伸縮性を弱化させたい部分では、アンビルロールに高密度に設けられた多数の加圧凸部を用いて、接合部の数を部分的に増加するように超音波溶着をしている。これにより、接合部の面積率、すなわち、単位面積当たりの接合部が占める面積の割合、を部分的に高くして伸縮シートの伸縮性を弱化させている。
【0006】
しかし、特許文献1に示される吸収性物品を製造する場合、伸縮シートにおける接合部の面積率が高い領域を形成する際に、アンビルロールに高密度に設けられた多数の加圧凸を用いて超音波溶着を一部の範囲に集中して行うことにより、伸縮シートが巻かれたアンビルロールまたは超音波ホーンの温度が高くなりすぎるという問題がある。その結果、伸縮シートにおける接合部以外の部分も溶け出してしまい、伸縮シートの連続的な加工が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-193199号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、伸縮性を部分的に弱化した伸縮シートの連続的な加工が可能な着用物品の製造方法、着用物品、および着用物品の製造装置を提供することを目的とする。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の着用物品の製造方法は、伸縮性を有する伸縮シートと、前記伸縮シートにおける所定の取付場所に取り付けられ、水分を吸収することが可能な吸収性本体とを備えた着用物品の製造方法であって、伸長状態の弾性フィルムを一対のシート体で挟み込むことにより形成されたシート積層体がアンビルロールと超音波ホーンとの間を通過するように、前記シート積層体を所定の搬送方向に搬送することにより、前記取付場所を含む領域において前記搬送方向に互いに離間する複数の接合部で一対のシート体と弾性フィルムとを互いに超音波溶着して前記伸縮シートを形成する溶着工程と、前記溶着工程の後に、前記伸縮シートのうち前記取付場所の少なくとも一部において、前記弾性フィルムの伸縮性を弱化させた弱化領域を形成する弱化工程と、前記吸収性本体を、前記弱化領域に重なるように前記取付場所に取り付ける取付工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る着用物品は、伸縮性を有する伸縮シートと、水分を吸収することが可能な吸収性本体とを備えており、前記吸収性本体が前記伸縮シートにおける所定の取付場所に取り付けられ、前記伸縮シートは、所定の伸縮方向において伸縮性を有する弾性フィルムと、一対のシート体とを有し、前記弾性フィルムが伸長状態で前記一対のシート体に挟み込まれた状態で、前記弾性フィルムと前記一対のシート体とが前記伸縮方向に互いに離間する複数の接合部で複数の接合部において互いに超音波溶着され、前記伸縮シートのうち前記取付場所の少なくとも一部において、複数の切込みにより前記弾性フィルムの伸縮性を弱化させた弱化領域が形成されており、前記吸収性本体は、前記弱化領域に重なるように、前記取付場所に取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の着用物品の製造装置は、伸縮性を有する伸縮シートと、前記伸縮シートにおける所定の取付場所に取り付けられ、水分を吸収することが可能な吸収性本体とを備えた着用物品を製造する製造装置であって、伸長状態の弾性フィルムを一対のシート体で挟み込むことにより形成されたシート積層体がアンビルロールと超音波ホーンとの間を通過するように、前記シート積層体を所定の搬送方向に搬送することにより、前記取付場所を含む領域において前記搬送方向に互いに離間する複数の接合部で一対のシート体と弾性フィルムとを互いに超音波溶着して前記伸縮シートを形成する溶着部と、前記搬送方向において前記溶着部の下流側に配置され、前記伸縮シートのうち前記取付場所の少なくとも一部において、前記弾性フィルムの伸縮性を弱化させた弱化領域を形成する弱化部と、前記搬送方向において前記弱化部の下流側に配置され、前記吸収性本体を、前記弱化領域に重なるように前記取付場所に取り付ける取付部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る着用物品を展開した状態を示す平面図である。
図2図1の弱化領域の部分Aの拡大平面図である。
図3】(a)は図1の伸縮領域の拡大断面図、(b)は図1の弱化領域の拡大断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る着用物品の製造方法を示すフローチャートである。
図5図4に示される一連の製造方法に用いられる本発明の実施形態に係る着用物品の製造装置の構成を概略的に示す図である。
図6図5の第1アンビルロールおよび超音波溶着用の超音波ホーンの構成を示す拡大正面図である。
図7図5の第2アンビルロールおよび通気孔形成用の穿孔ロールを備える通気孔形成ユニットの構成を示す拡大正面図である。
図8図5の第3アンビルロールおよびロータリーカッターを備える切込み形成ユニットの構成を示す拡大正面図である。
図9】(a)は本発明の第2実施形態に係る着用物品における弱化領域の拡大平面図、(b)は(a)の弱化領域の拡大断面図である。
図10】(a)は本発明の第3実施形態に係る着用物品における弱化領域の拡大平面図、(b)は(a)の弱化領域の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0014】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態として、図1に示される着用物品1は、一例として使い捨ておむつが展開された形態を有しているが、他の形態を有してもよい。
【0015】
図1に示される着用物品1は、主として、伸縮性を有する伸縮シート11と、水分を吸収することが可能な吸収性本体13とを備えている。吸収性本体13は、伸縮シート11における所定の取付場所P(すなわち、図1における伸縮シート11の伸縮方向Xの中央付近において直交方向Yに延びている領域)に取り付けられている。
【0016】
図1に示されるように、使い捨ておむつの形態を有する着用物品1は、展開した状態では、前身頃を構成する前腹部2と、後身頃を構成する後腹部3と、股下の部分を構成する股下部4とを有する。股下部4は、前腹部2と後腹部3とを連結する。吸収性本体13の取付場所Pは、これら前腹部2、後腹部3および股下部4のそれぞれの伸縮方向Xにおける中央部分を含む直交方向Yに連続する範囲に設定されている。前腹部2の上端および後腹部3の下端には、折り返し部分14が連続して設けられている。股下部4には、脚が挿入可能な略半円形の穴であるレッグホール15が形成されている。
【0017】
前腹部2は、胴回りの伸縮方向Xへの伸縮を許容する伸縮性を有する左右両側の伸縮領域2aと、伸縮性が弱化された中央の弱化領域2bとを有し、これら左右両側の伸縮領域2aおよび中央の弱化領域2bは連続して形成されている。前腹部2と同様に、後腹部3も、胴回りの伸縮方向Xへの伸縮を許容する伸縮性を有する左右両側の伸縮領域3aと、伸縮性が弱化された中央の弱化領域3bとを有し、これら左右両側の伸縮領域3aおよび中央の弱化領域3bは連続して形成されている。前側の弱化領域2bおよび後側の弱化領域3bは、伸縮シート11のうちの取付場所Pの少なくとも一部に形成されており、図1では取付場所Pの一部に形成されているが、取付場所Pの全体を覆う範囲に形成されてもよい。
【0018】
図3(a)、(b)に示されるように、伸縮シート11は、一対のシート体5、6と、伸縮性を有する弾性フィルム7とを備えている。伸縮シート11は、図1の前腹部2および後腹部3の全体の範囲(すなわち、伸縮領域2a、3aおよび弱化領域2b、3b全体の範囲)において、弾性フィルム7を一対のシート体5、6によって表裏両面から挟み込み、これらを互いに超音波溶着することにより形成されている。すなわち、弾性フィルム7が伸縮方向Xに伸長された状態で一対のシート体5、6に挟み込まれた状態で、弾性フィルム7と一対のシート体5、6とが伸縮方向Xおよびそれに直交する直交方向Yに互いに離間する複数の接合部8において互いに超音波溶着されている。
【0019】
なお、図1における伸縮シート11の前腹部2および後腹部3以外の部分、例えば股下部4および折り返し部分14などは、一対のシート体5、6のうちの一方のシート体5(使い捨ておむつの形態の着用物品1でいう外側になるシート体)で構成されている。
【0020】
図2および図3(b)に示される後腹部3の弱化領域3bのように、第1実施形態では、伸縮シート11のうち取付場所Pの少なくとも一部において、伸縮方向Xおよび直交方向Yに互いに離間して形成された複数の切込み10により弾性フィルム7の伸縮性を弱化させた弱化領域3bが形成されている。なお、図示されていないが、前腹部2の弱化領域2bについても上記の弱化領域3bと同様に複数の切込み10により弾性フィルム7の伸縮性を弱化させることにより、形成されている。
【0021】
図2に示されるように、伸縮方向Xとは直交する直交方向Yにおいて、切込み10がなす列(すなわち図2の縦列)の伸縮方向Xの配置ピッチP1は、接合部8がなす列(図2の縦列)の配置ピッチP2よりも小さい。
【0022】
また、図2に示される複数の切込み10は、伸縮方向Xに見て隣り合う3列の切込み10が直交方向Yに連続するように、配置されている。
【0023】
切込み10の長さについては、本発明ではとくに限定されないが、接合部8の直径よりも大きい長さであれば、切込み10による弾性フィルム7の弱化効果が確実に得られるので好ましい。例えば、接合部8の直径が1mm程度の場合、切込み10の長さは数mm~10mm程度の範囲で設定される。
【0024】
吸収性本体13は、図1に示されるように、伸縮シート11における弱化領域2b、3bに重なるように、取付場所Pにヒートシールまたは接着材による接着などによって取り付けられている。
【0025】
伸縮シート11は、取付場所Pに吸収性本体13が取り付けられた状態で、折り返し部分14が折り返し線16に沿って前腹部2および後腹部3に折り返され、当該吸収性本体13の両側の位置で脚が挿入可能な略半円形のレッグホール15が形成され、前腹部2および後腹部3が重ね合された状態でこれらの側部同士をシール(いわゆる、サイドシール)され、隣接する伸縮シート11同士が切断されることにより、使い捨ておむつの形態に加工される。
【0026】
シート体5、6は、可撓性を有するシート状の形態であれば本発明ではとくに限定されないが、使い捨ておむつなどの着用物品に使用されることを考慮すれば、通気性および柔軟性を有するシート材が好ましい。通気性および柔軟性を有するシート材としては、例えば、不織布などが採用される。不織布は、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどのオレフィン系、ポリエステル系、またはポリアミド系などの合成繊維などで製造される。
【0027】
弾性フィルム7は、上記のシート体5、6よりも弾性(いいかえれば伸縮性)を有するフィルム状の材料であればよく、例えば、弾性フィルム7として、熱可塑性エラストマーからなる樹脂フィルムなどが用いられる。熱可塑性エラストマーは、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、およびウレタンエラストマーのうちの少なくとも1種から選択される。
【0028】
上記のように構成された着用物品1を製造する場合、図4のフローチャートに示される工程にしたがって着用物品1の製造が行われる。
【0029】
まず、ステップS1の伸縮シート11を形成するために超音波溶着による溶着工程を行う。具体的には、図5に示される着用物品の製造装置21では、弾性フィルム7を第1アンビルロール22と押さえロール23との間に挟みながら搬送していく。このとき、弾性フィルム7は、搬送方向に伸長した状態で搬送する。そして、伸長状態の弾性フィルム7を一対のシート体5、6で挟み込むことによりシート積層体を形成する。したがって、図1の伸縮シート11を見た場合、伸縮方向Xと搬送方向とが一致するように、当該伸縮シート11が所定の搬送方向(図1の伸縮方向)に搬送される。
【0030】
なお、このときの弾性フィルム7および上側のシート体6は、シート積層体を形成する前にあらかじめ図1の前腹部2および後腹部3に対応するように2本に分岐して搬送され、図1の伸縮シート11の全範囲に広がる下側のシート体5に重ね合されることにより、シート積層体を形成する。
【0031】
ついで、上記のシート積層体が図5~6に示される第1アンビルロール22と超音波ホーン24との間を通過するように、シート積層体を搬送することにより、吸収性本体13の取付場所Pを含む領域において、搬送方向(伸縮方向X)およびそれに直交する直交方向Yに互いに離間する複数の接合部8(図2~3参照)で一対のシート体5、6と弾性フィルム7とを互いに超音波溶着することによって伸縮シート11を形成する。本実施形態の製造装置21では、第1アンビルロール22と超音波ホーン24とによって溶着部が構成される。
【0032】
この超音波溶着によって、多数の接合部8が、図1~3に示されるように、吸収性本体13の取付場所Pを含む領域、具体的には、一対のシート体5、6と弾性フィルム7が積層した部分、すなわち、図1に示される前腹部2および後腹部3の全範囲にわたって形成される。
【0033】
ついで、超音波溶着工程(S1)の後に、ステップS2において、弾性フィルム7に通気孔9(図3参照)を形成する通気孔形成工程を行う。具体的には、図5および図7に示されるように、伸縮シート11を穿孔ユニット25へ送る。穿孔ユニット25は、第2アンビルロール26と、それに対向して配置された多数のピンがロール周面に形成された穿孔ロール27とを備えている。伸縮シート11を第2アンビルロール26と穿孔ロール27との間に通過させることにより、伸縮シート11の前腹部2および後腹部3の全域、すなわち、伸縮領域2a、3aおよび弱化領域2b、3bに均一に通気孔9(図3参照)が形成される。
【0034】
穿孔ロール27のピンを加熱した状態で伸縮シート11を穿孔することにより、伸縮シート11の弾性フィルム7は、開口された状態で熱硬化するので所定の開口幅の通気孔9を維持することが可能である。なお、シート体5、6は、通気性を有する不織布などの材料で形成されるので、穿孔後に開口が閉じても通気性は確保される。
【0035】
通気孔9の直径は、気体(水蒸気)を通すが液体(水、尿など)を通さないような微小な大きさに設定され、接合部8の直径(例えば1mm程度)よりも小さくなるように設定される。例えば、通気孔9の直径が0.1~0.8mm、当該通気孔9の密度は15~100個/cmに設定される。なお、通気孔9の直径は、伸縮シート11(すなわち、その内部の弾性フィルム7)を伸長した状態で押し当てるピンの直径に基づいて設定される。
【0036】
以上の超音波溶着工程(S1)および通気孔形成工程(S2)の後に、ステップS3のように部分的な弱化処理を行う弱化工程を行う。具体的には、伸縮シート11のうち取付場所Pの少なくとも一部において、弾性フィルム7の伸縮性を弱化させた弱化領域2b、3bを形成する。第1実施形態の弱化工程では、切込み10を形成するが、後述の第2~第3実施形態では追加の超音波溶着やヒートシールなどが行われる。
【0037】
すなわち、第1実施形態におけるステップS3の弱化工程では、図2および図3(b)に示されるように、取付場所Pの少なくとも一部において、伸縮方向Xおよび直交方向Yに互いに離間して複数の切込み10を伸縮シート11に形成することにより弱化領域2b、3bを形成する。
【0038】
さらに具体的には、弱化工程では、伸縮シート11を連続的に搬送しながら、図5および図8に示される切込み形成ユニット28を用いて、取付場所Pの少なくとも一部において複数の切込み10を形成する。具体的には、切込み形成ユニット28は、第3アンビルロール29と、30aの周面に複数のカッター30bが設けられたカッターロール30とを備えている。なお、図示されていないが、第3アンビルロール29の周面には、カッターロール30の複数のカッター30bに対向する複数の切断突起が形成されている。
【0039】
伸縮シート11を第3アンビルロール29とカッターロール30との間に通すことにより、複数のカッター30bを有するカッターロール30を用いて、取付場所Pの少なくとも一部において複数の切込み10を伸縮方向Xおよび直交方向Yに互いに離間して形成する。なお、複数の切込み10の配置については互いに離間していればよく、とくに限定されない。
【0040】
このとき、弱化工程では、カッター30bを弾性フィルム7の融点(例えば120~140℃程度)よりも高い温度に加熱した状態で、複数の切込み10を形成するのが好ましい。これにより、弾性フィルム7が収縮した状態でも切込み10がふさがれることがなくなる。
【0041】
本実施形態の製造装置21では、第3アンビルロール29およびカッターロール30を備えた切込み形成ユニット28によって弱化部が構成されている。
【0042】
ついで、ステップS4の吸収性本体13の取付工程を行う。具体的には、吸収性本体13を、ヒートシールまたは接着材による接着などによって、伸縮シート11の弱化領域2b、3bに重なるように取付場所Pに取り付ける。吸収性本体13の取付けは、例えば、吸収性本体13を転写ロール31の周面に貼り付けておき、伸縮シート11を転写ロール31の下側を通過させることにより、吸収性本体13を所定の間隔をあけて伸縮シート11の所定の取付場所Pに取り付けることが可能である。本実施形態の製造装置21では、転写ロール31によって取付部が構成されている。
【0043】
最後に、伸縮シート11を所定の形態、たとえば使い捨ておむつの形態になるように加工すれば、着用物品1の製造が完了する。具体的には、上記のように、図1の伸縮シート11を、取付場所Pに吸収性本体13が取り付けられた状態で、当該吸収性本体13の両側の位置で脚が挿入可能なレッグホール15を形成し、前腹部2および後腹部3が重ね合された状態でこれらの側部同士をシール(サイドシール)し、隣接する伸縮シート11同士を切断することにより、使い捨ておむつの形態になるように加工すればよい。
【0044】
(第1実施形態の特徴)
(1)
第1実施形態の着用物品1の製造方法では、取付場所Pを含む領域における超音波溶着によって伸縮シート11を形成する超音波溶着による溶着工程の後に、当該溶着工程とは別の工程として、伸縮シート11のうち吸収性本体13のための取付場所Pの少なくとも一部において弾性フィルム7の伸縮性を弱化させる弱化工程を含む。これにより、従来のように伸縮シート11を形成する際に弱化領域2b、3bを形成するために超音波溶着を一部の範囲で集中して行うことがなく、第1アンビルロール22または超音波ホーン24の温度が高くなることがなくなる。その結果、伸縮シート11における接合部8以外の部分が溶け出すことがなく、伸縮性を部分的に弱化した伸縮シート11の連続的な加工が可能になる。
【0045】
(2)
第1実施形態の着用物品1の製造方法では、S3の弱化工程において、取付場所Pの少なくとも一部において、伸縮方向Xおよび直交方向Yに互いに離間して複数の切込み10を伸縮シート11に形成することにより弱化領域2b、3bを形成する。これにより、弾性フィルム7の伸縮性を容易かつ確実に弱化させて所定の範囲に弱化領域2b、3bを形成することが可能である。
【0046】
(3)
第1実施形態の着用物品1の製造方法では、弱化工程において、伸縮シート11を連続的に搬送しながら、30aの周面に複数のカッター30bが設けられたカッターロール30を用いて、取付場所Pの少なくとも一部において複数の切込み10を形成する。このようにカッターロール30を用いて連続的に搬送される伸縮シート11における取付場所Pに複数の切込み10を連続的に形成することが可能であり、弱化工程における加工効率が向上する。
【0047】
(4)
第1実施形態の着用物品1の製造方法では、弱化工程において、カッター30bを弾性フィルム7の融点(例えば120~140℃程度)よりも高い温度に加熱した状態で、複数の切込み10を形成する。これにより、弾性フィルム7への切込み10の形成をより容易に行うことが可能である。
【0048】
(5)
第1実施形態の着用物品1の製造方法は、溶着工程の後に、弾性フィルム7に通気孔9を形成する通気孔形成工程を含む。これにより、弾性フィルム7に通気性を持たせることが可能である。
【0049】
(6)
第1実施形態の着用物品1では、伸縮シート11は、伸縮性を有する弾性フィルム7と、一対のシート体5、6とを有し、弾性フィルム7が伸長状態で一対のシート体5、6に挟み込まれた状態で、弾性フィルム7と一対のシート体5、6とが複数の接合部8において互いに超音波溶着されている。さらに、伸縮シート11のうち、吸収性本体13が取り付けられる取付場所Pの少なくとも一部において、伸縮シート11に対して形成された複数の切込み10により弾性フィルム7の伸縮性を弱化させた弱化領域2b、3bが形成されている。これにより、従来のように伸縮シート11を形成する際に超音波溶着を一部の範囲で集中して行うことがなく、第1アンビルロール22または超音波ホーン24の温度が高くなることがなくなる。その結果、伸縮シート11における接合部8以外の部分が溶け出すことがなく、伸縮性を部分的に弱化した伸縮シート11の連続的な加工が可能になる。しかも、複数の切込み10によって弱化領域2b、3bが形成されるので、容易かつ確実に弾性フィルム7の伸縮性を弱化させて所定の範囲に弱化領域2b、3bを形成することが可能である。
【0050】
(7)
第1実施形態の着用物品の製造装置21では、溶着部(第1アンビルロール22および超音波ホーン24を備えた溶着部)において取付場所Pを含む領域における超音波溶着によって伸縮シート11を形成し、その後、前記搬送方向において溶着部の下流側に配置された弱化部(第3アンビルロール29およびカッターロール30を備えた切込み形成ユニット28)において、伸縮シート11のうち吸収性本体13のための取付場所Pの少なくとも一部において弾性フィルム7の伸縮性を弱化させることが可能である。これにより、従来のように伸縮シート11を形成する際に弱化領域を形成するために超音波溶着を一部の範囲で集中して行うことがなく、アンビルロールまたは超音波ホーンの温度が高くなることがなくなる。その結果、伸縮シート11における接合部以外の部分が溶け出すことがなく、伸縮性を部分的に弱化した伸縮シート11の連続的な加工が可能になる。
【0051】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、伸縮シート11の取付場所Pの少なくとも一部において弾性フィルム7の伸縮性を弱化させた弱化領域2b、3bを形成する弱化工程として、切込み10を形成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、弾性フィルム7の伸縮性を弱化させた弱化領域2b、3bを形成することを達成できるのであれば、他の弱化工程を採用してもよい。
【0052】
すなわち、本発明の第2実施形態に係る着用物品1の製造方法では、弱化工程として、取付場所Pの少なくとも一部において、伸縮シート11に対して超音波溶着を追加的に行って追加の接合部8を形成することによって弱化領域2b、3bを形成する。
【0053】
すなわち、第2実施形態の弱化工程では、図9(a)、(b)に示されるように、上記第1実施形態の切込み10(図2および図3(b)参照)を形成する代わりに、追加の接合部8を形成することにより、弱化領域2b、3bにおいて、伸縮領域2a、3aの接合部8の密度(図2および図3(b)参照)よりも高い密度で形成することが可能である。
【0054】
第2実施形態の弱化工程を行うために、図5に示される着用物品1の製造装置21において、切込み形成ユニット28の代わりに、追加のアンビルロールと追加の超音波ホーンとを備えた超音波溶着ユニットを設置すればよい。
【0055】
なお、弱化工程において追加の接合部8を形成する場合、溶着工程のときに形成された複数の接合部8と比較して、位相(すなわち配置パターン)や大きさを変えて形成してもよい。
【0056】
すなわち、超音波溶着によって追加の接合部8を形成する弱化処理を行う場合には、少なくとも溶着工程のときに形成された複数の接合部8以外の領域に弱化処理を施せばよい。
【0057】
第2実施形態の製造方法は、弱化工程以外の工程については、第1実施形態の製造方法と共通するので説明を省略する。
【0058】
上記の第2実施形態における着用物品1の製造方法では、溶着工程の後に、弱化工程として、取付場所Pの少なくとも一部において、伸縮シート11に対して超音波溶着を追加的に行って追加の接合部8を形成することによって局所的に接合部8を多くして弱化領域2b、3bを形成することが可能になる。この製造方法でも、従来のように伸縮シート11を形成する際の溶着工程において超音波溶着(例えば、図5における超音波ホーン24による超音波溶着)を一部の範囲で同時に集中して行うことがなく、第1アンビルロール22または超音波ホーン24の温度が高くなることがなくなる。その結果、伸縮シート11における接合部8以外の部分が溶け出すことがなく、伸縮性を部分的に弱化した伸縮シート11の連続的な加工が可能になる。しかも、この弱化工程では、追加の超音波溶着によって任意の数および配置で追加の接合部8を形成することが可能になるので、弱化領域2b、3bの形成自由度が高い。
【0059】
[第3実施形態]
さらに本発明の第3実施形態として、弱化工程として、溶着工程の後にヒートシールを行ってもよい。
【0060】
すなわち、本発明の第3実施形態に係る着用物品1の製造方法では、弱化工程として、取付場所Pの少なくとも一部の部分において、当該部分を加熱された部材(後述のヒートエンボス用のエンボス加工ロールなど)に接触させて一対のシート体5、6および弾性フィルム7を互いにヒートシールすることによって弱化領域2b、3bを形成する。
【0061】
さらに具体的には、第3実施形態の弱化工程では、ヒートシールの具体例として、伸縮シート11を加熱しながら当該伸縮シート11の厚さ方向へ部分的に押圧して所定の型を付けるヒートエンボス加工を行う。
【0062】
すなわち、第3実施形態の弱化工程では、図10(a)、(b)に示されるように、上記第1実施形態の切込み10(図2および図3(b)参照)を形成する代わりに、ヒートエンボス加工によりヒートエンボス部分12を形成することにより、伸縮シート11の取付場所Pの少なくとも一部において弾性フィルム7の伸縮性を弱化させた弱化領域2b、3bを形成することが可能である。
【0063】
ヒートエンボス部分12の形状および配置は、本発明ではとくに限定されるものではなく、所望のパターンですればよい。例えば、図10(a)に示されるヒートエンボス部分12のように、多数の正方形が縦横に間隔をあけて配置された連続模様(いわゆる日本の市松模様などのチェック模様)の他にも、所望のパターンが多数配列されたモザイク模様またはタイル模様に形成されてもよい。
【0064】
すなわち、ヒートシールによる弱化処理、具体的にはヒートエンボス加工によってヒートエンボス部分12を形成する弱化処理を行う場合には、少なくとも接合部8以外の領域に弱化処理を施せばよい。
【0065】
第3実施形態の弱化工程としてヒートエンボス加工を行うために、図5に示される着用物品1の製造装置21において、切込み形成ユニット28の代わりに、所定のパターンのヒートエンボス部分12を形成するための複数の凸部(チェック模様市松模様の場合には正方形の凸部)がロール周面に形成された一対のエンボス加工ロールおよびそれらを加熱する加熱部を備えたヒートエンボス加工ユニットを設置すればよい。
【0066】
ヒートエンボス加工におけるエンボス加工ロールの加熱温度は、例えば、弾性フィルム7の融点(例えば120~140℃程度)よりも高く、一対のシート体5、6の融点(例えば160℃程度)よりも低くなるように設定すれば、一対のシート体5、6が弾性フィルム7から剥離せずかつシート体5、6自体が溶融しない状態で当該弾性フィルム7に確実にヒートシールすることが可能である。
【0067】
なお、第3実施形態では、伸縮シートを加熱しながら押圧するヒートエンボス加工以外でも、伸縮シートを押圧しないヒートシールを行っても上記の弱化領域2b、3bを形成することが可能である。
【0068】
第3実施形態の製造方法は、弱化工程以外の工程については、第1実施形態の製造方法と共通するので説明を省略する。
【0069】
(第3実施形態の特徴)
(1)
上記のように、第3実施形態の着用物品1の製造方法では、弱化工程では、取付場所Pの少なくとも一部において、一対のシート体5、6および弾性フィルム7を互いにヒートシールすることによって弱化領域2b、3bを形成する。
【0070】
また、第3実施形態の製造方法で製造された着用物品1では、伸縮シート11のうち取付場所Pの少なくとも一部において、一対のシート体5、6および弾性フィルム7が互いにヒートシールされた部分により弾性フィルム7の伸縮性を弱化させた弱化領域2b、3bが形成されている。その他の構成は第1実施形態の着用物品の構成と共通するので、説明を省略する。
【0071】
上記のように、第3実施形態の製造方法およびそれによって製造された着用物品1では、従来のように伸縮シート11を形成する際に超音波溶着を一部の範囲で集中して行うことがなく、第1アンビルロール22または超音波ホーン24の温度が高くなることがなくなる。その結果、伸縮シート11における接合部8以外の部分が溶け出すことがなく、伸縮性を部分的に弱化した伸縮シート11の連続的な加工が可能になる。しかも、この弱化工程では、一対のシート体5、6および弾性フィルム7を互いにヒートシールすることによって弱化領域2b、3bを形成するので、ヒートシールの温度を変更することにより一対のシート体5、6および弾性フィルム7の間の接着の状態を任意に変更することが可能である。また、ヒートシールの領域を適宜設定することにより、弱化領域2b、3bにおいて所望のパターン(例えば、所望の文字や模様のパターン)を形成することが可能であり、意匠性が向上する。
【0072】
(2)
第3実施形態の着用物品1の製造方法では、ヒートシールとして、伸縮シート11を加熱しながら当該伸縮シート11の厚さ方向へ部分的に押圧して所定の型を付けるヒートエンボス加工を行う。
【0073】
また、第3実施形態の製造方法で製造された着用物品1では、伸縮シート11は、ヒートエンボス加工によってヒートシールされた部分において当該伸縮シート11の厚さ方向へ部分的に押圧されて所定の型が付けられている。
【0074】
上記のようなヒートエンボス加工を用いた第3実施形態の製造方法および着用物品1では、一対のシート体5、6および弾性フィルム7の間の接着を確実に行うことが可能である。しかも、弱化領域2b、3bにおいて所望のパターンで凹凸を付けて立体感を出すことが可能であり、視認性が向上するとともに意匠性もより向上する。
【0075】
(その他の実施形態)
以上の第1~第3実施形態では、着用物品1の一例としてパンツタイプの使い捨ておむつの形態を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、伸縮シートと吸収性本体とを有し、伸縮シートに形成された伸縮性を弱化した弱化領域に吸収性本体が取り付けられるものであれば、種々の形態の着用物品に適用することが可能である。したがって、本発明の着用物品およびその製造方法は、パンツタイプの使い捨ておむつ以外にも、テープタイプやパッドタイプ等の種々の形態の使い捨ておむつに適用することが可能であり、さらには、生理用ナプキン等にも適用することが可能である。
【0076】
<実施形態のまとめ>
前記実施形態をまとめると以下のとおりである。
前記実施形態にかかる着用物品の製造方法は、伸縮性を有する伸縮シートと、前記伸縮シートにおける所定の取付場所に取り付けられ、水分を吸収することが可能な吸収性本体とを備えた着用物品の製造方法であって、伸長状態の弾性フィルムを一対のシート体で挟み込むことにより形成されたシート積層体がアンビルロールと超音波ホーンとの間を通過するように、前記シート積層体を所定の搬送方向に搬送することにより、前記取付場所を含む領域において前記搬送方向に互いに離間する複数の接合部で一対のシート体と弾性フィルムとを互いに超音波溶着して前記伸縮シートを形成する溶着工程と、前記溶着工程の後に、前記伸縮シートのうち前記取付場所の少なくとも一部において、前記弾性フィルムの伸縮性を弱化させた弱化領域を形成する弱化工程と、前記吸収性本体を、前記弱化領域に重なるように前記取付場所に取り付ける取付工程とを含むことを特徴とする。
【0077】
かかる製造方法では、前記取付場所を含む領域における超音波溶着によって伸縮シートを形成する溶着工程の後に、当該溶着工程とは別の工程として、伸縮シートのうち吸収性本体のための取付場所の少なくとも一部において弾性フィルムの伸縮性を弱化させる弱化工程を含む。これにより、従来のように伸縮シートを形成する際に弱化領域を形成するために超音波溶着を一部の範囲で集中して行うことがなく、アンビルロールまたは超音波ホーンの温度が高くなることがなくなる。その結果、伸縮シートにおける接合部以外の部分が溶け出すことがなく、伸縮性を部分的に弱化した伸縮シートの連続的な加工が可能になる。
【0078】
上記の着用物品の製造方法において、前記弱化工程では、前記取付場所の少なくとも一部において、複数の切込みを伸縮シートに形成することにより前記弱化領域を形成するのが好ましい。
【0079】
かかる製造方法では、伸縮シートのうち取付場所の少なくとも一部において複数の切込みを伸縮シートに形成することにより、弾性フィルムの伸縮性を容易かつ確実に弱化させて所定の範囲に弱化領域を形成することが可能である。
【0080】
上記の着用物品の製造方法において、前記弱化工程では、前記伸縮シートを連続的に搬送しながら、ロール本体の周面にカッターが設けられたカッターロールを用いて、前記取付場所の少なくとも一部において前記切込みを形成するのが好ましい。
【0081】
かかる製造方法では、カッターロールを用いて、連続的に搬送される伸縮シートにおける前記取付場所に切込みを連続的に形成することが可能であり、弱化工程における加工効率が向上する。
【0082】
上記の着用物品の製造方法において、前記弱化工程では、前記カッターを前記弾性フィルムの融点よりも高い温度に加熱した状態で、前記切込みを形成するのが好ましい。
【0083】
かかる製造方法では、前記カッターを前記弾性フィルムの融点よりも高い温度に加熱した状態で、前記切込みを形成することにより、弾性フィルムへの切込みの形成をより容易に行うことが可能である。
【0084】
上記の着用物品の製造方法において、前記弱化工程では、前記取付場所の少なくとも一部において、前記伸縮シートに対して超音波溶着を追加的に行って追加の接合部を形成することによって前記弱化領域を形成するのが好ましい。
【0085】
かかる製造方法では、溶着工程の後に、弱化工程として、取付場所の少なくとも一部において、伸縮シートに対して超音波溶着を追加的に行って追加の接合部を形成することによって局所的に接合部を多くして弱化領域を形成することが可能になる。この製造方法でも、従来のように伸縮シートを形成する際の溶着工程において超音波溶着を一部の範囲で同時に集中して行うことがなく、アンビルロールまたは超音波ホーンの温度が高くなることがなくなる。その結果、伸縮シートにおける接合部以外の部分が溶け出すことがなく、伸縮性を部分的に弱化した伸縮シートの連続的な加工が可能になる。しかも、この弱化工程では、追加の超音波溶着によって任意の数および配置で追加の接合部を形成することが可能になるので、弱化領域の形成自由度が高い。
【0086】
上記の着用物品の製造方法において、前記弱化工程では、前記取付場所の少なくとも一部の部分において、当該部分を加熱された部材に接触させて前記一対のシート体および前記弾性フィルムを互いにヒートシールすることによって前記弱化領域を形成するのが好ましい。
【0087】
かかる製造方法では、溶着工程の後に、弱化工程として、取付場所の少なくとも一部において、一対のシート体および弾性フィルムを互いにヒートシールすることによって弱化領域を形成するので、従来のように伸縮シートを形成する際に超音波溶着を一部の範囲で集中して行うことがなく、アンビルロールまたは超音波ホーンの温度が高くなることがなくなる。その結果、伸縮シートにおける接合部以外の部分が溶け出すことがなく、伸縮性を部分的に弱化した伸縮シートの連続的な加工が可能になる。しかも、この弱化工程では、一対のシート体および弾性フィルムを互いにヒートシールすることによって弱化領域を形成するので、ヒートシールの温度を変更することにより一対のシート体および弾性フィルムの間の接着の状態を任意に変更することが可能である。また、ヒートシールの領域を適宜設定することにより、弱化領域において所望のパターン(例えば、所望の文字や模様のパターン)を形成することが可能であり、意匠性が向上する。
【0088】
上記の着用物品の製造方法において、前記ヒートシールとして、前記伸縮シートを加熱しながら当該伸縮シートの厚さ方向へ部分的に押圧して所定の型を付けるヒートエンボス加工を行うのが好ましい。
【0089】
かかる製造方法では、ヒートシールとして、伸縮シートを加熱しながら当該伸縮シートを厚さ方向へ部分的に押圧して所定の型を付けるヒートエンボス加工を行うことにより、一対のシート体および弾性フィルムの間の接着を確実に行うことが可能である。しかも、弱化領域において所望のパターンで凹凸を付けて立体感を出すことが可能であり、視認性が向上するとともに意匠性もより向上する。
【0090】
上記の着用物品の製造方法において、前記溶着工程の後に、前記弾性フィルムに通気孔を形成する通気孔形成工程をさらに含むのが好ましい。
【0091】
かかる製造方法では、弾性フィルムに通気孔を形成することにより、弾性フィルムに通気性を持たせることが可能である。
【0092】
本実施形態の一態様に係る着用物品は、伸縮性を有する伸縮シートと、水分を吸収することが可能な吸収性本体とを備えており、前記吸収性本体が前記伸縮シートにおける所定の取付場所に取り付けられ、前記伸縮シートは、所定の伸縮方向において伸縮性を有する弾性フィルムと、一対のシート体とを有し、前記弾性フィルムが伸長状態で前記一対のシート体に挟み込まれた状態で、前記弾性フィルムと前記一対のシート体とが前記伸縮方向に互いに離間する複数の接合部で複数の接合部において互いに超音波溶着され、前記伸縮シートのうち前記取付場所の少なくとも一部において、複数の切込みにより前記弾性フィルムの伸縮性を弱化させた弱化領域が形成されており、前記吸収性本体は、前記弱化領域に重なるように、前記取付場所に取り付けられていることを特徴とする。
【0093】
かかる構成では、伸縮シートは、伸縮性を有する弾性フィルムと、一対のシート体とを有し、弾性フィルムが伸長状態で一対のシート体に挟み込まれた状態で、弾性フィルムと一対のシート体とが複数の接合部において互いに超音波溶着されている。さらに、伸縮シートのうち、吸収性本体が取り付けられる取付場所の少なくとも一部において、弾性フィルムに対して形成された複数の切込みにより弾性フィルムの伸縮性を弱化させた弱化領域が形成されている。これにより、従来のように伸縮シートを形成する際に超音波溶着を一部の範囲で集中して行うことがなく、アンビルロールまたは超音波ホーンの温度が高くなることがなくなる。その結果、伸縮シートにおける接合部以外の部分が溶け出すことがなく、伸縮性を部分的に弱化した伸縮シートの連続的な加工が可能になる。しかも、切込みによって弱化領域が形成されるので、容易かつ確実に弾性フィルムの伸縮性を弱化させて所定の範囲に弱化領域を形成することが可能である。
【0094】
本実施形態の他の態様に係る着用物品は、伸縮性を有する伸縮シートと、水分を吸収することが可能な吸収性本体とを備えており、前記吸収性本体が前記伸縮シートにおける所定の取付場所に取り付けられ、前記伸縮シートは、所定の伸縮方向において伸縮性を有する弾性フィルムと、一対のシート体とを有し、前記弾性フィルムが伸長状態で前記一対のシート体に挟み込まれた状態で、前記弾性フィルムと前記一対のシート体とが前記伸縮方向に互いに離間する複数の接合部で複数の接合部において互いに超音波溶着され、前記伸縮シートのうち前記取付場所の少なくとも一部において、前記一対のシート体および前記弾性フィルムが互いにヒートシールされた部分によって前記弾性フィルムの伸縮性を弱化させた弱化領域が形成されており、前記吸収性本体は、前記弱化領域に重なるように、前記取付場所に取り付けられていることを特徴とする。
【0095】
かかる構成では、伸縮シートは、伸縮性を有する弾性フィルムと、一対のシート体とを有し、弾性フィルムが伸長状態で一対のシート体に挟み込まれた状態で、弾性フィルムと一対のシート体とが複数の接合部において互いに超音波溶着されている。さらに、伸縮シートのうち、吸収性本体が取り付けられる取付場所の少なくとも一部において、一対のシート体および弾性フィルムが互いにヒートシールされた部分によって弾性フィルムの伸縮性を弱化させた弱化領域が形成されている。これにより、従来のように伸縮シートを形成する際に超音波溶着を一部の範囲で集中して行うことがなく、アンビルロールまたは超音波ホーンの温度が高くなることがなくなる。その結果、伸縮シートにおける接合部以外の部分が溶け出すことがなく、伸縮性を部分的に弱化した伸縮シートの連続的な加工が可能になる。しかも、一対のシート体および弾性フィルムが互いにヒートシールされて弱化領域が形成されているので、ヒートシールの温度を変更することにより接着の状態を任意に変更することが可能である。また、ヒートシールの領域を適宜設定することにより、弱化領域において所望のパターン(例えば、所望の文字や模様のパターン)を形成することが可能であり、意匠性が向上する。
【0096】
上記の着用物品において、前記伸縮シートは、前記ヒートシールされた部分において当該伸縮シートの厚さ方向へ部分的に押圧されて所定の型が付けられているのが好ましい。
【0097】
かかる構成では、伸縮シートがヒートエンボス加工などによってヒートシールされた部分において当該伸縮シートの厚さ方向へ部分的に押圧されて所定の型が付けられているので、伸縮シートにおける一対のシート体および弾性フィルムの間の接着を確実に行うことが可能である。しかも、弱化領域において所望のパターンで凹凸が付けられることが可能であり、視認性が向上するとともに意匠性もより向上する。
【0098】
本実施形態の着用物品の製造装置は、伸縮性を有する伸縮シートと、前記伸縮シートにおける所定の取付場所に取り付けられ、水分を吸収することが可能な吸収性本体とを備えた着用物品を製造する製造装置であって、伸長状態の弾性フィルムを一対のシート体で挟み込むことにより形成されたシート積層体がアンビルロールと超音波ホーンとの間を通過するように、前記シート積層体を所定の搬送方向に搬送することにより、前記取付場所を含む領域において前記搬送方向に互いに離間する複数の接合部で一対のシート体と弾性フィルムとを互いに超音波溶着して前記伸縮シートを形成する溶着部と、前記搬送方向において前記溶着部の下流側に配置され、前記伸縮シートのうち前記取付場所の少なくとも一部において、前記弾性フィルムの伸縮性を弱化させた弱化領域を形成する弱化部と、前記搬送方向において前記弱化部の下流側に配置され、前記吸収性本体を、前記弱化領域に重なるように前記取付場所に取り付ける取付部と、を備えることを特徴とする。
【0099】
かかる製造装置では、溶着部において前記取付場所を含む領域における超音波溶着によって伸縮シートを形成し、その後、前記搬送方向において前記溶着部の下流側に配置された弱化部において、伸縮シートのうち吸収性本体のための取付場所の少なくとも一部において弾性フィルムの伸縮性を弱化させることが可能である。これにより、従来のように伸縮シートを形成する際に弱化領域を形成するために超音波溶着を一部の範囲で集中して行うことがなく、アンビルロールまたは超音波ホーンの温度が高くなることがなくなる。その結果、伸縮シートにおける接合部以外の部分が溶け出すことがなく、伸縮性を部分的に弱化した伸縮シートの連続的な加工が可能になる。
【0100】
以上のように、本実施形態の着用物品の製造方法、着用物品、および着用物品の製造装置によれば、伸縮性を部分的に弱化した伸縮シートの連続的な加工を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10